フィンテック・ベンチャーに関する有識者会議(第1回)議事録

1.日時:

平成28年5月16日(月)10時00分~12時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

【福田座長】

それでは、時間になりましたので、ただいまより「フィンテック・ベンチャーに関する有識者会議」第1回会合を開催したいと思います。

皆様、ご多忙のところご参集いただきまして、誠にありがとうございます。このたび有識者会議の座長を務めることになりました、東京大学の福田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

それでは、まず初めに、金融庁、森長官よりご挨拶をいただきたいと思います。森長官、よろしくお願いいたします。

【森長官】

金融庁の森でございます。

本日は、大変お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。初回の会合にあたりまして、一言、ご挨拶させていただきます。

近年、FinTechが大きな注目を集めておりますが、私どもとしても、FinTechが今後の金融を大きく変えていくと認識しております。その際、こうしたイノベーションを通じて、国民により良いサービスが提供され、我が国経済・金融の健全な発展につながっていくことが重要と考えております。

他方、内外の状況を見ますと、日本では欧米等に比べて先進的なFinTechベンチャーが数多く登場するといった状況には、いまだ至ってないように見受けられます。幅広い分野の人材が集積・連携する中で、FinTechベンチャーの登場・成長が進んでいく環境を整備していくために、どのような方策が求められるか、この分野において高い識見を有する皆様方からご意見をいただければと考えております。

また、FinTechが今後の金融に具体的にどのような影響を、どのような速度で及ぼしていくかについても、率直なご意見を伺えれば幸いです。

金融庁では、FinTechの動きも踏まえた法制度の整備を図るべく、関連の法案を今国会に提出するとともに、事業者等からのFinTech関係の相談に一元的に対応するFinTechサポートデスクの設置といった取組みを進めております。皆様のご議論を踏まえ、FinTechを通じたイノベーションが日本においてさらに発展していけるよう、引き続き法制度の整備など、必要な環境整備に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

【福田座長】

森長官、ありがとうございました。

それでは、恐縮ですが、カメラ撮影の方は、ここでご退席をお願いいたします。

続きまして、事務局から、メンバーのご紹介と運営要領(案)のご説明をお願いいたします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

事務局を務めさせていただきます、金融庁総務企画局信用制度参事官の佐藤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

まず、私のほうから、本有識者会議のメンバーの皆様のご紹介をさせていただきたいと思います。

座席順にご紹介申し上げます。お手元に配席図をお配りしておりますが、まずあちらのほうから、伊藤穰一様、その隣が仮屋薗聡一様、そのお隣、郷治友孝様、そのお隣、瀧俊雄様、そのお隣、田中正明様、そのお隣に仲津正朗様でございます。

また、本日、テレビ電話を通じまして、スクリーンがこちらとこちら、2つございますが、スクリーンを通じまして、アメリカからご参画をいただいております、金子恭規様でございます。アメリカ現地時間、太平洋時間の日曜日の夕方6時ということで、週末の貴重なお時間を割いていただきまして、誠にありがとうございます。

さらに、本日ご欠席をされておりますが、松尾豊様にもご参加いただくこととなっております。

また、本日、参考人といたしまして、MITメディアラボより、伊藤委員のお隣にお座りいただいておりますが、松尾真一郎様にもご出席をいただいております。

次に、オブザーバーの方をご紹介申し上げます。

あちらのほうにお座りいただいておりますが、三井住友銀行ITイノベーション推進部の中山部長でございます。あと、あちらのほうにお座りいただいておりますが、経済産業省経済産業政策局新規産業室の福本室長でございます。そのお隣に、日本銀行金融機構局の岩下審議役でございます。また、本日ご欠席ですが、日本証券業協会政策本部の鎌田参与にもご参加いただくこととなっておりまして、本日は代理としまして、あちらのほうにお座りいただいておりますが、日本証券業協会政策本部の並木調査部長にお越しいただいております。

なお、事務局につきましては金融庁が務めさせていただきますが、時間の都合もありまして、お手元の配席表をもってご紹介にかえさせていただきます。

続きまして、本有識者会議の運営要領について、ご説明を申し上げます。

お手元に、右肩に資料2と書いた1枚紙が配付されているかと存じます。この資料に沿って、本日、申し合わせをさせていただければと考えておりまして、その案を読み上げさせていただきます。

運営要領(案)第1条、有識者会議の運営ということで、フィンテック・ベンチャーに関する有識者会議の議事の手続その他有識者会議の運営に関しては、この運営要領の規定するところによる。

第2条、有識者会議は座長が招集する。

座長は、有識者会議を招集すべき日時が決まり次第、座長が適当と認める方法により、遅滞なく公表する。

第3条、座長は、有識者会議の議長となり、議事を整理する。

第4条、座長は、必要に応じ、学識経験者、関係行政機関の職員その他適当と認める者の出席を求め、その意見を聞くことができる。

第5条、有識者会議は公開とする。

前項に定めるもののほか、公開に関し必要な事項は、座長が定める。

第6条、有識者会議の議事録は、会議の都度作成し、公表するものとする。

第7条、有識者会議の資料は、公表するものとする。

第8条、最後でございますが、この運営要領に定めるもののほか、有識者会議に必要な事項は、座長が定める。

以上でございます。

【福田座長】

ありがとうございました。

皆様、このような進め方でよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【福田座長】

それでは、「(案)」を取らせていただいて、今後、この要領で進めるということで、申し合わせをさせていただきたいと思います。

それでは、議事に移らせていただきます。

議事次第にありますように、本日は、まず事務局から、本会議を設置した趣旨・目的等についてご説明いただきたいと思います。

続いて討議に入りますが、本日は、MITにおいて、ITの先端分野の研究をされている伊藤委員が来日の機会にご出席されているところ、まず伊藤委員から20分程度、事務局からの説明を踏まえて、FinTechエコシステム整備のための考え方等についてお話をいただき、その後に一括して討議を行いたいと思います。

なお、本日伊藤委員はご予定の都合上、11時半にはご退席されますので、その点はご留意いただければと思います。

それでは、まず事務局からお願いいたします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

それでは、引き続きまして、私からご説明を申し上げます。

お手元に、右肩に資料3、事務局説明資料と書いた紙が配られているかと存じます。

表紙をおめくりいただきまして、最初に1ページというところに、この有識者会議の大きな背景、目的について、簡単にまとめております。

最初の上の四角で囲んでありますが、FinTechベンチャーをめぐる環境・背景といたしまして、先ほどの長官のご挨拶にもありましたとおり、最近、FinTechの動きが注目を集めており、他方、欧米などに比べて、我が国では先進的なFinTechベンチャー企業、あるいはベンチャー・キャピタルの登場が、いまだ必ずしも実現していないといった指摘がございます。こうしたことを踏まえ、我が国の強みも生かしつつ、海外展開を視野に入れたFinTechベンチャー企業の創出を図っていくために、技術の担い手、例えば、研究者の方、技術者の方などと、一方でビジネスの担い手、企業や資金供給者、あるいは法律や会計実務家など、こういった技術の担い手とビジネスの担い手など、幅広い分野の人材が集積して、この連携の中で、FinTechベンチャー企業の登場、成長が進んでいくという環境、いわゆるエコシステムを整備していくことが重要ではないかという大きな問題意識でございます。

これを踏まえ、矢印の下に書いておりますが、この有識者会議にお願いしたいことといたしまして、「FinTechエコシステム」の実現に向けた方策について検討するとともに、こうしたFinTechの動きが金融業にどういう影響を与えていくのか、そうしたことについても幅広くご議論をいただきたいと考えております。

その次のページ、2ページをお開きいただきたいと思います。

今、エコシステム、生態系という話を申し上げましたが、ご参考までに、シリコンバレーのエコシステムというものについて、皆様方、ご承知のところが多々あると思いますが、私ども事務局としまして、簡単に図にまとめたものでございます。

一番上に書いております、約4,800平方キロメートル、日本でいうところの、例えば、福岡県などと同じぐらいの面積の地域に関係者が集積し、この中で世界トップレベルのIT企業が成長し、年間でも約1.7万社のベンチャー企業が次々に創業している。

その下に、概念図を描いております。色々と複雑な要素はあると思いますが、極めてシンプルに、ラフな図を描いております。

一番下から右にかけて、矢印を描いております。例えば、シリコンバレーにおいて、スタンフォード大学などの大学や研究機関、あるいは技術者といった方々が集積する中で、先進的な技術や、それを生かしていこうというアイデアがだんだん登場し、そうした技術やアイデアをビジネスモデルに設計をしていく。その中で、例えば、当然、起業家予備群がいたり、あるいは起業の助言者がいたり、メンター的な役割を果たすような人たちが、このビジネスモデルの設計にアドバイスをし、それを資金調達という面でも支え、そこで企業実務家、弁護士とか会計士等が起業に向けてのいろんな手助けをやっていく。それを踏まえて、さらに創業がなされ、海外展開がなされていく。一説によりますと、全米の約4割のベンチャー・キャピタルがシリコンバレーに集積していると言われる。さらに、いわゆるエグジットということで、M&AやIPO、ここで大企業や金融機関など、技術や人材の取り込む目的として、ベンチャー企業との連携や協働を行うような、こういった大企業や金融機関の存在もあり、機関投資家、ファンド等が、M&AやIPOにおいて重要な役割を果たし、さらに、こうした起業経験が、この起業経験をもとにして、起業助言者や資金供給者として、次のサイクルに向けて活躍をしていく。加えて、シリコンバレーだけで終結・収束するわけではなく、海外とのネットワーク、例えば、海外から起業家層が続々と登場し、また、資金供給者、提携企業なども参加していくと、こうした大きな流れの中で、新しいベンチャー企業が登場し、それが次のサイクル、M&AやIPOを経て、どんどん大きく成長・発展していくと共に人材の面で厚みをもたらしていく。こうしたエコシステムということがシリコンバレーのエコシステムであろうかと考えております。

これを踏まえて、次の3ページ目でございます。

今のはあくまでもシリコンバレーの例ということで、日本におきまして、また色々な観点というものがあろうかと思いますが、検討の視点の例として、幾つかまとめております。左側に日本のFinTechベンチャーをめぐる環境ということで、極めてラフにまとめております。

