「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」(第7回)議事録

  • 1.日時:

    令和4年10月4日(火曜)13時00分~15時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館 9階 905B会議室

「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」(第7回)
令和4年10月4日
  
【神田座長】
 皆さん、お待たせして申し訳ございません。予定の時刻になりましたので、始めさせて頂きます。ただいまから、デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会の、今日は第7回目になりますが、第7回会合を開催させて頂きます。皆様方にはいつも、お忙しいところ御参加頂きまして、誠にありがとうございます。

 本日の会合も、前回に引き続きオンライン開催とさせて頂きます。一般の傍聴はなしとさせて頂き、メディア関係の方々には金融庁内の別室において傍聴をして頂くことになっております。

 それでは、議事に入ります前に、7月の人事異動に伴い、事務局に異動がございましたので、事務局から御紹介をお願いいたします。大来さん、よろしくお願いいたします。

【大来信用制度参事官】
 神田座長、ありがとうございます。7月1日をもちまして信用制度参事官を拝命いたしました大来と申します。前任の端本の時代に6回討議頂きまして、その結果等が先般の資金決済法の改正に反映されているということで、これまでの御議論に厚く感謝申し上げる次第です。引き続きよろしくお願いいたします。

 また、企画市場局長に着任した井藤、それから企画市場局参事官に着任した尾﨑より、それぞれ御挨拶をさせて頂きます。

【井藤企画市場局長】
 企画市場局長を拝命しております井藤でございます。古澤の後任として、この夏から任務に就かせて頂いております。

 このデジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会でございますけれども、昨事務年度は法制度上に結びつけて頂くというような進展もあったわけですけれども、世の中それだけで終わってなくて、皆さん方に言うのもあれですけれども、非常に急速に引き続き進展しているというふうに考えてございます。こうした中で、なるべく利用者なり経済取引が、よりよいサービス、より便利なサービスが普及して頂きたいというふうに思う一方で、利用者保護といったものも適切に確保するということが引き続き重要な課題だと考えてございますけれども、こうした新しい課題に対応するために、皆様方の知見、見識等を十分に私どもとしても参考にさせて頂きたいというふうに考えてございますので、どうぞ引き続きよろしくお願いいたします。

【尾﨑参事官】
 尾﨑です。よろしくお願いいたします。私も昨年、監督のほうをやっておりまして、今年こちらの企画のほうにやってまいりました。この分野、現実が先行して、我々のほうも、どういう実態があるのかということを把握していくだけでもなかなか大変なわけですけれども、そういった観点からも皆様方のお知恵を頂きつつ、それと同時に、それにどう対応していくのかということも、グローバルに、どこの国もまだ答えを出せているわけではなく、手探りではありますけれども、創造的に、考えていきながらやっていかなければいけないということで、この面でもいろんな分野での御知見を頂ければというふうに思っております。よろしくお願いいたします。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 さて、本日でございますけれども、いわゆるWeb3――あるいはWeb3.0とも言うのでしょうか――を念頭に、分散台帳技術等を活用した動きをめぐる最近の動向を取り上げたいと思います。その全体像や、金融の役割・位置づけなどを取り上げたいと思います。

 そこで、テーマに応じたオブザーバーとして、次の方々に御参加頂いております。全国銀行協会、日本資金決済業協会、日本証券業協会、日本暗号資産取引業協会、信託協会、日本STO協会、金融情報システムセンター、Fintech協会、新経済連盟、以上の皆様方に御参加頂いております。

 それでは、本日の議事に移ります。本日ですけれども、まず分散台帳技術等を活用した動きに関する政府の取組や方針等について、事務局から説明をして頂きます。続きまして、参考人として、本日御出席を頂いております方がお二方いらっしゃいます。お一方はChainalysisの重川様でして、Chainalysisが公表されました「State of Web3 Report」の内容等について御説明、お話を頂きます。それに続きまして、参考人としてやはり御参加頂いておりますGaudiyの石川様から、日本のWeb3政策に対する提言ということについて御説明、お話を頂きます。以上全部済んだ後で、メンバーの皆様方に討議をお願いするという流れで進めさせて頂きたいと思います。

 なお、参考人のGaudiyの石川様からの御説明に当たりましては、一部Gaudiy社の機微情報等を取り扱うと伺っておりまして、その部分については議事の内容を非公開とさせて頂こうと考えております。この点あらかじめ皆様方に御了解を頂きたいのですけれども、そのようにさせて頂いてもよろしゅうございますでしょうか。

 ありがとうございます。それでは、そのようにして進めさせて頂きたいと思います。討議に当たりましては、資料2の「本日討議いただきたい事項」というのも用意しておりますので、適宜御参照頂ければと思います。

 それでは、まず最初に、事務局からの説明からお願いしたいと思います。大来さん、よろしくお願いいたします。

【大来信用制度参事官】
 ありがとうございます。それでは、資料1の1ページ目を御覧ください。2008年にブロックチェーン技術とビットコインが登場して以降、暗号資産、当時は仮想通貨と呼ばれていたんですが、そういったユースケースから、だんだん証券的なもの、それから送金、いわゆるデジタルマネー的なものに広がっていき、最近では、点線をさらに超えて、NFT、コンテンツ、著作物にこのブロックチェーン技術が使われるということでございます。金融分野におきましては、2016年に交換業者の登録制を導入、2019年に仮想通貨から暗号資産に変更するとともに、資金調達を行う場合の証券規制を導入しておりまして、一番直近では2022年、今年の前半ですけれども、ステーブルコインの仲介業者に登録制を導入するという制度改正、制度整備等を行っているところでございます。送金、暗号資産、証券、それぞれのフィールドにおきまして、一番下の四角の下半分にございますとおり、マネロン対策、あるいは私法上の権利義務関係等、引き続き指摘されている課題かいろいろとあるという状況かと存じます。

 続きまして、2ページ目を御覧ください。本日、いわゆるWeb3.0をテーマにしておりますが、政府全体での大きな背景をなすものとして、2ページ目に、経済財政運営と改革の基本方針2022、いわゆる骨太方針2022の抜粋を記載してございます。こちらは、去る6月7日に政府全体として閣議決定を経ているものでございまして、上から3分の1ぐらいを御覧頂きますと、ブロックチェーン技術を基盤とするNFTやDAOの利用等のWeb3.0の推進に向けた環境整備の検討を進めるということが入っておりまして、そのほかメタバースとかFintechの推進、そういったものが記載をされているところでございます。

 3ページ目、4ページ目は、その附属文書のようなものでございまして、各種の政府全体としての施策の方向性が記載されております。直接金融庁に関係します5ページ目に飛んで頂きまして、こちらは先ほど御紹介した6月の骨太方針等も踏まえる形で、8月の末に金融庁として公表した金融行政方針になってございます。そこからの抜粋でございます。

 下半分を御覧頂きますと、(1)Web3.0等の推進に向けたデジタルマネーや暗号資産等に係る取組ということで、金融庁として今事務年度取り組んでいくことが記載されてございます。総論的なところを除きますと、各論で実施する施策は5つぐらい書かれております。1つ目が、暗号資産交換業者が取り扱う暗号資産の自主規制団体による事前審査の合理化、2つ目、ブロックチェーン上で発行されるアイテムやコンテンツ等の暗号資産該当性に関する解釈の明確化、3つ目として、暗号資産のうち発行体が保有し続ける分についての法人税の課税に関する課題への対応、4つ目といたしまして、信託銀行による暗号資産の信託の受託、いわゆるカストディ業務を可能とする制度整備、5点目といたしまして、証券トークンのPTS、私設取引所における取引に関する環境整備といったような、具体的な施策に関する方向性が示されているところでございます。

 6ページ目は、それなども踏まえたものを図にしたものでございます。7ページに進んで頂きます。

 こうしてWeb3.0を本日テーマにしておるわけでございますけれども、明確な定義はないというのが実のところでございまして、先ほど御紹介した政府の閣議決定文書におきましても、注5のところに少し説明的なことが書かれております。それを見ましても、巨大なプラットフォーマーの支配を脱するとか、分散化されて個と個がつながった世界、あるいはWeb1.0、2.0に続くものということでございまして、まだ黎明期にありますため、非常に抽象的な概念になっておって、積み上げ型で何かかっちりした定義が定まっているというよりは、どちらかというと、理念から逆算した大きな考え方が政府の文書でも記載されているところかと考えております。

 8ページを御覧頂きますと、Web3.0についてはいろいろな関係者から、非常にポジティブにこれを捉える向きからネガティブに捉える向きまで、非常に幅広い意見があるということをお示ししているところでございます。一番上のイーサリアムの創設者とか、Web3 Foundationの方などの発言を見ますと、匿名で安全に行われるとか、トラストレスに取引が行われ得るとか、あるいは自分のデータ、アイデンティティーをコントロールできる分散型で公正なものであるといったような評価が示されている一方で、真ん中ぐらいから見ますと、結局のところは中央集権的な構造に根本的に依存しているとか、テスラのイーロン・マスク氏も、誰かWeb3を見たことがあるか、私は見つけられないというふうに言っていたり、さらに下のほうになってきますと、Web3を所有しているのはあなたではなくて、ベンチャーキャピタルなどであるとか、あるいは、実際は非常に集中化されており、ベンチャーキャピタルや巨大なテクノロジー企業の多くがこの権力を保持しようとしているとか、非常に漠然とした用語であって、議論することさえ困難といったようなところまで、非常に幅広い見方が示されているところでございます。

 私から資料1につきまして、簡単ではございますが、御説明させて頂きました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは続きまして、参考人というか、ゲストとして御参加頂いておりますChainalysisの重川様から、資料3についての御説明、お話をお伺いできればと思います。重川さん、お忙しいところありがとうございます。よろしくお願いいたします。

【Chainalysis(重川)】
 よろしくお願いします。ここから私のプレゼンテーション、スタートということでよろしいでしょうか。

【神田座長】
 はい。

【Chainalysis(重川)】
 では、よろしくお願いします。

 私は、Chainalysisという、ブロックチェーン分析を専門に行っている会社の者でして、本日は、当社が最近発表したWeb3レポートの内容に沿って、その内容をお伝えしていきたいと思います。会社概要を簡単に御説明した後で、Web3レポートの話と、当社が専門とする暗号資産におけるコンプライアンス、マネロン対策に関する内容も最後に触れて終わりたいと思います。

 Chainalysisという会社は、ブロックチェーン分析を専門としている会社です。ブロックチェーン分析とは何かというと、要は暗号資産の公開されている取引情報を分析して、暗号資産のお金の流れを追っていくということです。もともとは、ブロックチェーン分析は、暗号資産が犯罪に使われたときの捜査の手段として使われていて、この会社のなりわいとしては法施行機関への捜査協力というところから始まっています。そこからさらに当社のサービス提供の対象が増えていって、今では暗号資産交換業者や、場合によっては金融機関などに使われてきています。最近は、今回のWeb3レポートもそうですけども、我々が持っているブロックチェーンのデータを、市場分析などのレポートに活用するというような試みも行っております。

 我々が根本的にやっていることをこのスライドに書いているんですけども、まず暗号資産の特徴として、一種の、ある程度の匿名性というものがあります。取引が全部透明化、公開されていて、ウェブサイトで誰でも見られる状態になっているという反面、具体的に誰がその取引に関わっている特定するのは難しいと性質があります。具体的には、何かから何かにお金あるいはNFTといった一種の価値が流れるとき、アドレスというものを参照して、あるアドレスからあるアドレスにお金が移るというような見え方になります。ただこのアドレス、無尽蔵にありますし、これ自体見ても本人が特定できるわけではないので、それが暗号資産に匿名性があると言われるゆえんになっています。これをある程度可視化するために我々がやっていることは、まず、この無尽蔵にあるアドレスを、同じ所有者のものを認識して、一固まりにしていくという作業です。それをやった上で、その一固まりにしたアドレス群、クラスターと呼んでいますが、クラスターに対して識別情報をつけていくということをやっています。そうすると、一見何のヒントもない、無尽蔵にある個別のアドレスだったものが、ある程度一固まりになってきて、それに名前がついてくるというイメージです。そうすると、この固まりは特定の取引所ですとか、この固まりはランサムウエアですとか、この固まりは盗まれたお金の一部ですとかということがだんだん分かってきます。

