カーボン・クレジット取引に関する金融インフラのあり方等に係る検討会(第3回)議事録
1.日時:令和6年11月19日(火曜日)16時00分~18時00分
2.会場:オンライン開催
【根本座長】
それでは、定刻となりましたので、議事を開始させていただきます。カーボン・クレジット取引に関する金融インフラの在り方等に関わる検討会(第3回)となります。
座長を務めます、早稲田大学の根本です。皆様、御多忙のところ御参集いただき、ありがとうございます。
本日は、最初に、前回議論した地域・テックについて、簡単に振り返りの時間を設けております。前回少し時間切れでもありましたので、改めてコメントがある方はいただければと思います。その後、本日のメインテーマとしては、事務局説明、証券・商社・保険業界の取組のプレゼンテーションと、参加者での議論を予定しています。
それではまず、事務局の金融庁から、前回の振り返りについて御説明をお願いいたします。
【森サステナブルファイナンス推進室課長補佐】
事務局でございます。まず、事務局資料の3ページを御覧ください。第2回の振り返りということで、地域金融機関におけるカーボン・クレジット活用の取組に関する主な取組及び意見としてこちらに記載のところをいただきました。
まず、1点目ですけれども、顧客企業との対話・需要の観点というところです。地域内でクレジットを組成・利用する際に、創出事業者側としては売れ残りリスクが懸念事項の一つである。他方、購入者側としては、クレジットの継続性等に関心がある。また、森林系クレジットは、地域でのストーリー性や関係性が購入の契機となっている例も見られる。地域の買手は、いわゆる地産地消を求める声も多く、地域金融機関の役割は大きい。顧客企業が、まずは自らのバリューチェーン内の排出削減に努力し、その上でカーボン・クレジットによるオフセットを検討すべきという、優先順位を踏まえて対話をしていくことが重要であるといった御意見をいただきました。
2点目ですけれども、顧客保護の観点になります。売手自身も各クレジットの種類の違い等、クレジットに関する理解を深めることが重要である。買手のオフセットニーズを超過する過剰な量のクレジットを販売すること等がないよう、留意すべきである。J-クレジットとボランタリー・クレジットとで顧客保護の文脈は異なり得る。こういった御指摘をいただきました。
3点目ですけれども、取引の普及・拡大の観点というところです。クレジットの取引種別が多様化していく中で、分かりやすい説明・啓発の在り方を模索していくべきではないか。ブロックチェーンの活用等、個人が取り組みやすい方法を通じて地域にファイナンスしていくことは有意義ではないか。クレジット市場がスケールするためには、地域外への拡大・横連携も重要である。短期では啓発目的の商品もあるが、中長期では他の取組とも連関させる等して収益につなげることを企図している。こういった御紹介をいただきました。
次、4ページになりますけれども、カーボン・クレジット取引におけるテックの活用というところで、主な取組、御意見としてこちらに記載のところを御紹介いただきました。
まず、カーボン・クレジット市場の現状の課題とブロックチェーンが提供し得る価値というところで、こちらに記載しているところをプレゼンターの方から御紹介いただいています。
1点目ですけれども、市場の断片化と複雑さについては、分散型台帳技術により簡明かつグローバルな市場で需給調整が可能になるのではないか。2点目、透明性の欠如については、改ざん不可能な公開台帳により、取引を透明化できる。3点目、信頼性と検証の問題については、デジタル測定・報告・検証の活用等により、リアルタイムにこの検証を行う可能性もある。また、スマートコントラクト等を活用することで二重計上リスクを低減し得るのではないか。取引コストの高さについては、取引プロセスの自動化によりコストを低減できるのではないか。アクセシビリティーの低さについては、トークン化されたクレジットにより小口取引が可能となり、より幅広い参加者の参入を促進できるのではないか。プロジェクト開発者への資金流入の不十分さについては、コストの低減により、より多くの資金が直接プロジェクト開発者に流れる仕組みを構築できるのではないか。こういった御説明をいただきました。
2点目、その他のブロックチェーン・テック活用の意義ということです。企業間の取引だけではなく、個人の気候変動対策を加速させる可能性も秘めている。実際、地方自治体と連携して市民参加型の取組も出てきている。こうした取組は、気候変動対策の裾野を広げ、社会全体の環境意識向上に寄与し得るのではないか。世界的に多様なボランタリー・クレジットが存在する中で、複数の登録簿をAPI接続することにより、情報の統一化・クレジットの透明性向上を図るといった可能性が国際的にも模索されている。こういった御紹介をいただきました。
第2回の振り返りについて、事務局からの御説明は以上となります。
【根本座長】
ありがとうございました。それでは、第2回の地域・テックの議論を振り返って、改めてコメント等がある方はいただければと思います。16時半まで時間を取っておりますが、いかがでしょうか。御発言のある方は挙手をしていただければと思います。
では、松尾さん、お願いいたします。
【松尾メンバー】
ありがとうございます。1点、改ざん不能な公開台帳により全ての取引と信用の記録が透明化という部分については、これは、誰が保有していて、誰と誰との間に幾らでどういうクレジット取引が、クレジットというかトークン化されたクレジットの取引があるのというのが誰もが見えるようになるという、文字どおりの意味と理解してよいのかどうかということ。
あと、スマートコントラクトの活用方法なのですが、例えば創出側を考えると、例えばどこの口座に入れたらトークン化されるというのか、スマートコントラクトがどれぐらい買い側、売り側の、売り側だと創出されたものをトークン化してもいいよという部分にどこにスマートコントラクトがかかって、買い側のほうですとどこの段階で無効化処理、償却処理をスマートコントラクトできるのかというのが結構見えにくいという、仕組み方によってはあんまりスマートじゃないというか、アルゴリズムというか仕組み方が結構難しいのかなと思いました。
すみません、1点目は、誰もが台帳を今もう見られるようになっているのかという点、多分今の登録簿システムはそういうふうにはなってないので、そういうことかどうかということと、2点目は、スマートコントラクトの実際の、特にトークン化と償却のところのスマートコントラクトの中身がどういうものなのかなというところがもし分かれば教えていただければと。
【森サステナブルファイナンス推進室課長補佐】
事務局です。ご質問ありがとうございます。今いただいた2点につきましては、前回プレゼンテーションをいただいた方のこういった御説明があったところについてこの辺りはどうなっているのかと、そういう御趣旨の御質問として承りましたので、その点は別途、前回のプレゼンターの方を含めて確認して、また別途お答えさせていただければと思います。
【松尾メンバー】
すみません、ちょっと答えにくいところを聞いてしまいまして、申し訳ありません。
【根本座長】
どうもありがとうございました。では、そういうことで、確認後ご回答をいただくということにしたいと思います。ほかにございますでしょうか。
特にないようですので、それでは、次の話題に移らせていただきたいと思います。何か追加で思いつかれましたら、この後に議論の時間も取ってありますので、そこでコメントをいただいてもいいかと思います。
それでは、事務局からまた説明がございますので、よろしくお願いいたします。
【森サステナブルファイナンス推進室課長補佐】
事務局でございます。事務局資料の5ページを御覧ください。IOSCO最終報告書等について、としておりますけれども、証券監督者国際機構、IOSCOがボランタリー・カーボンマーケットについて報告書を出しております。こちら、第1回の検討会でも市中協議中のものを取り上げて御紹介させていただきましたけれども、先日11月14日、COP期間中ですけれども、最終報告書という形で公表されましたので、そちらを改めて御紹介するという趣旨でございます。
カーボンマーケットの役割が世界的に増している中で、特にボランタリー・クレジットに係る取引の透明性・健全性を高め、投資家保護を促進する観点から、21の論点についてのグッドプラクティスを提案していると、こういった内容になっております。4つの色でこのスライドで示しておりますが、規制のフレームワーク、発行市場、流通市場、使用と開示、この大きく4つの分野について、計21個のグッドプラクティスを各国当局向けに提案していると、こういった内容になっております。グッドプラクティスの内容自体は、市中協議版から大枠としては変わっていないというところになります。
次に、7ページです。このIOSCO報告書における重要な記載を幾つか抜粋させていただいておりますので、簡単に御紹介させていただきます。まず1点目ですけれども、ボランタリー・カーボン市場における主な脆弱性として、クレジットの質やこれに係る情報の利用可能性、その他、利益相反でしたり標準化の欠落等が存在しているという指摘がなされています。2点目ですけれども、グッドプラクティスは、当局、取引所、市場参加者に広く向けられたものであるとされております。3点目ですけれども、グッドプラクティスに法的拘束力はないが、金融面でのインテグリティ向上に向けられたものであり、秩序立った透明性ある取引を促進する、そういった趣旨で提示されているものであると記載されております。
8ページになりますけれども、標準化は信頼性・透明性等を向上させる上で重要であるとされております。特に海外ボランタリー・クレジットは様々な種類があるという中で、仕様等もそれぞれ異なっている。そういった中で一定の標準化を進めていくことが信頼性・透明性を向上させ得るのではないかと、そういった趣旨と理解しております。2点目、カーボン市場を分断させずに拡大させるためには、グローバルでの一貫性が重要であるとされています。3点目、ボランタリー・カーボン市場は、公正で、秩序立ったもので、経済的に健全で、構造的に強靱であるべきとされています。4点目、クレジットの二重計上を防ぐ上で登録簿は重要であると指摘されています。
次、9ページです。利益相反は、市場の潜在的な脆弱性の一つである。カーボン・クレジットの規制上の位置づけは、各法域でまちまちである。クレジットの評価・データ提供機関については、2021年にIOSCOが別途、ESG評価・データ提供に係る報告書を出しておりますけれども、このESG評価の報告書の中で、クレジットの評価機関については具体的には特定されていないものの、利益相反といった、そこで記載されているような論点がクレジットの評価機関などにも関連し得ると、こういった記載がございます。
