「脱炭素等に向けた金融機関等の取組みに関する検討会」(第3回)議事録

1. 日時: 令和5年1月19日(木曜日)14時00分~16時00分
 
【根本座長】  では、ただいまより、脱炭素等に向けた金融機関等の取組に関する検討会第3回の会合を開催いたします。
 
 早稲田大学の根本でございます。皆様、御多忙のところ、御参集いただきまして、ありがとうございます。
 
 はじめに、オンライン参加していただいている方向けの注意事項ですが、御発言されない間は、必ずミュート設定にしてください。御発言される際にミュートを解除し、御発言が終わられましたら、再びミュート設定にしていただくようにお願いいたします。
 
 本日は、前半は地域金融機関の取組みに関するヒアリングと意見交換、後半は金融機関のスコープ3について、事務局から御説明いただき意見交換をする予定です。
 
 地域金融機関や融資先である中小企業の方々の生の声をお伺いするため、本日はゲストスピーカーとしまして、日本商工会議所の大下様、第二地方銀行協会で会長行を務められている栃木銀行の大原様、全国信用金庫協会で会長金庫を務められていらっしゃる浜松いわた信用金庫の鈴木様に、ゲストスピーカーとしてお越しいただいております。
 
 それでは、早速、議事に移らせていただきます。最初に、地域金融機関につきまして御説明をいただこうと思います。千葉銀行の官澤委員、よろしくお願いいたします。
 
【官澤メンバー】  全国地方銀行協会で、会長行を務めております千葉銀行の経営企画部官澤でございます。本日は、このような御説明させていただく機会をいただきまして、ありがとうございます。
 
 私からは、お取引先の脱炭素化に向けた地方銀行の取組みの現状と課題について御説明申し上げたいと思います。第1回検討会で、弊行、個別行としての取組みにつきまして御紹介申し上げましたが、今回は、地銀協及び会員62行全体の状況についてお話をさせていただきます。
 
 おめくりいただいて、1ページ目をお願いいたします。我が国政府は、2020年10月に2050カーボンニュートラルを宣言いたしまして、こうした中、当協会会員である地方銀行につきましても、地域の脱炭素化の実現に向けて、持続可能な社会づくりに貢献することが期待されていると認識しております。
 
 2050年にカーボンニュートラルを実現するためには、今後あらゆる産業におきまして、サプライチェーン全体でCO排出量の削減に取り組んでいくことが必要となります。そのために、サプライヤーである中小企業の脱炭素化を支援することが、一層重要となると考えております。
 
 こうした認識の下、ほとんどの地方銀行がTCFD提言に賛同するなど、地方銀行は、気候変動問題への対応を重要な経営課題と捉え、脱炭素化の実現に向けた取組みを推進してございます。
 
 また、約8割の地方銀行は、SDGs/ESGを意識しました投融資方針を制定するとともに、気候変動問題等への対応に係る経営陣等による委員会を設置しております。
 
 その上で、お取引先の中小企業との対話を通じ、気候変動問題に対する共通認識を醸成しながら適切な助言を行うとともに、CO排出量の削減に寄与する資金面・非資金面での支援を行ってございます。
 
 2ページをお願いいたします。会員銀行による、お取引先に対する脱炭素化の資金面の支援状況について御説明いたします。全国地方銀行協会が昨年10月に会員銀行に実施したアンケートによりますと、47行と、7割以上の地方銀行が、グリーンファイナンスを実施しているところです。この銀行数は、1年前のアンケートからも増加しておりまして、取組みが拡大しているのを見てとれるかと思います。
 
 3ページをお願いいたします。次に、非資金面での支援状況について御説明します。8割以上の地方銀行が、脱炭素化の取組みの前提となるCO排出量の把握に向けた可視化サービスの提供や、太陽光設備・再エネ電力の販売企業等の紹介を行っています。
 
 また、36行が、CO排出量の削減に係るコンサルティングにも取り組んでいます。
 
 4ページをお願いいたします。全国地方銀行協会は、会員銀行の脱炭素化の取組みの底上げを図る観点から、資料4ページと5ページに記載のとおり、様々な支援策を行っております。
 
 具体的には、頭取級の会合において、気候変動問題を研究テーマとして取り上げ、地方銀行の取組み上の課題や対応上の留意点等を取りまとめました。
 
 また、役職員向け研修等の開催、脱炭素化関連の政府施策に関する情報提供、サステナブルファイナンス事例集の作成、お取引先に対する推奨支援ツールの作成等を行っております。
 
 6ページをお願いいたします。こうした脱炭素化の取組みを進めている中で、日頃感じている課題と、その解決のために政府において検討いただきたい事項を御説明申し上げます。
 
 まず、お取引先における意識醸成といたしまして、中小企業が脱炭素化に取り組む意義やメリットを感じておらず、その取組みが浸透しづらいことが課題となっております。
 
 中小企業は脱炭素化の取組みを単にコストという形で捉える傾向にあり、足元のエネルギー価格等の高騰に伴う対応に比べまして、優先度が低くなっているのが現状でございます。
 
 また、お取引先等からの脱炭素化の強い要請がなければ、中小企業の意識がなかなか高まっていないのも現状でございます。現状、業種による差はあり、地域によっても、サプライチェーンにおいて要請のある自動車業界等は取組みが進んでいる一方、小売業界等はあまり進んでいない傾向にあります。
 
 こうした課題を解決するため、政府には、地方銀行がお取引先と脱炭素化の重要性について対話していく後押しとなるように、中小企業が、脱炭素化を「自分事」として捉えるための政府広報等の実施を検討いただきたいと思います。
 
 具体的には、省エネ化・脱炭素化に取り組むメリットや、取り組まないことのデメリットを示し、その動機付けにつなげることや、脱炭素化に取り組んだことでメリットを享受した企業等の事例を、金融機関や中小企業に提供することなどが考えられるかと思っております。
 
 7ページをお願いいたします。次の課題としましては、お取引先の負担軽減についてでございます。中小企業にとって、脱炭素化の取組みの前提となりますCO排出量の把握に対するハードルが高いことが、1つ課題となっております。多くの中小企業では、CO排出量の算定に係る人的リソースが不足しているほか、算定方法に関するノウハウも少ないため、CO排出量の把握に苦慮しており、削減目標の設定や削減策の策定・実行が進まないのが実情でございます。
 
 このため、中小企業がCO排出量を簡易に把握できるよう、算定マニュアル・算定ツールの普及促進のほか、例えば、エネルギー小売事業者が領収書等を交付する際に、使用量にエネルギーの排出係数を掛けたCO排出量の記載を推奨する等の働きかけを検討いただきたいと思います。
 
 8ページをお願いいたします。中小企業にとりまして、脱炭素化に向けた投資は、収益性向上の見通しが立てにくい上、コスト負担が重いことが課題となっております。
 
 例えば、中小企業がグリーンファイナンス等で資金調達する際、第三者機関による外部評価取得が必要となりまして、そのコストが数百万程度かかっているのが実情です。
 
 また、負担軽減となる政府の政策等についても、申請手続の煩雑さでありますとか、利用のハードルの高さが課題になっております。
 
 このため、外部評価取得に関する費用の補助等のコスト負担の支援や、コスト軽減策の利用促進に向けまして、申請手続の簡素化でありますとか、要件の緩和を検討いただきたいと思います。
 
 9ページをお願いいたします。脱炭素化に向けまして、政府において多くの支援策を御用意いただいておりますが、事業者の取組みや課題に合った最適な施策を見つけにくく、支援策の活用を進めにくいことも課題と認識しております。
 
 このため、政府におかれましては、類似施策の整理・統合でありますとか、事業者や金融機関の行員が、施策を目的別に簡単に検索できるよう、省庁横断的なポータルサイトのようなものを整備いただけないかと考えております。
 
 10ページをお願いいたします。銀行によりますファイナンス等の支援につきましては、脱炭素化に関する設備資金の対応は、技術革新の将来見通しや需要の見込みが不透明であるなど、リスクが高いにもかかわらず、大規模かつ長期の資金対応が必要となりますので、金融機関にとってリスクを取りづらいことが課題となります。
 
 具体的には、新しい技術の設備導入に関する資金相談があった際に、コストが高く設備投資等の投資額の回収に懸念がある案件等につきましては、長期の与信対応に苦慮するケースが想定されます。
 
 このため、民間金融機関のファイナンスに対する公的機関による債務保証等の拡充を検討いただければと思います。
 
 また、脱炭素化の取組みを進める中で、地域の経済や雇用に負の影響を及ぼす場合がございます。
 
 例えば、大企業が脱炭素化に向けた取組みとして、化石燃料由来製品の製造を取り止めるなど、工業団地やコンビナート等におきまして、工場の縮小・閉鎖等が発生すると、地域経済に大きな影響を及ぼす可能性がございます。
 
 このため、設備更新・業態転換等においては、地域経済の縮小を防ぐための支援を検討いただければと思っております。
 
 最後、11ページをお願いいたします。再生可能エネルギーの導入に関して、太陽光発電設備の新設が難しい地域があり、脱炭素化に向けた設備導入の妨げとなっているとの課題もあります。発電された電気は、送電線を通じて送られますが、送電線には容量がございまして、空き容量がなければ電気を送ることができない状況で、一部の地域、手前どもが営業基盤としている千葉・茨城等々では、この空き容量が少ない状態になっております。
 
 一定規模の太陽光発電設備の導入には、電力会社へ接続検討の申込をする必要性がありますが、電力会社から、発電容量を増量させるために、発電設備から送電線に接続できる時期が7~8年後とされたり、多額の工事負担金を求められるケースがございます。
 
 このため、政府には、送電の空き容量の少ない地域におきまして、設備容量の早期増量を検討いただきたいと思っております。
 
 私からは、以上でございます。ありがとうございました。
 
【根本座長】  どうも御説明ありがとうございます。
 
 御質問は、この後でまとめてお受けしたいと思います。
 
 では、続きまして、日本商工会議所の大下様、お願いいたします。
 
【大下様】  日本商工会議所の大下と申します。本日は、このような機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
 
 私ども日本商工会議所は、全国にある515商工会議所の連合体でございます。各地の商工会議所においては、地域の金融機関の方々に、日頃より、とりわけ中小企業の金融支援の面で、また、地域振興への御協力の面で、いろいろとお世話になっております。
 
 今回は、日頃中小企業を支援している立場から、中小企業も含めた視点で、今後カーボンニュートラルの実現に向けてどのような課題があって、そこに、我々として、金融機関にこういった面で役割を果たしていただきたい、御活躍をいただきたいと考えている期待について、少しお話させていただき、また、各地の商工会議所の今の取組みなども、御参考までに御紹介させていただければと思っております。よろしくお願いいたします。
 
