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「カーボン・クレジット取引に関する金融インフラのあり方等に係る検討会」(第7回)議事録
- 日時:令和7年5月29日(木曜日)13時00分~14時00分
- 会場:中央合同庁舎7号館 9階 905B会議室 及び オンライン
【根本座長】
それでは、定刻となりましたので、議事を開始させていただきます。カーボン・クレジット取引に関する金融インフラのあり方等に係る検討会(第7回)となります。
座長を務めます、早稲田大学の根本です。皆様、御多忙のところ、御参集いただきありがとうございます。
本日は、前回の続きとして、報告書を議論いただきます。最初に、事務局より説明した後に参加者での議論、その後、特段の御異論がないようであれば、内容については、座長一任という流れとさせていただければ幸いです。また、お時間が余れば、最後に皆様から一言ずつ感想・所感をいただくことも考えております。
では、事務局の金融庁の方から御説明をお願いします。
【森サステナブルファイナンス推進室課長補佐】
事務局でございます。お手元にお配りしております報告書の原案、まず、縦長のほうを御覧ください。こちらですけれども、前回の検討会で素案を御提示して御議論いただきました。そこでいただいたコメントを反映して原案の形にまとめたものでございます。ですので、前回からの主たる変更点を中心に今日は説明させていただければと思います。
まず、1枚おめくりいただいて目次ですけれども、構成は前回から変わってございません。前半部分で実態把握の結果、後半部分で取引の透明性・健全性向上に係る論点整理を記載しております。最後に用語集を今回新たに添付しております。
1ページ、「はじめに」ですけれども、こちらも概要は変わっておりませんけれども、前回いただいたコメントを踏まえまして、3行目になりますが、「2026年度からの排出量取引制度の本格稼働を契機とするコンプライアンス目的での需要の高まり」、こちらを背景事情として追記してございます。
あと3段落目になりますけれども、本検討会の検討対象を記載しているところになりますけれども、「我が国でも取引されているJ-クレジット及び海外ボランタリー・クレジットをはじめとするカーボン・クレジット、これらを主たる検討対象とした」ということを改めてここで記載しております。
3ページに参りますけれども、2ポツで実態把握を記載しております。(1)の概念整理、こちらを前回の議論を踏まえまして、改めて記載を精査しているというところでございまして、具体的に申しますと第2段落のところです。ベースライン&クレジットとして、例えばJ-クレジットや海外ボランタリー・クレジットがあると。こういったものが我が国で取引されているということなので、こういったベースライン&クレジットを検討対象としたということをここで改めて明記してございます。
他方で、その次の段落ですけれども、排出量取引制度、キャップ&トレードに基づくものについては、ベースライン&クレジットに関連する限度で言及するにとどめているということをここで改めて明らかにしております。
進みまして、5ページからが商品性の特徴ということで、カーボン・クレジットの特徴を幾つか記載してございました。①の方法論のところですけれども、今回新たに図3を入れまして、分かりやすさの観点から、こういった方法論の種類があるという形で図表を新たに入れております。
その後、6ページにかけて商品性の中身として、信頼性、コベネフィット、リスクを前回同様に記載しております。
7ページ、(3)取引動向のところですけれども、こちらは前回いただいたコメントを踏まえまして、足元の取引動向の記載をより補充してございます。あとは一番下の段落、「我が国では」のところですけれども、ここで取引主体としては法人が主に想定されるというところで、前回、大企業中心にという記載もありましたけれども、中小企業でも取引が多く見られるということで、ここはいずれも取引例が見られるという記載に改めております。
次の8ページの上から2つ目の段落ですけれども、こちらも前回コメントをいただいたところを踏まえまして、今後の市場規模の見通しについて御紹介しております。カーボン・クレジットについて、公式の見通しというのはなかなか出ていないんですけれども、民間である程度幅を持った予測を出している例がございましたので、御参考までにここで御紹介しております。
(4)の需要に影響を与える要因ですけれども、大きく3つ、報告・情報開示上の利用可能性、コンプライアンス上の利用可能性、あとは転売目的、こういった3つに整理しておりまして、特にコンプライアンスの観点は、前回記載できていなかったところを、コメントを踏まえまして今回新たに記載しております。
9ページの(5)供給に影響を与える要因ですけれども、こちらは前回とおおむね同様なんですけれども、一番下のマーケットメイカーの記載をより正確を期してございます。