10ページです。現状、クレジット取引の大部分は仲介者を介した相対取引である。2点目、仲介者は、買手・売手の間の取引促進のために、多様な注文のプール、市場情報や流動性の提供等の重要な役割を担うとされております。3点目、これらの仲介者は金融機関である場合もあり、重要な役割を担い得る。例えば、他の投資家への資金提供、取引促進、マーケットメイクや流動性の提供、商品組成、マーケットアクセスの促進、ヘッジサービスの提供等である。4点目、クレジットに係る保険は、買手に低パフォーマンス・無効化等のリスクからの保護を提供し、リスク管理ツールとして機能し得るとされています。
11ページと12ページは、第1回の資料で御紹介しましたカーボン・クレジット取引の関係主体を示した図になりますけれども、特に今回、後ほどプレゼンテーションいただきます、仲介の役割を担う、そういったプレーヤーの部分を参考までに赤枠で示していると、こういった図になっております。
13ページです。この後、大和証券、三菱商事、東京海上日動火災保険の皆様方からそれぞれ、カーボン・クレジットの取組を御紹介いただくことになっております。
15ページまで進みますけれども、御議論いただきたい事項ということであらかじめこちらに一案を記載しております。
1点目ですけれども、IOSCO最終報告書でも指摘があるように、現状、カーボン・クレジット取引は、仲介者を介した相対取引が多く、仲介者の担う役割は重要である。金融機関、証券会社、商社等様々な主体が仲介者として関与し始めています。こうした現状の取引実態において、カーボン・クレジット取引の円滑化・健全な発展を推進する観点から、どのような課題等が考えられるか。特に、投資家保護・顧客保護の観点からどのような点に留意すべきかとしております。
2点目です。クレジットの信用補完の観点から、クレジット創出前からプロジェクトに関与し、クレジット購入をあらかじめ約する手法やカーボン・クレジット保険、クレジット評価などの活用も見られつつあります。これらの取組について、カーボン・クレジット取引の円滑化・健全な発展を推進する観点から、どのような課題等が考えられるか。こちらも投資家保護・顧客保護の観点からどのような点に留意すべきかとしております。
16ページ以下は、参考資料として、IOSCO最終報告書におけるグッドプラクティスの記載を添付しております。
事務局からの御説明は以上となります。
【根本座長】
御説明ありがとうございました。コメントについては後ほどいただくことになっております。
次は、大和証券、三菱商事、東京海上日動火災保険におけるカーボン・クレジットに関する取組について、各社10分程度で御紹介をいただきたいと思います。それではまず、大和証券、外江様よりよろしくお願いいたします。
【外江様】
御紹介ありがとうございます。大和証券デリバティブ・トレーディング部の外江と申します。よろしくお願いします。
私ども、デリバティブ・トレーディング部ではありますが、より幅広に新たな商品の企画・開発・推進も行っておりまして、その中でカーボン・クレジットのトレーディングや関連する商品開発に取り組んでおりますので、その紹介をさせていただければと思います。
では、ページめくっていただいて1ページ目になります。弊社のカーボン・クレジットに関連する取組を国内外の市場動向とともに時系列で簡単に御説明させていただきます。カーボン・クレジットの取組を古く遡ると、2000年代、京都議定書時代からの取組になりまして、京都議定書時代にはカーボン・クレジットに連動する債券の開発や、カーボン・クレジットファンドへの出資等を行っておりました。一方で、その後数年間、リーマンショックや震災の影響もありまして、一定期間カーボン・クレジットの市場は低迷しておりましたが、2015年以降、世の中でカーボンニュートラルの機運が高まりまして、また、グローバルにはEUで排出権取引市場という巨大な市場も出来つつありましたので、弊社ではそれを受けて、排出権・クレジットのトレーディングに着目して取組を開始しました。2022年からは、御存じのとおり、国内でGXリーグ構想も立ち上がりまして、それに沿って弊社も国内でのカーボン・クレジット取引に注力しているという流れになります。
以上が弊社の取組の概要ではございますが、今回はカーボン・クレジットの取引と、それに関連する脱炭素への取組に少し幅を広げて、主に3点御紹介させていただきたいと思います。一つに、弊社と海外企業との協働、2つ目にカーボン・クレジットの関連商品の開発、3つ目にカーボン・クレジットのトレーディングと、その3点についてより具体的に御説明させていただきます。
次のページに移っていただきまして、まずは弊社グループと海外企業との協働です。主に欧州企業と資本業務提携を行っております。左側が、欧州にて再エネ分野に特化してファイナンシャルアドバイザリー事業を行っておりますグリーンジラフ(Green Giraffe)と呼ばれるオランダの企業と、2019年より提携しておりまして、弊社のM&A等のアドバイザリー機能を強化しております。
また、右側で、再エネを中心とした資産を投資対象として欧州の運用会社であるアキュラキャピタル(Aquila Capital)とこちらも2019年より提携しておりまして、欧州での排出権・クレジットや再エネ等の投資運用事業を協働で展開しております。これらが外部との協働になりますけれども、次ページ以降では弊社の取組について御説明させていただきます。
まずは、こちら3ページ目では、弊社のカーボン・クレジットに関連する金融商品の開発の取組について御紹介させていただきます。今年、世界初のクライメート・トランジション利付国債、いわゆるGX移行債が発行されました。これは今後10年間で20兆円規模の政府によるGX支援に充てられるもので、弊社はその発行プログラムの中で、GX移行のフレームワークの素案作成等のアドバイザーを担っておりました。
そういった脱炭素に関連する金融商品の開発の取組は、先ほど御説明させていただいたとおり、京都議定書時代にも遡りまして、当時は、右下の図ですけれども、債券の利金がクレジットの価格に連動する債券、CO2Lボンドと呼んでおりましたが、その開発を行っておりました。その仕組みの中では、債券の利金部分を原資としてクレジットを購入し、市場でそのクレジットを売却する。それによってクレジット価格に連動したキャッシュフローをつくり出すという仕組みを設けておりました。弊社ではこういった商品開発を継続しておりまして、近年ではほかにも、脱炭素事業に投資する投資信託等の商品開発等に取り組んでおります。
次のページに移っていただいて、排出権のトレーディングについて、ここから御説明させていただきます。現在のように国内でカーボン・クレジット取引市場が開設されるまでは、弊社では世界最大の市場である欧州の排出権取引に取り組んでおりました。欧州の排出権取引市場を簡単に御説明させていただくと、一つに、市場に流動性があり、タイムリーに市況環境とか需給を反映した価格が形成されるということがあります。
具体的に申し上げますと、右上、図2、こちらは欧州排出権の価格推移ですが、例えば2021年のウクライナ情勢懸念があった際には、天然ガスの供給不安から化石燃料の需要が増加するだろうと。そうすると、CO2の排出が増加するということで、排出権価格が当初大幅に上昇しました。一方で、ウクライナ情勢懸念がさらに深刻化して経済活動が停滞する、経済活動の停滞による温暖化ガスの排出量が減少すると予測され、それによって排出権価格が下落するといった値動きをしております。それ以外にも冬季における寒波の到来や、再エネの供給、そういった環境変化を受けて価格が変動しております。
次に、金融機関の携わりという点で、左下、図3ですけれども、欧州排出権市場では先物、オプション、現物と様々取引がありますが、青色の先物取引が市場の大半を占めます。図4は、先物取引の参加者別に排出権を、買いのポジションにあるか、売りのポジションにあるかを示しております。排出権の実需の事業者、赤色の部分ですが、将来の価格ヘッジのために排出権の先物を買います。ただ、買い一方では取引が成立しないので、そのヘッジニーズに応える形で金融機関は緑の売りポジションを組んでいるという形になっています。右の図5を見ても、取引参加者別に取引量が出ておりまして、青色の金融機関の取引量が多くありまして、やはり欧州排出権市場においては金融機関が介在して取引成立に貢献しているということが分かるかと思います。
とはいっても、金融機関は取引を成立させるために参加者のリスクをただ一手に引き受けているわけではございませんでして、前ページの商品開発のところにも関連しますが、一般的に自社で全てのリスクを抱えるわけではなく、それを様々な取引手法でのヘッジや、金融商品の開発を通じてより幅広くリスク分散させております。
では、次のページを御覧ください。最後に、国内のカーボン・クレジット市場に関連する取組の御紹介です。2022年に弊社はGXリーグ構想に賛同しまして、同年9月からはJ-クレジットの取引所開設に向けての取引実証に参加しておりました。また、GXリーグの各種ワーキングにも参加しております。
2023年には市場が開設されまして、そこから国内の証券会社としては唯一、マーケットメーカーとして市場での価格提示に取り組んでまいりました。その結果が評価され、本年にはグッドマーケットメイカー賞に選定いただいております。また、5月からは再度、マーケットメーカーとして同市場に参画しております。
我々の目的としましては、将来的には、国内カーボン・クレジット市場も、先ほど御説明した欧州のような流動性取引量のある市場に発展し、そこでのトレーディングや商品開発を目指しているというビジネス的な側面もございますが、こういった取組によってクレジットの価値が明確化されることで、排出量削減のインセンティブが生み出され、社会全体で効率的な排出削減が進むという意義がありますので、今後も同取組を継続していきたいと考えております。
私からは以上です。ありがとうございました。
【根本座長】
外江様、ありがとうございました。それでは続きまして、三菱商事、小山様、お願いいたします。
【小山メンバー】
ありがとうございます。三菱商事の小山と申します。よろしくお願いいたします。弊社も先ほどの大和証券さんと同じく、京都議定書の際から排出権、カーボン・クレジットの取引を行っておりまして、取扱いのラインナップとしては、植林とか自然由来のものとか技術ベースのものとか様々なものを扱わせていただくとともに、ビジネスのスキームとしては、投資でしたり、トレーディングという形でいろいろとカーボン・クレジット事業に携わらせていただいております。
その中で本日は、弊社が欧州の世界最大のカーボン・クレジット会社であるサウスポール(South Pole)という会社でやっているNextGen CDR Facilityという取組について御紹介させていただければと思います。こちら、対象となるのが炭素除去技術というところで、技術由来のCDRの取組でございまして、そちらの新しい技術をカーボン・クレジットというスキームを使って広げていくといった取組になっております。
