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「カーボン・クレジット取引に関する金融インフラのあり方等に係る検討会」(第4回)議事録
1.日時:令和7年1月28日(火曜日)13時00分~15時00分
2.会場:オンライン開催
【根本座長】
それでは、定刻となりましたので、議事を開始させていただきます。カーボン・クレジット取引に関する金融インフラのあり方等に関わる検討会(第4回)となります。
座長を務めます、早稲田大学の根本です。皆様、御多忙のところ御参集いただき、ありがとうございます。
議事に入る前に、メンバーの変更が一部ございましたので御紹介したいと思います。三菱商事の河村様です。また、後ほど御発言のときなどにも御紹介があるかと思います。河村様、よろしくお願いします。
本日は、最初に、前回の議論内容の振り返り及び海外取引所について事務局より説明した後に、東京証券取引所様、Carbon EX様、enechain様から、各社の取組についてプレゼンテーションをいただきます。その後、参加者での議論を予定しています。
では、まず事務局の金融庁から御説明をお願いいたします。
【森サステナブルファイナンス推進室課長補佐】
事務局でございます。事務局資料の2ページが目次となっております。5つに分かれておりまして、1章で第1回の振り返り、2章で今回のメインテーマでございますカーボン・クレジットの流通市場、3章で東京証券取引所、Carbon EX、enechainの皆様方からのお取組の御紹介、4章で御議論いただきたい事項、5章に参考資料ということで、2026年度本格稼働を予定しております排出量取引制度の概要と、海外のボランタリー・カーボン取引所の概要を参考として最後につけております。
3ページを御覧ください。第3回の振り返りということで、証券会社、商社、保険会社それぞれの皆様方から取組の御紹介をいただきました。主な御発言ということで幾つか記載しておりますけれども、大和証券様からは、EU-ETSにおいて、金融機関による取引参入や先物取引などが活発であるという御紹介などがございました。三菱商事様からは、2ポツ目ですけれども、複数のバイヤーがこれらの技術系のクレジットの購入を事前にコミットすることで、プロジェクトの経済性・予測可能性を高め、組成を促す取組も見られつつあるという御紹介などをいただきました。保険会社の東京海上日動火災保険様からは、グリーンウォッシュ批判への対応費用等を補償する保険商品などを開発されていると。カーボン・クレジットにまつわる様々なリスクについて、保険への潜在的ニーズが存在するという御指摘をいただきました。
4ページですけれども、顧客・投資家への説明の在り方等について、メンバーの皆様方を含め活発に御議論いただきました。主な御発言というところで、1ポツ目ですけれども、クレジットの利用者が、購入するクレジットの内容をよく理解しておくことが重要であると。そのためにも、クレジットの提供者が、利用者が理解、納得できるような説明をちゃんとしていく必要があると、こういった御指摘をいただきました。
また、4ポツ目ですけれども、世界的な取引慣行も視野に入れつつ、少なくとも他の金融商品で求められているような説明責任を求めることは、重要かつ迅速に対応すべきではないかという御指摘でしたり、その1つ下ですけれども、現状は、一定規模の企業が取引主体のBtoB取引中心であるということからすれば、厳格な法規制よりも指針等のソフトローを通じて適切な説明を促すことがなじむのではないかという御指摘がありました。その他というところでも、国際的なベストプラクティスをしっかり利用していくことが重要であるという御指摘などをいただきました。
以上が第3回の振り返りになります。
5ページということで、カーボン・クレジットの流通市場についてでございます。
6ページ以下で、第1回や第3回の資料を抜粋、再掲しておりますけれども、この6ページの図につきましては、カーボン・クレジット取引の関係主体ということで、図で示していたものになりますが、今回、テーマとして取り上げるのは、真ん中下の赤枠で囲んでいるところです。取引プラットフォームということで、市場型、マーケットプレイス型など、いろいろありますけれども、ここで資金決済ですとかクレジットの移転など、様々なことが行われるわけですが、この辺りについて深掘りをするというのが趣旨でございます。
次の7ページも、これは海外のエコシステムの図でありますけれども、真ん中あたりの赤枠です。マーケットプレイスでしたり、エクスチェンジ図でしたり、こういったところを本日取り上げるということでございます。
8ページ目以下、これらも再掲になりますけれども、海外における取引所の概況というところで、この表の一番上で米国ではXpansiv様ですとか、一番下ですと、シンガポールのCIX様。9ページに進みますけれども、2段目、英国のLondon Stock Exchange様など、海外においても様々な取引所の取組が出てきているというところでございます。
11ページ目ですけれども、これらも再掲になりますが、Xpansiv様の少し前のデータを第1回でもこういった形で御紹介していったというところになります。
12ページ目からが、IOSCOのボランタリー・カーボンマーケットについての最終報告書の内容の御紹介でありまして、前回、第3回でも取り上げたところであります。21個の論点についてグッドプラクティスを提案しておりますけれども、本日のテーマとの関係では、右の紫のところです。流通市場というところで、第10番から第20番まで、11項目のグッドプラクティスを提案していました。第10番の市場への公正なアクセス、第12番の取引データの公開、第13番開示、第15番ガバナンス、第16番リスク管理、その他、利益相反防止やモニタリングなど、様々な局面におけるグッドプラクティスということが記載されておりました。
13ページや14ページは、そのグッドプラクティスの原文を掲げている、お示ししているものでございます。
15ページですけれども、このIOSCOのレポートの中で関連する記載を抜粋したものになります。例えば1点目、決済サービスはカウンターパーティーリスクを低減し、カーボン・クレジット市場の健全性と円滑な運営を支援等していく上で重要な役割を果たすことができるといった指摘でしたり、2点目ですけれども、クレジットの標準化についての意義が様々指摘されております。3点目は、リスク管理の重要性などについて指摘がされているというところでございます。
16ページです。この後になりますけれども、東京証券取引所、Carbon EX、enechainの皆様方からお取組を御紹介いただく予定になっております。
17ページ、御議論いただきたい事項というところで、18ページに2点記載させていただいております。大きく、取引活性化の観点と、リスク管理とインフラの健全かつ頑健化の観点というところでございます。
1点目ですけれども、カーボン・クレジットの流通市場については、市場型、マーケットプレイス型といった様々な形態の取引プラットフォームが存在すると。また、海外においては現物取引に加え、先物取引も活発に行われていると。本日の取組紹介を踏まえ、現状は黎明期である国内流通市場において、今後取引が活性化していく上での課題あるいは必要な取組として、どのようなものが考えられるかとしております。
2点目ですけれども、IOSCO最終報告書においても、情報の公開、ガバナンス、リスク管理の向上等、様々な観点でのグッドプラクティスが指摘されております。カーボン・クレジットの流通市場が金融インフラとして一層健全かつ頑健なものとして機能していくために、まずはどのような点を優先的に取り組むことが望ましいと考えられるかとしております。
19ページ以下が参考資料というところで、大きく2つ、GX-ETSと海外の市場について、それぞれ参考資料をつけております。
20ページからがこのGX-ETSについてです。なお、こちらは別の検討会で制度設計などが議論されているものでございますので、ここではあくまで参考として情報を記載しているというものになります。
21ページです。GX2040ビジョン(案)において、中央の赤枠囲みですけれども、排出量取引制度の概要について、①から③ということで、一定の排出規模以上の企業の参加義務でしたり、排出枠の無償割当、排出枠の上下限価格の設定などが記載されております。
22ページです。この排出枠市場の検討会の資料の抜粋でございますが、諸外国の排出枠市場というところで、EUのETSと韓国のETSの概要がこちらで記載されております。EU-ETSについては、一次市場はEEX、二次市場は、後ほども御紹介しますけれども、Intercontinental Exchange(ICE)のシェアが大きいというあたりが記載されてございます。
23ページです。この排出量取引制度における外部のカーボン・クレジットの扱いというところで、上の四角囲みの中の2点目です。赤く囲っておりますけれども、政府が運営するJ-クレジット・JCMの活用を認めると。他方で、その下ですけれども、活用可能量の上限については、次年度以降に検討を行うとされております。
24ページ以下が、海外取引所の概要資料について、各社から御提供いただいた資料を参考として添付しているものでございます。
25ページからがXpansiv様の取組の概要でありまして、米国を拠点に世界最大の環境商品スポット取引所というところであります。表で概要が記載されておりますけれども、3段目の決済方法において、Delivery versus Paymentシステムを使用していると、当日決済をサポートしていると、その他様々な方法でカウンターパーティーリスクやパフォーマンスリスクを低減しているということが記載されてございます。
29ページに飛びまして、ICE、参加企業の累計としては、このEUAをコンプライアンス目的で購入する企業にとどまらず、金融機関、エネルギー会社、投資信託等々、様々な企業が参加しているというところであります。
31ページに、先物取引、現物決済ということでありますけれども、その受渡しの流れが図で示されておりまして、クリアリングメンバーが受渡しの履行義務を負うと。全体の仕組みとしては、中央にクリアリングハウスとありますけれども、こちらが受渡しを保障しているということでございます。
33ページがClimate Impact X(CIX)様の概要というところでありまして、会社概要の3段目資本関係で、第1回の検討会でも、みずほ銀行様から御紹介がありましたけれども、資本関係を結んでいるというところでありまして、下の2023年6月に取引が開始されたということでございます。
34ページにサービス概要が記載されておりまして、下の表で6種類記載されておりますけれども、左上のマーケットプレイスですとか、真ん中上のエクスチェンジ、右上のオークションズといった様々なプラットフォームを提供していると。サービス形態に応じスポットやフォワード取引が選択可能であるということでございます。
最後、35ページですけれども、ロンドン証券取引所グループ様のボランタリー・カーボンマーケットの概要というところでありまして、表の一番上のVCM指定というところで、カーボン・クレジットの創出が見込まれる気候変動緩和プロジェクトへの投資を意図する適格ファンド、または事業会社にこういったVCM指定を行うと。その場合は追加情報の開示などが求められると。
このVCM取引の流れで1から6番まで記載されておりますけれども、この5番目です。事業体は現物配当としてカーボン・クレジットの発行等を行うことが可能になると、こういった仕組みだそうでございます。
事務局からの冒頭の御説明は以上となります。
【根本座長】
ありがとうございました。それでは、東京証券取引所様、Carbon EX様、enechain様におけるカーボン・クレジットに関する取組について、各社15分ぐらいで御紹介をいただきたいと思います。