 次のページをお願いいたします。私ども、昨年5月に「2050年カーボンニュートラル実現に向けたクリーンエネルギー戦略に対する意見」で、カーボンニュートラルに向けた商工会議所の考え方を公表させていただいております。足元、エネルギー安全保障の問題、安定供給への脅威といったものがありながら、カーボンニュートラルにどう取り組んでいくのか。
 
 また、当時は物価が上がっておりませんでしたので、生産性、物価、賃金が長らく上がっていない、日本経済の停滞三重苦をどう乗り越えていくのか。そこを、カーボンニュートラルを実現しながら、どうやって実現をしていくのか、乗り越えていくのか。こういった課題の中で、カーボンニュートラルを考えていかなければならない。ということであると、カーボンニュートラルとは、必ずしもばら色の未来ではなくて、国、地域、企業、国民にとって、非常に大きな試練と受け止めるべきだろう。今後の将来を左右する大きな課題だと認識しております。
 
 他方、今申し上げた課題をしっかりと受け止めながら、カーボンニュートラルへの挑戦を、国民・産業界一体となって加速させ、そのことによって今申し上げた経済の長期停滞からの脱出、新たな成長のエンジンにつなげていくことが必要という考えを意見書としてまとめさせていただきました。
 
 次のスライド、お願いいたします。では、中小企業は今どのようにカーボンニュートラルについて考えているのか。定期的に、私どもアンケートをとらせていただいていますが、今の意見書の中身に入る前に、少しここを押さえておきたいと思います。
 
 左方が、カーボンニュートラルについてどう考えますかというアンケート調査、2か年分をまとめたものになっています。直近の調査では、「エネルギーコストの上昇を危惧している」が半数ぐらいの御回答で、やはりここに関心が非常に強くなっていると思っています。1年前の調査では、一番多かったのは、下から2つ目、「見当がつかない、分からない」でした。ここが、かなり変化がしてきています。
 
 他方、真ん中2つ、青で囲んであるところです。これは、実は2回目の調査で新たに選択肢に加えたもので、去年のデータはないのですが、「省エネ、省コストにつなげたい」、「社会的責任として取組みを進めていきたい」、こういった少し前向きな捉え方も少しずつ出てきているところかと思います。
 
 具体的に何かやれているかというと、右のグラフでございます。「特に取組みは行っていない」がほぼ半数、また、「何から始めたらよいか分からない」が2割ぐらいあるところで、具体的な取組みはまだまだこれからと思っています。
 
 次のスライド、お願いいたします。こういった実態も踏まえながら、この後は、先ほど申し上げた5月に出した意見書の各章ごとに、主にどのような内容を政府に要望し、そこから考えると、金融機関の皆さんには、こういった役割をぜひ果たしていただきたいという我々の期待について、それぞれお話をさせていただきたいと思っております。
 
 第1に、今回の意見書の中で書かせていただいているのは、エネルギー安定供給の重要さです。
 
 御案内のとおり、カーボンニュートラルを実現していくと言っても、急に自然エネルギーで全てが賄えるわけではありません。足元では安定供給の危機もございます。何としてでも安定供給を確保しながら、円滑にカーボンニュートラルに移行していくことが必要であって、そのためには、原油・LNGの安定供給の確保、原発の明確化と早期再稼働等、再エネ以外で取組みを進めていく必要があるものがたくさんございます。
 
 金融機関の皆様、急に火力をゼロにすることはできません。資金調達の面で、かなり火力には資金が集まりにくくなっている現状がございます。移行期を支える「火力」、我が国エネルギー政策に不可欠な「原子力」、こうした再エネ以外の発電に関わるエネルギー調達等にも、ぜひ安定的な資金供給をお願いしたいと思っています。
 
 また、こうした発電した電力を、安定的に送配電し、供給していくための電力同士の連携、あるいは、その自律・分散型のエネルギーシステムによるレジリエンスの強化、こうした各種の取組みにも、ぜひ資金供給をお願いしたいと思っております。
 
 2点目は、将来の成長エンジンとなり得るカーボンニュートラル関連技術への積極的な資金供給です。
 
 様々な技術が、日本で今開発され、実装に向けて取組が進んでいます。たくさんある中でどこにお金をかけるべきかはなかなか難しいところではあります。今回のGX実行会議の最後の議論の中でも、今回私どもが示させていただいた方向性を一定程度反映していただいておりますけれども、なかなか判断難しいところでありますが、排出削減にどれだけ効果があるのか、同時に日本の経済成長にどれだけつながる技術なのか、こういった両面で、より高い効果が見込める分野に、積極的に資金供給をお願いしたいと思っております。
 
 もう1つ非常に大事なのは、2点目です。新しい技術が実装され、なおかつ広く普及していくまでには、相当の年月と努力が必要です。その間の資金供給が、割と国は、新しい技術の実験に3年間ぐらい資金を出し、そこから先の実際の実装・普及段階には手出しできないようなこともあります。新しい技術がきちんと根づいていくためには、相当の年月とステップが必要ですので、粘り強い取組を支える資金供給をぜひお願いをしたいと思っております。
 
 2点目は、次のページをお願いいたします。今申し上げたのは、金融機関、資金を供給する役割を持っていらっしゃる組織としての期待です。ここから申し上げるのは、金融機関さん、とりわけ地域の金融機関さんには、資金を提供する役割以外に、地域に根づいて活動していらっしゃるセクターであること、地域でお仕事をしている中小企業と多く接しているセクターであること、この2つから、ぜひ今後のカーボンニュートラルを進めていく上で、お役目を果たしていただきたいと思っている点について、お話したいと思っております。
 
 「Ⅲ-1」として掲げているのが「地域脱炭素」であります。「地域自らが「賢く」考え、「優しく」変えていく」と書いていますけれども、地域ごとによってカーボンニュートラルへの取組み方に違いがあろうかと思っています。そのときに、自治体だけで考えるのではなくて、あるいは、企業だけが自分たちの会社の取組みを進めるのではなくて、自治体、企業、住民が、自らこの地域を新しいカーボンニュートラルに合わせてどういう町にしていくかをしっかりと考える。なおかつ、急激な変化はなかなか難しいですから、徐々に実態を踏まえながら、しっかりと地域を変えて、前へ進めていく、カーボンニュートラルに取り組みながら地域を発展させていく取組みが必要で、ここにおいては、我々商工会議所が果たす役割もしっかり果たしていかなければなりませんが、地域金融機関さんの果たすべき役割は非常に大きいと思っております。
 
 環境省さんが、地域脱炭素先行100地域で取組みを進めていらっしゃいます。そうした取組みの中で、地域経済を支える重要なセクターとして、検討の場、議論の場に積極的に御参画いただき、そこで新たに取り組もうとしている地域独自の発電や送電等の設備、新たな技術の導入、あるいは、こうしたものを実装していったり開発していったりする地域の中小企業のお仕事、これに対しての資金供給を、ぜひお願いをしたいと思います。
 
 国には、この地域脱炭素先行100地域の取組みを進める上で、各地域で、今どのようなことに取り組んでいて、どこに課題があって、何がうまくいっているのかを、ぜひ積極的に情報共有していただいて、各地がうまく競い合うきっかけにしてくださいというお話をしていますが、これは、我々も商工会議所のネットワークでできることだと思いますし、金融機関さんも金融機関さんのネットワークでできるところかと思っています。情報交換、知見の共有にも、お役目を果たしていただけると、地域の脱炭素がより一層いい形で進んでいくかと思っております。
 
 次のページをお願いいたします。もう1つは、中小企業です。先ほど申し上げたような、まだどうしていいかよく分からないのが実態です。
 
 こうした中で、我々は常日頃から、中小企業の脱炭素推進に向けては、この「知る・測る・減らす」という3つのステップで進めていく必要があるということを、お話しています。なぜカーボンニュートラルの取組みを進めなければならないのかを、まず理解をしてもらうこと。実際に自分の会社がどれだけCO等を排出しているのかを、測定して把握してもらうこと。その上で、具体的に、設備の更新等、削減の取組みを進めてもらうこと。この3つのステップをしっかり踏んでいく必要があって、ここは、ぜひ我々商工会議所と地域の金融機関とがうまく連携しながら、普段融資等で接点を持っている中小企業さんに、この3つのステップで進めていくことについて、伴走して支援していく必要があると思っております。
 
 ただ、我々も地域の金融機関さんも、実際の削減のノウハウを持っているわけではありませんので、ここは国にずっとお願いしているところですが、専門家、専門機関、省エネセンター等との連携をしっかり組んでいく必要があるかと思っています。
 
 次のスライド、お願いいたします。以上が、我々の、ぜひお願いしたいと思っているカーボンニュートラルに向けての地域金融機関さんへの期待でありました。このスライドには、各地の商工会議所がカーボンニュートラル関係で取り組んでいる事例を幾つか用意させていただきました。
 
 右上は、各地の商工会議所は建物が大分古くなってきて、建て替えなどもあります。そのときに、カーボンニュートラルになるべく近づけられる取組みをしている例。あるいは、左のいわき、右下の福江では、水素や風力発電を通じて地域を盛り上げていくことに、商工会議所も一緒になって取組みを進めています。左下は、「木育」という、森林を増やしていくことを、商工会議所としても取組みを進めている。
 
 それぞれ地域の特性、産業の状況に合わせた取組みを、一生懸命考えて取り組もうとしております。既にたくさん御協力いただいておりますけれども、こうした点についての地域金融機関としての御協力をぜひお願いしたいと思います。
 
 次のスライドをお願いします。先ほど申し上げた「知る・測る・減らす」に向けて、我々が取り組んでいることを、少し御紹介をさせていただきたいと思います。
 
 今は、行政の方々にも御協力いただきながら、いろいろなセミナー、情報提供を一生懸命やっております。
 
 また、東京商工会議所が主催で、全国対象に実施をしているeco検定という検定試験がございます。環境社会検定ということで長年やっているものですが、ここにもカーボンニュートラルに関する内容をどんどん盛り込んでいっていますので、こういったものを金融機関の方にもぜひ受験いただいて、知識を付けていただくのも1つかと思います。
 
 先程来話が出ています排出量の把握ということでは、簡易なものですけれども、私どものホームページで、「電気使用料幾ら」「ガソリンどれだけ使った」を入れると、どれぐらいCOが出ているということが把握できる、減らすためにどこを見たらいいのかが分かるという、簡便なエクセルシートを御用意させていただいていて、これは、今年に入ってかなりダウンロードの数が増えています。ぜひ御活用いただければと思っています。
 
 最後、「減らす」に関しては、国、自治体と連携しながら、様々な設備導入等への支援制度を紹介してまいりたいと思っています。ここに関して言うと、地域の金融機関さんと、融資の斡旋ですとか、連携できる部分もあるのかと思っております。
 