 根本的にはこのようなことをやっておりまして、当社のWeb3レポートや犯罪レポート等も、このようなクラスターや識別の情報に基づいています。つまり、例えば日本の取引所からどういうところにお金が最終的に行っているのか、その逆もしかりで、どういうところから日本に入ってきているかというようなことも、識別、クラスター化を行うことで可能にするというのが、当社がやっていることの背景です。

 次、お願いします。ここからはWeb3レポートの話になります。

 このレポートは6月に発表されて、日本語版を直近出したものですが、このWeb3レポートは、実は当社が発表したものとしては初めての試みです。Web3というキーワードがかなり出てきたのが割に最近のことであり、去年はWeb3レポートはありませんでした。最近のトレンドを踏まえて、いわゆるWeb3と呼ばれているようなトピック、それは広い意味ですので、DeFiやNFTなどいろんなものを包含することになるのでしょうけども、そういったトピックを取り上げた初の資料ということで出しているものとなっています。

 そもそもWeb3とは何かを言うと、先ほどの話にもあったように、特に明確な定義があるわけではありません。私の理解で言うと、Web3というのはある種、理念的な面が強いと思いますが、ブロックチェーン技術を根幹とした非中央集権型のインターネット世界の在り方を指していて、多くの場合、Web2と比較されます。Web2というのは有力企業、特にプラットフォーム企業によるユーザー、利益の囲い込みによってサイロ化が起きているという状態ということがよく言われています。

 Web1からWeb3の過程を見ていくと、Web1は静的コンテンツが中心の情報発信でした。そのコンテンツは、言ってみれば紙の媒体と実態としては変わらずインタラクティブ性はないので、ほとんどは読むだけのものだったはずです。ただ、Web2になってきて、今度は動的なコンテンツによる双方向の情報交換ができるようになりました。これにもいろんなファクターがあると思いますけども、動的コンテンツ、つまり自分で静的なコンテンツを作るのではなくて、最近のソーシャルメディアや写真の共有、動画の共有などで、あらゆる人が発信できるようになってきました。それには、もちろんインターネットの回線の普及ですとかスマートフォンの普及が後押しをしてきたのだと思います。

 ただ一方で、そういったプラットフォーム上でのインターネットのアクティビティーがますます増えてきて、多くの人がユーチューブへ行く、多くの人がフェィスブックへ行く、ツイッターに行く、インスタグラムに行くといったように、インターネットも分散だったものがだんだん集中化してきていて、悪い言い方をするならば、それがインターネット世界を、牛耳るようになっていると言われてきています。それに対する概念として、中間者が介在しないトラストレス・分散的なデジタル空間を指す、Web3という言葉がだんだん使われ始めてきています。それは、暗号資産に見られるように、仲介者が間に出てくることなく、利用者が互いに価値交換ができるという世界です。

 さらに言うと、今までは特定プラットフォームの制約というのがどうしてもあって、例えば特定プラットフォームで何かやったら、それは持ち越せず、あくまでもそのプラットフォームの中で完結するものでした。ゲームもそうですが、何かやっても結局その世界だけで完結するようなものでした。ただ、ブロックチェーンという一種の共通インフラがあれば、特定の企業が管理することなく、みんながブロックチェーンを信頼してそれが維持されている限り、そのレイヤーで価値が持ち越せるような世界というのが、大ざっぱなWeb3の、目指しているといいますか、理念的なところだろうと思っています。ということで、Web3のキーワードの一つは、パーミッションレスのブロックチェーンであり、それがWeb3というものをある種支えるインフラとして機能する位置づけにあるのだろうと理解しています。

 ということで、Web3という言葉自体は、いわゆるメタバースという、一種のデジタル世界と一緒に議論されることも多々あると見ていまして、そのようなものが発展してくると、恐らく数兆ドル規模の経済効果があるでしょうといったレポートですとか、アナリスト予測もあるとみています。ただし、私の理解では、Web3というのは今まだ発展途上であって、どうしても今はデジタル世界と現実世界の差というのがあり、現状はWeb3を支える一部のインフラサービスが動き始めているという状態なのかなと認知しています。
 
 次、お願いします。Web3のサービスの取引規模ということでまとめていますが、Web3は抽象的な概念なので、Web3イコール何かという言い方は難しいものの、ここではおおむね、いわゆるスマートコントラクトベースで、人が介在しない形で動くようなサービスであったり組織を指しています。ゲーム、エンターテインメントと書いているのは、いわゆるブロックチェーンゲームなどが該当します。

 今のところは、取引規模で言うと、やはりいわゆるDeFiと呼ばれるようなサービスで、その中でも、ある資産から別のトークンに交換するといった、いわゆる分散型の取引所やブリッジなどのサービスが今のところ大きい部分を占めています。あとNFTのマーケットプレイスもそこそこ大きい規模を占めていますし、最近はそこにお金が集まっており、その辺のカテゴリーがこの図の右のほうに位置しています。まだまだゲームや、別の用途は、物としては小さいのが現状です。

 ここで改めて、ビットコインとイーサリアムの比較を置いています。そもそもこういったWeb3と言われるようなエコシステムは、ビットコインよりも新しいブロックチェーンで成り立っています。ビットコインというのは、もともと目指したものが非中央集権型の資金移転・管理でありまして、ある意味、意図的にシンプルにされています。あくまで仲介者不要の送金システムを目指してつくられたものであって、機能拡張性は限定的です。初めてトラストレスで不特定多数のノードが台帳分散管理できる、不正を防止できるということで、ビットコインはブロックチェーンのパイオニアと位置づけられていますが、その後で出てきたイーサリアムというのは、そのビットコインのブロックチェーンに目をつけて、それを発展させたものです。

 イーサリアムでは、お金を移転することだけではなくて、いわゆるスマートコントラクトと呼ばれる一種のプログラムをブロックチェーン上に置いて、そのブロックチェーンを維持するノードでプログラムを動かせるという、いわゆるワールドコンピューターと呼ばれるように、世界規模の分散型コンピューティングシステムをつくろうとしたというのが設計思想にあって、資金移転のみを目的としたビットコインと位置づけは異なります。

 ということで、Web3と呼ばれるものは、トラストレスなブロックチェーン上で動くスマートコントラクト、プログラムが基盤となるということで、イーサリアムに代表されるようなブロックチェーンがますます着目されて、利用されてきています。しばらく前はビットコイン一強だったのが、最近はそのトレンドが変わってきているということです。

 次、お願いします。ここに暗号資産のシェアの大幅な変化とありますが、例えば2010年はもう当然、ほかの通貨はあまりなかった頃のはずです。ビットコインが出た頃はもちろんビットコインがシェア100%でしたが、しばらくしてくるとオルトコイン、すなわちビットコインとは別の通貨が出始めました。赤い部分はSmart contract-enabled coinsを指していますが、これは何かというと、イーサリアムに代表されるように、スマートコントラクトが使えるブロックチェーン上のアセットです。また、青い部分、右上の部分はステーブルコインと呼ばれるようなものです。テザーやUSDCなど、要は値動きがしないように、多くの場合、法定通貨に裏づけされたような暗号資産です。ステーブルコインも、えてするとスマートコントラクトベースのブロックチェーンで移転されていることが多いので、図の大部分はある意味スマートコントラクトベースのブロックチェーン上で動いている通貨を指すとも言えます。

 このように年々、ビットコイン一強時代が去っていって、使われ方としては、より汎用性のある、スマートコントラクトが使えるブロックチェーンの存在感が強まってきているのだろうと見てとれます。

 そうしますと、今お伝えしたように、スマートコントラクト対応のブロックチェーンの存在感が増してきている中で、レポートでは、特にブロックチェーンの中のマーケットキャップについて言及されています。ここで挙げているビットコイン以外のものは大抵スマートコントラクト対応のブロックチェーンということになります。なぜ様々なブロックチェーンがでてきたかというと、多くの場合はイーサリアムにあるような性能問題や手数料の問題を解決しようと図ってつくられてきたというものが多いのかなという印象です。より多くのトランザクションをさばけるようにするというのと、あとは高上がりしがちなイーサリアムの手数料の問題を解消すると、安価に使えるというので、こういった代替のブロックチェーンというのが出ているということです。

 次はDeFiの話です。DeFiとは何かというと、これもまたかなり広範な概念だと思いますが、要は銀行などの中央集権的な組織を介さずに、スマートコントラクトによって中間者なしに実現されるもろもろの金融サービスを指します。その中でも、特に取引上大きい存在感が出ているのが分散型取引所、仲介者なしに異種の暗号資産交換できるサービスですとか、レンディング、信用機関などの仲介者なしに暗号資産の貸し借りができるといったような、コントラクトで実現されているサービスが特によく見るDeFiのサービスになっています。

 このDeFiという言葉に対応して、従来型の金融、中央型の取引所も含めてTradFiという造語が出てきています。今までの金融はカストディアル、つまりサービスがユーザーの資金を管理し、サービスの管理・認可の下で取引が行われ、運営主体も明確にあるという形態です。一方で、DeFiはそうではなく、基本的にはDeFiのサービスでお金を預かるということはなくて、ユーザーが自身のウォレットで管理します。取引形態もコントラクトを通じてパーミッションレスで実施されます。また運用主体も、多くの場合は、いわゆるDAOと呼ばれるような分散型の組織で成り立っています。その実態はともかく、概ねそのような形態ということになっています。

 最近は、いわゆるDEX、分散型取引所のオンチェーン取引量が、従来型、中央集権型の取引所の量を超えたというデータがあります。このデータはあくまでオンチェーンというのがポイントです。いわゆる分散型取引所というのは全部ブロックチェーン上の取引となる一方で、普通の取引所というのは、いわゆるオーダーブックといいますか、オンチェーンに出ない取引というのが当然あるわけです。ビットコインの売買をするという、取引所の中で閉じた取引の過程においては、オンチェーンの動きというのはないので、当然これの意味するところは、従来型の取引所の売買も含めたトータルのトランザクション量と比べてDEXが上回ったということでは必ずしもありません。ただ、ブロックチェーン上で観測できるオンチェーンの動きとしてはDEXの取引量が通常の取引所のそれを超えたということなので、その点においては、いわゆるこのDEXと呼ばれるサービスの存在感がますます高まっていて、利用も増えているだろうということを示すページになっています。

 ただDEXというのも、従来型の取引所よりもある意味寡占的で、2021年以降の取引量を観測すると、取引量の85%がトップ5のDEXのサービスに集中しています。これは中央型取引所よりも、一層人気のあるところに集中しているのが見てとれるということになります。

 次にDAOについてです。DAOというのは、先ほどのDeFiの運営形態として出てきましたけども、中央集権型の一般的な法人とは違って、ガバナンストークンを持った不特定多数の参加者によって方針が決定されるように、ある種権力が分散された形で運営されるであろうという組織の形態です。従来の企業のようにトップダウン型の階層的な組織構造があって、その行動計画の下にやっているということではなくて、特定の権力者がいなくて、分散型で成り立っていて、各々の参加者が一種の投票権のようなものを持って、その投票結果で物事が決まるというようなプロセスが、コード化されているという流れになっている組織です。つまるところ、DeFiというサービスは、分散型のサービスであると標榜しているので、特定の企業が運営するということになると、その理念にかなわないという話もあるため、このような権力分散しない形での組織構成をつくった上で運営しようと言っているところがほとんどなのかなとは思います。

 DAOという形態は、何もDeFiとは限らず、いろんな組織の種類に当てはめることができるのだろうとは思いますが、特にその中で、我々が観測している範囲でも、いわゆるDeFiのプロジェクトやサービスに、DAOという組織の数は集中しているんだろうと見ています。

 ただ、金融庁のしばらく前のレポートにもあったように、DAOのコンセプトとは裏腹に、ある程度権力が集中してしまっているのではないかという側面も現状あって、いわゆるDAOの投票権に当たるガバナンストークンに着目すると、1%未満のトークンの保有者が投票権の90%を持っているという、かなり集中状態にあるというのも見て取れます。なので、実際にDAOというものが、その理念のとおり、権力をちゃんと分散化させて、なおかつ円滑に運営するというところは、なかなか大きな課題があるのかなというところではあります。

 ここまで簡単にレポートの話をしてきましたけれども、DeFiに関して全般的に言える課題の一つは、マネロン対策です。不正資金ですとか不正なユーザーをどうやって防止するかということについて、どうやるのか、誰が責任取るのかというのが課題として議論されるポイントだろうと思っています。また、もう一つの課題はセキュリティーです。近年、DeFiのサービス、コントラクトベースのサービスが増えてきているさなか、ハッキングの事例も増えています。要はスマートコントラクトの脆弱性が残ったままだと、それを突かれてしまうということです。今までは中央型の取引所がターゲットになるケースが多かったわけですが、DeFiが出てきたことで攻撃される対象が増えてきており、そのセキュリティーというのも大きな課題になっているわけです。

