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「カーボン・クレジット取引に関する金融インフラのあり方等に係る検討会」(第6回)議事録
- 日時:令和7年4月11日(金曜日)10時00分~12時00分
- 会場:中央合同庁舎7号館 9階 905B会議室 及び オンライン
【根本座長】
それでは、定刻となりましたので、議事を開始させていただきます。カーボン・クレジット取引に関する金融インフラのあり方等に係る検討会(第6回)となります。
座長を務めます、早稲田大学の根本です。皆様、御多忙の中、御参集いただいてありがとうございます。
議事に入る前にメンバーの変更が一部ございましたので、御紹介したいと思います。全国銀行協会・三菱UFJ銀行の天田様です。オンラインで参加ということです。
それから、続きまして、ENEOSの根本様です。
本日、本検討会の報告書の素案について事務局より説明した後に、皆様の議論を予定しております。ぜひ活発な御議論をお願いしたいと思います。
では、事務局の金融庁から御説明をお願いいたします。
【森サステナブルファイナンス推進室課長補佐】
事務局でございます。お手元に横長の「事務局資料」という資料をお配りしております。めくっていただいて、今後の進め方ということで、こちらは前回、第5回の資料と同じ、再掲になりますけれども、これまでの議論で投資家保護の観点から様々な論点が指摘され、IOSCO、米国及び英国においてハイレベルな提言・原則が示されているといった例も踏まえまして、我が国においても、ハイレベルな原則の策定につなげることを見据えつつ、まずは投資家保護を促進する上での重要な論点を整理する形で取りまとめることとしてはどうかとお示しさせていただきました。
その際、このページの一番下ですけれども、今後のスケジュールということで、4月に報告書の素案、5月から6月にかけて報告書の取りまとめと記載しておりましたので、後ほど御説明いたしますけれども、報告書の素案を今回お手元に御用意してございます。
めくっていただいて3ページ、取りまとめの方向性、こちらも第5回資料の再掲になりますけれども、大きく2つ、ローマ数字のⅠのところ、足元の取引に係るストックテイクの成果ということで、これまで金融界を中心にヒアリングしてまいりましたところをまとめると。後半部分が、ローマ数字Ⅱの論点整理ということで、IOSCOの整理なども参照しつつ、大きく4つの観点から整理をすると。
1つ目は、取引の透明性・健全性を確保する上での基本的事項、2つ目が、取引仲介者・クレジット売主に関する事項、3つ目が、取引所・取引インフラに関する事項、4つ目が、クレジット買主に関する事項ということで、それぞれ論点を整理することでどうかという形で前回お示しさせていただきました。こちらを踏まえまして、お手元に報告書の素案をお配りしております。縦長の紙になります。めくっていただいて、最初に目次になりますけれども、前半部分で、カーボン・クレジット取引に係る実態把握、先ほどのストックテイクの成果をまとめていると。3ポツで、透明性・健全性向上に係る論点整理という形で後半部分をまとめていると、こういった構成になっております。
続けて、1ページですけれども、1.はじめにということで、報告書の位置づけを記載しております。最初の段落ですけれども、カーボン・クレジットは、脱炭素の取組に経済的なインセンティブ付けをする等、2050年カーボンニュートラル実現において重要な役割を担うことが期待されている。また、今後もより一層の取引拡大・多様化が見込まれると。こういった中で、他の金融資産同様に、カーボン・クレジット取引の健全な発展のためには、その透明性・健全性の向上による投資家保護の確保が重要であるということをここで改めて書いております。
続けて、国際的な文脈について第2段落で触れておりまして、第3、第4段落で本検討会を昨年6月に開始して議論を行ってきたということを書いております。このページ一番下の段落で書いておりますのは、この報告書では、取引面・インフラ面での透明性・健全性、Financial Integrityと言ったりしますけれども、こういった観点から論点整理を行って、市場の健全な発展に資することを企図したものであると。個々のクレジットの商品性及び環境面での健全性、これはEnvironmental Integrityと言ったりしますけれども、その在り方自体規定するものではないと。
続けて、2ページの一番上ですけれども、2026年度から本格稼働が予定されている排出量取引制度に係る議論に立ち入るものではないというところです。
続けて、「また」のところですけれども、カーボン・クレジットを念頭に議論や記載を行っておりますけれども、特に海外などで自然資本といった他の環境価値に係る商品も出てきているという中で、仮に取引面やインフラ面の実態が同様である場合には、この報告書に書いている論点も同様に妥当し得るのではないかということをここで書いております。
3ページからが2ポツの実態把握をまとめた章になってございまして、(1)で前提として、カーボン・クレジットとは何かという概念整理をここで再確認しております。
4ページは、この概念整理に関連して、第1回事務局資料でも入れておりました図をつけてございます。
5ページは、カーボン・クレジットの商品としての特徴を幾つかの観点から記載しております。①組成の方法論ということで、回避系・除去系・技術由来・自然由来といった様々な方法論で組成がされていると。
②信頼性ですけれども、実際に温室効果ガスの削減に貢献しているのかという、このクレジットの信頼性が非常に重要な価値の核心を構成するものであって、市場全体への信頼性にも影響し得るものであるがゆえに、これが非常に重要なところであると記載しております。
めくっていただいて、③コベネフィットは、温室効果ガスの削減価値以外の付随的価値ということで幾つかあると。
④は、後ほど保険にも絡みますけれども、他の商品や取引同様に様々なリスクがあり得ると。
(3)取引動向ですけれども、我が国においては現状、主にJ-クレジットや海外ボランタリー・クレジットの取引が見られるということで記載しております。
7ページの上から3行目の段落におきましては、現状、取引主体は主に法人であると。特に大企業の取引が多いと。市場全体としては黎明期にあるものと考えられております。
(4)需要に影響を与える要因というところで、大きくオフセット目的と投資目的、2つあり得るという中で、オフセットとの関係では、例えば温対法ですとか、あるいはボランタリーの制度との関係でオフセットに利用したいと、そういった需要があるというところです。
めくっていただいて8ページ、(5)は、供給面で影響を与える要因というところで、組成に係るコストと売却価格の見通し、大きく2つあり得ると。現状、供給量は限定的という意見も多くいただいたところです。
9ページが取引エコシステムにおける各機能の現況というところで、これまで様々な関係者の皆様からヒアリングさせていただいたところをまとめております。この真ん中の図になりますけれども、真ん中に取引プラットフォームがありまして、左手に売主、右手に買主で、上のほうに仲介者がおりますけれども、それぞれについてヒアリングした結果をまとめております。
①が取引プラットフォームの状況というところで、大きく市場型とマーケットプレイス型がございまして、それぞれからヒアリングしてきたところをまとめております。
10ページの下のほうの段落、「これらの」から始まるところですけれども、国内においては現物取引が行われているというところですけれども、海外には、加えてデリバティブ取引も活発に行われている例があると、そういった辺りを御紹介しております。
②は、売買に係る仲介の状況というところでして、IOSCO報告書においてもその重要性が指摘されていたところで、実際、市場取引、相対取引、様々な場面でこういった仲介が行われているというところ。
③は、クレジット組成支援の状況というところで、金融機関等が組成段階から関与して供給量増加に貢献しようと、そういった例が見られるというところを御紹介しております。
④は、カーボン・クレジットを活用した金融関連商品の組成の状況というところで、例えば、カーボン・オフセット私募債ですとか、様々な金融商品に関連づけて活用しようという取組、御紹介いただいたところをまとめております。
⑤は、クレジットのリスク管理及び信頼性評価の状況というところで、例えばカーボン・クレジットに係る保険の動きですとか、クレジットの信頼性について評価を行う機関、この辺りについてヒアリングしたところをまとめております。
⑥は、テック活用の状況ということで、ブロックチェーン、API、AI等の様々なデジタル技術、フィンテックを用いることにより、実務・商品の効率化・高度化を図っている例が見られるというところで御紹介してございます。
15ページですけれども、3ポツ、論点整理というところで、後半部分、論点整理を行っております。こちらの図にお示ししているような4つの観点から論点を整理しております。
まず1つ目、全ての主体に関係し得るということで基本的事項ということですけれども、①適切な情報開示、利益相反の防止、関係法令の遵守が重要であるということを記載しております。
16ページ、②ですけれども、取引参加者の知識・経験等の適格性ということで、まだ市場が黎明期という中で、関連する制度、商品性が複雑、多様且つ変化が激しいという中で、なかなか理解が容易でないと、そういった御指摘も多くございました。そういった中では、知識・経験等をキャパシティ・ビルディングしていくと、これが非常に重要であるというところをここで記載しております。
③ですけれども、黎明期ということや様々な関係者がいるという中で、実務の創意工夫や関係者間連携が重要であろうということで記載しております。
17ページ、④は、法的性質や会計上の位置づけについても必要な整理が行われることが、取引の拡大や高度化を進める上でも重要であるということで記載してございます。
18ページ、(2)ですけれども、取引仲介者・クレジット売主に関する事項ということで、まず、①顧客属性等に応じた適切な商品説明・販売が重要であるというところで、これは顧客保護・投資家保護の言わば大前提ということで、売主が金融機関であるかそうでないかを問わず求められる事項と記載してございます。カーボン・クレジット、先ほども触れましたけれども、目的であったり商品性も非常に多種多様であるという中で、特に知識・経験等が十分でない、そういった買主との関係では、情報の非対称性が存在し得ると。そういった中で、買主の目的・知識・経験といった顧客属性を踏まえつつ、適切な説明を行うことが重要であるとしております。