最初の数ページで外部環境についてちょっとお話しさせていただければと思います。まず、こちら、2050年ネットゼロを達成していくに当たって、必ず残余排出は残るというふうに言われておりまして、IPCCでも一定の残余排出を炭素除去していく必要があると。まず、自然由来、植林等でオフセットしていく必要があると思うんですけれども、土地にも制約がありますので、自然由来、植林だけではオフセットし切れない部分というところを、ダイレクトエアキャプチャーとか技術的に炭素除去する手法によって除去していく必要があるというふうに言われております。
次のページをお願いします。技術由来の炭素除去と言われる分野にもいろいろと種類がございます。下のボックスの中にあるんですけれども、ダイレクトエアキャプチャーとか、バイオ炭といったようなものがあります。一番上が植林、自然由来のものになっておりまして、右側を見ていただければ分かると思うんですけれども、やはりコストが技術由来のものにつきましては自然由来に比べて一桁高い。一方でCO2を除去した後の固定期間という観点では、技術由来のほうが長くなるというような特徴があるというふうに理解しております。
次のページをお願いします。そんな中、冒頭のスライドのとおり、2030年に各社削減目標を設定されていらっしゃる企業様が多いと思いますので、2030年に、排出を削減し切れなかった部分というところに対する炭素除去の需要が高まってくるというふうに言われております。一方で、足元、市場価格が高くてなかなか買手も見つからないという状況下、なかなかプロジェクトが立ち上がっていない状況でございまして、プロジェクトの立ち上げには数年かかるという観点から、今、足元からプロジェクト開発が進んでいないといった結果が2030年、大幅な供給不足、需要過多になるのではないかというふうな予測が、BCGさんの予測でも出ているというスライドになります。
次のページをお願いします。これが起こっている原因として、鶏と卵のジレンマがあるのかなと思っております。足元、価格が高い炭素除去技術というものに対して、需要家さんは、先ほどの冒頭のスライドのとおり、将来的にはこれは絶対必要だよねというのは分かっていらっしゃると思うんですが、やはりまだ価格が高いというところで、将来、価格が安くなったら購入を検討しようかと思っていらっしゃるんじゃないのかなと思います。
一方で供給サイド、技術を開発、プロジェクトを開発している供給者からすると、ある程度技術のマチュリティーは高まっていますので、プロジェクトが立ち上げられる状況にはあるんですが、やはり買手がいないとなかなかプロジェクトを立ち上げられない。やはりプロジェクトを立ち上げられないと、大量生産によるコストメリットとか効率化も行えませんので、コストが下がらない。その結果、供給が立ち上がらないので、コストも下がらず、将来、2030年目標に対して需要が生まれてきた際にもまだコストが高いままですので、供給が追いつかないという事態になってしまうんじゃないのかなという課題感を抱えております。
次のページをお願いいたします。そんな中、先ほど申し上げた課題自体は、炭素除去技術に限らず、ありとあらゆる技術に当てはまる課題だと思いますし、いわゆる死の谷と言われるものだと思うんですけれども、そこに対しては、まずは政府主導によるカーボンインセンティブとか財務的な支援というところでそれを乗り越えていく必要があるのかなというふうに思っております。過去にも、再エネにFITといった支援が入って、需要が生まれ、それに伴って供給が大量に流入して、コスト削減が起こったという実態があると思いますので、そういった需要喚起によるコスト削減ということを行っていく必要があると思います。
ただ、今、各社、ネットゼロに向けていろいろな脱炭素をしていかないといけないという中で、政府にも財源に限りがあるという中で、下側にありますけれども、民間主導によるカーボンインセンティブというところで、海外を見渡しますと、マイクロソフトさん等のIT企業さんを中心に、将来必要と言われる技術由来のカーボン・クレジットを足元、100ドルとか時には数千ドルをお支払いして技術を支えていこうと、将来のために買い支えていこうというような取組が行われております。こういった政府並びに民間によるカーボンインセンティブが連携しながら新しい市場をつくっていく必要があるのではないかと考えております。
次のページが弊社の取組でありますけれども、先ほど冒頭申し上げましたNextGen CDR Facilityというファシリティーを世界最大のカーボン・クレジット会社のサウスポールという会社と2022年に立ち上げておりまして、まさにこちらは先ほどのスライドの民間企業さんのインセンティブをアグリゲートする形でプロジェクトにインセンティブを与えていくというようなプロジェクトになっています。
左側にバイヤーとありますけれども、新しく生まれた技術のカーボン・クレジットを100ドル、200ドルで購入することで、技術を買い支えていこうというバイヤーさんを集めまして、彼らから一定の購入コミットメントをいただくことで、そちらをNextGenというファシリティーでアグリゲートいたしまして、右側のプロジェクトに対して、立ち上げ前に、将来のカーボン・クレジット、そのプロジェクトから生まれるカーボン・クレジットを一定の価格で買い支えますというコミットメントをNextGen CDR Facilityがプロジェクトに対して行うことで、プロジェクトの経済性を高め、プロジェクトの立ち上げを支援していくといった取組を行っております。
次のページをお願いいたします。2022年からスタートしておりまして、左側にBCGさん、Swiss Reさん、日本から商船三井さん、UBSさん、LGTさんという企業様がバイヤーとして、このNextGen CDR Facilityの狙い・ビジョンに賛同いただいて御参画いただいております。
この5社からいただいた調達コミットメントをNextGen CDR Facilityでアグリゲートいたしまして、バイヤーさんの代わりに様々なプロジェクトのデューデリジェンスを行いまして、現時点で右側の5つのプロジェクトに対して、長期で一定の価格でクレジットを購入することで一定の売上げを担保するといった取組をさせていただいております。今、累計で約20万トンぐらいの長期オフテイクを右側のプロジェクトにさせていただいて、この新しい技術のプロジェクトの立ち上げに貢献しているという状況でございます。京都議定書の際にもこういったカーボンファンドと言われるような取組があったかと思うんですけれども、それを参考にさせていただきながら、こういった新しい市場を立ち上げるべく弊社のほうで取り組んでいるという事例の御紹介でございました。ありがとうございました。
【根本座長】
どうも御説明ありがとうございました。それでは続きまして、東京海上日動火災保険、川崎様、お願いいたします。
【川崎様】
ありがとうございます。東京海上日動の川崎と申します。本日は貴重な機会をいただきまして、ありがとうございます。弊社のカーボン・クレジット関連の取組の御紹介をさせていただきます。
私、商品開発部門におりまして、火災・新種業務部というところで商品開発をやっております。会社全体では全社横断のGXタスクフォースを立ち上げておりまして、サステナビリティ室やグリーントランスフォーメーション室等といった組織もありますけれども、本日は主に保険商品に関連しました取組を御紹介させていただければと考えております。
次のページをお願いいたします。弊社グループ全体のサステナビリティ経営のお話を御紹介させていただきます。弊社は、スライド真ん中のスパイラル部になりますが、保険本業を通じ社会課題の解決に貢献しながら、弊社自身も成長し、事業課題と社会課題解決を循環させ事業に取り組んでいきたいということを掲げております。この中でも特に取り組むべき重点施策というところを事前に洗い出しておりまして、この中、地球温暖化、気候変動対策の推進というところでも大きい役割を占めていきたいと考えております。これを通じサステナブル社会の実現ができればというところを取り組んでおりまして、この一環として、カーボン・クレジットにつきましても、先進的に開発に取り組み関連商品を投じていきたいということで開発を行わせていただいています。
次のページをお願いいたします。先ほどの気候変動対策の推進という中で具体的にどういった分野で弊社グループとして今、国内向けに取り組んでいますかというところの御紹介でございます。主に左側、保険商品の提供と、右側、ソリューションを通じたお客様への価値提供、この2点に力を入れて取り組ませていただいております。この中で、エンゲージメント起点の価値提供というところで記載させていただいておりますけれども、お客様とエンゲージメント、大企業の皆様を中心に対話を繰り返させていただいておりまして、延べ200社以上のお客様との対話をしながら、課題解決に向けて弊社としてどういった手段が提供できるかというようなお話をさせていただいたり、どういったソリューションが求められていくかというようなところをヒアリングしながら、保険商品の補償の提供やソリューションの開発、もしくは我々自身でのカーボン・クレジットの創出であったり、自然の豊かさを守る取組、こういったところを取り組んできております。
次のページをお願いします。そのような中で、本日はカーボン・クレジットにまつわる保険商品ということで御紹介をさせていただきます。こちらは7月にニュースリリースをしておりまして、カーボン・クレジットにまつわるリスクを補償する保険商品という枠組みの中で、まず、カーボン・クレジットのレピュテーションリスクに注目いたしまして、企業の皆様がカーボン・クレジットを購入されてオフセットをされる際にグリーンウォッシング批判にさらされてしまった場合、企業価値毀損をできるだけ小さくするということに対応費用等を使われると想定しています。この費用を補償する保険商品を7月にリリースをさせていただいております。
第1回の検討会の中でも、取組の御紹介をされた皆様とか、あとはその中の議論で、カーボン・クレジットの質をどう担保していくか、モニタリングをしながら質の高いクレジットをできるだけ流通させていきたいとか、もしくは購入に当たって質の低いクレジットをつかんでしまい、その後批判にさらされてしまったらどうしようというような議論もございました。弊社でも、多くの企業様とカーボン・クレジットにつきどういったリスクをお感じですかという対話を進めていく中で、まず挙がってきたニーズといたしまして、グリーンウォッシング批判に遭った際の対策というお話をいただきましたので、こちらの商品を開発させていただいております。
