「ESG評価・データ提供機関等に係る専門分科会」(第7回)議事録

1.日時:

令和4年6月20日(月)15時00分~17時00分

2.場所:

オンライン開催

 <事務局>
 今回は、前回いただいた御意見、御指摘を踏まえ、事務局のほうで報告書案をさらに修正している。取りまとめに向けて追加の御意見等あれば、ご議論いただきたい。
 本日はこの報告書案について御議論いただき、可能であれば取りまとめを目指していきたい。このため、前回御議論いただいた内容を踏まえて修正をした報告書案について、特に内容に関わる点で文言をこう変えるべきだというご提案があればぜひご発言をお願いしたい。
 
<金融庁資料説明(資料1 事務局資料)>
(事務局より資料説明)
 
<主なディスカッション内容>
・パブリックコメントを受け最終的に作成された行動規範の部分に、報告書に含まれている企業や投資家向けの提言の部分も含まれる理解でよいか。

・行動規範そのものは評価機関に向けた提言となるが、企業や投資家向けの提言部分については、例えば文書の体裁として分けて参考として記載するなど、一体的に読んでいただけるような工夫が考えられないか。

・脚注9の協働エンゲージメントの記載について。この記載は現状の日本の法律上で問題がないかどうか。複数の投資家が同一の問題意識または枠組みを活用した企業へのエンゲージメントといった形に変える必要はないか。

・協働エンゲージメントの箇所については、課題を統一しているが、意見はそれぞれの投資家が表明するものなので、その旨修正いただいた方が法的な面からも望ましいのではないか。一般的な枠組みはハブアンドスポーク型と言われ、協働エンゲージメントを代表してリード運用会社がテーマに即してエンゲージメントするというタイプである。

・5ページ、2段落目の評価の品質について。評価の品質の基本的な考え方が明らかにされることで、投資家や企業の納得感を高める、とあるが、評価の品質の基本的な考え方を明らかにすることが重要となるのか、それとも、評価の基本的な考え方を明らかにすることで、より納得してさらに品質につながるという順番なのか、確認したい。

・11ページ、「NGO等」とあるが、一般的にはNGOよりもNPOの形の団体の方がこうした情報を扱っていると思うので、どちらかを挙げるのであれば、NPOのほうが適しているのではないか。

・13ページ、7評価の多様性について。特に英語版を意識した際に、理解が進むようにコメントする。ESG評価における相関が低いことを国際的に問題視するのは、主に信用格付のような位置づけで捉えた場合の「ESGレーティング」だと思われる。そのような利用方法や、気候変動に関する排出量の開示などは手法等を統一すべきという議論は引き続きある。他方で、今回の報告書ではより広範なESG評価やデータを対象としているため、その全体像としては多様性があってよいという考えに至っている。このように、前半部分を整理した方が良いのではないか。

・32ページの下の方。コミュニケーションを担う専門家を配置するということについて、企業側が専門の担当者を置くとも読めるので、より分かりやすい書き方があっても良い。

・33ページの3段落目、「個別に、評価の方針と結果に乖離があると認められた場合」が、「適切な対価な下で」とつながっているが、少し違和感がある。また、英語版には現在ここの記載がないので、統一すべきではないか。

・36ページの企業への提言について。考え方の中で、環境や社会に対する企業活動による相互の影響を認識し、その上での行動があり、そこから開示ということがまとめられると、チェックボックス的な対応にならなくてよいのではないか。

・NGOとNPOについては、両方の機関の方があると理解。特に御意見がなければ、NPOという形での修正が検討できないか。

・13ページ、「ESG評価については、評価機関の間で評価の相関が低いのではないか、との分析も見られている」という部分について、Subscriber Payを中心とした企業評価について、各評価機関との間で評価の相関が低いという分析が見られていると始めた上で、専門分科会での議論はいろいろなものがあり続ける、評価について幅があるという見解については変わらないと考える。その後、「また、特に」という箇所が、すっと次の話に入っているため、エクイティの話だけではなく、ボンドの評価も本提言については含まれており、幅広く記載しているということが工夫できないか。

