事業者を支える融資・再生実務のあり方に関する研究会
(第4回)議事録

1.日時:令和3年10月25日(月)16時00分~19時00分

2.会場:オンライン開催

〇神田座長
 神田です。それでは、予定の時間になったと思いますので、始めさせていただきます。
 事業者を支える融資・再生実務のあり方に関する研究会の第4回目の会合を開催させていただきます。皆様方には、本日も大変お忙しいところ御参加いただきまして、誠にありがとうございます。

 本日の会合でございますけれども、これまでどおりといいますか、新型コロナウイルス感染症対策の観点からオンラインでの開催とさせていただき、一般傍聴はなしとさせていただきます。また、メディア関係の皆様方には、金融庁内の別室において傍聴していただいております。議事録は通常どおり作成の上、金融庁のホームページにて公開させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。

 久しぶりになるかと思いますので、オンラインで御参加いただくに当たりまして、2点の注意事項を申し上げます。まず、1点目ですけれども、御発言されない間は恐縮ですが、マイクをミュート、オフの設定にしていただきますようお願いいたします。2点目ですけれども、御発言を希望される場合は、オンライン会議システム上のチャット機能というのを利用していただいて、全員宛てに発言希望と入れていただければありがたく存じます。それを私のほうで確認させていただき、御指名をさせていただきます。そうしましたら、マイクをオン、ミュートをオフにして、御自身のお名前を名のっていただいた上で、御発言いただければと存じます。

 なお、本日、私もオンラインで参加させていただいております。私の声が聞こえにくいようなことがございましたら、御一報いただければありがたく思います。また、万が一、私のほうで、何か接続に不具合が生じたような場合には、大変恐縮ですけれども、進行は事務局にそのままお願いし、私のほうで、また再接続を試みたいと思います。

 以上でございますが、まず、中身に入る前に、初めて御参加いただく委員と本日、ゲストとしてお越しいただいている方につきまして、事務局から御紹介をお願いします。よろしくお願いいたします。

〇尾﨑参事官
 金融庁の尾﨑でございます。
 今回、全銀協からの委員に変更がございましたので、御紹介申し上げます。三菱UFJ銀行の中原利明委員に代わって御参加いただきます、三井住友銀行の本多知則委員でございます。
 続いて、今回より地銀協からの御参加をいただきます、千葉銀行の鈴木俊一郎委員でございます。

〇鈴木メンバー
 鈴木でございます。よろしくお願いします。

〇尾﨑参事官
 ありがとうございます。本日はゲストとして、野村総合研究所の川橋仁美様に御参加いただいております。さらに、金融庁の特別研究員として、広島大学大学院の安永祐司准教授にも御参加いただいております。
 最後に、本日は沖野眞巳委員が18時頃に御退席の御予定で、また、志甫治宣委員が御欠席となっております。
 事務局からは以上でございます。

〇神田座長
 どうもありがとうございました。
 それでは、早速議事に移らせていただきます。この研究会でございますが、これまでに過去3回、会合を開催させていただき、昨年の12月に議論の内容を論点整理として公表をいたしました。公表の際、事務局には、論点整理を材料として、様々な関係者等と議論を重ねていただくようお願いをしておりました。ということで、久しぶりなのですけれども、本日、まずは事務局からその議論の経過の報告として、お手元資料1についての御説明をお願いしたいと思います。

 続きまして、野村総合研究所の川橋様から資料2について御説明をいただきます。その後で、一度意見交換のお時間を取らせていただきたいと思います。

 そして、その次に、お手元資料3、これは長いので、資料3については第1部と第2部に分けて、事務局からの説明、意見交換ということでさせていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。また、長時間になりますので、2時間程度たったあたりをめどとして、少し休憩を取らせていただきたいと思っております。

 それでは、早速ですけれども、まず、事務局から、そして川橋様と、続けての御説明をお願いしたいと思います。事務局からよろしくお願いいたします。

〇尾﨑参事官
 神田先生、ありがとうございます。昨年、皆様に御議論をいただきました、事業成長担保権につきまして、論点整理の公表後、事務局にて、事業者や金融機関、ベンチャーキャピタルなどの方々と意見交換をさせていただきました。
 資料1は、その内容をまとめたものです。このうち、前半では寄せられた御意見を、後半では具体的な想定事例をそれぞれ御紹介いたしたいと思っています。

〇水谷管理官
 それでは、まず、前半について、3ページを御覧ください。新たな担保権を活用する利点、留意点などをまとめたものでございます。
 利点ですが、①として、事業の将来性に基づいて、必要な借入がしやすくなることというのが挙げられました。2つ目は、デットですので、エクイティーに比べて持分の希薄化を抑えられること。そして、また3つ目は、経営者保証に過度に依存しない資金調達が可能になること。そして、最後4つ目は、メインバンクを明確化でき、より迅速な経営改善支援等が受けられるようになるという点が挙げられました。

 利点と同時に留意点もいただきました。①は事業成長担保権というものは、誰にでも使えるような万能なものではなくて、その特性などをよく理解した上で活用されるべきというものです。②は①の視点も踏まえて、金融機関に対する活用件数の画一的な開示の強制も含めて、活用を一律に強制するようなことは不適切だという御意見でした。これらの点はこれまでの研究会での皆様のご議論とも共通する認識と思いますので、念のため、その次のページ、4ページと5ページ目で、昨年の第1回の資料を再掲させていただいております。

 前半の最後、6ページを御覧ください。特に金融機関から寄せられた、実務上の留意点などでございます。主に、実務上のイメージの共有を求める御意見でございまして、例えば、特に類似の担保が活用されている海外の事例の共有を求めるお声もいただきました。こうしたお声の一部にお答えするために着手した委託調査について、後ほど川橋様よりプレゼンいただきます。

 次のページから後半部分、想定事例の御紹介になります。事業者、ベンチャーキャピタル、また、特に地域金融機関の皆さんとご意見交換をさせていただいた中で、具体的な事例を提案いただきましたので、それをまとめたものでございます。

 まず、8ページ目の下の表を御覧ください。事業成長担保権がどのような事例で活用できるかという問いに対する一部の銀行さんの御回答をまとめたものです。それぞれの銀行のビジネスモデルや事業性評価のノウハウなどの違いも反映されて、回答結果もばらつきが見られました。その上で、さらに具体化した想定事例を11ページ以降に記載しておりますけれども、時間も限られておりますので、11ページの(1)、こちらのSaaS企業だけ簡単に御紹介をさせていただきます。これは事業者さんとベンチャーキャピタルの方から教えていただいた事例でございますけれども、SaaS企業というのは、相対的にデットでの資金調達に馴染みやすいビジネスモデルで、海外では、事業成長担保権類似の担保を設定して借入ができているというものだそうでございます。SaaS企業の将来性を理解するためには、過去や足下の財務情報よりも、MRRですとか解約率といった他の指標に表れる顧客基盤をみて、これが順調に拡大していることを確認することが重要になるそうなのですけれども、一方で、日本では財務情報に基づく審査が基本ですので、そうした将来性に基づく借入が難しいということでした。そこで、事業成長担保権の導入をテコとして、財務情報だけでない様々な情報を踏まえた審査が合理的になり、事業の将来性を的確に考慮する新しい実務が形成されないか。海外のように成長資金の調達がしやすくなるのではないか。そういった期待も込めて、事例をいただきました。

 このほかも同様でして、事業者さんのうち、主に、リスクを取って将来成長していこうとするけれども、IPOなどで高いリターンを目指すわけではないといった方々が、事業成長担保権を活用できれば、より資金の調達がしやすくなるだろうと、そういった観点からの事例になります。

 事例について、3点ほど補足でございます。この事業成長担保権は、あくまで選択肢を増やすという位置づけでございまして、今の不動産担保などで十分に融資がされている実務を塗り替えていくような、そういったものではないということです。今まで融資できなかった新しい事業者さんを開拓して支援していきたいというものでございます。活用イメージをお寄せいただいた地銀さんからのお話でも、この担保を設定してリスクを取っていこうと、日本経済や地域経済を牽引していこうとされる事業者さんというのは、現在も金融機関から借入れをしているような既存のお客さんだけで考えますと、全体の数%程度もないだろうということでした。

 また、もう一つ、これらの想定事例の位置づけです。今の法制度の下でも、日本全国探せば、ここに挙げたような融資ができた事例は見つかるかもしれないのですけれども、ここで申し上げたいのは、事業成長担保権があれば、金融機関がこうした融資を取り組むことがより合理的になって、全体として実務の幅が広がっていくということです。事業者支援に積極的な地銀の方からは、事業成長担保権があれば、事業者支援により一層やりがいを持てる、組織的に体制を整えられる、そういう担保だ、というお声をいただいておりました。

 最後は、9ページをご覧ください。こちらにありますとおり、事業成長担保権は新しい融資を広げていくための重要なピースの一部である一方で、もちろんこの制度だけでは十分でありません。この研究会のタイトルにも表れておりますとおり、我々のゴールは担保権を導入するということだけではなくて、新たな担保権をテコとして、事業者を支えられるような融資再生実務が、新たに追加的に形成されていくことだと思っておりますので、念のため、確認させていただきます。

〇尾﨑参事官
 最後に、私のほうから金融業界の反応について、補足させていただきたいと思います。この研究会で御議論いただく内容は、今までの実務とは異なるものですので、金融業界の皆様方からは当初、戸惑いの声が聞こえたのも事実でございます。もっとも昨年の論点整理の公表以降、各所へ意見交換をして回ったところ、具体的なイメージをお寄せいただけたような金融機関さんをはじめとして、徐々に期待の声をいただくようになりました。

 本日の資料は、事業者支援に積極的な地域金融機関さんの声が中心になりましたけれども、大手行の役員の方々からも積極的に活用を検討していきたいといったお話を頂戴するようになってきております。本日の議論を経て、金融業界ともより具体的なイメージを共有して、実務家・現場の方々にとっても腹落ちのできる議論をしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 事務局のほうからは以上でございます。

〇神田座長
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、野村総研の川橋さんからお願いしたいと思います。今日はお忙しいところありがとうございます。よろしくお願いいたします。

〇川橋様
 川橋です。よろしくお願いいたします。
 ただいま事務局からもお話があったとおり、全資産担保を活用した米国の融資、再生実務に関する調査を、私どもで担当させていただくことになりました。本日は、その調査の概要と、これまで私どもで調査した米国の中小企業金融の一般的な慣行についてお話しさせていただきたいと思います。

 まず、調査の概要につきまして、今回はアメリカの商業銀行、コミュニティバンクも含めて、大きいところから小さいところまで直接ヒアリングを行うということを予定しております。対象銀行の数は、少ないのですけれども、5行程度を予定しております。全資産担保に基づく融資について、ヒアリングを行う予定でございます。これまでの私どもの調査に基づきますと、スモールビジネス及びミドルマーケット企業の規模の小さいところが今回の調査の対象になると考えます。

 具体的には、こちらのスライドにありますとおり、アメリカではスモールビジネスアドミニストレーション、日本でいうと、中小企業庁の当たる政府機関がスモールビジネスの定義をしていまして、年間売上高5,000万ドルが1つの境になっています。FRBもこちらの基準を使っていますけれども、実は各銀行は、この定義によらずに、独自にスモールビジネス及びミドルマーケット企業を定義しております。こちらの表にあるとおり、例えばWells Fargoですと、年間売上高2,000万ドル以下がスモールビジネス、2,000万ドル以上がミドルマーケットという定義になっています。今回、対象となる企業セグメントとしては、スモールビジネスの中でも規模が小さいところは機械的な対応が行われておりますので、スモールビジネスの中の比較的大きい企業、そして、ミドルマーケットの比較的小さい企業を考えております。

 それでは、スライドを戻りまして、調査項目ですけれども、大きく2つ挙げております。まず、全資産担保の活用事例についてということで3点、一つ目は、期中管理、モニタリングの方法、これには審査の考え方も含みます。2番目は、延滞発生からデフォルト時までの対応ということ。3番目は、担保権実行の方法です。この3点をヒアリングによって調査いたします。ただ、3点目は、皆様もよく御存じのとおり、弁護士の領分になってきますので、ヒアリング先の金融機関の担当者が知り得る範囲でのインタビューになるということで御了承いただければと思います。

 調査項目の2つ目は、全資産担保の活用を支える金融機関の体制についてということで、1点目が融資担当者の人事戦略、例えば専門性の高い人材の採用ですとか育成や昇進の考え方について、2点目が融資担当者の人事管理、一職員当たりの担当企業数ですとか担当業務、人事ローテーションの考え方について、ヒアリングを行います。これも、融資を担当したり、リレーションシップの維持を担当したりする方にヒアリングをする中で、その方の経験に基づいて、お話をお伺いするということになります。

 それでは、少しページを飛びまして、弊社がこれまで実施した米国の商業銀行に対するインタビュー調査結果を踏まえまして、中小企業向けの融資の慣行について、先ほどの調査の視点をベースにしてまとめましたので、御覧ください。
 まず、最初に、融資の形態と全資産担保の位置づけということで整理いたしました。プレーヤーは、銀行とノンバンクが大きな地位を占めております。銀行は小規模企業から中堅企業まで全方位的に取り組んでおりますけれども、ノンバンクは特定の、例えばミドルマーケット企業のハイエンドなど、ターゲットとするセグメントをコスト効率よく営業していくという戦略を展開しております。なお、今回は、銀行へのヒアリングの中でノンバンクの話も出るとは思いますが、基本的に商業銀行の活動についてヒアリングを行います。
 2点目、融資の形態ですけれども、全資産担保にもとづく融資は、通常運転資金の調達を目的としたクレジット・ラインが一般的になっています。このクレジット・ラインというのは、融資の審査をしまして、例えば100円貸しますとなりましたら、100円までいつでも自由に資金を下ろせるという商品性でございます。全資産担保の範囲は、売掛金、在庫、設備等など、動産が中心になっております。その他の融資形態として、個別資産の担保とする商業不動産担保ローン、売掛債権を担保とするreceivable finance、設備を担保とする設備ローンやリースなども提供されておりますが、今回は全資産担保融資ということですので、クレジット・ラインに焦点を当てて調査を行います。

 最後に、全資産担保の位置づけですけれども、基本的に借入れの際に銀行がUCCファイリングを設定し、全資産担保を取得することが一般的になっております。このため、中小企業取引というのは一行取引が基本となっております。ただし、企業の規模が大きくなるに伴って、企業側と銀行側の力関係が変わってきます。そうすると、企業側のほうも全資産担保を断るということが出てきますので、そうしますと、自動的に複数行取引へ移行していきます。

 次に不動産担保の位置づけですけれども、不動産担保については、90年代の不良債権問題のときに処分に時間がかかって、返済資源としてうまく機能しなかったという経験を持っています。これは恐らく州によって不動産担保を流動化する、法律が大きく異なることが1つの理由だったのではないかと思っております。担保物件、資料では物件の「件」が間違っていますけれども、その後、銀行は、担保物件の収益性、キャッシュフローが長い間きちっとあるかどうかを厳しく評価するようになっています。更地については、アメリカでは土地の価値が低く、担保としては一般的ではないと聞いています。キャッシュフローを生む上物を建てるとき以外は、担保としてはあまり好まれてはおりません。