また、カーボン・クレジットそのものだけではなく、これを組み込んだ関連商品、トークン、サービス等を提供する場合においても、適切な説明を行うことが重要であると。特に個人等を相手方とする場合には、十分に丁寧な説明が期待されるとしております。
②も同様に、金融事業者との関係では、「顧客本位の業務運営に関する原則」を踏まえて、情報提供等を行うことが重要であるというところですし、金融事業者でなくても、そういった観点から情報提供等をしっかり行っていくことが望ましいとしております。
19ページ、③は、取引仲介者におけるリスク管理を適切に行うことを記載しております。
(3)取引所・取引インフラに関する事項ですけれども、登録簿の正確性の確保、公正な市場アクセス・取引の確保が重要であると記載しております。
20ページ、②ですけれども、取引所・決済インフラのリスク管理というところで、これが重要であるという中で、オペレーショナルリスクでしたり、決済におけるカウンターパーティーリスクの低減について様々な取組を御紹介いただいたところですけれども、それを御紹介しつつ、こういったところをしっかり行っていくことが期待されるとしております。
③は、取引の標準化という観点で、先ほど非常に商品が多様である、実務は黎明期であると申し上げましたけれども、市場の分断を克服し、市場を拡大・スケールさせる上でこういった標準化が有益であるとしております。
21ページ、④デリバティブ取引に係る留意事項というところで、特に海外では活発に行われている例があるという中で、IOSCO報告書でも指摘がありますし、米国のCFTCにおいてもガイダンスが出ております。ISDAにおいても定義集が出ております。こういったところを踏まえまして、我が国において将来的にこういった取引が行われるようになる場合に備えて、必要な環境整備に向けた研究を進めることが重要であるとしております。
⑤は、クレジットの信頼性を評価する評価機関について、しっかりベストプラクティスを履践していくことが有益であるとしております。
22ページ、(4)クレジット買主に関する事項ですけれども、①は、クレジット評価や保険サービスを活用することでクレジットに係るリスクを、特に信頼性に関する点を管理し得るというところですけれども、御指摘いただきましたとおり、買主としてはそれに100%依拠するのではなくて、自分自身しっかり商品性・信頼性の把握を行うことが重要であるとしております。
②は、カーボン・オフセットに係る開示の在り方ということで、クレジットをオフセットに利用した場合に、関係者による誤解を避けて適切な評価を受けるという観点からは、こういったオフセットの詳細についてしっかり開示を行うことが重要であるというところで、ISSB、SSBJ、環境省の指針やガイドライン、VCMIのCode of Practice等で様々な記載がございますけれども、こういったところを踏まえて適切な情報開示を行うことが期待されるとしております。
③ですけれども、カーボン・クレジットの利用者は、自社のバリューチェーン内の排出削減努力を優先して、オフセットは補完的な手段として検討するということが重要であると記載しております。
最後24ページ、4.おわりにですけれども、本検討会・本報告書では、現状把握を行った上で論点整理を行ったと。その中で、関連制度が複雑であったり、多様、変化が激しい、関係者間連携が重要、適切な説明を励行する必要、その他様々な観点が取り上げられました。
今後というところですけれども、関係者においては、こうした論点整理を踏まえ、更なる取組の深化が期待される。その上で、冒頭触れたところですけれども、こういった論点整理を踏まえた形でカーボン・クレジット取引の透明性・健全性に係るハイレベルな原則の策定に今後つなげられることが期待されるとしております。
以上がお手元の報告書素案の御説明になります。
【根本座長】
どうも御説明ありがとうございました。
それでは、議論のほうに移りたいと思います。御発言を希望される方は、お手元の名札を立てていただき、オンライン参加の方は、Webexのチャット機能で全員宛てにお名前を記入いただければと思います。また、事務局に対する御質問である場合は、その旨を併せてお伝え願えればと思います。では、よろしくお願いいたします。
武川様、お願いいたします。
【武川メンバー】
ありがとうございます。武川でございます。まとめについて私のほうからは何点か申し上げたいんですが、その前に、全体として非常にすっきりと簡にして要を得た形でまとめていただいているなと思っていまして、基本的にこの骨組みというか、形でやっていただくことでいいのではないかというふうにまず考えております。
その上で、細かいところも含めてというところですけれども、ページでいうと10ページの下から11ページの上にかけて、これは非常に細かい点で質問になるかもしれないんですけれども、市場でのデリバティブ取引が可能となっている。いずれも現金決済ではなく満期に実際にクレジットの現物を引き渡すことが求められる現物決済に限定されておりというふうにあるんですが、これはちょっと私、状況を存じ上げていないんですが、デリバティブ取引といった場合には、通常は反対売買によって差金決済できるものをデリバティブ取引というのかなという気もしていて、本当に現物での決済が必要になるのであれば、それは先渡取引と通常言われるんじゃないかという気もしていて、先物取引でももちろん最後までポジションを持ち続けていれば、現物を決済するということの意味としておっしゃっているのであれば正しいような気がするんですが、本当に反対売買による差金決済というのはできない形で行われているかというのは、これは私、存じ上げていないので御確認いただいたほうがいいのかなと思っております。すみません、細かいところです、今のは。
それから、16ページ辺り、16ページの③です。いろんな実務の創意工夫、関係者の連携といったところでベストプラクティスということで、この発想というのは、その前の①のところも含めて、ベストプラクティスを活用していくというところが16ページに複数ございます。これは賛成でして、こういった形でやっていくのがいいのかなと思っているんですが、この報告書の内容を変えてほしいとかということじゃなくて、実際やっていて難しいのは、そのベストプラクティスを実務上どうやってつくって共有していくのかという、そこがやはり関係者にとっては求められる部分になってくる。それを今後どういうふうにやっていくかということは、引き続き議論が必要なんだろうと思います。
抽象的に言ってもあれなので、例えばこういうところが悩ましいんですよねということをお伝えすると、例えば金融機関が最近、カーボン・クレジットの仲介なんかも始めていますけれども、お客さんにボランタリー・カーボン・クレジットを売りますというときに、じゃあ、どういう説明をするんですかと。何にも説明しないわけにもいかないですよねって、皆さんそう思われているんですよね。じゃあ、実際にどこまでどういうふうな説明が必要なんでしょうかというところで、これは現場で実はもう起きていることで、我々なりにはこのぐらいじゃないかということを申し上げてやってはいるんですけれども、じゃあこれ、業界横断的に何か話す場があるかと言われると、ちょっとまだそういうところに行っていないと思いますし、多分皆さん、各金融機関、悩まれているんじゃないかというふうに思います。そういった中で、このぐらいなんですよねという相場感をあんまり話しちゃうとまずいという話もあるかもしれない一方で、競争法とかある一方で、ただやっぱり何らかの形でそういったことを話す場というのは必要なんじゃないかという気もしていて、今後の実務の課題としてそういった点を認識しているということは1点申し上げておきたいと思います。それが2点目です。
3点目が、17ページの④の法的性質・会計上の位置付けなんですけれども、ここについても記述の内容はそのとおりかなと思っています。2点ほど視点として重要なところを御指摘申し上げたいなと思うんですが、UNIDROITで今議論がされているんですよね。このボランタリー・カーボン・クレジットって、いろんな国に法律家と議論しているんですけど、当然、国によってその法的性質が異なり得るんですよね。同じものを対象にしているんですけど、日本で見たらこうだけど、イギリスで見たらこうですとかいう形で、一応、理論的には法的性質というのが国によって捉え方が違い得る、同じものなのにもかかわらずという部分がございます。そういう意味では、これはやれるかやれないかというのは難しいところがあるんですけど、やっぱり法的性質の議論において国際的なある程度の統一性、全く同じというのは無理にしても、各国で相互に矛盾することがないような一定の統一性がある形で議論が進むということは私は重要じゃないかと思っていまして、実際、ここにも引用していただいた金融法委員会での議論でもそういった点はかなり参照しながら議論はしております。それがこの法的性質の1点目です、視点として。国際的な統一感。完全に統一というのは難しいにしても、統一感が必要じゃないかと。
もう一つ、ここに書かれていないこととして、これは何のために法的性質の議論をするのかというところがあって、もちろんそれ自体が重要だというのはあるんですが、法的性質の議論が重要な理由というのは、1つは金融規制法上の位置づけがこれによってひょっとしたら変わり得るかもしれないからというところがあると思っていまして、その点どうなのかというところはあると思います。ただ、金融規制上の法的性質というのは、金融規制上の扱いというのは法的性質と直接にリンクするものではないので、非常に重要ということでもないのかなというふうには思います。
もう一つが、譲渡の効力発生要件とか有効要件、あるいは対抗要件という概念が必要なのかといった、そもそもこのカーボン・クレジットって譲渡されているんでしょうかといったところの議論において法的性質が非常に重要な要素を占めるので、やっぱり決済インフラとも絡むんですけど、法的性質を議論している背景としてこういったことがあるのだということは一言述べていただいてもいいかもしれないと思いました。実際、金融法委員会での議論というのは、まさにこの難しい問題を何とか解決しようということで解釈上のいろんな提案を行っているところでございます。
