「ESG評価・データ提供機関等に係る専門分科会」(第6回)議事録

1.日時:

令和4年5月19日(木曜日)15時00分~17時00分

2.場所:

オンライン開催

 <事務局>
・前回は事務局説明資料という形で論点整理案を提示し、皆様から御意見をいただいたが、今回はそれを踏まえて事務局で作成した報告書の案について御意見をいただきたいと思う。これを基に前回までの議論を踏まえ、事務局にて報告書の修正を継続していく。
 
<金融庁資料説明(資料1 事務局資料)>
・報告書案については、既に様々にご示唆をいただいており、大変ありがたい。可能な限り反映しつつドラフトしているが、議論が必要な部分もあり、本日配付のものをたたき台のスタートとして、ご議論いただきたい。(事務局より参考資料1を説明)
 
<メンバーからの主な意見(全体)>
・「IOSCO報告書では、発行体を対象とするESGレーティングやデータを提供する機関を主に対象としているが、日本の報告書では、グリーンボンドなどサステナブルファイナンスのデット分野での広がりも考慮して、ESGファイナンス評価機関も提言の対象に入れた」という趣旨の文言を明示していただきたい。
 
・4ページの脚注として「日本取引所グループ(JPX)のナレッジハブにおいて、債券等を評価するESGファイナンス評価機関を含む国内外のESG評価・データ提供機関の状況について取りまとめている」という文章を記載することによって、「ESGファイナンス評価機関」という言葉を明記していただいたことは、市場関係者や本報告書の利用者の理解のためにも極めて有意義であり大変ありがたいと考えている。一方、評価機関に対する4つの課題が指摘されているが、このうち第3以外の3つの課題についてはESGファイナンス評価機関には該当しないので、このことがわかるような記載を入れてほしい。
 
・5ページの「ESG評価(企業評価、ESGレーティング等)」と「債券等の単位で行われるESG評価(債券評価、外部レビュー等)」に関する表記について。「債券等」は「債券及び融資」または「債券・融資」に、「ESG評価(債券評価、外部レビュー等)」は「ESGファイナンス評価」にしていただきたい。
 
・12ページで「資金が充てられる事業の評価に加えて、事業を行う企業全体の取組姿勢を評価する傾向が強まるなど」とあるが、現状のESGファイナンス評価の実態とは乖離があり、例えば「将来的にはそういう可能性があるとの意見もあった」とするべきである。
 
・ESGが価格形成に影響を与えるようになってきている中で、全体的な枠組みの中でこの報告書の意義や目的については、資本市場の健全な発展だと考えている。GPIFが公表した報告書の中でも、ESG評価のメソドロジーを確認している企業は6割、大企業に絞ると9割を超えており、企業の行動変容に大きく影響を及ぼしている。そういった意味で、この報告書の持つ意義は大きいと考える。
 
・報告書における提言の実効性を高めていく上で、どのようなことが考えうるのかについて、確認させていただきたい。また、継続的な見直しも重要となるが、どれぐらいのタイムホライズンで捉えているのか、教えていただきたい。
 
・提言の浸透策について、評価手法の実際や限界の共有は大変重要だと考える。投資家内のバリューチェーン内には、アセットオーナー、ディストリビューター、インベストメントコンサルティングなど様々な主体が存在するが、それぞれに対するエデュケーションが重要となる。
 
・今後、開示データの量は充実が図られるだろうが、質に関しては、何を見て、向上しているかを判断するか、今後ガイドラインなどの作成などで考えていくのはどうか。
 
・「ESGを投資判断に折り込む」や、「ESGを踏まえた将来の企業価値の創造を評価する」など、報告書の中にいくつか、ESGという言葉が裸で登場するような書き方が見られる。英語だと「ESG」という言葉が単独で使われる場面は少ない印象を持っており、「ESG要素」とか「ESG要因」といった書き方の方が一般的ではないか。
 