10ページからが取引エコシステムにおける各機能の現況ということで、ストックテイクの成果をそれぞれの主体・機能ごとに紹介しているところでありまして、一番下の①取引プラットフォームの状況というところで、11ページに入りますけれども、市場型について東京証券取引所の方からもコメントをいただきまして、足元の取引動向の記載をより補充してございます。
また、12ページになりますけれども、上から2つ目の「これらの」という段落でデリバティブ取引について記載してございますけれども、満期の決済方法に係る記載を、こちらもより正確を期した記載に改めております。
②の仲介の状況、③組成支援の状況、その後もそうですけれども、基本的に前回同様の記載になってございます。
17ページまで飛びまして、3ポツ論点整理というところで、ここの図5に記載しております骨子は前回同様となっております。ただ、前回いただいたコメントを踏まえまして、一部記載を調整したり、より正確な記載に改めたりしています。17ページの①のところで適切な情報開示についての言及がございますけれども、前回、具体的にどんな情報を開示すべきなのかと、そういった観点を記載すべきではないかというコメントをいただきましたので、ここの第2段落、「取引参加者の意思決定に影響を与えるような情報が十分開示されていることが重要である」という記載を追記しております。
また、18ページ、②これはキャパシティ・ビルディングの観点ですけれども、コメントを踏まえまして、「リテラシー」というキーワードを追記しております。
19ページの法的性質・会計上の位置付けについてですけれども、こちらも武川メンバー、鶴野メンバーに御確認いただいて、より正確な記載にしております。
21ページ、取引仲介者・クレジット売主に関する事項、①の適切な商品説明・販売のところになりますけれども、一番下の段落、ここを前回コメントいただいたところを踏まえて修正してございます。具体的には、カーボン・クレジットを組み込んだ関連商品・トークン・サービスに言及しているところですけれども、説明内容として、「組込みの態様や組み込まれたクレジットの商品性について、適切な説明を行うことが重要である」と追記しております。
また、その下のところですけれども、個人との関係です。こういった関連商品・トークン・サービスを提供する場合に、個人に提供する場合も想定し得ると。個人は法人と比べても目的・知識・経験が多様かつ顧客保護・投資家保護の必要性が類型的に高いと考えられることから、提供者は十分に丁寧な説明を行うことがとりわけ重要であるといった形の記載にしております。
次の22ページ、(3)からが取引所・取引インフラに関する事項ですけれども、①で登録簿の正確性について記載しておりましたが、コメントも踏まえまして、スムーズな移転登録手続を担保することの重要性についても追記しております。その後はおおむね前回と同様の内容になってございまして、26ページからはクレジット買主に関する事項ですけれども、こちらも前回同様の記載になっております。
28ページで「4.おわりに」としておりますけれども、第2段落の今後のところで、「関係者においては、こうした論点整理を踏まえ、個々の取組について更なる深化が期待される」と書いているところですけれども、その後ろに例示として、キャパシティ・ビルディングや連携・対話の強化、販売時説明のあり方等についてのベストプラクティス、法的性質・会計上の位置付けについての必要な整理、こういったところを例示として、ネクストステップとして記載しているところでございます。
29ページが今回添付した用語集であります。簡単なものではありますけれども、既存の環境省や経産省の出している報告書の用語集なども参照いたしまして、参照目的でつけているというものでございます。
以上がこちらの縦長の報告書原案の説明でして、最後に、簡単に横長の概要紙もお配りしてございますけれども、こちらの1ページ目がこの検討会の検討対象、報告書の内容を1枚でまとめた1枚紙というものになります。
2ページ目と3ページ目につきましては、論点整理、今御説明しましたところを、ポイントポイントをピックアップしてスライドの形でまとめているというものになります。
以上が報告書原案とその概要の御説明でございます。
【根本座長】
どうもありがとうございました。
それでは、議論のほうに移りたいと思います。御発言を希望される方はお手元の名札を立てていただき、オンライン参加の方はWebexのチャット機能で全員宛てにお名前を記入いただければと思います。事務局に対する御質問である場合は、その旨を併せてお伝えいただけると幸いです。それでは、よろしくお願いいたします。
では、江夏さん、お願いいたします。
【江夏メンバー】
野村資本市場研究所の江夏でございます。御説明いただきまして、誠にありがとうございました。最初の案から比べると、大変精査されるとともに、慎重に検討された点が随所に盛り込まれており、大変良い内容になったと感じております。
