「脱炭素等に向けた金融機関等の取組みに関する検討会」(第6回)議事録

1. 日時: 令和5年4月14日(金曜日)10時00分~12時00分

【根本座長】  では、ただいまより、脱炭素等に向けた金融機関等の取組みに関する検討会、第6回の会合を開催いたします。
 
 早稲田大学の根本でございます。皆様、御多忙のところを御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
 
 初めに、注意事項ですが、御発言されない間は必ずミュートにしてください。御発言される際にミュートを解除し、御発言が終わられましたら再びミュート設定にしていただくようにお願いいたします。
 
 本日は、まず事務局及びEYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社の白川様から御説明をいただき、質疑、意見交換をさせていただく予定です。その後、残りました時間で報告書に係る討議を行います。
 
 なお、次回の検討会におきましても、報告書に係る討議を引き続き行う予定です。
 
 それでは、早速ではございますが、事務局から御説明をお願いいたします。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  それでは、パワーポイントの資料に沿ってご説明させていただきます。
 
 今回の事務局資料には4つのテーマがありますけれども、これらは、いずれも、宿題事項といいますか、これまで御議論いただいた中で、情報として補足出来ると思われる点を記載したものです。このため、4つはばらばらのテーマになりますがご容赦いただければと思います。
 
 1点目はパスウェイについてです。3ページ目、「シナリオ分析」と「パスウェイ」は異なりますということで、「パスウェイ」は、目標に対して、その目標を達成するためにいつ何をすべきか、典型的には1.5度を達成するためにいつ何をすべきかを考えていくものであるのに対して、「シナリオ分析」というのは、2度目標などの気候変動シナリオを用いて、自社のリスク・機会を評価するものであるということではないかと考えています。
 
 パスウェイの具体的な例として、4ページ以降にございますが、産業分野で見ますと、製鉄、化学、セメント、いわゆる多排出産業のそれぞれについてパスウェイがIEA等で設定されているわけですけが、必ずしも全ての業界についてもこれが資産されているというものではなく、様々であるということ。それから、世界全体の業界について試算しているということが一般的だと思いますので、特定の産業の世界全体の排出量について、例えば1.5度とか2度とか、これを達成するためにはどれぐらいの経路で排出を下げていく必要があるのか試算しているものです。日本はどれぐらい削減しなければいけないか、アメリカはどれぐらい削減しなければいけないか、といいった国・地域単位のパスウェイも同じように試算されていますが、これが掛け算になりまして、日本のある産業またはアメリカの別の産業となりますと、試算が重なってくることになりますので、なかなか算定が難しいのかなと思われます。6ページ目は、IEAのモデルをベースにしまして、端的に分かりやすい形で、それぞれの企業がこのパスウェイにおおむね沿っているかどうかを一定のやり方で試算しているものです。SBTiは、リニアな形で、現在の排出量から2050年カーボンニュートラルや1.5度で必要となる世界全体の目標に対して、並行で各産業とか地域の削減が進んでいくような前提に立って、これに当てはまっているかどうかというを個々の企業別にも計算・提示する。TPIは、SBTiと同様のモデルで分析しまして、同じような業種の企業を比べて見えやすい形で情報提供するように工夫している。
 
 また、GFANZによる既存のパスウェイの限界と金融機関への留意事項を記載しています。本検討会第2回にGFANZからお話あったと思いますけれども、必ずしも全ての情報が入手可能ではないという前提、それから、パスウェイによってカバーするスコープが異なること、場合によっては、産業や分野ごとに見るとすごく大きくこの違いというものが出てくることもありますが、個々の企業を見る場合には、こうした具体的な違いというものに留意しながらやっていく必要があるのではないかと。
 
 2点目、大きくまたテーマが異なりますけれども、地域企業について、本検討会でも議論をいただきました。補足をさせていただくために、事務局で地域の中小企業を訪問させていただいて、幾つかお声を伺いましたので、御紹介させていただきます。特定の産業の方にお話を伺った実際のお声の一例ということですのでご理解を頂ければと思います。
 
 まず、ご訪問した中小企業の方からは、省エネというのは、コスト削減につながるので、ぜひやりたいし、やっているというお話でありました。高効率のエネルギー設備を入れること自体は費用がかかりますけれども、ランニングのコストは下がってくるということですし、CO2も下がるしということで、積極的にやっていると。ですけれども、その次のエネルギー転換となると、かなりハードルが高いのではないかということでした。
 
 例えば3つ目のところで、バイオマスですが、ずっと昔は石炭を使っていて、石油に変えて、ガスに変えてというところまで来たので、さらにバイオマスの設備導入を図ったそうなのですけれども、足元で、バイオ原料の値段が非常に上がっているということで、設備は入れたけれどもランニングのコストが見合わず設備が使えていない状況にあるというお話がありました。
 
 また、全てのエネルギー量を工場施設で使い切るわけではないので、余ったものを別な形で使えるように、コジェネレーションの設備を検討したのだけれども、用途が単体の企業だと必ずしも多くないということで、例えば地域全体で余ったエネルギーを面的に使っていく取組みがあれば別だけれども、単体の企業だとロットが小さ過ぎて有効活用が仕切れないというお話もありました。
 
 あと温室効果ガス排出量のデータについて、スコープ3の排出量の開示なども進む中で、取引先企業さんからのアンケートがこの1年で急増しているというお話がありました。2年前であればあまり聞かなかったが、1年ほど前から急速に増えて、ただ内容はまだ区々で、体制面等が尋ねられる場合もあれば、具体的な排出の計数が尋ねられる場合もある。また数字についても、回答する企業さんのお任せで適宜計算してくださいというものもあれば、かなり具体的に、こういう順番・ステップで計算してくださいと指定が来る場合もあり、具体的に指定があるほうがやりやすい面もあるけれども、その分、計算も大変という面もあって、いずれにしても手探りでやっているというお話でした。
 
 計数については基本的には、個々の商品ごとに排出量を尋ねられますので、工場全体で稼働しているうち、ある商品に対して使っているエネルギー量はどうだということを割り当てて計算しなければいけないが、自動的に把握しているものではないので、製品の出荷量とか、製造量とか、何らかの割り当てで大まかに計算することとしているが、この辺りもどのように計算するか、創意工夫が非常に大変だというお話がありました。
 
 それから12ページのところですけれども、政府・行政への期待ということで、一つは補助事業について、補助金等は非常に有用で大きな効果があると、ただ、脱炭素関連の補助金というのは設備に使うようなものが多く、この設備には、どのような設備を入れるかは様々な経営戦略上の判断があり、また実際に導入する場合には工場に適した形で設備を設計してもらう必要がある場合なども多く、この場合には例えばかなり時間がかかるので、例えば設備発注から納入まで3月末までに実装しなければいけないという要件が入っている場合には、なかなかデリバリーが間に合わないので苦労するというお話がありました。また、どうしても申請の期間が立て込むということで、金融機関や自治体の方にも、補助金の要件が全体として固まる前に、こういうものが出そうだという段階から情報提供をいただけると、そして実際にいただけている場合もあるそうなんですけれども、すごくありがたいというお話を頂きました。
 
 それから温室効果ガスの計測については、先ほどの点とも重なりますが、業界団体のほうである程度指針が出つつあるが、まだどうしても全体として試行錯誤中であるので、企業単位でいろいろ試行錯誤する必要があるが、中々自社で計算した数字に十分自信が持てない、基準でなくとも大まかな大体の目線感等があれば安心出来るというお話がありました。
 
 3点目は、Avoided Emissionsについてです。前々回御議論をいただいて、時間が足りなくなってしまったと思いますが、その後、世界経済人会議で削減貢献量についての指針が出ましたので、併せて御案内させていただければと思っています。
 
 削減貢献量については、新しい技術によって、他の企業も含む排出量削減への貢献等を把握する観点から重要性が指摘されています。元々、経団連さんがガイドブックを発行されていまして、ここで例示を引かせて頂いておりますが、新たな技術開発で省エネ・低炭素を実現する場合に、自社の排出量だけではなくて、この技術を使うことで他社の排出量の削減に貢献できる。この部分を見てもらえないかということで御提言をされていたということです。
 
 15ページの世界経済人会議は、今年の3月ですけれども、「削減貢献量」に関する指針というものを出しております。大まかなコンセプトは下の図のところにありますけれども、ある製品とかサービスというものに着目した際に、黒の実線のところが過去の実績ですけれども、このまま新たな太陽光パネルが開発・利用されなかった場合にはこれぐらい排出したであろうというものが青の点線のところになっていまして、対して、この新しい技術が開発され、実際に売れて利用をされた場合には、青とオレンジ線の間の分だけ排出量が下がってくる。より時間が経過するに従って販売量が増えてくるので、その削減されたであろう部分が増えてくるということですけれども、この斜線になっている部分を足し合わせたものが概念として削減貢献量ということです。
 