 もう1枚スライド、最後お願いいたします。商工会議所の役割や特性をうまく生かした各地の取組みが少しずつスタートしています。今年5月からは、名古屋商工会議所は、515の商工会議所で先頭を切って、専門の相談窓口を設けました。また、セミナーやマッチングの事業を行っています。
 
 10月からは浜松商工会議所が、カーボンニュートラルに取り組みたいと考えている中小企業さんと、支援しますと言っている企業さんのマッチングサイトをスタートいたしました。こういったものも、ぜひ金融機関さんと連携しながらうまく活用して、中小企業の脱炭素を進めていければと思っております。
 
 私からは、以上です。お時間いただきまして、ありがとうございました。
 
【根本座長】  御説明どうもありがとうございました。
 
 続きまして、栃木銀行の大原様にお願いいたします。
 
【大原様】  栃木銀行の大原でございます。本日は、このような機会を設けていただきまして、ありがとうございます。
 
 第二地方銀行協会を代表いたしまして、気候変動への取組みに関する地域金融機関の現状と課題について説明させていただきます。
 
 まず気候変動への取組みの現状についてです。弊行では、環境、地域社会、経済へのインパクトを考慮した経営を実践し、地域社会の持続可能性を確保していくための重要方針として「サステナビリティ方針」を制定しました。そして投融資の取組みについては「環境方針」を策定し、サステナブル推進委員会などを設置し、全行を挙げて取り組んでおります。
 
 これらを踏まえて、気候変動に関するリスクへの対応を経営の重要課題であると認識し、脱炭素社会の実現に向けた取組みを行っております。
 
 弊行の取引先に対しては、温室効果ガス排出量の削減や、エネルギー効率の向上、自然災害への備えに向けた設備投資ニーズに対する融資やリース等の提供、それに活用できる補助金、利子補給制度を併せて紹介しております。
 
 中小・小規模事業者の「何から始めていいか分からない」といった悩みに対し、お客様の課題をヒアリングしながら、SDGs経営の第一歩を支援する「SDGs宣言支援サービス」といった宣言書を作成し、お客様の課題解決に向けた取組みを行っております。また、脱炭素への取組みを進めている事業者向けの「CO排出量の可視化サービス」を提供しております。
 
 続きまして、気候変動への取組みに関する課題になります。取引先への取組みにおける課題と、弊行自身の取組みにおける課題と、2つに分けてお話をさせていただきます。
 
 まずは、取引先における課題でございます。カーボンニュートラルに積極的に取り組んでいるのは、大企業や多排出産業であり、地域においては一部の中堅企業のみになっているのが現状でございます。
 
 弊行の主取引先である中小・小規模事業者では、カーボンニュートラルへの理解不足から、「具体的には何をしたらいいのか分からない」、「コスト増につながり、経済的メリットがない」という先が多く、取組みの裾野がまだまだ広がっておりません。脱炭素よりも経済合理性や利便性が重視されてしまっているのが課題となっております。
 
 また、弊行では、カーボンニュートラルに向けての各種補助金や利子補給制度がありますが、制度利用時にCO排出量の算定等の煩わしさや、制度利用に一定の事務負担があることで、利用者数がなかなか増加していかないという課題もございます。
 
 次に、弊行自身の課題として2つ挙げさせていただきます。
 
 まず、1つ目として、地域全体で排出量削減など、地域変動対策に取り組むことが喫緊の課題となる中で、中小・小規模事業者への啓蒙や、地域企業や自治体、脱炭素技術を保有する企業との連携など、ハブ役としての地域金融機関の機能を、まだ十分には発揮できておりません。例えば、弊行側の人材や知見、専門性の制約から、取引先企業が持っている脱炭素の新技術を発掘し発展につなげることができていません。中小・小規模事業者にとってのビジネスチャンスがうまく生み出せてないのが現状でございます。
 
 2つ目として、気候変動対応に係る融資の検討に当たり、取組みの意義は理解できていても、リターンを定量的に把握することが困難で、融資の可否判断に苦慮することが多く、定性面をどこまで考慮すべきか、判断基準が確立しておりません。
 
 また、気候変動対応のための融資商品としてグリーンファイナンスやサステナビリティファイナンス等の品ぞろえとしては準備しているものの、費用や要件の煩雑さ、また弊行の取引先が中小・小規模事業者が中心ということもあり、なかなか実績には結びついておりません。
 
 最後に、まとめとなります。サプライチェーンから外されるリスクや、新たな事業機会の損失につながるといった説明で脱炭素に積極的に取り組むのは、地域においては、中堅企業・優良企業と呼ばれる一部の企業です。地域において、多数を占める中小・小規模事業者にとって、優先されるのは目の前の利益であり、脱炭素化のような長期的な取組みは劣後してしまいます。したがって、気候変動対策を進める上で必要となるのは、販管費削減のためのLED化による省エネ、BCP対策のための太陽光発電と蓄電池の組合せによる無停電に向けた設備投資など、経済合理性や持続可能な企業経営につながり、その結果として脱炭素にも貢献している。このような経済合理性プラス気候変動の取組みが必要になると考えております。
 
 また、早期に進めるのであれば、補助金等だけではなくて、炭素税や義務化等の政策も取組みの変換には必要になってくるのではないでしょうか。
 
 こうした意識醸成を含めた気候変動対応は長期的な取組みとなることから、目先の売上や利益だけでなく、経済界や金融機関としても長期的取組みを評価する仕組みが必要です。
 
 また、地域経済の好循環を生み出し、持続可能な地域社会となっていく1つの手段であるとの共通理解をベースに、個別企業での取組みから、自治体や他のステークホルダーを含めた地域全体での取組みに広がっていくことが必要であると考えております。
 
 以上で、発表を終わりにさせていただきます。お時間ありがとうございました。
 
【根本座長】  大原様、どうもありがとうございました。
 
 では、続きまして、浜松いわた信用金庫鈴木様、お願いいたします。
 
【鈴木様】  浜松いわた信用金庫常務理事の鈴木でございます。今回こういった形で検討会に発言させていただく機会をいただきまして、大変ありがとうございます。
 
 当金庫におきましては、昨年2022年、部門横断的に気候変動対策プロジェクトチームを立ち上げまして、その委員長を担当していることから、本日当金庫の取組みを簡潔に紹介させていただきたいと思っております。
 
 はじめに、信用金庫は、中小企業の皆様とのお取引が中心でございます。また、事業地区が限定的で、地域に根差した経営に特化しているがゆえに、お取引先の事業者様の業種も、またその地域の経済構造や社会特性を強く反映した取引の構成となっております。
 
 資料1ページにありますとおり、当金庫は、静岡県西部地域を主要な事業地区としておりますが、自動車産業を中心とする製造業を基幹産業としており、当地域の特性を反映して、サプライヤーである中小企業の皆様とのお取引も多い状況にあります。
 
 それでは、資料2ページを御覧ください。気候変動への対応、脱炭素化が、地域社会、地域経済におきまして、重要なテーマとなっておるところです。当金庫のシンクタンクに、しんきん経済研究所というところがあるのですが、そこを通じまして、お取引先の中小企業へのアンケートを実施した結果では、先にお話しいただいているとおり、中小企業におきましても、いまだ脱炭素化に向けた対応の重要性は理解できるものの「何をすればよいか分からない」という声が7割以上聞かれているところであります。
 
 また、脱炭素、気候変動への取組みに関しましては、とりわけ自社の属するサプライチェーン内における取組みをよりどころにするケースが多いことも事実でございます。こうしたケースから、事業者自身が単独で、また先行して取組みを進めにくい要因となっているのではないかと思われます。
 
 受注先のお声を聞きますと、受注先には、ティア1、ティア2、ティア3とあるわけですが、上から何か言ってきたから始めればいいという思いもあるのも現実なところです。
 
 こうしたことを踏まえまして、気候変動・脱炭素化が、自社やサプライチェーンにとって大きな経営課題であるという認識を高めていただきながら、我々は、中小企業や零細企業の方々に、CO排出量の可視化サービス等の御案内を通じて、まずお取引先の現在の位置を把握した上、それから具体的な行動に踏み出せるよう、啓発に努めていくこととしております。
 
 資料3ページを御覧ください。気候変動・脱炭素化に向けた取組みを進めるに当たりまして、当金庫では、お客様、地域の皆様の脱炭素化を促して御支援していくことに加えまして、金庫自身の事業活動にも十分に配慮するとともに、経営陣が経営上の機会とリスクとしてしっかり認識し、また、取組みを監督することとしております。
 
 冒頭申し上げました、昨年2月より組織横断的にプロジェクトチームを立ち上げ、金庫全体としても意識を高めるとともに、取組みの進捗をモニタリングすることとしております。
 
 資料4ページを御覧ください。この取組みを通しまして、私どもが重要であると考えているのは、ファイナンス、コンサルティング、ビジネスマッチングを通じて、お客様も経済的なメリットを享受して、併せて金庫として適正かつ安定的な収益を計上することにより、一方的でなく、また一時的でもない、持続可能な取組みをつなげていかなければならない点でございます。
 
 資料5ページを御覧ください。当金庫の事業活動におけますCO排出量削減について、エネルギー使用量削減、また、再生可能エネルギーによる調達など、4つの柱を示しております。
 
 最後に、資料6ページを御覧ください。昨年2022年9月において、当金庫は、信用金庫でありますけれども、TCFD提言へ賛同し、取組みと情報開示を進めていくことといたしました。これによりまして、内外に、気候変動への対応、これは極めて重要な経営課題と我々は意識し、それに取り組む決意を示したところであります。こうした取組みにつきましては、まだ手探り状態とも言える状況にあります。
 
 以上、当金庫の気候変動・脱炭素化に関する大枠な取組みについて御説明させていただきました。信用金庫による事業者様への支援の取組みは、まだまだ緒に就いたところであります。今後、以下の4点が、中小企業における取組み支援の拡大の鍵となると考えておるところです。
 
 1つ目として、事業者様による取組みの入口として、CO排出量の可視化サービス、こうした利用等に関する中小企業への費用負担の軽減。例えば、補助金等が使えるなど。次のことにもつながりますが、2番目として、今後拡大が予想されますサステナブルファイナンスにおけます外部評価等に関わる中小企業の費用負担軽減。3番目として、それらに取り組む具体的なメリットの享受、こういった動機付け。これは、いろいろ、例えば、公共工事の入札等に有利に働くものと位置付けられるとよいかと感じております。最後に4番目として、自社において大きな経営課題であると認識を高めていただくため、当金庫も周知・広報活動はしておりますけれども、これを取り巻く政府、関係省庁等が、大きく行っていただくことが重要かと考えているところであります。
 
 当金庫の現在の取組みは、以上になります。本日は、お時間を頂戴しまして、また御清聴いただきまして、ありがとうございます。
 
【根本座長】  どうも、重要な、いろいろな御提案をありがとうございます。
 
 それでは、議論に移りたいと思います。計画としては、3時10分ぐらいまでの時間となっております。今のプレゼンに関する御質問や御意見、また地域における脱炭素に向けた御提案などについて、御質問あるいは御意見のある方、お願いいたします。
 
