「カーボン・クレジット取引に関する金融インフラのあり方等に係る検討会」(第5回)議事録

  1. 日時:令和7年2月25日(火曜日)15時00分~17時00分
  2. 会場:オンライン開催

(ゲストスピーカーによる英語での発言はご本人または所属組織に確認したものではなく、通訳の発言を事務局で修正したものになります。)

【根本座長】

それでは、定刻となりましたので、議事を開始させていただきます。カーボン・クレジット取引に関する金融インフラのあり方等に係る検討会(第5回)となります。

座長を務めます、早稲田大学の根本です。皆様、御多忙のところ御参集いただき、ありがとうございます。

本日は最初に、これまでの議論内容の振り返り、及び今後の進め方について事務局より説明した後に、ICVCM様、VCMI様、ISDA様、ENEOS様から各社の取組についてプレゼンテーションいただきます。その後、参加者での議論を予定しています。

それでは、まず事務局の金融庁から御説明をお願いいたします。

【森サステナブルファイナンス推進室課長補佐】

事務局でございます。まず中身の前にロジ的なところについてですが、本日同時通訳を入れてございます。使用方法はコメント欄にも記載しておりますけれども、画面左下の地球儀マークをクリックいただけると、英語通訳、日本語通訳が選択できます。

早速中身について御説明に入らせていただきます。事務局資料の2ページが目次になっておりますけれども、最初に取組紹介というところで、ICVCM、VCMI、ISDAの皆様方から、国際的な標準化あるいはインターオペラビリティ向上の取組についてプレゼンをいただきまして、ENEOS様からは、カーボン・クレジットの売手・買手の視点から、個社としての取組を御紹介いただきます。

2つ目、これまでの議論の振り返り、3つ目、国際的な議論の動向を踏まえて、4つ目ですけれども、今後の進め方と取りまとめの方向性として事務局の案を示してございます。最後に御議論いただきたい事項という構成になっております。

3ページからがこれまでの議論の振り返りであります。4ページ、上の四角囲みに記載しております通り、カーボン・クレジットに係る透明性、健全性等を向上する観点から、金融庁において本検討会を開始したところでございます。開催実績については、下のほうに記載がございますけれども、初回を昨年6月に開催いたしまして、それ以降、大手金融機関、地域金融機関、テック、証券会社、商社、保険会社、流通市場の取組などについて、ストックテイキングを行ってきたというところでございます。

5ページ以降が各回の振り返りになっておりまして、10ページまで飛んでいただきますと、前回、第4回の振り返りになっております。上半分が実務の高度化・市場の健全性に関する事項でありまして、1点目として市場運営者による情報公開が重要である、3点目として投資家保護の観点からどのような説明が適切かについて指針等が必要ではないか、6点目として、これらの点を含め、まずはこの種の市場における論点を整理し認識を共有することが必要ではないかといった発言をいただきました。

下半分ですけれども、取引活性化に関する事項ということで、安心して売買ができる環境・インテグリティを確保することが取引活性化との関係でも一丁目一番地であるとのことでございます。3点目として発行量・流通量を増やしていくべき、そのためにデジタル化などを活用していくべきと、こういった御意見をいただきました。

11ページからが国際的な議論の動向でありまして、12ページが、再掲の資料でありますけれども、IOSCOのボランタリー・カーボン・マーケットについての最終報告書、こちらで21個の論点についてグッドプラクティスを提案しております。

13ページ、こちらも再掲の資料ですけれども、アメリカで、「Principles for Responsible Participation in Voluntary Carbon Markets」というものが、昨年5月に公表されておりまして、サプライ・インテグリティ、デマンド・インテグリティ、マーケット・インテグリティ、大きく3つのインテグリティの観点から7つの諸原則、ハイレベルな諸原則が記載されております。

14ページですけれども、イギリスでも、昨年11月に「Principles for Voluntary Carbon and Nature Market Integrity」というものが公表されておりまして、こちらは、今年の早い段階でパブリック・コンサルテーションを行う予定であるとされております。中身は青い表に記載してありますけれども、1から6までハイレベルな諸原則が記載されているというものであります。

15ページからがこれらを踏まえた、今後の進め方と取りまとめの方向性についての事務局案でございます。

16ページですけれども、まず、今後の進め方について、上の四角囲みで記載しておりますけれども、これまでの議論で、投資家保護の観点から様々な論点が指摘されてきたこと、また、IOSCO、米国、英国においてハイレベルな提言・原則が示されていることを記載しております。こういった例も踏まえまして、我が国においても、こういったハイレベルな原則の策定につなげることを見据えつつ、まずは投資家保護を促進する上での重要な論点を整理するといった形で取りまとめることとしてはどうかとしております。

取りまとめに際しての考慮事項ということで4点記載がございますけれども、目的、国際的な議論状況、検討会でのこれまでの議論は、繰返しですけれども、4点目、現時点で提示し得る内容という観点からは、カーボン・クレジット市場がまだ黎明期であると、こういった御指摘も多くいただきました。それを踏まえますと、現段階では、厳格な取引規制の導入などは時期尚早との見方もございます。こういったところを踏まえて、まずは論点整理をして、ハイレベルな原則の策定につなげていくということでどうかとしてございます。

今後のスケジュールにつきましては、現在予定調整中ですけれども、4月に報告書の素案という形で提示できればと考えておりまして、5月から6月にかけて取りまとめができればと考えてございます。

次に、17ページですけれども、取りまとめの方向性の事務局案でございます。四角囲みに記載しております通り、カーボン・クレジットはカーボンニュートラル実現において重要な役割を担い、取引の拡大・多様化も見込まれると考えております。こういった状況の中、他の金融資産と同様に、カーボン・クレジット取引の健全な発展を促していくためには、その透明性・健全性の向上による投資家保護の確保が重要であります。こういった観点から、取引の透明性・健全性の向上において重要と考えられる論点を整理するという形で取りまとめてはどうかとしております。

ローマ数字Ⅰですけれども、これまでストックテイクしてまいりましたその成果をまず前段としてまとめまして、その上で、ローマ数字Ⅱ、論点整理の骨子ということで、1から4まで、大きくIOSCOに対応する形で記載しておりますけれども、基本的事項、仲介者・売主に関する事項、取引所・取引インフラに関する事項、買主に関する事項、それぞれについて論点を整理する形で取りまとめてはどうかとしております。

18ページ、19ページが御議論いただきたい事項でありまして、3点ありますけれども、1点目と2点目が本日プレゼンターの皆様から御紹介いただく点に関するものでして、国際的なイニシアチブにおいて標準化に向けた取組、インターオペラビリティ向上に向けた取組が行われておりますけれども、我が国での取引実務に対してどのような示唆があると考えられるかについてです。

2点目ですけれども、カーボン・クレジット取引、市場の需給や取引の在り方について、売手・買手の視点から見て重要な点としてどういったものが考えられるか、また、買手・利用者による情報開示について、特に重要な留意事項としてどういった点があるかとしております。

3点目ですけれども、先ほど事務局から御説明した今後の進め方、取りまとめの方向性の案につきましてどのように考えるかとしております。

事務局からの説明は以上となります。

【根本座長】

ありがとうございました。それでは、ICVCM様、VCMI様、ISDA様、ENEOS様におけるカーボン・クレジットに関する取組について、各社約10分で御紹介をいただきたいと思います。

それでは、まずはICVCM・Anton Tsvetov様より、よろしくお願いします。

【Anton Tsvetov様】

皆様、スクリーンをまずシェアさせていただきたいと思います。

本日はありがとうございます。Anton Tsvetovと申します。私は、アソシエイトディレクターをしております。独立系のガバナンスボディとしてこのカーボンマーケットの取引を見ております。それでは、私のスライドに沿って進めていきたいと思います。

供給サイドを見ており、カーボン・クレジットのクオリティーを管理しております。実際に取引される資産、コモディティを見ており、これを管理することによって、その内在的な品質を確保しようとしております。

我々ICVCMの目的が何かと言いますと、我々はコスト効率の良いミティゲーションアクションに貢献したいということです。そして、一般的な脱炭素に貢献したいということであります。

一般的な意味で我々の組織は3つの活動を行っております。その中にはカーボン・クレジットプログラムの評価、それからメソドロジー(削減量の計算)の評価、それから、The Core Carbon Principles、CCPsというものを策定しております。また、政府、規制当局ともエンゲージメントを持っております。例えば本日インドの政府と同じような会話をしてきたところであり、継続的な改善を試みております。リーダーシップを取って、次のステップとして何があるかということを検討しており、カーボンマーケットに関して先進的な事例を紹介したいと思っています。これが供給サイドで行われている内容です。

そして、CCPs、The Core Carbon Principlesというものですけども、これは我々が進めている10の一般的な原則がありまして、それがこの3つに関わっております。一つはガバナンス、もう一つはエミッション・インパクト、それからもう一つはサステナブル・ディベロップメントです。