 それでは、次に中小企業向けの融資の慣行ということで、期中管理・モニタリングの方法についてですが、審査時と期中と分けて御説明いたします。中小企業は、大企業との比較において外部調達手段が少なく、問題が生じた場合に事業運営を阻害することなく処分できる資産が少ないので、キャッシュフローがどの程度あるかが貸出審査の大きなポイントとなっています。担保は、あくまでも貸倒れ時の損失をカバーする2次的な返済資源という認識を持っています。ヒアリングで、なぜ担保を取るのかと聞くと、経験的に担保を差し入れますという企業は返済の意思も強くて、きちんと返済することが分かっているという理由から、借手に担保の差し入れを求めているとおっしゃいます。

 期中管理については、日常的なモニタリングはリレーションシップマネージャーの責任になっています。中小企業の場合、財務データが不十分であるとか財務データがあったとしても質に問題がある場合も多いので、リレーションシップマネージャーの役割、日々、取引先の情報を取得するという役割が非常に重要と考えられています。財務データが入ったとしても、入って半期に1回、年に1回が普通という状況の中で、日々のモニタリングやコミュニケーションを通じて得た情報を適時に信用リスク評価、つまり格付に反映させるために、リレーションシップマネージャーと審査担当者を密に連携させている銀行は米国にも多いです。問題債権への対応についてもリレーションシップマネージャーが、顧客とふだん良好な信頼関係を築いているかどうかで、早い段階での問題の検知と対応につながるということで、リレーションシップマネージャーには、その重要性を理解させるために、教育もしています。

 全資産担保については、担保である、売掛金とか在庫のモニタリング、つまりキャッシュフローが滞っていないかも重要ですが、第2順位の担保権が設定されているかどうかということを重要視しています。自分たちが第1担保権を維持しているのかということが非常に重要になります。この点を、例えば外部第三者を使って定期的にモニタリングさせたりもしています。第2担保権が設定されたということも1つ、銀行がアクションを起こすアラートになっています。これは、第2担保権が設定されたということは、借り手が資金繰りに窮しているというサインとなるからです。

 それでは、次に延滞及びデフォルト時の対応ですけれども、基本的に格付が要管理先に低下した場合には問題債権とみなして、問題債権担当部署に取引を移管することが一般的になっています。ただ、小規模の銀行の場合、問題債権を担当する部署がないということもあります。その場合は、そのままリレーションシップマネージャーが問題債権を担当する担当者と一緒に担当するというのが一般的になっているようです。要管理先に低下した場合、すぐに問題債権とみなして、解決に向けた対応を始める背景には、対応が早ければ早いほど問題は解決しやすく、お客様及び銀行の双方にとって損失を低く抑えることができるからです。なお、要管理債権に行くまで何もしないで待っているかというとそうではなくて、正常債権であっても、例えば時々延滞が発生したりしたものとか、当座貸越しが慢性化しているという場合は、リレーションシップマネージャーに問題債権担当部署にすぐ相談するようにと教育をしており、そういうお客様に対しては、要管理先にならなくても問題債権予備軍とみなして早期に対応するという体制があるようです。

 問題債権処理にお客様が非協力的な場合もあります。お客様としては、あまり聞きたくないことを言われたくないという気持ちもあり、その場合は弁護士やコンサルタントなどの第三者に仲介を依頼することもあるということです。先に申し上げました、ふだんリレーションシップマネージャーとよい関係をつくっておくと、こういうコストが削減できるということです。

 最後に、担保権の実行につきましては、破産法による手続は、基本的に費用面で負担が非常に大きいこと、事業の継続が困難になる、例えば、取引先からもう取引しないと言われてしまうなどの理由から、銀行は破産法、法的な破産プロセスに入る前に、問題の解決を図ることに力点を置いています。銀行にとっての選択肢というのは、ここに挙げておりますように、債務のリストラクチャリング、債務を完全に整理してあげるとか、あと他の金融機関へ取引を移管する、これはアメリカ特有かと思いますけれども、お客様が取引先金融機関が信頼できなくて、ほかの金融機関に取引を移したいということがあります。リストラクチャリングを前提として取引を受ける金融機関などもアメリカにはありますので、そういう銀行へ取引を移管する、あと、小さな金融機関の場合、専門性がそもそもないので、ほかの金融機関に助けてもらうということもございます。

 事業売却ですとか法的整理などがございますが、このうち法的整理は銀行にとって最後の選択肢と言われております。ただし、お客様が、いわゆる問題債権の処理に非協力的な場合、この場合、例えば、情報の提出を拒むとかうそをつくとかということが一番問題らしいのですけれども、そういう場合は法的整理に進むこともあるということです。
 簡単ですが、調査の概要と現状のスナップショットということで、私からのご説明は以上となります。

〇神田座長
 川橋さん、どうもありがとうございました。
 それでは、これまでのところについて、討議の時間をここで少し取りたいと思います。御質問、御意見をどなたからでもお出しいただければと思いますけど、まず、事業者様から御発言をいただいてと思いますので、もしよろしければ、日商の山内部長と日本電鍍の伊藤社長に御発言があればお伺いし、その後、ほかの皆様方から御発言をいただければと思います。もしよろしければ、日商の山内部長、いかがでしょうか。

〇山内メンバー
 ありがとうございます。
 事業性担保につきましては、事例を含めて、利用可能性、成長可能性の後押しのイメージを示していただいことに感謝を申しあげます。何点か感想を申しあげます。

 商工会議所の会員企業から複数の声を集めました。前向きな声といたしましては、例えば、金融グループでもベンチャーキャピタルを持たないグループが、ハンズオンでベンチャー育成などをしていくときの資金拠出スキームとして、有効ではないかという声がありました。また、そもそもベンチャーキャピタル等のエクイティー投資家が不足する中で、潜在的な資金需要に応えて、また、日常的なモニタリングを通じた経営指導などのサービスも適宜供給できる既存の銀行のリソースを活用できる効果があるのではないかという声もございました。

 一方、今後の検討課題として、事業性担保は、成長余力のある企業がメインのターゲットになるかと思いますが、中小企業あるいはもっと小さい企業での活用については、引き続き、どういう形で進めていくか検討が必要だと思います。メインバンク明確化の具体的なプロセスはなかなか難しい点もあろうかと思いますが、間違いなく経営改善とか再生支援等に効果もあると思います。事業者と金融機関が、いかに信頼性を構築していくのかが重要なポイントになります。事業性担保だけでこうした関係を構築していくのは限界があるかと思いますので、ほかのサービスとの複合的な仕掛けも必要と考えます。

 また、従来の融資では対応できないようなリスクが高いケースなども想定されているだろうと思いますが、こうした中で、一行貸しする金融機関がどういう形で出てくるのか。また、日本では低金利の融資が主ですので、事業成長担保を活用した融資の金利が高くなってしまうと使いにくくなる可能性もあり、懸念が残るところです。
 ただ、事業者サイドから見ましたら、担保とか保証に依存しない、企業の事業性評価に基づいた融資が、いい形でできればという期待があります。メインバンクの方には金利だけではなく、それ以上に事業の理解を求めるような声もございます。コロナ禍で、多くの中小企業は債務が増大している中で、選択肢が広がるところには期待したいところです。

 最後に、全資産担保を活用したアメリカの融資・再生実務に関する調査にはとても期待しております。日本で活用できるものはぜひ取り込んでいけるよう、検討していただきたいと思います。実行や倒産の局面では、いろいろ検討すべき課題があるかと思いますが、商工会議所には事業者だけでなく、金融機関の会員もおりますので、それぞれのニーズを聞きながら、ぜひいい形での議論が進めばと思っております。引き続きの検討をどうぞよろしくお願いします。

〇神田座長
 どうもありがとうございました。それでは、日本電鍍の伊藤社長、もし御発言いただけるようでいただけるであれば、お願いします。

〇伊藤メンバー
 ありがとうございます。私は発言よりも質問が2点ございまして、今、御説明を聞いていましたら、すごく印象に残ったのがリレーションシップマネージャーとの関係性というのが重要だというところだったのですが、日本の金融機関さんはどうしても短期で交代されてしまうので、これはアメリカと比べてその辺の違いですよね。関係性を築こうと思った途端に担当が変わってしまったり、多分担当によっての、あまり感情を入れてはいけないのでしょうけども、事業性というか価値って、なかなか水準を数値化することは難しかったりするので、アメリカではその辺はどうなのか。

 あとは、成功している事例としていない事例もあると思うので、その辺もぜひ、もしも失敗している、失敗という表現が正しいか分からないですけど、あまりよくないような事例であれば、何がそこをよくなくしている原因なのかというのが今後、分かればいいかと思ったので、その辺の今の段階でお分かりになるところでよろしいのですけども、質問でございます。よろしくお願いします。

〇神田座長
 どうもありがとうございました。そうしますと、これは川橋さんから、お答えをもしできればお願いしたいのですが。

〇川橋様
 1点目は、私は日本のことはあまりよく分からないのですけれども、アメリカでは、例えばずっと一生リレーションシップマネージャーという方もいらっしゃいます。特に、アメリカでは、大手行でさえも、リレーションシップマネージャーの任期の長さをアピールして、お客さんにこれだけ熟練したリレーションシップマネージャーがいるので、うちの銀行と取引しませんかと営業しています。例えば、ある大手行の場合、少なくとも10年以上のリレーションシップマネージャーの経験があり、自分の得意とする業種があり、いわゆるお客様からアドバイスを求められるような方も多くいらっしゃると聞いています。

 2点目の事業価値という点ですけれども、例えば今、一行取引という話が出ましたけれど、取引年数が大きくなるにつれて企業の規模が大きくなる、いわゆる企業の売上げが大きくなっていく。そのことをベースにして、自分たちはこれだけお客様の成長のために貢献していますと、投資家に向けて公表している銀行もあります。実全ての銀行ではないですけれども、リレーションシップをベースとした取引をすることで、お客様の企業価値が実際に上がっているんですとおっしゃる銀行も幾つかあります。

 一方、リレーションシップマネージャーにも幾つかの形がありまして、いわゆるお客様を呼び込んで、アップフロントで手数料をもらって、次々に銀行を乗り換えて稼ぐようなリレーションシップマネージャーもいらっしゃいます。そういうリレーションシップマネージャーは、自分たちが銀行としてアクセスできないお客様にアクセスできるツールとして使われているのですけれど、銀行側としては、そういう人たちはもともと銀行にいて、リレーションシップを重視するように教育されてきた人たちと比べて管理が難しいということをおっしゃいます。あと、ちゃんとリレーションシップバンキングで売っていく銀行もあれば、金利だけで勝負するという銀行もアメリカにはありますので、金利で勝負する銀行との競争は非常に厳しいというお話も伺っています。
 お答えになりましたでしょうか。

〇伊藤メンバー
 ありがとうございます。逆に支出、アメリカと日本って違うので、何でもアメリカ、欧米化しようとすると、そこにはまた間違いが起きてしまったりすると思うのですけど、日本の金融機関ってどうなのですか。3年とか2年で交代というのは悪さをするという前提なのですか。何で短い、それは金融機関が決めているのか、金融庁が決めているのか分からないのですが、支援するとなると、多分3年では成長し切れないので、私は6年とか7年とか、それぐらいのスパンで見届けないといけないと思うのですけど担当者は短いスパンで変わっていくので、その辺というのは、こういう融資制度が出てくるのであれば、少し変えていく必要があるのかなという印象を今、説明を伺いながら感じました。ありがとうございます。

〇神田座長
 どうもありがとうございました。日本の金融機関で担当が短めに代わるという点について、後ほどでも結構です。金融機関の方とか、もし御発言があれば、御発言いただければありがたく思います。取りあえず、今、もし御発言があれば承りますけど、いかがでしょうか。

〇石田審議官
 金融庁の石田でございます。本日はありがとうございます。
 今の点は、確かに金融機関の中で、営業担当にかぎらない話として在職期間が長くなるとお客さんとの間で癒着とか、あるいは横領とか、そういうコンプラ上の問題が発生しやすいということで、少し前まで、監督指針などにもあったように、一定の期間でローテーションが行われているのかということについて、私たちもモニタリングで確認するようなプラクティスというのがありました。ただ、それが私たちの意図する以上に、金融機関の側で徹底されているといいますか、2年や3年で異動というのがかなり徹底されていて、それは今、お話があったように、お客さんとの関係で、よく中小企業の方からやっとうちの会社のことを分かるようになったら、みんな代わってしまうんだよねという話がほうぼうから出てまいりました。そこで、私たちのほうで、コンプラの話というのは対応していかなければならない話ではあるのですけども、その対応の仕方というのは様々ありえるなかで、画一的にローテーションをやることだけによって、コンプラの問題を管理するということは行き過ぎたルールであろうという議論をいたしまして、監督指針を見直しました。そうすることで、人事のところも、お客さんとの関係で、ビジネスモデルとか、そういうことに応じて柔軟にといいますか、もう少し現場の状況を踏まえるようにできればと。そのように、私たちのほうで、画一的に何年でローテーションしていなければならないなどということは言わないようにするということで、方針というか、やり方を変えてきているところです。けれども、以前の慣行というのは、現場ではまだいろいろな場所で残っていると思うので、そこは私たちもまだ考えていかなければいけないと思っています。
 以上です。

〇神田座長
 石田さん、どうもありがとうございました。伊藤社長、よろしゅうございますでしょうか。

〇伊藤メンバー
 理解できました。ありがとうございます。

〇神田座長
 どうもありがとうございました。それでは、チャットをいただいておりますので、いただいている順番で御発言をお願いできればと思います。まず、星先生、どうぞお願いいたします。

〇星メンバー
 ありがとうございます。まず、事務局の皆さんからの説明、ありがとうございました。非常によかったと思います。僕自身は、新しい担保権による融資というのがいろいろ分からないところがあったのですけれども、今回、事例とかがいろいろ紹介されていて、こんなことに役に立つ、もしくは、役に立ち得るのだということで、少し自分も分かってきたかなという感じになっております。どうもありがとうございます。

 川橋さんの調査も面白いと思います。それで幾つか質問差し上げたい。1つは調査を行う金融機関の数、5行というのは少ないのではないかという印象を持っております。アメリカといってもいろいろ州によって違い、それから規模によっても違っている。ここではコミュニティーバンクも含むという形になっていますけれども、それで、もしかしたらクレジットユニオンとかも含んでいるのかもしれませんが、そうするとかなり違った銀行も含んでくるので、5行だけでは足りないのかなという感じがします。もう少し多くていいのではないかと。ただ、全部にわたって調べるというのは難しいと思いますので、先ほど伊藤社長もおっしゃったように、アメリカと日本は違っているので、日本でこの制度を導入するときに、最も参考になる金融機関というのはどの辺なのかということを決めて、その中で、もう少し5行よりも多くのところに調査をかけるというのがいいのではないかと個人的には思います。