1つは、学生や若手研究者、海外出身者といった方々が日本においてFinTechベンチャーの企業を目指す動きは、まだまだ限定的なのではないかと。また、技術のコミュニティ、技術者や大学・研究機関等と金融・ビジネス・コミュニティの関係構築も発展途上なのではないか。また、起業経験者や専門家等が関わりながら、アイデアを実際のビジネスとして孵化(インキュベーション)させていくといった循環が形成されているには至っていないのではないか。加えて、グローバルに展開するFinTech企業もまだまだ少なく、FinTechに関する国際的な連携やネットワークが弱いといった面もあるのではないか。これが今、日本のFinTechベンチャーを巡る環境ということで言えるのではないかということでございます。

これを受けて、矢印の右側、検討の視点(例)と書いております。様々な検討の視点はあろうかと思いますが、我々が考える主立ったものを、ここでまとめております。

1つは、学生や研究者等の潜在的な人材が、実際に起業を目指す、そういった流れを作り出していくための課題は何であるのか。イノベーション促進の観点から、FinTech分野におけるビジネスと技術コミュニティの関係をどう考えていくのか。様々な領域の人材が集積し、連携していけるような環境のイメージ、また、その構築のために何が必要であるのか。日本発の国際的なFinTechベンチャーを生み出していくための取組みとして何が必要であるか。さらに、FinTechの進展が金融機関のビジネスにどのような影響を、加えてどのような速度で及ぼしていくのか、こうした検討の視点があろうかと思っております。

もちろん、この検討の視点は、これに限られるわけでは全くございません。幅広い観点からご議論いただいて、最初、1枚目のところで申し上げました、FinTechエコシステムの実現に向けた方策、それが金融の将来に与えている影響等について、幅広くご議論をいただきたいと考えております。

以上が、本有識者会議にご参集いただきました背景と目的ということで、事務局から、まずご説明を申し上げました。

【福田座長】

佐藤信用制度参事官、ありがとうございました。

それでは、引き続き、伊藤委員、よろしくお願いいたします。

【伊藤委員】

申し訳ないのですけれども、資料が英語となっておりますが、日本語で話しますので、資料のほうは参考までに見ていただければと思います。

まず最初、細かい話に入る前に、個人的には、インターネット・ベンチャーのほうをずっとやってきたので、どうしてもそこと比べて見てしまう部分があるので、少しインターネットのシステムの誕生・発展と、どういうところが似ていて、どういうところが違うかという話を少ししたいと思います。

まず、似ているところはたくさんあると思うんですね。もともとインターネットが最初にできてきたころというのは、電子メールだとか、インターネット・プロトコルの前にパソコン通信とかがあって、そして電子メールというアプリケーションがあって、その電子メールが広がることによってネットワークが広がっていって、そして当時、X25という規格を使ってパケット通信とかも始まったんですけれども、アメリカの大学と軍事の規格でTCP/IPのIPプロトコルができて、こっちのほうが軽かったし、世界的に標準化が進んでいくわけなんですけれども、そのとき、今までみたいに電話会社などの既存の企業からのコントロールもなかったし、アーキテクチャーも大分違ってたんで、かなりこういう委員会でやりとりして、活発な議論をしたんですけれども、そのときのキラーアプリケーションというか、一番普及させるためのアプリケーションがメールだったものです。

最初、IPをつくって、みんなプロバイダーを始めるんですけど、そのときには何に使うかよくわからないと。何かすごいことが起きるだろうなという感じはしたんだけれども、これはウェブの前ですので。

僕は実は、そのときは電子決済かなと思って、ウェブ以前にEキャッシュのサーバーで音楽を売ってみたり、実はビットコインみたいなもののほうがウェブより先に流行ると勘違いしていたんですけれども、そういう時期があって、その後、95年ぐらい、ウェブが出てきてから、本格的なベンチャーが、ブラウザーはじめ、第2のブームができて、そこでウェブを中心にインターネットのバブルが起きて、はじけて、また進んでいくわけなんですけれども、ビットコインの場合は、ビットコインそのものが、多分、メールみたいな感じで、それによってブロックチェーンというプロトコルとインフラが普及していくんじゃないかなと。

ただ、メールは、まだ僕らも使っているけれども、メールが一番のバリュードライバーかというと、ほかのアプリケーションもたくさんありますということで、同じく、多分、ビットコインとか通貨の部分というのはなくならないけれども、それがあることによってブロックチェーンが普及して、そのブロックチェーンで、これから何していくかというのが、まず1つの課題かなと。

そして、アメリカでは随分インターネットとの比較ってされていて、ただ幾つか、投資家の面から見ると、1,000億円以上のベンチャー・キャピタルは、もうビットコインに投資していて、これが95年ぐらいのアメリカのインターネットのブームの時期よりも圧倒的に早いと。

もっと言うと、僕が個人的に思うのは、95年ぐらいをみんなスタートで考えているんだけれども、これはもうインターネットがインフラとしてしっかりあって、そこの上で、今度はウェブをつくった段階なんだけれども、僕はビットコインって、もう90年代前半、80年代後半の、まだIPプロトコルがしっかりしてないぐらいのものしかまだないと思っていて、したがって、ビットコインとかブロックチェーンの上でいろんなことをやろうとしているベンチャー・キャピタルは、ちょっと早過ぎると個人的には思っていて、少し大学の立場で言うと、スタンフォードなんかだと、スタンフォードってシリコンバレーの真ん中なんで、すごくベンチャーがたくさんあるわけなんで、ビットコインとか暗号がわかる学生や先生も、ほとんどもうベンチャーに入っちゃっているんですよね。

インターネットの最初のころというのは、損得をあまり考えない、中立な大学だったり国の機関の人たちがつくっていたんですね。もともとの用途も研究だったわけなので、ある程度しっかり組み立て始めたのに、しっかりできてない。できていないだけではなくて、それをできる人たちって、多分、僕は世の中に数百人ぐらいしかいないとても貴重な人材だと思っているんです。これは英語では、よくPrecision engineeringと言っているんですけれども、多分、アプリケーションつくるんではなくて、これは暗号と、distributed system とか、ネットワークとか、経済学とか、いろんなことをわからないとcontributeできない分野なので、インターネットで例えると、僕がPSIネットを日本で立ち上げたころというのは、ルーター間のプロトコルをちゃんとわかる人って、多分、数人ぐらいしかいなかったんで、同じ人が全部のプロバイダーのルーターの設定手伝っていたぐらい人材がいなかったんですよね。

そもそもビットコインとインターネットの一番大きな違いは、インターネットは軍事と大学から出てきたんで、比較的に国と仲よかった人たちが、損得考えないで、ちゃんとやっていこうという文化だったんですけれども、ビットコインのもとの連中というのは、あんまり国と一緒にやろうという気がない連中で、彼らもお互い信用しなくても、上手く決済できるという、distributedな哲学なんで、あんまりコンセンサスが上手ではない部分もあると思うんですね。ただ、こうしたビットコインのコアの人間が、安心して使えるネットワークには必要な人材で、こうした人材が世界にも足りないし、まだ、これからやれることがたくさんあるんじゃないかなという話が、まず1個あるわけです。

もう1つは、今、結構、ビットコインのベンチャーで、アプリケーションのレイヤーが結構あるんですけれども、もっと以前でいえば、プロバイダーとか、もっと基幹の下のところをしっかりつくっていく必要があるので、これもインターネットの時もそうだったんですけれども、やっぱり日本ってどうしても、ビジネスモデルのベンチャーだとか、ビジネスレイヤーのベンチャーが多くて、世界的に通用する技術、ルーターだとか、そういうところって結構少なかったと思うんですけれども、技術者がいないわけではないんで、それはやっぱり、そういう会社がつくりづらかった環境があったかなというのは、ちょっと気にしています。

これは世界のベンチャー・キャピタルなんですけど、結構バブルになって、はじけたかなと思ったら、ちょっとはね返っているというのが、今、アメリカの、世界の現状で、その中で、ちょっとちっちゃくて見えないかもしれないですけど、以前はシリコンバレーがほとんどだったんですけれども、今やっとシリコンバレー以外の投資額が500億円以上と、会社の数で100社ぐらいが入っているんで、シリコンバレーオンリーのトレンドじゃなくなったというのが、もう一つのトレンドなんです。

そして、少し言葉の定義をここで確認したかったんですけれども、FinTechという言葉も、じゃあ、もっといい言葉があるかというとないんで。ただ、FinTechだと、やっぱり僕らが言っている全てのことを指してないかなと思うのは、ここではファイナンスだけの話ではないと思うんですよね。やっぱりブロックチェーンと思うのは、ファイナンス以外のいろんな面白いことがたくさんあると思うんで、だから、FinTechで、インターネット的にいうとメールテックみたいな感じで、もう少し広いかなというのはあって、じゃあ、何かなというのを議論しなきゃいけないと思うんですけど。

そこの中で大きく分野を見ると、これが結構重要で、大きく3つぐらいのカテゴリーで分けると、まず、ビットコインというソフトウェア・プロジェクトと、そのソフトウェアがつくっているブロックチェーンと、そのブロックチェーンが、もとのブロックチェーンにつながっている、コアのブロックチェーンがあるんですね。これはインターネットからすると、インターネットそのものがビットコインのブロックチェーンで、よくブロックチェーンという言葉は他でも使われていて、これはビットコインとほとんど同じソフトだけれども、チェーンがつながってないものというのはAlt Coinと呼んでいて、ちょっと工夫して、ちょっと違いがあるけれども、昔でいえば、インターネットに接続しなかったニフティサーブだとかAOLみたいなものだと思うんですけれども、それとブロックチェーンみたいなledgerをつないでいく、プライベート・ブロックチェーンとか呼ばれるものなど、いろいろ、これはもうビットコイン以前に昔からある技術なんで、それは特に新しくないけれども、ビットコインが流行ったことによって、いろんな使い方があるなというのが出てきている。