ガバナンスということでは、例えばカーボンプログラム自体のガバナンス、これはスタンダードとも呼んでおり、登録も行っております。これはゴールドスタンダードにも関係しております。どのようなガバナンスで管理をしているのか、内部のプロセスはどうなっているのか、利害、利益相反はどうやって管理しているのか、我々のボード(Board)はどうなっているのかを見ています。透明性という観点ではそのレジストリ(登録簿)を見ております。カーボン・クレジットのプロジェクトの情報ですとか、そういったものの公開、そして確認、認証というものを見ております。

それから、エミッション・インパクトということでは、伝統的なものでありまして、市場の整合性を理解するということ、環境の整合性を確保すること、アディショナリティ(追加性)とか、パーマネンス(永続性)とか、強力な定量化、リーケージの回避などを見ております。また、ダブルカウンティング(二重計上)の回避についても見ております。

それから3つ目のリクワイアメントとしましては、サステナブル・ディベロップメントでありますけれども、どうやって持続的開発を確保し、持続的開発の利点と安全性を確保し、ネットゼロへの貢献ができるかということを見ているわけです。

これらが3つの原則でありまして、ICVCMとして監督し、そして評価に使っているものです。評価フレームワークというのは200の要件からなっております。カーボン・クレジットのプログラムの評価、それからメソドロジーの評価、これが上と下に分かれております。

5枚目のスライドが重要なスライドの一つです。これを見ていただきますと、CCPラベルのクレジットをどうやって認証していくかということについて2段階で評価しております。まず、最初のワークストリームではプログラム自体の評価をしています。プログラムの認定としてプログラムレベルの要件を見ています。これはプロジェクトタイプとか、そういったところはまだ見ておりません。オペレーションとか、機能とか、そういったものは見ておらず、プログラム全体の内容を見ているということです。

一旦そのプログラムの認定が確保されますと、今度は方法論の認定になります。プログラムの認定自体は、CCPラベルの半分にしかすぎません。残りの半分の評価というのは方法論の認定ということになります。一旦同じようなプロセスによって評価をした上で、方法論に関して、プログラムだけではなく、認定されますと、CCP公認ということになります。今度は、プログラムのCCP適格と同時に、両方取れますとCCPラベルつきのクレジットとして認定されるということになります。

プログラムサイドについて最初に説明しますけれども、この認証プログラムですが、6つ認証されております。まだ多くが評価中です。5つは大きなものですので御存じだと思います。例えばACRとか、ARTとか、CARとか、それから最近承認しましたのは新しいものであります。Isometricというプログラムでありまして、これはカーボン除去にフォーカスしたものになります。

次に、方法論のほうですけれども、今そのクレジット数では1,500万クレジットを見ております。大きなカテゴリーは、これらがもう既にクレジットが決まっている方法論でありますが、まだまだ評価中のものがたくさんあります。もう既に承認されているのは、例えば、埋立てガス回収、ガス漏れ検知、オゾン層破壊物質とか、そういったものです。これらはもう既にクレジットがつけられているものです。

最近承認されたものとしましては2つありますけれども、REDDのもの、それから植林、森林再生のものです。これらに関してまだ発行がなされていないですが、直近で認証されたものとなっております。

8枚目のスライドを見ていただきますと、メソドロジーで実際に承認されたものです。ウェブサイトにそれぞれ詳細が書かれております。

現在のところ、全てのカーボン・クレジットマークの中で市場の約3分の2を評価済みとなっております。現在、大体そのボランタリーマーケットの3分の1ぐらいは、もうCCPsの資格要件が満たせないと判断されており、再エネに関係するところです。現在、アセスメントプロセスとして、ボードは既存の方法論として、再エネのものはスタンダードを満たさないとしています。

11枚目のスライドは、継続的改善をしているものです。ソーシャルセーフガードがまだ必要だとか、そういったものが問題となっておりますけれども、もうすぐこのレポートが出されることになります。新しいプログラムとして今年ローンチするものがあります。それは、VVBsにフォーカスをした監督をするもの、それから管轄的なアプローチ、それからトランザクションクレジット、このグループとも関係しているエクスチェンジに関するもの、スケーラビリティに関係するもの、カーボン・クレジットプログラムのレベニューモデルに関するもの、価格の透明性等、こういったところを継続的な改善プログラムとしては行っております。

規制当局ともかなり協業しておりまして、彼らがCCPをかなりリファレンスしてくださっている、それから我々が認定したメソドロジーとかプログラムを参照してくださっているので、これは需要サイド、供給サイド両方でも起こっていて、非常に歓迎すべきこととなっております。

先ほど事務局のプレゼン中にありましたけども、UK、US両方ともICVCMに関しまして、クオリティーのメタスタンダードとして、ICVCMを参照してくださっています。我々の標準化努力というのが最終的にはマーケットの成長、マーケットの整合性改善につながると思っております。供給サイド、需要サイド両方の主要市場の殆どで政府と協力をしています。

ライフサイクル、サプライサイドということでは、いろいろな国々の機関と協力をしております。シンガポールのMASでもそうですし、また、英国のネイチャーマーケットフレームワーク、それから米国のCFTC等と協業しており、ハイ・インテグリティ・カーボン・クレジットに基づいたものを使っていただいています。こちらが炭素削減チェーンの完全性を高めるという意味で、規制当局がマーケットに質の高いクレジットを使うようにというシグナルを送ることは重要です。

ICVCMでは、我々は、どのような形でクレジットが使われるかということではなく、我々はそのクオリティーが基準に載っているかどうかというところに注力をしております。

プレゼンテーションは以上となります。最後に申し上げたいのは、非常に多くの新しい分野が出ているということで、規制がいろいろと広げられています。伝統的なものでは開示に関する要件で企業がインセンティブを受けて、ハイ・インテグリティのカーボン・クレジットを使うようになっており、コンプライアンスのためにも使われる等、関心が持たれています。

ユースケースもいろいろとありまして、例えばクレジットをどうやって使うのかというところについては排出取引システムの中や、炭素税の目的でも使われているということ、パリ協定の6.2条の最終化されたルールとの関係も興味深いところです。国々がこのメカニズムを使ってカーボントレーディングを始めることになります。国内のメカニズムもありますし、またこの自主的なカーボンメカニズムもあります。これらとの関係で、CCPのラベルはインテグリティの確保に貢献できるということです。

私のプレゼンテーションは以上となります。何か御質問があればお答えしたいと思います。

【根本座長】

ありがとうございました。御質問は4人の方のプレゼンテーションが終わった後にお受けいたしたいと思います。それでは、Lydia Sheldrake様、お願いいたします。

【Lydia Sheldrake様】

皆様こんにちは。今回このように皆様と一緒に参加できてうれしいです。Lydia Sheldrakeと申します。私は、Voluntary Carbon Markets Integrity Initiative、VCMIのディレクターになります。VCMIというのはマルチステークホルダーの国際的な組織になります。そしてCOP26の議長によってつくられました。政府、プライベートセクターが世界中で参加しています。

我々のフォーカスは、需要側のインテグリティになります。クレジットの使用及びそれに係る主張に関するところということで、今日のプレゼンテーションの中では、特にディスクロージャーについて、お話をしたいと思います。この検討会にとって良いお話だと思います。次お願いします。

我々VCMIについてですが、我々は高いインテグリティのある自主的炭素市場を実現することにフォーカスしています。そして、パリ協定を守り、気候、社会、自然に利益をもたらそうとしており、Claim Code of Practice、主張、実践、規範というものを使っています。例えば、GHGのプロトコルですとか、SBTIですとか、CDPですとか、ICVCMですとか、完全に相互運用性のあるフレームワークを使うことによって企業が開示をし、そしてクレジットの使用を正当化できるようにするということになります。そしてネットゼロの道のりを支援するということになります。そして、今日この話をしていきたいと思います。

なお、VCMIが行っているほかのプログラムも簡単に触れておくと、アクセス戦略、グラントベースのプログラムが挙げられます。つまり、ホスト国、グラントベースのこの炭素市場の試験を開放して、そしてNDCの目標達成に役立てるように支援するというものになります。

次お願いします。それでは、簡単ですけれども概要です。このClaims Code of Practiceですけれども、主張実践規範ですが、例えばクレジットのバイヤー、そしてまた企業がこの気候のリーダーシップのためにこれを使っていただき、まず基本、基準を遵守していただくということになります。

そして、これがパリ協定の長期目標に合ったものでなければなりません。つまり企業が自分のアクションを持って、そしてカーボン・クレジットを使うということ、自分でもアクションを取らなければいけないということになります。

そしてステップ2でありますけども、クレームを選択して、そして脱炭素に向けて進捗を示します。3つ目がクオリティーの高いカーボン・クレジットを買う、そして自分たちへのクレームに対しての品質基準を満たすということです。ステップ4は、VCMIのモニタリング、レポーティング、そしてMRAのフレームワークによって第三者保証を取得するということになります。

アクション可能なクライテリアというものがあります。これは政府、そして規制当局のブループリントになります。そして、これによって投資家保護にするということになります。Anton様が言ったように、VCMIは、このクレームコードのレファレンスの使用を歓迎します。そして、市場のインターオペラビリティを支援します。

