「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」(第10回)議事録

  • 1.日時:

    令和5年5月29日(月曜)16時00分~18時30分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館 13階 共用第一特別会議室

「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」(第10回)
令和5年5月29日

※一部発言は英語により行われたため、仮訳を付しております。
  
【神田座長】
 それでは、皆様方おそろいのようでございますので、始めさせて頂きたいと思います。

 ただいまからデジタル分散型金融への対応のあり方等に関する研究会の第10回目の会合を開催させて頂きます。皆様方にはいつも大変お忙しいところをお集まり頂きまして、また御参加頂き、ありがとうございます。

 本日の会合でございますが、前回に引き続きオンラインを併用した開催とし、一般の傍聴はなしとさせて頂き、メディア関係者の皆様方には金融庁内の別室において傍聴して頂くこととしております。

 本日でございますけれども、まず、UNIDROITにおけるデジタル資産の私法上の取扱いと、それから、分散型金融システムにおけるオンチェーン/オフチェーンデータ活用、この2つを取り上げますけれども、テーマに応じたオブザーバーとして次の方々に御参加頂いております。全国銀行協会、日本資金決済業協会、日本証券業協会、日本暗号資産取引業協会、信託協会、日本STO協会、金融情報システムセンター、Fintech協会、新経済連盟、法務省、外務省、以上の皆様方でございます。

 本日は、参考人として御出席頂いておりますUNIDROITのTirado事務局長から、UNIDROITのデジタル資産と私法に関する諸原則について15分程度の御説明を頂いた後で、最大でも30分程度で質疑応答の時間を設けたいと思っております。それに続きまして、同じく参考人として御出席頂いておりますクニエの櫻井様――本日どうもありがとうございます。櫻井様からは分散型金融システムにおけるオンチェーン/オフチェーンデータを活用した実態把握に関する研究分析について30分程度の御説明を頂き、その後、メンバーの皆様方から質疑、御発言、御意見を頂くという流れで進めさせて頂きます。

 本日のプレゼンテーションのテーマとして、お手元資料1を適宜御参照頂ければと思います。

 なお、UNIDROITのTirado事務局長からの御説明やメンバーの皆様方からの御質問への回答は英語で行われることになりますが、質疑応答におきましては、通訳の方に同席して頂いておりますので、日本語での御発言をして頂くということでもちろん結構でございます。

 それでは、早速ですけれども、UNIDROITのTirado事務局長からお手元資料2を使って御説明をして頂きます。

 (仮訳) ティラド教授、本日はご参加ありがとうございます。まずはプレゼンを行っていただき、その後質疑応答の時間を設けています。よろしくお願いいたします。
 
【Tirado教授】(仮訳)
 神田教授、ありがとうございます。金融庁の皆さん、参加者の皆さん、本日はお招きいただきありがとうございます。簡潔にと言われましたので、簡単に説明します。

 まずは、今回紹介する原則を起草したグループの責任者である神田教授にお礼を申し上げます。神田教授の素晴らしい統率のお陰で様々な配慮を払い多様な専門家陣を調整することができました。チームを正しい方向に向けることは必ずしも簡単ではありません。神田教授でなければ、このように、ソフトかつ確実な統制はできなかったでしょう。このプロジェクトは全体で3年かかり、同様のプロジェクトと比較して3倍以上のミーティングを重ねました。

 次のスライドに移動してください。

 簡単に説明します。最初のスライドは、私たちの活動内容と参加者の概要をまとめたものですが、神田教授が率いる著名な専門家陣は含まれていません。

 また、ケンブリッジ大学のルイーズ・ガリファー教授は、この原則の起草委員会の議長ですが、原則を最終的な形に導くプロセスで極めて重要な役割を担っていただきました。

 ここに記載されていない方々を含め大勢のメンバーが原則の起草や最終的な形に導くプロセスに関わっています。

 1点明確に伝えさせてください。UNIDROIT(私法統一国際協会)はハーグ国際私法会議のような標準を定める機関ですが、今回の取り組みは通常の国際的な法の調整の時とは大きく異なりました。通常はあらゆる場所からベストプラクティスを集め、最適な手法を特定してまとめ上げ、世界中の様々なシステムに適用できる草案を作成します。

 しかし今回は、ベストプラクティスが存在するのかすら分かりません。万人にとって完全に未知の領域であるからです。そのため今回の原則に向けてベストプラクティスを探すにあたり、すでに進展が見られる手法をまとめることにしました。つまり、この原則は存在していないベストプラクティスを提供するという非常に特異な性質を持つ国際的な法関連の公文書なのです。そのため、これはとても役立つものになるでしょうし、そうなることを願っています。

 今回のプロジェクトには、例えば、統一商事法典を編成している米国のUniform Law Commissionや、英国のLaw Commission、成熟した手法の標準化に取り組む機関であるIMFにもご参加いただきました。その意味で非常に大変な作業でしたが最終結果に大変満足しています。次をお願いします。

 このように難しいテーマであるため、まずは法的な側面を可能な限り明確にすることを目指しました。この作業を通して、極めて複雑な要素を多数発見しました。また、すべての立法、どれも私法を考慮するものですが、に共通する要素も多数ありました。私たちは規制を定めたのではありません。それは皆さんのような規制当局の方々の仕事です。私たちはデジタル資産の適切な移転と利用の概念を明確化し、その基本ルールを提供しているにすぎません。その手段としてソフトローを作成しました。

 つまり、これは条約でも協定でもありません。これは19の原則であり、これらの基本的な原則を重視するならば、注釈も原則と同様に重要となります。注釈はとても明確に、例を交えて記述されています。原則と併せて読むことで誤解を防ぎ、理解を深めることができます。次をお願いします。

 現在具体的なベストプラクティスは存在しないため、これらの原則の適用可能性を確保するには、まず可能な限り特定の技術に依拠すべきでないと考えました。ただし、短期的には分散台帳技術は消滅しないと確信しています。現段階で注目されている技術ですし、かなり進歩していますから、消えないことを願います。

 また、どの法域にも依拠すべきではありません。原則では、どの国のどのような法律にも言及していません。可能な限り中立的な立場を守り、コモンロー(英米法)または大陸法に関わらず、様々な法律体系に適用できるようになっています。先ほど申し上げた通り、これらの原則は私法のみが対象であることにご注意ください。それもデジタル資産の領域に限られます。私法のこの領域は特に複雑であり、説明や事例が特に役立つと思います。これらの原則は、基礎を成すものと言えます、つまり原則の使い方を明確に説明しています。

 しかし、決して対象の領域を網羅的に規律するものではありません。法域の中立性を目指したため、原則の基本概念から逸脱する部分については、原則ではなく他の法律、つまり原則を適用する国の法律で規律すべきです。原則は、例えば、訴訟法や破産などに関する実体法といった規律の適用についても少し言及しています。また同様に重要なこととして、原則ではデジタル資産がproprietary rights(物的権利)の対象になり得ること以外のテーマもカバーしていますが、物的権利の適用方法や物的権利があるとみなす要件については言及していません。それは各国の他の法律で判断すべきです。そのような物的権利の移転に係る第三者対抗要件の有効性や効力、当事者間の権利といった契約法で取り扱われる側面も同様です。次をお願いします。

 このデジタル資産に関する分析でより重要である特徴は何でしょうか。1つは有体物でないことです。つまり特定の人に対する権利や有体物の存在の有無に係る法制度に左右されることはありません。これが最も重要だと思います。この原則で絶対的に重要な要素は、デジタル資産はコントロール可能でなければならないことです。これが主要な要素です。コントロールできないデジタル資産は、どのようなデジタル資産であっても、我々の原則からルールを導くことはできません。そのため、この原則では、市場で取引されている譲渡可能で、商業的に有益なデジタル資産向けにルールを提供することを目指しました。また、我々はデジタル資産は有体物でないことと合わせて重要なある要素に対処できるルールを提供することを目指しました。デジタル資産では、国際私法で言うところの、準拠法に係る物的権利の所在地が不明瞭です。デジタル資産は台帳には記載されるため、ここにあるのか別の場所にあるのかは、恣意的に決められます。どこにも有体物が存在しないのですから。

 次が最後のスライドです。

 こちらのスライドは、内容を簡単にまとめたものです。これらの原則でカバーしている主なテーマがまとめられています。まず、デジタル資産を物的権利の対象にする方法です。デジタル資産に担保権を設定する方法や、適切に設定された担保権は破産後も存続し各法域の破産法に委ねられることも記載されています。法の接触に関する原則も1つあり、様々な意味で革新的な内容です。重要な善意取得に関するルールもありますが、市場における法的確実性のため特定の状況は除外しています。カストディの状況についても詳しく分析し、この原則におけるカストディを定義しています。サブカストディアンに関するルールや、カストディアンや仲介機関が破綻した場合のルール、安全な取引のための基本ルールも提供しています。これらの実体法上の問題に対するルールは、法曹界に役立つことと思います。

 最後になりますが、デジタル資産の性質や、その必然的な国際的影響を考えると、国際問題や法の接触に関する原則はとても重要な提言にはなるものの、決して完璧な解決策ではありません。今後、ハーグ国際私法会議との共同プロジェクトを通じて、引き続き細部を詰めることになるでしょう。このプロジェクトでは、今後、本原則5について、その差し替えではなく、それに基づいたうえで、デジタル資産に関する適用法について包括的なルールを検討します。この部分では、引き続き神田教授にご支援いただければ幸いです。

 私からは以上です。
 
【神田座長】
 どうもありがとうございました。今ご説明いただきました部分は、日本語訳は入りませんけれども、一言、二言申し上げさせて頂きますと、通常、国際機関における法の調整とかいうものはいろいろな国に既に存在している法的ルールというものを調整したり統一したりということですけども、今回のこのプロジェクトは、まだどこの国にもまとまった私法上のルールが存在していないという状態の中で作業するという意味で少し新しい面があったと言って頂いたかと思います。

 ワーキンググループのチェアを私が務めさせて頂いた御縁がありましたけども、起草委員会のチェアはケンブリッジ大学のLouise Gullifer先生がお務めになりました。

 あと、私法についての基本的な事項についてのルールを提示するということで、御説明がありましたとおりかと思います。時間の関係で詳細は省略させて頂きます。

 なお、私のほうで、一枚、二枚の紙を資料3として御参考に作成しておりますので、適宜、御参照頂ければと思います。

 それでは、メンバーの皆様方から御質問や御意見等があれば、お出し頂ければありがたく存じます。ここからは通訳もお願いしておりますので、御発言は日本語でも英語でもどちらでも結構でございます。それでは、いつものように、御質問等頂ける方は、オンライン会議システムのチャット欄に1行、全員宛てにチャットを頂ければありがたく思います。なお、会場で御参加の方々からは、適宜、挙手とかでお知らせ頂ければと思います。

