令和8年3月13日
金融庁
「FinTech実証実験ハブ」支援決定案件の実験結果について
金融庁では、フィンテックを活用したイノベーションに向けたチャレンジを加速させる観点から、平成29年9月21日、フィンテック企業や金融機関等が、前例のない実証実験を行おうとする際に抱きがちな躊躇・懸念を払拭するため、「FinTech実証実験ハブ」を設置しました(FinTech実証実験ハブの設置について)。
今般、本スキームにおける支援を決定した第10号案件(令和7年6月6日公表)の実証実験が終了し、その実験結果について、お知らせします。
実験概要
(実験内容)
本実証実験では、暗号資産、電子記録移転有価証券表示権利等及び電子決済手段(以下「暗号資産等」という。)を模したトークンを用いて、金融機関等による本人確認(KYC)が行われたことが示されているアドレス(に紐づくウォレット)を保有する顧客等に対するAMM(※)機能を用いたサービスの提供並びにマネー・ローンダリング及びテロ資金供与に関するリスク低減措置等を検証。
※ AMM(Automated Market Maker)とは、一般的に、スマートコントラクト(自動執行プログラム)が流動性プール(交換する暗号資産のペア)に預けられている暗号資産の量から取引価格(交換レート)を自動的に計算する仕組みをいう。
(実験期間)
令和7年6月から9月まで
(申込者)
- SBI VCトレード株式会社
- ソニー銀行株式会社
- 株式会社大和証券グループ本社
- 野村ホールディングス株式会社
- ビットバンク株式会社
- みずほ信託銀行株式会社
- 三井住友信託銀行株式会社
- 三菱UFJ信託銀行株式会社
- KPMGジャパン
結果概要
本実証実験では、以下の前提及び実施手順に基づき、金融機関がマネー・ローンダリング及びテロ資金供与(ML/FT)対策を行った上で、顧客等に対してAMM機能を用いたサービス(流動性提供(※1)及びスワップ(※2))を提供することが可能か等を検証した。
※1 任意のトークン2種を流動性プールに預け入れる行為。
※2 保有するトークンと流動性プールにあるトークンを交換する行為。
(前提)
- 本実証実験では、特定の金融機関によりKYC済とする措置が行われたアドレスのみがトークンの預入れやトークンの交換が可能となるAMM(以下「特定AMM」という。)を使用する。また、特定AMMにおいては、特定の金融機関により発行された移転制限付トークン(暗号資産等を模したトークン)のみが流動性プールを構成することができることとする。
- 本実証実験で使用する特定AMMは、ブロックチェーン上に展開した時点以降は変更されず、開発事業者又は第三者による改変は一切できないこととする。
(実施手順)
- 金融機関のアドレスをブロックチェーン上のスマートコントラクトに登録する。これにより、当該アドレスから、後述のKYCトークンを付与することが可能となる。
- 1の登録をした金融機関のうち暗号資産等の交換又は売買の媒介を行うことができるもの(暗号資産交換業者、第一種金融商品取引業者又は電子決済手段等取引業者である金融機関)(以下「仲介型金融機関」という。)が、特定の条件を満たしたAMMに対して、特定AMMであることを示すトークン(以下「認証トークン」という。)を付与する。
- 仲介型金融機関が顧客のKYCを行った上で、仲介型金融機関が提供するアンホステッドウォレット等のアドレスにKYC済であることを示すトークン(以下「KYCトークン」という。)を付与する。
- 1の登録をした金融機関のうち暗号資産等の発行に係る登録を有するもの(以下「発行型金融機関」という。)がKYC済アドレス間でのみ移転可能な移転制限付トークンを、KYC済の顧客又は仲介型金融機関(以下「顧客等」という。)のアドレスに送付する。
- KYC済の顧客等が移転制限付トークンを用いて特定AMMを利用する。
(本実証実験の結果)
上記実施手順の中で、以下の技術的仕様が機能していることを確認した。
- 顧客等に対してKYCトークンを付与した仲介型金融機関が当該トークンの無効化又は一時停止(以下「無効化等」という。)を行うことにより、当該顧客等による移転制限付トークンの授受及び特定AMMへの当該トークンの預入れや特定AMMでの当該トークンの交換ができなくなること。
- KYCトークンに、KYC実施時点での顧客ごとのリスクに応じた有効期限を設定し、期限経過後、当該トークンを保有する顧客等による移転制限付トークンの授受及び特定AMMへの当該トークンの預入れや特定AMMでの当該トークンの交換ができなくなること。
- 特定AMMに対して特定AMMであることを示すトークンを付与した仲介型金融機関が当該トークンの無効化等を行うことにより、当該AMMからの移転制限付トークンの移転ができなくなること及び顧客等による特定AMMへの当該トークンの預入れや特定AMMでの当該トークンの交換ができなくなること。
- 発行型金融機関が自ら発行した移転制限付トークンの無効化等を行うことにより、顧客等による当該トークンの授受及び特定AMMへの当該トークンの預入れや特定AMMでの当該トークンの交換ができなくなること。
