「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」(第12回)議事録

  • 1.日時:

    令和5年11月13日(月曜)10時00分~12時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館 9階 905B会議室

「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」(第12回)
令和5年11月13日
  
【神田座長】
 皆様、おはようございます。予定の時間になりましたので、始めさせていただきます。ただいまからデジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会の第12回目の会合を開催させていただきます。皆様方にはいつも大変お忙しいところを御参加いただきまして、誠にありがとうございます。

 本日の会合も、前回に引き続き、オンラインを併用した開催とさせていただきます。一般の傍聴はなしとさせていただき、メディア関係者の皆様方には、金融庁内の別室にて傍聴いただくこととしております。

 さて、本日ですけれども、暗号資産等の規制及びビジネスの動向、暗号資産カストディアンのセキュリティ対策、この2つを取り上げさせていただきます。テーマに応じたオブザーバーとして、次の方々に御参加いただいております。全国銀行協会、日本資金決済業協会、日本証券業協会、日本暗号資産取引業協会、信託協会、日本STO協会、金融情報システムセンター、Fintech協会、新経済連盟、以上の方々に御参加いただいております。

 それでは早速ですが、議事に移ります。本日はまず、暗号資産等に係る国際的な規制動向について御説明をいただいて、議論をしたいと思います。これを事務局から御説明いただきます。そして、続いて、本日参考人として御出席いただいております株式会社野村総合研究所の片山様から、国内外のビジネスの動向について15分程度の御説明をいただきます。この2つが終わった後でメンバーの皆様方から御質問、御意見等をお出しいただきたいと思います。そしてその後、後半ということになりますけれども、参考人として御出席いただいておりますCGTF、Cryptoassets Governance Task Forceの菅原様と佐藤様から、暗号資産カストディアンのセキュリティ対策について15分程度の御説明をいただきました後に、またメンバーの皆様方から御質問、御意見等の御発言をいただきたいと思います。

 今、画面共有していただいておりますけれども、本日のプレゼンのテーマとして、資料1を適宜御参照いただければと存じます。

 それでは、事務局から資料2についての説明をお願いいたします。久永室長、よろしくお願いいたします。

【久永デジタル・分散型金融企画室長】
 久永でございます。事務局から、国際的な規制動向について説明させていただきます。国際的な規制動向につきましては、今年4月の第9回研究会でも報告させていただいたところでございますので、そこからのアップデートを中心に紹介させていただきます。

 次のページをお願いします。今回は、国際組織における動向と各法域における動向の2つの固まりに分けて御報告いたします。

 まず、国際組織の動きとしては大きく4点ございます。まず1点目、IMF-FSBによる統合報告書でございます。この報告書は、一番上の四角のところでございますが、暗号資産に係る包括的な政策枠組みの策定に向けてIMF-FSBが今年のG20サミットに提出したもので、金融安定、マクロ経済への影響に関する分析と政策提言、また、政策実施のロードマップが盛り込まれております。

 政策提言の内容といたしましては、真ん中の四角のところでございますが、適切な規制・監督の枠組みがベースラインとなること、また、暗号資産業者が緩い法域に拠点を置き、そこからグローバルにサービスを提供する傾向にあるということを前提に、G20以外の国も含めて政策枠組みを整備することなどが盛り込まれております。

 ロードマップは、FSB、IMF、FATF等、基準設定主体による取組を集約したもので、具体的には、下の四角でございますが、規制枠組み実施のための取組のほか、先ほど述べたとおり、暗号資産が容易に国境を越えるために、G20だけで規制をしてもそれ以外の国が追いついてこなかったら意味がないということで、非G20メンバー国へのアウトリーチ・プログラムをIMF等が作成するとしている点が特徴的かと思います。

 次のページをお願いします。国際組織の動向の2点目が、FSBによる暗号資産とグローバル・ステーブルコインに関するハイレベル勧告でして、この内容は4月にも説明させていただきました。その際は市中協議プロセスの途中であったかと思いますが、市中協議を経て、今年7月に最終化されたということの御報告でございます。4月時点から内容に大きな変更はございません。今後のスケジュールといたしましては、下の表でございますが、来年末までに、DeFiや複数の機能を組み合わせる暗号資産サービス提供者がもたらす金融安定へのリスクの分析、それを踏まえて、追加的な政策の要否を評価する、また、2025年末までに勧告の実施状況を審査し、勧告のアップデートの要否を評価することとなっております。

 次のページをお願いします。国際組織の動向の3点目、4点目は、証券監督者の国際組織であるIOSCOの勧告案でございます。IOSCOは、このページの暗号資産・デジタル資産に関する勧告案、また、次のページの分散型金融に関する勧告案の2点の文書を市中協議にかけ、いずれも年内に最終化される予定となっております。この暗号資産に関する勧告は18項目と多岐にわたるのですけれども、いずれも証券監督者の観点から、暗号資産市場の公正性、投資家保護に関する勧告となっております。

 具体的には、勧告の3から6が、CASP、暗号資産サービス提供者に対して、様々な機能を公正に果たすこと、そして、情報を開示することを求めるものとなっております。勧告7は、CASPが様々なサービスを提供するために利益相反が生じる可能性が高いということで、利益相反の管理・軽減を求めるものとなっております。勧告8から10は、不正取引への対応や非公開情報の管理に関するものとなっております。11は当局のクロスボーダーでの協力、12から16は顧客資産の保護、17は暗号資産を取り扱うに当たっての運用上・技術上の様々なリスクの管理、こういったものが盛り込まれております。

 次のページをお願いします。国際組織の動向の4点目、IOSCOの、先ほど申し上げた分散型金融、DeFiに関する勧告でございます。分散型金融については、各法域がどのようにアプローチするか模索している段階かと思います。このIOSCOの勧告では、上の四角の第2文でございますが、DeFiで提供されるサービスは、よくよく分析をしてみると、従来の金融市場で提供されるサービスと実質的に異なるものではないという判断を前提としております。

 勧告の主な内容ですが、DeFiについては、責任主体が誰なのか分からないという指摘がつきまとうところですが、勧告2では、DeFiの構造を分析すると、集権的な部分があって、そこに責任者と呼べる者がいるはずである。そういった者を特定すべきであると言っております。責任者を特定した上で、勧告3でございますが、既存の枠組み、必要ならば新たな枠組みをつくって、既にあるIOSCOの基準に沿ってDeFiを規制、監督していくべきとしております。この後、4から6までの勧告は、先ほどの暗号資産に関する勧告と似た項目が続いております。4では利益相反への対処、5では運用上・技術上のリスクへの対処、6では包括的な情報開示が盛り込まれております。7では、DeFiは時に複雑な構造を伴いますので、それに対峙する当局が包括的な権限を持ち、また、執行するための専門知識等のキャパシティを涵養すべきといった勧告となっております。8はクロスボーダーでの当局の協力、9はDeFiと暗号資産市場や伝統的金融との相互関連性をしっかり理解すべきといった内容となっております。このとおり、国際組織に関しては、FSB、IMF、IOSCOを中心に、暗号資産、また、DeFiに関する作業が足元で進んでいるという状況でございます。

 次のページをお願いします。続いて、各法域の動向でございます。まず、アメリカでございます。アメリカでは、裁判の動き、議会の動きと両方見られるところでございます。裁判の方ですけれども、SECが暗号資産取引所を提訴し、また、業者と和解をするという事例が見られるところでございます。例1が提訴の事例でございまして、今年6月にバイナンス、コインベースが証券取引法違反で提訴されたところでございます。例2が和解の事例でございまして、今年の2月にはクラーケン社と、8月にはビットトレックス社と和解が成立したところでございます。

 また、米国では暗号資産の証券の該当性が争点となるところですが、その観点で注目すべき判決を2つ目の白丸で御紹介しております。今年7月の連邦地裁の判決でございまして、リップルが取り扱う暗号資産XRPについて、伝統的に証券の該当性について適用される基準であるHowey Testを適用した上で、機関投資家向けの当初発行は証券に該当する一方、取引所においてプログラム上で個人向けに販売されるものは証券に該当しないという判断が下されております。ただ、現在も係争中でございますので、最終的な判断ではないと理解しております。

 3つ目の白丸でございますが、5月の研究会の際に、UNIDROITのセッションでTirado教授からも御紹介があったものですが、顧客資産の保護に関する裁判として、セルシウス社という暗号資産レンディングプラットフォームの破綻に関するものを記載しております。この判決では、破産した事業者に預けられていた顧客の暗号資産の大半が、同社に帰属するといった判断が下されております。

 議会の動きですけれども、米国では、これまでも多くの法案が提出されたもののほとんどが委員会を通過しないという状況が続いてきたわけですが、その中で、今年7月に出された2本の法案は、下院の委員会を通過したという意味で一歩前進したのかなと理解しておりまして、その概要を下の青い四角で御紹介しております。1本目が暗号資産規制法案で、この中では、デジタル資産の定義、SECとCFTCの権限の分配、発行者に対する開示の義務、仲介者に対する規制等が盛り込まれております。2本目がステーブルコイン規制法案で、この中では発行者を銀行の子会社、ノンバンクに限定した上で、それら発行者に対し、償還義務等の規制を課すということとなっております。ただ、これらの法案が、今後、下院の本会議、上院で可決されるかは分からないと思います。

 次のページをお願いします。欧州ではMiCAというステーブルコインを含む暗号資産の包括的な規制が今年5月に欧州理事会で承認され、来年以降順次施行予定となっております。この規制は、3ポツの全体像のところですけれども、暗号資産をステーブルコイン以外の暗号資産、資産参照型トークン、電子マネートークンの3つに分け、このうち、後者の2つがステーブルコインに類するものという理解でございますが、これらについて、発行規制、仲介者規制、不公正取引規制をかけるという体系となっております。

 次のページをお願いします。最後に、アメリカ、EUを含む主要6法域の動向を4月に御報告した内容からのアップデートを中心にまとめたものでございます。アメリカ、EU以外での主な動向といたしましては、英国は、昨年4月に暗号資産のハブを目指すとの方針を示したところですが、今年6月に既存の金融規制の枠組みの中で暗号資産やステーブルコインを規制するための法案が成立いたしました。また、先月末には、暗号資産の規制に関する市中協議の結果が、さらに、この資料では間に合っておりませんが、先週にはステーブルコインに関する規制のアプローチ案が当局から出されたところでございます。

 シンガポールでは、今年7月に当局から暗号資産サービス提供者に対する顧客資産の分別管理等の顧客保護強化策が出され、年末までに実施することとされております。8月には、当局からステーブルコインに関する規制枠組みも発表されております。

 香港では、仮想資産取引プラットフォームについて免許制とする規制が今年6月に施行されております。9月には、無免許でプラットフォームを営んでいた業者JPEX社が詐欺容疑で逮捕されるという事案があり、それを受けて、当局からプラットフォームの免許取得者等のリストが公表されております。

 このように各法域で暗号資産やステーブルコインの規制枠組みの整備に関する動きが頻繁に見られるところであり、我々としても状況を逐次フォローしてまいりたいと考えております。以上でございます。

【神田座長】
 どうも御説明ありがとうございました。それでは続きまして、野村総合研究所の片山様から、資料3についての御説明をお願いいたします。片山さん、今日はお忙しいところを御参加いただき、誠にありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【野村総合研究所(片山)】
 ありがとうございます。ただいま紹介にあずかりました野村総合研究所の片山と申します。これまでこちらの研究会の資料、議事録等を拝見させていただきまして、様々な御議論を勉強させていただきまして、大変ありがとうございます。そういった者からの説明になりますので、内容的にトゥーベーシック、釈迦に説法のところもありますけれども、一つの見方としてお時間を頂戴できれば幸いでございます。

