証券取引等監視委員会メ-ルマガジン (第121号)

平成31年1月22日
証券監視委ウェブサイト
https://www.fsa.go.jp/sesc/index.htm

 

<目次>
市場へのメッセージ
1. LCホールディングス株式会社株券に係る内部者取引事件の告発について(1)
2. LCホールディングス株式会社株券に係る内部者取引事件の告発について(2)
3. 最近の取引調査に基づく勧告について
・株式会社ノエビアホールディングスとの契約締結者の役員による重要事実に係る推奨行為
・株式会社スリーエフとの契約締結交渉者の社員から情報を受領した者による内部者取引違反行為
4. エーアイトラスト株式会社に対する検査結果に基づく勧告について
5. 貸付型ファンドの投資家への情報提供についての建議
 


市場へのメッセージ


1. LCホールディングス株式会社株券に係る内部者取引事件の告発について(1)

 証券取引等監視委員会(以下「証券監視委」といいます。)は、平成30年11月13日、金融商品取引法(以下「金商法」といいます。)違反(内部者取引)の嫌疑で、犯則嫌疑者1名を東京地方検察庁に告発いたしました。
https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2018/2018/20181113-1.htm

【事案の概要】

 犯則嫌疑者は、東京証券取引所が開設する有価証券市場に株券を上場している株式会社ロジコム(以下「ロジコム」という。)の代表取締役を務めていたものですが、平成28年1月中旬頃、その職務に関し、同社が第三者割当増資を行うことについての決定をした旨及び同社が株式会社ダヴィンチ・ホールディングスとの業務上の提携を行うことについての決定をした旨のロジコムの業務等に関する重要事実を知り、法定の除外事由がないのに、同重要事実の公表前である同年1月下旬頃から2月中旬頃、証券会社を介し、東京証券取引所において、他人名義で同社の株券約1万9000株を代金合計約2400万円で買い付けました。

【本件重要事実】

 本件重要事実は、ロジコムが第三者割当増資を行うことについての決定をしたこと及び同社が株式会社ダヴィンチ・ホールディングスとの業務提携を行うことについての決定をしたことであり、平成28年2月22日午後3時30分、同社が、「第三者割当による新株式の発行、株式会社ダヴィンチ・ホールディングスとの資本業務提携」として公表したものです。

【本件の意義】

 本件犯則嫌疑者は、ロジコム(現LCホールディングス株式会社)の代表取締役でありながら、本件重要事実の公表前に、借名口座を用いて、本件内部者取引を行ったものです。犯則嫌疑者は多額の利益を得ており、極めて悪質な事案と言えます。

 証券監視委は、引き続き、市場の公正性・透明性の確保に向けて、本件のような重大で悪質な違反行為に対し、厳正に対応していきます。


2. LCホールディングス株式会社株券に係る内部者取引事件の告発について(2)

 証券監視委は、平成30年11月13日、金商法違反(内部者取引、情報伝達)の嫌疑で、犯則嫌疑者2名を東京地方検察庁に告発いたしました。
https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2018/2018/20181113-2.htm

【事案の概要】

第1 犯則嫌疑者Aは、東京証券取引所が開設する有価証券市場に株券を上場していたロジコムの社外取締役を務めていたものであるが、平成28年1月中旬頃、その職務に関し、同社が第三者割当増資を行うことについての決定をした旨及び同社が株式会社ダヴィンチ・ホールディングスとの業務上の提携を行うことについての決定をした旨のロジコムの業務等に関する重要事実を知り、あらかじめ同社の株券を買い付けさせて利益を得させる目的をもって、同重要事実の公表前である同年2月上旬頃、犯則嫌疑者Bに対し、同重要事実を伝達したものであり、これにより同人が、法定の除外事由がないのに、同重要事実の公表前である同月中旬頃、証券会社を介し、東京証券取引所において、同人名義でロジコムの株券1万株を代金1200万円で買い付けました。

 さらに犯則嫌疑者Bは、

第2 平成28年2月上旬頃、前記第1記載のとおり、犯則嫌疑者Aから、同人が同年1月中旬頃、その職務に関し知った、ロジコムが第三者割当増資を行うことについての決定をした旨及び同社が株式会社ダヴィンチ・ホールディングスとの業務上の提携を行うことについての決定をした旨のロジコムの業務等に関する重要事実の伝達を受け、法定の除外事由がないのに、同重要事実の公表前である同年2月中旬頃、証券会社を介し、東京証券取引所において、同人名義でロジコム株券1万株を代金1200万円で買い付けました。

【本件重要事実】

 本件重要事実は、ロジコムが第三者割当増資を行うことについての決定をしたこと及び同社が株式会社ダヴィンチ・ホールディングスとの業務上の提携を行うことについての決定をしたことであり、平成28年2月22日午後3時30分、ロジコムが、「第三者割当による新株式の発行、株式会社ダヴィンチ・ホールディングスとの資本業務提携」として公表したものです。