それでは、まず東京証券取引所、松尾様よりよろしくお願いいたします。
【松尾メンバー】
東京証券取引所のカーボン・クレジット市場整備室長の松尾でございます。いつもは委員のほうで外部の有識者の方のお話を伺いますが、本日は取引所の紹介をさせていただくということで、いつもとは違った立場で本検討会に参加させていただきます。第1回の検討会では、金融庁様から私どもの市場についても御紹介いただきましたので、重複する点につきましては御容赦いただければと思います。
まず、私どもの市場開設、昨年の10月に市場開設をいたしましたけれども、その背景につきまして簡単に御紹介させていただきます。
この線表の上の方、緑の線にございますように、大きく起点となりましたのは2022年2月に経済産業省様から公表されたGX基本構想の中に、カーボン・クレジット市場において自主的にカーボン・クレジットを取引するというところが記載されて、それのために必要な実証事業を行うべきという提言がされたことです。その提言に基づきまして、私どものところで2022年9月から2023年1月までのところで実証事業を行ったというところでございます。
こちらである程度の成果を上げたということで、線表の上の方に戻りまして、2023年2月に「GX実現に向けた基本方針」という閣議決定の中で、2023年度にも創設されるカーボン・クレジット市場の価格を価格規制の参考にするといった形で、間接的にカーボン・クレジット市場の創設の期待が示されましので、私どものところで準備を進め、金融庁から、カーボン・クレジットは金融商品ではないので、直接免許の対象ではございませんが、免許等を受けて市場を運営している関係から兼業の認可を受けまして、2023年10月にカーボン・クレジット市場を開設したというところでございます。
ただし、まだGXリーグの第2フェーズの本格稼働前ということ、いろいろなトライアンドエラーが必要になることを考慮し、流通市場としてカーボンプライシングが十全に機能するよう、こちらの下の米印でお示ししているとおり、経済産業省様から引き続き委託事業、今年度はマーケットメイカー制度とGXリーグの超過削減枠の売買制度につきまして委託事業を行っているというところでございます。
1枚めくっていただきますと、政府のほうで進めているGX-ETSと私どもの流通市場の関係につきまして分かりやすく説明していただいているポンチ絵を経済産業省様の資料から持ってきたものです。上半分は、これは第1フェーズでは超過削減枠、第2フェーズのところからは排出枠になりますけれども、第1フェーズの段階では超過削減枠が排出量取引として生み出されることが示されておりますが、こちらを、下半分の流通市場のところで取引できるようにするという関係になっております。併せて、J-クレジットとJCM、GX-ETSの中では適格カーボン・クレジットと呼ばれておりますけれども、こちらは日本国、日本政府が監修しているボランタリー・クレジットにつきましても取引ができるようにすることが明確に位置づけられております。
次の頁では、私どもの制度の概要を御紹介してございます。特徴としましては、後で詳述いたしますけど、まず市場参加者のところでございますが、個人以外は誰でも基本的に参加できるようにいたしました。一般的には金融商品取引所の参加者はいわゆる証券会社や金融商品取引業者あるいは登録金融機関、いわゆる銀行さんに限定されますが、こちらのボランタリー・クレジットの性格として、いろいろな事業会社様に参加してい頂きたいが、規模も大きく違うということで、基本的に誰もが参加できる形といたしました。
あと、売買の方法ですけれども、これは1日2回の板寄せ、節立会だけをやっております。株式とかデリバティブのように、ザラ場の取引を朝の9時から11時半、12時半から3時半までずっと行うのでなく、節立会2回のみの実施になりますと。こちらはJ-クレジット、1年間で100万トンぐらいしか創出されないため、流動性向上の観点から需給集約する形にしてございます。
あと、売買の区分というところですが、こちらは本日お伺いしたい事項の一つでございますけれども、私どもはプロジェクトごとの売買、一般的にはマーケットプレイス型と呼ばれる方式を採用せず、J-クレジットにつきましては方法論である程度カテゴリー化して、同じような需給、価格形成がされるものを標準化した取引をする方法を採用いたしました。
続きまして、決済のところでございますけれども、決済日がT+5としております。株式はT+2ですけれども、事業会社様で実際にクレジットの移転とか資金の決済につきまして、内部的な処理も含めて実際にできるところで、一番最短なところといたしました。また、決済の安全性を確保するために、私どもが、東証がエスクローとして真ん中に入る形で決済の安全性を確保してございます。
以上をもう少しブレークダウンして御説明していきます。6ページでは、私どもの市場と特徴といたしまして、まず一番上のポチに「インターネット」ベースでシステムを構築している点があります。これは当たり前じゃないかというお話もありますけれども、ほかの株式とかデリバティブのシステムは、我々が接続仕様書を開示して、金融商品取引業者様が御自分で取引画面などの社内システムを作る形にしておりますが、これを事業会社様に求めるのは酷というか、皆さん参加していただけないということで「インターネット」ベースにしてございます。
あと、2つ目は、先ほど簡単に御紹介いたしましたけれども、東京証券取引所が売り方と買い方の間に入り、清算機関ではございませんが、エスクローとして機能しております。具体的な決済のプロセスですが、まず売り方から東証口座にクレジットを移転していただく、もし売り方から移転がなければ契約を解除いたします。無事に売り方から東証の口座にクレジットが移転されますと、次は買い方から東証口座に代金を払っていただく、もし代金が払わなければ、やはり契約を解除して、売り方からお預かりしたクレジットをお戻しするという形で、決済における元本リスクを排除する形にしてございます。
東証が間に入ることで元本リスクを排除いたしますが、そのほかのメリットとしまして、取引の標準化、これは取引所の業務規程のようなルールブックを定めてございまして、契約書のやり取りが不要であるという点から契約手続が非常に簡素化されているという点と、さらに、とにかく資金もクレジットも東証だけを相手にして決済していればいいということで、決済手続の合理化にもなります。加えまして、インボイスの発行事務は東証が行っておりますので、さらに決済事務が非常に合理化されております。
7ページでございます。私どもの市場では、先ほど申し上げたとおり、売買をプロジェクトごとに行うマーケットプレイスでなく、標準化して行っているという御説明をいたしました。価格形成の動向が似ているものにつきまして標準化した取引を行っておりますが、具体的には、売り注文を出す方が、売り注文を出す際にどのクレジットを渡すか指定してもらいます。指定すると、省エネルギーのクレジットは、省エネルギーの売買区分にのみ、再生可能エネルギーの電力のクレジットを指定すると、再生可能エネルギーの電力の区分にのみにしか注文は出せないようにしております。このように標準化した区分に属するクレジットのうち、保有しているものを指定していただき、その標準的な区分の中で取引をしていただくという方法を取ってございます。
8ページでは、私どもの市場の参加者の要件でございますけれども、主要な項目として、先ほど申し上げた法人であることに加え、eで掲げている要件、預貯金口座とクレジット登録簿口座、あとインボイスが発行できる方であることを求めております。つまり、法人であることプラス、決済ができるということを要件にしてございます。
9ページでは、売買に伴うインボイスにつきましては、取引所が媒介者交付特例を使って代わりに発行するものをお示ししたものでございます。
10ページでは、価格公示、先ほど経済産業省様がお作りになられたポンチ絵のところで、期待されている機能として流動性に加えて価格公示が掲げられておりましたけれども、こちらがどのように機能しているか、まず、カーボン・クレジット市場システムにおいてリアルタイムで注文状況、私どもの用語で板と言っておりますけれども、注文状況が全て見えるようにしてございます。また、日報、株式市場での呼び名に合わせていますが、大体午後4時ぐらいに1日取引結果をPDFの形にてウェブサイトで無料アクセスできるようにしてございます。
あと、有料になりますけれども、四本値情報とかを電子のデータでFTPの形での提供も行っておりまして、これらを活用してデータを取得した情報ベンダーさんが配信をされているということでございます。
11ページでは、金融商品取引所は金融商品取引法で、法律で、何人も市場の価格形成について不公正をしてはならないと定めておりますが、カーボン・クレジット市場は金融市場ではないものの、ある程度信頼がおける市場でなければならないという観点から、利用規約にこうした形で売買ルールを順守していただきたい、またこういう観点から売買管理を取引所は行いますよということをお示ししてございます。
以上が市場の概要でございますが、12ページで、市場開設来、現時点では312社の参加者に登録をいただき、累積売買高が72万2,545トンとなっております。
もう少しブレークダウンしますと、13ページでは参加者のセクターの内訳をお示ししておりますが、特にJ-クレジットのほうになりますけれども、電気・ガス業の業種の方の参加登録が多くなっていることでございます。
14ページでは、売買の内訳をお示ししておりますが、再生可能エネルギーが6~7割、省エネルギーが残りの3割ぐらいということで売買の中心になっておりまして、こちらは経済産業省様が行う売出しが大きく影響しているのではないかということでございます。
実際の価格動向につきましては、15ページで、再生可能エネルギーの電力につきましては、去年の4月ぐらいから継続的に価格が上昇しておりまして、6,500円近くぐらいになっております。省エネルギーにつきましては、今年10月から価格上昇を始めておりまして、1,600円前後だったものが今3,500円ぐらいになっております。
17ページでは、先ほど金融庁様からありましたIOSCOのファイナルレポートのうちセカンダリー関連の項目につきまして、一応私どもの市場に当てはめたというものでございますので、説明は省略させていただきます。
最後の19ページでは今後の展開としまして、これまでのところでは、売買の対象を追加や見直しをしたり、マーケットメイカー制度を導入したりしてきましたが、今後ということでは決済のインフラである登録簿との電子的な接続をもっと拡充していきたいとございますし、取引機会の拡大ということでは、適格カーボン・クレジットの中では取り扱っていないJCM、あるいは第2フェーズ以降のGX-ETSの排出枠、あとは、やはり、先ほど金融庁様からICEの話がありましたようにデリバティブの取引が恐らく排出量取引の中心になると思いますので、中長期的にはデリバティブ取引の取扱いを検討していくということかと存じます。
時間が少しオーバーいたしましたが、私からの御説明は以上でございます。
【根本座長】
どうも御説明ありがとうございました。では、続きましてCarbon EX、竹田様、お願いいたします。
【竹田様】
竹田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。私はCarbon EXの代表取締役CEOとして、本日プレゼンさせていただきます。また1名、COOの陰山も出席させていただいていますので、後ほどQ&Aのときには両名で対応させていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