 次のページをお願いいたします。まず初めに、片山とは何者ぞというところの自己紹介でございます。もともと十数年前ですかね、株券電子化とか、あるいは証券決済期間の短縮といった、伝統的な金融市場における効率化とかリスク軽減、こちらのほうに参加させていただいておりまして、その意味ではどちらかというと伝統的金融系の者ではあるのですけれども、その関係から、むしろ暗号資産あるいは分散型金融に対してどういうふうな見方ができるのだろうかというところを御紹介できればと存じます。

 当時2016、17年ぐらいですか、APECに係る金融関係の民間の集まりに参画していたところ、ビットコイン等の市場が急拡大する中で、他の金融機関の参加者から、「いや、あの辺はちょっと近づかないほうがいいよ」というふうな言い方とか、ちょうどたしかJPモルガンのDimon CEOが、17年ぐらいでしたか、「これは詐欺なので、取引したら解雇する」なんていう言い方をされていたのを覚えております。

 ただ一方、2018年のスケーリングビットコインというイベントに参加したときに、若いエンジニアの方々が目をきらきらさせながら、必ずしも儲かりたいという話ではなしに、アンダーライイングのテクノロジーのところにすごく関心を持ち参画されていたので、これは何か違うものになるかもしれないというような感じを受けたことを思い出しております。

 その後3年ほど金融情報システムセンターのほうに出向しておりましたので、地域金融機関を含めた金融機関のITのガバナンス等の研究をしていたのですけれども、野村総合研究所のほうに戻りまして、デジタル金融、例えば左側のほうにありますように、例えば決済手段としてのステーブルコインの安定性とか規制といったところに関心を持ち、ペーパーを書いたりしています。

 それから、真ん中のところになりますけれども、御存じのとおりのマルチステークホルダーアプローチを捉えているBGINのほうの一参画者として、ちょっと字が細かくて申し訳ないですけれども、例えば「Proposal of Principles of DeFi Disclosure and Regulation」の共同著者というよりは編集協力ですけれども、そういった形で携わらせていただき、直近になりますと、「Potential Points of Failure for Stablecoins」のコントリビューターの一人という形で加わっております。

 また、右のほう、こちらも再びAPEC関係ですけれども、ホールセールの中央銀行デジタル通貨、これは各国が色々な形で研究しておるのですけれども、それぞれがばらばらにやると、デジタルサイロになりかねないということで、共通のプリンシプルなるものを持っていったほうがいいのではじゃないかということで、こちらはちょうど今ですかね、APECの財務大臣・中央銀行総裁会議のほうで御討議いただいているような内容となっております。ちょっと出だしが長くなりましたけれども、こういうふうな立場の人間でございます。

 次をお願いいたします。これは初め、非常に単純な絵柄でございますけれども、御案内のとおり、デジタル分散型金融を直接、例えばノンカストディアルウォレットで利用しようとすると、勿論できなくはないのですけれども、相当なITのリテラシーあるいはリスクですかね、この後CGTFの方から詳しく御案内いただくと伺っておりますけれども、そういったことが必要である。ですので、大多数の方はむしろ右側、交換業者の口座を開いて、言い方はあれですけれども、それの上がり下がり、ないしは場合によっては、そこで一旦交換しておいて、真ん中の破線のところになりますけれども、自らノンカストディアルウォレットを持っている部分については、一部の資産をそちらに動かして、DeFi等も使う場合もあると。ただ、この右側のところ、便利である一方、結節点となることで、当初のマウントゴックス事件も含めてやはり狙われやすいところになったということで、最初に規制が整備されたものであると理解しております。

 次お願いいたします。こちらは色々な方々が、実際にこれを利用している方がどれくらいいらっしゃるのかと。1人が複数口座を持つ場合もありますし、複数ウォレットは当たり前でしょうから、必ずしも絶対数自体が大きな意味を持つわけではないかと存じますけれども、比率はある程度参考になるのではないかと。例えばCrypto.com様のケースですと、大体9割ぐらいは先ほどの右側の交換業者を使う人、要は、9割方は直接ではなしに間接的に使っている方が大多数である。いわゆる伝統的な何らかのリアルエンティティを持つ形でこの市場にエクスポージャーを取りに行っている人というのが相当数いるだろうと。そこが、アクセスの仕方が非常に重要になんじゃないかなというような感じを受けるわけでございます。

 また、Chainalysis様の推計でも、ウォレット数の中で実際にアクティブなのはもう1割に満ちるか満たないかぐらいですので、やはり一番上の中の1割の中でも、さらにほんの僅かの方たちが実際にDeFi等に普段からアクセスしているので、氷山の一角と言い方はちょっと別かもしれませんけれども、ほんの一部の方々、それから、ドーマント的にいらっしゃる方、それから、伝統的といいますか、ある程度のリーガルエンティティを持ったところを通して利用されている方の総合という形の構造なのではないかなと存じます。

 次お願いいたします。その意味では、ファンドの器を通して暗号資産と伝統的金融市場の接続というものが段々と図られようとしている。これがまだ現在進行形なのかというところがこのページで御説明したいところでございます。ビットコイン、セルフカストディが使えるようになってからもう十数年経ちますけれども、マウントゴックス事件を含めて、やはり直接持つこと、あるいは米国等の海外においては必ずしも安全でない交換業者を通して持つことに関するリスクはかなり高いよねと。

 ということになりますと、一つの手段としては、GBTC、グレースケール社の設定されているクローズエンド投信。これは、中身は1つの資産に投資しているだけですので、投信といえども、普通の証券投資のように銘柄選択に付加価値を持つ、あるいはトラッカーでもできるだけ少ない銘柄でインデックスにトラッキングするという、そういう技の部分というよりは、1つのものを持つだけだし、暗号資産を直接管理しようとすると例えばウォレットの鍵をなくしてしまう、あるいは取られてしまう、あるいは業者そのものが怪しかったということのリスクを避ける手段としてこの投信を持つというところの付加価値があるわけですが、クローズドエンドということで必ずしも1対1の相互交換性が日頃から行われるわけではないということになりますと、他の証券投信でもクローズエンド投信というのはプレミアムだったりあるいはディスカウントであったりというふうなずれが生じるわけですけれども、こちらに関しては相当期間ディスカウント状態のずれが残っているということで、いわゆる失ってしまうというカストディリスクは低いものの、マーケット的なディスカウントという意味のリスクを常に持ってしまうということが投資家にとってはどうなのだろうという状態でございました。

 それ以外の手段としては、先物が2017年にシカゴで上場されましたので、こちらを持つこともできるのですけれども、やはり先物ですので限月の話がありますので、長期投資できるかというとちょっと違うかもしれない。となると、先物にリンクするETFというのがこれはもう出来ているわけでございます。ただ、もちろん、先物というよりもやはり現物のほうが分かりやすいという投資家さんもいらっしゃるので、暗号資産にリンクする形の上場物というのは様々な方がSEC申請をしたと。ただし、その申請の中で、上場のリンク先の相手であるビットコイン等の資産のプライスをしっかり把握できているのか、そこに不正が入る余地がないのかという辺りでSECがこれまで却下してきた例が多かったわけですけれども、かなり大手どころの運用会社様が今申請しているということで、巷では認められる可能性が高いのではなかろうかと。あと、それ以外の先物ETFと現物ETF、これ片方を認めて、片方を認めていないのはどうなのだとか、そういう論点もありながら、認める可能性が高いのではないかというような観測報道がいろいろされています。

 いずれにいたしましても、中身1銘柄、例えばビットコインだけとなりますと、これは銘柄選択の付加価値というよりは、どちらかというと、安全な保管の付加価値であると。日本ですと、FTX Japan社の際も金融庁様はじめとするいろいろな制度がしっかりしていたということで特段失われるということはなかったわけですけれども、米国も含め海外に目を向けると、必ずしもそこがまだ十分ではないということで、では、普通の方々がエクスポージャーを取るのにETFを通したほうが安心なんじゃないかというような見方があるということは事実なのだろうなと。という辺りで、このところが注目を集めていると受け止めております。

 次をお願いいたします。その意味で今、ETFという形で、ビットコインの対法定通貨の上げ下げという意味でのエクスポージャーの取り方の接続の話を申し上げましたけれども、いわゆる決済手段としての接続という意味で、海外におけるいわゆるステーブルコインという意味では、御承知のとおり、USDCも含めて大多数の、大半の資産は短期国債ですが、場合によっては社債も含めてと。どちらかというと、やはりトレジャリー中心ですけれども、それプラス銀行預金というもののアンダーライイングのアセットを、これ、裏付資産とか担保という言い方をされますけれども、見方によっては、裏付資産を小口化してトークン化したようなものにも見えてしまうわけでございます。シリコンバレーバンクがちょっと危機になったときに、預金の部分に対する不安からUSDCのプライスがかなりディペッグするという話がございましたけれども、信用リスクという意味で短期国債等のほうの信頼が崩れたかというと、当時も全然崩れておりませんので、そういう意味では一種の短期国債等を束ねたものをトークン化したものについての信頼は崩れていないと。

 今後、例えば先ほどMiCAの話がありましたけれども、例えば欧州圏でデジタルユーロなるものが出てきて、ただし、上限3,000ユーロとかと言われる中で、並行して例えばユーロ建ての非常に信頼度の高いものを裏付けするステーブルコインが出てきたときにどういう比較感になるのかなと。デジタルユーロはまだ出てきていないものですから何とも断定はしづらいですけれども、この辺りが、もちろん資産価格のアップサイドを狙うものではないですけれども、一つの手段として気になるところではございます。

 次お願いいたします。ステーブルコイン自体が、先ほどのページで申し上げ忘れましたけれども、主立った理由が、普通の取引上、CeFiからDeFiヘのオンランプとかオフランプのところの入り口になりますし、それはまた、例えばビットコインとの上り下がりの差を狙う、いわゆる投機的収益を狙うとか、その他のいわゆるDeFiでの使われ方というのが実際にはステーブルコインは非常に大きかったとは言われているのですけれども、そのDeFi市場自体が、昨年のTerraの崩壊、あるいはそれ以外の幾つか、FTX等々の破綻等を受けて、一旦はかなり小さくなりました。ただ、こういったものが、例えばトークンエコノミーで一旦下がり始めるともう消滅するのではないかというような見方も言われておりましたけれども、少なくともこのグラフを見る限りにおいては、若干微減には見えますけれども、崩壊とはちょっと言い難い。少なくとも1年ぐらいは概ね横ばいという意味では、落ち着くという表現もできなくはないなというような状態が左上でございます。

 もう一つ、左下のほうに目を向けてみますと、これはUSトレジャリーの長期及び短期のいわゆる金利がかなり上昇する中で、ステーブルコインを持ち続けることの収益獲得機会の喪失というのですかね、もったいないと。トレジャリーを持っていれば、あるいは、極端に言うと、定期預金を持っていたって相当な利回りがあるのに、ステーブルコインを持っているとゼロだということだとかなり無駄に見えますので、このピンク色のUSDCとか、それ以外のステーブルコインも軒並み若干減る傾向にあると。いわゆる危機の話はちょっと別ですね。そういう資産の効率運用という意味で少し下がってくる。その背景となる事例を一つ後でまた申し上げます。