個人的な仮説で言うと、やっぱりインターネットでいろいろやるのが面倒くさいので、AOLみたいなところで、やっぱりクローズでやったほうが、いろんなサービスつくれるんで、進化は速いんですよね。ただ、最終的にネットワークエフェクトで、AOLもニフティもコンピュサーブもインターネットの一部になって、そして、いろんなフィーチャーが取り込まれていくという感じで、僕は最終的には1つのネットワークにならないと、そもそも一番大きい夢は果たすことができないと思うんで、この1番目のブロックチェーンのところを、ちょっと動きが遅いんだけれどもしっかりやるのが、個人的に注力しているところです。

3つ目が、暗号だとかデジタル決済とかを使って、ブロックチェーン以外の暗号通貨とか、いろんなアプリケーションがあって、ここにリップルとか、他もたくさんあるんですけれども、この分野が盛り上がっていることによって、周辺にいろんな面白いイノベーションもあると思うんですけれども、ブロックチェーンなのかブロックチェーンじゃないのかというのは結構大きな技術的な違いなので、これはちゃんと明確にして、説明していったほうがいいと思います。

そして、このdistributed ledgerというのは、ブロックチェーンを使った分散型の通知というかledgerのシステムで、多分、大きく分けると、このエリアが一番面白いかなと思っていて、1つは、デジタルコインではなくて、証券をそれでやりとりする。これは比較的にわかりやすいんで、どんどん、NASDAQはじめ、いろんなベンチャーが、証券のやりとりをブロックチェーンで始めてます。これは多分、わかりやすく、どんどん進んでいくと思います。

トレードファイナンスというのは、これはもう少しリスクがある取引とか、いろんな国際的な貿易に必要な資料をブロックチェーンでやる。これもかなり応用可能性が高いし、あとは今、普通に決済できない国だとか、例えば、パキスタンの農家の方のローンをそれでやってみるだとか、そういうようなトレードファイナンスが始まっていて、ここもどんどん進んでいって、伸びると思います。

セキュリタイゼーションというのは、これは証券化で、例えば、太陽電池をインドで証券化して、それをビットコインで、ブロックチェーンで売買して、そこに直接お金を払って投資するという、今だと間にたくさん会社が入らなきゃいけないものも、かなり面白いものを証券化できるんではないかというので、ここの辺のベンチャーも結構面白いかなと。

あとは海外、ヨーロッパなんか特にそうなんですけど、クラウドファンディングが随分はやってきて、これもブロックチェーンでやっていくかなと。

ただ、最近のカンファレンスで聞いた言葉で、これが流行っているんですけど、RegTechといって、Regってレギュレーションのことなんですけど、規制とか管理をする行政とか官僚が使う技術のブロックチェーン。これは監査だったり管理だったり。これが実はすごくアプリケーションがたくさんあって、金融当局が管理するんじゃなくて、金融当局がお客さんになるという可能性が結構大きいんじゃないかなというのが、最近の話題にはなってます。

さっきもちょっと話したんですけど、僕が一番、日本にとって心配しているのは、技術的にわかる人たちというのが、多分、随分数が少ないと思うんですよね。僕もいろんな会議に出たり、我々もビットコインのコアデベロッパーたちのメーリングリストとかカンファレンスとかも行っているんですけど、ほとんど日本人はいないです。技術的にレベルの高い人たちが、大学だとか研究所とかにはいらっしゃるんですけれども、これもインターネットと似ていて、例えば、ビットコインというのは仕様書って書いてないんですよね、インターネットみたいに。ビットコインのソフトのソースコードを読まないと、どうやって動くかわからないと。読んでも、話して質問しないと何が何だかわからない。それをまた動かしている人たちもたくさんいるんで、このコミュニティに参加しないと、日本がビットコインのコアを、これからどういう方向に持っていくかの中でも影響力が出ないので、やっぱりこのビットコインのコアに、きちっとした技術的な接続が必要で、それは国の機関もそうですし、企業もそうですし、学会もそうだと思います。そういう意味で産学と一緒に民間が連動していくことがとても重要だと思いますし、あと、ここはすごく人数が少ないんで、日本として、ある程度のcapabilityを持って、こういうビジネスの会議もすごく重要なんだけれども、インターネットのときには村井純先生がWIDEみたいなのをつくって、これは企業と学術の優秀な人たちを全部集めてコーディネーションしたようなことが今回も必要だし、これは国際的にもやっていく必要があるかなと。そういう意味でいうと、ビットコインのコアそのものが、これがどういう方向に行って、どういう機能を持って、誰が管理するかは、これから決まるときなんで、最初にICANNができたり、そういうときに、これも村井先生中心に、日本の学者たちが随分出ていったことによって、日本はすごくインターネットの規格に対して影響力が強かったんですね。同じく、やっぱり今回は出ていくべきで、多分、中央銀行の技術系の方だとかも、これから出ていかなきゃいけない時期だと思いますんで、これは是非お願いします。

そして今、いろんなベンチャーが日本でも出てきていると思うんですけれども、個人的に3Dプリンターだとか、サプライチェーンは、物のassemblyや運ぶことというのはとてもブロックチェーンに向いているんで、これは1つありかなと。あとゲームはもちろん、バーチャルグッズも日本は進んでいるんで、日本は少し規制とかをしたんで、そこら辺を見直して、国際的に競争力のあるゲームとかバーチャルグッズというのもできるんじゃないかなと。

あと、単体にコンシューマー向けのベンチャーというのも面白いんですけれども、やっぱり一番ブロックチェーンが役に立つのは、こういう保険だとか、運送だとか、ロジスティクスの大企業なんで、BtoBのビジネスというのもとても重要だと思うんで、大企業とベンチャーを上手に引き合わせるのって、ありかなと。

イギリスではサンドボックスと呼んでいるんですけれども、特区みたいな形で一部規制緩和して、民間と学会にあるバーチャルの遊び場みたいなのをつくって、そこでいろんなモデルを実験するというのを始めているんで、特区は日本は世界的にも進んでいると思いますんで、そういうバーチャルカレンシー特区みたいなので実験するというのも1つありかなと。あとは、本当に世界中でいろんな実験が始まっているんで、もっともっと、そこには参加するべきだと思います。

金融当局の中で、ほかのそういうレギュレーターを見ていると、シンガポールがかなり積極的に動いているんで、是非、見てない人は見に行ってほしいんですけれども、自分の国の債券をブロックチェーンで出して、直接それを人がやりとりできるようにするって言っていますし、トレードファイナンスも国がやるって言ってます。

あと、アメリカのデラウェア州は、アメリカだと、かなりデラウェアで登記している会社がたくさんあるんですけど、上場しやすいために証券をブロックチェーンでやると言い出しています。

あとニューヨーク州も、今、ビットコインのバラエティーのイーサリウムという仮想通貨も最近出してますし、さっき言ったイギリスもそうですけれども、今までとちょっと違って、そういう金融当局に近いような立場の人間が上手にこういうサンドボックスをつくって、ベンチャーの遊び場というか、育成をやっているのが見えていると思います。

これで最後なんですけれども、とはいっても、個人的には、今の我々が使っている会計システムって、700年前のイタリアで使っていたダブルエントリーブックキーピング(複式簿記)で、そしてこれって、やっぱり何でも物に価値を数字でつけて、それを紙に書いて、それでscalableの会計システムをつくって、そして、それと並行して、お金、通貨というのがどんどんどんどん伸びて、今の我々の経済ってあるんですけれども、今の人工知能だとか、プログラミングだとか、今度ブロックチェーンとかが出てくると、必ずしも全部、すぐ価値をつける必要がないかもしれないと。もしかしたら、お金そのものに、いろんなプログラムだったり、この場合はこうするとか、そういう、例えば、中央銀行では随分議論になっているんですけれども、金利なんかもなくしちゃって、お金そのものの価値が、量が増えたり減ったり、あとは、例えば、会社の会計システムそのものを変えてしまって、人工知能みたいなモデルにしてしまうとか、いろんな工夫というのができると思うんですね。だから、通貨と、今の会計システムが、このまま電子化されて、ただ便利になる、決済システムも、ただ便利になるというような単純な考え方だけではなくて、そういう意味でアプリをつくるんではなくて、会計とか、お金そのものを考え直す機会だと思うんですね。ただ、何でも少し便利になっただけだとすごくもったいなくて、やっぱり世の中が変わらないし、逆に国際的競争力でいうと、通貨とか会計そのものを全部考え直そうと思っている中央銀行とか、ほかの研究所があるんで、いろんな上乗せのアプリを作っていくのは良いんだけれども、やっぱり世界を変えるのは、もっと深いところだと思うんで、そこもやっぱり産学連携がすごく重要なのは、そういうような、お金をそもそも考え直しちゃうようなことを考えている人って大体学者や大企業の研究所の人なんで、そういう人たちを巻き込んで、少し変わった研究も並行してやっていったら面白いんではないかと思います。

以上でございます。

【福田座長】

伊藤委員、ありがとうございました。

それでは、これから皆様からご質問、ご意見をお伺いする討議の時間とさせていただきます。

ただいまの事務局の説明及び伊藤委員の発表も踏まえ、メンバーの皆様の問題意識等をご発言いただければと思います。事務局の説明や、伊藤委員からの発表に関しまして、ご質問、ご意見があれば、併せてお願いいたします。

それでは、どなたからでも結構ですので、ご発言をお願いいたします。

じゃあ、瀧委員から、お願いいたします。

【瀧委員】

マネーフォワードの瀧でございます。本日は、このような機会をありがとうございます。

今の伊藤先生のお話を聞きながら、もう少し触れておきたいなというトピックがありまして、それはFinTechに限らずですけれども、金融サービス産業というのは、サービスレイヤーの話とインフラレイヤーの話があり、国策としては両方大事ということになります。伊藤先生のおっしゃられたのは、割とインフラレイヤーの中で、いかに国際的なドメインをとっていくかで、そこでやはり日本からのコミュニティとしてのcontributionが少ないところをいかにやっていくか。これは大いに共感するところでございまして、特に日本は製造業の中でも、結構暗号技術に強い会社さんとかいっぱいありますから、そこの貢献というのは重要なのかなと思っております。

