「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」(第9回)議事録

  • 1.日時:

    令和5年4月21日(金曜)16時00分~18時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館 13階 共用第一特別会議室

「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」(第9回)
令和5年4月21日
  
【神田座長】
 それでは、時間になったと思いますので、始めさせて頂きます。少し声がハウリングしているみたいですけれども、このまま進めさせて頂きます。

 ただいまからデジタル・分散型金融への対応の在り方等に関する研究会の第9回目の会合を開催いたします。
 皆様方にはいつもお忙しいところを御参加頂きまして、ありがとうございます。

 本日の会合も前回同様、オンライン開催とさせて頂きます。一般の傍聴はなしとさせて頂き、メディア関係者の皆様方には、金融庁内の別室において傍聴をして頂くこととしています。

 本日でございますが、暗号資産やステーブルコインに係る海外規制の動向やデジタル資産を用いた不公正取引等に関する海外当局による執行事例などを取り上げますが、テーマに応じたオブザーバーといたしまして、次の方々に御参加頂いております。全国銀行協会、日本資金決済業協会、日本証券業協会、日本暗号資産取引業協会、信託協会、日本STO協会、金融情報システムセンター、Fintech協会、新経済連盟、以上の方々でございます。

 それでは、議事に移ります。本日ですが、まず、事務局から暗号資産やステーブルコインに係る海外規制の動向について、そして、続いて、FTX Japanに係る対応について、そして最後に、デジタル資産を用いた不公正取引等に関する国際的な規制動向、法規制当局による執行事例及びマーケットにおける課題の分析についてということで御説明をして頂きます。その上で、メンバーの皆様方から御質問、御意見を出して頂くという流れで進めさせて頂きます。

 なお、後ほど御質問、御意見を頂くに当たりまして、お手元資料2に本日討議頂きたい事項というものをまとめさせて頂いておりますので、適宜、御参照頂ければありがたく存じます。

 それでは、まず、事務局からの説明をお願いいたします。大来さん、よろしくお願いいたします。

【大来信用制度参事官】
 ありがとうございます。
 それでは、資料1をお開き頂きまして、目次、今、座長から御紹介頂いた3つの固まりでございます。

 2ページ目以降が1つ目の固まり、海外の規制動向でございます。3ページ目、FSB金融安定理事会におきましては、暗号資産やグローバルステーブルコインに関するハイレベル勧告案を去年の10月にG20のほうに提出をしているところでございます。

 中身につきましては、3ページ目の真ん中ぐらいに青い表がございますけれども、両勧告とも、例えば当局がしっかりとした権限を持って包括的な監督を及ぼしていく必要があること。それから、サービスの提供者に関しては、ガバナンス、リスク管理、データ管理、開示、こういったものをしっかり行っていくべきこと。それから、CA勧告、暗号資産に関する勧告については、伝統的な金融との相互連関性、あるいは暗号資産同士の複数の機能の組合せによってリスクが高まる場合もあるので、そういったことにも注意する必要があるといったような内容が勧告案に盛り込まれております。

 下の黒い四角、今後の作業方針でございますが、2023年半ばまでに、FSBとしては、両ハイレベル勧告案を最終化したいという意向を持っております。

 2つ目の黒ポツ、FSBはDeFiに関してもリスクを分析し、追加的な政策措置を講じるかについて、本年中に検討を進めることとしております。

 4つ目の黒ポツ、FSBは2025年末までにハイレベル勧告の実施状況をレビューするということとしております。

 4ページ目、5ページ目は今、3ページの青い表で見ました、項目だけ示しまして御覧頂きましたものを、より具体的に記載したものでございまして、後ほど御確認頂ければと思っております。

 6ページ目に進みまして、FSBが行っております分散型金融の金融安定上のリスクに関する公表物の概要でございます。真ん中より少し上の矢印がぐるぐる回っております図でございますが、分散型金融といっても、純粋に中央集権型のものから純粋な分散型まで、理論的には両極があり得て、その間の線分図上に、実質的にはいろいろなサービスが、ガバナンスの在り方、あるいはプロトコルへのアクセスの在り方、カストディの在り方、取引執行の在り方、取引介入への体制の在り方等々の要素に応じて、線分図上のどこに位置してくるかというのが決まる、中間的なところに位置するものだということを指摘しております。

 7ページ、8ページ目は、FSBと似たようなこと、プラスアルファのことを米国財務省が今年の4月に実施しておりまして、分散型金融、DeFiの不正金融リスク評価というものを実施しております。

 7ページの黒い四角にありますように、1つ目のポツでございますけれども、FSBと同じように、分散化といってもDeFiサービスのガバナンス構造、あるいはサービスのアクセスポイントなどなどによって、その程度は影響を受ける可能性を指摘しておりますし、実際には完全に中央集権的なものと分散化されたサービスの中間に存在するものが多いということを指摘しております。

 その上で、8ページ、続きでございますが、米国財務省は、真ん中の青い表にございますとおり、分散型金融における不正金融リスクへの対処のための提言といたしまして、AML/CFT監督の強化、AML/CFT枠組み強化の可能性の評価、調査、民間との関わりの継続、海外当局との協業の継続、個別企業のサイバー耐性、コードテスト等々に対する支援、リスク軽減措置のイノベーションの促進などについて、提言をしてございます。

 表の下の注にございますように、そのほか追加的な検討事項が提示されておりまして、例えばDeFiサービスが、BSA、銀行秘密法上の金融機関に該当すると判断するためには、どのような要素が考慮されるべきか等々、答えは書いていない要素を記載してございまして、米国としても、なかなか分散型金融についてはアプローチが難しいということを考えていることがうかがい知れるかと思います。

 9ページ目、10ページ目は、銀行と暗号資産の距離感に関する足元の動きでございます。まず、9ページでございますが、昨年12月にバーゼル委員会が、銀行の暗号資産エクスポージャーに関する国際的な健全性基準について、合意をいたしました。そして、この基準は各法域において2025年1月から実施してほしいとバーゼル委員会としてはしているところでございます。

 その中身でございますけれども、真ん中より少し上の青いところ、暗号資産の分類基準といたしまして、1つとしては、伝統的資産をトークン化したものであるか等々、2つ目として、権利義務が明確に定義されているかと。3つ目といたしまして、機能やネットワークに係る重要なリスクが十分に管理等されているか。そして、4つ目といたしまして、償還、移転等に行う主体が規制、監督されているかといったような基準を示した上で、仮に全てを満たしているようなトークンであれば、左下、グループ1の暗号資産として、既存バーゼル枠組みに即した資本賦課とする。一方で、1つでも充足をしないような場合には、右下、グループ2の暗号資産として、1,250%の資本賦課をするという方向性を示してございます。

 なお、注2にございますとおり、パーミッションレス型ブロックチェーンをグループ1、暗号資産として扱えるかどうか、扱うとして、何か調整が要るかどうか、こうしたことについては、継続的な検討課題とされているところでございます。

 それから、10ページは暗号資産と銀行の距離感ですが、こちらは米国1国の動きでございまして、本年1月にFRB等の当局が共同声明を公表しております。真ん中の黒い四角にございますように、1から8のようなリスクについて警鐘を鳴らした上で、一番下、注のところでございますが、オープン、パブリック型、それから分散型ネットワーク等で発行等々をされる暗号資産については、銀行実務と両立しない可能性が高いということで、かなり厳しめの文言となっているかと認識しております。

 11ページ、12ページは、各国、あるいは各法域における暗号資産、ステーブルコインに係る規制動向を国割りでアップデートしたものでございます。各国とも昨今の動きを受けて規制強化の方向かなと見てとれますが、例えば香港などは、制度上はいろいろな制度を整備する、規制強化的なものも整備するということですが、地域全体としては、暗号資産ビジネスを招き入れるというような動きも見せておりまして、そういう政治的なメッセージと併せて捉える必要があるという部分が1点と、それから、スケジュール感、あるいは進捗度合いに関しましては、シンガポール、英国などにつきましては、コンサルテーションペーパー、あるいは市中協議といったような段階にあるということで、最終化が今後急がれるようなところもあれば、米国のように、評議会、FSOCというところが勧告をしているにとどまる。今週に入りまして、米国の下院のサービス委員会で法案のドラフトが示されたという動きもありますが、これが実現する可能性については、党派対立の中で懐疑的な声もかなり多く聞こえてきているようなところでございまして、そういう進捗動向のところもある。そして、EUはまさに日本時間でいいますと、昨日の深夜から今朝方にかけて、欧州議会の本会議で、MiCAという暗号資産市場規制案を採択を行って、2024年中の施行を機としているというようなかなり具体化が進んでいるところまで、進捗動向はいろいろあるかと見てございます。

 以上が1つ目の固まりでございまして、続きまして、2つ目の固まりでございます。

【眞下フィンテック参事官】
 フィンテック参事官の眞下でございます。私のほうから、FTX Japanに関する対応について、御説明申し上げます。

 まず、14ページのほうでございます。FTX Japan社でございますが、グローバルに暗号資産交換業等を展開するFTXトレーディング社の日本法人でございまして、当庁の規制監督下にございます。

 1枚おめくり頂きまして、15ページ目でございますが、昨年11月の第8回の本研究会のほうで、このたびの事案の発生、間もない中で、資料の16ページのほうにございますが、11月10日の行政処分に、こちらに至る概況、さらに、FTXトレーディング社グローバル法人とここでは呼ばせて頂きますが、同社が日本法人を含むグループ各社について、米国において、再建型の倒産手続であるチャプター11の申請を11月11日に行ったこと、日本法人が法令にのっとり、利用者財産を分別管理していることなどを11月14日に公表したことなどを御報告させて頂きました。

 本日は、その後の状況について、概況を御報告申し上げます。まず、チャプター11の申請がなされた結果でございますが、オートマティックステイと呼ばれる効力によりまして、日本法人を含むFTXグループ各社におきまして、資産が保全され、債務の履行が停止される状況が生じておりました。こうしたことから、日本法人の利用者財産の返還につきましても、このステイが適用されるのかどうかという点が1つ、論点となりました。

