カーボン・クレジット取引に関する金融インフラのあり方等に係る検討会(第1回)議事録

1.日時:令和6年6月10日(月曜日)10時00分~12時00分

2.会場中央合同庁舎7号館 9階 905B会議室 及び オンライン

【根本座長】  
 それでは、ただいまよりカーボン・クレジット取引に関する金融インフラのあり方等に係る検討会、初回の会合を開催します。

 座長を務めさせていただきます、早稲田大学の根本でございます。皆様、御多忙のところ御参集いただきまして、ありがとうございます。

 本検討会は、カーボン・クレジット取引の透明性・健全性を高め、投資家保護を促進する観点から、カーボン・クレジットに係る取引インフラと市場慣行の在り方について実務的・専門的観点から検討し、初期的論点を議論していくものです。

 後ほど事務局から御説明があると思いますが、カーボン・クレジットについては、国際的な関心が非常に高まっております。証券監督者国際機構(IOSCO)や米国政府などからも問題提起が行われています。

 日本においても、企業・金融機関を含め関心が高まっていると思いますが、一方では実践的な様々な論点が想定されているところであり、本検討会では、まずは実情・事例等についてのストックテイク・実態把握を行って、議論を深めていきたいと思います。

 それでは最初に、事務局の金融庁の方から御挨拶をお願いいたします。

【堀本政策立案総括審議官】  
 金融庁政策立案総括審議官の堀本でございます。よろしくお願いします。

 本日はカーボン・クレジット取引に関する金融インフラのあり方等に係る検討会にお集まりいただきまして、ありがとうございます。

 カーボン・クレジットについては、先ほど座長がおっしゃったとおり、国際的にも取引拡大が見られますけれども、日本においても、例えば東京証券取引所での上場取引であったり、あるいは一部の事業者による個人への販売事例、また、テック事業者によるブロックチェーンの活用、地域金融機関によるクレジット創出支援など、そういった取引が様々見られるようになってきています。

 そうした中で、先ほど座長がおっしゃったとおり、証券監督者国際機構の方で、取引の透明性・健全性、これを確保するための措置を幅広く提言されていると、こういう状況にあるということです。

 一方で国内を見ますと、昨年2月のGX基本方針等で、2026年度にGXリーグの排出量取引制度を本格稼働させる、2033年度に有償のオークションを実施すると、そういったことが決められております。こうした中でGX実現に向けた排出量取引制度の検討に関する法的課題研究会という法的課題研究会が立ち上がりまして、ここでも検討が進められているということでございます。

 今日の検討会では、先ほど申しました研究会で行われる排出量取引制度そのものの議論を行うわけではございませんけれども、先ほど申しましたように、一般にカーボン・クレジットの増加が見られて、かつ、国際的にも透明性・健全性が求められてくるという状況の中で、どのような論点を議論していって、投資者保護等を促進していくかと、そういったことから幅広く議論いただく場にできればと考えております。

 そういう観点から、本日お集まりの方は実務的・専門的な観点から御議論いただけるとお伺いしていますので、議論を深めていただきたいと考えております。

 私からは以上でございます。

【根本座長】  
 どうもありがとうございました。

 それでは、ここでマスコミの皆様は御退出をいただければと思います。

 早速、議事に移らせていただきます。最初に、事務局の金融庁から資料について、簡単に御説明をお願いいたします。

【西田サステナブルファイナンス推進室長】  
 (事務局資料に基づき説明)

【根本座長】  
 御説明ありがとうございました。今の御説明にもありましたが、カーボン・クレジット取引については、国内外で事業会社、専門事業者、金融機関など様々な関係者が存在し、取引実態がどのようになっているのかをストックテイクし、本検討会として確認しておくということが議論の前提としても重要であると考えています。

 こうしたことから、本日は初回としまして、まず、金融機関の方をゲストとしてお呼びしました。みずほ銀行、角田様、三菱UFJ銀行、長田様、三井住友銀行、馬場様から、それぞれ各行におけるカーボン・クレジット取引に関する様々なサービスの実態について御紹介をいただきたいと考えております。また、次回以降も金融機関の方以外の方も含めて幅広く取引実態や問題意識などについて御紹介をいただいて、ストックテイクをしていきたいと思っております。

 それではまず、早速ですが、みずほ銀行の角田様からよろしくお願いいたします。

【角田様】  
 ありがとうございます。おはようございます。みずほ銀行の角田でございます。それでは、今日は資料を使いまして、みずほ、弊行のカーボン・クレジットの取組を紹介しようと思います。

 ページをめくっていただいて、1ページ。真ん中にSBTiが従前から出しているカーボン・クレジットの考え方の図がありますけれども、足元、我々もいろいろな、海外も含めた関係者あるいは関係先とカーボン・クレジットの話をさせていただいておりますけれども、非常に今、マーケットが思ったより伸びていないということで、なかなか需要が伸びてこないと。先ほどインテグリティーという話がございましたが、恐らく、質の問題、それから、カーボン・クレジットの位置づけ、こういったことにまだまだ検討の余地があって、足元は思ったほど、思ったほどというのは何というのはありますけれども、活況を呈していないということだと思います。

 ただ、このSBTiのここにもございますとおり、2050年という長い目で見た場合、これは必ず必要な仕組みですし、これがなければやっぱりカーボンニュートラル、ネットゼロは実現できないんじゃないかと思っておりますし、一番下にちょっと書いておりますけれども、特にDACCSあるいはBECCSといった技術系の、いわゆる除去系の技術が今後、開発されるに当たっては、このカーボン・クレジットというフレームワークは非常に重要になってくるということだと思います。

 かつ、足元についても当然今現在の世界のいわゆるCOあるいはGHGの吸収力というのはそのまま維持しなければいけないわけで、そういった意味では森林保全等いろいろ生物とか種というのは問題はあるんですけれども、こういったこともやっぱりしっかり過渡期については特に重要になってくるんじゃないかなと思っています。日本の場合はとりわけいわゆる既存の再エネの導入がなかなか相対的に難しい地理的条件もあって、殊更、このカーボン・クレジットというのは、他の地域に比べても非常に重要になってくるんじゃないかなということで、長い目で見据えてこれにしっかり取り組んでいくのが、金融機関としての責任だということで弊行では取り組んでいるということです。

 2ページ以降に、我々のカーボン・クレジットの領域での取組をリストアップさせていただきましたけれども、今日は次以降のスライドを使いまして、ここ1年の我々の取組を紹介させていただければと思います。

 時系列で並べておりますが、まず次のページです。昨年の8月にKOKO Networksという、ケニアをベースにしたスタートアップ、これはクックストーブといういわゆるカーボン・クレジットを取扱う会社ということです。これは唐突感がかなりある話ではあるんですけれども、特にクックストーブは日本ではあまりなじみがないということだと思いますが、カーボン・クレジットというのは森林保全等から、省エネ・再エネから始まって、恐らくいろいろな分野でいろいろな形態があり得るということだと思います。したがいまして、弊行としましては、こういった海外のいろいろな事例で先行的に経験を積むということによって、カーボン・クレジットのマーケットの裾野を広げていくということに貢献できればなということで、こういったいわゆるパートナーシップの締結に及んだということでございます。

 続きまして、次のページでございます。昨年11月に、CIXと呼んでおりますけれども、シンガポールを拠点とした取引所、ここにいわゆる資本参加いたしました。シンガポール所在ですけれども、当然、取引所としては、シンガポールに限らず、アジアあるいはヨーロッパも含めた世界全体を見据えた取引所の創設ということで考えておりまして、我々日本の金融機関としても、ここに資本参加して、特に我々の立場からすると、日本のマーケットといかにつなぐ、あるいは日本の我々のお取引先とどうやってつないでいくかと、こういうことをやっていきたい。

 もう1つの観点からは、ASEANを中心に今、石炭火力の早期退出の議論が非常に進み始めておりますけれども、この早期退出を実現する1つのファイナンス手法として、このカーボン・クレジット、トランジション・クレジットと呼んだりしますけれども、これの制度設計は極めて重要だと考えております。CIX、シンガポール拠点取引所に出資した1つの理由はそこにございまして、金融機関として石炭火力の早期退出を実現し得る新しいファイナンス手法、これにも制度設計に積極的に取り組んでいきたいということでございます。

 続きまして、5ページです。J-クレジット自体は、弊行グループとしては10年以上いろいろな形で関わらせていただいておりますけれども、足元、東証さんの方でマーケットが始まったということで、ここはやっぱり我々金融機関としていかにしっかりインフラとして仲介をやっていくか、これが多分マーケットの促進に貢献できるんじゃないかなということでございまして、ここはしっかりやっていきたいと思っております。