 一方で、DAOについての課題は、今触れたように、権力の分散化です。ただ、権力分散化すると、今度は、円滑に意思決定をするにはどうするのかという、ジレンマも抱えることになるんだろうと思います。あとは責任の所在の明確化というのも、問題として挙げられるかもしれません。これはまだまだ発展途上の部分と思います。権力の分散化を図ろうにも、ある程度集中してしまっている現実もある一方で、そういうことなしには、なかなか事をぐいっと動かすというのも難しいのも事実なのかなとは思います。

 最後、一つマネロン対策というのがよく課題に上がるという話に関連して、我々がやっていることについて簡単に触れます。暗号資産の世界でモニタリングというのはどうやっているかといえば、我々みたいにデータを使って、入金出金の先にどういったエンティティーがオンチェーン上でつながっているのかを見いだしていくことになります。例えば送金先のアドレスが、そもそも悪いエンティティーだと分かった場合には、取引所はそれを見て出金を止めるということもできますし、入ってくるお金がもしまずいものだとすれば、一旦止めて、ユーザーに、これは何ですかと聞くことができます。そういう形をした上で、リスクのある取引については何らかのアクションを取れるようになっているわけです。こういった取り組みを国内でも行っている業者が増えてきています。

 サービス提供者側の課題としては、いかに対応通貨のカバレッジ増やしていくか、識別をどうやって増やしていくかなどが挙げられます。新しい通貨が出れば、それをどうやってモニタリングするのかが課題として提起されやすいです。また、新しい取引やエコシステムに合わせた機能実装という課題もあります。先ほど申し上げたように、今まではビットコイン一強でしたので、ビットコインのエコシステムだけ考えていれば、ほぼよかったのです。今までDeFiというものもあまり取り沙汰されていなかった頃は、いわゆる中央型サービスのことについて考えればよかったのです。ただこれが、DeFiやNFTといった新しい概念が出てきますと、今までのやり方だとどうもそぐわない部分が出てくるという側面もあるんだろうと思っています。なので、我々みたいな分析業者としては、対応通貨のカバレッジですとか識別情報を増やすということと、新しいユースケースに合わせた対応方法というのも考えていかなければいけないのが課題かなと思っています。

 一方で、分析サービスの利用者の課題の一つとしては教育が挙げられます。ツールを入れれば全自動で全て完結するというわけにはどうしてもいかず、使う側の意識として、まず暗号資産の技術的特性の理解をしないと、そもそもオンチェーンでここまで見れるとか、こういう観点を持ってある程度判断していかなければいけないというアイデアがどうしてもつかめません。また、暗号資産のエコシステムの最新動向の把握も課題です。我々と同じような課題ですが、こういう使われ方をしてきているといった、今までなかったような暗号資産のユースケースの観点も、ある程度アップデートしていかないといけないという側面もあるんだろうと思っています。ここで言う「利用者」というのは広範でして、官公庁もそうですし、民間もそうだと思うんですが、その辺のキャッチアップはどうしても、こういった分析ツールを扱う以上は必要だろうと思います。

 最後に補足でありますが、ビットコインに対する規制がなかった頃は、ビットコインの大部分がダークネットマーケットに流れているといった時代もありましたが、悪質なところが潰されて、レギュレーションがしっかり機能してきた中で、だんだんよく分からないところに流れるという割合は徐々に減ってきています。規制対応や業界内の練度が高まっていると言えるのではないかと思います。

 また、違法なエンティティからビットコインがどこに流れていくのかについて触れます。もともとはKYCもろくに行われていない取引所に集中しているような時代もありましたが、そういうのはだんだんなくなってきて、今ではどんな資金であれ最終的にはどこかの普通の取引所に行き着くことが多いです。当局がそれを追えるようにしておくのと、それを受ける取引所側はモニタリングを逐一できるようにしていくことが必要だろうと思いますし、実際それは少しずつ改善されてきていると思います。

 最後に補足で入れていますが、DEXというものと通常の中央型サービスとの大きな違いについてです。取引所に代表される中央型サービスは、1回お金を受け取れば、そのお金がプールされるので、受け取って入ってきたお金がその後どう使われたか、どうなったかは、その取引所に聞かない限り分からないのですが、DeFiの場合は全ての動きがブロックチェーンに記録されますので、ある種、中央型サービスよりも透明性があるということになります。これが一つ、モニタリングするときのポイントの違いとも言えるわけです。DeFiはある意味その点では透明性があるということで、こういうのも踏まえた上で、どういうことができるのかというのは考えていくといいのかなと思っています。

 これが最後のページです。以上となります。ありがとうございました。

【神田座長】
 重川さん、どうもありがとうございました。貴重なお話を頂きました。

 それでは続きまして、同じく本日、参考人といいますか、ゲストとしてお越し頂いておりますGaudiyの石川様から御説明を頂きたいと思います。この部分につきましては非公開とさせて頂きますので、事務局において専用の非公開セッションに切り替えますので、少々お待ち頂ければと思います。

 それでは、切り替わったようですので、進めさせて頂きます。Gaudiyの石川様、本日はお忙しいところありがとうございます。資料4が資料になるかと思います。これに基づいて御説明、お話を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。

【Gaudiy(石川)】
 お願いします。提言とか書いてあったり、非公開とか言っているんですが、大層なことを書いているわけではなくて、僕自身あまり表に出るのが苦手な人間なんですけど、金融庁さんの方々に頼っていただいたので、押しに弱いので出ているという、そんな感じなので、大したことはやっていないんですけど、自分なりにずっと、四、五年、Web3業界にいるので、そこで考えていることを簡単にお話しできればと思っています。

 次、行ってもらえますか。大したことは書いていないです。

 すみません、簡単な僕の自己紹介なんですけど、20代半ばの若造が言っているって聞いてもらえばいいんですけど、簡単な自己紹介で言うと、もともとテクノロジー系が好きで、いろいろやっていて、2017年くらいにDAppsに出会って、すごくいいなと思って会社を創業して、個人としてはLINE Payさんとか毎日新聞、あとはガンダムメタバースという大きなメタバース、何百億って使う大きなプロジェクトの技術顧問なんかもやらせて頂いていて、最近はシリーズBで40億近い資金調達をしたみたいな感じでやっている、そういう人間で、ブロックチェーンは人よりちょっと詳しいくらいの人間ですが、いろいろ技術的な側面とか情勢も少しは分かっているつもりなので、それを踏まえて今日はお話します。以前金融庁さんとお話しさせて頂いたときに、何か提言というか、こうしてほしいんですよねと話をした内容をぜひ話してほしいと言われたので、今日話そうかなと思っています。

 次、行って頂いて、会社は、聞いて面白いことはあんまりないので、この点ざっくりって感じなんですけど、Web3の会社ですと。

 次、行ってもらって、Web3、超怪しいっすよねというのがあって、怪しいと思うんですけど、当時、怪しい時期に創業して、Gaudiyも怪しい会社だと思われていたんですが、最近はいろいろ大きい企業さんとか、ユーザーさんもたくさんいるので、そういう人たちに使って頂くことで信用も得たり、Web3という一つの大きな流れに乗らせて頂き、今急成長しているみたいな、そんな会社です。あと投資家自体が、下にちょっと補足書いているんですけど、JAFCOさんだけじゃなく、三菱さんだったり、みずほさん、SBIさんとか金融機関の人たちとかもしっかり入っているので、比較的、DDもやって頂いていますし、行儀がいいWeb3企業だと思って頂ければなと思います。

 次、行って頂いて、サービスはGaudiy FanlinkというOEMを提供しているんですけど、Gaudiy Fanlinkというサービス自体は世の中にはあまり見えないようになっていて、何でかというと、OEMで提供しているので、使っているユーザーさんは、その会社のサービスを使っているって感じなんですけど、たまにGaudiyの仕組みが後ろに走っていたりするみたいな感じで、僕たちは裏方人間なんですけど、コミュニティープラットフォームをつくっているみたいな感じです。

 下へ行ってもらって、サービスは読めば分かるので、下へ行って頂いて、コミュニティーの中でいろんな機能をつくっているというところがGaudiyのソリューションの中で、その中でメタバースが構築できたり、DIDというブロックチェーンを使ったIDだったりNFTだったりトークンだったり、いろんなものが活用できるみたいな感じになっています。

 次、行って頂いて、それをいろんなエンタメ事業者さんに使って頂いているのですが、ちゃんとブロックチェーン分からない人たちにもベネフィットが与えられるようにということで、乃木坂さんのファンだったり、アイドルのファンだったり、ゲームを使っているユーザーさんに提供しているという感じになります。

 一番右側なんですけど、実際幾つか僕もブロックチェーン周りの論文出しているんですが、大学の先生とかに2人くらい顧問になって頂いて、一緒にブロックチェーンの研究とかもやっていたりしますので、比較的アカデミックな研究なんかもいろいろやっているみたいな、そんなことを思って頂ければなと思います。

 下へ行って頂いて、元々信用がなかったブロックチェーン企業ですが、実績というものが積み上がって、体験的に、ユーザーも企業も評判がいいということで、いろいろ企業が増えてきたというそんな感じで、サンリオさんとかは初めてのベンチャー出資がうちで、今、サンリオ、スペース、Gaudiyでググって頂ければプレスが出てくると思うんですけど、世界に向けてWeb3のプロジェクトをやっていこうみたいな、そんな形が、決意表明がサンリオさんからもGaudiy側からも出ています。そういう形でWeb3という新しい時代と、日本の強みであり誇りでもあるエンターテインメントという領域で、今、世界に挑戦していこう、そんな会社と思って頂ければいいかなと思います。

 下へ行って頂いて、そこは飛ばしていいので、下へ行って頂いて、今日の本題というところだと思うんですけど、Web3、むずいっすよねというのは思っていて、僕はブロックチェーンのことは一般人より詳しいほうですけど、いまだに分かってないなと思うこともありますし、それはコンピューターサイエンスとか法律だったり金融工学、哲学、いろんなものが必要なので難しくて、よくブロックチェーンというと学問の総合格闘技とかって言われたりするんですけど、いや、むずいっすよねというのは自分も思って日々動いています。

 その下で、じゃあWeb3って本質何なのって話で、ちょっと格好つけていろいろ言っているんですけど、結論、Web3は何かというと、ブロックチェーンを使った何かっていう感じです。なので、ブロックチェーンを使った何かくらいで、これが分散型とか何々じゃないかって、いろんな人たちがいろんな思想を言って、僕もポジショントークでいろんなこと言うんですが、あんまり定義がないので、でも何となく、ざっくりしたことで言うと、Web3を使った何かを総まとめにしてWeb3と言っているみたいな感じです。Web3、ブロックチェーンを使った金融っぽいものはDeFiと呼ばれますし、ブロックチェーンを使った取引所っぽいものは仮想通貨取引所やDEXやCEXとかになりますし、ブロックチェーンを使ったものであれば、ゲームアイテムとかであればNFTですし、ブロックチェーンを使った通貨であればクリプトカレンシーですし、それを一々DeFiとか言うのも大変なので、Web3という形で、みんな小さいコミュニティーなので、一つになってムーブメントにしましょうみたいな、そんな感じが僕の中ではWeb3と捉えているので、皆さんもブロックチェーンを使った何かだと思って頂ければWeb3はいいかなと思っています。

 すみません、下へ行ってもらって、ここはもう釈迦に説法だと思うんですけど、とはいえ僕自身、4年前に創業したのは、ブロックチェーンに対する、本当の革命、正直インターネット以上の可能性を感じて、正直インターネット、いわゆるWeb2がWeb3のための前座だったんじゃないかくらい大きなパラダイムシフトになると僕は信じていますし、そう世界でも言われていて、実際GAFAからもWeb3への転職が、これはニューヨーク・タイムズの記事ですけど、転職ラッシュが本当にやまない状態で、もう本当に流れていますと。市場自体も急成長しているような状態、釈迦に説法かと思うけど、ありますと。

