コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議(第7回)議事録

1.日時:

平成26年11月25日(火)16時30分~18時30分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第一特別会議室

○池尾座長

定刻まであと一、二分あるかとは思いますが、出席予定のメンバーの方、全員おそろいになりましたので、ただいまよりコーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議の第7回会合を開催いたしたいと思います。

皆様には、ご多用中のところご参集いただきまして、まことにありがとうございます。

それでは、早速議事に移らせていただきます。本日の資料ですが、前回ご議論いただきました「たたき台」にご指摘いただいた点を踏まえて修正を加えて、その上で、大きく1点目としては、第1章「株主の権利・平等性の確保」のうち、いわゆる政策保有株式の部分、4ページの原則1の4と、大きく2つ目は、第4章「取締役会等の責務」のうち、構成・機関設計・手続等にかかわる部分について追記したものを事務局に用意してもらったのが本日の資料です。

いつものように、内容につきまして事務局からまずご説明をいただいた上で、皆様にご議論をお願いするという順序で進行させていただきたいと思います。

それではまず、本日の資料、たたき台の内容につきまして、事務局からご説明お願いします。

○油布企業開示課長

それでは、お手元の資料では、「資料」ということで、縦の赤インクと黒インクで書かれたものがございますので、これに沿ってご説明申し上げたいと思います。

まず、表紙は(序文を除く)というふうにしておりますが、最初おめくりいただきますと序文が相変わらずP(ペンディング)になってございまして、これはもう1回お時間をいただいて、その際にご相談させていただきたいと思っております。

次のページをおめくりいただきますと、左右に見開きになるような形で基本原則の抜粋のページがございます。前回ご指摘いただいた項目が幾つもございましたけれども、1つは、などの「等」、それから、片仮名を極力、片仮名でない言葉に書きかえる、それから「当該」という表現、そして取締役会とか監査役会というふうに漠然と書いていたところにつきまして、監査役、監査役会の書き分けをもう少し踏み込む。これにつきましては、全般にわたって対応させていただいたつもりでございますので、今からご説明する際には割愛させていただきたいと思います。

この左右見開きのページですが、まず、冒頭1行目、「企業の持続的な成長と・・・」という一種の添え書きみたいなものを削除いたしましたのは、原則5の表現と完全に重複してしまうので、編集上の理由から落としたということでございます。

それから、ここのボックスの中につきましても、それぞれ誤解を招かないように見出しをつけております。その上で、原則1でございますけれども、これは「株主の権利の尊重」というタイトルをつけておりましたが、ご意見を踏まえまして、第1章は「株主の権利・平等性の確保」という表題に変えております。それから、その修正の趣旨を踏まえまして、「実質的に確保されるよう適切な対応を行う」といったような付随する表現修正が幾つかございます。

それから、基本原則の2でございます。「ステークホルダーとの円滑な協働」という表現について、もう少し工夫の余地がないかというご指摘が前回ございまして、これは「適切な協働」と書きかえてございます。

そのほか、基本原則4につきましては、2点ご指摘をいただいておりまして、まず、説明責任というのをもう少し高い位置に持ってくるべきであるというご指摘と、4の(2)のところで、括弧内に「説明責任の確保」というふうに書いておりましたけれども、これは趣旨がわかりにくいというご指摘をいただいておりました。これらを踏まえまして、それぞれ冒頭4の1行目に説明責任を書く形で修正をいたしております。

それから、4の下から5行目あたりに「役割・機能」とあるのを「役割・責務」に変えておりますが、「機能」というのが基本的にちょっと弱いというご指摘がございまして、「役割・責務」に変えております。

これから各論に入らせていただきます。1ページ、2ページをごらんいただきたいと思いますが、ここは今申し上げました、「等」をできるだけ明確化するといったような、いわゆる表現修正が中心でございます。あと、場所を入れかえたりしたものがございますが、中身にわたる説明については、今以上申し上げる点はございませんので、次の3ページ、4ページをごらんいただきたいと思います。

補充原則の1-2マル1のところでは、前回は、「株主総会に係る情報については」という表現をとっておりましたが、株主総会に関連するいろんな幅広い情報を念頭に置いているのであれば、その旨、わかりやすいように書いたほうがいいというご指摘をいただきましたので、ここでは、「上場会社は、株主総会において株主が適切な判断を行うことに資すると考えられる情報については、必要に応じ適確に提供すべきである」というふうに書き改めております。

その下、補充原則1-2マル2ですけれども、これは、招集通知の早期発送に係るところでありますが、単純に早ければ何でもいいというわけではございませんので、「記載する情報の正確性を担保しつつ」というふうな限定を書き加えております。

それから、3ページの下から5行目あたりですが、株主総会の問題につきましては、背景説明にありますように、いろんなご意見がございましたけれども、それに書き加える形で、このほかにもいろんな例外的な事象が生じた場合も視野に入れて、ほかの制度との整合性の検討も必要であろうということで、その旨を書き足しております。

右の4ページをごらんいただきたいと思いますが、補充原則1-2⑤でございます。これは信託銀行などの名義で株式を保有している機関投資家の件ですが、従前ですと、「出席を認めるべきである」というふうな締めくくりにしておりましたけれども、これは、例えば、委任状方式によりおおむね解決できると考えられるけれども、実務的な検討をもうちょっと詰める必要があるというご指摘をいただきました。それを踏まえてこのように書きかえております。読み上げさせていただきます。「信託銀行等の名義で株式を保有する機関投資家等が、株主総会において、信託銀行等に代わって自ら議決権の行使等を行うことをあらかじめ希望する場合に対応するため、上場会社は、信託銀行等と協議しつつ検討を行うべきである」ということで、出席を認めるべきであるという、やや結論を決めつけるような内容からちょっと修正をしております。

原則1-4を読み上げさせていただきます。見出しが、「いわゆる政策保有株式」になっておりますが、「上場会社がいわゆる政策保有株式として上場株式を保有する場合には、政策保有に関する方針を開示すべきである。また、毎年、取締役会で主要な政策保有についてそのリターンとリスクなどを踏まえた中長期的な経済合理性や将来の見通しを検証し、これを反映した保有のねらい・合理性について具体的な説明を行うべきである。上場会社は、政策保有株式に係る議決権の行使について、適切な対応を確保するための基準を策定・開示すべきである」。

次でございますが、少し飛びまして、7ページをお開きいただきたいと思います。7ページのあたりは、株主以外のステークホルダーとの関係でございますが、前回、いきなり企業の倫理規範とか行動準則から始まるのではなくて、ステークホルダーに配慮した経営理念の策定についてまず記載してから各論に入ったほうがいいというご指摘をいただきまして、今、原則2-1にございますような案文を追加させていただいております。

それから、次は10ページをごらんいただきたいと思います。原則3-1の(i)から(ⅴ)まである中で、(ⅴ)につきましては、上記(iv)を踏まえて、個別に選任する場合の理由というふうに明確化をさせていただいております。

それから、このページ、3-2マル1につきましては、従前は「取締役会及び監査役会は」ということで区別せずに記載しておりましたが、これは改正会社法の趣旨も踏まえて書き分けをしております。3-2マル1が監査役会の対応でございまして、新たに3-2マル2として、取締役会アンド監査役会という意味で書き分けをしております。記載している内容は、従前載っていたものと同じ項目でございますが、この2つに書き分けを行いました。

そして、12ページ、「取締役会等の責務」でありますけれども、ここはまず、新たに「考え方」というところがペンディングになっておりましたが、今回から記載しております。大きく2つの内容に分かれます。まず、第1段落目につきましては、我が国の会社法が3つの類型を想定しているということで、いわゆる指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社については、委員会を設置して役割を担わせるという点において外国にも類例が見られる制度である。他方、監査役会設置会社については、我が国独自の制度であるということで若干説明を加えておりまして、締めくくりとしまして、「上記の3種類の機関設計いずれを採用する場合でも、重要なことは、創意工夫を施すことによりそれぞれの機関の機能を実質的かつ十分に発揮させることである」というふうに記載しております。これが第1段落でございます。