 それでは、どなたからでも結構でございます。いかがでしょうか。どうもありがとうございます。それでは、神作先生、加藤先生の順に、そして井上先生、坂先生も。ありがとうございます。

 それでは、神作先生、どうぞお願いいたします。

【神作メンバー】
 神作でございます。御説明ありがとうございました。日本語で失礼いたします。

 UNIDROITのデジタルアセットについての私法ルール・原則は、デジタル資産についての取引の明確性を高め、また、契約によっては実現できない第三者効と申しますか、第三者に対する効果を明確にするという意味で大変意義深いものだと思います。デジタル資産についての取引の効率性・安定性を高めるほか、何よりも顧客の保護と申しますか、クライアントの保護に私法のルールによって資することになるであろうという点で、非常に意義深いものだと思います。

 御質問は、私法の、しかもごく一部についてのみ原則を定めたものだということでございました。そういう意味では、今回のUNIDROITのお仕事の射程の外ではありますけれども、UNIDROITの原則が提示している私法のルールをより実効的なものとし、エンフォース可能なものにするために、どのような監督法上の規制が望ましい、あるいは必要と考えられておられるかどうか、幾つか例を教えて頂きますと大変幸いでございます。どうかよろしくお願いいたします。

【Tirado教授】(仮訳)
 恐らく、皆さん規制当局の方がたくさんいらっしゃる中で私がお答えするのはあまり適切ではないのかもしれませんけれども、もちろん、規制は、ユーザーや消費者の権利を保護するために必要だと思います。おそらく、こうした金融商品については、特にカストディアンや取引所といった仲介者が関与する領域では監督や規制が必要と考えられます。

 実際これらの領域では問題が起こり始めています。最近、米国においては仲介者の破綻がありました。UNIDROITの原則は各国の破産法などの実体法を規制するものではありませんが、おそらく原則13が非常に役立つと思います。原則13のカストディアンの破綻に関する原則を採用する国は、米国の裁判所と同じような解決策を見いだせるでしょう。

 国によっては、裁判所に委ねたり、規制を定めたりすることもある要素の1つとして、仲介者が破綻した場合の措置が挙げられます。仲介者の顧客が、分別された資産に対する権利を有するのか、仲介者に対する請求権(債権)を有するにとどまるのか、粒度の高い方法で手続きを行えるのか、カストディアンや仲介者の口座のタイプなどを、UNIDROITの原則や各国法に照らして分析し、判断をすることが重要だと思います。

 最後に付け加えると、米国では既にセルシウスの判決が出ています。ニューヨーク州南部地区の破産裁判所のグレン判事が、仲介者の口座を分析しました。この判決の仲介者であるセルシウスには3種類の口座がありました。Earn口座、カストディ口座、Borrower口座です。

 顧客が契約していたEarn口座を調べたところ、契約においては、物的権利は完全に仲介者に移転される、とされており、破綻時に物的権利は仲介者の資産から分離されない、という判決が下されました。

 しかし、私の理解では、カストディの状況によっては、UNIDROITの原則が提供するのと同様の判断が下されていた可能性があったと思います。ただ、国によっても結論は変わり得ます。

【神田座長】
 ありがとうございました。
 それでは次に、加藤さん、どうぞお願いいたします。

【加藤メンバー】(仮訳)
 商法と金融規制を研究している加藤と申します。UNIDROIT原則におけるデジタル資産とリンク資産との関係性に関心があります。原則では、その適用対象はデジタル資産であり、デジタル資産と他の資産の関係性に関する問題は、各国における他の法律の範疇と明記されています。

 しかし、デジタル資産に関する法とリンク資産に関する法は、別個独立のものではなく、互いに調整が必要です。原則の注釈においても同様の考えが記載されています。特に、デジタル資産の善意取得に関する提案は、リンク資産に関する法は、デジタル資産の法に従うことが望ましいという考えに基づいていると思いますが、この理解が正しいか確認させてください。

【神田座長】
 ありがとうございます。
 Tirado先生から、私が答えるようにと指示を頂きまして、基本的には今の点はother lawというのですかね、この原則では取り上げないということで、それぞれのこの原則を採択する国のこの原則以外に属する部分の法によって規律されるということです。

 そういう意味では、例えばリンク先のアセット、例えばリンク元のというか、そのデジタルアセットについて善意取得が成立するとか整理したときに、リンク先のアセットについて何が生じるかという問題は、この原則の立場からいうとまだ今回何か原則を示すには至っていませんで、各国法に委ねたいということです。お答えになっていますかどうか。

【Tirado教授】(仮訳)
 ありがとうございます、少し補足しますと、原則におけるリンク資産に対する考え方を説明するととても長い議論が必要になります。各国にはリンク資産に関する規制が既に存在することや、連動資産には証券、金、不動産など様々な形態が考えられることから、他の法律に完全に委ねるという最終判断を下しました。様々な資産に均一のルールを定めることは非常に困難ですし、リスクが高すぎます。

【神田座長】
 リンク先のアセット、リンクされている関係にある場合の法律関係については、既にそのリンク先の資産に応じてもう法律を持っているというか、できている国もありますし、その内容も異なっているというので、例えば証券あるいはそうでない資産で異なるかとかいう論点もあるものですから、非常に議論はしたのですけれども、最終的には、そこについて原則を示すのは難しいとともにリスクがあるという判断に至って、other lawに委ねるということになりました。

 加藤先生、そんなところでよろしゅうございますか。

【加藤メンバー】
 はい。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、時間も限られていますので、井上さん、どうぞお願いいたします。

【井上メンバー】(仮訳)
 Tirado教授、プレゼンありがとうございました。非常に興味深い内容でした。コントロールの概念について質問があります。コントロール概念が非常に重要と理解しました。また、コントロールとは、法や概念ではなく実態に基づくということも理解しました。ということは、例えばデジタル資産が保管されるデジタルウォレットの秘密鍵をAとBが知っていて、両者がそのデジタル資産をコントロールできるとしたら、両者がそのデジタル資産の共同所有者となるのでしょうか。

 あるいは、BがAに秘密鍵情報を知らせて管理を頼んだ場合は、AがBのカストディアンとなるのでしょうか。その場合、どちらか一方がコントロールすることになるのでしょうか。例えば、顧客とカストディアン又は仲介業者がいて、両者とも秘密鍵を持っていれば、両者ともコントロールできることになるのでしょうか。それとも、コントロールの概念は実態に基づくとのことでしたので、同時に2名が資産をコントロールできる場合は、両者ともがそのデジタル資産の共同所有者となるのでしょうか。

 つまり、契約上は、1人は他方の代理人又は管理人かもしれませんが、コントロールの概念では、AとBの関係性は問わないということでしょうか。

【Tirado教授】(仮訳)
 私たちの原則における「コントロール」は、通常の私法における物的権利の定義に似ています。つまり、デジタル資産を移転できること、デジタル資産を使用できること、デジタル資産の使用を独占できることです。おそらく顧客と仲介者の間のケースと考えますが、契約によって両者にコントロール権がある場合、状況はその契約に支配されるでしょうが、両者とも秘密鍵を持っているならば、両者がコントロールできると思います。神田教授、補足があればお願いします。

【神田座長】
 ありがとうございます。一般的に、複数の人がシェアードコントロールとかジョイントコントロールとか言っていますけれども、コントロールを持つという場面というのは当然想定しているし、コメンタリーにも書いてあるのですけれども、今おっしゃった問題はカストディに当たるかどうかを決めるために重要な問題となります。

 つまり、カストディに当たれば、カストディアンが倒産した場合にもデジタルアセットは顧客のものというか、仮にそう表現させて頂きますけれども、当たらなければそうでないということで、カストディの定義はどうなっているかというとカストディ契約によるということなのですけれども、カストディのシチュエーションというのは、カストディアンがコントロールを持つということが要件になっています。

 逆に言うと、顧客はコントロールを持たないという場面が想定されています。したがって、原則としては、カストディアンがコントロールを持っているという状態でないと、カストディアンについてのこの原則は適用されないというふうに整理していると思います。私は間違っているかもしれませんけれども、あるいはまた御質問も誤解しているかもしれませんけれども、そんなところでよろしゅうございますか。

【井上メンバー】
 はい、ありがとうございます。すみません、時間を取って頂きまして。

【神田座長】
 ありがとうございました。

 それでは次に、坂先生、どうぞお願いいたします。

【坂メンバー】
 ありがとうございました。よろしくお願いします。

 カストディに関する原則の考え方について2点御質問がございます。

 1点目ですけども、カストディアンが顧客のために保管していた暗号資産が盗取、盗まれてしまった場合、顧客はなおカストディアンに対し、管理を委ねたものと同種同量の、もともと預けたものと同種同量の暗号資産の引渡しを求めることができるかどうか。別の形で質問しますと、カストディアンが顧客のために保有していた暗号資産を盗取された場合、カストディアンは、盗取されたものと同種同量の暗号資産を顧客のために改めて取得をして保管する義務を負うと考えるかどうか。これが1点目です。

【Tirado教授】(仮訳)
 まず、1点目の御質問ありがとうございました。カストディアンというのは、クライアントの資産を管理するということに関して規制の対象になるということとなります。過失か否かに関わらず、カストディアンが預かっている資産を盗まれるということになり、義務に違反した場合、その義務違反の結果として、同等の資産をリプレースする必要があるかどうかは、他の法律によって決めるということになります。こうした状況における契約上の救済は、その国の法律で判断すべきものと考えます。UNIDROITの原則でも、カストディアンの義務に少し触れていますが、多くのケースは、これは各国の法律又は規制によって補完されるものだというふうに考えます。

【神田座長】
 原則11というのをもしお持ちであればですけれども、11の第3項のb項、c項に今の先生のおっしゃる義務が一応定められているのですけども、この3項というのはmay includeということで、このカストディアンの義務というのは、例示というか、そこにあるものをサジェストしている形になっています。したがって、この原則を採択する国がどうするかというのは決めてください、あくまでサジェストになっているというのが原則の立場になります。

 もしそれでよろしければ、2点目の御質問へ。

【坂メンバー】
 ありがとうございます。

 2点目ですけども、カストディアンが顧客のために保管していた例えばNFTを盗取された場合、盗まれた場合、顧客はカストディアンに対して当該NFTの移転先に関する情報の開示を求めることができるか、この点についてどう考えているのか教えて頂ければと思います。