- 実施手順1の登録をしていない者によるKYCのみでは顧客等による移転制限付トークンの授受ができないこと及び実施手順1の登録をしていない者が発行したトークンを顧客等が用いる場合、当該顧客等による特定AMMへの当該トークンの預入れや特定AMMでの当該トークンの交換ができなくなること。
(法的論点の整理)
本実証実験の過程で、金融庁から、以下の点を回答した。
- ブロックチェーンへの展開後の改変が不可能なAMMを開発し、ブロックチェーンに展開する行為に関して、本実証実験では、暗号資産等ではなく、それを模したトークンを用いていることから暗号資産交換業には該当しない一方、いわゆるDEXのプロトコルの開発・設置は、利用者に暗号資産の交換等を可能とし、一定の場合には暗号資産交換業に該当する余地があり、また、金融審議会暗号資産制度に関するワーキング・グループにおいて、その技術的性質に合わせた過不足のない規制のあり方について、今後、各国の規制やその運用動向も注視しながら、継続して検討を行うことが適当であるとの議論がなされていることに留意が必要である。
- 以下の措置を講ずることは、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドラインで求められるリスク低減措置に照らして、リスクを低減させる方向に作用しうるものと考えられる。
- 金融機関が顧客に対しKYCを行い、当該顧客の金融機関の提供するアンホステッドウォレットにKYCを行ったことを示すKYCトークンを送付すること。
- KYCトークンに有効期限を設定すること及びKYC時点で相対的にML/FTリスクが高いと評価された場合等に他の顧客と比較して短い有効期限を設定すること。
- (当該アンホステッドウォレットのML/FTリスクが高まった場合には)KYCトークンを無効化することにより、アンホステッドウォレットからの移転制限付トークンの移転を停止すること。
- 金融機関がAMMアドレスに認証トークンを送付すること。
- AMM上で取り扱われる移転制限付トークンがKYC済ウォレット間でのみ移転が可能となるものであること。
- (当該AMMのML/FTリスクが高まった場合には)認証トークンを無効化することにより、AMMからの移転制限付トークンの移転を停止することが可能なものであること。
- 金融機関が発行する移転制限付トークンについて、KYC済アドレス間でのみ移転可能なものとし、不適切な可能性のあるアドレス(KYCされていないアドレス)への当該トークンの移転が防止可能であること。
- 金融機関が発行する移転制限付トークンについて、ML/FTリスクが高まったと評価した場合等に当該移転制限付トークンの無効化すること。
(関連する法的論点)
なお、本実証実験の過程で検証した論点以外にも、検討すべき論点が確認された。AMMに関する事業を行う上では、例えば以下のような論点を検討する必要がある。
- AMMを利用する者がAMMでトークンのスワップを行うことの暗号資産又は電子決済手段の売買又は交換への該当性。
- AMMを利用する者がAMMでセキュリティトークンのスワップを行うことの有価証券の売買への該当性。
- 開発事業者その他の者がAMMのユーザー・インターフェースを提供することの第一種金融商品取引業、暗号資産交換業、電子決済手段等取引業への該当性。
- 開発事業者がブロックチェーンへの展開後に改変が可能なAMMを開発し、ブロックチェーンに展開すること及びブロックチェーンへの展開後に当該AMMを改変することの第一種金融商品取引業、暗号資産交換業、電子決済手段等取引業への該当性。
- AMMを利用する者がAMMの流動性プールに流動性提供を行うことの第一種金融商品取引業、暗号資産交換業、電子決済手段等取引業への該当性。
- AMMの流動性プールにプールされる暗号資産等の選定を含む、AMMの運営に関与する行為の第一種金融商品取引業、暗号資産交換業、電子決済手段等取引業への該当性。
- 既存の暗号資産等を表章するものとして移転制限を付して作成されたトークンと当該既存の暗号資産等との同一性(当該トークンが当該既存の暗号資産等と異なる暗号資産等と評価されるか否か)。
- 電子記録移転有価証券表示権利等をパブリック型ブロックチェーン(※)で取り扱う際に、金融商品取引業者において整備すべき態勢。
※ 確立した定義は存在しないものの、ここでは、参加主体に制限を設けることなく、何人でも取引の送信・検証・ノード参加が可能であり、中央管理者を置かずにブロックチェーン台帳の正当性を維持する公開型のブロックチェーンを念頭に置く。
- AMMに関する事業における銀行の役割が銀行業務の範囲として許容される行為に該当するか。
今後、こうした金融機関ごとのML/FTリスクを含めた様々なリスクに応じたリスク低減措置を講じた上でサービスを提供することにより、金融システム全体の健全性が維持されることが期待される。
- ※参考
本実証実験の概要
- お問い合わせ先
-
金融庁 Tel 03-3581-9510
総合政策局リスク分析総括課 暗号資産・ブロックチェーン・イノベーション参事官室/イノベーション推進室/FinTech実証実験ハブ担当