 意義としては、企業が新たな製品、サービス、技術により、自社や取引先にとどまらず、他社やその取引先にも削減部分で貢献しているということについて説明・開示できる指針がないので、他社の削減貢献は、世界全体の脱炭素には必要不可欠であるので、この「削減貢献量」の枠組みを育てることで、企業が開発の目標指標として、経営上の意思決定指標として、それからステークホルダーとの対話・開示において、活用していくことが出来るのではないかと、提案しています。同時にその算定には、どの製品・サービスやいつ時点の排出量を比べるかなど、その比較に当たっての技術的課題があって、その適格性については丁寧な判断が必要になるとしています。また、投資家の誤認を防ぐためにも、削減貢献量は自社やその取引先の排出量(いわゆるスコープ1・2・3の排出量)とは異なるものとして分けて開示することが必要になるのではないかと。また、適格性のためには、削減貢献量を測定する企業自身の気候変動の戦略・ネットゼロへの目標と、1.5度が実現されたカーボンニュートラルの世界でもこの技術が通用するものであること等が述べられています。
 
 4点目、最後ですが、ESG投信の全体残高ということで、直接これまで議論はなかったかと思いますが、カーボンニュートラルに向けた投資規模というものが非常に大きい中で、投資の長期的な持続的な集積性を確保していくためにも、個人を含めた多様な投資家の市場参加の重要性が指摘されていますが、足元の日本のマーケットESG投信で見ると、欧州、アメリカの残高と比較すると、日本はまだ少ないことが見てとれます。
 
 その内容を見ていただくと、アクティブとパッシブで、色が濃いほうがアクティブなんですけれども、アクティブ投信の割合が日本ではちょっと突出して高いということで、これはESGに限らないことかもしれませんが、そういう傾向が見えておりますので、御紹介です。
 
 事務局からは以上ですが、続けてEYさんに委託調査をお願いしておりますので、内容の御報告をしていただければと思います。
 
【根本座長】  説明ありがとうございました。
 
 では続きまして、白川様、よろしくお願いいたします。
 
【白川様】  EYストラテジー・アンド・コンサルティングの白川と申します。このたび私どもで、金融庁様より、地域における中小企業の気候変動対応と金融機関における支援に関する実態把握、このような調査を承りまして、このところから簡単に調査内容、結果等を10分程度で御報告いたしたいと思います。
 
 早速でございますが、1枚お開きいただきまして、1ページ目、目的、調査内容・方法等でございますが、地域金融機関さんが中小企業に対してどのぐらい気候変動の対応の支援をできているかどうかということを調査していきたいというところでございまして、具体的には2つ。まず1つ目は、地域金融機関による支援の事例の調査。そして2つ目、では実際に中堅・中小企業様がどのように気候変動の対応ができているかというところ、またその中において地域金融機関様等による支援をどう活用できているか、このような観点から調べてまいりました。
 
 それぞれ左側、金融機関さんにつきましては、まず文献調査のところからある程度こういった先進的な事例をやっている方を特定した上で、18程度ヒアリングをしていまして、本日はその中から3の事例を御紹介したいと思います。
 
 右側、中小企業様向けアンケート調査としましては、多排出産業の企業様2000社ほどお出しした中から500社強からいただきました御回答を基に、こちら、本日その御報告、発見・示唆といったところを皆様にお話ししたいと存じます。
 
 次、2ページ目でございます。ここから3行、地域金融機関様の事例を御紹介させていただきますが、基本的に何らかのそういったコンサルティング、エンゲージメントとかという形で、比較的一歩踏み込んで企業様への御支援ができている事例というところを3つ述べさせていただきます。
 
 まず、こちらの京都銀行様の事例。こちらは、コンサルティングによる脱炭素支援というところで、分けても、もう京都の大きな上場メーカー様といったところと連携して、そこのサプライヤー様、そういったニーズがあるようなところを特定いたしました上で、そこに対して集中的にアプローチをかける。具体的には、SPC宣言の支援とか、排出量の見える化サービス、そしてさらにその先の実行支援、こういった形での踏み込んだコンサルティングといったところを行われているという事例がございました。
 
 次、3ページ目、福岡銀行様というところでございますが、こちらは、自社の子会社様にこういったスコアリングモデルのサービスを提供するようなところ、九大さんとかとも連携してこういったものを開発しているところでございまして、実際にもうグループ全体で600以上のそういった企業様から、このスコアリングをしていきたいということで、ここの申込みを受けているというところでございまして、企業様とのそういった関係性を深めていくことができたり、またその結果を活用して実際に今度は金融サービスというところで、ローンの提供のときにもそれを判断に使っていくような形でうまく流していく。最終的には、これをさらに外販していくとか、これ自体を収益化していくというところまでどんどん進めていきたいという先の展開も見据えられているということでございます。
 
 次、4ページ目でございます。こちら、十六銀行様のところは、SBT認定取得の支援といったところを新しく始めておられまして、現在まで100以上の企業様への御支援のところでやっていまして、日本の中小企業様のお取組みのうちの20%をこちらで支援できているというところで、非常に先進的にといいますか、この地域でそういった企業様にそれを推進することに御貢献されているというところでございます。また、こちら、本部の専任チームといった方をちゃんと育成して、そこの方が現場営業店の方を底上げしていくというところもございますし、並行してそういった外部の環境コンサルティング会社の方といったところへのレビュー依頼等を通じて連携して、うまくその外部の知見とかも取り入れながら御支援に当たっているというものでございました。
 
 次、5ページ目、少し見取図のような形でお示ししているのですけれども、今御紹介した3つの事例は、コンサルティング・エンゲージメント・伴走支援といったところで、例えば、ただツールを提供していますとかではなく、比較的深く入り込めているような方々の事例であるというところでございますけれども、例えば縦横に整理させていただいていますとおり、比較的その単体の支援というところから横方向、面的な支援までうまくやっているという、そこの広がりの違いも見られましたし、縦は、これは一概に上下というわけではなく、もう一緒に例えば事業会社を設立しているところから、先ほどのような伴走、またファイナンス商品自身の提供から、間接的に金融機関様自身がというよりは、マッチングとか外部のサービスの御紹介ということを通じて、うまく中小企業様のニーズを酌んでいる、こういった形で様々な違いのある取組みが見られたと存じております。
 
 6ページ目、御参考としては、その成功要因といたしまして、先ほども出ていましたような地域の産業とか大企業さんと連携したサプライチェーンの把握。また、右側にございますとおり、例えば大学とか、外部の会社さんとか、こういったところと様々に連携する、必要に応じてインハウス主義だけでなく連携していくということであったり、右下にあるように、そういった外部の方々の知見とかをうまく移入していくような形も含めて、金融機関自身が人材をどう育成していくかというところがうまくいっている例のほうがより成功事例になるといった傾向が見てとれたかなと拝察してございます。
 
 前半、ここまでが金融機関様側に対する調査のところでございまして、後半では、中小企業さんに聞いていったところから、少しファインディングを述べてまいりたく存じます。
 
 7ページ目、こういった排出量削減とかの要請の高まり、これは比較的、半分を高いと見るかではありますけれども、半分ぐらいの中小企業さんが認識されている。一方、対応できているかできていないかというと、8割以上の方が「できていないだろう」というところで、ここにギャップが生じているということでございます。
 
 もう少し深く見てまいりますと、そもそも課題を認知していないというところの中小企業様があられるほか、資金・人材その他のそういった経営資源とか、結局、気候変動というよりは、自分の本業をちゃんとうまくするとか、維持していくことでもう精いっぱいですというお声がございました。
 
 一方、取り組むところに移っていったときには情報不足というところで、こういったところでの情報提供機能への期待というものが聞かれたと見ております。
 
 また、外的な圧力というところでいうと、全体の企業様の中で感じているのは20%ぐらいで、かつ取引先様からの圧力というところがまさに中心的なところとなっておりました。
 
 次、8ページ目でございます。では実際にどれだけ地域金融機関様がこのような中小企業支援のシーンというところで活用されているかというところで申しますと、500社ぐらいの調査に対して、相談したことがある企業さんが8%で、実際に支援を活用したのが5%というところに、あえて申すとすればとどまっているというところで、この紙面には書いていないんですが、翻って支援を金融機関さんから受けたいという回答はもう30%以上の中小企業さんが回答していたこともあって、潜在的にそこにニーズというか、使いたいんだけれども使えていないという方々がいて、なのでもう瞬時にその差の20%ぐらいというのは、提供していける先がありますし、そもそもこの支援を受けたいという30%というところ自体の底上げも必要なのではないかと思っております。
 
