「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」(第11回)議事録

  • 1.日時:

    令和5年6月6日(火曜)9時30分~11時30分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館 13階 共用第一特別会議室

「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」(第11回)
令和5年6月6日
  
【神田座長】
 おはようございます。時間より1分ぐらい早いかもしれませんけれども、皆様方おそろいでございますので、始めさせていただきたいと思います。

 デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会の第11回目の会合を開催させていただきます。皆様方には、大変お忙しいところを本日も御参加いただき誠にありがとうございます。

 本日の会合ですが、前回に引き続き、オンラインを併用した開催として、一般の傍聴はなし、そしてまた、メディア関係者の皆様方には、金融庁内の別室において傍聴していただくこととしております。

 そこで、本日でございますが、伝統的金融とブロックチェーンの関わりということで、セキュリティトークンを取り上げたいと思います。テーマに応じたオブサーバーとして、次の皆様方に御参加いただいております。

 全国銀行協会、日本資金決済業協会、日本証券業協会、日本暗号資産取引業協会、信託協会、日本STO協会、金融情報システムセンター、Fintech協会、新経済連盟、以上の方々でございます。

 それでは、早速ですが、議事に移らせていただきます。本日でございますけれども、セキュリティトークンに関する分野で活動をしておられる方々から、それぞれ御意見、御見解を伺いたいと思います。その後で、メンバーの皆様方との間で質疑応答等の時間をつくりたいと思います。

 本日は、参考人として、4人の方に御参加いただいております。御説明順に御紹介いたしますと、まず、日本STO協会の平田様でございます。平田さんには、セキュリティトークンに関わる最近の動向についてお話をいただきます。

 次に、BOOSTRYの佐々木様でございます。佐々木様からは、ブロックチェーンプラットフォームであるibet for finコンソーシアムの運営事務局及び開発を主導する立場から、当社の取組等についてお話をいただきます。

 そして、3人目が三菱UFJ信託銀行の齊藤様でございます。齊藤様からはブロックチェーンプラットフォームであるプログマの開発者としての立場から、当社の取組等についてお話をいただきます。

 最後に、4人目として大阪デジタルエクスチェンジの丸山様でございます。丸山様からはセキュリティトークンのセカンダリーマーケット構築を目指す立場から、当社の取組等について、お話をいただきます。

 4人の皆様方には大変お忙しいところ、本日御参加いただき誠にありがとうございます。御説明のお時間ですが、それぞれ10分から15分程度で御説明をいただけると大変ありがたく存じます。

 4人の方々に御説明をいただいて、全部済んだ後で、その御説明の内容等を踏まえて、メンバーの皆様方から御質問、御意見等をお出しいただくという順番で進めさせていただきます。

 本日のプレゼンテーションのテーマとして、資料1を用意しておりますので、適宜御参照いただければと思います。

 それでは、まず、最初に、日本STO協会の平田さんから資料2についての御説明をお願いいたします。平田さん、どうも本日はありがとうございます。よろしくお願いいたします。

【日本STO協会(平田)】
 日本STO協会の平田でございます。本日はこのような形でお話しさせていただく機会を頂戴いたしまして、ありがとうございます。

 私からは、神田座長のほうからお話がございましたとおり、最近のセキュリティトークンに関する状況について、法律の規制等々も踏まえまして、お話をさせていただければと思っております。

 まず、資料1ページ目をお願いいたします。御承知のとおり、セキュリティトークン(以下「ST」といいます。)という言葉でございますが、明確に定義されているわけではなく、基本的には有価証券とみなされる権利のうち、トークンに表示された財産的価値を分散型台帳技術を用いて取引等を行うものという形で、一般的には定義をされているところでございます。これも皆さん非常によく御存じなので、改めて私が説明するまででもありませんが、過去ICOの詐欺的な被害が多数あったことを受けまして、2020年5月に「情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律」が施行されまして、この中で金融商品取引法(以下「金商法」といいます。)の改正が行われております。その際の金商法の改正におきまして、STの取扱いが明確化されたところでございます。

 御存じのとおり、もともとトークンと呼ばれるものには、様々な種類のトークンがございまして、例えば暗号資産もそうですし、ステーブルコインもそうですし、それから、ユーティリティトークンもそうですけれども、特にSTに関しましては、一般的には、当該事業から発生した利益を分配する、その利益分配がある権利をトークン化したものが有価証券に該当するとされ、STだと整理されているところでございますが、金商法上は、「電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的な価値」という形で定義がされているところでございます。

 そもそも金商法本法のほうでは、もともとの信託受益権ですとか、集団投資スキームと言われている見なし有価証券をトークンにしたものに関して、「電子記録移転権利」という形で定義がされています。さらに、従来の伝統的な株式だとか債券なども含めて、全体的なSTに関しまして、府令のほうで、「電子記録移転有価証券表示権利等」という形で定義がされているという体系になってございます。

 したがって、電子記録移転有価証券表示権利等の中には、いわゆる従来型の、1項有価証券と呼ばれている伝統的な株式、社債、あるいは投資信託等をSTにしたものがあります。これを我々は「トークン化有価証券」と呼んでおります。また、トークン化した集団投資スキーム等々の見なし有価証券に関して、「電子記録移転権利」という形で定義が行われております。さらに、トークン化したみなし有価証券を特定の者に販売し、技術的に特定の者以外に移転できない措置を講じることによって流動性が確保できないようにしたものに関しては、「適用除外電子記録権利」という形で定義が行われております。

 いわゆる広義のSTの中には、この範囲に入らないものもございまして、例えば金商法の取扱いで、帳簿の書換えと権利の移転が一連として行われることを電子記録移転権利の条件にしていることから、例えばトークンの発行は行われますけれども、帳簿等の書換えはブロックチェーンを使わずに行うようなものに関しては、金商法の電子記録移転有価証券表示権利等の対象にはならないこととされております。また、不動産特定共同事業法(以下「不特法」といいます。)で規定されている不動産特定共同事業契約に基づく権利の持分の一部に関しましては、そもそも金商法上の有価証券の対象からは除かれているので、これに基づく、トークンが発行されると、これは金商法の規制対象になっていないトークンという位置付けとなるわけでございます。

 不特法のSTに関しましては、現在、国会に金商法改正案が提出されておりまして、御審議をいただいておりますので、将来的には、金商法の対象になるものと認識しているところでございます。

 2ページ目をお願いいたします。今、駆け足でお話をさせていただきました電子記録移転有価証券表示権利等の中に3つの区分があるということでございますが、もともと伝統的な株式だとか社債に関しましては、トークン化された有価証券表示権利ということで、トークン化有価証券と呼んでおりますが、これは金商法2条1項に規定する、いわゆる1項有価証券、つまり従来的な有価証券をトークン化したものであることから、規制に関しましても従来の1項有価証券とは変わりなく開示規制や取引規制が課されており、これを取扱うことができる金融商品取引業者(以下「金商業者」といいます。)に関しましては、第1種金商業者という形になっております。トークン化有価証券の自主規制は、日本証券業協会が従来の1項有価証券と同じベースで規制をしているという形になってございます。

 従来、集団投資スキーム等の2項有価証券、つまり流動性がそれほどないであろうということで、1項有価証券よりも若干規制が緩やかなみなし有価証券がトークン化された電子記録移転権利は、トークン化されブロックチェーンで移転が行われることに伴って流動性が増すのではないかということが議論されましたので、1項有価証券と同様の規制を課す必要があるということで、金商法上は1項有価証券として取り扱うということになりまして、図に示したとおり、2項有価証券だったみなし有価証券をトークン化した電子記録移転権利が1項有価証券に移行している形になっております。したがって、それを取り扱う業者に関しましても、第1種金商業者でないと取り扱えないということで変更が行われております。

 また、適用除外電子記録移転権利に関しましては、特定の特定投資家等に販売するなどの取得者制限や譲渡制限を技術的に行い、流動性が確保できないような形の措置が行われるということが求められておりますので、従来の2項有価証券と同様ということで規制がされておりまして、これを取り扱う金商業者に関しましても、第2種金商業者のままでいいという形になっております。

 3ページ目でございますが、STの基本的なスキームをお示ししております。こちらも皆さん非常によく御存じだと思いますが、真ん中に、STのプラットフォームがありまして、ブロックチェーンで権利の移転が行われるという形になるわけですが、例えば、暗号資産等々と大きく違うのは、基本、STの売買約定自体はブロックチェーンの外で行われております。後ほどODXの丸山さんからもお話があると思いますが、PTSだとか、あるいは金商業者が顧客との取引をする際には、プラットフォーム外で取引をするという形になっておりまして、その売買約定データをブロックチェーンのほうに送信して、ブロックチェーンで権利の移転を行うという形になってございます。

 それから、資金決済等に関しましては、従来と同様の伝統的な資金決済方法が現状においては行われるという形になってございますが、ここの部分はいろいろイノベーションが加わってくる話でありまして、三菱UFJ信託銀行の齊藤さんからもお話があると思いますが、例えばステーブルコインを利用して資金決済を行うことで、いわゆる証券と資金の流れを一体化するというような動きも出てきております。有価証券の取引においてブロックチェーンの仕組みを利用するメリットということですが、4ページ目をお願いいたします。

 よく言われている話としては、DLT、分散型の仕組みを利用することによりまして、非常に効率的に取引を実施しコストの逓減に資するということがございます。それからブロックチェーンのいわゆる改ざんができないという仕組みを利用することによって、投資者保護というのが図れるということ。さらにブロックチェーンを利用することによりまして、証券会社、あるいは金融機関自体のDX化が進むことによって、従来なかなか小口化できなかった商品というのを小口化しやすい環境ができてくるということが言えるのではないかと。STだから小口化ということではないという話は多分、BOOSTRYの佐々木さんからもお話があると思いますけれども、ある意味、小口化しやすい環境がSTの場合は確保しやすいということかなと思います。

 また、ブロックチェーンが持っていますスマートコントラクトという機能を使いましてさまざまな取引条件を指定したり、事務処理などが自動化できますし、従来の、例えば上場株券だとか振替債等々に関しましては、証券保管振替機構で名簿管理が行われるので、直接的に発行会社がその状況を知るというのが難しいという状況があるわけでありますが、ブロックチェーンですと、誰がどのぐらいの数量の有価証券を保有しているのかという情報が、瞬時に発行会社等にも提供ができるということで、投資家、あるいは株主等々と非常に密接な、ダイレクトなつながりというのが持てるというメリットがあります。また、STと同じプラットフォーム基盤を利用することによって、様々なユーティリティトークン、暗号資産の付与みたいな非金銭リターンのファンサービスのようなことも併せて、投資者へサービスとして提供ができるというメリットがあると言われているところでございます。

 5ページ目を御覧いただきたいと思いますが、では、STですが、金商法上、どのような規制が課されているかということでございます。トークン化有価証券と電子記録移転権利は第1種業の対象ということになっておりますので、従来の株式だとか債券だとかと同じ規制が基本的には課されるということになってございます。そして、適用除外電子記録移転権利に関しましては、こちらは2項有価証券なので、トークン化したとしても、従来の集団投資スキームと同じ第2種業の規制がかかるという形になっているということでございます。したがって、一番大きく変わったのは、2項有価証券であったみなし有価証券をトークン化して、いわゆるSTにした電子記録移転権利は第1種業という取扱いになり、様々な規制がかかるという形になっているということでございます。

 6ページ目でございますが、さらに、STだからということで上乗せになっている規制というのが幾つかございまして、STの特性というものをきちんと投資家に知らしめるという必要があろうということで、例えば適合性の原則、広告の取扱い、それから契約締結前交付書面等々に関しましても、STであるリスク、特性等を注意喚起するような規制というのが上乗せの規制として加わっているところでございます。

 7ページ目でございますが、一番重要な規制としましては、分別管理がございます。資金の分別管理に関しましては、これは1項有価証券の規制と同じでありまして、顧客資産に関しては、自己の資産と分別して信託銀行に信託する等の方法で管理するという規制が課されております。有価証券に関しましては、トークンという形になっているわけなので、これが流出しないようにする必要がございます。暗号資産で起こっている問題を見ると明らかですが、トークンの移転を行うために必要となります秘密鍵をいかに流出しないように保管するのかというのが一番重要となります。

 そのため、暗号資産とは若干違うところがありますが、基本、トークンの分別管理に関しましては、顧客の秘密鍵を、常時インターネットに接続していない電子機器等において、これをいわゆるコールドウォレットと呼んでおりますが、それに記録して保存する方法、あるいはそれと同等の技術的安全措置を講じて管理する方法で保管しなければいけないということになってございます。現在、お客さんに直接ウォレットをお渡しして管理をしてもらうという形のSTは発行されておらず、基本的には金商業者が預託を受け全て管理をする、あるいは金商業者がさらにプラットフォーマーだとか信託銀行等に預託をするという形で管理がされているところでございます。

 8ページ目を御覧いただければと思いますが、その他に、幾つか我々のほうで自主規制を課させていただいているものがございまして、電子記録移転有価証券表示権利等全体に関しましては、日証協とSTO協会で協調して自主規制を課しております。私も日本証券業協会の出身ということもございまして、今、日証協とは、STの自主規制に関する事項に関し非常に連携を密にさせていただいておりますが、その中で重要なのは、このページの真ん中に記載しておりますとおり、STプラットフォームのモニタリング等を行っているということだと思います。これが従来の有価証券の自主規制と違うところでありまして、金商業者がSTを取り扱う場合については、当該STを取り扱うプラットフォーム、ブロックチェーン基盤がきちんとしたものであるかどうかについて、金商業者が適切に把握しているか、管理しているかという点についてモニタリングをさせていただいております。