 あと一つ気になるのは、左側でTetherがちょっと増えているのですね。これは先ほど理由では説明が非常に難しいので、何らか資産効率が悪くても持っていたい方々、ひょっとすると、米国在住者じゃない方々でそういう方々がいらっしゃるのかなという気もしますけれども、ここはクエスチョンのまま残させてください。

 そして、既存金融との接続という意味で幾つかの動きを見てみますと、例えばCircle社とMoneyGram社が共同で、昨年になりますけれども、USDCを一種の送金媒体、例えばウクライナへのという形で、通信事情あるいは途中の中継機関の信用度合いというのですかね、大丈夫なのかというのが必ずしもそうでもない場合における送金媒体としてこういったステーブルコインが使えるのではないかとか、それから、今年8月になりますと、PayPal社がステーブルコインを発行するというアナウンスをされています。日本に目を向けますと、御案内のとおり、今回の改正法を受けまして、例えば複数の銀行様とか信託銀行様とG.U.Technologies社とのところでステーブルコインの実証実験を始めるとか、あるいはProgmat社と、あと、複数の会社様のほうで、電子決済手段等取引業として仲介業を使う形で、この場合はパーミッションレスのブロックチェーンを含めて検討されているという話を伺っております。

 このうちのPayPal社について、次のページで見たいと思います。立ち上げ直後、まだ立ち上げ段階、右側の階段状のところ、時価総額はUSDCに比べると二桁も三桁もまだまだ小さい中で、増えつつあるのですけれども、左のところに目を向けますと、ドルに対する価値が必ずしもこれは安定していないとは、どうなのだろうなと。元々利用する目的が、どちらかというと、PayPalは送金的なアプリケーションを想定されている中で、これぐらい動くと、送金のための手段としてはどうなのだろうと。まだまだ勿論立ち上げですので、ボリューム的に増えてくれば安定してくるかもしれないですけれども、なかなか大変なのだなというところが見てとれるわけでございます。

 次のページをお願いいたします。そういう意味では、先行して実はユーロ建てのステーブルコインも2018年頃から出てはいます。2021年がTether社のユーロ版、それから、2022年にはCircle社がユーロ版という形で出されてはいるのですが、ドルに比べて規模的に非常に小さい、200分の1ぐらいの中で、先ほどのSTSS社によるEURS、Tether社によるEURTに関してもそれなりに、これはあえて8月時点、上下動が大きかった時期を含むグラフを表示しておりますけれども、大きく、これ、右側のスケールを同じにしてみると、USDTがこれぐらいですので、やはりステーブルかと言われるとどうなのだろうというような状況ではございます。 そういう意味では、ドル以外のステーブルコインはなかなか大変だなと。とりわけパブリックチェーンの上で見える化しておりますので、それが見えてしまうというところが大変ですし、やはり、ステーブルコインのこれまでの利用のメインがDeFiの、DeFiですと、大抵の部分がUSドル対比で尺度されるものが多い、ベースカレンシーとしてドルを見ているものが多いものですから、やはりドル中心になっているというのがこれまでの現実かと存じます。

 次のページをお願いします。そういう意味でDeFiの話、先ほどIOSCOの勧告の話を事務局から御案内いただきましたけれども、このDeFiというのが一体何なのだろうと。左側、大きなフラスコのようなものを描いておりますけれども、これ自体、もともと実験室のようなものだとすると、それは厳重な管理の下で特定の人しかアクセスできないものであるにもかかわらず、一時期かなりのペースで大きくなったものですから、これに対する一つの規制をかけつつ、これまで実際にはDeFiは一部の機関投資家とか、あるいは暗号資産で財をなした個人とか、これにステイクを取ろうとすると相当な規模でないとできなかったわけなのですが、今後小口化されてこないとも限りませんので、そこに対する規制という話が一つの観点。

 また、本日のプレゼンテーションの一例であります一般利用という意味では、やはり右側の、どちらかというと工場役を担う既存の金融。例えば中銀による実験という意味ではMASが関わっておりますProject Marianaの中で、いわゆるDEX的な取引の形態を外国為替にやってみようとか、それから、一つの金融グループという意味では、有名どころで見ていきますと、JPモルガンさんのOnyxの中で日中同時担保融資のような仕掛けを、DLTになりますけれども、DLTの仕組みを使って、レンディングのようなプロトコルを1つの金融グループの中でやることによって、今までの、どちらかといえば、やはりバッチシステム的な海外の銀行基幹システムの下で、日中ファイナンスといいますと無担になりがちなものを有担でレンディングするというような、そういったこともホールセールの中でできておりますし、それが例えば複数の企業、金融グループということになりますと、Regulated Liability Networkと呼ばれるものとかに出てくるのかなというふうに存じます。

 最後に2つほど、実際の気になる動きを説明させてください。

 一つは、伝統的金融機関によるいわゆるReal World Assetのトークン化です。BOCI、中国銀行の投資銀行部門、実態的には香港ですが、2億元、日本円に仮に直すと42億円ぐらいですかね、Digital Structured NoteというものをUBS社の支援を得て、プレスリリースを見る限りは、イーサリアムのメインネットを用いるという形で発行されている。

 次をお願いいたします。もう一つ、トークン化資産の話でこういった議論もございます。一つはこれ、証券化のようなトークン商品ですけれども、ローン債権を束ねて、それをベースに資産プールをつくりまして、それをトークンによりその権利を移転すると。ただし、これは例えば米国居住者の場合は相手を適格投資家に絞るということで、いわゆる公募とは異なるマーケットに対してではあるのですけれども、一種の証券化商品であると。当然証券化商品ですので、アンダーライイングの資産が場合によっては傷む場合もありまして、例えばこのケースですと、ConsolFreight社という、これはアメリカの法人ですけれども、プールの中身がオーストラリアとかニュージランド絡みの債権の中で、ちょっと返済の履行停止がかかったものがある。そうすると、若干資産が傷むわけですが、この証券化商品に対して、DeFiというか、いわゆるステーブルコインの特殊な形の一種であるDAIを発行しているMakerDAOが裏付資産の一部としてこの商品を買っていたようです。

 ただ、形勢的にはこれはノックオンエフェクトで影響するのかというような気配もあったのですけれども、実際には、もちろん規模が非常に小さかったので、割合が小さかったので、影響は小さそうであると。他方、AaveDAOのガバナンスフォーラム、ディスカッションを見ていますと、丁度同じ時期、こちらの、全体としてはCentrifuge社という会社の仕組んでいるものですけれども、この商品に対して、一種の財団といいますか、DAOの資産の一部を、これまでのUSDCだけでは機会損失になるので、投資しようじゃないかというところをかなり活発に、勿論反対意見も出ているという意味で活発な意見が出ているので、そういう意味では、先ほどのUSDCが減っているというところの裏側で、こういった形のDAOの資産が一部こういうふうなリスク商品、もちろんトレジャリーであっても金利リスクはあるのですけれども、こちらの場合はいわゆる信用リスクを伴う商品にも投資し始めていると、そういうフェーズに入ってきているように見えます。

 ちょっと長くなりましたが、最後に、気づきです。次をお願いします。一つ、実物資産のトークン化がパーミッションレス・ブロックチェーンを用いて行われる場合にどのように定めているのだろうかと。二次流通や小口化、先ほどUBSの例で申し上げましたとおり、小口化といってもどういう範囲だろうか、DeFiの利用の可能性があるのだろうか。あるいは、こういった小口化とか、あるいは先ほどのレポ、レンディングのような形で裏付資産での使われ方がある。それから、米国債の金利上昇を受けて、運用手段としてのこういった一種のトークン化商品というか、証券化商品のようなものとかが出てくるのかもしれないなというところが気づきでございます。以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、これまでの御説明を踏まえてメンバーの皆様方から御質問や御意見を出していただきたいと思います。国際的な規制動向や国内外のビジネス動向を踏まえまして、何か新しいリスクが生じていると考えられるのかどうかとか、リスクが生じている場合に規制・監督への示唆というかインプリケーションが何かあるかといった観点、それから、もちろん御説明いただいた内容についての御質問等をお出しいただければと思います。今日はまだ後半部分がありますので、時間の関係上、質疑応答は最大でも30分程度とさせていただければと思います。

 どなたからでも結構ですので、御発言をお願いいたします。いつものように、御発言いただける方は、チャット機能を利用して、全員宛てに1行入れていただければありがたく存じます。

 森下さん、どうもありがとうございます。どうぞお願いいたします。

【森下メンバー】
 この後、授業があって失礼させていただくので、質問だけさせていただければと思います。各国の規制状況についての御説明をお伺いしていますと、発行者及び中間者に関する規制が色々と進んできているというお話だったと思います。ただ、私の理解では、日本はこの点、比較的規制がうまく進んでいて、こういった各国の状況はあるものの、現時点において日本として抜本的に何か大きく見直さなければいけない点があるとかそういうことではなく、若干の微調整が必要になる部分はあるかもしれませんけれども、そのような理解でいいのかということです。

 あとは、もう一つ、G20以外にどう働きかけていくかということが一つ課題になっているというお話があったと思いますけれども、やはりクリプトヘイブンというか、そういうような国が出てきつつあるというような中で、そういうような非常に規制の緩い国に対する取組に関してどのように議論がされているのかについて教えていただければと思います。以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、よろしくお願いします。

【久永デジタル・分散型金融企画室長】
 森下先生、御質問いただき、ありがとうございます。

 まず1点目の、各国の規制の動向を踏まえて、日本の今の法体系に対して何か改正の必要性があるかですけれども、先生が仰るとおり、日本は、各国よりは一足先に暗号資産について規制体系を整備してきたところでございます。この1、2年で他の主要な国も、特に欧州やシンガポールなどですけれども、暗号資産の規制の体系を整えてきていると。アメリカは先ほど御説明したとおり、まだ法案の段階で、この先どうなるかまだ見えないというような全体像かと理解しております。

 日本の規制体系とどういった違い、共通点があるのかという点は我々も常にチェックしていかなければいけないと考えております。日本のこれまでの規制のアプローチは、基本的には暗号資産交換業者、いろいろな役割を交換業者が果たすわけですけれども、どちらかというと仲介者のようなところに対して規制をしていくというアプローチできたわけでございます。海外では、そういったアプローチもあれば、仲介者と発行者を分けて規制をするアプローチも見られるところでございます。 他国の動向を踏まえて、今時点で規制の体系を変更する必要あるかというとそういうわけではないかなと思っているのですけれども、例えば、今の暗号資産交換業者を中心とする規制の体系が他国の体系とどこまで整合的であり続けるのかという点は、今後もフォローしていかなければいけないと考えております。

 2点目の、G20以外の国へのアプローチでございます。ここはまさにこれからどういうふうにアプローチをしていくかというところをIMFなどが中心となって検討していくというふうに承知をしております。G20の中でもまだ規制の枠組みが整っていないところもあるわけでありますけれども、他のG20以外に目を向けるとその傾向が顕著であるということで、どういった実態かを細かくフォローしながら、G20以外の国に対してG20がどうアプローチしていくか、国際機関の協力も得ながら、今後検討が進んでいくと考えております。補足ですが、IMFがここで言及されているのは、IMFが各国に対するサーベイランスという形で定期的に金融の安定性についてモニタリングをすることとなっていて、必要あれば、技術支援で当局に対して暗号資産の規制の在り方についてサポートもできるということも踏まえて、ここでIMFが言及されていると理解しているところでございます。以上でございます。