第2段落でございますが、そもそも、このコードの策定が成長戦略の一環として位置づけられておりまして、また、攻めのガバナンスというお話も随時、この席上でもご意見を頂戴しております。それを踏まえたものでございますが、一般的に、経営判断の結果、会社その他に損害が生じることもあり得るわけでございます。その場合に、経営陣、取締役が個人として損害賠償責任を問われる可能性もあるわけでございますけども、そのときに、実際に個人としての責務を負うかどうかというのは、裁判例などを見ますと、その時点の意思決定過程が合理的であったかどうかということに着目して、責任の有無が判断されることが多いように見受けられます。ここでは、次の13ページにわたる部分でありますが、こうした前提のもとでこのような記載をしております。13ページの上の部分になります。「本コード(原案)には、ここでいう意思決定過程の合理性を担保することに寄与すると考えられる内容が含まれており、本コード(原案)は、上場会社の透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を促す効果を持つこととなるものと期待している」ということであります。

米欧の場合には、ビジネス・ジャッジメント・ルールがあるというふうに判例法上言われておりますけれども、「このコードをやっておけば大丈夫」とはもちろん書けないわけでございますが、その範囲の中で一定程度工夫をさせていただいて、「考え方」に記載をしているものであります。

13ページは、原則4-1をごらんいただきますと、「機能」というのを「役割・責務」に書きかえております。

その下、補充原則4-1マル2は、例えば10年にわたるような長期計画がコミットメントだというのはちょっと不合理だというご指摘がございましたので、中期経営計画ということで、限定をしております。

それから、13ページの下のボックスのところですが、説明責任の確保が括弧書きで記載していたのが、ちょっと趣旨がわかりにくいというご指摘がございましたので、わかりやすいように書き下す工夫をしたつもりでございます。具体的には、原則4-2をごらんいただきますと、リスクテイクを支える環境整備を行うことを主要な役割・責務の一つと捉え、まず、経営陣からの企業家精神に基づく提案を歓迎すると。そして、「説明責任の確保に向けて、」そうした提案について多角的でかつ十分な検討を行う、さらに、承認した提案が実行される際には、経営陣幹部の迅速・果断な意思決定を支援すべきである、こういうふうに書き下してございます。

それから、14ページの上の4-2マル1ですが、これは現金報酬と自社株報酬との割合も非常に重要であるというご指摘がございましたので、その旨を書き加えております。

それから、4-3の3行目も補充原則と書き分けをしながら、箱の中では、「経営陣の人事に適切に反映すべきである」というふうな表現が適切ではないかというご指摘が前回ございましたので、その旨。他方で4-3マル1では、箱の中から明確な表現が落ちましたので、「解任」というのを加えて補充原則で記載をしています。

それから、4-4につきましては、「監査役(会)」という表現を使っておりましたが、これを「監査役及び監査役会」ということに書き改めています。

15ページになりますが、一番上のボックスにまだ修正がございましたけれども、これは監査役、監査役会の守りの機能についての記載がありまして、従前の表現ですと、「守りの機能を果たすために、」これこれこういうことをすべきである、意見を述べるべきであるというふうに読めたわけですが、守りの機能だけに限定されないというご指摘を踏まえまして、この点も記載を改めております。

それから補充原則4-4マル1につきましては、ご意見を踏まえて、最終センテンスですけれども、主語を「社外取締役は」ということに書きかえまして、「監査役会は」、そこから3行ぐらい飛びますが、「社外取締役との連携を確保すべきである」というスタイルに訂正させていただいております。

ここから以下が今回新しく追記される部分でございます。まず、原則4-5につきましては、「取締役・監査役等の受託者責任」を記載しております。「株主に対する受託者責任を負っていることを認識し、ステークホルダーとの適切な協働を確保しつつ、会社及び株主共同の利益のために行動すべきである」。

それから、4-6は「経営の監督と執行」について記載しております。2行目をごらんいただきますと、「業務の執行と一定の距離を置く取締役の活用について検討すべきである」という記載をしております。これは、いきなり4-7で独立社外取締役について議論をする前に、ワンクッション、いわゆる橋渡しとなるような規定を置いているという趣旨でございまして、経営の監督と執行の関係について記載をしております。

それから、原則4-7は「独立社外取締役の役割・責務」ということで、4つ記載しております。(i)は助言に関する役割、(ii)は経営の監督、(iii)は利益相反の監督、(iv)は少数株主をはじめとするステークホルダーの意見の反映ということであります。

16ページ、原則4-8でございます。これは「独立社外取締役の有効な活用」という見出しをつけておりまして、ここも読ませていただきますが、「独立社外取締役は企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に寄与するように役割・責務を果たすべきであり、上場会社はそのような資質を十分に備えた独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきである。また、業種・規模・事業特性・機関設計・会社をとりまく環境等を総合的に勘案して、自主的な判断により、少なくとも3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要と考える上場会社は、上記にかかわらず、そのための取組み方針を開示すべきである」。

背景説明に記載しておりますのは、独立社外取締役につきましては、これを設置しさえすれば会社の成長が図られるという捉え方は適切ではないとした上で、そのためには独立社外取締役を生かすような対応がとれるかどうかが重要であるということを記載しておりまして、締めくくりのところでは、最後の2行ですが、本コード(原案)では、独立社外取締役を複数名設置すれば1人ぼっちではなくなるという意味で、その存在が十分に生かされる可能性が高まるということで、少なくとも2名以上の記載を行っているという説明を加えております。

補充原則4-8マル1でございますが、こちらも独立社外取締役をうまく活用するための規範でございますが、2行目をごらんいただきますと、例えば、独立社外者のみを構成員とする会合を定期的に開催するなど、独立した客観的な立場に基づく情報交換・認識共有を図るべきである。横文字で申し上げると、いわゆるエグゼクティブセッションというようなことなども含めて、このような記載をしております。

ここの背景説明には、独立社外者の会合というのは、取締役だけでも考えられるところでありますし、独立社外監査役を加えた会合というのも考えられるのではないかという趣旨を記載しています。

4-8マル2でございますが、これも横文字で申し上げますと、リード・インディペンデント・ディレクターとかシニア・インディペンデント・ディレクターと呼ばれるものでございますけれども、ここも例えば互選により筆頭独立社外取締役を決定することなどにより、経営陣との調整、監査役会との連携に係る体制整備を図るということを記載しております。

4-9は、あまり対立する意見が出たところではなかったと承知しておりますが、私どもの事務作業の関係で事実関係を調べたいところがございまして、あくまでもそういう趣旨で、ここは本日時点では一部ペンディングにさせていただいております。次回にはお示しすることを考えております。

4-10が「任意の仕組みの活用」ということでございます。17ページです。4-10の箱の中をごらんいただきますと、2行目、「必要に応じて任意の仕組みを活用することにより、充実を図るべきである」と書かれておりまして、4-10マル1には、3行目から見ていただきますと、「指名・報酬などに係る取締役会の機能の独立性・客観性と説明責任を強化するため、例えば、取締役会の下に独立社外取締役を主要な構成員とする任意の諮問委員会を設置することなどにより、指名・報酬などの特に重要な事項に関する検討に当たり独立社外取締役の適切な関与・助言を得るべきである」と記載しております。

それから、背景説明のところは、最後のセンテンス、下から4行目ぐらいに「その際には」というところがございますが、ここに書いておりますのは、仮にこの指名・報酬などに関する任意の委員会を設置する場合でも、設置の仕方は別に指名委員会とか報酬委員会という名前をつけなくても、あるいはガバナンスに関係するその他の機能、ここでは関連当事者間の取引とか監査役の指名と書いておりますが、そういうガバナンスの設計に関するようなものをいろいろ含めて1つの委員会にするとか、もともと任意の委員会でもございますけれども、さまざまな設置の仕方があるということを記載しております。

4-11でございますが、まず1行目から2行目にかけましては、取締役会のことであります。これはまず、取締役会全体として、知識・経験などをバランスよく備えるべきである、それから、多様性と適正規模を両立させるべきであると。

その次のくだりにつきましては、監査役については、「財務・会計に関する適切な知見を有している者が1名以上選任されるべきである」というふうに書いております。

それから、その下に書いていますのは、取締役会全体としての分析・評価などにより、「機能の向上を図るべきである」と記載しております。

右のほう、18ページになりますが、補充原則4-11マル1につきましては、取締役会全体としての知識などのバランス、多様性、規模について、その考え方を定めて開示すべきである。