・報告書の概要について。「評価の品質」と書かれているが、ESG評価というのは、ある意味意見なので、正しいか間違っているかという議論がそもそも当てはまらないのではないか。重要なのは、評価のメソドロジーや考え方が明らかにされ、そのメソドロジーに沿った評価がなされていることだと考える。データについても、例えば、推計値はあくまで推計値となるため、その正確性について議論するのはそぐわないのではないか。
 
・発行体企業との関係性の部分だが、ESG評価機関は間接的に企業のESGへの取組改善に寄与できるかもしれが、あくまで投資家の投資判断に資するプロダクト、サービスを提供することが第一の目的であり、発行体企業の企業価値向上をサポートすることが第一の目的ではない点には留意が必要ではないか。評価結果には様々な意見があるため、常に100%納得感を得るのは難しいのではないか。
 
・IOSCOとの差分が分かりやすい形で、報告書の中で紹介されると良い。例えば、本報告書では、ESGレーティングではなくESG評価と定義を広げているが、海外のステークホルダーの中にも、レーティングにフォーカスし過ぎることへの疑問も上がっているかと思う。そうしたところへの説明があると、よりこの報告書が生かされるのではないか。
 
・ESG評価・データ機関のところに特化してパブコメを行うと思うが。報告書全体としては、エコシステム全体として向上する中での評価機関への行動規範という位置づけが良く理解できるが、ここだけ抜き出しにした際にそれが伝わるような工夫が必要ではないか。また、報告書全ては読めない方にも理解していただくために、概要版を作成してもよいのではないか。
 
・4ページについて、ESGの財務的な影響に関心が高まっていると言及があるが、ESGの何を指しているのかを追加いただきたい。また、経済や金融活動がESG要素に影響を与えるところと、受ける影響、その双方が重要かと思う。全体を通して、どちら側を言っているのか両方なのか、整理しても良いのではないか。
 
・9ページについて、Aの箇所で企業に関するESG評価・データとの記載があるが、企業なのかそれとも発行体なのか、特に債券は企業でない場合もあると思うので、対象が具体的にどこに置かれているのか整理してもよいのではないか。
 
・「おわりに」の継続的な見直しのところ、見直しとそのタイムホライズンに加えて、どういったイベントが見直しのきっかけになるかといった点も検討いただきたい。
 
・11ページの「本報告書の対象」のところに関連して。既に日本の金融行政の中では、金融商品取引法で、投資助言・代理業というステータスがある。こうした登録業務とこのコードの対象の関連性についても言及いただきたい。補完関係で捉えるのではなくて、金商法での投資助言・代理業においても、ESG評価やデータ提供を行う場合には、このコードの対象になるということを一言付け加えるのはどうか。
 
<メンバーからの主な意見(ESG評価・データ提供機関に対する提言)>
・9ページについて、ESG評価・データ機関の基本的な考え方の要件はよくまとまっていると思うが、評価に携わる企業の中には、評価以外の本業を有しており、自身をESG評価機関と認識していないケースもそれなりにある。そうしたところも行動規範の対象となるかどうかを明確にした方が良い。評価機関に向けた行動規範ではなく、評価業務を行う上での行動規範という見せ方にしたほうが、広く賛同を得られる可能性があるのではないか。
 
・9ページについて、ESG評価・データ提供機関の中には、データ収集のプロセスを一部外部委託しているケースもある。そういったところも含めて一体的に対象として考えるのかどうかを掘り下げて書いてもよいのではないか。
 
・原則1、指針4について、「上記のとおり定めたサービス提供手法について、定期的に、実際に自らのサービス提供の状況に照らして検証し」と記載されているが、サービス提供の状況を定めた手法に照らして検証するということではないのか。
 
・原則1、考え方について、「ESG評価・データ提供機関においては、担当者によって特段のばらつきがなく、組織横断的に質の高いサービスが提供されるよう」というところ、「外部有識者等を含めた委員会の構成」という記載があるが、評価の一貫性とは内部的なオペレーション管理の問題であり、外部有識者がそのESGの知見によって貢献しうる領域ではない可能性もある。アプローチへの言及が過度に個別具体的であるため、原則ベースの規範の趣旨に合致しないのではないか。
 