一方で、弊社はサービスレイヤーにどちらかというと近い会社ですので、そこで補足をしたく思っていまして、米国でなぜFinTechの大きな流れが来たかというと、1つはビットコインという話もテーマとしてはあるのですが、同時にピアツーピア・ファイナンスが2013年、14年、15年と非常に拡大してきましたという話があります。これの大きな1つの背景が、2008年ごろからの金融危機によって、銀行業が通常の資金仲介をする機能をだんだんと失う中で、個人投資家であるとかヘッジファンドといった資本規制がかからない人たちのお金を仲介するための効率的なサービスをユーザーが欲しいと思っていたからこそ、実需に即したFinTechの拡大があったというふうに理解しておりまして、これは当然、日本でピアツーピア・ファイナンスがそれほど大きくない理由ともなっているわけでございます。

今時のFinTechに関する意識というか注目の高まりの中で、どうしても、やや技術先行の話が多いなと思ってしまうところがありまして、我々ベンチャーというのは、やはり生き残っていくためには、ユーザーさんの役に立つことに資することが全てであるんですね。サービスレイヤーのお話も当然大事ですと。

私は、例えば、FINOVATORSという社団法人でも活動しているんですけれども、できるだけ新しい問題意識であるとか、特に銀行の中、証券会社の中で働いている人たちが、本来、その枠の外であれば、これまで顕在化されてこなかったサービスニーズをかなえられるという場を創出するためにも、現業におられる方の中からいかに転職を促していくかというのはすごく重要なテーマだと思っています。サービスレイヤーというのは、先ほどのお話ですとEメールに相当するものですので、インフラのほうも高まっていくのかなという、そういう相互補完の形があるのかなというふうに思っております。

そうすると、いずれはどうやったら金融業からベンチャーに来て、また金融業に戻っていくかといった、海外流の表現ですと、リボルビングドア的な人材交流のあり方が可能になってくかという、これはもうFinTechに限らず、ベンチャー全般的に言えることではあるんですが、そのような人材還流のテーマというのは非常に重要なトピックとして、今後、貢献していければなというふうに思っている次第でございます。

やや散逸的なトピックで恐縮ですけれども、意見として表明させていただきました。

【福田座長】

今の点に関して、伊藤委員、何かございますでしょうか。基本的にご意見表明ということだと思いますけれど。

では、ほかに。仮屋薗委員。

【仮屋薗委員】

瀧さん、それから伊藤先生のコメントもお聞きしまして、ベンチャー・キャピタル、特に私もインターネットのほう、特にサービスレイヤーで20年間やってまいりました。

この中で、日本で金融事業におけるベンチャー・キャピタルの投資機会も幾つかございまして、生命保険の件ですとか、FXの件ですとか、金融情報の件で投資機会もあって、お金も幾つか流れ込んでいったこともあったかと思います。

今回、そのような経験の中で、ベンチャー、特に金融FinTechベンチャーとして成功する要因の1つに、ちょうど瀧さんもおっしゃられました、人材の要件がミックスしなきゃいけないというふうなことを1つ強く思っておりまして、1つは、やはり技術・テクノロジスト出身の方がいること。2つ目、やはり金融分野におきましては金融知見ですね。これは当然、法制の面もそうですし、金融事業者としてのマネジメント、この点において、やはり金融出身の方が、このコアメンバーにいることというのは、とても大事だと思います。

それから、ベンチャーのマネジメントにおいて、これはいわゆる人の問題も起こりますし、それから競争の問題等々、急成長をマネジメントするベンチャーの経営におけるプロフェッショナル、やはりこの3つの背景を持ったチームが、上手くいくために大変重要ではなかろうかというふうに思っております。そういう意味で、今回の検討の視点の例の中にございます、若手の研究者や技術的な部分の方もそうですし、加えましてベンチャーの成長プロセスを経験している方、そして金融に明るくて、やはり金融サービスとは、顧客機会はどうなのか、それから法規制をどういうふうにしっかりとコンプライしていくのか等々についてのバックグラウンドのある方、これをどういうふうに組成していくのかということが、これからのエコシステムをつくる上で大変重要になってくるかと思います。

この数年間、まだまだ日本におけるFinTechベンチャーの出てくる数が少ない。質は私はしっかりとしたメンバーが組成されてきているとは思うんですが、これ、質・量伴わなければいけない中で、この3つの背景を持った方を上手くつなぎ合わせるような場というものが大変重要ではないかというふうに考えています。まずは、そちらのところから、ちょっとポイントアウトしてみたいと思います。

【福田座長】

ありがとうございました。

ほかにご意見ございますでしょうか。それでは、田中委員、お願いいたします。

【田中委員】

ありがとうございます。

冒頭、長官からも非常に大事なアサインメントを頂戴したわけなんですが、金融庁さんから配られました、この説明資料の2ページなんですけれども、ここにシリコンバレーのエコシステムというのは、1つの見方として書いておられるんですけれども、実は私、先週もシリコンバレーにおりまして、皆さんもよくご存じだと思うんですが、元駐日大使のジョン・ルースさんという方がおられまして、この方は、もともとウィルソン・ソンシーニというシリコンバレーで最大の法律事務所のトップだった方で、非常にシリコンバレーのエコシステムに通暁されている方なんですね。

この方がいろんな場所でおっしゃっているエコシステムの見方というのは、これに加えてといいますか、若干違う点もありますのでご紹介したいと思うんですけれども、先週お会いしたときにも、この会議でご紹介することについてご了解を得てきましたので申し上げますが、シリコンバレーのエコシステム、彼によりますと10個の非常に重要な要素がありますということです。1つ目は、恐縮ですが、英語で言いますが、Encouragement of risk taking、つまりAcceptance of failureで、この2ページには書いてないんですけれども、失敗を恐れないというカルチャーですね。これが非常に重要であるということです。シリコンバレーに行きますと、Tシャツに、Congratulations on your first failureと書いてあるものが売っていたりしますが、そういうカルチャーがそもそもあるんだということです。

先週、地元のベンチャーの方々とお話ししましても、人を採用するときに、ストレートでスタンフォード、ハーバードを卒業した人というのは非常に使いづらいと言っていました。なぜならば、ベンチャーというのは、毎日毎日失敗するものなので、人生で失敗を経験していない人はベンチャーでは使いづらいんだというようなことを言ってまして、これが1つ目の、重要なエレメントです。

2つ目は、これはCelebrate the entrepreneur。要するに、起業する人を褒めたたえるという、そういうカルチャーがあるということです。日本の場合には大企業に入ることを目的とするというか、大学を卒業した人も非常に安定を求めるということが、一般的な傾向ではないかと思うんですけれども、そうではなくて、起業することが非常に褒めたたえられると、そういうカルチャーがあるということです。

それから3つ目が、先ほど瀧さんもおっしゃっていましたけれども、Mobility of talentです。人が右から左にどんどん動く、必要なところに必要な人が動いていくということです。

4つ目は、Cultivating diversity。これは多様性の尊重ですね。皆さん、ご承知のように、例えば、シリコンバレーにはインド人の方々が大変大きなコミュニティをつくっておられまして、この方々のテクノロジーに関する力というのは非常に強いというふうに言われています。

それから5つ目、Availability of risk capital。これは後でちょっと申し上げますが、リスクをとる資本家がいるということです。この辺は金子さんのほうが詳しいと思うんですけれども、リスクをとるキャピタルというのは日本にはないというふうに言われる中で、欧米におけるリスクをとるキャピタルというものは、やはりバックとしてあるということですね。

それから6つ目、これはGlobal outlookと言われています。会社を設立したときからマーケットをグローバルに見ているということです。つまり日本の企業というのは日本のマーケットしか見ていないという、そういうところが多いわけですが、会社をつくる、起業する、物事を進める中で、入り口から、冒頭からGlobal outlookであるということがあります。

それから7番目、これはGovernment commitmentと言われています。政府の支援があるということですね。これは規制なんかの面でも、当然入ってくるということです。

それから8番目がEducational institutions。これはシリコンバレーの場合はスタンフォードということがよく言われますけれども、ほかにも最近はボストンのほうでも随分広がっているようですが、こういうEducational institutionsというものが必要であるということです。

9つ目は、Viable exit strategyということで、会社をつくった場合に、最後、exitをどうするのかということです。どういうexitがあるんですかと聞いたんですが、1つ目は、当然IPOというのがありますね。2つ目は、M&Aで買収される。3つ目は何ですかと言ったら、倒産ですって言われましたけれども、そういう、これはviableとは言わないんじゃないかと思いますが、いずれにしても、そういうexitの道筋というのはあるだろうと思います。

最後にService providersというのが10点目として出てきます。これは弁護士、会計士、その他のそうした専門家によるバックアップの体制が整っているということです。

こういう10の枠組み、エレメントがあるので、シリコンバレーのエコシステムというのは非常に強いと言われているというのがルースさんのお見立てでした。これは1つの議論のスタートとしては役に立つんじゃなかろうかというふうに思います。

そういう中で、先週もいろんな方にお話を伺ったんですが、例えば、スウェーデンでは従業員が50人以下のベンチャーですね、そういうベンチャーにおいて、ストック・オプションで報酬を支払うときには、そのときに要する所得税が非常に安くなっている。もしくは20人以下だったらゼロですかね。例えば、そういうふうな体制がとられているそうです。

それから、中国とかインドみたいなところに行きますと、当初のベンチャーに対するキャピタルというものは国が出す、もしくは大手の企業が出すという話でした。そして、その後に民間のベンチャー・キャピタルが入っていくというプロセスが日本よりもさらに進化しているそうです。

それから、先ほど伊藤先生のほうからも技術者の話がありましたが、技術者というのは、これは1つの大きなネックになっているということを、あちこち日本では聞かれるんですが、実は世界中に技術者はいっぱいいるんだと、なぜ日本人にこだわるんだということを随分言われました。