こちらは、既存のレピュテーション費用保険をカーボン・クレジット購入企業様向けにアレンジしたものでございますが、一定のトリガー要件、複数のマスコミ報道があった場合に、対策を講じなければならないとお決めになられた企業様に対して、社外のお力も借りながらコンサルティングサービスを提供していくといったような商品になっております。今後についても記載させていただておりますけれども、レピュテーション費用保険の提供だけではなく、新たな補償も今後引き続き考えていきます。
次のページをお願いします。こちらは先ほどのレピュテーション費用保険がどういった費用を対象としてお客様をお守りするかというところで、もちろん個別のアレンジも可能ですけれども、主に危機管理コンサルティング費用というところで、コンサルティング会社の皆様にグリーンウォッシング批判を浴びていらっしゃる企業様が対策を依頼する費用であったりとか、ウェブサイトの投稿、炎上してしまうとデマも多く出てきますので、こちらを精査しながら削除の依頼をしていく費用とか、こういったものを中心に補償を提供するという商品になっております。
次のページをお願いいたします。カーボン・クレジットの購入もしくは購入を考えていらっしゃる企業様と対話を繰り返していく中で、レピュテーションリスク以外にも、購入後の価値毀損リスクであったり、第1回の検討会でもありましたけれども、政治とか規制変更のリスク、こういったポリティカルリスクを感じていらっしゃるお客様が多いということで、弊社でもいろいろなリスクに対して保険開発やソリューション開発を取り組んでいきたいと考えているところでございます。
次のページをお願いいたします。今までの御紹介は弊社がカーボン・クレジットの購入企業様をお守りするという観点での紹介だったんですけれども、保険商品を通じたカーボン・クレジットの社会浸透・促進という観点で、もう一つ御紹介をさせていただければと思います。
こちらは先月にニュースリリースをしておるんですけれども、弊社で販売しております自動車保険の中で、ドライブレコーダー一体型の補償に加入していただいている皆様向けのプログラムでございます。ドライブレコーダーをつけて運転されているお客様は、危険運転、急発進とか急停止があるとアラートが鳴るという機能もあるの、こちらのアラートも利用していただき安全運転により取り組んでいただくと。
結果として、安全な運転をしていただくことで燃費、エコドライブが進みます。どの程度のエコドライブが進んだかを機器を通じてデータ取得し、このCO2削減量を算定しクレジット化、弊社でクレジット申請をしまして、クレジットとして取得。これを市場で売却させていただきながら、お客様にクーポンで還元するというスキームを先月リリースさせていただいております。保険商品、特に自動車保険という媒体を通じますとかなりのお客様にリーチできるというところもございますので、こういったスキームをリリースさせていただいているという御紹介でございます。
弊社の取組紹介は以上になります。ありがとうございました。
【根本座長】
どうも御説明ありがとうございました。それでは、皆様の説明が終わりましたので、議論に移りたいと思います。
本日欠席の髙梨メンバーから事前にコメントを預かっておりますので、事務局にて代読をお願いいたします。
【森サステナブルファイナンス推進室課長補佐】
事務局でございます。全銀協、髙梨メンバーから事前に預かっているコメントを代読させていただきます。こちらの御議論いただきたい事項、事務局資料15ページのそれぞれについてコメントをいただいています。
まず、1点目についてのコメントを以下、読み上げます。J-クレジットや海外のボランタリー・クレジット、そして今後は、排出量取引制度の段階的な導入が議論されており、カーボン・クレジットの取引が拡大する一方、カーボン・クレジットの法的な位置づけの整理がまだされていないという理解。排出量取引制度については、「GX実現に向けた排出量取引制度の検討に資する法的課題研究会」にて議論はされているという理解だが、カーボン・クレジットの取引を行うにあたって、投資家保護・顧客保護の観点からは、法的な整理がより一層進むことが期待される。
また、カーボン・クレジット市場は黎明期であり、様々な種類のカーボン・クレジットが乱立している状態と言え、今後、取引形態も複雑化していくことが想定される。現時点では理解、リテラシー、さらに、立ち位置は各主体(政府、企業、個人など)によって様々と感じている。例えば、投資等を通じて、特定のカーボン・クレジットに関与している主体によるポジショントークを生みやすい状況にあるといった懸念もある。したがって、今後、カーボン・クレジットの取引が拡大することを見据えて、利用者・仲介者・販売者の知識レベルの向上努力が欠かせない、かつ、投資家・顧客保護の観点からは、グッドプラクティスの積極的な提供、また、政府が検討している排出量取引制度以外の取引についても一定程度のモニタリングも必要ではないか。また、カーボン・クレジットの売買や使用に対するガイドラインやルールの検討も必要と考える。1点目についていただいたコメントは以上となります。
2点目についてのコメントをまた今から読み上げさせていただきます。カーボン・クレジット保険、クレジット評価に関してコメントする。カーボン・クレジット、特にボランタリー・カーボン・クレジットに関しては、種類が様々あること、グリーンウォッシュなどで批判を受けたことがあるため、カーボン・クレジット保険や評価会社によるクレジット評価等が商品・サービスの需要が伸びているという理解。一方、本マーケットはまだ黎明期ということもあるので、利用するに当たっても、保険会社の評価、評価会社の評価に100%依拠するということも難しく、最終的には利用者が購入するクレジットの内容をよく理解しておく必要があると考えている。そのため、商品・サービス提供者は、利用者が理解・納得できるような説明をしていく必要がある。
以上になります。
【根本座長】
どうもありがとうございました。では、これまでの事務局の説明、また、プレゼンターの皆様のプレゼンテーションも踏まえて、御意見をいただければ幸いです。御意見をいただく場合に、プレゼンターの方に御質問がある場合は、どなたへの御質問なのか、また、質問ではなく、特に回答が不要なコメントである場合はその旨を併せてお話しいただけますと幸いです。御発言を希望される方はWebexの挙手機能でお知らせいただければと思います。では、よろしくお願いいたします。
それでは、小山メンバー、それから、長島メンバーの順番で、まずお二人から伺って、それから御回答いただくということでお願いいたします。
【小山メンバー】
ありがとうございます。私のほうから質問というよりはコメントを3点、1つ目と2つ目の議題についてコメントさせていただければと思います。弊社はいろいろとクレジットの売買もさせていただいておりますので、主にお客様とのやり取りの中から出てきた声という中で3点コメントさせていただければと思います。
まず1点目が、髙梨さんからお話もありましたけれども、クレジットの利用についての位置づけ、法的根拠を含めて位置づけというところがやっぱりまだ不明瞭であると。特にボランタリー・クレジットについては、日本のほうでは不明瞭な点が多いのかなと思っております。どういったときにそもそも利用していいのかとか、利用した結果どういうふうに使用できるのかみたいなところの位置づけがしっかりしてくると、使いやすい市場、商品になっていくんじゃないのかなというふうに思います。
2点目が品質というところで、IOSCOの報告書にもありますとおり、やはり標準化していくことがコモディティーとして市場が拡大していく重要なファクターだと思いますし、グリーンウォッシュに批判というところに対してお客様の不安感がある中で、どういったものが大丈夫なのかという最低ラインの設定は必要なのかなと。一方で、かなりいろいろな手法がございますので、それぞれの手法ごとの特徴というところと最低限の品質担保という観点のバランスをうまく取りながら、標準化していく必要があるんじゃないのかなと思います。世界的にもICVCMという団体でしたり、いろいろなところがそういった標準化とか規格化を行っていますので、あんまり独自でつくり過ぎず、グローバルなベストプラクティスをしっかり利用していくということが重要なのかなと思っております。
最後に、3点目が保険というところで、先ほど東京海上さんからのプレゼンテーションにありましたとおり、グリーンウォッシュ批判とか、あと、購入した後に、実はこのクレジットが本当は削減していなかったんじゃないかとか、あとは、植林のクレジットを買ったんだけれども、それが燃えてしまってまたCO2が大気中に戻ってしまったとか、いろいろなリスクが購入時にはあるのかなと。やはりお客さんは購入時には可能な限りそういったものはヘッジしたいという思いはあられるかと思います。今後市場が拡大していくに当たっていろいろなリスクもアイデンティファイされてくると思いますので、それに伴って保険商品というところがより多様なリスクを吸収いただけるように設計いただけると、市場の安定性につながっていくんじゃないのかなというふうに感じております。
私からは以上3点コメントでした。ありがとうございました。
【根本座長】
どうもありがとうございました。では、長島メンバー、江夏メンバー、お願いいたします。長島さん、先にどうぞお願いします。
【長島メンバー】
ありがとうございます。ENEOSの長島でございます。私からは、大和証券さんの外江様に御質問というか、ちょっと教えていただきたいんですけれども、当社のように年間3,000万トンぐらい出している排出事業者の立場なんですが、今まさに2026年からフェーズ2が始まるGX-ETS、それの制度設計ということで、経産省のCP専門ワーキングのほうでまさに議論が同時並行でなされている中、やはりGX-ETSは先行しているEU-ETSを参照していることはもう明確であって、我々排出事業者も今一生懸命EU-ETSのお勉強をしているところでございます。
先ほど外江様から、EU-ETSのどちらかというとカーボンというか排出枠のプライシングの傾向というのを御紹介いただきましたけれども、私の理解は、EU-ETSも多分GX-ETSもそうなると思うんですけれども、まず、欧州委員会が有償枠というオークションでプライマリーマーケットのほうである程度価格メーキングをして、その後、結果的に無償枠も含めて過不足分をセカンダリーマーケットで決めていく。ただ、結果的に、一物二価はまずいので、プライマリーもセカンダリーマーケットも基本的には同じプライスになるから、先ほど御紹介いただいたようなマーケットプライスになっているというふうに私は理解しています。
そうなると、実際、排出権の取引のカーボンプライシングというのは、元をたどれば、欧州委員会がある程度コントロールできる仕組みになっていて、まさに日本国内もGX-ETSも同じような制度になるのであれば、日本政府がある程度コントロールできるところがあるんじゃないかなというふうに想像しています。そういった中で、金融機関さんが排出枠の取引を実際EUではやられているんですけれども、ある程度欧州委員会とかの動きだったり発言だったり、そういったものを見ながら、いろいろ取引をされているのかどうかという、まずEU側での実態のお話をもし感度があれば教えていただきたいというのがまず1点目になります。
