令和7年11月27日
各業界団体等代表者 殿
- 内閣総理大臣
- 高市 早苗
- 財務大臣兼金融担当大臣
- 片山 さつき
- 厚生労働大臣
- 上野 賢一郎
- 農林水産大臣
- 鈴木 憲和
- 経済産業大臣
- 赤澤 亮正
金融の円滑化に向けた取組及び事業者支援の徹底について
官民の金融機関等におかれましては、累次にわたる要請等も踏まえ、事業者支援に着実に取り組んでいただいておりますことに感謝申し上げます。
足元では、物価高や人手不足等への対応といった従来の経営課題への対応に加え、米国の関税措置の影響も受け、依然として厳しい状況に置かれている事業者が数多く存在します。そのため、金融機関においては、より一層金融仲介機能を発揮し、資金需要の高まる年末、年度末に向けて、事業者の資金繰りに重大な支障が生じることのないように万全を期すとともに、事業者に寄り添いながら一歩先を見据えた経営支援を講じることが期待されます。
こうした中、政府においては、生活の安全保障・物価高への対応、危機管理投資・成長投資による強い経済の実現、防衛力と外交力の強化を柱とした「「強い経済」を実現する総合経済対策」を11月21日に閣議決定いたしました。また、金融庁においては、本年中に「地域金融力強化プラン」を策定し、地域における人口減少・少子高齢化その他の環境変化の中で、地域金融機関が地域経済に貢献する力(=「地域金融力」)を十分に発揮するための関連施策を今後強力に推し進めていく予定としています。
これらの一連の状況を踏まえ、今般、以下の事項について改めて要請いたしますので、貴機関、貴協会会員金融機関等の経営層は勿論のこと、現場の第一線の職員等まで周知・徹底をお願いいたします。
記
1.資金繰り支援、条件変更・借換えに係る対応
近年、コロナ禍からの社会経済活動の正常化が進む一方で、物価高や人手不足に関連した倒産が増加傾向にあることに加え、米国の関税措置の影響により、取引先からの受注が減少したという声や資金繰りに支障を来したという声もこれまでに聞かれるなど、依然として厳しい状況に置かれている事業者も数多く存在する。
こうした状況にある中で、これから一層資金需要の高まる年末、年度末を迎えることを踏まえ、金融機関においては、事業者の資金繰りに重大な支障が生じることのないよう、以下の対応を徹底すること。
事業者への資金繰り支援については、改めて、中小企業や小規模・零細企業、中小企業組合はもとより、中堅・大企業等も含めた事業者の業況を積極的に把握し、資金繰りの相談に丁寧かつ親身に対応するなど、引き続き、事業者に寄り添ったきめ細かな支援を徹底すること。融資判断に当たっては、それぞれの事業者の現下の決算状況・借入状況や条件変更の有無等のみで機械的・硬直的に判断せず、事業の特性、各種支援施策の実施見込み等も踏まえ、経営改善につながるよう、丁寧かつ親身に対応すること。各種補助金等の支給までの間に必要となる資金や、賃上げや生産性向上投資等の成長に要する資金等についても、柔軟な支援を講じること。こうした際、事業者の実情に応じて、「協調支援型特別保証」(プロパー融資を同時実行する場合等に保証料負担を低減)、「経営力強化保証」(認定経営革新等支援機関の支援がある場合に保証料負担を低減)、今後新たに措置する予定の「モニタリング保証」(金融機関等が定期的なモニタリングを実行する場合に保証料負担を低減)等の施策も活用すること。
日本政策金融公庫等においては、事業者の実情に応じて、今後金利引下げを予定している「セーフティネット貸付(米国関税対策)」等の活用を促進すること。
既往債務の条件変更や借換え等については、引き続き、申込みを断念させるような対応を取らないことは勿論のこと、事業者に寄り添った迅速かつ柔軟な対応を継続すること。また、金利見直しの協議に際しては、金融機関が顧客企業に十分に説明を行うことはもとより、事業者の実情を踏まえ、必要に応じて適切な返済計画のアドバイスを行うこと。こうした際、事業者の実情に応じて、経営改善・再生計画の策定を促す「経営改善サポート保証(経営改善・再生支援強化型)」(今後申込受付期限を延長予定)や小規模事業者向けの「小口零細企業保証」等の施策も活用すること。
