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  • 「再生・再チャレンジ支援円滑化パッケージ」を踏まえた事業者支援の徹底等について

令和7年3月18日

各業界団体等代表者 殿

内閣総理大臣 石破  茂
財務大臣兼金融担当大臣 加藤 勝信
 厚生労働大臣 福岡 資麿
 農林水産大臣 江藤  拓 
経済産業大臣 武藤 容治

「再生・再チャレンジ支援円滑化パッケージ」を踏まえた
事業者支援の徹底等について

官民金融機関等におかれましては、累次にわたる要請等も踏まえ、事業者支援に着実に取り組んでいただいておりますことに感謝申し上げます。
 足元では、多様化する経営課題への対応に向けた支援を先延ばしすることなく、事業者に寄り添いながら一歩先を見据えて取り組むことの必要性が高まっています。現に、中小企業活性化協議会への相談件数は過去最高を更新するなど、今後とも、事業再生支援ニーズは更なる高まりを見せていくものと想定されます。
 こうした中、政府においては、3月17日に「再生・再チャレンジ支援円滑化パッケージ」をとりまとめたことを踏まえ、以下の事項について要請いたしますので、「挑戦する中小企業の経営改善・再生支援強化会議」における要請事項等とあわせ、貴機関、貴協会会員金融機関等の経営層は勿論のこと、現場の第一線の職員等まで周知・徹底をお願いいたします。

1.早期相談に向けた取組強化

足元では、中小企業活性化協議会への相談件数が過去最高を更新するなど、早期から経営改善・事業再生を支援していくことへのニーズは更なる高まりを見せている。また、コロナ禍を経て、信用保証協会への保証申込時点において、プロパー融資のある事業者の割合が減少し、信用保証協会が実質的にメインとなるなど、信用保証協会と民間金融機関等が連携した予兆管理の重要性が一層高まっている。こうしたことを受け、以下に掲げる取組等を通じて、事業者からの早期相談に対する着実な対応強化を図ること。

  • 「信用保証協会向けの総合的な監督指針」改正後のフォローアップ
     信用保証協会においては、信用保証付融資の割合が高い事業者について、民間金融機関をはじめとした関係者と目線合わせを行うなどの連携の上、主体的に事業再生支援等の必要性を検討し、引き続き、必要に応じて、直接又は間接的に中小企業活性化協議会への相談持込を実施すること。また、こうした取組を含め、経営改善・事業再生支援等の取組については、信用保証協会自らがフォローアップを実施し、中小企業活性化協議会への持込状況や支援先のターゲティングのみならず、令和6年6月に改正した「信用保証協会向けの総合的な監督指針」に基づいて設定された目標の達成状況を検証・更なる課題を抽出するなど、「見える化」やPDCAを徹底すること。
  • 拡充・延長した「早期経営改善計画策定支援事業」の活用
     令和6年2月より民間金融機関が中小企業に対して行う計画策定支援も時限的に補助の対象に追加した「早期経営改善計画策定支援事業」については、現場のニーズも踏まえ、係る時限措置の申込期限を令和7年1月から令和10年1月まで大幅に延長の上、支援対象企業の要件も拡充した。あわせて、令和7年4月からは事業の通称を「ポストコロナ持続的発展計画事業(ポスコロ事業)」から「バリューアップ支援事業(Vアップ事業)」に変更する。民間金融機関においては、事業者の実情に応じて当該事業も活用しつつ、自身のコンサルティング機能を発揮して、事業者の経営改善・事業再生支援や再チャレンジ支援に努めること。その際、事業者の実情に応じて、財務状況や事業内容のみに留まらず、経営者自身の年齢や健康状態、後継者の有無といった今後の経営に影響を及ぼし得る要素を可能な範囲で幅広く可視化しながらコミュニケーションをとることに努めること。なお、足元では、「早期経営改善計画策定支援事業」を積極的に活用する金融機関において、信用保証付融資に関し、保証承諾時にプロパー融資が無い割合が低い、代位弁済率が低いといった傾向があることも踏まえ、これまで利用実績の少ない金融機関においても、事業者のニーズを踏まえつつ、より積極的な活用に向けて検討すること。
  • 「予兆管理における着眼点」の活用
     信用保証協会や民間金融機関等においては、今後中小企業庁が作成する、より早期に事業者の経営悪化の予兆を把握して必要な支援を講じていくための基本的な事項を示した「予兆管理における着眼点」も踏まえつつ、経営悪化の予兆を検知した場合における関係者間での情報共有・連携を含めた予兆管理体制を構築し、適時性のあるモニタリングを通じた事業者の経営力の強化に取り組むこと。加えて、事業再生支援ニーズの高まりも踏まえ、経営状況が悪化していることの予兆を適切なタイミングで把握するための体制強化や効果的な事業者支援に向けて、事業者が経営情報を提供することのインセンティブ組成も含めて、経営情報のモニタリングの高度化を図る仕組みを検討すること。
  • 再チャレンジに関する事例集の活用
     中小企業活性化協議会においては、今後中小企業庁が作成する再チャレンジに関する事例集を積極的に活用し、事業者の意識醸成を図りつつ、早期決断による円滑な再チャレンジを促していくこと。