最後に、19ページの取引所・取引インフラに関する事項のところです。①の登録簿等々の取引インフラの部分なんですが、これはちょっと松尾さんの御意見をお聞きしたいんですけど、登録簿が正確であることとか、そういったことはもちろん大事なんですけど、今後取引が非常に盛んになってきた暁には、もう一つ、Delivery Versus Paymentですね。お金と現物の決済の同時履行性を確保したり、あるいはReal-Time Gross Settlementのような、そういった機能を登録簿がそれに対応できるのか。対応できないとしたらどういう法的な工夫でそれを実現するのかというところが結構重要なのかなと今後の将来としては思っていまして、これ、実は京都議定書のときにも松尾さんとさんざん議論したんですけど、京都議定書の登録簿って物すごい出来が悪くて、RTGSとか無理なんですね、まともにやったら。なので、その辺りをその轍を踏まないようにするということも非常に大事な視点なのではないかと思っております。
これが最後になるんですが、21ページの④デリバティブ取引のところです。ここは内容について全く異存ないんですけど、これは私の意見というところなんですが、最後の傍線が引いてあるところの「信頼性確保、リスク管理の高度化、契約の標準化、法的な整理等を進める」と書いてあるんですが、この法的な整理って何でしょうというところでして、私はこれは、どこまで露骨に書くかは別にして、デリバティブ取引が非常に盛んになった場合には、一定の規制が必要なんだろうというふうに個人的には思っています。それはいわゆる業規制的なところもそうですし、行為規制もそうですし、デリバティブをみんなやるようになったときに、今のように全く規制がないというのはこれはまずいと私は思っていまして、ここの「法的な整理等」というのは、まさにそうした可能性も込みの記述なのかどうかという辺りですね。私としては、あまり露骨に今の時点で打ち出すことがはばかられるということであれば、このぐらいの書き方でもいいかなと思っているんですけど、規制が必要だというふうに個人的に思っているということは申し上げたいと思います。
以上です。すみません、長くなりまして。
【根本座長】
どうもありがとうございました。まず、一通り意見を伺うということで対応したいと思います。
オンラインで御発言ということで、天田様、お願いいたします。
【天田メンバー】
三菱UFJ銀行でサステナブルビジネス部の部長を務めています天田でございます。本日からの参加となりますが、よろしくお願いします。
まず、今回御説明いただいておりますこの報告書素案の内容についてですが、これまで各回で議論されてきた幅広い意見を取り込んでいただいていると思っていますので、内容に異論ございません。カーボン・クレジットについては、国内外で様々なレポートであるとかガイドラインが公表されていると思いますが、国内のマーケットの健全な発展を見据えて、各関係者の最新の取組状況、取引面やインフラ面で、それぞれの担い手に関連する論点が一覧化されているという観点でも非常に有用な報告書になるのではないかと思っています。
その上で、報告書の内容を踏まえての今後の対応ですが、当然のごとく、カーボンニュートラル実現に向けてカーボン・クレジット市場の発展というのは不可欠だと思っていますし、ボランタリーのクレジット市場は重要な手段になると考えております。これまでも議論されてきたとおりですけれども、クレジットの信頼性であるとか、取引の透明性、リスクの適切な説明といった点が重要になってくると思っていますし、これがなければ市場の信頼性も損なわれますし、市場の発展が阻害されると考えております。その意味においても、報告書がまとまった後も継続的に議論していくことが重要ではないかと考えております。
金融機関というところで考えると、金融機関がカーボン・クレジットの仲介者の役割を担っていくという観点においては、やはり顧客保護というのが非常に重要であると考えております。これまで様々な金融商品を取り扱ってきたことで培ってきた知見は生かせると考えておりますし、買手の理解度であるとか適合性を踏まえた情報提供に取り組んでいきたいと考えています。金融機関以外が仲介者となる場合であっても、ある程度の統一的なルールであるとか、何らかの決まりに基づいて、同程度の顧客保護を行うということがマーケットを健全に発展させるという意味において不可欠なのではないかと考えています。
そのためには報告書に記載もありますが、ベストプラクティスの共有というのは効果的だと思っていますが、様々な事例がいろんなところで出ているというふうになると、ベストプラクティスとして、どれを参照すればいいかというのが難しくなると考えていますので、そういった事例をあるところに取りまとめて、これがベストプラクティスであるというのをしっかりと示していくことも有益なのではないかと思っています。
ルールはある程度作っていく必要はありますが、この報告書にも記載があるとおり、日本のカーボン・クレジット市場は黎明期にあるという中で、直ちに厳格な規制であるとか制度が導入されることは、供給量と需要量の拡大、マーケットの発展を妨げるおそれもあると考えています。過度な規制、過剰なルールが市場の成長を妨げないように、バランスの取れた制度設計が必要なのではないかと思っています。グローバルのガイドラインに加えて、今後のマーケットの拡大、それに伴って顕在化する課題なども見ながら、日本で求められてくる制度整備について、今後も継続的に議論していくことが重要になると考えております。
私からは意見のみとなりますが、以上となります。
【根本座長】
では、松尾様、お願いいたします。
【松尾メンバー】
東京証券取引所の松尾でございます。今までお二方から出ましたように、非常に議論をコンパクトに整然と整理していただいてありがとうございます。
まず、武川先生からコメントのありました点につきましてコメントをしたいと思いますが、直接的には金融庁さんにということだったと思いますが、10ページから11ページのところのお話は、現金決済ではなく「満期には」とついているのが恐らく、途中の反対売買も可能という意味なのかなと推測しております。併せて、同じ箇所について、受渡決済のない差金決済のみの指数の先物が一応、CMEにあったように記憶しておりますので、どこかに「基本的には」といった留保をつけていただけるといいのかなとは思います。御確認頂ければ幸いです。
あともう一点、決済のところですけれども、おっしゃっていただいたとおり、金融の視点からは、RTGSとか高度な決済インフラというものはあったほうがいいのかなとも思いますが、他方で、ボランタリー・クレジットが国債や株式のように高頻度に大量に取引されるものなのかと考えますと、それらと同程度のインフラ整備をするのは厳しいのかなと思っております。その意味では、20ページの取引・決済インフラのリスク管理のところで出ているところと少し重なりますが、決済インフラのところで、まずは、API連携とかで自動的な決済フローを行うという点が大きくのではないかと。具体的には、電子的に残高の情報を取ってくる、振替の請求を電子的に行い、その結果情報が電子的に返ってくる、それにより保有者がデジタルで保有や移転情報を扱えるようになるのがまず大きなところなのかなとは思いますので、今後の登録簿システムの開発でもそこら辺を念頭に置いていただけるといいのかなとは思います。
あと、これはなかなか難しいとは思いますが、今日本では、クレジットの種類によって登録簿システムが分立しているという状態になっております。これは海外のボランタリー・クレジットも、VCSはVCSの登録簿システム、Gоld StandardはGоld Standardの登録簿システムということで、その登録簿システムが分かれているということも決済のインフラというか、決済実務をする上では非常なネックなのかなと思いますので、できれば日本で登録簿システムをつくる場合には、1つの登録簿で、あとできればデータの設計、請求の設計とかも同じようなものでやって、パラメーターを変えたら、これはJCM、これとJ-クレジットみたいにできるといいかなと。なかなか難しいとは思いますが、先ほどのお話ですと、国債は日銀、株や債券は保振と1個になっているというところも一つ大きいと思いますので、そういう意味では、クレジットがいろんなところに分属している状態の解消も、一つ大きいのかなというふうには思っております。
私からのコメントということでは、7ページのところの「需要に影響を与える要因」のところで、オフセット目的と投資目的とありますが、これが並立しているのに若干違和感がありました。1つには、オフセット目的が今までは中心でありましたが、やはりコンプライアンス目的もあるというのは言ったほうがいいように思います。もしかするとオフセット目的の中に入っているかもしれない、例えばGX-ETSですと、J-クレジット、JCMはそもそも実排出量を減らす要因として存在していて、JCMとかJ-クレジットで減らした実排出量に対して排出枠を償却しなければいけないという形で、直接的なコンプライアンスではないんですけど、間接的なコンプライアンス手段にはなっております。世界的に見ても、例えばシンガポールの炭素税の代物弁済に使えますとかという形で、部分的にコンプライアンス目的を取り込むという動きもございますので、そういう意味では、例えば記載としては、従来は、基本的にはオフセット需要ではありつつ、日本のGX-ETSとか、シンガポールの炭素税、あるいはかつてのEU―ETSのように、EUは今はやっていませんが、海外のキャップ&トレードでは、一部ボランタリー・クレジットをコンプライアンスに使うことを認めている例がありますので、それを並立してもいいのかなということでございます。
その上で、従来からのオフセット需要、あるいは出てきているコンプライアンス目的を前提に、流動性供給という顧客からの要望に応える形での在庫確保といった形での投資、といった記載のほうが何となくいいのかなと。すみません、投資目的というと、ややミスリーディングな感じもするので、一応、仕立てとしてはオフセットメイン、コンプライアンスもある、それらの需要を想定して、金融業者さんとか商社さんが流動性供給をされるみたいな感じが何となくいいのかなというところでございます。