 ちなみに、ちょっとした雑談ですけど、右側に成長曲線の図があるんですけど、手元にある人は見てほしいんですけど、何かすごい似ているんですけど、今、ウォレットアドレスって、1995年くらいのウォレットアドレスしかないんですよ。成長すごい似ていると思うんですけど、インターネットからすると、IPアドレス数でいうと。1995年って何というと、ガラケーもなければ、スマホなんてあるわけもなく、そんな時代が今なので、何かWeb3っていいサービスあるのと言われたらないのは、インターネット自体も、ガラケーがなかった時代にインターネットで一番いいの何と言われたときにないのと一緒で、ないですと、それくらいの時代ですと。

 ただ、ここだけはあるのは、だからといって待っていればいいんだと待った国は衰退し、この来る時代に対して投資した国というもの自体が次の経済的なリーダーシップを取るということ自体は、時代的な、自明かなと思いますので、何かWeb3、すごい盛り上がっているけどよく分からないんだよなというのは、そもそもいいサービスが出ていなくて、95年で、かつ詐欺も多いですし、違和感あると思うんですけれども、事実として来ることは、正直、自明だと思います、もう完全に。乗り遅れたらやばいことも事実だと思いますけれども、分かりづらさというもの自体は、先ほどのものもそうですし、今は95年くらいだと思えば、なかなか、まあ正しいくらいの位置なんだろうなというのは思いますというか、です。

 次、下へ行って頂いて、いろいろWeb3、山あり谷ありがあり、僕らが創業したのはブロックチェーンの冬の時代と言われるところなんですが、そこに波があると言われても、やっぱりディベロッパーの数はひたすら増えているような状態になります。なので本当に、先ほどのGAFAからの転職がやまない状態になっているということも踏まえてですけれども、やっぱりWeb3という勢いはそのままとどまることもなく、本当に優秀なメンバー、優秀な人たちが本当に実現しようと、Web3で何かを当てよう、何かをしようということで多くの人たちが集まっているという感じになっています。

 下へ行って頂いて、日本はちょっと遅れちゃったよなというのは、また皆さんも感じている部分かなと思いますし、ユニコーン企業は日本からは1社も出ておらず、下に1とあるんですが、取引所で、ここも沈んでしまったので、ないという状態で、先進国の中からほぼ出ていない、唯一出ていないというような状況になってしまいますと。その下へ行って頂いて、実際投資の金額もアメリカの10分の1、韓国の2分の1になっています。日本自体が総じて貧困になっているということも言えるのですが、それとしても投資額は少ないだろうなとは思っています。

 まあ、これをよく国のせいにする人たちがいるんですが、そうでもなく、起業家もそもそも少ないので、Web3本質的に追いつこうというテクノロジードリブンの起業家も世の中には少ないので、総じて全体的な問題だろうなと僕は常に思っているので、金融庁さんの法規制の問題もいろいろありましたけれども、総じて全体の問題だろうなと思っています。少なくとも先ほど言った、ユニコーン企業が出ていない、Web3のパラダイムシフトに乗り遅れている状態。でも今だったらワンチャン間に合うかもしれないというこの場所で、いろんな人たちでモメンタムをつくっていくというのはすごく大事なんじゃないかなというのが僕の考え方です。

 次、行って頂いて、下へ行って頂いて、Web3がいいということを言うんですけど、僕もポジショントークで、Web3企業なので言いますし、そう言ったほうが採用集まるので、本当はちゃんとそうやるんですが、実際Web3によって疲弊してしまっているとか、倫理的にやばいんじゃないと思うものというのはたくさん実際ありますと。これは事実として、みんなポジショントークでは言わないんですけど、僕は、やばい部分もあるなというのは、それは分かっていますと。

 そこで一番はやっぱり価格系のもので、やっぱりポンジ・スキームっぽく見えてしまうものであったりとか、投資家保護が成り立たず、4兆円あったものが一夜にしてゼロになるみたいな、そんなこともあり、ブロックチェーン、Web3っていうもの自体は、先ほど95年と言いましたけど、黎明期、全然技術としては発展し切れていない、学問としても、ノウハウがたまり切っていないのにもかかわらず、少しお金が集まるがゆえに、こういうような状態が起こってしまうという、逆に言うとデメリットも実際存在しているというのも事実です。

 次、行って頂いて、今がどういう構造かなと思ったときに、皆さん政府方の方々、金融庁の方々、財務省の方々含めて、皆さん日本をどうにかしたいという思いは必ずあると個人的には思っている中で、Web3が何となくイノベーションだな、新しい時代だなと思っていても、価格が急落するプロジェクトがある中で投資家保護という重要性を考えていると思っています。どんどん緩めてどんどん行ってほしいというWeb3の人たちは多いですが、僕はそうも思わず、真面目にちゃんとやる必要があるようなという、結構中立的に考えていますと。

 投資家保護がやっぱり一番大事ですよねという中で、なかなかそこがと言いつつ、Web3事業者だったり、特にブロックチェーン協会の人たちが、取引所の方々多いと思うので、ホワイトリストにどれだけ載れるかというところがそもそも売上げに直結しますので、どんどん上げてくれという事業の側面もありますし、シンプルに、ほかの国ではこんななのに、何で日本はこうなんだみたいなこと言うフラストレーションとしても出ていますので、そういうのをどんどんやってほしいという、そういう対立かなと思います。

 もう一方としては、政治家の方々が最近Web3に注目しているという話があると思います。あんまりWeb3のテクノロジーについては多分分かっていないと思うんですけど、シンガポールとかに本当に若い優秀な人たちがどんどん行ってしまっているという、この事実を一遍見て、日本どうにか、やばいんじゃないのというものになっている中で、金融庁さんの方々や政府の方々は、Web3事業者、取引所ないし、政治家の方々からいろいろ言われているのは、僕は若干、第三者的な立場で、外野から見ていて、意見も分かりながら、大変だなという、何かそんな感じで見ております。

 次、行って頂いて、さっきのVS関係になっているという感じですね。
 投資家保護は歴史の必然、これは釈迦に説法だと思いますが、ちゃんとやりましょうねというところだと思います。

 次、行ってもらって、下へ行って頂いて、僕が言いたいのは、ただ、先ほど僕はWeb3というものはこれだけすごく、来ると思うし、新しい時代、そもそも日本から産業が生まれていない状況に、経済的に次のパラダイムシフトに乗らなければ、本当にもう沈んでいく一方だみたいなことは事実、僕は思っていますし、すごい新しいイノベーションで、何か金っぽく見えたり、詐欺っぽく見えますが、すごくWeb3はエモい技術なので、ぜひ好感度持って接して頂けるとうれしいんですが、それとは別に、さっき言った黎明期で、まだ生まれた赤ちゃんみたいな技術なので、そこをハックされてしまうという状況もあるという、中立に、メリ・デメをちゃんと話させて頂いたんですが、その中で、じゃあどうするんだっけという話を提案ですと。

 提案というか、こんなのどうですかという話を前回させて頂いて、それをお話ししてほしいと言われて話すんですが、論点で1つ、まず、Web3が来る来ない論争に関して言うと、こんなのはもう来るに決まっています、自明です。なので、そこに対して遅れないというのは1個、大事だと思います。

 2つ目、とはいえ投資家保護、めっちゃ大事だと思います。これの中間案をどう出せるかというところが議論の論点になると思うんですが、僕の提案は、今のホワイトリストという、政府が認めるという、どちらかというと認めづらいというところから、むしろイノベーションを起こすためには載せやすくするというのが大事だと思います。ただ、事実、詐欺はめっちゃいます。シンガポールに若者がって言っていますけど、僕も相談されますけど、めっちゃ売り抜けることしか考えていない起業家に相談されることもあって、もうそういう人は相談受けないんですけど、そういうこともあるので、まずブラックリスト、いわゆるこういうのは駄目だよねという最低限の部分を見つけるということで政府がやることというのが大事だと思います。これをやってしまうと、政府が、じゃあもし本当にその人がやったので詐欺だったらどうするんだみたいな問題というのはありますし、やりたくないのもよく分かるんですけど、それをやったらもう終わりなので、どうするかというと、僕はその中間かなと思っています。

 次、行って頂いて、じゃあどうやって詐欺じゃなさを見せるかという話で言うと、まずはVCとか、そういう企業というものを見れる人からのビジネスDD。もう一つは、僕も含めてですけど、テクノロジーとかを見れる人であれば、詐欺っていうのは基本的に見栄えだけよくて、資料つけるんですけど、やっぱりスマートコントラクト書いていなかったり、プロダクトが弱かったりするので、そういうものを技術としてちゃんと見て、この人はちゃんとつくれる人なんだなというものをちゃんと見るというようなテクニカルなもの。最後、政府の方々がコンプラチェックだったりとか、その人たちのバックグラウンドをして、何かこう、この会社がうまくいくか、うまくいかないかは分からないけれども、この人が問題があるということは、今の段階ではない、こういうぐらいな、いわゆるいい会社をホワイトリストに載せるんじゃなくて、駄目な会社はちゃんと切ると、ここの仕組みをちゃんとつくった上でできるということ自体がすごくいいなと思いますし、そこでやるということは健全なトークンだなというものの一つの保証機関になったりすると思いますので、いいんじゃないかなという感じです。

 最後です、すみません。何か大きなことを言っているんですが、僕が言いたいことは、Web3自体、あまり嫌悪感を持ってほしくないなということです。嫌悪感が見えるようなエピソードって調べれば調べるほど出てくるんですけど、真面目な人たちは真面目にやっています。新しい産業が生まれていくために挑戦するということはすごく大事なんじゃないかなと思いますので、むしろそれを引っ張っていく、一緒にやっていくということを国一丸となってやれると、すごくいいんじゃないかなというのが私の考えです。

 以上です。

【神田座長】
 石川さん、どうも貴重なお話を頂きました。ありがとうございました。

 それでは、今、非公開のセッションになっていると思いますので、メンバーの皆様から、石川様に対して、このGaudiy社の業務に係る個別の御質問というか、非公開セッションで聞きたいというか、御質問があれば、ここでお出し頂きたいと思います。その後、公開のセッションに移行しますので、一般的な御意見ですとか討議はそちらのほうで併せてして頂ければと思います。

 それでは、いつものようにチャットを入れて頂ければと思いますが、翁さん、どうもありがとうございます。よろしくお願いします。

【翁メンバー】
 お話ありがとうございました。個別の話でちょっとお伺いしたいのは、2020年と22年にシリーズA、シリーズBという形で資金調達をされていますけれども、ほかのWeb3関連の企業との違い。どういうふうな調達方法をされているのかということについて、少し具体的にお話を頂ければと思います。

【Gaudiy(石川)】
 特にあんまり違いはなく、お互いWeb3という一つのジャンルの中でゲームを作っていたり、僕らみたいにコミュニティーをつくっていたり、SNSをつくっていたり、アートを作っていたりという人たちがいて、その会社がある程度、事業として見据えてきて、シリーズBって大体、成長曲線が見えてきて、ちゃんと上場を見据えている会社に投資をするようなラウンドかなと思うんですけど、そういうラウンドになったので投資頂いたという感じになります。

 日本だとシリーズBに入っているWeb3企業は数社くらいしか多分ないんですけれども、その中の違いと言われると、会社の業務の違いがあるぐらいかなという、そんな感じです。

【翁メンバー】
 トークンとか法定通貨とか、そういういろんな資金調達の方法があるかと思うんですけど、そこについての考え方はどうなんですか。

 以上でございます。御説明ありがとうございます。

【Gaudiy(石川)】
 ありがとうございます。トークンの話ですね。僕の会社は、今の所トークンでの調達はしていません。トークンでの調達をしているような会社さんもいますし、ちょっとエクイティをやった後に、IEOですね、イニシャル・エクスチェンジ・オファリングと呼ばれる仮想通貨取引所のみで上場するという流れも、今、国内ではありますし、グローバルでは先行して進んでいたりするので、そういう資金調達手段というのがあります。

 これは、各事業体の人たちの考え方によると思います。例えばIEOをする会社さんに関しては、自分たちがそもそも上場するとなったとしても、何か戦略的に東証を選ぶのか、マザーズを選ぶのか、海外でやるのか、SPACを考えるのかって、取引所ごとに、上場ということ自体に色があると思うんですけど、それを踏まえて、自分たちはIEOのほうが相性がいいから早めにIEOで上場して、トークンホルダーは特に若い人たちが多かったりはするので、そういう人たちに資産を持って頂くほうがいいんじゃないかという人たちはIEOというのを選択しますし、トークンに関しては誰でもが上場できてしまうので、もっと自分たちはIEOという、誰かに縛られたわけではなく、もっと分散的にやろうという人もいますし、詐欺っぽいことをしようとしている人もいるので、そういう人たちもトークンで上場して売り抜けようみたいな人たちもいますが、大体この手段で動いているというのが、調達の手段と目的によっての違いです。