【森下メンバー】
 ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、チャットを頂いている順番で行きたいと思います。次は、松尾さん、どうぞ御発言をお願いいたします。

【松尾メンバー】
 ありがとうございます。まず、機会を頂き、ありがとうございます。一つは片山様への質問で、一つはコメントになります。

 片山さん、まず御説明ありがとうございます。それで、私が聞いていて一番関心を持ったのは、もう十何年経ってある程度の規模を持つものになって、だからこそ事務局に御説明いただいたように、規制の枠組みが概ねサービスが固まってきたのかなと思う一方で、これだけある意味規模が出てきたものに対して、持続性のあるビジネスモデルをつくっていくのに何が必要なのかという、それをお伺いしたいと思っています。

 それは何故かというと、日本のステーブルコインの価格の安定性みたいなものが、例えばアメリカのステーブルコイン、米ドル建てのステーブルコインもやっぱり安定するのに時間がかかりそうだという話があったのですけれども、例えばTetherのビジネスモデルというのがそれでも持続的なものかどうかよく分からなくて、やっぱりそれは米ドルのステーブルコインあるいはTetherがどういうふうにして利益を上げているのかということに非常にかかってくるのですね。やっぱり米ドル建ての資産の金利が非常に高いということも含めて、多分いろいろな持続性に対する重要な要素あるいは懸念要素があると思うのですけれども、この辺のことを考えなければいけないのだろうと思っています。

 片山さんもいらっしゃいますけれども、来週の月曜日にCBDCとセキュリティトークンとステーブルコインと暗号資産という、それぞれ主体も異なるし、目的も異なるけれども、組み合わさるようなものの調和をどうするのかという議論をするのですけれども、片山さんが仰ったように、ビットコインを含めて今まで色々な持続的な実験をしてきたと思うのですけれども、その実験したものをキメラのように、オーバーレイのように、あるいはインターネットの技術がしていたように組み合わせることでまだ実験を続けるのか、あるいは一定の技術や運用に対してコンセプトや評価軸を決めていって、持続的にするにはどうしたらいいかということを改めて議論するのかって結構重要な論点だと思っていて、レポという言葉も出ましたけれども、レポってすごい複雑度が上がるので、我々が実際見てきたものがより持続性があるかということを片山さんにお伺いしたいと思っています。

 あと、コメントですけれども、事務局の資料にあったように、先ほど申し上げたように大分固まってきていると思うのですけれども、一方でできるものを考えていて、規制とか監督の実効性みたいなものをどう担保するのかということのテクノロジーは何なのかということが改めて重要だなと感じました。この研究会が将来どれぐらい続くのか分かりませんけれども、将来の方向性がどうあるべきなのかということを、特にここでオブザーバーの方も、事業参加主体にいろいろ来ていただいているのですけれども、事業者の方からも将来展望みたいなものを頂けるといいなと思っています。以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、片山さん、お願いできますでしょうか。

【野村総合研究所(片山)】
 ありがとうございます。1点目の目の持続性のところ、Tetherそのものは、皆様御案内のとおり、USドル建ての金利が非常に高い中で、発行したTetherそのものには金利はつけないということで、相当な運用収益を得てはいるのですけれども、ただ、それはTetherのちょっと独特の、もしかするとDeFiだけじゃない需要があるからこそ、無金利のものに対する保有需要があるわけで、そうでないUSDC等を見ると、必ずしもそうではない。規模的に大きくなっていない。ということは、アンダーライイングの例えばDeFiも含めたそこの部分にどういった価値があるのか。例えば暗号資産のアップサイドのときにUSドル建てを求めると、そういうこと以外のところに求めなきゃいけないのではないかなと。

 その意味では、最後の2つぐらいの例、証券化の話とか、レポ的な話というのは出しましたけれども、これまでの仕組みでは、例えば規模的に、例えば最後はレポ的なものですと、ベースが人民元でしたけれども、非ドル建てとかの、他の資産では、従来型では規模的に成立し得なかったものについて、こういった新しい考え方を持てば、例えばIT投資的なものも含めてグローバルスケールなのだけれども、ある程度安全性を持ってできるものというところを見出していくような、模索するというところ、これまでこれがもう既にありますという状態ではまだないと思いますけれども、そこを見ていくのが大事なんじゃないかなと。その意味でも、先ほど、最後のほう、実効性の話もありましたけれども、では、誰がどんなことをできていて、どのぐらいの規模になっているのだという、マーケットそのものをちゃんと把握する術を、皆さんが共通して認識する術が整備されていくということが大事なんじゃないかなというような気がいたします。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、次に進ませていただきます。次は坂メンバー、どうぞご発言お願いいたします。

【坂メンバー】
 よろしくお願いします。私のほうからは3点発言させていただければと思います。

 まず1点目ですけれども、国際的な規制動向ないし新たなリスクについてですが、今年3月にIOSCOがリテール市場コンダクトタスクフォース最終報告書を公表しております。日本証券業協会のほうで7月に仮訳が公表されております。この報告は、広く投資取引全般に関するものですけれども、かなり暗号資産やDeFi周りの実情や問題点が指摘されております。ここでの指摘のうち重要と思われる点を3点挙げたいと思います。

 第1に、デジタル化により、詐欺等を働く悪意者が、より簡単かつ安価な方法で虚偽の情報を広め、より広いターゲット層にリーチしやすくなっていること。第2に、悪意者により、技術をベースとした新しい行為形態、行動科学的手法に基づいたデジタルマーケティングやプロモーションが行われる点。第3に、国際的な規制の不整合や規制回避、国境を越えたオンライン取引に関するデータの欠如により、規制当局の対応が複雑困難となる点。これらは暗号資産だけの問題ではないかと思いますが、暗号資産関連の被害拡大とともに、国際的に暗号資産周りでこうしたノウハウの蓄積と主体が成長してしまっているという点には留意が必要だと思います。これらに対処するために、国際的な連携とともに、投資家の損失を迅速に回復するための救済メカニズムを検討すべきとしている点が注目されます。

 2点目ですけれども、暗号資産に関する情報が、安全保障上の問題であることがより明らかとなってきているように思われます。先月、国連の専門家パネルの中間報告が公表され、北朝鮮のサイバー攻撃による暗号資産盗取が昨年は17億ドル、前年比3倍以上の推計となっていると報じられております。公安調査庁の報告では、暗号資産が中東やアジア等においてテロ組織の資金調達活動に利用されており、その拡大が懸念されていると指摘もされております。

 3点目ですが、国内外のビジネス動向の御報告に関し、実物資産のトークン化、パーミッションレス型について若干述べたいと思います。現行の金融商品取引法等では、実物資産に関する投機取引については、特性やリスクに応じて販売先を限定し、適合性の原則や情報提供義務等を整備しています。こうした規制、規律の実効性はトークン化においても確保される必要があります。しかしながら、パーミッションレス型のブロックチェーンにおいては、販売先の属性の把握や販売の管理が困難となるように思われます。特に二次流通においてパーミッションレス型のブロックチェーンでUnhosted Walletによる取引が行われるときには、係る把握や管理は極めて困難になると考えられます。

 また、国境を越えた取引により、海外に所在する顧客が拡大し、あるいは海外発行のトークンの事実上の流入が拡大すれば、制御不能となることも懸念されます。また、新たリスクとしては、パーミッションレス・ブロックチェーンのプロトコルのコーディングエラーなどの技術的なリスクとか、あるいはハッキング等のセキュリティリスク等も存します。これらの技術的なリスクについては、少なくとも現時点では十分な技術的な対応、ガバナンス上の対応が可能かどうかというのはかなり議論があるところかと思います。以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは続きまして、松本さん、どうぞお願いいたします。

【松本メンバー】
 発言の機会をありがとうございます。私からも、先ほどの坂先生の話とも少し似てくるのですけれども、発言を1つだけ質問をさせていただきたいと思っております。前提として、今我々は、不動産等のオルタナティブアセットの実際にセキュリティトークンに近いスキームといいますか、小口化しての公募販売のほうに取り組んでおりまして、そちらの立場がありますよということを前提として述べさせていただきます。

 恐らく今後のクリプトの世界、今のステーブルコイン以外も含めて金利上昇の局面ですので、様々な多様な現物資産、Real World Assetの証券化というか、トークン化というところを求めていくのかなとは予想しておるのですけれども、恐らくそこの商品を起点として様々なDeFiがつながってくる。基本的にDeFiというのは、私の理解では、一定の価値が担保されているものに対する派生商品の構築スキームだと思っておりまして、そこの上に乗っかってくるものだろうと思っております。ですので、今後もしこのRWA、Real World Assetが発展してくるとなると、これが信用の基点となってくるのだろうなと感じております。となったときに、ここの仕組み、私としては、現状の伝統的金融の仕組みにきちんと準拠するべきであろうと理解しております。ここの研究会でも何度も言われているsame business, same risk, same ruleというところは守られるべきと思っております。

 その観点でReal World Assetが今後増えてくるとしたときに、これを発行と流通と分けて考えたときに、前者の発行体の部分、これを現在行われているようなアセットバックトセキュリティといいますか、現物資産の証券化のスキームの中でも行われているような、いわゆる倒産隔離等の投資家保護の仕組みというのはきちんと具備されるべきものなのかなと思っておりますし、一方で、後者のところでは、先ほど坂先生からもありましたけれども、KYC/AMLの在り方、きちんとどのように誰に流通させるのかというところはきちんと保障されるべきと思っております。

 もう1点が、対抗要件といいますか、このトークンが渡されたときに、裏側の現物資産に対する権利はどのように移転するのかというところを同時に実現する方法等を含めて法体系が、これまで多く議論されてきているものだと思いますので、こういったものがうまく適用されるべき問題なのかなと私も理解しております。

 私個人としては、自身で業として取り組んでおる背景もありまして、やはり産業を活性化する、様々な投資家から様々な形で資金を集めて、より多くの産業を活性化していくという意味では、こういったスキームも非常に重要なものだと捉えておりますし、例えばこれがグローバルでうまく投資を喚起するような仕組みになるのであれば、これは好ましいことだなとは思っております。

 というふうに私は考えている一方で、こちらからの御質問としては、今後、我が国としては流通の側面、特にどのように向き合っていくのか。特に今の不動産証券等の世界では、今、実際にプライマリーの発行、そして、販売までの小口化はできておりますし、今後、様々な形で、二次流通も議論されている最中なのですけれども、それ以外に様々な、いわゆるReal World Assetという呼ばれ方で、あえて切り分けてReal World Assetというふうに呼んだときに、これらの二次流通をどのように考えているのか。特にグローバルのところでの流通の在り方といいますか、日本で発行された証券が、これがグローバルでトークンとしていわゆる無制限に二次流通されるべきではないだろうと。これはKYC等の要件がありますけれども、こういった二次流通について我々としてはどのようなスタンスを持つべきなのかというのをもし現時点で議論されているものとかがあれば、お伺いできればなと思っております。 私からは以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。さて、難しい質問ですが、久永さんにお答えいただくのがいいですかね。

【久永デジタル・分散型金融企画室長】
 松本様、ありがとうございます。実物資産のトークン化の二次流通に関する御質問を頂きました。どういうビジネスモデルなのか、諸外国でどういう形で広がっているのかを理解していく必要があると思うのですけれども、今の日本の規制体系の中で適用すべきものはしていくという、松本様が仰ったところは、まさにそのとおりなのかなという気がしております。
 