 こうした中、資料の12月1日の記載のところを御覧頂ければと思いますが、日本法人の預かる利用者の財産は、預託や保管方法、及び、日本の法律における財産権などを考慮したところ、チャプター11の対象となる財産には含まれないとの見解が、グローバル法人の代理人である法律事務所から示された旨をFTX Japan社が公表いたしました。この見解につきましては、資金決済法における利用者の金銭及び暗号資産の分別管理の規定などが認められたものだと私どもは理解しております。

 その後、日本法人は、2月21日に利用者財産の返還を開始いたしましたが、先ほどの見解の公表を行った12月1日から2か月半ほどの期間を要しましたことにつきましては、利用者財産の返還に必要なITシステムの整備などを進めていたことが背景にございました。

 続きまして、3月9日のことでございますが、利用者財産の返還が着実に進む状況が確認できましたことから、当庁としましては、日本法人に対する業務停止命令を延長しないことといたしました。他方で、当社がグローバル法人の主導するチャプター11手続の対象に含まれている状況は変わらないことなどを踏まえまして、引き続き、利用者保護に万全を期すため、当社に対する資産の国内保有命令については延長しております。

 また、当庁としては、業務改善命令を通じまして、FTX Japan社の取組を引き続きしっかりフォローさせて頂いているところでございます。

 私からの説明は以上でございます。

【大来信用制度参事官】
 続きまして、17ページ以降、大きな固まり3つ目でございます。デジタル資産を用いた不公正取引等に関する国際的な動向でございます。規制と、それから執行事例、あと課題ということでございます。出典にございますように、金融庁のほうの委託事業におきまして、EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社とベーカー&マッケンジー法律事務所に委託調査をしてもらったものについて、あるいは公表情報に基づいて、金融庁において作成しているものでございます。

 19ページを御覧ください。米国におけるデジタル資産の不公正取引規制と管轄当局でございます。米国につきましては、暗号資産、クリプトアセットについて、何かそれ専用の法律などを、現段階では設けていないという中において、インサイダー取引規制、それから市場操作規制、ともに証券的なスキームの下で行われたデジタル資産絡みの不公正取引だと当局が認定しましたら、SECが証券取引情報に基づいて、各種の規制を執行すると。先物取引的であると認識すれば、CFTCが商品取引情報に基づいて執行するという枠組みになっております。

 なお、悪質で刑事的にも追及すべきであると認識されれば、DOJ、司法省が連邦通信詐欺法などを用いて執行するという枠組みになってございます。

 20ページ、EUのほうでございまして、EUはMARという金融商品をレギュレートする法律がもともとございまして、ここにインサイダー取引規制、市場操作規制が入ってございまして、金融商品の範疇の中で捉えられる事案であれば、この中で対処していくと考えられます。

 一方で、先ほど、議会のほうで、足元、採択をしたと申し上げました、MiCAについては、暗号資産を中心的に対象にした法律の案でございまして、この中にはインサイダー取引規制、市場操作規制が一揃い入っているという状況になっておりまして、今後は、金融商品に該当する場合には、加盟各国MAR所管当局が、暗号資産に該当する場合にはMiCA所管当局が管轄をしていくことになるのだろうと考えられます。

 21ページ目以降が、委託調査の中で浮かび上がってきた不公正取引に係る個別の執行事例でございます。

 22ページ、トルネードキャッシュに対する米OFACによる制裁等でございます。左下、執行事例の概要にございますとおり、トルネードキャッシュというのは、ミキシングをするサービスでございまして、ガバナンストークンの保有者によって管理されていたとされるDeFi的なものでございます。アメリカのOFAC、外為当局は北朝鮮が支援するLazarusグループによってマネーロンダリングに使用されていたとして、トルネードキャッシュ、ミキシングサービスそのもの、それから、ここには書いてございませんが、それに関連する幾つかのアドレスに対して制裁を実施しております。

 同時に、オランダ当局、FIODは、トルネードキャッシュの開発者兼実質的意思決定者であったとされるAlexey Pertsevを逮捕しているという事案でございまして、裁判はこれからとなっております。

 23ページにございます、本件を踏まえた課題に書いてありますとおり、今申し上げたように、責任主体をどのように捉えていくかについて、米国、そしてオランダ当局、執行のアプローチが異なっておりまして、その辺をどう考えるかというのが議論のあるところかと思います。

 24ページ、参考といたしまして、DeFiに関する執行事例、CFTCによる、Ooki DAO訴追の事案を記載してございます。左下に図を載せてございますが、もともとOokiプロトコルという暗号資産デリバティブ取引を行うプラットフォームがございまして、青いところにございますように、bZeroX、LLCという法人格が割とはっきりしている会社がこれを創設し、もともとは運営をしていたと。この中で、マネーロンダリング違反が疑われるような事案があったことから、CFTCが罰金を科す命令を発出したと。その限りにおいては、bZeroXの創設者であるTom BeanとKyle Kistnerの2者は、それを認め、和解に応じておりました。

 その後、Ookiプロトコルの支配権を、図で言いますとクリーム色のところ、Ooki DAOというDAO組織に譲渡をしたとされておりまして、その管理者は流動性供給者、Ookiトークンの保有者が、その投票権に基づいて実施しているとされておりました。CFTCは、Ooki DAO及びOokiトークンによって投票を行っているOokiトークンの保有者についても、同様に、AML/CFT規制違反ということで訴追をしておりまして、訴訟が係属しているところでございます。

 裁判所のほうは、Ooki DAOはunincorporated associationであるけれども、訴えられる能力があり、訴状を適法に受け取ったと判断しているというところまで進んでおりまして、実態審理がこれからという状況でございます。

 25ページ、26ページ、Coinbase社員等によるインサイダー取引事案でございます。インサイダー取引の構図としては、株式等でよくあるインサイダー取引と構図が似ていて、内部者が上場に関する情報を外部にいる者に伝達し、その者が暗号資産を買ったり、上場発表後に高値で売ったりというような事案でございます。

 25ページの真ん中にツイッターアカウントというのがございますけれども、あるツイッターアカウントはブロックチェーン分析ツールなんかも組合せながら、暗号資産界隈の各種取引をウォッチして、その中身をツイートするというようなことを行っていましたが、とあるツイッターアカウントが、Coinbase Globalに上場される前の1日間に大量に購入しているアカウントがあるぞといったことをツイートしたのが捜査のきっかけになったと言われているのが、この事案の特徴的なところかと思います。

 26ページ、本件を踏まえた課題でございますけれども、本人確認等を介した形で不公正取引が実施されるというような場合に、捜査執行の実効性をどう確保するか。それから、2つ目に、今申し上げたように、ツイッターアカウントがブロックチェーン分析ツールを利用したことが捜査のきっかけになったということで、このようなものも活用するということも今後の課題になってくるかということなどなどを記載しているところでございます。

 27ページ、28ページがMango Marketsにおける担保価値操作事案というものでございます。27ページの図を御覧頂きますと、左下にアイゼンバーグという被告がおりまして、この者が、真ん中にありますMango Marketsプラットフォームというところを舞台に行った価格操作、あるいは証券詐欺事案、暗号資産詐取事案でございます。

 アイゼンバーグは、まず、①の流れでございますけれども、CIRCLE社というところからUSDCというステーブルコインをまず仕入れて、それをMango Marketsプラットフォームに流し込み、まず、2つアカウントを開設した上で、それぞれ自分のアカウント同士でMNGOトークンの先物を自分として売買することによって、MNGO先物のロングポジションをまず、築き上げるということを行いました。MNGO先物の価値は、上の矢印から左に抜けておりますように、最終的には暗号資産取引場におけるMNGOトークンの現物の価格を参照しているということが、アイゼンバーグはソースコードを解読しまして、そのことを突き止めましたので、事後的に、赤い矢印にございますように、MNGOトークンの大量購入を、プラットフォームの外側の取引所で実施をし、まず、現物の価格を4桁%ぐらい引き上げると。

 それに伴って、プラットフォーム内で形成したMNGO先物のアイゼンバーグのポジションの価値が大幅に膨らみましたので、このプラットフォームは、そういう先物ポジションを持っていると、それを担保に暗号資産を借り入れることができると、そういうサービスも提供しておりました。それを利用いたしまして、高騰した担保価値を用いて、プラットフォームに預け入れられた暗号資産などを1億1,400万米ドル相当借り入れ、それをそのままプラットフォームに移転させて、窃取をしたという事案でございます。

 左下④、一時和解とありますが、窃取された側のプラットフォームを運営しております、Mango DAOとしては、これは困るということで、アイゼンバーグと和解協議を行いまして、アイゼンバーグは窃取したものの6割ぐらいを返還すると。Mango DAO側はアイゼンバーグと司法当局に差し出さない、あるいは民事訴訟を起こさないといったような内容で一時は和解をしたところでございます。

 28ページでございますが、しかしながら、やはり証券詐欺、あるいは市場捜査などなどの素因によりまして、SEC等々、各捜査機関がやってまいりまして、アイゼンバーグを訴追したということでございます。これに多分連動する形だと思いますが、Mango Labsのほうも、Mango DAOのメインのプレーヤーですけれども、Mango Labsもアイゼンバーグに対して民事訴訟を提起し、残りの4割についても損害賠償請求をするし、和解等については無効確認をしたいという訴えを起こしているところでございます。

 本件を踏まえた課題でございますが、Mango Markets、アイゼンバーグが一番悪いといえば悪いのですけれども、Mango Marketsは一定の脆弱性を抱えていたということでございまして、その脆弱性を突いた事案であったということが1つ。それから、2つ目は脆弱性とも関連しておりますが、ブロックチェーン技術を用いたプラットフォームというのは、ソースコードが比較的オープンであるということが売りであり、特性である部分もあるんですが、今回の攻撃者はオープンになっているソースコードを解読して、攻撃を実施したということを、ブロックチェーンを用いたプラットフォームとして今後どう考えていくかという点があろうかと思います。