それから、4-11マル2ですが、取締役、監査役の方は、それなりの時間、労力を振り向けるべきであると記載した上で、他の上場会社の役員を兼任する場合には、その数は合理的な範囲にとどめるべきでありということを記載しておりまして、その上で「上場会社は、兼任状況を毎年開示すべきである」と記載しています。

4-11マル3ですが、「取締役会は、毎年、各取締役の自己評価なども参考にしつつ、取締役会全体の実効性について分析・評価を行う」。その結果そのものを完全に公開するというのは、ちょっとなじまないでしょうけども、その結果の概要を開示すべきであるということを記載しております。

そして、4-12は、自由な議論の気風について記載しております。

18ページの4-13につきましては、「情報入手と支援体制」です。「取締役・監査役は、能動的に情報を入手すべきであり」と書いておりまして、「必要に応じ、会社に対して追加の情報提供を求めるべきである」。

19ページになりますが、「また、上場会社は、人員面を含む取締役・監査役の支援体制を整えるべきである」。その下ですが、「取締役会・監査役会は、そうした情報の提供が確保されているかを確認すべきである」。

4-13マル1ですけれども、ここはそれぞれ取締役と監査役に分けて情報入手のことについて記載をしております。

4-13マル2は、「必要と考える場合には、」会社の費用で外部の専門家の助言を得ることを考慮すべきというふうな記載をしております。

4-13マル3は、内部監査部門と取締役・監査役の連携でございます。「また」ということで、2行目には、社外の方の指示を受けて、社内との連携、橋渡しを行う者の選任などを含めて、情報を的確に提供するための工夫について記載しております。

4-14は、「取締役・監査役のトレーニング」でございまして、箱の中の最初のセンテンスは、まず、取締役・監査役自身が自ら研さんに努めることを明確にした上で、これをサポートする意味で、上場会社はトレーニングの提供等を行うということを記載しております。

4-14マル1は、就任の際、それから就任後の継続的なトレーニングについて記載をしております。

4-14マル2は、トレーニング方針の開示であります。

最後になりましたが、21ページをごらんいただきたいと思います。これは、補充原則の5-1マル3をごらんいただきたいと思いますが、「実質株主の把握」という表現を使っておりましたが、我が国の法制上、株主というのは基本的には名義株主のことを指しますので、実質株主という表現は自己矛盾的で範囲も不明確であるので、これを使わないほうがいいというご指摘がございまして、ここは、「上場会社は、株主構造の把握に努めるべきである」と書いてあります。それから、株主側もこれに応えることについては、「協力することが期待される」となっておりましたが、少し強める意味を込めまして、「協力することが望ましい」という記載にしております。

駆け足でございましたが、私からのご説明は以上でございます。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

それでは、皆様からご意見をいただく討論に移りたいと思いますが、本日、冨山メンバーがご欠席ですが、メモの提出がございましたので、席上配付しております。それから、森メンバーはご出席ですが、メモも提出されておりますので、それについてもあわせて席上配付していただいています。ただし、メンバーの方々には事前送付させていただきましたので、ただし森さんのものは間際だったので間に合っていなかったかもしれませんが、読み上げは省略させていただきますが、これらのご意見も踏まえた上でご議論いただければと思います。

それでは、議論の進め方ですが、また大きく2つに分けて議論させていただきたいと思います。

前半は、新たに追加されました15ページから19ページ、取締役会等の責務のうちの機関設計にかかわる部分をまず議論させていただきたい。それから、後半には、前回ご指摘いただいて修正した部分も含めて、残りの1ページから14ページと最後20ページ、21ページと、前回分を後半ということで、大きく2つに分けて議論させていただきたいと思いますので、ご協力よろしくお願いいたします。

それではまず、機関設計等にかかわる部分ということで、15ページから19ページの部分に関しましてご議論をお願いしたいと思います。ご自由にどなたからでも結構ですので、ご発言ください。なお、議論が関係するので、12ページになりますが、考え方というのを追加しています。その部分は今の議論とあわせて議論していただいたほうがいいと思いますので、12ページの部分も含めてご議論いただきたいと思います。

太田メンバー、お願いします。

○太田メンバー

原則4-8、16ページになろうかと思いますが、まず質問と確認をし、その後で意見を申し上げたいと思います。

4-8も含めて、文章に全て「上場会社」というふうに規定をされております。2回目ないし3回目の議論でもあったと記憶していますが、全上場会社というのは、どの範囲なのかとの質問があり、全てなんだと、こういうご議論もありました。

私の第1点目の問題意識は、上場企業の範囲には、さまざまな新興マーケットもありますので、上場企業の範囲というものをどのように事務当局はお考えなのかということを確認の上、次の議論に進みたいと思います。

○池尾座長

お願いします。

○油布企業開示課長

これにつきましては、基本的に適用対象は序文のところに記載することを予定しておりますので、次回、そこも含めてご意見、ご議論を賜りたいと思っております。

ただ、ここで「上場会社」と書いておりますときに、少なくとも本則市場と呼ばれるもの、これは東証一部、二部でございますけれども、私ども事務方としては、少なくとも東証一部、二部を前提として記載をしているということでございます。

ただ、これにつきましては、次回また、いろいろとご意見を賜れればと思っております。

○太田メンバー

わかりました。実は東証さんにもデータの提供をお願いし調べましたところ、我が国の上場企業につきましては、市場区分別の時価総額の96%は市場一部企業によって構成されているという事実があります。私は今回のコード全体に対しまして、全上場企業、つまり、新興マーケットも全部含む全上場企業が遵守すべき基本原則ということの徹底と、この補足的な原則の適用対象範囲に関する現実的な検討が必要だろうと考えます。

言い方を変えますと、やはり形式的な遵守による形骸化を避けるということが目的であります。

具体的には、次回以降の議論だと理解していますが、独立の社外取締役の複数化を促すと原案は書かれているわけで、このコードの適用に関しましては、先ほど申し上げた事情により、少なくとも市場第一部企業に限定するか、あるいは、JPXの日経400というインデックス、こういう対象企業に限定する等の区分適用をご検討いただくべきではないかというのが最初の提案です。

これに続いて、なぜそのような趣旨のことをお話しするかという理由を述べます。全上場企業というのは、約3,400社あります。そして、独立社外取締役の複数化を進める場合の最大の課題は、やはり数と質の確保ということになろうかと思います。仮に一部上場企業、これは約1,800社ですけれども、これに限定したとしても、独立社外取締役の複数化を可能とするためには、現在、1名もまだ独立社外取締役を選任していない会社が700社、そして現在、1名しか選任していない会社が約720社ぐらいあるとしますと、少なくとも複数を一部上場企業に限定したとしても、約2,100名の新しい人材供給が必要になるという計算になります。まして、全上場企業に複数の独立社外取締役を促すという場合には、約4,800人の追加人材がいるということになります。これがほんとうに現実的なんだろうかということです。

そこで2つ目の提案なんですけれども、1点目は、適用対象をフォーカスをしたらどうかということでしたが、その上で、2つの対策があるのではないかと思います。1つは、来年の6月以降の総会に間に合わせるというような流れでこの議論が進んできていると思いますが、少なくとも一定の経過期間を設けるか、あるいは、また、同時に多数の独立社外取締役の人材確保を可能とするための準備を開始することです。具体的には、関係団体や関係官庁等々が協力をして、幅広い有為な人材の活用を可能とするような仕組みを検討すべきであるということでして、公平性や透明性を担保した人材データの整備、運用に携わる、いわゆる情報センターといったものをきちっとつくり上げるべきではないかと思います。

少なくとも、有識者会議の提案の中に、実質的に複数化が促進できるような、そうした準備をすべきだということを提案として織り込むべきではないかと思います。

ちなみに、公益社団法人である日本監査役協会には、人材バンクという制度がありまして、約600名以上の方々に登録していただいています。この方々の知見を生かすために、そういう人材のデータベースを持っております。毎年、一定人数の方が企業からの申し込み、引き合い等々があってから、面談や折衝を経て、新しい職務につくという、社外役員の人材供給システムがあります。これは無論、無料です。一定数の方々について、監査役に限りませんが、取締役も含めて、そういう人材ローテーションができるような仕組みを日本監査役協会としては準備をしていますので、そういったデータベースの活用も含めて、営利目的ではない、公的な情報センターをつくるということをぜひ提案したいと思います。