あと、取引所というところでは、20ページのところで、取引所・決済インフラのリスク管理とありますが、これはただのワーディングだけなんですけど、③の上のところで、適切なカウンターパーティーリスクの低減措置とあるんですけれども、APIとかを使って決済リスクを短縮するというのは、厳密にはカウンターパーティーリスクではないような気もするので、カウンターパーティーリスクをはじめとした決済リスクの低減みたいな感じのほうがいいのかなと思います。
取りあえず、以上でございます。
【根本座長】
ありがとうございました。鶴野さん、お願いします。
【鶴野メンバー】
CSRデザインの鶴野です。ありがとうございます。3点ほどコメントしたいと思っております。
まず、この論点整理の骨子の全体像としては、私もコンパクトにまとめていただいてとても良いと思っていまして、細かい点について3点ほど申し上げたいと思います。まず、15ページの(1)の①の適切な情報開示のところで、(ⅰ)(ⅱ)(ⅲ)という形でプレーヤーごとに記載されています。この(ⅰ)について、2段落目のところで、登録簿管理主体・制度運営者においては、「認証したクレジットの商品性に係る諸情報が開示されていることが重要である」とあります。開示されていることはもちろん重要ですが、むしろ開示される情報が取引参加者の意思決定に有用であるか、十分であるか、ということが重要なのかなと。もしくは、何が重要な情報なのかという理解をここに出てくるさまざまなプレーヤーで理解の統一を図ることが大切と考えます。
なので、(ⅰ)(ⅱ)(ⅲ)という形で分かれて記載されていますが、この3つ全てにおいて、買主がどんな情報を必要としているのか、買主が必要とする情報を十分に示しているのかということが重要と思っております。この点については、22ページで、買主の開示の在り方が書かれていますけれども、そこと鏡の関係にあるものと理解をしております。
2点目が、17ページの④の法的性質・会計上の位置付けというところです。下から3行目のところですけれども、会計上の位置づけについて記載されていて、「上記研究会」というのは法的課題研究会を指しているのだと思いますが、そこの報告書での論点整理は、確か、武川先生がお詳しいと思いますが排出量取引制度の論点整理かと思いますので、最後の行では、「これらの成果を踏まえつつ、『ボランタリー・クレジットについては』更なる必要な整理が行われることが有益である」という形にしたほうが分かりやすいかなと思いました。
あと、ボランタリー・クレジットについては、日本公認会計士協会で会計制度委員会の研究報告17号で、「環境価値取引の会計処理に関する研究報告」というのを昨年出しておりまして、そこでボランタリー・クレジットの会計処理についても、簡単ではありますが触れているので、そこを参照していただくのも一つ手かなとは思いました。
あと最後に1点、22ページのところです。②のところで「カーボン・オフセットに係る開示のあり方」ということで、ISSBとSSBJについて記載されていまして、2段落目の4行目のところで、「オフセット後の数値による排出目標を開示している場合には」とあるんですけれども、正しくは、「純量目標がある場合には」が正しいかなと思います。これは恐らくSSBJの98項を参照して「開示している場合には」と書かれているのかなと思うんですけれども、97条の第5項を参照されるほうがより適切と思っております。開示しているかどうかではなくて、純量の排出目標を持っているかどうかが一つのトリガーになっているという理解でおります。
以上になります。
【根本座長】
どうもありがとうございました。吉高さん。
【吉高メンバー】
すみません、ありがとうございます。私も今回まとめていただいて、分厚くならず、添付資料はついてくるとは思うんですけど、ヒアリングした内容とかですね、中身としてはこれぐらいコンパクトにまとまっていてよいと思います。大変ありがとうございました。
1点、先ほど、松尾さんがおっしゃっていたのですが、コンプライアンスという言葉がなくて、例えば、取りまとめの方向性の最初の文章で「はじめに」をつけていらっしゃるんですけど、カーボン・クレジットは補完的に使うのはなぜかというと、コンプライアンス目的で排出削減が難しいときに使うというのが目的で、「脱炭素の取組にインセンティブ」というのはカーボンプライシングです、「はじめに」の文章で、脱炭素の取組にインセンティブ付けのカーボンプライシングでカーボンニュートラル実現において重要な役割を担うというのは分かりますが、単なるインセンティブだけではないとは思っています。
排出量取引制度というのはキャップをかけられるとなかなかできない場合に一般的にカーボン・クレジットで補完するのがその役割だと思うので、最初に書かれているほうがよいかと。カーボン・クレジットだけで売買取引でもうける、もうけないという段階ではない。昔と比べ、オフセットがインセンティブという市場の世界ではないところもあるので、そこをミスリーディングしないような形で書いていただくのがいいとまず思っております。
また、「はじめに」のところで質問なんですけれども、第3パラグラフと第2パラグラフで、「上記のようなボランタリー・カーボン・クレジット(以下、本報告書において『カーボン・クレジット』という場合、特段の断りがない限り『ボランタリー・カーボン・クレジット』のことを指す)」というところですけど、これはどういうことなのかということです。ボランタリー・カーボン・クレジットというのは、排出量取引制度と結びつかない場合をいうと上の段で書いてありますが、J-クレジットはボランタリー・カーボン・クレジットなんですかというと、公的にお墨つきがついているものは、一般的にボランタリーとは言わないと思うんですが、ここの言葉の整理をまず教えていただきたいと思います。この後ずっとボランタリー・カーボン・クレジットのことを指すと言ってしまうと、JCM、J-クレジット、6条2項のクレジットも、全部ボランタリー・カーボン・クレジットと読みかねないかなと思ったんです。上の排出量取引制度のような取引の義務づけを伴わないボランタリー・カーボン・クレジットというのが、ではそれ以外のボランタリーでないカーボン・クレジットとはどういう意味なのか、ちょっとここだけ教えていただけますか。
【森サステナブルファイナンス推進室課長補佐】
事務局です。キャップをかけてトレードするという法的義務づけの中でキャップ&トレードでやるというのが排出量取引制度だと思うんですけれども、そういった取引における法的義務づけを伴わないものをここでボランタリー・カーボン・クレジットと書いておりまして、J-クレジットは組成の局面においてしっかり関与していてというところはありますけれども、J-クレジット自体がキャップ&トレードのように取引面で義務づけを行っていないので、ここではボランタリー・カーボン・クレジットの中に含めて書いておりました。
【吉高メンバー】
それはちょっと一般的に通じないと思うので、そこをもう少し詳しく。脚注のほうでも何か記載するとか。
【武川メンバー】
すみません。あまりユニバーサルな定義があるわけじゃないので、おっしゃるように、もうちょっと緻密に定義するということで乗り切ればいいのかなと。例えばCDMがボランタリーなんですかと言われると、吉高さん的には、あれはボランタリーではないということですね。
【吉高メンバー】
ないです。
【武川メンバー】
なので、多分、JクレとかCDMとかが、今の用語例で言うとどうなるのかというのを意識した上でちゃんと書けばいいのかなというふうには思っています。
【吉高メンバー】
一応、初めて読む人にも分かるようにというのがあったので、私だったら何となく分かるんですけど、全然分からない人たちにとっては、JクレもJCMも6条2項も、それからVCMも全部同じに読みかねないというのがちょっと不安だったというところなので、そこは説明があればいいのかな。ありがとうございます。
【松尾メンバー】
何でボランタリーと言うのかというのは、創出者の視点に立つとすると、別に創出者は誰に強制されているわけでもない、その点から一般的にボランタリーと言われていると考えられないか。例えば、ボランタリー・クレジットの特徴の5ページの(2)の辺りなどで、冒頭の1ページのところで、例えばベースライン&クレジットの説明と絡めて、プロジェクトをやること自体は別に強制されているわけではないという点をとらまえてボランタリー・クレジットと呼ばれていると述べつつ、一般的には、恐らくベースライン&クレジットとほぼイコールと考えて、それではベースライン&クレジットは、どういうメカニズムでクレジットが出てくるか、それを創出者が強制されているわけじゃなくて、採算性の向上という経済的な目的のために自主的にやっているという意味で、ボランタリー・クレジットと言っているとして、ベースライン&クレジットと当事者の意思というものを絡めて最初に定義してもいいのかなと。
吉高先生がおっしゃっていただいたようなところは、なかなか微妙ではあります。あるというか、確かに京都議定書ってボランタリーなのか、大本となる京都議定書はやはり何かの強制という色彩もゼロではないので、5ページの(2)のところ辺りで制度の運営主体が、例えばどこかにもVCSさんとかGоld Standardさんの話があったんですけれども、制度の運営主体という項目を立てて、政府とか国連が立てるという場合もあるし、VCSとかGоld Standardというのは、ただのNGOが規格しているというような純粋な民間規格というものもありますというような種類の項目を立ててもいいのかなという気はして、一応、基準とか認証は公的なものがやっているんだけど、やる人の意思はボランタリーという意味だというのが分かるようにしてもいいのかなと。
【武川メンバー】
2人、言っていること違うんですよ、今。整理すると、吉高さんは何が一番分かりやすいかというと、CDMなんですよね。吉高さんはCDMはボランタリーではないというふうにおっしゃっていて、松尾さんはやるかやらないかが自由かどうかがボランタリーの境だとおっしゃっているので、CDMもボランタリーになるんですよね。
【松尾メンバー】
ええ。
【武川メンバー】
私は吉高説なんですよ。私の定義では、制度の根拠が法律とか条約とかという形で公的にあるかどうかがボランタリーの境目だと私と吉高さんは思っていて、そうだとすると、CDMはボランタリーではないということになりますね。
【吉高メンバー】
はい。
【武川メンバー】