 では、佐藤さんからお願いします。
 
【佐藤メンバー】  地域金融機関の具体的な取組み、大変参考になりまして、ありがとうございます。佐藤と申します。
 
 私は、国際協力銀行出身でして、個人的な経験を、今の御説明で大変思い出しました。2010年から、私たちの場合、途上国支援という温暖化対策支援の日本政府の方針に基づいて、温室効果ガス削減事業など、今で言うアボイデッドエミッションの事業にファイナンスすることを、組織を挙げてやりました。ただ、全体のポートフォリオで5パーセントぐらいだったのですが。
 
 その際に、先ほどいろいろな悩みというか、苦労されているというお話があったとおり、なかなか温室効果ガスの削減事業を途上国の方に理解していただくのは大変でした。その際に言われたのは、金利の優遇とかインセンティブがないと、付加的な作業、具体的には温室効果ガスのデータを提出するとか、なかなか理解してもらえなくて、多少金利の優遇制度をつくったりもしました。
 
 ただ、それだけでもなかなか厳しい。我々、当時もグリーンファイナンスと言っていたのですけれども、多少は広がったのですが、もっと大型の事業は、先進国あるいはヨーロッパではフィードインタリフ制度だったり、アメリカですとエネルギー省の補助金ですね、すなわち商業性の問題でどうしても環境だけの力ではファイナンスとしていい案件ができにくいところが当時からありました。そういった面で、地域金融機関におかれましても、温暖化対策や脱炭素だけだと、どうしても推進力というか、中には余裕がない日々のビジネスで手一杯な方がなかなか対応しきれないというのは、あります。そうした点があるということは、あらためて感じました。
 
 その点と、冒頭も少し言いました温室効果ガスの計算は、我々でも外部の専門家、大学の先生などもお呼びしたり、業界へも鉄鋼連盟さんも含めて何度もヒアリングして、金融機関のノウハウという面でも、結構苦労したという思いがありました。それを思い出しまして、コメントというか、参考までにお話をいたしました。以上です。
 
【根本座長】  ありがとうございます。今のは、御質問ではなく……。
 
【佐藤メンバー】  ただの意見です。
 
【根本座長】  ありがとうございました。
 
 黒﨑様、お願いします。
 
【黒﨑メンバー】  ありがとうございます。
 
 いただいたプレゼンを、そうですね、非常に参考になりました。現実を踏まえた切実な現状認識、それから、提案というところだったと思うのですけれども、私も宇都宮出身なので、栃銀さんのお話を聞きながら「そうだな、そうだな」と思って聞いておりました。
 
 皆様の発言の中で共通したものとしては、可視化サービスということで、非常に進んでいるのだということを認識しつつも、プレゼンの資料の中にはあったのですが、御発言がなかったのですけれども、物理的リスクに関しては、中小企業もしくは地方では、どれぐらい理解度が進んでいるかと疑問に思った次第です。
 
 その理由としては、目の前の排出量というところだと、とても漠然としていますし、どこから減らすとかということになると思うのですが、一番の、多分地方への脅威とは、恐らく災害であったり、今後温暖化が進んだ場合への、そういったリスクになると思っています。
 
 それを、グローバルでは、例えばお金に換算したりして、そういったサービスを行っている会社さん、たくさん出てきているのですけれども、そういったところも、今後、中小とか地方の企業だけではなくて、大企業がもちろんやっていくべきだと思うのですが、そういったところが地方でもあてはまるのかと思った次第です。以上です。
 
【根本座長】  ありがとうございます。
 
 今の、御意見ということでよろしいですか。どなたかに御御質問ではないという。
 
【黒﨑メンバー】  はい。
 
【根本座長】  分かりました。
 
【黒﨑メンバー】  ありがとうございます。
 
【根本座長】  村上様、願いします。
 
【村上メンバー】  2つ質問がございます。
 
 1つ目が、恐らく最初の千葉銀行様だと思うのですけれども、設備投資の件で、脱炭素に関する設備投資に関するいろいろな判断が難しいというお話があったかと思うのです。普通のものに比べて、どの辺りが具体的に難しいのか。逆に申し上げると、どういうケースであれば比較的やりやすいのか。種類によって、自動車とか建物とか、どういうものであればやりやすくて、脱炭素の場合が、何が具体的にネックなのかを補足いただければ、ありがたく存じます。
 
 2つ目が、これは皆さんに共通していた点ですけれども、何をすればいいのか分からないというお考えの中小企業の経営者さんが結構いらっしゃること、皆さんが御指摘だったかと思うのです。私個人的な感覚としては、本当にそんなに多いかというところもあります。
 
 と申しますのも、もう京都議定書が作られてから25年たっていまして、省エネですとかそういったことに関して、あるいはマーケティングみたいな観点からも情報収集されていらっしゃる経営者の方も非常にいらっしゃるはず。経営者の方はそうかもしれないけれども、もっと下の世代の方は、よく御存じだったりとか、そういうこともかなりありまして、いまだに「何をすればいいか分からない」というメッセージを出し続けられるのは、本当に本当かというのが、すみません、自由記述とか、実は結構あるのだよとかもあれば、そこも教えていただければと思いました。以上でございます。
 
【根本座長】  ありがとうございます。
 
 では、官澤様、最初の御質問、お願いします。
 
【官澤メンバー】  官澤でございます。御質問ありがとうございます。
 
 審査のところですが、先ほどお話されたような省エネだとか、そうした文脈の話であれば、比較的やりやすいというものです。コスト削減につながるような、気軽な投資から始まるような、「冷蔵庫を替えましょう」等の身近な設備投資であれば、非常に効果がわかりやすくて取り組みやすいのですが、ビジネスチャンスだとかそういった文脈の中で、こういった技術に対するファイナンスが必要だという話であると、それがどれぐらい今後のビジネスの拡張につながっていくのかとか、なかなかその辺の与信判断が難しいということで足元の課題として認識しております。
 
 ですので、ある程度小さな案件であれば、企業のコーポレートリスクとして取組み可能かと思うのですけれども、もう少し次のステージに向かうような、新しい大きめの投資のファイナンス案件については、ある程度、保証協会でありますとか、政府系による債務保証的なパッケージだとか、そういったものがサポートになり、あるいは呼び水的な形で、民間の金融機関からの資金が入っていく形が、やりやすいかとは感じております。
 
 2番目の質問の、「いまだに何をすればいいか分からない」という部分ですが、私もそれぞれ中小企業者と個別に面談しているわけではないですけれども、営業の前線で、そういったアプローチで対応している職員や業者などに聞くと、業種にもよると思いますが、せっぱ詰まった状況である業種に関しては、さすがに経営者を含めて、経営陣については、きちんと勉強されているのだろうと思います。一方で、それほど深刻ではない小売業の社長などが脱炭素に向けてどの程度の意識があるかというと、京都議定書から25年たってもこの状態であり、数字を見ても、いまだに「何をすればいいか分からない」状況で、日本商工会議所からの統計データにもありましたけれども、その数値を見ても全然違和感はないのが、私の印象ではあります。以上でございます。
 
【根本座長】  ありがとうございました。
 
 大下さんは、何か補足されることはございますか。
 
【大下様】  ありがとうございます。
 
 今おっしゃった業種による違いは、明らかにあると思います。製造業であるとか、あるいは交通運輸みたいなところは、御認識はそれなりにあるのかと思いますし、逆に小売サービスみたいなところは、それに比してやや自分事とはなかなか考えられてないところかと思います。
 
 我々が日頃経営指導等で接している事業所さんは、本当に規模が小さいです。5人、10人、20人。そうすると、経営者さんは、総務部長でもあって人事部長でもあって営業部長でもあって、ということなのです。足元これだけエネルギー価格が上がっていたり、物流が滞っていたり、いろいろ経営課題がある中で、カーボンニュートラルを、経営課題の中の優先順位で高く考えて「何したらいいのだろう、我が社」と考えられるかというと、今申し上げたカーボンニュートラルそのものの問題だけではなくて、中小企業が直面している経営課題がいろいろある中でとなると、残念ながら優先順位は上がらず、勉強する時間も取れず、取組みが進まない状況は、片方であると思います。
 
 もう1つ、カーボンニュートラルについて、私がいつも思うのは、先ほど災害等が増えているからというお話がありました。私自身も、もう既に気候変動にCOの排出が影響している、そのことが豪雨等につながっているということは、担当部署の部長として理解していますけれども、実感できるかというと、残念ですけれども実感できないです。各地の商工会議所の会員企業さんが集まって、地域の防災みたいなことに取組みをされています。しかしながら、豪雨が増えている、気候変動が増えている、異常気象になっている、あるいは採れる魚が変わってきているといったことが、あなたが出しているCOが影響しているのですよということを、目にも見えないし、つながりが理解できないので、まして実感はわかない。ここは、非常に難しいと思います。従い、切迫感がない。今、ほかに切迫感のある課題が相当多い中、目に見えなくて、分かりにくい。加えて、さらにこの先を言うと、あまり儲かる気がしない。こうなると、中小企業が関心を持って取り組もうというのは、相当ハードルが高い。
 
 我々は今思っているのは、電気代が上がっているから、節電から始めましょう、コスト下がりますよね、この辺りをやっていって、何年か経って、あの時やっておいたからCO減ったので、炭素賦課金が導入されたときに、あまり賦課金払わなくてすみましたよね、というシナリオが、一番現実的かという感じがしています。
 
【根本座長】  どうも御説明ありがとうございました。
 
 何人かの方がいらっしゃるので、次に移りたいのですが、高村様、お願いします。
 
【高村メンバー】  ありがとうございます。
 
 今日、この検討会、この地域金融、それから地域の企業を支えていらっしゃる商工会議所からお話を伺ったのは、非常に重要だと思っています。まさに地域の脱炭素の担い手の皆さんでもあり、同時に、大下さんからもありましたけれども、中小の企業の皆さんが特に直面している地域の課題に、本当に解決をしたいと思ってという問題意識と、実際に解決をし得る担い手の人たち、皆様からお話を聞けたのは、大変よかったと思います。
 
 共通して皆様がおっしゃっていたのが、企業にとって今最も重要な経営課題の1つであると。しかし、なかなか今のエネルギー価格の高騰をはじめとして、様々な諸課題に直面をしている中で、どうやって一歩足を踏み出せるのかが、共通した御指摘でもあったと思います。
 
 私自身、中小の企業の方とお話をする機会があるのですが、先ほどの商工会議所大下さんの御紹介のデータにあるように、分かっているけれどもなかなか踏み出せないことは、正直に伺います。
 