 9ページ目でございます。STのセカンダリーの状況はどのようになっているのかということですが、現在、御高承のとおり、証券取引所がSTを取り扱っているということはございません。逆に言いますと、STに関しましては、既に出来上がっております上場株式の取引を行う各種のプラットフォーム、取引所の売買システムだとか、あるいは証券保管振替機構とかについては、これに代替するものとしてSTを利用するというインセンティブというのはございません。むしろ、上場株券のような取引ファシリティーのない非上場有価証券の取引と親和性があり、そのような取引のための仕組みとして使うということが主流となると想定されておりますので、上場有価証券と横並びの市場が開設されているということはなく、また、これを開設しようというのはかなりハードルが高いということだろうと考えております。

 一方で、取引のプラットフォームとして考えられるのは、PTSを使うということだと思います。この辺は、後ほど大阪デジタルエクスチェンジの丸山さんから詳しくお話があると思いますが、PTSという単独の取引プラットフォームを提供する業者さんが、そこで専門的にSTの取引を行うということが考えられます。

 ただ、現状は、償還期間が短くロットも小さ目の不動産ファンドが中心ということもございまして、なかなか流通性が確保できるような商品というのは少ないことから、金商業者における店頭取引がメインという形になっています。御存じのとおり、電子情報処理組織、いわゆるシステム上で売買が行われるということになりますので、これをそのまま金商業者の店頭で行ってしまうと、PTSに該当してしまうということがありますので、金商業者が一旦売却を希望する顧客から買い取って、将来的に購入を希望する顧客に売却をするという形の店頭取引というのが一般的になっております。本来、金商業者の店頭において顧客同士の注文をシステム上でマッチングするような仕組みを店頭取引として行えると非常に合理的かつ効率的な取引を行うことができるのですが、PTS規制がハードルとなり、なかなか難しい状況にあります。

 10ページ目のところでございますが、一番下のところに、昨年の6月に金融審の市場ワーキング・グループにおいて中間整理を発表していただきました。ワーキング・グループでは、本協会からも金商業者が店頭で取引をする際のPTSの該当性という問題についていろいろお話しさせていただきましたが、その結果として、PTS認可の審査の柔軟性、あるいは迅速化をご検討いただけることになっております。それにより、金商業者が店頭で取引をする際においてもPTSとして取引しやすい環境整備を行っていただけるものと認識しており、近々、金融商品取引業者向けの総合的な監督指針の改正等が行われるということを期待したいと思っております。

また、大阪デジタルエクスチェンジをはじめとする、いわゆる専門的なPTSが適切な取引を行うために、市場制度ワーキングの中間整理の中では、自主規制機関において、自主ルールを策定する旨の提言が行われ、現在、日証協と合同で、この制度の整備を行っております。既に非上場有価証券のPTS取引に関する自主規制規則の制定についてパブリックコメントを募集させていただいておりまして、近々、提出された意見を踏まえまして、規則を施行させていただきたいと思います。

 それから、11ページ目以降に最近の発行状況を取りまとめさせていただいております。現在、STは非上場の有価証券として発行されているところでございます。11ページ目の一番上には株式を掲げてございますが、すべて実証実験的に行われたものでございまして、ほとんど情報もない状況でございます。今のところ、我々が把握しているものは3件でございます。

 次に社債でございますが、先ほどもお話ししましたように、現在社債発行については振替債が一般的になっており、既に電子化されているということもあり、あまりこれをSTに置き換えるというインセンティブは強くないのですが、一方で、特殊な性格を持った社債がSTとして利用される状況にあります。後ほど若干、具体的に触れさせていただきたいと思います。

 今、主流となっているのは不動産のSTでございまして、受益証券発行信託という、従来、DR発行の際に使われてきた手法が中心に用いられております。信託受益権を信託銀行に預託しまして、受益証券を発行するという、もともと1項有価証券である有価証券の発行が主流を占めているというような状況となってございます。

 また、それ以外に電子記録移転権利の中では、合同会社に信託受益権を保有させまして、そのエクイティー部分として、匿名組合の出資持分を発行するというGK-TKと呼ばれる、既存の不動産ファンドでは比較的一般的な手法も利用されております。

 さらに、適用除外電子記録移転権利が既に発行されておりまして、これは投資事業有限責任組合、LPSをトークン化したものという形になってございます。

 12ページから13ページにかけまして、ST社債の発行状況について記載がございます。これら発行された社債の特色を見ますと、特記事項のところで赤枠で囲ってあるところを御覧いただきますと、投資家とのリレーションシップを強化しようですとか、あるいは自分たちの特定の会員に対して様々なサービスを提供しようとか、あるいは日本取引所グループが発行しております、グリーン・デジタル・トラッキングボンドのように、環境データをトークン化して投資家へ開示するという非常に特殊なケースとして、ST社債が発行されているという特色をご覧いただけるかと存じます。

 それから、13ページ目、14ページ目、そして15ページ目に受益証券発行信託のSTを記載してございます。今のところ10件発行されておりまして、今3件、有価証券届出書が出され募集が開始されておりますが、これも原資産の欄を赤枠で囲んでおりますとおり、具体的にどの不動産に投資をするファンドなのかということが明確になっている、この辺がREITと大きく違うところでありますけれども、特定のレジデンス、あるいは物流センター、あるいは温泉の施設等々に投資をするようなファンドというものが発行されているというものでございます。規模的には、20億円程度というものが多かったのですが、昨年、70億円近いものも発行されてきておりまして、償還期限としては5年から7年のもの、利回りとしても3%を超えるようなものが出てきているということで、結構人気を博しているところでございます。

 16ページ目ですが、匿名組合の出資持分、GK-TKと呼ばれているものも3本ほど、出てきている状況でございます。投資家にとってみるとファンドの経済的な性格は、ほぼ受益証券発行信託と同じでございますが、組成の仕組みとして若干の違いがあるということでございます。

 16ページ目の下段部分では、適用除外電子記録移転権利を掲げておりますが、本件は、投資事業責任有限組合の有限責任組合員としての出資持分のSTということで、これは私募REITをパッケージにしたファンドでございます。適用除外電子記録移転権利でありますから、特定投資家等に、私募の形で販売が行われて、基本は流通しないというものという形になっているものでございます。

 これら、今まで発行されたSTに関しましては、17ページにございますとおり、5つのプラットフォームが利用されております。本日、これからお話があります、BOOSTRYさんが開発したibet for Fin、それから、三菱UFJ信託銀行さんが開発をしたProgmatが主流で使われておりますけども、それ以外にも、アメリカのSecuritizeという会社が日本法人をつくりサービスを提供しているSecuritizeの仕組みを使ったもの。

 それから、シンガポールにADDXという同国で金商業者も兼ねているプラットフォームがあるわけですが、こちらを利用しているような案件もあります。ADDXは非常に特殊でございまして、プラットフォームの提供に加え、PTSと同様の取引のプラットフォーム機能も提供しているということですので、日本国内での取引をこちらのADDXに発注することによって取引も完結するという仕組みになっております。そして、一番新しいのが、Hash DasH Chainという、これは新興の第一種金商業者であるHash DasHの系列会社が開発をしたものでございまして、こちらが使われる予定となっております。

 ちょっと時間がオーバーしておりますが、その他の課題としましては、どちらかというと、電子記録移転権利のほうに幾つか大きな問題がありまして、税制の問題ですとか、あるいは19ページのところを御覧いただきますと、第三者対抗要件の問題がございます。そもそも電子記録移転権利においては、権利の移転に係る第三者対抗要件に関して、確定日付の入った紙の証書を公証役場に取りに行かなければいけないこととされております。ブロックチェーンで権利は移転するにもかかわらず、第三者対抗要件を備えるためには「紙」の証書をわざわざ取り行かなければいけないというような状況になっているわけです。既に産業競争力強化法で手当てをしていただいておりまして、BOOSTRYさん、三菱UFJ信託さんをはじめとして、既に数社が、こちらのサンドボックス制度を利用して実証実験を行っていただいている状況でございます。

 それ以外にも幾つか小さな問題ありますが、今後の課題としては、魅力のある商品開発をいかにしていくのかということ、投資家への認知の向上をどうやって図っていくのかという、20ページに記載した問題というのが幾つかございます。このようなことで、現在2020年からスタートしまだ3年しかたっていないわけでありますが、STの発行が徐々に増え、市場が拡大してきているというような状況となっているというところでございます。

 すいません、時間をオーバーしてしまいましたが、私からは以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして、BOOSTRYの佐々木様から資料3についてお話をしていただきます。佐々木さん、どうぞよろしくお願いいたします。

【BOOSTRY(佐々木)】
 BOOSTRY、佐々木です。本日はどうもよろしくお願いいたします。

 では、早速ですけども、2ページ目をお願いします。弊社、こちら概要ですけども、ミッションとしまして、「すべての権利のデジタル化」というのを掲げておりまして、本日のお話であるセキュリティトークン、それ以外の権利についても、トークン化できるようにということを取り組んでいる会社になっております。

 出資比率、御覧いただければと思いますけども、野村ホールディングス、NRI、SBIホールディングス、日本取引所グループという4社の合弁会社でやっておりまして、資本としては、この4社からの完全出資形態で取り組んでおります。

 次に、4ページ目ですけども、弊社のサービスの内容ですが、弊社の位置づけとしましては、ITベンダーの役割をやっております。よくコンソーシアム、もしくはブロックチェーンのプラットフォーマーというお話があるんですけども、プラットフォームというのは、弊社の場合はコンソーシアムになっていますので、弊社自体は、あくまでITベンダーの位置づけになっております。よく申しているのは、普通の資本市場におけるNRIさんのような位置づけということで、取引所様でありますとか保振様にデータを流すときに、NRI様のサービスを使っている部分はあると思うんですけども、このようなITベンダーの位置づけが我々となっていまして、その先のいわゆる保振機能等については、これはコンソーシアムの保有基盤のような位置づけの事業になっております。

 そのほか、ITベンダーということ以外は、ibet for Finの事務局でありますとか、OSS開発の支援等を、これは無償の立てつけになりますけれども、やっております。また、先ほど協会様からのほうから言及がありましたけども、確定日付のデジタル化というのを実用化に向けて動いているということでありますとか、もしくは、PTS取引、セキュリティトークンのPTS取引におけるポストトレードの機能の整備というのをやっていたりしております。こちらも証券会社様が、取引所ができても実際のシステム対応ができないと全く機能しないというのがございますので、その辺りのところをITベンダーとして支援しているというものになっております。あと、各種のデジタル通貨のプロジェクトというものにも参加しているということをやっております。

 次に、5ページ目ですけれども、取り組んでいる案件になっております。こちらはいわゆる法改正を行う前から、ブロックチェーン上での有価証券取扱いということを試しておりまして、個人向けの社債、もしくは、証券化商品、非上場株、ホールセール、プロ向けの社債、あとは、先ほどの適用除外の私募の不動産STというものも含めてやっておりますし、有価証券以外の件についても、ポイントとかチケットとか会員権というものをそれぞれ扱っているというものになっております。

 その中で、6ページ目、弊社のほうで取り扱ったホールセール債においての弊社の役割ということを、こちら書いております。発行者様と投資家様、それぞれ、発行代理人でありますとか証券会社さん経由して、ブロックチェーンにアクセスしていくというものになっていますけども、ブロックチェーンにアクセスする際のツールを各社様で開発するというのが難しい部分がありますので、弊社のサービスとして御提供しているものになっております。加えて、こちらESG債だったんですけども、COの削減量のデータもブロックチェーンに記録するということで、将来、その削減量に応じて、例えば金利が変動するとか、そういうものもつくり得るということを想定した設定をしております。

 このようにブロックチェーンにアクセスするところを提供するというのが我々のサービスのポイントになっていまして、実はibet for Fin以外のブロックチェーンについても、そのようなアクセスするツールというのをITベンダーとして御提供しているというのが特徴になっております。

 次のページをお願いいたします。こちら、私募のSTということで書いていますけども、法律的には、適用除外電子記録移転権利の取扱いということで、先ほど協会様から、こちらも御説明ありましたけども、2項有価証券と同じように扱えるというのがメリットになっております。そのための条件としまして、投資家を一定の富裕層でありますとか法人、プロじゃなくて一定の事業法人様等に絞るというのがあるんですけれども、そういう投資家を限定することによって、ST化しても、2項有価証券のままの開示規制でありますとか、募集の規制ということが設けられるものになりますので、いわゆるコストの面で非常に有利な発行だったり管理ができるというところになっております。なので、このような形もそれぞれ支援しているということでございます。

 次、8ページ目をお願いいたします。こちら、ibet for Finコンソーシアムの御紹介です。特徴としましては、先ほど、これも協会様のほうからコンソーシアム型ということで御紹介ありましたけども、特徴として、独占的な組織がいないSTを扱う基盤ということが挙げられます。具体的には、こちら利用自体は、コンソーシアムで今無償というのが書かれております。

 ですので、接続するシステムというのは各社様で御用意いただければ、費用自体、何か例えばBOOSTRY社とか、もしくは第三者の方に費用を払う必要はなく、各金融機関様で御利用いただけるというものになっております。なので、実際、現在も共同運営の企業様の中では、弊社のサービスを一切使わずに、独自でシステム開発されて使われているということもございます。なので、この場合には弊社との契約関係はなく、コンソーシアムの参加自体は必須になりますけれども、それ以降の何かしらの特定の組織に費用を支払うということはなく御利用いただけるような仕組みになっております。