 最後に、これは先週発効しましたけれども、6ページになります。ロンドン証券取引所といわゆるカーボン・クレジットの領域において戦略的に連携していくということで公表させていただいております。LSEGと呼んでおりますけれども、LSEGは2022年10月に、カーボン・クレジット自体ではなく、いわゆるカーボン・クレジットを取扱う会社とかファンド、ここのマーケットプレースを創設しております。我々としては、やっぱりお取引先が今後必要になってくるのは、カーボン・クレジットの売買のみならず、いかにカーボン・クレジットの創出のところにいわゆる資金を流していくのか、そういうところに投資していくのかというのも1つ課題になってくると思います。こういったいわゆる投資の動きをしっかりインフラをつくっていこうというのが今LSEGが取り組んでいるということでございますので、日本の金融機関として、それについてもしっかり日本の産業をつなぐ形で貢献できればなと考えております。

 私のほうからは以上でございます。

【根本座長】  
 どうもありがとうございました。続きまして、三菱UFJ銀行、長田様お願いいたします。

【長田様】  
 三菱UFJ銀行の長田と申します。今日は貴重な会にお招きいただきまして、ありがとうございます。冒頭の導入のところ、意義のところにつきましては、みずほ銀行、角田部長の方でおっしゃっていただいたとおりだなと思いました。私ども金融機関として、最終的にお客様のカーボンニュートラルへのジャーニーを考えたときに、あるいは国全体としてのNDC達成を考えたときに、カーボン・クレジットというこの市場がしっかりと立っていくということは極めて重要なのかなと思っておりますので、そういった観点で銀行として関わっていきたいと考えております。

 お手元の資料をベースに御説明させていただければと思います。まず、左下3ページ目ですけれども、私、このサステナブルビジネス部に所属しておりまして、いわゆる顧客部門、お客様へのソリューション提供を行う部署に所属しております。カーボン・クレジットへの取組は、銀行全体では、右下にあります金融市場部、市場企画部と一緒に取り組んでおります。お客様への直接のインターフェースは我々のところでやり、広く市場形成をしていく観点で市場部門と一緒に取り組んでいるということでございます。

 おめくりいただきまして、5ページ目。お客様を起点にカーボンニュートラルへのジャーニーというふうに捉えたときに、上流ではゼロボード社との提携で提供しているGHG排出支援や東京海上日動火災保険と一緒にTCFD開示支援やCNに向けた戦略策定支援のためのコンサルティングサービスも提供しております。その上で、どういったトランジションをしていくのか、あるいは資金調達をどうするのかという際に、投融資のソリューションとして様々なファイナンス提供をしております。これらの取り組みを通じて削減努力を支援していくのですけれども、そういった中で最終的に落とし切れない部分が出てくる中で、オフセット・ソリューションを提供すると言う形で、エンド・ツー・エンドでソリューションのメニューを取りそろえておりますし、今後さらなる拡充が必要になっていると考えております。

 また、これらの個別ソリューションの提供に加えて、ベースラインの活動として、下に記載がある通り、ルールメーキングやアドボカシー活動にも各種取り組んでおります。これはカーボン・クレジットに限らず、広く環境対応といった観点での市場整備のためアドボカシー活動とかアライアンスの活動に取り組んでおりますということでございます。

 6ページ目を御覧いただきまして、西田室長の冒頭のプレゼンテーションの中にもより詳細な市場のマップがありましたけれども、これの簡略バージョンとして、こういった形で取引市場、炭素市場があると考えております。その中で金融機関として参画できるあるいは貢献できる領域としてポテンシャルに定めておりますのは、この5つの領域でございます。クレジット組成のプロジェクトへのファイナンスの提供が1でございます。2はボランタリー・カーボン・マーケットの市場運営等、3はクレジットのトレーディング、4で実際に組成に向けたアドバイザリーや購入に向けたアドバイザリー、5のところで発掘と仲介ということでございますが、広くポテンシャルがある中で、まずはできることからということで1の領域と5の領域で銀行としては取り組んでおります。

 関連する取組として、たとえば、良質な森林ファンドへの出資があります。自らそこに出資することによって、森林クレジットの組成に加えて、それを実際に使ってお客様に御提供できるような準備を整えているということでございます。クレジットの還元自体はこれからですが、このような取組を一昨年から始めております。

 続きまして、7ページ目でございます。こちらは具体的に、ENGIE社というフランスのエネルギー企業が組成しているカーボン・クレジットをお客様に紹介し、その中で良質なクレジットを御購入いただけるソリューションの提供になります。今後のニーズとしまして、当社からシンプルにクレジットを買うだけではなくて、プロジェクトに一緒に参画するといったアプローチも必要になってくるのかなと考えていますので、そういった観点での対話の引き合わせもさせていただいております。

 8ページ目でございます。これはJCMクレジットの創出に関連する施策です。今後、民間JCMの制度確立を見据える中で、実際のJCMプロジェクトの取組の推進をされているSDG Impact Japan社に出資をしまして、こちらもプロジェクトに投資をするだけでなくて、当社と一緒にプロジェクト開発に取り組んでいく関心のあるお客様を引き合わせさせていただいております。

 ページをおめくりいただきまして、9ページ目です。こちらはどちらかというとネットワーキングというか、知見の収集ということでございます。アフリカを中心とする新興国の炭素市場や高品質クレジットに係る情報収集ネットワークの構築ということで、Japan Alliance for High Quality Carbon Creditという座組にファウンディングメンバーとして参画させていただいております。

 最後、10ページ目、カーボン・クレジットと直接関わらなさそうなイメージを持たれるかもしれませんが、宇宙の衛星データのバリューチェーンをしっかりとつないでいこうという取り組みです。衛星を打ち上げるところから、そのデータを地球上に持って帰ってくるところまでバリューチェーンをつなげていく、しかもそれを日本でやっていきたいということで、いろいろ取り組んでおります。これは最終的には、衛星データの利用はいろいろな角度でできるのかなと考えておりまして、その中にカーボン・クレジットもあるのではないかと思っております。インテグリティーとか透明性というお話が冒頭から各種あったと思いますけれども、これを高めていくという中で、既に海外ではこういった取組が進んでおりますけれども、これを日本としてもしっかりとしたソリューションをつくっていきたい、バリューチェーンをつくっていきたいということで、衛星データサービス企画社への出資をさせていただいております。プロジェクトの参画者の一員として、いかにこれのユースケースを広げていくか、カーボン・クレジットのモニタリング等にもつなげていけるのではないかということで今、一生懸命いろいろなプロジェクト、PoCに取り組んでおり、紹介させていただければと思いました。

 以上をもちまして、私からのプレゼンテーションとさせていただきます。

【根本座長】  
 どうも御説明ありがとうございました。では続きまして、三井住友銀行、馬場様お願いいたします。

【馬場様】  
 三井住友銀行社会的価値創造推進部の馬場でございます。本日はこのような機会を頂戴して、誠にありがとうございます。

 まずカーボン・クレジットですが、一般的にはカーボン・ファイナンスと言われており、AからBへ資金を移転する方法の1つだと思っています。各国や各社が自らの削減努力以上に自らの排出量のインセットやオフセットを行ったり、あるいは自らの排出量の削減目的だけではなくて、他者の削減をより自主的に支援する、そういう目的でカーボン・クレジットは使われていると理解しております。

 先ほど角田様と長田様からも御説明ありましたが、カーボン・クレジット市場はまだまだ黎明期ではあります。弊行としても基本的にはお客様のニーズ起点でカーボン・クレジット市場に取り組むというのを原則として取り組んでいきたいと思っております。

 まず、弊行は唯一、サステナビリティという名前がついていない部署になりますので、簡単にそちらの背景について御説明させていただきます。1ページ目を御覧ください。昨年度、SMBCグループでは、新たな中期経営計画として、Plan for Fulfilled Growthという名前の下で、社会的価値の創造を経営の柱の1つに据えております。Fulfilled Growthという英語は、幸せな成長というのを訳しているものですが、この幸せな成長の実現に向けて鍵を握るのが社会的価値の創造であると理解しております。社会というものは我々が事業を営む上での礎であって、社会の発展なくしては企業の持続的な成長はあり得ませんという理解の下で、たとえ短期的に経済的な価値につながらないものであったとしても、社会的価値の解決へ向けて積極的に取り組んで、社会的価値の創造を目指していきたいと考えております。