【本件の意義】

 本件の犯則嫌疑者Aは、ロジコム(現LCホールディングス株式会社)の社外取締役でありながら、本件各重要事実の公表前に、犯則嫌疑者Bに本件各重要事実を伝達したものです。犯則嫌疑者Bは、この情報伝達を受けて、ロジコム株の買付けを行い、多額の利益を得ており、犯則嫌疑者A及びBについて、極めて悪質な事案と言えます。

 証券監視委は、引き続き、市場の公正性・透明性の確保に向けて、本件のような重大で悪質な違反行為に対し、厳正に対応していきます。


3. 最近の取引調査に基づく勧告について

 証券監視委は、取引調査の結果に基づいて、以下の事案について課徴金納付命令勧告を行いました。

・H30.11.27 株式会社ノエビアホールディングスとの契約締結者の役員による重要事実に係る推奨行為
https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2018/2018/20181127-1.htm

・H30.11.27 株式会社スリーエフとの契約締結交渉者の社員から情報を受領した者による内部者取引違反行為
https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2018/2018/20181127-2.htm


・株式会社ノエビアホールディングスとの契約締結者の役員による重要事実に係る推奨行為

【事案の概要】

 本件は、株式会社ノエビア(以下「ノエビア」といいます。)の完全親会社である株式会社ノエビアホールディングス(以下「ノエビアホールディングス」といいます。)が平成29年11月7日に公表した、

[1] ノエビアホールディングスの業務執行を決定する機関が、自己の株式の取得を行うことについての決定をした旨の重要事実
[2] ノエビアホールディングスの平成29年9月期の決算(期末配当金)において、投資者の投資判断に及ぼす影響が重要なものとなる差異が生じた旨の重要事実

 に関し、取引推奨行為が行われた事案です。

 課徴金納付命令対象者は、ノエビアの役員であった者ですが、同人は上記[1]及び[2]の重要事実をノエビアホールディングスとの契約の履行に関し知りながら、被推奨者に対し、公表がされる前にノエビアホールディングス株式の買付けをさせることにより被推奨者に利益を得させる目的を持って、ノエビアホールディングス株式の買付けをすることを勧めたものです(取引推奨行為違反)。

【事案の特色等】

 本件は、平成26年4月から導入されている「情報伝達・取引推奨規制」(金商法第167条の2)に関して、取引推奨行為のみを行った者を対象とした2件目の課徴金納付命令勧告事案です。

※ 取引推奨行為のみを行った者を対象とした初の課徴金納付命令勧告事案は平成30年8月31日に勧告した「ポケットカード株式会社社員による公開買付けの実施に関する事実に係る推奨行為に対する課徴金納付命令の勧告について」です。併せてご覧ください。
https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2018/2018/20180831-2.htm

 「情報伝達」と「取引推奨」の違いは、重要事実を伝えたか否かであり、「情報伝達」は重要事実を伝えたことが要件とされている一方、「取引推奨」は重要事実を伝えたことが要件とされていません。本件では、被推奨者は、重要事実の公表前に買い付けたものの、重要事実の伝達を受けていないため、インサイダー取引規制の対象とはなりません。
 未公表の重要事実を伝達してはいけない「情報伝達規制」、知って売買してはいけない「インサイダー取引規制」については、上場会社における規程の整備や社内研修における周知が相当程度されていると思いますが、「取引推奨規制」については周知が十分でないケースも少なくないかと思います。

 本件が広く周知されることにより、「取引推奨」が違反行為になるということを認識していただき、違反行為の抑止効果が発揮されることを期待しています。


・株式会社スリーエフとの契約締結交渉者の社員から情報を受領した者による内部者取引違反行為

【事案の概要】

 本件は、株式会社スリーエフ(以下「スリーエフ」といいます。)が平成29年4月12日に公表した、会社の分割に関するインサイダー取引です。
課徴金納付命令対象者は、株式会社ローソン(以下「ローソン」といいます。)に勤務していた者ですが、同社の社員甲から、スリーエフの業務を執行する機関が会社の分割を行うことについての決定をした旨の重要事実(以下「本件事実」といいます。)の伝達を受けながら、本件事実の公表前に、自己の計算において、スリーエフ株式を買い付けたものです(インサイダー取引違反行為)。
なお、本件事実はスリーエフと事業統合契約の締結の交渉をしていたローソンの社員乙が同契約の締結の交渉に関し知り、その後、同社の社員甲がその職務に関し知ったものです。