 あと、顕著に感じたのが、実際にそういう支援があることとかの案内をいただくときに、結局ほとんどが、85%とかが営業担当の方からの紹介というところでございまして、なのでそれ以外のところのチャネルの複線化とかができていないということと、翻って見ていきますと、営業担当の方もかなりその方個人個人の意欲とか能力とかによって、偶然いい担当がついている企業様であれば支援を受けられるけれども、そうでないところはそもそも情報すら来ないみたいなことになっているというところでございました。
 
 以下、どういった支援を使っているところが多いかというところなどは割愛させていただきます。情報提供をしてほしいとか、事例の紹介をしてほしいといった声が多いというのは、先ほど述べたとおりでございます。
 
 9ページ目です。実際、金融機関さん以外のところ、行政とか商工会さんとか、いろいろなところからの御案内を全体で見たときに、企業さんがどんな方からの御案内でもいいのでそもそも案内を受けたことがありますかということでいうと、26%ということで、そもそも使えるそういった支援策の浸透ができていないというところが非常に大きいということが挙げられるかと思っております。
 
 先ほど申したとおり、結局その圧力を受ける先が取引先なので、裏返しで、そのように言われたときに、実際に今のところだと取引先に依存してというか、そこに御相談しているというケースが非常に多いというところでございます。また、工夫している企業様によっては、受けたい支援内容によって適切に外部のリソースを使えている方は使えているんだなというところで、こういった使い分けとかも含めて、そもそも何があって、またどういったところに、誰に何を頼んだらいいかみたいな、そういう工夫も先進事例とかを通じて浸透していくことが重要なのではないかと思っております。
 
 10ページ目、ここはもう基本的に、大きい企業のほうほど取り組めている、小さい企業ほどできていないという傾向がありましたり、産業の中では、自動車産業が多排出産業の中でも、自動車というところがアウェアであったり、取り組めているというところが顕著であったと思っております。
 
 最後は結論的なところでございますが、11ページ目、整理のこの中身は割愛させていただきますが、そもそもの対応の必要性とか、課題の認識というところから、実際に、ではそれに取り組んでいこうといったところに、一連のこのフローのそれぞれのところでボトルネックというのがまだ各所に見られたと思っております。
 
 最後、12ページ目でございますけれども、4つ挙げさせていただくとすると、一つ、中小企業様にとって、お金を投じてこれをやっていくという余裕といったところで実現にならないという中で、補助金とかが重要というのは、先ほど事務局説明にもあったとおりかと思っております。一方で、補助金の申請期間の短さ、申請の難度といったところからうまく活用されてないということがあるというのが一つ。また、情報のところは、先ほども申しましたとおり、他社の事例の紹介とか、産業別に、もうちょっと自分に身近なところで、総論などはたくさんの資料だけ渡されても分からないみたいなところで、自分がアプライできるものをちゃんと分かっていきたいところでありますし、いろいろなそういった支援メニューなどをうまく学んでいくための情報提供というのが必要というところ。3点目は、先ほど申したとおりなのですけれども、営業担当のそういったばらつきに依存していってしまうようなところをぜひ、金融機関の方々のこのところを改善していくという意味で言いますと、例えば先ほどもあったような本部に少し集約的にそういった専門チームをつくっていって、そのような方が例えば営業店の方と同行して全体の底上げを図ったりしていくということとか、外部の活用というところ、これは4番にありますとおりで、必ずしもインハウスでやっていくだけではなくて、適宜必要なところをちゃんと連携して支援していく。こういったところが全体的に地域金融機関様の今後の支援能力を上げていくということで資するのではないかと考えた次第でございます。
 
 以上で、後ろはアンケート結果とかを見ていただけるリファレンスですので、割愛いたしまして、発表は以上とさせていただきます。ありがとうございました。
 
【根本座長】  どうもありがとうございました。
 
 それでは、議論に移りたいと思います。今ございました事務局及びEY様からのプレゼンテーションに対して、御意見、御質問がおありになる方はいらっしゃいますでしょうか。おありになる方は名札を立てていただくか、オンラインの方はのWebexの挙手機能を御活用いただければと思います。また、御質問かコメントかを明示していただけるとより分かりやすいので、よろしくお願いいたします。
 
 佐藤さん、どうぞお願いします。
 
【佐藤メンバー】  パスウェイの点についての確認というか、もし補足の御説明をいただければと思いまして、質問をさせていただきます。
 
 確かに、パスウェイとシナリオというのは、非常に専門的な概念なので難しいと思っております。特に、こちらの資料でいう6ページ辺りの、各種イニシアチブで使われているというのは、一種のベンチマークといいますか、指標というか、そういう感じかなと思う反面、パスウェイの場合は、ある面で本質的な要素があると思っています。
 
 ただ、こちらの説明ですと、温度目標と排出量という関係が中心の説明だと思うんですけれども、私の理解ですと、経済学者の考え方では、いわゆる統合評価モデルと言われるような将来の適応の費用というか損失ですか、そちらと、それをコントロールするような投資というか、費用便益分析モデル、損失と必要な対策・コストのモデルがベースにあって、あるいは不確実性の要素があって、そこにさらにマクロ的な経済要素もあったり、もちろん排出量などがあったりと、総合的な分析モデルがあって、それをさらに実用的にしていくものがパスウェイだったり、トラジェクトリだと認識していたもので、念のため、一応そういう理解でよろしいかという点を確認させていただきたいと思います。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  事務局です。ここの資料にも記載がありますように、私の理解ですと、今の佐藤さんのお話で頂いたとおり、1.5度のためにはこの排出量でなければいけないという、パスウェイの方がより、このバックキャスティング、地球規模の温度や排出量の目標実現のためにはどのような主体がいつまでにどの程度排出量を減らす又は排出を行うこととなるのかという算定を含むもので、シナリオ分析については、そういう場合もあるものの、こういう政策を進めた場合に排出量や様々な主体の行動がどうなるかというシナリオを置いて、例えば金融面では経済指標や与信リスクがどうなるかを推計していくというものと理解しています。
 
【根本座長】  ほかに御質問等ございますか。天田さん、お願いいたします。
 
【天田メンバー】  三菱UFJ銀行の天田でございます。御説明ありがとうございます。事務局資料の右下の8ページについてコメントです。シナリオに基づくセクター別の中間目標設定を我々もしていますので、パスウェイの限界や地理的な粒度、これについて少し事例を御紹介したいと思います。
 
 今多くの金融機関がファイナンスド・エミッションの中間目標を設定しており、セクター別の排出量の削減、これを示す目標を設定しております。4ページに示されているIEAのネットゼロシナリオというものを多くの金融機関が一般的に利用しているところですが、これが外部のステークホルダーにとっても非常に分かりやすく、期待されているシナリオとなっています。
 
 一方で、このIEAのネットゼロシナリオの地理的な粒度という点では、グローバルなシナリオになりますので、セクターがグローバルに分散の効いていないポートフォリオである場合には使いづらく、参照できないケースもあります。その場合には、設定した目標について、1.5度整合というのを対外的に証明するのが非常に難しくなるということがあります。
 
 実際、我々は今月頭に不動産と鉄鋼セクターのGHG排出量削減の中間目標を設定し、公表しましたが、IEAのシナリオとの整合を見ることができた、電力や石油ガスセクターとは異なり、この2つのセクターについてはIEAシナリオとの整合性を見ることができませんでした。不動産については、このIEAとはまた別にCRREMという地域シナリオがあり、それを利用して整合性を見ることができましたが、鉄鋼は、我々のポートフォリオに占める日本の割合が大きく、それに合うシナリオというのを見つけることができず、結果として1.5℃シナリオとの整合を示すことが難しい、ということが起こっています。
 
 説明は以上となります。
 
【根本座長】  ありがとうございました。
 
 では、藤井様、お願いいたします。
 
【藤井メンバー】  ありがとうございます。藤井です。せっかくなのでコメントさせていただきます。
 
 事務局資料につきましては、リスクマネーの供給に向けた課題という記載がありまして、これは前回私が申し上げたエクイティをどう備えるかというコメントを酌み取っていただいたのだとありがたく思っていますけれども、一方でリスクマネーが、イコールESG投信かというのと、リスクマネーの1つではありますが、すべてではないと思います。
 
 数字を示す意味でESG投信を採り上げられたのは非常に理解できますけれども、グローバル全体で言うと、いわゆるNon-Bank Financial Intermediation(NBFI)のウエートが高まっていて、その中にはもちろん投資信託もありますが、PEファンドやベンチャーファンドなどのようなプライベートなファンドもあるので、こうしたほかのものも含めた、全体的なグローバルなマネーの分布の中で、ESGテーマに特化したファンドやリスクマネーとして、例えばESG投信であれば日本ではこういう状況になっている、といった見せ方も必要なのかなと思いましたので、この点はコメントとして申し上げます。
 