2.事業再生支援の体制強化

物価高や人手不足への対応等の影響も受け、近年、事業者の経営課題が多様化する中、引き続き、資金繰り支援に留まらない、事業者の実情に応じた経営改善・事業再生支援や再チャレンジ支援に取り組むことが極めて重要である。こうしたことを踏まえ、金融機関や支援機関、専門家といった関係者が早期から一層密接に連携しつつ、以下に掲げる取組等を通じて、一歩先を見据えた早期からの事業者支援に取り組むこと。

  • トレーニー研修制度や協議会補佐人制度の活用促進等を通じた体制強化
     中小企業活性化協議会においては、増大する事業再生支援ニーズに着実に対応するための体制強化に取り組むとともに、モニタリングを強化し再生計画等の実現に向けた伴走支援を行うこと。特に、足元で債権放棄案件や再チャレンジ案件が増加していることも踏まえ、中小企業活性化協議会内外における人材育成と体制強化が重要であることを意識して、トレーニー研修制度や協議会補佐人制度の活用を促進すること。加えて、地域全体での支援体制を強化すべく、勉強会や情報交換会等の開催を通じて、地域金融機関や信用保証協会、士業団体、他支援機関、再生系サービサー等の関係者との有機的な連携体制を構築すること。
     また、中小企業活性化協議会が有する再生支援のノウハウを民間金融機関や信用保証協会に還元することを目的として実施しているトレーニー研修制度に関しては、当該制度活用実績のある民間金融機関や信用保証協会において、中小企業活性化協議会への持込件数や中小企業活性化協議会での再生計画等の策定支援につながった件数が、当該制度活用実績のない民間金融機関や信用保証協会と比較して増加するなど、事業再生人材の育成に際して一定の効果が見られる点を踏まえ、特に活用実績のない民間金融機関や信用保証協会においては、必要に応じて当該制度を活用しながら、引き続き、事業再生人材の育成に努めること。
  • 拡充する再チャレンジ支援の活用
     中小企業活性化協議会においては、足元で再チャレンジフェーズの事業者からの相談が大幅に増加していることを踏まえ、当該事業者の早期決断を促して真の再チャレンジにつなげることができるよう、新たに拡充する中小企業活性化協議会の支援を有効に活用すること。
  • 事業再生支援等に関するノウハウやネットワークの活用
     日本政策金融公庫等においては、その全国ネットワークを活かし、引き続き、これまで培ってきた事業再生支援のノウハウを民間金融機関や中小企業活性化協議会等に共有するなど、連携強化を図りながら、全国各地での事業者の経営改善・事業再生支援に取り組むこと。また、再生途上にありながら事業承継の課題も抱える事業者に対しては関係機関と連携して計画策定を支援するほか、事業再生支援に限らず、後継者不在の事業者等と創業希望者等を結ぶ「事業承継マッチング支援」等の活用も促進すること。
     商工組合中央金庫においては、これまで培ってきた事業再生等のノウハウを活用し、人的サポートも含めて、中小企業活性化協議会との連携を強化すること。また、中小企業の経営改善に向けた長期戦略策定支援を創設するとともに、全国型事業再生ファンドの活用強化に取り組むことにより、中小企業の経営改善・事業再生支援に取り組むこと。加えて、令和5年に改正した商工中金法の趣旨を踏まえ、業務範囲の見直しに向けた準備を加速すること。
     中小企業活性化全国本部においては、全国の中小企業活性化協議会の支援レベルの底上げを図るべく、各種研修のサポートや最新の支援事例の共有、協働支援案件への取組等を通じ、各協議会の常駐専門家のスキルアップの取組を強化すると共に、低評価協議会の業務改善をサポートすること。また、足元で支援件数が増加する中、中小企業活性化協議会の業務効率化に向けて、入力負担の軽減やシステム上での迅速な実績収集が可能となるよう、業務システムの見直しを行うこと。