例えば、金融機関においてのディスクロージャー、レギュレーションですとか、そのような様々な規範にクレームコードを使うことによって、ブループリントをつくっていき、カーボン・クレジットの使い方を一貫したものにするということができます。

クレームコードは、G7のカーボンマーケットの原則と整合性を取っています。つまり、アクション可能なフレームワークをもって実践をしてもらうというものになります。そして、このクレームコードですけれども、これは米国及び英国のボランタリー・カーボン・マーケットの原則、先ほどお話がありましたけれども、これらとの整合性が取られています。

では、簡単ですけれども、その一つ一つのステップを見ていきたいと思います。そして、開示について何を考えなければいけないのかということを見ていきたいと思います。

次お願いします。ステップ1でありますが、企業はこの基本的な基準を満たさなければならない、つまりパリ協定の長期的目標に合っているという整合性を見せるということになります。その中では例えば企業が温室効果ガスインベントリを維持し、開示をするということ、これはスコープ1から3まで入ります。これによって科学に基づいた短期目標を設定、開示して、2050年までにネットゼロを達成することを公約するということです。

また、資金配分の進捗状況を示すということ、つまり、短期目標に向けたガバナンスと戦略の進捗状況を示す、これがまたパリ協定の目標に合っていなければなりません。これらは既存の企業によるアカウンタビリティに係るフレームワークに立脚しています。

そして、それが右側に書いてありますけれども、グリーンとブルーのところがたくさん入っていると思います。これは整合性が取れているということ、つまり、この基準のマトリックスと、そしてCSRD、CDP、IFRS、GRI、TCFDなどと整合性が取れているということになります。これはウェブサイトにも載っていますので、皆様も直接見ていただければと思います。

企業が情報開示をするときにこの基準に合わせたものにしていただき、リクワイアメントとして、スコープ1と2は限定的な保証、そのほかの指標の開示ということになります。

次お願いします。ステップの2、企業は自分たちのクレーム、実践規範を選んでいただきます。VCMIでは3つの基準があります。クレームとして3つあります。これは高品質の炭素クレジットを購入し償却するということで、残りの排出量の割合として考えていただくということになります。そしてネットゼロの道のりへとこれを使っていただく、カーボン・クレジットを使うことによって、今残っている排出量に対して補完をしていただくことになります。

SILVERですけれども、企業の中で毎年カーボン・クレジットを用いて残りの排出割合の10%から50%をカバーするということ、GOLDの場合には、カーボン・クレジットを使って、残りの排出量の50%から100%をカバーします。PLATINUMのクレームというのは、少なくとも100%以上の割合を毎年カバーして、ネットゼロへと移行していくということになります。

それだけではなく、カーボン・クレジットの償却だけではなく、実際にネットゼロの長期的な目標に向かった進捗状況を示さなければなりません。そのために開示していただきたいのが、企業全体で達成された排出削減、そして説明として、なぜこれがターゲットに対して進捗していると考えているかという説明をいただきたくことになっています。これがカーボン・クレジットを使うことによってネットゼロ、脱炭素に向かう道のりであります。

このネットゼロへの移行の代わりにカーボン・クレジットを使うのではなく、まさにネットゼロへの自分たちの努力に加えてカーボン・クレジットを使っていただくということになります。

ステップの3ですけれども、企業がカーボン・クレジットとして質の高いものを償却していただくということになります。必要な閾値に合わせるということになります。つまり、SILVER、GOLD、PLATINUMのクレームに合わせるものにしていただくということになります。質の高いカーボン・クレジットを使っていただき、VCMIがハイクオリティーというのは、ICVCMと整合性が取れているということ、先ほどAnton様が説明してくれたものに合っていることということになります。

また、クレームコードをアップデートして、そしてCOP29の第6条の交渉結果に合わせるということです。そしてICVCMのラベル、クレジットがまだ市場に出てこないときには、移行のオプションというものがあります。例えば、自分のクレジットを購入、そして償却するか、またはデューデリジェンスをする、そしてこのThe Core Carbon Principlesに合わせるということです。

ディスクロージャーの主要なステップでの重要なことというのは、カーボン・クレジットに関する情報開示をするということになります。そして、VCMIのクレームを使うということ。つまり、企業が質的にも量的にも必要な量をどのように満たしているかということ。そしてまた、この償却されたクレジットの数も開示しなければなりません。そしてID、そしてレジストリのことも開示しなければなりません。そしてメソドロジーとプロジェクトのタイプ、またカーボン・クレジットが第6条に合っているかどうかということです。

そしてまた、VCMIの中では、カーボン・クレジットがこの調整、コレスポンディング・アジャストメント(相当調整)をしているかどうかということは、特に要件にはなっていません。相当調整になっているのかということには言及されていません。ただ、この開示が必要ということになります。その透明性の観点から開示は必要になります。

次です。ステップの4、最後のステップになります。これは企業が第三者保証を取得するというところになります。保証された情報に従って、このVCMIのMRAのフレームワークを使っていただきます。全ての開示の要件がこれに当てはまります。これによって、ステップ1、2、3に関する情報に関する保証を取得するということになります。そして保証人の能力、保証人の基準、そしてまた、このクレーム手続に関する詳細が含まれていきます。

そして、透明性、アカウンタビリティをもってクレジットが使われているか。そして、第三者が保証しているかということ。つまり開示の要件はステップ1、つまり基礎的なクライテリア、GHGガスのインベントリなどがあるかどうか、そしてステップ2はこのクレームの選定、ステップ3はカーボン・クレジットの使用ということになります。

VCMIの提供するコードは、企業が開示をするに当たって、そしてカーボン・クレジットの使用を検証するに当たって、ブループリントとして使っていただくことができるということです。よりインターオペラビリティ、相互運用性を、国境を越えた取引であっても担保することができるということになります。

以上です。

【根本座長】

ありがとうございました。

【Lydia Sheldrake様】

ありがとうございました。後ほど質問いただければと思います。

【根本座長】

ISDA様、お願いいたします。

【森田様】

どうもありがとうございます。ISDA東京事務所長の森田と申します。

ISDAでは、カーボン市場の健全な発展に向けたサポートを重要なミッションとして位置づけておりまして、様々な取組を行っております。

次のスライドをお願いいたします。本日はまず、ISDAにおけるカーボン市場の取組について概要をお話しさせていただきまして、本検討会に関係が深いと思われるカーボン・クレジットの法的性質に関する検討と、ドキュメンテーションに関する取組について少し掘り下げてお話をさせていただきます。

次のスライドをお願いします。ISDAにおける取組は大きく分けて政策面での提言、そしてドキュメンテーションの標準化の2つがあります。さらに、トレーディング勘定の気候リスク分析に関するリスク管理の提言など幅広い取組を行っておりますが、本日最初の2つについてお話をさせていただきます。

次のスライドをお願いいたします。まず政策面ですが、ボランタリー・カーボン市場、VCMの検討を行っているIOSCOなどの国際機関を通じた規制整備への働きかけに加えまして、EUのカーボン除去、農業認証規制の見直しや、米国における信頼性のあるVCMのための原則策定への関与といった、各国や地域ごとの取組についても進めております。

また、グリーンウォッシュ防止など、カーボン・クレジットの信頼性強化に向けた取組や新興市場向けのキャパシティービルディングにも取り組んでおります。特にカーボン市場の発展に向けて重要なのが、カーボン・クレジットの法的確実性の向上に向けた取組です。これについては、後ほど御説明をさせていただきます。

次のスライドお願いします。ドキュメンテーションの標準化については、2005年にEUの排出量取引制度、EU-ETS、こちらに基づく、排出枠を対象とした現物決済取引用に標準契約書を作成しておりまして、その後、2006年に米国、2021年に英国のキャップ・アンド・トレードスキーム用の契約書のひな形を作成しております。さらに、カーボン市場のニーズの高まりを受けまして、2022年にVerified Carbon Credit、VCCと呼んでおりますが、これを参照する契約書を作成しました。これについては後ほどお話しさせていただきます。

また、今後はパリ協定の6.2条及び6.4条に基づく取引に対する標準契約書の作成の可能性も検討を行っていく予定となっています。

次のスライドをお願いします。ISDAがVCC定義集を作成したのは、2020年に設立されましたTSVCM、自主的カーボン市場の拡大を目指すタスクフォース、こちらの提言がきっかけです。TSVCMはカーボン・クレジットの法的性質が国や地域によって異なっており、それが取引の安定性や有効性に影響を与える可能性があるという指摘を行いました。また、標準的な契約書は法的検証の必要性が議論されまして、これを受ける形でISDAはカーボン・クレジットの法的性質の検討、そして標準契約書の作成を進めてまいりました。