そういう中で、例えば、日本に進出してきたベンチャー企業というのでも、皆さんご承知のように、日本にもアップルもありますね。Googleもあります。それからセールスフォースもありますね。それなのに、FinTech企業というのは、今、アメリカ、特にシリコンバレー、それから最近はニューヨークのほうも随分広がっているようですけれども、加えてイギリスのレベル39と言われるところですね。それからテルアビブですね。イスラエルのテルアビブ。それからシンガポール、それから香港、こういったところに非常に広がりを持っておりますが、冒頭、長官の問題意識にもありましたように、日本は非常に遅れているんじゃないかというふうに言われています。そうすると、海外のそうした成功したベンチャーの方々が日本に入ってきてもいいんじゃなかろうかと、技術者も入ってきていいんじゃなかろうかと。そのことによって、日本のFinTechのインダストリーが急激に成長するということになるんであれば、それでいいんじゃなかろうかという議論をしました。

そうしたところ、あるベンチャー・キャピタリストと話をしていましたら、既にそういうことを随分、アメリカのFinTechの企業がやったんだけれども、非常に参入に対する障害が多いということを言っているようです。そのうちの1つがレギュレーションということがあります。これは事実かどうか確認する必要あると思いますが、例えば、日本でFinTechの会社がお客さんの口座をつくろうとすると、これは証券の場合が特に典型的なんだと思いますが、ウェブサイトでアクセスをし、口座をつくりたいと打ち込みますと、じゃあ、書類を送りますから、その書類に署名をして、それからそれに身分を確認する書類をつけて郵送してくださいとなります。これで大体2週間ぐらいかかるわけですね。ここはもう一回確認する必要あるかもしれませんが、アメリカの場合はウェブサイトで全て3分から5分でできるそうです。そういうものが、例えば、1つの大きなビジネスを展開するに当たっての障害になっていますというお話がありました。

それから、今、先ほど瀧さんもおっしゃっていましたけれども、FinTechの世界で非常にアメリカで展開されて大きく伸びていった1つに、これはレンディングの世界があるわけですけど、ここのところちょっと、若干、レンディングクラブを含めて、クレジットサイクルに引っかかっていますが、彼らのターゲットとしたのは、Financial inclusionとか、Democratization of financeという言葉が随分海外では使われますけれども、要するに、金融というサービスにアクセスのない人たちだったわけです。日本でも収入のレベル等によっては、例えば、クレジットカードを持てないとか、そういうことがあるわけですけれども、そういうところにそもそも入っていこうと彼らはするわけですね。そのときに言いますのは、基本的にはローインカム、もしくはヤングジェネレーションの方々にアプローチをするというときに、日本の場合には、やはりそれも様々な規制にかかってくるんだということのようです。これはご承知のように、消費者金融に関する事柄だと思います。そういうことで、具体的に、じゃあ、どうしたらいいんでしょうという話をいたしましたら、もう既にそういうことで、例えば、そういう経験を持っている、日本に入ろうとして上手くいかなかった経験を持っているベンチャーの企業がたくさんあるんで、そういう人たちを、例えば、この会議に呼んで、話をしてもらったほうがいいんじゃないか、もしくは、そういうふうな人たちの声を集めてみたらどうかというようなお話がございました。

ほかにもいろいろございますが、今日は1回目でございますので、以上のコメントをさせていただきます。以上です。

【福田座長】

ありがとうございます。

事務局のほうから何か、規制に関して、何かご意見がありましたら。大丈夫ですか。

それでは、ほかに。では、郷治委員。

【郷治委員】

事務局説明資料3ページの検討の視点のところで、起業を目指す動きや流れを日本でもいかに増やしていくかというポイントがありますが、私は大学と連携したベンチャー・キャピタルをやっておりますけれども、国内外の金融機関出身の日本人で、システム開発やプログラミング言語といった技術的バックグラウンドのある方と起業のお話をすることが多いです。

僕らは大学と提携していることもあって、そのような起業人材から、東大、京大といった大学の先生方と是非コラボしたいという話が幾つか出始めてきています。今週も、そのような起業人材をある教授に引き合わせるのですけれども、そうした起業人材の流れがフィンテック分野では出てきているのかなと思います。こういった流れを大きくするためには、そうした循環を手伝うプレーヤーが増えていかなければいけない。

僕らはベンチャー・キャピタルという支援者の立場ですけれども、支援者や起業経験者が、そういった起業人材の動きを介在して促進していく必要があるし、そうしていければ、いろいろな起業の試みが増えていくのではないかと実感しております。

【福田座長】

ありがとうございます。

【金子委員】

ちょっとよろしいですか。

【福田座長】

金子委員、お願いいたします。

【金子委員】

こういう会議、私、初めてなんですけれども、日本でのビジネスの経験がなくて、それとFinTech企業へのインベストメントはしたことがないんですけれども、約37年間シリコンバレーに住んで、私が専門的にやってきたバイオテックで、ちょっと比べてみたいんですね、どういうことが起きたか。それで日本でどういうことが今から起きるであろうかということを考えて、FinTechにアプライしていきたいと思います。

1970年代にバイオテックというのが出てきまして、そのときには非常に優秀なサイエンティストが、アメリカ、それから日本、ヨーロッパに同じ数だけいたんですね。日本の若い方は、みんなヨーロッパのインスティチューションに行ったり、あるいはハーバードに行ったりして、今、立派になられた京大の長田先生とか、東大の谷口さんというのは、もう本当にパイオニアとしてバイオテックに貢献したんですね。

その後、同じように国を挙げてバイオテックをやろうというときに、アメリカはNIHなり、それから次にハワード・ヒューズなり、ファンディングがどんどんついてきまして、学者の底上げが起きてきたわけです。日本で同じように官・学・産業で、同じような方針でいったんですけれども、やっぱり遅れてしまったんですね。

私、ジェネンテックに最初に2、30人のときに入りまして、3年、4年しますと、次にもう会社をつくって出る連中がいるんですね。その人たちも成功してきますし、そして、我々、何回もバブルを通って、そしてバースト、潰れるようなことを味わっているんですけれども、よく言われていますように、3%のVC、ベンチャー・キャピタルが90%のリターンを返しています。3%のベンチャー・キャピタルというのは何が他の人と変わっているかというと、もちろん目利きなんですけれども、どんどんネットワークをつくって、コミュニケーションが上手くいく。それから、潰れそうになったときに、最後まで逃げない連中が、やっぱり喜ばれるんですね。どんどん逃げていってもらうと、会社を起こして2年ぐらいで潰れてしまうような会社がほとんどなんですけれども、そのときに、困ったときに、どうしても入ってきて助けてくれるという連中が最後まで生き残って、日本に帰られた学者さんで、非常に有名な方が、岸本先生なり本庶先生なりが、ものすごくいい薬を出してらっしゃるんですね。ビジネスのスタイルが違うのかなと思ったんですけれども、岸本先生は学者のときに、中外製薬にライセンシングしていますね。本庶先生は、今、ものすごく、小野薬品なんかの抗がん剤なんかが注目されていますけれども、なぜ注目されているかというと、本庶先生がライセンシングした薬なんですね。

私が思いますに、何が言いたいかといいますと、アメリカはどんどん小さな会社が出てきて、人、物、金を集めていくということが日常茶飯事に起きるんですけれども、日本ですと、まだたくさんの製薬業界に会社がある。そこに優秀な学者の方がライセンシングするということも1つのビジネスモデルじゃないかと思うんですね。

FinTechに当てますと、私、FinTechが専門ではないんですけれども、資料を読ませていただいて、何が重要なのかと最初に思いましたのは、まずは1つはセーフティー、安全でないと人は使っていかないんじゃないのか。それから、もう一つはトラスト。というのは、銀行なら、この銀行は何があっても潰れないというところと、やっぱりやりたいわけですね。それが2008年、9年のときには、リーマン・ショックで、アメリカでは本当に我々は地獄を見たわけなんですけれども、それでも生き残っていく会社があると。そのトラストの問題と、あとはもう一つはグローバル化、最初からグローバルを狙っていくということが3つ、FinTechに必要なことじゃないかと思うんです。ですから、今、シリコンバレーの話のモデルが、そのまま日本に使えるかどうかということを、もう一度、我々が考えるべきじゃないだろうかと。

もう一つは、FinTechの会社が出てきたときに、日本の将来のビジョンが我々にあるのかどうか。どういうことかと申し上げますと、1つのFinTechで世界をドミネートするようなものをつくりたいんだろうかと。最初からグローバルに入らないとだめだということを、今さっき田中さんから言われたと思うんですけれども、金融は全部グローバルになりますので、それを目指すようなインフラなり、それから資金なり、それから官庁なりのレギュレーションでもって全て変えていかないと、今の日本の製薬会社は、10年、20年、遅れているわけでありますから、それを変えていくには、最初から10年後、20年後の日本の金融産業界のビジョンがあるべきじゃないかなというふうに思うんですけれども。

長くなりましたけれども以上でございます。

【福田座長】

ありがとうございました。

それでは……。

【仮屋薗委員】

すいません、最後、1つだけコメントを加えさせてください。

サービスと基幹のほうの新しいテクノロジーの話を分けてお話をさせていただければと思います。

先ほど、金融サービスですね、現在、日本でも様々な金融サービスのベンチャーが立ち上がってきつつあると思いますが、こちらはブロックチェーンの技術というよりは、やはり、既存で使われている技術、例えば、スマートフォンを活用するですとか、クラウドを利用するですとか、検証されているデジタルテクノロジーを使って新しい金融サービスを立ち上げると。こちらは既に今、どんどんどんどん、質もそうですし、量もどんどんつくっていくフェーズにあると思います。このサービスレイヤーで新しいデジタルテクノロジー、これはブロックチェーンに限らなくてもいいと思うんですね、こちらをどんどん進めていくためには、今、ベンチャー・キャピタル業界、資金のほうの流入もある程度安定してきましたし、それからあと技術者、いわゆるスマホであり、インターネットであり、それからクラウドを使える技術者は相応にいます。今足りないのは、先ほど申しました、やはり金融知見を持った戦略的なマネジメントをするような方々、こちらを増やしていけば、私はサービスレイヤーについては、まず短期的には日本でも1つのステージを超えられるんじゃないかというふうに、民間のほうでですね、思っております。幾つか足りないピースを加えればです。