 2ページ目を御覧ください。より具体的には、左側のほうに列挙していますが、環境、DE&I・人権、貧困・格差、少子高齢化、日本の再成長の5つの分野を特に我々が解決したい分野として重点課題として定めております。右側でお示しさせていただいているとおり取組は着実に進めているところですが、中でも環境については、トランジションの支援を通じた脱炭素社会の実現、そのソリューションの1つとしてカーボン・クレジットを位置づけておりまして、お客様にカーボン・クレジットに関連するソリューションを提供できるように少しずつ態勢整備を進めているところでございます。

 3ページ目を御覧ください。ここからは具体的に弊行のカーボン・クレジットに関する取組を御紹介させていただきます。まず、弊行としては、左側のほうにございますとおり、お客様のニーズを3段階、上流・中流・下流に分けまして、それぞれに沿ったソリューション開発を進めております。

 上流のカーボン・クレジット創出に関しましては、主にはファイナンスになりますが、カーボン・クレジット創出の支援、社会的価値創造投資枠を設定し、事業投資やプロジェクトへの投融資を行って、お客様と一緒にクレジットをつくることを考えております。実績としては、後ほど詳細を御説明しますが、既に2件、森林ファンドへの投資を実行しております。

 あと、中流になりますが、クレジット取引に関しましては、カーボン・クレジットの売買取引、国内外のサプライヤー、バイヤーさんの紹介、そして、取引プラットフォームであるイギリスのCarbonplaceヘの出資を行い、お客様ヘのこのプラットフォームの御紹介いう形でのソリューション提供ができると考えております。

 最後に下流のところは、グループ会社のSMBC Aviation Capitalで、カーボン・クレジットつき航空機オペレーティングリースや、国内の三井住友ファイナンス&リースでは排出権つきリースのサービスの御提供を開始しております。こうしたサービスと連動した形でのカーボン・クレジットの利用という分野もこれから広がっていくのではないかなと弊行では考えております。

 ここからは、弊行で行った実際の取組について御紹介させていただきます。右側になりますが、先ほど申し上げましたが、森林ファンドに2件投資しております。森林ファンドへの投資の目的といたしましては、基本的には知見の獲得というところになりますが、カーボン・クレジットが創出されますので、こちらを獲得するという2つの目的で投資しております。弊行では、カーボン・クレジットの創出やプロジェクト管理に対する知見があまりないということもありましたので、まずはファンドに投資して、知見の獲得を目指しております。将来的にはこのファンドから獲得するカーボン・クレジットの利活用も考えられます。また、今後、テクノロジー系のカーボン・クレジットの創出事業についても検討していきたいと考えております。

 先々月、4月に日本国内の伊勢原というところで森林を獲得しております。ファンドへの出資を通じて獲得した知見を活用しつつ、将来的にはJ-クレジット創出の知見獲得をしていきたいと思っています。

 4ページ目、このページは中流の説明になります。Carbonplaceは、先ほど申し上げたとおり、イギリスに本社を置く、海外のボランタリー・カーボン・クレジットの取引プラットフォームになります。設立メンバーは、左下のほうに書いてありますとおり、世界各国の金融機関と共に弊行も株主として参画させていただいております。当初の予定よりは遅れていますが、ちょうど1年前にシステムローンチが行われておりまして、取引そのものが行える状態にはなっております。今後、将来的にプラットフォームの売買需要が増えるだろうと見込んでいまして、我々のほうでもこのプロジェクトに早期より参画させていただいております。

 あと、J-クレジットプロバイダーとの業務提携。右側のほうを説明させていただきます。これはJ-クレジットプロバイダーへのお客様の御紹介でして、J-クレジットの創出をしたいというお客様、J-クレジットを持っているけれども売りたい、場合によってはJ-クレジットを買いたいというお客様がいらっしゃった場合に、提携させていただいていますバイウィルさんに御紹介をしております。

 最後は、これはプロダクト開発とは違いますが、まだカーボン・クレジット市場は黎明期であるということもありますので、1つ目は、経済産業省さんが主催した検討会への御参加、そして、シンガポール政府とマッキンゼーが主導する、石炭火力発電所の早期退役を目指したカーボン・クレジットの取引というプロジェクトに参加させていただいております。以上が弊行の取組状況になります。

 最後になりますが、弊行としては、お客様のニーズに応えるというのを第一に考えておりまして、上流・中流・下流で1つ1つサービスの提供ができるように準備を進めていきたいと思っております。

 以上でございます。

【根本座長】  
 どうも御説明ありがとうございました。それでは、議論に移りたいと思いますが、構成が2つに分かれております。まず、今日お話しいただいた金融機関の皆様への御質問を先にいただきまして、次に、事務局から説明があった点を含めて自由討議をさせていただくということになります。今回、第1回目の会議となりますので、初めの御発言の際には簡単に自己紹介をしていただき、続けてお話しいただく形で進めたいと思います。また、プレゼンターの方に御質問がある方は、どなたへの御質問なのか、また、コメントで、特に回答が不要という場合は、その旨を併せていただきますと進行しやすいという感じになります。

 御発言を希望される方は、お手元の名札を立てていただいて、オンラインの方は挙手機能でお知らせいただければと思います。では、どうぞ御自由にというか、皆様、御質問のある方はお願いいたします。では、松尾さん、お願いします。

【松尾メンバー】  
 東京証券取引所の松尾でございます。カーボン・クレジット市場整備室長を担当してございます。本日プレゼンいただいた3行には大変お世話になっております。

 質問としましては、ボランタリー・カーボン・クレジット市場は黎明期という話もありましたけれども、混乱期でもあるような気もします。やっぱりTSVCMもだんだん基準が厳しくなっていったりとか、品質面の問題もございますし、あと、ユーザーサイドで、オフセットにカーボン・クレジットを使ってもいいのか。この前、SBTiでスコープ3でオフセットしてもいいのかどうかという悶着があったりとか、非常に不透明な状況にあるのかなと思っております。

 恐らく3行とも取扱いの中心は海外のボランタリークレジットだと思いますけれども、お客様と接している中で、お客様が品質面への不安から躊躇するといったことがあるのか、デマンドシグナルと言うのも変ですけれども、お客様サイドでボランタリークレジットへの見方、ちょっと当面控えようみたいなものがあるのかとか、もし御紹介いただければ。

【根本座長】  
 分かりました。では、それぞれの3行の方に?

【松尾メンバー】  
 そうですね。

【根本座長】  
 全体の時間の制約もあるので、なるべく短めに、では、お願いします。では、角田様からお願いします。

【角田様】  
 短く申し上げるのは難しいですけれども、恐らく今SBTiのお話がありましたけれども、要すれば、やっぱり質と位置づけと考えたときに、言い方を換えると、まずインセンティブはどこにあるのかということで、今それが多分ないということだと。それは例えばJ-クレジットと普通の海外のいわゆるREDD+とかVCMなんかと比べても、その位置づけが非常に曖昧だということ、まずこれがないと。ただ一方で、その上でやっぱり質の問題が残るということだと思います。足元は、逆に動機づけがしっかりした会社さん、従前からここら辺の意識が高くてやられている会社さんも若干及び腰になっているというのはやっぱり質の問題があって、恐らくレピュテーションリスクが上回ってしまっている状態なんだと思うんですね。ですから、ここがある程度改善されない限りにおいては、なかなかマーケットないし、我々がお客さんと、これは海外も含めてですけれども、心象風景というのは今言ったレピュテーションリスクが結局一番上回ってしまっているのかなと思います。

【根本座長】  
 ありがとうございます。では、長田様、お願いします。

【長田様】  
 御質問ありがとうございます。今、角田さんから質と位置づけというお話があって、質のお話をしていただいたので、当方からは、同様に重要であると考えて居る位置づけについて触れさせて頂きます。これは何のために買うかということですが、前提となる制度等がまだ今動いている状況ですので、そういった中で買い難いというのがあるのかなと思います。

 なので、我々としても幾つかカーボン・クレジットを紹介できるように用意していますけれども、購入ニーズはまだ限定的です。ただ、実際に引き合いというか、入札というか、御関心いただけるのは、そういった制度上の活用というよりも、実際にエンドユーザーというかお客様へのさらなる訴求を目指して、こういったカーボン・クレジットを織り交ぜた形でやっていますということで、最終需要者の人たちにその商品が求められる、その価値を感じていただける場合には、今、自主的に取り組んでこういったものを買っていただけるのかなと思いますけれども、まだ枠組みが整備されるまでというか、ボランタリー・カーボン・クレジットのニーズはなかなか育ちにくいのかなというのはあるかなと。使い道のところですね。