 それから、最後、アイゼンバーグという自然人が捕まる端緒となったのは、一番最初のところで、CIRCLE社からUSDCを調達する際に本人確認をしておりまして、結局は中央集権型の取引上やステーブルコイン発行者のオフチェーン情報を基に捜査、執行が進められたという点が気づきの点かと存じます。そのほかMango Marketsのガバナンスはどうだったのかと、1回は和解に応じるということを自主的な投票で決めたわけですけれども、その後、それをひっくり返しているというようなことも見られますので、そういったところもあるかと思います。

 29ページ、30ページ、先ほど眞下参事官のほうからFTX Japanのほうについて御説明しました。FTXと、それからそれに関連するAlameda Researchの米国等々における事案についてまとめてございますが、基本的には、報道も多く出されているところでございまして、省略をしたいと思います。Samuel Bankman-Friedと、その関係者が証券詐欺、あるいは市場操作、そのほか、各種の素因によって、SEC、CFTC、DOJそれぞれから訴追されているという事案でございます。

 最後、31ページ、執行事例等を踏まえた課題でございますけれども、①といたしまして、DeFiと称するようなプラットフォームで違法行為が行われた場合に、責任主体をどう考えるのか、今、見た中でも自然人を捕まえに行くケース、あるいはスマートコントラクトやアドレスを捕まえに行くケース、あるいはDAOを捕まえに行くケース、いろいろあったわけでございまして、その辺の責任主体をどう考えるか。

 ②といたしまして、それと関連していますが、違法行為を抑止するための実効的な方法というのはどういうものかという点。

 ③、これも執行事例を見る中でございましたけれども、オンチェーン情報のみならず、オフチェーン情報も含めた総合的な分析の在り方、こういったものが執行事例を踏まえた課題かと認識しております。

 私のほうからは以上でございます。

【神田座長】
 どうも御説明ありがとうございました。

 それでは、今頂きました御説明を踏まえて、メンバーの皆様方から御質問、御意見をお出し頂ければと存じます。どなたからでも結構ですので、御発言頂ければと思います。いつものように、御発言頂ける方は、チャット欄に発言希望とお名前とともに1行入れて頂けましたら、私のほうから御指名をさせて頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。

 それでは、岩下先生、どうぞお願いいたします。

【岩下メンバー】
 ありがとうございます。本日の資料のほうに討議頂きたい事項というのがあったと思いますので、こちらの内容に応えるべく、若干過去に遡ってお考えを述べさせて頂きたいと思います。

 そもそも、我々がなぜこういう議論をしているのかというと、多分直接的な起源というのは、2009年にビットコインが初めて発行されたというところにあるのだろうと思います。ビットコインというものが、もともと匿名な取引を行うことで個人のプライバシーを高めるというような目的でつくられたものだと、当時、これを始めた人々は語っていたわけでありますし、そのために発生した概念として、非中央集権とか分散化といったようなものが、人々によって良いものだと主張されたわけであります。

 コンセプトに基づいて発行されたビットコインが、その後、人々の間で交換する中で高い値段をつけることになり、とりわけ2021年ぐらいまでというのは、極めて高価な1BTCあたり6万ドルを超すような相場をつけたわけでございますので、このときに、人々の中でビットコインというものが安定的な投資資産であると認識されたということだと思うわけですが、この中で、2020年、21年ぐらいにDeFiと呼ばれるような取引形態が極めて拡大してきたということだと思います。もちろんその維持となるようなスマートコントラクトとか、それのベースとなるようなイーサリアムというものは、2015、6年とか、その辺のところで誕生しているわけですが、それらのものが広く普及したのはそのころだと思います。

 ところが2022年に、米国及び欧州の金融政策の変更等に伴って、暗号資産の市場が暴落しました。その結果、例えばUST事件であるとか、FTX事件、今日の御説明にもありましたように、日本にも波及したわけですが、その事件が起こっていって、言ってみれば、2021年までの人々の認識というのが大きく覆ったわけです。そのときに、2022年に、それまで相場が上昇するプロセスでは覆い隠されていた、様々な闇が暴かれた。その結果、実際に様々な問題が起こって、刑事訴追等の動きにもつながってきて、それが今回、各海外当局が規制をより厳格にしようであるとか、あるいは実際の訴追をしてみましたという事例が起こってきたということにつながっているんだと思います。

 2023年に入ってからは、再び相場が上昇しておりますので、2021年の相場下落のときの事件というものがなかったかのように人々が考えている節がありますが、実際は、ある意味で、正体が2021年に暴かれたと考えるべきでありまして、その意味では、暗号資産が、もともと匿名取引、言ってみれば、既存の銀行や証券会社などの金融制度や、各国の金融規制を言わば逃れるために存在したものであって、かつ、その利用使途というものが登記のために使われる値上がりする資産ということ以外で考えれば、例えばランサムウエアの支払いであるとか、あるいは不正な国際送金であるとか麻薬の売買であるとかという、決して世のために良いものとは思えないようなものに使われているというところが、そもそもの金融商品とは性格が異なるということを考えるべきだと思うんです。

 世の中にある金融制度というものは世の中のためにある仕組みですが、どうもこれはそういうものでは多分ないのだと。もちろん一部の人たちは、プライバシーということを主張するわけですが、それは同時に、例えば国際的な不正な送金や違法な行為というものを見逃すということになりますので、それは必ずしも人々の公共の利益とは両立しないということなんだと思うんです。

 そう考えたときに、果たして暗号資産なり、暗号資産から生まれたDeFiと言われるものを、それを1つの守るべき制度として、きちんと前提としたものとして考えていく必要があるんだろうかというところについては、大変疑問なわけです。すなわち、人を陥れよう、お金をだまし取ろうと思った人が、何か荒唐無稽なことを考えて、それに基づいて人々を口車に乗せて、お金をだまし取ったとします。そのときに、その人が語った荒唐無稽なストーリーを、果たしてどこまで考慮した上で、その人の行為について、例えば、取り締まるべきかということを考えるかというと、多分それはあまり考える必要はないというのが一般的な理解だと思います。

 そう考えると、今、暗号資産、あるいはDeFiという仕組みを名のっているからといって、その実態というものは、その中において、特に不正に使われた場合、あるいは摘発されるような事件が起こった場合ですが、その中で実際に不正を行おうとしている人たちというのを、我々が実際に分析をしてみると、実際は限られた人が、極めて中央集権的に事業をハンドリングし、そのハンドリングした内容を利用して不正を行っているということが明らかであると。あるいは、そういうことが強く観測されるという事態にある以上、その人を具体的な不正を行ったものとして、必要であれば、処罰するなりなんなりすればよいのであって、暗号資産という金融商品みたいなものを、それをどうしましょうという話とは切り離して考えていいのではないかと考えます。

 逆に言うと、暗号資産というものが、そういう金融制度を、あるいは、他のため、人のためになるような仕組みとして存在しているんだという想定に立つ必要は、私はないのではないかと考えています。その実態に基づいて、今の世の中で、再び価値を増してしまっているようなところがありますけれども、いずれそれについての評価というものは定まってくるでしょうし、それまでの間は、諸外国とバランスを合わせて、それについての対応を考えていくにしても、基本的に、今回、提起されたような問題については、既存の暗号資産、あるいは、DeFiと表しているものを一生懸命立てて、それを前提とした処理を行うというよりも、それらのものというのは、言ってみれば、それを利用する人たちが道具として語っているだけのものであると考えて、それの大元となっている部分が、例えば日本の国内でそういうことが行われているのであれば、その人に対して、適切な処分を行うということがよろしいのではないかと考えます。

 私からは以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、チャット頂いております順番で、次に、松尾さん、どうぞお願いいたします。

【松尾メンバー】
 松尾でございます。私からは、リスクの中で、特に技術的なリスクの話をしたいと思います。リスクの中には技術的なものもあれば、運用上のリスクもあれば、ビジネス上のリスクもあると思いますが、この研究会でも何度か技術的なリスクも取り上げられたと思いますが、改めて技術的なリスクをお話ししたいと思います。

 なぜかといいますと、この二、三日、実は、イーサリアムのウォレットをはじめとして、特にブロックチェーンとか暗号資産とかを長年取り扱っているベテランの人も含めて、ウォレットからお金が抜かれるということが発生しております。この攻撃の全容はまだ明らかになっていなくて、今、皆様、鋭意、中身、どういう原因で起きたのかを調べている段階ですので、どういう原因で起きたかというのは軽々には申し上げられませんが、幾つか出ている情報でいうと、ウォレットのソフトウエアのつくりに一定のバグ、バグがないソフトウエアはないのであれですけども、一定の問題があったのではないか、あるいは、鍵を設定するときの乱数生成のシードを使い回していたのではないかみたいな、幾つかの臆測があります。

 先ほど申したとおり、まだ推測段階ですので、どれが原因とは言えないですけども、ただ、申し上げられることは、このような鍵管理であるとか、乱数生成だとか暗号の使い方のようなものは、実はもう暗号技術を研究する、あるいはエンジニアリングする人たちにとってはかなりベストプラクティスがたまっているところでございまして、そういうベストプラクティスが、暗号資産を取り扱う人たちにうまく伝わっていないことがたくさんあるわけです。

 これ、既存の枠組みがたくさんあるわけです。システムなりプロダクトをセキュアにするという取組は、ISMSをはじめとした既存の枠組みがあって、既存のベストプラクティスがあって、その評価をする信頼に足る組織があって。過去の研究会でも申し上げましたけども、オープンソースだからセキュアなわけでもないし、コード監査があれば完璧なわけでもないし、バグバウンティーがあれば完璧なわけでもなくて、ISMSを含めた既存の枠組みもたくさんあるわけです。

 さらに言うと、こういうNISTの鍵関連のドキュメントもそうですし、そもそも、先ほど岩下先生からあったとおり、ビットコインそのものは政府に対する対抗的な意味で出てきているのですけども、その安全性の下でのハッシュ関数の安全性は、米国政府の機関であるNISTが評価し標準化しているわけです。

