政策評価に関する有識者会議議事要旨(平成30年1月31日)

(注)本会議は「政策評価に関する有識者会議運営要領」第2条第2項に基づき、金融行政において外部の意見や提言を継続的かつ的確に反映させるため、金融行政として取り組むべき重要な課題となる事項について議論を行うために開催したもの。

1.日時:

平成30年1月31日(水曜日)8時00分~10時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館5階 507号会議室

3.議事要旨:

金融庁のこれまでの取組みを含め、有識者より意見等を頂きたい金融行政上の課題等に関して意見交換を行った。主な発言のポイントは以下のとおり。

(1)ガバナンス・人事改革のあり方

  • 人事改革は、誰が改革を行うか、誰が人事評価をするか、職員が本気だと思うか、の3点がポイントになる。

  • 人事改革の問題は民間でも同じである。20年前までは、経営の重点も、同質的・連続的にビジネスを継続していくことにあり、意思決定もボトムアップで良かった。現在のリーダーはトップダウンで組織を率いていくことが求められるが、従来型の組織で昇進してきた人には、自身で決断するといった能力が身についていない。

  • 外部人材の活用に当たっては、外部人材が持つノウハウが金融庁に蓄積されるようにする必要がある。外部人材が出向後に金融庁での経験を活かして活躍している一方、金融庁には何も残らない結果となってしまっては本末転倒。

(2)構造的な課題の下での将来の銀行業等の姿

  • 地域銀行は資産運用など様々な事業に取り組んでいるが、必ずしも競争力は高くない。漫然とした銀行同士の統合ではなく、地域銀行が本来専門性を求められるような事業について、リソースを結集するための統合が必要である。

  • 地方の借り手(中小企業経営者)に対しても、自身で比較して良い銀行を選べるようになる金融経済教育を実施する必要。

  • 金融仲介業の低収益の根本的な問題は、資本が希少価値を失っているということである。資本を投下した分だけの利益を上げられない状況にあり、その中で、金融機関がどのように付加価値を出していくかということは難しい問題である。

  • 将来の銀行の姿は、サードパーティと連携して顧客に最適なサービスを提供していく形になるのではないか。地域企業を活用することで、地域産業を育成していくという共存共栄の姿勢になる。

  • トランザクションバンキングの業務がAIに取って代わられ、薄利になる一方、収益を生み出すのは手数料収入かエクイティ投資といったプロフェッショナルのサービスとなる。

  • 日本経済はGDPベースで見ると上場企業は3割程度で、地域の中小企業がメインである。このため、経済成長の行方を握るのは、海外与信を伸ばしているメガではない。地域金融機関が地域企業への資本性資金の供給や人材支援でも役割を発揮することが重要である。

(3)その他

  • 従来の産業政策は、特定の産業を後押しするターゲティングと保護行政だった。しかし、行政は伸びる産業の予想を外すし、保護行政は時代に逆行。重要なのは、イノベーションが進むインセンティブをもたらすための競争政策。

  • 退職までに資産形成を行い退職後に取り崩す、というのは20世紀的な考え方。「人生100歳時代」においては途中で食い潰してしまう。加齢とともに労働所得の依存率は低下していかざるを得ないので、高齢期に備えた資産形成の視点と同時に、高齢期においても資産を運用して所得を得るという視点を持つことが重要。

  • 現在、英国ではスチュワードシップ・コードの改訂が議論されているが、官の関与が弱いと批判されている。これに対し、日本では金融庁が率先している。インベストメントチェーンをいかに機能させるかは、スチュワードシップ・コード導入20カ国共通の課題であり、金融庁はグローバルな議論でもリーダーシップを発揮して欲しい。

  • 日本企業の動きは、利益の最大化に向かって行動するという合理的なものではない。日本的組織特有のバイアスがかかっており、市場の失敗の多くは、こうしたバイアスから生じている。企業がどのような動機付けによって市場で行動しているかを観察することが重要。

  • 企業は、上場すれば年金基金等のポートフォリオにも組み込まれ、多くの人々に対する責任が生じる。こうした株主に対する責任よりも、何か他に追求したいものがあるのなら、そうした企業は上場すべきではない。

  • 企業年金の意識は、母体企業に向いており、受給者のために動いていないと感じる。コーポレートガバナンスの観点からも、企業年金が年金の受給者のために動くようになる仕組み作りが必要。

  • かつて、留学時に、資本主義の発達とは、企業を専門化していくプロセスだと教わった。株式会社制度によって出資と経営が分離し、その次に経営がボードとオフィサーに分離、というように専門化していった。さらに、機関投資家が投資の専門家として生まれ、最後には資産運用を通じて従業員の人生の効用をいかに最大化するかという点も専門家に委ねられ、これが年金制度となった。このため、年金制度は真に受給者のためになる制度とすることが極めて重要であり、これを踏まえて、米国ではエリサ法の下フィデューシャリー・デューティーやプルーデントマン・ルール等の原則が定められた。米国ではこの考えの下で年金のガバナンスの研究が行われているが、日本では社会保障の観点からしか研究が行われていない。 

4.資料:

会議概要

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)

総務企画局政策課

(内線2770、3515 )

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