「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」(第3回)議事録

  • 1.日時:

    令和3年10月6日(水)16時00分~18時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館9階 905B会議室

「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」(第3回)
令和3年10月6日
  
【神田座長】

それでは、予定の時間よりも早いのでありますけれども、今日御参加予定の皆様方が全員おそろいだということでございますので、始めさせていただきます。

ただいまからデジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会の第3回目の会合を開催させていただきます。皆様方にはいつも大変お忙しいところを御参加いただきまして、ありがとうございます。

本日の会合でございますけれども、前回に引き続きまして、オンライン開催とさせていただきます。一般の傍聴はなしとさせていただきまして、メディア関係者の皆様方には、金融庁内の別室において傍聴いただくことにしております。

また、本日は送金とか資金決済に関しステーブルコインについて具体的な内容も取り上げますので、テーマに応じたオブザーバーとして次の方々に御参加いただいております。全国銀行協会、日本資金決済業協会、信託協会、日本証券業協会、日本暗号資産取引業協会、日本STO協会、以上の方々でございます。

それでは早速、議事に移ります。本日ですけれども、まず事務局から、パーミッションレス型分散型台帳等を用いた金融サービスのほか、ステーブルコインの概要、そして、諸外国の規制動向などについて説明をしていただきます。その後、横関メンバーから、事務局の説明のうちで分散型台帳のガバナンスに関連して、航空分野において複数のサービス提供者がいる場合にどのようにサービスとかプロダクト全体のガバナンスを確保しているかについて御説明をしていただきます。

その後、残りの時間をメンバーの皆様方に討議をお願いするという流れで進めさせていただきます。なお、討議に当たりましては、お手元資料3に本日討議いただきたい事項をまとめておりますので、適宜御参照いただければありがたく思います。

それではまず、事務局からの説明をお願いいたします。

【端本信用制度参事官】

それでは、資料1に沿って説明させていただきます。

1ページ、まず分散型台帳を用いた金融サービスについての課題、それから、ステーブルコインの概要、ステーブルコインに関する諸外国の規制動向、現行の我が国のデジタルマネーに関する規制という4本立てで説明させていただきます。

3ページを見ていただけますでしょうか。まず分散型台帳を用いた金融サービスのレイヤー構造ということです。分散型台帳を用いた金融サービスについては、レイヤー構造をきちんと意識して議論することが必要じゃないかという御意見をいただいておりました。この図にありますとおり、1つのイメージ、1つの分け方ということでございますけれども、ファーストレイヤー、ブロックチェーンレイヤー、それから、スマートコントラクトのレイヤー、それから、ビジネス・アプリケーションのレイヤー、そのように分けることも可能なのではないかと考えております。

そしてその上で、ファーストレイヤー、セカンドレイヤーを見ますと、上のところに戻ってまいりますけれども、大きく分けますと、パーミッション型分散型台帳を用いたものと、パーミッションレス型の分散型台帳、二パターンのものがあるというふうに分けられるのではないかということでございます。

4ページを見ていただけますでしょうか。左側はパーミッション型分散型台帳の参加者ネットワークのイメージ、右側がパーミッションレス型ということでございます。まず左側ですけれども、分散型台帳ネットワークの参加者、これがゲートキーパーあるいは一定の手続に基づくもので、かつ台帳の記録等に係るコンセンサスプロセスへの参加、これについても事前に取決めがあり制限されているかどうか、こうした観点からゲートキーパー等がいる・いないということかと思います。

それに対しまして、右側、パーミッションレス型の分散型台帳ですけれども、ネットワーク自体への参加も自由ですし、コンセンサスプロセス、ビットコインですとマイニングになりますけれども、これへの参加についても特段の制約はないということで考えられるということではないかと思います。左側のパーミッション型の分散型台帳の参加者ネットワーク、下のガバナンスとコンセンサスプロセスのところの2つ目のポツですけれども、既存の中央集権型の金融サービスと同様の構造と言えるのではないかということでございます。

続きまして、5ページでございます。パーミッション型の分散型台帳の具体的なユースケースといたしまして、公表資料等から作成させていただきました。左側、金融分野ですと、例えば左から参りますと、証券ポストトレード領域における情報共有、これを円滑にしていきたいというようなもの、それから、その下でございますセキュリティ・トークンの発行・管理のプラットフォームとして使えないか、このような動きもございます。それから、資金決済の分野ですと、企業間決済に用いる米ドルにペッグしたステーブルコイン、このようなものを実証実験している米系の金融機関もあるということでございます。

続きまして、6ページ、次のページへ行っていただけますでしょうか。パーミッションレス型の分散型台帳を用いた金融サービスのスキーム例ということで、これはアメリカのステーブルコインを例に取り上げさせていただいております。テザーの場合です。図を見ていただきますと左側、テザー社が管理しているところの取引につきましては、中央集権型ということで、本人確認等をした上での取引ということでありますけれども、右側、まさにファーストレイヤー等で本人確認を経ない中でのP2P取引等もできる形でサービス提供されているということのイメージでございます。

それから、最後に7ページ、次のページになりますけれども、機能ごとにレイヤー化されていると捉えた上で検討することが必要なのではないか。さらに、サービスが適切に提供され、幅広く利用されるためには、システム全体が技術・契約・制度・インセンティブ等によって規律づけられていることが必要なのではないかということでございます。

続きまして、ステーブルコインの概要について御説明させていただきたいと思います。9ページでございます。以下は、民間のウェブサイトに基づき作成した参考資料という位置づけでございます。まず左上ですけれども、暗号資産の市場規模、この円い円のところにありますけれども、総額ですと200兆円を超える規模ということかと考えております。そのうち45%がビットコイン、19%がイーサリアムということで、いわゆるステーブルコインと言われているものは赤で色をつけてあります。テザー、USDコイン、数%ということでございます。一方でその下を見ていただきますと、主な取引所における取引高に占める暗号資産・法定通貨の割合ということで、ステーブルコインが4分の3近くを占めております。暗号資産取引におきましては、例えばビットコインと現金でというよりも、ビットコインとステーブルコインでというような形での取引が多いのかなということがうかがえる数字でございます。

10ページ、次のページを見ていただきますと、そのステーブルコインの概要でございます。これも各社のウェブサイトの情報に基づき作成した参考資料という位置づけでございます。まず、一番上、テザーでございますけれども、発行者は香港のテザー社ということになっております。それから、その売買する者は暗号資産交換業者等ということでございます。分散型台帳は、先ほど見ていただきましたパーミッションレス型ということでございます。払込み資金の管理状況、これはテザー社が公表しているものはこのとおりになっているということで、CP49%、社債等8%、貸付け等4%ということで、クレジットリスクのあるものも6割程度あるのかなということがうかがえます。

その下、USDコインでございますけれども、これも発行者はCircle社で、二次売買等は暗号資産交換業者、分散型台帳はパーミッションレス型、準備金の内訳はその右側にあるとおりでございます。

御参考までに、フェイスブックのリブラ、現在、Diemとなっております。この構想につきましてはまだサービス提供されておりませんけれども、ホワイトペーパー等を見ますと、現時点では発行者をシルバーゲート銀行ということにいたしまして、分散型台帳はパーミッション型にするという方向性が記載されております。払込資金については、シルバー銀行にて管理するということも記載されているということでございます。

その右側、USDコインについて、どういうスキームかというのをもう少し詳しく見ていただきますと、真ん中辺り、発行者のCircle Internet Financialという会社がございます。ここがステーブルコインを発行して資金を受け入れるわけですけれども、その資金については、その上の銀行に、カストディということで管理していただくと。その下で発行したステーブルコインは、BitLicense業者とありますけれども、暗号資産交換業者が売買・移転するというスキームで使われているということでございます。

続きまして、諸外国の規制動向を御説明させていただきたいと思います。まず12ページですけれども、EUにおけるステーブルコインに関する規制案ということです。2020年9月、欧州委員会はステーブルコインを含む暗号資産の規制案を公表したということでございます。その下の表を見ていただきますと、大きく分けまして、左側から電子マネートークン、資産参照型トークン、その他という3つに分けてございます。

一番左側の電子マネートークンですけれども、定義にありますとおり、法定通貨等を参照することで安定した価値を維持することを企図したもので、その3つ4つ下になりますけれども、額面価格での償還義務を義務づけているということでございます。その右側、資産参照型のものにつきましては、複数の法定通貨、あるいはコモディティ、あるいは暗号資産を組み合わせ、参照することで安定した資産を維持するというものを資産参照型トークンということで定義しております。これにつきましては、償還義務は必ず発行者が持つということではございませんが、それがない場合は、償還義務の欄にございますとおり、流動性確保メカニズム等々につきましてきちんとしないといけない。あるいは、その下でございますが、開示書類の公表義務、継続開示義務等が課せられているということでございます。

13ページ、次のページは暗号資産サービスの提供者ということですので、暗号資産自体を移転・売買・媒介等する者についての規制は別主体として設けられているというのが13ページでございます。暗号資産サービスの下の表ですけれども、第三者のための暗号資産の保管・管理、トレーディング・プラットフォームの運営、それから、法定通貨への交換等々、それぞれの項目に着目してどのような義務が課せられているかということをまとめさせていただいております。

続きまして14ページ、こちらはイギリスにおけるステーブルコインに関する規制案ということでございます。2021年1月に市中協議プロセスが開始されております。まず暗号資産をどのように定義しているかということでございますけれども、電子マネートークン、セキュリティ・トークン、それから、規制外トークンと、更に、ステーブルトークン(単一法定通貨型/その他の資産型)という形で定義されております。

一番上の電子マネートークン、これは額面価格でいつでも償還可能かつ発行者に対する直接請求権があるものということで、これについては電子マネー規制が適用される。その上で、赤で囲ってありますステーブルトークン(単一法定通貨型)ですけれども、これにつきましては、下のほうの規制対象となる行為・要件の箱の2つ目を見ていただきますと、単一法定通貨型ステーブルコインの発行・作成・破棄については、実施主体、発行者、要件として電子マネー規制を必要に応じて修正したものを適用するということとなっております。

さらに、箱の一番下の3つ辺りでございます。第三者へのトークンの保管・管理の提供、取引実行、法定通貨との交換、この辺りはウォレット事業者あるいは取引所という言葉を使っておりますけれども、暗号資産交換業者あるいは移転・管理を行う者に対する規制だというふうに御理解いただければと思います。

最後に、15ページでございます。米国におけるステーブルコインにおける規制動向ということです。まず、1つ目の丸です。まず米国では、ステーブルコインにつきまして、複数の連邦規制当局から監督を受ける可能性があるということと併せまして、仮想通貨等に関する各州法の規律を受けるということでございます。

下の現状のステーブルコインの連邦レベル・州レベルの規制を見ていただきますと、まず連邦レベルの規制のところの2つ目のポツです。ステーブルコインの移転業務は、FinCEN、米財務省金融犯罪取締ネットワークへの登録が必要だということで、これによりまして、AML/CFTの観点からの規制を受けるということでございます。