・原則1から6の中では、原則4や原則6の重要性が高いのではないか。評価にかかる哲学や考え方を明らかにするのは重要な論点。この報告書を作成していく上で、市場関係者にどのように理解を促していくかというのも非常に重要なテーマである。
 
・原則1について。最初に、「自らが入手可能な全ての情報」とあるが、公開されている情報に基づき評価を行うところと、アンケートなどに基づき評価するところでは、品質管理の方法などが別にある方が良いかもしれない。品質管理については、定量的なデータに基づき判断をするところと、定性的な分析に基づき判断をするところでは、スコアの材料やサブインディケーターについて別の品質管理プロセスがあるべきではと思う。例えばGHGの排出量の過去の傾向分析や、ピアアナリシスといった数値だけを使って分析するところと、企業開示のテキストを読んで分析するところとは異なった品質管理のプロセスがあるべきではと思う。
 
・原則3の独立性の確保・利益相反について。足元ではESG特化のインデックスが多く出てきている中で、インデックスの入れ替えの情報の取り扱いなども記載しても良いかもしれない。
 
・原則1の品質のところで2点ある。1つ目は、原則1と原則5の関係性についてであるが、原則5の守秘義務のところで、「特に、今後、データの標準化が進む中で、非公開情報の利用も含めた付加価値の形成は重要性が高まっていくことが想定」されるという考え方が示されている。一方で、原則1のところでは、可能な限り公開情報によりつつという原則が示されている。非公開情報の付加価値という指摘と、可能な限り公開情報によりつつという原則は若干全体として整合性を欠いている印象を受けた。この部分を取ってしまって、「ESG評価・データ提供機関は提供する評価・データの品質を確保すべきであり、このために必要な基本的手続等を定めるべきである」とシンプルに記載しても必要十分なのではないかと思う。
 
・原則1について。ESG評価・データ提供機関は評価を行った日付を明らかにすることが重要という考え方が示されているが、「評価の時点を明確にするか、または定期的に更新をすること」とあり、定期的に更新する場合は、時点は明確にしなくてもよいと読める。定期更新のいかんに関わらず、原則として評価の時点は明確すべきではないか。
 
・原則2のところで、「サステナビリティやESGに関する専門人材」という表現が出てくるが、「サステナビリティ関連の情報」あるいは「ESG情報」という言葉がそれぞれ出てきて、使い分けているのではければ、統一しても良いのではないか。
 
・原則1の品質確保について、評価を確定するにあたり、インプットデータ1つ1つに関して企業がレビューしてチェックする必要があると読み取れる部分があるが、実務的に全てのデータに関して確定前にチェックする手続きを行うのは難しいのではないか。データの更新日についても逐一明らかにすることも同様に現実的ではない。PDCAサイクルを回すといった点について、具体的な期待内容が若干分かりづらい。また、その内容を公表するとあるが、その理由が明確ではない。
 
・原則2の人材育成について。指針の3のところで、公正で専門的・職業的な評価を行っていることを人事評価に入れ込むとあるが、具体的にイメージがつきにくい。公正な評価を行うのは大前提であり、そのレベルを判断して評価に組み込むというところが具体的にイメージがつきづらい。また、指針3と原則2との関連性が少し分かりづらい印象。
 
・原則3について。指針の3の部分は購買者負担ビジネスモデルというより、アンケート調査に基づく評価を行う場合の記述の印象。指針の5のところで、「ESG評価・データの対象となる企業から得る収益額に直接基づいて報酬を支払い、または評価を行わない」という部分だが、アナリストはESGリサーチビジネスそのものから報酬を受け取れないとも読み取れ、現実的ではない。指針の6の部分、最後に「明らかにすること」とあるが、誰がどのように情報開示すべきなのかがわかりづらい。アナリストはそもそも評価対象企業との取引関係について知るべきではない立場にあり、明かすこと自体が問題となる可能性がある。
 