 現物資産が何かによっても大きく変わってくるのかなという気はしております。有価証券的なものがトークン化されるのであれば、それは金商法が適用されるような範囲なのかもしれません。先ほど片山様から御紹介いただいたBOCIの事例も、トークナイズセキュリティというものかと思いますので、そういった証券性があるものも、このRWAのスコープに入っていると。そうすると、それは例えば金商法の集団投資スキームの持分に該当するのかとか、そういうところを見ていくのかなと思います。他の資産で、不動産のお話もありましたし、金とかいろいろな実物資産の可能性があると思うのですけれども、そういった場合には、トークンがどういった権利を表章しているのか、現物を引き渡す請求権のようなものなのか、換金を保証するものなのか、まず法的な性質をしっかり理解して、既存の法体系で適用できるところをすると。そうすると、二次流通でどのような規制が、今の法体系でかかっていくかというのが自然と定まっていくのかなと考えております。仮に暗号資産に該当するのであれば、当然グローバルで流通する際には、犯罪収益移転防止法上の規制もかかってくるわけでございますし、最近ではトラベルルールが導入されたところでございます。これはUnhosted Walletというよりは、交換業者を通じた取引のようなものが想定されているので、パブリック・ブロックチェーン上で流通するものと親和的なのかという問題は別途あるのかなと思うのですけれども、犯収法上の規制をかけることも視野には入り得るのかなと。

 今、実物資産のトークン化のスキームが必ずしも日本でまだ豊富にあるわけではない中での仮定的な話になってしまって恐縮ではありますけれども、基本的には、現物資産の性質やトークンの性質などによって既存の法体系をどこまで適用できるのか、もし適用できないようなものが出てきたのであれば、二次流通も視野に入れながら、何か規制が必要ないのかというところを検討していくということなのかなと感じております。

【神田座長】
 どうぞ、大来さん。

【大来信用制度参事官】
 補足で申し上げますと、今の臨時国会で御審議をいただく予定にしております金商法の中で、例えば不動産特定共同事業法の出資持分をトークン化したものは金商法で規制をしていきましょうみたいな動きがあります。そういう意味で金商法という法体系が既にありますので、そのリーチの中でどういう裏付資産をトークン化したものを規制するのかというアプローチが第一段階としてあろうかと思います。

 それから金商法等の既存の規制だけでいいのかといった議論があろうかと思います。そういう範囲と規制の性質という、2つのベクトルの課題が将来的にはあり得ると認識しております。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。もう30年以上も前、1992年の当時の証券取引法の改正の際に、当時、証券化関連商品という言葉を使っていろいろ出てきたものについて議論がされたわけですけれども、30年前とはいえ、その時の発想は多少参考になるかなと思います。そこでの機能といいますか、それが金融商品としての機能を持つのか、あるいは特に今回で言えば、クロスボーダーという側面もより強いと思うのですけれども、そういった辺りはこれからの議論かなと思いますけれども、私たちもある程度の知恵というか経験はあるのではないかと思います。

 すみません、そんなところで次へ進ませていただければと思います。次は岩下さん、どうぞ、お待たせしました。お願いいたします。

【岩下メンバー】
 ありがとうございます。事務局の説明は大変最近の状況がよく分かりましたし、片山さんの御講演も興味深く拝見しました。とりわけ、私、片山さんの講演の中で、暗号資産って危ないもので近寄るなみたいなことを言われていたけれども、それを開発していた若者が目をきらきらさせて開発していたので、これは何か違うのではないかと感じたというところは、大変私自身も共感する部分がありました。というのは、私も、昔話になってしまいますが、今から25年ぐらい前に松尾先生なんかと一緒に日銀でそういう開発をまさにやっていた人間で、当時はまさに目をきらきらさせてやっていた若手のオールドボーイズなものですから、そういう部分について応援したいという気持ちがあります。

 ただ一方で、今日の議論の中で片山さんあるいは坂メンバーや松本メンバーなどの御指摘からもあったとおり、やっぱり暗号資産というものが必ずしも綺麗なものではないというか、ある意味で様々な問題を抱えているものであるということは、これは皆さん衆目の一致するのだと思います。そういうものと、一方で金融というのはある意味で信用が大事ですから、そういう非常にダーティーなというか、そういうものからできるだけ離れたほうが本当はいいと僕は思うのですが、一方でそういうイノベーションみたいなものというのは、水清ければ魚棲まずではありませんけれども、なかなかそういう世界だと生まれなくてですね。

 どうしてかというと、既に金融の世界というのは持ち主が決まっているものが多いので、何かをつくったからといってそれですごく儲かるという人はいないですね。ところが、新しい分野をつくると、そこは言ってみれば未開の荒野なので、そこに新たな、自分で占有権を設定できて、開発者の利益が得られるみたいな、そういう部分がある。このため、何となくいかがわしいものとイノベーションというのが何かすごく親和性が高く、金融でイノベーションを起こそうとすると、何かすごくいかがわしいものに近づいてしまうというところがある意味で構造的に持っている矛盾みたいなものです。これを規制で解決しようというのは実はそう簡単ではなくて、やっぱり規制って黒か白かでばっさり切ることしか基本的にはできないので、そうすると、イノベーションも推進しながら、一方でできるだけダーティーな部分はなくしていくみたいな、そういうきれいなコントロールを、特に国際的な協調で法域も違う中でやるということはウルトラCではないですが、ほぼ無理と私は思っています。

 そういう中でも、現実解として何とかよいものを見つけ出さなければいけないというときに、今既に起こっているもので、特に海外で認められてしまっているものは、これはなかなか頭から否定して、日本の国内に入ってくるなみたいなことをどこまで言えるのかという問題がもともとあります。ただ一方で、既存の金融と新しいDeFiみたいなものの間にどれだけ距離を置かせるかは、政策的な配慮が入り得るところだと思います。残念ながらそこについても、国によって方針が違っていて、香港とかはすごく近いので、その辺が蟻の一穴でそこから流入してしまうとか、あるいはアメリカでもシカゴとか一部近いところがありますから、そういう問題は多分あるのだろうと思いながら聞いておりました。

 そういう意味では、単にUnhosted Walletでマネロンに使われるから、あるいは詐欺等に使われるからまずいということだけではなくて、そもそもこういうもので何かやろうとする人たち、Terra・LUNA騒動とか、諸々の一攫千金を目指した、本来は純粋無垢な、FTXの経営者だって多分純粋無垢な若者だったと思うのですけれども、それが結果として巨大な、米国市場最大規模の破綻事例になってしまったとすると、それはどこかで暴走を止める必要が僕はあるのだろうと思います。そこの部分に砂をまく仕事を、イノベーションをやってきた人間としては心苦しいですけれども、やっぱりそっち側で関与しなければいけないなという思いを感じましたというのがコメントです。

 その上で、1点質問ですが、この研究会は2年ちょっと続いていまして、2年近く前に前回の中間報告を出しています。この中間報告の中ではたしか、ステーブルコインを2類型に分けて、一方をデジタルマネー型で、もう一方を暗号資産型と称して、暗号資産型はそっちの世界でやってよと。デジタルマネー型のほうを規制するよということで、その後の立法等にもつながったのだと思います。ところが、今日の片山さんのお話とか、あるいは冒頭の事務局の国際的なステーブルコインの議論を聞いていると、ちょっと状況が変わっている。多分、2年前はフェイスブックのリブラショックの後で、何となくグローバル・ステーブルコインとはリテール周りのものであって、決済用に使われるものなので、Tetherとかは別という前提で議論していて、報告書もそういう内容になっていると思います。暗号資産型のステーブルコインというのはあるけれども、これは別なのだよという書き方をたしかしてあったと思います。

 ただ、今の議論を聞いていると、明らかにもうTetherこそがステーブルコインの代表になっているようです。私はTetherをまともな金融商品として扱うという議論に参加したくはなくて、ああいうものはできるだけそういう議論から離しておかないといけない、ビットコインよりもはるかにやばいものだと思っています。ところが、Tetherは既に実態として世界最大のステーブルコインとして存在しているので、もう議論として外せないみたいになってしまっているような気がします。そうだとすると、今後、国際の場で、あるいはこの研究会でも、ステーブルコインの議論をする際に、いわゆる決済型、あるいはデジタルマネー型のステーブルコインと、それから、当時は暗号資産型と言っていた、今、世の中で言う普通のステーブルコインが共存する形になると思うのですけれども、これはそういう考え方に変わるということでよろしいのでしょうか。それとも、やっぱり相変わらずそれは違うと。あれは全く別世界のもので、我々が言うステーブルコインというのは、USDTやUSDCや、あるいは破綻したUSTやそういうものは含まない概念なのであるという、そういう整理にしているのか、その辺のところはどうお考えなのかというのをぜひ事務局にお聞きしたいと思いました。私からは以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、難問が続きますけれども、お願いします。

【久永デジタル・分散型金融企画室長】
 岩下先生、御質問いただきまして、ありがとうございます。今、Tetherなどが広く使われるようになってきている中で、21年時点の研究会でも御議論いただいた二分法が今も通用するのかという御趣旨の質問だと理解いたしました。

 我々、その後、法改正をして、電子決済手段というものを位置付けたわけでございます。それをデジタルマネー類似型ステーブルコインと呼んだわけでございます。我々、電子決済手段に関しては、定義上、通貨建資産である、不特定の者と売買できる、弁済に使える、電子情報処理組織を通じて移転する、こういった要件を定めたところでございまして、これに、今、先生がおっしゃったような、TetherとかUSDCとか、外国で広く使われているステーブルコインが該当するのかどうか。それはそれぞれのステーブルコインの償還の仕組みとか資産保全の内容をしっかり見て判断していくということになろうかと思います。必ずしも今の時点でそういったものが電子決済手段の範疇外である暗号資産型のステーブルコインであると断言するということではなくて、そこは実態を見て判断していくということかと思います。

 当時は暗号資産型のステーブルコインとして念頭に置いておりましたのは、アルゴリズムで動くようなステーブルコイン。これは典型的な暗号資産型のステーブルコインとしてそのときは考えていたところでございます。USDC、USDT、Tetherがどちらのほうに分類されるかというのは、繰り返しになりますけれども、裏付資産の扱いとか、償還の約束がどのようになっているか、そういうところを見て個別に判断していくということかと考えております。

【岩下メンバー】
 分かりました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。二分法という意味で、EUのMiCAは二分法ですよね。いずれにしても今後必要に応じてまた御議論いただければと思います。

 それでは次に、加藤さん、どうぞ御発言お願いします。

【加藤メンバー】
 加藤です。片山さんに御質問をさせてください。御説明どうもありがとうございました。ビットコインの現物ETFの上場承認の話と、Real World Assetトークンの実態の話について質問をさせてください。

 まず、ビットコインの現物ETFの上場についてですが、これが日本の暗号資産交換業者のビジネスに何か影響が生じるのかどうかということについてです。現在では、個人の一般投資家が海外の証券取引所に上場されているETF等を証券会社を通じて購入することは比較的容易になっているように思います。仮に、今、申請されている、10個ほどであったと記憶していますが、これらのビットコインの現物ETFが承認された場合に、どれくらいビットコインの現物取引が現物ETFの取引に流れる可能性があるのでしょうか。海外のこととはいえ、日本の暗号資産交換業にどれくらい影響があるかということは考えておく必要があると思います。現在、実務でどのような評価がされているのかということについてもし何か御助言いただければ幸いです。