それから、ちょっと飛びますが、下の青で書いています大統領金融市場作業部会における等々というところの3つ目のポツでございます。ステーブルコインが証券・コモディティ・デリバティブを構成する場合は米国連邦法が適用されると。これが連邦レベルの規制でございます。それに加えまして、州レベルの規制といたしまして、上に戻っていただきますと、州レベルの規制、ニューヨーク州を例にとりますと、1つ目のポツでございます。ニューヨーク州法上ということで、最後3行目の後半から4行目辺りでございますが、BitLicenseを取得する必要があると。次のポツですけれども、法定通貨と連動するステーブルコインは、通常、仮想通貨に当たるということで、BitLicenseを取得することが必要になっているということが米国の規制動向ということでございます。

それから、少し飛んでいきまして、最後に我が国の規制動向、規制の制度を御紹介させていただきたいと思います。20ページになります。現行制度、我が国におけるステーブルコインはどういう扱いになるかということでございます。1つ目の丸、いわゆるステーブルコインは特定の資産の価値に連動するものですけれども、連動する資産の種類等によってその性格が異なるということです。2つ目の丸、法定通貨と連動した価格で発行され、発行額と同額での償還を約するものの発行・移転は為替取引に該当し得ることを踏まえまして、銀行業免許あるいは資金移動業登録を受けなければならないということになっております。上記以外のものにつきましては、価値が連動するもの、それから、償還合意の有無等によりましてその性格を個別具体的に判断するということで、有価証券に該当すれば金融商品取引法、暗号資産に該当するということであれば暗号資産交換業が適用されるということでございます。

続きまして、21ページ、為替取引を行う銀行と資金移動業者の現行規制でございます。左側が銀行(免許制)、右側が資金移動業者(登録制)ということでございます。種々の規制をここで整理させていただいております。上から6個目、預かった資金をどう保全するかということですけれども、銀行が預かった預金につきましては、預金保険制度の対象となりますし、資金移動業者が預かるお金は供託等によって全額保全される仕組みになっております。

続きまして22ページ、最後に、銀行が発行するデジタルマネーサービスと預金保険上の現行の取扱いについて御説明させていただきます。丸のところにありますとおり、銀行等が銀行法等に基づき提供するデジタルマネーサービスつきましては、利用者等から受け入れたあるいはチャージされた資金を預金として、その性格に応じて預金保険の保護対象とする扱いとなっております。

下のイメージ図を見ていただきますと、まずAで見ていただきますと、預金口座を持っています。それをチャージいたしますと、デジタルマネー専用アカウントのほうに行きます。そのものを例えばBのアカウントに移転するというようなこともあろうかと思いますし、あるいはBが加盟店で物を買った際にその決済として使う。その場合はデジタルマネーがBからCのアカウントに移転すると。そのような使い方をされているということでございます。いずれにしましても、このようにチャージされた資金も含めまして預金ということで、預金保険の保護対象となっているということでございます。

続きまして、本日討議いただきたい事項、資料3について簡単に御説明させていただきたいと思います。

本日討議いただきたい事項1、まずパーミッションレス型の分散型台帳等を利用した金融サービスに関する基本的な課題ということで、1つ目のパラグラフは、これまでの御議論を簡単にまとめさせていただいております。

その次のパラグラフでございます。パーミッションレス型の分散型台帳等を利用した金融サービスは、複数のレイヤーに基づき、その一部についてのみ中央管理者を置く形態で提供されているものがございます。一方でこれまでの金融規制では、金融機関がレイヤー全体を管理する主体として存在し、規制の名宛人として管理責任を果たす立場にあるということを前提としております。

そうした中で次のパラグラフでございますけれども、レイヤーのいずれかで問題が発生した場合に迅速な対応が可能か、不適切な取引の巻き戻しが要請された場合に対応可能か、AML/CFTの観点からの要請を満たすことが可能か、この辺りにつきまして、送金・決済、証券取引等それぞれの機能に照らして求められる水準を満たすかどうか検討する必要があるのではないかと考えております。

次の2ページ見ていただきまして、論点1、そうしたことを踏まえまして、まず(1)レイヤーのいずれかで問題が発生した場合等に、金融サービスに求められる適切な対応が可能かという点に関しまして、システム障害発生時の迅速な対応、不適切な取引の巻き戻し等、あるいはAML/CFTの観点からの課題に対応できるよう要請した場合、何らかの技術的な課題が生じるのかどうか、この辺りについて御意見をいただきたいというのが(1)でございます。それから、(2)といたしまして、複数レイヤー全体として適切な機能を実現するためのアプローチということでございます。まさに④のところにございますとおり、第三者がその一部について安全性等を評価する仕組み、こうしたものを活用するということを含めまして御意見賜れればということでございます。

続きまして、3ページ、ステーブルコインを巡る諸課題についてでございます。まず、(1)「デジタルマネー類似型」と「暗号資産類似型」ということでございます。まずステーブルコインの定義から入りまして、先ほど説明したとおり、アとイに分けられるのではないかと。法定通貨と連動した価格で発行され、法定価格で同額と償還を約するもの、それとそれ以外という形で分けられるのではないかと。

ユースケースにつきましても、先ほどパーミッション型、パーミッションレス型で見ていただきましたとおりでございます。②のところでございますけれども、暗号資産運用の一環として利用されるものとしては、ア、イ両方あり得ますけれども、形式的にはアに該当するものであっても、裏づけ資産の内容に照らして償還確実性に問題が生じる可能性がある、あるいは開示の状況が不十分との指摘がされているものもございます。

そうしたことを踏まえまして、論点2でございますけれども、上記アとイ、デジタルマネー類似型、暗号資産交換型は、経済社会において果たし得る機能、法的に保護されるべき利益、金融規制・監督上の課題とは異なると考えられます。両者を区分して検討するということが考えられますけれども、この点についてどうお考えか。それから、(2)といたしまして、利用者保護上問題があるものについて適切に対応すべきと考えられますけれども、この点についてどうお考えかというのが(2)でございます。

続きまして、4ページでございます。(2)デジタルマネー類似型と既存のデジタルマネーの関係でございます。デジタルマネー類似型のステーブルコインも社会で幅広く使用される電子的な送金・決済手段としての機能を果たし得ます。他方で、既存のデジタルマネーは、発行者と移転・管理を行う者は同一ですけれども、将来的にはこれらを分離するモデルを模索する動きが広がりを見せる可能性もございます。同じビジネス、同じリスクには同じルールを適用するという考え方に基づきまして、全体として、発行者と移転・管理を行う者の分離が起こり得ることも念頭に置いて検討すべきと考えられるけれども、この点についてどうお考えかということが論点3でございます。

最後に、(3)でございます。発行者と移転・管理を行う者を分離する場合の具体的な検討の視点といたしまして、まずこの3つ、送金・決済サービス、①発行、償還、価値安定の仕組みの提供、それから、②、③、移転・管理、顧客管理等に分離されます。

その下でございます。我が国の法制は、①から③を同一の者が果たすことを前提としておりますけれども、この点について以下のような指摘があるということです。まず、発行等の機能と移転・管理等の機能は金融規制・監督上求められる規律が異なります。次のポツですが、EU等のデジタルマネーはこれらを分離しております。それから、米国のステーブルコインも同様に分離した対応で発行・流通しております。それから、次のポツですけれども、分散型台帳の活用等でこうした機能分離がより容易になっているというふうに考えられます。それから、①から③の機能が分離されてサービスが提供された場合、関係者に対する法適用の範囲が必ずしも明確でないという問題がございます。利用者保護あるいはAML/CFTの観点から適切な規制が適用されるか必ずしも明確でないということが課題かと思っております。

そうしたことを踏まえまして、論点4でございます。決済・送金サービスにおける民間のイノベーション促進、利用者保護を図る等の観点から、発行等の機能と移転・管理等の機能の担い手を分離した形態での送金・決済サービスを可能とする柔軟で過不足のない法制度を構築すべきと考えられますが、こうした方向性についてどう考えるか御意見をいただきたいと考えております。

それとの関連で注8でございます。為替支払手段のいわゆる発行・償還に責任を有する発行者については、銀行業免許あるいは資金移動業登録を求めること等により権利義務関係を明確にする。一方で、為替支払手段の移転・管理のみを行う者につきましては、現在の暗号資産交換業を参考といたしまして、過不足なく為替支払手段の売買等を含めて、いわゆる顧客管理の規律を課すことが考えられるということでございます。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは続きまして、横関さんから、お手元資料2について御説明をいただけるということですので、横関先生、よろしくお願いいたします。

【横関メンバー】

御紹介ありがとうございます。資料2を使いまして、説明いたします。全く金融とは関係ないというような感じになりそうですけれどもご容赦ください。安全性を求められるいろいろなシステムが世の中にはありますけれども、その認証の考え方といいますか、安全性もしくは何か起こったときにどう担保するのかの一例ということで、次のディスカッションの前座のような形で説明させていただきます。

次のページをお願いいたします。こちらは、飛行機もしくは航空システムの認証について簡単にまとめました。例えば金融とか今回の分散型の金融のシステムですとお金が対象になるかもしれませんが、飛行機の場合、運ぶもの、あるいは移動するものは人もしくは貨物になります。その安全性を考えるときに、1つは飛行機本体、つまり箱、これをちゃんと担保する必要があるというところと、もう一つはそれを使ったサービス、つまり、今度は運航会社になりますけれども、その箱を使ってどのような事業を行うかについて、やはり安全性の維持というような管理が多く求められます。

これは飛行機に限らないかもしれないですが、幾つかの事業、サービスを展開するときには必ず、箱がまず安全ですか?、そして、その箱を使った安全性を担保した運用、いわば、サービスや事業が継続的に可能ですか?、といったことが必要になります。ただ、飛行機の場合、箱といっても箱の中身に多くのシステムが詰まっている点で、システムを複合させた複雑なシステムになりますので、今回は正確な精度の高い説明をするよりもむしろ、ざっくりとした形で説明させていただきたいと思うんですけれども、1つ目は、まず箱の安全性をどうやって担保するのか、についてお話をさせていただきます。

まず、型式証明というものが箱には必要になります。この箱はどんな形で造っても構いません。新しい技術を採用してもいいですし、どんな世の中のものを使ってもいいんですが、箱は絶対安全であることを証明して、当局に認可をもらうことで初めて、この箱を実際に飛ばすための製造や運用といった、次のプロセスに移れるという形になります。ですから、いろいろなアルゴリズムもしくはシステム、新しい技術を取り入れる状況があったとしても、その箱の安全性について、ちゃんとそれを証明するというプロセスを経ないと、箱の販売やそれを利用した事業を認められないという形になります。

その証明ができたら初めて、例えばそれを使ったサービスの主体、つまり、エアラインといったところに売ることができます。売るためには、ちゃんとした製造をしていることについて、やはり認可が必要です。つまり、安全な箱を証明したんですが、その安全な箱を、品質一定で所定の仕様のものが造れるよという証明が必要です。さらに、その製造プロセスでつくられたものについては、これは車の車検に似ていますけれども、1機ごとに耐空証明、つまり飛行機の車検版ですが、その証明書が与えられています。これで初めて、エアライン側に引き渡すことができ、エアラインはそれを使ったいろいろなサービスを展開できるという流れになります。