 それから、対象の融資ですけれども、ここでは小さいものは除くということなのですが、理由は小さい借手にとっては全資産担保融資というのは使わないからという理解でよろしいのでしょうか。それとも別の理由で小さいところは除いていると、そういうことでしょうか。

 3番目は、融資担当者へのヒアリングということだと思いますが、リレーションシップマネージャーとかその辺だけでいいのかどうか、審査担当の人とかリスク管理チームとかあると思うのですけども、そういうところにもヒアリングしたほうがいいのではないか。あるいは人材育成ということで言えば、人事部みたいなところ、ヒューマンリソースのところも考えたほうがいいのではないかと思いました。

 最後、ここでは対象は金融機関ということですが、規制当局というのもいろいろ考えていると思いますし、それから情報があるのではないかと思います。例えばOCCとかFederal Reserveが検査に入るときに、全資産担保融資に関してどんな点を注視しているのかとか、それから、これも先ほど伊藤社長がおっしゃいましたが、成功している事例と成功していない事例というのもあるかもしれないと思います。そうすると、例えば規制当局から見て、このように使ってほしいとか、こういうのが望ましい使い方で成功しているけれども、場合によっては、うまくいかないような例もあるとか、そういった話というのは、むしろ規制当局からのほうが銀行よりも出てきやすいのではないかと思います。

〇神田座長
 ありがとうございました。川橋さん、いかがでしょうか。

〇川橋様
 まず、1点目ですけれども、基本的に御指摘のとおり、数は少ないと認識しています。ただ、私どもで定例的にインタビューしている先がありまして、そういう定例調査で得られた情報で補完することで、数の少なさを補うことを考えております。

 あと、御指摘があったスモールビジネスの小さいところを除いた理由なのですけれども、それは全資産担保を使っていないからではなくて、全資産担保は使っています。どちらかというと、延滞して要管理債権になった場合の対応が画一的である、例えば延滞して要管理債権になってしまうと、事業を閉まってしまいましょうということになる。つまり私的整理をして、身軽にしてあげて自由にしてあげるみたいなことが一般的になっているので、もう少し大きい企業のほうが処理にバラエティーがあると考えて、調査対象をスモールビジネスでも大きいところからミドルマーケットと設定させていただいております。

 次に御指摘のとおり、融資担当者へのヒアリングだけでは不十分な部分があります。今回のヒアリングでは、リスク管理関係の方も同席していただくように先方にお願いすることで、リスクの観点、それから融資の観点をカバーしたいと考えています。また可能であれば、再生の担当の方にもお話を伺いたいと思っております。

 それから、規制当局なのですけれども、こちらは金融庁にお願いしたいと思います。私どもでも、海外当局とのネットワークはあることはあるのですけれども、金融庁にはOCCやFRBとの強いネットワークがあるので、その中で確認していただけると、非常にありがたいと思います。

〇尾﨑参事官
 金融庁の尾﨑ですけれども、最後の点に関しましては、おっしゃるとおりで、金融庁のほうから米国当局などとは話をしながら、いろいろ情報を聞いていきたいと考えております。
 それから、最初の数が少ない点と、あと、ヒアリングのカバレッジなどの点に関しましては、金融庁における予算の厳しい制約もあり、また、当面の残された時間も限られておりましたのでこういった形になっております。今後、予算的な措置等を含めていろいろと検討していってより深く調べていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

〇神田座長
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、三井住友銀行の本多さん、どうぞよろしくお願いいたします。

〇本多メンバー
 ありがとうございます。三井住友銀行の本多でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
 先ほど伊藤社長から金融機関のジョブ・ローテーションについての御指摘を賜りまして、おっしゃるとおりだとお伺いしておりました。コンプラ面等いろいろな考慮があってそうなっているというところはあるかもしれませんが、金融機関側としては、お客様とのリレーションシップが途切れないように、きちんと引継ぎをさせていただいた上で、引き続き、高付加価値のサービスを実現できますように努めているところではございます。

 ちなみに、与信に関しましては、数年、場合によっては、10年を超えるような超長期の与信を取り組んでいる専門部署もございまして、与信管理上の専門性も高くなってくるという事情もあるのだと思うのですが、そういう専門部署に関しましては、比較的ローテーションのタームが長くなっているところもございます。引き続き、金融機関サイドでも工夫が必要なのだと思っておりますが、お客様のニーズにより付加価値の高い形でお応えできますように、金融機関側でも問題意識を持って取り組んでまいらないといけない、ということを改めて感じました。どうもありがとうございます。

 それから、今回、初めて研究会に参加させていただくことになりましたが、これまでの議論と重複するおそれもあるかもしれないのですけれども、せっかくの機会ということもございますので、改めまして、事業成長担保権の利用のなされ方に関しまして、金融機関なりの考え方として、私の私見になりますが幾つか申し上げられればと思っております。あくまで私の私見でございまして、私の所属する機関だったり、団体だったりの見解を代表するものではないというところについては、御容赦を賜ればと思います。

 それから、先ほど川橋様から米国の実務に関する御紹介もいただいたところなのですけれども、全資産担保を活用したファイナンスに関しましては、日本において、これから慣行を整えていくということなのだろうと思っていまして、そうした日本固有の事情を踏まえた、少し堅苦しい見解を申し上げることになるかもしれません。こちらも御容赦いただければと思っております。

 今般、提案されております、事業成長担保権構想におきまして、典型的には単一の事業を行う債務者、いわゆるピュアプレイと呼ばれる事業体なのだと思いますが、を想定の上、全事業を担保化することを前提として、事業成長担保権の活用により、事業の継続や成長に必要な資金の供給力を高めることができる、そのために新しい選択肢となるとの提案がなされております。もっとも、こうした前提によりますと、そもそも債務者の信用力と担保対象の事業との相関性が相応に高いということになっておりまして、事業成長担保権の設定を金融機関として受けたとしても、これによる信用補完の効果というものは、もしかしたら限界的であるかもしれなくて、このことのみをもって債務者格付を適用して与信の採り上げを企図しています金融機関において、直ちに信用供与余力を高めることにならないかもしれないとも考えられます。そうであるとしても、事業成長担保権の設定を受けた場合に、例えば、案件格付の適用が許容されるという取扱いとされれば、そのLGDの算出に際しましてLGDを相応に小さくできるとか、一般担保として相応に大きな掛け目による評価は可能であるとか、といった与信管理上の恩典が与えられるのであれば、債務者格付によるコーポレート与信対比事業成長担保権を利用することについて、与信の採り上げに際するインセンティブとなると思われます。

 ただし、このような恩典を与えることによって、実際に事業の継続や成長に必要な資金の供給力を高めるという目的がかなえられるためには、こうした恩典が与えられる条件として、事業成長担保権の設定により、健全な与信の組成、維持につながる運営となることが制度的に確保される必要があると考えております。そのためには、例えば与信の採り上げに際しまして、精緻な事業分析だったり、事業キャッシュフローの分析だったりというものを行った上で、こうした分析を踏まえまして、与信契約において実効性あるモニタリングコベナンツを漏れなく整備、設置しまして、期中において、モニタリングを含みます債務者との間における密なコミュニケーションを実施するということによって、事業キャッシュフローが想定どおり創出されることを確保し、だからこそ良質な与信として維持、管理できるという金融機関側における態勢整備を条件とすべきと考えております。

 すなわち、事業成長担保権は、利用に際して簡易、迅速、廉価に事業全体に対する担保権を設定できるようにするという制度設計が目指されているものであるとしても、真実、事業の継続や成長に必要な資金の供給力を高めるための新たな選択肢として用いられることを企図するのであれば、これを使いこなす上で、相応に難度の高いものとして制度整備される必要があって、必要とされるモニタリングを惜しむような当事者が、簡単、手軽に利用できるというものとされるべきではないと考えております。

 そして、こうした態勢整備を求めることとしないと、むしろ事業の継続や成長に必要な資金の供給力を高めるという目的とたがえる形で、例えば、安易な保全強化のために事業成長担保権が濫用されてしまって、他の債権者との間において過剰担保の問題が発生するとか、1つのファイナンサーに事業全体についての強力な排他的担保権を付与することの反射的効果として、事業成長担保権者以外の多様なファイナンサーから、より高付加価値のファイナンスサービスを受けられることが事実上、困難になってしまう、その結果、債務者の適切な資金調達に係るバランスを阻害するといった弊害が生じかねないと考えております。

 なお、念のために申し添えますと、こうした態勢整備に際しましては、事業成長担保権に関する法制度を整備するだけでは十分ではなくて、既に申し上げたところにもございましたが、それから、事務局で御用意いただきました資料の6ページ目にもございますとおり、引当金の見積り、それから、自己資本比率規制上の信用リスク削減手法の取扱いを整備するといったことのほかに、例えば、監督指針等におきまして、事業成長担保権を利用するファイナンスについて、事業キャッシュフローが想定どおりに創出されることを確保し、だからこそ、良質な与信として維持、管理できるとなるための与信の採り上げだったり、管理だったりというものに関するガイドラインを整備するとか、対象事業の評価手法の策定、それから、担保実行時における換価手続を実効化、効率化できるためのマーケットの整備といった事業成長担保権の管理、行使にまつわる諸制度を整備するとか、といった周辺的な制度整備が必要になると考えております。

 また、こうした態勢が想定どおり機能する限り、与信管理に際しまして、債務者の緻密なモニタリングと債務者、担保権者間における継続的なコミュニケーションが実効的に実施されることになるはずであって、仮に債務者の状況が悪化局面となって、担保権の実行を検討せざるを得なくなったとしても、早期に対象事業のデットサービス前のフリーキャッシュフローがプラスの状態において、事業の継続価値、ゴーイング・コンサーン・バリューを顕在化させることができる形で事業を換価することができ、かつ、その際、対象事業を生かしたままで承継させることになると想定されますので、商取引債権者や労働者等、事業の継続のために必要なステークホルダーとの契約を継続させた状態で、これらのステークホルダーに対する債務の履行を確保できる形で事業を承継させることができることになると思われます一方で、仮に事業が本源的に競争力を失った結果、対象事業のフリーキャッシュフローがマイナスの状態になって、将来におけるフリーキャッシュフローの創出力の回復も期待し難いという状況になった場合には、むしろ事業成長担保権の実行によって市場からの退出を促すということになるのも、社会的厚生の向上にとって有意との評価があり得るかもしれませんで、そうであれば、かかる状態における担保権実行がより効率的に行われる仕組みを整備するということも必要になると思われます。すなわち、例えば、こうした状況下におきましては、個別資産ごとの担保実行を許容することを含めまして、実行に対する柔軟度、自由度を高めるとか、優先債権者の範囲が不相当に広がらないように慎重な考慮をいただくとか、というように、制度設計上、こうした状況下における事業成長担保権の実行に際して過度な制約を生じさせないようにするという配慮が必要になりそうなのかなというふうに考えております。
 長くなってしまったのですが、以上となります。ありがとうございました。

〇神田座長
 どうもありがとうございました。
 それでは続きまして、井上先生、どうぞお願いいたします。

〇井上メンバー
 ありがとうございます。井上です。今日、事務局からと、あと川橋様からプレゼンテーション、御説明いただきまして、ありがとうございました。事務局からも既に説明がございましたけれども、最初の事務局資料に基づく説明に関して申し上げると、選択肢を増やすものであるということがやはり非常に重要だと思います。当局も、金融機関に対して使え使えとあまり言い過ぎないということですね。

 紹介いただいた様々な活用事例、こういったものに広がっていけばいいなと思いますけれども、それと同時に、多かれ少なかれ新たな融資実務の形成を伴うものだと思いますので、その「多かれ少なかれ」というのが大事なのですが、比較的スムーズに使えるのではないかというものから、相応に、現在の融資実務を大きく変えなければいけない、あるいは、今、本多委員から御説明があったような形で、相当程度手当てをしないと取り組むには至らないというものまで、いろいろあるのだろうと思います。そういう意味でいうと、SPCを通じたプロジェクトファイナンスやLBOのような形で、借入人の債務構成が比較的シンプルで、閉じた世界で行われるようなものから、もう既に様々なレンダーが、違った資産、主要な資産に担保をつけていて、いわゆるレンダーごとに違う担保が存在する企業への融資に使う場合、さらにはスタートアップ企業に使う場合などにより、いろいろ違ってくると思いますから、最初は使いやすいところからそろりと始めて、それを広げていく、そして将来的には、紹介いただいたような様々なものに使えるような形にしていくぐらいの気構えがいいのかなと思っております。これが1つ目の資料についてのコメントです。

 2つ目、川橋様からの御説明に関してですが、全資産担保を活用した米国の融資実務、とりわけ期中のモニタリングについて、非常に興味深く承りました。ありがとうございます。今後ということで言えば、金融機関の人材育成について、人事戦略とか人事管理の実態みたいなもの、これは実際、実現していくために非常に重要だと思いますので、調査の成果を楽しみにしております。

 今日御紹介していただいたような米国の実務は、現在、法制審で議論している動産・債権の譲渡担保、その範囲を広げていって、全ての在庫、全ての売掛資産としていくという、そちらの方向性の是非との関係でも参考になる調査ではないかと思うのですけれども、他方、今回こちらで議論している事業成長担保権の設計次第ではもちろんあるのですが、企業全体、事業全体をつかまえて、個別資産を売却するという話ではなくて、先ほど本多委員からも御説明がありましたが、企業のフリーキャッシュフローあるいはネットキャッシュフローという形で、キャッシュインとアウトの差分というのですかね、事業継続に必要な支出自体は、無担保債権者であっても、取引債権者に対する弁済などはむしろどんどん認めていく形でフリーキャッシュフローをつかまえる。ただ、他の金融機関との関係では、そのキャッシュフローを独占的につかまえるといったタイプの担保を一応構想しているのではないかと思います。そういった担保としては、私、耳学問程度で、全然分かってはいないのですけれど、英国のレシーバーシップですとかスキーム・オブ・アレンジメントと言われる制度も同じように、あるいは、場合によってはより参考になるのではないかと思いまして、先ほど予算の話があるということもございましたので、何でもかんでもというわけにはいかないかもしれませんが、英国での制度は、全てうまくいっているわけではなく、結構失敗、あるいは法改正を重ねてきたと聞いておりますので、ある意味、失敗から学ぶ部分もあるかなとも思いまして、もし調査の対象を広げていただく余地があるのであれば、英国の制度、それも法制度の変遷、あるいはその成功と失敗について御紹介いただけるといいかなと思いました。
 以上です。