内容に対して、基本的には異存ございませんが、細かい部分で1点挙げさせていただきます。脚注に入っているハイパーリンクですが、提示されるのは良いと思いますが、ウェブサイトの提供主体がURLを将来的に変更する場合もあるので、出所も併せた上でハンパーリンクを載せる形にしたほうがユーザーにとって便利ではないかと思った次第です。
以上でございます。
【根本座長】
貴重な御指摘をありがとうございました。
ほかにはございますでしょうか。天田様、お願いいたします。
【天田メンバー】
三菱UFJ銀行、天田でございます。今回御説明いただいた報告書の修正案については、前回の議論がしっかりと取り込まれていると思いますので、特段異論はございません。前回、私からは、金融機関以外がカーボン・クレジット取引の仲介者となる場合にも、同程度の顧客保護が必要であるということを申し上げました。そのためには、ベストプラクティスの共有が効果的であるという話をしましたが、そういった要素も取り込んでいただき感謝しております。
報告書についての意見は以上となりますが、お客様との接点を踏まえて感じていることを少しお話しすると、カーボン・クレジットの市場は黎明期だと思っていまして、制度や商品性も複雑であり、報告書にも記載がありましたけど、関係者のキャパシティ・ビルディングが非常に重要だと思っています。
当行でも、お客様から、カーボン・クレジットの活用方法や制度について教えてほしい、何を準備すればよいか教えてほしいといった照会が増えているところでございます。必ずしも今は需要が大きくなくても、カーボン・クレジットは将来に向けて確実に増加が見込まれると思いますので、健全な取引環境を整備するためにも、中長期的な視点で供給・仲介・需要が一体となって知見を蓄積していくことが必要であると感じております。
需要側がどんなクレジットをどんな目的で活用したいのかが明確になることで、供給側もそれに沿ったクレジットの創出が可能になると思いますし、金融機関もそれを仲介する上でクレジットの意義を同じ目線で理解して支援できるようになるのが理想だと思っています。
私からのコメントは以上です。
【根本座長】
実際の実務からの御経験に基づく御意見と承りました。ありがとうございます。
それでは、河村さん、お願いいたします。
【河村メンバー】
御説明ありがとうございました。我々どもの指摘を受け、内容もかなり精緻に訂正いただいており、全般的に非常によく対応いただいたというふうに感じております。本当にありがとうございます。
1点だけ、少々細かいですが、8ページ目のほうでリンクもつけていただきながら、市場規模の見通しを御説明頂いています。金額の目安も含めて非常に参考になるなと思う一方で、我々ども民間会社としても将来の需要を見通すときに相当苦労はしているんですけれども、かなりな幅があるということ、あと不確実な部分があったり、制度によって需要が相当程度上下する可能性があるので、その様な点を注意事項として補足いただくと安心して読んでいただけるかと思い、1点御指摘をさせていただきます。
【根本座長】
御指摘をありがとうございます。そういったことを踏まえていきたいと思います。
小圷様、お願いいたします。
【小圷メンバー】
IGESの小圷です。まず、今回こうやって報告書を取りまとめていただきまして、本当にありがとうございます。前回、議論した内容もほぼ反映されていると思いますし、私のほうからは結構取引の部分にある程度集中する形で論点整理してはということで、そういった点も今回の論点整理のところに大分含まれていただいたかなと思っています。あとはやっぱり今回のこの報告書の位置づけも、こうすべきだというよりはいろいろ論点を拾って、それに向けて今後やるべき内容とかを整理していくという立てつけのものかと思いますので、そういった意味でも非常に網羅的に整理されたかなというふうに思っております。
私のほうから、そういう意味ではこの分野でいろいろと長くやっている者として幾つか気になる点とかをちょっと述べさせていただいて、最終的にどうするかは議長及び事務局のほうにお任せできればと思っております。1つは、いわゆるEnvironmental Integrityの訳ですけれども、今、健全性ということで訳されていると思いますけど、この分野でよく、このEnvironmental Integrityは環境十全性とも訳すこともございまして、健全性か十全性か、その辺りは、十全性とよく訳すことが多いということで、健全性でも意味は通ると思いますけれども、そういうふうによく訳されるということが1点。
あとは、冒頭の「はじめに」のところの最後の部分にも述べられている自然資本の保全価値という、いわゆるネイチャー・ベースド・クレジットというところにも、ここをいろいろ考え方も改めて整理いただいて、今後、いわゆるCO2とか、炭素のクレジット以外の部分のクレジットというのも出てき得る。そういうのも今後のこういう取引とかいう観点で出てき得るという意味で触れていただいているのはいい点かなと思いますけど、若干中身の整理というのは、これから変わってくるところもあるかと思いますので、この辺も今後検討する内容ということで含めていただいているというのはいいかなと思いました。