 また、コンソーシアムにおいては、各社様の役割、もしくは参加する企業の許可というもの、これを1社1票の投票で変更、もしくは参加者の認可というのを決めているという形になっております。こちらもBOOSTRY社が特定の権限を持っているわけではなくて、むしろ我々自体は、投票権はなくて、皆様、共同運営の会社様の中でこちらを決めていくという形態を取っております。

 あと、開発につきましても、先ほど弊社を使わずに接続されている方がいるというとおり、自社開発でありますとか、新商品の設計、投入というのも、これはコンソーシアムのルールに合っていれば自由な設計になりますので、このような形でいろいろなサービスを各社様で工夫してやりながらできるというのが特徴となっております。

 次に、10ページにお進みいただければと思います。国内外の動向で、まず、こちらは国内のところですけども、先ほど詳細に御説明があったので省きますけども、基本的な特徴というところで一言書いておりますが、様々な商品が国内では試されているということだと思っています。中でも個人向けの公募というのが非常に多いというのが、日本における特徴なんだと思っております。

 11ページ目をお願いいたします。こちらは海外、上のほうは債券だけをピックアップして載せていますけども、特徴としましては同じかと思っています。ほかのプロダクトでも同じだと思っていますけれども、発行、管理プロセスの全体のDXを試行されている事例というのが多いかと思っております。ユーロクリア様とか、市場においての有力なプレーヤーが発行、管理のプロセス全体のDXというのを位置づけて取り組まれているというところでございますし、また、参加されている投資家様というのも、従来から資本市場に参加されている方というのが多いかと思いますので、プロ向けでありますとか、私募、一定の方々向けという意味ですけども、そういう商品設計をつくられて、DXを推進するという動きというのが海外では見られていると思っております。

 次のページをお願いいたします。それを踏まえて、3つの将来像と書いていますけれども、こちらが弊社のほうで考えていますセキュリティトークン、国内外の動向を踏まえて、どのような発展をしていくのかなということで考えているものになりますけれども、将来像はこの順番で徐々に拡張していくのではないかなと見ております。

 1つは私募市場のDX、そして次に、資本市場のDX、さらには、分散型金融というような流れを描くのかなと思っていまして、まず、私募市場のDXというとこで見ますと、国内、先ほどお話ししたとおり、公募の個人向けというのが非常に多いマーケットではあるんですけれども、私募市場のところの面白い点としましては、従来、国内で一切DXが進んでいない領域だったと思っていて、一方で、米国で見られると、私募の市場のポテンシャルというのは非常にあるとも見られますので、当然国内、米国市場が違うというのはありますけれども、DXが進んでいなかったという観点で言うと、私募市場、国内において非常に発展する可能性というのを感じております。実際、弊社のほうでも、お客様のほうから、弊社のほうにこの辺のお話、取組というのが幾つか寄せられておりますので、市場関係者としても御関心が強い領域だと思っております。

 その次が、資本市場のDXと書いておりますけども、発行、流通、期中管理全体のDXの取組というのが今後、進むであろうと思っています。それは、海外の優良プレーヤーを含めたプレーヤーも試行されているところかもしれませんけども、当然、ブロックチェーンでできるのは、あくまで権利者の台帳機能となっていますけれども、資本市場全体で見ますと、契約管理とかキャッシュ払い、もしくは、投資家とのやり取りのところを含めた全てのプロセスが重要になりますので、特定のブロックチェーン機能だけじゃない、全体のサービスというのが拡張していく必要があろうかと思っています。

 その結果として、コスト低減もそうですし、少額、短期、高頻度の発行みたいな従来と利用シーンが異なるような取組になるかなと思っていますので、そういった資本市場の活用シーンの拡大、いわゆる、資本市場のパイの取り合いではなくて、資本市場のパイが大きくなるような取組になるんじゃないかと思っております。

 最後は、分散型金融と書いていますけれども、資本市場のDXがさらに進んだ状態としまして、資本市場の機能、金融機関様の機能を、一部分散型金融と呼ばれているようなブロックチェーン上で実装するような、もしくはブロックチェーンの外のサービスと連携しながら進めるような世界観になるんじゃないかなと思いますので、そうしてくると、商品とか自由度というのはどんどん上がってくると思っております。

 次のページをお願いいたします。私募市場のDXのイメージということで、先ほどお話した、みずほ証券様が取り組まれていた案件ですけども、適用除外という私募となっております。こちら、従来、私募商品ですと、店頭でセールスが、直接投資家様とやり取りしながら、期中もやり取りしながらやる、いろいろアナログのプロセスが主流だったというところですけども、こちらをデジタルに置き換えるということをされていまして、そのチャネルだけではなくて、商品組成なども、システム間連携できているというところを踏まえて、私募全体のDX化を担うための、まず、コア機能というのが今回実装されたのかなというところで、これが発展すると、私募市場のDX化がより推進できるような状態になるのかなと見ております。

 次のページをお願いいたします。こちらは資本市場のDXということで書いております。事例でいうと、先ほどのホールセール債の日本取引所グループ様の社債のところですけども、一部、外の発電施設からのIoTデータというのをブロックチェーンに記録するということをやっておりまして、こういう形で、従来であれば、例えばマニュアルで、削減量のデータというのを管理して、トリガーにヒットしているか、していないかみたいなことをマニュアル管理されていたものを連携することでデジタル化できるという、こちら事例になっていますけれども、同じような話が、拡大していきますと、右にあるような、発行企業様が生成型AIみたいなものを作成して、契約書とか様々なものが自動で作成して、ブロックチェーンから資金調達の完了までできるようなものにつながるのかなと思っていますので、ここの資本市場のDXというのが非常に大きなポイントになりますので、これに必要なサービスというのが整うというのが、資本市場のDXとして、今後やれるのかなと思っております。

 次、15ページ目をお願いいたします。最後、分散型金融のイメージですけども、こちらは様々なサービスが連携し合うことによって、資本市場が分散型金融に近い形になるのかなと思っています。当然、その中で金融機関様の果たす役割というのがございますので、こういうサービスを組み合わせて、発行企業様、もしくは投資家様が自由にサービスを使って、安全安心な市場というのが形成される余地があるのかなと思っております。

 次、16ページをお願いいたします。こちらはブロックチェーンの違いということで、パブリック、コンソーシアム、プライベートと書いております。パブリックチェーンのところにつきましては、暗号資産で見られているような活用というのがメインですけども、Securitize様で、米国で取り組まれているような事例というのがそれに該当するのかなと思っております。

 弊社のほうでコンソーシアム、この中で選んでいるというのは、先ほどのような独占する組織がいると、サービスがどんどん拡張していかないと思っております。これはBOOSTRY社の提供している機能も含めて、置き換えるようなサービスが出てきて、弊社がより安くよりよいものをつくっていかなきゃいけないというプレッシャーがかけられる必要があると思っていますので、こう言う観点で、弊社の事業というより、資本市場としては、コンソーシアム型、もしくはパブリックのようなものが必要なんじゃないかと考えたのが、ブロックチェーンとの比較での違いだと思っています。

 また、パブリックのところで、どうしてもガス代と呼ばれているコストのところが、ブロックチェーンのときに必要になりますけども、この辺の業界のコンソーシアムにおいては、利用が無償というのが現状でもワークしていますので、このような形が、存続し得るんじゃないかなと思っていますので、現状ではコンソーシアムの形が、パブリックのメリットも生かしつつ、より安いものがつくれるという意味でいいのかなと位置づけております。

 次、18ページ目にお願いいたします。その中でSTにおける認識のギャップということで、よく言われていることとのギャップですけども、先ほど協会様から小口化が可能になったというお話もありましたけども、トークン化の技術だけで何かこれが変わった話ではないということでございます。従来から、例えば社債でも1万円からの購入というのは、発行自体はされていたんですけれども、実際には、取り扱われる証券会社様のほうで、その単位で販売することのコストの話がどうしても出てきてしまっていたということになりますので、それがブロックチェーンだけでは解決せず、販売するツールでありますとか、それを管理するものでありますとか、もしくは流通する、端数が残ったときに流通市場のものも含めて整理する必要がありますので、そういう全体のDXが進んだときの話だと思っています。

 次に、複雑な商品が個人向けに提供できるということも言われたところでありますけども、こちらもトークン化技術だけの話ではないと思っています。というのも、今も見られている証券化商品、かなり複雑な、開示資料を見ても個人の方が分かりづらい商品というのがどうしても出てきてしまっているので、これがトークン化しても分かりづらさというのは変わらないということでございますので、例えば投資家を限定している私募の形態にしたりとか、もしくは公募で、情報の提供形態を工夫するような、そういう金融機関さんにおいて、そういうものが可能になるということで、ブロックチェーンのトークン化で何かが変わる領域ではなくて、ほかの技術でカバーすることだというところでございます。これは、そういう意味でST化だけじゃない話としてあるかなと思っています。

 あと、パブリックチェーンでないと意味がないというような話も一部出ますけれども、これも独占企業がいないコンソーシアムであれば、同等以上のメリットがあるというのは先ほどの話のとおりかなと思っています。なので、逆にパブリックチェーンでも、レイヤー2を使ってとか、特定の企業様が実施するサービス提供するようなものであれば、そのメリットが出ないというのもありますので、この辺はコンソーシアムのほうがやりやすいのかなと思っております。

 流通市場というのが、取引所があればいいという話も一部ありますけども、ブロックチェーンのよさというのが、特定の仲介者がいなくても権利が正しく移転できるようなところだと思っていますので、取引所の取引が必要な商品というのもありますけれども、一方で、流動性が低い商品に関しましては、従来どおり、店頭取引でありますとか業者間取引というのが非常に重要になりますので、それがデジタル化できる仕組みだったり、規制というのが非常に重要だと考えております。

 また、発展にはデジタル通貨が必要という話も一部ありますけども、これもデジタル通貨に限らず、資金決済手段とブロックチェーンの権利の連動ができれば同じことになりますので、逆に、新しい決済手段を用意することで、取り扱われる金融機関様でありますとか、個人のコスト負担が二重になる可能性もありますので、その辺は、全体的なコスト最適化の話は必要なのかなと思っています。

 次のページをお願いいたします。最後、課題と必要な取組でありますけども、金融機関様の業務、もしくはシステム対応が非常に重要になってくるというのは当然のことになっています。その中では、先ほど協会様から御指摘あったような、魅力的な商品、既存の商品というよりは、よりSTならではの商品というのが出てくる必要というのがあると思っていて、結果的に、金融機関様が業務でありますとかシステムの更新というのが見合ってくるというのが、非常に大きなポイントだと思っています。

 また、中央集権や非ネット用の規制と書きましたけども、こちらは意図しているところとしましては、これも協会様から御指摘ありましたけども、PTSの規制のところが非常に大きいかなと思っています。どうしても流動性が低い商品の中で、店頭取引とか業者間取引というのが非常に重要なキーになるところがあるんですけども、ここをデジタル化すると、全てPTSになるということになってしまうと、ブロックチェーンのよさが生きないということになりますので、その辺の従来と違う前提で、また情報開示とか投資家保護の観点というのはちゃんと満たす仕組みというのが、技術的にも、業務的にもできるんじゃないかと思っていますので、こういう観点は、ST独自の価値みたいな、先ほどお示ししたような将来像というのを業界で共有しながら、官民で取り組むというのが非常に重要なのかなと見ているところでございます。

 弊社からの御説明は以上になります。よろしくお願いいたします。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして、三菱UFJ信託銀行の齊藤様から資料4についてお話をしていただきます。齊藤さん、どうぞ、よろしくお願いいたします。

【三菱UFJ信託銀行(齊藤)】
 御説明いたします。時間は15分ぐらいだと思いますので、ちょっと駆け足で御説明させていただきます。

 次のスライドをお願いします。今まで御説明いただいたところとかぶる部分は飛ばしながら先に進めたいと思います。

 次のスライドをお願いします。3ページ目です。まず、我々の位置づけというところですけども、今日、御参加いただいている皆様も含めて、口頭だけで見ていると立ち位置が分かりづらいので、改めましてまとめたものですけれども、よく具体的な商品を提供される方としてお名前が出る三井物産さんとかケネディクスさんというのは左の発行体、あるいはアセットマネージャーという形で入っておりまして、アセットバック型とか、あるいは社債であれば、社債の原簿管理、そういったところは我々、三菱UFJ信託銀行とか、ほかの信託銀行さんとか金融機関さんがやられているということです。右の投資家サイドの仲介者の立場では、野村さん、SBIさんを筆頭に、各種伝統的な証券会社さんが結構、入られてきて、直近ですと、三井物産さんがAM兼証券会社として、販売まで引き継ぐという話も出てきているというところです。

 MUTBとしては、左の原簿管理者の立場と、あとは真ん中のSTのインフラをつくるというところ、あと、下の先ほど来、何度か出ている、決済の基盤としてのステーブルコインの基盤というところを合わせて提供しているという形でございます。この後のODXは真ん中のセカンダリーの取引の場の1つというところです。

 次のスライドをお願いします。Progmatについて、左にありますとおり、今日お話ししているセキュリティトークンに加えまして、そこで、どうしても附帯した権利も合わせて表記したいみたいなニーズが強いので、そういったところを中心に、ユーティリティーも付すということができたりとか、あとは、決済のところについて、ほかのデジタル通貨の取組を、基本的には最初待っていたのですけれども、なかなか遅々として進まないところもございますので、こういった法律の流れもあって、ステーブルコインについても、我々としてはやると、このときに至ったところでございます。