それと、もうちょっといいですか。

○池尾座長

どうぞ。

○太田メンバー

手短に言いますが、補充原則の4-11マル2、18ページになります。ここにこれまでの議論を受けて、いわゆる社外役員の兼職数に関する制限を加えるという記述がございます。私はこれに賛成です。

しかしながら、同時に、独立性維持の観点から、そういった方々の就任年限、年数についても一部メンバーの方からも、これまでに指摘があったかと思いますが、兼職数と年限をセットでここに記載をするのが望ましいと思います。今具体的に何年がいいとか、あるいは何社がいいとかということは申し上げませんが、やはりバランスをとった議論にすべきではないかと思います。

とりあえず以上です。

○池尾座長

ありがとうございました。

ほかにご意見いかがでしょうか。譲り合わないで。小口さんから。

○小口メンバー

それでは、お先にすみません。全体として、広範にわたり大変重要な内容をお書きいただきましてありがとうございます。

それで、意見としてまず1点、今、太田メンバーのおっしゃったことで、これは、今おっしゃった部分だけじゃなくて、全体に当てはまることかもしれませんが、このコードができて、いろんなことをしなきゃいけないという中で、現実にある場所と、あるべき姿というか、ベストプラクティスの間に当然橋渡しが要ると思うのですが、そこは私の理解では序文において、包括的に書いたほうがいいのかなと思います。これはこれで原則としてあって、ただ、序文のあたりで少し現実を踏まえて書いていただくのが個人的にはいいのかなと思っているのが1点です。

それからもう一つですけれども、たたき台を読んでいまして、全体としては頭にしっくり入ってきたのですが、1つだけつっかえた部分が、17ページの4-10マル1になります。私の理解では、まず、独立社外取締役が取締役会の過半数に達していれば、客観で独立した体制がつくれるのだけれども、達していない場合には、委員会でそれを補助的にサポートするという意味で読んだのですが、そうすると、4-10マル1の4行目の、これは「例えば」になってはいますけれども、「例えば、独立社外取締役を主要な構成員」と書いているところ、これは素直に、今申し上げたロジックでいくと、「独立社外取締役を過半数とする任意の諮問委員会」とするのが、すっきりとするのではないでしょうか。そのあたり、あえて「主要な構成員」と書かれた意図があるのかなという部分と、これは例えばという例示なので、今申し上げたようなストーリーでもしお考えであれば、「独立社外取締役を過半数とする任意の諮問委員会」と書いたほうが読み手もわかりやすいのかなと思いました。

以上です。

○池尾座長

どうぞ。

○キャロンメンバー

ありがとうございます。先ほど太田メンバーがおっしゃったことは、私は賛成する部分が非常にありますので、それについて述べさせていただきたいと思います。

1つは、導入時期ですが、社外役の導入の時期を定める必要があると思います。駆け足というやり方もあると思いますが、太田さんがおっしゃったように、やはり質の確保や経過措置も考慮すべきだと思いますので、来年というよりは再来年からが現実的であり、企業側の社外取締役の人材確保に寄与すると思います。

もう一つ太田メンバーがおっしゃったことに賛成させていただきますが、上場企業内の区分も必要だと思います。といっても、日経400はたった400社しかないわけで、本物の改革を推進するためには、東証一部プラス二部が良いのではないでしょうか。しかし、現実問題として、時価総額ベースでは東証二部は小さな会社も多いので、何といっても最低東証一部、または東証一部プラス二部でよろしいのではないでしょうか。

人材確保についてですが、皆さんにエールを送りたいと思いますが、UKの人口は我が国の半分にもかかわらず、社外取締役は原則過半数とされており、十分に人材の確保がされています。ですから、質の高い社外役の人材確保に関しては、経済大国日本でも全く問題がないはずです。時間さえあれば。1億3,000万人の人口で5,000人確保できないということはないと思います。

ですけども、太田メンバーがおっしゃったことは本当にごもっともです。しっかりしたプロセスの中で質を伴った人材確保には、ある程度の猶予期間が必要ではないかと思います。

長くなりましたが、あと1点ありますが、よろしいでしょうか。

○池尾座長

どうぞ。

○キャロンメンバー

日本企業の社外取締役を務めていらっしゃる方にお話を伺いますと、事前に情報をもらって取締役会に出席すれば、議論にフルに参加することができ、取締役としての責務を果たせますとおっしゃいます。だけども、場合によっては、取締役会当日に議題を知らされる。それでは本物の議論への参加はやはり困難です。取締役として賛否を発言しなければいけない中で、十分な情報がなければなかなか反対はできません。ですので、本コードでも社外取締役のための事前情報の提供について明記をお願いできればと思います。

○油布企業開示課長

補充原則4-12マル1です。キャロンメンバーがおっしゃったことは、外国のコードにも同趣旨の記載がありますし、一般的に見ても非常に大切なことだろうと思いますが、4-12マル1(i)「取締役会の資料が、会日に十分に先立って配布されるようにすること」。これは取締役会がこういうことを確保すべきであるという記載でございます。

あと、それに関連することとしましては、4-13の箱書きの中ですけれども、そういう情報の円滑な提供が確保さているかどうかを確認すべきであるというふうな規定も置いておりますので、特段の緊急性もないのに、当日提示の資料ばかりだというような取締役会については、ここは原則、4-13でも対応が求められることになろうと思いますし、4-12マル1(i)でそもそも会日に十分に先立って配布されるようにすることという規律をかけておりますので、基本的には、これで意は通じるのではないかなと思います。

○キャロンメンバー

わかりました。ありがとうございます。

○池尾座長

堀江メンバーから次、順番にお願いします。

○堀江メンバー

1点だけ、原則4-8です。私は、太田さんとキャロンさんがおっしゃったこととは全く反対で、これはすぐにやるべきだと思っています。なぜかというと、これはコンプライ・オア・エクスプレインです。スチュワードシップ・コードのときもそうでしたたが、日本人は全部コンプライしたがる傾向があります。そうではなく、コンプライ・オア・エクスプレインの原則に従い、人材確保の点で、適当な資質を持った方が十分に見つからなかったということを堂々と説明すればいいわけです。ここで時間をまた使っていると、また日本は問題を先送りしたという悪い印象を持たれかねないと思います。ここはコンプライ・オア・エクスプレインなんですから、確保できない場合は、ちゃんとその説明を堂々とすることによって、すぐに対応すべきで、この原則はそのまま書いた上で即対応したほうがいいのではないかなと思っております。

○池尾座長

それでは、森メンバー、お願いします。

○森メンバー

ありがとうございます。短い時間の中で、これだけの大部を様々な意見があったにもかかわらず取りまとめていただきまして、ありがとうございました。

太田メンバー、それと堀江メンバーから意見が出たわけですが、実効性の確保というものは非常に大事なところだと思います。堀江メンバーからもコメントがありましたが、コンプライ・オア・エクスプレインという大原則については序文に記載するというお話が最初の方の回であったと思いますので、そういった対応が1つ考えられるということだと思います。これを記載する場合は、やはり太田メンバーがおっしゃるとおり、実行可能性については、各社が困らないような対応をするべきであろうと考えております。

それと、本日、ペーパーを提出させていただきましたので多少ご説明させていただきます。原則4-11のところに、「取締役会・監査役会の実効性確保の前提条件」というところがあります。意見の2ページ目のところですが、監査役の専門性の原則の中に財務・会計と入ってきて、専門性が原則自体に記載されるというのは大変よいものであると考えております。その中で、監査役というのは、業務監査、財産状況の監査、これは役割として求められているわけでありまして、監査の専門性というものも、やはり監査役の中では必要であろうということで、財務・会計という形で専門性が記載されておりますが、監査の専門性という記載も必要であると考えております。

特に改正会社法においては、会計監査人の選解任の議案決定権、これが監査役会に移っていることが明確にされております。したがいまして、財産状況の監査も、これは会計監査人の監査の相当性の評価につながるわけですけれども、そういった専門性というのは必ず必要になるわけでありまして、財務・会計、そして監査というところの専門性が必要なのではないかと考える次第です。