【根本座長】  
 ありがとうございます。では、馬場様、お願いします。

【馬場様】  
 馬場です。その昔、京都クレジットの時代を考えると、経団連の自主行動計画に従った取り組みがありました。国が削減をコミットして、経団連がそれに従って自主的にコミットしていたフレームワークがあって、それ以外のところで自主的にカーボン・オフセットする人がいました。でも、その自主的な人はほぼほぼ少なかった世界だったと思います。

 今御指摘があったとおりで、今日この時点ではそういうフレームワークはないとなると、自主的にやる人がいるのか。実は、そんなに自主的にやる人も多くはない。それはなぜかというと、先ほどの御指摘があったとおりで、レピュテーションリスクみたいなものがあり少し二の足を踏んでいる印象がありますが、ICVCMやVCMIのように、ボランタリー・カーボン・クレジットに対してさらに自主的にクオリティーを精査、さらに標準化していく動きが今ありますので、自主的にやろうとしている人たちにとってみたら、後押しになっているんじゃないかなというのが今の世界観かなと思っています。

 以上でございます。

【根本座長】  
 よろしいですか。

【松尾メンバー】  
 はい。ありがとうございます。

【根本座長】  
 ありがとうございます。ほかに。

 私がしてもいいですか。私も、今の松尾さんのお話はまさしく伺いたいところだったんですけれども、馬場様に伺いたいのは、Carbonplaceという非常に画期的な海外の取引プラットフォームを海外の金融機関と一緒にやっていらっしゃるんですけれども、いろいろと海外メンバーと交渉とかされて、日本が特にまだ何か遅れているとか、非常に足りないとか、いろいろあるのかもしれないですけれども、そういう感じられることがあったら教えていただきたいと思います。

【馬場様】  
 ありがとうございます。Carbonplaceでの取引というのは、実はお恥ずかしながらそんなに行われていない状況です。基本的にはボランタリー・カーボン・クレジットをやり取りする場になりますけれども、バイヤーさんも世界的にもそんなにいないのかなというふうには感じておるというのが1つです。もっと言うと、もしかしたらいるんだけれども、Carbonplaceが使っていただけるプラットフォームにまだなっていないというのもあるのかなと思います。

 株主のメンバーとは最低限月1回とか、いろいろな市場の動向について意見交換はしているんですけれども、それぞれの国、例えば日本の反対側でいきますとブラジルの銀行とかありますけれども、あまりそんなに活況じゃないよねという話なんですが、よく聞く話は、特にブラジルなんかはそうですけれども、売手のほうは盛り上がっていて、買手は盛り上がっていないということですので、盛り上がっているように聞こえるのは、売手が盛り上げているというふうな印象を持っております。

【根本座長】  
 分かりました。ありがとうございます。

 ほかにありますか。皆様残っていらっしゃるのでまた後から可能かもしれませんけれども、取りあえず1部の方は終わらせていただきまして、それでは、自由討議のほうに移りたいと思います。ゲストの皆様もよろしければ御参加ください。

 これまでの事務局の説明、また、金融機関の方との議論も踏まえて御意見をいただければと思います。特に初回となりますので、事務局から御説明があった点に限らず、今後議論するべき点とか、重要だと思われる点、御意見をいただければと思います。では、よろしくお願いいたします。

 それでは、高梨様、お願いいたします。

【高梨メンバー】  
 IOSCOの議論の中でも、グローバルな基準と統一感があるべきという話がありましたが、一方で、先ほども誰かのお話にありましたように、様々なガイドラインが出てきている中、結構厳しいガイドラインもある理解です。そうすると、マーケットがなかなか伸び悩むというような状況の中で、そもそも我々としてどこを目指すのか、特に国内のマーケットを広げるという意味では、本当にグローバルスタンダードに合わせるというのがいいのかどうかというのは、いろいろ意見があるとは思いますが、1つ大きな論点になると考えます。

 あと、御議論いただきたい事項の1ポツ目に記載いただいているように、様々なルールが出ているというのはそのとおりですが、全体がちゃんとまとまって見えている人はあんまりいないのではないかと考えております。海外でも様々なルールが出ていますし、環境省さん等もカーボン・オフセット・ガイドライン等を出されておりますが、これも国内、海外様々あり、お客さんと話していても、完全に全てを把握しているお客様はあんまりいらっしゃらないという印象を持ったりしますので、ここの見える化をしてからでないとなかなか前に進まないのではと考えます。

 金融機関としては、やはり従来に比べると期待が非常に大きい、昔に比べると大きくなっているという認識でおりますし、金融機関が脱炭素を進める1つのイネブラーだと思われていいと思いますので、しっかり積極的に関与していきたいと思っておりますが、やはりそういったところがなかなかクリアカットにならないと進まないのでは、という印象を持っています。すみません、拙い話ですが、私からは以上です。

【根本座長】  
 ありがとうございました。それでは、小山様、お願いいたします。

【滝川様(小山メンバー代理)】  
 ありがとうございます。小山の代理で参加させていただいております、三菱商事の滝川と申します。私、普段はDACとか炭素除去の事業開発、クレジットの売買をやらせていただいております。

 何点かあるんですが、やはり皆様おっしゃられていますけれども、開示とか用途のところのガイダンスが圧倒的に足らないというところで市場が混乱しているところがあるのは間違いないと思います。今少しお話が出ましたけれども、どこまでグローバルの議論に合わせていくかというところはそれは最終的に議論の末だと思うんですけれども、少なくともこういった協議の場にやはり顔を出すというところと、その場に我々として意見を発信することが極めて重要だと思っております。

 もちろん弊社単独でできることも限られていますので、これを日本国として民間企業としてやっていくという必要性があるかなと思っております。例えば、ICVCMとかVCMIの議論とかも我々積極的に関与して、業界で何が起きているかということをきちんと理解した上でどういうポジションを取っていくかというところが極めて重要かと思っております。

 すみません、もう1点だけ、開示のところに関連はするんですけれども、品質のところにもいろいろ懸念があるかなと思っております。これは業界として技術がいろいろあったりとか、手法がいろいろあって複雑なところがそもそも起因しているかと思うんですけれども、リダクション、リムーバルというところの整理とか、ここのコンセンサスが取れていないというところでバイヤー様からしてもなかなか手をつけづらいのかなというところかと思っております。一度購入したものが後からやはり品質が悪かったというところで、いいことをしたと思ったのに、逆に悪いこととしてみなされてしまうというところがより一層市場を遠ざけているところも気をつけるべきかなと感じております。

 一旦以上とします。失礼します。

【根本座長】  
 どうもありがとうございました。では、オンラインで御参加の黒崎様、お願いします。

【黒崎メンバー】  
 ありがとうございます。エナジー・インパクト・パートナーズの黒崎と申します。今日はサンフランシスコから参加させていただいております。普段はシンガポールにおります。エナジー・インパクト・パートナーズは、気候変動に役立つテクノロジーを持つスタートアップに投資するベンチャーキャピタルでございます。ボランタリー・カーボン・マーケットも弊社はずっと長く、ヨーロッパ、アメリカ含め見てきているんですが、なかなか難しいなと思っている点で、そのうち、2点ほど、今日の議論で課題と思っている点についてお話しできたらと思っております。

 1点目は、皆さんが既に御発言されている点ですが、透明性と品質というところです。特に今、何度も御発言の中にありました開示の部分かなと思っております。やはり特に買手のクレジットを使った後の削減量の開示の仕方、特にそれを使うときの予測値とか、予測値を出すためのシナリオ設定とか、その辺りがいろいろなスタートアップが出てきて、いいソリューションが出てきてはいるんですけれども、全てがやっぱり完璧なものがまだないのかなと思っております。こうなったらこれだけ削減できるというようなシナリオの部分が、恐らく投資家にしてみても、買手側にしても、なかなか市場の信頼性が高くなるまでに至っていないので、なかなか難しいなと感じている部分がそちらになります。特にそれに対する、これから出てきてほしい希望としては、やはりその辺りのルール設定、先ほどルールを全部まとめたらという御発言もありましたけれども、そういったものに期待をしております。