中長期で、これからもしブロックチェーンの基幹のほうで何かパラダイムシフトが起こったとき、これは実は大変憂慮するところだと思っております。これは民間でも中長期のお金を、リスクをとって投資をするには、ある程度のガットフィーリングですね、やはり相応の勇気が要りますし、金額の規模も大きいと思います。こういうレイヤーは、やはり研究は本当に大学と中長期を見据えた研究者の方、そしてお金も、もっと民間も、10年というファンドではない、忍耐強いお金自体も用意する。それからビジョン。金子先生がおっしゃられたビジョンを用意して、そこに対して時間軸もコミットして、マイルストーンも短期だけのマイルストーンではなく、腰を据えて中長期の目標とマイルストーンをつくって、粘り強く応援していくと、こういう時間軸を分けることと、それからレイヤーを分けての戦略設計が、今、大変重要ではないかなということを思っておりまして、一言だけ加えさせてください。

【福田座長】

それでは、伊藤委員。

【伊藤委員】

1つだけつけ加えると、多分、おっしゃるとおりだと思うんですけど、ただ、その根っこの技術のところというのは大したお金かからないんです。

今なぜタイミングが重要かというと、根本的にいろいろ、どういうふうにするか、何を考えるかという、今だとどうにでもなる時期なんです。誰が主導権とるかも、これから、たった今、決まろうとしていて、中立のビットコインのコアデベロッパーは、もう僕のメディアラボのお給料で払っているのしかいないぐらいなんですよ。だから、これ、1年、2年たっちゃうと、もう、あんまりそこで影響力をとろうというのはできないと。だから今、学会としては、それが必要なのと、あとは技術的に検証するテストベッドも、そんな大したお金かからないんです。これは技術者とサーバーがあればよくて、今、うちと一緒にやろうとしているところなんですけど、日本の研究機関とか大学を、そういう検証のサンドボックスに参加して、やってみないと覚えられない、マニュアルがない時期なんで、ブロックチェーンのコアについて、やっぱり人を少しでもいいから投入していかないと技術力が上がっていかない。その人たちがまた、だんだん技術が安定してくると、その当時のインターネットの先生たち、いろんな大学にあったと思うんですけれども、そこからどんどんどんどん会社に出ていく学生が生まれていくんで、そういう国際機関につながっている人間、その時期にはお金は必要になってきます。

【松尾参考人】

参考人なんですが、松尾と申します。

今、私自身もシリコンバレーに住んでいて、もともと暗号屋のバックグラウンドを持っているんですが、伊藤先生がおっしゃるように、今の状況って、インターネットでいうと、インターネットを商用化する前に、NSFネットという、NSFというアメリカの公的なファンディング・エージェンシーが、7、8年から10年ぐらいかけて、いろんな技術を大学と一緒にもんだ時期があって、まさにそういう時期だという認識があって、アメリカの大学とか日本の大学とかヨーロッパの大学と、そういうサンドボックスをつくろうという話を、今まさにしていて、それをBSafe.networkと我々も呼んでいるんですけれども、そういう中で、まず大学の先生にいろいろ参加していただいて、いろんな技術実証しようということを、今ちょっとプランを練っていて、その中には、当然、MITもあったりとか、日本の大学もあったりということをやっているんで、そういうことで、日本の技術力の強化だとか、プレゼンスというところにも貢献しようということで、今、取り組んでいるというところです。

【福田座長】

では、仲津委員、お願いします。

【仲津委員】

Orbの仲津と申します。よろしくお願いします。

先ほど、まず大きく分けて、FinTechベンチャーを育てていく上で、ベンチャーを経営していくという側面と、あと政府からの支援という2点で、ちょっと大きくコメントを追加させていただきたいんですけど。

先ほど仮屋薗さんのところでもあった人材というところですね。これはもう、私は実際ベンチャーを経験していて、端的に、今問題を抱えている状態で、一番人材が不足しているのがプロダクトマネジャーというポジションなんですね。これはどういうポジションかというと、ビジネスサイドのスペシャリストとテクノロジストの間、エンジニアの間のリエゾンになって、どういう要件でソフトウェアを決めてあげれば、技術的にまず実現可能で、かつ事業としてスケールするソフトウェアとして完成することができるかというのをひたすらKPIの数字を追いかけて、要件を固めながら、ロードマップを固めながら開発を進めていく人材なんですけれども、日本はここの優秀な人材が、結論から言うと、ほとんどいません。これは実際、僕がリクルーティング活動をしていても、非常に課題として感じているところで、シリコンバレーは実はこの人材が大量にいます。

どういうキャリアパスを彼らが経て、そういうプロダクトマネジャーの仕事をしているかというと、一般的なキャリアパスとしては、まず大学でコンピュータサイエンスを専攻します。その後、ソフトウェア・エンジニアとして、大体ITベンチャーとかITのソフトウェアの会社に就職します。この人たちは、実はエンジニアとしては超一流ではないんですね。いわゆるスーパーテクノロジストというのには、実力が若干足りてない。ただ、ビジネスマインドが結構ある人たちなので、その後、大体ビジネススクールに行くんですね。ビジネススクールでMBAを取って、MBAを取った後にプロダクトマネジャーになる。MBAで何を勉強しているか、要するに、ビジネスの勉強をしてくるわけですね。マーケティングとは何ぞやとか、事業をどうやってスケールさせていくことができるか。それと、要するに、ビジネスの人とも会話ができるし、ソフトウェア・エンジニアとも会話ができる、こういう人材が育ったわけですね。

僕が今、端的に思うのは、こういう人材を、じゃあ、先ほど伊藤さんの話からもあったとおり、産業というのは、当然、ライフサイクルがありますから、いずれ成熟産業になるわけですよ。待ってくれませんから。基本的に重要なのは戦略的移民だというふうに考えてます。

幸いにもアメリカは、ユニコーンバブルが崩壊して、レイオフがかなり激しいです。うちも実は意識的にシリコンバレーの人材をとりに行ってます。なぜかというと、シリコンバレーの人材は、今、給料が高騰してますが、レイオフが激しいんで、結構再就職できない人が多いんですね。そういう人の中でも東京を好きなアメリカ人は結構います。なので、そういう人を僕らは戦略的にとりに行って、割と日本のベンチャーでも払える給料形態で、もしくはほかのストック・オプションプランとかで雇うということもやってますので、戦略的移民は非常に重要かなというふうに思います。

戦略的移民の中でも、これは中長期で課題として出てくることとして、僕はまだ経験していませんけど、言えるのは、グローバル・ベンチャーを育てていこうと思うと、初めからグローバルな人材形成でやっていかないと無理なんですね。日本のベンチャーが、特に国内でまず成功して、海外に出ていくときによく言うのが、経営の勝手が違うと。海外で人を雇ったんだけれども、なかなか上手くマネジメントできないということが多いんですが、これは原因は端的で、初めから外国人を雇って経営してないからですね。僕の会社の場合は、この8月ぐらいに15名ぐらいになっていくんですけれども、6人はもう外国人です。アメリカ人が3人で、インド人が1人で、ロシア人が1人、あと中国のクォーターが1人という構成ですけど、これは意識的にやってまして、初めからダイバーシティーのあるベンチャーを育てていかないと、そもそもグローバルに出ていったときに、経営としてadjustしていけないので、意識的にそういうチーム体制で会社を育てている。つまり、そこにはやっぱり戦略的な移民プログラムとかがあり、それが実際に、ベンチャーに人材が流れていくというところと上手く組み合わさっていけば、よりグローバルに経営していけるベンチャーをストレスなくやっていけますので、そこはすごく支援を期待したいなというふうに思っているところです。

もう一つ、ブロックチェーンならではのところとして、僕自身の理解として、ブロックチェーンの技術というのは、基本的には小さな政府をつくっていくための技術なんですね。それまで大きな政府で、政府が法律とかをいろいろ決めてやっていた部分を、ビットコインの第三者認証をマイナーと言われている人がやっているのを見ればわかるとおりで、要するに、民間でやっていこうという発想のテクノロジーですから、小さな政府を、どう上手くつくっていくかという話になりますと。その場合に、僕自身も、金融の世界、地域通貨を中心にやっているんですが、やっぱり金融というのは、ほかの産業のものに比べたら規制が多いと思います。これは必然的だと思います。それは私も金融システムをずっと大学時代から研究してきたのでわかった話なんですが、その場合に、やっぱり政策としてすごく重要になってくるのは、先ほど伊藤さんのお話もあった、レギュラトリー・サンドボックスというのは、すごく重要だなというふうに理解してます。なぜかというと、やっぱり規制が多いので、我々みたいな小さなベンチャーが、例えば、大手の金融機関とか、新しく不動産のブロックチェーンを使って新しいことをやりましょうと。不動産の世界をブロックチェーンを使って、じゃあ、どうreinventするかというと、端的に言えば、今、不動産取引をしたら法務局に届けに行かなきゃなりませんけれども、これをなくす世界なわけですよね。ということは、じゃあ、なくしても大丈夫なのという話が当然出てきますから、なくしても大丈夫な実験場がやっぱり必要なんですよね。その実験場というのを政府がきちっとPRをしていただいて、ほかの金融機関の人たちとかが、ベンチャーと組んで、こういう実験をしても、特に政府から何か言われることはないということをPRしていただく形のほうが、より我々としても、いろんなベンチャーに提案をし、いろんな大手の金融機関に、こういうアイデアがあるんですけれども、一緒に実験やりませんかという話も提案をしやすくなりますので、このあたりも、是非政府のほうで検討いただけるとありがたいなというふうに思っております。

【福田座長】

ありがとうございました。

ほかに、瀧委員、ございますか。

【瀧委員】

先ほどの仮屋薗さんのお話に追加がございまして、1つは、ブロックチェーン等の基幹的な技術への貢献をするというのは、何もブロックチェーンに限った話ではないものと思います。例えば、オープンソース・ソフトウェアの世界というのは、一見、結構voluntaryに見えるような人たちが、その世界の言語をよくするための貢献というのがあります。これは裏側では、それに貢献した人たちは、エンジニアリングの世界でのレピュテーションが高まるという、そういう要素もあります。弊社もRailsという言語に対するコミッターを1人雇っていまして、日本の会社ではあまり類例がないところなのですが、割とベンチャーレベルでも、こういったことはできるのかなというふうに思っている次第です。もちろん、そういったことをenhanceできるような制度的な支援とかがあれば、より良いのかなとは思っております。