【Tirado教授】(仮訳)
 こちらのほうも、他の法律の範疇と考えられます。つまり、NFTは固有のものであり、別の等価のNFTに差し替えることはできないことから、それぞれの国の法律によって具体的に規律されるべき一例だと思います。

【神田座長】
 確かに議論のプロセスでは、情報の提供義務みたいなものも議論された時期はあったというふうに私も記憶しておりますけども、最終的には今回の原則には含めませんで、それぞれの国のレギュレーションなり、消費者保護と言っていいのか分かりませんけれども、のほうに委ねるということになっていると思います。よろしゅうございますか。

【坂メンバー】
 ありがとうございました。

【神田座長】
 それでは、時間が来ているのですが、松尾先生、最後にもしよろしければお願いいたします。

【松尾メンバー】(仮訳)
 ありがとうございます。ジョージタウン大学コンピューターサイエンス学部の研究教授を務める松尾と申します。

 裁判が発生した場合に必要な法的証拠を提供するため、新たなテクノロジーの開発者向けに何らかのフレームワークをUNIDROITは提案しているでしょうか。規制テクノロジーの開発に向けた将来的な機会に関する質問です。技術の中立性が重要と理解しましたが、確かなデータアセットエコシステムを築くためには、証拠提供機能が重要です。以上が質問です。

【Tirado教授】(仮訳)
 UNIDROITが裁判の証拠に適用可能なルールを提供する可能性はあるかという質問ですか。

【松尾メンバー】(仮訳)
 はい。例えば現状ビットコインやブロックチェーンの開発者は裁判に使える法的な証拠を提供する機能について考えていません。ところが、私法や何らかの紛争では法的な証拠が重要です。開発者に何らかのテクノロジーの搭載を求めるべきですが、新しいテクノロジーを構築するにあたり、一般人や規制当局とエンジニアの間にコラボレーションやコミュニケーションのフレームワークが必要です。

【Tirado教授】(仮訳)
 確かに重要な点ですね。これは分散台帳技術ですから、レジストリが、資産の移転があった場合には、犯罪科学の専門家が移転先などを追跡できると思います。公開鍵は見つかるでしょうが、その裏側にいる人物の特定は困難です。またこうした点を規律することを原則に委ねるべきではありません。原則はその領域に達していません。訴訟法は多くの意味で公法であり、各国の管轄となります。我々は法の執行に取り組んでおり、この取り組みを通じてデジタル資産関連法の執行とテクノロジーの使用の双方に有益な成果をたくさんもたらしています。ただし、裁判向けテクノロジーの開発やその義務化は各国の規制に委ねるべき問題でしょう。私たちにできることは多くないと思います。UNIDROITが提案すべきと政府を説得してくれるなら喜んで取り組みますよ。

【松尾メンバー】(仮訳)
 ありがとうございます。

【神田座長】
 よろしゅうございますか。実際に紛争とかを想定して紛争解決、裁判を含めてですけれども、になるのでこういうルールをつくっているわけですけれども、それを実効的に実現していくためには、技術の専門家の方の関与なり参加、協力、そういったものが必要になるので、そういうシステムをつくっていくということも考えられるのではないかと、大変貴重な御指摘だと私は受け止めました。UNIDROITにとっても宿題になると思いますし、そういったことはぜひ次の課題となるのではないかと思います。松尾先生、どうもありがとうございました。

 それでは、申し訳ありませんけれども、Tiradoさんはこの後、本来の今回の訪日の目的のための用事で空港へ行かれますので、Tiradoさんのセッションはこの辺りとさせて頂きたいと思います。なお、もし追加での御質問とか御指摘等がございましたら、事後に事務局まで頂けましたら、またお聞きするなりして、何らかの形でまた御返事等をさせて頂きたいと思います。

 ということで、Tiradoさんの部分はここまでとさせて頂きます。

(仮訳) Tirado教授、ありがとうございました。
 
(ティラド教授 退出)
 
【神田座長】
 それでは、続きまして、クニエの櫻井様より資料4について御説明をして頂きます。櫻井さん、どうもお忙しいところを本日はありがとうございます。よろしくお願いいたします。

【クニエ(櫻井)】
 株式会社クニエの櫻井と申します。本日はよろしくお願いいたします。

 それでは、金融庁様から委託頂いております「分散型金融システムにおけるオンチェーン/オフチェーンデータを活用した実態把握に関する研究」について、現在の中間状況を御説明させて頂きます。当研究は6月末を最終報告にしていますが、現在の中間状況として御説明させて頂きます。

 では、ページ、2ページお送り願います。3ページまで送って頂けますか。当研究の目的でございます。

 分散型金融システムにおきましては、利用者保護や金融犯罪防止、金融安定化等の観点から多くの課題が指摘されております。特に、FSBやFATF等の報告書において、データギャップと申しまして、データが取得できるものとできないものがあるというような指摘がされておりまして、DeFiやP2Pなど暗号資産交換業者を通さない取引を含む分散型金融システムの実態把握に必要なデータの不足が指摘されております。それで、必ずしも十分なリスク評価を行うことができないというのが現状でございます。

 そこで、本研究調査といたしましては、「ブロックチェーン国際共同研究」の一環といたしまして、DeFiを含む分散型金融システムのオンチェーン/オフチェーンデータを活用した実態把握というのを行っております。分散型金融システムのデータの分析を行っておりますが、特に今回は、公知情報として公開されているブロックチェーン分析ツールでありますとか、ブロックチェーン分析会社が持つ分析ツールでありますとか、さらに専門家によるリサーチというのを段階的に行いまして、データがどこまで取得できるのかというのを実態把握して、今後の政策対応を検討する上で有益な視座を提供することを目的に実施をしております。

 下に注釈を書いておりますけれども、今回利用したブロックチェーン分析ツール等で解析が行えるアドレス・取引は全体のごく一部、おおむね全体の1割程度にとどまっておりますので、必ずしも分散型金融システム全体のデータを分析したものでないということは御留意願いたいと思います。

 次のページをお願いいたします。これがFSBとFATFから指摘されているデータギャップの問題になります。
 左側がFSBのレポートの抜粋ですけれども、DeFiを含む暗号資産市場におけるデータの透明性及び一貫性の欠如の問題が指摘をされております。

 また、右のFATFのレポートにつきましては、複数のブロックチェーン分析会社7社においてP2P取引の実態調査を行いましたが、下のグラフにありますように、7社の結果が大きなばらつきがあったということで、結果として実態を把握するのは難しいという特徴になっております。こういう状況が指摘をされているという状況でございます。

 次のページ、もう1ページ飛ばして頂きまして、6ページ目をお願いいたします。FSBが指摘する利用可能/不可能なデータ及び追加取得すべきデータ例として、レポートに具体的なデータの例が出ております。利用可能なデータと利用できないデータ、追加すべきデータと分かれております。今回の調査では、利用できないデータと追加すべきデータに着目して実際にどこまで取れるかという確認をしておりますが、利用できないデータが一定数残っているということが今回の調査でも確認できている次第でございます。下にコメントを書いておりますが、この調査研究では、これらの指摘を踏まえまして、取得することが望ましいデータセットを特定して、分析ツールを用いてデータ取得可否とその信頼度を検証するような研究を行っております。

 次のページ、お願いいたします。研究結果のサマリーになります。

 この研究の実施概要といたしまして、先ほど申しました分析ツールや専門家のリサーチを行いまして、主に暗号資産交換業者とレンディングサービス、それとアンホステッド・ウォレット、暗号資産交換業者を通さないウォレットの取引の件数等を調査しておりますが、その下に主なファインディングスを書いております。

 2点ございまして、1点目がオンチェーンデータ/オフチェーンデータに関するマッピングということで、Ethereumブロックチェーンのオンチェーンデータ/オフチェーンデータの全体構成について、データの要素と接続ポイントを整理して、全体が可視化できるように1枚の図にまとめたものでございます。

 もう1点、オンチェーンデータ/オフチェーンデータの調査につきましては、Ethereumブロックチェーンの取引データのうち、分析会社が特定したカテゴリー名やアカウント名を調査対象として、取引件数の傾向を調査しております。現時点で把握した主な傾向は以下のとおりでございます。まず1点目として、暗号資産交換業者やレンディングサービスは、自社内の取引またはほかの暗号資産交換業者の取引件数が多いという傾向でありますとか、他方で、暗号資産交換業者とDeFi及びアンホステッド・ウォレット間の取引も相当数あるということが確認できた状況でございます。そういうことから、暗号資産交換業者とDeFiやアンホステッド・ウォレット等の間には密接な取引関係がございますので、こういうことが示唆されたということで、今後のリスク評価におきましては相互関係を確認していくことが必要と考えております。

 次のページに行って頂きまして、調査対象データの説明になります。まず、この研究で定義しておりますオンチェーンとオフチェーンの定義でございますが、オンチェーンデータは、調査対象のEthereumブロックチェーン上で取得できるデータのことを指しておりまして、オフチェーンデータはそれ以外のデータということで定義をさせて頂いています。オンチェーンデータの調査対象範囲ですが、あくまでもブロックチェーン分析会社がカテゴリーまたはアカウントを特定したアドレスを対象として、2022年のEthereumブロックチェーンの取引を集計しております。下の表に数字がございますが、調査対象アカウントを暗号資産交換業者A、BとレンディングサービスCで比べた場合に、実際にカテゴリー名やアカウント名を特定できたものは記載のとおり4~33%で、全体にならすと大体1割ぐらいの特定率でございまして、残り9割は送受信先が特定できていないという状況になりますので、必ずしも全体を示すものではないというような状況になっているという次第でございます。

 次のページ、お願いいたします。次のページは、中間調査結果の①といたしまして、主要なオンチェーン/オフチェーンデータの全体像をマッピングしたものでございます。左の図がオンチェーンデータですね、Ethereumブロックチェーン上にあるデータの要素を指しておりまして、一番右がオフチェーンデータのデータ要素、それをつなぐ接続ポイントを真ん中に書いております。左のオンチェーンデータの中は、実際にブロックチェーンのデータということで、スマートコントラクトや、実際に所有者が持つ外部所有アカウントや、そこから発生するトランザクションと、その履歴をつくるブロック等になりますが、それぞれにおいて、その接続ポイントによりまして、オラクルという市場価格をブロックチェーン内に取り込むものであったり、ウォレットは実際に取引をここから投げて利用者が利用するものであったり、DeFiのプロトコルが提供するウェブのユーザーインターフェースだったり、あとノードというふうに書いてありますが、裏で動くスマートコントラクトの開発者でありますとか、実際にステーブルコインを運営して、金融機関の裏づけ資産と紐づけて管理するものでありますとか、ブロックを生成するバリデータとか、主にこういう接続ポイントがあると考えております。この図は、全てのオンチェーン/オフチェーンデータや接続ポイントを網羅的に整理したものではなく、特に金融規制当局にとって重要と考えられる機能やデータに着目してマッピングを行っているものでございます。これが1点目でございます。