 僕らは比較的ちゃんと行儀よくやろうと思っているので、しっかりエクイティで上場して、会社としての信頼もあった上でトークン上場を考えようと思っています。時代の背景においてはIEOというのも考えられるかなというのは考えていますが、それを踏まえた上で今回はエクイティで調達をしました。

【翁メンバー】
 ありがとうございます。

【神田座長】
 ありがとうございました。では次に森下さん、どうぞ。

【森下メンバー】
 御説明ありがとうございました。法律の教員をしております森下と申します。

 2点御質問させて頂きたいのですけれども、先ほど御社のサービスはどちらかというと表でサービスを提供されているものの裏で動いているケースが多いというふうなお話があったと思うのですけれども、Web3というとどちらかというと消費者が直接チェーンに結びついてというようなイメージがあったのですけれども、Web3を使う、Web3の可能性ということを考えた際に、既存のサービスの提供者が裏で使うという、裏の技術として使うということがかなり想定されているのかというようなことを教えて頂ければと思いました。

 もしそうだとすると、裏で使われている部分については、別に法とかが口うるさく規制をする必要もなく、新しいテクノロジーが発展してきたのであれば、それを正面から、それはどんどん発展して頂ければいいのかなというような気がしましたので、ちょっとその点を御質問させて頂ければということと、あと、もう一点なんですけれども……あ、まず、でもその点だけで結構です。

【Gaudiy(石川)】
 全然、思い出したらもう一回聞いて頂ければ。今の一点だけ質問にお返しをすると、裏方をやっていますということ自体が、何かWeb3だからということかと言われると、ちょっとあるんですけど、大部分に関しては、基本的にはサービスの体験としての設計としてやっていますと。

 実際、エンタメ企業の方々というのは、プラットフォームの人たちに物すごく搾取されている現状があります。実際、例えばAppleでいうと30%の手数料。投げ銭という形であれば、アイドルに投げ銭するとき、アプリからやろうとすると65%取られるみたいな。GAFAを応援しているのかアイドルを応援しているのか分からないみたいな構造を純利益で取られてしまうので、それは大変だよねというところがある中で、僕たちは一種プラットフォームに提供しているんですけれども、そういうような、顧客プールとかそういうもの自体を、もうユーチューブみたいな、ああいうのが全部加工、モデルではなくて自分たちで立ち上げられますよ、そういうのを奪還していきましょうというコンセプトの体系の部分からOEMを提供しているという側面があったりするので、Web3だからというよりかは、サービスの設計としてそういう選択をしているというのが一つ。

 で、少しWeb3的なというのがあるという話だったんですけど、僕がWeb3として共感しているのは、カルト的な価値競争と滑らかな価値分配をトークンが実現してくれるという、すごい難しいこと言っているんですけど、という話なんです。

 何が言いたいかというと、ビットコインというもの自体にも、コインにひもづくコミュニティーというもの自体が一つ共創して――きょうそうというのはcompeteじゃなくてco-creation、共に創るという共創がゆえに還元される、いわゆるスタートアップの上場みたいな、ストックオプションの上場みたいなスキームをうまく描けたことが、すごく僕はよかったなと思うんです。強固のコミュニティーをつくれた。

 となったときに、Discordとか、他者のプラットフォームの中で自分たちのコンテンツをやろうみたいになると、何となく体験として、子会社の中ですげえ頑張るんだけど、全部親会社がもうかっちゃうね、みたいな、そういうのに見えかねないと思っているので、僕たちはWeb3的な、その人たちが貢献したものが還元されるというスキームの中では、トークンとの相性というものに関しても、裏方をするというので選択をしているというのが、サービス設計上のというか、話なので、Web3かと言われると、半分かぶって半分かぶらないという、そんな感じです。

【森下メンバー】
 その技術を使うことで、自律したサービス提供というか環境をつくり出しやすいというふうなことが言えるということなんですか。

【Gaudiy(石川)】
 そうですね。IPホルダーの方とか、そのコミュニティーをつくりたいという人たちが自律的にできる。おっしゃるとおりです。

【森下メンバー】
 ありがとうございました。

【神田座長】
 ありがとうございました。次に松本さん、どうぞお願いします。

【松本メンバー】
 ありがとうございます。LayerXの松本です。

 先ほどの森下さんの質問とも近いところがあるんですが、私は技術者というか、5年前からブロックチェーン技術の研究開発もやっておりましたので、その観点を含めてちょっと気になったところがありまして、まず、先ほどGAFAがユーザープールとして云々という話があって、多少ちょっと納得感がないところもあったので、もう少し研究会というところで細かく伺えたらなと思うんですけども、Web3を使ったから集客がというところって少し違うのかなと思っておりまして、結局顧客に対してどのようにリーチしていくかというのは、これはGAFAの上のプラットフォームであろうが何だろうが特に変わらないものかなと思っておりまして、本当の意味でブロックチェーン技術でなければ実現できなかったことというのが、御社の事業内でどういったところがあったのかを、もう少し丁寧に伺いたいなと思っております。

 特に、恐らくNFT等を使っているのかなと思うんですけども、NFTは特段、著作権保護技術ではないので、あくまで単なる台帳でございますので、本当にブロックチェーンで実現できている部分がどういったところなのか、伺ってもよろしいでしょうか。

【Gaudiy(石川)】
 ありがとうございます。初めまして。松本さんの配信は大分見ています、昔から。

 質問に関してですけど、GAFAって、今言った僕がGAFAって言った話は、別に、何というんですかね、さっき言った、Web3での顧客体系の話という話であって、例えばその体系の話でいうと、ユーチューブ、皆さん見るじゃないですか。ユーチューブ見る中で、この人たちあんまり好きじゃなくなったなとなったら、違うユーチューバーを見に行くと思うんです。

 そういうふうにプールをされているという中で、僕たちはコンテンツを見ているにもかかわらず、コンテンツを提供している人たちは基本的にプラットフォーマーの客寄せパンダみたいな構造になってしまうというところの問題として、僕らが対GAFAと言うところに関してはそれの話をしているので、これもまた、コンテンツを提供している事業者側の側面の体系の話であるので、Web3だからとかそういう話ではなくて、サービス設計の問題かなと思っています。

 もう一つ、若干話を肥大化させて、Web3でしかできないみたいな話でいうと、僕が思うことに関して、やっぱりトークンの部分は大きいかなとは思います。

 いわゆるトークンというもの自体を、例えば今、勝手にポイントで発行してできるわけでもなく、かつ、例えばトークンというもの、それはNFTでもFTでも含めてですけど、それをトークングラフ的に、いろんな人たちがそのトークンに対して価値づけをさせたいといったときに対して、やっぱりパーミッションレス性がないとそれができないと思うんです。

 完全にパーミッションレスに、サービスのオーセンティケーター的にやるということは可能だと思うんですけど、基本的にはやりづらいと思っているので、そういうような連携のしやすさという部分が基本的な側面になるんだろうなというのが、Web3ではできないんだけど、のほうがやりやすいよねという感覚です。パーミッションレス性です。結論。

 で、そこがあって、IDが個別になっていくので、そこからやっていこうよという話です。

 だから、Web2でできないことはないんですけど、そっちのほうがやりやすいですよね、という感覚です。

【松本メンバー】
 理解しました。ありがとうございます。

【神田座長】
 よろしいでしょうか。それでは次に井上さん、どうぞ、お願いします。

【井上メンバー】
 ありがとうございます。弁護士の井上と申します。

 これは、このクローズドの場で質問しなくても後で聞けばいいことかもしれないんですけれど、お答えのときに、もしかすると制約がないほうがいいのかなと思って、御質問差し上げたいと思います。

 おっしゃったとおり、Web3は非常に重要だけれども、投資家保護が成り立たないという問題意識に共感するんですけれど、最後の提言のところで、起業家がプロジェクトに挑戦する際に政府が認定する仕組みとして、3つの観点でのデューデリジェンスですか、ファンドによるビジネスDD、あるいは技術者によるテクニカルDD、あるいは政府によるコンプライアンスDDを、プロジェクトごとにやっていくという規制の在り方のご説明をいただきました。Web3について、現在の規制がうまくワークしないという問題意識は共通なんですけれど、Web3がどんどん拡大していく中で、これが本当にワークするのか、これをプロジェクトごとに一つ一つやるのかという点について、イメージがいま一つ湧かなかったのですが、ここでおっしゃっているDDというのは、どんなもの――石川さんの会社の技術をどう生かすのかにかかるのかもしれませんけど、どんなイメージでいらっしゃるのか教えて頂けますか。

【Gaudiy(石川)】
 いや、そこまで何かすごい考えられているわけではなく、ちゃんとチェックしましょう、ぐらいの話で、それを1社ずつやるのか、コミュニティーでやっていくのか、DAO的にやるのかというのは、いろんなやり方はあるんですけども。

 ただ、一辺の側面で、例えば政府が見るという話であれば、見られる変数って、分からないですけど職歴、犯罪歴、学歴とか、何かそういう変数になっちゃうと思うんです。事業計画に関しても目利きってあんまりできないと思うんですよ。そもそも国という考え方と民間企業のビジネスとで視点が違うと思いますので。

 ただ、さっき言った犯罪歴とか、何かそういうコンプラチェックってすごくできると思いますので、そういうことも側面としてやる。あとは、ビジネスに関していうと、そもそもそういういろんな事業者を見て、この起業家はいいんじゃないか、当たるんじゃないかというところを見るのは、要はVCが得意だと思いますし、何かVCが反社に投資しちゃいましたみたいな、そんな案件はあんまり聞いたことがないので、すごくそういうところのちゃんと目利きというのもできるんじゃないかなと思うところで、いわゆる特定VCからのDD。

 技術的なものというのは、ここはうそがつけない領域だったりしますので、そこから見たほうがいいんじゃないかという、シンプルな、そういう話なので、これを一社一社見るのか――まあ、一社一社見なきゃいけないでしょうね。

 ただ、VCが推薦するみたいな、何か特定のルートは必要だと思います。政府に履歴書を送るというのはめっちゃ面倒くさいと思うので、ファンドにある程度の権限を渡した上で、こういう会社がよさそうですよという話を、さっき言ったテクニカルDDとコンプラチェックを回すみたいなフローを、年間で何個回すみたいなところでやっていくのが落としどころになるんじゃないかなと若干思ったりもしますけど。そんな感じです。

【井上メンバー】
 ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、以上で非公開のセッションを終了とさせて頂き、再度、事務局にてセッションを公開のセッションに切り替えますので、少々お待ちください。

 私の声が聞こえていると思います。

 それでは、公開のセッションに再度切替えをさせて頂きましたので、これまでの説明を踏まえて、まずメンバーの皆様方から討議、すなわち御質問、御意見をお出し頂きたいと思います。メンバーの方々からの御質問や御意見が終わった後で、オブザーバーの方々に御発言の機会を提供させて頂きたいと思います。

 なお、冒頭申し上げましたように、お手元に資料2として本日討議頂きたい事項というのをお配りしておりますので、適宜御参照頂ければと思います。

 それでは、まずメンバーの方々から御発言を頂ければと思います。

 松尾さん、どうぞ、お願いいたします。

【松尾メンバー】
 松尾でございます。御説明、2件も含めて非常にありがとうございました。ただし、前回と違って今回かなり、Web3.0というかなり幅広い話題と、あと今回議論頂きたい事項、資料2のものがかなり漠然としたというか、かなり包括的な質問になっているので、なかなか意見が申し上げにくいなと思いつつ、論点のうちの幾つかに対してちょっとコメントをしたいと思うんですけども、まず2番ですね、ユースケースはどんなものがあるかというのは、実はその前の御説明にも関係するんですけども、もともとブロックチェーンなりでやりたかった、ある種、単一障害点を減らしながらセキュアに何かをつくるという意味で、本当にそのセキュリティーも含めて、成功している例というのは極めてまだ少なくて、恐らくまだビットコインだけだと思うんです。

 実はそのビットコインって、先ほどの説明にもあったんですけど支払いに特化していて、これはわざと特化しているんです。彼らはわざとスマートコントラクトに手を出していなくて、何でかといったらセキュリティーと分散性に対してスマートコントラクトを投入することにまだ疑問があるからです。彼らのコアのエンジニアリングコミュニティーの考え方でいうと。