・特に海外の方からすると、IOSCOが「ESGレーティング」としているため、少し異なる点となるので、丁寧に説明することが望ましい。

・32ページについて、コミュニケーションを担う担当者を配置するのは、企業ではなくて評価機関だということが読みづらい点については、修文が検討できないか。また、33ページ、36ページについても同様に修文を検討できないか。

・原則4の指針5について。指針の内容がかなり細かく、原則主義から逸脱しているのではないかという点と、実務面で困難を伴うのではないか、つまりESG評価・データ提供機関が現在市場に提供している様々なツールやサービスを提供するに際して困難を伴う可能性があるのではないかという疑問がある。

・原則6の指針3について。「可能な限り」等のただし書があるものの、実務面で困難を伴う可能性がある。あらゆるプロダクツについて、企業の確認がなければ提供できないとなると、タイムリーな情報更新や発信が難しくなる可能性がある。さらに、企業とのコミュニケーションが重要なのは大前提としつつ、評価内容に対して企業が影響力を持つことができるという誤解を招きかねない、そうした印象を与えかねない可能性がある。具体的には、特に「事前に」という箇所が問題となる可能性がある。評価に対する影響力をほかの機関が持ちうるリスク、つまり評価機関の独立性、中立性が守られないリスクがある。

・今回の行動規範は、基本的にはサービスプロバイダーが対象となり、運用機関が独自にインハウスで付与している格付は対象にならないという理解だが、そうした格付等の市場への影響力は非常に大きいと考える。同等と扱うか、この行動規範を受け入れた機関が提供する格付データサービスとそうでないものが市場で区別されるようなスキームが望ましいのではないか。

・8ページ、行動規範を受け入れた機関は金融庁に通知とあるが、その通知を受けて、金融庁では何か具体的なアクションを取られる予定があるのか。

・行動規範を受け入れたESG評価・データ提供機関について、金融庁としては、受け入れた場合にはその旨を自らのウェブサイトでの公表をお願いできればと思っており、その際には金融庁にも通知をいただけると、その後の一覧性のある形で公表することにつながりやすいと考えている。情報の集約という観点から記載している。

・原則4の指針5について、IOSCOでもこの程度の記載はあり、何回かの修正を経て、具体的項目として、「各社の状況や項目の重要性・有用性等も踏まえつつ」と記載している。実務的に難しいのではといった点については、情報源などが多岐にわたる場合には、重要性や有用性を鑑みて対象を集約とか限定するなど、合理的な範囲・方法で対応するといった表現が4ポツのところにあるため、5ポツの柱書きのところでも改めて記載するということも考えられないか。

・原則6の指針3について。「事前に」に加え、「可能な限り」という表現をもう少しわかりやすくできないか。どこに係るのかがわかりにくい。ほかの指針では、例えば原則1の指針5などでは、括弧づけでいろいろな文言を丁寧に記載されている。同じような形で、「可能な限り」の箇所を具体的に表現できないか。「事前に」のところは、解釈の仕方が難しい面があるため、もう少し記載を工夫いただくと良いのではないか。

・「可能な限り」は、英語に訳すと「to the extent possible」ということになって、不可能か可能かという違いになってしまう可能性があるのではないか。ベストエフォートといったような感じで伝えられると良い。

・原則6の指針3については、IOSCOの記載に照らした表現と思うが、伝達のタイミングには懸念もある一方で、できるだけ早く教えて欲しいという趣旨の声もあり、例えば、「公表するに際して可能な限り速やかに」という修文が考えらないか。

・「一般に公開」という言葉も明確化する必要があるのではないか。ESG評価機関がそのクライアント、運用機関に対して情報を提供する場合なのか、あるいは、いわゆるパブリックに対して公にすることなのか。

・18ページで、「開示」を定義し、ウェブサイトによる一般公開などを基本的には念頭に置きつつ、提供するサービスや利用者の特性などを踏まえて、各機関の判断で顧客や評価対象企業のみに開示することや、深度に差異を設けることも含まれるという趣旨の記載で整理されている。原則6の指針3では、その上で、可能な限りESG評価・データを「一般に公表する」と記載されており、意味合いとしては異なることとなる。議論を踏まえて、例えば、ESG評価・データを開示するに際しては、可能な限り速やかに、企業にあらかじめ通知または周知するとった修文が考えられないか。