その箱も、一度認可を受けたからといってそのまま使えるわけではなく、その箱の耐空性、安全性の維持を必ず求められる形で事業が展開されます。そのために、飛行機は何か月、何年か置きに必ず整備し、または部品交換して安全性を担保します。また、各種認定制度を設けて、耐空性維持を行わなければならないことになります。このように、各種の証明がありますが、これも設計した国、造った国、あるいは運航している国それぞれで発行しなければいけないという複雑な仕組みです。

次のスライドをお願いいたします。本日、ガバナンスについて、レイヤーの意識をもって事務局からも説明が行われていました。いろいろなレイヤーが航空機のほうにもあります。このレイヤー分けが本当に正しいかどうかはまだ私も確信が持てませんが、例えばどんなもので箱を造ってもいいというような話をさせていただきました。新しい技術含め、基礎データ、アルゴリズム、どんなものを使って造っても構わないのです。ただし、それを使った上で、信頼ある設計をしなければいけないといいますか、安全な箱を造らなければいけないのです。その箱を造って初めて、サービス、つまり、全体が成り立つかというところで、一番上にあるのはインテグレータと書いていますが、ここが第一義的責任者になります。仕組みとしてはとてもクラシカルな管理です。要は、箱を造った人に一番責任を持たせるということになります。

その箱を造った人は、その下にある、箱が安全に造られている、つまり、安全なシステムの設計を担保しなければいけないので、そこに立ち入り、一緒に開発しなければいけませんし、公的機関の認証官もそこまでしっかり立ち入らなければいけません。つまり、この箱は安全な設計であることの証明を行うのですが、基礎的な評価試験、あるいはソフトウエアによる計算・解析にも審査が入り、その解析の仕方・アルゴリズムすらもしっかり審査を受けることになります。

さらに下のレイヤーでも、例えば入力しているデータ、造る際の素材・材料の品質、これらもしっかり管理することも当然必要です。ソフトウエアの基幹となるアルゴリズムもそうですし、材料データもそうですし、基盤となるデータも規格通り適正な手順で取得していること、また、品質管理をしていることまで立ち入って審査されます。

そのため、一番下のレイヤーには、いろいろな種類のものや技術があり、本当はそれを使って各種事業ができるのかもしれません。ただ、航空機の用途に限ろうとするとかなりそこで絞られて管理された上で使われるというようなところになりますので、それ単独で例えば他の航空機に販売するような事業は成り立ちません。やはり上からしっかり全てをデータ管理された上で初めて売れるというようなことになりますし、事業を行うことができることになります。

また、一番上のレイヤーですと、インテグレータに該当します。もっと本当は多くのレイヤーがあるのかもしれませんが、運航を生業とするエアライン、つまり、サービスを提供するエアラインも同じような責任が課されます。これは安全性維持のためです。安全性の証明とともに、それがずっと維持されているかという確認を定期的に受けなければいけないということになります。

何か起こったときどうするかといいますと、まずはインテグレータに行きます。もちろん運航ミスとかそういったものは別なんですが、安全性の不備などの疑義がある場合は、インテグレータ、箱を造ったところにまずは責任追及があります。そこで疑義が解消されない場合は発行停止、つまり耐空性を停止することになります。要は、一斉に全世界のある航空機は動けなくなるといったような事例もありますが、そういったようなことが発生して、そうすると、そのインテグレータが、設計変更や対策を明らかにした上で、しっかり安全性を担保しない限りは再開ができないような管理がされています。このように、かなりクラシカルな安全性に関するガバナンスになっている状況かと思います。では、次のページをお願いします。

このようなガバナンスはとても大変で手間もかかります。とはいえ、世の中いろいろなサービスを提供しなければいけないということで、3つほどトピックスとして挙げています。1つは国際連携です。これは航空機もそうですけれども、国内だけじゃなくてむしろ国外、国際間のほうが多数の運航量を誇っていますので、いろいろな国で造られたものを例えば自国で飛ばそうとしても、一回一回こういった認証するのはとても大変です。

ということで、日本だとアメリカかヨーロッパの機体しか大体飛ばないんですけれども、国同士の相互認証というような仕組みがありますし、そもそもの基準は国際標準が必ず毎年更新されたり、採択されたりしていて、その意味では国だけでやる必要はないというところがあります。国同士で、アメリカで認めたものは日本も認めようというような相互認証の仕組みを持っています。

もう一つは官民連携です。クラシカルなガバナンスでは、官が全部管理しようとするんですけれども、民間との連携がやはり必須です。官だけで技術的なことも含めて全て理解しているわけではないというところです。しかし、認証するためには技術的にも掘り下げて全部審査しなければいけないということになりますので、民間に一部委託する仕組みもあります。不正検査になると駄目ですが、ある程度一部は委託するというようなところもありますし、通常は技術もよく分かってないと認証もできないので、例えば民間でインテグレータといいますか、造った経験を有する人が認証側に移ったり、相互の移動というのも結構交流も盛んです。そうしないとお互いよく分からないので、認証プロセスも時間がかかるだけで大変だというところもあります。管理する側も、実際事業を行う側も、よくよく交流しているというのが実情だと思います。

最後は、小型無人機です。これは、今までの航空機は空港を拠点としてそこだけを、例えば運航管理したらいいという話でしたし、造っている箱、つまり、飛行機も特定の企業しか造っていません。その意味では管理がしやすい状況です。

現在、ドローン含めていろいろな無人機の利用が進む状況では、これまでの仕組みだとやはり成り立たないよ、というのが共通の理解です。基本的には空を飛ぶものであれば、これは社会的な受容性と関連しますが、落ちたら困るよねというところがありますので、基本的には従来の航空機と同様のルールをやはり課さなければいけないのかもしれません。ただ、それだと、ドローンを含めた新規サービスというのはやはり成り立たないので、無人航空機独自といいますか、それに特化したような形で、規制緩和や飛行安全ルールを策定をしています。あとは、大きい飛行機が飛ぶのを邪魔しないような空域だけに限定するとか、サービスができる空間とか時間を制限した運用をする方向性でも動いていますが、新たな技術振興というのは積極的にやっていきましょうというような流れにはあります。

ですので、どういうふうな規制をしたらいいか、どういうふうな取組をしたらいいかというのは、官と民で話し合いながら今決めている段階ですし、特区などを含めていろいろな先取りの先行研究・実証試験をしながら進めているのが実情です。こういった形の取組は分散型金融にも必要かなと考えています。従来にはないサービスなので、従来の規制のままというわけにはいかないとは思うのですが、ただ、ある程度やはり管理しなければいけない。でも、どういうふうな管理をしていいかというところは、官民共に一緒に考えていく仕組みが必要だろうと思う次第です。

すみません、取り留めもない内容ですけれども、こういった形がほかのシステムでも取られているということです。以上になります。

【神田座長】

どうも横関先生、興味深いお話をいただきまして、ありがとうございました。

それでは、残りの時間、メンバーの皆様方に討議をお願いするということになります。今の事務局、それから、横関先生からの御説明に対する質問がありましたらもちろん出していただき、そして、御意見がありましたらお願いしたいと思います。繰り返しになりますけれども、お手元資料3に本日御意見をいただきたい事項をまとめておりますので、それも参考にしていただければと思います。

順番ですが、まずメンバーの皆様方から御質問、御意見をお受けし、それが一通り終わりましたら、その後でオブザーバーの皆様方に御発言の機会を提供させていただきたいと思います。前回までと同様、御発言される場合には、オンライン会議システムのチャットに全員宛てで、御自身のお名前を入力、送信いただければと思います。それを確認して私のほうから御指名をさせていただきますので、お名前を名のって御発言いただければと思います。それでは、早速チャットをいただいておりますけれども、松尾先生、どうぞお願いいたします。

【松尾メンバー】

事務局の皆様、横関先生、御説明ありがとうございます。それで、まず論点シートに従って順に述べたいと思うんですけれども、まず全体の論点の1の分散型の整理についてですけれども、まず前から申し上げているシングルポイントフェーリアをなくすこと、また、分散型P2Pのアーキテクチャーが本当に大事だと認識させられることが昨日実は2つ重なって、1つはフェイスブックが、BGPとDNSという、本来彼らが無意識に肩の上に乗っているインターネットに関係する基本的な部分の問題で長時間サービスが止まって、スマートデバイスを含めて大きな問題を引き起しました。もう一つはモバイルSuicaのサービスが止まって、大事な時期なんですけれども、定期券の購入が止まったりとかチャージできない人がたくさん出ました。

前回、M2Mの話もちょっと差し上げたんですけれども、M2Mとかサイバーフィジカルのような既存のサービスとAPIのような仕組みだけでは到底さばき切れないユースケースの対応が急務であって、こういうユースケースでの支払いと決済インフラの構築に失敗したら、日本として劣後することが分かっている。つまり、単にイノベーションとくくるわけではなくて、もうつくらないといけないものがはっきりしている中で、こういうシングルポイントフェーリアをなくすこと、P2Pとか分散型の金融サービスを信頼ある形で構成することの必要性とか、あるいはこの会議自体の大事さを改めて認識していました。

その上で、1についてまずレイヤー分けとかトラストとかガバナンスの定義というのは、今この領域の話をクリアに分析できる人というのは多分地球上に1人もいないというふうに個人的には思っていて、ISO/TC307でブロックチェーンの標準化していますが、この委員会もかなりいろいろな難しい場面に遭遇しています。実際参加しています。それが1つの例だと思います。

例えばトラストについては、私が参加しているTrusted Web推進協議会の定義を事務局資料で引いていただいておりますが、これは我々が2016年に日経で連載した話とそれを書籍にまとめた『ブロックチェーン技術の未解決問題』という本があるんですけれども、そこの定義を採用していただいているのですが、これが実際にユースケース上どう取り扱われるかというのは、Trusted Web推進協議会そのもので鋭意研究中なんです。ということを考えると、事務局はすごい大変苦労されて整理を試みられたということだと思いますし、そのことにはまず心から感謝申し上げたいと思うとともに、一方でこれを時間をかけて磨いていくことがとても重要であって、だからこそこの研究会が、研究する必要がある研究会があるのだと思いますので、ぜひ一緒に協力させていただいて磨いていければなと思っています。

その上で、セキュリティ、トラスト、ガバナンスというのは、どうしてもレイヤーを分けて、分けた上でほかのレイヤーにお任せということにはならなくて、どうしてもレイヤーをまたがって一緒に検討しなければいけないというものなので、レイヤーを分けて検討するのではなくて、何に対するトラストなのか、何に対するガバナンスなのかという対象もはっきりさせて、要求事項を出していくことが先だと思います。

そして、台帳の部分を巻き戻ししなくても、台帳の意味を解釈するアプリケーションで巻き戻し相当の処理をするということすら可能なわけで、あるいはそのほうが課題解決に対するトレースが残ることになるということもあるので、いろいろなことを考えながら、事務局が書かれた今の資料でいうところの複数のレイヤーで問題を解決するということは可能なわけです。その方法を改めてじっくり考えられればなと思います。その意味で、(2)では、そのように考えて、複数のエンティティーで責任を分担するという可能性は、前回私がプレゼンしたように当然存在する形態かなと思います。