関連して、2点目なんですけれども、同じような制度をGX-ETS、日本国内で導入をしようとしているんですが、唯一EU-ETSと違うのが、GX-ETSでは、適格カーボン・クレジットを一部オフセットに使えるという議論が今なされております。そうなりますと、日本国内の場合は、例えば東証で今、昨年末から取引が始まっているJ-クレジットを含めた適格カーボン・クレジットのプライシングというのが、もう一つ別のマーケットが出てくると思うんですね。そうなったときに、先ほど申し上げたような、例えば日本政府がリードする有償枠ベースのプライマリーマーケット、あとは、金融機関を含めたセカンダリーマーケット、さらに日本国内の場合は、例えば東証さんで取引される適格カーボン・クレジットのプライス、この3つがどのような関係性で取引されるのかというのが正直我々排出事業者の立場でよく分からない部分があって、もし御示唆があれば、これは正直、まだ制度設計も議論中ですので、もしあればということで御指南いただければと思います。
以上2点でございます。
【根本座長】
ありがとうございました。2点とも大和証券さんへの御質問ということでよろしいですね。
【長島メンバー】
はい。
【根本座長】
江夏様、それでは、お願いいたします。
【江夏メンバー】
ありがとうございます。野村資本市場研究所の江夏でございます。私のほうからは、こちら、今、表示されております15ページ目に対する意見と、それから、東京海上日動火災保険様への御質問をさせていただければと思います。
まず、15ページ目のところで、1点目の論点につきまして、サステナブルファイナンスでは信頼性や透明性が市場の健全な発展の一助になっており、IOSCOの報告書でも共通の問題意識が見いだせるとともに、投資家・顧客保護にも資すると考えられます。IOSCOが6ページ目のところで21個の論点を挙げていますが、個人的に課題と考えているのは、4点です。
1つ目は、4番に関連するリテラシーの向上で、IOSCOの報告書で取り上げられていたエジプトの取り組みも参考に、当局、業界団体等が参加者のリテラシー向上を支援することが大切だと思っています。
2点目は、5番に関係する標準化です。ボランタリー・カーボン・クレジットでは多様なスキームが想定されますが、投資家や顧客の理解可能性や利便性も踏まえると、ある程度の標準化が必要ではないかと考えられます。加えて、標準化は、マーケット全体のデータ蓄積にも資すると思われます。
3つ目は開示です。企業、仲介者などによる情報開示、それを俯瞰するようなデータは、市場の信頼性や透明性を確保する上でとても大切ではないかと思っております。
4つ目は、3番に関連する国際的な連携です。カーボン・クレジットはボーダーレスな面があるので、日本のカーボン・クレジット、ひいては脱炭素化の取組の競争力を上げていく上でも不可欠ではないかと思っています。
IOSCOの21の論点以外の点で2つ、気になることがございます。1つ目に関して、金融商品とは言い切れないクレジットについて、現状、参加者が様々存在しています。金融機関については、そのほかの金融商品とかで口座開設とか顧客管理を自然に行う流れになるケースが多いと考えられますが、金融機関以外の業者の場合、本人確認(Know Your Customer、KYC)のレベルや取引の契約書についても金融機関の水準とは厳しさが異なるのではないかと推察され、このような点は少し検討に値するのではないかと思っています。
2つ目は、カーボン・クレジットの方法論は、例えば同じ森林由来であったとしても複数あって、今後も新たな手法が開発されると想定されます。それぞれの手法によって、また、開発の地域とかエリアの広さによっていろいろな要因で開発コストが変わってきて、それが取引価格に反映されると考えられます。さらに、新たなものについては、精度の向上や方法論の更新を通じても価格が変わるとみられ、一物多価になると何をもって価格の透明性を示せるかが難しいと言えます。このような点も考え方を整理する必要があると考えております。
2つ目の論点について、カーボン・クレジット保険など、新たな商品・サービスの出現や、需要が伸びている点で、まずは、日本のカーボン・クレジットを取り巻く商品・サービスなどの全貌を定量的・定性的に把握する必要があると考えています。その上で、これらの商品などが信頼性を確保するために、政府・業界としてどのような対応をするべきなのか。例えば、規制、ガイドライン、啓蒙活動、情報提供など、様々なアプローチがあると思いますが、連携をしながら模索する必要があると思っています。ただ、このようなアプローチは時間を要すると考えられるので、少なくとも通常の金融商品で求められるように、商品・サービス提供者に、投資家・顧客保護に資する観点から説明責任を求めることは、重要かつ迅速に対応する必要があると考えています。
一方で日本だけ厳しいルールを課すことにより、クレジットの活用がしにくくなるというのは本末転倒と考えられます。そもそも日本がやや遅れをとっているということは否めない現状を踏まえますと、世界的な取引慣行も視野に入れながら基準を統一していく動きが必要と思われます。ここまでが15ページ目に対する意見です。
もう一つ、東京海上日動火災保険様に御質問させていただければと思います。保険の原則として、例えば既に普及がかなり進んでいる自動車保険などでは、大数の法則が働いていると解釈されますが、カーボン・クレジット保険というのは比較的新たな金融商品なので、そのような原則が働きづらいのではないかと想定され、ビジネスの観点からどのように理解すればよいのか、外部から見ると気になるところです。
それから、再保険がカーボン・クレジット保険に存在するのかも気になります。
さらに、ロイズ保険組合がカーボン・クレジット保険に対して何か見解を出しているのかということをもし御存じであれば御教示をいただきたいと思います。
以上でございます。
【根本座長】
ありがとうございます。では、一旦ここで切りまして、お答えのほうを、では、大和証券の外江様、お願いいたします。
【外江様】
長島様、御質問ありがとうございました。1点目、欧州ETSの市場において欧州委員会である程度価格のコントロールができるのではないかと。その場合に我々参加している金融機関は、そこの動き等をウオッチしているのかといった御質問をいただいたという認識です。
私も同じような認識を持っておりまして、欧州委員会は今、EU-ETSに関してはある程度長期的には価格のコントロールができる余地もあるのかと考えております。一方で短期的には、先ほど御説明させていただいたとおり、もろもろの要因で価格は大きく変動するかと思います。その中で、ただ、日々の短期的な動きも長期的な動きも、数ある排出権価格の変動要因の中で、制度側の動きというのは非常にインパクトがありまして、少なくとも委員会の主要な会合、そこでの発言、進捗を受けての取引、価格変動があります。ですので、制度側の動き、委員会の動きというのは日々確認、チェックされるものであります。
2点目に移りまして、いただいた御質問としては、日本では、今後導入されるGX-ETSがある中で、J-クレジット等適格カーボン・クレジットも認められると、その中でどのように価格が形成されるかという御質問かと思います。
そこはなかなかこれといった答えはないのですけれども、ある程度、どの枠組みルールの中で使用できるクレジット・排出権であるかというのを整理するというのが一つ手法かと思っています。枠組み、ルールと申し上げましたのは、日本では特にGXリーグがございますし、例えば航空機業界でありますとCORSIA、また、RE100など、それぞれのルールの中でそれぞれ使用可能なクレジットがあります。
例えばあるクレジットAとBがあって、どちらも全く同じ枠組みに入るのであれば、経済合理的に考えますと、市場参加者はより安いほうを購入するのかなと考えられます。そうすると、長期的にはある程度排出権・クレジットのAとBというのは価格が収れんするだろうなと。
一方で枠組みが異なると、そのような価格収れんというのはなかなか見られづらいと思われます。例えば今あるJ-クレジットは、再エネ電力が一番取引量が多いものになりますけれども、J-クレジット再エネ電力はGXリーグの適格クレジットとして入ると思われますが、一方で購入主体としてはRE100に属される企業様からの需要も見込まれますので、それが同じ価格に収れんしていくかというと、そこはそれぞれの需要にもよりますけれども、一概にそうとは言えないのかなというふうに考えています。
【長島メンバー】
外江様、ありがとうございます。特に1点目はやっぱりそうなんだなということを学びましたし、2点目については、まさにおっしゃるとおり、適格クレジット、J-クレジットも今、種類によって値段も違いますし、そこの部分は、我々排出事業者がオフセットでいざ使うとなったときに、おっしゃるとおり基本的には値段が安いほうなんですね。ただ、実際、その価値以上に脱炭素の価値を求めているお客様がいるという中で、この適格クレジットのマーケット、カーボン・クレジットのマーケットがどういうふうに形成されるのかなというのは非常に重要かなというふうに改めて思いました。ありがとうございます。
【外江様】
ありがとうございました。
【根本座長】
それでは、よろしいですか、東京海上日動火災の川崎様、お願いいたします。
【川崎様】
ありがとうございます。御質問ありがとうございます。いただいた質問としましては、カーボン・クレジット全般の保険引受け、保険組成をするとしたら、大数の法則というのはどうですかというところが1点と、あと、再保険マーケットの存在、それとあと、こういったリスクに一番早く恐らく手を出すであろうロイズ保険組合のプレーヤーの方々の見解とか動きという3点だと理解しております。
まず1点目、大数の法則につきましては、先ほどレピュテーションリスクを補償するという商品の御紹介をさせていただきました。その他に、企業の皆様からのニーズとして、クレジット自体の価値が毀損したりとか、その他のリスクについても保険ニーズがありますという紹介をしました。三菱商事様からも今後の保険設計について御期待のコメントもいただきましたので、レピュテーションリスクに限らず、一般的な保険としてお話をさせていただきます。