次のスライドをお願いします。VCCの法的性質の明確化は、契約の有効性を確保する上で不可欠です。ISDAは2021年に英国法、ニューヨーク州法、ドイツ法における法的性質について検討を行いまして、2022年には日本法、フランス法、シンガポール法についても検討を行っております。法的性質は各国の法制度によって異なり、例えばイギリスなど、コモン・ローに照らして比較的明確な結論を導くことのできた法域もあれば、日本のように明確な結論は導き難いという結果にとどまる法域もあり、主要各法域での法的性質の明確化の重要性が再確認されています。

法的明確性を高める手段としましては、法域ごとのステートメントの公表、より厳格に言えば法改正や規制ガイダンスの発表が挙げられます。また、国際的な立法ガイダンスの策定がされれば、VCCの法的扱いの標準化が促進されます。この点については、UNIDROIT、私法統一国際協会、こちらに働きかけを行いまして、2022年にVCCの私法上の性質を明確にする作業部会が、UNIDROITにおいて立ち上げられました。この作業部会にはISDAもオブザーバーとして参加をさせていただいております。これまで4回の会合が開催されており、現在、VCCの私法上の性質を明確化するための原則を策定中で、2026年前半に市中協議を行いまして、同年中に最終版の策定を目指しております。

次のスライドをお願いします。次に、カーボン・クレジット取引の標準契約として作成されましたVCC定義集、こちらの概要を御説明いたします。VCC定義集は、グローバルな標準化された取引に対応する契約書に対する市場参加者からの要望に応える形で作成されました。契約書を標準化することによって、取引の約定方法や決済方法、決済不能時の処理手順が明確になり、市場の健全な成長を促進することが期待されます。VCC定義集は、デリバティブの基本契約であるISDAマスター契約に基づく取引で参照されるもので、各取引の条件を記載するコンファメーション、確認書においてこの定義集を参照することで、取引条件を統一的かつ簡潔に定めることができます。

これは金利スワップや通貨スワップなどの金融商品と同様の仕組みで、それぞれの原資産に応じた定義集が公表されるのと同じ位置づけになります。言い換えれば、ISDAマスター契約を締結している2者間であればVCC定義集を参照して取引を行うことが可能です。また、このVCC定義集は、ISDAが公表するほかの定義集と同様に、特定の準拠法に依拠せず、異なる法域でも広く利用できるよう設計されています。これによって異なる国や地域の間でも取引の一貫性が向上し、グローバル市場の発展が期待されます。

次のスライドをお願いします。VCC定義集は50ページほどの文章ですけれども、条文の構成はこちらに記載のとおりです。構成はほかの定義集と大きく変わりませんが、無効化やVCC混乱事由など、VCC特有の条項が設けられています。

次のスライドをお願いします。VCC定義集の対象は、セカンダリー市場、流通市場で取引される現物決済型のVCCのスポット、フォワード、オプションの店頭取引です。決済方法としては、対象となるVCCは当事者の登録口座間で物理的に移動する、または無効化される、のいずれかとなります。無効化の場合は、VCC自体は移動せず引渡し側が受取り側に代わってレジストリに無効化の指示を行います。

セクション10に、合意されたVCC仕様というのがありますが、こちらでカーボンスタンダードが今現在5つ掲載されていますが、これに載っていないVCCも取引が可能です。リストに掲載されていれば、ここで定義された用語を使ってVCCを容易に特定できますが、掲載されていない場合は必要な情報を詳細に記載することで取引対象とすることが可能です。

また、VCCの定義集は特定のカーボンスタンダードやレジストリに依存しない設計となっておりまして、引渡しや無効化の要件などは各カーボンスタンダードやレジストリの規則に従います。取引の具体的な内容はコンファメーションに記載されます。

次のスライドをお願いします。VCCの定義集には、特定の条項として、VCC Disruption Events、混乱事由というのが設けられています。これは取引当事者によるVCCの引渡しや受取りの失敗、その他の決済障害が発生した場合の対応策を定めるものです。このVCC混乱事由が発生した場合には、当事者の引渡しや支払い義務が一時的に猶予されまして、指定された期限までに問題を解決することが求められます。期限までに解決できなかった場合は、VCC定義集に規定された特定の終了条項というものが適用されます。

これらの終了事由というのは、マスター契約における期限の利益喪失事由であったり、終了事由を補完する形となっておりまして、VCC Settlement Disruption Eventというものは、マスター契約の不可抗力事由に似ていますが、これを上書きするものではなくて、追加の不可抗力事由として扱われるものです。

次のスライドをお願いします。こちらは最後になりますが、VCCの定義集は定期的な見直しを行っておりまして、2022年に公表した最初の見直しとして昨年2月にバージョン2を公表しております。ここでは、市場参加者からの要望に基づいて、支払いや引渡しのタイミングに関する変更や、先ほどAntonさんからのお話にありました、ICⅤCMのCCPに関連するラベルが追加されています。

現在、次回改定に向けた検討が進められておりまして、大きな変更点としてはCORSIA適格VCCに関する方針が予定されています。

説明は以上となります。ありがとうございました。

【根本座長】

御説明ありがとうございます。続きましてENEOS様、お願いいたします。

【長島メンバー】

ENEOSホールディングス、カーボンニュートラル戦略部長の長島と申します。本日は、ENEOSグループのカーボン・クレジットに関する取組について、カーボン・クレジットの需要者でもあり供給者でもあるという両面から少し当社の活動を御紹介させていただきたいと思います。

次のスライドをお願いいたします。まず当社ENEOSホールディングスの概要を御紹介させていただきます。当社ENEOSグループには、ここに記載の6つの事業会社がございますけれども、当社グループのGHG排出量の約9割以上は石油精製・販売事業になっております。一番上、ENEOSがCO2の排出量を9割以上出しているということでございます。実際どこでCO2を排出しているかというと、国内11か所に石油精製を行っている製油所、リファイナリーがございまして、そちらで排出しているということでございます。

次お願いいたします。こちらは2023年の5月、2年前に公表いたしました当社グループのカーボンニュートラル基本計画を御紹介させていただきます。まず、当社グループの長期ビジョンといたしまして、当社は、国内で140年近くエネルギー・素材の安定供給という重要な社会的責任を担ってまいりましたけれども、今後も、このエネルギー・素材の安定供給とカーボンニュートラル社会の実現、この両立を目指しますということを掲げてございます。

一方で、当社がどのくらいCO2を排出しているかというお話になりますが、当社はスコープ1、2である自社の排出量として大体年間3,000万トンぐらい排出しておりまして、当社のお客様が排出するCO2排出量であるスコープ3が年間1億8,000万トンあるため、当社は合計でスコープ1、2、3を全部足して、年間2億1,000万トンのCO2排出量ということになります。

こちら日本国全体の排出量が年間12億トンですから、ENEOS1社で直接、間接両方ですけれども、2割弱ぐらいのCO2排出量に関与しているということで、やはり日本のNDCを達成するためには、当社の位置づけというのは非常に重要だと考えてございます。

そして、当社のカーボンニュートラル基本計画は2本柱になっていまして、まず左下、緑色の部分です。当社のCO2の排出削減が1本目の柱となります。そして右下の青い部分ですけれども、お客様、つまり社会のCO2排出削減に貢献するという2本柱になってございます。

次お願いいたします。こちらは具体的にどのようにこの計画を達成していくかということを示しております。まず自社の排出削減につきましては、GHGプロトコルで決まっております排出抑制、あとは人為的固定化、そして自然吸収増加というこの3本柱になっておりまして、本日はこの3本目になります森林吸収、これについて御紹介をさせていただきたいと思っております。

次お願いいたします。こちらは具体的に当社の自社の排出削減、スコープ1、2ですけれども、こちらの削減に向けたロードマップをお示ししております。当社は2040年にカーボンニュートラルを達成するということを目標に掲げておりますけれども、排出量としては年間1,900万トンあります。これをオフセットするために、CO2の自然吸収増加、森林吸収ということで年間500万トン規模のクレジット創出を目指してございます。

次お願いいたします。こちらは少し話が変わりまして、ここ最近の日本国内での動きということで、GX-ETS、排出量取引についてのご説明になります。当社は年間10万トン以上を排出しているということで制度対象となりますけれども、このGX-ETSは、2026年から実際に本格導入され、この中では我々排出事業者として適格クレジットというものがオフセットに利用できるとされております。

この適格クレジット、J-クレジットとJCMですけれども、このJ-クレジットについては、まだ、その創出量が限られております。さらにJCMクレジットにつきましても、実際創出するのに時間がかかるという問題がございます。また、実際にこのオフセットに使用できる上限の量、こちらは今後検討とされておりますけれども、当社のように多排出事業者といたしましては、どのくらい適格クレジットがオフセットに使えるのかということを早く確認が必要でございます。

次お願いいたします。まず、当社の適格クレジットの創出の取組でございます。当社は国内の地方自治体様や森林組合様と共同で森林管理によるJ-クレジットというものを創出してございます。これまで国内で6案件を実施しており、6つの案件の合計で対象の森林の面積としては4万ヘクタールですから、大体横浜市ぐらいと同じぐらいの面積ですけれども、こちらで累計95万トンのJ-クレジット創出というところにめどをつけてございます。