Jクレに関しては微妙で、少なくとも今まではボランタリー・クレジットだったんですよね。あれは単なる規約でやっていて、別に法的な根拠があるわけじゃないので、Jクレは今までは少なくともボランタリーだったんですが、GX推進法でJクレの仕組みが法的に取り込まれるみたいなことになるんだとすると、だんだんボランタリーな性格からそうじゃないものに移行しつつあるのかなと。だから、そこ結構難しいところで。ということだと思っていて、言いたいのは、結構一義的じゃないので、今みたいな考え方を提示して定義していくということしかないのかな。人によって使い方が違うのでということだと思います。
【吉高メンバー】
ありがとうございます。売手の話をされたんですけど、私は買手のほうで、コンプライアンスに使えるというのは、例えば今回、GX推進法の改定の中で排出量取引が入ると。その中で補完的にこういうものを一応使えるようなことになっているとしたら、法的根拠があるものなので、それはボランタリーというのには、VCMで海外でやっているものと一緒にするのはミスリーディングかなとちょっと思ったんですね。
【武川メンバー】
ただ、結構微妙で、じゃあ、ボランタリー・カーボン・クレジットの典型であるGоld StandardやVCSが、例えばシンガポールの炭素税制度の中では一定のクライテリアに生かすときには使えるわけですよね。それが使えるからといって、じゃあ、VCSがボランタリーじゃなくなるかというと、そうではないと私は思っているので、結構やっぱり微妙な区別なんじゃないかというふうには、どこまで行ってもというふうには思っています。なので、これちゃんと書けばいいだけの話だと思うので、議論は尽くされたと思うので。
【吉高メンバー】
ということで、明確化してほしいというのが私の意図でございました。ありがとうございます。
【松尾メンバー】
ちなみに、この検討会のスタートはIOSCO最終報告書だと思うのですが、IOSCOはその辺をどう整理しているのか。
【森サステナブルファイナンス推進室課長補佐】
IOSCOはコンプライアンスマーケットとボランタリーマーケット、それぞれ報告書が出ていると思うんですけれども、コンプラマーケットは排出量取引、ETSを扱っていて、ボランタリーはそうではないもろもろの海外ボランタリー、VCSとかGоld Standardとか、そういったものを。
【武川メンバー】
CDMをどうするかみたいなのは。
【森サステナブルファイナンス推進室課長補佐】
ちょっと確認しますけれども。
【武川メンバー】
あまり意識していない可能性というのもあるかなと。
【松尾メンバー】
その他大勢みたいな。
【武川メンバー】
CDMとか6条4項とかは、ちょっとその中間なので、あえてそこにフォーカスしないで議論している可能性が高いのかなと個人的には思っています。
【吉高メンバー】
ありがとうございます。あと、ちょっと細かいことも含めてコメントさせていただきたいと思いますけれども、例えば3ページで実態把握をされているんですけれども、このときの実態把握の視点というのが、例えば3ページの欄外にあるように、金融的側面で実態把握をしたというのを強調していただくのがいいのかなというふうには思っています。また、そのページの、「指すことが多い」と言ったら、曖昧な表現のように思います。例えばブルーカーボンみたいなのも入ってくるのかとか、言葉がアバウトになっているところもあるので、あくまでも金融側面での実態把握というのを書いていただくのがいいのかなと思いました。
それから、また細かいですけれども、5ページで、組成の方法論について、除去系と回避系といっていて、別のところで違う例が出されていますけど、例がばらばらなんですよ。例えば、後ろのほうになると、森林の吸収系が入ったりとか、なぜこれの2つが出て、そのたびに例が違うのかというが、気になったので、できましたら、これは方法論の全体表をつけて参照にしたほうがいいのかなと思いました。細かいことですね。
それから、次の6ページですけど、私自身が事業の組成のほうに関わっていたので気になるのですが、視点が取引にフォーカスしたところと、一義的に基準設定の担保が図られると、「一義的に」とありますが、重要なところとしては、事業のモニタリングとか信頼性の担保では、デリバリーリスクがあると思います。結局のところ、事業が進まないデリバリーされないリスクが最も大きい。ベースラインクレジットはそこのリスクがあるので、信頼性といったとき次の④のリスクに、オぺレーショナルリスクというの、デリバリーのリスクとか、事業リスクとか、再構築リスクなどは入るのでしょうか。再構築リスクとは、もしクレジットが出てこなかった場合に、新たに現物を買ってこなくちゃいけない、そして、価格差を補塡していかなくちゃいけないという買手のリスクとかあるのですが、そこのリスクのところをもう少し入れてもと思いました。一義的にといったときにどう一義的なのかとか明確ではなかったので、整理していただくのがいいと思いました。Delivery Versus Paymentができていないのは、デリバリーリスクが大きいからだと思うので、そのようなことも入れていただくのも一つかと思いました。
それから、8ページの「供給に影響を与える要因」の中では、組成に関わるコストは、組成とはどこまで考えていらっしゃるのかというのを教えてほしいと思いました。後に融資について出てきますが、取引に関わる組成のコストなのか、その裏にあるベースライン&クレジットをつくるための事業そのもののリスクやコストのことも言うのか、分かりにくく、実はリスクが高いのは、手続リスクよりも事業リスクのほうが高い。それが供給に与える要因というのもあると思いました。
それから、11ページですが、「売買に係る仲介の状況」で、急に地域の金融機関の仲介の話が、地産地消の話が出てきます。この最初の実態把握の前のページのほうでは、例えば、7ページに、今は大企業が中心だと、それぐらいしか書いていません。あとで、急に地域の地産地消でこういうのがあるというのが出てきて、また最後にも出てきます。これが重要ならば、も前のほうにも出しておくべきかと思いまして、ここについてはどう思われているのかを知りたい。
【根本座長】
ありがとうございます。この場でなくても、またコメントは皆様にいただくということになっているので、もちろん今いただくのがいいんですけど、ちょっと言い忘れたとか、よく御覧になってまた後で付け加えたいことがあれば、ぜひいただければと思います。
それでは、河村さん、お願いします。
【河村メンバー】
三菱商事、河村です。まず、金融庁の皆さんがこういう形でしっかりまとめていただきまして、ありがとうございます。既に議論を尽くされたということもございますが、冒頭、「はじめに」のところで、本件については、ボランタリー・カーボン・クレジットのことを、特段の断りがない限りは指すということを書かれていらっしゃいましたので、私自身はこれを読み進めるときに、ボランタリー・クレジットのことを念頭に置いて読み進めたんですけれども、今せっかく議論を喚起いただきましたので、我々どもの解釈をちょっとお伝えさせていただければと思います。
実務に携わっている企業としまして、まさにボランタリーなものなのかコンプライアンスなものなのかというところは結構、社内でも議論をしていまして、我々はどちらかというと、需要サイドがどういう意向を持ってクレジットを見られているかという観点で、ボランタリーなのかコンプライアンスなのかというのを区分けさせていただいています。ただ、これは明確な定義があるわけじゃなくて非常に難しい部分であるとは思いますが、整理をするに当たって社内でそういった位置づけをしているんですけれども、先ほど武川先生もおっしゃいましたけれども、J-クレジットは今、我々の定義においてはボランタリーになっています。あくまでお客様がボランタリーの意図を持たれて買われているということなんですけれども、今後はこれがコンプライアンスなものに変わっていくということで、26年、27年以降はコンプライアンスになるというふうに我々は理解しています。ただ、一定の会社さんは、引き続きボランタリーにこれを買い続けることになられると思いますので、そこが非常に難しくて、これを1ページ、2ページにまとめるのはかなり難しいんじゃないかと思っております。
次の点も武川先生が既におっしゃったんですけれども、今、世の中で流通をしているボランタリー・クレジット、Verraのクレジットだったり、Gоld Standardのクレジットも、これは全てボランタリーかというとそうではなくて、コンプライアンスに買われる方もいらっしゃって、まさにシンガポールの例をお出しいただきましたし、今後CORSIAなんかも、我々の中ではあれはセミコンプラといいましょうか、コンプライアンスといいましょうか、そういうような定義をしていまして、あくまである機関に属する企業体が何らかの制度に基づいて買わなきゃいけないものについてはコンプライアンスだというようなことで一応整理を分けて、我々、商売柄といいましょうか事業体柄、どうやってクレジットを販売していこうかというところの観点にどうしても移ってしまうので、そういったときにお客様というか、クレジットを購入される方がどういう形でセグメントしていくのがいいのかということを議論すると、そういう見方になるということを披瀝させていただければと思います。議論をかき乱すつもりはないんですけれども、せっかく面白い議論を喚起いただきましたので、我々どもの見解を御紹介させていただきました。
内容につきましては、細かい点も含めて既にメンバーの皆様から御紹介いただきまして、御指摘いただいていますので、私のほうからは1点だけなんですけれども、18ページ目、「取引仲介者・クレジット売主に関する事項」というところの①の最後のところ、また、カーボン・クレジットそのものだけでなく、これを組み込んだ関連商品であったり、トークン、サービス等を提供する場合においても、同様に適切な説明が求められるということで、お客様、投資家並びに顧客保護の観点で説明をしっかり尽くすというのは、これは待たないところだと思います。