 それから、EYさんのほうの分析も非常によく分かりましたけれども、これは前に地域金融機関の議論を行った際に、地域経済と密接に連携している大手の地域金融機関さんから、主に中小企業と取引している信金さんといったように、幅があるとコメントしました。いただいたご報告ですと5ページで調査対象をまとめておられて、それなりに広くカバーされておられるように思いますけれども、一方で2ページから4ページで採り上げている事例はより進んだ大手地域金融機関ばかりなので、これが全部だと思われてしまうと、商工会議所さんなどからいただいたコメントとはちょっとずれるなと思いました。そういう意味で御質問になるのですが、京都銀行さん、福岡銀行さん、十六銀行さんといったところの取組みがより進んでおられることは理解した一方で、ほかの銀行さんもそのレベルに匹敵するということだったのか、そこにはばらつきがあったのかということについては、御質問させていただけますでしょうか。
 
 以上です。
 
【髙村総合政策調整官】  私のほうからお答え申し上げます。
 
 実は委託事業費の予算が限られておりまして、地域金融機関を全部やろうと思っていたんですが、ちょっと予算上の制約があって、地方銀行か信用金庫かと選ばなければいけない中で、信用金庫さんでも京都信金さんなどは、この間も出ていましたけれども、かなり精力的なお取組みをされていらっしゃるとは認識しているんですけれども、今回は地方銀行を中心にやらせていただきました。まさにちょっと来年度の予算も続行していきたいと思っていまして、その中では信用金庫さんの取組みというのをやっていければなと思っております。
 
 すみません。以上になります。
 
【藤井メンバー】  ありがとうございます。もちろん日本全国の金融機関を対象とすることはできないですが、我々も、全体の排出量における大企業のウエート、中堅企業のウエート、中小企業のウエートといったような、排出量のウエート毎の優先度や分布といったことは頭に置いて議論する必要があるのかなと思いました。
 
 以上です。
 
【根本座長】  ありがとうございます。
 
 それでは、村上様、お願いいたします。
 
【村上メンバー】  ありがとうございます。私からは、資料1の9ページの下のほうだったかと思うんですけれども、パスウェイを活用する上でのポイントというところについて少しコメントさせていただければと思います。
 
 こちらで書かれていらっしゃるとおり、特に②、完璧でなくても、自分に合うものがぴったりなくても、やっていくということに非常に賛成なんですけれども、本当に、先ほど天田さんもおっしゃったように、自分にぴったり合うものはまずないですという前提から入ってもいいのかなと。自分のポートフォリオを知っているのは自分だけであって、これをどんなに探してもぴったりのものがなくて、なかったらできないということではなくて、そういうものを参考にして、自分できちんと自分のことはやっていくということがすごく大事なのかなということを改めて感じさせられる内容だったかなと思います。セクターのものはあっても日本のものはないとか、それがあったとしても今度は例えば地銀さん、さらに地域を絞っていくと、全く本当に違う産業構造で、変な話ですけれども、GDPの構成要素が全然違う国同士を比べてもしようがないのと同じと言うとちょっと乱暴かも分かりませんが、本当に自分のことは自分でやるのが原則ですということを改めて感じました。大変貴重な資料をありがとうございました。
 
【根本座長】  ありがとうございます。
 
 それでは、高村様、お願いいたします。
 
【高村メンバー】  私はコメントでございます。事務局、それからEYの白川さんからの御報告、いずれも大変重要な情報をいただいて、どうもありがとうございます。
 
 事務局から御説明いただいた資料ですけれども、1月でしたでしょうか、この議論を提起していただいて、本日、パスウェイについても、これはどなたかもおっしゃいましたけれども、シナリオ分析を行っていく際に参照し得る一つの有用な情報であるということだと思いますけれども、しかし同時に、その特性、限界をしっかり理解して使うことが必要だということを御説明いただいたと思います。
 
 先ほど天田さんもおっしゃっておりましたけれども、それぞれパスウェイのスコープも異なる中で、企業によっても金融機関によっても、恐らくその事業展開、日本の企業でも金融機関でもグローバルに展開をされている場合には、恐らく何らかのグローバルのパスウェイを意識せざるを得ないと思いますし、同時に、そうでない場合には、グローバルなパスウェイだけを見ていてもなかなか限界もあるということかと思っております。そういう意味では、本日このパスウェイの整理、それから併せて削減貢献量についても、この2つについて、とりわけ国際的な議論を踏まえてしっかり整理してくださったことはお礼申し上げたいと思います。これは事務局の資料についてです。
 
 2つ目に、EYの白川さんから御紹介いただいたものでありますけれども、こちらも1月でしたでしょうか、事業者団体、商工会議所さんあるいは地域金融から御報告をいただいて議論になった点かと思います。そこでも発言させていただいたかと思いますけれども、今回アンケートを取っていただいて、特に中小企業をに関して言うと、情報と人的資源と資金というのは、一歩進める上での一つの大きな障壁として考えないといけない事項であるのではないかと思います。併せて、今回調査をしていただいて、地域金融への期待の大きさといいましょうか、役割の大きさも明らかになっていると思います。
 
 これについてコメントは2点ございまして、一つは、事業者団体や金融機関の役割と併せて、今回のアンケートで、取引先に相談もし、取引先に意見を聞いている中小企業の行動が見えていると思っております。これは、調査をしていただいた銀行さんのところでも取引先と連携をしたお取組みがあったと思いますし、中部地区の自動車業界などでも、そうした取引先と協力をした、連携をした、そして地域金融と連携をしたお取組みが進んでいると思っていまして、もう一つ重要な、このサプライチェーンマネジメントをしっかりしようとしている取引先との連携というのが一つは重要な点かと思った点でございます。
 
 このEYの白川さんの御報告についてもう一つコメントを申し上げると、スライドの12辺りだと思うんですけれども、この調査から明らかになってきている具体的な対応策、案をお示しいただいているかと思います。いずれも必要な対応策としてあり得ると思いますけれども、地域金融機関だけでも全てできるということではないと思っていまして、書かれておりますけれども、行政や事業者団体あるいは先ほど言いました取引先などと連携して行うことが必要だと思います。幾つかの対応策、例えば補助金へのアクセス、手続の簡素化といった点については、もちろんこの分野の補助金もそうだと思いますけれども、しかしながら、恐らく中小企業の皆さんにとって補助金へのアクセスについては全般的に関わる課題のようにも思います。例えば、これは一例でありますけれども、この中小企業の皆さんの取組みを進めていく、そして地域金融機関がその役割をよりよく果たす上で、ここに掲げられているような対応策について、どこがどのように連携をしてどういう形で進めていくかというところをこれから関係省庁とも協議していただいて、その課題と進め方について御検討いただきたいと思っております。
 
 以上です。
 
【根本座長】  どうも御意見をありがとうございました。
 
 それでは、吉田様、お願いいたします。
 
【吉田メンバー】  吉田でございます。ありがとうございます。報告書も含めて、うまく整理いただいておりまして、ありがとうございます。
 
 私からは1点なんですけれども、パスウェイとか削減貢献量とかの話とも共通する話だと思っているんですけれども、皆様から御指摘があったとおり、何か今一つのパスウェイに依拠して全部を語り切るということは多分難しいだろうと。今、弊社の中でもいろいろ考えているところではあるんですけれども、そのパスウェイをどう使うかとか、あと、銀行としての目標をどう設定するかというのを考えるときに、結局その銀行とか会社がどういう軸でとか、どういう世界観で脱炭素とかトランジションに向かってやるのかというのが物すごく大事になるという御示唆なのかなと受け止めていまして、後での報告書の内容にもちょっと関係するんですけれども、このようにいろいろパスウェイとかがある中で、一つのものに依拠して説明することができないとすると、金融機関に政策としてどういうスタンスを求めるのかというところも皆さんでちょっと認識を合わせたほうがいいのかなと。それは、私なりに言うと、軸とか世界観を金融機関が持っておかないとちょっと迷宮入りしてしまうという、そういう時代になっているということかなと思います。
 
 あわせて、政策論とかとの関係もそうなんですけれども、例えばそのトランジションということを日本として大事にしていくということであれば、そのトランジションに対する世界観とか認識みたいなものを金融機関がどう持つかということがより求められる。その上でパスウェイとかシナリオ分析をどう使っていくかということを金融機関に求めるのか求めないのかとか、そういうことも、その報告書ベースの話かもしれませんけれども、そこにつながる論点として、私なりには認識したということかなと思っています。
 