 そういう意味では、NISTの成果を思う存分使っているというのが実態でして、そういう意味では、そういう世の中に、既に信頼に足るベストプラクティス制度がございます。日本で言えば、経済産業省の配下であるIPAが、そのような製品の認証システムを持っていたり、仕組みを持っていたりするわけですけども、少なくともこういう技術的に存在するようなリスクであるとか、責任分界を明らかにするために、既存のいろいろなシステムって使えるわけです。もちろんパーミッションレスにものをつくるから、誰の責任を問えるかどうかというのは分からないわけですけども、逆に、既にある既存のシステムを使ったということによって、それぞれの信頼性というのは上がっていくわけで、そういった制度を使っていくことを日本政府に促していくということは非常に大事なのではないかと思っております。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、野田さん、どうぞお願いいたします。

【野田メンバー】
 野田です。よろしくお願いします。野田は、法学や規制の実務に関する議論については明るくないので、経済学的な議論から規制の社会厚生に対する影響として、どういうことが言えるのかを述べるにとどめようと思います。

 一部の暗号資産サービスに、規制が必要な理由、あるいはその理由の根源となるような理論的な理屈というのは複数あり、そのケースごとにどのような規制を取るべきかが異なると考えています。

 1つ目のケースは、ユーザーがそのサービスを利用する、あるいはそのサービスが存在することによって、ほかの人たちに直接的な迷惑がかかるサービスです。典型的には犯罪利用で、例えばミキシングサービスがマネーロンダリングの役に立ち、犯罪収益を利用可能することに貢献してしまうことが懸念である場合には、このサービスを使う、あるいは支えるということは犯罪に加担するということになってしまいます。この一番悪質なケースに対して、例えばサービスを利用することや、ガバナンストークンを保持すること、実務的には難しいと思いますが、概念的にはバリデーションを行うことにも規制をかけるというのは適切だと思います。

 2つ目のケースとして考えられるのは、サービスを利用するユーザー本人にとってリスクがあるものを、消費者保護の観点から規制をかける場合です。質のサービスが混じっていると、市場の健全な発展が妨げられるという話は古典的な話です。理論的にも、情報の非対称性の問題があるので、一概にそういうサービスを使った人が悪い、自己責任だと片づけることはできません。

 伝統的な金融業に対して規制当局が監視をしてきたのも情報の非対称性が市場の発展を妨げることが理由です。中央集権的な金融業で、裏で放漫な経営なんかをやっていたりすると、顧客がひどい目に遭ってしまう。情報の非対称性があれば、それを顧客が自分自身で防ぐことはできない。この状況を放置すると市場は発展しない。これと同じ理屈が分散金融の世界にも生じる場合があります。

 分散金融の場合では、実質的な分散化が進んでいて、本当に全てコードで書かれているのであれば、理屈の上から言えば情報の非対称性はなく、リスクは自分で評価できます。この意味で、理屈の上から言えば、利用の是非はユーザーの任意に任せるという選択肢もあるかもしれません。ただ、本当にコードが公開されていれば自己責任とみなすべきかは、実務的にも怪しいと思いますし、理論的にも、コード監査は公共財的な側面があるので、自由放任にしておけば社会にとって最も望ましい結果が得られるかは怪しいとも思います。

 ただ、伝統的な金融業のケースと同じように、何らかの主体が「やろうと思えば顧客資産に手を付けられる」ようになっている場合は、もうこれは完全に、本質的には伝統的な金融業で、業者に対して監視と規制が必要なケースと全く違いがありません。これは伝統的な金融業と同じように規制するべきだと考えてよいと思います。

 3つ目は、一番犯罪からは遠いケースです。個々のサービスのレベルでは健全である一方で、市場性全体で見るとシステミックリスクが生じているケースがあります。伝統的な金融業などでは、例えば自己資本規制は、部分的には2つ目の論点にも関わりますが、3つ目のケースに該当するかなと思っています。市場全体の挙動を考えるのは重要なので、このタイプの規制も潜在的には重要になりますが、そもそも暗号資産のマーケットのどういう構造が、潜在的な市場全体に及ぶクライシスにつながり得るのかということについて、学術レベルでも明らかになっていないことが多いと思います。なので、どのようなクライシスが懸念されて、そして、それをどう防ぐのが効果的かを、規制する前によく整理したほうがいいと私は考えています。

 最後、暗号資産のマーケット特有の事情としては、道義的に導入したい規制と、実務的に有効な規制が、かなり異なることの注意が必要かなと思っています。具体的に言えば、例えば「ガバナンストークンを一定以上持っていれば集権的とみなせる」という規制の構造になっているとすると、それを避けるために表面的、あるいは本当に実質的に分散化をしようとするサービス提供者が出てきます。もともと集権的なものが多かった市場に規制をかけた結果、どんどんより規制がかけにくいようなタイプの分散的なサービスが増えていくということが規制当局の立場から見て望ましいのかというのは結構怪しいです。このように、集権的なサービスのみに規制をかけていくと、サービスの分散化がどんどん進んでしまい、望ましい結果にならないという可能性には留意するべきなのかなと考えています。

 発言は以上です。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして坂さん、どうぞ、お願いいたします。

【坂メンバー】
 ありがとうございます。私のほうからは、事務局説明資料についてのコメントの後、討議事項について発言したいと思います。

 まず、事務局説明資料の海外の規制動向についてですけども、この間、暗号資産の取引規模が拡大するとともに、社会的影響、社会的課題も拡大をして、国際的に対応が求められているという状況と思います。チェイナリシス社の報告によりますと、暗号資産関連の犯罪はDeFiを対象としたものが多く、2021年の詐欺被害は約77億ドル、盗難は約32億ドルとされております。犯罪集団等に成長資金を供給している状況であり、金融システムへの影響とともに、安全保障への影響も懸念される状況にあるものと思います。

 次に、執行事例についてです。法執行は各国の法制度が前提とならざるを得ませんが、まずは実態把握が重要と考えます。実態把握の視点としては、誰が損失、損害を被り、誰が利得を得ているのか。また、いかなる違法があるのかという点が重要と思います。トルネードキャッシュ事案は、国家的、組織的ハッキング事案において、マネロン手段の提供となったものであって、地下銀行のような事案と考えられます。Ooki DAO事案は、商品取引所法違反行為を、主体を見えにくくして行った事案です。Coinbase事案はインサイダー取引事案とされていますが、本来、根源的価値を有しない暗号資産が、上場時の価格高騰が生じやすい、あるいは価格上昇が演出されやすいという側面も含めて検討されるべきと思われます。Mango Markets事案においても、被告の行為とともに、そもそもMango Marketsのスキームにおいて、いかなる価値移転が実現されるのか、それが公正なのかも検討されるべきように思われます。

 次に、検討事項の1つ目ですけども、暗号資産やDeFi特有の課題は、サービスの新規性、匿名性、複雑さから実態把握に困難な面があること、ある種の不透明性があることと考えられます。課題検討の留意点として3点ですけども、1つは実態把握に、仕組みの特性を生かすこと。例えばブロックチェーン分析やソースコードの分析等は重要な取組みと思います。

 2つ目ですが、必要に応じて法執行の方法や規制枠組みを迅速に見直していくべきと考えます。

 3つ目ですが、法執行の実行において、技術的な対応の可能性も検討すべきです。

 次に、検討事項の2つ目ですが、責任あるイノベーションを確保するためにも、責任主体の把握が重要です。責任主体がはっきりしないサービスは、それ自体、適切なサービスとは言い難いようにも思われます。そして、責任主体として把握すべき対象は、原則として自然人と法人と考えるべきです。スマートコントラクトは、むしろ対応の対象として、稼働を何らかの形で止められるか、あるいは制限できるのかの対象と考えるべきと思います。

 いずれにしろ、提供されるサービスが何らかの社会的、経済的危険や違法性を持つのであれば、サービスの提供、運用に関与する主体は責任を負担すべき、負担させるべきだと考えます。もっとも責任の内容は、民事、行政、刑事、様々なものがあり、関与の仕方によって異なり得るとは考えられます。また、責任の実質的根拠と考えられるものの1つは、サービスへの関与者が危険や違法性を認識し、または認識し得るべきであったにもかかわらず、サービス提供に関与し、または関与し続けたという点と思います。

 この点については、できるだけ関与者が認識し、または認識し得たと言える状況をつくっていく必要があります。規制枠組みが認識可能性の根拠になる場合もありますし、公的機関の公表情報や報道等が関与主体の認識可能性の根拠となり得る場合もあり得ると考えられます。また、関与者の利得も責任根拠を支える重要な要素となります。これらの実態をできるだけ容易に把握可能とすること、容易に責任を問い得る状況とすることが必要と考えます。

 次に、論点3についてですが、手短に4点ほど述べたいと思います。

 1点目ですが、事務局資料の7ページに指摘されるとおり、サービスのアクセスポイント、ないしアプリケーションレイヤー、あるいはウォレットが重要な役割を担っています。この点に着目した規制の在り方をさらに検討すべきで、特に本人確認等の点で、制度上、あるいは技術上の対応が検討されるべきと考えます。

 2点目ですが、事務局資料の9ページ、パーミッションレス型ブロックチェーンを、グループ1、暗号資産として扱う場合のリスク軽減策や分類要件の調整の要否は、継続的課題とされております。これに鑑みますと、我が国の電子決済手段においても、パーミッションレス型の一般的な流通を認めることには慎重であるべきと考えます。

 3点目ですが、責任主体把握のために、オフチェーン情報は積極的に活用されるべきと思います。個人情報保護やプライバシー保護の観点から適正手続に配慮することは必要ですが、本人確認情報等の個別情報等、全体の統計的情報を積極的に活用して、実態把握の実効が図られる必要があると考えます。

 4点目ですが、我が国では暗号資産に関する詐欺事案が後を絶たず、現状への対応は待ったなしの状況にあります。相談受け付けの促進や相談情報の分析、本人確認情報等の被害者側への提供による被害回復の促進などにより、暗号資産の負の側面を社会的に抑え込む活動が重要と思います。