 2点目は需要と供給の面で、先ほど馬場さんもおっしゃられていた点だと思うんですが、市場によって供給はたくさんはあるけれども、なかなか需要が追いつかないといった面もありますけれども、特にやはりいいプロジェクトだったりする、よく言われております、今回の説明資料の中にもあったかと思いますけれども、リムーバル市場とアボイダンス市場になっていまして、やはりリムーバル、かなり目的意識の高い買手の方々はリムーバルを好まれるということで、そうなると、相対で結構取りに行かれるプロジェクトが多い中、VCMの市場に出てくるプロジェクトがどれだけこれから確保、それぞれのマーケットプレースでできるのかというのは、マーケットプレースのスタートアップなどもあるんですけれども、そちらに投資できるかという、投資側の観点からなかなか難しいと感じている市場です。もう一方で、需要側もですけれども、今後日本でもGXリーグとの関連性とか、企業側の買いたいと思う、売りたいと思うところの、どういうふうにそこの着眼点を置いてくるのかといったところは非常に興味がある分野でございます。

 それから、3点目、最後ですけれども、先ほど、何のためにというようなゴール設定がいろいろ多分、アメリカとかヨーロッパとかシンガポールでも、VCMの市場の、どういうゴール設定にするのかというのはとても気になっているところで、今回、例えばですけれども、バイデン・ハリスのアメリカの新しく5月後半に出てきた資料なんかを見ますと、1点目にやはり雇用をちらつかせるような書き方があって、農地の活用とか、森林所有者のためのというようなところもあったりします。それぞれそれは市場によって異なるのは当然だと思いますけれども、日本が今後このVCMの市場をルール、今回はストックテイクだということであるかとは思うんですが、本格的に市場を育てていくためには、何のためにこれを設定していくのかといったところはとても大事な議論だと思います。今回はもしかしたらそれが課題として挙がらないかもしれないんですが、ぜひそこは検討していかれたらよいのかなと思ったところです。

 以上です。ありがとうございます。

【根本座長】  
 どうもありがとうございます。それでは、吉高様、お願いいたします。

【吉高メンバー】  
 どうもありがとうございます。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの吉高でございます。私は、カーボン・クレジットのビジネスを2000年から京都議定書のクレジット組成を始めまして、JCMのクレジットの組成、それから、ボランタリー・カーボン・クレジットでも、ゴールドスタンダードの理事をやったことがございます。

 基本的には世界的なカーボン・クレジットの市場については理解しつつも、やはり先ほど松尾さんがおっしゃったように、混乱期というか、昔はやっぱり政策ベースが確実にある質の高いクレジットがベースの取引がメインで、ボランタリーは残念ながら一部でやっていたというイメージだったんですけれども、今はボランタリーのほうが大きくなった。政策的には、例えばパリ協定6条ルールに則ったクレジットの世界、それから、日本政府が認めている公的なクレジットの世界があり、その中でボランタリーのクレジットが大きくなった。それが両方とも黎明ではなく、政策的クレジットは比較的整ってきたんですが、ボランタリークレジットは十分に検証されないまま大きくなったために混乱が起きたというのが、多分松尾さんのおっしゃっているようなことだということをまず整理した上で、それによって、供給者と需要者の立場を整理しながら、この議論を進めていく方がいいのかなと思っております。

 例えば今回のバイデン大統領の声明も、多分これは政権が共和党になるとまたがらっと変わってくると。実際に米国の各州のクレジットの考え方はまるっきり違いますので、やはりこういったことだけに振れないほうがいいと思いますし、混乱期というところをいかに整理していくかというのが重要かなというのをまず1点最初に申し上げたいと思います。

 あとは、いろいろ申し上げたい点はあるんですが、もう2点申し上げたいんですが、まず供給側と需要側のバランスの問題なんですけれども、皆さん、クレジット組成がどれほど大変かというのを理解するべきかと思います。世の中に出てくるクレジットは、出てきたものだけを把握すればいいというものではないので、だから、BIS規制が、ああいうことをしているんだと思うんですね。本当にカーボン・クレジットを組成するのは簡単ではないんです。ですので、そこを見極める能力があるトレーダーなりマーケットプレースがないと、投資家保護は本当に図れないと思っています。

 実際のところ京都クレジットのときも、個人投資家に対しての詐欺があったわけですけれども、先ほどどなたかおっしゃいましたけれども、カーボン・クレジットというのは、先ほど申し上げたように複雑です。ですので、その複雑なものをきちんと整理して、投資家保護の視点をきちん考慮するというところが実はここの検討会が一番やらなくてはいけないところなのかなとは個人的には思っています。環境省は環境省で立場がある、経産省は経産省で立場がある。では、金融庁でやるこの検討会の意義というものをやはり最初に整理しておく必要があるのかなと思っています。大学で教えておりますと、カーボン・クレジットに関心を持つ若者が大変多い。また、シンガポールとか、今、アジアでも非常にスタートアップが増えておりますというところでは、何らかの指針を出すというところも非常に重要だということで2点目、申し上げておきたいと思います。

 それに加えて、最終的には、今度、国内でボランタリークレジットが出来た場合です。今は海外のボランタリークレジットを話していますけれども、これが例えば、地方で地域通貨とかにかけ合わせてJ-クレジットでやっている場合だったらまだいいと思うんですけれども、もしこれがまるっきり違う形でボランタリークレジットが出てきた場合、それをどういうふうにクレジットとして担保していくかというところも実は最後の論点としてはあるのかなと思っています。

 一応、以上にしたいと思います。ありがとうございます。

【根本座長】  
 どうもありがとうございました。では、江夏様、お願いいたします。

【江夏メンバー】  
 野村資本市場研究所野村サステナビリティ研究センターの江夏と申します。よろしくお願いします。私は、サステナブルファイナンス全般を調査・研究しております。頂いた資料の29ページ目の御議論いただきたい事項4点について、気がつきましたところを述べさせていただければと思います。

 まず1点目につきまして、取引の安全性が大前提だと思っております。やはり使い方のルール、それから、国際間の調整、存在と品質の証明、そして、取引の契約の統一化といった点が確保されるというのが大切で、利用促進につながるのではないかと思っています。その意味で、これらの点を御議論の中心にするとよいのではないかと考えています。

 それと共に、そもそもカーボン・クレジットは目に見えないものという意味でも難しい存在ではありますが、活用することがどういう意義につながるのかもしっかりと整理をするということが大切だと考えています。加えまして、利便性向上のために何ができるのかといったことも大事な論点と思っています。

 2点目の論点につきまして、15ページ目に掲載されているXpansivにおける取引動向を拝見し、米国や欧州のSDGs債の発行額の推移と類似した傾向があると感じました。具体的に、米国や欧州のSDGs債の発行額は、2021年をピークに伸び悩む傾向にあります。これらの国・地域では、ウォッシュを回避すべく、欧州であればSFDR、米国であればファンド名称規則等を通じて規制監督が強化されました。このような動向が示唆するということは、信頼性(クレディビリティー)の確保と、取引契約の標準化が市場の発展にとって大切という点ではないかと思っています。

 そこから発展する論点として、頂いた資料の11ページ目に評価機関を含めたエコシステムの構成が掲げられています。例えば、金融庁では2022年12月に「ESG評価機関・データ評価機関に係る行動規範」を公表し、国内外の機関が受入れを表明しています。例えばESG評価機関等のように、例えばカーボン・クレジットの評価機関の信頼性を確保すべく、行動規範のような仕組みを適用する意義があるのか否かを検討するのもよいのではないかと考えています。

 3点目につきまして、国際的な視点で最も大きな点としては、二重計上にならないということと、各国のNDCに使えるような相当調整のルールを決める必要があるのではないかと思っています。特に、カーボン・クレジットを大規模につくるためには、土地のリソースが必要であって、日本国内では難しいと言わざるを得ない状況です。その意味で、国際的に需要が立ち上がってきて、カーボン・クレジットの価格が上がってきたら、高コストの日本でも採算が合う可能性があると思われますが、大分先になるだろうとみられます。その場合、海外でつくった低コストのカーボン・クレジットを日本でも活用できるルールが早く出来なければ、日本企業が海外の企業に比べて高コストの負担を強いられるということがあり得るのではないかという点で心配しています。

 それとともに、技術開発が進んでいる中で、新しいGHG削減手法が開発されるということも期待されます。その中で、これらを活用した新しいカーボン・クレジットの認証手続などが適切にかつ機動的に進められるように、国際間の連携があるとよいのではないかと思っています。

 4点目のその他につきまして、今回はカーボン・クレジット取引が検討対象ではありますが、英国やオーストラリアで生物多様性クレジットに関して取組が進められています。将来のテーマだとは思いますが、こういった違うクレジットの動きも押さえつつ今回の検討を進めれば、バランスの取れた検討成果につながり、かつ今後の広がりが期待できるのではないかと思っています。

