令和8年7月24日
金融庁
「FinTech実証実験ハブ」支援決定案件の実験結果について
金融庁では、フィンテックを活用したイノベーションに向けたチャレンジを加速させる観点から、平成29年9月21日、フィンテック企業や金融機関等が、前例のない実証実験を行おうとする際に抱きがちな躊躇・懸念を払拭するため、「FinTech実証実験ハブ」を設置しました(FinTech実証実験ハブの設置について)。
今般、本スキームにおける支援を決定した第13号案件(令和8年2月27日公表)の実証実験が終了し、その実験結果について、お知らせします。
実験概要
(実験内容)
本実証実験では、暗号資産等を対象としたマネー・ローンダリング対策に関し、民間事業者が共同して情報連携を行う新たな枠組みの有効性や法的論点を検証した。
(実施期間)
令和8年3月から令和8年5月まで
(申込者名)
- 株式会社日立製作所
(参加金融機関等)
- 株式会社あおぞら銀行
- JPYC株式会社
- GMOコイン株式会社
- Chainalysis Japan株式会社
- 株式会社DCP
- Digital Platformer株式会社
- 日本電気株式会社
- 日本ブロックチェーン基盤株式会社
- 株式会社finoject
- ビットバンク株式会社
- 楽天ウォレット株式会社
- Laser Digital Japan株式会社
- 有限責任あずさ監査法人(支援決定後に参加)
- 株式会社デジタルアセットマーケッツ(支援決定後に参加)
- 企業名非公表3社
結果概要
(本実証実験の内容)
暗号資産及び電子決済手段(以下「暗号資産等」という。)は、国境を越えた瞬時の移転が可能である一方、ブロックチェーンアドレス(以下「アドレス」という。)のみでは保有者の身元が特定できない。
本実証実験では、このような課題を踏まえ、暗号資産交換業者が保有する、詐欺等に関連していることが疑われるアドレス、トランザクション情報、リスクカテゴリ、リスクスコア、検知理由等を暗号資産交換業者等の間で共有するとともに、共同で情報収集・分析を行うことで、各暗号資産交換業者等におけるマネー・ローンダリング対策等の高度化・効率化を行い得るかを検証した。
本実証実験で想定する関係者と主な役割は以下のとおりである。
| 関係者 | 主な役割 |
|---|---|
| 暗号資産交換業者及び電子決済手段を発行する資金移動業者 | 後述のモニタリングシステムを使用して、トランザクション・顧客・自社発行の暗号資産等に関するリスク評価を行い、必要に応じて調査を行った上で、犯罪収益移転防止法上求められている疑わしい取引の届出、取引制限、電子決済手段の凍結・消却等の対応を行う。必要に応じて調査を後述のAML共同センターに委託する。 |
| モニタリングシステム提供者 | 暗号資産交換業者間で共有される情報、商業的に入手可能な情報、公開情報等に基づき、特定のアドレスについてリスク評価を行い、暗号資産交換業者及び電子決済手段を発行する資金移動業者(以下「暗号資産交換業者等」という。)に提供する。 |
| AML共同センター | モニタリングシステムで高リスクと評価されたトランザクション等について、暗号資産交換業者等の個別の委託に基づき、調査を行い、暗号資産交換業者等に報告する。 |
| 技術提供者等 | 後述の取引行動類似度分析技術や制裁・犯罪関連性等に関する情報、制度的知見など、本実証実験の実施に資する技術・情報を提供する。 |
リスク評価に用いる情報の概要は、以下のとおりである。
| 概要 | 詳細 |
|---|---|
| 疑わしいアドレス | 詐欺等に関連していることが疑われるアドレス。 |
| トランザクション情報 | 上記疑いの根拠となるトランザクションに関する基本的な情報。トランザクションハッシュ、チェーン種別、トークン種別、取引日時、移転方向(送金・着金の別)等からなる。 |
| リスクカテゴリ | 上記疑いの分類。制裁・犯罪関連、詐欺関連、取引行動類似度等。 |
| リスクスコア | 上記疑いの程度。リスクカテゴリによって異なり、例えば、緊急・高・中・低の4段階。 |
| 検知理由 | その他上記疑いの根拠に関する補助的な情報。リスクカテゴリによって異なり、例えば、暗号資産交換業者等が把握した疑わしいアドレス等との一致、詐欺関連スコア、取引行動類似度等。 |
| 情報源 | 暗号資産交換業者等の名称(暗号資産交換業者等間で共有される情報の場合)、サービス名(商業的に入手可能な情報の場合)、公開情報等。 |
| 確認日時 | 上記疑いを確認した日時。 |
リスク評価においては、以下の評価方法を組み合わせた。
| 概要 | 詳細 |
|---|---|
| 事業者間共有情報チェック | 暗号資産交換業者等が把握した疑わしいアドレスとの照合を行う。 |
| 制裁・犯罪関連性チェック |
制裁対象主体、犯罪関連アドレス、高リスクサービス(例えばダークネットマーケット、ミキシングサービス、詐欺サイト)等との関わり合いを検知する。 |
| 詐欺関連アドレス分析 | 詐欺利用・被害が疑われるアドレスや関連パターンを検知する。 |