 最後に全体な印象ですけども、諸課題に鑑みますと、分散型金融は、いまだ一般の個人の利用が促進されるべき状況にはないという感想を持っております。

 以上です。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、松本さん、どうぞ、お願いいたします。

【松本メンバー】
 LayerXの松本と申します。今日の議題について、大まかに挙げられている議題、討議事項の1から3まで触れつつのお話をさせて頂きます。

 エンジニアとして、今、この仕組み全体を眺めていると、そもそも分散制全体を法規制の中に取り込んでいこうというのが、物すごく相性の悪い取組だなとは正直感じております。気づくとひたすら新しい仕組みが追加されていくのが分散性のある、パーミッションレスなDeFi、ないし、分散型の金融の世界で起きていることでして、法規制というのは、ある程度の枠組みを決めて、その中で取組をしていこうということを繰り返していくわけですが、決めれば決めるだけ、どんどん次の仕組みが、しかも同時多発的に様々な箇所で追加されていくので、ある種、これは自然環境にどう向き合いますかというところに近いような取組だと思っているんです。丸ごと取り込んで規制していくということがそもそも取組として正しいのかというところが、まず一つ、個人的な疑問点ではあります。

 また、一つ、分散型金融、正直エンドユーザーから見たときにそもそも使い勝手が良いのか、良い金融資産たり得るのかというところを見てみると、ウォレットの運用、先ほども、ここ数日でウォレットから資金が抜き取られた事例などが出ておりますが、ユーザビリティだったり、セキュリティーを保護しながらの分散性うまく享受していく方法というのは、そもそもエンドのユーザー全てが取り組み得るものかというのは非常に難しいと思っておりまして、結局のところ、DeFiというよりも、DeFiがあったとしても、それをどのように取り扱うかでいうと、結局のところ、既存の取引所だったり証券会社というところが扱っていくことになるのかなと思っております。

 なので、これを、DeFiを日本がどのように向き合っていくべきか、どのように規制していくべきか、課題は何かと問われたときに、その前提は、取引上、証券会社がどのように扱えるということをどのように規定するかだと思っておりまして、その前提でいくと、まず、一つ、既存の暗号資産、DeFiについて、どのように規制をしていくべきか、検証していくべきか、先ほどもソースコードの分析等もありまして、手段としては様々あると思っております。

 ソースコードの分析、もしくはブロックチェーン上に刻まれた情報を常に監査していくというような方法は外部から取ることもできると思っております。そうすると、スマートコントラクトが、どのような外部のスマートコントラクトに依存しているか。ないしは、スマートコントラクトの中身が、外部のどのような情報に依存しているかということは、ある程度、分析可能なものだと思っております。

 仕組み全体を1度に分析していかねば、先ほどMango Marketsの事例がありましたけども、空いた、例えば先物、現物を組み合わせたような、1つのシステムだけではなく複数を組み合わせた中での事件というのは、今後も増えていくだろうと思っておりまして、全体を分析するということは、正直、ソースコード、ブロックチェーン上の情報の分析というだけで果たして可能かといいますと、結構難しいものなんじゃないかというのも感じております。

 そうすると、我々、僕個人として思うところでいくと、分散型金融をどのように受け止めていくか、既存金融と比べてどのように取り込んでいくかという考え方から、実は発想を逆転させるべきなのではないかとも考えております。といいますのも、伝統金融資産をパーミッションレスなブロックチェーン上で運用するというお題として、逆転させてみて考えてみると、ここには一定の取組余地が出てくるのかなと思っております。既存金融の、例えば債権だったり、何らかの証券というものを、ブロックチェーン上で流通させる方法というのが、今やろうとした場合にどのような課題があるのか、そこに関しては、ある程度規定がし得る課題に落ち着いてくるのかなと思っています。

 そのような形で、既存金融、伝統的な金融資産をパーミッションレスな仕組みの上でやり取りをする、そういう形で、明確に伝統金融資産に対応する領域であれば保護されるエリアとなり、それであれば、取引所等で扱うことができるとなっていくと、非常に規制としてもつくりやすい方向性になってくるのかなと思っておりまして、そういった既存の伝統金融資産をどのように乗せていくか、それであれば、国内での流通を許容することができると少しずつ規定していって、順次取り組んでいく、取り込んでいくような形のほうが現実的なのではないかなと私は考えておりまして、もしその方向で考えるのであれば、既存の証券、そこからまた既存の証券に関連する複雑な商品といった形で、だんだんと枠を広げて、規制を広げていくというような連続的な取組ができ、それによって、パーミッションレス型のブロックチェーンを、我々の経済としてどのように、我々の金融としてどのように取り込んでいくかということに一定の枠がつくれてくるのではないかなと考えております。

 ですので、もともとのお題に対してそもそもの前提をひっくり返すようなお話をしてしまっているような気がするんですが、私としては、伝統金融資産というところをスタート地点に、規制だったり、安全性の担保ということを考えていくのが、実は現実的なものはないかなと思っております。

 私からの発言は以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、井上さん、どうぞ、お願いいたします。

【井上メンバー】
 ありがとうございます。以前に申し上げたことと重なるかもしれませんし、皆さんのおっしゃることに付け加えることがあまりないかもしれませんが、本日のお題、暗号資産やDeFiに関して、伝統的な金融資産と異なる課題ということなんですけれども、3つほど簡単にコメントしたいと思います。

 1つには、金融規制の対象となる事業主体が不明確だということで、これはもう既に御説明頂いたとおりですけれども、幾つかのプレーヤー、トラストポイントがあっても、確たるゲートキーパーがいないということ、これは規制に関して言うと、実効性や効率性の観点から、ルールづくりとかルールのエンフォースメント自体に関する大きなチャレンジになるという特性があると思います。

 2つ目には、対象となる資産が新しく、民事実体法上の権利関係が不明確で、さらに国際的に移転しますので、準拠法の選択ルールも不明確です。すなわち、日本においても権利関係が不明確ですし、そもそもどこのルールが適用されるかも不明確です。その点で、利用者保護、とりわけプレーヤーのどこかが破綻したときなどにおける利用者保護におけるチャレンジがあると思います。

 それに加えて、簡単に国境を越えて、財が動いたり、プレーヤーが動いたりすることが可能な世界でしょうから、先ほど申し上げた主体の不明確性と、それから対象の権利関係の不明確性のいずれについても、悪い人に弱いところ、あるいは手薄なところを突かれるという問題があり、それに対処する意味でのチャレンジがクロスボーダーという局面で出てくるという特徴があると思います。

 それについては、既に本日の御説明にもありましたけれども、一国だけで努力して何とかなるというものでもないので、国際的に連携しながら、ルールづくりとエンフォースメント双方について、対応を進めていくことと、ある程度ですけれども、連携、ハーモナイズしていくことにより、大きな穴をつくらないことが必要なんだろうと思います。

 ただ、別の言い方をすれば、今までの伝統的な金融規制のように、穴がないように、完璧を目指すというよりは、動きの速い分野でもあるので、一定程度は穴がある前提で、その穴を小さくしていく努力をするとか、あるいは、技術的な努力、この場でも以前説明頂きましたけれども、ブロックチェーン分析の手法を向上させるとか、先ほどの御説明にあったオフチェーン情報と合わせて追い詰めていくとかいう形で、個人なのか、DAOなのか、スマートコントラクトなのか分かりませんが、関与者を追い詰めていく努力、そういったモニタリングが必要なんだろうと思います。

 こういった形で、今までと違って、より柔軟というのがいいのかどうか分かりませんけれども、確定しすぎない対応の仕方をして、あまり完璧を目指さず、必ず個人を捕まえるとか、必ずスマートコントラクトをつかまえるとかいう決め打ちではなく、できるところからやるというアプローチになるのかなという感想を持ちました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、翁さん、どうぞ、お願いいたします。

【翁メンバー】 
 御説明ありがとうございました。Same Function、Same Risk、Same Ruleとは言っているわけでありますけれども、伝統的な金融資産と、ファンクションが類似していても、リスクの大きさがかなり異なっているという印象を受けました。

 さっき、野田さんも整理されましたけれども、利用者保護、公正取引、システムの安定性、また、それからAML/CFTの対応といったような公益というのがあるんですが、それらを、いずれに対しても、脅かす大きな特性があると思っております。まず、当然のことながら、パブリックブロックチェーンを使うということによって、責任の所在、それが技術の基盤であるということで、どうしても責任の所在が明確でないというところが決定的に大きなリスクなわけですけれども、これに加えて、取引の不透明性や複雑性、それから、商品のボラティリティの大きさ、こういったものは利用者保護や公正取引に非常に大きな影響を及ぼしますし、詐欺とかこういった悪質に使われやすい特質を持っていると思っております。

 それから、システムの安定性に関しましては、デジタル・バンク・ランのようなものがすぐに起こり、流動性の問題では、極めて気をつけなければいけないと思っておりますし、また、暗号資産同士だけでなく、銀行もかなり規制をするようになってきていますけれども、金融システム全体の相互連関性というのも必ずしも明確に分かっていないということで、さっき、御意見ありましたけれども、こういったところについてのモニタリングというのを、一層を強めていく必要があるかなと思っております。

 私はリーガルなバックグラウンドがないのですけれども、DAOという組織につきましては、さっき御説明がありましたように、分散の程度というのがかなりまちまちであるということで、個別性が随分強いなと感じております。したがいまして、その事案ごとに誰がどこに問題があったかということを明らかにしながら、エンフォースメントの経験を蓄積して取り締まっていくということが大事なのではないかと思っております。

 その点で重要だと思っておりますのは、日本では、まだあまり多くこういう事案が出ていないわけでございますけれども、人的なリソースを、こういった金融監督当局がしっかり確保して、調査能力とともにエンフォースメント能力を強化していくということだと思っております。やはり井上委員からも御指摘ありましたけれども、これはもうグローバルに連携して、必要な規制をしたり取り締まっていかないと、どこかに穴があるということでは意味がないと思っておりますので、しっかりとそういった連携を強めて頂きたいと思っておりますし、オフチェーンの情報などもうまく活用して分析を深めていき、規制の在り方をそろえて、必要な規制の強化はしっかりやっていくということが重要ではないかと思っております。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、森下さん、どうぞ、お願いいたします。