 あともう1点として、ブロックチェーンの活用につきまして、私自身、デジタルボンドについて研究を進めておりますが、信頼性確保という意味でとてもポテンシャルがあると期待しています。ただし、リスクもあり得るものなので、こういった点も踏まえて検討テーマとしてしっかりと取り上げていくことが重要なのではないかと思っています。

 以上です。

【根本座長】  
 どうもありがとうございました。では、長島様、お願いいたします。

【長島メンバー】  
 初めまして。ENEOSカーボンニュートラル戦略部の長島と申します。本検討会におきましては、産業界、すなわち、COの排出事業者の立場でいろいろと意見を申し上げたいと考えてございます。

 ENEOSは、100年以上エネルギー素材の安定供給という社会的な責任を担ってきているわけですけれども、どのぐらいCOを排出しているかというのを冒頭少し御紹介いたします。当社は国内に9か所の製油所、そこでガソリンとか灯油、軽油を製造しておりまして、その製造工程でどうしてもCOが出るということで、当社のスコープ1・2が年間3,000万トンとなります。さらに、お客様の排出する、つまり、スコープ3の排出量が1億8,000万トンということで、足して2億1,000万トン。日本の排出量が12億トンですから、ENEOS1社で日本全体の約2割弱ぐらい、直接・間接でCO排出に携わるということでございます。

 そういった意味で、昨年、当社のカーボンニュートラル基本計画を公表いたしまして、2040年にスコープ1・2のカーボンニュートラル、そして、50年にスコープ3を含めたカーボンニュートラルをコミットしてございます。この目標は、当然、当社はスコープ1・2のオフセットのためにCCSとか、お客様のオフセットのために水素だったり、SAFだったり、合成燃料に取り組んでおりますけれども、正直、この量全てをそういった手段でオフセットすることは非常に難しいと考えておりまして、ENEOSといたしましては、カーボン・クレジットのマーケットは積極的に活用していきたいと考えてございます。

 その上で、カーボン・クレジット取引に関しまして、一丁目一番地というか、一番大事にしたいことを申し上げたいんですけれども、やはり国内製造業の競争力低下を招かずにいかに脱炭素を実現する、そういった仕組みづくりが非常に重要ではないかと。ここをポイントとして検討していただければなというふうな強い思いがございます。

 その上で、今、私どもが抱えている課題感を、量の話、質の話、価格の話、3つの視点でそれぞれ申し上げたいんですけれども、まず量の確保。排出事業者といたしましては、目先、2026年からGX-ETSが開始されますので、適格クレジット、これの量がやはり圧倒的に今、足元足りないというところで、ここの部分に課題認識を持ってございます。ここの部分については、当然、J-クレジットだけではなくて、JCMの今後の拡充であったり、やはり将来的には海外のボランタリークレジットを相当調整、そういった形でうまく使っていきたいなと考えてございます。

 さらに2つ目の視点、質でございます。当社を含めた排出事業者は、常にグリーンウォッシュのリスクに晒されておりまして、やはりクレジットの質を担保したい。ただ、なかなか足元、質の担保が難しいということで、当社では、まずは自らクレジットを創出しようということで、まずは質を担保する。さらに、東証でもクレジットの取引が始まっておりますけれども、どうしても東証での取引ですと、質の担保というところがなかなか難しいところがありますので、まずは相対取引でという形で、そういった排出事業者さんが多いんじゃないかと考えてございます。

 そして、3つ目、最後の価格のところでございます。やはり価格の安定性を我々排出事業者としては非常に重要視しております。特に足元、ルールが変わることによって価格が暴落したり、上がったりと、こういった部分ではなかなか予見性がないということで、クレジットの取引に参入できないという悩みを抱えてございます。

 いずれにいたしましても、排出事業者としては、カーボン・クレジット取引を非常に効率よく将来的には使っていきたいと考えておりますので、この検討会でいろいろと意見を申し上げたいと思います。よろしくお願いいたします。

【根本座長】  
 どうもありがとうございます。鶴野様、お願いいたします。

【鶴野メンバー】  
 CSRデザインの鶴野智子と申します。よろしくお願いいたします。私は普段、主にサステナビリティ情報開示の調査しておりまして、日本公認会計士協会でも研究員として情報開示について研究しております。本日は個人の立場として意見を述べさせていただきますけれども、昔、会計監査をしていた経験もふまえて、開示や第三者レビューといったところを中心に意見を述べさせていただきます。

 まず、クレジット評価機関の信頼性についてです。11ページ目にお示しいただいている取引関係主体のところで、下のほうにRating agenciesとあります。こちら、江夏様が御指摘されたことと重なりますが、今現在の実務としては、ICVCMがプログラムを評価して、プロジェクト単位ではこのRating agenciesが評価していくというようなことも起きていて、このRating agenciesの評価によって価格が変わってくるということも起きているという調査も見ております。そうしたことを考えると、やはりこのRating agenciesの信頼性の確保が重要になってくると思っておりまして、江夏さんがおっしゃられたとおり、金融庁さんで出されている行動規範にこうした機関を含められていくのか、または、こうした機関向けに別途同じようなガバナンスの信頼性を担保していくような仕組みを今後検討していく必要があるのではないかなと考えております。

 あと、関連して、この評価機関の業務に関しては、検証、認証、保証といった第三者レビューに関わる言葉の定義や概念がいろいろとございます。本資料にも検証や認証といった言葉が幾つか出てまいりますし、あとは、ほかの政府の資料では、保証という言葉もありまして、例えば認証とは何々を保証することであるといった形で、この3つの言葉が混在しているようなところもございます。この検証、認証といった定義については、ICMAが出しているExternal Reviewerのガイダンスで定義が記載されており、その定義を金融庁さんの行動規範でも、あとは、環境省さんのグリーンボンドガイドラインでも参照して説明が書かれていますが、保証についてはそこには定義されておりません。ということで、検証、認証、保証の内容を横比較できていない状態が起きていると思っています。今後、サステナビリティ情報については保証がついてくるだろうという一方で、GXリーグやカーボン・クレジットについては検証が求められてくる。そうすると、検証と保証に対する投資家の期待ギャップを解消するためにも定義の整理は必要かなと思っています。

 併せて、サステナビリティ情報の中でGHG排出量が開示されてくる。そこに保証をつける。GXリーグではGHG排出量に検証が付されるので、GXリーグの下で検証された数字がサステナビリティ情報開示で利用されるような場合に、検証されたデータはもう十分保証のレベルに達しているのか、といった議論も出てくるかもしれません。そういった意味でも、やはり定義を明確にすることは重要ではないかなと考えております。

 あと、少し派生した議論として、カーボン・クレジットに関する会計処理についてですが、企業の皆さんがカーボン・クレジットを購入すると会計処理を伴うわけですけれども、その会計処理がまだ基準として明確ではないという状況です。2004年にASBJから「排出権取引の会計処理に関する当面の取扱い」が公表されておりまして、京都メカニズムにおけるクレジットの会計上の取扱いは決められていますが、その後に新たに出来た取引については会計処理が明らかになっていない状況です。ということで、昨年、日本公認会計士協会でも、「環境価値取引の会計処理に関する研究報告」を公表し、現時点における会計処理の考え方を取りまとめました。この研究報告は実務を拘束する内容ではないですが、実態としてこういうものが起きていますというものは整理しています。

 その中でも、J-クレジットは京都メカニズムと似たところがあるので、2004年に出した基準を参考に会計処理をしてもよいという判断ができ得る可能性が高い一方で、ボランタリークレジットは判断がより難しくなるだろうと述べられています。今後さらにボランタリークレジットが増える可能性がある中で、投資家さんたちにとっての比較可能性の観点からもある程度共通化されるとよいのではないかなと思っております。

 あと最後に、教育について。たしかIOSCOのレポートでも教育に関する指摘があったのではないかなと思っております。こちらも日本公認会計士協会で2年ほど前からサステナビリティ教育に関するシラバスを検討してまいりまして、先月ようやくシラバスの公表に至りました。やはり新しいことでとても時間がかかりまして、さらに、この分野の教育で難しいところは、どんどん情報が更新されていくので、1回コンテンツを作っても、すぐに中身を更新しなければいけないということです。その辺りもほかの教育とは異なった性質があると思いますが、この分野に関わる方たちの教育の底上げがカーボン・クレジットの質の底上げにもつながると思いますので、そこも検討の1つに入るのではないかなと思っております。