 削減貢献量のところについて言いますと、16ページ目のところにありますけれども、例えば「削減貢献量」が認められるための要件ということで、1.5度が実現された世界で通用することというところがあって、ここも物すごく難しい部分かなと思っています。例えば今も直面している話でいきますと、石炭火力からLNGとかに変えることによって半分ぐらい炭素が減るわけなんですけれども、GHGが減るわけなんですけれども、例えばLNGというのが1.5度の実現された世界でまだ残っているのかどうかというのを金融機関が説明しろと言われても相当難しい問題があるんですけれども、明らかにトランジションとしては明確に有用なエネルギー源であるとしたときに、そういう世界観を金融機関が説明責任を持ってやっていくべきということなのか。それが、例えば政策面で何らかのサポートをしながら金融機関のスタンスと政策で相まってそういう世界観を説明していくのかとか、そういうこともセットで議論していくことが大事かなと思いながらお伺いしておりました。
 
 私からは以上です。ありがとうございました。
 
【根本座長】  ありがとうございます。
 
 では、井上様、お願いいたします。
 
【井上メンバー】  説明ありがとうございました。事務局資料の11ページ、12ページに記載の中小企業へのヒアリングについてコメントをしたいと思います。
 
 中小企業の脱炭素化を進めるためには、GHG排出量の計測の標準化とか、データの可視化がキーになるのかなと考えております。アンケートにありますとおり、現在、算定方法が手探りだったり、恐らく複数の大企業から紙ないしそれに準じた形でいろいろアンケートが来て、手間だけかかってノウハウが蓄積しないとか、中小企業の脱炭素化に役立っていないというのが現状なのかなと危惧をしています。
 
 その中で、もう既に大企業であれば連携したり、進めている会社も多いと思いますが,DXを使った何かしらプラットフォームを活用してデータの蓄積とか可視化を進めて、それを強力に、日本政府なのかどうか分かりませんけれども、進めていかないといけないのかなというのが、コメントとして1点と、あと、補助金についても、なかなか借入れだけであると使用できる中小企業は限られていると思いますので、例えば先ほど言ったようなDXサービスを使用するために中小企業に対して補助金を出すとか、そういう形でやっていかないと、なかなかこの中小企業の問題は解決しないのかなということで感じましたので、一応コメントをします。
 
 以上でございます。
 
【根本座長】  どうもコメントをありがとうございました。
 
 では、黒﨑様、お願いいたします。
 
【黒﨑メンバー】  ありがとうございます。今日は初めて対面で参加させていただきます。皆様よろしくお願いいたします。コメントは幾つかありまして、1点、あと質問がございます。コメントのほうは、事務局の資料のほうからでございます。
 
 皆様の発言を聞いておりまして一つ重要だなと思ったことは、データの共有とか、方法論の共有というところになります。例えば、先ほど天田様のほうから重要なお話があったかと思いまして、実際に取組みをされて、どんな分かったことがあるのか、ファインディングスの共有みたいな形で、当然ながらこの分野というのは競争する分野もあるかもしれないんですが、こういった、どうやって開示をするかとか、パスウェイ、この非常にすばらしくまとめていただいている資料などもかなり広く活用できるものではないかなと思いましたので、ぜひこういった開示の部分とか、セクターのパスウェイに関わる方法論全てではないとは思うんですけれども、ぜひ分かったことを共有するような文化ができていくといいなと思いました。
 
 それから、もう一つ、共有の面ですと、先ほど中小企業へのヒアリング、事務局資料でいうと12ページのほうで、製品別に作り込む必要があるというお話があったかと思うんですけれども、非常に難しいと感じています。この辺りも、もしやっている中小企業とか、逆にそういったサーベイを行っている機関のほうで何を求めているのか、その目的とその結果の一致みたいなところにも差が出てきていないかどうかというのをちょっと危惧しておりまして、こういったいい例があれば、ぜひ他社情報の共有、なかなか難しいかもしれないんですけれども、いい情報、何か取組みが始まった情報などを共有していく必要性があるなと感じております。
 
 3点目のコメントに関してですけれども、先ほど16ページのところで、吉田様のほうから石炭からガスというところの価値のお話が、世界観とかのお話があったと思っておりまして、そこは非常に政策に関係があるということで、私も合意しているんですけれども、これも大手の金融機関と地方の金融機関で、どこの政策をレファレンスしていくのか、参照していくのか。恐らく大手の金融機関ですと、日本だけではなくてということになりますので、この辺りのノウハウも世界観に関わるところですが、国際的なレファレンスをするところなのか、国内のほうなのかというところが難しいんですが、そういった国際的な政策を参照していく方がよいのではないかなと感じました。
 
 最後に、EYさんのほうで御用意いただいた資料のところで一つ質問がありまして、それは資料の9ページ目で、「受けたい支援内容によって連携先を変えるような企業側の工夫」ということで、すばらしく進んでいる企業があるんだなと感じたんですけれども、企業側で工夫をされている企業さんというのは、何か傾向があったりするんでしょうか。例えば、当然ながら、いろいろなリソースを既に持っていらっしゃる企業さんだったのか、何か傾向があれば、ぜひ教えていただきたいと思うんですが、どうぞよろしくお願いします。
 
【根本座長】  どうぞ。
 
【白川様】  ありがとうございます。ヒアリングでそういった工夫をしているようなところの企業さんというところで、押しなべてもともとの意識とか知見とかのところが高いのかなと思っていまして、そういうところだからこそ取り組んでいて、かつヒアリングを受けていただいてというバイアスがその標本のところにあるかもしれないんですけれども、基本的に、例えば業界団体などの勉強会とかの情報をよく吸収されているとか、そういったところから、アベイラブルな支援にはちゃんと違うものがあるというのが分かっているからこそ使い分けているというところでして、そこの入り口の情報に対する感度とか、そういうところを上げていくというところで、言わば、もし企業さんの感度をピラミッド状に表現していくんだとすると、だんだん底上げしていくというか、全体的にみてそういう上のごく僅かなところだと思うんですけれども、そのような関心、アンテナをちゃんとふだんから企業さんが張れるように事例を紹介して波及していくことが必要なのかなと拝察いたしました。
 
【黒﨑メンバー】  ありがとうございます。
 
【根本座長】  よろしいですか。
 
 では、吉高様、お願いいたします。
 
【吉高メンバー】  どうもありがとうございます。また、御説明もありがとうございました。私は、基本的にはコメントと、あと一つはEYさんのレポートにも質問がございます。
 
 まず、事務局資料の中で、パスウェイについてはもう皆さんおっしゃったので、そこは割愛させていただいて、一つ、Avoided Emissionsのところですけれども、今回まとめていただいたのは、経団連とWBCSDのものなんですけれども、アメリカのEPAでもAvoided Emissions and Generation Toolというのがあり、きちんと評価ができるようなツールが出ていますが、1月に実施されたアップデートでは、EVをいかに売っていくかということがみてとれます。金融機関がこういったものを評価するのには、それによって企業の成長性、ビジネス機会を見るという視点もあろうかと思います。中小企業さんのヒアリングの中でも多分あったかと思うんですけれども、どうしても成長すると、物をたくさん作り、エネルギーも使ってしまうので、それを原単位で評価するということをしますが、原単位も最終的にはゼロになればいいということもありまして、絶対削減量が必ずしも是という世界ではないという考え方の中で、こういったAvoided Emissionsというのもあるかと思います。このAvoided Emissionsに関する金融機関の評価の仕方というのは、自身の評価にも跳ね返るということもあるので、融資先・投資先に対する評価の使い方みたいなものもぜひ整理されていただいてもいいのかなと思っております。
 
 あとは、EYさんのレポートに関係しますが、事務局資料の中小企業ヒアリングなんですけれども、私自身が脱炭素先行地域の審査で拝見している提案書では多くのところが金融機関が中に入っていらっしゃいまして、私自身感じるのは、多排出企業のサプライチェーンを事例に出されていましたが、日本でサプライチェーンがあるのが自動車と大手小売ぐらいで、そんなにサプライチェーンがきちんとあるという産業がそうたくさんはないと思うので、そのときに多排出に帰属するような中小企業というのをどう整理し捉えていくのかというのが1点確認したい。
 
 あとは、先ほどのEYさんのアンケートですが、このアンケートの中で地域的な違いを伺いたいです。例えば脱炭素エリアでも、東北のような熱の需要のほうが多いような場所とそうではないところでは感度が違って、それは事業者側も、それから金融側も感度が違うとか、各地域の課題によって感度が違うと私は認識しています。そういった視点でアンケートの整理などはされているのか、教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
 