おっしゃるとおり、大数の法則は、同質のリスクをたくさん集めてくると、事故の発生頻度、あとはダメージャビリティー、損害額、この頻度と損害の大きさがそれぞれ一定の確率分布に乗ってくるということが大数の法則の前提だと考えております。こちら、たくさんの種類のカーボン・クレジットのうち、どのカーボン・クレジットが、例えば価値毀損してしまうとか、詐欺に遭うとか、カーボン・クレジット特有でいきますと、追加性が怪しいというレピュテーションを浴びるとか、こういったものが確率として成り立っていくと考えておりますが、そのためには、カーボン・クレジットが流通量が増えて、あと、購入されるお客様も増えて、保険を掛けたいというお客さんも増えてということで、カーボン・クレジット自体をたくさん引き受ける中で確率を把握していくというところがもちろん理想でございますので、こういった検討会を通じながら、また我々もこういった検討会に限らず社会啓蒙活動みたいなものにもどんどん参加させていただいていっております。
ことカーボン・クレジットの数に注目をすると今のようなお話になるんですけれども、カーボン・クレジットの価値が毀損してしまうリスク、にペリル、事象、価値毀損がどういうケースで発生するんですかという事象自体に着目していきますと、弊社の長い引受経験の中で、大数の法則がある程度成り立っているようなペリル、事象に分解をしていきながら引受判断をしていくことで、大数の法則に則ったお引受けも実現すると考えております。
もちろん様々なリスクがございますので、引受できるものできないものが出てくるとは考えております。けれども、例えば一番分かりやすい自然系でいきますと、山火事に遭ってしまって森自体がなくなってしまうとか。技術系でいきましても、例えばCCSとかそういったものを源泉とし創出されたクレジットの引受けをすると、機器故障のリスクというところに分解すると、いろいろな機器の引受けをしておりますので、こういったプラントは大体これぐらいの確率で一定の事故が起こってしまうだろうというようなことで、ペリルごとに分けることで大数の法則を実現する、実現しながら引受けを考えていくということ自体はできると考えております。
2点目、再保険マーケットの現状です。こちらは、特に欧州のほうでクレジット自体の取組は先行しています。一般的になりつつありますので、特に欧州の再保険者の間では注目度合いも高まっております。既に大手の再保険会社様は、我々も対話もさせていただいていますけれども、引受けを検討しているとか、体制を考えているとか、こういったお話も実際にございますし、ニュースリリースを既にされている再保険会社さんもいらっしゃいます。
弊社も、欧州のほうで少し大きいグループ会社、東京海上グループ全体でのグループ会社ですけれども、弊社の兄弟会社、TMHCCとかTokyo Marine Kilnとか、こういった子会社と我々も対話しながらやっているというところです。結論としましては、再保険市場は既に出来つつあるというところで、引受実績もヨーロッパのほうで出ているというところの話を伺っております。
近いところでもありますけれども、ロイズのプレーヤーが今どうなっているかというところですと、数が多いとは伺ってはいませんが、先進的な保険商品の組成に積極的なプレーヤー、カバーホルダーの方々が何社か、ブローカーさんと一緒に商品を組成してニュースリリースしたりとか、そういった事例は既に出てきておりますし、新しくロイズの中で商品認可を取っていってだとかいう動きも少しずつ増えてきているというようなところも伺っております。
以上になります。
【江夏メンバー】
ありがとうございました。最新の情報も含めて大変勉強になりました。ありがとうございます。
【根本座長】
ありがとうございました。それでは、次の質問に移りたいのですが、松尾様、それから、鶴野様、その順番でお願いいたします。
【松尾メンバー】
IOSCOのファイナルレポートをちゃんと読めばいいのかもしれませんが、ボランタリー・クレジットを規制対象にする場合に、どのように規制の範囲に取り込むのかがなかなか難しいのかなという気もしております。つまり、ボランタリーのクレジットを企画する人は数多くあり、さらにプロジェクトは無数にあるので、それをどのような形で網をかけていくのか。当局が、企画をしているVCSとかゴールドスタンダードを都度都度指定していくのか、または企画の主体ではなく、発行者とかプロジェクトの創出をしている人に網をかけるのかとか、アローワンスにはない点として、ボランタリー・クレジットの場合は規制の流通段階とか規制の必要性は認めつつ、どういうふうに規制をボランタリー・クレジットに対してかけて規制に取り込んでいくのかというものについて、もし金融庁様のほうから何かコメントがあればお願いできればということです。
【根本座長】
ありがとうございます。鶴野様、お願いいたします。
【鶴野メンバー】
ありがとうございます。CSRデザインの鶴野智子です。発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。私は御議論いただきたい事項2点それぞれについてコメントさせていただきたいのですけれども、1点目については、三菱商事の小山様にも御質問させていただきたいと思います。
まず1点目の、相対取引に関する投資家保護・顧客保護の観点からの留意事項についてです。資料の3ページ目に前回の地銀に関する議論のところに「分かりやすい説明・啓発」とありますが、今回の相対取引についてもこれが一つのポイントと思っております。3ページ目ではクレジットの多様な取引についての説明といった書きぶりだったかと思いますが、各企業の脱炭素の取組の全体像の中でカーボン・クレジットがどのような位置づけにあるかという点も併せて示すことが必要かと思っております。
実際に企業の皆様がカーボン・クレジットを利用するかどうかを決定する際には、カーボン・クレジットの中でもいろいろなスキームがあってそこからどれを選ぼうかと考えるというのもあると思うので、その違いをしっかり説明することももちろん重要だと思うのですが、まず、カーボン・クレジットを使うかどうかを考える際に、非化石証書なのかグリーン電力証書なのかといった、クレジット以外のスキームとの比較もしていくことになると思っていて、それらのRE100やSBTiでの扱われ方の違いなどを説明していく必要があると思っております。
加えて、別の観点ですと、前回も申し上げたのですが、自らの排出努力をする活動と、残余排出量のオフセットに、優先順位の違いもあると思います。
したがって、クレジットについて説明するときは、まずは脱炭素に向けた活動の取組にはこれだけのメニューがあり、クレジットはこういう位置づけであるということを示し、じゃあ、企業としてはこれを選んでいこうと選択できるような、何か簡単なリーフレットなどがあると有益だなと思いますし、それが相対取引をしている仲介者、あるいは地銀の内部の教育にも使えるのではないかなと思っております。実際、弊社では、お客様の説明用にクレジットとその他のスキームを比較するような表を作っておりまして、それを社内の勉強会でも使って、社内の知識の向上にも使っています。
このように考えていたのですが、先ほどの三菱商事の小山様のお話をお伺いし、三菱商事様の資料に記載されているバイヤーの方たちを見ると、相当に大きな企業が並んでいました。私はもう少し小規模な企業を想像して、こういったリーフレットが有効かと思ったのですが、小山様から見たときに、バイヤーの皆様への説明の資料としてどのようなものが有益かという観点を教えていただきたいです。
続けて2点目についてもコメントさせていただきます。クレジットの信用補完の観点ということで、カーボン・クレジットの拡大を阻む大きな要因としてはやはりグリーンウォッシュへの懸念というのが多く指摘されておりまして、信頼性の確保が重要というのは皆様もう御承知のとおりの大きなポイントだと思っています。
ただ一方で、サステナビリティの議論の中でいろいろなところで保証や認証が必要だということが議論されていて、サステナビリティ情報開示、人権、AIガバナンスなど、いろいろな文脈で監査・保証が必要ということが指摘されています。もちろん信頼性の付与はとても大切な概念だと思うのですが、とはいえ、あまりにいろいろなところで指摘され、過度に要求され過ぎると、事業会社のコストがどんどん増加してしまうということを懸念しております。本来であれば、事業会社の皆さんに脱炭素あるいはサステナブルな社会に向けての取組を推進してもらうところにお金を使ってもらいたいのに、監査・保証にあまりコストをかけ過ぎてしまっては本末転倒だとも思っております。
資料4ページ目のテック活用という前回の御議論のところでも、「デジタル測定・報告・検証の活用」とありましたので、テック企業とのコミュニケーションも今後しっかり進めていく必要があると思います。あるいは、保証機関の中でもテクノロジーをどう活用するかの議論が進んでいると思いますので、そういったところを有効活用しつつコミュニケーションを増やすことで、過度な負担にならないように、投資家が求める保証のレベルというのがどのぐらいのものなのかというのを確認した上でこの辺りは進めていっていただきたいと思います。
以上になります。
【根本座長】
どうもありがとうございます。それでは、あとお二人、御質問を伺います。武川様、それから、吉高様、お願いします。では、武川様、お願いいたします。
【武川メンバー】
ありがとうございます。私のほうからは、スライド15ページのお題としていただいているうちの前半の部分、仲介業者等、それから、投資家保護・顧客保護といった観点からどういった課題があるかという点についてコメントを差し上げたいと思います。
この問題については、いわゆる規制の要否とか規制する場合の規制内容といったところに直截にかかっていく部分かと思うんですが、私はこういった問題を検討する上では、前提問題、先決問題として、どういった主体・プレーヤーが今取引に関与しているのかという、そういった認識をやはり前提として持たないとおかしな議論になるかなというふうに思っております。
その観点から考えると、ボランタリー・クレジットは、確かに個人であったり小規模な企業ももちろん取引の当事者として参加しているとは思うんですけれども、果たして量的にそこまでの割合を占めているのだろうかという点がまずは検討されるべきではないかというふうに思います。この点はもし参加者の方で御存じだったり、あるいはIOSCOの中でそうした議論があるようであれば、御紹介いただきたいなと思います。
個人的な感触としては、これは全く統計的なデータもなくて、私の直感なんですけれども、ある程度の意味を持つ取引量という、そういう意味で裾切り基準をつくって考えると、基本的にはやっぱり大企業なりある程度の規模の企業が取引の主体なのではないかというふうにも考えています。そうだとすると、いわゆる仲介者的な役割を果たしている方との間にそこまでの知識・経験に差があるとは言えない状況なのではないかという気もいたします。そうなんだとすると、そういった状況について規制を導入することについては慎重に考えるべきではないかという方向に議論が行くと思いますので、実際そうなのかというところも含めて、やはりマーケットの実情を理解するというのが非常に重要じゃないかというふうに思っております。