〇神田座長
 どうもありがとうございました。
 それでは続きまして、千葉銀行の鈴木さん、どうぞお願いいたします。

〇鈴木メンバー
 千葉銀行の鈴木でございます。よろしくお願いします。
 私は地方銀行協会のほうからの派遣の委員でございます。地方銀行協会では論点整理公表後、複数回にわたりアンケートを取りまして、地域金融機関の生の声というのを捉える作業を続けておりました。全体として制度が目指す理念に反対するという声は、あまり聞かれているわけではありません。一方で、既存の確立された枠組み、日本であれば不動産担保というのが中心になるわけですけれども、これらの安心感が損なわれることへの不安が最も多い意見と捉えています。今回、活用の想定事例というのが新たに示されまして、1年前の論点整理とはまた別の形で議論のたたき台が出てきているわけですけれども、これらの新しい論点について、まだ理解度も金融機関の中でまちまちと考えておりますので、金融庁さんへの要望としましては、きちんと御説明いただける機会を設けていただきまして、理解度を高めて、関係者が同じスタートラインに立てるよう周知していっていただきたいと思っております。

 加えて要望を申し上げるとすると、資料の3ページにもございましたけれども、金融機関の活用件数の画一的な開示、これはベンチマークとかを意図しているのかもしれないですが、活用の一律の強制は避ける必要があるということでございます。地域金融機関から最も出ている意見かなと思っておりますので、こういった形で競わされて、使わなければいけないというムードになることは望ましくないと考えております。想定事例に当てはめてみますと、千葉銀行でどんな感じかといいますと、年間で数先ぐらいかなという感触とも見ております。一方で、まだ、アンケートの意見とかで見れば、多くの既存の取引、大半の既存の取引に影響があるのではないかという不安の声が多いような気がしておりますので、この辺りの理解度を高めていくということも作業の段階として必要なのかなと思っております。

 それから、伊藤社長がおっしゃっていましたリレーションのところです。私どもの銀行でも、最短で2年、3年過ぎると毎回のように、そろそろだねと、そんな形でローテーションすることになっております。かつては5年上限というのがやはりありまして、私どももやはり癒着をしないようにというところを聞かされてきました。ただ、金融庁さんのほうから御説明あったように、その指針は今撤廃されておりまして、我々の中計の中でもリレーション重視の人事ローテーションを意識していくということをうたっております。簡単に、単純にすぐ7年、10年という感じになるかというと、ちょっと難しいかなと思っておるのですけれども、以前よりは長いスパンでの異動を考えるようになっていくのかなと思っておりまして、やはりリレーション、事業性評価、そういったものを重視する流れというのは地域金融機関のほうでもありますので、見守っていただければと思っております。
 鈴木のほうは以上でございます。ありがとうございました。

〇神田座長
 どうもありがとうございました。
 それでは次に、堀内さん、どうぞお願いいたします。

〇堀内メンバー
 私は、川橋様のプレゼンについてコメントさせていただければと思います。
 私は、SMBCにいたときに、ニューヨークが長かったので、この手のファイナンスを割と長くやっていました。もう少し、規模はやや大きめではありますけれども、その観点で、ぜひ、釈迦に説法になるかもしれませんが、ヒアリングするときに少し御注意いただければと思うことがあります。それは、当該与信、融資にボローイングベースというものが入っている場合と入っていない場合がありまして、これによっても融資の考え方というのは大きく異なるということです。

 ここに書いてある6ページで、例えば、クレジット・ラインを用いて運転資金を出して、担保の範囲は売掛、在庫、機械設備となっておりますが、これは典型的にABLのパターンかと思います。ということは、個別資産の担保価値に基づいてお金を貸しているときに使うパターンということになります。今回の全資産担保の話というのは、個別資産ではなくて、対象企業が生み出すキャッシュフローに基づいた企業価値、それは過去、現在のキャッシュフローのケースもあるし、将来こういうふうに増えていくという前提に基づいたキャッシュフローをアンダーライトするケースもあるかと思いますけれども、何れにしてもABLとは別の話にな\ります。ミドル、スモールの部門というのは、別にABLでないといけないというわけでもないし、ABLでないファイナンスも混在していると思いますので、そこをしっかりと分けてヒアリングされたほうが、宜しいかと存じます。分けてというのは、どちらかというと、ABLでない、キャッシュフローローンのほうに関してヒアリングをされた方が今回の趣旨に合致しているということが1点です。

 その観点でいいますと、私が興味を持っているのは、モニタリングはリレーションシップマネージャーの責任であるということです。それは確かにそうなのですが、リレーションシップマネジャーというと、大企業なんかでRMとよく言われていますが、ミドル・スモール担当のリレーションシップマネジャーは、そういうのとは少し違っていて、借入人と直接やりとりをする融資管理担当者みたいなイメージです。だから、お客さんのところに財務データをもらいにいったりとか、様々な資料をもらいにいったりとかすると思います。ただ、管理を結構しっかりやるので、お客さんといい関係にはなるのですが、接待とかして、次の商機を伺うといった感じの話ではなくて、管理上、しっかり細かく見ている担当のことだと思います。こうした点で私が興味持っているのは、具体的に何をどのように管理しているのか、という点でございまして、そこを聞いてきていただきたいと思います。

 そのときに、ボローイングベースを管理しているということになりますと、個別資産の担保価値を管理していることになり、金融庁が思い描くファイナンスとちょっと違うファイナンスになります。資料には、中小企業の場合、財務データが不十分であるというふうに書いてありますが、実際には同じ企業、30億円程度の売上げのところだと、そこそこの財務データはあり、少なくとも日本よりは、開示が進んでいると思うので、実際にどういうデータを管理されているのか興味がございます。もし財務データの詳細がなくて、管理しているとしたら、一行貸しになっているという前提で、銀行の口座が当該銀行に集約されているので、その口座の出入りを見るというのが一番早いですね。これは粉飾がしにくいというメリットがありまして、そこの口座の出入りでふだんと違う大きな出金があったら何か違うことをやっていますし、入ってくるべきときに入ってきていなかったら取引先に問題があるということも分かりますから、口座の出入りをよく見ているという管理方法も実務的で張ります。それ以外に何を、どのように管理しているのかというのを知りたいと思います。

 あとは、チャプター11の話が最後に書いてありますけれども、もともとチャプター11というのは結構コストがかかりまして、ここに費用面の負担が大きいと書いてありますが、まさにそうです。これは何のコストかというと、プロフェッショナルフィーです。弁護士とかファイナンシャルアドバイザーとかに支払う手数料、これのコストが物すごくかかるので、中小企業にはあまり向かない制度なのです。今、サブチャプターVという新しい制度ができて、チャプター11の中のサブチャプターで、中小企業向けとして利用されています。チャプター11であれば必要な資料、中でも開示説明書といった資料の作成が免除され、Chapter 11であれば満たさないといけない条件の多くをウェイブして、弁護士とかファイナンシャルアドバイザーの手を煩わすことが少なくても、再生計画を立てて、提出できるようなシステムで、ここ一、二年で、コロナ関係で傷んだ債務者によってよく利用されて、うまくワークしていると聞いております。その辺りも聞かれたら、もしかしたら今後、中堅中小企業でそういう制度がもっと利用されるかもしれないということが
分かると思います。
 以上でございます。

〇神田座長
 どうもありがとうございました。
 それでは続きまして、菅野先生、どうぞお願いします。

〇菅野メンバー
 菅野から、事務局資料と、それから川橋様の資料にコメントさせていただければと思います。
 まず事務局資料について、この事業成長担保権が利用される場面を具体的に挙げていただいたのは、非常にイメージが持ちやすくて、参考になりました。私も、自分が事業再生の専門家ということもあり、利用場面の中で、やはり事業承継、それから再生局面の利用のされ方というところに一番興味を持っているところです。

 事業承継局面の(1)卸売、(2)OEMメーカー、これはいずれも、事業成長担保権の利用目的の一つとして、個人保証の範囲というものを適切なリスクテークに抑えるということが入っていて、これは既に経営者保証ガイドラインなどで、設定の場面で、適切な設定、適切な範囲ということを金融機関様が取り組んでいらっしゃるところだと思うのですが、事業成長担保権に切り替えるから、経営者保証の考え方を見直しやすくなるという効果があるのだとすると、それはまた一つ、事業成長担保権の意義だなと思って、例を見させていただいております。再生局面の(1)食料品製造も、言わばMBOのような事案でもありますので、ここも同じような意義があるのかなと思って、見ております。

 それから、再生局面の(2)宿泊のところで言うと、スポンサーの下での再生を模索しているという件で、これは私も自分が事業再生案件をやっているときに、スポンサー自身が強力な信用力がある場合は、そのスポンサーの信用力で、無担保で再生会社のほうも、第二会社のほうもローンを組めたり、親会社貸付けなんかで対応したりするということもあるのかもしれないですが、中小企業の再生の場合はスポンサーがそもそも見つからなくて、スポンサー候補のほうが、今後の運転資金を自分たちで調達するのが難しいということで、スポンサーになることに二の足を踏む、それだからスポンサーが見つかりにくいという局面もあります。こういったところの資金調達がしやすくなるというのであれば、それもまた一つ、事業成長担保権の意義なのかなというふうに思って、事務局資料を拝見させていただいておりました。

 それから、川橋様の資料については、1点、8ページ目の中小企業向け融資の慣行のところの、UCCファイリングについては期中管理で、第2順位担保権が設定されているか定期的にモニタリングされており、それがまた第1順位のアクションにもつながるというところは非常に興味深いなと思っております。後順位の事業成長担保権者については、先順位の極度額を設定して後順位が入っていけるようにするのかというところの議論だとか、後順位の事業成長担保権者に実行を許すのかというところの議論にも影響して、どういうふうに事業成長担保権がレイヤーをつけていくかのイメージが、これで少ししやすくなったなと。アメリカでは、後順位が順々に、段階的についていくということがあまり想定されていないのかなと思って、聞いておりました。
 以上です。

〇神田座長
 どうもありがとうございました。
 それでは次に、沖野先生、どうぞお願いいたします。

〇沖野メンバー
 ありがとうございます。私からは川橋様に4点、質問であり、また、こういうことが分かれば、必要に応じてというか、調査の中でも御検討いただきたいということで、4点を申し上げたいと思います。

 やや細かいことから申し上げますと、1つはスライド7の不動産についてです。担保としての不動産ということについて教えていただいたわけなのですけれども、一方、製造業などで工場を持っているというような場合には、工場も一体的に担保化できるということが意味を持つことは十分あり得るように思います。そして現在、UCC第9編は、正面からは不動産を取り込む形になっていないと思うのですけれども、ですからUCCを使うことは難しいという制約があるので、そういうものを入れるかどうかという立法に当たって少し前提が違うことはあるのですが、ただ、例えば製造業について、この制度を使うときには、当然不動産も別途取っているという形で、一体的にできるようにしていて、本当はUCCにそういうものも入ったほうがいいというふうにお考えになるようなことがあるのかどうか。

 それからもう一つは、不動産業に対して融資をするというようなことが考えられるのか。そういったときには、恐らく不動産が一種、在庫としての意味を持つような場合もあるかと思われるのですけれども、その2点において不動産の取扱いというものを、細かい点ではありますけれども、補充していただけたらというふうに思うところです。それが1点目です。

 2点目は、ちょうど菅野先生から御指摘のあったスライドの8なのですけれども、私も、この第2順位担保権が設定されているか定期的にモニタリングしているということを大変興味深く思って、拝見しました。菅野先生とはむしろ別の点なのですけれども、プレゼンテーションの中で、外部の業者を使ってモニタリングしているという御説明がありました。このことは、UCCの全資産担保を使うにしても、いろいろな、それを支えるようなサービス提供があちこちにあって、それと組み合わせることでうまくいっていると。言わば、どちらが周辺かという問題はあるかもしれませんが、周辺的な制度とかサービスとかが組み合わさってうまくいっているというところがあるように思われます。
 そうしますと、1つは、この定期的なモニタリングについて、外部のと言われた、その外部の事業者というのがどういうものなのだろうかということです。と申しますのは、第2順位担保権が設定されているかというのはファイリングを見ればすぐ分かることで、かつ電子化されたファイリングで、特に利害関係人でないと見られないというようなことにもなっていないと聞いております。端末をぱぱっとたたけば出てくるということだと、それ自体は、労力はかかるかもしれないけど、専門性は要求しないようにも思われるところで、そうすると、しかしそういった機械的な多数の作業に行員を当てるのは無駄であるということなので、外部を使っているのか、それとも何らかの専門性があるようなところがやはり必要なのかということが、スライド8の具体的な中身としては気になっているところです。ですので、定期的なモニタリングの内容としましても、そういったことも含めて教えていただけるとありがたいと思ったところです。

 なお、機械的に出てくるような話だと、ファイリングシステムのほうで、あなたがファイルしているものに後順位がつきましたとかいうのが自動的に届くような仕組みとか、そういうものも十分あり得るのかということも考えられるように思いまして、制度としては、そういうものがあれば、いろいろなところで自動化できるものは自動化したいというような要請もあるのかといったことにもつながってくるかと思います。この点以外にも、こういうサービスを使うことでうまくいっているというような、これを支える制度だとか活動とかの仕組みがあれば、ほかの点でも教えていただければと思うところです。

 3点目は、一行貸しか複数行貸しか、あるいは融資者の多様化という点についてです。スライド6のところで、中小企業取引は一行取引が基本だけれども複数行へ移行することもあるというときの、その移行の仕方や対応ということが、自社も残って、複数行で新たな全資産担保というような話になるのか、それとも言わば、後順位をつけるのだけれども、融資者間の合意で対等な回収ができるようにするのかとか、いろいろなやり方があるように思われます。

 それで、先ほどのスライド8のところで、後順位がついていないかというのを定期的にチェックしているというのは、後順位をつけることそのものについておよそ封じているということでは必ずしもないのではないかというふうに考えておりまして、一番問題だと思うのは、知らないうちに後順位がついているということで、自分のところから融資するはずなのに、ほかのところからも融資を受けているというのは、これは契約違反にもなる可能性ありますので、そういったところを検証するという面はあると思うのですけれども、逆に、後順位という形でここから融資を受ける分には構わないということならば、後順位がつくと思います。そのときの後順位は、後順位も全資産担保なのかどうなのかというところも分かれば、全資産担保というのが第1、第2、第3でつくようなことというのがやっぱりあるのかどうかということが分かれば、よりありがたいと思ったところです。

 UCCの第9編を勉強しておりますと、優先関係について、一行で全資産担保は非常に強くなり過ぎると、しかし劣後合意がかなり活用されているということを聞きます。サブオーディネーションアグリーメントでしょうか、ただ、これは「活用されている」で割と終わっているところも結構あって、一体どういうようなタイプの実態なのかとか、活用といってもどのように実現されていくのかとか、そういうところがよく分からないところもあり、どういうときにどういうような現実でそういう劣後合意とかをしているのか、そうは言われるけどあんまりやっていませんということなのか、そういうところも、融資者の多様化という観点から教えていただければと思うところです。