 次のスライドでございます。Progmatについては、よくプライベートなのか、コンソーシアムなのか、はたまたパブリックなのかということがよく聞かれるのですけど、答えとしては、特定のチェーンということではないということでございまして、セキュリティトークンと、あとそこで使うための決済用のDLTというのがCordaという基盤を使うということを決めておりまして、先ほどのBOOSTRYさんとかSecuritizeさんとか、左のパーミッション型のコンソーシアム型チェーンでやられるところとのステーブルコイン文脈でのクロスチェーンというところの実装であったりとか、また、直近いろいろ報道が出ていますけども、右のほうの、これがステーブルコイン文脈です。パーミッションレスブロックチェーン、つまり、パブリックブロックチェーン上で直接、Progmatシステムを介してステーブルコインを発行して、チェーン間で交換を行うようなマルチチェーンといったところも含めて、適材適所でチェーンを使い分けるというところで考えております。

 次のスライドをお願いします。なので、これはシステムの俯瞰図めいたところなのですけども、我々が開発している中心は、ローマ数字3のコア機能というところで、セキュリティトークン、ユーティリティトークン、ステーブルコインを業務として実施するためのインフラ部分をつくっているというところでございます。

 そこで、全てブロックチェーンが銀の弾丸のように解決できるわけでは全くありませんので、全体のシステムで言うところの10ぐらいがDLTを使って記録しているというところですが、例えば個人情報であったりとか、それ以外のマスターのデータであったり、特にDLTを使うメリットが大してないような部分というのは通常のSIでやっているようなところでございます。DLTを使う部分も、セキュリティトークンなりユーティリティトークンというのは、先ほどの佐々木さんの御説明のとおり、必ずしもパブリックを違う意義がそこまでないというところがありますので、そういったところについては、パーミッションドでやりまして、一方で、パブリックで流通が期待されるステーブルコインについては、パーミッションレスでやる必要があるというところで、そちらについては、パーミッションレスブロックチェーンも使うという形で考えております。

 次のスライドをお願いします。こういったインフラを提供する会社なんですけども、これがなかなか三菱の冠をかぶっていると、皆さんに中立の組織としては、当然見られないというところがございますので、三菱から出しまして独立の会社としますと。そこにほかの資本系列の会社さんとかも広く御参加いただいて、言わばナショナルインフラとして、STとUTとコイン、これをいろいろな金融機関の方々中心に御提供させていただくということで、独立会社と発表しているところでございます。

 この実現した後、我々、三菱UFJ信託銀行は、ローマ数字2のサービス層、つまり競争領域で、このツールを使って商品を実際に開発提供する一角として、立場を変えるというところでございますので、Progmatについては、三菱色を消してやっていくというところでございます。

 次のスライドからがトークンの意義のところでございます。9ページ目のところで、これも似たような話も出てきていたとは思うのですけども、我々なりの解釈としては、結論、ブロックチェーンだからどうという話は全く正直、関係ないと思っておりまして、まず、左の既存の上場商品については、中央集権的記録機関ということで書いていますけども、要は、保振がいるので、特に小口化をして、参加投資家数が増えたところで、そのさばきをする証券会社さん、それを原簿記録として記録する株主名簿管理人としての信託銀行、さほど小口化と管理投資家数とか移転数が増えたとて事務量というのは増えないという、インフラが既にできている領域かなと思います。

 何が課題かというと、下のほうにありますとおり、これを使うには上場しないといけないと。上場商品に適したシステムになっているというところがございますので、上場するイニシャルとランニングのコストがかかり続けるというところがございます。したがって、案件としては、それなりの規模があるものでないと採算が合わないというところで、物を選ぶところかなと思っています。

 そうすると、例えば単品の不動産で上場するということはあり得ませんから、今どうなっているかというと、真ん中の非上場商品、つまり私募の世界で、ここの商品で実際、商品化しようと思ったときに、投資家数を小口化で増やそうとする。これ、具体例でいうと、もう償還済みですが、トヨタさんのAA株という、上場企業ながら非上場株式として、個人に小口で売るという案件があって、証券会社さんは野村で、名簿管理者はMUTBだった案件がかつてあったのですけれども、あれトヨタさんだから売り出せたところがありまして、これ一般やろうとすると、非常に事務処理が増えて、コスト高になります。一方で、それに比例して報酬がもらえるわけでもないというところで、非上場の世界については、小口化や流動性を上げて移転の数を増やすというインセンティブが、中間業者側にいないというところが課題かと思っております。

 右の便宜的にトークン化と書いていますけど、要は保振に代わる新しいインフラを、みんなで保振をやるとどうなのかというところかなと思っておりまして、必ずしも上場していなくても、証券会社さんとか原簿管理者側の内部システムと自動で連携できる共通の基盤があれば、ここの投資家数とか移転件数が増えても、比例して事務量が増えるというよりは減るというところで、限界コストがゼロに近づくことができるというところになりますので、旧来の非上場商品よりも小口化流動性向上が優位になるというところがいいかと思います。

 次のページでございまして、これはSTイコール有価証券と考えると、時間軸としては多少かかると思っておりますけども、個人間取引においては、相手を信用できないというリスクを負えないということがあると思います。クーポンレベルのものであればいいですが、有価証券だとなかなか厳しいところかと思います。

 一方で、真ん中に業者を立てようとすると、当然業者もボランティアではないので相応にコストがかかると。あと、業者が取り扱う商品じゃないと、このマーケットに乗らないというところがありますので、例えば証券会社とみなせば、証券会社が目線を持っていないような商品は取り扱えないということになるかと思います。

 右のトークン化については、支払い対価である金もシステム上に乗っていて、物と金が同時に動くという、いわゆるDVPの世界ができると同時交換というのが現実味を帯びてくるというところで、業者コストなく、取りはぐれるリスクもない世界というのができるのではというところが、もう一つあるかと思っております。

 これで掛け合わせると結局何なんだというのが次のスライドなのですけども、まず、対象となるアセットについて、これが上場不要であるという特徴によりまして、規模を問わない、幅広いアセットが商品化の俎上にのってくると。こういったものについては、今までは機関投資家向けに、なぜなら限界コストの話があるからというところだったのですけども、これが必ずしもそうでないという新しいインフラに乗せることができますと、幅広い個人が相手になってくるというところで、幅広い個人を相手取った幅広いアセットの商品というのが今、新市場として立ち上がっているのかなと思っております。

 この新市場は、商品供給者側にとってもメリットがないと、結局、ものが出てこないわけですけれども、これは個人にとっては選択肢が増えるというメリットがありまして、実際、今御購入いただいている方々の御意見を伺うと、利回りだけじゃないところを持っていると。いわゆる所有しているオーナーシップとか、あるいは、アセットがある種、ステータス感みたいな、こういった定性的な要素も相まって、商品として買われているというところがございますので、機関投資家の場合、別にアセットが来たかどうかは関係なく、リスクリターンであっていればいいのですけども、機関投資家では持ち得ない目線で商品が売買される、商品化の可能性が生じてきたというところが、市場に対するインパクトだと考えています。

 次のページですが、具体的に、不動産のSTというのが今、市場規模としては先行しているのですけども、よく言われる話で、J-REIT、クラファンと何が違うのですかというところを端的にまとめた資料がこちらです。J-REITとの違いでいうと2点でございまして、4行目の何を持っているのかという手触り感、REITだとどうしても何十個とか不動産が入っている1つの箱ですので、ポートフォリオ運用、セクター投資の側面が強いと思っています。

 また、上場していますので、8行目のとおり、個々の不動産のリスクリターンプロファイルというよりは、株式市場と連動したりとかといった市場の影響が強いと思っています。なので、左の現物不動産に投資しているのは全く違う感覚の商品として売れていると思います。クラファンについては、個々の不動産を小口にというところはあるのですけれども、一方で、致命的に6行目、流動性がないので、期間としても、マス個人の方が買ってもらうとすると、長いものだと流動性のリスクがありますから、期間としては一、二年ということで、長期の資産形成の商品にはなっていないというところ。あと、もう一つは税制のところ、これが致命的かなと思いますけれども、分離課税が適用できませんので、年収によっては55%というところがございます。

 不動産STについては、これ、正直申し上げて、ブロックチェーンがどうこうという話じゃないです。受益証券発行信託というスキームを使って、不動産の商品を再開発したというところが非常に効果につながっているところでございまして、ある種、いいとこ取りのような、個別の不動産の手触り感がありつつ、流動性も必要な十分なところはありまして、期間としては5年以上のものが出てきている。取引価格の市場影響というものもない。なぜなら鑑定評価ベースであるというところが特徴かなと思っておりまして、税制も20%というところが、かなり好評いただいているところでございます。

 次の13ページ目は、あえて細かいものを出しているのですけど、真ん中にある特定受益証券発行信託という器が肝でして、この器を使うことで、先ほどあった対抗要件の問題というのを発生させていないというところ、デジタル完結での移転が可能であるところ。あとは、ストラクチャリングは比較的自由ですので、ローンを引いて利回りをつくったり、このように不動産信託受益権が入っている部分については、ほかのアセットも当然、信託財産にできるものであれば入れることができるもので、非常に受皿としては汎用性が高いかなと考えております。

 もう一つ、異なる14ページ目の特徴のメリットとしては、ファンマーケティングということもございまして、左にあるような今までの優待の世界を、アセットバック商品についても適用できる、かつてより柔軟性が高いというところも好評いただいておりますし、次の15ページ目にあるとおり、決済のところもステーブルコインの利用によって、いわゆるカウンターパーティリスクみたいなところは極小化することもできるということがあると思います。

 17ページ目からですけども、具体的な数字に係る情報としましては、コンソーシアム組織に、今は202と書いていますが、直近だと205御参加いただいておりまして、次のページですけども、半分以上はSTのような商品を発行したいという事業会社の方が多いところでございます。なので、ここら辺を潜在的に、これから案件としても増えてくるかなと思ってございます。

 実際に、19ページ目で今、発行されているそのSTファンドの運用残高というところで、680億円を超えてきているのですけども、中でも、昨年の12月にいちごさんが入ってきたりとか、直近だと丸紅さんが入ってきたりと、プレーヤーも多角化してきているところでございます。

 次のページからがProgmatでやっている案件の一覧というところでございまして、20ページ目にありますとおり、初期は三井物産さん、ケネディクスさんがリードしていたところが多かったところでございます。

 次の21ページ目、直近の案件につきましては、7号案件で、先ほどのいちごさん、プレーが増えてきたという話があったんですが、9号案件で、8行目、販売者のところで、AMさんが販売を担うという製販一体のモデルも出てきたと。10号案件では丸紅さんも入ってきたというところで、その他、消費者系の方々も今、入ってきたところでございます。

 今後の展望を最後に、簡単に23ページ目で、リアルアセットのtokenizationという市場が非常に伸びてくるかなと考えています。

 24ページ目、国内の話で言いますと、特にその中でも牽引するのは、不動産がマーケットポテンシャルとしてはかなり大きいと考えているところで、2.6兆円ぐらいはいくだろうと思っています。

 最後、課題も含めて25ページ目のところですけども、この後、ODXさんの話もあると思うのですが、下のほうのプラットフォームをより広げていく、あるいは、市場決済機能をより、決済も含めて高度化していくという、これらインフラの話は粛々とやるんですが、ただ、一方で、これはあくまでも手段であって、目的ではないかなと思っております。目的は、どちらかというと、上の個人の方が、今までだとポートフォリオで運用してみたいなところ、プロに任せていたところが小口で、自分で取捨選択することができる、選択肢が増えるという、これを実現したいと思っておりますので、インフラの話も重要ですが、それを使って商品開発する金融機関の創意工夫こそが最重要と思っておりますので、三菱UFJ信託銀行の立場としては、ツールをうまく使いながらも、既存の法制、税制で課題になっているようなところは一個一個、皆さんと御相談をさせていただきながら、個人の方にはいい商品を届けるというところが今後、やるべき課題かなと思っているところでございます。

 三菱UFJ信託銀行からは以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして、大阪デジタルエクスチェンジの丸山様から、資料の5についてお話をしていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

【大阪デジタルエクスチェンジ(丸山)】
 御紹介にあずかりました、大阪デジタルエクスチェンジの丸山でございます。本日は、このようなお時間いただきまして、ありがとうございます。私どもの取組状況、御説明させていただければと思います。

 先に申し上げておきます。ここまでのお話、わりに前向きなお話が多かったのですが、我々、かなり現実にどっぷりつかってしまっておりますので、若干後ろ向きに聞こえる内容もあるかと思いますが、現実というものを御理解いただいて、次につなげていただけるという意味では参考になるのかなと思いますので、お耳濁しかもしれませんが、その点はよろしくお願いします。

 まず、当社の概要ですが、もともと、これ弊社のグループの総帥であります北尾がデジタル証券、STのセカンダリーをつくるぞということで始めたのですが、言い出したときが2020年の秋口でございまして、なかなかセキュリティトークンというのは発行もそんなに進んでいなかったということもあり、一旦、ここをしのぐために現状、株式のPTSをやらせていただいて、STの市場をつくるために生きていますという状況です。最初はSBIホールディングと三井住友フィナンシャルグループ様のJVだったのですが、21年の11月に野村様、大和様も御参加いただいて、現状のような状況になっておるというところでございます。

 次ページをお願いします。ここの3ページ、4ページの案件につきましては、ほかの皆様からも御説明がございましたので、時間の関係もございますので飛ばさせていただいて、5ページです。これも参考状況というか、海外のセキュリティトークンの流通市場はどんな感じかというところ、これ正直ベース、なかなかまとまったデータ、正確なデータというのが取りにくいのですが、一応セキュリティトークンSecurity Token Marketというところから取らせていただいております。簡単に言ってしまうと、まだ流通市場としては発展途上です。上の方に、いわゆるセキュリティトークンとして、資産バック型のセキュリティトークンの取引状況を御覧いただいておりますが、例えば、東証市場の0.004%ぐらいしかないですよとか、時価総額でいってもそんなにないですよという話になってしまっていますので、なかなか、これからもう少し時間が海外でも要るのかなと。もしかしたら、もう少しデータを正確に追えば増えるかもしれませんが、状況としては発展途上ですというところです。