ありがとうございました。

○池尾座長

内田メンバー、お願いします。

○内田メンバー

まず、原則の4-7の(i)の「経営の方針や経営改善について、自らの知見に基づき助言」というところの「助言」の前に、「持続的成長を促すための中長期的視点に立った」という言葉をぜひとも入れていただきたいと思います。これがキーワードであり重要な役割だと思いますので、入れていただきたい。

次に、原則の4-8についてですが、皆さんから出ている意見のとおりだと思います。太田さんとは違うデータになりますが、東証の全上場企業3,414社のうち、複数の独立社外取締役を選任している企業は13.1%で、残りの86.9%の企業は何らかの対応が必要になります。この状況を踏まえますと、来年の6月の総会までに、これらの企業全てがコンプライできる状況になるというのは考えにくいと思います。各社も当然コンプライの努力をされると思いますが、時間的な制約があり、また独立社外取締役になる人の資質が重要であることから、候補になり得る人材を十分に発掘できないということもあろうと思います。そういうことで実現できないことが現実的には十分あり得るという点への配慮が必要です。したがって、コンプライ・オア・エクスプレインのところで、少なくとも2名以上の独立社外取締役を選任すべきであるという文案に対して、これをコンプライしていない場合、あくまでコンプライしていないことの理由を説明すればよいというふうに理解しています。2名以上の社外取締役を選任することが相当でない理由を述べよという形では非常に困難な事態になります。本来のコンプライ・オア・エクスプレインの考え方に沿った規定になると理解していますので、よろしくお願いしたいと思います。

また、今日提出された意見書で、指名諮問委員会や報酬諮問委員会を例示ではなくてベストプラクティスにすべきだというご意見が出されているのですが、現在、実際にそういう任意の委員会を設置している企業があるとはいえ、それらの企業は経営の透明性を高めるための自主的な取り組みの一つとして設置されているものであり、例示とするのが適切だと思います。指名委員会や報酬委員会といった制度設計がきちんと機能するには、前回申し上げましたとおり、経営者市場の存在や流動的な労働市場、それを支える教育制度などの制度整備が必要だと思います。透明性を高めるという観点からすれば、指名・報酬の決定に関する基本方針の策定や開示を通じて実現することが可能であり、どういう方法で透明性を高めるかについては、各社の判断、自発性に任せることが重要だと思います。

以上です。

○池尾座長

どうぞ。

○太田メンバー

すいません、2度目の発言になります。

先ほど何名かの方からご指摘いただいた私の見解に関するご意見に対しての反論を申し上げます。まず、堀江メンバーが、コンプライ・オア・エクスプレインだからいいじゃないか、だから、できないところはエクスプレインすればいいじゃないかというご主張だったと思いますが、それは筋が違うと思います。毎回申し上げていることですが、現状におもねるとかそういうことを私は申し上げているのではなくて、コンプライすべきという方向性を示すことはいいんですが、ほとんどの企業が、さっき数字で申し上げましたように、すぐには実現不可能なことを、促すことが適切なのかと申し上げているのです。キャロンさんが言われるように1年なのか2年なのか、その辺はありますが、私も別に5年とか10年、そんなことを申し上げているわけではなくて、現実的に不可能であることをみんなの企業、ほとんどの企業がエクスプレインするということがほんとうに望ましいのかということを申し上げているわけです。

それが1点と、やはり実効性を高めるためにどうするかということが肝要だと思っておりまして、そのためには2つあるんです。1つは、繰り返しになりますが、人材リソースの確保ということ、それともう一つは、そういった方々に対する再教育、トレーニングの場の提供、この2つがソフト面としてきちっとあって初めてさっきのような複数の実質義務化というか、あるいは場合によったら3名でもいいんですけれども、そういう企業に変わっていく、そういったことを評価してもらえればいいのではないかということです。

それと、先ほど小口メンバーが17ページのことに関して、4-10のマル1の書きぶりで、取締役会のもとに独立社外取締役を主要な構成員とするということではなくて、これは分類上過半の云々というふうに言われましたが、ここの内容はそういうことではなくて、過半に達していない場合であっても、つまり独立社外取締役が選ばれている企業がこれから増えていくわけでしょうから、そういった人たちがヘッドとなるような任意の諮問委員会を設置すると、こういう文脈で私は読みましたので、これを過半にすべきだというのは文意としては違うのではないかと思いました。

○池尾座長

中村さん。

○中村メンバー

今の太田メンバーのご意見とほぼ同じなんですけれども、独立社外取締役の適用時期に関しては、適用時期をいつからとするかは別として、拙速に走らないように、おおむねいつまでに達成されることが望ましいというようなメッセージをあわせて出していただくのがよろしいのではないかと考えます。

あわせましてコンプライ・オア・エクスプレインの部分につきましては、これは全体にもかかわるところなんですが、他の企業さんと意見交換等をしてみると、ここに書いてあることを今すぐ実行しなければならないと受けとめて、いろいろと心配されている方もおられます。このコード全体を見通しますと、例えばどういう形で定めて、どういう形で公表していくのかという点を含め、企業はかなり多岐にわたる検討が必要になると思います。このコードは、企業がこれに沿って開示をしていく中で、また例えば投資家の方々と意見交換をしながら開示を行う中で、徐々に開示内容を充実していくという、プロセスを重ねていくことが大事な内容だと考えております。そこで、コンプライ・オア・エクスプレインにおけるエクスプレインの重要性について、ぜひ序文のところに書いていただきたいと思います。

以上です。

○池尾座長

小口さん。

○小口メンバー

この会議もあと2回ぐらいですか、12月に対外的に意見を問うときにどういうふうにしたらいいのかということを含めて考えたらいいと思うのですが、たたき台の中でも何カ所か「分かりやすさ」というキーワードが出ていますれども、英語になって海外にも出ていくという前提で考えたときに、ポジティブに受けとめてもらうような、分かりやすい書き方を少し考えたほうがいいのかなと思っています。例えば先ほどの、現実大変数が足りなくて時間が要るというのはそうだとは思うのですけれども、物は言いようでして、水が半分しか入っていないというのか、水が半分も入っているというのかで受け止め方は違うので、まずはポジティブに書いて、だけど云々というふうに書くことで、前向きな気持ちを前面に出したほうが、せっかくいい内容を書いていただいているので、現実はそのとおりだと思うのですけれども、そこはちょっと書き方の工夫をしていただけたらなと思っています。

それから、分かりやすさという同じ並びで、先ほどの太田メンバーのご指摘に関して、私が先ほど申しましたのは、4-10のマル1、これは例えばと書いてあるので、これをぱっと読んだときに、独立社外取締役が過半数に達していない、全体が過半数に達していなければ諮問委員会みたいのが考えられ、そのときに、ロジカルに考えたらこれが過半数独立社外取締役であってという流れであって、例えばなのでいろいろあると思うのですが、ただ、ストレートな流れを書いたほうが意図は伝わるのかなということでした。そこから先はコンプライ・オア・エクスプレインで、しかもこれは例えばという例示なので、このやり方に決まっているわけじゃないですから、ここで例えばと書くとすれば一番分かりやすい形を書いたほうが通じるのかなと思いまして、先ほど申し上げた意見を補足させていただきます。

○池尾座長

どうぞ。

○キャロンメンバー

私の拙い日本語でご迷惑をおかけしまして本当に恐縮です。一つの補足として、コードの導入時期なんですけれども、まずは一日も早く導入していただきたいのです。僣越ながらこのコードは歴史に残る非常に革命的なコードになると思います。多くの日本の上場会社がベストプラクティスとしてやっていらっしゃることをコード化し、そのスタンダードの底上げを図る結果になると認識しておりまして、当会議のメンバーの皆様に非常に感謝しているんです。皆様、様々なお立場から意見があると思いますが、結局、何が国のためなのかを考えて下さっています。それが日本の良さ、日本らしさであると思います。

コード自体は一日も早く導入すべきだと思いますが、社外取締役だけに関しては1年ぐらいの猶予期間があってもいいと思います。というのは、日本の企業は真面目ですから、しっかりしたプロセスに基づいて、各社に適した社外取締役を気持ちよく前向きに選任していただく方が良い結果になるのではないかと思います。以上です。