もう一つが、これは特にサービスレイヤーについて言えることだと思うんですけれども、政策的な支援というのは、必ず資源配分の何らかのマーケットとは違う配分をもたらしますので、そのときに、成長期のベンチャーというのは、やはりKPIを見ながら、どうやってPDCAを回すかが活動の本質と考えております。

日本はそのような中、米国に比べれば相対的に、人に着目した投資が多いという認識があります。私もシリコンバレーのビジネススクールに行っていたので思うのですが、西海岸では、より相対的にKPIで投資を受けている印象があります。なので、田中さんが先ほどおっしゃっていたエグジットの1つとして倒産というのがあるというのも、実は非常に理にかなっていまして、例えば、投資を受けました、3カ月か6カ月先のKPIが満たせませんでしたといった瞬間に、3割ぐらいの株式を持っているベンチャー・キャピタリストが取締役会にいて、CEOを交代させるとか、会社を解散させるといったプロセスが、3から6カ月単位で非常に明確に行われます。ある種、厳しくもコーポレート・ガバナンスが明確に効いている事例だというふうに思っております。

とにかく100に1つ、100に2つの世界ですので、これの精度を高めていくことのほうが非常に重要なので、そこがまだ日本ですと、どちらかというと人を信じて投資していただいている領域が非常に多いのと、それはやはり、まだまだ日本におけるベンチャー・キャピタリズムと、それをちゃんと投資を受け入れる世界観が今後も発展していく余地がある、非常に大きな部分だと思っていまして、エコシステムをシリコンバレー型により近づけていく、そういう意思があるのであれば、そういう結構実は冷徹なKPIマネジメントというのもセットで入っていかなければいけないと思っております。

やはりちょっと資源配分の歪みがあるときというのは、そういうことが起きて、そうじゃない方向にベクトルが向きがちですので、制度として非常に重要なポイントかなと思っている次第でございます。

【福田座長】

ありがとうございました。

ほかにご意見ございますか。岩下オブザーバー。

【岩下オブザーバー】

オブザーバーでございますが、ちょっとだけ。

先ほど伊藤先生から、中央銀行が何を考えているかという話も含めてコメントございましたので、コメントを差し上げたいと思います。

伊藤先生の5ページの資料を拝見しましたときに、こちらの中の説明で、ザ・ビットコイン・ブロックチェーンというのが、過去の歴史を考えれば、インターネットそのものであり、それ以外のイーサリウムやリップルは、AOLやニフティサーブにあたり、いずれは統合されるんであろうというようなお話がございました。

このインフラ面を考えるときに、この辺の考え方というのは、我々は非常に重要なところだろうと思っています。というのは、ビットコインというのは、確かに今、非常にある意味でお金が集まっている、価値のできているものですけれども、プロトコルとしては、ある意味で割と特殊なものであります。これに対して、より汎用的なものとして、distributional ledgerの概念があって、それはそれで様々な利用が可能です。先ほどの例でいうと、インターネットのように、最終的にインテグレートされるものが、果たして、ザ・ビットコイン・ブロックチェーンなのか、それとも、よりゼネラルなdistributional ledgerなのかというところは、我々が、非常に関心を持っていて、現時点では、ザ・ビットコイン・ブロックチェーンに必ず収斂していくのだろうかという点について、やや、必ずしも確信を持てないというのが私の個人的な見解でございます。これらのところについて、先ほどのご説明が割と印象的でしたので、コメントさせていただきました。

今のコメントが金融インフラのレイヤーの点についてのコメントですが、第2は金融サービスのレイヤーについてです。金融サービスのレイヤーについてのFinTechは、基本的には、アフターインターネットの技術の世界において、様々な情報を利用して、新しい技術にしましょう、それが儲かりますよというコンセプトだと思うのですけれども、その儲かるというのは、要するに情報を扱うからです。ところが、情報を扱うのが、扱いやすい国と扱いにくい国というのがあります。

かつては日本ではミログ事件というスマートフォンを利用したベンチャー会社が、ある種の情報を集めようとしたけれども、結局日本から撤退して、シリコンバレーに行ってしまったという事件がありました。けれども、個人情報は個人情報保護法がありますが、法人情報も含めて、どこまで自分たちで情報を囲い込むのか、それともみんなでシェアするのか、この部分についての考え方が、日本の場合は、かなり昔の家制度的な、家業的なものとして、なかなかオープンにならない。それが結果として、今のFinTechのビジネスの様々なところで整合性がとれてないというか、上手くいってない1つの原因になっているような気がします。この部分を変えるのは、実は、相当難しいと思っています。ただ、これについて、一応政府が様々な形でオープンデータ的なところで力を発揮しようとしていますので、そういうものに加えて、この金融の分野でも、そういうことをより進めることによって、そういうイノベーションが起こりやすい環境にしていくというところが非常に大事かなと思っております。

以上、2点でございます。

【福田座長】

伊藤委員。

【伊藤委員】

多分、面白いのが、中央銀行と金融庁みたいなところがコンビになって、各国で本当に積極的にやっているところと、ブロックしているところと、そしてその間ぐらいのところがあって、そして、多分そこからかなりのイノベーションが起きると思うんですよね。それで、アメリカを見ていても、やっぱり官僚の方が比較的に、結構とんがった意見、例えば、アメリカの中央銀行なんかが、かなり積極的に言ったら、例えば、イギリスの中央銀行も、かなり色々な面白いアイデアを出していて、そして、1つの動きとしては、銀行そのものが、あんまりつついてもイノベーションを起こさないんで、もう銀行じゃないルールで、ベンチャーにイノベーションを起こさせる動きがあるのだと思います。

例えば、1つ、アンチマネーロンダリングとか、情報とか、セキュリティのところを、今までのシステムだと、あるやり方でやっていたけれども、ビットコインだと、それがなかなか当てはまらないんで、そういう新しいルールと新しい技術と新しいものをつくってしまったらどうだと。

銀行が文句言うのは、僕らはみんな規制されて、新しい技術で規制されてないやつらにお金が、ビジネスが行っちゃうんじゃないかとか、あとは、例えば、中央銀行が自分たちで国民からデポジットを受けて、お金を電子的に発行してしまうと、銀行そのものの価値がなくなってしまうんじゃないかという、従来の銀行のビジネスをかなり圧迫するようなアイデアが結構政府のほうから出てきて、それがもし動き出しちゃうと、多分そこにベンチャーの可能性というのが出てくると思うんですよね。

ただ、ここが1つ面白いのは、中央銀行が国際的に考え出して、例えば、シンガポールが自分たちの国債をブロックチェーンで出しちゃったら、世界的にそれが流通してしまうんで、これは結構、国際的に国債の競争に入っていくと思うんですよね。あとはマイナス金利のときなんかでも、これはブロックチェーンでやればものすごく簡単にできてしまうんで、それを実際に運営するとかというのはあるし、そういう意味で、中央銀行とベンチャーの連携というのは、多分、大きい国でアイデアは出て、例えば、バルバドスだとかドバイみたいなちっちゃな国で実証されるという可能性もたくさんあると思うんですけれども、ただ、僕は中央銀行の中のベンチャーっぽい考え方を持っている人たちが、いろんなアイデア持ってるんで、これは今までとちょっと違うとこから、すごいアイデア出てくると思うんで、是非、そっちからもどんどんアイデア出してきてください。

【福田座長】

ありがとうございました。

田中委員。

【田中委員】

今、伊藤先生がおっしゃったところは非常に大事な話だと思うんですね。

金融庁からいただいた、このペーパーの1ページの下に、今回のこの会議の議論のテーマとして、「『FinTechエコシステム』の実現に向けた方策を検討するとともに、こうした動きが金融業に与える影響等について議論」と書いておりまして、ここでいう金融業という定義は一体何なんだろうかということだろうと思います。

つまり、世の中には金融の機能という概念があるわけですけれども、その金融というものの全体的な概念と、既存の金融業者がやっていることには国によってズレがあります。私が言うと、ちょっと何か変なんですけれども、既存の金融業者に与える影響を議論するというよりも、むしろ金融というものは、もっと広い、今現在の日本の金融業者がやっていることだけでなく、世界の金融業を見ますと、もっと広い、いろんな金融と言われる事業があるわけで、FinTechも、そういう中におそらく入ってくるんだと思うんですよね。そうすると、そうした金融という機能全体の、広い意味での金融という機能が、日本の経済にとって、どれだけプラスの影響を与え、どうしたリスクを抱えるのかと、こういうことを議論するんだろうというふうに私は理解しておりまして、伊藤先生が今おっしゃったのは、そのうちの1つじゃないかなというふうな気がしております。そこだけ1つ確認しておきたいと思うんですね。

その結果、おそらくFinTechというものがどんどん進んでいくと、例えば、既存の金融業者が現在100人でやっている事業が、翌日から10人でできるようになるというようなことが起きるんだろうと思います。そうすると、その90人は一体どうするんだということになります。これは欧米の金融機関であれば、基本的に90人の人に、「あしたから来なくていいですよ」と言えばいいんですけど、日本の場合、なかなかそうはいきませんですね。

そうすると、そういうものを取り込んでいこうとする既存の金融事業者の社内ではカニバリゼーション(共食い現象)が発生するという問題が起きるわけです。

そういうことを前提にしますと、じゃあ、FinTechの事業というものを本当に進めようというだけのインセンティブが、既存の事業者には発生するのか。FinTechの事業が進めば、顧客のサービスとしては、必ずよくなる、それからコストも安くなるだろうと思います。しかし、既存の事業にはそうした問題が発生するだろうというふうに私は思っております。そうしたことの議論をするということであれば、それは非常に重要なテーマだと思います。