 最後、第4点目ですけれども、これは事業活動もモニタリングして、そして一緒に伸ばしていく、退場させるときは退場させるという、非常に強いコントロールを握っている面があるために、下手をすると銀行が、その事業がうまくいかなくなったときなどに責任を追及されるという可能性もあるのではないかというふうに考えておりまして、レンダーライアビリティとか、あるいは倒産の局面における劣後化だとか、そういうようなものに服することになりかねないのではないかという面があるのではないかと推測しているのですが、そういったことにもやはり注意して、銀行としてはいろいろな助言ですとかモニタリングとかをしているということなのかどうか。そういったときに、例えばそこの一線を踏み越えないというか、ここからこういうところまで行くとこれはライアビリティにかかってくるので、ここにとどめるというような、そういうようなことも意識されているのかどうかということが分かれば、教えていただければと思ったところです。全体としてのバランスもあるかと思いますので、可能な範囲でというふうに思っております。
 以上です。

〇神田座長
 どうもありがとうございました。
 川橋さんから何かございますでしょうか。

〇川橋様
 盛り込める範囲で、調査に盛り込むように検討させていただきます。
 今分かる部分について、ご質問の2の点目の外部機関を使っているということについてですが、基本的に、アメリカでは担保の評価なども外部の評価会社に委託をするというのが一般的になっています。それは、評価の客観性を担保するためと聞いています。これは、例えば、銀行自身やその関連会社による評価だと、借り手が銀行に有利な評価になるのではないかという気持ちになるからです。その一環として、UCC1についても、面倒くさいでしょうと、定期的に私のところで、四半期に1回、チェックして送ってあげますみたいな形のサービスは確立されています。特に金融機関の規模が小さい場合や、取り扱い件数が多い場合は、非常に煩雑な事務になりますので、そういうものは外に出していると伺っています。

 3点目ですけれども、一行貸しから複数行貸しへの移行ですが、おっしゃられるとおり、一行貸しから複数行貸しになるときは規模が非常に大きくなってきて、一行ではリスクを負えないという場合もあります。基本的には金融機関にとっては、企業が成長するということなので、非常にうれしいことではあるのですが、やはりそのときに、ほかの金融機関に取引を取られてしまうというケースももちろんあります。ただ、順調に成長して一行貸しから複数貸しに移行していく場合は、基本的に、先ほど申し上げましたような全資産担保ではなくて、特定の資産別に、資産に対して担保設定を行って、例えば商業不動産、工場を担保にしてお金を貸すとか、ある特定の設備に対してとか、あと売掛債権、どこどこ当ての売掛債権に対してというように、全資産担保でない形で担保を設定してお金を貸して、複数行がいろんな形で関係していくというのが一般的になっていると聞いております。ただ、先生のほうから御指摘がありました劣後順位の活用については、思い当たるところはあるのですが、これは調査で確認させていただきたいと思います。

 4点目ですけれども、御指摘はもっともでして、これには極めて注意しています。こういうことがあったら、いわゆる銀行がコントロール権を行使したということで、反対に訴えられる可能性があるよということは、かなり、外部の弁護士ですとかもそうですし、社内にいる法務担当者から強く教育されています。普段の取引ではあまり問題にならないことでも、やはり問題債権に対応していくときは、非常にリスクが大きくなることがあるので、レンダーライアビリティの考え方の整理にはかなりの時間を使っていると聞いております。
 私が今知り得るところはそういうことでございます。ご質問については、これからどのような形でヒアリングに盛り込めるかというのを検討させていただきます。

〇神田座長
 どうもありがとうございました。いろいろ調べていただきたいことは続々出てくるようですけれども、順番に、また無理のない範囲でということで、また引き続きの調査も場合によっては、金融庁さんのほう含めて計画いただけるかと思います。どうもありがとうございました。

 それでは、予定の時間を大分過ぎていますので、もっと議論したいところではあるのですけれども、資料3のほうに移らせていただきたいと思います。
 資料3につきましては、事務局から御説明いただくのですけれども、第一部と第二部を分けて議事進行させていただければと思います。すなわち、第一部を御説明いただいた後で討議の時間を取って、第二部をまた説明していただいて討議と、こうさせていただきます。
 では事務局から、第一部についての説明をお願いします。

〇水谷管理官
 御説明申し上げます。この資料は、昨年のこの研究会の皆様に御指導いただき作成させていただいた議論のためのたたき台が元になっております。今年に入って、様々な実務関係者の方々、有識者の方々から寄せられた御意見なども踏まえつつ、この研究会の皆様のさらなる御指導の下で、さらなる拡充を図ってまいりました。

 この資料では、法制度について詳細に検討を進めておりますが、もちろん法制度としての最終的な姿を確定することについては別の場でということは変わりません。そのため、今回の資料も、昨年同様、あくまで議論のためのたたき台という性質は変わっておりません。本日も、皆様に御意見いただくことで、その場での議論をより後押ししていければというふうに考えております。ぜひ、不足している視点ですとか、あるいは掲載されている御意見も補強いただくとか、あるいは理論や実務の観点から不適切ではないかと、あまり適切ではないのではないかというところを御指摘いただくとか、そういった御議論をいただければと思っております。

 それでは、資料の一部から終わりまで、目次を見ながら御説明させていただければと思います。まず0.というのを新しくつくりまして、この担保権の意義・目的というのを整理させていただきました。その上で、第一部として、1.において事業成長担保権の設定と公示に関わる問題を整理しております。昨年からの違いですけれども、目的物のところは、事業の一部に担保権を設定できるということを議論の俎上に上げていたのですけれども、これにはかなり否定的な御意見が多く寄せられましたので、こちらをご紹介しております。また、目的物に不動産を含むかという観点につきまして、こちらも私ども事務局側で不動産を除くということを議論の俎上に上げてそのまま載せさせていただいたのですけれども、これに対しては、不動産を含んだほうが理論的にも実務的にもよりよいのではないかという御意見もいただきまして、その点も両論併記で整理させていただいております。

 その上で、事業成長担保権の実行前の効力、2ポツですけれども、ここについては昨年から大きな変更はないのですが、例えば、金融機関の皆様から、ほかの担保権との関係についてしっかり整理してほしいというお声をいただいた点については2.3で整理しております。

 最後3ポツにおいて、事業成長担保権が役割を終えて消滅する際の規律について、これも昨年の論点整理では明示的に書かれていなかったことですけれども、既存の担保制度と同様に、検討して、整理する必要があろうかと思いまして追記しております。

 以上、それぞれの論点の抽象度ですとか具体度は、現時点でまだバラツキはあるのですけれども、本日の御意見を踏まえて深めていきたいと思っております。
 事務局からは以上でございます。

〇神田座長
 どうもありがとうございました。それでは、第一部、今御説明いただいた部分につきまして御質問、御意見、どなたからでもお出しいただければ大変ありがたく思います。いかがでしょうか。特に御質問、御意見ございませんでしょうか。
 沖野先生、どうぞ。ありがとうございます。よろしくお願いします。

〇沖野メンバー
 ありがとうございます。いろいろな問題点を整理していただいて、最終的な結論を全部、決めを打っていくというよりは、こういうことについてどう考えるかということで、非常に整理されたと思います。

 1点だけ、目的物、あるいは財産のところで、事業単位とするかどうかという点です。一部の事業という形でできるかということですが、11ページのところなのですけれども、これは、事業ごとにこのような形での事業成長担保権というのを活用することは必要になる、あるいはそれが望ましいときもあるのだと思います。ただ、切り分けが非常に難しいということがあります。特に他の債権者との競合というようなことを考えたときに、どちらの事業の債権者なのか、また両方の事業にまたがるような場合にどう切り分けていくのかとか、そうすると、かなり複雑な問題が出てくるのではないかと思われます。

 そして、もう一つの観点として考えられますのは、問題点はもうそれぞれ両論書かれているのですけれども、制度自体を、まずは中核、一番明確なところでつくっておいて、さらにやはり一部の事業ということも、その問題点をクリアできるとか、それを補って余りあるメリットがあるので、やはりそういうものにも制度を使えるようにしたいというような形で、制度自体を成長させていくという考え方もあるかと思います。ですので、まずは法人格単位で、コアの部分でつくった上で、必要があれば、またそれはうまくいくということを踏まえて、その経験なども踏まえてさらに展開していくという、そういう段階的な制度創設という点もここには考えられるかなというふうに思ったところです。
 その点だけ補足させていただきたいと思います。

〇神田座長
 どうもありがとうございました。
 それでは、本多さん、どうぞお願いいたします。

〇本多メンバー
 ありがとうございます。今ほどの沖野先生の御議論に関しまして、御指摘のとおり、制度設計としての複雑さを差し当たり回避して、まず分かりやすい仕組みをつくっていくというのは戦略として大いにありというふうにも考えております。一方で、ファイナンス実務の観点から、この事業成長担保権の使い方を考えた場合に、場合によっては、複数の事業ポートフォリオを持っていらっしゃる債務者を想定した上で、そのうちの、例えば優良事業を切り出す形で、ファイナンサビリティーをより拡張していくという使い方は考えられるかもしれません。そうした場合に、ファイナンスの採り上げのしやすさから、事業の一部のみを事業成長担保権の対象事業とさせていただくということがあるかもしれません。

 一方で、先ほど私のほうから申し上げました単一の事業体を前提として、その事業全体を事業成長担保権の対象とさせていただくような場合に、そのことのみをもってしては、なかなか信用補完としての活用可能性が認められ難いというところもございまして、その場合に、別の与信の見方、よく債務者格付とか案件格付とかという金融機関なりの言い方をさせていただくのですけれども、単純な債務者格付ではなくて、事業ごとに、もしくはそういう事業を持っていらっしゃる債務者を1つのプロジェクトと見立てて分析をさせていただいて、案件格付という、債務者格付とは異なる格付を適用させていただいて、与信に際するクレジットコストがより小さい形で分析できるような与信の組立てを図っていくというのは考えられそうなのかなと思っています。

 その際に、先ほど申し上げたところの繰り返しになってしまうのですが、単純に債務者格付を適用するような与信の手法ではなくて、そうしたプロジェクトベースでの与信の採り上げがかなうように、事前に事業の分析、キャッシュフローの創出力の分析などというのを精緻にさせていただいた上で、その分析を踏まえて、例えば与信契約中において必要なモニタリングコベナンツを整備して、その後、期中において実効的にモニタリングをさせていただく、それから、それをサポートする周辺制度も組み合わせていく、そういう形で債務者、それから担保権者の両方にとってのインセンティブを設計し、かつその結果として、事業成長担保権を用いることによって、良質なファイナンス、資金調達ができるようになるという好循環を生じさせていく必要がありそうなのかなというふうに考えております。
 以上になります。

〇神田座長
 どうもありがとうございました。
 それでは次に、井上さん、どうぞお願いいたします。

〇井上メンバー
 井上です。ありがとうございます。私も、この事業成長担保をどういう担保として設計、構想するのかによるので、一部だけを取り上げて議論するのは難しいのですけれども、現在の譲渡担保の法理を改正していって、動産、あるいは集合動産あるいは集合債権の範囲を広げていくような議論は、むしろ法務省法制審でやっている議論で、例えばABLなどのボローイングベースのレンディングに応えていくのは、そちらでやっていく必要があると思うのですけれども、それと別にこちらで、この事業成長担保を、個別の財産の処分をある意味許さない、そういう個別資産の換価によって回収することを想定せずに、事業全体のネットキャッシュフロー、フリーキャッシュフローから優先的に回収していくというような、それが譲渡であれば事業譲渡になりますし、継続的にキャッシュフローをつかまえていくということであれば、言わば事業の収益執行型の実行ということになると思うのですが、そういうタイプの担保として考えるとすると、やはりその目的物は、企業全体をつかまえるということになるべきだし、会社の一部の倒産とかいうことがなかなか想定できないのと同じような意味で、基本的には事業全体を対象にすべきかなと思います。

 そのときに大事になってくるのは、どういうふうに公示するかということで、そういう担保として想定するのだとすると、基本的には、むしろ法人の商業登記に事業成長担保設定済会社のような形でフラグが立つみたいなのに近いイメージなのですけれど、人的編成で、ある企業で検索すれば、その企業が設定済みの企業か設定未了の企業かだけが公示されるというくらいの分かりやすい制度にした上で、ここから先は、どういうふうに技術的に対応できるかという限界が分からずに、夢物語を言っているのかもしれませんが、その登記、登録あるいは公示がなされれば、自動的に、その法人名義でなされている不動産登記あるいは知的財産登録といったものに、職権でということかもしれませんけれども、自動的に連携してフラグが立つようなイメージを持っております。つまり不動産登記で言えば、所有権を示す甲区の欄にその法人の名前が出ている場合には、そこにピコッとウオーニング・ランプがついて、その後は、担保の設定を受けることについて制約が生ずるような公示ができないのかなと思ったりしております。

 事業成長担保を設定して、今申しあげたような公示をする前の他の担保は、基本的にはひっくり返せないというのが当然前提になると思いますが、逆に言うと、事業成長担保権を設定するときには、そういった先行する担保融資が基本的にはリファイナンスされる前提で考えるとすると、その後は、これは担保権の設定を認めない方向で考えるということです。認めないということは、つまり公示がしっかりできていれば、誰も担保を設定しようとしないし、設定しようとしてもはねられるということが確保できるということとセットで、先ほど申し上げたような事業キャッシュフローをつかまえる制度として構想するのがいいのではないかと考えております。
 以上です。

〇神田座長
 どうもありがとうございました。
 それでは、堀内さん、どうぞお願いいたします。

〇堀内メンバー
 2点、申し述べたいと思います。借入人につきましては、皆様方がおっしゃっておられるので私も賛成でございます。基本は、想定している会社の規模がそれほど大きくないということを前提にすると、全社ベースが基本ですが、あえてグッドとバッドに分けて、いいほうにだけ融資をするというのであれば、法人格を別にしてやるというのがスタートとしてはやりやすいし、分かりやすいと思います。また、法的にも一応そこで分離できると、しやすいということで、かつ、もし万一のことがあっても、その法人を譲渡すれば、本来の回収方法になりやすいということで、いいのではないかと考えます。

 もう一つ興味深いのは不動産をどうするかというところでございまして、もともとは、私は、不動産は入れないほうがいいのかなと。考えておりました。それはなぜかというと、基本的に不動産を持っていない会社を前提にしていると、要は在庫を仕入れてきて、加工するなり何なりして、売掛金になってキャッシュになる、それがキャッシュフローの源泉になっているということで、機械設備、在庫と売掛債権、つまり動産と債権を担保にするという形でやる方がいいのかなと思っておりました。これはどちらかというと、不動産はもう今、法担保制度が確立されて久しく、かつ日本の場合、かなり複雑に、一債務者が幾つもの不動産を持っていて、それに複雑に担保権が入り組んでいるというのはよくあるので、ここにまた後から、後順位でつけるとなると、更に複雑になるので、回避したいと考えた次第です。それで不動産を除くというふうにしていましたし、後で出てくるプライミングリーンのときなんかも、不動産が入ってくると複雑になるかなと思っていたのですが、全額リファイナンスして、この事業成長担保権つき融資をやる場合、つまり、以前の不動産担保がきれいになるという前提であれば、これも入れることができれば、それはいいのではないかというふうに思います。