私どもCarbon EXは、カーボン・クレジットの取引プラットフォームの運営等をはじめとしましてカーボン・クレジットに係る事業を幅広く行っておりますので、その御紹介をさせていただきます。
まず、概要といたしましては、弊社Carbon EXは、アスエネ50%、SBIホールディングス50%ということで、両者のジョイントベンチャーという形で事業運営を行っております。アスエネに関しては、ESG領域、環境領域でグローバルにビジネスを展開している企業でございまして、法人企業様向けにCO2排出量の見える化ですとか、サプライチェーン向けのESG評価、GX・ESG人材サービス、非財務情報開示等の第三者保証、アドバイザリー事業等を幅広く行っている会社でございます。
幅広い環境領域のビジネスを行っておりますので、お客様からカーボン・クレジットの購入ニーズ等の御相談をいただく機会が非常に多いということもございまして、それに我々が応えるというところで取り組んでいるという状況でございます。
また、SBIグループからの観点で申し上げますと、SBI証券をはじめとしたネット金融事業、銀行事業、アセマネ事業、ベンチャーキャピタル事業等を行っておりますけれども、それ以外にも様々な金融商品等の取引プラットフォームを運営している状況でございます。取引所という観点で申し上げますと、関連会社に、株式の私設取引所、PTSと呼ばれる取引所ですとか、デジタルトークンの取引所、もしくは出資先ではございますけれども、堂島商品取引所といったものもございまして、そういったところで取引所事業というのは幅広く行っている状況でございます。
また、OTC取引、相対取引の分野で申し上げますと、為替、主にFX、暗号資産のOTC事業等を運営しておりまして、こういったところでノウハウを持っているということで、今般、両者のノウハウ及び知見を融合して、取引プラットフォームを運営していこうということで設立したという経緯でございます。
カーボン・クレジット取引に関しましては、従前は企業様の相対取引が散発的にあったかと思いますが、今後、制度の運用やニーズの拡大に伴い、需要や取引ボリュームが大きく増えることが期待されていると思います。そうした中で、我々のほうで取引プラットフォームを立ち上げて、そこで事業を大きくしていこうということで取り組んでいるという状況でございます。
では、次のページお願いいたします。そういった背景も踏まえまして、私どものミッションは、「環境と金融を融合させた新産業を創り、次世代につなぐ」ということを掲げて事業を展開しております。GXに向けた取組が様々な領域でこれからさらに本格化していく中で、取引所事業、プラットフォーム事業にとどまらず、カーボン・クレジットに関するニーズに幅広く、それに付随するサービスも含めまして展開していきたいということで取り組んでいるという状況でございます。
それでは次のページお願いいたします。こちらが、スキーム図になりますけれども、プラットフォームの概要を記載させていただいております。Carbon EXというカーボン・クレジット・プラットフォーム、真ん中にあるかと思いますが、こちらは基本的にはウェブベースで展開をしているという状況でございます。そこに参加されるプレーヤーとしては、基本的には法人様限定ということで、左手にいらっしゃるのがクレジットの売手の方々、右側にいらっしゃるのがクレジットの買手の方々でございます。そこの間でカーボン・クレジットの売買が行われて、我々が一定の手数料をいただくというビジネスモデルで展開をさせていただいております。
登録のプロセスとしては、私どもも規約を整備しておりまして、そちらに同意していただいて、必要情報を御入力いただくというプロセスでプラットフォームに御登録いただくという形になっております。
特徴といたしましては、幾つかございますので、真ん中が小さい字になって恐縮ですけれども、私どもはJ-クレジットに限らず、幅広い商品を取り扱っております。こちらに記載させていただいているとおり、海外のボランタリー・クレジットの案件や、国内の非化石証書及び海外の再エネ証書等、幅広いカーボン・クレジットを取り扱うということでやっておりまして。
海外のクレジットに関しては、下に書かせていただいているとおり、海外の外部評価機関の評価を活用することによって、ボランタリー・カーボン・クレジットの評価情報を掲載させていただいて、お取引いただく際にそちらを御覧いただくという形で情報を補完しているという状況でございます。
4種類大きく掲げてありますけれども、企業様のニーズというのは非常に様々でございまして、我々に御登録いただいているお客様は全国、かなり大規模な会社様もいらっしゃれば、中小の企業様もいらっしゃると。J-クレジットを買いたいという会社様もいらっしゃれば、海外に拠点をお持ちで海外の省エネ証書を、買いたいというお客様もいらっしゃるということで、そういったお客様ごとのニーズにお応えできるような形でサービスを提供させていただいているというところでございます。
あとは、それに付随するサービスといたしまして、左下に創出コンサルというサービスがあります。こちらは、これからカーボン・クレジットを創出したいですとか、やりたいんだけどもやり方が分からないという売手のお客様に、創出の支援のサービスということで、専門のコンサルタントを充てて、支援させていただくようなビジネスもやっております。また右下に書かせていただいているとおり、我々のカーボン・クレジットの取引プラットフォームのサービスを、ほかのウェブサービス等に展開して、付随機能として使っていただくということにも取り組んでおります。
こちらは実際アスエネの見える化のサービスにアドオンという形で、つけさせていただいておりまして、今後は同様の取組を広げていきたいと考えている状況でございます。
次のページをお願いいたします。その他、一部重複しますけれども、ほかの特徴も幾つか申し上げさせていただきます。実際に御登録いただいているお客様は1,500社超ということで、こちらは御関心をいただいた会社も含めて1,500社超という形になります。
当然、全てのお客様が取引いただいているというわけではないですけれども、これだけの会社様から御関心をいただいているというのは一つの数字として出させていただきました。
また、取扱数量に関しては、こちらは海外のボランタリー・カーボン・クレジットも含まれますけれども、500万トン超の在庫、海外のセラーの方々も含めて保有しているということで、様々なニーズにお応えできるという値になります。
質のところに書かせていただいておりますけれども、我々はカーボン・クレジットの売買だけに留まらず、そこにひもづく、創出やそれ以外のサービスとの連携といったところも含めて、一気通貫でサービスを提供できるというところが特徴であると考えております。
事例で申し上げますと、直近福島県で水田の中干し由来のJ-クレジットの創出支援を実際に行っております。それ以外にも、J-クレジットは約70種類の由来があるかと思いますので、そういった由来に対して、様々なお客様のニーズに合わせて取り組んでいるという状況です。
では、次のページお願いいたします。実際のユーザーインターフェースを御紹介させていただきます。実際のログイン後の画面になりますけれども、左側に商品種別が載っており左側にボランタリー・カーボン・クレジット、J-クレジット、非化石と書いてあるところをクリックしていくと、こちらはボランタリーの画面になりますけれども、こういった形で一覧で表示されて、そこに価格とトン数及び場所、由来、認証基準やあとレーティング等が記載されます。こちらは、インターフェースとしての使いやすさを重視して設定させていただいております。
実際にお客様のニーズとして、地域や、種別、もしくはビンテージ、発行年を指定して買いたいというものが一定数ございまして、本社所在地がある都道府県で買いたいとか、事業拠点をお持ちの拠点で買いたいとか、そういったニーズがございますので、相応に使いやすいインターフェースとさせていただいているという状況でございます。
では、次のページもお願いいたします。こちらが詳細画面になりますけれども、地図上での表示や、レジストリのID、在庫量も含めて詳しく見られるようになっておりますので、簡単に御紹介をさせていただきました。
では最後のページですか、次のページをお願いいたします。取引及び決済の流れに関しましては、基本的には東証様が先ほどおっしゃっていたようなプロセスを経ている形になります。我々も、買手のお客様と売手の方々の間に介在することによって、それぞれの決済のリスクを低減する形としております。クレジットの売手の方々が仮に移転が行わなかった場合、買手の方々は資金決済を行われません。一方で、実際にお金が支払われないというときにはクレジットの移転は行われませんので、この点については一定担保されているという形で事業を運営しているところでございます。
私どもからの御紹介は以上になります。御清聴ありがとうございました。
【根本座長】
どうも御説明ありがとうございました。それでは、続きましてenechain、野澤様、お願いいたします。
【野澤様】
enechainの代表の野澤です。本日は金融庁様主催の検討会ということで貴重なお時間をいただいて、ありがとうございます。早速始めてまいります。次のページ、よろしくお願いいたします。
本日のアジェンダです。今回大きく3章構成にしておりまして、1章では我々が何者かという話を差し上げて、2章では至近の環境価値の取引の需給状況や流通環境についてご説明差し上げます。3章では、趣向を変えて、事業者保護に関する取組をテーマに、主に電力市場を運営する中で見えてきた考察をご紹介差し上げたいと思います。15分ほどお付き合いいただければと思います。
まず、4ページです。弊社の概要です。我々は創業6年目のベンチャー企業でして、主に卸電力や環境価値を取引する卸マーケットプレイスを運営している事業者になっております。
次に、6ページです。電力では、eSquare Liveというリアルタイムで取引ができるマーケットプレイスを運営しておりまして、ここに300社ほどのエネルギーの事業者に参加いただいて、日々取引をいただいております。プライマリー市場とセカンダリー市場を運営しておりまして、プライマリー市場はJERA様や北海道電力様などにご活用いただいており、経済産業省側の規制が関係してくる市場の運営もしております。また、プライマリー市場で取引された商品や小売電気事業者間の需給バランスを調整する二次流通取引を行うセカンダリー市場も運営しております。
次に、7ページです。エネルギー決済事業もやっておりまして、三菱UFJ銀行様とジョイントベンチャーを組んで、電力の現物取引と、それから先物取引の決済事業まで手がけております。
次に、8ページです。こちらで電力事業は最後のスライドです。我々の強みとしてよくお言葉をいただく3点をまとめております。1点目は先ほど申し上げた顧客基盤と流動性です。2点目はマーケットプレイスの開発を全て我々は内製化している点です。これはマーケットプレイス運営において、止めてはいけない、止まってもすぐ回復するということは非常に重要ですので、テクノロジーにはフルコミットしています。3点目は、経済産業省の制度設計にコミットして、先ほど申し上げたような規制対応に対応していることも強みと考えております。
次に、13ページです。本検討会に関連するGX事業をご紹介いたします。
まず、GX業界はこれから盛り上がっていくと思っておりますが、大きく3つのフェーズに分けて弊社サービスをご紹介します。まず、GXについて知る。それからCO2の排出量を可視化して削減の計画を策定する。最後にCO2の排出量の削減をします。我々はこの最後のCO2排出量の削減フェーズにJCEXというサービス名で取引所を運営しております。先ほど、事務局様からもご説明があったアメリカのXpansiv様と提携しておりまして、後ほど詳しく御説明差し上げたいと思います。