 なので、もちろん、いろんな応用の中ではスマートコントラクトであったりとかいろんなところに広げたいのですけども、技術的に正直にやろうとするとかなり慎重になっているというのが現状かと思いますし、ある意味スマートコントラクトに安易に広げることで、事故がたくさん、今年になって100億円単位の事故って死ぬほど起きているわけですけども、起きてしまったりとか、あるいは、これも後ほどこの研究会で議論になるかもしれませんけども、プルーフ・オブ・ステークを導入することによって、アメリカのSECからは、いわゆる証券該当の可能性が上がるという議論もされています。

 (SEC委員長の)ゲーリー・ゲンスラーからすると、ビットコインだけはどうしても証券にできなさそうだなという趣旨の発言をしたわけですけども、そういう証券にならない範囲で何ができるかということを追及したビットコインが、ストイックにペイメント(支払い)だけをやっているというのと、それを広げたがゆえに、もともとやろうとしていたことから、最終的に従来型の証券の高度化みたいなものに縮退していっているというトレードオフの関係があるわけですけども、そういうところになるので、まだまだ時間がかかると思うんです。

 もちろん、時間がかかるということに関してそんなに悲観的になることはなくて、2回目のときに御説明したと思うんですけども、インターネットもARPANETが始まってから商用化するまでに26年かかっているわけで、それからインターネットらしい双方向のサービスができる、SNSが商用サービスの最初の、LinkedInとかそうですけども、それまで8年かかっていることを考えると、どちらかというとイノベーションはインクリメンタルに起きて、何かのバックキャストというよりは、徐々に、誰かが新しいものを思いついて、セキュアに、石橋をたたいて渡るようにできてくるものだと思うので、それはそういうものだと思いつつ、じゃあどこが本当にイノベーションの基なのかということを改めて考える必要があると思いますし、セキュリティーを無駄にしてもいいから、そこを安易に広げていいというものではないというところだと思うんです。

 その意味で、私は明日のデジタル庁のWeb3.0の研究会のメンバーにもなっているので、会によってちょっと話すことを分けなきゃいけないなと思いながら考えているんですけども、これ、金融庁の研究会の観点で言うと、やはりエンドユーザー、特に消費者保護の観点で言うと、エンドユーザーに対する透明性であるとか、あるいはリスクに関して、改めて洗い上げる必要があるんだろうと思っているんです。

 ここまでのリスクの議論で、今日の議論でも、いわゆるマネロンの話がたくさん出ているんですけども、私もアメリカに住んでいるわけですが、アメリカにおいて今議論になっている、あるいは訴追されている多くはインサイダー取引、NFTも含めてインサイダー取引なわけですよね。

 インサイダー取引が実態として起きていることがたくさんあって、それがどういうことなのかということを改めて研究する必要があるんだろうと思っています。

 あと、先週OECDでやっているブロックチェーン・ポリシー・フォーラムに私はスピーカーで参加しましたが、そこでの議論でも、例のsame risks,same rulesに関して言うと、これが基本だねということは改めていろんな人が確認をするんですけども、一方でsame risksではないというところもあるので、改めてやっぱりsame risks,same rulesではあるんだけども、same risksとは細かく見るとどう言うことか、というところをやっぱり改めて考える必要があるんだろうと思っています。

 あと、金融行政において取り組むべきものは何があるかという御質問に対しては、僕は、先ほどデューディリジェンスという話が出てきたんですけども、デューディリジェンスってすごいコストがかかって、政府が単純に、誰がコストを払うんだろうとか思っていたんですけども、ただ、少なくともどういうプロセスがあるとみんなが納得できるのかというプロセスの標準化と、あとは、それぞれのスタートアップもそうですけども、どういう人がいないと安心して、設計から運用まで、あるいは事故が起きたときの対応までちゃんとできるのかというところを、改めて、そのスキルセットと、何人どういう人たちが必要なのかというところを明らかにする必要があると思います。

 あとは、改めて金融規制というのが何でできたのか、今般、規制緩和も含めてこれから議論されると思います。人間って、どうしても悪いことをする可能性がある動物なので、だから金融規制というのができてきたわけだけど、金融規制が何でできたのかということを、これはもう前世紀からの歴史だと思うんですけど、改めて実は共通認識を持つという意味で、金融庁の方から、何で金融規制があるんだっけということを御説明頂くのがいいのかなと思っています。

 あとは、最後の留意すべき点でいうと、これ、あしたも実はそのデジタル庁で申し上げようと思っているんですけども、ガラパゴスにならないことがとても重要で、アメリカにいると、日本の議論とアメリカの議論って大分違うなと思っています。

 なので、ガラパゴスにならないことが非常に重要かなと思います。これは、日本のWeb3.0のスタートアップが世界でリードするのだということが骨太の方針の裏にあると思うんですけども、日本のスタートアップが外に出ていくときに、ガラパゴスになっていると出ていけないというよくあることがあるので、その意味でも、日本と日本以外の国の規制、あるいは物事の考え方をアラインしていく必要があるだろうということ。

 もう一つは、この自民党のNFTペーパーから骨太の方針に至るまでは、おおむね1月、2月ぐらいの状況によって立案されていると思うんですけども、2月と10月ではかなり状況が違います。

 2月ぐらいは、Web3.0のスタートアップに人が流れている、シリコンバレーでも話があったんですけども、もう6月には逆流していて、Web3.0のスタートアップからかなり引き揚げているんですよね。お金も引き揚げ始めているということで、かなり状況が違うということも含めて、最新の状況をまず把握する必要があるだろうという気がしています。

 あともう一つは、ホワイトハウスのファクトシートが先々週出ました。3月の大統領令のフォローアップで出たんですけども、その中ではかなり重要なメッセージがいろいろ込められています。今日はちょっと時間がないと思うので、また次回にでもそれの研究をしたいんですけども、特にアメリカとしては地に足をつけて、そのために高度な人材をそろえて、そのための費用というのをNSFのファンディングも含めてちゃんとそろえていこうという意思をすごい感じるメッセージになっているので、そういうところも含めてガラパゴスにならないことというのを御提案したいと思います。

 以上です。

【神田座長】
 ありがとうございました。それでは次に岩下さん、どうぞお願いします。

【岩下メンバー】
 ありがとうございます。私も松尾先生と非常に近い感想を持ったので、若干補足の説明をしつつ、資料2に沿って考えを述べたいと思います。

 今、松尾先生が、今年の2月と10月では環境が違うんだという話をされました。実はもう2月の時点で変わっていたと私は思います。この議論はどこが出発点になっているかというと、今年の3月のニューヨーク・タイムズに、GAFAからフィンテック企業、Web3企業に、人材が大きく流れているよという記事があったんです。

 実はこのデータの元は、レベリオラボというアメリカの調査会社が調べているレポートでありまして、この調査レポートはどう調べたかというと、2020年の第1クォーターから2022年の第1クォーターにかけての転職というのを数値として出して、この会社からこう動いているというのを、例えばアマゾンから976人の人材が流出して、それが例えばストライプというフィンテック企業に834人雇われているみたいな、そういう数字を出したわけです。これに基づいて記事が載ったわけです。

 ただ、もう記事が載ったときには、いわゆるフィンテック企業、あるいはWeb3企業と言われる会社は、実はかなり経営が厳しくなっていました。典型的には、去年の11月をピークに株価が大きく下落しています。

 その結果、今年の3月、4月ぐらいにはもうかなりレイオフが始まっていました。松尾先生がおっしゃるとおり、先ほど、GAFAからWeb3企業への人材の流入はもう止まらないんだとおっしゃる方がいらっしゃったかと思いますけれども、実際は止まっているわけですね。

 その意味では、GAFAは相変わらず、インターネットの世界において極めて支配的な力を持っているのです。それがいいとは私も思いません。GAFAに対抗する力が存在することが望ましいと思いますし、それぞれの国におけるプラットフォームをどのように扱うかということについては、政策としてもいろいろ考えられるべきだと思います。競争法の観点であるとか、あるいは個人情報保護の観点だとか、いろんな視点があると思いますが、ただ、そうはいっても、もうGAFAは駄目で、GAFAの代わりにみんなに権利を持たせるWeb3の時代なんだと言っても、それは実態が伴っていないのです。インターネットというのはもう経済全体に及んでいますし、その中にGAFAが隅々まで入っているのに比べれば、Web3が影響を及ぼしている領域というのは極めて少ない。

 その極めて少ない部分について、先物買い的にエクイティというか、投機資金が集まって、それがわーっと盛り上がった。これもやはり去年の11月ぐらいがピークだと思います。その後、かなり資金が逃げているのは先ほど松尾先生がおっしゃるとおりで、必ずしもそこにどんどん資金が集まる状況ではなくなりつつあります。

 その意味では、Web3が流行っているから、もうこれから確実にWeb3の時代が来るから、だからWeb3で何でも頑張るんだという、そういう考えで先物買いというか、バスに乗り遅れるな的な理論でこのWeb3というものを考えるのは、ビジネス的にはあまり賢い戦略ではないと私は思っています。

 私がそのように思う技術的な背景について説明します。先程、Web3というのが、GAFAに対抗するものとして、GAFAに搾取されるインターネットのビジネスから、それぞれの人が分権的に権利を持って、自分自身で、GAFAに頼らずに様々なことができるようになるという説明がありました。確かに、そういうふうになるのがいいのは事実だと私も思います。ただ、実際にはそうはなりません。

 なぜならないかというと、ビジネスというのは、金融庁の審議会ということで言えば、お金の流れです。このお金の流れというのが何によってできているかというと、例えば銀行預金、伝統的な有価証券、保険といったものが存在するわけですが、残念ながら、ブロックチェーンでと言っている人たちの多くが、暗号資産、あるいはトークンを前提としています。

 これらのものは、一見すると何かそこで分権的に権利が持たれているように見えるんですけれども、実際には、例えばビットコインを買っている人のほとんどが、日本で言えば99%ぐらいが、自分でアカウントを持って、自分の秘密鍵を管理して自分のアカウントにビットコインを入れるということはしていないんです。交換業者に預けている人たちばっかりです。これは世界的に見てもそうです。

 そう考えると、実は個人が管理できるように、まだなっていないんですよ。Web3とかブロックチェーンとかというものが、もうあまねく広がっているというのは誤解であります。なぜ誤解かというと、ほとんどの人たちが、ブロックチェーンに参加するために必要な秘密鍵を自分で管理していないからです。

 この部分というのは、ビットコインがこれだけ世の中に普及しても直らなかった。この状況が直るのは、ごく一部のマニア、ギークの人たちを除けば、当分先になると思います。これを安全に推進するためには、きちんとした仕組みを、例えば政府がマイナンバーカードを普及させるような形で普及させない限りは無理だと思うので、そうなるまでにはまだ当面時間がかかります。

 したがって、Web3と言っている人たちの技術的な前提の根拠がないんです。今の世界全体のインターネット、一般の人たちが使うインターネットには。

 そんな中で、時々無理してやろうとして事故を起こすケースもありますし、そういうものをリモートで扱い、実際はセンターで処理している、DeFiと称する、でも実際にはセンター型のビジネスとかありますけれども、それらのものはいずれもまがいものであります。

 そういう意味では、今Web3と言っているものは基本的にまがいものだと思うので、したがって、現時点で4番の、金融手法・サービスについて留意すべき点はあるかという点については、こういうことをやらないことというのが一番大事なことだと思います。

 その上で、実際に世の中がそういう環境を満たしたら、それに対応するようなことを考えていくことだと思いますけど、当面は既存の金融ビジネスの亜流であって、しかもそれを無理な仕組みの中で実現しようとしているので、事故も多いですし、詐欺も多いということになるんだと思います。

 これは残念ながら事実ですので、そのように取り扱うのがよろしいかと思います。

 私からは以上です。

【神田座長】
 それでは次に野田さん、どうぞ、お願いいたします。

【野田メンバー】
 野田です。私はブロックチェーン技術を面白いと思って研究している研究者ですが、同じくWeb3という言葉にはややネガティブです。なぜネガティブなのかというと、こういう政府が出している公式の文章でもはっきりとした定義が定まらないという曖昧さが一つあるんですが、もう一つは切り方がよくないのかなというふうな印象を受けています。

 どういう意味かというと、Web3の定義というか理念としては、独占的プラットフォーマーからの脱却ということが挙げられていますが、先ほど岩下先生からも御説明があったように、分散台帳技術で脱却が可能な部分というのはそれほど多くはない。