あとは、前回時間がなくてあえて参考資料のほうに回しましたが、前回資料の私の資料の36ページ、37ページに今回の横関メンバーと同じようなことについて記載させていただいておりまして、まさに全く同じ考え方でございます。暗号とかその応用する世界においては、公開での第三者認証の組合せというのが、この20年、25年の世界中で努力して構築したトラスト、信頼の唯一のスタンダードであって、改めてISOなどで決められたISMSであるISO/IEC27000シリーズ、コモンクライテリアと呼ばれるISO/IEC15408、JCMVPなど、複数のレイヤーにまたがる仕組みなんですけれども、既に存在する公的認証と第三者認証の成功例に倣うということが重要かと思います。

そして、1について時間をかけてゆっくり検討するということを申し上げた一方でステーブルコインについては、事務局説明のとおり、裏づけ資産やAML/KYCをはじめとして多くの問題が指摘されていて、米国でもたった今、現在、様々な議論が行われていますし、再来週、私がおりますワシントンDCでフィンテックウィークというイベントが行われますけれども、名立たる主要な規制当局者のトップクラスが最新の状況の議論をそこで行います。これらは、先ほど申し上げた分散型金融全体の論点とは独立に課題を指摘できると思いますし、既に論点2の(2)に挙げられているものは明白な論点かと思いますので、これを中心に次回などに集中的にステーブルコインの課題、現在においても規制目標から外れた点を明確にする必要があると思います。これはP2Pなど本当に大事にしなければいけない、最初に申し上げた点とは無関係に指摘できると思います。

あとは今回の2つのコインの分類に関していうと、リスクの分析を行った上で少し改良の余地があると思うので、できればバージョンアップに協力したいと思っています。

最後に、論点3、4については、各国のCBDCの状況を見てもそうですし、分離するのが当然考える対象であると。これは最初に申し上げた昨日のフェイスブックの件、Suicaの件もそうですけれども、障害が起きる、あるいは運営会社が止まる、破綻するということを想定するとこのようになって当然で、25年前の日銀NTT電子現金でもう既に同じように考えています。つまりは、AML/KYCは除くものの、実はそのときに検討済みのところもあって、例えば日銀はあまたある銀行の中では一番破綻をしないという前提で、一方で市中銀行はそれより破綻する可能性があると。電子現金やCBDCは、自分が口座を持つ銀行が破綻しても有効でないといけないので、だとすると分離型になるというのは当然だと考えるのが普通のわけです。こういう感じで25年前の実験からも学ぶ必要もあるでしょうし、幸い詳細を当時検討した生き残りがメンバーに2人いますので、そのこともこれでぜひ、将来のこの研究会の会でその辺の議論を協力させていただければいいかなと思っています。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、チャットをいただいている順番で次に、坂メンバー、どうぞお願いいたします。

【坂メンバー】

ありがとうございました。私のほうからは、論点2以下について順次意見を述べさせていただければと思います。

まず論点2についてですけれども、デジタルマネー類似型と暗号資産型は確かに機能や保護されるべき利益を異にすると考えます。デジタルマネー類似型の利用者は、発行価格と同額で償還されることを信頼して、これを価値の交換手段ないし価値の保存手段として用いると考えられます。ここでは、発行価格と同額で償還されることが重要であり、このことを実現するために制度的・技術的・ガバナンス的に条件を整えることが必要だと思います。

他方で、デジタルマネー類似型の中に、償還可能性に疑義があるものが存在する場合には、悪貨が良貨を駆逐するということになりかねず、普及もイノベーションも進まないことが懸念されます。したがって、償還可能性に疑義あるものはデジタルマネー類似型の類型から確実に除く必要があると考えます。

これに対して暗号資産型は、価値の安定が試みられるとしても、本質的には需給に基づく価値変動、価格変動と無縁であり得ず、価値が維持されないリスクは常につきまとうことになると考えられますし、利用者もこれを十分念頭に置いて利用する必要があると考えます。暗号資産型については、制度的、技術的、ガバナンス的に条件を整えたデジタルマネー類似型との混同が生じないように明確な区別を図る必要があると思いますし、利用者がそのリスクを適切に認識できるようにする必要があると思います。

次に、論点3についてですけれども、既存のデジタルマネーとしては、資金移動、あるいは前払い式支払手段などがあるかと思いますが、サービスの普及に伴って、分業あるいは機能の分化が進んでいくということは避けられないことだろうと思います。クレジットの分野でも、この間分業の進展に応じて制度的枠組みが整備されてきているところと思います。既存のデジタルマネーにおいても、発行者と移転・管理を行う者との機能の分化を念頭に置いて、制度整備を図る必要があると考えます。

次に論点4についてです。ステーブルコインについて発行体と移転・管理を行う者が分かれる場合の業規制については、整理が必要と思います。機能が分離する場合も、平成13年の最高裁決定が、為替取引の概念について、送金の依頼を受けてこれを引き受けること、またはこれを引き受けて遂行することとしていることなどに鑑みますと、発行者と移転・管理を行う者の双方が為替取引規制の対象になるものと考えられます。

しかしながら、発行者と移転・管理を行う者のそれぞれに全ての規制を適用すると、例えば資金決済法上の利用者資金の保全措置が二重に必要になるのかなど問題が生じるところかと思います。分離した各機能に応じて過不足なく規制を整理するということが必要であろうと思います。この点、機能に応じた規制という観点からは、発行等については、プログラムの適性とか裏づけ資産の確保等が重要と思いますし、また、移転・管理等につきましては、移転記録の確実性やマネーロンダリング対策等が重要な課題と考えます。また、それぞれ顧客接点の在り方に応じて利用者保護を図っていくという点も重要かと思います。

それから、注9に記載されております視点が重要と考えます。キャッシュレスの一層の推進のためにも、安全安心な決済制度が求められているところと思いますが、電子的送金、決済手段一般にFSBの原則を求めるということは重要と思います。また、分業が進む中で規制の隙間や不整合が生じることを防ぐことも重要であって、サービス提供者全体として、包括的なガバナンスフレームワークを構築するということが非常に大事だと考えております。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは次に、野田メンバー、どうぞお願いいたします。

【野田メンバー】

野田です。私も論点シートに従って自分の考えを述べさせていただきます。

まず、論点1のレイヤーのいずれかで問題が発生した場合に金融サービスに求められる適切な対応が可能かということなんですけれども、この点については、技術的にできることはかなりいろいろあるはずです。私はエンジニアではないのでその辺りについての詳細については発言を控えますけれども、それ以前に、利用者や管理者たちがそのような規制というか、金融庁などが示した方針に対して従う意思があるのかとか規制に従う意思があるのかとかいう部分に関してより何か根源的な問題があるのではないかなと考えております。これがなかったとすると、技術的に可能であったとしても実際に達成することはできないということになります。個人的にはこの辺りが気になるポイントかなと考えております。

論点1の2つ目のほうのコードの監査を通じたインセンティブづけについては、前回少し私のほうからこれについての発言をしたんですけれども、実際にこれが機能するのかどうかということについてはもう少し慎重に検討する必要があるようには考えます。現状では例えばどういうサービスを日本の国内で使うことを禁止する、というようなタイプの規制を行うよりは実効性があるのではないか。そういう意味でいうと、規制という意味で、政府として許容できないサービスに対しては、コードの内容にかかわらず、安全性・頑健性に関する評価を与えない。そうして、利用者にコードが健全であるという信頼を築きやすい、規制に従っているサービスへと誘導する。この効果を通じて開発者にサービスを健全なものにするインセンティブを与える、こういう手段は検討する余地はあるのではないかなと思います。

論点2につきましては、基本的には先ほどの坂先生の御発言に賛成です。償還を約しているサービスと、そうでないアルゴリズム型のサービスにつきましては、提供するサービスが異なります。さらに付け加えたいのは有効な規制も異なると思います。償還を約しているものについては、償還を約している主体に対して規制をかけることができますので、より規制が容易なわけですね。なので、約束していることも異なる、保証している内容も異なるし、有効な規制の在り方も異なるということで、これは別の枠組みで規制をかけるほうがよいのではないかなと思います。

さらにこの点に関して少し付け加えると、リテールの保護などをどこまでやるのかということについては、アルゴリズム型のサービスとそうでない従来型に近いようなサービスとでは区別する必要があるように考えています。なぜかというとアルゴリズム型のサービスはもちろんコードの解読可能性という論点はあるんですけれども、一応何をやっているかということはコードの上に書かれているので、見えないところでこっそり変なことをやるということはできないわけです。

今まで従来の金融サービスなんかで規制当局が絶対に必要だったのは、裏で何をやっているのか分からない、裏でインチキをされると困るという問題が利用者の側からは絶対に解決できなかったという問題があったからです。ブロックチェーンを基にしたサービスなんかだと、この部分は、難しいとはいえ、究極的にはできるということになっている。ということで、DeFiを取り巻く状況と従来の状況とで環境は異なるので、利用者の保護に対する、どこまでどう規制をかけるのかということについては、従来の金融に対する規制をそのまま横滑りさせるのではなくて、何を目的としてどこまでやるのかということについて、そこから検討が必要なのではないかなとも思っています。

論点3と論点4につきましては、現状、詳細にコメントできるほど私のほうでは情報がないんですけれども、もちろん既存の規制、枠組みに乗らないサービスが登場することで問題が発生している、あるいは問題が発生することが予見されているのであれば、当然新しい枠組みを考えるべきです。詳細なコメントをするためには、現在どういう問題が生じているのかとか、あるいはこれからどういう問題が生じ得ると予見されているのかということについて情報が必要です。それを見た上で意見をしたいと思います。

以上です。ありがとうございました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは次に、松本さん、どうぞお願いいたします。

【松本メンバー】

ありがとうございます。LayerXの松本です。自分のほうは、主に論点1のところ、技術的な観点のところが中心に述べられるかなと思いますので、時間も短いのでこちらに集中してお話をさせていただきたいなと思っています。

大前提、イノベーションの推進と投資家・利用者保護のバランスをいかに取っていくかというところが重要だと考えております。その上で、DeFiだったり、その仕組みの上というのは現実的には今後も新たなスキームが生まれ続けるので、このリスクをどのように包含していくかというところが重要かと思うんですけれども、その観点から、今回ファーストレイヤーからサードレイヤーまで分けた中で、どういったことが考えられるのか述べさせていただきます。

まず、ファーストレイヤーといいますか、ビットコインとかイーサリアムのそのベースになるブロックチェーンのレイヤーについては、このレイヤーの方向性を、我々ないしは規制当局として方向を変えていくということは非常に難しいなと考えております。そもそも運営主体がばらばらでして、それを実装する人々も意思はそれぞればらばらだったり、そういったものがマイニングだったり、様々な手法を通じて1つの運営が行われていると。それがこのパーミッションレスな世界の特徴であります。

そうすると、このブロックチェーンのベースのレイヤーというのがずっと我々の思う方向に動いてくれるかというところの保証すらないかと思っております。現にハードフォークと呼ばれるような新しい仕組みを導入していくときにチェーンが2つに分かれていってしまったような事件が多々あったりとか、大きな仕様の変更があったりとか、そういった我々の分散型金融のエコシステムを支える基盤レイヤーが想定外の変化を遂げるということは常に起き得る、想定し得る事態なのかなと思っております。