 続きまして、主な全体像の中で、データの取得可能性について表で整理をしております。左側のカテゴリーは、暗号資産交換業者とステーブルコインとDeFiとP2Pの4つがあります。主な調査項目の右に、取得可能なデータ例と、取得不可または困難な可能性があるデータ例ということで分けて整理をしております。取得可能なデータ例は相応にございますが、取得できないデータの内容として、先ほど説明しましたように、カテゴリー・アカウント名が特定できないということが1つと、例えばその右の暗号資産交換業者のところを見て頂きますと、法定通貨の換金でありますとか、機関投資家、金融機関のアドレスでありますとか、これは一部特定できますけども、全ては特定は難しいでありますとか、無登録VASPが実際にどういう登録状況になっているとかいった詳細な内容とか、そういうところは結局なかなか取得が難しいというような実態でございました。またDeFiでは、まだ調査中のところはございますけれども、金融機関等の詳細な利用実態だったり、記載しているレバレッジとかリハイポセケーションの実体についても、なかなか取得できないものが残っていると考えております。

 下の注1に書いておりますが、先ほど申しましたように、あくまでもブロックチェーン分析会社が特定・分類したカテゴリー名やアカウント名を前提として調査しておりますので、この分析会社の特定が誤っていた場合はデータの正確性も欠くことになります。こういうところも注意してこの結果データを管理するような必要があると考えております。

 次のページ、お願いいたします。次が中間調査結果の2つ目になります。これは実際に分析結果を詳細に確認したものでございますが、表の左上に調査項目として、暗号資産交換業者やレンディングサービスの取引件数と、アンホステッド・ウォレットの取引件数と、DeFi関連データの3つについて整理をしています。主に暗号資産交換業者とレンディングサービスとアンホステッド・ウォレットにつきましては、実際に受信の取引と送信の取引について、カテゴリー別とトークン別とDeFiの内訳の3つについて詳細に分析をしております。これは後ろで御説明したいと思います。

 まず最初に、12ページ目の暗号資産交換業者Aのところから具体的な結果を御説明したいと思います。これはカテゴリー別の分類になります。左上が取引区分ごとの取引量で、その下がカテゴリー別の取引量のグラフになっております。右の真ん中の表と連動しておりますが、まず、取引区分ごとの取引量につきましては、受信・送信を比べて、自社内、暗号資産交換業者内の取引が多いというような傾向がございます。これは、暗号資産交換業者内のウォレットの内部資金移動が多いと想定されると考えております。また、受信と送信の取引の比較をいたしますと、送信のほうが多いというようなグラフの結果になっておりますが、これにつきましては、複数回取引を行った後に、最後に暗号資産交換業者のウォレットに資金をまとめて戻すような動きがされると考えております。また、カテゴリー別のところにつきましては、受信・送信とも、ほかの暗号資産交換業者との取引が一番多いというようなグラフになっておりますけども、その一方、2番目のところは、受信はDeFi、アンホステッド・ウォレット、送信はトークンコントラクトというようなところが次に多いという数字になっております。DeFiにつきましては分散型取引所のトークン交換が主に多いと考えられますし、アンホステッド・ウォレットはDeFiの利用のために一旦アンホステッド・ウォレットに資金を移転する動き、トークンコントラクトは、これは実際に調べますと700種類のトークンの交換をやっているように動きが見られますので、こういうトークンの送金が目的と考えられると想定をしております。これがカテゴリー別の説明でございます。

 続きまして、トークン別の説明です。これは、どのトークンが多く使われているかという分析をしております。左のグラフにありますように、Ethereumネットワークのネーティブトークン、ETHの利用量が一番多いというところと、その次にUSDTやUSDCのステーブルコインの利用が多いというような分析になります。これらは、主要なトークンとして買って金額を固定し、その他トークンとの交換に利用されることが多いと想定されますので、そういう目的で使われているんじゃないかと思われます。もう一つ特徴的なのは、3番目にLINKというのが出てきますが、これは外部オラクルサービスでありますChainlinkのサービスを利用するために、支払いに用いられるトークンです。これは、Chainlinkを使っているものが現在で260ぐらいのDeFiでございまして、ここの支払いのために多く使われているというような形が見えると考えております。また、もう一つ、特定のゲームですね、GALAというゲームのトークンが多いというのもちょっと特徴的な話になりますが、これもこのゲームの利用者が多いというのは、この期間、見受けられたと考えております。また、受信のところがその他の件数がかなり多くて、7割ぐらいがその他になっておりますが、ここは内容を調べますと、1,100種類のトークンに対する取引がありまして、上位5つだけではなくて、ほかにも、比率は一つ一つは少なくなりますが、かなり多くのトークンの取引を行われているというような傾向も見受けられます、という状況でございます。

 続きまして、DeFiの内訳になります。この暗号資産交換業者Aにつきましては分散型取引所の取引が多いということで、受信についてはUniswapで送信についてはCurve Financeという分散型取引所の取引が多い傾向になっております。これらは、Uniswapにつきましてはトークンの交換の種類が多いことで有名なDeFiでございまして、Curve Financeはステーブルコインに特化したDeFiでございまして、手数料も安いということでステーブルコインの交換等に活用されているのではないかというような想定がされると考えております。これが暗号資産交換業者Aの分析結果でございます。

 続きまして、暗号資産交換業者Bのページが3ページ続きますが、傾向はほぼ同じですので、ここは割愛させて頂きまして、18ページ目に飛んで頂ければと思います。次にレンディングサービスの分析になります。ここも暗号資産交換業者Aと全体的な構成は変わりませんが、同じように、受信・送信を比べてレンディングサービスの取引が多いという左のグラフですとか、カテゴリー別の取引はほかの暗号資産交換業者における取引が多いというような内容でございます。1つ、下の考察に書いておりますけども、自社内取引のところで、受信と送信ともほかの暗号資産交換業者との取引が多いんですが、次のところが、受信がDeFiと、送信のところがその他スマートコントラクトとアンホステッド・ウォレットになりますが、ここのところは、いろいろ確認はしているんですが、背景がまだ明らかになりませんけれども、例えば暗号資産のステーキングサービスなどを利用しているのではないかというのは想定しております。ここがなかなか分析が難しいところでございますが、こういう傾向を示していることは確認できております。

 次のページ、お願いします。トークン別のところですが、ここを見ますと、ここも暗号資産交換業者Aとそう変わらないところでございますが、1つ、違いで出てくるのはGUSDがあります。ここはGeminiという暗号資産交換業者のトークンが多いという結果になりまして、ここもこのレンディングサービス特有の話かと思いますが、こういう傾向も見てというふうに考えております。

 次のページに行って頂きまして、レンディングサービスの最後ですが、これがDeFiの内訳になりますけれども、ここは取引件数が少ない関係で送信はありませんでしたが、受信のところはUniswapの分散型取引所が多いということで、傾向はおおむね同じと考えております。

 次のページに行って頂きまして、ここからがアンホステッド・ウォレットの分析になります。これは暗号資産交換業者を通さない取引ですので、対象に暗号資産交換は出てこないというような分析になりますけれども、まず、左上の取引区分ごとの取引量を見て頂きますと、ここはそれぞれの持ち主が違うということで、アンホステッド・ウォレット内の取引よりは受信と送信の取引のほうが多いというような傾向になります。下のカテゴリー別で見て頂きますと、このページ、以前にお配りした内容に数字の誤りがございまして、本日差し替えさせて頂いておりますが、見直した結果、一番多いカテゴリーはNFTマーケットプレイスということが確認できましたので、訂正をさせて頂いております。一番多いのがNFTで、2番目がDeFiというような順位ですが、この傾向の理由につきまして右の考察に書いております。

 カテゴリーの受信・送信ともNFTマーケットプレイスの取引件数が多いというところですが、中身はOpenseaとかX2Y2というNFTマーケットプレイスの著名なサービスの利用が多いと考えられます。この場合、VASPから一旦アンホステッド・ウォレットに移転させて、そのトークンをNFTマーケットに活用するような動きが想定されます。これは、いろいろな調査をしてみますと、NFTマーケットプレイスで利用されるウォレットが主にmetaMaskなどのアンホステッド・ウォレットが主流であるというようなことであったり、NFTマーケットプレイスにおいてはホステッド・ウォレットではなくてアンホステッド・ウォレットがサポートされているものが多いというようなこともありまして、一旦アンホステッド・ウォレットに移転させたトークンを利用するというような動きがあるように想定はされます。次に多いカテゴリーはDeFiでございまして、これも一旦ホステッド・ウォレットからアンホステッド・ウォレットに移転したトークンをDeFiのほうに活用しているような動きが見られますので、動きはNFTマーケットプレイスと同じかと思われますが、DeFiの場合は分散型取引所への利用が多いというようなことで考えております。これがカテゴリー別になります。

 次はトークン別です。ここも少し暗号資産交換業者と異なるところがございまして、一番利用が多いトークンはETHでは変わりませんが、2番目のWETHといいまして、これは中身はETHなんですけれども、ETHと1対1でペッグしたトークンでございまして、DeFiで利用しやすいような規格に変換されたものになります。これは、アンホステッド・ウォレットがDeFiの利用が多いところで、ETHだけではなくてWETHの利用が増えているというふうに傾向としては考えられると思っております。

 最後がDeFiの内訳になりますが、アンホステッド・ウォレットにつきましても利用者が多いのは分散型取引所で、トークンの交換に主に用いられるという傾向はほかと変わらないということが確認できている次第でございます。

 こういう内容を調査して全体の傾向を見ておりますが、まだまだ途上でございますので、数字等は最終報告時点で変わる可能性はございますけども、6月に向けて、現在、精緻化を進めているところでございます。

 また、後ろのページは、DeFiの関連データとして、DeFi全体の数字でありますとか、特定の分散型取引所やステーブルコイン発行やAaveレンディングサービスなどの数字をまとめているところでございますので、ここは御参考として見て頂ければと思っております。

 御説明は以上になります。ありがとうございます。

【神田座長】
 どうも貴重なお話をありがとうございました。

 それでは、今御説明頂きました内容につきましての御質問、御意見、その他御発言、どうかお出し頂ければと思います。先ほどと同じく、チャットに「発言希望」と1行、全員宛てに入れて頂ければありがたく存じます。
 それでは、岩下先生、どうぞお願いいたします。