 表の下の方に、Tokenized Stocksというのがあるのですが、これはアメリカで、わりに一時期、はやりました。簡単に言ってしまうと、どこかのカストディアンに通常の株を預託して、それをトークン化して、小口化して販売するというスタイルで、去年の秋口にいろいろ話題をまいてしまったFTXが中心となって進めてきたものです。これがまあまあ取引されていたのですが、こちらはFTXの破綻によって、現状止まってしまっておりますが、こちらであっても、東証市場の出来高の0.03%ぐらいしか総額で取引されていなかったというところを見ると、まだ発展途上だったのかなというところもございます。いずれにせよ、我々も何とか国内の市場も拡大させていける方向に行けるといいかなと思っております。

 次ページをお願いします。セカンダリー市場を類型して、少し方向性が違うお話をさせていただきますと、恐らく、3つのパターンが考えられるのかなと思います。これ以外にもあるとは思うのですが、大きくはこの3つで、競争売買型の市場、これは我々が目指している形です。

 あと、RFQの市場、これ恐らく欧州のST市場はこれが多いようでございます。それから、現状の国内のSTに対する投資家の換金需要に応じている証券会社さんによる相対取引の市場というものがあるかと思います。主な投資家というのが、それぞれで見た場合にどうかというのを比較しますと、競争売買市場であれば、一般投資家も参加し易いと思います。当然機関投資家も参加していただければ、それに越したことはございません。RFQの場合は、基本的には機関投資家等の大口投資家が中心になる市場かと思います。相対取引については、現状、売り先が一般投資家が中心ですので参加されるのは一般投資家になっているかと思います。投資家目線でいうとスプレッドとか約定可能性あたりが気になるところと思います。スプレッドについては、競争売買市場であれば、当然なのですけが、一定の流動性があれば相対的に縮まってきます。よって、理論的には売り手、買い手双方によっては適正価格に収れんしやすいという構造かと思います。

 RFQの市場については、マーケットメーカーさん次第、非常に雑な言い方になるのですが、マーケットメーカーさんのストラテジーとか、あるいはマーケットメーカーさん同士の競争環境次第によってスプレッドが縮まることもあれば拡がることもあるということだと思います。

 相対取引の場合、どうしても証券会社さんは現状、ポジションリスクをとらざるを得ないということになりますので、一般的に広くなってしまうかなと思います。

 約定可能性については、当たり前ですが、競争売買市場では流動性に依拠することになりますので、低流動性の場合は約定されないことにもなります。RFQの場合はマーケットメーカーさん次第なので、当然、交渉次第で約定可能性が高まります。あと証券会社さんの相対取引について言うと、スプレッドを気にしなければ約定はできるという状況かと思います。

 次に、運営者側の視点を入れると、制度設計とシステム投資という部分があります。制度設計については、競争売買市場、取引所取引市場なんですけども、売買取引とか、その後のポストトレードである清算決済が多対多を前提としておりますので、標準化をしていかないとなかなか動きにくいということで、難易度が高いと一般的に言われています。RFQについては、売買取引とか、清算決済について裁量の幅を持たせておりますので、難易度は相対的に低くなるかと思います。

 相対取引について見ますと、現状、自社の顧客が対象となりますので、取引全体が自社内で完結するので、難易度はかなり低いと思います。これに対応するシステム投資ですが、多対多で取引が行われる競争売買市場では、は安定性が求められ、処理容量も一定程度確保しなければいけないということもございますので、比較的投資額がかさむことになります。

 一方で、RFQですが、これは極論すると電話でもできるみたいな世界ですので、システム投資の額というのは比較的少なめでいけるかと思います。相対取引についても、基本的には自社のお客様との相対ですので、そんなにコストはかからないのかなと思います。その他の気になる点ですが、証券会社が取り次ぐモデルを我々、前提で考えております。したがって、競争売買市場を作るときには、当然ながら一定数の証券会社さんに参加していただく必要があります。ちなみに、暗号資産交換業者や海外のセキュリティトークン取引市場のように、投資者の注文を直接媒介する方法も理論上は考えられます。しかし、顧客口座の獲得のハードルが高いという現実を見据えると、なかなか日本ですぐ取り組むというのは難しいのかなと考えております。

 簡単に言ってしまいますと、我々のグループ会社でありますSBI証券は1,000万口座持っています。1,000万口座を取るというのは、もうとてつもない大変な状況でございますので、そもそもそこに及ぶのは無理で、仮に1万、2万の口座数では多分流動性は出ませんので、既にあるものを利用させて頂く方が合理的ということになります。

 あと、そうはいっても、競争売買市場、どの商品の市場でもそうなのですが、投資者を呼び込むためには、やはりある程度の銘柄数が無いとお客様に目を向いていただけませんので、ここも一つ課題になるのかなと思います。

 RFQ市場についは、価格や数量の条件交渉が前提となりますし、決済段階でのカウンターパーティリスクというものも織り込む必要があるということなので、結果的に、繰り返しになりますが、この市場というのは、あまり個人投資家向けではない、機関投資家等、大口投資家向けの市場かなと思います。

 証券会社さんによる相対取引については、プライマリーを補完するための仕組みに過ぎないので、投資者の換金の場としては少々物足りないのかなというところと、あと、実際ポジションを取った証券会社さんがUnwindできる先が確定的でないと、小口であればまだしも大口の取引に対しては対応し難いのかなと思います。

 次ページ、お願いします。我々がどういう市場を用意しようかとしているところなのですが、まず、理想形からお話しさせていただきますと、先ほど、少しお話も出ていたように、せっかくセキュリティトークン、ブロックチェーンを使うのだから、カウンターパーティリスクを回避する形で、もう少し言い方を変えると、保振とか日本証券クリアリング機構のような大規模なCCPとかCSDを用意しなくても良いような市場を作りましょうというのが理想形かと思います。具体的には、ステーブルコインとセキュリティトークンを約定時点で即時に入れ替えて、DVPを実現するという市場を、最終的には構築したいと考えています。かつ、ブロックチェーンのスマートコントラクト機能を利用して、ポストトレードの業務ももう少し負荷を下げることによって拡大をさせたいということも企図していますが、なかなかここまで行くには、後ほどお話ししますように、ハードルが幾つかありまして、現状は次ページ、8ページのような形で一旦始めさせていただこうと思っています。

 これは簡単に言ってしまいますと、現状の株の取引とあまり変わらない形になってしまいますが、証券会社さんの取次ぎを前提とした取引を行っていただいて、私どもは、証券会社さんから取り次がれた売り買いの注文をマッチングするのみとします。そして、セキュリティトークンの移転は証券会社さん同士でブロックチェーン基盤上において移転していただいて、資金の清算については、これも証券会社さん同士の相対取引にて銀行振替で処理していただくという形になります。したがって、これはクリアリング機構とか保振がない頃の株の取引に似たというか、そのものになりますので、カウンターパーティリスクがどうしても残るという形にはなりますが、いずれにせよ、セキュリティトークンのセカンダリー市場を始めないことには次に進まないというところがございますので、この形で11月の終わりを目途に始めさせていただこうかということで準備を進めさせていただいております。

 その状況が次の9ページになります。次ページお願いします。
 一応関係者の証券会社の皆様、あるいは、Progmatさん、あるいはBOOSTRYさんといろいろ協議させていただきながら、制度、あるいはシステム、実務運用等々の構築を進めておりまして、併せて金融庁様のほうに、セキュリティトークンの取扱いは、変更認可が必要だということでございますので、変更認可申請をさせていただいて、認可を認めていただく前提で、かつ、皆様の準備が滞りなく進んだとしたら、11月の下旬くらいにDay1を迎えさせていただきたいなということで、準備を鋭意進めております。

 次ページお願いします。ここからは、かなり現実にどっぷりつかったお話をさせていただきたいと思います。1点目ですが、先ほど私どもはフェーズ2を理想像として、セキュリティトークンとステーブルコインを使った即時決済を実現すると申し上げましたが、これ本当に実現できるのかなというのが、現状だけ見ていくと、結構大変というところがあります。

 1点目として、証券会社のバック業務を考えたときに、主力商品である株式の決済期間というのが、まだT+2です。確かにアメリカではT+1が来年、移行しますというような話がありますが、それであってもT+1なので、マイナーな商品であるセキュリティトークンを先行させて、T+0となるRTGS化することというのは、なかなか積極的には取り組み難いというのが現実です。なぜかと申しますと、バック業務のシステムは基本的にT+2を前提にして設計、構築されています。したがって、ここにSTを取り込もうとすると、システム改造に億単位のお金がかかるとか、あるいは、じゃあそれだけ別枠でマニュアル処理にするとなると業務が回り難い、あるいはオペレーションリスクが出るみたいなややこしい話が出てきてしまいます。特に、別枠処理をしたときの問題は税務処理のようでございまして、この辺の煩雑な処理をより煩雑化させてしまうということで、RTGSをSTで先行させることに対しては、証券会社さんのバックサイドではネガティブな印象を持っていらっしゃいます。

 2点目として、資料の②になりますが、そもそも投資者、特に一般投資家の方々が、RTGSを望んでいるのかというのもよく分かりません。なぜかというと、株式の取引の場合、基本的に約定ベースで顧客である投資者の余力管理を証券会社さんがされますので、同じ証券会社さんを通じて売買取引を継続している限り、例えば、日計り商いみたいなものをやったとしても、特段の不都合を投資者の皆さんは感じていないと思います。これが、暗号資産取引の場合、例えば現物が安い価格で買える交換所で現物を買い付けて、その現物を代用証拠金として海外の取引所に預け入れて、レバレッジ取引をするというケースが、結構多いです。しかし、セキュリティトークンの場合は、そのような投機的な取引というのは、少なくとも現状では想定されないので、そのようなインセンティブも生じません。実際にセキュリティトークンをお持ちの方で、急にお金が必要になるというケースもあると思いますので、即時換金のニーズを否定する話ではないと思います。しかし、RTGSになっても、ステーブルコインの一般への普及が進んでいない中で、ステーブルコインの受渡しを一般の投資者の方まで広げることは難しい、即ち、一般の投資者との売買取引についての資金の受払いは法定通貨行うことになると思います。そうなると分別管理上の扱いなどによっては、ステーブルコインを日本円に交換した後に、当事者であるお客様の銀行口座に日本円が振り込まれるまでに、それなりに時間がかかる可能性があります。とすると、どこまで当事者の方がRTGSについて認識されて、あるいは、それを望んでいるかというのが現状では、測り難い部分があります。

 もう1点が、汎用性のあるステーブルコインが、残念ながら現状存在していません。なので、セキュリティトークンの特徴の1つであるスイートナー(特典)をスマートコントラクトで処理することも、ステーブルコインでの決済で行えないとなると、それなりにマニュアル処理が発生してしまって煩雑になるので難しいのかなと思います。聞くところによると、債券の経過利子の処理よりも煩雑になる可能性があると言われていますので、ここも一つ障害になりそうな部分です。

 将来的にステーブルコインが、お客様も含めた形で資金清算において利用される状態にならないと、なかなか法定通貨とステーブルコインの二重管理というのが証券会社さん、あるいは、その裏にいる投資家の皆さんにも発生することになります。よって、ここの部分を軽減できるスイートナーみたいなものを考えないと、お客様が使い難い、あるいは証券会社さんにとってポストトレードの処理を自動化するというところにまで進み難いのではないか、と思います。

 ネガティブなことをかなり申し上げてしまっておりますが、一方で、現状、我々が進めようとしている仕組みですと、どうしてもカウンターパーティリスクが残ってしまって、フェイルの可能性があります。よって、どこかでRTGSを進めていかなきゃいけないということで、関係する皆様と知恵を絞りながら早期に実現できる方法を見つけたいと思っております。

 次ページをお願いします。現行の法制度上における市場構築の運用上の課題です。1点目のGK-TKの話は、平田さんからも御説明があったので、飛ばさせていただいて、2点目から入らせていただきます。オムニバス口座という方式を利用して、証券会社さんが当社に発注することになります。これは何を言っているかというと、証券会社さんがお客様の注文を当社に取り次いでいただくときに、全てのお客様の注文を包括する代表口座を用意して、その口座から、例えば野村証券さんだったら野村証券という名前で一括して発注するスタイルです。簡単に言ってしまうと、現状の東証での株式の発注スタイルと全く同じものなのですが、これをセキュリティトークンで行う場合、セキュリティトークンの所有者であるお客様から取次ぎ先である証券会社さんに名義書き換えが発生する可能性があります。この場合の取戻権とか破産法上の扱いみたいなものを、運用の際に整理が必要でして、さらにその整理だけで済むのかという疑念もゼロではないというところが難しいところです。

 セキュリティトークンの売委託を行ったお客様から証券会社への証券の交付は、処分授権を伴うものであり、お客様にはSTを証券会社に譲渡する意思はないということから譲渡の効力は生じないという解釈で進めようとは思っていますが、これが盤石かと言われるとよく分かりません。それゆえに、規約とか約款等でこの辺を手当てする予定なのですけれども、最終的には売りつけ専用の自己口で整理するといったような対応も必要になってくるだろう、といった二重三重の囲いを用意しなければいけない可能性もあるというところが若干厄介ところです。