ただ一方で、セカンド、サードと呼ばれているようなレイヤーについては、明らかに運営主体が存在することがほとんどかなと思っております。その観点でいくと、安全性確保、AML/CFT、そういった2つの観点から考えると、十分に技術的に対応可能な手法を生み出すことは可能なのではないかと考えています。主には安全性確保のためにまず懸念点があるとすれば、セカンド、サードのレイヤーそれぞれ、例えば秘密鍵を管理しなければいけないとなってくると、今の暗号資産取引所と同等の安全性が求められてくるよねというのはどうしても入っていきますが、逆に言うと、既にそういった事例として運営されているものであったります。

もう一つ度々議論に上がるのが、スマートコントラクト自体の脆弱性についてどう向き合うかというところなんですけれども、完璧なコントラクトを運営することを求めるというのは基本的に難しいかなと思っています。これの理由の1つが、例えばファーストレイヤーのブロックチェーンの仕様が変わったがゆえに発生する不具合というのも重々承知しておくべき課題かなと思っております。そうすると、ファーストレイヤーの変化によって生まれたもの、ないしは我々が想定していなかった非常に複雑なシステムの組合せで起きる不具合、そういったものは、今それを完璧に検知できる、完璧に監査できる仕組みが世の中にあるかというと、エンジニアの視点でもないというふうに考えております。

ですので、そこはもう不具合はどうしても起き得るものという前提で、運営主体を明示しながら、例えば資産の凍結だったり、ロールバックのような仕組みを設けていくことが重要なのかなと思っております。そうしていくことで、投資家の資産をどのように保護していくかというところの責任主体を明示して、何か問題が起きれば、そこに対する対処を彼らに求めていくということができるのかなと。

またさらに、セカンドのレイヤーでいきますと、そういったロールバックとか、仕組みを設けていくとどうしてもその権限というのも彼らが持つことになります。例えば任意のユーザーのウォレットを凍結してしまうとか、書き換えてしまうとか、そういったところが運用できてしまうというところになりますので、そこに対する厳重な管理、ガバナンスというところは求められていくのかなと。ここは暗号資産取引所のような規制と同等になってくるのかなというふうには思います。

あともう一つ懸念として出てくるのが、複雑なロジックになるほどその実行コスト、いわゆるブロックチェーンの実行にも手数料が必要です。イーサリアム上のスマートコントラトを動かすにはガス代と呼ばれる手数料が必要なんですけれども、この実行コストも、実は1つの懸念事項としては捉えておくべきものなのかなと思っております。小さな取引に対して高い手数料がかかってしまうと、そもそも実現の壁になってしまうのではないかと。こういった問題に対してどのように向き合うかというのも必要なのかなと。こうしたファーストレイヤーに起因する問題ないしはセカンドレイヤーの運営主体によるガバナンスの問題、そういったところは技術及び技術の外側でそれぞれ対応をしていくことでリスクというのはある程度カバーできるようになるのかなとは思っております。

また、AML/CFTの実行可能性というところでいきますと、実はこれは既に幾つかの分散型金融のサービスの中では実現例もあります。実際のKYCされたウォレット、そういったもののみで運営することができる分散型金融というのは、KYCのリストを共有するような仕組みが用意されれば、技術的には実現可能だというのが端的には言えると思っております。そうすると、KYC済みのウォレットとそうでないウォレットの世界で分離してしまうことで、ある程度その安全な圏をつくって取引をするということは可能になってくるのかなと思います。

一方で今のパーミッションレスな世界の現実を見ますと、KYCされたウォレットもそうでないものも複雑なシステムの上でつながっていますので、これが線引きは当然行いつつも、混ざってしまう部分に対して、これは機械学習的なものだったりソフトウエア的なものを使って実際の取引の管理をすることで、どういった不正な取引、AML/CFT相当の取引が行われているのかというのは機械的に検知することが重要なのかなと。そこから資金の流れを追っていって、そこの出口のところで規制をかけていく必要があるのかなと思っております。

また、実際に不正なものが見つかったというときには、ロールバック、凍結するというような事例も既に、先日起きたとあるハッキング事件の中でもテザー社による凍結などの事例もありましたので、そういったところの取組は可能であると考えておりますし、また、それをより実効性高く運用するためのブラックリストの共有といったものがあると、より実効性も高まってくるのかなというふうに思っております。

ですので、セカンド、サードのレイヤーできちんと運営主体が明示されていて、そこが規制の実行というところを行う限りにおいては技術的にも運営可能なものなのかなとは現時点私は考えておりまして、そこの運営主体がきちんとそのリスクをカバーできるような仕組みを設けていくことが肝要なのかなというふうに考えております。

これ以降の論点に関しては、時間もありますので、後ほどの皆さんにお譲りさせていただきたいなと思います。発言は以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、チャットの順番で、次に井上さん、どうぞよろしくお願いいたします。

【井上メンバー】

井上です。ありがとうございます。最初に、論点1、パーミッションレス型の金融サービスについてですけれども、これ、技術的なことはよく分からないのですが、技術的に仮に本人確認とか障害対応あるいは巻き戻し対応とかができる仕組みをビルトインできるとしても、先ほど野田先生が示唆されましたように、意図的にそういった仕組みをビルトインしないサービスが利用されているときにどう対応するのかが非常に難しい問題なんだろうと思います。

この手のサービスについて、例えばインサイダー取引規制みたいに「何ぴとも規制」で利用者全てを規制するというわけにはなかなか現実的にはいかないと思うので、そうすると、相対的に運営者に近い主体があれば、そこを通じて規制することが考えられますし、そうでなければ、言わばサービスの利用者であっても、業として利用する参加者がいる場合には、それを捕まえて規制するのか、なかなか規制の方法が難しく、そういったところを検討する必要があると感じました。

次に、論点2についてですが、これはアにあるデジタルマネー類似型とイの暗号資産型はやはり性格が違いますので、ここにありますように両者を区分して検討することについては賛成です。さらに、アのデジタルマネー類似型については、これは(2)にも関わりますけれども、発行者の信用リスクとかオペレーショナルリスクとかに関する規制、情報開示その他の規制と、それから、流通市場の在り方とか媒介者のリスクとかに関わる言わばセカンダリーの問題と、2つに分けて考えることが必要なんだろうと思います。

次に、論点3になりますが、これはデジタルマネー類似型に限定するのではなくて、既存のデジタルマネーも併せて、「発行者」と「移転・管理を行う者」に分けて考えることについては賛成いたします。

その関連で論点4ですが、ここにあるように、①と②・③に分かれたサービスを当然念頭に置きながら、柔軟で過不足のない法制度というのも、これも総論としては賛成なのですが、その上で、そういった法制度の構築に当たって、ここに挙げられているステーブルコインあるいはステーブルコイン的なものには様々なものがあって、どのように分類あるいは線引きをするのかは、実際のところ結構難しい問題と感じております。

典型的には、単一の法定通貨と連動したものであって発行額と同額で償還されることがはっきりしているものは比較的明瞭だと思うのですが、そうではないものの中には様々な性格を持つものが一応あり得て、ここ最後、資料のところに参考として挙げられているような形で、暗号資産に該当するものもあるでしょうし、有価証券に該当するものもあると思います。あるいは前払い式支払手段に該当するものの中にも非常に広く汎用的に使われるものは、ここでいうステーブルコインに近づくものもあるのかもしれないと思いますが、いずれにしてもそれらは現行法上も適用される規制が違うわけですけれども、どういう形でどこで線を引いて規制をしていくのかも非常に難しい問題ではないかなと思います。それも併せて意識しながら規制の在り方を考える必要があると考えます。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは続きまして、加藤さん、どうぞお願いいたします。

【加藤メンバー】

ありがとうございます。資料3の論点に沿って意見を述べます。

論点1につきましては、既に野田メンバー、井上メンバー御指摘のとおり、AML/CFTなどの解決が技術的に可能かという問題に加えて、実際にそのような問題を解決する機能が実装されるかということがやはり大きな問題となるかと思います。1つの考え方としては、パーミッションレス型の分散型台帳に複数の選択肢が存在する場合には、そのような分散型台帳を利用して金融サービスを提供しようとする者、これはセカンドレイヤーの業者になるかと思いますが、そういった業者を対象として、提供しようとする金融サービスが抱えているリスクに対処可能な分散型台帳の選択がなされるような仕組みを構築していく必要があるように思います。

ただ、このような仕組みを仮にステーブルコインを対象としてその規制に組み込む場合、ステーブルコインの発行者がそのステーブルコインが流通する分散型台帳を限定できるということが前提となります。この点に関して質問というか、気になっている点があるのですが、資料1の6ページでは、テザーが複数のパーミッションレス型の分散型台帳で移転可能であるということが説明されています。テザーの発行者は、テザーが流通する分散型台帳を限定できるのか、気になりました。

次に論点2に関して、デジタルマネー類似型と暗号資産型の区別についてコメントをいたします。資料3にありますとおり、経済社会において果たし得る機能などが異なるとの評価について私も賛成しますが、その具体化が必要であるように思われます。法定通貨との価値の連動を目指すという点では、その方法や難易度に差はありますけれども、両者に差はないように思います。やはりこれも多くのメンバーの方が既に発言されておりますけれども、両者の区別は、デジタルマネー類似型については、発行価格と同額での償還が約されているため、例えば取付け騒ぎに類似する問題が発生する可能性があるという点が重要であると思います。この観点からは、デジタルマネー類似型のステーブルコインの発行者と保有者の法律関係が一体どういうものになっているのかということの明確化も非常に重要となるように思います。

最後に3点目として、論点3と論点4に共通する、発行者と移転・管理を行う者の分離についてコメントします。これは金融のアンバンドリング化の一例として整理すべきであり、金融規制がそれに対応するのは基本的に望ましいと考えます。決済サービスは決済手段と決済方法の組合せから構成されると説明されることが多いような気がいたしますけれども、ステーブルコインによる決済というのは、決済手段であるステーブルコインが、パーミッションレス型に限らないかもしれませんけれども、分散型台帳を利用して移転されると理解できます。つまり、分散型台帳は決済方法と位置付けられると思います。

そして、決済手段の提供者と決済方法の提供者が異なるという事例は決してステーブルコインに特有の問題ではないと思います。例えばクレジットカードは、決済手段である預金を移転する決済方法として位置づけられると思います。ですから、決済サービスの機能が分化して複数の主体によって提供されているということは決して特異なことではないので、それに対応して現状の規制がうまく対応できているかどうかを見直すことに私は賛成したいと考えます。

私からは以上です。ありがとうございました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

テザーの件はどうしますか。よろしいですか。

【端本信用制度参事官】

また後ほど。

【神田座長】

それでは、先に進ませていただきます。それでは、次が佐古さんですね。佐古先生、どうぞお願いいたします。

【佐古メンバー】

発言の機会をありがとうございます。私も論点1から4について発言させていただきたいと思います。

まず論点1の(1)の①と②なんですけれども、ここでは技術的課題について問われていますが、技術的課題の前に、金融サービスの基盤として求められる水準が具体的に何であるのか、要件が何であるのかというのを明確にしていくことが必要なのではないかと思います。それが明確になれば、それに対して技術的にどのようなことができるかというのは、技術者も交えて検討できるかと思っております。そのときには、技術的課題だけではなくて、技術を運用でカバーするとか、様々な方策をつくって、一つ一つの飛行機を造っていくように、全体を通して個々のシステムが安全なものであるかということが検討できるのではないかと思っています。さらには、安全にしようと思うと、システムが複雑になってしまったり使うのに手間がかかってしまったりとかということもありますので、出来たものにちゃんと社会受容性があって、みんなにとって使いやすいものであるかということも重要ではないかと思っております。