【白川様】  恐れ入ります。その最後のアンケートの地域性というところなのですけれども、今回、先ほど金融庁の髙村さんからもお話があったとおりで、限られている調査というところで、多排出の5つぐらいの産業で、先ほども出ていたような自動車とか鉄鋼、紙パルプとか、そういう多排出の5産業、そういった産業の集中している都道府県から4県を抽出して、そこの2000社にかけていったという中で、おっしゃっていただいたような、実は東北とがこの調査対象にないというか、4県のサンプル抽出を47からしたところがあるので、そういう比較的工業の立地しているようなところで集計を掛けてみたんですけれども、産業による違いとか規模による違いのほうが卓越していて、ちょっと今回、地域性というのが、具体的に言いますと群馬・静岡・広島・福岡の4県というところで比較的太平洋ベルトの近くでまとめたところもあって、地域性というのは今回のこの調査からは確認できてないところありますけれど、おっしゃっていただいたとおりに、そういった観点も今後の深掘りというか、来年度以降とかにはあってしかるべきなのかなとは拝察いたしております。
 
【吉高メンバー】  どうもありがとうございます。では、比較的コンビナートがある地域は入っているということですね。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  そうですね。コンビナートがある地域も入っていますし、自動車産業が立地しているところもあります。地域差が産業内で出るのかなとも思っていたのですが、今回の調査ではそういう点はあまり確認されなかった。
 
【吉高メンバー】  とは思いますけれども、多分、今小売のほうもすごく進んでいるので、比較的、小売のほうだと、サプライチェーンでコンソーシアムができたりしています。そういう差はあまり出ないとは思うんですけれども、でもそれ以外がまた出るのかどうかとか、ちょっと関心がありました。地域金融は小売り関連の中小企業の融資先も大きいとは思っているので、ぜひ次回、そのようにしていただけると大変ありがたいかなとは思っております。
 
 ありがとうございました。
 
【根本座長】  どうもありがとうございました。
 
 では、岡崎様、お願いいたします。
 
【岡崎メンバー】  私もコメントなんですけれども、まずパスウェイの話ですが、我々もトランジション・ファイナンスを実施するときに、パスウェイに沿っているかどうかというところはチェックポイントの一つとしているんですけれども、ただ、先ほどからのコメントにありましたとおり、地域とか産業によってフィットしないものもあるというところで、そうすると経産省さんが作られているロードマップも参照して、ではそれに沿ってどうなんだというところも確認させていただいております。
 
 これは、多分ほかの方からの御指摘は以前からもありましたけれども、経産省さんのロードマップはどうしてもまだ定量的なところが不足している部分があると思っておりまして、それは現在、改訂を図られている状況だとは思っておりますけれども、シナリオに加えてロードマップの重要性というのは非常に大きいと思っておりますので、金融機関としても期待しているところです。
 
 あとは、これも以前に私からも申し上げたんですけれども、アンケートの中でも、中小企業になってくると、自分で独自にというよりも、サプライチェーンの上の親企業からの協力とか要請があってそれで動き出すというところが多いので、我々機関投資家としましては、大企業とエンゲージメントをするときに、自社だけではなくてサプライチェーンも含めた脱炭素化の推進、排出量測定の実施とか、そういったところはしっかり今後求めていきたいなと感じました。
 
 あとは、最後ですけれども、先ほど黒﨑さんのほうからありましたけれども、データの共通化とか標準化というところは非常に大きいなと思っておりまして、我々金融機関側だけではなくて、測定する企業側にとっても、バラバラな基準であったり、バラバラな要請を受けることはすごく負担になるところではありますので、お互いに、標準化とか共通化というところを強く意識して進めていくということが測定の促進につながるかなと思いました。そこは非常に強く進めていかないといけないかなと思いました。
 
 私からは以上になります。
 
【根本座長】  どうもありがとうございました。
 
 ほかに御意見、付け加えられることはありますか。
 
 では、私からコメントしてもよろしいですか。
 
 事務局の資料をどうも大変ありがとうございます。パスウェイに関しても、非常に分かりやすくまとめていただいていると思います。多くの方がおっしゃっているように、こういう基礎となるデータやロードマップ、それから共通の視座が、非常に重要だと思いつつ、一方、ここに書かれているように、完璧なデータがなくても可能な範囲でやっていく、ある意味フレキシブルに対応されるということは、そのとおりなのかなと思いました。
 
 あと、中小企業のヒアリングも貴重な生の意見を聞いていただいたと思っています。ここに金融機関への期待としていろいろな評価軸を持ってほしいという箇所があって、ここはネットゼロの達成に注力する検討会であると思うんですけれども、それだけではなく、この後の削減貢献量にも関わってくると思うんですけれども、多様な評価軸でも見てもらいたいという声は、貴重な御意見なのかなと思いました。井上様、吉高様もおっしゃっていたと思います。
 
 あと、質問として、補助金の制度なんですけれども、これも大変有用だということですが、まだ使いにくさもあるということで、資料としても一覧表にまとめていただいて、各庁横断で、あれは非常にいい試みで、とても拝見して分かりやすかったです。それでもまだ、例えば期限がどうであるとか、どのくらい資料が必要なのかとか、その辺の情報は入れられないのかなと思いました。
 
 一方、AIとかチャットGPTとかを使って何かオプティマルな御意見がぱっと出てくるとか、そういうのがあってもいいのではと思うのですがいかがでしょうか。
 
 あとは、EYの方の資料も大変充実していまして、参考になりました。それでちょっと質問としては、井上様もおっしゃっていた、またほかの委員の方もおっしゃっていた点ですが。プラットフォーム化とか標準化の状況についてです。アンケートで一つ一つ紙で答えているとか、よそは何をしているのかは全然分からないとかという企業の状況はかなりつらい状況かなと思っていて、この中で地銀でももっと連携していこうという動きもあるということなんですけれども、地銀になるのか、あるいは銀行協会なのか、もう少し標準化を進める動きが見られるのでしょうか。あと、DX化、効率化についてです。例えば今日の新聞でも、電力会社のスマートメータが導入されるので、各工場とか、排出量を簡単に定量化できるみたいな記事があったんですけれども、外部連携とかも使ってその辺りを進められるのか、もし何かヒントとか御意見があれば伺いたいと思います。
 
 あともう一つは、「相談したことがない」という回答がすごく多く、相談した企業は8%しかないというのが8ページにあって、大変少ないなと思いました。それに対していろいろと、営業の方の方針に差があるとか、まだ社内的に十分浸透しないという話もありました。アンケートの後ろのほう、19ページで、特に規模が小さい企業は、「相談したことがない」という比率が特に高く、それはそういう余裕もないからされないのか、あるいは金融機関の方の、コミュニケーション自体がそもそも少ないのか。あと、もしこういった層があまり相談もできず、知識のない場合に、どういったことが有用なのか、お考えがあればお伺いしたいと思います。
 
【白川様】  ありがとうございます。まず後者のほうからお話しすると、そもそもそういった取引先からの圧力というところでしたら、その取引先様がスコープ3とかで把握されたりとかというときに、当然、より自社にとっての影響度が高いサプライヤーさんとかから重点的に聞いていくわけなので、小さくなればなるほど言われるところが少ないですし、おっしゃっていただいたとおり、その先で実際にそれを考えられる人が、社長が片手間で考えるしかなくて、それをやれる人が社内にいないとか、そういう状況も相まってもう基本的に御相談をしようというところに行かないという、入り口側の要請から実際にその社内体制というところも両面あるのかなと思っております。
 
 あとは、営業担当の方が窓口だというところは、お聞きすると、結局、融資とかの本業のほうでの御相談とかがあるところで、「実はこういうものも始めました」とか、そのようについでにという御紹介が多くて、わざわざこれだけのことを届けに来るということがないということで、逆におっしゃるように、小さい企業さんで基本的にその銀行さんとかとの接点の頻度とか量が少ないところは当然そういった情報をもらえる蓋然性も少なくなっていってしまうというところがありますので、基本的に営業担当の方の底上げをしつつも、それ以外に、例えば何かそういう情報をちゃんと定期的に取引様に別なチャネルから届けていくという取組みというのはぜひあってもよいのかなと思っております。
 
 1点目の金融機関様同士の連携とかも、一部そういった複数でというところの事例もあったと思いますし、古く振り返ってみますと、地銀様とかですと、そういったシステムとかだったら共通化していくというところで、緩くアライアンスといいますか、グループで同じところのソリューションを使っているところとかもあると思いますので、少しジャストアイデアにはなるかもしれないんですけれども、そういう例えば地方銀行さんとかを複数支援されているような、そういったIT系のところの方とかが、そういうツールを開発しているスタートアップさんとかも最近出てきていますから、一緒にそのような方面からも複数の金融機関さんにアドレスしていくというところとか、おっしゃっていただいたように、当然協会さんを通じた横の連携とかでやっていくのは重要かなと。これは結構、御発言も途中であったように、すごく進展されている地域金融機関さんの事例を一個一個で閉じていってしまってはいけないというか、自力でやるので限界があるような中で、例えばほかの第二地銀さんとか信金さんとかとうまく進展させていくというか、全員が同じ苦しみを味わう必要はないのかなというのは、ちょっと汚い言い方ですけれども、思った次第でございます。
 