また、右上になりますけれども、海外でも住友林業様が組成いたします北米での森林ファンド、こちらに1億ドルを出資いたしまして、海外でのボランタリークレジットの創出にも取り組んでございます。

次お願いいたします。もう一つ、当社のボランタリークレジットの取組といたしまして、カーボン・オフセット商品の販売にも取り組んでございます。具体的に右側にお示ししておりますのが、当社の製品であります船舶用の重油に、DACCSのボランタリークレジットをつけて、日本郵船様にカーボン・オフセット商品として販売するといった取組を実施してございます。

次お願いいたします。こちらは当社のカーボン・クレジットに関する取組を1枚でまとめてございます。当社といたしまして、適格クレジットとボランタリークレジットという2つの視点で整理するべきだと考えてございまして、まず左側、適格クレジットにつきましては、まさにGX-ETSの制度設計において、この適格クレジットの方法論をもっと拡充し、実際の創出量の増加を図ることが必要だと考えてございます。

さらに、クレジットの需要創出のためには、このETSの制度上どのくらいオフセットに使用ができるのかという早期の明示が必要であると考えています。現時点でまだ不確実性が高いのですけれども、当社といたしましては、排出事業者、需要者といたしまして、先んじてJ-クレジットであったりJCMのクレジットの創出に取り組んでございます。

一方、右側、ボランタリークレジットにつきましては、まだまだ日本国内で市場創造に向けて認知度がまだ低いと考えてございまして、まさに今後、これからこのボランタリークレジットの認知度向上であったり、環境価値の見える化が必要だと考えてございます。特に目先で、カーボン・オフセットの商品の需要が見込まれます運輸部門など独自規制を行う業界に対しましては、早々にクレジットの品質の明示が必要だと考えてございます。

次お願いいたします。こちらは最後になりますが、当検討会の趣旨である金融インフラのあり方について、当社といたしまして2点ほどコメントさせていただければと思います。

まず1点目につきましては、日本の国力強化に資するクレジット市場というものをいかにつくっていくかということが重要だと考えております。そのためには、我々需要者と、主に地方に所在する供給者の双方の目線合わせというものが非常に重要だと考えてございまして、この両者が合理的に折り合えるシンプルなエコシステム、これが形成されることを望んでございます。

2点目につきましては、このクレジット取引の円滑化に向けてということで、我々需要者・供給者双方が安心して取引できるために、クレジットの質、そして価格の予見性の確保が重要だと考えてございます。特に質に関しましては、特に需要者に十分な品質情報が提供される仕組みが必要だと考えておりまして、当社もそれを準備しているところでございます。

また価格の予見性につきましては、私たち排出事業者といたしましては、例えば投機的な、実際の需要が伴わないような取引というのは極力排除される仕組みが望まれるということを考えてございます。

次のページをよろしくお願いします。こちらが最後のスライドとなりますので、私からの御説明は以上となります。

【根本座長】

どうも御説明ありがとうございました。それでは、質疑応答と議論に移りたいと思います。本日はまず海外から参加されているICVCM様、VCMI様への質問を先に受けたいと思います。2つの機関に質疑を行った後に、他のプレゼンター、全プレゼンターへの質問、御意見を受け付けたいと思います。

ではICVCM様、VCMI様への質問がある方は、Webexのチャット機能で全員宛てにお名前を記入いただければと思います。そちらを確認の上、座長から指名させていただきます。では、よろしくお願いいたします。

鶴野様、お願いいたします。

【鶴野メンバー】

ありがとうございます。ICVCMに質問があります。ご説明の中で、ICVCMは既に市場全体の38%を評価されたものの、そのうちCCPラベルの認定を受けたのはわずか3%にとどまっているとのことでした。この低い割合には正直驚きました。認定を受けられなかったプロジェクトの多くが再生可能エネルギープロジェクトであるともお話しされていましたが、認定が受けられない主な要因は追加性(additionality)にあるのでしょうか、それとも他に重要な要因があるのでしょうか。CCPの要件を満たすための主な課題について詳しく説明していただけますと幸いです。

これらの課題は、カーボンマーケットのインテグリティ確保の課題に関連してくるのではないかと思います。こちらの検討会では、これから報告書を作成し重要な論点を整理する予定なので、そうした課題が、報告書の中で何を優先し、強調すべきかを検討するのに役立つと考えております。ご見解をお聞かせいただけますと幸いです。

【Anton Tsvetov様】

御質問いただきまして、ありがとうございます。実際、市場の中でも、資格認定があるというところでは一部となっております。ただし、まだ評価中のところも多く、約100のメソドロジーが今まだ評価中です。もう既に資格があると決められたのは、クレジット、既に発行されているものの中では割と限られた部分になります。

一つ重要なのは、特に特定の市場の部分をターゲットとしているわけではないということです。既存のメソドロジーを我々は一つ一つ見て、評価フレームワークに基づいて評価をしております。その結果がどうなるかということに関しては、もうその結果をそのまま受け入れるという形で見ております。

メソドロジーで承認したものの多くが新しいものになっております。そこは重要だと思います。つまり市場が進化している過程にあるということを意味しています。新しいメソドロジーを開発したプログラムです。インテグリティのためいろいろ作業が必要です。これICVCMだけではなく、ほかの機関のためにもこれが必要になります。ですから、プログラム自体のほうで進化が必要だとは認識していらっしゃると思います。

そして我々の期待としては、我々のラベルは、プロジェクトディベロッパーサイドにとっても魅力的だと思います。なぜなら、クレジットについてより多くの需要を喚起できるからです。それから同時にバイヤーのほうでも、そういったクレジットを買う際にもっと自信を持って買っていただけるということです。ですから、その部分というのは市場の中でも伸びてほしいと思っております。

再エネのメソドロジーについてですけれども、もう一度繰り返しますが、全ての再エネプロジェクトを評価したわけではありませんけれども、全体的なこれまでの我々の感想としましては、ボードの意思決定に関して、追加的な再エネプロジェクトはありうるだろうと感じております。そして、特に途上国ではそうであろうと考えております。脱炭素の必要性からです。しかし、メソドロジー自体は、それに対して適切ではないというのは、それぞれのメソドロジーは現在のところは強力なアディショナリティ(追加性)を証明できていないからです。アディショナリティ(追加性)の実証ができていないということです。ICVCMとしては、これを具体的に評価するということを任務としておりますので、それに従って現在のメソドロジーを評価させていただいております。ただ、多くのプログラムがメソドロジーをアップデートしておりまして、そして我々が行っているような継続的改善のプログラムを行うことによって、再エネに関してもメソドロジーを改善しようとしています。それによって新しいインテグリティのフェーズに市場全体が入っていけることができると思っております。我々としては、オープンに、新しいメソドロジーの再申請もお待ちしています。

【根本座長】

お答えありがとうございました。それでは、何人かお手が挙がっております。髙梨様、お願いします。

【髙梨メンバー】

今の質問と同じ質問でしたので結構です。

【根本座長】

分かりました。では松尾様、お願いいたします。

【松尾メンバー】

東京証券取引所の松尾でございます。本日はありがとうございます。

ICVCMの方に2点ご質問がございます。一つは、方法論として、REDD+が認められたということですけれども、REDD+については、ベースラインが課題に盛り込まれているのではないかという批判もあり、また、パリ協定のCOPの方では、エミッション・リダクション(削減)は認められるけれども、アボイダンス(排出回避)は認められない、REDD+はアボイダンス(排出回避)ではないか、そうするとそもそもパリ協定6条の適格のプロジェクトではないのではないかという議論もあると聞いております。そうした中で、REDD+が適格の方法論として認められているのは、個人的には疑問があるところでございまして、REDD+がどういう理由から方法論として認められているのか。あるいは先ほど説明があったように、方法論として改善した点があるのかという点を御説明いただきたいというのが1点でございます。

もう一つは、CCPs、The Core Carbon Principlesが非常にCORSIAの要件と近似している、非常に似ているのではないかと思っておりまして、CORSIAとCCPsは、統合できるのではないかと思っております。もちろんCCPsとCORSIAの基準を提唱している団体や趣旨について全く性格は違いますけれども、内容としては非常に似通っているので、これは統合できないのかなと思いますが、こちらについての見通しとか議論があれば教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。

【Anton Tsvetov様】

御質問いただきましてありがとうございます。REDD+に関しましては、もちろん多くの疑問がREDD+に関しては出されております。そのうちの一つは、アクティビティータイプということで、マーケットはかなりいろいろな過去1年で課題を受けていると思います。アボイダンス(排出回避)に関するポイントを御指摘されていましたけれども、我々が評価したメソドロジーですけれども、正直言いまして、最初は、どうやって言葉を使うかについて議論がありました。アボイダンス(排出回避)なのかどうか、リダクション(削減)なのか、リムーバル(吸収・除去)なのかということで、アボイダンス(排出回避)というのは、森林伐採のアボイダンス(排出回避)とか、そういうふうにも使えるわけですので、人々は、このプロジェクトとかアクティビティータイプとして、化石燃料の使用のアボイダンス(排出回避)ということになってしまうわけです。