| 取引行動類似度分析 | 過去に確認された不正取引の行動パターンとの類似性を確認する。 |
| 使い捨てアドレスチェック等 | 短期利用、反復生成等の兆候を確認する。 |
モニタリングシステムについては、以下の3つの機能を検証した。
| 概要 | 詳細 |
|---|---|
| 事後モニタリング | 暗号資産交換業者等が、特定のアドレスについて継続的にリスク評価を行えるようにする。例えば、暗号資産交換業者が、継続的な顧客管理(CDD)や取引モニタリングに使用する。 |
| オンライン即時評価 | 暗号資産交換業者等が、トランザクション実行前に移転先アドレス等のリスクを確認できるようにする。例えば、暗号資産交換業者が、暗号資産の移転(出庫)時の移転先アドレスのリスク評価に使用する。 |
| トークンモニタリング | 電子決済手段の発行者が、自らが発行した電子決済手段の保有・移転状況を把握できるようにする。例えば、電子決済手段を発行する資金移動業者が、犯罪に利用された疑いのある電子決済手段の凍結・消却に使用する。 |
(本実証実験の結果の概要)
本実証実験を通じて、以下のことが確認された。
- 第1に、暗号資産交換業者等の間で、疑わしいアドレス、トランザクション情報、リスクカテゴリ、リスクスコア、検知理由等を共有することで、個社単位では把握しにくい疑わしいアドレス情報やリスクの兆候を、業界横断で活用し得る可能性が確認された。
- 第2に、リスト照合型の処理と機械学習(AI)型の処理を組み合わせることにより、既知の制裁・犯罪関連主体等の検知に加え、既知リストに載っていないリスク兆候を補完的に把握し得ることが確認された。
- 第3に、事後モニタリング、オンライン即時評価、トークンモニタリングの各機能について、それぞれ一定の実務的な運用可能性が確認された。
- 第4に、モニタリングシステムのアラート(検知結果)だけでは、疑わしい取引の届出、取引制限、電子決済手段の凍結・消却等の判断に用いる情報としては十分でない場合があり、資金の流れ、公開情報、関連アドレス等の追加的な調査を要する場合があることが確認された。
(法的論点の整理等)
本実証実験の過程で、金融庁は、以下のとおり助言を行った。
- 疑わしい取引の届出や、暗号資産等の取引制限等は、特定事業者がその責任において行う必要があり、モニタリングシステムのアラートにのみ依存することがないようにする必要がある。そのためには、機械学習モデルを使用する場合を含め、アラートの根拠が分かるようにする必要がある。
- 誤検知により顧客等の権利利益が不当に害されることがないよう、例えば、モニタリングシステムの設計や情報共有ルールの設定に当たっては、データの関連性、正確性、最新性等を確保するための条件等を設けることや、訂正、更新、削除、権利行使等の手続を整備することを検討する必要がある。
また、金融庁は、個人情報保護委員会の助言を踏まえ、以下のとおり助言を行った。
- 同意に基づき個人データの第三者提供を行おうとする場合、同意は、提供時点で存すれば足り、有効な同意に基づく限り、過去に収集した個人データの第三者提供も認められる。
- 財産保護例外(個人情報保護法27条1項2号)に基づき個人データであるアドレス等の第三者提供を行う場合、当該提供が財産保護に必要かどうかは、個人データの提供により本人が被る不利益と、当該提供を行うべき必要性等を踏まえ、個別具体的な事例に即して、総合的な利益衡量により判断する必要がある。本実証実験における第三者提供について言えば、本人が詐欺等に関連している蓋然性、提供されるデータ及び提供先(受領者)の範囲の合理性等を考慮して判断する必要があり、その際、上記2の取組みは、当該判断の考慮要素となりうる。一方、同意取得困難性については、連絡手段、本人との関係、緊急性等を踏まえ、合理的な手段を尽くしても応答がないと言える場合には、同意取得困難と評価しうる。また、本人が詐欺等に関与していることが合理的に疑われ、同意を取得することにより、犯罪収益の隠匿等を誘発するおそれがある場合には、同意取得困難と評価しうる。
申込者らは、これらの助言等を踏まえ、共有する情報の範囲、共有の条件、データガバナンス(データ品質の確保、管理責任者の明確化、保存期間、訂正・削除等の手続等)、疑わしいアドレスの検知ロジックの継続的改善、アクセス制御・権限管理、監査ログの収集・分析、苦情・異議申立て等への対応手順等を検討し、法的検討及びリスク評価(プライバシー影響評価)を行った上で、社内規則、契約、運用ルール等を整備する必要があることを確認した。
今後、暗号資産等の分野においても、「共助」によるマネー・ローンダリング対策等の高度化・効率化が期待される。
- ※参考
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本実証実験の概要
- お問い合わせ先
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金融庁 Tel 03-3581-9510
総合政策局リスク分析総括課 暗号資産・ブロックチェーン・イノベーション参事官室/イノベーション推進室/FinTech実証実験ハブ担当