 最後に、中小企業さんも、ばらばら聞かれるんだけれども、その聞かれる内容が全然違うし、一緒に回答できればいいのに、少しずつ違うフォーマットですから、紙で聞いていって、結局何回もの作業にもなるといった負担感をおっしゃっているところもあったと思うので、そういうものが何かしら、標準的に質問をそろえていくとか、これも極論ですけれども、ガイドライン的に、ある程度こういうものにはこのように答えるんだよという模範例が示されるだけでも非常に参考になるのかなとか、そういったところの負担を軽くしていかないと、当然、人数が少ない、リソースの少ない中小企業さんにおいて、今後ますます要請が増えたら対応が難しくなってきてしまうのかなと、そのように拝察いたしました。
 
 雑駁で失礼いたしました。
 
【根本座長】  どうもありがとうございました。分かりました。
 
 これ以上御質問はありますか、さらに。
 
 もしよろしければ、大体御意見も伺ったと思うので、次の議題に移りたいと思います。
 では、白川様はここで退出されます。どうもプレゼンテーションをありがとうございました。
 
【白川様】  本当にありがとうございました。失礼いたします。
 
【根本座長】  では続きまして、報告書案に係る協議を行います。
 
 ここからは非公開とさせていただきますので、YouTube配信はただいまをもちまして終了させていただきます。
 
 それでは、事前に事務局から報告書案が送付されていると思いますが、加えて説明がもし事務局であれば、お願いいたします。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  ありがとうございます。説明させていただければと思います。
 
 報告書ということで、次回にもう一回会議の時間を頂戴しておりますので、その際に細かくは御議論いただければと思っておりますけれども、全体的に足りていない要素等があればぜひ早めに御指摘いただきましてドラフトの修正等をさせていただければと思います。文章についても、まだまだと粗い面がありますので、当然公表までに精査していく前提ですので、御容赦いただければと思っています。※以下、資料について説明。
 
【根本座長】  どうも御説明、ありがとうございました。
 
 では、今の事務局の方の内容に関して御意見があれば、この議論というのはまた次回も行いますので、今すぐ全部言っていただかなくてもいいのかなと思うんですけれども、御意見、御質問のおありの方は、名札を立てていただくか、Webexの挙手機能でお出ししていただければと思います。
 
 では、村上様、お願いいたします。
 
【村上メンバー】  早速ありがとうございます。16ページの削減貢献量のところなんですけれども、一応ちょっと御説明すると、削減貢献量がどのように書かれているかなというのにまず関心を持って、削減貢献量のところから中心的に読んでいきましたという前提でコメントさせていただくのですけれども、ここで、その数行上に「ファイナンスド・エミッションは排出量そのものを捉えるものであるが」とあるのだけれども、そこが絶対量と炭素強度が上で書き分けられているような、いないようなというので、ここを排出量そのものと言ってしまっていいのかなということと、あと、この削減貢献量の話も、投融資先の企業がまずそれを削減貢献量と言っていいかどうかという問題があって、さらにそれが金融機関も関わったものと言っていいかどうかという問題があるので、ここのところがちょっと混ざっていないかなというか、もう少し書き分けてもいいのかなと思いました。
 
 それと似ているのが、20ページからのデータのところなんですけれども、スコープ3の算出に関して、実際には「特にスコープ3の算出は」というところ、「商取引を伴う」というところですけれども、これもサプライチェーン、商流をしっかりやらなければいけないのは、製造業とか小売業の企業の側はそうですけれども、金融機関のスコープ3、あくまでもファイナンスド・エミッションを算定するためには、別にそれは分からなくても、貸出しがあって、そこの企業の排出量が分かっていればもうある意味できるので、ここも、金融機関のスコープ3なのか、その企業のスコープ3なのかという、どっちのデータの話なのかというところをもう少し書き分けられたほうが、実際にお悩みの方が読んだときには親切かなとちょっと感じましたので、この論点の構造、ガイドの順番ですかね、それが今のままでもいいと思いましたし、もしその主語を変えていくならば、そのやり方ももしかするとあるのかなと、そこはどちらがいいというのがあるわけではないんですけれども、その点が少し気になりました。
 
 以上です。
 
【根本座長】  ありがとうございました。
 
 佐藤さん、どうぞ。
 
【佐藤メンバー】  まずコメントとして、全体的にすごくいろいろな要素が入っている点、かつ、始まった半年前からの皆さん、特にGFANZ加盟の金融機関の方々の取組みも進んでいるなということで、極めて前向きになってきた内容で、すばらしいと思っているコメントが一つです。
 
 他方で難しいなと思いましたのは、現在も進行中の話が多いので、もしかしたら、さらに取組みが進むと、また半年なり1年とかで、内容が変わってしまうようなリスクがあるのかなというのも逆に心配になりました。それで思いましたのは、現在進行中の話を中心にするのか、もっと基本的なところとか、基本概念を軸にすべきなのかという点です。具体的に言うと、ちょっと気になりましたのは、今の御発言にもあったとおり、例えば「スコープ3」という言葉と「ファイナンスド・エミッション」という言葉が結構混ざっている気がします。ファイナンスド・エミッションというのは、もちろんスコープ3のカテゴリ15ということだと思うんですけれども、スコープ3というのは従業員の通勤のCO2とか出張のCO2もスコープ3ですし、サプライチェーンもそうですけれども、そこはきれいに書き分ける必要があるということが一つと、それに関連して、実はスコープ3というのはGHGプロトコールのコーポレートスタンダードの考え方なので、プロジェクトとか物の排出量の考え方というのは、GHGプロトコールでも、プロジェクトプロトコールというものがありまして、そこではスコープ3とは言わずに、ライフサイクルアセスメントと呼ぶことがあって、私みたいに昔からやっている人間はちょっと、どっちのことなんだろうと一瞬迷ってしまいます。その点も含めて、報告書の中でも、ここで言っているのはPCAFのところであるとか、ここの数字はどの機関のものだとか、もう少し用語等の背景なり場面についてできればクリアにしたほうかいいだろうというところがありました。
 
 その他、そういった面も含めて、内容的には非常に難しいというか、人に説明すると難しいと思われる場合があるので、その辺の難しさを少しでも緩和するようなところがちょっと必要かなと思いました。
 
 以上です。
 
【根本座長】  どうも御意見ありがとうございます。
 
 ほかに。藤井さん、お願いいたします。
 
【藤井メンバー】  藤井です。ありがとうございます。皆さんもおっしゃっておられますが、検討会で行った非常に幅広いテーマの議論を丁寧に網羅いただいていると思います。ありがとうございます。逆に言うと、その点とトレードオフになってしまうのですけれども、検討会で行った議論をまとめた報告書なのか、あるいはここで言う移行からガイド、それらを提言している報告書なのかというところが、検討会にずっと関わっている人間が読むと分かるのですけれども、初めて読んだ人はちょっと分かりにくいかもしれないなと思いました。また、ドラフトでは「ガイド」というところが、ある意味での結論ないしボディだと思うんですけれども、この「ガイド」という表現が、ガイダンスなのか、主要論点なのか、アプローチなのかが分かりにくいように思います。ここでいう「ガイド」を英語にしたら何になるかなと思いながら読んでいたのですけれども、英語でこういう報告書で使われる用語ですと、ガイダンス(指針)か、レコメンデーション(推奨事項)か、ベストプラクティスか、ボックス(参考事例/好事例)なんですよね。もちろん、脱炭素関連のテーマは、どんどん展開しているテーマなので、今仮にガイダンスあるいはグッドプラクティスなりベストプラクティスとしたとしても、1年後にはきっと位置づけが変わってしますし、冒頭4ページの「本報告書の位置づけ」のところで実践的な「ガイド」と明記はしていただいているのですけれども、この実践的なガイドというのはどういうことなのか、というのを何かもう少しうまく書けたらいいのではないかと思います。
 
 あともう一つは、議論のカスケードダウンが見えにくいように思います。例えば、「移行」と「トランジション」を使い分けているのか、使い分けていないのか。冒頭から基本的に「移行」でまとめておられる一方で、企業の取組みの11ページで「トランジションボンド」が出てきて、「トランジション・ファイナンス基本指針」が出てきて、12ページで、「移行(トランジション)の重要性は確実に広がりつつある」、となる。で、「移行を実現する金融手法へのラベリングの1つである「トランジション・ファイナンス」」とあります。有識者会議の最初の報告書を作るときにも同じような議論をしたような気がするんですが、移行におけるトランジション・ファイナンスの重要性とか、トランジション・ファイナンスというのはどういう定義なのかというのを、始めのほうに一回書いたほうが整理されるのではないかと思います。
 