・原則4について。指針の3の部分、評価対象となった企業から問合せがあった場合に対応すべきというところだが、具体的に何が求められているのかがわかりづらい。企業からの問合せに対応できる体制整備は重要と考えるが、評価結果そのものに企業が納得されなかった場合、メソドロジーを明らかにすること以上の対応は評価の中立性に関わる可能性もあり難しいのではないか。指針の4、5の部分、情報源についてはインプットデータが膨大になることもあり、全てのデータの情報源を明らかにするのは実務的に困難ではないか。
 
・原則4の考え方のところ、一般に開示すべきものとあるが、そもそも何のために公表までする必要があるのか。その理由や背景が分かりづらい印象。公表か、特定の対象に対する開示かについては内容によって判断すべきなのであれば、報告書全体として、「公表」という文言ではなくて、「開示」という言葉を使うほうが適切なのかもしれない。
 
・原則6について。企業から問題提起があった場合に、適切に対処すべきとあるが、購買者負担モデルの場合は、評価対象の企業と評価機関の間に特段の提携関係は存在しないため、対処しなければならないとする理由がわかりづらい。例えば、メディアが企業に関する記事を書く場合に、毎回、その企業からの問題提起に対応しなければならないといった義務はないと思う。公開情報に基づく評価を行っている場合には、重要なのはメソドロジーに沿った評価がなされているかどうかであり、企業からの指摘は、メソドロジー上評価に反映されない場合もある。例えば、提示される情報が開示情報ではない場合などもあり、企業から過度なチェックを受けることは、メソドロジーの適切な運用に必ずしもつながらないのではないか。
 
・原則1指針1について、「入手可能な情報を詳細に分析」とあり、その前のバージョンでは「全ての情報を詳細に分析」とあった。「全て」は現実的ではないと思うが、「詳細に分析」のところも、情報の重要度によって分析のレベル感は異なると思うので、手続として定めるべきは、情報に濃淡をつけ、重要なものは詳細に分析していくことではないか。
 
・原則2について、人材や技術の保持や能力開発を図るということが書いてあるが、その前段として、ESG評価・データ提供機関に必要な人材は、どういった知見やスキルが必要なのかを整理しておく必要があるのではないか。
 
・原則1指針5について、データを継続的に管理して評価の時点を明確にするか、または、定期的に更新するという点だが、どちらも重要な情報であるため、「または」ではなく、両方の時点が明確になっていると良いのではないか。
 
・守秘義務の箇所について、公開情報を扱う場合と非公開情報を扱う場合ということについてさらに丁寧に記述をいただければありがたい。また、それが今後の資本市場の発展につながっていくのではないか。具体的には、フェア・ディスクロージャー・ルールという、資本市場全体の公正性を考える重要なルールがあるが、このルールとの関連性を整理しても良いのではないか。公開情報以外は全てフェア・ディスクロージャー・ルールの観点から、ESGに関することでも話はできない、公開情報以外は全て非公開情報であり、個別に問合せがあっても対応できない、とする企業がある一方で、質問をすれば、気軽に話して頂ける企業もある。運用機関と企業との建設的な対話の場においても、公開されていない事項について質問し、企業から回答してもらうというやりとりもあると聞いている。フェア・ディスクロージャー・ルールで言う重要情報は何かというのは非常に曖昧模糊としているが、今後、ESG情報が重要性を増してくるのであれば、または、建設的な対話やエンゲージメントがサステナビリティ領域で重要と考えるのであれば、ESG情報もフェア・ディスクロージャー・ルールにのっとりこう対応すべきだといったような文言を追加してはどうか。
・原則2の人材の育成は重要。リカレント教育なども言われるが、海外のビジネススクールではこういった人材を育成しようということで取組みが進んでおり、教育のためのインフラも必要だと思う。
 