【岩下メンバー】
 どうもありがとうございます。こちらの研究の意義と限界というか、そういう点について若干コメントをさせて頂きたいと思います。

 以前、こちらの研究会で、NFTであるとかWeb3.0といったことについて議論をしました際に、オンチェーン取引とオフチェーン取引というのがあって、日本国内における暗号資産取引はほとんどの場合、オフチェーンで取引されているとお話ししました。今回の表現でいくとカストディアン・ウォレットを利用しているという表現になるんでしょうか。一方で、今回のレポートの中身にある、最近、割と人口に膾炙するようになったアンホステッド・ウォレットというのが、オンチェーン取引に当たるわけです。あるいはノンカストディアル・ウォレットなんていいますけども、要するにカストディアンあるいは暗号資産交換業者などによって管理されていないウォレットを使った取引、すなわち一般の個人が暗号資産の秘密鍵を保有して、その秘密鍵を利用してトランザクション発生させるという取引と、そうでない取引の両方があります。それらの中で日本の国内の暗号資産の売買にはほとんどがオフチェーンの取引というか、カストディアンのウォレットを利用した取引が使われているんですよという話をした覚えがあります。

 その際に、実態を調査するべきであるという御意見があったように思いますけれども、今回のレポートは、それに対する一つの回答というか、実態がどうなっているかということをある程度明らかにしてくださったということで、大変高く評価したいと思います。今回対象としたのは、比較的眺めが明瞭であるところのEthereumという暗号資産だけです。また、実際に分かったのは、結局、オンチェーンのブロックチェーン上に書かれたトランザクションの記録をもって、どういう取引が行われているかということを調べたときに、なかなかオフチェーンのところの情報までは下りていって調べることはできないけれども、どんな相手と取引しているのかとか、アドレスの属性みたいなものはブロックチェーンには書かれていないけれども、それに関する情報を分析業者さんの知見を利用して研究に利用することができる。そういう意味では、現在、我々が到達できる水準としてはかなり高い水準まで行けたのではないかと思います。

 これらの統計を見てみますと、必ずしも、Ethereumという特殊な世界でありますので、とりわけ最近ですとNFTで、あるいはメタバースとかで、MetaMaskというオンチェーン取引のツールが使われているという事情もあり、あるいはDeFiの中でEthereumが極めて活発に利用されているということもあって、オンチェーンの取引も随分多いなというのを感じたところです。ただ、暗号資産を単純に売買する、あるいは送金に使うという類いの取引では件数的にはそれほど大きくはなくて、圧倒的にDeFiあるいはNFTのマーケットプレイスの中で使われているものが多かったとか、その内容について例えばリスクの高い取引なのではないかということで、欧州等で規制等の動きがいろいろありましたけれども、実態がちょっとだけ垣間見えた。暗号資産のブロックチェーンの中には全ての情報が書き込まれているから、全てトランスペアレントなのであるというふうなことをよく言われるわけですが、実際にはそこの中に書かれているのはごく限定的な情報であり、かつ、そもそも匿名取引のためのものですので、実態がよく分からない。また、あまりに巨大なデータが書き込まれているので、全体を把握することが当局にとって難しいという面があったわけですが、こういうツールを使うと、ある程度の範囲までは分かるということが分かったという意味では大きな進歩ではなかったかと思います。

 ただ、依然として、この取引でも、例えばオンチェーンとオフチェーンの取引の量の比率がどうなっているんですかという話については、これはよく分からないですし、金額はどうなっているんですかという話についても実際よく分からないというところもあって、あるいは、最近増えてきた単純な暗号資産の売買ではなくて、DeFiであるとかNFTであるとかというものによって全体の統計が非常に見えにくくなっている部分があります。そういう部分をもうちょっと透明度を高めて、何が起こっているのかということを、こういう情報と、それからもう一つはVASPとこのレポートの中で書かれている暗号資産交換業者のほうから入手するオフチェーンの情報と上手に組み合わせて全体像を把握していくということが、これから規制当局にとっても大事なことになるのではないかと考えます。

 私からは以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして、坂先生、どうぞお願いいたします。

【坂メンバー】
 よろしくお願いします。私のほうから5点ほど御発言させて頂ければと思います。
 1点目ですけども、まず、調査に関する要望ですけども、今回は件数の調査を行っておりますが、取引量、バリューの調査も重要なのではないかと思われます。可能であれば、いずれかの機会にそういったことについても研究頂けるとありがたいと思います。

 2点目ですけども、実態把握の可能性と規制対応についてです。資料の8ページを拝見しますと、カテゴリーもアカウントも特定できていない件数が多数を占める――9割を占めるということであったかと思いますが、とあります。さらに10ページでは、取得不可/困難な可能性があるデータ例として、暗号資産交換業者等の関連においては法定通貨と暗号資産の換金に関する情報が挙げられておりますし、DeFi関連においては匿名化が強化された暗号資産を利用したDeFi取引が、P2P関連においてはミキシングサービスの詳細な利用実態、匿名性が強化された暗号資産管理のアドレス、取引情報が挙げられております。

 これらによりますと、捕捉が不可能または著しく困難な暗号資産取引がかなり広範囲に存在しているということが改めて確認されたということと思います。これは、マネーロンダリングやテロ資金対策において大きな穴が開いているというふうに言わざるを得ない状況にあるということです。G7の財務大臣・中央銀行総裁の声明においても、暗号資産のリスクに対する規制対応の必要性、特にDeFiやP2Pに関する対応の必要性が指摘されているところです。様々な調査機関により実態把握の努力が行われ、法執行の取組は行われておりますが、匿名性に対して有効な対応が追いつかないのであれば、より強い実効的な規制対応が国際的に必要と考えます。

 3点目ですけども、アンホステッド・ウォレットについては、これは2点御質問がございます。

 21ページ以下の御報告において、調査対象としたアンホステッド・ウォレットの取引はどのようにして抽出されたのか、これが1点。

 それからもう1点、調査結果ではP2P取引は件数が少ないというふうに出ておりますけども、これはP2P取引が少ないと見てよいのか、それとも捕捉できていないというふうに見るべきか、この辺、感触等ございましたら教えて頂ければと思います。

 それから4点目ですけども、NFT関連の取引について、アンホステッド・ウォレットの取引ではNFTマーケットプレイスとの取引の送受信が多く、送受信に用いられるトークンの種類ではEthereumが多いという特徴が見られます。アンホステッド・ウォレットにおけるNFT取引への利用の存在感が高まっているという状況と思われます。こうした状況に鑑みますと、NFT取引がマネーロンダリング等に使われるリスクや、具体的な規制対応等についても検討が必要なのではないかと思います。

 5点目ですけども、これは御報告を踏まえた意見といいますか、要望ですけども、2点ございます。

 1つは、国際的な実態解明と規制対応の検討はますます重要でありますけども、制度整備がある程度先行している我が国において、実効的な規制対応を行うということが極めて重要と思います。トラベルルールに関する規制も整備されてきておりますし、我が国における規制法による法執行というのはしっかり御対応をお願いしたいと思います。

 また、アンホステッド・ウォレットや海外の交換業者における取引が詐欺等の事案において用いられることが多く見られることに鑑みますと、これらが国内の交換業者における利用に比してリスクが高いものであることについて、十二分な注意喚起が必要ではないかと考えます。この点につきましては関係機関にぜひお願いしたいと思います。

 以上です。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 御質問があったかと思いますが、もしよろしければ、櫻井様、お願いできますか。

【クニエ(櫻井)】
 御質問につきましては、アンホステッド・ウォレットの調査方法と、P2Pの取引が少ない理由のところを回答させて頂ければと思います。

 まず、アンホステッド・ウォレットの調査につきましては、これはあくまでも、今回、協業しているブロックチェーン分析会社がアンホステッド・ウォレットとラベルをつけたもの、その特定ができたものに対して調査をしておりますので、当然、その特定ができていないものについては調査の対象になっておりません。

 同じようにP2P取引につきましても、アンホステッド・ウォレットと特定できたものに対する取引量を抽出しておりますので、これでいくと、全体の傾向として少ないのかというのはアンホステッド・ウォレットの特定の比率によると思いますので、全体の傾向を表しているかどうかは難しいところはあるかと考えております。

 以上、回答になりますでしょうか。

【坂メンバー】
 ありがとうございました。

【神田座長】
 それでは、ありがとうございました。

 次に、翁さん、どうぞよろしくお願いいたします。

【翁メンバー】
 御説明ありがとうございました。1割とはいえ、どういう実態なのかということが少しかいま見られたように思いまして、大変参考になりました。暗号資産とDeFiとかトークンをはじめ、相互関連性のあまりの強さですね、これが非常によく分かりましたことと、それから、本当に複雑な取引で、実態を詳細につかむことの難しさということもよく分かりました。しかし、今回非常に重要なファクトファインディングの一部が見えてきたように思っております。

 私もちょっと御質問したいのは、アンホステッド・ウォレットのことですけれども、主にトークンの交換、DeFiに使われているということが少し見えてきたわけなんですが、今の坂さんの御質問とも関連するんですけれども、この取引、結局、これを使っている人たちの動機というか、そういうのはどういうところにありそうなのかということをお伺いしたいなと思いました。まだ詳細見えてはこないですけれども、ここのマネロンが非常に危惧されるところではあるんですが、アンホステッド・ウォレットを使うことによって、むしろ、こういったDeFiとかの取引をするためにこういった不透明な形でのウォレットというのがよく活用されているという感じなんでしょうか。特に規制対応を考えたときに、こういったウォレットをどういうふうに考えていけばいいのか、何かヒントになるようなことがありましたら教えて頂きたいと思います。

 以上でございます。

【神田座長】
 ありがとうございました。

 それでは、櫻井さん、よろしくお願いいたします。

【クニエ(櫻井)】
 御質問のアンホステッド・ウォレットの利用の用途というか、なぜ多いのかというのは、背景がどういうところにあるかというのを御説明したいと思いますが、2点あると考えておりまして、21ページの考察にも書いておりますが、ホステッド・ウォレット、暗号資産交換業者が管理するウォレットが、NFTマーケットプレイスとかDeFiを利用するところのものが実際にはサポートされていないのが多いことがございまして、実際にNFTマーケットプレイスやDeFiを利用するためのウォレットは、一般的にはMetaMaskなどのアンホステッド・ウォレットが多いというのが1点ですね。