 2点目は、Real World Assetトークンの実態について、最新の情報を御説明いただきまして、一口にReal World Assetトークンと言っても様々なものがあるということを改めて実感しました。その上で、12ページで紹介していただいた事例について質問させていただきます。これは一種の証券化商品であると御説明いただきましたが、この事例ではやはり伝統的な証券化商品と同じく、特別目的会社などが使われているのかということです。もし使われているのであれば、恐らく伝統的な金商法の枠組みにぴったりと当てはまる気がするのですけれども、伝統的な、例えば信託とか、そういったものがReal World Assetトークンを組成するときにどういう役割を果たしているかということについて、もし教えていただけることがありましたら幸いです。私からは以上です。

【野村総合研究所(片山)】
 御質問ありがとうございます。1つ目につきましては、まず日本の個人投資家の立場から見て何かメリットがあるのかというと、日本の個人投資家は、前回のFTX社の破綻の際も守られていたので、あえて例えばバイアンドホールドを仮にするとして、それを何らかの投信のような商品にして年間1%とか2%のコストを払って持つほど、持つこと自体に、あるいは交換業者に口座上預けておくことに対してfearを感じているかというと、そうでもないのではないかなという感じはいたしております。

 他方、これ、ETFが仮に上場されたとして、機関投資家はどうなのだろうと。大口の機関投資家になるとさすがに、大口の機関投資家は例えば証券会社の保護預かりもしていませんので、カストディアンあるいは信託に預けるという形ですけれども、ETFだったら持てるかもしれないと思うかもしれませんので、そこは何かもしかするとアドオンで、もちろん海外ETFを今でも持てるじゃないかといったら持てるはずですけれども、いずれにしても、大手のネームが皆さんから知られているところがETFを出したということになると、機関投資家は投資しやすくなるのかもしれないなと。それが巡り巡って個人にどう響いてくるのか、もしかしたらプラスに響くのかもしれないですけれども、ただ、いずれにいたしましても、いわゆる交換業者さんのものがETFに流れるかというと、そこほどの何か付加価値を少なくとも個人に対して与えるものでもないような気がしております。実際、業者の方と数多くディスカッションしたわけではないですけれども、理屈的に考えるとそうかもしれないなと現時点では思っております。

 それから、2点目につきましては、これももう一度、プレス等も確認してみなければいけないですが、そのような特定目的会社のようなものを使っていたような会社名は直接把握していないので、どのようなビークルを見なければいけないのか、改めて確認したいと思います。

【神田座長】
 ありがとうございました。よろしいでしょうか。

 それでは次に、井上さん、どうぞお願いいたします。

【井上メンバー】
 ありがとうございます。井上です。事務局と、それから、片山様からそれぞれ御説明ありがとうございました。それぞれに1つずつ御質問差し上げて、簡単にコメントしたいと思います。

 最初に、片山様に対して、今の加藤先生の質問とほぼ重なるので御回答も重なるのかもしれないですけれども、ETFですね。御説明によると、単一銘柄でいわゆる運用資産のコンポジションの判断がないので、実際上は安全保管にバリューがあると御説明いただきました。そうだとすると、加藤先生と同じような疑問があって、業者に預けている状態と比べてどういうメリットがあるのかですが、ETFで持つとなると、例えば売りが殺到したときに流動性がETFのほうが相対的に確保されやすいのか、安全保管自体について、一業者であるCEXよりもETFの方が安全と考えられるのか。一体、投資家というか、ビジネスの世界での受け止めとしては、どういうところに差異を見出されるのかという点が1つ目の質問です。

 もう一つは、事務局に対する質問ですけれども、これは片山様から最後のほうでReal World Assetのトークン化などとの関係で最近の動きを御紹介いただいたわけですが、それらについても伝統的な証券化取引あるいは金融商品と同じルールを適用するというのが基本になろうと思います。それがますます重要になってくると思うのですが、ただ、同じ商品に同じルールをといっても、問題は適用主体とかエンフォースメントに大きなチャレンジがあるところが違うのだと思います。DeFiには様々な形態があって、いろいろな関与者がいる。

 なので、御説明の中で、6ページのところですかね、IOSCOのDeFi勧告で、責任者を特定して規制していくということ、それはそのとおりだと思うのですけれども、その責任者のDeFiへの関わりには恐らく様々な形態があって、技術的に金融商品をつくる人であったり、投資家に向けてインターフェースをつくる人であったり、様々な関与者がいるとなると、伝統的な商品あるいは証券化商品と同じようにルールを適用するといっても、誰にどう適用するのかがチャレンジだなと思っております。この責任者の特定を目指すべきであるというIOSCOの提言における議論として、何らかの類型ごとに特定のパターンを考えていこうということなのか、全くもってDeFiごとといいますか、案件ごとに責任者を特定することが想定されているのか、その辺りの特定のアプローチといいますか、議論があれば教えていただきたいというのが質問です。

 最後、コメントですけれども、そういったことを考える際に、日本でどう規制していくのかという点で、今の時点で規制はかなり整ってきているという議論が今ございましたけれども、ただ、先生方の今のやり取りを聞いても、やはり各国での議論を把握する際に、それがどういう言葉遣いをしているのかに注意すべきではないかと思っております。具体的に申し上げると、暗号資産、クリプトアセットという言葉がどの範囲のものを示すのか、ステーブルコインというのがどの範囲のものを示すのか。日本でいえば、その2つは一応、重複しないような定義になっていますけれども、法域によっては重なっていたり、あるいは包含していたりということもあるかも分かりません。その意味で、セキュリティトークンあるいはステーブルコインあるいはクリプトアセットといったものの概念のずれとか重なりとか違いを意識して海外の議論を把握して、日本の議論につなげることがますます重要になっていると思ったというのが最後のコメントです。以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、御質問について、片山さんからまずお願いいたします。

【野村総合研究所(片山)】
 ありがとうございます。1つ目にいただきました、片山宛てにいただきました御質問については、特にこれ、米国の場合かと存じますけれども、そもそもの安全保管に対して疑問があったと。蓋を開けてみれば分かった話ですけれども、業者の自己資産と顧客の資産の分別管理さえも十分には行われていなかったということが2022年に分かったわけですけれども、2017年頃、あるいはもう少し前、クローズエンド投信が出来たのが2013年なので、その頃からも恐らく大口の投資家から見ると、米国の業者に預けているのは本当に大丈夫なのかということに対する疑問の声が恐らくあったのではないだろうかと。日本は分別管理規制がしっかりしているので、そういった不安はなかったわけですけれども、海外では必ずしもそうではなかったので、この部分についての価値があるのだろうなと。

 御質問の前半の売りの殺到のところは、これは普通の証券のETFも、いわゆる流動性のところについては、これは避け切れない部分があるのではないかなと、どんなようなビークルを使うにしても。これはファンドで包む場合のリスクとして、これは以降もあり得る、程度の差こそあれ、あります。

【加藤メンバー】
 ありがとうございます。

【神田座長】
 ありがとうございます。それでは、久永さん。

【久永デジタル・分散型金融企画室長】
 井上先生、DeFiの規制の対象に関する御質問、ありがとうございます。ここはIOSCOの勧告でもどういった人たちがこの規制の対象になり得るか、幾つかのオプションが示されているところでございまして、先生が仰ったとおり、開発者やファウンダーが対象となることもあり得れば、発行者、そこにはDAOも含まれるのかと思うのですけれども発行者、もしくはプロトコルを管理している者、こういった人たちが責任者となり得るのではないかと、そういったオプションが示されているところでございます。

 仮にこういった者が何らかの形で特定されたとしても、従来の金商法の規制がそのまま適用できるのかどうか、より一般的に規制の体系が適用できるのかどうかという問題があるのはそのとおりかと思います。これは規制の目的が何かというところによっても大きく変わってくるのかなという気がしております。AML/CFT上の対応とか、制裁への対応、こういった観点からDeFiに規制をかけていくというアプローチなのであれば、何らかの形で個人もしくは法人が特定できていればいいですし、アドレスさえ分かっていれば、これまでの過去のアメリカの執行事例などでも見られたところですけれども、アドレスに対して規制をかけていく、そういったこともこれまでに見られたかと思います。これがAML/CFTとかマネロンとか制裁上のアプローチとして考えられるのかもしれません。他方、金商法の分野で考えるような経済的な責任を責任主体に負わせるとなったときには、仮に個人が特定できたとしても、その個人にそれだけの責任を遂行できる財力、経済力なり責任遂行能力があるのかというところはまた別の問題かと思いますので、そこは今後とも検討していくべき課題なのかなと考えております。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、すみません、時間が予定より30分以上遅れておりますので、大変恐縮ですけれども、今日の前半部分はここまでとさせていただき、次に進ませていただきます。

 本来であれば、実はここで5分間の休憩をと考えていましたが、予定が遅れておりますので、皆様方、各自適宜休憩していただくことにして、休憩なしということで次に進みたいと思います。

 CGTFの菅原様と佐藤様からお手元資料4についての御説明をいただきたいと思います。菅原さん、佐藤さん、お忙しいところをありがとうございます。どうぞ、よろしくお願いいたします。

【CGTF(菅原)】
 よろしくお願いいたします。それでは、本日はこのような機会を頂きまして、どうもありがとうございます。CGTFの事務局長を務めております菅原でございます。本日は、CGTFの御紹介と暗号資産カストディアンのセキュリティ対策の考え方、ちょっと長い名称でございますので、通常我々はカストディアンドキュメントと呼んでおりますが、こちらについてその内容を御紹介いたします。

 次のページをお願いいたします。CGTF、正式名称は、Cryptoassets Governance Task Forceと申します。設立については、この後のスライドで御紹介をいたしますが、2018年2月でございまして、先ほど片山様からも御紹介が少しございましたけれども、その当時、暗号資産の流出というのが頻発していたという事態に対して、専門家が集まって議論をして、そのアウトプットによって交換業者のセキュリティの底上げを図るということと、今画面にも赤文字で書いてありますけれども、利用者保護に寄与するということを目的としているところでございます。先日、会合150回を迎えまして、現在も幅広く議論を行っているところでございます。

 次のページをお願いいたします。我々の掲げておりますゼネラルポリシーでございます。中立性、透明性、実効性の3点でございます。詳細につきましては、記載のとおりでございますので、資料を御確認いただければと思います。

 4ページ目をお願いします。主要メンバーの専門性とミーティングポリシーでございます。非常に多岐にわたる専門性を持った皆様にお集まりをいただいておりまして、例えば行政とか暗号資産、ハードウェアセキュリティ、こういった専門家の皆様に御参加をいただいているものでございます。このため、右側でございますミーティングのポリシーとしては、相互の専門性を尊重するとか、所属企業の立場を離れることなどを基本としているところでございます。

 次ページをお願いします。これまでの私どもの活動実績のうち、カストディアンドキュメントに関する部分のみを今回は抽出しております。先ほど御紹介しましたとおり、2018年2月に第1回、初回のミーティングを開催いたしまして、その年の10月にカストディアンドキュメントの初版、以降、途中の中間成果物の公開などを挟みまして、現在は今年の4月に公開をしております第4版が最新のものとなっております。