 その場合は、特定の不動産というよりは、借入人が持っている全不動産を一括で担保に取るという形になるのであれば、ほかの資産と同様にやりやすいのではないかと考えます。後から第2順位、第3順位とかいう形でつけていくというのではなくて、きれいにリファイナンスして、事業成長担保権が不動産に第1順位になる場合は、不動産も含めたらいいと思います。不動産がなければ、一言で言うと、今、提唱されている事業成長担保権というのは、割とUCCに似たような感じになると思いますが、不動産を入れると、恐らくあまり世界に類のない、画期的なものになると思いますけれども、きれいになる場合であれば、不動産はあまり障害にはならないのではないかと思います。
 以上です。

〇神田座長
 どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
 それでは、どうぞ本多さん、お願いいたします。

〇本多メンバー
 ありがとうございます。皆様の御見解をお伺いしておりまして、幾つか気がつきましたといいますか、感じられたところがございましたので、感想めいたお話になってしまうかもしれないですが、お話しさせていただければと思います。

 今ほど堀内委員から、不動産の組入れに関する御指摘をいただいたところであったのですけれども、事業キャッシュフローをつかまえる、これは井上先生もおっしゃっていたところでありますが、それを事業成長担保権の機能の一つとするということなのであれば、不動産の所有権または利用権が対象事業を行う場所の占有権限として重要であって、それがない限り事業キャッシュフローを生み出す資産の積み上げの中で必須のものが欠けてしまうということなのであれば、金融機関としては、一旦リファインナンス等する形で、仮に不動産に先順位の担保権がついていた場合には、事業成長担保権の設定を受ける担保権者が最先順位になれるようなアレンジメントをするというのが前提になりそうなのかなと思います。仮に不動産抵当権と事業成長担保権とが分離的に設定されることになるとしても、繰り返しになりますが、不動産が事業を構成する主要資産であるということなのであれば、共同担保的に担保権の設定を受けるというのが事業成長担保権を利用するファイナンスに取り組むに際しての前提条件になるのではないかなというふうに思います。

 そういう考え方の延長線上になるのか、もしかしたら反対の方向からになるのかもしれないのですけれども、事業キャッシュフローをつかまえにいく、そのための担保パッケージを考えるということは既に現状の実務でもやっているところでございまして、個別資産の積み上げ的な発想ですが、事業を分析させていただいた結果として、この資産とあの資産、それからまた別の資産を組み合わせることによって事業のキャッシュフローが生まれているという分析をさせていただいた上で、事業キャッシュフローをつかまえる上で疎漏がない資産の組合せを検討させていただいて、それらの資産に担保権を設定させていただくことにより、結果として事業キャッシュフローが漏れなくつかまえることができるという担保アレンジはできると思われ、それとの間において、事業成長担保権がどれだけ秀でたものになるかというのは、この資料の中でも検討されているのですけれども、いま一度、分析をする必要がありそうなのかなというふうに考えております。
 以上です。

〇神田座長
 どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
 千葉銀行の鈴木さん、どうぞお願いいたします。

〇鈴木メンバー
 千葉銀行の鈴木でございます。ありがとうございます。第一部の中でいきますと、あと預金債権のところです。預金債権を対象に含むかというのは地銀協のほうでも多くの意見が出ているところでございます。コベナンツで口座を集約するとか、そういう合意をすればある程度カバーできるという記載も資料にはありますけれども、例えば無担保融資で参入してくる後発の金融機関の預金はどうするのかとか、そういったところについては少し制度設計の中で検討していく必要があるかなと考えております。

 一方で、例えば事業立て直しのために本社ビルを売却して資金調達するケース、こういう非常に大味な資産が預金に振り替わる、そういったケースも当然あり得るので、そういった場合は、やはり代わり金が担保とできないと実行性が乏しくなる、そういったケースもあり得ますので、預金については非常に、口座管理機関への影響にも配慮しつつ、慎重に検討していく必要があるのではないかと思っております。
 以上でございます。

〇神田座長
 どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
 それでは、冒頭申し上げましたけれども、大分長時間になっておりますので、ここで10分間の休憩を取らせていただきたいと思いますけれども、よろしゅうございますでしょうか。今、私の時計が5時56分から57分になろうとしているのですけれども、10分ということで、中途半端で恐縮ですが、6時6分頃に開催させていただければと思います。よろしくお願いいたします。

 ( 休  憩 )

〇神田座長
 それでは、大変恐縮でございますけれども、そろそろ再開させていただければと思います。
 第2部の御説明をお願いできればと思います。その後での討議のときに、第1部についての追加での御意見等もお出しいただいてももちろん結構でございますので、事務局から第2部の御説明をお願いいたします。よろしくお願いします。

〇水谷管理官
 よろしくお願いします。第2部ではデフォルトに至った状況を想定した規定を整理しております。

 4.優先順位では、事業成長担保権固有の優先順位、あるいは実行手続の中での優先順位について検討しております。昨年のたたき台に対しては、研究会の皆様を含む多くの方々からの御指導をいただき、大きくa案からc案という3つの大枠で様々な御意見を整理しております。

 5.以降の実効手続については、昨年のたたき台に寄せられた御意見を基に、大きく2つ、裁判外の手続の実行と、裁判上の実行という形で2パターンに分けて整理をしております。
 このうち、裁判上の実行は、ある程度コストや時間がかかっても構わないといったニーズに対応するものとして御検討いただければと思っております。他方で、裁判外の実行につきましては、裁判所が関与することでコストや時間がかかって、事業としての価値がなくなってしまうといった場合にまで、この右側の選択肢しか使えないということですと、それはなかなか現実的にはワークしづらいものになってしまいます。そういった場合にも事業の継続に資するような選択肢として、この裁判外の実行といったものを御検討いただければと思っております。

 最後の12は、倒産処理手続が申し立てられた場合、倒産に至ってしまった場合に、この担保権というのがどのように扱われるかということについて整理したものでございます。

 冒頭の0.の意義と目的で整理されたことを反映しまして、特に担保評価の点ですとか、あるいはPriming lienについて、これまでの担保制度とは大きく異なる論点が生じております。
 以上、概略のみでございますけれども、事務局の説明を終わりたいと思います。ありがとうございます。

〇神田座長
 どうもありがとうございました。説明を簡潔にしていただきましてありがとうございました。
 皆様方、最後の資料は今日送られたかもしれませんけれど、前の資料と基本的には同じですので、お目通しいただいているかと思いますけれども、どの点についてでも、またどなたからでも結構でございます。結構、法律論を始めると細かい話にもなり得ますけれども、もちろん細かい点でも結構ですし、巨視的な点でも結構かと思います。いかがでしょうか。
 それでは、ありがとうございます。菅野さん、どうぞよろしくお願いいたします。

〇菅野メンバー
 ありがとうございます。担保権実行のところの優先順位に関するところも、今もうお話ししてもよろしいでしょうか。

〇神田座長
 もちろん結構です。よろしくお願いします。

〇菅野メンバー
 承知しました。優先順位のところですけれども、2点ございます。
 1つに、先ほどおっしゃっていた、事業成長担保権の実行手続開始前に生じた債権との優先関係のところを、(a)(b)(c)で整理していただいたということなのですけれども、必ずしも(a)(b)(c)は並列に完全にすみ分けられている話でもないのかなと思っております。

 例えば、(a)と(c)、政策的に一定の範囲の債権について随時弁済するということで、債権の範囲を広げた中でも、ここまでについては裁判上の実行の場合の管財人判断で払え、ある一定の債権については裁判所の許可を求める。(a)における裁判所の許可と、それから管財人判断というのも、別に二者択一の話ではなく、類型によって、例えば事業の維持継続に必要な通常の支払いに近いものについては管財人判断、不法行為債権のように突発的で判断が難しいものについては裁判所許可にする、そういう組合せも考えられると思います。

 それから(c)のところの、一定の政策的な債権を保護の対象にするということの(c-1)、金融債権以外の全ての債権は、全て事業成長担保権者の被担保債権に優先する、これは非常にシンプルなアイデアですので、実務的にも判断に迷うというのはあまりないのかなと思っていますし、事業成長担保権であれば、基本的に今までのような多数の金融債権者がいるというより、どちらかというともう少し少ない金融債権者、メインを中心とした債権者構成になるので、金融債権か否かの判断もしやすいのかなと思っています。ただし、この(c-2)の「金融債権と同視できる」債権というのは、実務的には結構判断が難しいと思っておりまして、例えば取引先が売掛債権の中で―、債務者から見れば買掛金ですね、その中で与信を与えているような場合は、かなり長く滞留し、2年とか3年とか滞留していると金融債権に近いような側面になる。返済期限をどんどん延ばして膨らんでいったり、取引債権を金銭消費貸借に切り替えたばかりの債権については、ついこの間まで取引債権だったという色彩もあるので、こういったところは同視できるのかどうかという、契約類型からだけ必ずしも言えないところもあります。

 また、商社さんのように債権者の属性としても金銭債権に近いパターンもあり、金額も金融債権と同額、もしくは場合によってはそれ以上の金額で資金供与しているというケースもあったりするので、ここのところは結構、実は難しいのではないかと思っています。

 だから、こういった難しいところについては、例えば裁判上の実行であれば裁判所許可の対象にするのか、誰が判断するのかというところは、(c)の場面であったとしても問題になるのではないかというふうに考えております。
 優先関係について、私からは取りあえず以上のコメントになります。

〇神田座長
 どうもありがとうございました。
 それでは、次に堀内さん、どうぞお願いいたします。

〇堀内メンバー
 1点だけ申し述べたいと思います。個別資産の実行をどうするかというのがポイントになっておりますが、結論から言うと、個別資産の実行が禁止というか、事業成長担保権で融資した場合はできませんということになると、これは金融機関としては事業成長担保権の利用についてかなり消極的になるのではないかと懸念しております。

 もともと金融庁からも、これは追加的選択肢ですという説明をしているところからしても、事業成長担保権を使ったとしても、個別資産を積み上げたのと同じように個別資産の実行もできますというふうにしておかないと、担保権者から見て、使い勝手が悪くなると思われます。次に、資料の中では、反対意見としては、破産でやればいいじゃないかというような意見が書いてあるのですが、これは理論的にはそうかもしれないのですけど、実際に個別資産を換価する場合、例えば、私的整理の下で小売業の在庫を換価しますというケースで、店舗で閉店セールを実施して売った場合の換価額と、破産になって、いわゆる業者に超安値で一括売却する場合ですと、換価額が大きく乖離することになります。個別資産の売却は破産でやればいいというのは、換価額をかなり極小化させることになるので、担保権者としては、なかなか受け入れ難いのではないかということです。個別資産の売却は必ず権利として認めないと、ワークしないのではないかと思います。

 問題は、合理的な担保権者であれば、ゴーイングコンサーンベースで売却した場合と個別資産を売却した場合で、高いほうでやるということで、生きている会社の場合、大抵ゴーイングコンサーンのほうが高いからそっちでやればいいのですが、特定の資産だけに目をつけて、生きている会社を殺してまでその資産だけを売却するということが行われるとあまりよろしくないなと思いますので、そこだけが少し難しいところです。

 つまり、合理的に考えたときにどういうふうに判断するのかというと、担保権の観点からすると、ある程度ゴーイングコンサーンの価値が出るのであれば、企業売却または事業売却が望ましいのですが、そうではない判断をする担保権者がいるケースがもしかしたらまれにあるかもしれません。

 ただ、個別実行はできないというのになると、事業成長担保権を利用しようとする金融機関が萎縮するのではないかと思います。
 以上です。

〇神田座長
 どうもありがとうございました。
 それでは、次に本多さん、どうぞお願いいたします。

〇本多メンバー
 ありがとうございます。今、菅野先生から優先順位に関して、それから堀内委員から個別資産、事業成長担保権の対象事業を構成する個別資産に関する担保実行に際するバストアップ的な実行手続に関する御指摘をいただいたところだったのですが、菅野先生、それから堀内委員の各コメントについて、金融機関の実務面から感じられる部分も含めて、見解を述べさせていただければと思います。

 まず優先順位のところなのですけれども、そもそもの前提として、事業成長担保権に預金債権が含まれない場合、すなわち、事業が遂行され、その結果として在庫が回転し、キャッシュ化され、そのキャッシュが預金として滞留することになりますが、事業成長担保権だけ設定され、預金については担保権の対象外とされる場合には、預金の流出は止められないかもしれなくて、そうすると、優先順位がせっかくつけられていたとしても、そのとおりの弁済ができないまま、どんどんそのキャッシュが漏れ出していくということになるかもしれません。
 なので、金融機関が事業成長担保権を利用したファイナンスに取り組む際に、仮に事業成長担保権の対象から預金債権が外れるという場合には、預金債権に対する担保権を別途設定させていただくということが大前提になるのかなというふうに思っております。

 それを前提とした場合に、(a)(b)(c)の各案に関しまして、例えば(c)案につきましては、菅野先生も御指摘のとおり、金融債権とそれ以外の債権というのはそれほど実務上截然と分けられるわけではなくて、実際に私的整理の局面においても、対象債権がどの範囲なのかというのは大きな論点になったりしますので、一つの分かりやすい区分けであるかもしれない一方で、実務面に落としたときに必ずしも明確ではないかもしれないというのは、菅野先生の御指摘のとおりかなと感じました。

 一方で、(a)(b)(c)のそれぞれを、どれかを選択しないといけないわけでもなさそうというのも御指摘のとおりなのかなと思いまして、実行のやり方ごとにやりやすいものを選択していくというのも、実務面では生じてきそうなのかなというふうに思われました。

 例えば(a)案に関して、さらにその(a-1)(a-2)(a-3)の区分がされているのですが、事業成長担保権の実行方法として、事務局から提案されています任意実行の場合、それから管財人が選任されて実行される場合、なお、後者のほうは裁判所の関与がある場合ということなのだと思うのですけれども、この2つに分かれる場合に、任意実行の場合に裁判所の関与を求めて優先的な弁済を認めてもらうというのは恐らく制度的に難しそうで、一方で、だからといって無制限にキャッシュが流出するわけではないはずで、預金債権も含めて事業全体に担保権を設定させていただいていることを前提として、担保権者として、商取引債権者や労働者に対する支払いが行われたほうが事業価値の向上に資するということなのであれば、現在の実務上も任意に担保解放させていただいて支払いに充当していただくということは許容しているところでございまして、堀内委員も「合理性を持って判断する限りにおいては」ということを別な文脈でおっしゃっていたのですが、合理的な運営がされている限りにおいては、優先性、もしくは商取引債権者や労働者に対する必要なキャッシュの支払いということになると思うのですが、そこは担保権者が自発的に判断し、きちんと価値の最大化に向けた運営がされ得るというのは期待できないわけではないと思っております。
 一方で、裁判所が関与する形で管財人が立って実行する場合には、担保権者としては裁判所にお伺いを立てることになると思われますが、少額債権の弁済許可のような制度を設けるというのは一つの方法なのかもしれないのかなというふうに思いました。