 もう1点は、MetaMaskの利用者がかなり多くて、多分、大半のアンホステッド・ウォレットがConsenSys社が提供しているMetaMaskの利用が主流になっていまして、使いやすいというのもあってこちらを使う利用者が多いのかなと思いますので、この2点が今の調査傾向から見える理由だと考えております。

【翁メンバー】
 はい、分かりました。どうもありがとうございます。

【神田座長】
 よろしゅうございますか。ありがとうございました。

 それでは次に、野田さん、どうぞお願いいたします。

【野田メンバー】
 野田です。発言の機会を頂き、ありがとうございます。コメントは2つありまして、手短に、どちらもクニエ様に対する質問というよりも、今回の研究の途中経過をお伺いして感想という形のコメントのようなものになります。

 まず、複数のブロックチェーン分析会社が出している分析結果が異なっている。あるいは今使っているツールとほかのツールが違うことを言っているという懸念があるようです。このようなケースで、どちらを信じればいいか分からないという場合には、正解が分かるデータを独自に用意し、それに対して分析会社、あるいはツールがどういう結果を出すのか注目するのが基本的な手だと思います。ここまでやる気があるかどうかわかりませんが、例えば、ブロックチェーンのデータ分析とは別経路で取得したデータ、例えば犯罪者が使っていたアカウントの非公開情報などがあれば、こういうテストに使える可能性があります。もし金融庁様のほうでそういうデータがあれば、それでテストして、誰が正しいことを言っていそうかを検証することもできるのではないかと思います。

 2点目は、この研究の生かされ方という部分についてなんですけれども、政策を決めるに当たり、現状の実態を把握すること非常に大事だと思います。ただ、実態というのは今何が起きているかを指すものですが、これだけを基に、規制が必要か必要ないか、どういう政策を入れていくべきか決めるべきではないと私は思います。特に暗号資産の業界は歴史も新しく、急激に変化してきました。今の実態に過度に照準を合わせて規制や政策を議論すると、導入時にはもう時代遅れになって、その時代遅れの政策や規制なんかが長いこと使われ続けるというダウンサイドがあることは、認識しておかないといけないのかなと思います。

 難しいのは、未来に何が起きるか予測できないので、未来に照準を合わせて政策を決めるということができないことだと思います。これはある程度仕方のない面があると思いますが、現状の実態に照準を合わせるのではなく、暗号資産技術がどう使われているかではなく、どう使えるのか、その可能性についてしっかり考察していくことで補完できる部分があります。こういう意味で、市場の現況だけではなく、その技術的な性質、本質を押さえる試みも非常に大事だと思っていて、この辺りは役割分担だと思いますが、私はどちらかというと後者に焦点を当てた研究をやろうかなと思っています。こういう研究が、実態の調査に対して補完的な役割を果たすことをご指摘したいと思いました。

 コメントは以上です。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは次に、松本さん、どうぞお願いいたします。

【松本メンバー】
 松本です。発言の機会、ありがとうございます。

 一、二点ほど質問と意見というところになるんですけども、今回のレポートを拝見させて頂くと、これはAML/CFTを達成する、そのためにどのようなデータが必要かというところのレポートだと思っておりまして、そのアプローチが、今は人が解釈可能なデータのインサイトを生み出すという方向を取っていらっしゃるのかなと思うんですけども、データ分析でいくと様々なアプローチもあり得るのかなと思っておりまして、これをクニエさんのほうにお伺いすればいいのか分からないんですが、このようなアプローチを取った背景みたいなところを伺いたいなというのが1つと、それに対して、このレポートを読みながら私の感想なんですけども、今後、AML/CFT、恐らくリスクベースアプローチなんかも多々議論されていると思うんですが、恐らく、これだけ複雑なデータ、かつ、先ほど野田さんもおっしゃっていたとおり、今後も様々なタイプのトランザクションが発生し得る世界かと思っておりまして、そうなってくると、人間がデータを分析して解釈するではなかなか追いつかないような新しいアプローチでの不正というものも非常に増えてくるのかなと思っておりまして、似たような部分で、例えばクレジットカードの不正検知、こちらでも似たような、いたちごっこといいますか、様々な抜け穴を探しては攻撃をされるということを繰り返しておりまして、こちらと似たような取組が必要なのかなと思っております。

 そうなると、実はカテゴリー分解をして、このアドレスは何で、このアドレスは何で、その間の取引を特定するというアプローチも一つ、我々が中身を知るという意味で大事ですけども、一方で、そもそも何のアドレスかも分からないが、例えばこれをグラフ構造として、アドレス間がどのような取引をして、どのような重みの、例えば金額感だったり、トークン数だったり、頻度だったりの取引をしているのかというグラフ構造としての分析だったりとか、それらを利用しての機械学習的なアプローチでのある種アドレスごとの不正判定というようなアプローチ、また、そのアプローチの方向性の提案等があると、より実効性の高いAML/CFT対策というものが取れるのかなというふうに、私、専門が今は機械学習等も取り組んでおりまして、そういったふうにデータを見ながら感じたところでありまして、こういったリスクベースアプローチのためのAI活用だったりとか、そういった方向性にもし御意見等あれば伺ってみたいなと思うのと、こうしたデータのリスクベースアプローチだったりAI的なアプローチをしていくに当たっては、ぜひこういうデータをオープンデータ化して活用しやすくすると、より実効性高く、次の施策に生かせるのかなというふうにも思いましたので、ぜひ御検討頂けたらなと思っております。

 私からは以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 櫻井さん、今の点についていかがでしょうか。

【クニエ(櫻井)】
 まず、1点目の今回の調査研究の背景についてですが、当然、金融庁様から委託されているというのはあるんですけども、最初に申しましたように、FSB等のレポートでデータが取得できないというような課題が指摘されているというところがスタートだと思っておりまして、そのレポートに書いている内容よりは、今回の調査研究で、より具体的に取れるデータ、取れないデータの判断はできたと思っております。そういう目的で、可視化をするとか実態を把握するという目的においては研究の成果は少なくとも見えたところはあるんじゃないかと思っております。

 2点目に御指摘頂いたグラフ構造の分析とかマシンラーニングによる解析という話ですが、最初に、ブロックチェーン分析会社に分析を頼むことと並行して、今、既存で公表されている論文等の調査もしておりますが、そこでグラフ構造における分析とか、マシンラーニングでこういう方法を使うとアドレスのクラスタリングがどうできるかというところを調査しております。私どもが見た論文の範囲としては、なかなか実態が把握できるような結果を得た論文が見つけられなかったというのもありまして、今後、そういうところの研究は必要だと思っておりますけども、今回、そこは深掘りできなかったのが実態でございます。

 以上で回答になっていますでしょうか。

【松本メンバー】
 ありがとうございます。僕自身もこちらのレポートを非常に興味深く拝見しておりまして、より理解が深まったものと思っておりますので、ありがとうございます。

【クニエ(櫻井)】
 ありがとうございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは次に、井上さん、どうぞお願いいたします。

【井上メンバー】
 ありがとうございます。私も、実態の一部であれ、垣間見られたことに重要な意味があると思います。大変有用なレポートであると感じます。

 坂先生も御指摘されていたと思うんですが、そうはいっても、前提として御説明頂いたように、カテゴリー名あるいはアカウント名を特定していないものが結構あって、全体の中では約1割が判明したというか、特定されたと伺いました。それは、今の松本委員からの御質問にも関わりますが、いろいろな調べ方をしても1割ぐらいしか分からないということかもしれませんが、例えば何かインシデントが起こってしまったときに、当該特定のトランザクションにフォーカスして様々なブロックチェーン分析その他の分析を現時点でできる範囲で駆使しても、この1割という壁は結構厚くて、そうそう分かるものではないというか、特定のトランザクションについて集中して調べても10回に1回ぐらいしか分からないということなのか、全体を見る限りでは1割くらいしか分からないけれども、フォーカスして分析すればかなり分かるものなのか、その辺りを教えて頂ければというのが1点です。

 もう1点は、翁委員が御質問されていた点に関わりますけども、私も、アンホステッド・ウォレットを利用する動機が税とか規制の潜脱以外に何があるのかを知りたかったんですが、先ほどの御説明によると、DeFiとかNFTマーケットを利用するときにVASPがそれをサポートしていないという理由を挙げておられましたが、現実には、ある程度利用されるDeFiやNFTマーケットについてVASPがサポートするようなサービスを提供するのはあまり現実的じゃないんでしょうか。その辺りが、私、どのぐらい現実性があるのか分からないので、教えて頂ければと思いました。

 以上です。

【神田座長】
 ありがとうございます。

 櫻井さん、お願いいたします。

【クニエ(櫻井)】
 まず、1点目のカテゴリーやアカウントが特定できているのが少ない理由につきましては、あくまでも、ブロックチェーン分析会社が個々に努力で中身を特定しているためであり、これは、OSINT情報であったり、犯罪が起きたときに実際に公表される情報などから拾っていると思われますが、そういう背景があるので、実際にインシデントが起きたときに、暗号資産交換業者であれば、実際に規制をかける当局から中身を問い合わせれば回答が得られるものもあると思います。アンホステッド・ウォレットについてはその回答は得にくいと思いますので、そこの特定は今の実態では難しいんじゃないかと思われます、というのが1点目です。

 2点目は、アンホステッド・ウォレットを使う理由につきましては、先ほどの御質問で回答させて頂きましたけども、私どもが今把握している情報ですと、今、実際に取引が多いOpenseaとかX2Y2とか、最近、Blurというところも取引が多いと聞いておりますが、サポートしているウォレットが、例えば大手のバイナンスだったりコインベースとかクラーケンというところのホステッド・ウォレットをサポートしているように見えませんので、そこはまだホステッド・ウォレットから直接使うというのは広まっていないんじゃないかというふうに私どもからは見える状況でございます。

 御回答になっているかどうか。よろしいでしょうか。

【神田座長】
 井上先生、よろしゅうございますか。

【井上メンバー】
 現在サポートする状況になっていないことは理解しましたが、それは、サポートする状況になるのはビジネス的に現実的じゃないということでしょうか。申し訳ないです。

【クニエ(櫻井)】
 御質問をもう一度お伺いしてもよろしいですか。

【井上メンバー】
 私がそもそも問題を理解していないだけなのかもしれませんけれども、サポートされていないというのは、それは実際にサポートしようと思ってもできないのか、それとも、サポートするビジネスを始めようという経済的なインセンティブがないとか、何かの理由があるんでしょうか。