・英語では、「開示」も「一般に公表」も両方ともdisclosureとなる予定だったのか。

・この文書全体としては、「開示」と「一般に公表」は分けて記載している。英語については今後の検討となるが、当然に、英語においても同じようなニュアンスと程度が分かるような形で書く必要がある。例えば、「開示」という表現を「disclose」とした場合は、「一般に公表」は「generally/public」とか「generally/publicize」とした上で、先ほどと同じような注記を英語についても入れることが考えられないか。

・運用会社が行う評価について指摘があったが、現在、投資家向けの提言のところに、ESG評価を利用する際にどのようにESG評価を利用しているのかを明らかにすることが重要だという内容が入っている。

・行動規範について遵守している先と遵守していない先が明確に分かるようにした方が良いのではないかという指摘があったが、報告書では、金融庁において一覧性のある形で公表すべきということを記載しており、こういう形が考えられるのではないか。

・原則1の指針5について。「また」以下のところのデータの取得日、更新日の開示という箇所が削除されている。アウトプットとして提供されている評価・データ、つまり、それ自体が最終的な提供物であるという意味での評価・データと、評価・データを作るにあたっての中間的な評価や中間的なデータ、情報源となるローデータといったレイヤーがあると思うが、アウトプットとして提供される評価・データについては、その更新時期や取得時期は明らかになっている必要がある。この括弧の中の対象の集約や限定というのは、あくまで提供される評価・データの基となる評価・データ項目についてはという意味なのかを確認させていただきたい。もしアウトプットとしても提供されている評価・データであっても、それが多岐にわたる場合は、集約や一部に限定するということであれば、限定し過ぎではと考える。提供される評価・データの基となる評価・データ項目についてはという形で修文をしていただくのも1案ではないか。

・原則6のコミュニケーションの箇所で、指針6が全部削除されている。削除の背景を教えていただきたいのと、もし差し支えない範囲で残せるのであれば、残しても良いのではないか。

・おわりに、について。報告書の海外への還元や浸透を図るといった記述がある。今回のこの行動規範は、日本の金融機関にサービスを提供している評価機関、データ提供機関が主な対象として想定されている。日本の金融機関だけに絞って提供している評価機関、データ提供機関は実質ほとんどいないので、行動規範の影響は当然グローバルに及んでいくため、行動規範の受入れ状況や賛同状況等についても、海外への還元や浸透を図るということ少し書いていただいても良いのではと思う。

・原則6の指針6については、指針としては抽象度が高すぎるのでは、報告書全体として、投資家、企業、評価機関の3者の間でのコミュニケーションを多く言及しており、既に趣旨は明確では、評価結果のフィードバックをするかどうかは手法の1つであり、具体的過ぎるのでは、といった指摘があった。

・ESG評価機関の業務は、投資家の投資判断をサポートすることであり、間接的には企業の取組改善に貢献する面もあるかもしれないが、それはあくまで間接的な波及効果であり、企業と積極的にコミュニケーションを取ること、取組の改善を促すことが一義的な目的ではない。指針6のような内容が強調され過ぎてしまうと、利益相反につながる可能性もあると考えられるため、削除すべきではないか。

・原則6について、指針3は事前の話であり、指針4は事後の訂正の話であるので、指針3の「前」であることは重要である。指針6について、指針の4のところに入れる形で残すのも一案である。原則6の「考え方」には内容が含まれているため、指針のどこかに「評価結果のフィードバック等」を残しておいても良いのではないかと思う。

・企業の提言について、開示が前に出過ぎているが、取組を進めることがまずは大事ではとの指摘があったが、同意する。企業も、投資家の方との建設的な対話の機会を求めていきたいと考えている。そうした意味でも、コミュニケーションについては、評価機関からのフィードバックなどを含め、様々なコミュニケーションができるような形が望ましい。不当な要求を受けるのは困るという点は理解しつつ、対象企業が多いという点を考慮した上でも、フィードバックについては期待申し上げる。

・原則6については、誤りがあれば、適切に対処することとして、何かフィードバックのようなことが1つの工夫として考えられるといった内容を入れられないか。また、指針3については、自らの評価手法や顧客内容の方針を踏まえて、ESG評価・データの開示に際して、可能な限り速やかに企業に通知または周知と、開示に際して可能な限り速やかに、といった方向で修文が検討できないか。

