中国金融研究会(第1回)議事要旨
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1.日時
平成30年10月5日(金)15時~16時30分
2.場所
中央合同庁舎第7号館 13階 共用第1特別会議室
3.議事概要
(1)遠藤金融庁長官の冒頭挨拶
○ 近年、中国経済の急速な発展に伴い、国際金融システムにおける中国の影響力が拡大するとともに、最近で
はフィンテック分野等でも世界的に大きな存在感を発揮。また、本年に入ってから中国の金融対外開放の動き
が加速しており、多くの金融機関が、中国市場参入や中国ビジネス拡大に強い関心を持っていると承知。
このような大きな環境変化の中で、日中金融協力や日系金融機関の中国ビジネスの環境整備等について官民
が連携して戦略的に対応していくことは、わが国の金融システムの安定及び金融分野の成長戦略にとって
極めて重要な課題。
このような観点から、官民が一体となり中国の金融に関する最新動向を共有し、今後の具体的課題について
議論を行うため、今般金融庁がハブとなり、中国経済・金融専門家や金融機関等から構成される「中国金融
研究会」を設置した。
この1年間で日中金融協力は大幅に前進。昨年12月には中国財政部と監査監督に関する書簡を交換し、邦銀
による初のパンダ債発行が実現。また、本年5月の日中首脳会談では、わが国へ2,000億元のRQFII枠が付与
されたほか、日系金融機関への債券業務ライセンスの早期付与、日系証券会社等による中国市場参入の早期
実現等を合意。
さらに、本年8月には私自身が、第7回日中財務対話に参加するため訪中し、日中金融当局間で証券市場や
金融監督の分野で協力を強化することに合意した。
また、銀保監会の郭樹清主席や証監会の劉士余主席とも面会し、日中の金融行政の課題や日中金融協力の
強化等について意見交換を実施。日中金融当局間のこのような信頼関係を発展させ、今後日系金融機関の中国
ビジネスの環境整備につなげていきたい。
金融庁としては、本研究会における議論も参考に、引き続き日中金融協力を強化していく所存。本日は
率直なご意見を頂きたい。
(2)日中金融協力の進展について(資料2参照)
(3)中国金融市場の最新動向及び金融分野の対外開放の現状について(資料3参照)
(4)中国市場に関する各業界の現状と課題(資料4~8参照)
(5)金融庁コメント
○ 今回の説明を受け、業界、個社毎に様々な課題を抱えていることを改めて認識。
最近の日中関係の改善や、中国の金融対外開放を受けて、多くの金融機関が、中国市場への参入や中国
ビジネス拡大に強い関心を持っていると承知。
金融庁としては、在外公館とも連携しながら、日系金融機関の皆様の中国ビジネスを最大限サポートして
いきたい。
(6)フリーディスカッション
以下のような議論が行われた。
○ 官民で中国金融について取り組んでいく会議が立ち上がったことを歓迎。引き続き官民で取り組みを進めて
いきたい。
日本は低金利環境下にあり、投資対象として中国は非常に有力な市場の一つ。中国側に対して、成長の
手助けをして貢献したいとしっかりと発信して我々の価値をアピールするとともに、中国の正確な情報を日本
側にも伝達し、中国への投資あるいは進出を促していきたい。
○ 金融財政を含む中国の経済政策を考えるにあたっても、中国の政治の動向を考えることが重要。政策の
意思決定メカニズム、各機関のトップ、そして実務を動かしている人物がどういう特徴を持っているのかを
考える必要がある。
○ 中国の金融当局幹部を見ると、若い頃から金融の対外開放に取り組んできた方が多く、改革開放の旗を
おろすことはないだろうと考える。中国の金融業界の対外開放がどのように進むのかを確認する場は重要
であり、本研究会等を通じいろいろな形で情報交換をしていきたい。
○ 日中間の金融分野の協力関係が深まっていくと予想される中で、我が国の人民元ビジネスのみが一方的
に増えていくのではなく、円の取り扱いもより一層増えていくような工夫を考えておくべきではないか。
○ 米中関係や市場の動きの中で、中国の金融業の対外開放の流れがどのように進展していくのか引き続き
注視していきたい。
金融業・金融分野の開放、国際化という大きな流れは変わらないだろうと推測。なぜなら、今の中国の金融
当局の上層部にいる方々が、1980年代、90年代から一貫してこうした流れに関わっているから。
改革開放の初期段階から中国の改革開放を手伝ってきた日本の金融機関が、この大きな対外開放の流れ
の中で中国側から再評価されることを期待したい。
○ この研究会がこれからの日中金融協力のいろいろなプロジェクトを生むプラットフォームになることを
期待。
日中金融協力では、両国がお互いに利益が持てるようなことを積み上げていくことが重要。