【クニエ(櫻井)】
 そこの理由はつかめておりませんけども、あくまでも今の実態としてそういう状態になっているということを把握しております。今後の暗号資産交換業者の動き等は確認をしたいと思いますが、私どもは今、その暗号資産交換業者自身がNFTを使えるようなウォレットをサポートするという話はあまりウオッチできていないところもございますので、その点は今後、確認はしていきたいと思います。今は情報として持ち合わせていないというのが実態でございます。

【井上メンバー】
 ありがとうございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、松尾さん、どうぞお願いいたします。

【松尾メンバー】
 ありがとうございます。質問というよりはコメントになりますが、いろんな先生方のコメントの中にも動機という言葉が出てきたように、これ、基本的にはかなり技術の話であるのと同時に、ある種の人間の営みの話であると思うんですね。ある種の技術が出たときに、その技術を皆さんが理想と思っているように使うのか、そうじゃなくて私腹を肥やすために、あるいは人をだましてお金を取るために使うのかというのは、人間側の営みの話であります。今回のレポートもそうですし、以前からずっと、毎年、金融庁様はこのレポートを出して頂いていますけども、基本的には技術がまだ力不足であるということをずっと克明に報告して頂いていると思うんですね。今のブロックチェーンの技術あるいはその周りのアプリケーションをつくる技術も含めて、人間の悪意も含めた営みとそのガバナンスをカバーするには力不足だということだと思うんです。

 前半のほうの議論でも、私法上の話ではありますけど、裁判に耐え得るかという話をしたのと同時に、結局、例えば何か金融犯罪であったり、こういうブロックチェーンを使って何か犯罪を起こす、マネロンするといったときに、最終的には裁判にかけないといけないわけで、例えばこういうふうに分析ツールを使った結果が裁判に耐え得るものなのかということも含めて、もう少しブロックチェーンにいろんな機能をつける必要があるんですね。こういう結果を見たときに、いや、この程度なんだ、力不足なのだから強く規制をすべきなのかというやり方もありますし、いやいや、逆に人間の営みに合うようにガバナンスの機能を強化する、それは先ほど申し上げたとおり、ある種の裁判所の証拠を提供する機能をエンジニアがつけてくれたものに関してはある種のお認めをするということも含めて、人間の営みに追いつけるような機能強化をするということを一緒に規制当局とエンジニアが考えていくというやり方もあって、今回の報告を見ただけで言えることは、明らかに力不足ですというところは言えるんですけども、その先どうするかというのはいろんな方向性があると思うんですね。

 研究会の今回でも、できれば両方の方向があり、かつ、私は以前からレグテックが大事だと言っているのは、この新しい技術が仮に大事だと思うのであれば、いかに人間のガバナンスに近づけていくのかという努力をするべきだし、あるいは規制当局としてこういうことがあってほしいということが今後議論されるといいなと思っていますので、この今回の調査結果の取扱いという意味で、いろんな方向性があるのだということを今後打ち出していって頂ければいいかなと思っています。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、岩下さん、どうぞお願いします。

【岩下メンバー】
 クイックに、井上委員あるいはほかの委員の方からも、なぜオンチェーン取引なのか、アンホステッド・ウォレットを使うのか、という御質問がありました。これは暗号資産の取引実態を見ると明らかですけれども、Ethereumを暗号資産として売買して値上がり益を狙おうということであれば、暗号資産交換業者が管理するEthereumのホステッド・ウォレットを使うのが一般的です。しかし、最近は、例えばICOトークンであるとか、あるいはDAppsであるとか、あるいはNFTであるとかといった、Ethereumを基につくられている様々な暗号資産関連商品を取り扱う人たちが増えています。同じようなことは、例えばメタバースの中でNFTのデジタルグッズを購入する際にも必要なわけですが、それを格納する場所が必要です。格納するのがMetaMaskと呼ばれるEthereum専用のアンホステッド・ウォレットなんですね。このシェアが非常に高いと言われています。

 イメージとしては、暗号資産交換業者は銀行みたいな存在で、そこから現金を引き出すみたいな形にして自分のアンホステッド・ウォレットに暗号資産を移して、それを利用して例えばNFTを買う、DAppsで何がしかのDeFiの取引をする、あるいはメタバースの中でNFTを購入するというのが一般的であります。最近、メタバースの始め方みたいな入門書を見ますと、まず最初にMetaMaskをインストールしましょうという解説が出てきます。

 ただし、私自身はこれは非常にリスクが高いと思っているのは、暗号資産であるとかセキュリティー情報の流出のことを全然知らない人に秘密鍵を自分でハンドリングするということを強いている形になりますので、実際に秘密鍵が奪われて資産がなくなってしまったという、現金を引き出した結果、現金が盗まれてしまったみたいな犯罪に遭う人たちは本当に枚挙にいとまがない状況ですので、その意味ではこれがとてもよいものだというふうに私は思っていないわけですが、そういう使われ方をしている。これは当然ながら、バイナンスであるとか、あるいは日本の国内の暗号資産交換業者を介してそういう取引をすることはできませんので、これはその目的で明らかにアンホステッド・ウォレットを使う必要がある人たちは確実に増えていると思います。

 ただ、もう一方で、伝統的に言うと、暗号資産交換業者に預けておけばいいものをわざわざアンホステッド・ウォレットに引き出して、しかもDeFiや、あるいはNFTを使うわけでもないのにそれを使う人たちというのは、それは意図して正体を明らかにしないで国際的な送金であるとか他の人への送金を行いたいという人たちが使っている。そういう実態があるようですので、そこの動機については何がしかいろいろ考える必要があるのだろうと思います。

 私からは以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 ほかにいかがでしょうか。今日は、お時間としては6時半まで頂いているので、まだたっぷりありますというのもなんですけど、もしお気づきの点があればぜひお出し頂きたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

 せっかく会場に来ておられて、佐古先生、何かもしございましたら、お願いします。

【佐古メンバー】
 私としては、話題が戻りますが、一番目の話題で、もしも神田座長にお答え頂けるようでしたらと思っていたんですけれども。

【神田座長】
 結構です。どうぞ。

【佐古メンバー】
 あ、大丈夫ですか。

【神田座長】
 はい、大丈夫です。

【佐古メンバー】  
 1つ目のUNIDROITのほうでお時間がなかったのと、神田座長にお聞きしてよいのかなと思って質問を控えていた件があるんですけれども、このデジタルアセットというのをかなりゼネラルに扱おうとされて定義されているというところに、大変すばらしいことだと思っていた中で、この中でデジタルアセットの例として、ワードファイルにパスワードをつけたものもデジタルアセットのようにコントロールに関して議論ができるんだよという表現があったと思うんですけれども、そこについてもう少し御説明頂けたらうれしいなと思いました。

【神田座長】
 ありがとうございます。デジタル資産というカテゴリーの中で、なぜコントロール可能なものというサブカテゴリーを設けたかということにも関係しますよね。その理由は、結局、各国で法律関係が明確でなくて訴訟になったり裁判になっているというのは、そういうコントロール可能なデジタルアセットの場合が多いのですね。それで、そこにおける法的な確実性というものが全くないという状況で各国は苦労しているので、ガイダンスを与えるために、コントロール可能なデジタル資産というものに着目しましょうと。言葉を換えて言うと、コントロール可能でないデジタル資産というのもたくさんあるわけですけども、それについてはあまり紛争がないという認識を一般論としてはまず持っています。

 それで、問題は、そのコントロールというのは事実上のコントロールなのだけれども、どこに線を引くかということですよね。秘密鍵を持っていれば、もうこれはコントロールなのですけども、それでは、ワードファイルだってパスワードで保護していたらどうかというと、それでも、それは言い方、例えば私がワードを使うときというのは、パソコンへはパスワードでアクセスしますけれども、別にワードファイルがあって、このワードファイルにパスワードをつければ、ワードファイルがまたそういう意味でパスワードがつきますよね。ただ、その場合でも、秘密鍵のようなデジタル資産との違いが少なくとも1つありまして、例えば暗号資産の場合には、AさんがBさんに譲渡すると、もうAはそれは取り戻せないですよね。そういう意味で排他的な支配というのが1人にだけある。もちろん共有ということも論理的にはあるのですけれども、今、典型的なケースとしては。ところが、ワードファイルの場合には、パスワードをつけても、そのパスワードを使えば何人だって見られるわけで、そういう意味では、その限りにおいては対象にならないようにユニドロワの原則では概念整理をしました。

 ただ、なぜそういう線引きをしなければいけないのですかというところこそ、多分もっと重要だと私は思っているのですけれども、それをまずUNIDROITとしては、そういう意味で支配可能な秘密鍵方式のようなものを念頭に置いてルールを提言するというところが、実際に紛争にもなっているものですから、まず大事であると考えてそこを対象として今回の原則作りをしたということです。多少とも御説明になりましたでしょうか。

【佐古メンバー】
 ありがとうございます。まさしくその違いがあるところをどういうふうにハンドルされるのかなと思って読ませて頂いたので、御説明ありがとうございます。

【神田座長】
 ありがとうございました。どうも大変失礼いたしました。

 では、クニエさんのほうの報告について。ありがとうございます。加藤さん、どうぞお願いいたします。

【加藤メンバー】
 加藤です。1点、既に何名かの先生方から、今回の調査とAML/CFT対策との関連について御発言があったかと思います。私は別の観点から、例えば暗号資産交換業者については、暗号資産のマーケットにおいてインターミディアリーとして非常に重要な役割を果たしていると思います。そういった暗号資産交換業者がDeFiも含めてこの暗号資産マーケットでどれぐらいリスクを取っているのかということが、今回の調査から何か情報として知ることができるのかということを教えて頂きたいと思います。

 気になっておりますのは、暗号資産交換業者は、顧客から預かっている部分と自己の計算で持っている部分があるわけですけれども、そのうちの自分で投資リスクを負って保有している、どれぐらいのリスクを自己で保有しているかということが今回の調査から何か分かるのかということについて教えて頂きたいということです。

 私の発言は以上です。

【神田座長】
 ありがとうございました。

 櫻井さん、よろしいですか。

【クニエ(櫻井)】
 御質問の件ですが、暗号資産交換業者が自分でどういうリスクを取っているかというのは、今回の調査からは取れている情報は特にないんですけれども、暗号資産業者の規模とか取引件数の調査はしましたので、実際に調査して暗号資産交換業者を利用している人の取引よりも内部の取引が多いというところを見て考えると、効率的に資金を回すというところは多分何らか暗号資産交換業者の中でやっているふうに見えます。実際にどういうリスクを取って、どういう資金の回し方をしているかというところまでの情報は取れていませんので、一概に何か申し上げられることはないんですけども、いろいろ苦労して内部で効率的に資金を回して何らか利益を得るような動きをしているような感じは見えますという回答になります。あまり回答になっていなくて申し訳ございません。