次に、14ページです。JCEXの概要になります。取扱商品はあらゆる国内外のJ-クレジットから非FIT非化石証書、それから海外ボランタリー・クレジットを売買できます。累計の取引高は約100万トン弱で、参加者は非常にオープンに募らせていただいております。反社チェック等のKYCは弊社内で実施しております。
14ページ左側にJCEXのUIのイメージを載せておりますが、リアルタイムで取引ができるザラ場の取引所を運営しております。
次に、15ページです。環境価値の取引所を運営する意義をまとめております。大きく2つあると思います。相対取引と比べて取引が楽で、取引コストが安いという点と、品質と価格の透明性が取引所に担保されている点、この2点が大きいと考えています。
その中でも、JCEXの強みを、16ページに記載させていただいておりまして、4つあると思っております。まず、流動性があるということと、品揃えが豊富で、国内外のあらゆる商品を取引できるという点です。次に、質の担保のところでは、認証情報と連携して、ちゃんと該当する商品があるかといった観点や、商品自体の品質を担保している点です。それから、創出地域や由来となる電源種別を取引成立前に確認できることもポイントです。
最後に、非常に多くの事業者に興味を示していただくものがデータサービスです。価格の動向は、我々の取引所でできた取引実績を基に、毎週の価格動向を電気新聞に掲載いただいております。主要な審議会内容のレポートなどの制度情報の提供も行っており、取引所に付随するサービスも好評いただいております。
次に、17ページです。Xpansivさんとの業務提携の内容になります。簡単に言うと、我々のJCEXとXpansivのCBLという取引所がAPIで連携して、双方向で取引ができる取組みになります。
日本企業にとって、将来的に需給が逼迫化すると、ボランタリー・クレジットも盛り上がっていく必要があります。その中で、ボランタリー・クレジットの中では高品質なCCP適格の商品を安く大量に買えるというメリットがあります。うまい、安い、たくさん食べられる牛丼みたいなバリュープロポジションになりますが、将来を見据えた上で今からこのような仕組みを整備してご提供しております。
ここまでが我々の事業とJCEXの概要でございます。
次の章から、我々が環境価値の取引所運営をしている中で見えてきた需給環境の話や、流通環境に関する考察をご紹介できればと思います。
次に、19ページです。まず需給環境ですが、縦軸がJ-クレジット、非化石証書、海外ボランタリー・クレジットの商品ごとに記載しており、横軸が足元の状況と将来の見通しを分けて記載しております。あくまでも、現時点での考察であることだけご留意いただければと思います。
まずJ-クレジットです。J-クレジットは、先ほどの東京証券取引所様の資料にも、価格が上がってきていることを示すグラフがありましたが、まさに、需給がタイトになってきている印象を持っております。しかし、これも商品によります。森林系や農業系の需要はあまり伸びていないですが、それ以外の商品については需要が上がってきており、供給が不足してきている状況が顕在化しています。特に今後、GX-ETSのフェーズ2で最大で年間需要が3,000万トンといった見通しも出ているため、より需給はタイトになっていく可能性が高いと感じています。
一方で、非FIT非化石証書については、J-クレジットと反対の状況でして、供給過多になっております。これは高度化法の対象事業者が限られていることも一つの要因です。相対取引では、JEPXさんの入札最低価格の0.6円を下回る水準で約定することが常態化しています。ただ、将来的には高度化法対象事業者の目標水準を高めていく方針は示されておりますので、需要がより追いついていくことが期待されると考えております。
最後に海外ボランタリー・クレジットです。これは足元では需要が限られている状況です。最も大きな要因は、日本での用途が限定されていることかと思います。また、品質面で課題があることも間違いないと思っております。今後、J-クレジットや非化石証書における需給環境のタイト感が増していく中で、供給不足の代替案としても考えられます。国内の環境価値で賄えない状況が出てきたら、GX-ETSの適用要件次第ですが、海外ボランタリー・クレジットへの需要も増加する可能性はあると考えております。
次に、20ページです。こちらは流通環境です。取引所を運営する中で課題は見えてきておりますので、商品ごとの課題をハイライトした形で記載しております。
J-クレジットは、海外と違いまして、取引に関係するオペレーションがマニュアルにならざるを得ない状況になっています。ゆえに、取引の自動化はなかなか進んでいかず、GMVがキャップされていることがあると感じています。最も大きいと考えていることは、クレジットの移転手続に係る認証周りのAPIが公開されてないことです。この移転の手続が済まないと、最終的には約定しないことになるため、マニュアルの取引オペレーションになってしまうことが課題と感じております。
非化石証書は制度的な話になります。JEPXさんのオークションは、制度設計上、今は四半期に1度に限られております。また、非化石証書は転売制約もございますので、セカンダリーマーケットが存在し得ないということで、取引参加者側での細かい数量調整ができないことが課題になっていると感じます。今後の制度設計の動向次第では、セカンダリーマーケットが盛り上がっていく可能性はあると考えております。
最後、海外ボランタリー・クレジットです。こちらは日本と異なり、レジストリのAPI等も全て公開されています。我々が提携しているXpansiv様もですが、取引が全て自動化されており、即時に執行されることがポイントになっていると思います。
それから、東京証券取引所さんや事務局からの説明にもありましたが、現物のみではなく、海外では先物取引も活性化していることは日本の流通環境と少し違う部分と感じております。
J-クレジットと海外ボランタリー・クレジットにて申し上げた、取引関係のプロセスについては、次の21ページでも触れております。海外の一般的な取引プロセスにおいて、買手、売手とシステムがどのように連携しているかを記載しておりますので、参考にしていただければと思います。
最後に3章になります。23ページです。事業者保護に関する取組についてご紹介したいと思います。この検討会の趣旨の一つとして、投資家保護、事業者保護という言葉も挙がっておりましたので、足元の話と将来の話を分けてご紹介します。足元はどちらかというと現物取引がメインになりますので、現物取引の事業所保護の視点をご紹介します。将来については、我々は電力先物市場も運営しておりますので、この先物取引における、主に市場監視の観点で我々の取り組みをご紹介したいと思います。
24ページは足元の現物取引の内容になります。今、相対取引において事業者が負っているリスクは何かと考えると、売手からすると、約定したのにお金が支払われないみたいなところです。買手からすると、品代を払ったが、商品が届かないみたいなリスクがあります。
それから、これらのリスクを解消するために、売手と買手の間に取引所が入る形で我々も考えておりますが、仮に取引所が破綻したときに資金回収ができなくなるという観点もリスクの一つと思っております。スキーム構築を現在進めているところですが、取引所が取引の間に入ることに加えて、信託銀行に入っていただいて、商流と金流を担保することに取り組んでおり、さらにこの事業者保護の仕組みは改善していこうとしております。
次の25ページは、将来の先物取引が開始された以降の話です。この資料は昨年の今頃、ちょうど経済産業省の電力先物の活性化に向けた検討会委員をやっている際に、まさに同じ資料を出して議論した内容ですが、左側に電力先物取引における学びを書いております。市場規模が小さい段階から売手や買手に負荷の高い監視をどんどん敷いていくと、どうしても取引参加者が嫌になってしまい、市場が拡大しづらくなってしまいます。世界的にはこのような事例は多く起こっておりますので、市場の拡大フェーズでは、胴元の取引規模の大きな市場をしっかり監視しましょうという内容になります。では、市場運営者として何をやっているのかという話になりますが、こちらは右側に記載しているとおり、予防策と事後検証策という2つの視点を大事にしております。
次のページに、より詳しく記載しておりますが、予防策というのは、不正を止めることが重要です。市場濫用の悪いストラテジーにウォッシュ、見せ玉や馴合等がありますが、こういった市場濫用のストラテジーをアルゴリズム化して、市場濫用の疑いがある行動を検知する、抑止するというテクノロジーを既に導入しています。加えて、AIを使って、不正検知の精度を継続的に最適化していくことをやっております。
事後検証についても、電力事業で既に着手しております。端的に言うと、取引所のアクセスログを全て取ることをやっており、これはミリ秒単位で全てのアクセスログを取っております。電力では、内外無差別規制という発販分離に関する規制がありますが、規制機関である電力・ガス取引監視等委員会に、我々は全てのログを報告して、事後検証をサポートしております。
こちらの将来の話は、環境価値取引においてはまだまだ先の話かと思いますが、本検討会の趣旨を考えて、ご参考までにご紹介させていただきました。
以上、弊社からの発表でした。御清聴ありがとうございます。
【根本座長】
どうも野澤様、御説明ありがとうございました。
それでは、本日欠席あるいは御退席になられたメンバーがおりまして、事前にコメントを預かっておりますので、事務局にて代読をしていただきたいと思います。お願いします。
【森サステナブルファイナンス推進室課長補佐】
事務局でございます。
まず、前半部分のみ御参加いただきました髙梨メンバーより次のコメントを預かっております。事務局資料の「御議論いただきたい事項」についてのコメントになります。まず、こちらの1点目、取引の活性化の観点等について次のコメントをいただいております。読み上げます。
まずは発行量、流通量を増やしていく必要があると考えます。J-クレジットの2024年8月時点の累計認証量は1,075万トン、JCMは2023年8月時点で累計8万トン。それぞれ2030年の目標は、J-クレジットは1,500万トン、JCMは1億トンではあるものの、2021年度の日本の温室効果ガス総排出量は11億トンであることと比べると、クレジットの発行量は圧倒的に少ないため、取引を活発にするためには、まずは発行量及び流通量を増加させる必要があると考えます。創出量を増やすためには、発行手続の効率化や登録・発行までの期間短縮等、創出側及び審査側双方のプロセスの効率化、デジタル化を行い、負担軽減をすることも重要と考えます。
次に、GX-ETSの第2フェーズにおいては、現時点ではJ-クレジットとJCMのみを適格クレジットにするという議論になっているようですが、2022年6月28日に、「カーボンニュートラルの実現に向けたカーボン・クレジットの適切な活用のための環境整備に関する検討会」から公表された「カーボン・クレジット・レポート」では、「結果的にインベントリに反映されるプロジェクトから創出されたカーボン・クレジット及び海外で実施されパリ協定に基づく国際移転の調整(相当調整)がなされたカーボン・クレジットについては、その削減量が我が国のNDCにも貢献するカーボン・クレジットとして整理できる」と記載されています。
本記載及びJ-クレジット、JCMクレジットの発行量、流通量を踏まえ、JCMクレジット以外のパリ協定に基づくクレジット(6.4条クレジット、相当調整付のボランタリー・クレジット等)についても、GX-ETSの取引の対象とすることについて、検討の可能性を残していく必要があるのではないかと考えます。