  • 「自治体における求償権放棄手続の手引(仮称)」の活用促進
     信用保証協会においては、自治体が損失補償契約を締結している信用保証付融資に関する求償権放棄の手続が迅速に行えるよう、自治体内での手続の円滑化に協力すること。その際、必要に応じて、今後中小企業庁が自治体向けに作成・配布する予定の、「自治体における求償権放棄手続の手引(仮称)」の活用を促すこと。
  • 「経営者保証改革プログラム」等に関する取組状況のフォローアップを踏まえた対応
     経営者保証に依存しない融資慣行の確立に向けては、令和4年12月23日付で政府より発出した要請文「個人保証に依存しない融資慣行の確立に向けた取組の促進」及び同日付で策定した「経営者保証改革プログラム」(以下「「経営者保証改革プログラム」等」という。)に沿った取組が進捗しており、令和6年度上半期の取組実績としては、
    • 新規融資件数に占める「経営者保証に依存しない融資」の件数の割合が、52.6%(令和5年度の通年の実績は47.5%)
    • 新規融資件数に占める「経営者保証に依存しない融資」の件数と「有保証融資のうち適切な説明を行い記録した融資」の件数との合計の割合が、98.8%(令和5年度の通年の実績は94.8%)
  • にそれぞれ達するなど、経営者保証に依存しない融資慣行の浸透・定着が着実に進んできているものと評価できる。
     係る取組状況を踏まえつつ、民間金融機関においては、「経営者保証改革プログラム」等の趣旨・内容について、引き続き、営業現場を含めた一層の浸透・定着を図ることで、経営者保証に依存しない融資慣行の確立に向けて取り組むこと。また、「経営者保証改革プログラム」に掲げる、新規融資件数に占める「経営者保証に依存しない融資」の件数と「有保証融資のうち適切な説明を行い記録した融資」の件数との合計の割合を100%とする目標の達成に向けて、引き続き、着実に取組を進めること。その際、係る取組状況等に鑑みて今後金融庁が実施するフォローアップも踏まえて、必要に応じて更なる取組促進を図ること。
     加えて、「経営者保証改革プログラム」等に基づく取組が金融機関や事業者の着実な行動変容につながっていることを踏まえ、係る行動変容を更に拡大していくべく、引き続き、自身の経営資源の状況や事業者とのリレーション強化による裨益等に照らし合わせて、令和5年3月以前に締結したものも含む既往の経営者保証契約について、事業者からの問い合わせや、事業者に対する定期的な業況確認の機会等も活用しながら、対応可能な範囲で、監督指針に沿った説明や記録を行うこと。
     あわせて、令和6年3月の取扱開始から1年を迎えた「事業者選択型経営者保証非提供制度」については、令和7年3月7日時点で約13,000件、約2,300億円の保証承諾実績(速報値)となっており、引き続き、事業者の実情に応じて、信用保証協会と連携しつつ、同制度の活用を積極的に検討すること。
  • 適切な事業者支援に向けた対応
     民間金融機関においては、顧客企業とのきめ細かなコミュニケーションを通じ、できる限りその事情や背景等を確認・把握すること。その際、無登録で融資の媒介を業として行っていた者がいた事例や、後継者のいない企業に買収を持ち掛けた上で資産を譲渡させてから放置した悪質なM&A仲介業者がいた事例のように、第三者による不適切な関与が疑われる場合は、警察当局との連携も視野に含めた、適切なソリューションの提案・実行に努めること。