あとは、ベースライン&クレジットのところですが、これも私がある程度これまでも関与していたこともあるんですけれども、JCMについても、実際、資料の図2の中にはJCMクレジットが入っていると思うんですけれども、実際このベースライン&クレジット制度の中にJ-クレジット以外にもJCMというのも含まれておりますし、政府としてやっているものでもありますので、可能な範囲でJCMについても触れて、事例として、J-クレジット及びJCMのようなものもあればみたいな形で文中にも記載いただけるといいかなというふうに思いました。あとすみません、本当に細かいことで、「二国間クレジット制度」というのが一応正式名称になりますので、制度というのも併せて入れていただけるといいかなと思いました。
あとは、これもかなり専門分野的なところですけど、新しく入れていただいた図3の分類で、この削減・回避と吸収という大きな分類でいいと思うんですけれども、よく言うのは排出削減と回避ですね。排出削減・回避、要するに排出部分を削減するという考え方、英語でいうとエミッション・リダクションとよく言うんですけれども、エミッション、排出というのを入れていただいたほうがいいかなと思うので、排出削減・回避系。回避というのも、回避する、結果として排出削減が起きるということなので、結果としては排出削減が中心的な部分なんですけれども、いずれにしろ排出という言葉を入れていただいたほうが、後半の文中に排出ということも入っていたりして、その辺は全体の整合性の言い方かもしれませんが、排出削減という言葉、基本的にこの分野では1つの言葉として使われますので、排出という言葉とセットにして。それに対峙する考えとして吸収というものがあって、むしろ排出はしないんだけれども、CO2を吸収するという、除去するという考え方で、大きく2つあると。ここは英語というとリムーバルとかいう言葉なんですけれども、その意味で排出削減という言葉を統一的に使われるといいかなというふうに思いました。
あと用語集の部分で、この辺りも用語集となるとちょっといろいろ細かい点も、表現ぶりとか出てくるかもしれません。基本的な意図としては、大体こういうような専門的な用語について、こういう意味だよということで説明するということですので、あまり細かく見るところはないかなと思うんですけれども、先ほど言った排出削減というところで排出という言葉を30ページ目のところに入れていただくのと、あとコベネフィットも、ここを日本語でどういうふうな言い方をするかというのがあって、結構相乗効果とか共通便益とか言ったりすることもあります。付随的価値ということでもいいんですけれども、基本は削減をやって、それに付随して様々なベネフィットがあると、大気汚染防止とか、あとは生物多様性の保全とか、そういういわゆる便益、利益みたいなものになりますので、今の付随的価値というのでもいいと思いますし、コベネフィットの訳というのは、よく共通便益とか言ったりもします。そこはまた御検討いただければいいかなと思います。
あとは追加性の部分の、説明のところで追加性というのもなかなか難しい概念でして、基本的にはこのカーボン・クレジットというインセンティブがなければやらなかったということで、この分野は結構、いわゆるファイナンシャル・アディショナリティみたいな、収入の面で追加的であるものもありますし、最近よく言われるのは、もう少しレギュラトリー・アディショナリティといいますか、いわゆる法律があってやらなきゃいけないと言っているものは、それはやるものだと。なので、それにさらに付随的にやっていくものですとかいうのがあったりするので、クレジットによるインセンティブがなければ、基本的には当該削減事業が行われなかったというようなものになるかなと思います。ですので、この言い方でいいと思うんですけれども、クレジットによる収益及びそういったインセンティブがなければ当該排出削減事業ですとか、排出削減が達成されなかったというものになります。
あと最後1点だけ、論点整理の部分の2ページ目のところでキャパシティ・ビルディングの重要性というのは、私も全くそのとおりだと思っておりまして、ここもし可能でしたらどういった内容のものが、キャパシティ・ビルディングとなるのか、その観点によりますけど、いろいろな意味でこの分野の知見の向上ですとか、情報の普及ですとか、あとやっぱり専門家の育成みたいなものですかね。そういった点での、まさに先ほどのリテラシーみたいなものを高めていくということがいわゆるキャパシティ・ビルディングなのかなというふうに思っておりまして、そういった点、もうちょっとキャパシティ・ビルディングと言ったときに、どういった中身かというのがもうちょっとあるといいかなと思います。私自身はこういった中身について、もっと皆さんの理解を高めていって、売手・買手、皆さんがそれぞれどういうクレジットが信頼性があって、どういうふうなクレジットであれば自分たちのオフセットに使えるのかとか、そういう理解を高めていって、より使いやすくしていくということなのかなというふうに思っておりますので、そういったキャパシティ・ビルディングの内容というのも可能な範囲で付け加えていただけるといいかなと思いましたので、御検討いただければと思います。