・原則1の指針の1について、「自ら入手可能な情報を詳細に分析し」のところに、「合理的に入手可能と考えられる情報を詳細に分析し」とするのはどうか。
 
・原則3の指針の3について。「調査等が著しく複雑、または理解しづらい場合に」というところについては、「著しく複雑、またはESGへの一般的理解を超えた個別の知見を必要とされる場合に」とするのはどうか。
 
・原則3の指針5について。評価会社によっては、Issuer PayモデルとSubscriber Payモデルというところが併存している場合も存在するので、それぞれの評価者は分離すべきという点も重要な点である。
 
・原則5の守秘義務について。評価が開示情報をベースに行われている場合には、非公開情報を受け付けないという前提に立っている機関もあり、そういうケースもあるということがわかるような記載にしてはどうか。非公開情報の中にも、財務的にマテリアルな情報とそうではない情報があり、後者の場合は評価の補足情報として有用であったとしても、これらを併せて守秘義務による厳格な対応の対象とすることは全体の利益に資するとは言えないのではないか。
 
・原則6指針1については、これは質問票等を用いた評価を想定されているように見えるので、もう少し明示的に書いてはどうか。
 
<メンバーからの主な意見(投資家に対する提言)>
・投資家への提言について。投資家側も具体的にどのようにESG評価やデータを利用しているかを発信し、政府や業界団体とも情報を共有するべきだと思う。提言の2番目のインハウス評価については、評価自体はコマーシャル目的ではないので、どのレベルでの透明性が必要か議論が必要かもしれない。
 
・提言において、投資家は評価結果に課題等があると考え得る場合には、企業と対話を行うべきとあり、そのとおりだと思う。これに関連して、多くの評価・データについては、一般的には、契約者である投資家から社外への評価・データの開示というのは契約上厳しく制約されている場合が多いと考えている。投資先が企業と対話を行う際、投資家が評価・データを契約している場合、評価・データの具体的内容について当該企業と対話することは、社外への評価・データの開示の制約という契約に照らして問題ないという認識なのかを評価機関のメンバーに確認したい。
 
<メンバーからの主な意見(企業に対する提言)>
・企業への提言の1番目、「企業は、自らのサステナビリティ関連の情報について、リスク情報も含めてわかり易く整理し、公表すべきである」とあるが、リスクだけ取り出すのではなく、「機会とリスクの双方の観点から分かりすく整理し」といった整理でどうか。
 
・企業への提言の3番目、「どのような問合せについてどう対応を行うかなど、基本的な対応の手順を明らかにする」とあるが、これは具体的にどのようなイメージなのか。関連部署から回答するということなのか、内容ごとに窓口を列挙するということなのか、FAQをESGに関して記載するということなのか。
 
・企業に対しても、ESG評価機関に対して建設的な対話が求められるというのは賛同するが、実際には評価機関側のリソースの問題などもあり、困難な可能性もある。対話に応じてもらえない場合、何か具体策があれば、それを教えて欲しい。
 
・企業への提言の箇所で、リスクと機会はセットなので、両方書いていただくのが良い。2番と3番のあたり、窓口を明らかにして、どのような問合せにどう対応を行うか基本的な対応の手順も公開するという箇所が分かりにくい。具体的にどういう意味なのか。
 
・分かりやすく開示という箇所は、もう少し具体的に書いて良いのではないか。規制やガイドラインに準拠、初めて見る方でも知りたい情報にたどり着きやすいような構成にするといったことは必要ではないか。さらに、企業側が開示するデータにも品質の話はあっても良いのではないかと思う。データについては企業が責任を持ち、品質が担保できている状態のものを開示することに言及しても良いかもしれない。
 
・また、全体的に受け身な印象なので、もう少し能動的な要素も入れていいのではないか。例評価の質とかの改善に向けて対話するなど。具体的には、GHGの排出量に対する評価について、どういう分析が望ましいのかなどを積極的に対話していく必要がある。メーカーは多く売ればむしろCO2が増えるため、貢献量に対する評価が必要というのも重要な点。企業側もESG評価の向上に貢献するべきといった観点を入れ込んでもいいのではないかと思う。
 