 3点目としまして、フェーズ2でRTGSを実現するために、発注段階でSTとかSCを移動不可、つまりロックをかけておかないと、発注している間にSTとかSCを動かされてしまうとフェイルの可能性が出てしまいますので、この辺を誰が実行するのかという問題が残っています。一応、一番簡単なのは媒介を行う当社が実行するのが運用スキーム上、一番楽なのですが、これ行為は、業法上の整理が必要になります。セキュリティトークンとかステーブルコインの移転のインストラクションを出すと、顧客資産の預かりに該当するのかとか、電子決済手段取引業に該当するのかとか、あるいは、金商業上の顧客資産の預かりに該当するのかとか、この辺も個別に金融庁様と御相談しながら、実際のシステムの運用体制とか運用形態をつくった上でのお話になりますが、整理しないといけない部分と考えております。

 次ページをお願いします。もう少し課題がありまして、プライマリー段階におけるセキュリティトークンの小口化をどう進めていくかというのが、恐らくセキュリティトークン市場の普及という面では割にキーポイントになるかと思います。現状の不動産投資信託受益証券とか社債は、償還までの保有を前提とした利回り商品の要素が強いことと、現状の発行段階では、まだまだ新しい商品という意識が強いことから、販売されるサイドの売りやすさへの志向というものもありますし、又、適合性原則の問題もあるようでして、どうしても現時点では1口100万円以上が中心となってしまっています。100万円という額は、結構な額ですので、本来、もう少し小口でないとSTの特徴が生かしきれないように思います。御存じのように、REITでも平均30万円くらいですので、100万円は高過ぎるので、せめて10分の1、あるいは100分の1くらいになると良いのかなとは思います。ただ一方で、売出しからセカンダリーの売買、取引、清算、決済まで、これがシステムによる自動化が達成できませんと、なかなか小口化しても、証券会社さんのバックサイドにとってみると業務負荷が増えるだけみたいな話であったり、コスト的にも受容するには難しかったりと、この辺をどうするかというのが、鶏と卵のところがございますが、悩ましいところでございます。

 最後に技術的課題も若干残っています。売買取引のシステムをそもそもブロックチェーン技術で実現することは余り合理的ではありません。御存じのように、証券取引の場合は時間優先、価格優先という原則を、基本的に守った処理をしないと投資家の信頼を得られないというところがありますが、そのようなロジックを入れながら、かつ一定以上の処理速度とか処理能力を確保しようとすることは、ブロックチェーン技術には馴染みません。よって、売買取引のマッチングについては、既存の技術によってマッチングエンジンを構築しまして、決済プラットフォームとしてのブロックチェーンレイヤーとの情報のやり取りを行うことになります。この場合、RTGSを実現するために、注文から約定までの間に、売り注文であればセキリティートークンを、買い注文ではステーブルコインをロックしておく必要があります。ロックするというのがシステム的に考えたときに、単純な受発注であれば然程難しくはないのですが、既に出している注文に価格の訂正とか発注量の訂正が出た場合、なかなか現状では技術的に難易度が高いという話があります。売買ルールを変えれば良いというところもあるにはありますが、株式の取引に馴染まれた方々をお客様として参加して貰う前提で現状のルールを残そうとすると、なかなか厄介になるということです。
 それから、ブロックチェーンの技術基盤が異なるSTとかSCの場合、相互乗り入れが現状では未だ大変、というところがありまして、この辺の技術的な課題も、フェーズ2までに一定程度解決しないと先に進み難いというところはございます。

 以上でございます。お時間いただきまして、ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。4人の方々には大変詳細に御説明をいただきまして、ありがとうございました。

 それでは、今、御説明いただいた方々への御質問、あるいはいただいたお話を踏まえての御意見、その他御発言がございましたらメンバーの方々からお出しいただきたいと思います。

 なお、本日御欠席の野田さんから資料6の意見書を提出いただいております。メンバーの皆様方におかれましては、適宜御覧いただければと思います。

 それでは、いつものように、どなたからでも結構ですので、御発言いただける方はチャット機能を使って全員宛てに発言希望と一言を入れていただければありがたく存じます。いかがでしょうか。岩下先生、どうぞお願いいたします。

【岩下メンバー】
 岩下でございます。セキュリティトークンについて、本日参考人の方々に丁寧に御説明をいただきました。どうもありがとうございました。現状はよく分かりました。

 STO協会の平田様には、STOをめぐる規制体系について、改めて事業者側の立場で整理をしていただいたと思います。御説明にあった2020年の金商法改正ですけれども、この改正は2018年に開催された仮想通貨交換業者等に関する研究会での検討結果を受けて実施されたものだと理解しています。そのときに座長をお務めいただいたのが、本研究会の座長でもあられる神田先生でありまして、また、多くの委員がこの研究会のメンバーと共通しております。この2018年の研究会では、当時、世界的に盛り上がっていたICO、これが大変盛り上がっていたというか、問題を生んでいたというわけですけれども、これの問題を取り上げて、これを日本市場にそのままの形で入れるのは大変まずいのではないかということから、これを何とかして食い止めようという議論が中心であったと私は記憶しております。

 その結果として、STOができたわけでありまして、言ってみれば、ややひょうたんから駒でできた新しい規制制度だったと私は理解しております。本日、BOOSTRYの佐々木様、三菱信託の齊藤様、大阪デジタルエクスチェンジの丸山様からは、現状を丁寧に御説明いただいたんですが、現在主流になっている不動産ST、これは別に原理的にブロックチェーンでなければいけないとかというものではどうもないようであります。たしか佐々木様の資料にギャップがあって、パーミッションレスブロックチェーンなんて、パブリックブロックチェーンは別に必須ではないですよねという議論が書いてありましたけれども、どちらかというと、最後の丸山様の御説明あったとおり、ブロックチェーンを使えばこんなことができるかもという理解の段階であって、まだ現状ではそれがばりばり使われているということではないのかなと思います。

 ただ、これ金融審議会の総会でも私は申し上げたことなんですけれども、なぜか伝統的金融、伝統的有価証券の世界では、なかなかイノベーションが起きないんです。利害関係者が多数存在して調整コストかかってしまって改正ができないという現実の問題があると思います。そこで、今回、白地に絵を描くことができたのが、たまたまICO対策として、法律制定が必要とされたSTOだったと理解できます。伝統的な金融の世界ではあまり聞かれないような、非常にイノベーティブな話を本日いろいろ聞くことができて、わくわくする部分がありました。

 ただ、一般の投資家から見ますと、別に金融がイノベーションしているかどうかということよりも、自分の利益が大事なんだと思うんです。そうすると、暗号資産が値上がりしていたということは、実はSTにとって非常に大きなエンジンであったのだと理解しています。つまり、現実というのは、現在のSTOというのは、本来、暗号資産そのものはないですし、暗号資産の基盤となっているパブリックブロックチェーンが必須というわけでもないんだけれども、でも実際には、例えば、大阪デジタルエクスチェンジさんの事業は米国のFTXを基盤としているとか、セキュリティトークンと暗号資産を抱き合わせで販売している大手事業者がいるとかという話を聞きますと、結局、セキュリティトークンの投資家というのは暗号資産投資家と重なっていて、暗号資産の言わば派生物というか、運命共同体になっているという感じがするんです。

 ちょっと話を変えますと、伝統的有価証券の世界でも、いわゆる株式と、J-REITとありますけど、これと一般の不動産投資というのはかなり違いますよね。J-REITって不動産と言いながら、実際の不動産価格にあまり連動しなくて、株価に連動しているというのは有名な話です。多分同じように不動産STのようなものも、不動産というよりはどちらかというと暗号資産に連動している部分があると思います。

 本日、今朝入ってきた米国のニュースで、SECがバイナンスを提訴したということで、暗号資産市場はビットコインが5%、バイナンスコインが9%の下落を見せていますけども、株式市場は堅調、今のところ、今日は堅調のようですが、にもかかわらず、こういうときにセキュリティトークンがどう値動きするかというのは一つの試金石だと思います。なかなか流動性はそんなに高くないと思うので、今日の相場がどうだということは分からないと思いますけれども、この辺の相場のところについて、ぜひ現状どうなっているのかというところについての実態もお教えいただければと思いますので、後ほどコメントいただければと思います。

 その上で、できるだけ暗号資産の縛りを解いたほうが私はいいのではないかと思います。本日、話の中でも番号資産が必須という議論ではないんだということを強調されましたので、今のところ暗号資産と共通しているというのが1つのエンジンになっていることは事実だと私は思いますが、ただ、にもかかわらず、せっかく芽生えたイノベーションを、できることならば暗号資産というものから切り離して、つまりFTXのような問題に巻き込まれないような形にするためにも、純粋にどういう形の新しい有価証券のスタイルが適切なのかということを御検討いただければと思っております。

 私からは以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。相場の何に連動しているかというようなことについての御質問というか、御指摘があったと思うのですけれども、いかがでしょうか。平田さんか佐々木さんか。そうですね、齊藤さん、どうぞお願いいたします。

【三菱UFJ信託銀行(齊藤)】
 では、アセットバック型に関する質問があったかと思いましたので、お答えいたします。資料でいうと、私から御説明した資料の12ページ目にREITとかを載せているのですけど、現状で言いますと、まさにおっしゃっていただいたとおり、ドリブンはブロックチェーンかどうか、あるいは暗号資産かどうかというところはある種、全く関係なく、シナジーができたというところに新しいインフラと商品を載せて、マーケットを開拓しようというモメンタムで動いているところが非常に強いです。なので、参加いただいている仲介者の方も証券会社さんが中心で、暗号資産界隈の人が金商業1種を取ってくるというよりは、伝統的な野村さんとかSBIさんが自己客に商品を売る。直近だと一口10万円とかで、わりとマス個人向けのサイズ感になってきているのですけれども、当初こそは100万円の5口とか、結構富裕な方じゃないとなかなか買えないような規模だったというところもありまして、特に野村さんなんかは、比較的高齢の方で、暗号資産には縁がないような方に、インフラとしてブロックチェーンというものがあってみたいな説明を、対面でやりながら売っていたところがありますので、今だんだん小口になって、マス個人になって、どんどん暗号資産も一部投資しているような方とも多分接点が出てきつつあると思うのですけども、比較的販売チャネルの特性によって、割合今までの証券の考え方の方が、今のところは多い市場と思っております。

 ただ、今後、より小口化していくと、そういった要素と混同している方というのは、結構いらっしゃるのかなと思いますので、より顧客説明というのが重要かなと思っていますということが1つと、あと、値段がどうやって決まるかというところなのですけれども、これもアセットバックのものについては、鑑定評価ベースでプライシングを含めてやっておりまして、四半期に1回、アセットマネージャーが当該不動産の鑑定評価を取得して、そこから該当マーケットの市場変化を織り込んで、毎月、値洗いするというような価格の決め方をして、お客さんに対してプライスを出しています。

 先ほど、ODXさんもあったとおり、そもそもの商品特性として、あまり投機的な値動きを狙った方々が買うというよりは、コア型投資として長期で、基本的には換金しなきゃいけない事態に陥らない限りは持ち続けるということで、利回りを楽しむということに今のところはなっておりますので、元本の値段で売り買いというよりは、あまりそこは、買ったら根雪になっているような商品特性が今のところ、特に不動産だと多いと考えております。

 以上です。

【神田座長】
 ありがとうございました。BOOSTRYの佐々木さん、どうぞお願いいたします。

【BOOSTRY(佐々木)】
 BOOSTRYの佐々木でございます。御質問いただいたところ、まさに上場REITで価格と連動しているというのが課題だったということだと思っていまして、こちらを販売するチャネルが、証券様が販売しているのというのが大きいと思っています。同じものを同じようなラインナップで並べているので、双方に依存した値動きになっているということだと思っています。

 STに関しましては、これがまた同じで、証券様が取り扱っているので、対象としては同じような取引形態になっています。なので、価格連動という意味で言うと、現状は流動性を意図的に落としているところがあるので、価格が、先ほど一本値というのがありましたけども、これが取引所できたときにどうなるかというと、恐らく想定されるのが、流動性が高くなれば、同じような値動きになるリスクというのは、これはあるんじゃないかなと思っていますので、取り扱うチャネルの方が証券さんか、そうじゃないかというので、これは大きいと思っていまして、どちらかというとブロックチェーン、もしくは暗号資産という概念で縛られているのは、提供する金融機関様の、業者側のほうだと思っていまして、ブロックチェーンを使っていればいいとか、もしくはデジタル通貨を、暗号資産向けの決済手段をみたいな、そういうアプローチに入りがちではあるんですけども、どちらかというと、先ほどの説明のとおり、市場全体のDXでありますとか、もしくは分散型金融の資本市場における在り方というのが、本当は議論すべきところを、若干、暗号資産のはやり等を含めて、引きずられているところというのが業者側にあるのかなとは思っております。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、次に進めさせていただきます。チャットをいただいている順番で、次は坂先生、お願いいたします。

【坂メンバー】
 ありがとうございます。よろしくお願いします。私のほうからは5点ほど、できるだけ急いでお話をさせていただければと思います。

 1点目、STO化の意義についてですけども、STOは有価証券、みなし有価証券による資金提供をブロックチェーン技術等を用いて行うものと認識しております。一般のデジタル化技術と比較して、ブロックチェーン技術等にいかなる優位性、あるいはリスクがあるのかは慎重な検討が必要です。ブロックチェーン技術の優位性としては、スマートコントラクトによる契約決済の自動化、コストの削減の可能性と、一定のカウンターパーティリスクの回避等が言われているところではありますけども、さまざまな課題があるということは先ほども御指摘のあったところです。