ですから、リダクション(削減)なのか、リムーバル(吸収・除去)なのか、それがあまり最初はっきりしていないという点がありました。ということで、3つのメソドロジーで我々がREDD+のメソドロジーとして承認したものがあります。VM48が一つです。これは新しい方法論でありまして、あとJNR、Jurisdictional & Nested Redd+です。それからもう一つはARTのTREESメソドロジーです。TREES crediting componentsのところです。そのメソドロジーのエミッション・リダクション(削減)のところです。Non HFLD countriesということです。

ということで、そのメソドロジーに関しまして、これらが問題はないと思ったわけです。こちらがCCPラベルとどのようになされたかということです。REDD+をカテゴリーとして我々はジャッジしているわけではないわけです。具体的なメソドロジーだけ、提出されたものだけを評価しているということであります。これが非常に重要な要素でありまして、この決定はボランタリー・カーボン・マーケット、それからインテグリティに限定しています。その部分だけに限定しています。

我々がつくろうとしているのは新しいマーケットであって、ハイ・インテグリティのものを分けようとしているわけです。ボードとしては、現在の批判とか課題、REDD+に関するものは、そういったメソドロジーに関して我々が承認したものに当てはまらないと決定したわけです。6.2条に関してです。いろいろな国々が今、クレジットのトランスファーを承認、オーソライズしているわけです。アクティビティータイプによって。ですから、6.2に関してどうなっているかということはもちろん見守っております。でもフレームワークとしては、この6.2のリクワイアメントともきちんと整合性が取れていると我々は考えております。Explanatory notesに関してもそうです。

もう一つの点、御質問いただきましてありがとうございます。ICVCMのリクワイアメントとCORSIAプラスについてですけれども、どのリクワイアメントも、CORSIAのコンプライアンスが必要ですし、それプラスICVCMのフレームワークのコンプライアンスが必要となっています。ICVCMのリクワイアメントでCORSIAにないものもあります。全てのCORSIAの要件は、CCPプログラムの要件にもなっております。CCPプログラムは追加的にいくつかの要件をもっているということです。

【根本座長】

御質問の答えをいただきまして、ありがとうございます。私からも質問があります。Sheldrakeさんにお願いします。

まず1つ目ですけれども、投資家たち、またプロバイダーがどのような形でインセンティブを得て、クオリティーの高い証明を得ることができるのでしょうか。

そして2番目の質問ですが、最近の米国の政策の変更、そしてまたパリ協定からの脱退についてどう思いますか。これがVCMの市場にどういう影響を及ぼすと考えられるでしょうか。

また、ICVCMへの質問ですけれども、日本においては、御存じのようにJ-クレジットのような政府の認可するシステムがあります。また、日本企業の多くはグローバルに活動しており、海外投資家の評価も重要です。日本のクレジット市場がどのようにグローバルな市場とつながっていくのか、何か御提案はありますでしょうか。

【Lydia Sheldrake様】

ありがとうございます。御質問いただきありがとうございました。私の仲間のAisha Rodriguezがテクニカルマネジャーとして入っていますので、何かあったら追加してもらいたいと思います。私から申し上げるのは、投資家についてです。投資家は本当に重要な役割を持っていると思います。この市場の中で本当に重要な役割です。自分たちのインセンティブだけではなく、適切なインセンティブをつくって、そして条件をつくって、質の高いVCMをつくらなければいけないという役割があるわけです。

様々なインセンティブがあると思います。例えばバイヤーが、それによってクレームをする決心をするとか、また、この市場のコアの視点として、ボランタリー、自主的な炭素市場ですので、つまり、それによってVCMの特徴が決まってくるわけですよね。ですから、一番先、初期の段階から変わってくるわけです。ボランタリーですから、そのインセンティブとしては財務的な、または評判としてのリターンが企業にとって、バイヤーにとってもあるということです。

そして、その財務的なメリット、または評判を得られるという、このリターンがあるということが重要なわけです。そして、非常にインテグリティの高いアクションだとみなされることが重要です。そうでないと、よい評判を取ることができないと、そのメリットが得られないということでは駄目だからです。市場の今の課題としては、一つ、メディアの精査が非常に集中してくるということです。

そして市場のポジションとして、グリーンハッシングなどが行われているという、その脅威があるということ、これもより重要になると思います。このインテグリティを入れた標準化というのが重要なわけです。市場の信頼性を高め、そしてそれによってスケール、アクションにつなげていくということが重要だと考えます。

一つ関連して、全てのプレゼンテーションのテーマに関わってくると思うんですが、このようなツールやメソドロジーがいろいろありますけれども、標準化を図って、バイサイドもセルサイドもカバーしようとしているわけですよね。そして法的な契約をつくろうとしているわけですけれども、市場がそれによって成熟してきます。そしてまた、ただの自主的な市場から、ますます準規制がかかり、そして結局は規制のかかるカーボン市場になっていくんだと思います。そういった方向性にならなければならないと思います。だからこそこういったような議論が重要だと思うんです。

どのような規制につながっていくのか、どのような経路があるのか。つまり、A地点から、市場として、自主的な市場と言われているところから、プロジェクトベースの規制のかかった市場になっていく。そして、この第6条に合っているような、コンプライアンスメカニズムにあっているような市場になるということ、そしてそれにツールが使われるということ、そしてそれによって企業がアクションを起こすと。つまり、インテグリティがもうシステムに埋め込まれている形にしなければいけないと思います。

その評判のダイナミックのおかげでなるというよりは、自発的ですので、自発的なアクションからそういったものが生まれなければならないと思います。つまり、インセンティブをもって、よりこの規制、ポリシーベースのインセンティブにならなければいけないと思います。そして、より安定した、より成熟したインテグリティの高い市場にしなければいけないと思います。そうすると、投資家たちも自信を持って投資をすることができると思いますし、これによって、この強化のループができると、インセンティブの強化のループが出来上がると思います。

米国ですが、まだまだこれからいろいろ変わってくるのではないかと思うんですが、新政権が誕生して、今まで我々が見るところ、企業はまだコミットメントを持って、そして投資、そして購入を続けていると思います。一方的なクレームを出さずに、ということです。より不確実性がありますから。ただ、まだまだ継続的に、投資というのはコミットメントをもって、企業の気候のターゲットのためにカーボン取引は行われていくのではないでしょうか。

米国政策はカーボンマーケットについてどうなるのかまだ分かりません。これはイノベーティブで、そして、今までとは違うファイナンスのストリームですから。新しい米国政権に魅力があるようになればと思います。パリ協定から脱退したとかがありますけれども、これからも見守っていきたいと思います。

【根本座長】

ありがとうございます。

【Anton Tsvetov様】

追加的に私からコメントよろしいでしょうか。いろいろな経験があると思います。マーケットメカニズム、日本もそうですし、先ほどお話があったようなVCMでつくったようなメカニズムもあると思います。でも常に国内、それから海外、それから多くの状況というのがあって、それぞれの規制当局がどういうふうに見て、プログラムがどのように発展していくか、ユースケースによって発展も違うと思います。そういったメカニズムの下でのクレジットの生成にはそういった要素が絡んでくると思います。

我々ICVCMでは、多くのベネフィットがあると考えています。つまりクレジットのメカニズムを規制、それからプライベートのほう両方でブリッジングしていくことにはベネフィットがあると思っております。クオリティーを合わせていくという意味です。市場全体が向上すると思います。内部的につながっていないとしても、全体的なマーケットを向上するという恩恵があると思います。

Lydiaさんからお話がありましたけれども、重要なポイントとして、規制のサプライサイドと、それから使用とか需要サイドの規制、両方の規制です。政府が両方見ていくわけですが、それとクレジットメカニズムの規制がどういうふうになるかによって、国際的なマーケットとかユーザーにシグナルを送ることになると思います。基本的には政府があって、そしてクレジットメーカーに監督していくわけです。どういうクオリティーなのかについてもそうです。

それによって、特に何らかのコンプライアンスというのがあって、それによって会社のいろいろな企業のいろんな行動を奨励したりするわけです。規制システムの中にそのような動きがあります。これは非常に重要なシグナルです。政府がどうやってそれを使うか、国内のメカニズム、それから海外のメカニズム、それから自主的なメカニズムを監督する上でのことです。

大きなシグナルとしては、どのように政府が考えているのか、コンプライアンスグレードをどう考えるのかということです。それからクレジットに関して、これは非常に市場に対するパワフルなシグナルになると思います。

私たちとしても、どうしたらアライメントがより取れるのか、我々の組織は民間のほうですけれども、協力したいと思います。ぜひいろいろな対話にも参加して、政府規制当局、そちらのクレジットメカニズムを監督されているわけですが、アジア太平洋でもそうだと思いますが、そういったところとエンゲージメントをどんどんしていきたいと思っております。それから行政団体、行政機関のリクワイアメントなどのディスカッションも入っていきたいと思っています。