・企業への提言の1番について、分かりやすく整理し、公表すべきという点はご指摘のとおりだが、企業の視点からは具体的にどうすればわかりやすくなるのかは常に悩んでいる状況にある。分かりやすさに関して、評価機関はどういうようなところを分かりやすく期待しているのかなどを言及できると良いのではと思う。
 
・「考え方」の「このような企業についての情報に関わるインベストメントチェーン」という箇所について、情報を評価・媒介するESG評価・データ機関と企業は対話する必要はないのでは。企業が対話すべきは投資家で、投資において考慮しているESG評価・データの内容について、企業と投資家が対話すべきと考える。対話の過程で企業が何か気づいた際には、評価の考え方等について評価機関に聞いてみるといったアクションが、企業に求められるのではないか。また、「評価の根拠となる情報(インプットデータ)の正確性や時点等について確認を求める」とあるが、これがESG評価・データの質の向上に貢献するのかはやや疑問。むしろこういうプロセスを経ることで、自らの企業の開示のスキルが向上していくといった影響が考えられ、ESG評価機関の質の向上は言い過ぎではないか。
 
・企業のところで、「ESG情報」と「サステナビリティ関連の情報」という用語が混在している。企業の方では「サステナビリティ関連の情報」を使うのはどうか。
 
・サステナビリティ情報開示基準は、国際的に今急速な勢いで、統合化に向かいつつあり、かなり精緻なものができるような形である。そういう意味で、フェア・ディスクロージャーの観点から言うと、ある程度のフレームワークができて、一般的には情報開示は相当進むと考えられるが、他の財務情報開示と同様に、その粒度は企業によって異なるとが想定される。そのため、企業の方で、投資家あるいはESGの評価機関に対する有用性のある情報を精査しながら出していくという、自由裁量のところで企業の姿勢が試される可能性がある。そうした中で、フェア・ディスクロージャーの問題は、今後議論になっていくだろうと考えられる。
 
・分かりやすく整理し公表すべきという点だが、例えば国内外の連結対象グループ企業全体を対象として、自ら設定したマテリアリティーに対応した情報開示を行う、というような取組みは、あらゆるESG投資家・評価機関が共通して期待する「分かりやすさ」の第一歩ではないかと個人的に思う。
 
<事務局からの主なコメント>
・提言の浸透策について。投資家や企業については、金融庁、市場関係者相互の対話などを通じてとしているが、例えば対話の場をより具体的に設定して実践を働きかけていく、実施状況について市場関係者全体で見えるように何らかの形でしていく、といったソフトなやり方が考えられる。具体策については十分検討しきれていない面もあるので、アドバイス等いただければ幸い。
 
・評価機関の原則1において、「上記のとおり定めたサービス提供手法について、定期的に、実際に自らのサービス提供の状況に照らして検証し」の箇所について、手法と状況が逆ではとの指摘があったが、どちらもあり得ると考える。また、手法の一貫した適用の箇所で、外部専門家か社内かどちらが適しているのかといった点は、単に社内か外部か検証についてもいろいろあるという紹介が主旨なので、文案については検討する。
 
・「ESG」の用語の使い方については検討させていただく。また、IOSCOとの差分については、次回までにできるところで最大限工夫させていただきたい。
 
・可能な限り公開情報によりつつ、必要に応じてその他の情報に基づきという箇所については、事前にも不要ではないかとう指摘を多数受けていたので、次回反映させる。
 
・投資助言業のところは検討させていただく。個別の金融商品に対して、売買等の具体的方針を助言する場合には業に当たる一方、企業のESGの取組みに全般的評価を与えるのみであればこれに当たらないということだったと理解しているが、この辺りの確認も踏まえ、どういう記述ができるか検討させていただきたい。
 
・今回この会議は第6回だが、第2回から5回にかけて、メンバー以外のESG評価・データ提供機関の方に多数プレゼンテーションいただき、またレターでも意見をいただいた。皆様の方で問題なければ、これらの評価機関からもコメントをいただくようにしたい。
 
―― 了 ――

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