 また、関係する事業主体が多くなること、複雑なシステム対応等によるコスト高の懸念や、全体のガバナンス確保の必要性と多くの課題も存します。現状では、私法上の権利の明確性やセキュリティ等のリスクも相応に大きいものがあります。他のデジタル技術に対して、本当に有用性があるのかは、社会経済的な観点から将来の可能性やリスクも含めて慎重な検討が必要と考えます。

 2点目、有価証券のリスクの多くは、STO化により変わるわけではないということを確認しておきたいと思います。STOは株式、社債、集団投資スキーム、信託受益権等の資金提供をブロックチェーン技術等により行うものであって、これら有価証券がもともと有していたリスク構造、特に資金提供先の事業リスクや運用リスクを変えるものではありません。したがって、多くの場面において、既存の有価証券と同様の対応が求められます。例えば非上場株式については、上場企業に比して企業価値の把握が難しく、価格変動リスク、破綻リスクが大きく、多くの市場参加者によるモニタリングが成立しにくいという特性がございます。こうした特性は、STOの形を取っても大きくは変わるものではなく、非上場株式のSTOは、一般投資者の投資商品としての適性を有するものとは考えがたいところがあります。

 また、これまでの事例では、不動産関連の信託受益証券のSTOが多いようですけども、不動産関連の信託受益権についても、不動産事業による収益予想や出口戦略の妥当性、不動産事業を行う主体の事業力や信頼性等、本来、投資商品としても難易度は高いと考えられます。このような特性に鑑みますと、STO化されたとしても、適合性の原則や実質的説明義務が適切に確保される必要性が高いことは、従来と変わるところはないと言うべきです。

 3点目、STOの特殊性に鑑みての留意点や期待というところですけども、まず、留意点として、STOについては、ブロックチェーン等の技術による固有のリスクがあり、これらについて実質的な説明を確保することが必要です。セキュリティ上のリスクや私法上の権利性におけるリスク、留意点について、個々の顧客に理解できる方法、程度による情報提供が求められます。

 次に、期待ですけども、受益権や集団投資スキームのSTOでは、発行開示、継続開示により、従来に比して投資者や市場への情報提供の充実が期待されます。加えて、デジタル技術により、現状よりも多くの情報が提供されること、さらには開示情報の集積、分析や他の情報、例えば一般の不動産情報等々が結合されることにより、投資者に新たな情報環境が提供されることも期待されます。

 4点目ですが、売買の場、市場の在り方についてです。金融制度の役割は、資金を適切な先に、適切な形で円滑に提供することにあります。金融市場には、発行者の将来に関する情報の集約、企業が調達した資金の使い方のモニタリング、最良の商品価格による投下資本の回収の機会の確保が求められます。

 こうした機能が適切に確保されるよう、情報効率的な売買の場が確保されることが必要です。STOにおいても、情報効率的な場をいかに確保するかが課題です。資料2の9ページにもありますとおり、現状、金融商品の売買の場としては、金融商品市場、取引所、それからPTS、金商業者の店頭取引があります。STOもこれらの制度枠組みが前提となりますが、STOの特性に鑑みて、制度の調整を行うことも検討課題と考えられます。

 その際、集団投資スキームや信託受益権等については、取引所による価格形成が存しないことも踏まえ、取扱商品の適切性を確保する、確認する枠組みや、不公正な取引の抑止、利益相反関係の統制等の枠組みを整える必要があります。このような枠組みを確保するには、PTSの認可制度を活用することが適切と考えられます。PTSの活性化や市場間競争の促進の観点からも係る対応が望ましいと考えます。

 第5にプラットフォーム事業者についてですが、プラットフォーム事業者が直接の顧客接点を持つ場合には、金融商品取引業者として直接の規制対象になりますが、プラットフォーム事業者が、金融商品取引業者にシステム基盤を提供する場合には、金商業者が受託会社として、金商業者の監督を受ける形態も考えられます。当局が、デジタル技術の知見を十二分に有することが必要ですけども、後者の場合には、さらに金商業者がプラットフォーム業者の監督を行う能力を有するということが求められるところと思います。

 以上です。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。では、次に松尾先生、どうぞお願いいたします。

【松尾メンバー】
 ありがとうございます。1点質問があって、実は大事なところで、確定日付の件が必要で、そのことについて、サンドボックス制度を使っているという話があったんですけども、サンドボックス制度で今やられている確定日付は、2004年ぐらいにe-文書法でできたタイムスタンプ、これも確定日付のためのものなんですけども、それと何が違うのかということです。

 何でこんな質問をするかというと、もともとビットコインのSatoshi氏の論文というのは、1990年代につくられたハッシュチェーンを使ったタイムスタンプの応用なんです。それの中央の運営者をなくしたバージョンがビットコインの帳簿なわけです。パーミッションレスブロックチェーンというのはそういう優れたところがあり、一方でパーミッションドブロックチェーン、コンソーシアムとかプライベートと今回、分かれていますけども、全く違うメリットがあって、同じブロックチェーンというだけで全然違うものでして、ビットコインのようなパーミッションレスブロックチェーンはとても新しい発明なんですけども、いわゆるコンソーシアムとかプライベートというのは、いわゆるタイムスタンプ2.0というか、技術的にはタイムスタンプの高度化と見ることができます。

 だとすると、今回の御説明にあったSTOのユースケースの場合は、どちらかというと、2004年のe-文書法からつながるタイムスタンプの高度化ということで法律的にも整備し、いろいろな権利関係も整備したほうがはるかに建設的であると思うわけです。だと思ったときには、先ほど言ったサンドボックス制度でやられている確定日付の件をより膨らませるということがかなり建設的な議論になる可能性があり、なので、今回質問させていただきたいと思います。よろしくお願います。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、BOOSTRYの佐々木さん、どうぞお願いいたします。ありがとうございます。

【BOOSTRY(佐々木)】
 御質問いただきまして、ありがとうございます。

 今、お話にあったとおり、確定日付の件につきましては、今、周知の範囲で取り組んでいることで申し上げると、実証実験のところでやっていますけども、コンソーシアム内で、トークンが移転されると、弊社の場合はですけども、コンソーシアム内でトークンが移転されると、確定日付が自動的に記録されるというような仕組みをやっております。

 ですので、そのような方針においては、おっしゃるとおり、コンソーシアム内においてのタイムスタンプというのを管理できるということになりますので、こちらが、もし進んで、タイムスタンプがほかの対抗要件よりも優先されるような形ができますと、非常に分かりやすい制度になるのかなと思っています。

 現状ですと、ブロックチェーン上の、例えば確定日付を取得したとしても、そのほかの確定日付の手段を否定されるものではないので、こことの二重の管理みたいなことが必要になるというのもありますので、これがスタンドアローンで確立されれば、そちらの課題というのは解消されるのかなということでございます。

 なので、このような形で、海外でも同じようなタイムスタンプの取得で日本の確定日付相当の取得というのはできると思っていますけども、コンソーシアムにおいて、国内法のプレーヤーで整理されるというのは一つ、より発展できるようなアプローチにはなるんじゃないかなと思っております。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。ほかに今の点について御発言いただける方、ありますでしょうか。

【松尾メンバー】
 ありがとうございます。あまりもう時間もないのですが、ポイントは2004年のe-文書法は認定タイムスタンプ事業者が必要だったわけで、これは単一の事業者である必要があって、これ、パーミッションレス型ブロックチェーンだと、そういう事業者がいないので、多分、全然法律がつくれないと思うんです。コンソーシアム、プライベートだと1社なので、その事業者がやればいいし、コンソーシアムの場合は、複数の会社によって認定タイムスタンプ事業者が構成し得るかもしれないということを言っていて、その辺の区別は結構、金融規制の誰が責任を持つかということも含めて、重要な点になるかと思いました。

 以上です。ありがとうございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。制度的に言えば、権利移転の第三者対抗要件というのは確定日付が使われる場合もありますけど、先ほど御説明のありました、受益権原簿とか、そうすると、また別の、つまり民法のルールの特別規定になりますので、だから何を使うかによって、また、制度とタイムスタンプの関係というか、接点というのも違ってくると思います。いずれにしても、貴重な御指摘をありがとうございました。

 それでは、次が松本さん、どうぞ、お願いいたします。

【松本メンバー】
 ありがとうございます。LayerXの松本です。実は本日、度々登場していた三井物産様とのジョイントベンチャーの運営も我々担当していますので、ある種、どちらかというと、今回の話題に関しては内側にいる人間なんですけども、あえて、本日、意見を述べさせていただくと、一つまず大事なのが、投資家、市場に対してどれだけ良いメリットをもたらせるかというところが、どんな技術を使おうとしたときも重要かと思っていまして、そうすると、間接コストを落としていって投資家にどれだけ還元できるか、それによって投資家がどれだけメリットを得られるか、もっと先、そこから我々の国の課題でいきますと、貯蓄から投資へというところへどうやって導けるかというところが重要なポイントなのかなと思っています。

 その中で、まず、現実を見据えていくと、本日も皆様から結構お話として、実はブロックチェーンが重要なのではない、みたいな話も出てきたりはしているんですけども、我々の実際の取組の中でも、ブロックチェーンそのものよりも非常に単純な業務改革、単純な作業のIT化、デジタルファーストな運用、また、それをベースにきちんと経営ができる経営体制の構築、そういったすごく愚直のところに重要なポイントがあるのかなと思っておりまして、本日は少し質問させていただきたいポイントの1つとして、とはいえ、今回ブロックチェーンを使って新たなエコシステムをつくることで、様々、取組が進んでいる現状を振り返ったときに、例えばコスト面、エコシステム全体を見たコスト面でどういった変化があったのかなというところは、皆様に一度お伺いしてみたいところだなというのは、実は日々お話はさせていただいておるところではあるんですけども、改めてお伺いしたいなと思っております。

 また、最終的に目指していく我々の市場でいくと、例えば弊社が扱っているのは、今、不動産証券化というところになるので、実は求めている商品性がある程度、安定性を求めている部分になりつつ、そうすると流動性をつくることと、価格変動性というところのバランスは難しいなと思っておりまして、トークン化というか、STといいますか、金融商品の流動性をつくっていくに当たって、いろいろな商品がいろいろな商品性の中で流動性をつくっていかなきゃいけない、それぞれの性質が違うものがまざってくるのかなと思っていまして、最終的にエコシステムの中で、どういった市場を目指していくのかというところは、今時点で、もし見えているものがあれば、特にODXさんだったりお伺いできたりするとうれしいなとは思っております。

 その上で、我々としては、今回の新たに立ち上がったエコシステムというのは、エンドユーザーにこれまで届かなかったオルタナティブアセットをきちんと届けるということが、できる意味での非常に意義深い取組だなと思っておりまして、ブロックチェーンとあまり関係ない意見にはなりますが、重要なものだなと思っております。
 私からは手短に以上とさせていただきまして、質問にお答えいただけるとうれしいです。

【神田座長】
 ありがとうございます。それでは、BOOSTRYの佐々木さん、どうもありがとうございます。よろしくお願いいたします。

【BOOSTRY(佐々木)】
 ありがとうございます。

 まず、コスト削減効果のところで言いますと、公募の商品ですと、これは社債でも受益証券発行信託も含めてですけども、かなりコスト削減効果というのは限定的だろうと思っています。買い手としましては、ブロックチェーンはあくまで権利移転の台帳、暗号資産でも同じですけども、権利移転の台帳としての効用が技術の根本にありますので、そういう観点でいうと、証券化商品なり社債の発行のコストの一番原点のところが、移転のところではなく、案件の組成でありますとかドキュメンテーションやデューデリとか、あとは販売活動みたいなところが、一番のところになりますので、どちらかというと、今後、効いてくるであろうと考えていますのは、転々流通するところ、これは取引所取引もそうですし、店頭取引もそうですけども、そこにおける煩雑さ、もしくはデジタル化というのに効いてくるだろうと思っています。

 なので、現状でコスト削減効果というと、直接的なブロックチェーンのところというよりは、まさに御社のほうでも、いろいろ取り組まれているデジタル化と同じようなところですけれども、弊社のほうですと、私募のSTと取り扱ったときに、これは組成もそうなんですけど、販売のところも含めたDXを推進する必要がありましたので、そのトータルで見ると、コスト削減が効いてくるというのがございました。

 なので、簡単にSTでブロックチェーンだけでいうところというよりは、その先のところを見据えて、ほかの部分でDXを推進すると、結果的にブロックチェーンも生きて、ほかのところも削減ができるという状態かと思っています。

 エコシステムとしては、エコシステムが成立し得るように、弊社、ブロックチェーンのオープンソースの支援なので、プラットフォーマーではないんですけども、そのような立場を堅持しまして、ほかのプレーヤーも我々と同じようなITベンダー、技術会社が切磋琢磨できるような、そういうエコシステムである必要がありますので、独占できないような基盤というのを維持するというのが我々のポリシーでもありますし、STにおいては、概念としては、従来と違うので難しいところではあるんですけれども、非常に重要なポイントだろうと考えております。

 以上でございます。

【神田座長】
 ありがとうございました。

 どういう市場をイメージするかということにつきましては、大阪デジタルエクスチェンジの丸山様、いかがでしょうか。御報告の中でも触れておられましたけれども。

【大阪デジタルエクスチェンジ(丸山)】
 ありがとうございます。市場につきましては、我々セキュリティトークンとして発行されるものであれば、基本的に何でもと良いというと、ちょっと語弊があるかもしれないのですが、可能な限り受け入れていきたいなと思っております。当然、先ほど坂先生からも御指摘がございましたように、投資者保護上の問題があるものは論外でございますが、一定の審査基準を持たせていただいて、それをクリアしたものであれば、市場として取り上げさせていただきたいと思っております。