一方で、我々がクレジットを販売して、クレジットを御購入されたお客様が、さらに自社の商品を何らかの形で、カーボン・オフセットであったり、カーボンニュートラルというような形でさらに第三者に販売されるようなことがあると思いますし、ここの関連商品とかというのはそういうものを念頭に置かれていると思うんですけれども、そこまで我々仲介業者であったり、創出事業者が責任を負うものなのかどうかというところがちょっと難しい議論かなというのを読み進めていて思ったところでございます。当然、創出を行ったり仲介を行ったりする事業体として、方法論の適格性であったり、まさにさんざん議論いただいているインテグリティの部分については最重要課題であるということで、最大限の努力、誠意を持って御説明をさせていただくんですが、その先にどういった説明がなされるかというところまでどうしても手が届かないところではありますので、そこら辺をどのようにして規制をしていくのか、ルール化していくのかというのは非常に難しい課題かなと思います。先ほど御指摘もありましたとおり、過度な規制をかけてしまうと市場そのものが発展しないというリスクもございますので、そこら辺のバランス感覚というのは非常に難しい課題で、現時点で明確な解を持ち合わせていないので恐縮ではございますが、市場全体を盛り上げていく上では課題になってくるなというふうに感じました。
【根本座長】
ありがとうございます。小圷様、お願いいたします。
【小圷メンバー】
ありがとうございます。私は、少し全体的なところも含めて気づきのところを御紹介できればと思います。
基本的には、今回、この取りまとめの方向性ということで、大きなハイレベルの原則ですとか、あとはそれに関する少し説明的な内容、幾つか事例とかも取りまとめていただいて、中心的な内容がカバーされていて非常にいいんじゃないかなと思います。特に重要なのは、取引の透明性・健全性を確保するという観点が特にこの検討会においては重要なポイントかと思いますので、やはりそういった観点で、こういうふうな事例があるとか、こういうふうな方向性で今後検討が進められていくべきという形で、何か、かちっとこういうふうにすべきだというよりは、いろんなことを検討する中でこういう点が重要だということを特定していけるのがこの報告書の取りまとめの方向性としていいかなと思っております。
その観点で、私も今、取りまとめの方向性のパワーポイントのスライドを見て、どういう形で整理していくのがいいのかなと思っているんですけれども、1番のところの透明性・健全性を確保する上での基本事項、これは全体の原則的なところのまとめということで、私もこの内容についてはいいかなというふうに思います。ちょっと悩ましいのが、論点整理の2、3、4のところの整理なんですけれども、私の中では、1つはクレジットの売手とか中身ですね、供給側の中身についての事項というのがどういうものが重要かとか、例えば方法論とかクレジットの信頼性とか、そういった形で整理されていると思うんですけども、それは様々な視点がありますと。
私、一番重要なのは3のところかなと思っておりまして、特にこの3のところをもう少し中身が整理できるといいのかなと。というのは、例えば取引仲介者というのが2のところに整理されていると思うんですけれども、これはどちらかというと3に近い部分でして、その仲介者もいろんな立場の仲介者というのがいまして、むしろそういうクレジットを売りたいということでコンサルタント的に入ってそれを売る方もいますし、むしろ商社さんみたいに買い付けて、それをまた市場に売るとか、CORSIA目的にとか、先ほどもいろいろ話がありましたけど、いろんな用途にやっていくというような仲介者もいらっしゃると。なので、どちらかというと、取引、仲介する、あとはそれを支えるインフラですね。インフラといったときに、重要なのは登録簿と、あとは取引所。やっぱりこの登録簿と取引所って、それぞれ機能が違っていて、登録簿というのは、まさにJCM登録簿があったり、J-クレジットの登録簿があったり、それぞれ記録をしていく。それにはボランタリー・クレジットの登録も当然あるわけですね。そこにいわゆる取引所というのがあって、これは先日御発表いただいた東京証券取引所のような形での取引所もありますし、今ここに結構民間の取引所とかもどんどん入ってきているわけですよね。そこの間の関係とか、どういうふうな形で仲介されているのかとか、この登録簿も、登録簿に実際アカウントを仲介して持つというようなサービスとかも出ていたりします。
そういうところにいろいろな、先ほどの一番のポイントとなる取引の透明性とか健全性とか、そこにいろいろ投資家を保護しなきゃいけない点がどういう部分なのかとか出てくるかなと思いますので、私自身は3のところをもう少し、取引仲介者もここに入れた形でそれぞれの役割というのがどういうふうになって、どういうふうな点をもうちょっと詰めていかなきゃいけないのかというのを少し見えるような形にできるといいかなと。
例えば登録簿については、登録簿の正確性の確保というふうに書かれているんですが、私もこの正確性というときにこれは何なのかとかいうことが、これを意味するところの中身とかをもうちょっと詰めていければいいと思っておりまして、例えばですけれども、登録簿といったときに、具体的に登録簿でどういうふうな情報を公開しているのかとか、あとは二重計上を防止するときにどういった機能が必要になるのか。実務的には結構、シリアル番号とかをクレジットにつけて、そういうシリアル番号がちゃんと公開されて、1トンのものがちゃんとシリアル番号がついて、それが取引されていろいろと移転していっても、ちゃんと1トンのものが違うところにあると。何か二重に使われてないとか、ちゃんとそういう情報が出るとか。
あとは、例えばセキュリティーですね。これもやっぱり重要な問題になってくると思うんですが、そういうセキュリティーをちゃんと担保しているのかとか、そういうようないろいろと確保していかなきゃいけないことというのも可能な範囲で特定をしておけると、今後の正確性というのは何なのかというのも考えるときに重要になってくるかなと。なので、取引所もいろんな形態の取引所がありますので、そういったことも含めて、この3のところをもう少し整理できるといいかなと思いました。
あとは、4の「クレジット買主に関する事項」というところも、これもクレジット評価のところとかは、結構今、クレジット評価する会社さんとかも増えており、私もいろいろと情報共有させていただいたりもしていて、基本的に見ているのは、やっぱりクレジットの供給する側の中身なんですよね。なので、聞いていると、例えば追加性についてちゃんと見ているとか、あとは永続性です。あとはちゃんとカーボンアカウンティングができていること。なので、ここのクレジット評価の中身というのは、どちらかというとクレジットの売主に関する事項にも関わってきたりもしますので、そういった情報がちゃんと全体として取引所とかで共有されるのかとか、ちょっとそこら辺のクロスカッティングの部分も最後、この論点として見せられるといいのかなと思います。なので、2、3、4の中身というのはつながっているところもありますので、そこのところを最後、それを全体的にどう透明性を高めて見せていけるかとか、市場で公開していけるか。そういう場がどういうところなのかとかも含めてまとめていけるといいかなと思いました。
あと最後に、日本もこういう流れというのは、まさにこれからいろいろと出てくるということで、海外の企業の方とかも増えてきて、今、日本でもいろいろ支社を持たれたりとか、この分野に関心を持たれている企業さんも多く増えていますので、私の提案といたしましては、本当にハイレベルな内容でもいいんですけれども、英語でも取りまとめられると発信としてもいいのかなと思います。全ての内容を英語にする必要はないと思うんですけれども、最終的な取りまとめのこういうところが重要だとかというところを英語でもまとめられると、非常に海外の発信とか、まさにそういう関心を持っている方々へのアピールとしても重要かなと思いましたので、述べさせていただきます。
【根本座長】
ありがとうございました。では、江夏様、お願いいたします。
【江夏メンバー】
全体感として網羅されている情報は、大変よいと感じました。細かいところで、サステナブルファイナンス市場の参加者からの視点で気がついた部分がございましたので、発言させていただきたく存じます。
例えば16ページ目にキャパシティ・ビルディングという言葉が記されており、その中に含まれるようにも思いますが、いわゆるリテラシーのような概念が示されても良いようにも感じました。文中に、知識・経験等はもちろんのことと記してありますので、その意味ではカバーされているような気もしますが、リテラシーというキーワードを含めるのもあり得ると思いました。
それから、18ページ目の部分は、恐らく今回の検討会の内容で大変肝になる部分と理解をしています。その観点から、抽象的な発言で恐縮ですが、もう少し厳格に記していただけないかと思っています。例えば一番下の部分で、望ましくないことから望ましいとか、あと同様の観点で、と表現されており、報告書が意図していることが伝わらない可能性があるようにも感じます。とてもこのような論点を重要視しているニュアンスが湧き出るような表現ぶりをしていただけるとありがたいと思っております。
それから、全体的な面で、一つの鍵になっている情報開示について気が付いた点がございます。先ほど鶴野先生も言及された、買手が必要とする情報について、これはいわゆる定型の情報開示、開示義務のある内容もさることながら、例えばサステナブルファイナンスとか金融資本市場全体で見られるような投資家向け広報(IR)のようなものに加えて、取引仲介者であるとか、あとは取引所等の取引インフラ、場合によってはマクロ的な制度の説明になってくると政府や業界団体といった主体が担うのかもしれませんが、このような情報提供に関しても少し言及があっても良いかといました。ただ、報告書の中でどこに示せば良いかわからず、全体的に気になった点として挙げさせていただきました。
最後ですが、サステナブルファイナンス市場参加者の立場では、今回の内容について、理解はできるものの、咀嚼が難しいというところが幾つかあるほか、専門的な用語が多いというのも感じた次第です。報告書の今の段階で入れることができるかという論点はございますが、何か用語集みたいなものがあると大変ありがたいと思ったところです。
以上です。
【根本座長】