つまり、どのような形でCCPの認定を受けたプログラムメソドロジーとどう関連するのか、などについてです。それに関しては、我々の機関の中でも、どの評価について、これはフォーマルなプロセスですので、具体的にどういうふうにマッピングするかというのはまだ持っていませんが、そういった会話には今後とも参加していきたいと思っています。

今後、いろいろなマーケット同士の標準化が起こる中で、それから相互関連が高まる中で、資料全体として成長を促すような形にしていきたいと思っております。コモディティ、どんなアセットであってもハーモナイズされたルールがあれば、市場の発展に役立つと思います。インテグリティがあれば、スケールアップに役立つと思います。

【根本座長】

コメント、御提案ありがとうございます。ほかに質問はございますか。

それでは、全プレゼンターへの質問や御意見も募集いたします。ICVCM様、VCMI様も最後まで御出席いただけると聞いていますので、追加であれば御質問いただいて構いません。

御発言を希望される方は、Webexのチャット機能でお名前を記入いただければと思います。それを確認の上、指名させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。なお、御質問は簡潔にお願いいたします。

では、吉高様、お願いいたします。

【吉高メンバー】

ISDAの方でもよろしいですか。

【根本座長】

はい、結構です。

【吉高メンバー】

ありがとうございます。ISDAは基本的には大手金融機関がデリバティブ取引で、いろいろと締結しているのですが、今までしていない企業というのは、実際にこのISDAのマスター契約というのはどの程度取引されているか教えていただけますでしょうか。

【森田様】

御質問ありがとうございます。ISDAのマスター契約をどの程度というところは具体的なデータはないですけれども、金融機関間であれば、ほぼ100%と言えるかなと思っております。あと、特に恐らく外資系の金融機関中心ですけれども、金融機関だけではなくて、バイサイドであったりとか、平常行うような事業法人との取引についてもISDAマスターを契約しているというケースが大分増えてきていると認識しております。

【吉高メンバー】

分かりました。では、やはり金融機関中心ということですね。ありがとうございます。以前、カーボン・クレジットのときもたしかISDAでもそういったフォーマットをつくられて、当時、IETA、国際排出権取引協会でもひな形があって、今もあるでしょうか、VCMに関してIETAのほうでも。どうでしょう。契約のひな形をほかに持っているところとかはありますでしょうか。

【森田様】

IETAも、VCCに関する契約書を公表しております。

【吉高メンバー】

ありがとうございます。以上です。

【根本座長】

どうもありがとうございました。ほかにありますでしょうか。では河村様、コメントということでお願いいたします。

【河村メンバー】

貴重なご説明ありがとうございました。議論いただきたいポイントということで、今回いただいたプレゼンを受けた上での我が国における取引実務に対しての示唆であったり、2番目のポイントにも入ってくるのですけど、カーボン・クレジット取引・市場の需給や取引の在り方、また、売手・買手の視点からの重要な点という点について私見をコメントさせていただきたいと思います。

まずカーボン・クレジット市場については、世界的な脱炭素の動きもございますので、私個人的にも、個社としましても、需要は今後とも伸びていくものと考えています。その中で、売手側として重要な点というのは、プロジェクトの信頼性をしっかり確保していくことでありまして、まさに本日プレゼンいただいたように、インテグリティの確保というのが最重要の課題になってくると思います。

いろんな視点でインテグリティを確保していかなきゃいけないと思いますし、カーボン・クレジットの世界では既に言われている内容ですけども、追加性であったり、恒久性という点をしっかり売手としても担保していくべきであると改めて強く感じた次第です。

一方、買手の視点からしますと、購入するクレジットの品質評価というのが最も重要になってくると思っております。認証機関をしっかり経ていることは当然ですけれども、グリーンウォッシュの批判や、自社のレピュテーションリスクの回避というものにもしっかり備えていただく必要があろうかと思います。また、ISDAさんからも御説明いただきましたけれども、先物だったり、デリバティブというような手法、まだ弊社のほうでもクレジットのトレーディングで先物デリバティブというのは取り入れていないですけども、石油製品だったり、鉄鋼製品というコモディティトレーディングでは、当然導入済みですので、将来的にはカーボン・クレジットの売買においても同様の手法を駆使していくという点が今後の課題になろうかと思います。

2点目の情報開示についてですが、購入したクレジットの種類、認証機関、具体的な使用目的などをしっかり明示していくということが大事かなと思います。また、企業自身の削減努力というのをまずは明確にされた上で、クレジット利用はあくまで補完的な策であるということをはっきり明記していくことというのも大事かと思います。安易にクレジット利用したという形で批判をされるということもありまして、せっかく費用を掛けてクレジットを購入されたのであれば、それが批判の対象とされることはあってはならないことだと思いますので、そういった意味でも自社の長期的なネットゼロ目標との整合性、すなわち明確な脱炭素戦略というのを個社で構築されるということが改めて重要であると思った次第でございます。

長くなってしまいましたが、以上です。

【根本座長】

御意見ありがとうございます。では小圷様、お願いいたします。

【小圷メンバー】

IGESの小圷です。本日は、ICVCM、VCMI、ISDAさん、あとENEOSの発表、ありがとうございました。私からは、議論の3点目のところにつきましてコメントさせていただければと思います。

本日いろいろと御議論いただいて、今後5月、6月に向けて報告書を取りまとめていくということで、これまでの議論も含めて、どういった形で取りまとめていくかについて、このハイレベルな内容で、特に投資家保護を促進する観点、あとはもちろんこのトピックにも入っていますけど、取引の透明性ですとか健全性、こういった観点で取りまとめていくという方向性については、もちろん賛同しております。

これをどういう形でまとめていくかというところは、今後の議論を含めて事務局のほうでも考えられていると思いますが、私が考えているのは、一つは国内制度、特にGX-ETSとの文脈というのは非常に重要だと思っています。ただ一方で、このGX-ETSというのはコンプライアンスのマーケットに向けていくということで、ボランタリーの取組も含めてということかなと思いますので、そういう意味では、先ほどのVCMI・Lydiaさんからもあったように、どちらかというと、ある意味、企業の取組を促進していきながら、なるべくGX-ETSでやっていけるというところに向けた移行みたいなものも、添えていけるといいのかなと思っております。

そういった観点で、例えば今回の発表にもありましたようにグッドプラクティス的なところ、国際的な取組としてどういう取組が行われているのか、その下で企業がどういった報告とか、どういった取組をしているのかというような事例集みたいなものとか、そういう成功事例とか、そういったもの。あとはそれ以外に、投資家保護という観点ですと、もう少し取引に関する商習慣みたいなところですね。今日も法的な位置づけとか取引に関する国際的な動向とかも、ISDAさんのほうからも御発表があったように、そういうところも今回のこの検討会には重要なことかなと思っております。

あとは、これもVCMIさんからも発表があったように、どうやってこの自社の取組を公開していくか、そういったことに対して社会的な評価を得ていけるのかということで、例えばグリーンハウスガスプロトコル(GHGP)とか、TCFDとかは結構日本の企業の中でも非常に知名度は高まってきていると思うんですけども、そういったものを活用しているだけでいいのかとか、それ以外にどういったやり方があるのかとか、そういったいろんな評価のフレームワークとか、それをどう企業として広報していくのがいいかとか、そういったこともこのグッドプラクティスとかに含めていけるといいんじゃないかなとは思います。

まだまだ情報があまりない中で、どういうふうにやっていくのかというところが見えないところがあるので、そういった中身をこういう検討会の報告とか、どういう形で取りまとめていくかというのはあるんですけども、そういったものを国内の取組、取り組んでいる企業ですとか、あとは後々、そういったことをGX-ETSとかでも活用していけるような形にしていけるといいかなと思っております。

というあたりで、あとは今後の政府内での対応とかも、それぞれ経済産業省さんとか、環境省さんとか、金融庁さん、それ以外の関係省庁もあると思いますので、そういったところがどういう形で包括的に対応していけるかというのも併せて、これは政府内での議論かもしれませんけども、特に今回のこの金融庁さんの検討会は、特にこの投資家保護の観点と理解しておりますので、そういう観点からというような取りまとめができるといいかなと思っておりますので。少し私はグッドプラクティス的なところがもっとたくさんあるといいんじゃないかなと思っているところです。

以上です。ありがとうございます。

【根本座長】

ありがとうございます。では江夏様、お願いいたします。

【江夏メンバー】

野村資本市場研究所の江夏でございます。御発表の感想といたしまして、サステナブルファイナンス市場と同じく、インテグリティ(誠実さ)、クレディビリティ(信頼性)、それからトランスペアレンシー(透明性)の確保を最重要視しながら、取組を進めていらっしゃることが改めて確認できたと思っています。

その上で、御議論いただきたい事項の1点目について、日本における取引実務において、国際的なイニシアチブにおける議論も踏まえて、国際的な整合性が確保できるよう、かつ、グリーンウォッシュが発生しないように、各種お取組を検討、制度設計することが大切と感じています。