2.「地域金融力強化プラン」を踏まえた対応
地域における人口減少・少子高齢化その他の環境変化の中で地域の持続的な発展を実現するためには、その主たる担い手として期待される地域金融機関が地域経済に貢献する力(=「地域金融力」)を精力的に発揮していくとともに、適切な経営管理・業務運営を確保しつつ、その役割を十分に発揮できるための環境整備を併せて進めていくことが不可欠であり、こうした考え方の下、金融庁において、本年中に「地域金融力強化プラン」を策定予定である。
金融機関においては、本プランの趣旨も踏まえ、支援機関とも連携しながら、地域の持続的な発展の実現や事業者の一層の成長に向けて引き続き取り組むこと。
3.個別の実情に応じた事業者支援
令和6年の「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」(同年1月31日付改正、4月1日適用開始)の改正等も踏まえ、金融機関においては、事業者の抱える経営課題への対応を先送りせず、一歩先を見据えた早期の事業者支援に取り組むことが重要であり、引き続き、他の金融機関や中小企業活性化協議会、事業承継・引継ぎ支援センター、よろず支援拠点等の支援機関等といった関係者間での連携の下、個別の実情に応じたきめ細やかな事業者支援に取り組むこと。その際、事業者の実情に応じて、以下に一例として掲げるような事項も踏まえて対応すること。
なお、自身のメイン先である事業者に対しては勿論のこと、コロナ禍において実質無利子・無担保融資により新たに取引先となった事業者や残高メイン先でなくなるなど融資シェアが低下した事業者等に対しても支援がおろそかなものとならないよう、自身の経営資源の状況等を踏まえつつ、他の金融機関や支援機関等と早期から密接に連携しながら、メイン・非メイン先の別や、既存顧客・新規顧客の別、プロパー融資・信用保証付融資の別等にかかわらず、事業者に寄り添った継続的な伴走支援に努めること。
「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」については、令和4年の策定から令和6年度までに計378件の活用実績が積み重なり、中小企業の事業再生等の現場に着実に浸透している。係る活用実績や足元の事業環境等も踏まえ、今後、「中小企業の事業再生等に関する研究会」において、地域経済の維持・成長のためにも事業再生が重要な役割を果たすという理念の下、本ガイドラインの実効性を一層強化するための検討を開始する予定である。
こうしたことも踏まえながら、引き続き、本ガイドラインの趣旨・内容について、営業現場を含めた一層の浸透・定着を図りつつ、円滑な事業再生等に向けた主体的な支援に努めること。
中小企業活性化協議会については、令和6年度の相談件数が8,761件、再チャレンジ支援完了件数が1,340件と、いずれも過去最大の実績となっており、中小企業における事業再生や再チャレンジ等のニーズが増加傾向であることが窺える。こうした中で、本年3月には、「経営者保証に関するガイドライン」に沿った債務整理を一層円滑に進めるための「再チャレンジ支援制度」を拡充した他、今後、「早期経営改善計画策定支援事業(Vアップ事業)」については簡易デューデリジェンス費用や伴走支援費用等の補助対象への追加、「経営改善計画策定支援事業(405事業)」についてはスポンサー支援を図る場合におけるフィナンシャル・アドバイザー費用等の補助対象への追加をそれぞれ予定しているなど、一層の支援策の充実を図る予定である。
引き続き、事業者の実情に応じてこうした施策も活用しつつ、自身のコンサルティング機能を発揮して、事業者の経営改善や事業再生、再チャレンジ支援に努めること。
M&A・事業承継支援については、「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」(令和6年8月30日付改正、10月1日適用開始)や「中小M&Aガイドライン」(同年8月30日に第3版に改訂)等を踏まえ、M&A・事業承継ニーズに着実に応えるための支援態勢整備や、経営者保証の適切な取扱い等を推進している。