どうもありがとうございました。皆様の活発な議論のおかげでこうした報告書がまとまってきて、本当にお礼申し上げます。今、メンバーの方がいろいろと言っていただいたことについてごもっともだなと思っていますが私からも、ちょっと重なってしまうかもしれないんですがコメントさせていただきます。今、江夏さん吉高さんもおっしゃっていたんですけど、一般の方も読む、サステナブル分野の方だけじゃなくて、例えば金融機関で働く営業の人も読んでもらうとか、そういうことも意識していただいたほうがいいと思います。報告書自体がまさに啓蒙活動の一端だと思いますので、そういう意味では、定義のところも、ここが混乱すると本当に読み続けにくくなるので、そこをしっかり説明していただきたいのと、用語も注釈とか、あるいはおっしゃったような表とか、何かそういうのがあるととても分かりやすいと思いました。
あと、今後の市場の規模とか成長性とかにも触れていただくと、ここに投資をするべきなのかその判断材料になるのかなと思ったので、何かそういう推計値とかがあればいいと思いました。
あと透明性とか顧客重視とか適切な説明というところは皆様に言っていただいた点ですが、この辺りももう少し、コメントを生かして工夫していただきたいと思いました。
あと、このくらいの長さというのがいいと思うんです。あまり長大になると読む気がなくなってくるわけですが、一方で、報告書はバイブル的に皆さんが参照するので、情報ソースとか、さっき体系のお話もあったんですけど、どこを見ればより詳しく分かるとか、海外も含めて情報ソースも明確化していただきたいということです。
最後に、吉高様のおっしゃっていた中小金融機関の話が、私もちょっとこれが唐突な感じもして、一方で多様なクレジットとか、こういう草の根的な動向ってすごく重要だと思いました。最初のほうに、7ページの一番最後ですかね、中小企業においては、例えば需要が限定的ですとあったんですけど、ちょっとここでぷつっと切れてしまうので、将来的にはそういう需要もあるんじゃないかと。コンプライアンスでも、取引先が要請する間接的なコンプライアンスとか、あるいはIRとか、そういう需要があったり、あるいは供給面でもクレジット創出を一つの収益源にしてスタートアップができていくとか、エコシステムに関わってスタートアップが活発化するということもあるのでそういう観点も入れていただいたらいいと思いました。
以上です。
黒﨑様、発言をお願いいたします。
【黒﨑メンバー】
ありがとうございます。大分議論が出尽くしたところで、私からはコメントだけ述べさせていただきたいと思います。
報告書自体、皆様がおっしゃられているように、もう既にコンパクトにまとまっていて、すばらしいものがこれをベースにこれからできていくんじゃないかなという期待感があります。その上で幾つかコメントを述べさせていただきたいと思います。まず、前半部分の実態把握の部分ですけれども、いろいろなヒアリング、それからいろんなレファレンスをされている中で私が少し足りないなというのは、先ほど根本座長もおっしゃられていたかと思うんですけど、データとかチャートとか今どうなっているかといったところが、表もあったりして考え方のところはちゃんとあると思うんですけど、今、日本とか世界がどれぐらいの取引量があってみたいなところが少しあってもいいのかなと思います。
それを受けた上で、先ほど複数のメンバーの方がおっしゃられていたかと思うんですけれども、どんな種類があってというようなところのまとめの表がそこで出てくると分かりやすいのかなと思いました。どんなタイプがあって、先ほど吉高さんも御指摘されていたように例が幾つか出てきているので、読んでいる側としては少し困惑してしまう部分が全体を通してあったのかなと思っております。それで、先ほど江夏さんも根本座長もおっしゃられていたように、グロッサリーみたいなものが最後につくと、読む側としてはいいのかなと思いました。
それから、前半と後半を通して、やはり先ほど吉高さんもおっしゃられていたんですけど、世界の動きとローカルの地域の話とが混在してしまっていまして、読み手としてはあっち行ったりこっち行ったりしているところが少しあるので、そこも改めて、恐らく前半部分での状況把握のところでまとめていただけるといいのかなと思います。
最後のところで、先ほど根本座長も少しおっしゃられていたと思うんですが、今後の展望のような、今後これをやっていくとどうなるのかみたいなところ、意見を入れるわけではなくて、今後このカーボン・クレジットの市場としてどうなっていくのかというところは書きにくいかとは思うんですけれども、何が申し上げたいかというと、どんなところにリスクがあって、どんなところが発展していきそうでといったところで、皆様が先ほど議論されていた4つの視点が出てくるかと思うんですが、透明性とかインテグリティとか、それぞれの主体によって気をつける事項というところがあると思うので、どこかで、こういうところに何が重要でというその色のところが、私はすみません、報告書を読んでいて平たんに書かれているような気がしたので、ここが重要でここにリスクがあって、例えば先ほどもどなたかメンバーの方がおっしゃられていたように、取引所が乱立してきそうだとか、そういったところがあったかと思うので、少し章なり何か付け加えて入れていただけるといいのかなと思った次第です。
あとは、もう一点として、展望のところに入るのかもしれないんですけれども、今、一番最初のところで投資目的とボランタリーのところと、あとはコンプライアンスを入れる、入れないという話が出てきたと思うんですけれども、その全体像があると少し分かりやすいと思いますし、どうなっていってほしいのかというところまで入れるかどうかはあれなんですけれども、こう発展していくだろうみたいなところがあってもいいのかなと思った次第です。
以上です。
【根本座長】
どうもありがとうございます。それでは、吉戒様、お願いいたします。
【吉戒メンバー】
ありがとうございます。私自身は第1回目に申し上げたとおり、サステナブルの専門家というわけでもございません。地方銀行、金融機関の経営にずっと関わってきたという立場で少しコメントさせていただきます。
今回の報告案はこれまで5回の議論というのがコンパクトにサマリーとしてまとめられているというふうに理解しました。特に今後、カーボン・クレジットの広がりという意味で見ますと、やはり流通の促進だとか、そういう観点から、地域金融機関が果たす役割はそれなりに一定のものはあるんだろうと思います。地域金融機関が仲介役としてクレジットの創出者と需要家をつないでカーボン・クレジット、この中では12ページで地産地消という言葉が出てきますけど、こういったことが加速できれば農業とか林業者だと思いますが、雇用の強化だとか、あるいは自然、特に山林の再生が進んでいくというコベネフィットですね、こういったものも得られるということだろうと思います。
今後、この報告書が6月に取りまとめ、そしてその後、公表ということになるんだろうと思いますが報告書がどう使われるかというか、どう読まれていくかと。これは非常に重要だろうと思います。特にこの検討会で御報告いただいた金融機関、特に地域金融機関の皆様方、こういったところでは御理解が進んでいると思いますが、恐らく大宗はそうではなくて、経営レベルではあまり理解が進んでないんじゃないかと思います。地域金融機関の経営課題というのはたくさんあるわけですけれども、プライオリティーがかなり下のほうにあるようです。そしてこれが足元の実態だと思います。そういう意味では、先ほど根本座長からもこれは一種の啓蒙だというお話もありましたけれども、まさにそうだろうと思います。であれば、やっぱり少しでも分かりやすく、もしかするとこの報告書をさらにコンパクトにしたサマリー版みたいなものがあったりすると、例えばパワポで四、五枚ぐらいのものがあったりすると経営レベルに説明するという意味での材料に非常にいいかなと思います。
また、先ほど御提案がありました用語集、これも非常に重要だと思います。普通の人が読んでそう簡単に理解できるものでもないし、出てくる専門用語というのははっきり言って分かりづらい。コンパクトな用語集があると非常に滑らかに読めていくと思います。
あと、詳細な御指摘はメンバーの先生方からいろんなお話があったので私からは特にありませんが今後この報告書がどんなふうに使われてどう広がっていくかというのを強い関心を持って期待したいし、見守っていきたいと思います。感想めいた話ですが、以上です。
【根本座長】
ありがとうございました。
根本様、今日初めてでありますが、御経験などからコメントがあったらお願いします。
【根本メンバー】
そうですね、いろいろ勉強させていただいた1日です。やはり今回は特に報告書のところがボランタリーにフォーカスされているということですので、今日議論のあったボランタリーの定義のところの部分が大事だというふうに非常に感じましたので、改めてお願いしたいと思います。私たちなりにもいろいろ勉強しているところではあるんですけど、やはりここがすっと入ってこないと、なかなかその先が読みにくいなというふうには感じましたので、お願いしたいと思います。
以上です。
【根本座長】
どうもありがとうございました。
【吉高メンバー】
すみません、いいですか。
【根本座長】
どうぞ、どうぞ。
【吉高メンバー】
今回、個人という言葉が出てくるのが7ページと14ページと18ページなんですけど、7ページでは、我が国では基本的にはないというふうに書いてあって、そして、トークンのときにはインセンティブを与えるようなことの事例があって、最後に18ページでは、特に個人を相手方とする場合にといって、国内ではまだないのにここで急に個人って出てくるのに違和感があります。基本的に法人の話が対象とするということにして、個人に対して別出しにしたほうがよいか、しないほうがいいかどうかだけ議論をさせてください。私は別にどっちということじゃないんですけど、急に個人、個人というのが出てくるときのこれを読んだ人の解釈の仕方ってどうなのかなと思った次第です。そこだけ最後に皆さんの御意見を聞きたいと思いました。
あと、些細なことなんですけど、13ページの下のほうの記載で、グリーンボンドにおける「配当」ではなくて「クーポン」かと思いますので、そこは直していただければと思います。
以上です。
【根本座長】
ありがとうございます。今の御質問、個人が出てくることですが。
【吉高メンバー】
個人の扱いは散りばめるかどうか。
【松尾メンバー】