 そのときに共通した障壁として指摘をされるのが、1つは情報のギャップ、それから人的資源、人手の問題とお金です。そういう意味で、地域金融の皆さんは、私、先ほど、コンサルティングと、当然本業の資金をどうするかというのはあるのですけれども、コンサルティングということを、伴走してしっかりギャップを埋めていく役割を果たせる主体として、地域金融に非常に大きな期待もしています。実際、誰から、うまくやっていらっしゃるところで話を聞くと、どこから情報や支援いただいたのですかと聞くと、商工会議所さんのような事業者団体か自治体か銀行とおっしゃるのです。
 
 そういう意味で、今日お話を伺ったことを踏まえて、これは、金融庁さんへのリクエストです。国の中で、特に地域に、こうした地域金融の皆さんが、より大きな役割を望むように果たせる支援と政策の在り方について検討いただきたいし、この検討会で、ぜひ議論していきたいと思います。
 
 その上で、今日お話を伺って、非常にもう1つ重要だと思うのは、国のレベルで省庁間の連携なしにはできないというのが1つです。これ、千葉銀行の官澤さんの、これが必要だというリストは大変印象的だったのですけれども、いずれもこれは、金融庁さんだけではできないけれども、国が総力を挙げてこそ、したがってできるという施策のリストを出していただいていると思います。金融庁さんに、そういう意味では、その1つの省庁として、こういうプラットフォームの一員として、あるいはそれを支える担い手となっていただきたいと思います。
 
 もう1つは、各地域でそういうプラットフォームを、事業者団体、地域金融合わせて、お役所もそうですけれども、つくっていくことが必要だと思います。先ほど商工会議所さんからの例にもあったと思いますし、中部圏の自動車産業の地域金融と産業界の連携も、金融庁さんの資料にも以前出していただいたと思います。
 
 すみません、長くなりまして、質問です。これ、今日御報告いただいた皆様のところで既に一部出していただいているのですが、私がこう受け止めた皆様方の報告を踏まえて、金融、地域金融の皆様が、その役割をよりよく果たすために、どんな国の、どういう金融庁さんの政策・施策が必要なのかを、ぜひ伺いたいと思います。先ほどは、よい事例の普及とか、コンサルティング、人材育成、地域での連携と、いろいろな課題を出していただいているのですが、特に金融庁さんの検討会なので、金融庁さん、金融政策でこれが必要という点、ぜひ今ここで教えていただけるとありがたいと思います。以上です。
 
【根本座長】  ありがとうございます。
 
 では、官澤様からお願いいたします。
 
【官澤メンバー】  官澤でございます。
 
 具体的にこれはということは、なかなか難しくて、今日申し上げたところ全般、例えば、利子補給制度、あとは補助金の在り方なども非常にあるのですけれども、そうは言っても、中小企業者さんがもう少し自分事として捉えるという枠組み、考え方、マインドセットみたいなものも非常に大事かと思っています。
 
 金融庁さんに対して申し上げるならば、政府、各省庁さんの御支援をいただきながら、我々も千葉県の商工会連合会さんなどと一緒にそうしたネットワークのような枠組みをつくって、一つずつ前に向かって歩いていこうという取組みは少しずつ始めていますけれども、金融庁さんとして、政府全体に対するそういったものをどう取り組んでいくのか、各地域における成功事例だとか、例えば、千葉県は製造業が非常に少ない地域柄でもありますので、サービス業だったり小売業だったりといった業種別の良い取組み事例などを発信していただいたり、情報共有していただいたり、そういうことかと思います。
 
 あまり回答になっていなくて、申し訳ございません。
 
【根本座長】  大下様に、今のお答えは銀行界を代表してということで、すみません、時間の関係もあるので、大下様から金融庁さん、あるいは、先生の、これはという強い御要望があれば、お願いします。
 
【大下様】  高村先生も、黒﨑さんもおっしゃっていましたけれども、今の段階でいうと、中小企業にこのことが必要だという点を理解していってもらうことが非常に重要で。たくさんの中小企業と接点を持っている地域金融機関の特性を生かして、どうやって地域金融機関を通して、中小企業に、この情報あるいはこの認識を広げていけるのかがポイントと思います。
 
 先ほど申し上げました、各地での情報交換もそうですし、各地の金融機関が、中小企業向けに、例えばセミナーやシンポジウムを実施することへの支援を、今の段階ではまずやっていただくことかと思います。
 
 あとは、経産省も環境省もエネ庁も、設備投資の支援はいろいろ補助を用意していただいていますので、金融機関が、地域においてこの問題についてどういう役割が果たせるのかを、各地の金融機関同士で競っていただく場づくりをしっかりしていただくのが、金融庁さんにぜひお願いしたいところと思っています。
 
 ありがとうございます。
 
【根本座長】  ありがとうございます。
 
 では、長谷川様、お願いします。
 
【長谷川メンバー】  先ほどの高村先生の質問と重複する可能性があるのですが、日商の大下さんに質問させていただきたいと思います。大下さんにはいつもお世話になっております。
 
 小林会頭も参加されている、GX実行会議において、GX実現に向けた基本方針が取りまとめられました。その中で、御案内のとおり、地域のGX、脱炭素については環境省が、ファイナンスについては金融庁と経産省が取り組みを進めておられます。この取り組み全体に対する評価と、高村先生も指摘された省庁の連携についてどのように見ておられるのか教えていただければと思います。
 
【大下様】  お答えしてよろしいでしょうか。
 
 ありがとうございます。長谷川さん、いつもお世話になっております。
 
 これからかと思っています。一生懸命お考えいただいている感じはあります。環境省さんは我々と意見交換をしていただいていますし、また、各地の商工会議所を回っていただいています。各地の中小企業が、カーボンニュートラルについてどのように取り組もうとしているのか、実態がどうかみたいなところのヒアリングをずっとしていただいていて、どういう施策を今後打っていくべきかについて、いろいろと私どもと相談をしていただいています。中小企業庁さんも、私どもに意見を聞きに来られており、足並みがそろってきたという感じはしています。
 
 先ほどもお話ありましたけれども、金融庁さんも含めて、今申し上げた各省庁さんが、まさにしっかり情報共有していただいて、連携していただいて、多少の重複があるのはもう仕方がないかと思ってはいます。むしろ、抜け、漏れがないかと思っています。これも、省庁間である種競い合っていただいて、施策の競争をしていただいたほうが、我々としてはありがたいです。
 
 繰り返しになりますが、「気が付いたらポコポコと落ちているね」がないように、省庁間の連携はしっかりしていただきたいと思いますし、経団連さんと一緒に企業の脱炭素化が進むように、省庁への働きかけは引き続きやってまいりたいと思います。ぜひ協力よろしくお願いをします。ありがとうございます。
 
【長谷川メンバー】  ありがとうございます。引き続きよろしくお願いします。
 
【根本座長】  ありがとうございます。
 
 予定された時間にはあるのですが、あと4名の方に御質問いただいているので……すみません、最初に御質問か御意見か言っていただけると非常にありがたいと。比較的短めにお願いできればと思いますが。すみません。
 
 岡崎様、お願いします。
 
【岡崎メンバー】  ありがとうございます。
 
 すみません、私からは意見です。
 
 皆様からのプレゼンにあったとおり、「知る・測る・減らす」は、中小企業だけではなくて、大企業にとっても必要なステップだと思います。現状、中小企業が、なかなか自分事化ができてないことに関しては、まずこのステップを早急に進めることが必要かと思っております。
 
 我々、機関投資家としては、特にGHG排出量の多い大企業に関しては、エンゲージメントを通じてサプライチェーンも含めた排出量の削減を求めていますので、我々としては、そういう大企業に対して対応を促して、かつ大企業が、当然スコープ3として自分たちの排出量に関わってくる話ですので、中小企業に対するサポートも含めた対応をお願いしたいと思っています。
 
 これは、実現可能かどうか分からないですけれども、金融庁ではなくて政府全体として、大企業がサプライチェーン全体の排出量削減をするといったときに、彼らが中小企業の排出量削減をサポートするための何かしら施策であったり支援策も必要ではないかと感じました。
 
 私から、以上です。
 
【根本座長】  どうもありがとうございます。
 
 吉高様、お願いいたします。
 
【吉高メンバー】  どうもありがとうございます。
 
 質問とコメントでございます。
 
 最初に、地方銀行協会様からの御提案の中、10ページの「検討をお願いしたい事項」で、公的機関による債務保証の拡充があったと思うのです。今確か、株式会社脱炭素化支援機構が発足されまして、その中では、地域金融のためのメザニンとか保証の入っていて、今まだ200億円ですけれども、あるのですが、これの拡充ということでよろしいのかが、1つでございます。
 
 その次に、すみません、商工会議所様のプレゼンの中に地域脱炭素の話がありましたが、私自身、脱炭素先行エリアの審査員をさせていただいておりまして、今後やらなくてはいけない、フォローアップだということですが、具体的には、選定されたところはフォローアップしていき、かつ地域の知見共有はしていくことで、環境省ともう既に始まっているわけです。地域ごとによって、すごく特色があると思っておりまして、そこら辺の商工会議所様と地域金融と、今回、環境省が回っているのは私も存じ上げているのですけれども、私自身が、いろいろ地域で商工会議所様や地域の金融機関と話しますと、非常にまだ格差がある気がしておりまして、具体的な情報共有がどういうものが必要であるかが、ぜひお聞きしたいと思っております。
 
 特に、私は、東北の信用金庫組合で講演もさせていただいたのですが、信金さんの場合、今日プレゼンしていただいたとおり、地域が限定されているので、特色もあって、こういった信金さんが増えてきていらっしゃる感じはするのですが、地域によっての違いをどのように対応してったらいいかということで、もし御意見があればと思っております。
 
 最後に、コメントです。12月に福島に呼ばれまして、地域の温暖化防止センターの方々が、10行近くの信金から地銀まで含めて集めて、経産省の補助金、環境省の補助金の各説明、私からは銀行のメリット、中小企業のメリットなどの講演をさせていただいたのです。今日お話があったように、これは3省の連携が重要で、金融機関を集めようとなると、地域の財務局が声をかけないと集まらないのです。これは、環境省だけでも集まらないし、経産省だけでも集まらないので、ぜひ金融庁と、地域の各局で集めて、銀行側の事例、事業者の事例、両方どんどん事例集を出していただいて、啓蒙、啓発につなげられることをしていただけると、大変ありがたいと思っております。
 
 すみません、長くなりました。以上でございます。
 
【根本座長】  どうもありがとうございます。
 
 では、官澤さんと大下様に、地域の違いについて、簡単にお願いいたします。
 
【官澤メンバー】  よろしいですか。
 
 先ほど支援機構の話は、1つのツールであると思っていますけれども、手短に申し上げると、中小企業の裾野拡大という観点で言うと、もう少し保証協会であるとか、そういったところも十分活用した制度設計があると、非常にやりやすいのかと思っています。
 