【森下メンバー】
 ありがとうございます。私からは3点ほどの質問と、1点コメントさせて頂ければと思います。

 今日、御説明を頂いた資料の中で、3ページから5ページにかけて、国際的なFSPにおけるハイレベル勧告の動きについて御説明頂いたと思うのですけれども、そういった動きと、我が国の現在の日本の規制の姿を比較した場合に、何か特に不足しているとお考えの点はあるのかについて、もしお気づきの点があれば、教えて頂きたいと思います。

 2点目なのですけれども、勧告の中でも、当局の連携が重要であるとされていますけれども、一方で、金融庁さんのほうで、外国の暗号資産交換業者などに対して、日本での登録を経ることなく交換業をしているということでの警告を出されているケースが、少なからずあるかと思いますけれども、そういった警告を発しているような事業者が拠点を置いている国のうち、どの程度が、連携が難しい国なのかと。個別の名前を、ということではないのですけれども、連携が重要であるという要請がある一方で、暗号資産業者さんとかが、比較的連携が難しい国に拠点を置くことが容易な環境があるとなると、それは監督の在り方ということを考えていく上で1つ、前提の情報としてしっかりと把握しておくべきことかと思って、この質問をさせて頂きました。

 3点目ですけれども、FTXの破綻について御説明を頂いた、資料の15ページのところです。御説明の中で、日本の資金決済法における分別管理ですとか顧客の優先権に関する規定というものが功を奏して、日本の顧客に対する弁済がアメリカのチャプター11の手続におけるオートマティク・ステイの対象外になったと。それによって日本で弁済を行ってよいという判断の基礎となったというような御説明があったかと思います。

 これは、もしこういったことが裁判所の判断の中で明確に言われているということであれば、今後、ほかの国際倒産事例などとの関係でも、日本国内にある資産を日本の顧客の保護のためにしっかりと使っていくという方向でのロジック形成に非常に有用なのかなと思います。ですので、もし、そういったようなことが判断の理由になったという具体的な根拠ですとか、例えば決定文とかがあれば、ぜひ共有して頂けると大変ありがたいなと思います。

 最後はコメントのようなものですけれども、先ほどOFACがスマートコントラクト、トルネードキャッシュとの関係で、スマートコントラクトであるトルネードキャッシュ自体に制裁を科したというようなことがあり、その一方で、オランダは開発者を逮捕したというようなお話があったと思います。私が正確に理解しているかどうか分からないのですけど、トルネードキャッシュというものが、いずれかの国で法人格を得ているということがあれば、また別なのですけれども、もし法人格を得ていないということであれば、それはそれで、非常に興味深い論点なのかなと思います。

 一部、分散型組織に法人格を認めている国も出てきていますので、そういった法人格を、例えば日本法上、承認するか、私法上の問題として承認するかですとか、あるいは、公法上、どう受け止めるかという問題があると思うのですが、それとは別に法人格のないプログラムであったとしても、それを規制の対象とするという発想があり得るかという点からは非常に興味深いと思います。私も大急ぎで見たところなのですけれども、トルネードキャッシュのケースでは、OFACは、トルネードキャッシュの米国内の資産や米国人が占有する資産の移動を禁止するということですとか、OFACにそういった資産を持っている人に対して、OFACへの報告を求めるとか、アメリカの人たちによる、あるいは、米国内でのトルネードキャッシュとの取引を原則で禁止するというような形のサンクションを課していまして、こういうサンクションであれば、必ずしも制裁の対象が、法人格を持っていなくても、その周辺の人の取引を禁止するという形で、有効な規制の執行の手段であり得るのかなというような気もします。そういう意味では、法人格を認めるかどうか、規制の対象としての分散型組織に法人格が必要なのかどうかというような点を考えさせる点で大変興味深い事例であり、大いに研究の余地があると考えました。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。御質問があったかと思いますが。

【大来信用制度参事官】
 ありがとうございます。まず、3つ御質問頂いたうちの1点目と、あと、コメント等をして頂いたものについて、私のほうからと思っております。

 まず、FSBのハイレベル勧告案、御覧頂いて分かりますとおり、現時点ではというか、多分最終化する段階で、国際的な勧告ですので、一定の抽象度というか、かなりプリンシプルなものを並べておりまして、一国の主権国家の法令レベルでコンプライしているか、していないかみたいな、そういう物差しとは少し違う、各国の目線合わせのためのプリンシプルだというところだろうと認識しておりまして、その限りにおいて、何か明確に日本がこれは守れていないというような数値基準的なものはもちろんないわけでございます。

 そのような中で、日本の規制は全般的に、今回のFTXでも分かったように、全般的には利用者保護とかそういう、あるいは、同じことですけど、償還をしっかりしていくといったようなことでは、かなりしっかりとした枠組みがあったわけですし、蓋を開けてみたら、規制を及ぼすべきところがかなりふわふわしているというような、FTXの本体と比べますと、しっかりと登録をした上で、FTX Japanは監督をされる主体として、やり取りができるというか、つかまえるポイントがしっかりあったということかと思っております。

 その上で、やや個人的な見解も入りますが、書かれている文言を眺めると、規制監督、監視するために十分なリソースを有するとか、そういう言葉がありまして、いろいろな国と比べて、果たして日本が現在、あるいは今後、リソースが十分かどうかというあたりは、議論があり得るところかなというところもありますし、あとは暗号資産のほうは、発行者に対してしっかりとした規制を及ぼすべきというようなことも掲げられております。私ども、現時点では、自主規制団体が発行のところは、ある程度しっかり責任を持って見ていくということになっているわけですが、伝統的な金融における仲介業者に対するような、発行のところに関する、あるいは有価証券、伝統的な有価証券に対する発行規制のような強度の規制は、現段階ではないというところとの関係で、これをどう考えるかというような論点は、論点としては、あるんだろうと思っております。

 先ほど申し上げましたように、25年末ぐらいには、ハイレベル勧告に基づいて、FSBがレビューをしていくということになると思っております。現段階で、例えば、FATFなんかはマネロン対策がしっかりできているかということについて、かなり長年の知見が積み上がり、FATFもオン市場の中での枠組みとしてかなり、人的にも、知的インフラという意味でも積み上がってくる中で、FATFのレビューというのは、かなりかっちりしたものになっておって、先般、日本もある程度の指摘は受けたわけですけれども、そういうものに比べて、FSBがやろうとしているものが、2025年ぐらいの段階で、そこまでのものになっているかどうかとかいうところも、まだそこまで一足飛びになかなか行くのも難しいんじゃないだろうかという議論もあるところでございまして、レビューみたいなものが始まっていけば、プリンシプルベースで書いているものを、各国どのぐらいのレベル感で取り込むというか、どういう目線で、どのぐらい具体化をしていくかというあたりが、だんだんと目線が合っていくのかなと考えてございまして、お答えになりきっていないかもしれませんけれども、それが1つでございます。

 それから、トルネードキャッシュそのものは、多分法人格がないスマートコントラクトですので、ぎりぎりあって、トルネードキャッシュDAOについて、どこかの当局が、法人格を認めるかどうかみたいなところがあるのかなと思っておりまして、米国でさえというか、米国も、そこの個人なのか法人なのかを問わず、法的主体としてのものを捕まえに行くのはなかなか難しいということで、スマートコントラクトとウォレットをリスト化して、それとの取引を制限するという形で、制裁の実効をあらしめようとしているというのが、先生、御指摘のとおりかと思いますけども、工夫のようでもあり、そのコインの裏表としての苦悩のようでもありということかなと思っております。

 警告の話と、あとFTXの2番目、3番目については、モニタリング部門のほうから。

【眞下フィンテック参事官】  
 御質問の2つ目の執行面はどうかという点、それから3つ目のFTXのところでございますが、2つ目につきましては、私見の部分もございますので、一部そういった御理解で頂ければ助かりますが、率直なところ、当然でございますが、やはりこの世界でも、特にオフショアと言われるようなところに拠点が置かれるようなところは、他の金融分野と変わらないところだと思ってございます。

 その上で、本日の御説明の中にも出てきているかと思いますが、大きく言いますと、役所の取組、中央省庁の取組は、政策面と先生の御指摘の執行面、大きくあろうかと思います。暗号資産の場合ですと、どの世界でも政策、次に執行と、こういうふうに体制の充実が図られていくかと思います。本日の御説明の中にも出てきておりますように、まず、政策面からしまして、アメリカなどを御覧頂きましても、暗号資産の位置づけをめぐって、先進国の一番中核にあるような国でも、議論が連邦レベルで続くといったような政策面での状況ですので、これは執行面にも当然影響を及ぼします。

 よって、オフショアの難しさ以前に、まず、暗号資産の執行面のグローバルな体制につきましては、もちろん個別にできるようなところは取り組んでいるわけでございますけども、例えば証券に見られるようなIOSCOを中心にしたがっちりとした体制が組めるかといいますと、まだそこに至るには少し時間がかかるのかなと、そんな状況が現状の御報告でございます。

 続きまして、3点目のFTXの件でございます。裁判所の判断によるものなのかという点でございますが、端的に申しますと、裁判所から何かはっきりしたものが公表されているケースかと言いますと、そういう状況ではございません。交渉などの事情もございますので、詳細はこちらでは控えさせて頂きたいと思ってございますが、一言で申せば、FTXのグローバル法人が法律事務所などと協議した上で、法解釈の妥当性なども含めた総合的な判断、この中には実際にチャプター11を適切に推進していきたいというニーズがあるということだと思いますが、そういう中での総合判断の下で、日本のケースについてはステイの対象資産外にされるという状況でございます。

 なお、顧客資産の返還が開始された2月21日以降、日本の取組に対しまして、その効果を妨げるような、例えばですが、グローバル法人の無担保一般債権者から何か申入れがあるとか、そういう事実は今のところございません。

 以上でございます。

【神田座長】
 ありがとうございました。

【森下メンバー】
 丁寧に教えて頂きまして、ありがとうございました。

【玉川室長】
 あと、すいません、最後に1点だけ。森下先生からのトルネードキャッシュの件で頂いた御指摘について、若干の補足なんですけども、日本でも御案内のとおり、外為法で制裁対象者との取引を禁止するとかできるわけですけども、これまでの例で、北朝鮮のLazarusグループを指定した際、特定のアドレスを告示に記載したことがございますので、日本でも制裁対象者を特定するための情報としてアドレスを告示に記載するというところまではできるのかなと思います。