 CGTFの御紹介はここまでにしておきまして、その後、6ページ以降につきましては、私どものメンバーでございます佐藤より御紹介を申し上げます。

【CGTF(佐藤)】
 では、こちらから佐藤が担当しまして、時間が限られておりますので、カストディアンドキュメントの概要部分をちょっと御説明させていただこうと思っております。

 この「暗号資産カストディアンのセキュリティ対策についての考え方」というタイトルのドキュメントですが、通称カストディアンドキュメントと呼んでおります。こちらのドキュメントの目的は、暗号カストディアンの利用者の保護をするということを第一に考えております。具体的には、カストディアンが管理する署名鍵を厳重に守るということ、そして、今までのセキュリティインシデントからの教訓を得まして、再発防止の観点を入れております。そして、ブロックチェーンの性質を踏まえて、今後発生しそうなインシデントを想定しまして、その防止策ということを観点に入れております。

 初版は、2018年2月から検討を開始しまして、10月にドラフトを作成しておりました。その後、パブリックコメントを経て、第1版の完成となっております。最新は第4版となっております。第4版までに至る過程としましては、各インシデントの発生とか、先ほども教訓という話もありましたけれども、そうしたものを踏まえて内容を更新しております。

 本書の特色としましては、セキリティーの標準としてISO27002を参照しております。こちらのISO27002のセキュリティマネジメントの考え方を踏襲しまして、そこの差分としてブロックチェーンの特有な部分、課題について本書でカバーするという形を取っております。これは何故ISO27002なのかと申し上げますと、このドキュメントを作ってから、英訳をして、海外の交換所の皆様との意見交換もしたいというところも想定しておりまして、ISO27002をベースに考えているということでございます。

 次のページをお願いいたします。セキュリティの検討を行う上で、参照モデルというものを作成しました。これは暗号資産の取引所の内部のシステムというのは、事業者によって様々な、各事業者さんが設計してそれぞれが様々なシステムを組んでいるという事情がございます。その中身は公開されておりませんので、中身が分からない。何故かと申し上げますと、交換所の皆様は内部のシステムをクローズドなものにするということで安全性の担保の一つとして捉えているということがありまして、その中身の情報をなかなか共有するという状況がございませんでした。

 そこで、このCGTFで議論する上で、秘密、皆さんがシステムの前提部分をそれぞれが抱えていまして、その前提を持って皆さんが発言されていますと、言葉だけでやり取りをすると、議論の擦れ違いが度々起こるということが発生しました。ですので、CGTFに参加されている各事業者さんの関係者の皆さんから部分的な情報を頂戴しまして、それを再構築して参照モデルとして抽象化モデルを作成いたしました。おおよそのこのシステムは、交換所の一般的なシステムは大体こういうことになるよねというところを抽象化して抽出したということがこのモデルでございます。

 このモデルを簡単に説明しますと、右側にブロックチェーンがございまして、そこに接続する真ん中のシステムが取引所の皆さんのシステムとなります。左側に、取引所の顧客が使うアプリケーションやウェブのインターフェースがあるという状況でございます。顧客は、ウェブのインターフェースやアプリを通じて取引の指示を行います。基本的には取引所内の取引の処理系というところで処理が行われます。ブロックチェーンとの関係は、ブロックチェーンのアドレス間の資産が移転するという段階で発生します。この段階でブロックチェーンのトランザクションを作成いたしますので、そのトランザクションの作成に使う署名鍵にアクセスする、取引所の中で管理している署名鍵にアクセスするという必要が出てきます。これがシステムの中のこの点線部分の中の箇所になります。これが他の一般的な決済や取引のシステムと異なる、ブロックチェーンの取引所に関わる特色的な箇所になります。

 次のページお願いいたします。こうした参照モデルを基に、セキュリティの対策について考えておりました。リスクを検討し、それに対する対策、対応策の考え方を検討しました。その上でドキュメントのスコープを定める、検討の対象を定めております。これは先ほど申し上げたとおり、暗号資産カストディのシステムとなります。さらに、そのシステムの中が管理する資産情報、先ほどの署名鍵の部分も含んだ資産情報が対象になります。そして、セキュリティ対策の不備によって及ぼし得る社会的な影響、こちらも、システム内部の安全性というだけではなくて、社会的な影響の一部分についても考察対象としております。

 スコープ外としているものとしましては、カストディアンの従業員の皆様が日常業務に使うシステム、こちらは対象外としております。それから、ブロックチェーンや分散台帳自体に対するセキュリティ対策、こちらも、対象外としております。それから、経営リスクとか、それから、利用者、顧客とカストディアンの資産の分離に関する部分の具体的な要件についてもスコープ外としております。つまりは、このドキュメントのスコープとしましては、テクニカルな部分を大部分、中心な観点としておりまして、テクニカルな部分から発生するセキュリティの対応策を考えております。

 次のページをお願いいたします。先ほど申し上げたとおり全体の流れとしては、ISO27002をベースにしております。そこで書かれている、一般的な情報セキュリティマネジメントであったり、サイバーセキュリティ対策の考え方については、ISO27002を踏襲してもらうことを想定しております。ここで書いてあるのは、先ほど申し上げたとおり、ブロックチェーンに関わる特有のリスクに対する備えというところを中心としております。特に、署名鍵の取扱い、こちらが特色的な部分になりますので、署名鍵の取扱いに対するリスク、それから、過去のトラブルからの再発防止策ということを盛り込んでいるというところがポイントになります。

 次のページをお願いいたします。このドキュメントの中で重要なポイントとしましては、繰り返し申し上げていますとおり、署名鍵の管理部分になります。この鍵の形態、いろいろな署名鍵に対しても、署名鍵に限らずいろいろな暗号鍵が発生しますけれども、署名鍵も含んだ鍵の形態やライフサイクルをまず考えるということがとても大事になります。そのライフサイクルに応じて、鍵への厳格なアクセス制御を設ける。それから、適切な権限分離を行うということが大事なポイントになります。

 鍵の管理形態も、ブロックチェーンの世界ではよく分散で鍵を管理するというやり方が取られております。例えばマルチシグとか秘密分散とか、今だとMPCとかの議論がありますけれども、こういった鍵のいろいろな形態、種類や鍵の管理形態に応じてリスクが異なりますので、そのリスクに応じた適切な対応策を取っていくということがとても大事になります。大事なコンセプトとしましては、いわゆる単独犯、従業員とか、中の単独犯を防ぐというところが大きなポイントになってきます。

 それから、よく鍵の管理の中で忘れがちになるのですけれども、鍵のバックアップです。バックアップはやはり、鍵がなくなったときに復活させるためにバックアップを取るわけですけれども、そのバックアップの管理が疎かになってしまうと、このバックアップデータを攻撃の対象とされて攻撃を受けるということも考えられます。ですので、バックアップについても、実際に使っている鍵と同様に、媒体の種類や個数とか、保管場所、適切なアクセス権限、それから、利用時の手続とか、利用可能であることの検証、それから、復旧のやり方とか、こういった検討もすべきポイントをきちっと考察する、多岐にわたる部分をちゃんと手当てするということがとても大事になります。

 そしてもう一つは、決済情報の変更手続に係るプロセスに関してです。これは業者間の中で移転用のアドレスを指示するということがありますけれども、この移転先アドレスの変更手続、こちらの変更手続に不正な攻撃を受けますと、意図しないアドレスが設定されて、不正な流出が行われてしまうということになりますので、この手続を事業者間できちんと相互に合意した手続を踏んで、その手続を踏まなければ更新できないようにするとか、それから、移転の指示に対する情報の改ざん防止策を設けるとか、安全性の担保を行うということも大事になります。それから別の観点としましては、アドレスと個人情報、取引情報とか、こういったものの紐づけされるデータを転送する必要が出てくるかと思いますので、こちらの情報が漏えいした場合にも、顧客の資産の漏えいにつながるとか、それから、プライバシー情報の侵害になりますので、こちらの転送時の情報の機密性を担保するということも別の観点としては大事なポイントになります。

 次のページをお願いいたします。現在、このドキュメントの中でカバーしていない範囲として、これから議論が必要な部分としましては、まずUnhosted Walletの議論があります。こちらは基本的にはこのドキュメントというのは、カストディアンの中で管理する鍵についての考察でありましたけれども、Unhosted Walletに対しての議論ということはまた別の観点の議論が必要となります。こちらに書いてあるとおりでございまして、いろいろなトラブルの補償は一切ないと。利用者自身が自己責任の上で安全管理するということでございますので、また利用者の責任範囲でどう管理するかというところで別の観点が必要になります。それから、スマホ等のウォレットアプリでは十分な暗号強度が選択できない可能性もございますので、これに対する安全性の担保ということもまた検討課題となります。

 そして、ハードウェアウォレットに関してです。一部のハードウェアウォレットで署名鍵をエクスポート可能になるのではないかという疑いを持たれたとか、実際の仕様は分かっていないのですけれども、署名鍵がエクスポート可能で、他の第三者に渡る可能性があるのではないかという疑惑を持たれたケースがありました。こちらについても、そのハードウェアウォレットの中身の仕様についてどう透明性を担保するかということが大事な論点になろうかと思います。それから、サプライチェーンリスクの存在があります。ハードウェアウォレットも二次流通等で、正規代理店以外で購入された場合に、中に不正な鍵とかバックドアが仕掛けられるということの疑惑もあるかもしれません。ですので、そうしたところにサプライチェーンリスクが存在しますので、こちらをどう担保するのかということが一つの課題となります。

 ここで、私、ブロックチェーン以外にも、従来の電子認証局の専門家でもありますので、そこの立場からの見識をあくまで参考程度として述べさせていただこうかと思います。電子認証局の世界では、オープンな仕様、規格に基づいて鍵管理するという点でブロックチェーンと共通な点があるかなと思っております。認証局では、鍵管理を行うハードウェアのデバイスのセキュリティというのが、セキュリティ要件が標準として定められております。その標準に基づいた鍵管理のデバイスが第三者評価を受ける。その標準に基づいた第三者評価を受けるということを行っております。その第三者評価を受けたデバイスを電子認証局が採用して、それを運用するということを行っております。ですが、それと比べまして、ブロックチェーンのウォレットというのは、そうした要件とか評価に対する議論はまだまだこれからかなという印象がございます。ただ、電子認証局とブロックチェーンと同じ議論が通用するのかということがあるかと思います。これは電子認証局とブロックチェーンは、性質とか前提が異なる部分がございますので、やはりここもブロックチェーンの性質を考慮した議論が必要になるかなと思っております。

 次のページお願いします。最後になりますが、ウォレットの分類です。こちらもCGTFの先ほどのカストディアンドキュメントをつくっている中でずっと悩み続けていたところでありますが、やはりウォレットの定義、ホットウォレット、コールド・ウォレットとかいろいろな呼び名がありますけれども、こちらの明確な定義はコンセンサスが皆さんとやりにくいということがございます。皆さんそれぞれの定義をお持ちですので、そちらのコンセンサスを取っていくというのはなかなか大変なことでございました。実際にこのウォレットの議論を進める上でやはり共通認識を持っていくというところが今後の共通課題になろうかなと思っております。以上となります。御清聴ありがとうございました。

【神田座長】
 菅原さん、佐藤さん、大変貴重なお話をいただきまして、大変ありがとうございました。予定の時間がほぼ終わりに近づいているのですけれども、残りの時間で御質問、御意見おありの方には御発言をいただければと思います。