引き続いて、論点1の(2)の③についてですが、ここにはシステム管理責任ということについて質問されていますけれども、実はシステム管理責任だけではなくて、さっき述べたような運用責任とか、金融サービスに関わる様々なステークホルダー間で役割分担があると思いますので、サービス全体で役割分担を明確にして、インセンティブやいろいろな仕組みを活用して、誰がどういうことをする責任があるのかという責任分界点が明確になるように全体の設計を実行するのが必要なのではないかと思っております。

④について、まさしく第三者だったり、アカデミアだったり、安全性や頑強性を評価する仕組みは必要だと思っています。このような評価の実行可能性はあるかということですが、この評価に関わる人たちに対しても適切なインセンティブを与えて、あるいはサービスを提供する側も、この評価に通ったらどういういいことがあるかというようなインセンティブを含めて、実行可能な仕組みを模索していくというのが重要ではないかと思っております。以上が論点1です。

論点2についてですが、私が不勉強の面もたくさんあると思うんですけれども、この資料を頂いたときには、デジタルマネー類似型と暗号資産型の本質的な違いがストンと胸に落ちてこなかったということがございます。この資料は一般の方にも公開されるので、構造とか機能上の本質的な違いが明確になっているような形に分類した上で委員会で検討するということがよいかと思っています。アルゴリズムで価値の安定を試みるという表現がちょっと分かりにくかったかなというふうに思います。

その次の(2)、償還可能性に疑義があるようなサービスというのはもう私は言語道断だと思っておりまして、これはやると言ったことをやってないというのはちゃんとパニッシュするべきであると思っております。

残り、論点3になります。論点3はまさしくそのとおりだと思っておりまして、法制度として一貫性があるものが分かりやすいというふうに思っています。ここで価値安定の仕組みの提供とありますけれども、どういう仕組みで価値安定を提供しているのかということによってももしかしたら変わってくるのかもしれないなと思っています。

論点4については、機能を①と②・③と分けられていますけれども、それ以外の分類はないのかとか、仕組みによって変わるのではないかとか、例えば、②・③をやる人が複数いるとか、①と②と③をやる人がそれぞれ複数いるとか、様々な場合を想定して法制度を検討するのがいいのではないかなと思いました。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは続きまして、翁さん、どうぞよろしくお願いいたします。

【翁メンバー】

それでは、前半でパーミッションレスのことで、後半でステーブルコインについて、意見を申し上げます。

パーミッションレス型分散型台帳は、今後本当に様々な機能に活用されていく社会的な可能性を持った基盤だと言えると思いますが、やはり今日事務局から御紹介があったように、システム全体に責任を負う者、すなわち、規制や監督の名宛人がいないということが、やはり従来の監督のアプローチと決定的に異なる手法が必要になるということを意味していると思っております。

まだ規模としては小さいので、システム全体のシステミックリスクというところまではまだそれほど考えなくてもいいのかもしれませんが、やはり決済などにかなり機能を果たしていますので、マネロンとか利用者保護とかこういったところの公益に反する問題が起きたときに対応できるようにしていくことはとても重要で、今日御説明がありました、技術面とガバナンス面と、それを相互に補完的に考えて新しい規制・監督手法を考えていく必要があるのかなというふうに思っております。

今日御紹介ありましたような3層のレイヤー、こういったレイヤーに整理して考えて、特にオペレーショナルな問題とかAMLの問題とかこういったものが起きないようにするということについては、やはり技術的課題をどう克服していくかということが、今日横関先生のお話にもあったように、当局と参加者が今後一層コミュニケーションをするようにして、参加者と共に技術面の課題克服に努めていくということがとても大事だと思います。

先ほどいろいろな課題があるという御指摘もありましたが、まず第2層のところに例えばAMLの技術を実装していくというようなことは1つの可能性だと思いますが、やはりこれだけでは不十分で、ガバナンスとかそういった点からもしっかりと見ていくということが大事だと思っております。レイヤーごとに機能ごとに分けて考えるということで本質的な課題が分かりやすくなる面もありますが、今日御説明があったように、レイヤー全体として適切な機能を果たせるというそういった視点でアプローチしていくことがとても重要だと思っています。

今日いろいろなメンバーの先生方もおっしゃいましたけれども、やはり監督当局も参加者などの役割分担、ガバナンス、インセンティブがどういう仕組みになっていて基盤全体のトラストが成立しているのかということをしっかり把握し、その上での責任分担を考えていくということが極めて重要だと思っております。これも非常に難しい課題だと思いますが、そういったことを考えていくということが大事かなと思っております。

ステーブルコインについては、アとイという区分を考えていくということについては賛成でございます。アの発行価格と同額で償還を約するものというのは、マネー、貨幣に近いものとして考えていく。そして、現金や預金といった法定通貨、それに近いもの、類似のものとして考えるということが求められるということと思います。実際、交換手段に加えて、価値保存、価値尺度の機能としても類似の手段を果たすようなものとして認識され使われていくものと思いますので、今日御紹介があったように、現状では銀行と資金移動業が扱っているわけでございますが、これから貨幣は多様化してまいりますので、同等の機能を果たしているのであれば、コインを発行する、または取引するというような者について、その観点からの規制や監督をしていくということが大事になってくると思います。

それから、イのアルゴリズムでの価値安定を試みるものについては、マネー類似とまではしていないということで、暗号資産とか金商法の法律の中で扱っていくという考え方であれば整理しやすいのかなというふうに思います。ただ、ほかのメンバーもおっしゃいましたけれども、やはり価値が安定していると見る人たちが多いと思いますので、その境界線は非常に曖昧で線引きは難しいと思いますので、特に一般の人が多く使うようになった場合に開示がしっかりなされることは非常に重要だと思います。また、EUの規制などを見てみますと、資産参照型トークンなどであっても必要な流動性確保などを義務づけているような動きもございますので、そういった規制を参考にしながら検討していくことが大事かと思っております。

そして、決済手段といっても発行者と決済を行う者、管理を行う者の機能分化が進んでいることについては、特に分散型台帳で非常に進みやすいという面もありますが、加藤メンバーもおっしゃいましたけれども、まさに今後通常のデジタルマネーについてもアンバンドリングが進んでいくということは十分考えられると思っております。

その意味では、発行者への規律、例えば裏づけ資産とか、それから、決済・送金についての規律、AMLとか、こういったものというのはおのずとそれぞれの機能分担に伴い異なってくると思います。そういう意味ではEUなどの考え方を参考にしてルールを考えていくということが有益だと思います。特にこの分野については、やはりグローバルに同じコインが使われるということも十分考えられますので、グローバルに整合性のある規制・監督体制というのを考えていくということが大事かなと思っております。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは続きまして、神作先生、どうぞお願いいたします。

【神作メンバー】

ありがとうございます。私は、資料3の論点2と論点4を中心に発言させていただきたいと思います。

ステーブルコインについて、デジタルマネー類似型と暗号資産型に分けて規律の在り方を考えていくという基本的な考え方に賛成いたします。特にデジタルマネー類似型の場合には、交換・支払手段として利用されることが想定されていると思いますので、発行者に対しては、裏づけ資産の確保、さらに、運用を認める場合には運用規制、また、価値をできるだけ安定させることを確保するために利息を付さないことをはじめとして、価値の安定のための方法、とりわけ額面での償還義務を負わせることが最も価値の安定を確保する法的な手当てであると思いますので、そのようなルールについて考えていく必要があると思います。額面での償還義務は、発行者と保有者との私的な権利義務関係になると思いますけれども、こういった民事ルールを含めた償還請求権の在り方やその範囲、償還義務が認められない例外的な場合等を含めて、償還義務の内容について、支払手段・交換手段にふさわしいルールを考えていくことが必要だと思います。

これに対して、暗号資産型の場合には、ステーブルコインと名のる以上は、やはり支払い手段として使われるということを念頭に置く必要があるかと思いますけれども、多くのメンバーの方が御発言されたように、中身によっていろいろと多様なものが含まれ得るということかと思います。もし支払手段・交換手段として利用されるということが想定されている場合であれば、先ほどのデジタルマネー類似型ほどの強い規制は必要ないと思いますけれども、やはり裏づけ資産の確保とか、投資性が生じないような工夫をルール化することが必要であると思われます。

そのこととも関連いたしまして、論点4でございます。第1に、ステーブルコインの発行、裏づけ資産の管理、それから、償還と、これは専ら発行者の業務になると思いますけれども、論点4で指摘されておりますように、こういった発行とかステーブルコイン自体の管理に係る事柄と、第2に、顧客というか保有者を念頭に置いて、保有者が支払手段なり、デジタルマネーやステーブルコインを持っているときに、顧客の財産的価値を預かるという機能と、それから第3に、発行者と保有者を媒介するといいますか結びつける機能、第4に、実際に支払手段として使われる場合には、支払いが実際に行われるような各種のサービスの提供、こういった機能を分けて考えていくことが適切だと思います。論点4は、①から③だけではなく、もうちょっといろいろな機能に応じた分類の仕方もできるのではないかと思います。機能に応じて適切な規制の在り方を過不足がない形で考えることが、議論の出発点として重要と思われます。

論点3についても一言申し上げさせていただきます。先程述べたような観点からの議論や検討を通じて、既存の電子マネー等についてもいろいろなルールの見直しというのがあり得ると思います。発行者と、それから、電子マネーの移転・管理を行う者、あるいは顧客資産を預かる者、それから、支払いサービスに関連する者、そういった機能のほかにも、先ほど申し上げましたような償還義務の在り方等についても、翻って既存の法制度に反映するべき場合があるかどうかという点も併せて検討してはいかがかと存じます。

私からは以上でございます。どうもありがとうございました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは続きまして、栗田さん、どうぞお願いいたします。

【栗田メンバー】

横関先生、先ほどは興味深いお話をしていただき、誠にありがとうございました。

ここで私は、セーフティ・セキュリティの実務家、プログラムの検証の専門家として、先ほど松尾先生がおっしゃっていたISO15408や27001といった認証に関する経験・知見を持つ者としてお話をさせていただきたいと思います。

まず、安心・安全という言葉についてです。安全の定義はさまざまありますが、その一つとして、許容できない損失がないというものがありまして、さらに、安全が絶対的なものではない、どんな損失もいつも絶対にないということはない、要は、絶対安全はないということで、リスク管理が必要になるというのが出発点になります。ここは先ほど松本さんもおっしゃっていたところですが、絶対に大丈夫なものはないということをまず合意形成することが必要であろうと思います。