【事案の特色等】

 本件は、内部者取引の重要事実として「会社の分割」を適用した初の事案です。企業再編には、公開買付け以外にも、株式交換、株式移転、合併、会社分割、事業譲渡、資本業務提携など様々な手法があり、重要事実に該当すればインサイダー取引規制の対象となります。
課徴金制度導入以降平成30年3月末までに勧告したインサイダー取引事案を年度別に集計した上で、インサイダー取引の原因となった重要事実について、平成30年6月28日公表の「金融商品取引法における課徴金事例集~不公正取引編~」13ページに取りまとめていますので、併せてご覧ください。
https://www.fsa.go.jp/sesc/jirei/torichou/20180628.htm

 本件が広く周知されることにより、インサイダー取引の抑止効果が発揮されることを期待しています。


4. エーアイトラスト株式会社に対する検査結果に基づく勧告について

 証券監視委は、平成30年12月7日、金融庁に対して、エーアイトラスト株式会社(以下本節において「当社」といいます。)に行政処分を行うよう勧告いたしました。
https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2018/2018/20181207-2.htm

【事案の概要等】

 当社が取扱うファンドの取得勧誘に関して、以下のとおり虚偽の表示を行っていた事実が認められました。

・ 復興庁や環境省等の名称等を用いて、あたかも官公庁等が関与して行う除染事業の支援業務を行う目的でファンド資金が貸付けられるかのような表示をしていたが、該当する除染事業は存在せず、官公庁等が関与して行う除染事業の存在及び実行を前提とした資金使途のための貸付けは当初から行われていなかった。

・ 2020年東京オリンピックのJOCゴールドパートナーとなっている大手企業との業務提携等が予定されている旨等を記載するなど、あたかも当該大手企業との業務提携等が予定され、これにより得られた収益を原資として返済が行われるかのような表示をしていたが、実際には当該大手企業との業務提携等の予定は存在せず、当初から、当該大手企業との業務提携や、業務提携に係る事業による収益が返済原資となることなどを前提とした貸付けは行われていなかった。

 このように、投資者保護上問題のある行為に対しては、今後も厳正に対処していきます。

 なお、当社に対しては、平成30年12月14日に、関東財務局長から業務停止命令及び業務改善命令の行政処分が発出されています。
https://lfb.mof.go.jp/kantou/kinyuu/pagekthp032000785.html


5. 貸付型ファンドの投資家への情報提供についての建議

 証券監視委は、平成30年12月7日、金融庁設置法第21条の規定に基づき、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、貸付型ファンドの投資家への情報提供についての建議を行いました。
https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2018/2018/20181207-3.htm

(注)建議は、証券監視委が、検査・調査等の結果把握した事項を総合分析した上で、法規制や自主規制ルールの在り方等について証券監視委としての見解を明らかにし、これを行政や自主規制機関が行う諸施策に反映させようとするものであり、証券監視委の行う建議は、規制当局等の政策対応の上で、重要な判断材料として扱われます。

○ 貸付型ファンドについて
 貸付型ファンドは、事業者が投資家からの出資金を原資として貸付け(金銭消費貸借)を行うことを出資対象事業とするファンド(融資型クラウドファンディング、貸付型クラウドファンディング、P2Pレンディング、ソーシャルレンディングとも呼ばれている)です。貸付型ファンドの販売業者には、第二種金融商品取引業の登録(金商法)、貸付けを行う事業者(販売業者が貸付実行者である場合を含む)には、貸金業の登録(貸金業法)が必要となっています。また、投資家の貸金業登録の要否を判断する上で、借り手(貸付先)を特定することができる情報が明示されないこと(匿名化)と、複数の借り手に対して資金を供給するスキームであること(複数化)が考慮の一要素とされています。

○ これまでの取組
 証券監視委及び財務局が行った貸付型ファンドの販売業者に対する検査において、

・ 資金使途等についての虚偽表示
・ 貸付先、担保等についての誤解表示
・ 貸付先がファンドからの借入れを返済することが困難な財務の状況にあることを認識しながら募集を継続

など、多数の金商法違反事例や投資者被害が生じている悪質な事例が認められました。
※ 平成28年度以降、行政処分勧告6件。

○ 建議の概要
 上述の検査で認められた事例の背景には、貸付型ファンドの販売業者の法令等遵守態勢が不十分であったことに加え、貸金業法上の登録制度の運用上の関係から、貸付先の特定につながる情報の明示を控えた運用となっていることもあります。こうした投資家への情報提供の状況に鑑み、証券監視委は、「貸付型ファンドに係る投資家保護の一層の徹底を図る観点から、投資家がより適切な投資判断を行うための情報提供や説明の拡充などの適切な措置を講ずる必要がある」との建議を行いました。金融庁において、当該建議に基づいた適切な対応が行われることを期待します。

(参考)「規制改革実施計画」(平成30年6月15日閣議決定)においても、「匿名化・複数化」と併存する運用上の新たな方策の検討等が掲げられています。

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