 加えて独占による悪影響、プラットフォーム独占による悪影響というのは、実は経済学の最新の文献でも、どこがどう悪いのか、悪いとしたらどういうふうに解決をするのがいいのかということについて、それほど定見が固まっていないと理解しています。これについて詳しく知りたいようであれば、私もこれが専門であるわけではないので、詳しい人を連れてくるのがよいのではないかと思います。

 分散台帳技術は、独占的プラットフォーマーからの脱却以外にも、新しく達成した点というのはいろいろあるわけです。私が特に面白いと思っているのは、その制度とかアルゴリズムがどういうふうに記述されて、どういうふうに動いているのかということを、利用者に透明性を持たせてちゃんと伝えてあげられること。それからスマートコントラクトが使えるということです。

 これは、独占的なプラットフォーマーからの脱却と必ずしもぴったり一致しているわけではないので、Web3の定義というのがプラットフォーマーからの脱却ということであれば、この辺は外れるということになります。しかし、この辺を外したら、分散台帳技術の面白さも半分以下になってしまうなというふうな気持ちで見ていて、個人的には注目すべきなのはむしろ後者2つのほうなのではないかなと感じています。

 これらの新しい特徴がどう世の中を変えるかを、資料2で議論してほしいと言われています。私の専門はマーケットデザインという、経済学とかで研究されている制度設計の科学ですが、最近ではアルゴリズムや制度の中身を透明化して、利用者に何をやると何が起きるのか、何をインプットすると結果として一番得になるのかをはっきり分かるようにしていこうというのは、この分散台帳技術の話に限らず世界のトレンドになっていますので、これは基本的にはいい方向だと思っています。私がもともと分散台帳技術に興味を持った理由もここにあります。

 これによって、従来、金融サービスを提供するようなことは考えられなかった、非常に怪しげな人たちも、辛うじて、監督省庁の規制もなく、一応金融サービスのようなものを運営できるというふうな状態になっています。やっぱり、名声のある主体が監督官庁のがちがちな規制と監視を受けて運営するよりは、リスクが高いというのが現状のところだとも思いますが。透明性を高めただけでは、利用者のほうが正確に制度やアルゴリズムの欠陥だとか潜在的な弱点みたいなのを判定する能力がないために、リスクが十分になくなっていないというのが現状だと思っていて、この辺は岩下先生がおっしゃったことと同意見かなと思っています。

 後々にはアルゴリズムの中身が透明になれば、利用者のほうも正しく判定できるようになる可能性もあって、そうなったらもっと、分散台帳技術は面白くなってくるかなと思っています。この時代が果たして本当に来るのか、来るとしたらいつ来るのかははっきり分かっていませんが、ただ、こういう時代が来たとしたら、スマートコントラクトとか、それを使ったアプリケーションであるDeFiなんかが、この資料2の中で提案されているように、新しい価値を創出していくようなことが起き得るのではないかなと思っています。

 以上です。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。では次に松本さん、どうぞ、お願いします。

【松本メンバー】
 LayerXの松本です。こちらの論点、幾つか並べられているところですけども、これに沿ってという形ではないですが、私見のほうを述べさせて頂きたいなと思います。

 ここまでお三方がお話しされてきた御意見については私も非常に同意するところでして、やはり規制を今考えていこう、向き合い方を考えていこう、戦略を考えていこうというときに、重要視したほうがいいかなと思うのが、今この「Web3」というキーワードをそもそも使わないほうがいいのかなというふうには思っております。

 というのも、そもそもこのWeb3というものも、幾つかのトレンドと技術と、そういったものの寄せ集めでつくられているものかなと思っておりまして、これらは個別に議論されていくべきだろうと。そういう性質のものが多いように感じております。

 ですので、まずは正しく議論をするという意味では、我々はじゃあ何について今議論をしているのかというのを、「Web3」というキーワードは使わずに議論をされていくほうが、より健全に議論が、対話が重ねられていくのかなというふうには思っております。

 その中で、Web3で解決したかったものが巨大プラットフォーマーによる支配からの脱却だという話もあるんですけども、実のところ、これはユーザーのデータの主権をどこに持つのかというようなお話と、その活用方法に対する透明性、こちらは先ほどお話しされていた部分とも、野田先生の話されていたところともかぶりますけども、その透明性のところかなと思っておりまして、実はこれに対して直接ブロックチェーンが回答なのかというのは、非常に性急な議論かなというふうにも考えております。

 といいますのも、やはりユーザーのデータ主権というところでいけば、これはプライバシー保護の問題だったりするわけですよね。これは欧州のほうから先行して、GDPR等の取組も進んでいますけども、ユーザーが自身データをどのように使うか、これを制御できるということがまず根本にあるべきだなと思っておりまして、これの手段というのは、各国が敷いていくプライバシー規制の中で実現できるものでもあるだろうとも思うんですよね。

 これによって、支配による何かデメリットがもしあるのだとして、それがじゃあカバーできる規制になるんじゃなかろうかというふうにも思っておりますので、私としては、これはプライバシー保護技術、もしくはその保護規制のところのお話として考えていく性質のものなのかなと思っております。

 それに、例えばデータをどう利用するかというところも、昨今一番問題になるのはアルゴリズムがじゃあ公開されたとして、理解できるのですかというところがありまして、特に機械学習、ディープラーニング等々、今、普及しておりますけども、あれの解釈性を高めるというところも非常に難しい研究の分野でして、このデータをいかに使うかというところの透明性を見ていくという意味でも、これはブロックチェーンとはまた違う議論なのではないかなというふうにも思っております。

 ただ、その上で、改めてどのように向き合っていくか、どのようにインパクトがあるのかというところに関して、僕はゼロではないというふうに思っております。

 というのも、背景として、私は今、金融系のサービスの開発等々も行っているんですけども、証券台帳だったりとか、先日ある程度方針の固まりましたステーブルコインだったり、こういったものというのは証券決済の世界だったりに対して、ある程度利用しやすい基盤にはなってきているのかなとは思っているんです。

 ただ、もちろんDeFiという完全に分散された形だと、正直、規制ができないよねと。私は、規制できないということが問題というよりは、安心して使えない状態だというふうに捉えられるわけです。

 実際の投資家、消費者のところが安心して使えない基盤というのは、私はどちらにせよ普及しないものだなと思っておりまして、それに対しては結局保護をかけていく必要があり、そうすると、何らかサービスを提供する仲介者の存在が必須になるのかなと思っておりまして、このDeFiと伝統的な金融の間に、何か答えがあるのではないかなというふうにも感じておりまして、ここを研究していくことというのは、私は日本の金融だけでなく、例えば途上国等々の、まだまだ金融的な手段が届いていないような地域において、フィナンシャル・インクルージョンといいますか、金融包摂の文脈でこれを活用していくということは非常に魅力的な取り組み方なのかなと思っておりますし、ここを日本がファーストムーバーとして、より適切な規制をつくり、適切な仲介者が適切なサービスを提供するというような規制が生まれてくるのであれば、十分に検討しても面白い領域なのかなというふうには思っております。

 一方で、例えばほかに様々いろいろな議論が混ざっているWeb3ですけども、例えばNFTのようなもの、これは非常に詭弁だなというところも私は感じるところが多くて、「著作権保護」「複製不可能」というふうによくキーワードがうたわれるわけですけども、全くそのような技術ではなくて、単に特定のウォレットに対して何らかの文字列がひもづいているというだけのデータベースを持つという技術ですので、その文字列にどのような画像、どのようなデジタル資産がひもづいているかというのは、結局何らかの仲介者、何らかの運営主体がカバーせざるを得ないというところで、これは実はブロックチェーンをつくる意味ってそれほどないというふうにも思っているんです。

 ですので、こちらはあくまでマーケティングワードの一種なのかなというふうにも捉えて差し支えないというぐらいには考えておりまして、こういったふうに、要素技術をそれぞれやはり分けて議論していかないと、なかなかよい議論に、規制につながっていかないのかなというふうにも思っておりますので、私のここまでの結論としては、向き合い方として、この規制、何に対して今議論をしているのかというのをはっきりさせた上で取り組むべきかなと。その上で、私はこの金融サービスの基盤というところ、我々の今、ほふり等々、存在する証券基盤のところに対して、何かインプリケーションがあるのか、実際にこれを使って、じゃあ金融包摂といった文脈だったりで、「Web3.0」と「Web2.0」というキーワードを出すのであれば、「Web2.5」ぐらいのところに何か答えがあるのではないのかなとも思いながら見ているというのが、私の御意見となります。

 長々とありがとうございました。私の意見は以上となります。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは次に坂さん、どうぞ、お願いします。

【坂メンバー】
 ありがとうございました。Web3と、それから金融関連について少し発言をさせて頂ければと思います。

 Web3の検討に関しましては、今御指摘もあったところと関係するかもしれませんが、分散台帳技術、スマートコントラクト、DAOという3つの技術的な要素を主要要素と捉えて検討するのが便宜と考えております。

 これらは従来の業務やサービスを効率的に構築することを可能とする面があるのだろうと思いますし、御指摘のとおり、従来の技術でも可能なものも多くあるのだろうと思います。

 また、評価もいろいろありますけども、NFT等、新たな商品を生み出す面もあるだろうと思います。

 他方で、新たな技術が法的規律の実行を困難としている面があることは、既に暗号資産等によって現実化しているところです。こうした問題が、Web3の広がりとともに形を変えて表れることが懸念されます。

 また、Web3が従来から存在する課題を解決できるものでもないと思います。例えばDAOにおける投票権の集中は、株式会社における大口株主の存在と似たようなところもあるように思われます。

 かかる点から、Web3が社会全体として望ましいものになるかどうかは、注意深く見る必要があると思います。実体経済の視点から見たときに、いかなる効用を新たに生み出し、かかる価値の成果がいかに分配されるのかを冷静に観察、検討することが必要と考えます。

 事務局資料の8ページに、Web3に関する様々な御見解を紹介頂いております。

 私の認識はこの表の下のほうの見解に近いところです。他方、Web3を積極的に推進する方の見解をお聞きしますと、かつて暗号資産が登場した頃、あるいはその後ICOが登場した頃に語られていたことが、やや形を変えて語られているという印象を受けております。

 Web3の健全な発展を促すということを考えるのであれば、このページの下のほうに指摘されている事項に対して、適切な対応といいますか回答を図るということが必要と思います。

 こういった点からも、中身のあるプロジェクトと詐欺的なプロジェクトを選別し、後者を抑止・排除するという何らかの仕組みというのが必要です。

 ファンドですとか、あるいは技術者によるデューデリジェンスや、政府によるチェック等が考えられるところでありますけども、幾つか留意すべき点もあろうかと思います。

 ファンドについては、残念ながら詐欺的なファンド等もかなりあるところでありますし、また、技術者によるテクニカルデューデリジェンスは大事ですけども、技術が解決できない課題を的確に把握し、かかる課題に対応する仕組みやガバナンスを構築することが必要です。そして、これらに対する独立の第三者機関による監査というのも検討課題だと思います。Web3が用いられる分野によって、求められるレベルの高低はあり得ると思いますけども、基本的な枠組みは共通するように思われます。

 それから、金融に関して、現在用いられているものについての評価ですが、暗号資産においてマネロンや犯罪利用が行われているということに鑑みますと、総じてその効用よりも課題のほうが大きいように思われます。

 金融機能という観点から言いますと、資金の融通という点では、金融機関による情報生産機能が重要であると思われますが、分散型金融でそのような機能を果たし得るかというと、かなり疑問であると感じております。

 金融では、中間業者といいますか関連業者が情報生産において重要な役割を担っていて、この役割というのが引き続き重要であろうと思います。したがって、Web3で論じられている中間業者の省略というものが、必ずしもいいものではないという観点も必要と思います。

 それから現下の課題ですけども、箇条書的に4点申し上げたいと思います。やはり暗号資産について、足元の課題を解決するということが重要です。

 第1に、国際的に暗号資産交換業者に対する適切な規制枠組みを整えて、本人確認等のマネロン対策の網をきちんとかけること。それから、本人確認されていないアンホステッド・ウォレットへの移転について対策を打つこと、これが必要と思います。

 第2に、国内の一般の利用者が、国内の交換業者から海外の交換業者に誘導されて詐欺被害に遭うという事例が後を絶たないという状況にあります。国内交換業者から海外への交換業者の移転に適切な制限を設けるということが喫緊の課題です。