それから、安心ということについては、安全よりも定義が曖昧ですけれども、人の気持ちにも関係するところで、心配がないという意味合いがあります。たとえば能力がありそうな人がしっかり仕事を行っていそうだから安心して使えるとか、たとえばそのような意味があるのですが、いずれにせよ、利用者にとっての安心ということについても我々は考えていくべきだと思います。

その上で、ISO15408とか27001等の認証についての話になりますが、我々も、ICカードの開発において、たとえばハードウエアとソフトウエアのそれぞれの認証を取得して、そしてさらにシステム全体として認証を得るというようなことを行っているのですが、サブシステムの認証を個別に取得して、それから、それらを結合したものを検証・認証していくというやり方があります。ただ、先ほど松尾先生がおっしゃったように、レイヤーも含めてサブシステムごとに分けて考えるとしても、セキュリティという意味では一体のところがありますので、そこをどう捉えて考えていくのかということは今後の課題の一つだと思います。

それからもう一つは、サブシステムに分けるときに、システムの構造が作る人の都合で分かれているのか、使う人に分かりやすく分かれているのかという問題があります。現在は大抵の場合、作る人の都合で分かれているものに対して説明とかセキュリティの評価とか認証取得がなされている上で皆さんにお使いいただいているということで、実際に使う方にとって理解しやすい構造になっていないということが課題としてあろうかと思います。

そういったことも含めて重要なことは、先ほど佐古先生が上流からの要求が大切だということをおっしゃっていましたけれども、まさにそのとおりだと思いますし、さらにそのことに加えて、セキュリティに関しては、攻撃者の具体的な攻撃も想定した上で評価の基準や方法を考えていくということが必要になります。ISO15408では、セキュリティターゲットであるとか、あるいはその上位にあるプロテクションプロファイルといったものが必要になってきます。

ですから、たとえば金融システムのプロテクションプロファイルはこういうものであるとか、それから、そのインスタンスが幾つかあるとして、それぞれはこういうセキュリティターゲットになっていますといったような形で規定をして開示していくことが必要になるのですが、この会の初回でもお話しさせていただきましたけれども、現在まだない攻撃については、まだ生み出されていない、発明されていない攻撃に対しては対応できませんので、そこは課題として残るところです。

ということで、プロテクションプロファイルとかセキュリティターゲットを定めて、システムを作って、そしてそれを評価していただいて、認証を取得するというプロセスになりますが、これが安心ということともつながりますが、課題のひとつとして、利用者にとって安全が分かりづらいということがあります。

もともとのISO15408の思想としては、利用者が使うときに、これは安心して使えるものなのかどうかということを、セキュリティターゲットを見て、こういう目的でつくられていて、第三者も確認しているなら安心して使えるだろうということで、利用する・しないというようなことを判断できるということがあったのですが、技術の難しさもあってなかなかできていなくて、利用者にとって分かりやすいセキュリティターゲットや評価報告を技術者と利用者が共有するということができていないということがあります。ここも、もともと分かりづらい金融システムにおいてはさらに重要になってくるところだろうと思います。

あとは、評価や認証には時間が掛かりますので、それからどなたかがおっしゃっていたと思いますが、更新に弱いとか、それから、柔軟な運用に弱いというところがありますので、評価・認証の制度を使うというのとは別に、たとえばスマートコントラクトに問題がないということについて完璧な検証をするということは難しいだろうと先ほど松本さんがおっしゃっていましたけれども、まさにそうだと私も思いますが、形式手法とか、そういったプログラムを検証するような仕組みがありますので、具体的な規格が松尾先生の以前のスライドにも含まれていましたが、そういった技術も使って利用時に検証していくようなことも含めてセーフティ・セキュリティを確保していくべきではないかと考えます。

私からは以上になります。ありがとうございました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、松尾先生、どうぞお願いします。

【松尾メンバー】

追加の機会をいただいてありがとうございます。野田さん、佐古さん、栗田さんの今の話をちょっと補足したいと思います。結局のところは、いろいろな金融システムの考え方をプログラミングコードに落としたときに、それがまともなのかをどうチェックするのかという話になるわけですね。

まず、悪いほうのニュースを言うと、野田さんが最初に、オープンソースにすることでかなりそこはよくなるんじゃないかということだったんですけれども、私の経験からいうと、オープンソースだからといって、あるいは目が多いからといってセキュアになるということはかなり幻想であって、オープンソースのLinuxとかUNIXのシステムだって、20年前に埋め込まれた脆弱性が今日発見みたいなニュースは結構日々目にするわけです。

私が結構昔にやったのは、SSL/TLSという我々がよく使っている認証や暗号化のプロトコルというのが、おおむね7、8年前から10年前にSSLの古いバージョンとTLSの古いバージョンで相次いでプロトコル仕様で脆弱性が見つかったんですね。実装もそうだし、仕様でも見つかって、TLS1.3という今の新しいバージョンをつくるとなったときに、先ほど栗田さんがおっしゃいましたけれども、私はプロトコルの形式検証をずっとやっていまして、暗号プロトコルの形式検証のためのISOの規格もエディターでつくったんですけれども、世界中の形式検証の専門家も含めて、あるいはMozillaとかIETFでTLSをつくっている人たちが一生懸命形式検証も含めてやっとセキュアにしました。

それでもまた、標準が決まった後に脆弱性が出てくるんですけれども、やっぱり相当努力をしないといけないというのと、IETFのスタンダードですら後から実装も含めて脆弱性が出てくるというのは、レイヤー分けが実は危険だという話とつながるんですけれども、ドキュメントって全部、こうしてほしいというアサンプションは書いていないんです。前回の私のスライドで、こうなるはずというのをたくさん書いていましたけれども、ああいう「はず」というのが全部ドキュメント化されてないがゆえに、プロトコルをちゃんとセキュアにつくったとしても、実装の人がそれを勘違いして実装して脆弱性が起こるということがあるんです。そういうことでいうと、オープンソースだから安全というわけじゃなくて、過去のいろいろなTLSをつくった経緯も含めて、もうちょっとその辺のつくるガバナンスみたいなところを考えなければいけないと。これはバッドニュースです。

いいニュースは、栗田さんがおおむね15408とかJCMVPみたいに関わるところの話をされたんですけれども、セキュリティターゲットをつくります、プロテクションプランをつくりますというのを一方でちゃんとやらなければいけない。例えばプロテクションプロファイルの例として、IPAさんのページに行くとICパスポートの例とか、コピー機の例とか、守るべき資産がこういうのがあるのでこういうふうに装置を作ってくださいというプロテクションプロファイルの例をダウンロードすることができますので、既存の認証の仕組みが何を要求しているのかということをそこで多分理解する必要があるんだと思います。

私とか岩下先生がやっているCGTFという、もともとコインチェック事件が起きた後につくったセキュリティ基準をつくりましょうといってドキュメントを作った組織があって、岩下先生も一緒にやっていただいていますけれども、そこでやったドキュメントとか、その後それを基に僕らがISOでドキュメント化した暗号資産のセキュリティのレポートとか、取引上のセキュリティのISO文書とかつくったんです。そこのところでやっぱりこれはそのうちプロテクションプロファイルにしなければいけないんだとかいう話もしていまして、やっぱりそういうものをつくっていくということが、逆に言うと皆さんが安心するために必要だろうし、佐古さんがおっしゃったところのインセンティブの一部になるんだろうと思っています。そうすると、こう言うと怒られるのかもしれませんけれども、FISCが金融システムに対して果たしている役割というものが拡張される、あるいは類似のものをこういうところでつくっていくということになるのだと思います。

あと最後、やっぱりエンジニアと規制当局が概念とか言葉を合わせる必要があります。これ、こんな言葉当たり前じゃないかと言うかもしれないですけれども、多分ビットコインの数学は、決済は考えてなくて支払いしかしないんです。決済を取引所に任せているんです。P2Pでやる部分とか、トラステッドサードパーティーがない部分は支払いができなくて、決済は別のトラステッドパーティーに頼んでいるから全体が回っているんです。実際にコードに落とすと、多分ペイメントとセトルメント、支払いと決済は違うと思うんです。その辺を実は概念を経済学者だとか法律家とエンジニアが合わせる必要がある。

あるいは、フィアット通貨とか関係ないとかさらっと言いますけれども、価値とはどういうことなのかということ、あるいはそれがコードになるとどういうことなのかということを実は改めて考える必要があって、この辺のところを詰めていくことが、今言ったように、コードに落としたときにそれがまともなのかということを改めて議論する必要があると思うので、そういうことをやっていくべきかなと思っております。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは次に、岩下さん、どうぞお願いいたします。

【岩下メンバー】

今日は前半、ゼミがございまして参加できませんでしたので、事務局の説明とか聞くことができなかったんですけれども、これまでの議論で大体キャッチアップいたしましたので、意見を述べさせていただきます。私も資料3の論点1、2、3、4につきまして意見を申し上げます。

まず論点1の部分なんですけれども、基本的な考え方は、今我々が例えば銀行システム、既存の銀行の勘定系システムとか全銀ネットとか日銀ネットとかを利用する場合に、そのシステムの実は中の本当のコアの部分、それを構成する例えばCPUの中身とかそういうものについて、実は金融機関の人間はそれら全てを知悉しているわけではないわけですよね。にもかかわらず、それ自体をある程度安定して動くもの、信じていいものと考えて利用しています。基本的にこういう枠組みの中で考えたときに、しょせん実際に金融機関に責任が取れる領域というのは限界があります。あるいは、金融的なサービスを提供する者が果たすべき責任と、実際のシステムのほうで提供してくれるもののセキュリティとかの間には、完璧なマッチングというのは難しいと思います。

そういう意味で考えると、今ちょうど15408とか27000シリーズとかの話題が出ましたが、私も日銀でTC68の国内の事務局長をやっていましたときに、ISO/IEC JTC1/SC 27の活動にずっと参加しておりましたので、とても懐かしく感じました。この議論を金融庁の審議会でやることになると思いませんでしたが、そういう議論がぜひ必要だというのは、実は伝統的な、先ほどのお話だと、FISCの安全対策基準の対象になるような金融取引も実は同じような面を持っていて、本来そういうものであるべきであると思いますし、逆に分散型の金融のベースとなっているパーミッションレス型分散型台帳がいかほど信用できるかということについては、それはもう各事業者さんが自らのリスクで判断するしかないことだと思うんですね。

ただ、それはあくまでもツールとして技術を使うときなのであって、金融機関あるいは金融的なサービスを提供する事業者を離れて、技術そのものが提供されるべきか否かを規定するものではないと思うんです。どういうことかというと、金融機関あるいは金融サービスを提供する者は、例えば取引がきちんと行われることをその主体として責任を持って保証する主体でなければいけないと思っています。それは既存の金融の規制はそういうことになっているからで、どこの誰とも分からない、何かコンピューターのプログラムであって、それが本当かうそか、正直なのか、うそをついているのか分からないという状況だとすると、それはおよそ金融とは言い難いものだと私は思います。

その意味では、一番フロントに立って人々から様々な資金決済なり何なりの委託を受けてその取引を主導する人間は、それは責任を取るんでしょう。その先の技術として何を使うかは、その人の裁量によってリスクを判断するのであって、そこの中に何がしかの問題があるものが混入していると考えれば、それは責任は取れないと思ってそこを諦めるべきであるし、結局そこは入り口のところのゲートキーパーといいますか、そこの部分の人が責任を取るということで、そこから先の世界についてはより高度な技術の世界の話だということになってしまっても構わないと思いますが、ただ、フロントのところで責任を取る人は必ず必要だと思います。