多分、今現在は法人の需要のみで、まずはオフセット、付随的にコンプライアンス目的だと思いますが、今後、ボランタリー・クレジットの取引とか創出が広まっていったときに個人も関心を持つことを想定しての記載だと思います。個人的には、あまり個人に適合した商品ではないと思うので、金融庁さんが今からそんなこと言ってはいけないかもしれませんが、そもそも、オフセットもしないし、コンプライアンスも関係ない個人が、単に値上がりするかもしれないだけで、金や原油のように地球の誰もが欲しがるものでもないもの、その意味では本来であれば個人が参入したり投資するに適していない商品ではないのではと本来言う必要があり、その意味では、個人に対して積極的にこれから値上がりますからおいしいですよと言って勧誘するのは、適合性の観点から言って慎重であるべきで、もし今後そういう関心を持つ人がいたら、本当に慎重に丁寧に説明を行う必要があるという、何かワンクッションおくようにしてもいい気がいたします。その意味では、カーボン・クレジット詐欺みたいなものが出るんじゃないかとかと言われていますが、あまり聞いていないので出ていないと思いますけど。
【吉高メンバー】
でも、昔ありましたよ。
【松尾メンバー】
なので、そういうところを考えると、あまり個人に向いていないというのはある程度出してもいいのかなという気が個人的にはしました。現状の分析と今後個人に広めるべきかというポリシーの問題は分けて書いてもいいのかなと思います。どうですか。
【小圷メンバー】
私自身は、例えば、御存じかもしれないですけど、ルフトハンザとかを見ると、(搭乗した飛行機からのCO2排出量を)自分が(購入して)オフセットできるようになっているんですよね。そのほかの航空会社はどうなのかとかはありますけれども、少なくとも個人としてそういうオフセット・クレジットを使ったり、自分が買ってとかということではなくて、むしろそういうことに対してお金を出すとか、そうすることによってなるべく自分としても貢献したい。自分としてもネットゼロに向けてやるという、多分そこはあると思いますけど、それをどう受け止めるかということだと思いますので。
自分が本当に買ってそれを取引してとかということよりは、むしろそういうのをサービスする、提供する会社があったりという中でこれが確定されると思うんですけれども、そういう意味で言うと、基本的に個人としてオフセットするという行為は多分可能なので、それ自体を否定するというよりは、そういうことも含めてどういうふうに透明性とかを高めていくかというのがやっぱり論点なのかなと思いますので、ちょっとすみません、ここの書きぶりがどうということなんですけれども、個人としてのそういうふうな需要とかサービスがあるというのは私も記載としてはあってもいいと思いますし、そのときに、じゃあどういうリスクがあるかとかは、まさに書いておいてもいいとは思います。
【武川メンバー】
私も小圷さんと同じ立場で、個人が投資商品としてのカーボン・クレジットに投資するという場面はあまりないのかなと思う一方で、オフセットないしはオフセット商品の顧客として個人が出てくるということはあり得るので、そういう文脈で個人が出てくることはそんなに違和感はないですね。ただ、書きぶりとして、何というかな、個人を書くときにどういう位置づけで個人というのが言及されているかということをもう少し補うことによって記述が明確化されるのであれば、それはそれでそういう修正というのはあり得るのかなという、そんな印象です。
【根本座長】
なるほど。ありがとうございます。今のお話に尽きているような感じで、個人が投資家の主体ではないけれど、何らか間接的にも関わってくるし、書き方を、おっしゃるように唐突感が出ないように工夫をするのでしょうか。報告の中にも東京海上の方がエコドライブをした方にクレジットを使って還元するという例を言ってらっしゃったのですが個人が全く、スコープから外れているわけでもないという感じはしました。ありがとうございます。
【森サステナブルファイナンス推進室課長補佐】
デリバの点については、改めて確認して記載を精緻化させていただければと思います。あと、冒頭のボランタリーのところも、概念整理というか、どういう頭でどういう整理の下、この報告書を書いているのかというのが分かりやすいように整理して記載したいと思います。
【高岡サステナブルファイナンス推進室長】
その点は、あまり定義論に入り込み過ぎると、逆に議論が複雑になってしまって、一般の方も含めて読み手にとってむしろ分かりにくくなるということも考えられるので、用語をどういう意味・趣旨で使っているのかというのがしっかり分かるように、且つ一定の正確性も確保した上での記載になるように修正したいと思います。
あとは、法的な整理を進めるのは、21ページの業規制みたいなところを念頭に置いた記載なのかという点についてコメントをいただきました。
現状において記載できる範囲で記載するということで事務局としては考えているところでございます。
【武川メンバー】
全く異存ございません。単に私としてそう思っているということが言いたかっただけですので。
【高岡サステナブルファイナンス推進室長】
ありがとうございます。
【森サステナブルファイナンス推進室課長補佐】
組成手続き自体というところと事業に係るもろもろのコストという両方あり得て、後者についてはどうなのかというところで、文言としては両方入っているようにも読めますけれども、よく検討して、より精緻な記載に修正できればと思います。
【松尾メンバー】
多分、組成のコストのところ、もうちょっとブレークダウンして書いて、方法論に適合しているかの審査と実績に関して検証、いずれも第三者機関において行ってもらうということが必要があること、それに時間とお金がかかりますということについて、恐らく意図としては入っているのかなという気がするんですけど、もう少し、ベースライン&クレジットの用語に即してもうちょっとブレークダウンして書くといいのかなという気はします。
【高岡サステナブルファイナンス推進室長】
ご指摘ありがとうございます。そうですね、読み手が読んで分かりやすい記載となるように工夫させていただきます。ありがとうございます。
【吉高メンバー】
なので、例えば11ページの③のクレジット組成の支援の状況といったとき、クレジットをつくるところへの政策的な、手続きへの補助金があると思いますが、12ページの上に書いてあるような金融機関がいろいろと支援しているというその状況も別にあるので、整理していただければいいと思いました。
【高岡サステナブルファイナンス推進室長】
ありがとうございます。あと、11ページで地域の話がいきなり出てくる点についてコメントをいただきました。
【森サステナブルファイナンス推進室課長補佐】
第2回で地域金融機関の皆様からこういった取組を御紹介いただきましたので、ここでしっかり書いていると。少し前のところで、大企業が中心となっていると書いていたというところは確かにあって、そこでも、7ページの上から5行目です。中小企業・大企業いずれも取引例が見られるが、大企業が中心と書いてはいましたけれども、他方で地域金融機関の取組もフィーチャーしているところであるので、そうですね、ちょっと記載の仕方を考えたいと思います。
【高岡サステナブルファイナンス推進室長】
あと、河村さんから御質問のあった情報の説明のところで、転売のところについて、転売する人が転売先にどう説明するのかというところまで、もともとの売り手がどこまで責任を負うのかというところについてご質問をいただきました。
【森サステナブルファイナンス推進室課長補佐】
それは転売した人の説明責任として一義的には考えるべきかと思っています。
【根本座長】
どうも大変活発な建設的な御議論、ありがとうございました。事務局の方から連絡事項をお願いします。
【高岡サステナブルファイナンス推進室長】
本日も皆さん、お忙しいところ御参集いただきまして、活発且つ建設的な議論をどうもありがとうございました。本日いろいろと御意見を賜りまして、法的性質について国際的な議論とかもあるので、そういったところについてもうちょっと触れてもいいのではないですかとか、あとは文章のところで、ここに「基本的に」というふうに付したほうがいいんじゃないのかとか、より丁寧な記載ぶりの仕方というところですとか、あとは情報開示のところについては、単に情報開示が重要だということだけで終わらせるのではなくて、もう少し踏み込んで何が重要なのかというところをしっかりと解説する必要があるのだといった趣旨が伝わるような記載も織り込んだほうがいいんじゃないのかですとか、あとは定義・用語の使い方については先ほど申し上げたとおりですけれども、あとは個人のところについても、今し方御議論いただいた内容も踏まえて記載ぶりを工夫させていただければと思います。
あと、インフラのところと仲介者のところでやっぱりかぶってくる部分とか、あるいは取引仲介者、売主、インフラ、それから買主、それぞれについて共通して重要なポイントだというところについては、最初の基本的な事項というところで共通事項ということで記載している部分もあるんですけれども、いま一度、御指摘も踏まえて、基本的な事項のところでもう少し触れるべきところはないかというところは整理させていただければなと思います。
それから、用語集ですとか、あとは一般の方、あまりこの分野に明るくない方でもしっかりと内容が頭に入ってくるような形での記載ぶりの工夫ですとか、概要の作成もそうですし、あと足元の現状とかが分かるようなデータとか、あるいはクレジットの種類について、ぱっと見て分かるような表の追加ですとかというところについては、その辺も読み手の読みやすさという観点から、御意見を踏まえて追加・修正させていただければというふうに考えております。こういった意見も踏まえまして、よりよい原案作成につなげられるように事務局としてこれから対応させていただきたいと思います。
また、今日いろいろと御意見をいただきましたけれども、また追加で言い忘れたとか、そういったことがございましたら、4月17日の木曜日までに事務局宛てに御連絡いただければと思います。そういった追加コメントも踏まえて、今後、報告書の編集作業を進めさせていただきたいと思います。
次回の検討会でございますけれども、開催日程ですとか開催の形式などにつきましては、また根本座長とも御相談させていただきまして、改めて事務局のほうから皆様に御連絡をさせていただければと思います。本日はどうもありがとうございました。
【根本座長】
では、以上をもちまして、会議を終了させていただきます。どうもありがとうございました。
―― 了 ――
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総合政策局総合政策課サステナブルファイナンス推進室(内線5363、2840、3515)