 それが優先性に関する差し当たりのコメントでございまして、一方で、個別実行に関してなのですが、堀内委員の御指摘のとおり、担保権者として、事業成長担保権の場合は必ず全事業を一括してでないと処分できないというのは窮屈過ぎるかなというふうに感じていまして、特に事業自体のデットサービス前フリーキャッシュフローがネガティブであった場合に、そもそも処分しようにも値がつかないという状況になり得る可能性はありまして、その場合には、個別資産ごとの実行がむしろ経済合理性にかなっていることとなっているかもしれないのかなと思いました。
 一方で、フリーキャッシュフローがポジティブである局面において、それがだんだん小さくなっていくというふうなことが想定されるのであれば、早いタイミングでモニタリングコベナンツなどにトリガーさせた上で、まだ事業として生かせる形、それが結局換価価値としてもより大きな形になると思うのですけれども、そういう状況下において早期のM&Aを促していくというのが合理的な行動になるのではないかなというふうに考えます。

 その合理性の判断に関しまして、本来的に担保権者である金融機関が、こういうやり方が合理的であるというふうに、経済性、必要性、相当性も含めて自ら考えてやっていくのがあるべき姿なのだと思うのですけれども、もし、まだ制度としての離陸後間もなくて何が合理的な判断になっているのかというところで迷いが生じるということなのであれば、ガイドラインの整備によりガイダンスを設けていくというのも、こういう制度を普及させていく上での工夫の一つになるかもしれないのかなと思いました。
 以上になります。

〇神田座長
 どうもありがとうございました。
 それでは、次に井上先生、どうぞお願いします。

〇井上メンバー
 ありがとうございます。先ほどから議論されているように、今回は不動産ですとか預金も含めて事業成長担保権の対象になるという前提でコメントをしたいと思うのですけれども、まず優先順位についてですが、金銭消費貸借以外全て事業成長担保権に優先するということになると、ちょっと事業成長担保権が、明確ではあるのですが弱くなり過ぎて、全然使えないことになってしまうので、基本的には優先する債権者というのは、アイテマイズしてといいますか、労働債権あるいは取引債権をどういうふうに特定するかは一つの問題ですけれども、実行前の債権者で優先する人は、ある程度類型的に限定列挙することをベースにして、あと、それで足りない分は、これは菅野先生もおっしゃっていましたけれども、合わせ技で、裁判所の許可を取るなり、倒産手続における少額債権者に対する弁済と似たような形で、事案ごとに対応することが望ましいのではないかと思います。

 次に、実行についてですけれども、これも非常に難しいところですが、個別財産に対する実行を許すかどうか。これは、全面禁止すると担保権者としては困るというのは既に御指摘されたとおりかなと思いますが、他方で、自由に選択することができる、制約がおよそないということになると、非常にまずい実行も起き得るのではないかということが気になっていまして、フリーキャッシュフローがプラスのときであっても、お宝財産を幾つか見繕って売却して、自分の債権だけは回収できるという状況のときに、果たしてそれがいい結果かというとそうでもないと思いますので、そういう意味では何らかの制約をかける必要があるのではないかと現時点では考えています。

 他方、ネガティブなキャッシュフローになってしまったという状況で、事業成長担保権者に対し、全ての個別資産に処分権が認められるとすると、それこそ、例えば破産手続になったときに、全ての資産について一行が別除権を持つという想定というのは、あまりにほかの債権者に対するインパクトが逆に大きくなり過ぎるので、その点でも、一定のカーブアウトなり優先債権なりを認めるといった措置が当然出てくるでしょうから、そうすると、優先債権をどう定めるかという問題と、それから倒産のときにどういうふうに取り扱われるのかをセットで考えなきゃいけないと思います。平場のといいますか、倒産手続外の実行についても、個別財産に対する実行をどういうふうにコントロールするのかは非常に重要な問題ではないかと思います。

 事業成長担保権について特別に今回想定する手続についても、裁判上の実行について、管財人による実行と書かれていますが、これについては、今は一つまとまりで書かれていますけれども、イメージとしては、言ってみればミニ倒産手続に近いものだと思うので、現実の倒産手続と同じように、いわゆる自主再建型に相当するような収益執行の仕方と、それからいわゆるスポンサー型に相当するような事業譲渡による実行と、2つのパターンがあってもいいのかなと考えております。
 以上です。

〇神田座長
 どうもありがとうございました。
 それでは、次に山本先生、どうぞお願いいたします。

〇山本メンバー
 それでは私のほうから、実行手続の部分について、細かなところはいろいろあるのですけれども、やや大きな考え方というか、その点について2点、コメントをさせていただければと思います。

 まず、私的実行の、裁判外の実行ですか今回、任意実行の部分です。
 この点、どういう規律ぶりにするかというのは、この制度の法的な位置づけをどういうふうに考えるかということによってかなり違ってくるかなというふうに思っていて、その点で私は、非常に大きなポイントというか分水嶺になるのは、この実行手続の主体、さらに言えばこの処分権限が誰にあるのかというところではないかというふうに思っています。

 処分権限が担保権者にあるとすれば、これはまさしく私的実行ということになるわけでありまして、現在の動産債権担保で議論されている、いわゆる私的実行と同じものになるのに対して、債務者が処分権限を持っているということであれば、これは法的には単なる任意の売却、売買になると。売買をして担保権者に弁済しているという現象に過ぎないということになろうかと思います。不動産のいわゆる任売と言われるものと同じことになるのだと思います。

 前者で規律するとすれば、これは今の動産債権担保の実行でいろいろ議論されていることと並びで、いろいろな形の議論、ここにある例えば譲渡の公正性とかそういうようなことが問題になってくるのかなというふうに思うわけですが、後者のように捉えるとすると、つまり債務者が処分権限を持っているのだということになったときに、ここに書かれているような規律の持つ意味がどういうことなのかということは考えておく必要があるのだろうというふうに思います。

 通常の売買、事業の譲渡であれば、その売却は必ずしも公正な方法というか、あるいは公正な価額というふうなものは求められていないのではないかというふうに思うわけでありまして、債権者が何らかの不満を持ったとしても、それは詐害行為取消権とか動産の否認権によってそれを是正するということはあり得るでしょうけれども、一般的に公正な価額でなければならないという規律は必ずしもないのだろうというふうに思っておりまして、ここにこういう規律を入れるとすれば、それが一体どういう根拠に基づいて正当化されるのかということは慎重に考える必要があるのだろうと思います。

 債務者の法人格の全財産を担保に供している場合の督促なのだと。そういう場合の事業譲渡、売買の督促なのだというような説明は不可能だとは思いませんけれども、いずれにしろ、かなり説明の仕方は違ってくるように、あるいは規律の内容も違ってき得るように思いますので、そこはかなり考える必要があるのではないかということは思っております。

 それから第2点は、裁判所による実行のほう、管財人による実行と言われている部分です。これについて、先ほど井上先生からミニ倒産手続というふうな御指摘があって、そういう形、いわゆる担保権実行手続と倒産手続をハイブリッドしたような形の手続になっているような印象は持っておりまして、それは、こういう全資産を担保にするということからすれば、ある程度そういうことになるのだろうなというふうには思うところです。

 ただ、どの範囲でこういう倒産的な規律を担保権実行の中に持ち込むかということについても、これも慎重な検討がやはり必要なのだろうというふうに思っているところでありまして、例えばそこの中では、債権者に対して通知等を行って、そして債権者の債権調査・確定等をこの手続の中で行うという構想が述べられております。
 それは分からないではなく、要するに、この担保権実行の中で、債権の弁済というか配当も倒産手続的に行うという構想は分からないではないような気はするのですけれども、それによって破産手続等を事後的に行うということを回避するという面もあるのだろうというふうに思いますけれども、ただちょっと、果たしてそういうふうにいくのかというふうに思わなくもありません。

 さすがにこれは、倒産手続的にするといっても、いわゆる倒産実体法的な規律をこの中に入れるというのは難しいのだろうと思います。つまり、この管財人が否認権を行使するとか相殺権を制限するとか、そういったようなことはやっぱりなかなか難しいのだろうというふうに思いまして、そういう意味では、どこまでいってもやや中途半端な感じの規律にならざるを得ないのかなというふうに思っているところであります。

 そういう意味では、あるいは、そういう部分については倒産的な規律とは切り離して、ただ、必要があれば事後的に破産手続等を行うような形で、破産手続と手続を連続させていくと。ただ、この手続については、基本的にはやはり担保権実行の手続として考えていくというような、手続を分けて考えていくということもあり得るかなというふうには思っていて、それは、この裁判所の実行手続というのが実際上どの程度使われるのか、それは結局、この左側の任意実行がどの程度使われる、あるいは使いやすいものになるのかというようなものとも関わってくる部分があろうかと思いますけれども、その辺りも引き続き検討する必要があるかなというふうに思いました。
 私からは以上です。

〇神田座長
 どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
 事務局のほうから、この点について意見を伺っておきたいみたいな点がもしあったら、指摘いただければと思いますけど、いかがでしょうか。

〇水谷管理官
 ありがとうございます。今いただいた御指摘、十分に踏まえてまた検討したいと思います。今のご指摘とも関連するところなのですが、この換価の公正性の確保につきまして、裁判外の実行でも裁判上の実行でも、さらに株主の保護などのほかの論点でもある程度関わってくるところかと思っておりますので、ぜひこの点について、望ましい点、こういうふうにすべきだという点をいただけると大変ありがたく思います。

〇神田座長
 ありがとうございます。どなたか、コメントとかありませんでしょうか。
 どうもありがとうございます。本多さん、お願いします。

〇本多メンバー
 ありがとうございます。公正な価格であることを確保すべきかどうかに関してなのですけれども、先ほど山本先生がおっしゃったとおりかなというふうにお伺いしていて感じたところがございまして、担保権者として担保権を実行させていただく局面において公正な価格でないといけないという法理がどういう根拠から導かれるべきなのかというのは素朴に疑問に感じるところがあります。すなわち、設定者との関係において、例えば譲渡担保権の私的実行のような場合に、適正な評価額で処分したものとして被担保債権の消滅だったり清算金の金額だったりというのが決まるというのが判例法理であるとの理解ですが、そうであるとして、そのことが公正性を確保すべき、との立論に直ちに結びつくことになるわけではなさそうで、むしろ公正性ということがいわれるのは、何らかの構造的な利益相反関係があって、それを回避するといいますか、是正する上で何らかの公正な方法であることが求められるというふうな文脈で「公正な価格」というのが用いられるのが一般的なのかなというふうに考えます。そうであるとして、事業成長担保権者が公正な価格による処分を求められるとすると、あたかも事業成長担保権者が全事業資産を担保としていただく結果として、設定者のための、もしくはその一般債権者や株主のためのフィデューシャリーみたいな形になってしまうということのように見受けられるのですけれども、その正当化根拠がどこにあるのかというのは、よく煮詰められるべき論点なのかなというふうに考えています。

 実務的には、実行の局面において、他の債権者や株主のためにも公正な価格でないといけないという義務を負担させられることになるのは、担保権者としても重たいですし、仮に管財人として事業成長担保権の実行の局面において任命される機関においても、厳しい部分があるのではないかなと個人的には考えるところがありまして、一方で適正な評価額は確保される必要があるのだと思うのですが、その辺りが一つのラインになるのではないかなというふうに考えます。
 以上です。

〇神田座長
 どうもありがとうございました。
 それでは菅野先生、どうぞお願いします。

〇菅野メンバー
 これは山本先生がおっしゃったとおり、立法というか、もっと大きな話としての実行手続の正当性という話なので、非常に難しいと思っているのですけども、公正性が必要になるということに関係する事項として、先ほどの優先権の範囲も関係してくるのではないかなと思っています。他の利害関係人、商取引債権者であるとか労働債権者とか、こういったところには基本的に払い続ける。そこの支払いに影響するわけではないというところで言うと、あとの部分について担保権者の自由裁量ということで、担保権の価格、価値というのが決められるのだというのは一つあるかと思いますし、逆に言うと、ここについて、やはり優先権の範囲が限定されるようなときに、事業価値イコール他の債権者の弁済の可能性、もしくは弁済の範囲ということに影響してくることになってくると、担保権者の利益だけを考えた処分に、一定の限定を付さなきゃならないのではないかという考えも出てくる可能性があるので、優先権の範囲とも影響するような話なのかなと思っております。

〇神田座長
 どうもありがとうございます。
 それでは堀内さん、どうぞお願いします。

〇堀内メンバー
 公正であるべきだというのは、概念的にはそのとおりだと思うのですが、具体的にどうなっていれば公正なのかというのが問題かと思います。公正な方法とはどういった方法を意味するのかということです。私個人的には、例えばアメリカでも法的整理の中での363セールという、計画外譲渡という手法があるのですが、この場合は何が公正かというと、基本的に入札をやっていればいいというのが1つです。

 もう1つは、インベストメントバンクとかそういうところが出すフェアネスオピニオン、つまり、売買価格は妥当ですというオピニオンを2個ぐらい取っておくというのが実務とされて、それをベースに裁判所は、まあよろしいのではないかというふうに判断するというのが多いのですが、そういう一定のプラクティスが満たされていれば、公正性が確保されているとみなしていいのではないかと考えます。問題は、ここで対象としている会社が、売上げ20億円以下のぐらいの中小企業になると、入札をしても何社も来るというのではなくて、取引先とか特定のところしか来ないと推定される場合です。1社しか来ないような場合にどうするかということです。

 以前、二重の基準とかいうのが弁護士会などでも言われていましたけれど、そういう入札にふさわしくないケース、事業規模的にも小さいケースが事業成長担保権の対象債務者に多くなるかもしれませんが、そういう場合には必ずしも杓子定規に入札を公正な手法の条件とするのではなくて、柔軟にやっていいのではないかと思います。
 その時に裁判所を通すかどうかというのは、一つのイシューとしてはあるかもしれませんが、なるべく迅速にやったほうがいいということなので、裁判所は通さないで一旦はやって、もしそれが本当に詐害的譲渡ではないかということであれば、後日訴訟を起こすというのが現実的ではないかなと思います。

 全部のケースで裁判所を通さないといけないとなると、早くスポンサーを見つけて早く譲渡したほうが、企業価値の毀損が少ないというときにも、ワンステップ置くことになるので、なるべく私的整理で裁判外で完結できるようにした方が、実務的だと思います。つまり、原則論としては入札ですけど、ケースによっては柔軟にやるということでよろしいのではないかと思います。あとはプラクティスというか、実務のほうで確立していけばいいのかなと考えております。