最後に、GX-ETSが始まると、価格指標が立つものという理解をしておりますが、取引の活性化のために、欧州等の海外市場のように価格指標があることも必要と考えます。価格指標は、市場の需給状況を明確にし、市場参加者にとって市場動向が理解しやすくなり、企業や投資家が合理的な取引を行うための基盤が整います。また、価格が安定し、将来の予測可能性がある場合、参加者が積極的に取引を行うため、取引量が増え、市場の流動性が向上すると考えられます。
最後に、価格指標は、先物やデリバティブ市場の基盤となり、企業が炭素価格リスクをヘッジする手段を提供します。これにより長期的な投資計画が立てやすくなります。
以上が1点目についての髙梨メンバーからのコメントでして、続けて、「御議論いただきたい事項」2点目についてのコメントをまた読み上げます。
前回もコメントさせていただいたとおり、利用者、仲介者、販売者の知識レベルの向上努力は必要不可欠で、投資家・顧客保護の観点からは、グッドプラクティスの積極的な提供、また、政府が検討している排出量取引制度以外の取引についても一定程度のモニタリングも必要で、カーボン・クレジットの売買や使用に対するガイドラインやルールの検討も必要と考えます。
また、カーボン・クレジット提供者(金融機関、商社等)、また、それに付随するサービスの提供者(プラットフォーム事業者、評価機関等)は、利用者が理解、納得できるような説明をしていくことも重要です。
以上、髙梨メンバーのコメントでございました。
続けて今日御欠席の吉戒メンバーからもコメントを預かっております。御議論いただきたい事項の2点目についてコメントをいただきました。今から読み上げます。
優先的に取り組むことが望ましいと考えるのは、「情報公開」と考えます。需要家の中には、クレジット創出プロジェクトの「具体的な内容」や「創出地域、いわゆる地産地消」を重要視する需要家も多く、カーボン・クレジットを購入する際、その取引が「購入目的」と合致しているかを評価するために、詳細な情報が求められるものと思います。取引所を通じた取引では、その透明性が大きく制限され、個別の詳細情報がマスキングされることが多く、流動性を高めるメリットがある一方で、需要家にとっては、購入判断に必要な情報が不足し、選択の自由度が低下するのではないかと懸念します。
その点、マーケットプレイス型の相対取引であれば、プロジェクトごとに内容を吟味し、取引できるという利点があります。カーボン・クレジットの活発化に向け、適切なバランスで取引所の情報公開のルールが設計され、取引所以外の取引形態(マーケットプレイス型など)との補完・共存がなされることが必要ではないでしょうか。
以上でございます。
【根本座長】
ありがとうございました。今のはコメントということで、特に答えは要らないということですね。
これまでの事務局の説明、またプレゼンターの皆様のプレゼンテーションを踏まえて、御意見をいただければ幸いです。プレゼンターの方々へ御質問がある場合は、どなたへの御質問か、また、特に御回答が不要な御意見である場合は、その旨を併せてお話しいただけますと幸いです。御発言を希望される方は、Webexのチャット機能で全員宛てに名前を記入していただければと思います。そちらを確認の上、座長から指名させていただきます。では、よろしくお願いいたします。
では武川様、河村様、それから江夏様ですね。3名の方、続けてお願いしたいと思います。では、武川様からお願いいたします。
【武川メンバー】
武川でございます。ありがとうございます。これは質問ではなくて意見になりますが、御議論いただきたい事項についての意見になります。
まず、2つここで掲げられているんですけれども、前提として、カーボン・クレジットという言葉がありまして、カーボン・クレジットの流通市場という言葉があるんですが、この議論をするに当たっては、排出枠と排出枠以外のカーボン・クレジットを区別して議論したほうがいいのかなと考えております。というのが、GX-ETS第2フェーズの排出枠を今、念頭に置いていますけれども、これについては一部追加が非常に強く当てはまって、公正な価格形成というのは非常に強く意識する必要があると考えています。
そのため、GX-ETSの第2フェーズの制度設計では、排出枠については、取引所集中義務を課すということが検討されております。取引所集中義務があっても、相対取引が一切禁止されるわけではもちろんないですけれども、取引所類似の施設の開設というのは禁じられるということになると思いますので、そこについては、非常に価格の公正な形成というのを意識して制度設計が既に行われてきているところですので、そういった前提で議論をしていくということが望ましいと思っております。これが1つ目です。
2点目として、排出枠以外のカーボン・クレジットについては、これは本日の御説明からも分かるとおり、様々なニーズがあると理解していまして。必ずしも一物一価ということがストレートには妥当しないのかなと考えております。ということで、これらについては、市場のようなもの、あるいはマーケットプレイスのようなもの、いろんな形態の取引プラットフォームが存在し得るだろうと考えているところです。
こうしたカーボン・クレジットの取引プラットフォームについては、課題であったり、優先取組事項として2点申し上げたいと思っています。
1つ目は情報公開が非常に重要だなと思っていまして。一物一価では必ずしもなく、マーケットがばらばらになりがちであるという状況であるからこそ、取引情報や価格情報が開示されるということが望ましいだろうと思っていまして、そこは非常に重要な点じゃないかなと考えています。
2点目ですけれども、もう一つ優先的にやったほうがいいかなと思うのが、論点整理をしたほうがいいんじゃないかと思っていまして、この種の市場であったりプラットフォームについて、どんな論点があるのかという、そこをまず理解したほうがいいのかなと思っています。例えば取引参加者について、情報の非対称性がないのかとか、十分理解して取引できているのかどうかといったこと、あるいは決済についてプラットフォーム参加者がどのような決済リスクを負っているのか。間に入るという話が今日ありましたけど、間に入ればその間に入った人の信用リスクを負っているということだと思いますので、そこがそういうことなのかという議論であったり、あるいは信託を使って倒産隔離したほうがいいんじゃないかとか。そこが論点だということの認識共有が必要じゃないかと。
それから、取引プラットフォームを主催している者が、プラットフォームの運営以外にいろんな事業を行っている場合には、そこに利益相反がないのかとか、そういった論点整理がまず必要じゃないかと思っていまして。そういったあたりの議論を進めていくことが望ましいのではないかと考えております。
以上意見でございました。ありがとうございます。
【根本座長】
ありがとうございます。御意見として承りました。それでは河村様、よろしくお願いします。
【河村メンバー】
改めまして三菱商事の河村でございます。本日よりメンバーとして参加をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。私からも意見という形でコメントをさせていただければと思います。
まず、クレジット市場の活性化というポイントについてですが、とにかく安心して売買できる環境を整備するということが非常に重要で、既に言い尽くされている内容かと思いますけれども、インテグリティをしっかり確保していくということが何よりも重要なこと、一丁目一番地かなと考えております。
実際に需要家の皆様と対峙しておりますと、グリーンウォッシュ批判が怖いという声を引き続きいただきますので、市場に入る関係者一同がしっかりした環境を整備していく、そこに不断の努力を継続していくということが重要になっていくかなと思っています。そういった意味でもIOSCOが提案されているグッドプラクティス内でも、Integrity of Tradingという点に個人的には重きを置いておる次第でございます。
トレーディング事業に携わる商社としまして、顧客保護の観点という部分には最大限の注意を払っておりまして、我々どもが取引を実際させていただく際にも、第三者機関の格付けをしっかり確認して、一定以上のクレジットしか扱わないというような自主規制を設けていたりしますので、そういった意味で安心してお客様に取引をいただけるという環境の整備というのは非常に重要かと思っております。
一方で、今回御説明をいただいた取引所の活性化という意味では、カーボン・クレジットのコモディティ化であったり、規格化、品質の定義というものが重要になってくると考えられます。実際に今日御説明いただいた皆様からもありましたけれども、取引所もマーケットプレイスとして、そういった部分を既に対応されていますので、その点については、現状の方向性をさらに深化させていく、強化させていくということだと思いますけれども、一方で、需要家のニーズもかなり細分化、多様化しているという事実がありますので、そういったものに、マーケットの声に耳を傾けて、一つ一つ丁寧に対応していくということが重要かなとは思います。
また、我々はクレジットのトレーディングに加えて、投資家としてクレジット創出側にも回っているということがございまして、そちらの観点でいきますと、先ほども御指摘がありましたけれども、流通量・供給量をさらに増やした上で、しっかり売れるという確証を持てるかという部分も重要になって参ります。
そういった意味では、今回御説明いただいたようなマーケットプレイスや取引所が活性すること、すなわち需要家がしっかりそこについていっていただけることというのも重要になってくると思いますので、供給サイドから見ると、そういった部分、安心して投資が実行できるという環境の整備も重要になってくるかと考えております。
以上でございます。
【根本座長】
どうもありがとうございました。それでは江夏様、お願いします。
【江夏メンバー】
ありがとうございます。御質問ではなく、こちらの「御議論いただきたい事項」に対する意見を述べさせていただきたく存じます。
まず、1点目につきまして、大前提として、取引の活性化は需要と供給、両方が増えるという必要があって、どちらか片方でも進まないということが言えるかと思います。それから、例えばマーケットメイカーをしっかりと機能させる、そのために経済的なインセンティブがあると、流動性が低い状況でもその取組が進む可能性があるのではないかと考えています。例えば韓国などでは、マーケットメイカーに対してインセンティブを提供するような仕組みが存在しているそうです。
また、enechain様の御説明でも指摘がございましたとおり、現在、取引が日本で限定的なのでマニュアル対応のシステムになっていると思われます。限られた人員の中でマニュアル対応となると、管理のための手間やコストがかなり負担になるとみられるため、適切な体制の構築が大切かと思います。それとともに、複数の取引プラットフォームが存在するということで、今日も御紹介いただきましたが、全体像を俯瞰できるような仕組みの構築も重要と考えております。
2つ目の論点につきまして、改めてIOSCOの21のグッドプラクティスを読み直してみましたが、どの論点もチェックポイントになると感じたところです。ただ、これまでの検討会における議論に加え、サステナブルファイナンス市場で信頼性が重要視されていることを踏まえると、標準化、ガバナンスとリスク管理といった点が特に大切だと思っています。
それとともに、顧客の適合性の考え方が、例えば業態、金融機関であるとか商社などによって異なっているということに鑑みますと、参加企業の業種によって、かかるルールに差がないような形で統一されるということも大切と考えています。
また、直近では米国の新政権の発足に伴い、市場の様相が大きく変化するという可能性も否めないと考えております。その意味で、状況に応じて優先分野を見直すことも大切かと考えています。以上です。