○池尾座長

ちょっと発言させていただいていいですか。これまで私は、司会役だということで意見を述べるのを控えてきたんですが、今日ご欠席ですけれども、神田先生に別のところでお会いしたら何で意見言わないんだみたいな指摘を受けましたので、一言意見を言わせていただきたく思います。

それは12ページの考え方のところの第2パラグラフですが、このコーポレートガバナンス・コードに関して多く見られる受けとめ方として、経営者を厳しく締めつけるためにやっているんだろうと。そういう北風政策でやっているんだろうという受けとめ方をされているケースが残念ながら多いように思います。もちろん規律のある、緊張感のある経営をしてもらうという意味では北風政策的な要素がないと申し上げるつもりはないんですが、これは北風政策としてやっているだけではなくて、私は太陽政策としてやっているという思いがありまして、それが12ページの説明の2番目のパラグラフのところの内容になるわけですが、いわば結果責任を恐れずに思い切り経営をしてもらうための体制を整えるという、経営者の人に憂いなく頑張ってもらえるための体制を整備する、そういう趣旨でやっているということです。経営者の人たちのために、経営者の人たちがある意味腕を振るいやすくするためにやっているんだと、そういうものだという理解をぜひしていただきたいというのが意見であります。

だから独立社外取締役等は経営者のエフォートを見るわけです。企業のパフォーマンスは経営者のエフォートだけで決まるわけではなくて、残念ながら経営者のコントロールの及ばないいろんな要因とかとの合成で結果が決まるわけで、したがって、経営者がちゃんとしたことをしていなくても業績がいいということもあり得るし、逆に経営者が懸命に努力したにもかかわらず結果が好ましくないときがあるわけですが、懸命に努力しているということがあれば、結果が芳しくなくても、むしろその場合独立社外取締役が経営者を擁護すべきだということであります。だから、そういう意味でこれは単に経営者の方を締めつけるための北風政策としてコードを設定しているのではなくて、まさに企業価値の向上のためのより自由度の高い経営を可能にするための制度整備という趣旨でやっているんだということをぜひ理解していただきたいということです。

ただ、今申し上げた趣旨が12ページの2番目のパラグラフだけで伝わるかというのがちょっと自信がなくて、その辺の趣旨を序文にも少し入れていただくとか、太陽政策としてやっている側面も強くあるんだということをぜひご理解いただきたいと思います。

ほかに。武井さん。

○武井メンバー

すみません、今、座長のおっしゃったことは私もそのとおりで強く賛同致します。特に考え方の2文目のところは、私も以前にコメントしたことがありますが、攻めのカバナンスとして経営者を前向きに動機づけるという話で、また4-2のところにもリスクテイクのサポート・支援の箇所がありますので、こうした点は是非とも強調していくべきかと思っています。

あと3点ほど細かい点です。さきほど議論が出た点に関してなのですが、4-10のマル1の主要な構成員というのは、私はこれはいい日本語だと思っていて、逆にわかりやすいと思います。ですので私は主要な構成員という言葉のままでいいかなと思いました。これが1点目です。

次に2点目の4-11のマル2の非業務執行役の年数なんですが、最長何年以上はダメだのということを考えるにはまだちょっと時期尚早かという気がします。各国のコードもこの辺は処理がいろいろ分かれているところで一概に何年なら不可ということとはしていないと思いますので、年数制限を4-11のマル1に書くのはどうかと思います。また書く場所としても4-11は開示すべきという話で、兼任状況という事実状況の開示ですから、ちょっと場所としてもどうかなと思います。年数制限については慎重にしたほうが今後の独立社外者を見つけてくるという観点からも良いのではないかと思ったのが2点目です。

あと3点目ですが、4-11の監査役の資質の財務会計の知見のところですけれども、私は監査という言葉までは要らないと思います。財務会計という言葉は会社法上の言葉でもありますし、監査まで必要だと書いてあるのか、さっきぱらぱら他の国のコードを見ていたのですが、財務会計という用語で他の国も書いていて監査という用語まで入れていません。財務会計以外に監査の知見とまで言うとちょっとまた別の話になるでしょうし、監査役にしても監査委員会にしても内部統制部門や内部監査部門という監査の知見と職責を負った人達を活用して職務を果たしていくわけなので、監査という用語をダブって書くことには違和感があります。

3点、以上です。

○池尾座長

ありがとうございました。ほかに。

前半部分に関しましてとりあえずご意見がないようでしたら後半のほうに進ませていただきまして、前回から修正した部分、一部政策保有株式のところで新しい内容が入っていますが、1ページから14ページ、それから最後の20ページ、21ページのところに関しましてご意見等ございましたらお願いします。どうぞ、内田メンバー。

○内田メンバー

質問になりますが、原則の1-3で資本政策の基本方針を策定して公表すべきと謳っていますが、どのような内容を公表することを想定しているのかを教えていただきたいと思います。一般的に企業の資金調達というのは市場環境、必要資金規模、資金ニーズの内容、フリーキャッシュフローの見通しなどを総合的に勘案して多様な手段を比較検討して決めます。デットで調達するのかエクイティーファイナンスにするのかというのは直前まで決まらないという状況があり、中長期的な基本方針を公表するというのは考えにくいと思っています。また自社株買いなどについても中長期的な方針を公表するのは難しいのではないかという印象があります。どんなことを想定されているのか、お伺いしたいと思います。

○油布企業開示課長

なかなかお答えするのが一義的に難しい問題ですけれども、まず1つは、具体的に実際に書こうとする場合にはいろんな外部環境、その他の要件、影響が排除できなくてなかなか難しいだろうなということはよく理解できる、想像にかたくないところでございますので、その辺の思いを込めて、資本政策ではなくて資本政策の基本方針という言葉を入れたと、そういう趣旨でございます。

○池尾座長

この原則1-3というのは私がお願いして入れてもらったものです。それは、政策保有株式だとか株主の利益を害する可能性のある資本政策だとかいう各論の原則がいきなり来るのはちょっとコードとして不自然だなという感じがしたからです。だから、例えばデット・エクイティ比をどのくらいにするとかいう具体的な方針という意味ではなくてフィロソフィーのようなものを示すということがあった上で、例えば政策保有株式の考え方についても、バックの基本的考え方みたいなものを示されている必要があるんではないか。個別の資本政策についての議論に先立つ何か、経営理念とかに近い話ですけれども、資本政策の面での経営理念のようなものが示されてしかるべきでないかというふうなことを考えて入れてもらったんですけど。

○内田メンバー

資本政策というとまさにエクイティーファイナンスをどう考えているのかとか、D/Eレシオをどう考えているのかとか―D/Eレシオは公表されている企業もかなりあろうと思いますが―、企業としてはそういうところにイメージがいって、どういうことを書くのか悩む可能性があると思います。少し難しいことになる気がします。

○池尾座長

また検討していただけるように。

○内田メンバー

また、原則3-1のところで、前回申し上げた意見の繰り返しになりますが、経営陣幹部の選任と取締役・監査役候補の指名については(iv)で開示が求められている方針に沿って行われますので、(v)の個々の選任・指名の理由まで開示する必要がほんとうにあるのか疑問です。そういうご意見があったことは承知していますが、今回のコードの策定の目的である稼ぐ力を高めるという観点からは(iv)の開示で十分と考えます。

また、4-1のマル3に「取締役会は・・・後継者計画を承認し、適切に監督を行うべき」となっていますが、このコードを見た企業は、これをコンプライするためには後継者計画に関する議案を取締役会に提出して決議するという方式をとらなければいけないと受け止めるのではないかと思います。最高経営責任者等の後継者計画をどのような手続で決めるかについては企業ごとにさまざまなやり方があってしかるべきと考えますが、この原案ですと取締役会で承認という手続を求めていることになってしまうのではないかと思います。一方で、適切に監督を行うという文言の意味には、後継者をどのように計画的に育成していくかという内容も含まれると思いますので、この承認という文言は削除して、「取締役会は最高経営責任者等の後継者計画を適切に監督すべき」とするのがいいと思います。