ちなみに、私もメンバーに入っております、経産省・環境省のほうでやっている法的課題研究会のほうでは、現物取引については、当面、規制は要らないんじゃないかという方向で一応報告書を出しております。果たしてそれが正しいのかというのも含めて、デリバティブに関してはちょっと別だと思うんですけれども、現物について一定の規制を導入するということが本当に必要なのかというところも、いずれやはりそこは金融庁さんともしっかり議論する必要があるのかなと個人的には思っているところです。
その上でということなんですが、ただ、規制が法的なものがないとしても、ソフトローのようなものでやっていくということもあるかもしれなくて、例えばカーボン・クレジットの取引、現物取引をする際に、購入者にとってこれが本当になぜ必要なのかとか、代替手段がほかにないのかとか、そのクレジットにどういう限界があるのか、あるいは潜在的リスクがあるのか、あるいは使用に当たって注意すべき点は何なのかといった、例えばなんですけれども、そういった点について説明を尽くすことを励行するという、例えばそういうソフトローというのはあり得るかもしれないと。何でもかんでもぎちぎちに法律で規制するということが全ての道ではないので、そういった観点から説明するとしたらどういうことを説明すべきなんだろうかということをこういった場で話をしていくということも有益ではないかと思っています。今後どちらの方向に議論がどう進むかということもあるんですけれども、意見として申し述べさせていただきました。
以上でございます。
【根本座長】
どうもありがとうございました。吉高様、お願いします。
【吉高メンバー】
どうもありがとうございます。今現在、私、COP29に参加しておりまして、小圷さんも昨日お会いしましたけれども、6条2項、要は、排出権に関する条項に関しまして、非常に国際的には関心は高いと。ただし、今日皆さんが、御発表や事務局の御説明を聞かれたように、普通の人では分かりにくいです。ほとんど分かりにくいという状況の中で、これをどういうふうに投資家や顧客に理解してもらい、保護していくかというのは非常に複雑な世界になっているというのを感じます。ましてや今、カーボン・クレジットに対しては批判的な声が高まってもいますので、このリスクを、保険などでどのようにカバーするということもそうなんですけれども、実際に投資家や顧客がそれに対しての認識を高めるというのは、まさに今お示しいただいた1番目のポイントである、仲介者や証券会社、商社が相手に対してどれだけ説明できるかというところに本当にかかってくると思います。
ですので、先ほど武川先生がおっしゃったように、もうすこしレベル感できちんと整理していかなくてはいけないと思うんですね。したがいまして、例えば事務局の資料の12ページのスライドがありますね。国際的なこの関係の図、これをきちんと、日本の中の関係図として、例えば適格性クレジット、例えば地方においては地域創生のためにボランタリー・クレジット別に作るということもあるでしょう。それから、大手企業がSBTiなんかのルールにのっとるようなクレジットが欲しいというプレーヤーに対してどういう企業が動いているかというようなことの、このカーボン・クレジット取引またはキャップアンドトレード取引の関係図の整理をまずしていく必要があろうかなというふうには思っております。確実にEUとも違いますし、韓国の取引所とも違いますということだろうと思います。ぜひそれは御検討いただきたいなというふうには思っています。
一方で、先ほど鶴野さんがおっしゃったように、基本的に、個人的な取引というよりは、今、日本で必要なのは、日本のCO2排出量削減にいかに貢献するかということかと思うんですけれども、三菱商事の小山さんに御質問したいんですが、たしかSBTiのほうでガイダンスの話が資料でちょっとあったと思います。昨日、私はSBTiと面談をいたしまして、カーボン・クレジットに対してガイダンスが8月に出たと思うんですけれども、今これに対していろいろなコメントを集めていると思うんですが、三菱商事さんとしては、これに対して何かコメントなんかを出されておりますでしょうか。政府に頼るというのも重要なんですけれども、ああいった国際的な標準の中で、日本企業がこういうふうにあるべきというのがちゃんと示されるということも必要だと思うので。実は昨日のSBTiの御担当の方は、こういったコメントをたくさんいただきたいとおっしゃっていたので、もし企業としてされているのであれば、ぜひそこをお伺いしたいと思います。
もう一つ、東京海上日動火災さんのお取組は大変興味深く、実際カーボン・クレジットの取引が始まってから、国際的に保険は動いてはいたんですけれども、実際のところどれぐらいの需要を見込まれているのかぜひ教えていただきたいと思います。
最後に、このIOSCOのガイドラインに関しましては非常に網羅的であります。ですので、日本の状況に合わせて、どの部分が日本にとってきちんと考えなくてはいけないのか、先ほど武川先生がソフトローみたいなことをおっしゃいましたが、指針でもいいのでやはりある程度考えていく必要があろうかと思っておりますので、そこら辺を整理しながらこの会での検討事項を考えていただきたいと思っています。
以上でございます。よろしくお願いいたします。
【根本座長】
どうも時差のある中、お疲れさまです。ありがとうございました。
私もちょっと質問をさせていただいた後、小山様、川崎様にお答えをいただければと思います。
一つは大和証券の外江様にですが、例えば日本の取引の流動性がどうして少ないのか。これは時間とともに解決するのか。例えばシンガポールなどは、IOSCOのレポートにありましたけれども、経済規模に比べて取引量が多くて急速に発達しています。あと、欧州ではIOSCOの資料にもあったようにデリバティブ取引が発展しているのですが、こういったところに日本にも同じような発展の可能性があるのか、あるいはどういう工夫をすればいいのかというのをお伺いしたいと思いました。
あと、小山様の資料でNextGen CDR Facilityという非常に画期的な取組がありました。他の方も御質問されていたのですけれど、その需要者が外資系であったり大企業であったりというところで、これは日本でどのくらい今後テイクオフできるのか、そうであるとすれば、何が起爆剤になるのかを分かれば教えていただきたいと思いました。
あと、IOSCOの報告書に関してですけれども、やはり金融機関の仲介者としての役割の重要性が強調されていて、情報提供、販売、ヘッジなどを通じて社会に相当影響を与えること、また透明性等の指針やベストプラクティスの提示が重要なことが再認識されました。
先ほど武川さんもおっしゃったように、規制に関しては、もう少し全体を俯瞰して、今のプレーヤーの規模とかどういった目的で取引を行うかなどで市場の性格も違うので、そういったことを整理する必要があると思います。一方で小山さんもおっしゃったような何らかのガイドライン的なものが示せればいいのかと思いますし、それに関しては江夏さん、吉高さんがおっしゃっていたような、日本の実情を考える必要があるのかと思いました。
あともう一つは、地方銀行の御発表にもあったのですけれど、地域創生とかそういった社会課題に対してボランタリー市場を使うというニーズがあるということで、かなり広いプレーヤーがそこに参加するとすれば、アクセシビリティーというのも必要だと思いますし、何らかのよいプラクティスが示せると、これに取り組もうという、プレーヤーの裾野が広がってくるのかと思いました。
あと、ほかの委員の方もおっしゃっていたグローバルな整合性というところも、私は重要じゃないかと思います。流動性のさらなる向上を図るためにも、また、主要な参加者がグローバルに活動する主体であるということを考えると、その点を考慮して、海外の当局とかその他グローバルな認証機関等との意見の交換とか、整合性を図るということが重要ではないかというふうに考えました。
以上は意見でございまして、最初申し上げた2点に関しては質問ということでございます。
非常にたくさんあって申し訳ないんですけれど、小山様から御回答をお願いできればと思います。
【小山メンバー】
ありがとうございます。3点御質問いただいたと思いますので、鶴野さん、根本さん、吉高さんの順番で御回答させていただければと思います。
まず最初、鶴野さんの御質問なんですけれども、リーフレットみたいなものが有効かという御質問だったかと思います。結論としては有効というふうに考えておりまして、実は弊社もそういったものを準備させていただいております。大企業さんみたいな、マイクロソフトさんみたいなところについてはもうかなり進んでいらっしゃるので不要だったりすると思うんですけれども、一方で中小企業の方だったり、日本のお客さんでよく分かってない方もいらっしゃると思うので、そういうところには、我々もリーフレットを作って、まず削減からやっていきましょうでしたり、クレジットをつくっていく際はこういったものの戦略を立てましょうとか、コンサルティングのようなサービスもさせていただいております。なので、我々もそういったリーフレットを作る形でやらせていただいておりますので、やっぱり重要かなというふうに思っております。
一方で、次に根本さんの御質問ですけれども、外資系の企業さんがああいったところを注目されているんですけれども、一方で日本の企業さんも確実に必要だと思っています。やはりまずマクロで重要という観点から必ず必要なクレジットというところで、今後日本の需要も増えていくんじゃないのかなと思っています。ただ、その際やっぱりガイドラインというのが重要かと思っております。政府でしたり、先ほど吉高さんのお話があったSBTi等でそういったガイドラインが出てくると、日本の需要というのもより生まれやすいんじゃないのかなというふうに思っています。
実際、NextGen CDR Facilityが取り上げているクレジットについては、日本政府の経済産業省さん、GX-ETSのほうで第1フェーズで適格クレジット化したということがございますので、そういったところで一気に興味を持って購入を検討されていらっしゃる日本企業さんも実際増えているというのが実態ですし、現在SBTiのネットゼロの改訂の際に、まさにああいった技術由来の炭素除去クレジットを早いところ買っていきましょうというような方向でガイドラインが改訂するほうへ動いていますので、そういったところも一つ大きいドライバーになっていくんじゃないのかなというふうに思っております。
最後、吉高さんから御質問いただいた、SBTiを含めた国際機関へのアプローチというところについては、御指摘のとおりだと思っておりますので、弊社としてもいろいろと、いろいろな方面で関与させていただいております。SBTiのリビジョンについては、9月のニューヨークのクライメートウィークの直前に発表されたと思うんですけれども、その直後にニューヨークのほうでもワークショップがありましたので、そちらに参加させていただいたりとか、あと、弊社が参加しているIETAとかWBCSD等を通じてコメントを出したりとか、そういった取組をさせていただいております。