 3番目ですけども、暗号資産取引の脱法的な利用を防ぐということも必要です。

 例えば、暗号資産投資の助言を投資助言業の規制対象とすることや、暗号資産の貸借等について適正に規制を及ぼすということも検討すべきと思います。

 4番目ですけども、暗号資産における監査の整備・充実を図るとともに、他の分散型金融においても必要に応じた検討を行うべきと思います。

 以上です。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは次に加藤さん、どうぞ、お願いします。

【加藤メンバー】  
 加藤です。他の委員のご発言と重複する部分もあるかもしれませんが、2点、コメントさせて頂きます。

 1点目はデジタル資産の保有形態についてです。岩下委員のご発言と関連しますが、実際にデジタル資産と呼ばれているものを、自分で秘密鍵を管理して保有している人がどれくらい存在するのかについて、実態を把握する必要があると思います。

 2019年の資金決済法の改正により、暗号資産交換業者に暗号資産の管理を委託していた利用者の保護を目的とする規制が強化されましたが、その背景には暗号資産交換業者を介して暗号資産を保有している者が多数を占めていたという実態が存在したと思います。

 仮にデジタル資産の保有形態についても、資金決済法の暗号資産の定義に該当するデジタル資産であるか否かに関係なく、自分で秘密鍵を管理しない形で保有している人が多いという実態が存在する場合、あるデジタル資産は暗号資産に該当しないと解釈することによって、デジタル資産の管理を業者に委託した利用者の保護について、資金決済法の規制は適用されないことになりますが、その妥当性について検討する必要があると思います。

 2点目は、デジタル資産の取引に関する不正行為の話です。

 こちらは松尾委員よりアメリカの事情について御紹介頂きましたけれども、アメリカでは、デジタル資産の取引に関する不正行為が、デジタル資産の証券該当性と関連づけて、活発に議論されているとの印象を持っております。

 このような状況を日本の立場から見る際には、証券に該当するかどうかという問題も非常に重要ではありますが、そもそもデジタル資産の取引について、どのような行為を不正行為として規制すべきなのかという視点も重要ではないかと思います。

 例えば暗号資産については、金商法で暗号資産の取引は不公正取引規制の対象になっていますけれども、内部者取引規制に相当する規制はございません。

 ただ、暗号資産交換業者の自主規制では、暗号資産に関連する未公表の重要情報の取扱いについて規定があると理解しております。

 すなわち、暗号資産交換業者の自主規制における未公表の重要情報の取扱いに関する規則は、暗号資産であるデジタル資産について適用されるが、暗号資産ではないデジタル資産について適用されないということになります。

 確かに、暗号資産に関する規制をそのまま全てのデジタル資産に適用することは、過剰規制なのかもしれません。
 しかし、デジタル資産については、P2Pでも取引ができるというのがメリットでしょうし、マーケットが成立する可能性があります。デジタル資産のマーケットが存在し得ると考えた場合に、そのようなマーケットの公正さを確保するという点で、何か法制度が貢献できる余地がないかということについて検討する必要があると考えております。

 私からは以上です。

【神田座長】
 ありがとうございました。予定の時間を過ぎているのですけれども、森下さんと井上さんに御発言をお願いしたいと思います。

 森下さん、どうぞ。

【森下メンバー】
 時間を過ぎており、申し訳ございません。本日のお話の中で、Web3に関してかなり違った角度からの御意見があったように思います。

 それだけ難しい問題なのかなと思いますけれども、ぜひ、また多角的な観点から、Web3、本当は何なんだろう、どういう可能性があるんだということを、継続的に研究するということが必要なのではないかというふうに感じました。

 その上で3点、ごく簡単ですけれども、対顧客でWeb3というものが出てくる場合と、サービスの裏側でそういった技術が、分散型台帳とかそういったようなものが使われる場合というのは、法規制などの観点からすると全然違うと思いますので、それは分けて考えたらいいのではないかと思います。

 2点目ですけれども、頭の体操として、どちらかというと事業者、サービス提供者にイメージを置いた、サービス提供者に力点を置いた議論がなされますけれども、このWeb3、あるいは分散型台帳技術というものが本当に普及して最大限の価値を発揮するような世界を仮に考えた場合に、そういった価値を最大限活用できる利用者、私たちって、どういう人である必要があるんだろうというような頭の体操というのはあってもいいのかなと思います。

 そういったような私たち、普通の人たちをエンパワーするためには何が必要なんだろう。

 実際にはエンパワーのしようがないのかもしれませんけれども、そういう利用者に目線を置いた議論、検討というものもしておいたほうがいいのかなというふうに思います。

 第3点ですけど、これは既にお話にも出てきましたけれども、この世界は本当に簡単に国境を越えるということがありますので、日本だけ、日本の国内だけをきれいにしたとしても物事は片づかないので、グローバルな視点で、戦略的に、かつ現実的に、どういうふうな選択をすべきかということを常に考えていく必要があるというふうなことを改めて強く感じております。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 では井上さん、どうぞ、お願いします。

【井上メンバー】
 ありがとうございます。井上です。もう時間がない中、申し訳ございません。

 分散型金融への対応の在り方を考えるに当たって、一点、重川様に御質問があるのと、その後ちょっとコメントを差し上げたいんですけれども、質問というのは、資料で言いますと4ページ目になるのですが、会社のビジネスの御説明の中で、アドレスのクラスター化と識別というところがあって、分散型台帳において匿名性が高いとはいっても、まずクラスター化した上で、いろんな情報を基に識別していくという御説明がありました。

 私は全く素人で、それがどのぐらい功を奏するものなのか分からないものですから、現時点で、こういう方法によってほぼ解明できるというような現状なのか、解明できることもあるという程度なのかを伺いたいのと、それから、この技術が、逃げるほうと捕まえるほうでどっちが早いのか分かりませんけれども、今後の重川様の見通しとして、今より分かるようになっていくという見通しなのかを御質問したいということです。

 その上で、資料2の討議事項について簡単に申し上げますと、分散型金融といいますか、非金融を含めるとブロックチェーン技術を利用したビジネスということかもしれませんし、あるいはDAOと呼ばれる組織の存在感から言ったほうがいいのかもしれませんが、これがどのくらいのスピードで進展していくのかについては、本日お話を伺うだけでも、随分意見が分かれるところなのかなという印象を持ちました。

 ただ、早いか遅いか、あるいはいいか悪いかは別として、進展していくとすると、やっぱり現状の規制の仕方といいますか、規制の枠組みあるいは考え方を相当変えないと、利用者の保護、あるいはマネロン対策といったことがうまくいかないんじゃないかという危惧がございます。

 本日、業者を規制するというよりもプロジェクトを規制するという考え方が提言されるなど、アイデアを頂きましたけれども、もう少し根本的に、フィージブルな規制の在り方、仕組みを考えないといけないという印象を受けたというのが1つ目のコメントです。

 もう一つは、規制とはまた違った問題なので、今日の討議の対象ではないのかもしれませんけれども、留意点としては、税も非常に重要だろうと思います。

 収益の帰属点をどう認識するのかとか、どういうふうに課税するのかということについて、現在、伝統的なエンティティ観、あるいは収益観に基づいて課税されていると思うのですが、DAOという組織が典型だと思いますけれども、規制のみならず税についても、どのように課していくのかを相当、枠組みも含めて考えないといけないように思います。

 そして、そのいずれも、今、森下先生も御指摘されましたけれど、日本だけでどうにかなるという問題でもないので、税が特にそうかもしれませんけれども、国際的な枠組み、あるいは協調といったことも含めて対応しないといけないなと感じます。

 その時間的猶予がどのぐらいあるのかについては、今日のお話を伺っていると、もしかするとそんなに急がなくてもいいのかも分かりませんが、しかし、発想の転換も含めて大きな枠組みの変更を考えなきゃいけないという印象を持っております。

 私からは以上です。

【神田座長】
 井上さん、どうもありがとうございました。

 重川さんからチャットを頂きまして、どうもありがとうございました。井上さんからの質問に口頭で、ここで、もしお答えして頂ければありがたく思います。いかがでしょうか。

【Chainalysis(重川)】
 ありがとうございます。まず識別に関して申し上げます。我々がやっている識別というのは個人に対しては基本的にやりません。制裁対象とか、個人が公的にそういったところで特定されるという以外では、我々は個人の特定はやらないです。それはあくまでも法執行機関が、事件捜査のために個別にやって頂くということになります。

 暗号資産のアドレスの性質を考えると、プライベートウォレットという個人が管理するウォレットと、いわゆるサービスの中のアカウントと、大きく分けて2種類があります。

 取引所に代表されるサービスというのは、当然規制がありますので、本人確認を行なっています。つまり、取引所が持っているアドレス群については、本人確認情報とひもづくことになります。それは必ずしもブロックチェーン上にある情報ではないものの、各取引所が管理する情報として持っているわけです。

 一方で、プライベートウォレットで資金が移転される限りにおいては、その所在は分かりません。本人が「これは自分のものだ」と開示しない限りは、誰のものかというのは釈然としない。その意味では、匿名性はまだそこでは確保されたままということになります。

 しかしながら、多くの場合、暗号資産も最終的には取引所に移転されることが大部分でして、それは違法、合法かかわらずそうです。最終的には実際にキャッシュアウトする、つまり暗号資産を法定通貨に換えたり、そこで売買を行ったりする場所として、中央集権型の取引所サービスというのは、このエコシステムにおいて非常に重要な役割を果たしています。プライベートウォレットとはいっても、その資金の多くはおのずと最終的には移転先あるいは資金源として、取引所につながります。

 例えば暗号資産が悪いことに使われて、その持ち主を追いたいとなった場合には、プライベートウォレットだけ見ても匿名性は残るままですが、最終的にそれが、本人確認が行われている場所までひもづくかというのが捜査上の焦点になってくるわけです。

 警察などの法執行機関はアドレスを追いかけていって、身元の情報が分かるポイントまで探り当て、最終的にはそこに照会をかけて、これは誰にひもづいているのかというところでようやく匿名性がなくなるという、そういう話ではあります。

 暗号資産の全ての取引の関与者の所在がわかるわけではないものの、手がかりはつかめます。要は、このエコシステムで重要な立ち位置にある取引所とのリンクをたどれば、そういった匿名性はなくなる可能性があります。

 実際、暗号資産が悪用された事件の解決においては、そのような捜査が行われていますし、そこで識別情報は有意に活用されています。

 逆に取引所においては、最終的に流れてきたお金、あるいは出ていくお金がどういったサービスやエンティティにひもづいているのかを、そういった識別情報を確認することで、リスクの把握や低減に努めている次第です。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 まだ御発言頂いていない委員の方々もいらっしゃるのですけども、予定の時間を相当過ぎておりますので、申し訳ありませんけれども、また次回以降に御発言頂ければと思います。

 オブザーバーの皆様方で、もし今日どうしてもという方々がいらっしゃいましたら、手短に御発言頂ければと思います。いかがでしょうか。チャット欄に「発言希望」と入れて頂ければありがたく思います。

 特によろしいでしょうか。大変申し訳ありません、今日はちょっと私の進行も悪くて、予定の時間を15分ほど過ぎてしまっておりますので、それでは、オブザーバーの皆様方におかれましても、また次回以降、御発言を頂ければありがたく存じます。

 なお、次回までだと忘れてしまうというようなこともあろうかと思います。委員の皆様方、オブザーバーの方々、もしお気づきの点があれば、この後、事務局のほうまで、私まででも結構です、メール、電話その他適宜の方法で、御意見等をお寄せ頂ければありがたく思います。

 本日も大変活発な御意見を多数頂きまして、誠にありがとうございました。

 また、御多忙のところを長時間お付き合い頂きました、ゲストとして御参加頂きました重川様と石川様、どうも大変ありがとうございました。本日頂きました御説明や御意見等を踏まえ、今後さらに議論を深めていきたいと考えております。

 最後に、事務局から連絡事項等ございましたら、お願いします。

【玉川室長】
 事務局でございますが、次回の研究会日時につきましては、皆様の御都合を踏まえた上で、後日、事務局より御案内をさせて頂ければと存じます。よろしくお願いいたします。

【神田座長】
 ありがとうございました。

 それでは、以上をもちまして本日の研究会を終了とさせて頂きます。長時間にわたり、どうもありがとうございました。
 

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
企画市場局総務課信用制度参事官室、市場課(内線3572)

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