 環境省さんが各地を回られていることは、私も承知しておりますし、経産省さんなどもよく回っていらっしゃるのは、よく認識しております。ただし、「千葉の商工会議所に行ったのです」みたいな話を伺うと、「いや、それだったらついでに銀行も寄っていただければいいのに」と思ったりもしますので、ぜひ産業界と金融界と一体で、一緒にできることがあればいいと思っております。以上です。
 
【根本座長】  ありがとうございます。
 
 大下様、さっき地域の御紹介ありましたけれども、そういう進んでいるところと進めないところは、どういう違いがあるのかは、コメントはおありでしょうか。
 
【大下様】  地域の中で、先ほどの話ではないですけれども、気が付いて意識を持った方がいらっしゃった、それなりの影響力があった、もう以上だと思います、今の時点でいうと。それで輪が広がって、取組みが進んでいるときは、先に進んでいます。けれども、そういう方がいらっしゃらないところは、まだまだ先に進みません。
 
 ただ、全ての地域、全ての企業に影響がある問題ですので、先ほど申し上げましたが、先行していい取組みをやっている事例、あるいはそれをやっていく中でここはうまくいってない、ここはなかなか課題だというところも含めて、地域の特性に合った、例えば、うちはもともと火力発電の町です、うちは製鉄の町です、うちはどちらかというとサービス業、観光です、その中でカーボンニュートラルをこのように取り組んでいます、こういう課題があります、それをこうやって乗り越えてきましたという点について、先行地域の事例を多く情報共有している中で、うちの町はここの町を参考にしながらやったらいいのではないかと思う人が増えていってもらうことが、各地域がアクセルを踏むことに繋がると思います。今の時点で格差があるのは致し方なく、先を引っ張ってくれている企業さんをいかに見つけて、他のまだ気が付いていない地域、企業に目を覚ましてもらうことが大事かと思っています。
 
【根本座長】  どうもありがとうございます。
 
 では、吉田様、お願いいたします。
 
【吉田メンバー】  日本政策投資銀行の吉田です。もう時間がないので、手短に。質問です。
 
 弊社も、脱炭素を日本で実現していくために、地域ということが非常に大事だと思ってやっておりまして、その観点で、今日いただいた話は大変参考になりますし、日頃接している中で感じていることでもあるかと思っています。
 
 時間軸で分けて考えることが大事かと思っていまして、短期的に言うと、経済的なメリットがあるお話もありましたけれども、省エネとか、そういうものの導入を基点に対話していくことが必要だろう。
 
 一方で、中長期的な効果、カーボンニュートラルは、個社で対応するのは非常に難しいと思っていますので、面的な対応が、地域では大事だと。
 
 今まさに、商工会議所さんからお話がありましたとおり、単一産業で依拠している地域とか、そういうところで、ある程度重点化して絞って面的な取組方を考えていかないと、現実的に地域では進んでいかないのではないかと思います。
 
 そういう中で、日本商工会議所さんの大下様からありました、その地域の、目立つ地域社会の在り方を考える場という、これは非常に大事だと思っております。これがあって、リスキリングというか人的資本への変化があって、それからファイナンス、多分そういうつながりにならないと、地域全体の動きになっていかないと、弊社も思っております。
 
 地域社会の在り方を考える場をつくるに当たって、何か障害になったものだったりとか、リーディングの会社さんがいらっしゃればそこが中心ということですが、そういう場が設けられない事例だったりとか、そういう場すら設けられないのだということがあれば、商工会議所さん、あとスピーカーでいただいた各地域の金融機関さんから、コメントいただければ、ありがたいです。以上です。
 
【根本座長】  では、大下様、すみません、お願いいたします。
 
【大下様】  先ほど申し上げた、「こういうのを考えた方がいいよ」という企業さんがいるのにうまく場が持てないという声は、特に聞こえてきていないです。もしあるとすると、他の人との温度差ぐらいかと思います。
 
 ただ、どれだけのセクターが巻き込めているかという点は、まだまだ課題があるかと思います。それこそ、先ほどの話ではないですけれども、省庁が縦で割っているのと一緒で、なかなかこの問題について、商工会議所と金融機関と、あるいは地元の優良企業とで、話す場が持てているかというと、まだまだこれからだったりもするのかと思いました。
 
 特に何かこれがあってうまく進んでいませんというのは、少なくとも今の時点では聞いてはおりません。
 
【根本座長】  ありがとうございます。
 
 他のスピーカーの方で、何か追加的におっしゃりたいことがありますか。
 
【官澤メンバー】  官澤でございます。
 
 今の話に関係しているかどうかですが、地域地域でよくコンソーシアムのようなものが組まれるケースが多くて、政府からの働きかけによって組まれる形も多いのですけれども、コンソーシアムを組むに当たって、地域金融機関など、金融機関が入ってない座組みで組まれてしまうケースがあります。枠組みの出口として、金融機関はどうしても必要になってくると思いますので、そういう働きかけをしていただく際には、地域金融機関など、金融機関を交える形での働きかけをお願いできればと思います。以上です。
 
【根本座長】  分かりました。ありがとうございます。
 
 藤井様、お願いいたします。
 
【藤井メンバー】  予定がオーバーしているところですみません。
 
 コメント1つと質問が1つで、質問は、地銀協さん宛てになると思います。
 
 まずコメントですが、議論をお聞きしていて、中小企業さんの取組み強化とか支援という論点と、地域経済への影響とか産業構造転換といった論点は、かなり相関しているのは理解した上で、別々に整理して議論を進めていった方がいいのではないかと思いました。
 
 中小企業については、先ほど「知る・測る・減らす」というご説明がありましたけれども、何らかのパターン化ができることができると思いますが、地域経済の場合には、自治体から地域内の大企業から中小企業まで、かなり事情も違いながら含まれてくると思います。これらを一緒に議論してしまうと、ごっちゃになってしまって議論が混乱するので、中小企業と地域経済への影響は整理をしたうえで、それぞれにおいて金融機関や金融の取組みはどうするかを議論したほうがいいのではないかというのがコメントです。
 
 次に御質問です。資料の数字をいろいろ拝見していると、意外と共通の数字が出てきています。商工会議所さんの資料で、「取組みは行っていない」および「分からない」といった回答を足すと7割になって、浜松いわた信用組合さんの資料の「取り組んでいない」が大体7割になっているところと一致します。一方で、「排出量の計測・把握」については、商工会議所さんの資料では実施しているのが8パーセントという数字が出てきていますが、地銀協さんの資料の3ページでは、地銀協さん加盟行の85パーセントが「可視化サービスを提供」しているとなっていて、数字のイメージが合いません。また先ほどの商工会議所さんの資料で中小企業の7割が「取組みを行っていない」ないし「分からない」と回答している一方で、地銀協さんの資料では、は36行、58パーセントが「コンサルティングを提供している」となっていてここでもミスマッチが生じています。数字だけからすると、サービスは提供しているのだけれども、それがユーザーである中小企業に行き渡っていないとなります。
 
 これは、中小企業さん側の、いろいろな優先順位の中でサービスを受け入れる体制がないということなのか、あるいは、サービスを提供する金融機関の側でのリソースやマンパワーの問題なのかというのが、御質問です。
 
 もし後者だとすると、例えば商工会議所さんの排出量試算のエクセルツールのようなものやアプリみたいなものを提供して軽減するということもあるかもしれないと思います。ユーザー側と金融機関側の数字を拝見していると、ずれのようなものが感じられたのでの御質問でございます。以上です。
 
【官澤メンバー】  千葉銀行の官澤でございます。
 
 今の質問に、直接お答えできているわけではないかもしれないですけれども、サービスメニューとしては当然そろえておりますということです。
 
 先ほどから議論になっている意識の問題等もございますが、一定数の中小企業者さんに関しては、非常に興味を持たれているので、そういったコンサルメニューでありますとか計測ツールの御提供などで、お応えさせていただいています。 スコープ3については、我々が実際に実測値として計量化している企業数を積み上げても1割に満たないぐらいのイメージですので、PCAFのような排出係数にかかる数値を用いて推計していくしかない、というところが現状です。
 
 結論としては、銀行としては、サービスメニューとして取りそろえていますが、それを使う中小企業者さんが、ある程度限定的だという理解でよろしいかと思っております。そういった意識が高まれば、どんどんお使いいただける企業さんが増えるのかとは思っております。答えになっていますでしょうか。
 
【藤井メンバー】  ありがとうございます。
 
 そうだとすると、商工会議所さんの「知る・測る・減らす」の内の「知る」ためのいろいろなツールを、金融機関あるいは商工会議所がもっと宣伝していくということもあるかと理解いたしました。
 
【根本座長】  どうもありがとうございます。
 
 少し私もコメントさせていただきたいです。佐藤さん、高村さんがおっしゃっていた人手が結構不足しているということに関してです。大企業は、リソースが十分あるのですが、計測するにしても人的なリソースの問題があるので、スマート化というか、GXプラスDXが必要かと思いました。
 
 もちろんきめ細かいコンサルも重要だと思うのですけれども、恐らく地域金融機関さんの側も、そういうより効率的なツールや、生産性を上げる仕組みが必要かと思った次第です。
 
 あと、話題に出していただいたデータ、数字についても、なるべくはコンパラブルなもので、金融機関を含め関係者の間のデータの共有化とか、そういう仕組みが望まれます。地域で、例えば他社はどういう進展があり、自社が遅れてないかを確認できればそれがまたモチベーションにつながるかと思うので、今後も発展を期待したいと思っております。
 
 それでは、どうもいろいろ活発な御意見と御質問ありがとうございました。本当に、スピーカーの方々、まさに日々、真剣に取り組まれていらっしゃる内容が、伝わってきまして、大変有意義なお話だったと思います。ありがとうございました。
 
 続いて、次の議題に移りたいと思います。スコープ3について、事務局より御説明をお願いいたします。
 
【西田サステナブルファイナンス室長】  事務局でございます。
 
 事前にも御説明させていただいていると思いますので、簡単にさせていただければと思います。
 
 資料は事前にお配りしておりますが、画面にも投影させていただいています。はじめに、中小企業のテーマとは大きく変わりまして、前回GFANZとPCAFの方にプレゼンテーションいただいて、議論いただいた際の御発言を資料としてまとめております。
 
 まず、GFANZの方からどういう話があったかです。2ページ目を開けていただきますと、ネットゼロに向けた移行として金融機関として何をできるのか、どういうスキーム、フレームワークでやっていくか、御説明いただいたかと思っております。
 
 上は、文書で公表されているものとプレゼンテーションいただいた内容をまとめているものですが、基本的な戦略、ガバナンス、さらに指数と目標のようなものを金融機関として定めて、幾つか考えられる手段を挙げています。1は、気候変動に資するサービスを提供している企業に、ファイナンスを提供する。2と3は、1.5度の目標に整合的な企業であるとか、これにコミットしている企業を支援していく、ファイナンスしていく。また、4で「Managed Phaseout」とお話されていたかと思いますけれども、エンゲージメントをしつつ、計画的な除却(Managed Phaseout)、トランジションを進めていく。このように、いろいろなやり方があるのだと。
 