 以上となります。

【根本座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、武川様、お願いいたします。

【武川メンバー】  
 武川でございます。よろしくお願いいたします。私は20年ぐらい前から、京都クレジット第1約束期間の前からこの分野をやっておりまして、現在、シンガポールやベトナムといった複数のオフィスを兼任する形で東南アジアの拠点で勤務をしています。ただ、一昨年ぐらいから日本でのカーボン・クレジットの御依頼が非常に増えていまして、時代の変化を感じているという、そんな状況です。

 ちょっと取り留めもない感想を4点ほどお伝えしたいんですが、あまり整理できていない部分もありますが、まず1点目、複数の方が御指摘されていたんですけれども、やはり今のカーボン・クレジット取引で一番難しいなと思っているのが、法的にはカーボン・クレジットを取得する理由がないということでございまして、この点、非常にやはり難しいなと思っています。この点は、GX-ETSが2026年から法制化されて本格的に始まるという局面なので、そこを様子見というか、そこを待った上で、じゃあ、どうしようと。まずはGXのほう、ETSのほうをどうするかという、どうしても法的な制度の立ち上がりを待っている状態ですので、タイミング的に非常に難しいタイミングなんだろうなとは思っています。

 2点目は、これは実務をしていて感じることなんですが、法的な使い道がよく分からないというところに関連する点なんですけれども、やはり日本として、この検討会の目的じゃないかもしれないんですが、やはり相当調整を前提にしたクレジット、これはボランタリークレジットにしても相当調整をする可能性はあると思うので、そういったものをやはり組成していく努力をもっとしていく必要があるのかなと思っています。これはJCMに関して言えば、一応理論的には相当調整がされるはずなので、JCMを組成するということも含む努力が必要だろうと思っています。私は1件、民間JCMのプロジェクトに関与したことがあって、最後まで行ったプロジェクトなんですが、その経験で言うと、クライアントの方は物凄い苦労されていまして、やはり国の支援が非常に必要なんだろうなとは感じているところです。

 3点目は、もう少し下流のほうの話になるんですが、いろいろなクライアントをサポートしている中で、ボランタリーにしてもクレジットを販売するところ、そこでのお客さんに対する説明の難しさを非常に感じています。もちろん何を説明するかが難しいというところもあるんですが、それ以前の問題として、例えば金融機関のお客さんだと、顧客に対してどういうリスクを説明しなければいけないかということをすごい気にされるんですね。それは事業の成り立ちからしてそういう御感覚をお持ちなんですが、そうじゃない方は全然そういうことは考えてなくて、何を説明するか以前に、そういった規範がないので、あるいはソフトローも含めてルールもないので、人によって感覚が全然違うので、そこもやはりアドバイスする上で難しいなという感じはしています。

 最後、4点目です。4点目は、一般的なリテラシーの低さを感じています。例えばウォッシュだとかいろいろ言われているんですが、日本でも一時期というか結構、新聞なんかで、カーボン・クレジットおかしいんじゃないかみたいなキャンペーンが張られたことがあります。こういうものを見ていても、削減系と森林吸収を中心とした吸収系というのは、方法論にしても考え方にしてもロジックに根本的な違いがあります。

 つまり、森林吸収って、クレジットを発行した後に行われる活動を前提にしたクレジットのわけじゃないですか。それに対して削減系は、既に過去に行われたことをクレジット化しているという話なので、全然ロジックが違うんですね。その辺りの違いが分からずに、一緒くたにカーボン・クレジットが変なんじゃないかとか、逆に森林吸収は危ないんじゃないかみたいな、というところが言われていて、やっぱりリテラシーが低いので、議論が少しかみ合っていないし、おかしいなという感じもしています。この辺りは、多分売る方もあんまり明示的に分かっていない場合もあるし、買う方はもっと分かっていないという状況で、やはり全体的なリテラシーの向上も必要なのかなと感じています。

 以上、ちょっと雑駁な感想なんですけれども、共有させていただきました。ありがとうございます。

【根本座長】  
 ほかにありますか。松尾さん、どうぞ。

【松尾メンバー】  
 すみません、2回目で恐縮です。先ほど長島さんのほうから私どもの市場にコメントがあったので、ちょっと補足させていただきます。一応、J-クレジットは日本政府規格のものなので、さすがに海外ボランタリークレジットよりは品質はしっかりしているのかなとは思います。難しいのは、1トンだけの価値だけでなくて、裏にもう1つ環境価値を持っていて、それは何かといいますと、電力を何キロワットアワーセーブしたかとか、省エネ法の適用ができて原油換算で何キロリットルセーブしたかとか、熱ですとギガジュール換算とか、価値を2つ持っているというのがあります。そこで方法論に応じてある程度定型的に、1トン当たりのセーブできる電力量とかが違っているというのがありましてちょっと混乱があったので、具体的にはバイオマスとそれ以外を分けるとかというふうに売買の区分を分けたというのがあります。そこが補足説明でございます。

 流通市場を考えますと、ボランタリークレジットとかベースライン&クレジットのタイプは、マーケットプレース型という、個々のプロジェクトに着目して売買をするのか、それとも、ある程度標準化した売買をするのかという2つの方式があります。私どもの取引所は、例えば再生可能エネルギーの電力由来のものであれば何を渡してもいいという形の標準化した取引をしている。それはもちろん需給の攻防がありますけれども、価格をなるべくあんまり複雑に、マーケットプレースですと結局プロジェクトごとに値段があることになりますけれども、1個になるべく集約した取引にすることでカーボンプライシング、価格の発信がしやすいのではないかと感じているところであります。

 その関係では、金融庁様の論点の1個目で、クレジットの特性とか価格をどういうふうに整理したらいいのかというところがございまして、取引の方法というのもございますけれども、市場の形として、もちろん流通の形で標準化した取引をするというのもありますし、あと、15ページのところでXpansivさんの値段で出ているように、ある程度何らかのカテゴリーにして価格指標を出すというのもあるかもしれないと思っています。

 先ほど武川先生のことで1つ、炭素1トンではなくて、やっぱり日本のJ-クレジットでなくて、裏の環境価値みたいなものと付随するストーリーがありますので、大まかには恐らく自然系とテック系、あと、吸収系と除去系という4ジャンルで分けて、日本はまだそこもあんまり明確でないような気はするのですが、15ページを見ていただきますと、そこだけでなくて、結局、品質面の、森林系のところですとCCPという生物多様性とかコミュニティーに配慮したとか、イニシャルCCPのフラグが立っているだとか、品質面のものも出てきております。

 これは私どもの市場も悩ましいところですが、大本の自然系、テック系、吸収系、除去系というか削減系の4つにこういう品質のものをどう組み合わせて取引を標準化する、あるいは価格指標を出していくかということがボランタリークレジットの定着にもつながっていくのかなという気はしています。そういう意味では、方法論の整理、個々の方法論が、4ジャンルあるいは品質面を組み合わせたものにどういうふうに結び合わせていくのかというところが示せると、需要側のほうが分かりやすくなるのかなという気はしております。

 すみません、取引所が自分で考えろという話も含めての感想で恐縮です。

【根本座長】  
 滝川さん、お願いします。

【滝川様(小山メンバー代理)】  
 すみません、クイックに補足させていただければと思います。今の点は極めて重要だと思っておりまして、きちんとやっぱりリダクション、リムーバル、ネーチャー、テックという技術がいろいろあるということをきちんと理解したほうがいいかなと思っていまして、それぞれに応じてやはり制度が異なっているという今の混乱期の実態を理解しておく必要が極めて大事だと思っています。みずほ様の資料にございましたけれども、短中長期的にテックのほうに移っていくというシナリオなので、何か1つが重要ということではなくて、全部重要なんです。ただ、順番論として今あるものから始まるというところも理解するべきかなと思っております。なので、一部だけの技術だけに特化した、何か優遇する制度などはあまり好ましくないのかなと感じております。

 ちょっと出なかった議論としまして、法律があるから買いなさいというところだけではなくて、産業育成という観点でカーボン・クレジットを買うインセンティブを設けているということをいろいろな国々が今やっているということは重要な観点かなと思っております。特に米国の場合は、彼らがカーボン・クレジットの創出側の事業立地になるということをよく分かっていますので、開発もクレジットも需要喚起というところもかなり力を入れている。それはコンプライアンスだけではなくて、やはり産業育成という観点が1つあるのかなと。日本もこういう視点があるといいのではないかなと思いました。