その観点からは、ISDAの森田様の資料の4ページ目にございましたグリーンウォッシュの防止と市場の信頼性向上に関して、具体的にどんなお取組をしていらっしゃるかというところが気になるところです。

一方で、例えばEUでは、競争力強化の観点から、CSRD、CSDDD、タクソノミー規則、CBAMについて、企業の規制負担対応の負担軽減を意図したオムニバス法案を策定する動きが見られています。日本で、仮に何らかの制度を検討する場合、カーボン・クレジット市場の活性化を阻むような過度な負担にならないような仕組みを検討するのも重要と考えています。

御議論いただきたい内容の2点目の後半の情報開示につきまして、先ほどの小圷様の御発言にもありましたとおり、私もグッドプラクティス、ベストプラクティスが蓄積していくことが大切と考えています。例えば金融庁では、情報開示のベストプラクティスを「記述情報の開示の好事例集」という形で公表しており、カーボン・クレジットについてもこのような形で情報開示事例を示すというのは検討に値し得ると思っています。

加えて、取引関連統計、データを網羅的に整備して、広く産業界、金融市場が参照できるようにするということが、円滑に情報開示を促すということにもつながり得るのではないかと考えています。

御議論いただきたい内容の3点目につきまして、基本的に取りまとめの方向性案や今後の進め方案について、現時点で必要な論点は網羅されていると考えています。その上で、本検討会でこれまでに様々な業態のステークホルダーの方々、具体的には金融機関、証券会社、商社、保険会社等がお取組を発表してこられましたが、そういった多様な読者層それぞれに訴求できるような工夫があってもよいかと考えています。

例えば各ステークホルダーが、それぞれどこを重点的に読み、意識すればよいのか分かるようにする、であるとか、取りまとめの説明会を開催するといったようなことが考え得るかと思っています。以上です。

【根本座長】

ありがとうございます。鶴野様、お願いいたします。

【鶴野メンバー】

ありがとうございます。御議論いただきたい事項の2点目、3点目に関してコメントさせていただきます。

まずお取りまとめの方向性に賛成いたします。その上で、先ほどのVCMIのLydiaさんのお話も踏まえて、1点コメントさせていただきます。17ページの取りまとめの方向性の4番のクレジット買主に関する事項ということで、クレジット評価、保険サービスの活用のあり方と、開示についての2点が記載されております。これに加えて、買手側の気候戦略の中でクレジットがどう位置づけられているのかということを明確にすることも極めて重要なことと思っております。

この点については、本日VCMIさんのステップ1からステップ4のご説明がありましたが、ステップ1のところで、短期・長期の削減目標を明確にして、ステップ2で短期目標とクレジットの活用方法というところの関係性を示すということが求められていました。関連して、IOSCOのファイナルレポートでも、グッドプラクティスには含まれていませんでしたが、49ページに、カーボン・クレジットのcredibleな使用というところで、企業の直接排出削減の代替としてではなく、補助的な手段として活用すべきというVCMIさんのコメントが引用されておりました。

また、14ページのイギリスのプリンシプルのところでも、1つ目のところでUse credits in addition to ambitious actionsという形で明記されており、4つ目では「計画を立てる」として、長期的な目標とそのための戦略を策定するというところが記載されています。

このようにVCMI、IOSCO、イギリスのプリンシプルでも明記されている戦略との関わりというところを、強調していく必要があるのかなと。先ほど三菱商事の河村さんの言われたこととも重複するかと思いますが、そういったところが重要と思いました。以上になります。

【根本座長】

ありがとうございます。髙梨様、お願いいたします。

【髙梨メンバー】

SMBCの髙梨でございます。本日は御説明いろいろありがとうございます。それぞれ御議論いただきたい事項について簡単に幾つか申し上げられればと思います。

まず1つ目のところですが、もちろん議論はいろいろあるということは認識した上で、あえて少し申し上げたいところもございます。一つは、そもそもこういったガイドラインそのものについては非常に有意義だなと思っておりますし、より流動性を高めることにつながるともちろん考えておりますが、こういった各ガイドラインの今までの動きが、我が国での取引実務に対してどのような示唆があるかという点について申し上げますと、今のところ、例えばCCP-eligibleのボリュームはあまり大きくないという話もございまして、いろんな理由がある、まだ全部見切れていないという話もございましたが、これはボリュームがあまり大きくない背景・理由をもう少ししっかり検証したほうがいいかなと思っています。検証した上で、基準が厳しいことが理由なのであれば、結局流動性があまり高まらないといったようなことがあると本末転倒だと思いますので、例えばちゃんと予見性を持った上で段階的に厳しくしていくとか、そういったようなこともひょっとするとあるかもしれないなと思っております。

2つ目の点についてですが、金融機関は、売手、買手両方の立場があり得るわけですけど、特に例えば我々として流動性を供給するためにリスクを取る、在庫として取る場合には、リスクマネジメントの観点からは、価格情報と流動性、ここら辺が非常に重要になってくると思っております。2点目で言われている情報開示のところについては、いろんな情報開示のイニシアチブがございますので、開示方法が統一されるということが重要かなと思っております。

最後、御議論いただきたい事項の3点目のところでございますが、取りまとめた方向性そのものについては賛同するところでございます。一方で、どなたかも先ほどおっしゃっておられましたけど、例えば環境省さん等も、カーボン・オフセットガイドラインなども出していたりされております。今回の論点整理の骨子の中の、その開示の在り方みたいなところは結構かぶっていたりするような印象を受けておりますので、これがばらばらで出ると、参照する人間としても混乱すると思いますので、ばらばらと出ないように整理する必要があるのではないかなと思います。

私からは以上です。ありがとうございます。

【根本座長】

どうもありがとうございました。ほかに御質問はありますか。御質問あるいはコメント、あるいはプレゼンターの方で何か言い残されたこととか、言っておきたいことがあったらおっしゃってください。

それでは、まだ発言されていない方で、御発言なさりたい方がいらしたらお願いいたします。吉戒さん、お願いいたします。

【吉戒メンバー】

ありがとうございます。簡単に今日の議論いただきたい事項の3点目についてだけ、申し上げます。

まだまだ国内のカーボン・クレジット市場というのはまさに黎明期という認識だと思います。従いまして、現段階であまり厳格な取引規制の導入とか、詳細な行動規範の策定、こういった方向性をあまり強く打ち出すというのは、ここに書いてあるとおりまさに時期尚早というところ、これは全く同意見であります。取りまとめの方向性にもありますように、今は、最低限のガバナンスを利かせて、取引の拡大と多様化を進めることに軸足を置いたほうがいいのではないかと考えます。

また、論点整理の骨子にもありますが、オフセットに関する利用の開示というのは非常に重要だと思います。国内で開示基準が最終化され、義務化されるというのはまだもう少し先だと思いますが、透明性が向上すれば、これは投資家にとって利用実態を把握でき、投資の意思決定ができるという意味では極めて有益ではないかということで期待したいと思います。

【根本座長】

どうもありがとうございました。では武川様、お願いいたします。

【武川メンバー】

武川でございます。私も御議論いただきたい事項の3点目についてコメントですが、全く同じコメントでして、現段階ではあまり強い規制をかけるというよりも、まずはマーケットの発展を待ちながら、適切な形で対応していくということが望ましいのではないかと考えております。

ただその一方で、ここにも書いてあることですが、論点整理をしておくことは非常に重要じゃないかなと思っていまして。どういった点が問題となり得るのか、もっとストレートに言うと、将来規制をするとすれば、どういった規制があり得るのかと、やるかやらないかは別にして、あり得るのかという、その方向性というか、論点出しについては、現時点で行っておくことが望ましいのではないかと考えております。

以上でございます。

【根本座長】

ありがとうございます。黒﨑様、コメントとかございますか。

【黒﨑メンバー】

ありがとうございます。移動中につきメールでコメントをさせていただけたらと思います。申し訳ありません。ありがとうございます。

【根本座長】

了解いたしました。

それでは、本日も活発な御議論ありがとうございました。また、発表者の方、お時間を取っていただいて貴重なご発表・コメントをありがとうございました。

【高岡サステナブルファイナンス推進室長】

事務局の金融庁、高岡でございます。本日も皆様、お忙しいところどうもありがとうございました。

いつもどおりではあるんですけれども、プレゼンターの方に対して、今日は質問できなかったけれども、どうしてもこれは聞いておきたいですとか、あるいは今日御議論いただきたい事項ということで、お示しさせていただいたことについて、追加的なコメント等、もしございましたら、事務局にお寄せいただけましたら、そちらも踏まえて今後の取りまとめに活用させていただくとともに、次回の会合で必要に応じて御紹介等をさせていただければと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

事務局からは以上になります。

【根本座長】

ありがとうございます。次回の日程調整は、事務局から御連絡をさせていただきます。

以上をもちまして、本日の会議を終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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総合政策局総合政策課サステナブルファイナンス推進室(内線5363、3515)

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