 そうは言いながら、現状、目先見えておりますのは、不動産の投資証券と社債しか発行されておらないという現状がございますので、一旦開業に向けての制度設計上は、その2つを前提として構築しておりますが、いろいろな商品を受け入れてすぐ対応できるように、制度上も工夫をさせていただいておりますので、是非、この辺はいろいろな皆様からの商品のご提案をいただいて、御一緒に考えられればいいかなと思っております。

 あと、コストのところでございますが、これ、なかなか鶏と卵のところがございまして、発行数が増え、流通量が増え、取引量が増えれば、限界コストも下がっていきますが、現状ではそこまですぐはいかないと思っております。一定のコストはかかってしまいますが、ここは、我々的には先行投資的に考えながら、どうしても限界的なコストは頂戴することにはなると思いますが、なるべく市場が広がる方向でコスト低減を図りながら市場形成に資させていただければと考えております。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。予定の時間が来ているのですが、若干の延長をお許しいただければと思います。チャットをいただいている井上先生、どうぞお願いいたします。

【井上メンバー】
 時間がない中、申し訳ありません。それぞれのお立場からの御報告、どうもありがとうございました。

 私からは2つ申し上げたいと思いますが、1つ目は、権利の帰属と移転に関する私法上の権利関係を明確化することが非常に重要だというのは、本日、いろいろな形で、対抗要件とか仲介業者の破綻のときの取戻権とかの形で御説明、あるいは御質問があったと思います。そういったことの前提として、本日、STO協会の平田様から御説明いただいたときの、資料2の7ページに、「投資家から秘密鍵の預託を受け」と書いてあるんですけれども、これは表現の問題かもしれませんが、確認なんですけれども、投資家のウォレットに保管されているセキュリティトークンを、その状態のままで秘密鍵を業者に渡す、知らせる、教えるということではなくて、すなわち、例えば投資家のアンホステッドウォレットに、セキュリティトークンがあって、その状態のままで秘密鍵情報を業者に知らせるということではなくて、あくまでも金商業者の、あるいは金商業者からの委託先のコールドウォレットに移した上で保管されているということであり、そういう意味では、セキュリティトークンが分別管理されるのは、投資家のウォレットというよりは、業者の投資家用ウォレットと理解しております。

 そのように、投資家自身は、コールドウォレットの秘密鍵情報を知らない、秘密鍵情報自体は金商業者、あるいは、その委託先のみが持っているという理解が正しいとすると、そういう状況において、私法上の問題として、セキュリティトークン、あるいはセキュリティトークンに表示された権利が、どこに帰属しているのか。金商業者に帰属していて、投資家は金商業者に対する引渡請求権を持つという構成なのか、それとも振替証券のように、金商業者は口座管理をしているだけで、真の権利者としての投資家が直接、セキュリティトークン、あるいはその表示する権利を持っているということなのかという帰属の問題がありますし、表示されている権利によって違いが生ずるかもしれませんけれども、それが移転するときにどう対抗要件を備えるかも、同様に重要な問題です。

 これらは、必ずしも十分に明確でないこともあり、また、先ほど御発言がございました、特別法に基づく第三者対抗要件についても、それが完全にうまくワークするかというと、先ほど佐々木様から御説明があったように、民法上の確定日付ある通知または承諾を否定する制度ではないので、その点では、なお、明確化が必要と思います。

 以上のような明確化については、解釈上できる場合と、立法上の手当てが必要になる場合があると思うので、そういった問題を明らかにしていくことが重要ではないかと思いました。これが1点です。

 2点目は、STO協会の平田様からの御説明の中で出てきた今後の課題の中に、税の問題がございました。これは実務上、非常に重要な問題だと思うんですが、税の問題で言うと、STO協会様の守備範囲ではないのかもしれませんけれども、いわゆるデジタル社債、社債STと今回の資料で表現されているところですが、こちらについても、電子記録移転権利と同様に税法上のネックがあるというのが私の理解です。

 本日、BOOSTRYの佐々木様からの御説明資料の6ページにあったホールセール債をデジタルでということになってくると、問題が生じます。ここで例として挙げられているものでいうと、再エネ発電施設に投下する資金を調達するためにデジタル債を発行し、再エネ発電データを、恐らくスマートメーターによりリアルタイムで把握して、それをブロックチェーン上に表示する形で投資家に開示する。さらに、再エネ発電量を利率などに反映させて、いわゆるサステナブル・リンク・ボンドの形で設計するといったことが構想されていると思うんですけれども、現時点では、金融機関等が保有する振替債に認められている源泉徴収免除制度が、デジタル債を想定していないということで、これもネックだと理解しています。

 こういった税の問題や、ほかにもいろいろあるかもしれませんが、実務上、新しい制度であるがゆえに、従来の仕組み・基盤について普通に認められていることが認められないというようなことがあれば、そういったことも明らかにしていく必要があると思いました。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。STO協会の平田さん、どうぞ。

【日本STO協会(平田)】
 まず、1点目の問題ですけれども、現状利用するプラットフォームによって投資家の秘密鍵の保管方法は微妙に違っているのですが、御指摘のとおり、基本、発行会社が発行したSTの秘密鍵に関しましては、投資家に直接渡すということを今現在しておりませんで、証券会社、あるいは信託銀行、あるいは、そもそものプラットフォームの中に、預託用のウォレットを組成しまして、そちらのほうで保管するという仕組みが一般的な形になっています。したがって、先生から御指摘いただきました権利の問題というのが、取戻し権なのか、振替証券と同じような取扱いなのかというところに関しましては、いろいろ議論があるところでございます。

 それから、2点目の社債の税制に関しましては、まさに御指摘のとおりでありまして、振替債で取れる税制が、STの債権に関しては取れないということがございまして、今日はSTO協会の立場から話をしましたので、税制改正の必要性のところに記載はしていないのですけど、これは別途、日本証券業協会のマターとして管理がされておりまして、日本証券業協会から税制改正要望が昨年以来出されているという状況になってございます。

 1点目の問題は非常に大きな問題でございますし、そもそも日本投資者保護基金の補償対象に、今のところ、トークン化有価証券しか対象になっていないというような問題もあったり、今後、もし電子記録移転権利の取扱いをしている金商業者が破綻した場合のトークンの取扱いをどうするのかというところに関しましては、今後、議論を進めていく必要があると個人的にも思っており、ご指摘の問題はその前提問題として非常に重要な課題であると考えているところでございます。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。なお、本日御欠席の横関メンバーから参考人の方に事前に御質問いただいているようですので、事務局から御紹介いただけませんでしょうか。

【大来信用制度参事官】
 横関メンバーの御質問、代読させていただきます。

 セキュリティトークンのプラットフォーム開発やその運用として、コンソーシアム形式を想定されており、理想のようにも思われますけれども、時代の流れに伴うタイムリーなプラットフォームの改修や新規開発、トラブル時の責任、参加ルール、例えば安易なコンソーシアム参加や脱退を回避するための方策、そういったようなものも含めて、コンソーシアム形式での持続的な運営方法について教えていただけないでしょうか。という御質問をいただいております。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。これは佐々木さんと齊藤さんがいいと思います。佐々木さん、どうぞ、お願いいたします。

【BOOSTRY(佐々木)】
 ありがとうございます。弊社のほうで、コンソーシアムのほう、支援していますので、そちらの観点で御説明させていただきます。

 まだ我々のほうでも、コンソーシアムを始めてまだ2年というスパンですので、何かこれでもう正解ですという話ではないんですけれども、今、お話しいただいたところで言いますと、1つは、技術のところがどんどん発展する中でどのように適用していくかというところでいうと、先ほどから申しているとおり、独占的な、ベンダーも含めていないというのは非常に重要だと思っています。我々以外の機能を使ってアクセスするベンダーも出てきているというのもその証拠ですけども、我々もそこに対して新しいサービス、いいものを提供しなきゃいけないという競争原理が働きますので、こういうブロックチェーンのよさというのは、全員がフラットに戦えるということだと思っていますので、コンソーシアムにおいても、それは死守すべきいうところがございます。

 あと、責任のところですけども、こちらは責任分界点を明確にするということだと思っています。現行の商品も、既に発行されるときに発行体の代理人である、例えば銀行様と証券会社様のほうで、ここまではこういう、自分たちのテリトリーで、ここまではこういうことをやるという定義でありますとか、もしくは、それに伴うイレギュラーな対応についても業者間で整理されていまして、それをコンソーシアムで、ひな形として公開もしていたりします。
 ですので、責任分界点という観点で言うと、投資家様の何か権利が宙に浮いてなくなるということはなくて、関係者で、どういうときにどういう対応をするのかというのが整理されているというのがございます。なので、この辺も、整理できていると思っております。

 あと、参加者のところでいうと、現行ですと、多数決というか、入れる方というのが、まず一定の方、金融機関等に制約を設けた上で入れる方というのを制限しているというところで、入り口に関しては、そういう参加者のところで制限をかけているというところになります。

 あとは、安易に撤退するということもあったと思うんですけども、こちらはどちらかというと投資家様との契約関係の話になりますので、安易な撤退というのは結構難しいのかなと思っています。

 先ほど預託の話もありましたけども、投資家様との間での契約関係がございますので、これを簡単に反故できるような立場にはないと思っていますので、まだ、事例がないので何とも言えないんですけども、こういう撤退についての制約というのも、投資家様との契約ではあるのかなと思っております。

 以上でございます。

【神田座長】
 ありがとうございます。齊藤さん、いかがでしょうか。

【三菱UFJ信託銀行(齊藤)】
 齊藤です。お時間もあると思いますので、基本的にコンソーシアムの運営ところは、あまり、何というか団体によって変わるものでもないかなと思いますので、考え方は、今、佐々木さんからお答えいただいた通りです。以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、予定の時間を少し超えておりますので、大変恐縮ですけれども、本日はこの辺りとさせていただきまして、もしお気づきの点、追加での御意見、御質問等ございましたら、恐縮ですけれども、事務局までお寄せいただく、また、次回以降、御発言をいただくということをお願いできればと思います。

 本日いただきました御説明、御意見、御指摘等を踏まえ、今後さらに皆様方に議論を深めていただきたいと考えておりますので、引き続きよろしくお願い申し上げます。

 それでは、最後に事務局から連絡事項等がございましたらお願いいたします。

【大来信用制度参事官】
 ありがとうございます。

 次回の研究会の日時につきましては、皆様の御都合を踏まえた上で、後日、事務局より御案内させていただきます。よろしくお願いいたします。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 本日も長時間にわたり熱心に御参加いただき、貴重な御指摘をいただきまして、ありがとうございました。

 以上をもちまして、本日の研究会を終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。
 

<研究会終了後、メンバーから事務局へ寄せられたご意見>

【坂メンバー】
[パブリックブロックチェーンについて]
 パブリックチェーン(パーミッションレス)については、現状、セキュリティの点で課題があること、私法上の法的権利について議論があり得ること等から、特に、一般の個人が高額の資産をパブリックチェーン上に保有することは、極めてリスクが高いというべきです。現状では、STOをパブリックチェーン上で一般の個人に保有させることは、リスクが高く進められるべきではないと考えます。
 
[税法上の扱いについて]
 電子記録移転権利に関する税法上の扱いについては、総合課税の対象である匿名組合の権利について、申告分離課税とすべきとの意見があるようです(資料2の18頁、資料4の29頁)。しかし、匿名組合の出資持分の特殊性や、匿名組合の出資持分にはさまざまなものがあり得ること等について慎重な検討が必要です。また、租税回避を容易にするおそれや、デジタル資産が急速に拡大する可能性も留意すべきです。さらに、金融税制に関連して、租税負担に関するいわゆる「1億円の壁」との指摘がある点にも、十分な配意が必要と考えます。
 

【加藤メンバー】
 セキュリティトークンの発行の事例が受益証券発行信託と社債に偏っている理由として、経済的な理由に加えて、各権利の根拠法が発行者の管理する帳簿の書換を対三者対抗要件としているため、プライベート型又はコンソーシアム型のブロックチェーン上の記録の更新により対第三者対抗要件を充足する仕組みを構築しやすい点もあるように思われる。一方、対第三者対抗要件の充足に確定日付のある証書による債務者への通知又は債務者による承諾が必要となる権利については、産業競争力強化法の特例によりブロックチェーン技術を活用して上記の通知又は承諾を行うことを目指す実証計画が複数存在するが、その目的も、受益証券発行信託や社債と同じく、ブロックチェーン上の記録の更新により対第三者対抗要件を充足する仕組みを構築可能とする点にあると思われる。

 受益証券発行信託や社債に関する規定の活用及び産業競争力強化法の特例を目指した実証計画は、既存の法的枠組みの範囲内で可能な限り法的安定性を確保してセキュリティトークンの発行を行うとする試みであり、社会的な意義が認められる。しかし、何れの試みも、その本質はブロックチェーン上の記録に基づきトークン化された権利の帰属を決定しようとする点にあるように思われる。別の言い方をすれば、発行者の管理する帳簿の書換や債務者への通知等は既存の法的枠組みが要求する形式を遵守するために必要とされているに過ぎないということである。このような理解が正しいのであれば、ブロックチェーン上の記録自体に私法上の有価証券の占有又は社債株式等振替法における口座に類似の効力を付与する立法措置の要否及び是非が検討されても良いように思われる。

 また、ブロックチェーン上の記録に基づきトークン化された権利の帰属を決定する仕組みを構築する際に、ブロックチェーン上の記録の更新により譲渡の対三者要件の充足を可能とすることで足りるのか、UNIDROIT原則のように取引の安全を保護するために善意取得を可能とすべきか等も検討する余地があると考える。

 

 
(以 上)
 
 

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企画市場局総務課信用制度参事官室、市場課(内線3572)

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