【根本座長】
どうもありがとうございました。それでは、長島様、小圷様から御質問がおありということなので、その順番でお願いいたします。
【長島メンバー】
ありがとうございます。ENEOSの長島でございます。enechain様への質問の前に、事務局資料P18の1点目に対して弊社から一言だけコメントがございます。
弊社はクレジットの創出事業者であり、償却する購入事業者でもありますが、クレジットをGX-ETSの中でどのくらい使えるかというのは、私たち排出事業者にとって非常に興味があります。先ほど髙梨委員からもご意見がありましたように、適格クレジットとして今後どのようにその範囲や創出量が拡大していくのか。さらに、事務局の参考資料にもありましたけれども、その排出量に対して、実際何%ぐらいをオフセットに使えるのかという見込みは、早いタイミングで、GX-ETSの制度設計の中で明示されると、需要もどんどん伸びていくと考えてございます。これは私からの意見という形になります。
あとenechain様へ質問ですけれども、ちょうどenechain様の資料で、クレジットと証書の2つの話が出てきておりまして、その論点整理という意味で、そもそもクレジットと証書の違いというところも一つぜひレクチャーいただきたい。また最近、海外を見渡すと、電力の証書だけではなく、航空燃料のSAFの証書や、国内でもバイオ燃料や合成燃料の証書等のマーケットがつくれないかという話も出ている中で、証書の議論やマーケットが今後クレジットの市場に与える影響について示唆がございましたら教えていただければと思います。以上です。
【根本座長】
ありがとうございました。小圷様、お願いいたします。
【小圷メンバー】
ありがとうございます。地球環境戦略研究機関、6条センターの小圷と申します。本日は非常に貴重な御発表等いただきまして本当にありがとうございます。私から、Carbon EX様、enechain様に御質問と、1点だけ私からも少し意見を述べさせていただければと思います。
一つは、実際にこの取引をされるということで、実務的な質問になってしまうかもしれないですけども、Carbon EXさん、enechainさんのほうで、例えばボランタリー・クレジットを、日本企業とそのボランタリー・クレジットの供給側とで仲介される際に、これは実際に、例えばVerraさんとか、Gold Standardさんとか、それぞれそういった海外のボランタリー・クレジットを供給している認証機関さんがあると思うんですけども、そこの間に入る形でクレジットのやり取りをされるのか。例えばAPIを通じてXpansivと連携していますといった際に、Verraの例えば登録簿で実際にクレジットを発行されていくと思うんですけども、そこにCarbon EXさんとかenechainさんが、プロジェクト参加者として入って、クレジットを移転して、それを仲介されるのか。それとも、もっと本当に自動的に、ある日本企業さんから紹介があって、それをVerra、Gold Standardさんのクレジットの間をつなぐというような、例えば口座をその企業さんが持つようなことを仲介されるのか。その辺りを具体的にどういう形で仲介をされているのかというところを教えていただけるとありがたいと思いました。
その質問の趣旨としては、基本的になるべくこういったクレジットの取引を簡単にしていく、簡素化していくということが企業さんにとっては非常に入りやすいと思いますし、最終的には企業さんはお金を払って、それに対しての見返りとしてのカーボン・クレジットのオフセットとか、実際にこういった形、目的に使ったということが得られれば基本的には十分なわけで、そこに様々な口座をつくらなければいけないとか、いろいろ会計処理しなければいけないとか、そういった実務が入ってくると、大変になってくるところもあるかと思います。むしろそういったところをこういった取引所の皆様が間に入って簡素化していく、やりやすいようにしていく、そういったことが流通を今後高めていけることに寄与するんじゃないかなと思っております。その辺り、実務上どういう形でやられているのかなというところを御教示いただければと。
あと私から、もう少し今後の流通市場の在り方というところで、私も情報公開については、非常に大事な部分だと思っています。このときに、具体的にどういう情報を公開していくべきなのか、こういったところをこういった検討会を通じて整理、あとは統一していくということが非常に重要じゃないかなと思っております。これからも様々な取引所、様々な仲介所、こういったところが出てくると思うんですけども、そういったところで出される情報をなるべく統一していくことで、使う側が必要な情報が得られていくということが今後のまさに流通の安定化にとっても重要です。
特に例えばGXリーグだったらどういう的確なクレジットが使えるのかとか、あと民間でも様々なイニシアチブがあって、どういうイニシアチブに基づいて、民間からクレジットを活用していってカーボンニュートラルというのを説明していくのか、そういったことに必要な情報はある程度特定されているかと思います。
例えば、具体的なプロジェクト名とか、それはどういった国で行われているのかとか、削減量とか、持続可能な開発にどう貢献しているのか、こういった情報ももちろん必要だと思いますし、レーティング機関とかの評価というのも、もちろん企業にとっては参考になるかと思います。価格というのも当然、先ほどありましたように重要な指標になるかと。
これに加えまして、先ほど来もありました、6条に沿って承認されているクレジットなのかとか、どういった目的で承認されているのか、これがNDCに使っていいですよという承認でしたら、もちろんGXリーグとかにも活用していけるクレジットと認識されると思いますし、それ以外の、例えば航空分野のオフセットに向けて承認されたクレジットなのかとか、そのようなどういった情報がしっかりと公開されていくべきか、その取引所で、そういったことが使う側にとって有用なものである必要があると思いますし、そういったものを統一化していくことが今後の流通の更なる活性化にもつながってくるのではないか、また有用性が高まってくるんじゃないかと思っておりますので、その辺りが重要な点と思っております。以上です。
【根本座長】
どうもありがとうございました。
私からも質問させていただければと思います。質問の前に、皆様から、信頼性とか、指標となる価格の重要性透明性など非常に重要な指摘をいただきまして、全くそのとおりだと思います。今、小圷様のおっしゃったことも関連しますし、武川様もおっしゃったことでもあるんですけど、排出枠の取引と、ボランタリーなクレジットの取引と、いろいろ性格が違うところもあると思うので、ある程度その場合分けというんですか、そういう整理をしていただければと思いました。
あと、皆様のおっしゃったことに関連して、流動性とかその取引量についてです。今後、市場のいろいろな整備によって、自然にそこは伸びていくとは思うのですけれど、取引所のいろんな利便性とか、システムの堅確性とか、そういった面で、それがさらに活性化につながると思いました。そういう観点で、一つは松尾様にお伺いしたいんですけれど、売買高の中でかなり一部のものが非常に増えていて、例えば森林とかはそうでもないとか、その違いというか、森林とか農業由来が伸びない理由というのを教えていただければと思いました。
あと、米国のボランタリーの取引所がリアルタイムでDVPであるという御説明があって、日本の場合、もう少し決済期間が長いと。いろいろ信用リスクの削減をやっていらっしゃるとは思うんですけれど。それでも多少限界があったり、取引所がリスクを捉えなければいけないという面があるようです。取引決済の、早期化はどんなふうにお考えなのかということです。
あと、他の方からも御指摘のあった自動化とか、あるいは証書の電子化とか、これは取引所さんだけの問題ではないと思うんですけれど、この辺りは今後どんなふうに進んでいくと思われるのか、もしお考えがあれば伺いたいと思いました。
あと、竹田様に御質問ですけれど、海外のボランタリー・クレジットを日本でも販売されていて、非常にいいお取組と思います。別のプレゼンターの方によると、日本で需要が少ないというような感じだったんですけど、どんな方が今後、需要者として伸びていくと思われているのかというのが一つです。
あともう一つは、御社ではSBIホールディングスさんの、1つのグループの会社と言っていいんでしょうか、株主がSBIさんですけど、こういった事業者さんからの期待というんですか、どんなことを事業として求めていらっしゃるのか。この事業の採算性といいますか、その他の事業などとシナジーでマネタイズというか、収益を上げていかれるのか、それとも単独として十分その採算性がある事業なのか、もしよろしければその辺を教えていただきたいと思いました。
あと、2回目のときにブロックチェーンの活用、それによるトレーサビリティーとか、いろいろな安全性とか、そういう御説明もいただいていました。この辺りについてどうお感じになるのか。お三人の方にコメントをいただければと思いました。以上でございます。
では長島様の御質問からお願いします。そして小圷様、根本ということでお願いします。
【野澤様】
enechainの野澤から回答させていただければと思います。
長島様の質問回答の前に、江夏様からもコメントをいただいたので、簡単にご回答いたします。プロセスがマニュアルで大変ではないかというお話をいただいて、まさにそうですという回答になります。特に、J-クレジットの認証情報やAPIが仮に公開されていると、ステータス確認や移転も全てAPI経由でできるようになりますが、現状はそれができないという状況です。
定期的に認証情報のエクセルファイルが事務局HPにアップデートされております。以前に、既に認証されていて確実に商品があるものの、事務局HPのエクセルには反映されていない事例がありました。我々は定期的に出てくるエクセルファイルの内容を参照して、該当する商品があるかを確認しに行くシステムを組んでいますが、エクセルファイルに該当商品の記載がない場合、売手が売りたいという要望があっても、取引所としては受け入れられないという状況になります。実際は3,000トンの取引が成立したはずが、確実に認証されている1,500トンしか取引できない事例がありましたので、APIが整備されてくるとこれらの課題も解決できると思います。その結果、海外のように、取引所だけではなくて、あらゆる事業者がAPIを連携して取引の自動化をしていくことができるようになると考えております。
次に、長島様の質問で、証書とクレジットの違い、それから証書が増えた場合にカーボン・クレジットの市場とどういう関係性になるのかというご質問に回答いたします。証書とクレジットの違いは、使い方としては実務上同じような形で使うものになります。概念としては、カーボン・クレジットはGHGの削減量で、証書はあくまでも環境価値を切り離したものと理解はしておりますが、実務上の活用方法は同じと考えております。
取引所の関係性がどうなっていくかという観点は難しいところですが、今は圧倒的に供給量の多い電力の非化石証書と、例えばJ-クレジットの再エネ系商品を比べると、制度設計の違いもございます。先ほど申し上げた、非化石証書は転売ができないことや、翌年に持ち越す等の買い置きが難しいです。その点で、制度設計の違いによって、J-クレジットの価値が高くなっていると感じています。このような制度設計の違いから、本来は由来が同じものですが、違う価格になることも起こってきています。統一的な指標や指針があると、一物多価のようなことは起こらないと考えています。
また、GHGプロトコルへの使用可否や、審査期間が長い短いみたいな話も事業会社にとっての使いやすさに影響していると認識はしております。この証書はこういった活用方法で、J-クレジットは別の活用方法といった違いが多いと、事業者からすると使いづらさは出てきますし、価格が分かれることが起きてしまうのではないかと考えております。
