政策評価に関する有識者会議の議事要旨
(令和6年6月4日)

1.開催概要:

日時:令和6年6月4日(火曜日) 10時00分~11時00分
    (NY時間6月3日(月曜日) 21時00 分~22 時00分)
 開催方法:WebEx 会議

本会議は「政策評価に関する有識者会議運営要領」第2条第2項に基づき、金融行政において外部の意見や提言を継続的かつ的確に反映させるため、金融行政として取り組むべき重要な課題となる事項について議論を行うために開催したもの。

2.出席委員:

内田 貴和 委員  三井物産株式会社顧問
 江川 雅子 委員  学校法人成蹊学園学園長
 岡崎 哲二 委員  明治学院大学経済学部教授
 中曽 宏 委員   株式会社大和総研理事長
 星 岳雄 委員   東京大学大学院経済学研究科教授
 本田 桂子 委員  コロンビア大学国際関係公共政策大学院客員教授

3.議事要旨:

足元の金融行政をとりまく課題について、以下のような議論が行われた。


(金融経済教育)
〇 資産運用立国の中では金融経済教育の重要性が強調されているが、サステナブルファイナンスについて、資金の最終的な出し手である一般投資家がどの程度これを重要と考えているのかが若干疑問。専ら収益性の高い運用を求めている可能性もあることから、サステナブルファイナンスの重要性を発信していくことも金融経済教育の一つの重要なポイントになるのではないか。

 
(コーポレートガバナンス改革)

〇 上場企業の状況や成長ステージによって課題は様々で、エンゲージメントについても二極化しており、アナリシトのキャパシティが限られている中で、一部の企業群に集中することもやむを得ないが、日本企業全体の企業価値向上という観点からすると、残された企業群をどのようにサポートするかも考えていく必要がある。

 
(資産運用業の改革)
〇 日本と欧米の金融リテラシーの差は大きいと感じる。多くの年金基金は人事部門出身者の第2の人生の場となっており、金融リテラシーが必ずしも運用者としてのプロのレベルに達していないことが多いように思うので、資産運用立国を目指す上では対応が必要ではないか。
 
〇 日本の資産運用会社の多くは銀行、証券などの金融機関の子会社になっていて、人材採用・育成や、企業戦略(他社との連携なども含む)の面で課題を抱えているように見受けられる。日本の資産運用業界の発展を考えた時に、資産運用子会社の独立を促すことにより、Fiduciary なども徹底され、人材育成や業界再編も進むと考えられるのではいか。
 
〇 プロダクトガバナンスについて、各社公表された体制が効果的に機能しているかを検証するとともに、必要に応じて見直しを行う等、実効性の確保に今後十分踏み込んでいっていただきたい。中立の立場で評価分析されるニーズはかなりあると思うし、今後、継続的に中立的な立場でモニタリング・評価することが有効ではないか。良い商品・サービスが提供されれば、その分リスクも軽減されると考える。

 
(アセットオーナー・プリンシプル)
〇 資産運用立国実現プランの中で、企業年金の改革、アセットオーナー・プリンシプル策定などは極めて重要であり評価できる。2014年にスチュワードシップ・コードが策定されて以来、受け入れを表明する企業年金基金が少ないことが課題となってきたので、是非改革を進めていただきたい。

 
(サステナビリティ情報の開示と保証)
〇 ISSBと整合性のあるような開示のガイドラインを発表したことは評価できるが、サステナビリティの定義がはっきりすると投資家の期待値がより明らかになり企業は開示しやすくなるのではないか。
 
〇 SSBJ基準の適用対象・時期、開示情報の範囲(Scope3等)やセーフハーバーの整備等、色々な論点があるが、企業側には膨大な負担となっていることも考慮いただき、もし法定化されるのであれば、開示の効果、これだけの労力とコストをかけてやる意義をもう少し実感できるようにしていただきたい。

 
(カーボンクレジット、トランジションファイナンス)
〇 カーボンクレジット市場については、アジアのビジネス界の声を踏まえ、カーボンクレジット取引のアジアでの相互運用可能性(インターオペラビリティ)を高める方向で検討をお願いしたい。また、トランジションファイナンスでは、日本のロードマップ方式とアジアの移行計画とをマッピングして比較可能とすることがグローバル投資家の投資判断を容易にし、日本を含めアジア企業が効率的に資金調達できると思うことから、金融庁には、アジアに広がる日本のサプライチェーンという視点も持って今後の議論をリードしていただきたい。

 
(金融システムの安定(金利上昇によるリスク管理))
〇 一部の金融機関では、金融緩和期に運用を長期化しており、このデュレーションギャップ拡大による金利リスク増大は、コア預金(長期滞留を前提とる要求払い預金)によって相殺されてきた。今後の金利上昇局面では、コア預金がどのくらい粘着的なのか不確実性が大きく、さらに近年のオンラインバンキングの普及で粘着性を低下させる構造的な変化も起きているため、地域金融機関の中には金利リスクに脆弱な先もあると見られるだけに、金融庁としてもしっかりと目配りをしてほしい。

 
(投資詐欺への対処)
〇 資産運用立国により投資に関心を持つ人が増えてきたと思うが、投資熱が投機熱となって過剰にならないか、それを利用して詐欺まがいの活動が起こらないか、気をつけなければいけないし、最近の投資に関する広告では、一見してリターンばかり強調しているものも見かける。この点、金融経済教育だけでは不十分なところがあると思うので、本当に金融業、金融機関が顧客本位の業務運営を行っているかモニタリングしていくことが重要。
 
以上
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総合政策局総合政策課(内線5519、5405)

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