引き続き、係る監督指針やガイドラインの趣旨・内容について、営業現場を含めた一層の浸透・定着を図るとともに、事業者の実情に応じて「事業承継・M&A補助金」等の施策も活用しつつ、予兆管理も含めた主体的なM&A・事業承継支援に努めること。
事業者の賃上げを後押しする環境整備や成長投資の促進といった中小企業の「稼ぐ力」の強化については、引き続き、事業者の実情に応じて、プッシュ型での伴走支援や、売上高100億円を目指して「100億宣言」を行う中小企業の投資を支援する「成長加速化補助金」の活用等も通じて、意欲的な経営者による取組の支援に努めること。
4.経営者保証に依存しない融資
経営者保証に依存しない融資の促進に向けて、令和4年12月23日付で政府より発出した要請文「個人保証に依存しない融資慣行の確立に向けた取組の促進」及び同日付で策定した「経営者保証改革プログラム」の趣旨・内容について、引き続き、営業現場を含めた一層の浸透・定着を図ること。
加えて、「個人保証に依存しない融資慣行の確立に向けた取組の促進」や「経営者保証改革プログラム」に基づく取組が金融機関や事業者の着実な行動変容につながっていることを踏まえ、係る行動変容を一層拡大していくべく、今後、「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」等を改正し、既存の個別保証契約についても経営者保証の必要性の説明・記録の対象に追加する予定であり、民間金融機関においては、既存の個別保証契約についても、自身の経営資源の状況や事業者とのリレーション強化による裨益等に照らし合わせて、事業者からの問い合わせや事業者に対する定期的な業況確認の機会等も活用しながら、今後改正予定の監督指針に沿った説明・記録を対応可能な範囲で行うこと。
また、信用保証付融資に関しては、信用保証協会と民間金融機関とが連携して、事業者のニーズに応じて、「事業者選択型経営者保証非提供制度」の活用を積極的に検討すること。
5.住宅ローン等
住宅ローンやその他の個人ローンについて、丁寧な相談対応や顧客の状況、ニーズに応じた返済猶予等の条件変更の迅速かつ柔軟な対応を行い、生活・暮らしの支援に努めること。
6.その他政策課題への対応
自然災害等の影響により、住宅ローン等の既往債務の弁済が困難となった個人の生活や個人事業主の事業の再建に向けては、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」の活用も含め、被災した個人や個人事業主に寄り添った支援に努めるとともに、事業者の資金繰り支援に際しては、「セーフティネット保証4号」等の信用保証制度や、日本政策金融公庫等による「令和6年能登半島地震特別貸付」、「能登半島地震復興支援ファンド」等の施策も活用しつつ、きめ細かい対応に努めること。
係る支援対応に万全を期すべく、平時より、事業継続計画の点検や見直しをはじめ、災害時に向けた備えを着実に実施すること。
令和8年1月1日に「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律(令和7年法律第41号)」が施行され、係る施行日以降に発注する「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(昭和31年法律第120号)の対象取引に関しては、手形払いが禁止されるとともに、支払期日を超える満期を設定した一括決済方式又は電子記録債権を使用した支払いは原則として支払遅延の禁止に該当することとなる。
こうしたことを踏まえながら、同法の適用対象とならない取引を含め、サプライチェーン全体での支払い手段の適正化の推進に向けて、手形等のサイトの短縮に取り組む事業者からの資金繰り支援の相談に丁寧かつ親身に応じるとともに、事業者の業況や資金需要等を勘案し、事業者に寄り添った柔軟かつきめ細かな資金繰り支援に努めること。
以上
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