以上となります。
【根本座長】
どうもお答えありがとうございました。では、外江様、お願いいたします。
【外江様】
根本様からいただいた、EU等では排出権の取引量が多いのに対して日本ではなぜ取引量が少ないのかというところの御質問ですけれども、やはり一つに根本としては、現状取引が少ない要因として、需要、供給どちらもまだ少ないのかなというふうには思っておりまして、そこについては26年度以降のGXリーグでどれだけ需要喚起及び供給が生まれるのかというのを見ていきたいなと考えております。
もう一つ、やはりEUでも見られるように、金融機関の関与というのが重要かなと考えております。欧州でも金融機関による取引量が多いですし、我々金融機関が間に入ってお客様へのカーボン・クレジットに関連する商品を提供することで、例えば長期的に一定の価格でクレジットを購入するなど、お客様ニーズに合ったものを提供できると考えております。
我々金融機関がそのように市場に貢献していくに当たって、2点課題はあるかと考えております。一つには、根本様がおっしゃっていただいたように、先物市場というのはやはり必要かと考えております。我々が日々取引を行う中でのリスクヘッジにも先物は有用でありますし、商品開発においても先物取引市場があると商品の柔軟性も上がるかと考えております。
もう1点の課題としましては、15ページの議題にも通ずる部分で、我々金融機関がカーボン・クレジットの取引をお客様と行うに当たって整理が必要だと考えているところですけれども、まず、カーボン・クレジットの取引は、お客様への商品の適合性という観点で考えると、実需で必要な方と、そうでない、いわゆる投資としてカーボン・クレジットを買われるお客様がいらっしゃるとして、それぞれお客様に合ったものを提供できるかというのを考える必要があるかと思っています。特に後者の場合は、お客様がカーボン・クレジット市場に対してどのような見通しをお持ちであるのか、お客様が許容可能なリスク・リターンであるのか、排出権の場合は従来の金融商品とは異なるリスクも内包しておりますので、そういったところを見ていく必要があるのかと思っております。
さらには、価格の透明性。日々ある程度、提供するクレジットの価格をお客様に提供できるのか、販売したらお客様が売りたい際に我々金融機関が相対して対応することができるのか、という辺りを見極める必要もあります。また、プロジェクトへの出資などそういったカーボンへの携わり方がある中で、場合によってはお客様との情報の非対称性というのは大きくなるので、その辺の整理というのも求められるのかと考えております。
以上です。
【根本座長】
どうも大変ありがとうございました。それでは、川崎様、お願いいたします。
【川崎様】
御質問ありがとうございます。実際のところ需要としてどの程度見込まれていますかということだと思います。カーボン・クレジット自体の需要総額は、我々も大きく利用が進んでいくというところを見込んでおりますが、この実際の数字、分母のところは、いろいろな会社さんがレポートを出されていらっしゃったり、報道ベースでもいろいろな数字があると思っていますので、ここはこの分母に対してどの程度、保険需要、保険を付保する需要があると考えていますかというところでお答えできればと思います。
ここは、ひとえに保険需要のところは、弊社に限らず、保険業界全体として、どのような補償、ペリル、事象、補償対象とするようなペリルをどの程度広げていけるかというところが、需要に直結してくるかなと考えております。
もちろん地域的に集積が大きくなるようなものとか、ほかの保険との集積が大きく見込まれるようなリスクを大きく補償を引き受けるというのはなかなか難しいところでもございますが、そうでないようなリスクについて、例えば先ほど山火事の例をお話しさせていただきましたけれども、山火事だけではなく、ほかのカバー、申し込んでいたけれども、クレジットが来る日までに届かないリスクとか、クレジット創出予定だった会社・法人が実際破綻してしまって、そこから先そうしたプロジェクトが止まってしまうとか、事前のいろいろな会社様にヒアリングさせていただいた保険に感じるリスク、これにどれだけ業界として応えていけるかというところがキーだと思っておりますので、保険設計という面でこれからも努力していきたいと考えております。以上です。
【根本座長】
どうもお答えありがとうございました。よろしいでしょうか。
【吉高メンバー】
ありがとうございました。
【根本座長】
それでは、あと4分ぐらいとなったんですけれども、まだ御発言いただいてないメンバーの方で、御発言はございますでしょうか。
【黒﨑メンバー】
では、簡単に、手短に発言をさせていただけたらと思います。コメントだけになります。今日皆様が御発言された点は非常に重要だと思っておりまして、既にもういろいろな御意見が出ている中で、一つだけ私が気になっていることを申し上げさせていただきたいと思います。前回出席ができなかった理由は、弊社のほうで同じテーマでカーボン・クレジットのイベントをやっておりまして出席ができなかったんですけれども、その中の一つサマリーとして、弊社はアメリカのベンチャーキャピタルなんですけれども、いろいろな技術に投資をしている中で、このボランタリー・カーボン・クレジットの市場というのはなかなか投資が今までできていない市場です。なぜかというと、なかなか透明性が見えないといったところがあります。
そういった中で、日本でイベントを開催して、日本の皆様のボランタリー・カーボン・クレジットに対する思いとか、やりたいという気持ちというのが世界と比べても非常に大きかったということが、弊社からしての一番のテイクアウェイだったということです。逆を返してみますと、世界の市場では、今、ボランタリー・カーボン・クレジットの市場をちょっと引いた目線で見ている方が、投資家さん、それから、企業さんともに、コンプライアンス市場以外、ボランタリーのところはそういった目線なので、日本がこれから、逆を返してみますとこれは日本にとってのオポチュニティーだとも思いますし、その際にはぜひしっかりとした仕組みでやられていっていただきたいというのが1点です。
2点目は、皆さんが期待されている本当の理由というのは、今後こういったやはり排出量の削減をしっかりやられていきたいという思いが強い企業さんが日本の中で非常に多いという印象でございます。その中でボランタリー・カーボン・クレジットを活用したいという方のお声を実際に伺いました。ですので、やはり実際に買いたい方のニーズに合致するような形で、やはり情報開示とか、先ほど江夏様とか吉高様が御発言されていた点というのは非常に重要だと思いますので、本当に最初の話に戻っていきますと、そういった情報開示は特に重要だなというふうに思っております。
それから3点目、先ほど根本座長がシンガポールでお取引が多いというお話がありました。私、シンガポールにおりまして、そのみそというのは、タックスをシンガポールでは課しておりまして、そのタックスの一部、5%をカーボン・クレジットの市場から調達していいということになっております。排出量の5%です。なので、そういった仕組みがやはりしっかりしているので伸びてくるといったところがあるので、今後は日本の文脈でいきますと、GXリーグが活用されることを願っております。
以上です。
【根本座長】
ありがとうございます。シンガポールの話、参考になりました。
吉戒様、いかがですか。すみません、時間がないので手短にお願いいたします。
【吉戒メンバー】
いろいろ気になっている点もありましたが、例えば保険なんかも、実際の保険ニーズって本当にあるのかなというのは気にはなっていたんですけれども、今日話を伺っていると日本は特にこういった保険の普及が遅れているのかなということを思っていましたが、そうでもないなというのは理解できました。
あと、吉高さんがおっしゃっていた、なかなかこれ普通の人には分からないんですよという話、これはまさに本当そのとおりだろうなと思っています。今日の議論も、議事録がいずれ出てくると思うんですけれども、相当解説を横につけないと分かりにくいだろうなという気がいたします。
すみません、簡単ですが、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
【根本座長】
分かりました。なるべく多くの人に分かるような形で発信をしたいと思っております。ありがとうございます。
では、最後に事務局のほうからコメントいかがでしょうか。
【高岡サステナブルファイナンス推進室長】
サステナブルファイナンス推進室長の高岡でございます。本日も活発な御議論をどうもありがとうございました。
松尾メンバーはじめ、規制の方向性などについて関連するコメントが幾つかありましたので、本日の会議を締めさせていただく前に、若干その辺について簡単に触れさせていただきたいと思います。
IOSCOの報告書のほうでは、特に規制対象とかも含めて何か具体的な方向性みたいなものは明示されておりませんでして、そういう意味では現状、ボランタリー・クレジットに関して規制の在り方として何か方向観があるというところではないんですけれども、例えば規制対象をどうするのかという点一つ取り上げても、それが発行体なのか、仲介者なのか、或いはプラットフォーマーなのかとか、色々と考えられると思いますし、規制の在り方としてもハードローなのかソフトローなのか、ハードローだとしてライセンス、登録だとか認可だとかというものを必要とするのかとか、色々な形が考えられるのかなというふうに思います。
また、武川メンバーから御指摘のあったところですけれども、現状、これもIOSCOの報告書では、ボリュームゾーンとなっている取引主体がどの辺だというのは明確には触れられていないんですけれども、恐らく企業を想定している内容なんだろうというところだと認識しております。その辺も市場実態というところも踏まえて、立法事実の存否とか、立法事実があるとして、じゃあ、どの程度の水準の規制が必要なのか、ハードなのかソフトなのかというところも含めて、しっかりとその辺の実態も踏まえながら考えていく必要があるのかなというのを本日の皆様の御議論、御意見をいただいて感じたところでございます。
すみません、簡単ですけれども、事務局からは以上とさせていただきます。
【根本座長】
どうもありがとうございます。
本日も活発な御議論ありがとうございました。次回については、事務局のほうから別途日程を調整させていただければと思います。貴重な御意見、活発な、建設的な議論ありがとうございました。
以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。ありがとうございました。
―― 了 ――
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