また、原則5-1の株主との対話について、対話の目的は、基本原則5に書かれているとおり、持続的な成長と中長期的な企業価値向上のためであることを、より明確にする文言をご検討いただけないかと思います。例えば原則5-1において説明文を「上場会社は、持続的な成長と中長期的な企業価値向上に向けた株主からの対話(面談)の申し込みに対しては」というように修正するとか、前回キャロンメンバーからペーパーで「持株数や株主の属性も踏まえ」という提案があったと思いますが、そういうものを参考にしていただくなどして、建設的な対話に焦点を当てた文言にしていただきたいと思います。また、例えば、極論かもしれませんが、第5章のタイトルそのものを「株主との建設的な対話」という形にするとか、それが難しければ、原則5-1のサブタイトルを同様の趣旨で「株主との建設的な対話に関する方針」、あるいは「持続的な成長や企業価値向上に資する株主との対話に関する方針」といったような修正をしていただけないでしょうか。

それから、原則5-2で、1行目の終わりのほうに「中長期的な収益計画」を示すという文言がありますが、企業にとって長期というと10年というイメージがあり、環境変化が激しい中で長期の収益計画にどこまで意味があるのかについては少し疑問があります。長期についてはむしろ戦略とか方針とか目標とかビジョンとかいったものが重要であり、長期の収益計画を示すというのは適切ではないと思います。

以上です。

○池尾座長

ありがとうございました。どうぞ。

○キャロンメンバー

先ほど内田メンバーのおっしゃったことに基本的に異議はありませんが、原則5-1のところで少し気になったのですが、合理的な根拠があれば、株主が対話したいと思えば対話すべきだと思います。例えば今期の配当が減配になることに対して配当維持をお願いすることは、中長期的な話じゃないかもしれません。しかし、株主としてそういった話を会社としたいと思うのであれば、それは許すべきだと思います。しかしもちろん、中長期的な観点からの建設的な対話は非常に大事ですので、文言に気をつけながらお願いできればと思います。

以上です。

○池尾座長

大場さんお願いします。

○大場メンバー

何か言えと先生が言われているのではないかと感じましたので一言。太田さんが言われていることに理解できる部分もあるのですが、一言で言うと、現状を踏まえないと上滑りしたコードになるのでもったいないことになってしまう、だからそこはちょっと踏まえたほうがいいよ、こういうことをおっしゃっているんだと思うんですが、しかし一方現状を考えると、これも現実だと思うんですが、株式市場は大変厳しい評価をしているということは忘れるべきではないと思います。30年の株価低迷という現実が突きつけられているという事実があるわけです。上場企業はそのことをやはり認識すべきだと思います。上場会社というのは公開企業ですから、やはりパブリックな存在だということだと思います。それにどう応えるかというのは当然取締役会が考えなくてはいけないことだと思います。そういう観点をやはり序文に書くべきではないかと思います。

池尾先生からお話のあった太陽政策的なコードであるということも当然序文に書く必要があると思いますけれども、このコードが投資家と経営者がウイン・ウインの関係をつくる、そういうことを実現していくためのコードであるわけでもあって、そういう意味では可能な限り早期にこの原則が公開企業に適用されることが望まれているんだということも示すべきではないかと私は思います。

以上です。

○池尾座長

どうぞ。

○森メンバー

ありがとうございます。資料3ページにあります原則1-2の株主総会における権利行使についてですが、これはこの会議の早い段階でも色々と検討があって、いかに株主が権利行使をするための環境整備をするかという中にあって、会社の状況を的確に把握する必要があると考えています。これはスチュワードシップ・コードにも書いてあるわけですけれども、そのための情報がどうであるのかということと、その情報を把握し、分析検討する期間がどうなのかということと、そして、株主の権利行使をする機会をどのように確保するのかということの中で、情報のところでは、上場会社でありますので最も精緻な開示書類としては有価証券報告書であるということでありまして、その有価証券報告書を議決権行使に当たって十分に有効活用するべきであるというお話をさせていただきました。

1-2マル1のところですけれども、上場会社でありますので、当然、会社法の開示書類というよりは金商法の開示書類、こういったものは非常に重要なわけでありまして、補充原則1-2マル1にある「株主総会において株主が適切な判断を行うことに資すると考えられる情報」については、有価証券報告書が含まれるものと理解しておりますが、その辺はある程度明確にする必要があるのではないかと考えております。平成21年の金融審議会の金融部会でも有価証券報告書、内部統制報告書については株主総会の報告書類にするべきではないかという議論があったと記憶しておりまして、そのときの改正開示府令案のパブリックコメントに対する金融庁の考え方にあっても、有価証券報告書、そして内部統制報告書については株主総会の議決権行使に当たって重要な情報であるという内容の回答があったと思います。

現在株主総会の前に有価証券報告書を出している上場会社は極僅かです。ですから大多数の上場会社が株主総会後に有価証券報告書を提出しているのが実態であり、これは当時の金融審での議論にうまく当てはまっていない状況にあるわけでありまして、ここでは、そういった状況を踏まえますと有価証券報告書については明確に記載するべきではないかということが1つです。

それと、株主総会の議決権行使機会の確保ということに当たっては、これは1-2マル3に関係すると思いますけれども、株主総会の開催日の問題があったと思います。株主総会の開催日が6月下旬に集中している実態、これは、株主総会で株主が権利行使をする、これは情報分析の期間も含めてということですが、それに対して何らかの障害になっているのではないかといった議論があったと思います。ですから、招集通知については1-2マル2のところで明確に記載しているわけでありますので、1-2マル3のところでは、そのための正確な情報提供等の観点を考慮し、株主総会開催日というのを明確に入れたほうがよいのではないかと考えています。例えば、この観点を考慮し、「株主総会開催日をはじめ総会関連日程の適切な設定を行うべきである」という表現にしたほうがよいのではないかと考えている次第です。

以上でございます。

○池尾座長

中村さんお願いします。

○中村メンバー

今ご意見をいただいた点につきましては、全体の方向性としては否定するものではないんですけれども、現状ということで申し上げると、今会社法上の監査あるいはその前の決算書類、事業報告等の書類があり、決算短信があり、それから有価証券報告書があるということで、実務的には非常に厳しい日程で進められているという現状がございます。また現在、他のところでそういった報告書関係を若干整理するという検討も進められているやに聞いておりますけれども、そうした書類関係を整理して統合していくこととあわせて、株主総会の開催日を4カ月以内に設定できるような体制の整備―それはここで例外的な事象として書いていただいておりますけれども、万々が一、監査で承認されなかった場合に、税務報告が期限内にできないということにもなってくる等の様々な可能性につきましても、場合によっては法改正などで対応していただいた上で―そういった形にしていくことに関しては必ずしも反対するものではございませんが、現状の中で有価証券報告書を招集通知を発送する時点までに用意をするのはなかなか難しいことであるというところをご理解いただいて文章をまとめていただければと思います。

以上です。

○池尾座長

どうぞ。

○森メンバー

今の点ですけれども、おっしゃるとおりで、それぞれの開示書類の作成に必要な期間等いろいろな制約があればそれを考慮したうえで、できる限りの対応をしていく、というのは当然のことと思います。しかしながら、株主がどういった情報に基づいて議決権行使まで結びつけるのかというところは非常に大事なところでありまして、このコーポレートガバナンスの強化、あるいは2月にまとめられたスチュワードシップ・コード、これは企業成長のための車の両輪だということでありますので、それぞれが対応できるような体制を、法律を変えるということではなくて、法律の枠内で対応できるものは対応していこうというのが趣旨ではないかと考えている次第です。

それと先ほどの監査のところですが、「適切な情報開示と透明性の確保」のところで外部会計監査人という項目が入り、「外部会計監査人を適切に評価するための基準の策定」という項目も入っています。これは繰り返しになりますけれども、監査役の職務はそもそも業務監査、財産状況の監査があるわけで、監査役の専門性ということでは、会計監査人の監査の評価ができないとなかなか監査役の職務が務まらないのではないか、ということだと思います。これは我が国だけの流れではなくて、例えば米国の監査委員会でも外部監査人の評価をしていくという流れが具体的に出ています。我が国の、改正会社法においても外部監査人の選解任の議案決定権が監査役、監査役会にあるということが明確に規定されております。監査役に求められる資質として、専門性としてそういったものが必要ではないかということで発言させていただいた次第であります。ほかのところでそのように読めるということであればそれはそれでよいのかと思いますけれども。