次に、小圷様からいただいた、海外のVC取引において、どのように売手と買手の間に入っていくかについて回答します。弊社の話をさせていただくと、Xpansiv様とまさに論点整理しているところですが、取引の間に入っていく方向で考えようと思っています。
というのも、海外の取引所の取引はシビアでして、米ドルの口座に、事前にデポジットを積んで、お金がないと取引ができないような形になっており、取引もリアルタイムで即断という形式になります。外貨建てでデポジットを積んでいくことは、取引に慣れてくるとできないわけでもないと思いますが、いきなり対応していくにはハードルが高いという感覚は持っています。
そこを、我々のJCEXでは、日本の事業者が入りやすい仕組みにアレンジしていくことを今協議しております。
私どもにいただいた質問はこれで以上かと思いますので、一旦回答を終了します。
【根本座長】
私の言い方が明確じゃなかったようで、会社様に分けてお願いしたいと思うので、私からは、ブロックチェーンの活用についてということで、enechain様にもお願いします。
【野澤様】
我々は正直ブロックチェーンを取り入れていないので、申し上げづらいのですが、一般論としては、認証情報や取引情報を追跡できることがメリットと捉えています。主に認証機関等で活用していくことは今後あり得ると考えています。
特に国際取引が増えていくと、取引を追跡していくことも難しくなっていくと認識しております。我々もエンジニアを社内で80人抱える組織ではありますが、ブロックチェーンはあくまで技術の一つと捉えております。ブロックチェーンでないと実現できないと考えてはおりませんが、認証情報や取引情報を追跡していく観点では親和性は高いと考えております。
【根本座長】
どうもありがとうございました。それでは、Carbon EX様、お願いいたします。小圷さんの質問と私の質問とでお願いいたします。
【竹田様】
それではCarbon EXから回答ということで、まずは小圷様からの御質問に回答させていただければと思います。こちらはCOOの陰山から回答させていただければと思います。
【陰山様】
Carbon EX、COOの陰山です。御質問いただき、ありがとうございます。
現状の我々のボランタリー・カーボン・クレジットの取扱いの方法としては、当社が各認証機関の口座を保有しておりまして、基本的には最終需要家様との間に立って、償却処理及び移転をしているというのが現状でございます。
こちらはお客様に応じて様々なニーズがございまして、先ほどのコメントもございましたが、より多くのお客様がボランタリー・カーボン・クレジットの売買をしていくに当たって、必ずしも最終需要家様が口座を持っていないとできないとなってしまうと、そこに制限が一定かかってしまうというところで、口座を有していないお客様でも、我々のほうで代理で無効化を行うことで、実質売買に御参加いただける、実際償却処理をすることができるということで、そういった体制を組んで今やっているというところでございます。
【竹田様】
続きまして、根本様からの御質問が幾つかあったかと思いますが、私のから3点ほどお答えさせていただければと思います。
まず1点目、海外のボラクレに関して、実際に御購入いただいているお客様がどういったニーズとか、どういった着眼点で買われているかというところ、それぞれ特徴はあるかと思うんですが、幾つかケースとしてあるのは、まず価格が安いというところでございまして、由来やビンテージ、場所によって価格はかなり幅広い状況ですが、安いものは、日本のJ-クレジットに比べても10分の1といったものもございますので、価格というのが挙げられます。
または海外、グローバルに事業を展開されているような会社様で、自分たちが事業を行っている場所でひもづくカーボン・クレジットが欲しいというようなケースもございますので、こちらは先ほど申し上げた地産地消のグローバル版といいますか、そういった観点で特定の国々、特定の由来を指定して買われるお客様もいらっしゃるということ、この2点が大きなニーズとしてあり得るのかなということで挙げさせていただいております。
2点目に関してですが、こちらは事業者からの期待というところ、SBIグループとして、既存の事業との接点がどれぐらいあるのか、収益性はどうなのかという御質問だったかと思います。全てお答えできるとは限らないですけれども、私どもも、SBIグループの中で様々な事業を行っておりまして、個人向けのネット金融サービスに加えて、法人様向けの金融サービスも行っておりまして、そういったところ、様々な商材等を取り扱っている状況でございます。
また、グループ内にはSBI新生銀行もあり、SBI新生銀行はサステナ関連の組織もございますので、サービス・商材としてカーボン・クレジットというのはニーズを掘り起こしていけたらと思っています。
カーボン・クレジット市場自体はまだ発展途上かつ、これから伸びていくというところだと思いますので、その他のサービスとのシナジー等も生かしつつ、マーケットで存在感を発揮していきたいと考えています。
3点目、ブロックチェーンに関して、SBIグループもブロックチェーンに関する取組を行っており、金融ですと、為替のところでもブロックチェーンを一部実用化して取組を行っています。カーボン・クレジットに関しても、権利の移転が発生するところをブロックチェーン化したらどうなのかという議論は、アイデアとしてはあるかと思います。一方でそれを実需というか、形に落とし込むというのは相応にハードルがあるのではないかと思っております。
カーボン・クレジットに関しては国・地域ごとにルールとか基準が異なるということと、日本においてもJ-クレジットとボランタリーそれぞれあるということで、そこを全て統一して、裏側を全部まとめるというのはハードルが高いのではないかと考えているところでございます。とはいえ、何かしらの形で活用できないかということは日々考えているところでもございますので、そういったところを課題として整理しつつ、今後取組を行っていきたいと考えているというところでございます。
Carbon EXからの御回答は以上でございます。ありがとうございます。
【根本座長】
どうもありがとうございました。では松尾様、お願いいたします。
【松尾メンバー】
東証、松尾でございます。それでは、まず根本座長の御質問の1点目でございます。私どもの市場では再生可能エネルギー電力と省エネルギーが売買のほとんどを占めており、他方、森林や農業クレジットはほとんどできてない、その理由でございますが、一つには省エネルギーと再生可能エネルギーの電力は、これは経済産業省様が昔、プロジェクトの実施に補助金をつけたクレジット、例えば屋根置きの太陽光とかというプログラム型のプロジェクトから生まれてくるクレジットは経済産業省様が取得し、それを毎年毎年、都度都度どんどん払い出していっておりいわば大株主が毎年完全に残高ゼロになるように売出しをしてくれております。つまり、経済産業省様が毎年売出しをするということで、流通市場の中心になっているという理由の一つでございます。 もちろん、創出量がクレジットの中では省エネルギーと再生可能エネルギーの電力が多いということもありますが、やはり売主として毎年、経済産業省様がどんどん売出しをしているため流通市場の中心になっているということでございます。
他方、森林につきましては、私どものような標準化した取引ではなかなかくみ取れない需要、例えば、クレジットを地産地消したい、あるいは本社のある町の森林に貢献したいという場合には、取引所で行っている売買のように、森林クレジットであればどういうものでもいいという需要よりは、この土地の森林クレジットが欲しいという需要のほうが恐らく強いということで、クレジットの需要としては恐らく相対のほうが中心なのかなということでございます。
農業クレジットもそれに近しいところもございますが、資料の7ページにあるように、ちょうど今年の1月に中干し期間の延長、水田の水抜きを早く抜くとかということをするとメタンガスの発生が減少するという方法論、あるいはバイオ炭を畑にまくと、それが吸収源という形で機能するといった方法論が認められ、さらにプロジェクトがどんどん登録され、クレジットの認証もぽちぽち出てきているということで、これは農林水産省様から、東証で農業の売買の区分がないと値段が分かりにくいということで、区分を独立させてほしいという要望を頂きました。そうした政策サイドの要請と、あと実際にプロジェクトの登録とか認証が増えてきたということで、売買の区分を独立させたということがございます。今後、認証量が継続的に増えてくると、ある程度流通市場の3本目の柱になるんじゃないかという期待はございます。
これは今、主に供給側のお話で、森林のほうは需要側も含めて個別のその土地の地産地消にこだわる方もいらっしゃるということですけれども、今、省エネルギーと再生可能エネルギー電力の値段がどんどん上がってきていると、需要が増えていっているということですけれども、再生可能エネルギーの電力は、これはスコープ2のオフセット、厳密にオフセットではありませんが、化石燃料を使った系統電力の消費を再生可能エネルギーの電力の使用に置き換えた形にできるという効果を持つものとして、再生可能エネルギーの電力、太陽光発電に基づいて発行されたクレジットを取得して償却するということで、その置き換えの効果が発生するというのがございまして、こちらの需要が今、定着、伸びていっております。
CDPの報告あるいはRE100を準拠する日本企業がどんどん増えてきておりまして、再生可能エネルギー電力についてはスコープ2のオフセットの需要が伸びてきております。そこでは、どこの電力かというよりは、とにかくCDPとかRE100のオフセットが認められる日本の系統の再生可能エネルギーの電力クレジットであればいいということなので、もちろんクレジットの違いにこだわる方もいらっしゃいますけれども、再生可能エネルギー電力のクレジットであればいいという方が多いということでございます。
省エネルギーのほうは近時値段が上がっておりますが、こちら先程来ご紹介したようなスコープ2のオフセットではなく、既にSHKのオフセットというか、実際の排出量を調整することが使えるクレジットとして国に認められていたと思いますが、さらにSHKの調整係数の公表がガス事業者様の分も増えたことも、さらに、私どもで聞いているところでは、GX-ETSの第2フェーズで、排出量取引の義務化のアナウンスがあってから、J-クレジットの中でそこそこ創出量もあり、再生可能エネルギーの電力とか森林に比べれば比較的割安な省エネルギーのクレジットについて需要が増えてきたということでございます。
長くなりましたが、根本先生の御質問の1点目でございます。
2点目の決済の早期化、合理化、あるいは海外でやっているようなリアルタイムDVPというところは、これは私どももぜひ実現できたらと思います。この点は、ほかの2社様からも言及がございましたように、登録簿のレジストリとAPIで接続をする、あるいは、もう一つの決済のほうの、資金のほうも恐らく銀行さんが提供するAPIとかを使って、私どものほうの資金決済あるいはクレジットの決済のデータをAPIで接続して逆引きするとかということが可能になる、これらが両方可能になれば、恐らくかなりの程度のリアルタイムDVPに近いものができるのではと考えております。