 以上です。

【森下メンバー】
 教えて頂きまして、ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、次に行きたいと思います。神作先生、どうぞお願いいたします。

【神作メンバー】
 神作でございます。御指名ありがとうございます。3点、コメントをさせて頂きたいと思います。

 1点目は、立法論として議論すべき点についてでございますけども、この点については2つ申し上げようと思ったのですが、1つは、ただいま翁さんのほうから御指摘がありましたので、言及するにとどめさせて頂きます。暗号資産の発行者が存在する場合の発行者規制というのは、日本において欠けているところですから、少なくとも論点にはなり得ると思います。

 それから、立法論として議論すべき2つ目は暗号資産についてのインサイダー取引規制は、日本法の下では存在しないと思います。EUでも、MiCAで導入されるということですし、米国においてはCoinbase社員等によるインサイダー取引事案において訴追がされているということでございます。日本法の下でも、暗号資産のインサイダー取引規制について検討することは、不公正取引規制の在り方を具体的に検討する際に重要だと思います。

 その際には、上場株券等のインサイダー取引規制と違って、規制を受ける者をどのように画するかという問題ですとか、重要事実に相当するものをどのように定義するのか、また、恐らく、内部関係者といった概念は用いることはできず、内部者取引情報を知っている者が、内部者取引の規制対象になるというように、様々な点において現行の上場株券等についてのインサイダー取引規制とは異なる規制を考えなければならないということになると思います。事務局からお話し頂いた世界的な動向に照らしますと、日本においても暗号資産のインサイダー取引規制について早急な検討が必要なのではないかと感じました。

 2点目は、少し抽象的な点でございますけれども、分散型金融について、責任主体をどのように見るかということでございます。分散型金融は純粋な中央集権型から純粋な分散型まで、非常にバリエーションがある中で、一律の規制をするというのは困難であり適切でもないと思いますけれども、いわゆる法人格がなくても、法主体性が認められる場合についての判例法理、いわゆる「権利能力なき社団」の概念などがありますので、そういった要件を満たす組織が認められるのであれば、それに法主体性を認めることはできると思います。

 純粋な分散型、あるいは、DAOと言われるものでありましても、先ほど森下さんからも指摘があったかと思いますけども、少なくとも法人格を取得する余地を認めることは、立法論になると思いますけれども、検討の余地があり、法人格を取りたい場合には取れるような法制を考えて、法主体を中心に法律関係を整理していくというようなことも考えられると思います。

 あと、実際には、純粋な中央集権型にしても、純粋な分散型にしても、結局、意思決定に対してコントロールをしているもの、支配しているもの、これを責任主体として捉えていくというのが基本的な考え方ではないかと思います。そのような観点からしますと、DeFiの規制を考える場合においては、コントロール概念が極めて重要になってくると思われます。

 最後は、むしろ研究会の外の問題かと思いますけれども、井上先生も先ほど少し言及されましたので、私もそれに乗っかって一言発言させて頂ければと思いますけれども、利用者、あるいは、顧客の保護という点では、民事ルールによる権利義務関係の明確化による保護を図ることが、まずは第一義的であると思います。その点において、暗号資産、あるいはデジタル資産については、民事実体法のルールが、やはり日本の場合には確立していないといいますか、不明確なところが非常に多いと思います。これはもちろん判例や学説によって補われるべき点もあるかと思いますけれども、場合によっては、立法論として検討するというようなこともあると思います。

 業者規制とか不公正取引規制のほうが、かなり日本は議論が進んでいる段階だと思いますけれども、民事実体法による、権利義務関係の明確化を通じた顧客保護については、まだまだ課題が多いと考えております。

 以上、3点申し上げさせて頂きました。どうもありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。ちょっと一部、御発言が聞き取りにくいところがあったのですけれども、ごく一部ですので、議事録において御確認頂ければと思います。どうもありがとうございました。

【神作メンバー】
 ありがとうございました。失礼いたします。

【神田座長】
 ありがとうございます。では、続きまして、ソニーの栗田さん、お願いいたします。

【栗田メンバー】
 栗田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。事例の御紹介等、ありがとうございました。ソフトウエア技術者として、システム開発の観点、それから、先ほど松尾先生が技術的リスクとおっしゃっていましたけれども、技術的リスクの観点からお話をしたいと思います。

 まず、システム開発において、非常に重要なことの1つとして、そのシステムが何を目指すものなのか、そのシステムは一体何なのかということを明らかにするということがあります。これは、作る人にとっても、運用する人にとっても重要なわけですけれども、もう一つは、利用者がそれは何なのかということを理解して使うときに、重要な情報になるということで、利用者とのコミュニケーションの手段ということにもなります。

 国の政策として、より投資のようなことを全国民が行っていきましょうというようなことがあるそうですが、暗号資産を買うとか、そういう難しいことではなくても、それから、金融に関するリテラシーを上げていくためのこともしつつ、システムが何を目指すものなのかということを利用者が理解できるような形であることが望ましくて、そのため、仲立ちみたいなことをできるとよいのではないかなと思います。

 あとは、目指すものが、例えば犯罪ではないとかということは当然のことですが,金融庁さんとして妥当だと言えるようなものなのであれば、その範囲内において、何か良いと言えるものがあるのだろうかと思います。何か悪いことが起きないという意味では、最低限安心、安全だということだと思いますが,安心、安全なものの例が共有されると、今後、様々なシステムを理解したりとか開発したりするときの基準になるのだろうと考えます。

 新しい金融商品とか金融システムの、松尾先生のお言葉を借りるとベストプラクティスということになると思いますが、既存の金融システムの開発の方法、あるいは、暗号の技術、広くセキュリティーの技術、あとは第三者評価ということで、セキュリティー認証の仕組み、あるいは自動車とか航空機などの、あるいは医療システムの参考になる第三者検証の仕組み等、さまざまあると思うのですけれども、そういったものを組み合わせて、それは情報としては膨大なものになると思いますが、新しい金融商品のベストプラクティスというのはこういうものであるということが、技術者にとって、それから利用者にとって、それから監督官庁の立場でも、お互いにコミュニケーションの土台になるような、理解できるようなものになると良いのではないかなと思います。

 それから、DAOのことなのですけれども、分散の度合いというか、グラデーションは様々だということですし、それから、真の意味での分散型組織は存在しないのではないかという議論もありましたけれども、その真偽は私には分からないですけれども、分散型の、個人が、あるいは組織が集まって何かをするという意味では、ソフトウエア開発の世界ですと、リナックスと言われるオペレーティングシステムが、これは世の中で非常に広く使われているものになりますけれども、ある種の分散型の組織でもって開発されているものということになります。そういったものも参考にしながら、システム開発と運用を、ある1つの組織だけで行うのではなくて、分散して行うにはどうしたらよいかということについて、検討してみるというのもよいのではないかなと思いました。

 私が不勉強なところもあるのですけれども、基本的には、非常に大きな規模のオープンソースのプロジェクトに関しては、中心的な人々、あるいは1人の人物がリーディングしているということが多くて、メンバーとしては様々で、個人で活動していたり組織に属していたりするわけですけれども、全体をリードしていくということに関しては、少数の人、あるいは1人の人が行っているということが多いので、そうではない形があり得るのかどうかということも含めて、これから新しい金融システムの開発がどのような体制で、意思決定の方法で、方向付けが行われていくのかということについて、分析してみてもよいのかなと思いました。

 あとは、何を目指すものなのかというところで、いや、これはもう新しい金融システムとしては認められないということなのであれば、それは論外にするというのは、岩下先生のお話ともつながると思います。あと、松本さんもおっしゃっていましたけれども、何でもかんでも範囲内に入れなくてもいいのではないかなと思います。

 以上になります。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、佐古さん、どうぞ、お願いいたします。

【佐古メンバー】
 発言の機会をありがとうございます。また、今回の調査結果でFTXの事件で、日本国民が守られてよかったなと心から思っております。

 皆さんの意見をお伺いして、自分の不勉強が恥ずかしくなってしまって、発言のハードルが高くなってしまっているんですけれども、1点だけ、コメントさせて頂きます。これも既に翁委員も言われていらっしゃいましたが、やはり分散台帳技術というのは、技術から、オペレーションから、法的な扱いまで様々な要因が入っているので、本当にこのような場で、みんなの知識を持ち合って議論を深めていくことが重要なのではないかなと思っております。

 ぜひ2巡いただいて、他の委員の話を受けての委員の議論というのも活発にできればいいかなと思っております。以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、次に、加藤さん、どうぞ、お願いします。

【加藤メンバー】
 加藤です。よろしくお願いいたします。討議事項の1点目と3点目に関係して1点、討議事項の2点目について、1点、申し上げます。

 最初に討議事項1について、暗号資産については、市場が非常に細分化しているという点が特徴として挙げられるように思います。これは既に複数の先生から御指摘があったことかと思います。その細分化した市場が、例えばオラクルなどによってつながり、様々な形で複数の市場をまたがった取引が行われているがために、例えばある市場の変動が他の市場にどのような影響が生じるかということ、これはもちろん伝統的な金融市場でも存在するわけですけれども、それがより複雑化している点に注意が必要であると思います。その複雑化したつながりの中に、伝統的な金融市場も何らかの形で組み込まれてしまう可能性に特に注意する必要があると思います。

 このような観点からは、暗号資産やDeFiなどのシステム全体のリスクを把握するということがどれだけ可能なのかを、技術的に可能かという話も関連するかもしれませんが、検討する必要があると思います。

 特にパブリック型ブロックチェーンについては、取引の追跡可能性が利点として挙げられますが、それだけで十分に、金融規制の観点からのリスクの把握の手段として十分なのか、さらに、パブリック型ブロックチェーンといっても、様々なブロックチェーンが複数存在するので、複数のパブリック型ブロックチェーンが存在することを前提とした上で、どのように全体のリスクを把握していくのかを検討していく必要があると思います。