3.その他経営改善・事業再生に資する支援インフラの整備

1.及び2.に掲げるものの他、関係省庁において経営改善・事業再生に資する支援インフラを順次整備・運用していることを踏まえ、以下に掲げる取組を講じること。

  • 「経営改善サポート保証(経営改善・再生支援強化型)制度」の活用
     民間金融機関及び信用保証協会においては、事業者の実情に応じて、経営改善・事業再生計画の策定を促した上で借換え需要にも応える「経営改善サポート保証制度」の類型として新たに措置する「経営改善・再生支援強化型」(注:100%保証は100%保証で借換え、保証料0.3%、上限2.8億円、保証期間15年以内)を活用しつつ、事業者の返済負担軽減を図ること。
  • 資本性劣後ローンの活用
     日本政策金融公庫等においては、経営改善・事業再生の更なる促進のため、民間金融機関とも連携し、「事業再生・企業再建支援資金」等を活用した支援に積極的に取り組むこと。加えて、過大な債務等に苦しむ事業者に対しては、その実情に応じて、令和7年3月より要件を見直した通常の資本性劣後ローン(注:①適用利率を4.65%から3.95%に引き下げるなど、②限度額10億円→15億円等)によってその財務基盤の強化を図りつつ、経営改善・事業再生を促すとともに、構造的な賃上げの実現に向けて省力化投資等に挑戦する事業者に対しての成長支援の手段としても、積極的にその活用を検討すること。あわせて、官民金融機関においては、協調融資商品の組成拡大等に努めること。
  • 「協調支援型特別保証制度」の活用
     民間金融機関及び信用保証協会においては、事業者の実情に応じて、令和7年3月に新たに開始した「協調支援型特別保証制度」を積極的に活用し、民間金融機関によるプロパー融資を含む金融仲介機能の一層の発揮を通じて、事業者の多岐にわたる経営課題に対応した資金需要に着実に応えていくこと。
  • 「セーフティネット貸付(物価高騰対策)」等の活用
     日本政策金融公庫等においては、事業者の実情に応じて、物価高騰による影響が長期化していることも踏まえて令和7年4月以降も取扱期間が延長された「セーフティネット貸付(物価高騰対策)」等の活用を引き続き促進すること。
  • 「セーフティネット保証5号」の業種指定の変更に向けた対応
     信用保証協会においては、令和7年10月以降、中小企業庁が「セーフティネット保証5号」に係る不況業種指定をコロナ前基準に戻す予定であることを踏まえ、業況が厳しい事業者に対して、金融機関等を通じて周知するなどの必要な対応を行うこと。
  • 抜本的な事業再生支援の検討
     日本政策金融公庫等においては、地域経済の産業活力を維持する観点から、関係機関とも連携のうえ、資本性劣後ローンによる支援をはじめ、多様な再生手法の活用による抜本的な事業再生を検討するなど、事業者の実情に応じた再生支援に取り組むこと。
  • 「事業再生情報ネットワーク」の活用
     令和6年6月に創設した「事業再生情報ネットワーク」については、令和7年2月末までに延べ41件の相談を受け付けており、公租公課の確実な納付と事業再生との両立が図られた事例も出てくるなど、一定の成果が生まれている。
     係る取組状況を踏まえつつ、官民金融機関等においては、引き続き、関係者間で連携しつつ、事業者等に対して必要な周知を行うとともに、本ネットワークを活用した柔軟な事業者支援に努めること。

4.資金繰り支援、条件変更・借換えに係る対応

事業者への資金繰り支援については、物価高や人手不足等といった足元の経営環境の変化がある中で資金需要の高まる年度末を迎えることを踏まえ、中小企業や小規模・零細企業、中小企業組合はもとより、中堅・大企業等も含めた事業者の業況を積極的に把握し、資金繰りの相談に丁寧に対応するなど、引き続き、事業者に寄り添ったきめ細かな支援を徹底すること。また、融資判断に当たっては、それぞれの事業者の現下の決算状況・借入状況や条件変更の有無等のみで機械的・硬直的に判断せず、事業の特性、各種支援施策の実施見込み等も踏まえ、経営改善につながるよう、丁寧かつ親身に対応すること。特に、各種補助金等の支給までの間に必要となる資金や、賃上げや生産性向上投資等の成長に要する資金等については、引き続き事業者の立場に立った柔軟な資金繰り支援を行うこと。
 既往債務の条件変更や借換え等については、官民金融機関が事業者から条件変更等の申込みを受けた場合のこれまでの応諾率が99.2%(令和2年3月10日から令和6年9月末までの実績)であることも踏まえつつ、引き続き、申込みを断念させるような対応を取らないことは勿論のこと、事業者に寄り添った迅速かつ柔軟な対応を継続すること。また、金利見直しの協議に際しては、金融機関が顧客企業に十分に説明を行うことはもとより、事業者の実情を踏まえ、必要に応じて適切な返済計画のアドバイスを行うこと。

以 上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)

監督局総務課監督調査室(内線3313、3862)

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