私のほうからは以上です。
【根本座長】
大変貴重な御指摘をありがとうございます。用語というのは重要な点だと思います。こちらで検討させていただきます。
【小圷メンバー】
もう1点だけ、すみません、用語のところでクレジットの評価機関の中身で、発行済クレジットについての信頼性評価という記載になっているんですけど、最近は発行していない。これから発行するであろうプロジェクトに対しても、このプロジェクトがいいか悪いかとか、レートをしていることも行われていますので、いわゆる発行されて、このクレジットのものがいいか悪いかだけじゃなくて、これからクレジットを発行するものに対して、要するにそういうものを今後買うバイヤーさんがこのプロジェクトだったらいいねというふうに判断して、それでお金をつけるとか、そういう発行前のものについても結構今レーティングというのが行われていますので、そういう意味では、発行済のものだけではなくこれから発行されるものも評価を行っている事例もあることを御指摘します。以上です。
【根本座長】
分かりました。ありがとうございます。
鶴野様、お願いいたします。
【鶴野メンバー】
ありがとうございます。CSRデザインの鶴野です。私も皆様と同じように、今回きれいにお取りまとめいただいて、本当に感謝しております。私のほうからは、前回は開示と会計についてコメントをさせていただきましたが、全て取り込んでいただいて、非常に感謝しております。
全体を通して、本日申し上げるところはないのですが、1点だけ用語集のところのファイナンスド・エミッションのところです。弊社はPCAFの日本事務局をしていまして、この用語の説明が気になりました。ファイナンスド・エミッションの説明としては、SSBJか、もしくはPCAFを参照されるといいかなと思います。「投融資先の排出量」というよりは、「投融資先の排出量のうち、報告企業に帰属するもの」というのが正式なSSBJやPCAFで言うところの説明になっております。この83の注釈の文書で、ファイナンスド・エミッションの定義が見つけられなかったので、もし御検討いただけるとよろしいかなと思いました。
以上になります。
【根本座長】
どうもありがとうございます。もう少し明確に改めたいと思います。
松尾様、お願いいたします。
【松尾メンバー】
東京証券取引所の松尾でございます。私も皆様がおっしゃっていただいたとおり、かなり充実した報告書になりまして、取引の部分もかなり記載を具体的に充実させていただいて大変感謝申し上げます。
特にございませんが、1点、21ページのところの2段目のところで、投資家というかお客さんに対する説明のところで、各種制度においてオフセット利用が認められていないクレジットについてその旨を十分に説明せずに販売するような場合は、投資家保護の観点からは問題があるということで、まさにそのとおりだと思うものの、これは販売する側の人は結構大変だなと思いました。例えば、日本国の制度の算定・報告・公表制度であれば、J-クレジットとJCMしか使えないというのは明確ですが、GHGプロトコル、あるいはSBTやCDPのような、NGO、つまり国連でも政府でもない、国際的な基準設定主体がいて、彼らがどういう場面にどのようなクレジットを使えるかという基準を、基本的には厳しくする方向へどんどん変えていく傾向にあり、国際的な議論の動向や基準設定主体の提言の類にも注意を払う必要があるのかなと思います。ですので、報告書のところに、留意すべき点というのか、オフセット利用が認められるかどうかは、固定的ではなく流動的な面もあると、ただし、書いた上で、流動的だから販売する業者は、「買主、注意せよ」で、自分で考えてくれということなのか、売主もちゃんとSBTが何を言っているか勉強しなきゃいけないのかということなのは、そこまでは書かなくてもいいと思いますが、いずれにしても結構流動的な世界だというのが少し書ければいいかなとは思います。採否はお任せいたしますが、販売業者の側からするとちょっと気になったというところでございます。
【根本座長】
その点、何かありますか。
【森サステナブルファイナンス推進室課長補佐】
そうですね。17ページの下のところで、まさに取引参加者の意思決定に影響を与えるような情報かどうかという観点で、いろいろな制度があるけれども、この制度はオフセットできるかは、まさに意思決定に影響を与えるということであれば説明したほうがいいんだと思いますし、そういうことは一つあるかなというのと、あとはベストプラクティスの観点でいうと、次の18ページの上から2段目でベストプラクティスを活用というのを書いているんですけれども、脚注で実務の発展等に応じてベストプラクティスは変わり得るものであるという可変性みたいなところをここで一応触れさせていただいているんですけれども、いただいた今のコメントを踏まえて、先ほどの箇所でどのように触れるかは検討させていただければと思います。ありがとうございます。