 あと、全体のリスクの把握という観点からは、資料1の3ページで紹介された暗号資産とグローバルステーブルコインに係るハイレベル勧告案で、暗号資産の貸借について言及があったことが気になります。すなわち、昨年、暗号資産関連の事業者が複数破綻しましたが、その中でも暗号資産レンディング業者の破綻が規模などの点で目立っていたからです。日本では、まだ暗号資産レンディングというものが大きなリスクにはなっていないのかもしれませんけれども、現在、日本でどれくらい暗号資産の貸借が行われているのかを把握できる仕組みがあるのでしょうか。

 次に討議事項の2点目について、個別の執行事例において問題となった規制の実効性を確保するための手段は、各規制によって異なるのではないかということを多くの先生が御指摘されていたかと思いますが、私もそのように考えます。また、実際にトルネードキャッシュとOoki DAOの事例で、諸外国で取られた執行方法が、仮に、各規制の実効性を確保するために望ましい手段だったとして、それが日本で取れる方法なのかということについても、一度検討してみる必要があるのかもしれません。

 また、規制の在り方としては、DAOというものの位置づけが問題となり得ると思います。その中で、DAOを責任主体とすれば、規制の実効性が高まるのかどうかということについては、慎重に考える必要もあるように思います。なぜかと申しますと、現在の金融規制では、多くの場合、責任主体としては、株式会社が想定されているからです。それも様々な理由があるかと思いますけれども、株式会社については、法令遵守のためにどのような仕組みをつくればいいか、株式会社に金融規制を遵守させるためにはどのような仕組みが必要か、ということについて蓄積がある点も理由として重要であると考えます。一方、DAOを責任主体と認める場合には、DAOに法令遵守をさせる手段を考える必要があると思います。

 私からは以上です。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。御指摘の暗号資産レンディングが日本でどうなのかとかいうようなのは、またどこかでまとめて一度整理してみたらいいかと思いますが、いかがでしょうか。

【大来信用制度参事官】
 ありがとうございます。御指摘のとおり、なかなかその実態把握みたいなところは、私どもにとって課題かなと思っております。そういう実態把握がなかなか追いついていない中での当座の認識としては、レンディングのプラットフォームみたいなものは、我々の法域の中では、必ずしもアクティブではないかなと思っておりますが、じゃあ、DeFi的に運営されているプラットフォームを、日本人がどのぐらい利用しているかとか、そこでどういうような事案が起きているのかといったようなことは、さらなる課題かなと思っております。

 もしモニタリング部局とか、うちのチームでさらに補足することがあればお願いします。

【神田座長】
 よろしいですか。どうもありがとうございました。今後の課題とさせて頂きたいと思います。

 それでは、今日、御参加の皆様方で、まだ御発言を頂いていない方は、あと横関先生なのですけども、横関先生、もし何か御発言ございましたらお伺いしたいんですけども、いかがでしょうか。

【横関メンバー】
 ありがとうございます。私、既に先生方に頂いたコメントに近い認識がありまして、やはり伝統的な金融資産と同じような管理をする必要があるように思います。法令的には、また私は専門外なのでよく分からないですけれども、技術的には新たなものがどんどん広がっていきますので、都度対応していくのも大変で、全部なかなか追い切れなくなるような気がします。分散型の理念は重要ですが、規制する場合はクラシカルな基準と照らし合わせて対応する必要があるという印象を持っています。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。これで皆様方、全員から御質疑頂きました。どうもありがとうございました。

 まだ若干頂いている時間ございますので、さらに御質問、御発言があれば、ぜひお出し頂きたいと思います。いかがでしょうか。松尾先生、どうぞお願いします。

【松尾メンバー】
 松尾でございます。1点だけ追加でコメントをさせてください。

 多分、坂先生だったと思うんですけど、ウォレットの話を出して頂いたと思うんですけども、もちろん分散型金融、捉えどころがないところがたくさんあるんですけども、ブロックチェーンプロトコルは、いわゆる単一障害点をなくすということを目指している一方で、ウォレットがいろいろな意味で単一障害点になっているというところと、ウォレットそのものは鍵管理というだけではなくて、いわゆる認証・認可というアイデンティティーの機能と、プライバシーの機能とAML/KYCの機能と同時に、ビジネスモデルの交差点になっていて、この交差点であるところが、責任がどうかというところの取っかかりになるというところでいうと、ウォレットのガバナンスであるとか、ウォレットのエコシステムをどうかということを研究することは非常に重要な点だと思います。

 最近は、我々の研究グループもそういうことをたくさんやっていたりとか、BGINという我々が活動してところでもウォレットのガバナンスの議論をするのですけども、その辺のことを、今後の研究会でも取り上げるといいかなと思っています。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、岩下先生、どうぞ。

【岩下メンバー】
 2度目の発言をお許し頂きまして、ありがとうございます。

 多分議論の中で、何度かDAOについてお話がありました。私自身は、DAOについてもかなり厳しい見解を持っておりまして、DAOと言っているものというものの多くのものは、いわゆる2016年でしたか、The DAO事件というのが起こったときのDAOなんかを例に取ると、事業をやるよということでお金を集めるんだけれども、結局のところは事業のためにあまり投資はされないで、器をつくったというところを名目にお金を集めるために使われているような部分がありました。現実に、DAOと評価してよいアクティビティーが広く存在しているかのような認識が持たれているように思うのですが、まともに動いているDAOというのはほとんどないと理解しています。

 もちろんガバナンスが云々という話ももちろんあるんですけれども、そもそもDAOという形態を取って、活動すると言っている人たち自身が、本当にDAOとして動かしているんだろうかと、これは単なる個人のプロジェクトなんじゃないかと思えるようなものしか、私が知る限りでは存在しないのです。比較的規模の大きいものになってくると、確かにDAOという感じのする部分もないではないんですけども、それも結局、ごくごく一部の人が独占して、それで、事実上、それを動かしている。逆に言うと、それ以外の参加者はソースコードどころか、投票すらもしていないというような実態があるので、それって本当にDAOなんですか、どこが自律分散なんですかという意味で、DAOというのが既に存在しているという前提での議論というのは、僕はあまり現実的ではないのではないかと思います。

 それも含めて、あるいは、ウォレットの問題も含めてなんですけれども、サトシナカモトのビットコイン論文に書かれていたような取引の実態が、この世の中に広く存在しているのでしょうか。日本の暗号資産交換所が持っている口座数が今、600万ぐらいございます。では、日本人の中の600万人ぐらいの人が、そういうものをしっかり、それこそソースコードを読みながら取引をやっているのでしょうか。実際は、その人たちは、ほとんどがオフチェーン取引といって、暗号資産交換所に自分の銀行から引き出した資金と交換した暗号資産を預けているだけであって、自分自身はブロックチェーンを全く見も触りもしていないというのが実態です。もちろん、そういうのを一生懸命やっていらっしゃる方々が、ごく一部にいらっしゃるのは知っていますが、全体としては、もうほとんどがオフチェーン取引でお金も流れているし、取引もされているということを前提とすると、どうも議論のスタートポイントが相当違うような感じがします。

 そういう意味で、ぜひ先ほど実態を調査すると、レンディングとかDeFi、日本では、実質的にほとんど普及していないと思っていますが、ただ、ごく一部、海外の交換所等を経由して、DeFi的なことをやっていらっしゃる方がツイッターでつぶやくのを私も時々見ていますので、ないわけではないけれども、それは本当にごく一部の動きであって、かつ日本国内で行われていることではないのです。それをあたかも現に存在しているかのような前提で議論をすることには抵抗があります。規制や制度づくりのリソースをどこまでそこに投資するのが合理的なんだろうかということをしっかり考えてから決断する必要があるのではないかと思います。

 もう1点、今日の資料の中で、例えば、資料1の10ページなどで、銀行と暗号資産との距離感というものが1つ論点になったと思います。今日はあまり議論には出ませんでしたが、伝統的な金融が暗号資産という極めてリスクの大きい分野に対して、これに近づく、何がしかのアプローチをするということは、本来銀行だとかが取ってこなかったリスクを取ることによって、銀行預金等の制度として国民のために提供されている重要な決済ツールが不要なリスクに侵されることになるので、ここの距離はしっかり取るべきであるというような感じの方針が、国際的に打ち出されているように感じたところです。

 これについて、日本の場合はそもそも、日本の国内の銀行が、本体で暗号資産関係の取引をしているという事例は、私は多分ないと思います。これが、例えば米国などですと、いろいろな事件があったときに、イエレン財務長官が、そういうものについて、国内の銀行がそういうことがないか調べますみたいな議論をしたという記憶がありますけれども、実態として、様々な投資ファンドを経由してそういうものに投資しているようです。

 あるいは、ニューヨーク証券取引所に上場されている株式のなかに、暗号資産管理銘柄が多数存在しているのと比べると、日本はその部分がない分だけ、伝統的金融との距離感は遠いと思うんですけれども、今後この部分をどのように取り扱うのかということについても、これから議論をしていく必要があるのではないかと思います。もし仮に預金等に暗号資産のリスクが含まれるようなことになると、伝統的金融機関に対する規制上の視点として検討していく必要があるのではないかと考えます。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。

 それでは、ほぼほぼ時間でもありますので、少し時間より早いかもしれませんけれども、この辺りとさせて頂ければと思います。

 なかなか考えますと難しい問題であったり、実態がどうだという御指摘があったり、アプローチ自体難しい、しかし、何か重要そうな感じがする分野なのですけれども、皆様方には、本日もそれぞれのお立場、御専門から活発な御指摘、御議論を頂きまして、誠にありがとうございました。

 本日頂きました御説明や御意見を踏まえ、今後さらに議論を深めていきたいと考えておりますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、最後、事務局から連絡事項等ございましたらお願いいたします。

【大来信用制度参事官】
 ありがとうございます。次回の研究会の日時につきましては、皆様の御都合を踏まえた上で、後日、事務局より御案内させて頂きます。よろしくお願いいたします。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは、以上をもちまして、本日の研究会を終了といたします。皆さんどうもありがとうございました。
 

 
(以 上)
 
 

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
企画市場局総務課信用制度参事官室、市場課(内線3572)

サイトマップ

ページの先頭に戻る