以上でございます。

○池尾座長

それでは、個別的な論点を超えて、コード全体に関してとか、もうあとそんなに議論する機会は残されていませんので、先ほどからある序文に書くべきこととか。

内田さん。

○内田メンバー

それでは全体についての意見を述べさせていただきます。以前申し上げたことの繰り返しになりますが、このコードはあくまで重要な原則、プリンシプルを示すことが目的であって、その原則を具体的にどういう形で実現するのかという手段、アプローチについてはいろいろなやり方が認められるべきだと思います。そのことをまずコードの利用者に周知する必要があると思います。手段が原則や目的になってはいけないと思います。そうした観点から序文に次に述べる3点を記載していただきたいと思います。

1つ目は、原則主義、プリンシプルベースというものはどういうものかという説明です。これについて、日本の企業は慣れていないですし、利用される方も慣れていないので、どういうものかをまずきっちり説明していただきたいと思います。2つ目は、コンプライ・オア・エクスプレインとはどういうものかについての説明です。これについてもやはり慣れておりませんのできっちり説明していただきたいと思います。3つ目は、エクスプレインすることが不当にマイナス評価につながることがないようにしていただきたいと思います。きちんとした説明がされていればそれはマイナスではないということについて書き込んでいただきたいと思います。

○池尾座長

どうぞ。

○小口メンバー

今序文のお話が出ましたので追加なのですけれども、きょうも資料として配られていますスチュワードシップ・コードにおいて、先ほど森メンバーからもお話が出ました、今回議論しているような企業の責務と、それからスチュワードシップ・コードに定める機関投資家の責務とはいわば「車の両輪」というキーワードが序文のところに使われています。先行したスチュワードシップ・コードから投げかけたものに対して、コーポレートガバナンス・コードからも投げかける形で、これは多分事務局の方には書いていただけるんじゃないかなとは思っているのですけれども、一応念のために申し上げれば、コーポレートガバナンス・コードは、スチュワードシップ・コードとの車の両輪ということを序文に書いていただけたらなと思います。

以上です。

○池尾座長

ほかいかがでしょうか。どうぞ。

○キャロンメンバー

これは言うまでもないかもしれないんですけれども、念のために申し上げますが、本日残念ながら冨山メンバーがご欠席ですが、いつものように本当にすばらしい文章、お考えを書面にて出していただいたんですけれども、これは十分に検証、検討いただきたい。私は非常に賛成している意見書でございます。よろしくお願いします。

○池尾座長

どうぞ、中村さん。

○中村メンバー

今、冨山メンバーの意見書への言及がされましたので、反対の意見を申し上げておきたいと思います。4ページ、原則1-4のいわゆる政策保有株式のところでございます。冨山メンバーからは、これはスチュワードシップ・コードと同等に説明すべきだというような意見が書かれていたかと思いますけれども、私ども企業としては、政策保有株式というのはまさに政策として保有しているものでございますので、資本としてのリスクとリターンという観点から保有しているものではなく、スチュワードといいますか、機関投資家の方とは立場が異なると認識しております。政策保有株式は投資としてではなく、業務提携等の一環でありますとか会社同士の連携を強める、そういった観点で保有しているので、そこを同じ形で考えるのは少し違うのではないかなと認識しております。

従って、政策保有株式の1つ1つの内容につき詳らかにするというのは、場合によっては業務提携上、秘匿するべき内容をも開示しなければならないことにも繋がりかねないので、今おまとめいただいたような内容で決めていただければなと考えている次第でございます。

以上です。

○太田メンバー

よろしいですか。

○池尾座長

はい。

○太田メンバー

先ほどキャロンメンバーから冨山さんの意見書すばらしいというふうにご発言ありましたが、私は特に違和感のある点を2点だけ述べます。毎回意見を申し上げようとすると欠席されているので、議事録でご確認いただければいいということは毎回申し上げるとおりですが、まず1ページ目の2段落目、「裏返して言えば」というゴシックで書かれているところです。先ほどの大場メンバーの意見とも一部符合するかと思いますが、「本コードの中身が現状追認的なものに堕するとすれば」のくだりですが、特定の価値観で書き過ぎてはいないかと思います。現状追認という表現ですが、私は上ずることのリスクを懸念しているのです。やはり実効性のあるものにどうするかということが私の発言の真意ですので、冨山メンバーにもぜひそこはご理解をいただきたいなと思います。

2つ目に、2ページ目なんですが、基本原則の4に触れられたところですが、ゴシックで、「実態として監査役会設置会社が上場企業の大半であるとしても」云々として、「監査役会設置会社にはコーポレートガバナンス上の制度的な欠陥があると言わざるを得ず、指名委員会等設置会社などの方が相対的に優れている点が認められる」とのご指摘ですが、私はそうは思いません。これは言ってみれば、前にも申し上げましたが、モニタリングモデルというのとマネジメントモデル、それぞれについて等価であるというのは先ほど来もいろんなところで触れられているとおりなので、各モデルの欠点だとかよしあしを殊さら取り上げること自体に私は非常に違和感を感じております。

ただ、繰り返し申し上げているのは、圧倒的な支配的な機関設計形態である監査役会設置会社の現状を誰に向けて説明するのかということに関していえば、ご存じない方々に対して詳しく説明すること、これは要件ではないかということを常々申し上げているということです。

さらに申し上げれば、外部者による経営の評価という点においてマネジメントモデルである監査役会設置会社には弱い面があるということですけれども、それはモニタリングモデルとの差異そのものにほかならないのであって、その1点をもってよしあしというのはいかがなものかと思います。つまり結論において、いずれのモデルにせよ、単純な法規制に従うだけではなくて、各社の状況に応じた創意工夫だとか、あるいは説明が求められているということが事実でありますので、その点を強調すればよろしいのではないかと思います。

以上です。

○池尾座長

どうぞ。

○内田メンバー

いわゆる政策保有株式については、冨山メンバーには前回の会合で私の意見に同意していただけたと思っておりましたが、この意見書では必ずしもそうではないようです。キャロンさんとも反対の意見になるかもしれませんが、個別具体的にリターンとかリスクを開示するというのは、政策保有株式は各事業とつながっており個別事業の収益性とかリターンを開示することになってしまい、戦略上難しいと思います。今回案は取締役会で検証ということになっており、ここはそういう形になると思います。議決権の行使も戦略と結びついており開示するのはやはり難しく、冨山さんの意見書には反対です。

○池尾座長

どうぞ。

○キャロンメンバー

ちょっとパンドラの箱をあけてしまったような気がいたしますが、私はとてもいい意見書だと思います。具体的には、「いわゆる政策保有株式」に対するご指摘は大賛成です。持ち合い株に関する部分のコードの文言案の記載は足りないとは思いますが、今より開示が充実することは評価できると考えています。また、申し訳ないのですが、上場会社である限り、保有している「いわゆる政策株式」に対する議決権行使における説明責任はあります。「上場企業」や「政策目的」だから、スチュワードシップ・コードの必要性はないというのは全く違うと思います。少なくとも進展になるような文言が入ることに私は賛成です。

以上です。

○池尾座長

いかがでしょうか。そろそろよろしいでしょうか。特に追加的なご意見がないようでしたら、本日の討議はこれぐらいにさせていただきたいと思います。

それで、既に申し上げていますが、次回は、本日を含めたこれまでの議論を踏まえて序文も加えたコード原案全体のたたき台、全体版を事務局に用意していただき、取りまとめに向けてご議論いただくことになります。

本日も活発なご意見をたくさんいただきましてありがとうございます。それで、毎回申し上げていますが、この場でのご意見に加えて追加的なご意見、ご要望等があれば、絶えずメール等でお知らせいただければ受け付けておりますので、後で思い出したとかそういうことがあれば事務局宛てにお寄せいただければと思います。

それでは、最後に事務局のほうから連絡等をお願いします。

○油布企業開示課長

次回の有識者会議の日程です。後日事務局からも別途ご案内申し上げますが、12月12日、金曜日になりますが、16時30分からを想定して調整させていただいております。よろしくお願いいたします。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

それでは以上をもちまして本日の会議を終了させていただきます。まことにありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企業開示課(内線3836、3671)

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