 次の3・4ページ目に、どのようなやり方があるかでまとめております。「基礎」「実行戦略」「エンゲージメント戦略」「組織と目標」「ガバナンス」とあります。本日の議論との関係では、特に「指標と目標」が関わってくるかと思っております。
 
 次のページが「指標と目標」の概要です。プレゼンテーションにもありましたし、別途公表されている資料でも、別冊で指標について詳しくまとめておられます。それをサマリーしたものが、こちらです。トランジションをお客様が進めているかについて、金融機関としてどのように定量的に把握することができるのだろうか、評価することができるのだろうか。そのやり方として、大きく、実体経済の移行と、移行計画が進捗しているかというモニタリングの指標と、重なる面もありますけれども、ポートフォリオに対しての排出量と、大きく3つに区分をされています。
 
 1を見ますと「排出量ベース」で、貸出先・取引先のアセットクラスごとの排出量、ファイナンスドエミッション、また、これがどう変化したかを定量的にとらえるもの。それから、「フォーワードルッキングなポートフォリオアライメント」と書いてありますが、将来的なファイナンスドエミッションがどうなるか、これは定量的に捉えるものだと思いますが、これを把握していくような指標のアプローチ。
 
 それから、別のアプローチとして、「移行ベース」とこちらの報告書の言葉ではなっていますが、定性的に、投融資先の企業が描いておられるパスウェイが、科学的な根拠を持つ、すなわちサイエンス・ベースドなのか、こうした点について外部の認証を得たものか、または内容が客観的にみて目標達成との関係でしっかりしているものか等について、定性的な評価を行って、その定性的な評価の割合を定量的に把握すると、こういう組み合わせた形の計数の捉え方があるのではないか。
 
 また、一番最後の「ポートフォリオ排出」です。定量的に把握する場合にも、セクター量を見るのか、全体を見るのか、また、絶対量を見るのか、「強度」とありますけれども、活動当たりで見るのかということで、幾つかの指標と特性があります。
 
 5ページを御覧いただきます。PCAFの方にもプレゼンテーションいただきましたけれども、この係数について、どういう標準化ができるかで御議論されているということだったかと思います。
 
 全セクターについて絶対量ベースでのファイナンスドエミッションをベースにして、必要に応じて他の指標、例えば、排出除去量、削減貢献量とありますけれども、こうしたものを組み合せながらやることもできるではないかという御議論。
 
 参考資料17から19ページに入っておりますが、ISSBにおいてもファイナンスドエミッションの開示が義務になる方向で今議論が進められているということで、その中でもファイナンスドエミッションの具体的な計測手法が掲げられているところです。
 
 顧客またはポートフォリオのトランジションがどう進んでいるか進捗を確認する意味での係数について御説明申し上げましたけれども、7ページでは、係数は以上のようなものがいろいろあるということかと思いますが、真ん中に留意点として、問題提起として書かせていただいています。
 
 ファイナンスドエミッションが、ネットゼロに向けた目標となるなど、非常に重要性が高まっている。他方、個別の指標そのものに着目しますと、いろいろ自然でないこととか、不思議、よくないことも起こり得るではないかということで、次以降のページで、幾つかケースとして書かせていただいております。
 
 実体経済の移行を着実に進めるとか、金融システムへの影響も加味しながら、実体経済の移行を円滑に進めていくために、指標もそうですし、戦略的にどのような形で、顧客企業やポートフォリオのトランジションの移行状況を把握し、それを開示していくことができるのかという点は、重要な論点かと思っております。
 
 実際には、その後、単に指標を管理するとかということではなくて、顧客と、先ほどもありましたとおり、丁寧にエンゲージメント・コミュニケーションを図っていくことが重要となるわけですけれども、その具体的な手法であるとか、充実を図っていく手段についても、本検討会で議論いただく重要なテーマではないかと書かせていただいております。
 
 8ページは、その指標の例です。まず前提としまして、ファイナンスドエミッションの場合も絶対量で見て、顧客が排出している量に金融機関自らのポートフォリオでの割合を掛けるものと、大きな考え方はこの資料の左右で同じですが、左は絶対量であるのに対して、右は経済活動量当たりの排出量、intensityということで、割合で見るのか、絶対的に見るのかということです。
 
 カーボンニュートラルとの関係では、当然地球全体の絶対量が重要・自然となると思われますが、他方で右側のように原単位ベースで見ることで、それぞれの企業などの単位でみると、経済活動が増えたり減ったりとか、そういう影響をある程度押さえて進捗を見ることができる、そういう指摘もあると思います。
 
 幾つか、最近、この係数について問題提起をされていることを、9ページとか10ページにまとめをさせていただいています。これはこう決め切ったものということではなく、あくまで本日の議論のための論点提起です。
 
 ファイナンスドエミッションという係数に着目する場合、先ほどの資料でお示ししたとおり、ファイナンスドエミッションは、その排出量に対して自らが投融資をしている割合、アトリビューション・ファクターを掛け算して出すことになります。
 
 例えば、これまでの経済活動に加えて、新たに脱炭素に必要な設備投資をしようと資金調達をされる場合、この資金調達を、今までのトータルの調達シェアのままいきますと変化がないはずなのですが、同分ではなくて、例えばメインの銀行さんから全額調達されるとか、そのような形でアトリビューションファクターである投融資割合が変わるような形で資金調達する場合、今の例だとメインバンクのシェア割合が増えますので、アトリビューション・ファクターが上昇し、計算上は、新たな設備投資に資金をしたこの銀行のファイナンスドエミッションが上がってしまうことがあり得るかと思います。
 
 そうしますと、あまりこの数字に縛られる形になってしまうと、直感的には、脱炭素に必要な設備の投資にファイナンスをすることで、むしろファイナンスドエミッションが増えてしまうという、直感的にややおかしいというか、計算上はそういうことになりますので、場合によっては、設備投資に対するファイナンスは遠慮してしまう効果もあるのではないかとそういう指摘があると思います。
 
 それから、②と書いてある部分、これも同様に議論のための問題提起ですが、2050年のカーボンニュートラルを目標とする金融機関・投資家は、中間的な到達点として、2030年の中間目標を設定することがネットゼロへのアライアンスなどで求められています。この2030年の中間目標の設定の在り方については、地球規模、国、金融機関としての全体的な目標設置、顧客の戦略、これらをうまく合わせる形で、合っていることを確認する形で設定することが望ましいはずですが、なかなか容易でない側面もあろうかと思われます。例えば、中間的な目標の到達を優先して考える場合、排出減を実現する設備等に投融資をするインセンティブになり得ますが、場合によっては、これが長期的な、最終的に2050年のカーボンニュートラルに向けた効率的・実効的な投資先と異なってしまうケースとならないか、例えばそういった論点があるか、という問題提起です。
 
 ある一時点で見ますと、10ページのようなこともあり得るかと思います。こちらも論点提起ですが、先ほどのようなアトリビューション・ファクター、自分のシェア分を掛け算する形でファイナンスドエミッションが計算されています。この場合に、ファイナンスドエミッションに集中する形で、金融機関Aと金融機関Bが意思決定を仮にするとしますと、この仮定の下では、本当は、金融機関にとっても、また顧客にとっても、望ましいのは、投融資をして排出量も減らすし、経済成長の源にもなるようにということで、左のほうがいいのですが、自分のシェア分が上がることを気にすると、新たな設備投資の投融資をしない選択を、AとBがそれぞれをしますと、「悪い均衡」ということになり、ゲーム理論で言うところの右下のようになってきて、マクロでの排出量の減少とか事業変革が逆に進まないことになることも、可能性としてはなくもないのではないか。
 
 11ページから12ページ目は、こうした点をまとめております。「中期的な投融資に係る排出経路の実効性、堅ろう性など、どのように把握・示していくことが望ましいか」と書かせていただいております。ファイナンスドエミッションは、ネットゼロのアライアンスでも、目標設定の重要な指標と位置付けられているもので、端的であり、国際的にも参照されているということで、有用性は高いのだと思います。
 
 ただ前提としまして、顧客のトランジションについての戦略を理解したり、また戦略策定を支援することが前提となっていると思いますので、こうした部分が抜けて、係数のみにこだわる形になってしまうとすれば、中長期的な投融資に係る削減経路の実効性などをうまく把握できないことがあり得るのではないだろうか。
 
 より敷衍しますと、どのような係数でもあり、その位置付けも含めて、経営のコミットメントや事業戦略の位置付け、進捗度合いを、定量的・定性的に把握することができるのだろうか。また、スコープ3が独立したKPIを設定することも考えられるのだろうか。
 
 ②に進みます。「リスクマネー供給」で、こうしたトランジションを進めていく際に、先ほど10ページで御説明した囚人のジレンマのような状況を回避するために、金融面としてどのよう工夫が必要となるか。
 
 ここでは、例示で、協調的なコミットメントを記載させていただいています。それから、重要な長期資金の供給主体であるアセットオーナーの役割。コミットメントやブレンデッドファイナンスも記載をさせていただいています。これらも含めて、どのような点が重要か。
 
 最後に、12ページになります。さらに申し上げますと、金融システム全体についての影響も、こうした金融機関の行動というものは、含意があり得るかと思います。
 
 足元での排出ということに非常に効果を出し得る事業に投資が集中するとかもあるかもしれませんし、逆に特定の産業から一気にダイベストが仮に起これば、金融システムの安定性にも影響を及ぼす可能性もあるかもしれないということで、そのためには、それぞれの金融機関において、最終的には、脱炭素の実現に資する技術とか、産業動向を的確に、また理解をし、お客様とのエンゲージメントを通じて技術の実装とか成長の実現に資する事業の目利きを高めていくことが、一般的には重要かと考えられます。
 
 具体的に、先ほどの係数や使い方も含めて、どのような取組みが求められるか。それを個別に金融機関の方と対話をしていく場面に、対話の論点またはやり方で、どういう点が重要となるかを御議論いただければありがたいかと思います。
 
 残り時間が短くなってしまっておりますので、よろしければ、今日御意見いただけなかった部分は次回以降の会議でもぜひ御議論いただければと思っております。
 
【根本座長】  ありがとうございます。
 
 そうですね、大変重要なことなので、もしお時間がなければ、次回以降ということになるのですけれども、今のテーマにつきまして、皆様の御意見をいただければと思います。
 
 藤井さん、どうぞ。
 
【藤井メンバー】  藤井です。ありがとうございます。
 
 いただいた今日の会議のテーマ、表題は、金融機関のスコープ3をめぐる課題となっているのですが、御説明いただいた内容やその中の論点には、複数の論点が混ざっていると思います。例えば絶対量ベースか強度ベースかという目標の立て方、9ページにあるトランジションにおける構造的な課題、あるいは、11ページから12ページにわたる課題の論点などです。これらは一応一連の論点として連続はしているのですけれども、これも論点が広すぎて一遍に議論するとごっちゃになってしまうと思いました。
 