 ちょっと細かいことも含めて、以上です。でも、非常にこの幅広い議論をまとめていただいて、かつ方向性を出していただいているので、労作だと思います。ありがとうございます。
 
【根本座長】  どうもありがとうございました。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  はい。「移行」イコール英語で「トランジション」で、基本はもう日本語の「移行」で書くということで一旦やってみたんですけれども、ただ他方でおっしゃるとおり、「トランジション・ファイナンス」というのは「移行金融」とは訳していなくて、「トランジション・ファイナンス」ということになっているのが現状です。また「移行と「トランジション・ファイナンス」という関係性もあまり明示的に記載しているところがないのが現状と思います。
 
【藤井メンバー】  ありがとうございます。
 
【根本座長】  ありがとうございます。
 
 ほかにございますか。吉高様、お願いいたします。
 
【吉高メンバー】  ありがとうございます。すみません。私は、昨日もらったバージョンでみていたので、後でメールで差し上げます。御質問があるんですけれども、一つは、アジアのエネルギートランジションの部分ですが、アジアにおいては省エネはほとんど進んでいないんですよね。設備効率も悪い。でも、ここで書いてあるのは、あくまでも発電の部分のトランジションのことしか書かれていない。つまり、現状を出すといったときに、本来もっとそれらに対する問題点とかもあるのにもかかわらず、発電の事象だけを書いているということが分かりづらいように思います。また、アジアの金融機関というのはプロファイができる機関は少ないわけで、日本の金融機関がそこを支援するというのはあるかと思いますが、ただ、アジアのエネルギートランジションを本当にやろうと思ったら、省エネも重要で進めなくてはいけないというのが前提にあるということが書かれていないので、この盛りだくさんの情報の中でどこまで課題を網羅するのかが見えなかったので気になったところです。
 
 あとは、もう一つの御質問は、細かいところなんですけれども、地域金融の幾つかの支援サービスが箇条書きで羅列されていたのは、これは結局なくしてしまったのでしょうか。新しいバージョンは見ていなくてすみません。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  今の29、30ページのところは、もともとお送りしていたものを書きまして、ですので、内容的には消えていなくて、ただ分量が増えているということです。
 
【吉高メンバー】  なるほど、分かりました。それで、今回入っていたら申し訳ないんですけれども、地域金融機関が電力会社をつくっているとか、その地域の産業を創出するために出資したりというのは、この中に入っていらっしゃいますか。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  必ずしも入っていないと思います。
 
【吉高メンバー】  入っていないですか。分かりました。
 
 そういう動きが増えてきているかなというのは思っていて、地域金融機関の役割として重要なことだと思うので、入れておいていただいたほうがいいのかと思います。あと地域の連携というのが、情報共有だけではもうないと思います。さっき言った自治体や地域で電力会社をつくるのに、地域で金融が連携していく必要性もあるので、情報共有だけの連携だとちょっと弱いのかなというのも気になったところですので、取りあえずのコメントをさせていただきます。ありがとうございます。
 
【根本座長】  ありがとうございます。
 
 長谷川様、お願いいたします。
 
【長谷川メンバー】  今日は遅参し、申し訳ありません。
 
 まず、ほかの委員も指摘されたように、非常に盛りだくさんの議論をうまくまとめていただいている点に、感謝申し上げたいと思います。
 
 その上で、先ほどの藤井委員の指摘とも近いのですが、この「ガイド」というのはどのような意味合いなのか、やや分かりにくいかと思います。場合によっては、まとめるに当たって分かりにくいのがみそなのかもしれませんが、報告書を「ガイド」としたのは、どのような機能を持たせる想定なのか、もう少し分かりやすいといいかなという気がしました。
 
 もう一点は、今動いている分野という佐藤委員の指摘とも関連するのですが、このような議論をしましたという形で紹介されているものは別として、事実関係、ファクトについては、様々な国際的な団体等において、今後、さらに進展が予想されるものもございます。御検討いただきたいというお願いですが、事実関係、ファクトについて、例えばウェブ上でアップデートされていくとか、参考、レファレンスのようなリストを作りつつ、そこがアップデートされていくとか、最新の情報が常に分かるような工夫があると、さらに意味があるのかなと感じました。
 
 最後ですけれども、古いバージョンベースではありますが、細かい文言のところで、こうしたらどうかと思うものがありますので、それも含めて、後程メール等で意見をお送りさせていただければと思います。
 
【根本座長】  ありがとうございます。
 
 高村様、お願いいたします。
 
【高村メンバー】  ありがとうございます。これまで御発言なさった委員の先生方と同様に、これまでの議論を丁寧にまとめていただいていると思います。幾つかの文言ベースではまた御意見を申し上げたいと思うんですが、2点だけ、大きなところで発言をさせていただこうと思います。
 
 一つは、とはいえ、もう既に藤井委員、長谷川委員もおっしゃったところで、この報告書が誰宛てにどういう目的でどのように使われるのかというところについては、少し整理が必要かなというところを共有いたします。
 
 2点目は、吉高委員の御指摘にもつながるかもしれませんけれども、本日は地域金融、地域の取組みについて、EYさんからもお話ありましたけれども、幾つか、こうした点が課題ではないかということも随分明確になってきていると思います。さらに検討が必要な課題もあると思いますし、より具体的に、例えば補助金については、今回共有いただいたように、関係省庁と一体的なプラットフォーム的な情報の提供の工夫もなさっていると思うんですけれども、さらに具体的に、どういう形で検討あるいはどういう形で改善していくかということを、これは先ほどの報告書の性格づけにもありますけれども、しかしこの検討会として、さらに一歩進めるための次の一手といいましょうか、次の課題というもの、これは金融庁さんあるいは関係省庁も含めた国の課題として、それを明確にすることが必要ではないかなと思っております。その点、この報告書の最後のところでもちゃんと整理していただけるとよいのではないかと思っております。
 
 以上です。
 
【根本座長】  ありがとうございます。
 
 吉田様、お願いいたします。
 
【吉田メンバー】  ありがとうございます。皆様からありましたとおり、非常に今までの複雑な内容をうまく整理していただいているのではないかなと思います。
 
 その上でなんですけれども、私的にいろいろ見ていると、14ページ目のところで「金融機関が自ら経営目標と移行の関係性も踏まえつつ、各企業にとっての移行の経営上の重要性を顧客に対して説明し、理解を求めていくことが重要と考えられる」と。ここがすごく大事かなと思っていまして、このガイドの位置づけの話が先ほどありましたが、脱炭素を目指そうと思った金融機関が見にきたときに、何から着手していけばいいかというのがある程度網羅的に見えるという使い方がいいのではないかなと思っています。そのときに、いろいろ話がありましたけれども、そのパスウェイだったりとか、いろいろな材料はあるんですけれども、結局それを統合して金融機関としてどういう経営目標でここに当たっていくのかというのを考えるときに、どういう考え方があるのかということを示されているのか、そこの中には当然トランジションみたいなことを重視する金融機関もあるし、地域の実情に合わせて省エネを中心としたエンゲージメントみたいなことをやっていく金融機関もあるだろうということで、やはり目標と手段みたいなところがある程度これを見ると分かりやすく出ている。しかもそこに参考になるような国際的な指針だったりとか材料みたいなものがあるということがあるといいのかなと思いました。なので、ちょっとここのガイドのところをうまく、何のためにこのガイドがあるのかという話がちょっとありましたが、私はここの14ページ目の一番上の「また」というところにあるところが非常に大事なので、ここにつながるようなガイドの示し方をされると有用になるのかなと思いました。詳細については、またメール等でコメントを申し上げたいと思います。
 
 私からは以上です。ありがとうございました。
 
【根本座長】  ありがとうございました。
 
 時間となってきましたので、今のところ御意見はもう言っていただいたかなと思うんですけれども、いろいろと御覧いただくとあると思うんですけれども、それはメールで……。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  メールでも、個別にご面談でも、どのような形式でも結構ですので、一旦コメントを頂戴しまして、ゴールデンウイーク明けにいただいた議論を反映させたものを送付させていただければと思っています。
 
【根本座長】  よろしいですか。
 
 では、本日もいろいろ貴重な御意見をありがとうございました。
 
 次回は5月24日に報告の取りまとめに向けた議論をしたいと思います。
 
 大変活発な御議論をありがとうございました。
 
 では、以上をもちまして本日の会議を終了させていただきます。ありがとうございました。
 
―― 了 ――

 
お問い合わせ先

総合政策課サステナブルファイナンス推進室

03-3506-6000(代表)(内線 2918、2893、2770)

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