【松尾メンバー】
すみません、最後の最後で。
【根本座長】
どうもありがとうございます。
ほかに。オンラインで御参加の方、ございますでしょうか。吉高様、お願いいたします。
【吉高メンバー】
このたびは、おまとめいただきまして、ありがとうございます。これまでカーボン・クレジットに関する報告書は経産省、環境省を中心に出ていたものですが、初めて金融庁から出たというのは、金融機関にとって重要な示唆になった、最初の一歩としての示唆になったと思っておりまして、大変感謝をしております。
私が申し上げたコメントは全部反映していただきましたので、特に付け加えるということはないですし、既にほかのメンバーが言われていることもあり十分なのかなと思っております。当初は、先ほどちょっと松尾さんがおっしゃったところは私も気になっていたところで、ベースライン&クレジットのところを図表で示していただきまして、明確になったと思います。
ご承知のとおり、SBTとか国際的な枠組みで企業が使えるクレジット、例えば非化石証書ですとかグリーン証書とか、ほかのいろいろな種類の証書があるかと思います。この引用されているカーボン・クレジットの報告書にはそういったことも書かれていたと思います。今回の報告書に、それらについて書かれていないことは問題ないですけど、それらについては触れないということを明確に書かれるのも一つなのかと思いました。もしくは、国際イニシアティブで企業が使えると言われている証書を使う目的が、オフセットとかコンプライアンス目的というとしたら、そこについて多少の説明、脚注でもいいのであってもいいのでは思いました。もしくは、それはどこかに書かれておりますでしょうか。御確認です。または、どの辺りで読めるかでも教えていただければと思います。
【高岡サステナブルファイナンス推進室長】
事務局、高岡ですけれども、オフセットで活用できるものとしてはクレジット以外にも、例えば非化石証書のようなものがあるといったところは明示的に現状記載できていないと思いますので、御指摘を踏まえて、注記などで記載できないか検討したいと思います。
【吉高メンバー】
御判断いただければと思います。あと金融庁の報告書ということで、基本的に買主と売主が対象ということで整理をされていると思います。取引をどう監督するかという視点で、金銭が伴う取引をどう見ていくかということのお立場で全然問題ないと思います。ただ、昨今様々な形でカーボン・クレジットビジネスを作ろうとしているスタートアップや地域企業がいらっしゃっていて、その方々は、直接すぐ売手になるとは限らない。そういった方々は基本的にはこの報告書の対象に入れないということでよいか。もしくは、売主として考えていればいいのか、確認をさせてください。
【高岡サステナブルファイナンス推進室長】
その辺りは売主ということで括られるものと認識しておるところです。
【吉高メンバー】
分かりました。この報告書にはステークホルダーという言葉が1回だけ出てくるんです。そのステークホルダーという言葉の前段に、投資家などのと書いてあったので、ステークホルダーというと、どの辺りまでのステークホルダーを含むのか気になったものですから御確認でした。どうもありがとうございます。
【根本座長】
ありがとうございました。
ほかに御意見ございますでしょうか。根本様、御意見ということでお願いいたします。
【根本メンバー】
ENEOSの根本です。説明ありがとうございました。用語集も含めて、全体の構成として非常に読み手に分かりやすい報告書になっていると思いますし、これからクレジットの取引が拡大化していく現状に当たって、非常に活用の余地が広い報告書というふうに感じました。結論として、内容に異論はございません。事務方から幾つかコメントさせていただきましたけど、それも全て取り入れてくださいまして、ありがとうございました。
若干感想的なコメントになってしまいますが、我々排出側の業者ですので、これからクレジットを活用するに当たって、取引が複雑化し、かつ、テックも含めていろいろなものが装備されていくということが予想される中で、最後の結びにあったキャパシティ・ビルディングがすごく重要になってくるという強いメッセージを感じました。
特にポートフォリオを私たちは組んでいくことになりますので、ポートフォリオを組むうえで必要となるリスクをしっかり把握することなどがこれから大きな課題になってきます。そういった意味で現状はスタート台という認識でして、国内外も含めて制度やテックなどを含めた動向のモニタリングをしっかりして、それをしっかり我々のリテラシー向上やキャパシティ・ビルディングで行っていくという、我々プレーヤー側も決意を新たにするいい報告書になったと思います。感想チックなコメントになってしまいましたが、非常にいい報告書ということで、私たちからは異論ございません。
以上です。
【根本座長】
この意義とか、今後の使い方も触れていただいたと思います。ありがとうございました。