【加藤メンバー】
 ありがとうございます。先ほどたしか松尾先生からレグテックとかのお話があったかと思いますけれども、何かオンチェーンとかの公表情報なんかを利用して、例えば暗号資産交換業者のソルベンシーとかの問題について、かなり監督官庁として信頼に値する情報を速やかに把握できるようなことができるのであれば、非常に意義があるのかなと思ったのですけれども、なかなか、現在いろいろ公表されている情報ないし調査機関を通して得られる情報からはそこまでは難しいなということは理解しました。ありがとうございます。

【神田座長】
 ありがとうございました。

 ほかにいかがでしょうか。本日御参加頂いている中でまだ御発言を頂いていないのは、何か当てるようで申し訳ないのですけど、横関さんですが、何かございますか。

【横関メンバー】
 クニエ様の調査結果はすごく貴重なもので、非常にありがたいと思っています。調査方法について1点だけ質問です。資料によりますと複数の分析会社に依頼する形で調査されているとのことで、もちろん公開できないこともあるかと思うんですけども、どういう条件で、例えばどういう方法で、どういうふうに分析するとどれだけのデータが引き出せたかという、その調査過程というのがすごく大事だなとも思いました。

 そのため、どういうふうに今後分析していくかというところを皆様に情報共有するためにも、これだけ件数分かりましたというだけでなく、どういうことをするとどれぐらい分かるという、あるいはどういう知見があるからどういうことが分かるというようなところですね、もう少し、データ収集方法について何かしら説明を加えて頂けるとありがたいと思います。中身の分析自体はいろんな方法、AIを使うとかいろいろあるかと思うんですけども、調査の方法論や手法について明示していただきたいと思います。その報告書を見たときに、その後の人がフォローできるようになるかと思うので、もし可能であればやって頂きたいと思った次第です。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 櫻井さん、もし何か感想ございましたら。

【クニエ(櫻井)】
 御質問ありがとうございます。調査方法につきまして、簡単にしか説明できていないところもございましたので、もう少し中身を御説明いたします。今回、3段階で調査をしているというのが、公開されているブロックチェーン分析ツールと、分析会社が持っている分析ツール、これが2社のツールを使って確認したのと、専門家によるリサーチの3段階になっています。最初に公開ツールで確認した情報は、平たく全体の状況は取れるんですけども、実際に取れないのが、細かい統計、1件1件の取引の情報は取れるんですけども、統計情報とかそのリスク値ですね、また過去の犯罪に使われたとか、制裁リストに載っているとか、そういう情報は公開ツールでは取れませんでした。

 これは分析会社が持っているツールですとそこは情報が取れます。ただし、分析会社のツールも全体に統計を表すようなものではなくて、結局、目的が疑わしい取引が発生したときにどう検知するかというところに特化していますので、今回の調査では全体の傾向は取れませんでした。3段階目は専門家にリサーチをお願いして、Ethereum全体でVASPの取引が幾つですとか、アンホステッド・ウォレットの取引が幾つというのは、結局、リサーチャーの調査を経ないとデータが取れなかったというのがありますので、そこは報告書で詳細記載したいと思っておりますけども、今の状況としては以上が申し上げられます。

 もう一つ、分析会社のツールを2つ比較しておりまして、そこで分析会社ごとに、特定できているアカウントの数とかが違うことはある程度理解できていますので、今回の調査会社が得意なところと、ほかの会社が得意なところもあるようでして、そういうところは今回の調査でも一部見えてきたというのはあると思っております。

 以上です。

【横関メンバー】
 ありがとうございました。報告書を楽しみにしております。ありがとうございます。

【クニエ(櫻井)】
 ありがとうございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 あと栗田さん、何かもし御質問とか御発言があればお願いしたいのですが、いかがでしょうか。

【栗田メンバー】
 本日は大変勉強になりました。ありがとうございました。私から皆様がお話しなさっていない何か新しいことは言うことはなかなかできないですけれども、今のお話に続いてなのですが、3段階あるというお話でしたけれども、そういったことは非常に貴重なある種のノウハウだと思いますので、何か今後の活動の参考にしていけたらよいのかなと思っています。

 もう少し広く考えてみると、何か情報を得るために専門家に何か依頼するとかということも含めて様々なやり方があると思うのですけれども、どういうバリエーションが考えられるのか、それから、研究の目的のために情報を得るということではなくて、一般にどこまでどういった情報を取ることができて、それがどのような分析が可能なのかということについても、クニエ様にというよりは、この活動全体としてもう少し整理してみてもいいのかなと思いました。

 それから、もう少し広く捉えると、研究としても、もう少し広い意味での研究というものがあり得ると思って、最大限どういった形の研究が全体像としてあるのか、その中で今回の研究がどのような位置づけになるのか、その制約条件は何なのか、その制約条件というものが将来、何か実務的に大きな問題になる可能性があるのかとかについて、こちらもクニエ様にというよりも、我々としてもう少し整理をする必要があるのかと思いました。

 ちょっと皆さんのお話の繰り返し的なところも多かったと思うのですけれども、以上になります。最終的な報告書を大変楽しみにしています。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。大来さん、もしほかになければ本日はこのあたりとしてよろしゅうございますかね。

【大来信用制度参事官】
 はい。

【神田座長】
 まだお時間はございますので、もし追加での御質問や御発言があればぜひ承りたいと思いますけれども……どうも失礼しました。岩下先生、どうぞお願いいたします。

【岩下メンバー】
 3回目ですので、そっと出しという感じなのですけれども、今、幾つかの議論があって、このアプローチを暗号資産交換業者の監督上に使えるのではないかとか、マネーロンダリングの検知や、あるいは犯罪捜査等に使えるのではないかというお話があったと思います。

 まず、これについて私のコメントを申し上げさせて頂きますと、暗号資産交換業者が適切な健全な経営を行うことというのは非常に大事でありまして、そのために資金決済法に基づく様々な規制の手段がございます。金融庁さんは、かつて、例えば2018年ですかね、コインチェック事件というのが起こった後に暗号資産交換業者に大量の立入検査等を行って、様々な問題を指摘した、大量の業務改善命令を発出したという一連の動きがあったと思います。それによって大分クリーンになりましたし、情報を求めれば誠実に交換業者さんも対応してくださっておりますので、そういう意味で、日本の国内における暗号資産交換業者への規制は比較的うまくいっていると思います。

 ただ、今回のツールをそういう目的で使うことが有効かというと、結局、暗号資産交換業者が例えば当局に報告しないで別のアカウントを持っていて、そこで二重帳簿みたいなことをやっているとすれば、もしかしたらそれが見つけられるんじゃないかというふうに期待ができる部分があるかもしれませんけど、実際問題、それは非常に難しいと思います。どうしてかというと、税務署のやるような反面調査に類するようなことができるんじゃないかという期待ができなくはないんですけども、実際にそれをやろうとすると本当に砂浜の砂を1個1個寄り集めるような仕事をしなければいけませんので、あまり現実的ではない。しっかり業者さんに資料を提出して頂いて、業者さんに対する監督の中でそういう不正が行われないことを当局として担当していくというほうが、より効率的ではないかと思います。

 一方、マネーロンダリングとか、今度、一般のその砂粒側の人たちがやるやつというのがあるわけですね。取引所では多分実際に特定されないけれども、例えば今回の検査ツールの中でこの人は誰だということで、特に目立たないけれども、実はそれなりにたくさんのトランザクションを行っていて、それが例えば不正な送金を行うとか、ランサムウエア等で獲得した資金をどういうふうに使うみたいなことというのは、そういうことについての調査というのがこういうブロックチェーンのオンチェーン情報側から検索できないかという議論というのはあります。これは専用のツールがございまして、これは主に犯罪捜査等に使われているものが既にございます。今回、クニエさんがお使いになったのはそういったツールではなくて、どちらかというと暗号資産交換業者さんとかDeFiの業者さんがビジネス上お使いになっていらっしゃって、かつリスクの高い取引等が仮に発生したときに、それを検知するための自らのチェックのために使っているツールなので、このツールを使って犯罪捜査あるいはAML/CFT等を個々に発見していくと、警察の捜査あるいは暗号資産交換業者への監督の当局としての調査をやるというのは、このツールはちょっと難しいかなと思います。このツールはあくまでもビジネス用というか、投資家用のツールだと考えたほうがいいと思いますね。

 その上で、そのツールを上手に使って全体像を描き出して、今、一体、暗号資産全体のマーケットがどんな特性を持っているんだろうかということをブロックチェーンに記載された側からも見る。一方で暗号資産交換業者さん側からも見る。その両方でオンとオフを上手に組み合わせていって、全体像を何とか描き出すために使うのに有効ではないかと思います。その意味では、クニエさんの最終報告では、多分そういう全体像をどうやって現時点でどこまで解像度高く見えているかという部分について検証して頂くというのを期待したいと思うんですが、実際にそれを具体的な個別の案件の検知等に使うのであれば、それはまた別の目的でまたそういうことをやっている業者さんがおりますので、そちらとの協調というか、連動というか、そういう話になると思いますが、これは平場でやるのはちょっと難しいテーマかと思います。

 ただ、いずれにせよ、そういうことが、レグテックという話がさっき松尾先生からもありましたけれども、実際にテクノロジーを使ってレギュレーションを行いましょうという議論自体はそれなりに進んでいて、レギュレーションというのも特に犯罪捜査ですとか、あるいはAML/CFTの検知といった視点からの部分が多いわけですが、そのための技術というのもそれなりに進んでいるという部分については、若干そういう事実があるということを共有させて頂きたいと思って発言させて頂きました。

 私から以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 ほかにいかがでしょうか。特によろしゅうございますか。それでは、本日は、若干頂いている時間よりは早いかもしれませんけれども、この辺りとさせて頂ければと思います。

 皆様方には大変活発な御議論、御質問、御意見を頂きまして、誠にありがとうございました。

 本日頂きました御説明や皆様方からの御意見等を踏まえ、今後さらに議論を深めていきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。

 最後に、事務局から連絡事項等ございましたらお願いいたします。

【大来信用制度参事官】
 ありがとうございます。本日もありがとうございました。

 次回の研究会の日時につきましては、皆様の御都合を踏まえた上で、後日、事務局より御案内させて頂きます。よろしくお願いいたします。

【神田座長】
 ありがとうございました。

 それでは、以上をもちまして本日の研究会を終了とさせて頂きます。どうも長時間ありがとうございました。
 

 
(以 上)
 
 

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