 また、個別の金融機関としてのミクロの対応としての合成の誤謬なり、「囚人のジレンマ」という御説明がありましたが、マクロの視点も整理する必要があるというのが、コメントであります。
 
 その上で、金融機関の取組みというこの検討会の最終的なアウトプットを考えた場合に、やや現実的に思ったコメントとして、幾つかのティア分けを考えたほうがいいように思っています。例えば、銀行で言えばメガバンクのようなところは、リサーチ力も豊富、かつ期待されますし、シンジケートローンを組成する立場から、協働エンゲージメントをリードするといったことも考えられるでしょうし、PCAFやGFANZといった国際的な議論でも期待するところは大きいと思います。次に、大きめの地域金融機関でいえば、先ほどのコメントにリンクするのですが、地域経済をどう活性化していくかといった役割期待は大きいですし、各地域、各県における自治体との連携も期待されます。
 
 一方で、もっと小さい、中小企業をお取引先にしている金融機関であれば、絶対量だ、強度だといったような議論よりも、どうしたら取組みを進めていただけるかといった論点ではないかと。例えば、こうした3つぐらいのティアによって、金融機関の期待される役割には違いがあると思います。結果として、11、12ページにあった目利き力でありますとか、エンゲージメント能力、あるいはどういう人材を育成していくかといった点も、違いが出てくるのではないかと思います。
 
 その上で、この幾つか分けたティアごとのテーマにおいて、官民が連携して行う分野としては何があるのか。例えば、周知をしていくセミナー等でしょうか。次に、全銀協さんだったり、地銀協さん、信金協会さんといった民間業界側がやっていくこと、さらに、個別金融機関が行う事柄は何か。あえて言えば、さらに、そこに官が期待するところは何か。こういう、ティアと検討課題の組合せで、最終的な検討会でのアウトプットを整理をするのかな、というのを、話をお聞きしていながら思いましたので、コメントとしてさせていただきます。以上です。ありがとうございました。
 
【根本座長】  どうもコメント、ありがとうございます。
 
 高村様、お願いいたします。
 
【高村メンバー】  すいません、高村をお呼びですか。
 
【根本座長】  はい、高村様、手を挙げていらっしゃるのですけれども。
 
【高村メンバー】  申し訳ありません。先に手を挙げていただいている方もいらっしゃるかと。すみません、私、先に退席をするので、御配慮いただいたのだと思います。ありがとうございます。
 
 今、藤井委員でしょうか、おっしゃった御発言と、ほぼ同じ趣旨のことを申し上げるつもりでおりました。
 
 今回、ファイナンスドエミッションを切り口に、課題の構造的な課題等々ということで整理をしていただいているのですが、複数の関連する問題が一緒に議論されている感じを持っております。
 
 これも、藤井委員でしょうか、先ほど御発言あった、各行、企業レベルのミクロな課題とマクロの課題、例えばパスウェイの在り方1つをとっても、マクロにはもちろんカーボンニュートラルに向けてのあり得るべきパスウェイがあると思うわけですけれども、同時にそれを各行、企業に対してどういうパスウェイか。これは、むしろ金融機関が今本当に苦労されているところだと理解していまして、もう少しファイナンスドエミッションについて、関係省庁で議論する場を設けられるということですので、そちらでも併せて、理論的にあるいは実務的にも、もう少し整理をしていただけるといいのではないかというのが、まず1つ目のコメントです。
 
 ファイナンスドエミッションについて、2つ目です。もちろんファイナンスドエミッションの、非常に重要な、私が機能だと思いますのは、金融機関そのものが事業において、どのように、ここでいうとCO、気候変動だと思いますけれども、インパクトを与えているのか。あるいは、カーボンニュートラルに対してどのように貢献しているのかを、自ら分析をして認識をしていく指標として役に立つ形で、しかもしっかり説明責任を果たせる開示の在り方という観点から、1つは掘り下げていただきたいと思っています。
 
 ぜひ、これは関係省庁で立ち上げられるところで議論される内容かもしれませんが、方法論を含めた検討を、1つは実務的にも掘り下げていただきたい要望を持っております。
 
 それから、最後であります。むしろ暴論かもしれませんけれども、削減貢献量についてのスライドを御紹介いただいておりますが、やはり削減貢献量について開示することの重要性は理解をし、企業にとって、それが、生産する製品サービスが、どういう形でサステナビリティ課題に貢献するかを示す指標として重要だと思うのです。今いただいている資料ですと、実際の排出量と相殺をする関係性を示唆するものになっていたように思っていまして。これは、開示の文脈でも、御存じのとおり、先ほどの開示の趣旨から言っても、これは分けて報告することが基本的な考え方だと思っております。
 
 そういう意味で、ファイナンスドエミッションが持つ意味合い、役割を考えたときに、国際的な議論とこの点が整合するのかどうかについては、かなり慎重に議論をする必要があるのではないかと思います。カーボンクレジットなどのところでも、先般のCOP27での1つの大きな争点でもございましたので、この点について、3点目に御指摘したいと思います。以上です。
 
【根本座長】  ありがとうございます。3点目の御意見は……。
 
【西田サステナブルファイナンス室長】  そうですね、アボイデッドエミッションのところは時間の関係で飛ばしてしまったのですが、資料の一番最後のページに関連資料を付けさせていただいておりました。これも、金融機関や企業の方から、近年もそうですし、以前からも御指摘があった論点に係るものだと思います。
 
 高村先生が御指摘のように、このアボイデッドエミッション基本的には「なかりせば」ということと理解しています。もともとある製品について、このまま「なかりせば」で生産等が行われた場合と比較して、新たな製品が開発・販売された場合に、これがなかった場合と比較して仮定計算するものと理解をしておりますので、実態の排出量とネットアウトしてよいのか点は相当御指摘もあると理解をしています。他方でこちらにあるような効果そのものは取り上げることの意義も指摘されており、課題も含めて併せて御意見をいただければということで議論の材料として記載させて頂いたものです。
 
【根本座長】  ありがとうございました。
 
 村上様、お願いいたします。
 
【村上メンバー】  ありがとうございます。
 
恐らく似ている意見だと思います。このスコープ3についてといういろいろな論点をお出しいただいたわけですけれども、結局、どういうメッセージかが、ちょっと伝わりにくくなってしまっているのではないかと思いました。
 
 私としては、スコープ3を計算するということは非常に難しい労力を伴うことではありつつも、やはり金融機関にとっては、それをやることによって分かることも非常に多い。実は、行内のいろいろなシステムといいますか、別の管理の仕方が、もっとこうした方がよかったのではないかという、別の発見とかもあったりするわけでありまして、非常にやってみるべきことではないかと思います。
 
 そのときに、課題ばかりがたくさん出てきてしまっていて、なかなか足を踏み出しにくくなるところが多いのかというのが、これから、もう少し、何をこれでされたいか、もうちょっとにじんで欲しいと感じました。
 
 例えば、ゲーム理論の一番望ましくないパターンにという例もございましたが、新規事業が排出ゼロのものであれば、そこがこういう望ましくないことにならないように、金融のストラクチャリングとかで商品を工夫していかれるのではないかと、現実には思うのです。ゼロの事業であれば、当然魅力的などと考えるのであればですけれども。なので、その辺りが課題乱立な感じがして、本来やろうとされていることとは違ったのではないかと感じました。
 
 あと、パスウェイについても、全体で考えると炭素予算(カーボンバジェット)を超過してしまっては水の泡ですので、2030年までに、かなりスピードをもって下げていく、これが上位にあるはずだと、そういったところを理想というメッセージも出していただきたいと思いました。以上です。
 
【根本座長】  ありがとうございます。
 
 天田様、お願いいたします。
 
【天田メンバー】  天田です。
 
 本日の資料について、実務をやっているのでよく分かるのですが、課題が本当によく整理されていると思っています。我々も同じ課題を持っていますので、同様の意見です。ファイナンスドエミッションについて言うと、資料に記載のとおり、排出量の変動以外にも、融資シェアであるとか、お客様のデット・エクイティレシオの変動など、テクニカルな要素で結構動いてしまいます。ファイナンスドエミッションの管理自体を否定するものではないのですが、これだけに着目すると正しくない側面もあると思います。目指しているものが、世の中の脱炭素化の実現、これにファイナンス支援を行うことですので、その本質を見失うような管理は適切ではないと思っています。ポイントは、ファイナンスドエミッションの増減について、しっかりと対外的に十分説明できる形にすることだと思っています。
 
 スコープ4とかアボイドエミッションについては、先ほど高村さんの言われたことと、同様の意見を持っています。
 
 トランジションの管理については、記載頂いているとおり、トランジションの確からしさを確認することが重要ですが、対外的に説明できるということも、非常に重要だと思っています。トランジションである以上、どこかの時点で必ず削減しなければいけないのですが、この排出量の削減は、最終的には、将来的に削減が実現したところでしか分からないので、期中の管理が重要です。トランジションの進捗を確認できる管理手法については、お客様と金融機関が同じ目線を持って見られるものがあると、有効ではないかと思っています。
 
 最後に、「目利き力」です。技術に対する目利き力ということであると、これは銀行員にとっては容易ではないと考えています。この目利き力が、ストラクチャーに対する目利き力、つまり、政府の補助金制度などへの理解を深めて、キャッシュフロー分析に活かしていくというような目利き力であれば、それは向上させるべきだと思っています。産業界ですらまだ先が読めない技術に対して、銀行員が目利き力を磨くのは、非常に難しいと考えており、「目利き力」という言葉の使い方はご検討頂いたほうがよいと思いました。
 
 私のコメントは以上です。
 
【根本座長】  どうもありがとうございました。
 
 大変いろいろと貴重なお話を伺っている途中ですけれども、時間になってしまいましたので、また、次回にも、機会をいただいて、意見を伺えればと思います。今日、伺われなかった方、申し訳ございません。
 
 次回は、2月7日、完全オンラインでの開催となります。銀行のネットゼロ表明に関して、ヒアリングを行うこととしたいと思います。
 
 本日も、大変貴重な御意見、建設的な御議論ありがとうございました。
 
 事務局の方から、もし連絡がありましたら……。
 
【西田サステナブルファイナンス室長】  有難うございます。特にございません。
 
【根本座長】  特にないですか。
 
 では、以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。どうも、皆さん、ありがとうございました。
 
―― 了 ――

 
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総合政策課サステナブルファイナンス推進室

03-3506-6000(代表)(内線 3515、2918、2770)

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