武川メンバー、お願いいたします。
【武川メンバー】
森・濱田松本法律事務所の武川でございます。私のほうからは報告書案については特段コメントなく、コメントも反映していただきまして、大変ありがとうございました。非常に意義深いものが出来上がったんじゃないかなというふうに思っております。
その上で感想なんですが、根本様とほぼ重なるんですけれども、この報告書をベースに、今後やはりキャパシティ・ビルディングであったり、ベストプラクティスの共有ですね、それをやっていくということが非常に重要かなというふうに思っておりまして、そこは関係する当事者もそうですし、我々専門家も含めてそういったことをしっかりやっていく必要があるということで、今後実践していきたいなというふうに考えている次第です。このたびは大変ありがとうございました。
以上でございます。
【根本座長】
コメントありがとうございました。承りました。
吉戒様、お願いいたします。
【吉戒メンバー】
吉戒です。ありがとうございます。来年度から本格稼働、排出量取引制度を契機に、今後、炭素価格、これが中長期的には徐々に上昇していくという見通しだろうと思います。いち早くGX投資を行った企業が高く評価されるという事業環境、これが整備されていくことになるんだろうと思います。したがいまして、こういった環境下でカーボン・クレジット取引が果たす役割というのが、多分来年度以降、本年度も含めてですが、加速度的に高まるのではないかなというふうに思います。こういう時期にこの報告書が間に合ったというか、出ていくということに関しては大変意義があるんだろうと思います。
あと法規制とかマーケットの変化というのは、これは当然大企業を中心に広がっていくと思うんですけれども、やはり中堅・中小企業にも連鎖的に波及していくということになります。これはマクロ的な、そしてもうちょっと長い中長期的な視野で見ていく必要があるかなというふうに思います。特にこの報告書を契機に地域金融機関の果たす役割、これはもっと注目されていいというか、もっとスポットを浴びていいんじゃないかなと思います。これは前回も感想というような形で申し上げましたけれども、まだまだ多くの金融機関、特に地域金融機関においては地産地消型で貢献していただきたいとは思うものの、あまり理解されていないという面は否定できないと思います。場合によってはほとんど知られていないと言っても過言ではないかなと思います。そういう意味では、今回のこの報告書が今後どういうふうに使われていくかといいますか、活用されていくかというのは非常に大きな意味を持っていますし、今回この第7回での書きぶりも含めて非常に分かりやすくまとめていただいたかなというふうに思っています。
用語集が最後に、もっとたくさんあってもいいかなと思ったんですが、用語集が加えられたというのも非常によかったかなと思います。割と普通の人が普通に読めるものになってきたので、ぜひ活用の場というんですか、これがどういうふうに広がっていくかというのを楽しみ、期待しております。非常に感想みたいな話ですが、私からは以上です。
【根本座長】
どうも御感想ありがとうございます。また、中堅・中小企業、地域金融機関についても触れていただいたと思います。ありがとうございます。
黒﨑様、もし御感想等あればお伺いできますでしょうか。いろいろと御協力をありがとうございました。
【黒﨑メンバー】
ありがとうございました。皆さんがもう既にいろいろな点について述べられているので、私から追加で申し上げることはないんですけれども、先ほど吉戒メンバーもおっしゃられていましたけれども、一般の方というんですか、このカーボン・クレジットの市場に興味のある方々が読んでも、それからプロである買手とか売手の方々が読んでも参考になる報告書ということで、広く世の中に広められるものが出来上がったのではないかなというふうに思っております。
今後の使い道ですとか、当然、金融庁のウェブサイトに載せていくものだと思うんですけれども、どういった形でこの報告書が活用されていくのかといったところに私も期待をしておりますので、ぜひ関係者の方には頑張っていただきたいなというふうに思っております。
以上です。ありがとうございました。
【根本座長】
御指摘の点、しっかり踏まえていきたいと思います。ありがとうございました。どうぞ。
【小圷メンバー】
よろしいですか。1点だけちょっと、これもあくまでも御参考までということなんですけど、まさに今後そういった取引とか企業の取組、実際にクレジットの売買とかが始まってくるときの重要な点として、19ページにあります、いわゆる会計上の位置づけ的なところ、ここにJ-クレジットの例とかが入っていると思うんですけど、一応これも御参考までなんですけれども、例えばJCMクレジットについても、この税務上の取扱いについてというのは、一応国税庁の照会の回答というのが出ていまして、JCMクレジットの取引に係る税務上の取扱いについてということで、実際に具体的には法人税の扱いと消費税の対応について、それぞれの企業が扱った場合にはどういうふうな形で会計に入れるのかとかいうことが入っています。以前で言うと、京都メカニズムについても同じように紹介もされていますけれども、一番多分、今回の事例としても関連するのはJCMクレジットだと思いますので、そういう具体的な紹介もされておりますので、これから実務として入ってくるときに多くの企業が使っていって、それをどう企業会計の中で対応していくのかというあたりも今後の、ある意味リテラシーの部分とかになってくると思いますけれども、そういった例もございますので、後ほどまた参考にしていただければなと思います。