今後どのような協力を行うかを考える場合に留意すべき点が2つある。1つは、レシプロの観点。
例えば、銀聯カードやアリペイは日本で使える一方で、日本の銀行キャッシュカードは中国で使えないし、
ラインペイや楽天ペイも中国で使えないのではないかという問題がある。
もう一つは、今後の日中金融協力を進めていくために日本側で解決しておくべき点。例えば、「東京・
上海ストックコネクト」を実現しようとすると、人民元の決済システムが東京にないことや、人民元建て
証券決済とのDVPができないということが障害となる。このように、今後の施策の進展に向け、日本側
で解決しておくべき点があるのではないか。
○ 先日、中国で、ある大学教授と面会した。その教授が一番心配しているのはやはり債務問題。城投債
で最近デフォルトが起こっていると聞く。これは中国側の発表によれば大体20兆元、IMFによれば
40兆元と、大変大きな金額。この処理を誤ると、信用不安や金融システムの毀損につながりうるため、
注視が必要。
○ 中国当局とコミュニケーションしている中で感じるのは、スピード感がすごく速いということ。マーケット
も富がすごい勢いで積み上がっており、フィンテックはじめ、新しいビジネス機会がどんどん広がっている。
一方で、中国市場参入は簡単ではないとも認識。1つには、規制がまだまだ多い。中国国内の個人投資家
が国際分散投資をするに当たっては、いろいろ投資枠の制限があるし、決済も自由にできるわけではない。
中国で外資が貢献できる優位性というのは、グローバルな金融商品、サービスの提供という点であり、
こうしたメリットを金融庁とも連携しながら、中国側に引き続き働きかけていきたい。
さらに、事業環境面でも、米中の貿易摩擦やシャドーバンキングの問題、地方の過剰債務の問題といった
種々の難しい問題も存在。
また、冒頭言及した中国側のスピードというのは、ある日突然、別の方向に変わって、反対の方向にすごい
スピードで動き出すというリスクもはらむものと認識。ビジネスをやる立場からすると予期できる規制環境、
これが非常に大事なので、官民で中国側に働きかけていきたい。
○ 中国は1つの大きなマーケットであると同時に、大胆にトライアルできる土地柄を利用して様々な新たな
試みに挑戦できるマーケットでもあると考える。例えば、ある中国の金融機関は、金融プラステクノロジー
が特徴であることを明確に打ち出しており、幹部は、「金融機関の幹部」ではなく「IT企業の幹部」と
思って行動しなさいと言われていると聞いた。その会社では、大胆かつスピーディーにいろいろなことを
実験しており、フィンテックの進捗が著しい。
日中の金融機関がイコールパートナーとして切磋琢磨して見出した良いものを日本にも還元できれば
有益。
○ 今の日中政府間の良好な関係もあり、幾つもの中国の大手金融機関のトップが来日し面会を行うなど、
民間金融機関の動きも活発化。
また、今の中国の開放の流れというのは、日本だけではなく各国の人たちが大いに注目していると認識。
こうした状況や直面しうる問題をオールジャパンとしてどう捉まえていくかというのがまさに大きな課題。
○ 日中関係が良好な方向に変わってきた。関係が良好なときに、仕組み、制度としてしっかり固めておく
ことが重要。
中国での事業において、時に個社での対応だけでは局面が進展しないこともあるから、本研究会の
ような官民一体の会を立ち上げて取り組んでいくことが非常に有効だと考えており、大きな期待をしている。
○ 中国のアジア外交における日本の影響力は強く、経済分野でも同様。例えば環境分野では日本の技術
に高い注目が集まっているように、日本を頼って、現在の難局や問題を解決しようという期待を持っている
のではないか。
訪日客のおかげで中国人の対日好感度が急上昇しており、日本に対する期待感も上がってきている。
現状の日中間の良好な関係は希有のチャンスだと思うので、政府及び金融機関が連携して、日中金融協力
と日本の金融機関の中国ビジネス展開を進めていくべき。
(7)遠藤金融庁長官の閉会挨拶
○ 本日は関係者の皆様から貴重なご意見を頂戴し、心より感謝。
頂いたご意見については、金融庁としてしっかりと受け止め、中国当局との対話に臨んでいく。今後、日中
首脳の往来も予定されており、頂いたご意見を踏まえつつ、日中金融協力の具体的な成果につなげて
いきたい。
今後とも、官民一体で日中金融協力を深化させていきたいと考えているので、引き続き、皆様のご協力を
よろしくお願いしたい。
―― 了 ――お問い合わせ先
金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総合政策局総務課国際室(内線3696,2974)