・「おわりに」のところで、賛同状況などについても、国際的に還元していくという点についても記載できないか。

・15ページのIOSCOの報告書との比較の中で、IOSCO報告書の重要な点を引継ぎつつ、独自の内容と構成で取りまとめているとあるが、独自だと日本版を作ったような印象を与えてしまうので、IOSCOの内容を踏まえて実効性あるものとして深めるといった位置づけのほうが正確なのではないか。

・原則2について。指針に金融、ESG双方の知見が必要というところは問題ないが、考え方のところで、「債券・株式の評価等の」を削除したことにより、金融面に関する専門性が逆に広くなり過ぎてしまった印象を受ける。債券や株式のESG評価を行う際に、金融商品の特性が理解できていないと、誤った評価を起こしかねないリスクがある。例えば、ESG債の評価においては、私募債、公募債などでそれぞれ開示先が異なることや、5年債、10年債、40年債をどう評価するのかなど、金融商品の内容を理解することが重要である。単に金融面と書くのではなく、取り扱う、あるいは、評価対象となる金融商品の特性とか、金融商品の性質等といったことを一言入れていただいた方が、人材育成の方向性として適切にマーケットに伝わるのではないか。

・原則6の指針6のフィードバックの箇所について、「建設的な対話」は重要な点と考える。企業と評価会社、投資家の間で、現状では、評価機関のメソドロジーがブラックボックス、企業の開示が十分ではないといった感じで、建設的な対話ができていない状況がある。

・原則1の指針5について。データの取得日、更新日はすごく重要である。データの項目が増えてしまうのは理解しつつも、評価が変わったときに、どこを見て、いつのデータを見て、なぜ変わったのかという点が分かりにくいことが問題だと考える。そこについても、この時点のデータを使ってこういうふうに変わったという開示があると、わかりやすいと思う。

・原則6の指針6について、評価結果のフィードバックなどそれぞれに創意工夫を行いつつ、評価手法なども含めて建設的に対話を行うことという文章のうち、建設的な対話という趣旨を指針のどこかに入るように修文が検討できないか。

・融資をどこまで含むかという点については、9ページで、「株式・債券のほか融資等を含む」と明記をいただいた。一方で、14ページの表は、「ESG関連債等の評価」となっており、その下に「債券・融資」と書くのであれば、ここは「ESG関連債務の評価」、「債務」という言葉にしていただき、右のところのスコアリング・レーティングのところも、「上記と併せ、または並行して」という文言を削除いただき、環境格付融資やグリーン不動産に関する格付なども含むということで整合性を取っていただければと思う。

・英語版の3ページ、以降の呼び方としてESGレーティングと書かれているが、日本語版では以降を評価機関という形でまとめているので、その点は修正していただいた方が良いと思う。

・多数、貴重な御意見いただき、感謝申し上げる。個別の御意見については個別にその場で確認させていただいた。基本的な方向感は、皆様に御賛同いただけたものと理解している。従って、よろしければ、本日いただいた意見の反映、テクニカルな修正も含め、座長に御一任いただき、私と事務局で精査した上で報告書として公表したいと思う。行動規範については、金融庁からパブリック・コメントに付してもらう。また、パブリック・コメントの結果と対応については、本専門分科会に報告してもらう。そういった段取りで進みたいと思うが、問題ないか。

・異議なしとのことで、このような形で進めさせていただく。

・北川座長、及び委員の皆様方には、7回にわたる精力的な御議論をいただき、感謝申し上げる。本日の御意見も踏まえ、行動規範及び報告書を取りまとめ、取りまとまった暁には、海外に対しても発信をしていきたい。言うまでもなく、この行動規範ができてそれで終わりということではなくて、むしろ、これからこの行動規範の遵守を呼びかけて、また、それを通じてこのESG評価等々のさらなる発展を図っていく。むしろこれが始まり、スタートラインであるので、今後とも皆様方の御指導、御協力をよろしくお願いしたい。 
 
―― 了 ――

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)

総合政策局総合政策課

(内線3515、2918、2770、2893)

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