 最後、出なかった観点で、二重計上の話がかなり資料にあったので1つコメントしたいのですが、今、私がやっているテックの世界にはなるんですけれども、例えば欧州のNDCの貢献にはつながるけれども、それを海外の民間企業も買い取って、ダブルクレームになっていると。これは、なので、あくまでもボランタリーの世界でもありますけれども、国とその国以外の民間企業が同じ価値をクレームしているという状況、これはどう判断されるか難しいところだと思うんですけれども、今必要な議論なのではないかなと思っております。国と国自体がダブルクレームする、これはあり得ないと思っておりますし、相当調整が必要だと思いますけれども、ボランタリーな世界において国と民間、ここは何かしらの制度があっても問題ないのかなと思っております。

 以上でございます。

【根本座長】  
 吉戒様、お願いします。

【吉戒メンバー】  
 吉戒です。トパーズリージョナルパートナーズは事業承継とか事業再生のプライベートエクイティファンドでして、実は環境問題、サステナビリティとほとんどあまり関わっていないと言ったほうがいいかと思います。前職は、ふくおかフィナンシャルグループ、福岡銀行の役員で、3年ほど前から金融審議会の委員を仰せつかっているという、そういう立場です。

 今日お見えの委員の皆さん方は専門的なお立場でこの分野にお詳しい方ばかりですが、私はどちらかというと、外野から感想めいたことを申し上げることになってしまうんですけれども、前職が長かったせいもあって、地域とか中堅企業、中小企業、その辺りを軸に感想めいたことを申し上げます。

 現場に関わっている金融機関の人間にいろいろ聞きますと、やはりカーボン・クレジットが盛り上がっていないと。要するに、買手がいない、流通しないんだというようなことを聞いていますし、そうなんだろうなと思うんですね。これは具体的な規制とかフレームワークとか、あるいはガイダンスとか、そういったものが出てくるとまた様子が変わってくるんだろうと思うんですけれども、今のところ、クレジット購入のインセンティブを感じないといいますか、そういうことなんだろうと。

 先ほどからも何度かその点については指摘がありますけれども、これ、じゃ、どうするかというと、脱炭素というのが企業価値向上に直接的に何かヒットするという、これもなかなか実は難しいんでしょうが、これが1つですね。それから、2番目に、これはやっぱり法律とか制度の規制フレームがはっきり、削減義務みたいなものが課せられていく、あるいは次の段階なのかもしれませんけれども、炭素税みたいな賦課金、そんなことが出てこないと、なかなかクレジットを買うという人がやっぱりいないようなんですね。主要な取引先、関係ありそうなところにも幾つか聞いてみても、私自身も聞きましたし、ほとんどクレジット購入ニーズがないというのが足元の現状なんですね。これは地方だからとか、何とかということでもあまりなさそうな印象でした。

 そんなわけで、これからも、検討会では多分、こういうやや外野からの感想めいたことしか申し上げられないと思うんですけれども、今日はこんなところで私自身の感想として申し上げさせていただきました。

【根本座長】  
 どうもありがとうございました。では、一通り話は伺えたと思います。非常に貴重な御意見、また、建設的な御提言をありがとうございました。どうぞ。

【吉高メンバー】  
 最後に、せっかく銀行の方がいらっしゃっているので、今回のこの検討会議に期待されることとか、実際にEUでいっても一番投資銀行が、最終的にはリーマンのときでも現業が落ち込んだときでも金融機関がちゃんとこういったものを動かして市場が継続したというのもありますし、ぜひこの検討会議に期待されることがもしありましたらお聞きしたいなと。すみません。

【根本座長】  
 分かりました。では、角田様、お願いします。

【角田様】  
 冒頭申し上げましたとおり、質の問題と、もう1つ、位置づけの問題ですね。ここら辺について、特にやっぱり日本として見解を出していくというのが1つ重要なのかなと思います。全体的に混乱期とか黎明期とか言っても、やっぱり相対的には海外のほうがいろいろなことが起こっているのは事実なので、それをちょっと意識しながら、日本としてこうあるべきだというのをちょっと意識していろいろ議論をしていただければなと思います。

【根本座長】  
 ありがとうございます。では、長田様、お願いします。

【長田様】  
 ありがとうございます。長島さんのお話にあったと思うのですけれども、産業をきちんと守っていくという観点ってすごく大事だなと思ったので、吉高さんがおっしゃっていただいたように、これは金融庁さんが主催する場なので、取引の健全性とか、あとは投資家保護みたいな観点はすごく大事だと思うのですけれども、その裏側としてというか、日本としてこれをやっていく上でどうやって日本の産業、全体としてカーボンニュートラルというゴールを目指すのもそうなのですけれども、その中で産業を失っていかないようにというか、雇用のベースとなる企業の競争力を保ち続けるという観点は持ちながら進めていただけると大変ありがたいなと思いました。

 以上です。

【根本座長】  
 ありがとうございます。馬場様、お願いします。

【馬場様】  
 ありがとうございます。吉高さんのおっしゃっていた内容がそのまま私はアグリーというか、多分、環境省さんとか経産省さん、農林水産省さん、それぞれの立場でいろいろな検討をされているかなと思っていますけれども、金融庁さんでやられるということであれば、いかにしてお客様視点でお客様保護のフレームワークが出来るかとか、どういう問題点があるかというのを中心に議論したほうがいいのではないかなと個人的には思っております。

 ですので、先ほど松尾さんがおっしゃっていただいたような、価格シグナルは大事かと思います。いかにして透明性のある取引を成立させるかという意味では、やはり価格シグナルがあったほうがいいなと思いつつも、そうもいかない、一物一価の部分もあったりとかするので、その難しさみたいなところを御整理いただくのもありかなと思っています。

 以上です。

【根本座長】  
 どうもありがとうございます。私は早稲田大学のビジネススクールでサステナビリティファイナンス関係を教えております。そのきっかけとしては、10年ぐらい前ですけれども、アジア開銀研究所に入りまして、グリーンボンドとかジェンダーボンドとかこういったものの研究を始めました。今、アジアの脱炭素を進めるということが私のライフワークとなっています。あと、GPIFの経営委員も務めております。

 いろいろ今日は貴重な幅広い御意見をいただいてよかったと思います。皆様のおっしゃったクオリティー、情報開示、標準化などの重要性を確認しました。伺っていると、混乱期にある、あるいはクレジット購入の需要が盛り上がらない点というのは、1つの要因がその点が不十分なことだと思いまして、それを今、法制度がまだ不透明な中で難しさもあるんですけれども、この時期に課題や対応を議論しておくというのはとてもいいことだと思いました。

 一方、高梨様ほか皆様がおっしゃっていた、あまりにリジッドな、厳し過ぎる基準が作られると、黎明期ということもありますし、そういった点も考えると、柔軟性とかそういったものも重視しバランスをとる必要があるかと思います。

 江夏様、黒崎様、他の委員もおっしゃったんですけれども、クレジット市場の意義というんですか、全体を見てどういう市場があり、それぞれの役割が何かとか、J-クレジットとボランタリー市場との相互補完とか、ボランタリー市場の意義などを、経済への貢献、および効率性等の観点から整理してもいいのかなと思いました。

 あとは、3点目として、フォワードルッキングな在り方を考えていっていただきたいと思います。江夏様がおっしゃっていた生物多様性までカバーできるかは分からないんですけれども、そういう新しい社会課題にも恐らくここで議論するガイドラインとかは当てはまっていくと思いますし、カーボン・クレジットをとっても、いろいろな技術革新で新しい商品市場が出てくると思うので、そういったことにも対応できるような形になればと思いました。以上でございます。

 何か事務局の方からありますか。

【西田サステナブルファイナンス推進室長】  
 様々な論点をいただきましたので、次回以降は、論点が全体として何があって、どの部分を議論しているのか、明確にしながら議論いただけるよう準備を進めさせていただきたいと思います。また、ファクトや実態面、例えばカーボン・クレジットの発行実務や、取引の需給等についてもお話がありましたので、まずはこうした面のストックテイクを行っていく必要があると思いますので、事務局としても資料提供や、又はゲストの方にお願いするなど、検討させていただきたいと思っております。

 次回日程ですけれども、改めてメールを申し上げ、日程調整をさせていただければと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【根本座長】  
 以上でよろしいですか。何か追加の御発言とかよろしいですか。

 それでは、以上をもちまして本日の会議を終了させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――

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総合政策局総合政策課サステナブルファイナンス推進室(内線 2893、3515)

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