令和7年12月5日
金融庁
住商リアルティ・マネジメント株式会社に対する行政処分について
住商リアルティ・マネジメント株式会社(東京都中央区、法人番号1010001112429。以下「当社」という。)に対する検査の結果、法令違反が認められたことから、証券取引等監視委員会より行政処分を求める勧告
が行われた。(令和7年11月11日付)
当該勧告を受けたことから、本日、当社に対し、金融商品取引法第51条の規定に基づき、行政処分を行った。
1.勧告の事実関係
投資法人のために忠実に投資運用業を行っていない状況
当社は、SCリアルティプライベート投資法人(東京都中央区、法人番号9010005022807、以下「本投資法人」という。)との間で本投資法人の資産の運用に係る委託契約を締結しているところ、当社が当社の親会社から本投資法人に取得させた不動産(以下「本物件」という。)について、その不動産鑑定評価を依頼するに際し、以下のとおり、利益相反管理の観点から不適切な行為が認められた。
(1) 不適切な不動産鑑定業者選定プロセス
当社は、利益相反取引の弊害を排除し、投資家の利益を保護することを目的として、内規において、親会社等の利害関係者が保有する不動産を本投資法人に取得させる場合の価格は、投資信託及び投資法人に関する法律第201条第1項の規定に基づく不動産の鑑定評価の額を物件取得額の上限としている。また、不動産鑑定評価の取得に当たっては、その中立性・客観性を担保するため、業界内における不動産証券化に係る受注実績等の客観的な基準に基づき、社内稟議を経て不動産鑑定業者を選定した後、依頼した不動産鑑定業者へ物件資料を提供することによって不動産鑑定評価書を取得するとしている。
こうした中、当社は、複数の不動産鑑定業者に「利回り感」や「更地価格」等のヒアリングを行い、当該ヒアリングを踏まえた本物件の価格水準(自己査定)が、親会社から提示された他社の取得希望価格とする価格(以下「親会社からの提示価格」という。)に満たないことを把握すると、上記内規が定める方法に反し、社内稟議により不動産鑑定業者を選定する前の段階から、これらとは別の不動産鑑定業者(以下「当該不動産鑑定業者」という。)に物件情報を提供して概算鑑定額を聴取した。聴取の結果、当該概算鑑定額が上記自己査定額を上回ることを把握すると、当社は当該不動産鑑定業者へ依頼することを前提として、社内稟議の外形を整えたうえで当該不動産鑑定業者を選定した。これは、親会社からの提示価格を満たす不動産鑑定評価額を得ることを目的とした不適切な不動産鑑定業者選定プロセスであると認められる。
(2) 不動産鑑定業者への不適切な働きかけ
当社は、当該不動産鑑定業者から聴取した概算鑑定額が上記自己査定額を上回りつつも親会社からの提示価格に満たないことを把握した。
そこで、当社は、現行の賃貸借契約が終了する将来の時点における使用方法について、現況と異なる用途の図面を作成のうえ当該不動産鑑定業者へ提供し、同図面に沿った物件利用を想定するよう働きかけを行った。その結果、当社は上記(1)において聴取した概算鑑定額を更に上回る不動産鑑定評価額を取得した。
こうした行為は、一般的に許容される不動産鑑定業者への情報提供(現況図面、現行賃料及び物件管理費等)や意見交換(客観的な情報に基づいた将来の賃料上昇や空室率の見込み等)を逸脱した恣意的なものであり、不動産鑑定業者への不適切な働きかけであると認められる。
上記のとおり、当社は、親会社からの提示価格を踏まえて、本物件の取得を目的として必要な不動産鑑定評価額の水準を満たすために、その目的に沿った対応が期待される不動産鑑定業者を探索し、これを選定したうえ、当該不動産鑑定業者に対して不適切な働きかけを行い、そのうえで算定された不動産鑑定評価額を基準に物件取得を行っている。これは、利害関係者以外の者による不動産鑑定評価により利益相反取引の弊害を排除し、投資家の利益を保護しようとする内規の趣旨を損ねるものであって、本投資法人のために忠実に投資運用業を行っていない状況にあり、投資家保護上重大な問題があると認められる。
上記行為は、利害関係者である親会社からの物件取得にあたり、恣意性の排除が特に重要な不動産鑑定業者の選定プロセスにおいて、コンプライアンス室のけん制機能が十分に発揮されていなかったこと、また、当社の役員が親会社からの出向者で占められている中、当社の役員が本物件の取得に必要以上に介入していたことに起因するものであり、当社の利益相反管理態勢は著しく不十分であると認められる。
このように、当社は、本投資法人のために忠実に投資運用業を行っていないことから、金融商品取引法第42条第1項に定める「忠実義務」に違反するものと認められる。
2.行政処分の内容
業務改善命令(金融商品取引法第51条)
(1) 本件に関する投資法人の投資主に対し、今回の行政処分の内容を十分に説明し、適切な対応を行うこと。
(2) 投資法人資産運用会社として、公正かつ適切な業務運営を実現するため、法令等遵守に係る経営姿勢の明確化、経営陣による責任ある法令等遵守態勢及び内部管理態勢の構築、並びに、これらを着実に実現するための業務運営方法を見直すこと。
(3) 本件発生原因を究明したうえで、投資運用業に係る意思決定の妥当性を検証するための社内プロセスの明確化など、利益相反管理について十分な態勢を構築することを含め、具体的な再発防止策を策定すること。
(4) 今回の処分を踏まえた経営陣を含む責任の所在の明確化を図ること。
(5) 上記(1)から(4)までの対応状況について、令和8年1月 16 日までに書面で報告すること。
(6) 上記(5)の対応状況について、四半期経過後 15 日以内を期限として、当面の間、報告すること。
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