 テーマは、抽象的に言えば、自主的な取組を踏まえつつ、セキュリティの質を向上させるために必要となるポイントはどこにあるかというようなことかと思いますけれども、資料4についての御質問、御意見等でも結構でございます。ただ、すみません、若干時間延長をお許しいただくこととしても、もうほぼ予定の時間が来ておりますので、大変申し訳ありませんけれども、追加でのお気づきの点等がございましたら、事務局までぜひお寄せいただきたいと思いますということを申し上げた上で、御発言いただける方には少し御発言いただければと思います。

 ありがとうございます。松尾先生からは大変貴重なチャットをいただきまして、これ、何らかの形で記録に残していただけますでしょうか。そうさせていただきます。松尾先生、どうもありがとうございました。

 他にいかがでしょうか。松本さん、どうぞお願いいたします。

【松本メンバー】
 システムが絡んでくるというところで、1点だけこちらの論点に追加でお伝えしておきたいポイントですけれども、セキュリティはどうしても作り手の人間の問題が非常に大きい部分があるかなと思っております。こうして標準化されていくということは非常にすばらしいことと思いつつ、併せて、エンジニアの育成といいますか、技術者育成のところにも何らかの標準といいますか、仕組みを検討していけると、より安全な安心なエコシステムをつくっていけるのかなというところで、簡単ですけれども、発言させていただきました。以上となります。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。岩下先生、どうぞお願いします。

【岩下メンバー】
 CGTFの活動については、この研究会よりも前の仮想通貨交換業等に関する研究会が2018年に開催されたと思いますが、その席上で御紹介を私がさせていただいたことがございました。この取組は特にどこからの特別な要請とかがあったわけではなく、コインチェック事件、2018年1月に起こってしまった、580億円の巨大漏えい事件を受けて、何とかしなくちゃいけないということで関係者が集まって、毎週早朝に集まってミーティングをやって結構辛かったのですけれども、そういうことで素案をつくった。私は素案の初期の段階で実作業から抜けましたが、その後、大変立派にやってくださっていると思います。

 今日の御発言の中で極めて重要だったのは、最後にこの日本におけるこのドキュメント自体の多分原形が、いわゆるPKIのcertificate authorityのcertificate managementに関するドキュメントというのが色々ありまして、こういうものをベースとしていると。そこからさらに派生してISO27002シリーズになっているのですけれども、実はこれ、2000年ぐらいに電子署名法の議論が日本であって、そのときに日本国内、大量にcertificate authorityが設立されて、そのcertificate authorityのマネジメントで大変皆さん一生懸命やったのですが、結果としてビジネスとしてはあまり成功しなかったのですね。ただ、そのときに極めて多くの、暗号鍵をどう管理するべきかに関する議論ができる技術者が日本で育ったので、それがその後の暗号資産交換業者における鍵管理の健全化というか、安全な方向に変化するのにつながったという、そういう経緯があったのだなと改めて認識させていただきました。私からは以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、栗田さん、どうぞお願いいたします。

【栗田メンバー】
 栗田です。菅原様、佐藤様、ありがとうございました。大変勉強になりました。

 松尾先生がチャットに書いていらっしゃいますけれども、私も,ウォレットあるいは鍵の管理に関しては、ISO 15408の第三者セキュリティCC認証のプロテクションプロファイルやセキュリティターゲットといったものが必要になってくるだろうと思います。これには色々な意味合いがありますが、一つは、利用者の安心を醸成するということだと思っています。利用者が安心するためには、能力がありそうな人が確かに仕事をしていそうだと利用者が思えることが出発点となって、その後、何故何が安心できるのかというところで、規格に準拠して作られているということ、それから、それが確かにどの程度なされているのかということについて確認できるということが必要になります。そういった意味で、例えばロゴマークとかそういったものについても今後検討していく必要があると思います。

 また、そもそもウォレットという言葉についても、さまざまな認識の揺れがありまして、正しくコミュニケーションできるように定義をした上で発信・対話・議論をしていくということが今後改めて必要になっていくと思いました。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、坂先生、どうぞお願いします。

【坂メンバー】
 ありがとうございます。このセキュリティの問題については、ブロックチェーンとの接点の問題と、それから、ユーザーインターフェースの問題もあろうかと思います。今日の議論はブロックチェーンとの接点が中心かと思いますけれども、ユーザーインターフェースについても多少課題があるのではないかなと感じているところです。これは一般の金融サービスと共通する問題かとも思いますけれども、銀行等の金融機関に比べますと、暗号資産周りではややユーザーの利便性を重視してセキュリティの強度が脆弱になっているという面があり得るのではないかという懸念を持っております。東京の3弁護士会の金融ADRでも不正使用に関する案件もありますので、そういった点についても関係各機関で御検討いただけるとありがたいかと思っております。以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。まだ御意見等いただける方もあるかとは思うのですけれども、後の御予定がある方もいらっしゃると思いますので、本日はこの辺りとさせていただければと思います。

 オブザーバーの皆様方には御発言の機会を本日お与えできずに大変申し訳ありませんでした。メンバーの方々も、追加の御意見等、御質問含めてあり得るかと思いますので、メンバーの皆様方、オブザーバーの皆様方、御質問や御意見等ございましたら、ぜひ事務局までお寄せいただいて、事務局のほうで何らかの形で記録に残せるような工夫をお考えいただけますでしょうか。そういうことにさせていただければと思います。

 それでは、本日はゲストとして御参加いただき、大変貴重な御報告をいただきました片山様、それから、菅原様、佐藤様、本当にどうもありがとうございました。本日皆様方からいただきました御説明、それから、御指摘、御意見等を踏まえ、今後さらに議論を深めていきたいと考えておりますので、引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。

 それでは最後に、事務局から連絡事項等ございましたら、お願いいたします。

【久永デジタル・分散型金融企画室長】
 ありがとうございました。次回の研究会の日時につきましては、皆様の御都合を踏まえた上で、後日事務局より御案内させていただきます。よろしくお願いいたします。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、本日は、以上をもちましてこの研究会を終了とさせていただきます。皆さん、どうもありがとうございました。
 
 
<研究会終了後、メンバーから事務局へ寄せられたご意見>
【松尾メンバー】
 そもそも取引所のシステムも含めて、ブロックチェーンに関わるシステムの標準的な構成がいまだに存在しないことが問題である。そのため、このドキュメントを作るときも、(数少ない)いくつかの事業者からヒアリングをしたが、想像ベースで作らないといけないので、実態と本当に合っているかはわからない。設計を透明にしてもらわないといけない。
 
 特に、ブロックチェーン企業、スタートアップには経験のあるエンジニアがいないケースもあり、それらが、セキュアじゃないシステムを再発明する危険性が常にあるので、設計と実装の透明性の確保と、第三者認証の仕組みが必須。これには、既存金融システムがFISCのガイドラインを守り、暗号技術の選定を含めて、外部の信頼できる活動を参照していることなどを参考にすべき。他のIT分野では行われていることをやる、と言うこと。
ウォレットなどについては、15408のPP(Protection Profile)、 ST(Security Target)相当を作らないといけない。
 
【翁メンバー】
 ステーブルコインといっても、EUの2分法が参考になるが、その内容は米国など海外の暗号資産型と日本の電子マネー型では大きく異なっており、区別して議論していくことが必要。
 
 ビジネスの最先端の議論を伺い、市場の広がりと複雑さが一層増していることがわかった。一層監督当局のグローバルな市場動向把握が重要となっていると思う。

 この分野について、Same Business, Same Risk, Same Ruleの考え方は一つのよりどころであるが、事務局も指摘されたがその規制の目的によって、その重点の置きどころは異なると考える。また、井上メンバーも指摘されたところだが、Defiは組織構造が異なり、エンフォースメントをいかに確保するかという視点に立って効果的なルールを考える必要もあり、そこも異なる発想が必要といえるだろう。
 
【横関メンバー】
前半の国際動向については、動向把握も重要であるが、国際協調をしっかりと進めていくべきと考える。
各域独自の取り組みが先行しているが、国際的な規制の協調した取り組みについても最新動向をお聞きしたい。
後半については、標準化への取り組みが重要と考えるが、こちらも国際的な協調が重要ではないか。
 
【坂メンバー】
[セキュリティについて]
 暗号資産取引のしくみやセキュリティ上のリスク構造について、できるだけ理解を共有することが必要である。現状、アンホステッド・ウォレットは、提供されているアプリのプログラムの強度や端末のセキュリティの強度や容量等が、十分か懸念があり得ること、他方、ハッキングをする主体は高度に技術的に洗練された犯罪集団や国家関連の組織であり得ることに鑑みると、リスクは極めて高いというべきである。高額の資産の保管方法としてはなじまないと考えられる。他方、暗号資産交換業者についても、海外の交換業者は、規制や監督が適切に行われてない者も少なくない。こうしたリスクを、正しく広げることが必要である。
 
 他方、国内の交換業者については、規制と監督のもとにおいて、セキュリティの確保を行うことになるが、ブロックチェーンとの接点におけるセキュリティの問題と、ユーザーインターフェースにおけるセキュリティの問題がある。

 前者については、コールド・ウォレットにおける管理とセキュリティが実効的に確保されているかの問題と思われるが、リスク要因があるのであれば、利用者に情報提供する必要がある。
以上に対して、後者について、金融サービス一般に顧客の端末からシステムに至るすべての過程においてセキュリティを確保することが求められるが、暗号資産においてもかかる視点が重要である。ユーザーに対しては、適切なインターフェースやアプリの提供とともに、ハッキングやフィッシングを防ぐための適切な注意喚起が求められる。また、不正アクセスや不正利用があった場合には、交換業者においてその原因・機序について、適切に調査を行い、ユーザーに情報提供するとともに業務やシステムの見直しをすることが必要と考えられる。
さらに、当局や業界団体においても、実態把握とともに、適切な検討や是正を促すことが重要であり、統計的な情報の集約や公表等も必要と考える。
 
「ステーブルコインへの規制対応について」
 ステーブルコインについては、国家の通貨発行権と金融システムの健全性確保の観点から、預金を裏付けにしたものとこうした裏付けなく発行されるものとを区別して規制すべきであり、また、前者についての普及が図られるべきである。
 
 
<研究会中に、加藤メンバーより野村総合研究所・片山氏へいただいたご質問へのご回答>
 Centrifuge社(IT会社)が公表するLegal Offering Structuresと題した説明等をみますと、Special Purpose Vehicle(SPV)を用いた倒産隔離構造を採用しているようです。
【投資段階におけるポイント】
 (1)借り手(Borrower)が担保(売掛債権や物件)をアセット・オリジネーター(AO)に差し入れる
 (2)AOが担保に係るNFTを発行するとともに当該権利をSPVに移転する
 (3)投資家に対するKYC/AMLプロセスはAOが実施する
 (4)SPVがCentrifugeに対して当該投資家ウォレットアドレスのホワイトリスト登録を行う
 (5)投資家が資産プールの諸情報を(DAI表示の価値とともに)閲覧できるようになる
 (6)投資家がステーブルコイン(典型的にはDAIやUSDC、USDT)により払い込みをおこなう
 (7)借り手はDAIもしくは法定通貨により資金を受取る
 従来型の証券化商品と大きく異なるのは、主に、(2)や(5)などの情報開示方法と、(4)や(6)、(7)などの資金受渡しではないかと思料します。
 
(以 上)
お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)

企画市場局総務課信用制度参事官室、市場課(内線3572)

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