その意味で、その次の論点2以降のステーブルコインの議論のところで私がちょっとだけ気になるのは、例えばテザーの話とか、あるいはMakerDAOのDAIの話とかというのは私好きなので、中の構造なんかも含めていろいろと研究をしているところなんですけれども、ただ、それらの人々が、果たして今申し上げたような意味での金融機関としてフロントで責任を取るような立場として行動しているんだろうかというのはちょっと心配なんです。

それはシステムがこうだとか、スマートコントラクトがこうだって言われますけど、それはツールの話でしょう。ツールに責任を取らせるというのは、我々のこれまでの文化の中では多分なかったはずであって、誰かが返済を約するっていう場合に、約するのがコードだということはあり得ないわけですね。約するのは、個人であるか法人であるかはともかくとして、責任能力のある、権利義務を果たす能力のあるエンティティーであるべきであって、そこはきちんとしたエンティティーが介在して、そのエンティティーが本当にそうやることが信頼できるのであればそれを信頼する、そういう枠組みだと私は考えています。

その背後にあるスマートコントラクト以下の仕組みというのは、それはもちろん技術が発達することによってよりよいものが出てくることは望ましいことだと思いますし、それを上手に使いこなすことによって金融サービスを提供するものがその機能を大いに生かしてエンドユーザーによりメリットを与えればいいんだと思いますが、あくまでもそれを仲介をするのは、責任を取れる個人あるいは法人でなければいけないのではないのかと私は常々感じております。

そういう意味でいくと、テザーのやっていることというのは、例えばテザー社という会社があるんですけれども、これは登記地はイギリス領マン島になっていて、株主がどこの誰かというのは本当にミスティファイされて分からない構造になっているとか、アメリカのニューヨーク州当局からの問いかけに対して大変不誠実な対応をとって、その後で大量に発行していったとか、あるいはグリフィンとシャムズという学者による研究によれば、本人たちはドル預金を持っていると称していながら、実際には集めた資金でほとんどビットコインを買っていたのではないかとか、そういうことを言われているということ自体がもうおよそここで書かれている償還可能性に疑義があるというそのものであって、そういう人がフロントに立っている以上は、それはもう信頼できないのはこれは当たり前だと思います。

じゃあ、何が信頼できるんですか、みんなが信頼しているものは信頼できるんですかというと、少なくとも我々はそういうふうには習ってこなかったわけで、みんなが渡っていれば赤信号でも渡っていいのかというとそんなことはないわけですから、やっぱり信頼できるということをきちんと当局が確認して、この人は信頼できる人だということで日本の法制度の中にきちっと組み込むということがなければ、日本の公的当局がこれは信頼して使えますということは言えないという意味で、論点2以下の議論というのはもう割と尽きているのではないでしょうか。

逆に言うと、ここで出ているものというのはほとんど、既存の銀行がやっているビジネスで提供可能なはずなのに、あえてステーブルコインなどという銀行の預金と何が違うのか不思議に思うような取引をやっているわけですね。なぜそういう行動を取らなければいけないのか。その構造の中で誰かが実はぬれ手に粟で無から有を生じさせる錬金術のようなことができているからそれをやるのではないかとか、その他の疑義が当然存在するわけです。そういう部分について十分に慎重に検討した上で、そういうことがあるかないかを見極めることが、日本の中で仕組みとしてこういうものを妥当だと判断する基準になるのではないかと考えます。

私からは以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、森下さん、どうぞお願いいたします。

【森下メンバー】

ありがとうございます。私も会議で遅れて、前半、聞けませんで、大変申し訳ありません。とんちんかんなことを場合によっては申し上げるかもしれませんけれどもご容赦ください。

 論点1でレイヤーということに関して議論がされているかと思います。これについては、私も岩下先生がおっしゃられたのと同じような印象を抱いているところがあります。仮にレイヤー1のところで不都合があって巻き戻せなかったとしても、レイヤー3が対顧客でしっかりと責任を取ってくれるのであれば、それで足りるというような考え方ができるのかなと。そういうようなことを技術的あるいは契約でもいいですけれども、実現すれば、しかもそれでトータルとしてリスクが許容範囲に収まっているのであればそれでいいのかなというような、そういうような考え方もあるように思いました。

論点1に直接関係したわけではないのですけれども、リスクということについていろいろなお話があったと思います。新しい技術を使えばいろいろなリスクがあるというのは当然だと思います。例えばテザーのホワイトペーパーを私も見てみたら、いろいろなリスクがあり、そうしたリスクについてはこう考えているといったことが記載されていました。リスクをゼロにすることができないというのはそのとおりだとしても、ポイントは、リスクを受け入れてもいいか、あるいはリスクは事前に開示した上で利用者に取ってもらうということで対応可能なのか、そうではなくて、やはりこのリスクは利用者に取っていただくにはあまりにも問題なので、そういったリスクがないように事前の対策が必要なのかというところをしっかりと見極めていくことなのかなと思っております。そういう意味では、そのようなリスクの観点からの技術者の方と規制の方のディスカッションというのはすごく大事になるのかなと思っております。

あともう一つは、新しい技術なので、どういった脆弱性が出てくるか分からないといったようなお話もあったと思います。これは本当に仕方がないことだと思うのですけれども、何かあったときに我々が「想定外でした。すみません」と言って許されるかどうかということはよく考えておく必要があるのかなと思います。

仮に何らかの予想されない脆弱性が出てきたとしても、利用される規模とか範囲とかそういうようなものが限定されているということであれば、その中であればいいだろうというような考え方もあって、そういった観点から金融の規制と技術の双方が知恵を出し合うということが1つ方向性としては考えられるのかなと思います。ただ、やはり便利な技術というのはどんどん使われていくので、そうすると、どんどん利用が広がっていく。そして、本当に多くの人が使うようになって、それが生活の中で欠かせないようになってから、「すみません。想定外でした。ごめんなさい」というようなことが許されるのかどうかというあたりが1つのポイントではないかと感じております。

3ページの論点2に関しては、法定通貨と連動したという点と、発行価格と同額で償還を約するという点を取り上げてアと区分されているのですけれども、私は、法定通貨と連動するということと発行価格と同額で償還するということが2つそろって初めて特別なステータスを獲得し、特別に注意しなければいけないようなものになるのか、そうではなくて法定通貨と連動していればもう十分、例えば最終的にはキャッシュに換えられなくても、もうデジタルな世界で生活が完了するような世界になれば、償還というものはひょっとするとなくても本当に重要な役割を果たすというものも出てくるかもしれないというような点はどうなんだろうかというような気がいたしました。

他方で、発行価格と同額で償還というところにスポットライトを当てますと、発行価格と同額でなくても償還を約しているようなものというのはやはりまたそれなりに保護の必要性も出てくるかと思いますし、例えば従来の電子マネーというのは償還をさせると預金と一緒になるので、ですから、わざわざ償還は許さないといったような制度設計にしていたと思うのですけれども、償還を義務づけるデジタルマネーというのは、ほぼ、預金と一緒なのかなというような気もいたします。そういったあたりをどう整理するかというような視野も大事なような気がいたしました。

最後、論点3と論点4につきましては、ほかの先生方もおっしゃられていたと思いますけれども、いろいろなプレーヤーが果たす機能に応じてリスクが違うと思いますので、取り扱うものに着目して区分するというよりも、機能に応じた規制にしていくというようなことはリーズナブルだと思います。したがって、御提案いただいているような方向性というのは説得力のあるものであると考えました。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、横関さん、どうぞお願いいたします。

【横関メンバー】

すみません。ありがとうございます。私からは少しだけ追加で説明、発言させていただきます。

本日、先ほど栗田委員や佐古先生、松尾先生含め御発言がありましたけれども、恐らく金融サービスのシステムはどういう要件が必要なのかを定めることは、絶対必要なことかなと思います。それがあるからこそ、技術的にどう安全だというのを証明できるといいますか、そういったプロセスを踏むことができる、というのはあります。恐らく、官で決めなければいけないのはきっとそういった要件で、その後、実際の中身はいろいろ保証する術はあるのかなと思いますので、システム要件についての話が絶対に必要かなとは思います。

そうすると、システムはどういうのが必要かというと、例えばシングルポイントフェーリアを認めるようなシステムというのは多分あり得ないといいますか、普通はあり得ない。リダンタントというか冗長性を必ず保証したシステムじゃないと安全は成り立たないというふうなことを、例えば要件としてちゃんと入れなければいけないと思うんです。

いろいろな機械系、ハードウエアですと、航空関係ではダメージトレランスとかフェールセーフといった言葉もありますが、いろいろなシナリオを想定して、その中で何か起こっても必ず何か代替機構があって安全性を確保する、あるいは故障がおきることを想定して、その状況でも安全性を何とか担保する、要は、何かあっても致命的じゃないように一応運営はできるというような形のシステムをつくらなければいけないので、多分そういった要件をつけることが必要です。あと、安全性を担保する仕組みを一回認めたからOKということじゃなくて、いろいろな技術的な問題があったら仕組みや仕様を必ずバージョンアップしながら、管理側としても安全性を維持する仕組みを保証していく必要があると思います。物も常に壊れたりで、補修をして、それで元の機能を取り戻すというような仕組みが必要ですので、システム自体もそういった維持の観点から何かしら要件を決め、柔軟にバージョンアップを図るというのが必要かなと思っています。

すみません、ほとんど皆様と同じような発言になったかもしれませんが、ありがとうございました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。本日御参加のメンバーの皆様方全員から御発言をいただきまして、ありがとうございました。

それでは、オブザーバーの方々で御発言があれば承りたいと思いますけれども、チャットにて全員宛てにお知らせいただけるとありがたく思います。いかがでしょうか。特によろしゅうございますか、今日のところは。

それでは、メンバーの皆様方で追加で御発言があれば、お伺いしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。特によろしいでしょうか。

それでは、今日は皆様方早くおそろいいただいたので4分ほど早く始めましたので、4分前ぐらいには終わりたいと思っておりまして、ちょうどいい時間かと思います。本日も非常に多角的な観点というか、それぞれの御専門のお立場から非常に活発な御議論をいただきまして、また、貴重な御指摘をたくさんいただきまして、本当にどうもありがとうございました。本日いただきました御説明、それから、御意見を踏まえまして今後さらに議論を深めていきたいと思いますので、引き続き皆様方にはどうぞよろしくお願いいたします。

また、何か事後的にお気づきの点等がございましたら、御遠慮なくぜひ事務局までお知らせいただければありがたく存じます。

最後に、事務局から連絡事項等ございましたらお願いいたします。

【端本信用制度参事官】

次回の研究会の日時につきましては、皆様の御都合を踏まえた上で後日御連絡させて頂きます。よろしくお願いいたします。

【神田座長】

ありがとうございました。

それでは、以上をもちまして、本日の研究会を終了とさせていただきます。皆さん、どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
企画市場局総務課信用制度参事官室、市場課(内線3572)

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