その意味では、取引の効率化も、API接続ができればかなりできるのかなとは思っております。もちろん今まで何回も出ておりますように、ボランタリー・カーボン・クレジットについては、どんどんプロジェクトがいっぱい出てきて、新しく認証されてクレジットが生み出され、どんどん償却されてということで、その認証情報というのか、そもそもどういうクレジットがどのぐらいあるのかという情報についての電子化も必要だというお話がありましたが、私どももそれについては同感でございます。その意味では、ボランタリー・カーボン・クレジットが、排出枠と異なる特性として、そもそもどんなクレジットがあって、どのぐらい認証されて、どのぐらい償却されているのかとか、そういう本当に基礎情報みたいなところの電子化もあったほうがいいのかなとは思っております。
それに絡めて3点目の御質問のブロックチェーンのところでございます。これは普通のボランタリー・クレジットを単にトークンにするだけでは多分ほとんど意味がないのかなと思っております。この検討会でもブロックチェーンの取組を御紹介されている方がいらっしゃっていましたけど、恐らくブロックチェーンをすることの意味としては2点ぐらいあると思いますが、クレジットの種類がすごくいっぱいあって、レジストリもいっぱいあるということがあるので、そういうのを一旦ブロックチェーンにすることによって、証券の世界で言うADRのような、1対1に紐づかない、抽象的なボランタリー・カーボン・クレジットのブロックチェーンをつくるとか、そういう処理が一つあるのかなとは思います。
それと関連して、ブロックチェーンを仕組んでいらっしゃる方が、その裏側で、そこのレジストリと接続をしたり、償却をしたりするという労を担うことになるので、そういう意味では、2点目であった決済の合理化の観点から、ブロックチェーンを一枚かませることで別のものに変換することにより、流通や取引をしやすくするというのはあるのかなと思います。
そのときの課題としては、恐らくクレジットごとに1対1で電子化というかブロックチェーンにするにしても、多数レジストリと1対1で接続するとしてもブロックチェーンで仕組んでも多分コスト的にあまり実は変わらなかったりするおそれがあります。そこで、恐らく標準化する形につまり、考え方としてはJ-クレジットも海外ボラクレもまとめてプールされる、すごい闇鍋みたいな資産プールがありそれを基にブロックチェーンでカーボン・クレジット・トークンを発行するという方法も考えられます。ただし、そうしますと、一体自分は何のトークンを持っているのかよく分からないし、それで償却するというのは、本当にちゃんと償却効果として自分が意図しているものが実現できるのかという課題があるように思います。一つのボランタリー・カーボン・クレジットとしてまとめればまとめるほど、効率はよくなりますが、その反面ボランタリー・カーボン・クレジットに求められている細分化した需要をこなせなくなるというトレードオフがありましてなかなかブロックチェーンは難しいのかなというのが素人なりの感想でございます。以上でございます。
【根本座長】
どうもありがとうございました。大変よく分かりました。
それでは、御質問を希望されているのは吉高様、それから鶴野様ですね。時間がやや迫ってきたので、少し短めにお願いいたします。
【吉高メンバー】
どうも発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
まず、こちらの議論事項につきましては、この市場はそもそも金融市場と違って政策に左右される市場でありますから、流通市場についてということですけども、政策が流動的であると、幾ら市場を活性化しようとしても活性できないということでは、GX-ETSのほうでは、先ほど案内があったように、取引所は一つにする。それから相対取引も認めるし、それからカーボン・クレジットも使えるようにするということでよいと思います、取引所の体制が固まらないと活性化はしないだろうと思います。
一方で、他のプラットフォームも阻害はしないということではあるんですけれども、そうしますと、今日御発表のあったお二方のプラットフォームが一体どうなるのかということは、きちっと整理しておく必要があると思っています。そのときに、こちらでの検討事項としては、まず、ある程度の政策オプションはあると思うので、それに向けて先ほど武川先生がおっしゃったような論点整理をする必要があろうかと思います。
圧倒的に必要なのが情報公開ですので、情報公開に関しましては、具体的に、細かな、どういう情報が要るのかということを整備する必要があると思います。その際に、今日の事務局の御説明の全体の資料では、海外のエコシステムですとか、日本のGX-ETSがありましたが、需要側が今多様化しているので、この需要側について国内で、どんな意思が動いていたり、どんな目的で、どんな金銭取引をしているのかという実態把握をきちっとするというのが必要だと思っております。
もう一回ぐらい会議があれば、そちらのほう、需要側をよく検討しないと、取引所がどうあるべきかというのはなかなか深化して検討できないのではないかとは思っております。そういったことをある程度、網羅的に整理した後に、市場流通というのは結局、転々流通しないと意味がなく、一つ取引ができればいいということではないと思うので、そこも踏まえての論点整理が要るのかなとは思っております。
2番目のことに関しまして、今日の皆さんの御発表の中でもあったことだと思うんですが、様々なクレジットがある中で、金融庁も金融機関がクレジット取引に関与することはオーケーにしているわけですが、金融機関が、どのように、投資家保護の観点から説明をするべきなのかという指針が重要なのかと思っています。
様々なリスク管理、利益相反防止はされていると思いますけれども、もう既に取引が始まっている状態の中では、投資家保護のことをまずは考えなくてはいけない。そこで質問ですけれども、3社に質問をしたいのですが、時間がないので2社だけ、enechainさんとCarbon EXさんにですけど、どのように最終需要者とかお客様に説明しているかということです。その説明の仕方、マニュアル、そういったものについてお聞きしたいと思いました。時間がないので、また後でも教えていただきたいです。金融庁などから、そういう何か指針が出されたときに、どんな指針だったら皆様は使いやすいのかとか、そういう御提案というのがいただけるほうがいいのかなと思いました。
一方で、金融庁側も、現在なされている説明に対して本当にこれでいいのか、みたいなところも、ぜひ、調べていただくというか、検討していただくというのがよいとは思っています。
あと1点だけ、最後にもし時間があればですけども、先ほどenechainさんが課題をおっしゃっていたので、もしその課題に対して、松尾さんからのコメントがあればお聞きしたいと思いましたが、もうあと3分しかないので、それはまた別途お伺いしたいと思います。以上でございます。
【根本座長】
ありがとうございます。鶴野様、お願いします。
【鶴野メンバー】
鶴野です。ありがとうございます。時間がないので手短に申し上げます。1点目については、先ほど吉高委員が言われていたこととも重複しますが、まずは需要家側がどのような目的でカーボン・クレジットを活用しているかの実態把握をして、カーボン・クレジットに関してのニーズを理解し、ボランタリーのカーボン・クレジットはどのニーズに応えることができるかを整理して、示していく必要があると思っております。特に我が国での排出量取引制度の中で、J-クレジット、JCMしか使えない方向になると、ボランタリー・クレジットはいつ使えるのかという疑問も出てくると思いますので、その辺りの整理が重要と思います。
2点目についても、小圷様や他の委員の皆様も言われていたとおり、情報開示が重要ということで、例えばSSBJの気候基準でもカーボン・クレジットについて何の情報を開示すべきかが示されますので、そうした内容を参考に開示ガイドをつくる、あるいは各マーケットプレイスにおいて公表されるデータもそこに必要な情報を掲載するように整備していくことが必要と思いました。
以上になります。
【根本座長】
ありがとうございます。重要な御発言、御質問いただいて、ありがとうございます。大変申し訳ないですが時間がなく、退室される方もいるので、プレゼンターの方に最後に一言ずついただいて、カバーできない部分はまたメール等で御回答させていただくということにしたいと思います。よろしいでしょうか。では、松尾様からお願いいたします。
【松尾メンバー】
本日はプレゼンさせていただき、ありがとうございました。決済面、需要面のところとか、あと投資家というか、購入される方への説明という点については、なかなかクレジットの用途というのがふんわりしているというところもございますけれども、一度、環境省様、経済産業省様も含めて、クレジットというのはどういう用途があるのかというのを整理していただくというのは非常に重要なことかなとは思います。ありがとうございました。
【根本座長】
ありがとうございます。enechain様、お願いします。
【野澤様】
本日は貴重な機会をいただいてありがとうございました。特に我々はこれまで、取引に慣れている事業者向けに電力の卸マーケットプレイスを提供してきました。環境価値の領域では、需要家さんも取引に参加いただくことになりますので、参加者に対して、特に商品設計や取引方法をどのように説明していくかは非常に重要だと考えています。
我々の市場は東京証券取引所さんと近しく、基本的には標準商品という形で提供しております。そのため、個別商品の説明よりも、取引方法や商品規格の質問にしっかりと回答できるようにしていくことは重視してやっているところでございます。
本日はすばらしい機会をいただいてありがとうございました。
【根本座長】
ありがとうございます。Carbon EXの竹田様、お願いいたします。
【竹田様】
本日はお忙しい中、皆さんのお時間をいただきましてありがとうございました。最後の御質問にお答えしますと、私どももプロジェクトを実際に、先ほど申し上げたECサイトみたいな形で載せる際に、売手の方々から必要な情報は一通り受領した上でチェックは行っております。その上で情報を記載・公開しておりますが載っていない情報で必要な情報ももらっているものもございます。それに加えて他社からの格付け情報というのも一つの外部機関の評価情報として、ある一定水準以上のものを載せるということで運営しているという状況になります。
今後、更に取引参加者が増えると、当然投資家保護という観点で更に考える必要も出てくるかと思います。我々としても、他にどういった観点が必要か、改めて課題としても考え直しまし、別途、ほかにこういったものがあるのではないかということは、事務局さんを通じて案を出させていただければと思います。
本日は皆様、ありがとうございました。以上でございます。
【根本座長】
大変効率的にまとめていただいて、ありがとうございます。事務局から連絡事項がありますので、お願いします。
【高岡サステナブルファイナンス推進室長】
今回も皆さんのおかげで議論が活発に盛り上がって、時間が足りなくなってしまったところもあったかと思うので、また、各メンバーにおかれましては、追加の御質問ですとかコメントがありましたら、後日事務局のほうにいただけましたら、コメントにつきましては次回の検討会の場で御紹介させていただきたいと思いますし、今回プレゼンテーションをしていただいた皆様、お三方に対する質問でありましたら、事務局経由でまた取り次いで御回答いただけるようにさせていただきたいと思いますので、本日プレゼンテーションしていただきました3機関の皆様におかれましては、大変恐縮ですけれども、引き続き御協力賜れればと思います。
本日もどうもありがとうございました。
【根本座長】
ありがとうございます。では次回については、2月25日火曜日に予定しております。本日も大変貴重な御意見、活発な御議論をありがとうございました。
以上をもちまして、本日の会議を終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。
―― 了 ――
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