【根本座長】
了解いたしました。どうも御指摘ありがとうございます。
どうも活発な御議論と御意見をありがとうございました。
ちょっと私も一言感想というかお礼を申し上げたいんですけれども、メンバーの方々からの御意見とコメントをいただいて、随分充実した報告書になったと思います。皆様から御指摘いただいたようにかなり分かりやすくもなって、キャパシティ・ビルディングにも今後十分活用できるかと思いますし、また、メンバーの方々が御専門家でいらして、まさに市場の先駆者なので、ぜひ今後も広めていただければと思います。
あと当初、こういう規律とか透明性とかルールづくりの方針を示すとなると、一方で柔軟性とか、そういうものが犠牲にならないかという御懸念もあったと思いますが、そういうものを割とマネージできている報告書かなと思っております。また松尾メンバーのグローバルな動向というご指摘に関して、この検討会を少し超えたところですけど、今後の国際的な協調とか相互運用可能性、こういうのはぜひ見守っていきたいと思います。日本として信頼できるスケールのある市場を育てていくことで発言権も増していくと思いますし、世界の投資家に魅力的な市場をつくって、それが相互の運用可能性や普遍性に貢献していければと思っております。
以上でございます。どうもいろいろと本当に貴重な御貢献をありがとうございました。
では、いただいた御意見を踏まえまして、もう少し修正をしていきますが、修正内容については、座長のほうに御一任いただくということでよろしいでしょうか。
では、御一任いただいたということで、私のほうで確認して精査を行った上、準備が整った段階で事務局から公表させていただきたいと思います。
事務局の方で御連絡がありましたらお願いいたします。
【高岡サステナブルファイナンス推進室長】
本日もどうもありがとうございました。毎回お忙しいところ活発に御議論いただいて、報告書の取りまとめにも様々なアドバイス、御示唆いただきまして、大変ありがたく存じます。
本日いただきました御意見、御指摘を踏まえまして、今ほど座長の方からもお話ありましたけれども、事務局の方で修正を考えまして、座長と御相談させていただいて取りまとめをさせていただいた上で、6月中に公表できればというふうに考えております。
報告書を公表した後は、まさに今日、皆さんから同様の御指摘を幾つかいただきましたけれども、報告書を出して終わりということではなく、それをちゃんと活用してキャパシティ・ビルディングとかに資するような取組につなげていけるように金融庁としてもしっかりとやってまいりたいというふうに考えておりますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
【根本座長】
ありがとうございました。
【高岡サステナブルファイナンス推進室長】
最後CSFOの池田さんから。
【池田総合政策課長】
本当に皆さん、これまでありがとうございました。去年、こういうことをやろうと始めたときに、金融庁はどこまでできるのかなということは、いろいろ心配な面もあったんですけれども、皆さんの御協力によって何とかここまでこぎ着けられたということで、ぜひ今後いろいろな形でカーボン・クレジットの取引が日本でも盛り上がっていく局面になっていると思いますので、その中で金融庁も適切に関与しながらマーケットの発展に貢献してまいりたいと考えておりますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
【根本座長】
どうもありがとうございました。
今回最後となるのですが、今まで皆様から御感想とかいただいてはいるのですがまだ言い残されたことがおありでしょうか。
よろしいですか。
それでは、どうもありがとうございました。昨年6月から12か月、7回ありまして、1年間になるんですが、大変貴重な御意見をありがとうございました。以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。ありがとうございました。
―― 了 ――
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金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総合政策局総合政策課サステナブルファイナンス推進室(内線5363、2840、3515)