〇神田座長
 どうもありがとうございました。
 それでは井上先生、どうぞお願いします。

〇井上メンバー
 ありがとうございます。私も今、結局、堀内さんがおっしゃったこととほぼ同じなのですけども、菅野先生もおっしゃったように担保権者のフィデューシャリー、本多委員もおっしゃいましたが、担保権者がフィデューシャリーの立場に立って、他の債権者や設定者に義務を負うということではないのだろうと思います。
 なので、公正といったときは、手続的に公正であればよいということだろうと思いますので、入札が可能な場合は入札をすればということかなと思います。

 あとは、そこまでいかない規模の場合にどうするのかは、私も、先ほど堀内委員がおっしゃったスポンサー選定に関する二重の基準の研究会に参加していたので、いろいろ難しい場面が実際には多いのだなと感じましたけれど、やっぱり設定者、あるいは劣後する金融債権者に対して一定の機会が与えられて、よりよい買主を見つけてくる、一応チャンスはあった、あるいは機会があったということですとか、あまりに安くというときにはリファイナンスの機会があるとか、何らかのチャンスが与えられていれば、結果的に入札が行われなくても、あるいは、より高い買主を見つけられなかったとしても、そこは公正性がなお維持されるという場合は相応にあるのではないかと考えます。
 以上です。

〇神田座長
 どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
 確かに、法律でもしここを何か書こうと思うと難しいですよね。一般的には書けても、今まさに御説明、3人の方からおっしゃっていただいたようなことが、結局、要は高く売れればみんなハッピーなのですけど、ほかにより高く売れないということを言えと言われてもね。それはなかなか難しいので手続的な公正ということなのでしょうけれども。

 まあ、早くやらないと、より安くなっちゃいますのでね。あと、残余を取れるというか、最後に残りを取れる人が売る権限を持つというのは、一つあり得る話だとは思いますけども。それも一律じゃないですからね。ケースによって違いますので、ちょっとルールをどういうふうに立てつけをつくるのかということで、あとはプラクティスという、本当にそういう感じかなと私も思いますけども。
 すみません、何か私が余計なことを言っておりますけれども、ほかにいかがでしょうか。

〇菅野メンバー
 これ、12番の倒産処理手続における取扱いも、今お話ししても。

〇神田座長
 もちろんです。全部お願いしたいと思います。ありがとうございます。

〇菅野メンバー
 ありがとうございます。そうしたら、実務的な観点から、関係者の対抗手段として会社更生手続というのを挙げていただいているのと、それから民事再生手続で実行中止命令を付加するか、または別除権協定をするときということを挙げていただいているのですが、会社更生手続は今、一部中小企業が利用することもあるのですが、手続が非常に厳格で、中小企業もこの事業成長担保権を使うということが想定されるのだとすると、関係者の対抗手段として民事再生手続を排除するのは、厳しいのではないかなと。会社更生手続の現在の運用状況も踏まえた対抗手段として想定していただいたほうがありがたいなというのが1つ。

 もう1つは、12.3のときに、倒産処理手続が開始した場合の裁判上の実行の管財人と、倒産手続における管財人の連続性の話も書いていただいているのですが、実務的にはやっぱりケース・バイ・ケースかなと思っておりまして、例えば、ここでは短期的な猶予を求めるケースと長期的な猶予を求めるケースで場合分けしていただいているのですが、この短期的な猶予と長期的猶予の区分けも難しいと思いますし、それから実行手続の管財人をそのまま倒産手続の管財人にしたほうがいいケースと、そうじゃなくてやはり交代が必要なケースも、ケース・バイ・ケースなのかなと正直思っております。

 実行手続中の管財人が、あまり債務者と会話がうまくできなくて、別の方に交代して統制したほうがいいと。結局、債務者との調整というのはどの段階になってもある程度必要になると思いますので、そういうケースもありますし、そのままの人に連続的にやってもらったほうがいいケースもありますし、ここは結構ケース・バイ・ケースで、必ずしも法律で定めなくてもいい、実務に委ねてしまってもいいところなのではないかなと思ったりしております。
 以上です。

〇神田座長
 どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。全体についての御意見でももちろん結構ですけれども。
 ありがとうございます。千葉銀行の鈴木さん、お願いいたします。

〇鈴木メンバー
 ありがとうございます。千葉銀行の鈴木でございます。ちょっと事務局に質問というか、考え方を確認させていただきたいのですが、16ページの極度額の設定のところなのですが、金融機関と事業者のほうで、極度の設定に関しては考え方が対立するところもあって、金融機関は融資約束にならないようにより慎重な極度額という考え方になるのが一般的だと思うのですが、一方で、潤沢な成長資金を必要とする事業者としては、より多額の極度額を求めるということになるのであると思うのですが、欧米とかの事例では、そこをどういう整理をされているのか教えていただければと思います。

 それと、一方で、事業成長担保権の消滅というところについてなのですが、ここについては、どちらかというとメインバンク制を意図した制度という中で考えますと、役割を終えて終わってしまうというところが少し意外な感じもしたのですけれども、メインバンクとしては先の長い取引メリットを確保するというところもインセンティブになっていると思うのですが、そこでちょっと動機を失うような気もするのですが、ここについてはどのような制度設計というか、お考えでこういう形になっているのか、教えていただければと思います。
 以上です。

〇神田座長
 ありがとうございました。
 それでは事務局、いかがでしょうか。

〇水谷管理官
 ありがとうございます。1点目の極度額についてですけれども、これもちょっと悩ましい点だと思うのですが、現時点で知っている限りですが、世界的にも、アメリカ型とカナダ型といいますか、立場が分かれていると理解しています。アメリカでは極度額というのは必須となっていなくて、それは、今鈴木さんがおっしゃったような、事業者として、成長していくためにより多くの資金が必要だと、より多くの資金を借りたいということが理由とされている一方で、カナダの場合は、後発の融資者への配慮ということなどもあって極度額を必要的にしているという、そういう大きく2つの考え方がどちらもあり得るのだというふうに思っております。そのうち我々として、日本としてどういった立場を取っていくのかというところは、まさに今後の御議論なのかなというふうに考えております。

 2点目の、事業成長担保権の消滅というところは、これは川橋さんの御説明にもありましたが、より大きく事業者さんが成長していって、さらに財務関係のデータなども信頼性が高くなっていくということになってきますと、信用リスクもかなり小さくなってきて、いろいろな金融機関さんが多様な融資の提案をされるということが考えられるとおもいます。そうした場合には、もちろん担保があったほうがスプレッドも小さくできるのだとは思うのですが、事業者さんのニーズによっては、担保権の必要性というのがだんだん小さくなってくるということがあるのではないかと思っておりまして、そういったときに、事業者さんのニーズに応じて、担保権の消滅というものにもしっかり対応できるようにしていかないといけないと思っておりまして、これは現在の担保制度と特段変わらないものでもあると思いますが、記載をしております。

 ただ、もちろん、担保権が消滅したからといって、そこでメインバンクとかこれまでの取引関係とか、そういうそれまでの歴史であったり、関係性であったりするものがすべて失われるということではないのだと思っております。ここはあくまで単なる法的な担保権の消滅という意味合いでして、融資関係までの消滅ということも意味しておりません。担保権としての法的な規律を検討したいという趣旨でございます。
 以上でございます。

〇神田座長
 どうもありがとうございました。
 鈴木さん、よろしゅうございますでしょうか。

〇鈴木メンバー
 はい、ありがとうございました。

〇神田座長
 それでは、続きまして伊藤社長、どうぞお願いいたします。

〇伊藤メンバー
 ありがとうございます。全体を通してということなので、このコメントは法的にどうとか、何か書面で書けるというわけではないのですが、今回の担保権、要は企業を応援するという意味での新しい貸付制度だということを認識しているので、メインバンクさんが決まるのはとてもいいことだと思うのですが、だからといって、ちょっと表現をあえて強く言わせていただくと、銀行が支配するような雰囲気はつくっていただきたくないなという。やはりあくまでも経営者が経営するので、銀行があまり、リレーションシップマネージャーは大切なのですけれども、ネガティブな要素になってしまうと、成長するはずの企業も成長しづらくなっちゃうような気がするのです。

 それと、せっかく成長していく中で、やはりコストを削減しなければいけないとなったときに、日本の法律でいくと解雇って今ものすごくしづらい環境ですよね。これはまた別の厚生労働省のほうで、解雇すると例えば補助金が下りないとか、いろいろなしわ寄せが来てしまうので、もちろん解雇をすることが目的ではないのですけど、いろいろな手を尽くしても駄目な人員もいるわけですよね。そこを思い切って経営者が判断できるようにしていかないと、多分、本来成長すべきタイミングで成長できなくなっちゃうこともあるので、その辺がしっかりと伝わるといいなと思っております。
 以上です。

〇神田座長
 大変大事な御指摘だと思います。どうもありがとうございました。
 それでは本多さん、どうぞお願いします。

〇本多メンバー
 ありがとうございます。先ほど極度額に関する議論がありましたので、例えば事業成長担保権を使って、極度額の仕組みを利用しながらどういうファイナンスが想定されるのかというのを、試みに議論させていただければ、と思います。
 私からも冒頭申し上げましたとおり、それから委員の皆様からの御指摘も含めて、事業成長担保権を、どのような債務者を念頭に置いてどういう形で使っていくのかというところにも絡むと思うのですが、例えば単一の事業を行っているまだ若い事業体、債務者を想定した場合に、その債務者の本源的な信用力が今後伸長していくことが期待できるというものであるとしても、その成長を支援する上で、先ほど来申し上げています債務者格付というモニタリング手法を使うのだとすると、十分な与信を供与できない可能性があります。

 一方、将来キャッシュフローが見えていますということなのであれば、プロジェクト型のファイナンスとして採り上げを図り、案件格付を当てはめて、より大きな金額、長い期間の与信ができるように支援を試みることができるように思われるのですけれども、そうした場合に、例えばシニアのポジションで、なるべくリスクを小さくしたいというふうに考えるプレーヤーと、もう少し事業リスクに踏み込んで、リスク性の資金を供給していきたいというプレーヤーとが分かれることがあるかもしれなくて、そうした場合に、シニアの金融機関が例えばリボルビングファシリティーのような回転型のファイナンスの供与により運転資金支援をするという形で極度額付のシニアのポジションをつくり、その後ろに、よりリスクが高いデットファイナンスを供給できる金融機関が後順位のファイナンスをつけていくという使われ方も想定できなくはなさそうで、そうした場合に、極度額付事業成長担保権が用いられることがありそうかなと思います。
 以上です。

〇神田座長
 どうもありがとうございました。
 それでは堀内さん、どうぞお願いいたします。

〇堀内メンバー
 先ほどの伊藤社長の御発言ですが、私も、この担保権を使って金融機関がいきなり会社を支配するというのに使われるとしたら、それは担保権の濫用になるのではないかと考えます。

 少し問題発言になるかもしれないですが、アメリカと日本のプラクティスを比べると、やはり日本は少しレンダーライアビリティに関しては緩いと感じます。
 最初のほうで、川橋さんのほうで、アメリカはレンダーライアビリティに関して非常に厳しいというか、センシティブに対応しているというのはおっしゃるとおりで、基本的に貸付人がこういう担保を取ったからといって、経営には関与しないほうがいい、するべきではないというふうに考えられています。取引先の候補を紹介したりとかそういった前向きなのはいいと思うのですが、ここと取引しろといった強要はすべきではないと思います。

 アメリカはそういうときにどうしているかというと、これはメインバンクというかエージェント行、もしくは一行貸しの場合はその銀行が指定するコンサルタントを雇ってもらうようにします。指定するというのは実際にはレンダーライアビリティを回避するために3つぐらいを挙げて、その中で債務者に選んでもらうという形を取るのですが、そういうコンサルタントや、現地ではターンアラウンドマネージャーとも呼ぶのですが、リストラクチャリングの専門家を入れていただくというやり方で、信頼できる第三者、経営やリストラクチャリングのプロにアドバイスを仰ぐように仕向けていくということです。金融機関が直接経営指導をしない、直接関与しないというやり方をやっておりまして、一定以上の規模の会社では結構、業績が悪くなった場合、日本でもそういうふうなやり方が取られるようにはなりつつありますが、今ここで年頭に置いている売上げ30億ぐらいの会社で、全部そういうふうに、ちょっと業績が悪くなったときにコンサルタントを雇ってもらうかというのはまだ分からないところです。ただ、本来は直接ではなく間接にするべきところです。

 ここも、法律というよりはプラクティスというところで補っていくべきところなのですが、日米では、レンダーライアビリティに対するセンシティビティというか、感度が大分異なるというのが私の感想で、伊藤社長のおっしゃることもよく分かるということでございます。
 以上です。

〇神田座長
 どうもありがとうございました。
 もう3時間以上たってしまっておりまして、そろそろかとは思うのですけれども、もし、最後にといいますか、御発言があれば承って終わりたいと思いますが、いかがでしょうか。特によろしゅうございますでしょうか。

 そうしましたら、このあたりとさせていただければと思います。
 本日も大変長時間、もう3時間を過ぎておりまして、にわたりまして熱心に御参加いただき、また御議論をいただき、貴重な御意見を多数いただきました。本当にありがとうございました。

 あえて言えば、さらにもしお気づきの点ございましたら、ぜひ事務局まで、また別途メールとか電話でお知らせいただければありがたく存じます。また、進行にも御協力いただきまして誠にありがとうございました。
 それでは最後に、事務局から連絡事項等ございましたらお願いいたします。

〇尾﨑参事官
 本日は貴重な御意見を数多くいただきまして大変ありがとうございました。本日いただきました御意見、御指摘につきましては、事務局にて資料に盛り込みまして、昨年の論点整理の改定版を、今年の11月末前後に、公表させていただき、さらなる議論の材料とさせていただきたいというふうに考えております。

 恐れ入りますけれども、委員の皆様方には持ち回りで御相談させていただきまして、最後には座長一任という形でお願いさせていただければと思っております。よろしくお願いいたします。
 私のほうからは以上でございます。

〇神田座長
 どうもありがとうございました。今、事務局から話がありましたけれども、最後は座長一任とは申しましても、もちろん皆様方にちゃんと見ていただいてということでございますので、そのプロセスにおける皆様方の御意見をしっかり踏まえるということでやらせていただきたいと思います。
 そんなことで、昨年の論点整理の改定版を目指すという作業をさせていただきたいと思いますけれども、よろしゅうございますでしょうか。

 ありがとうございます。ちょっとオンラインで分かりにくいのですけど、うなずいていただけている方が多いと思いますので、大変恐縮ですけれども、そのような形で進めさせていただきます。もちろん、進め方等についても何かお気づきの点がございましたら、私でも結構ですけど、事務局まで御連絡いただければありがたく存じます。

 それでは、大変長時間にわたり活発な御議論をいただきまして、大変ありがとうございました。本日は以上で終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。

以上

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