また中央銀行についても、中央銀行における決済システムというのは、90年代、80年代、日本の金融危機の時代には、これがどこかで止まってしまうんじゃないかという議論を、随分、みんなで心配した時期があったわけですけれども、ブロックチェーンの技術を使えば、そういう問題はなくなるのかどうか、そうしたことも、こうした議論の大きなポイントになっていくんじゃないかというふうな気がいたします。

【福田座長】

仮屋薗委員。

【仮屋薗委員】

今の田中さんがおっしゃられたところとも関係するんですが、私は是非、いわゆるバンキング、日本における今後の金融システムとして、今、バンキングにつきましては、バンキングビジネスそのものをアンバンドリングして、それをテクノロジーで構造を変えて、そして、もう一度、次にどういう形でリバンドリングですね。新しい金融のモデルにしていくかという、そういう全体像の中で、今、いろんなベンチャーが、じゃあ、自分はアンバンドルする中のここをやっていこう、そして、じゃあ、リバンドルするときは、こういうところが統合していくようになると思うので、そこに対してM&Aでエグジットしていこうとか、こんな絵姿の中で考えていくFinTechベンチャーが多いんじゃないかなというふうに思っています。やはりM&A、シリコンバレーの1つのダイナミズムは、やはりM&Aですね。大企業、メガベンチャーであるシスコですとかGoogleとかが、次はこんな技術があったらMAするよということが、ある程度イメージされていて、中から飛び出して、それをつくって、また戻る人もいますし、外でそれを聞いて、じゃあ、あそこのメガベンチャーにエグジットすることを念頭にビジネスを組もうと、こういう形でM&Aがサイクルしていくということがあると思うんですね。ですので、やはり日本における、それこそメガバンク様のほうでの、どういうふうな、自分たちが金融の中における、いわゆるアンバンドリング、リバンドリングなことを考えていて、ベンチャーでこういうのが出てきたら、これは非常に興味があるというようなことを表明して、ベンチャーがそういうふうな技術だとかサービスをつくっていくように仕向けていくような、こういうふうなことで、ベンチャーのほうから、何をやったら評価されるんだということの指標がまた出てくるようでありましたら、ベンチャーのほうの、いわゆるインキュベーションも、また活性化するような動きになってくるのではないかなと思います。そういう意味でいうと、アンバンドルする価値ですとか、M&Aの、どういうふうに考えているということの見える化が、もしかしたらFinTechベンチャーを起こしていくために必要かもしれないなということを、今お話をお聞きして思いました。

【福田座長】

ありがとうございました。

ほかにご意見ございますでしょうか。

私からも少し意見表明させていただきます。皆さんから多様なご意見いただきましたが、まず論点の1つとして、金融という問題を特殊なものと考えるのか、そうじゃないのかという問題というのはあると思うんです。伝統的には、やっぱり金融、あるいは銀行業というのは特殊なものなんだという議論がなされてきました。これは、お金を扱うというのは、他の物の取引に比べれば慎重に慎重を期さなければいけないという問題はあるからです。特に日本の銀行の支店は、1円でも足らないと、残業して原因を究明するというカルチャーがあったりして、ベンチャーとは真逆の、1個のミスも許さないというカルチャーでずっとやってきたという面が長年ありました。先ほど田中委員から、規制は非常に障害になっているということはおっしゃって、それはそのとおりかもしれないんですが、他方では、そういうミスを犯さないために、そういう規制がもともとつくられたという経緯もないわけではないということだと思います。

ただ、新しいテクノロジーがどんどん発展してくる中で、銀行の特殊性というのが、だんだん、昔に比べると、薄れているという面はかなりあるということは他方では事実なんだろうと思うんです。そうした中で、どういうふうに考えていくかという問題というのはあって、特に日本が伝統的に銀行は特殊だという発想だけでやっていくと、世界に乗り遅れてしまうんじゃないかという問題は、起こり得る懸念なのかなということは感じます。

それから、もう一つは、日本という発想、世界の他の国々とは違う日本という発想なんじゃないかとは思うんです。様々な意味で、日本の社会というのは、特にアメリカの社会とは違う仕組みから成り立っているという面はあるとは思うんです。教育の仕組み、大学に入って就職するための仕組みとか、雇用慣行とか、いろんな社会の仕組みがそもそも違っていて、日本のこの仕組みを全面的に変えるというのは、すぐにはできないことです。そういう意味では、日本の社会はシリコンバレーにはすぐにはなれないんだろうと思うんですよね。

そうした中で、シリコンバレーのようなエコシステムを、すぐ日本の社会でつくれといったときに、日本のもともとある、こういう仕組みとどういうふうに整合的に物事を考えていけばいいのかという問題というのは、やっぱりあるんじゃないかと思います。もちろん、昔に比べれば雇用も流動化していますし、いろんな仕組みも変わりつつありますけれども、そうはいっても、伝統的な日本の社会の仕組みというのは、そう簡単に、なかなか変われるものではないという問題もある。私の学生なんかでも、本当に大企業志向というのは非常に強くて、ベンチャー志向というのは非常に少ない。これは日本の伝統的な仕組みが変わっていない1つの例だと思うんですけれども、それをもう、それはけしからんから変えろという発想では、なかなか先には進めないのではないかとも思います。大部分の人たちが伝統的な日本の社会の仕組みにある中で、日本型のエコシステムというものを、単純にシリコンバレーの仕組みには、すぐにはなかなか作り替えていくことはできないとは思うんです。そういう中で、日本として最善じゃないかもしれない、少なくともセカンドベスト(次善)な仕組みというものが何か考えられないかという発想は大事なんじゃないかなと、皆さんのご意見を伺いながら、私なりには考えさせていただきました。

何か追加でご意見ございますか。田中委員、お願いします。

【田中委員】

先生とディベートする気はないんですけれども、例えば、法律、レギュレーションの中で、資金決済法というのがありますね。この中に、100万円という金額が入っているんですけれども、この法律成立時の国会答弁を見ますと、要するに、当時の金融機関の個人の送金の平均が50万か100万ぐらいだったからとなっています。例えば、そういう数字を調べて、だから、とりあえずこれにしておきましょうというふうになっているわけです。

ところがFinTechの会社が入ってきますと、特にBtoCの世界からBtoBになりますと、当然、大きな金額になるわけで、こうした法律の前提になっている、例えば100万なら100万という数字については、これは別に金融の安定性であるとか、それから決済の効率性であるとか、そういうものをベースにしたものじゃないわけですから、そうしたレギュレーションというものを見直していくことは当然あるんだろうと思うんですね。ですから、そういうところは金融に関するレギュレーションというのは、必ずしも全て、金融業の安定性とか、預金者の保護であるとか、そういうものだけでつくられたものではないんで、そこはやはり見直す余地は非常にたくさんあるんじゃなかろうかという気は私はしております。

それから、このレギュレーションに関しましては、特に海外から日本に、もちろん私も日本にシリコンバレーがすぐできるとか、やるべきだというふうに思っているわけじゃないんですけれども、ここに与えられましたテーマである、FinTechエコシステムの実現に向けた方策を検討するという観点からしますと、やはりそこに対する参入者が増えてくるということが望ましいことだろうと思いますし、特に海外の方に話をしますと、日本のレギュレーションを理解する、もしくは把握するためのコスト、一言で言えば弁護費用が膨大にかかると言っています。そうしたことが、やはり参入の1つの障壁になっているという、こういう意見があることは間違いないんです。

それから、もう一つは、労働力に関しましても、エリート教育を受けた人たちのことだけ考えるんじゃなくて、日本の労働者の40%は基本的に非正規なんですよね。おそらくベンチャーを起こされた方々は、統計上は、少なくとも当初は非正規労働者になっちゃうんだろうと思うんですけれども、そういう、もっと広い形で、そういう人たちにも仕事がもっと増えていくような、そのためのベンチャー企業を増やしていこうというような観点があってもいいんじゃなかろうかなという気がしています。

先ほど申しましたけれども、金融業というのは、日本で既存の金融機関が現在行っている業務というのは非常に限られたものになっているというふうに昔から思ってまして、例えば、マイクロファイナンスというのはほとんどできていませんですね。アジアではマイクロファイナンスが、マイクロファイナンス・インスティチュートとともに、非常に貧しい方々に対して、ファイナンスで金融の機能が役に立っているわけですよね。この間、私もスリランカに行ってきましたけれども、そういうことで、もし、こうしたFinTechというものが使われるのであれば、非常にそれは望ましいことであろうと思いますし、それからfinancial inclusionと言われるものにも非常に役に立つでしょうし、先ほども申しましたが、democratization of financeというか、日本でも、やはり金融で、銀行を使うのは預金をするだけだという人が圧倒的に多いわけですよね。金融機関からすると、預金だけしかしていない人たちというのは、大体、収益的にはほとんど儲かっていない。ましてネガティブ・インタレストになると、ほとんど儲からないということになりますから、やはりそういうところはコスト構造を変えることによって、もしくは新しいコスト構造を持ったところが入ってきて、そして、日本で広い意味での金融機能をもっと発揮されて、経済発展につながるということであれば、それは1つの目的にしてもいいんじゃないかという気がしています。

【福田座長】

ありがとうございました。

今の田中さんのご意見は、私も別に否定するわけではございませんし、日本の場合、規制が厳しいということも1つはあるかもしれません。もう一つ、運用もかなり厳格だということもあって、ある法律家の方にお話を伺ったら、ルール上は、必ずしも日本が特にアメリカや欧州に比べて、ものすごくやりにくいルールではないにもかかわらず、運用するとなると、日本のほうがいろいろと厳しくそれを適用されて、なかなかやりにくい面もあるというお話を伺ったこともあります。そういうルールと運用も含めて考えていかなければいけないという問題はあるのかもしれないとは思います。

瀧委員、お願いいたします。

【瀧委員】

そういう意味では、今のまさに運用というところなのですが、これは経産省さんの研究会でも結構申し上げたことなんですけれども、やはり日本人が一般的に金融業に対して求めているサービスレベルというのは非常に高いんですね。かつ、それが無料や安いことを非常に求めていますと。なので、ATMとかが、まさにずっと稼働しているのも当たり前であり、それが9時ぐらいまで無料で使えるのも、おそらく当たり前であり、カードが吸い込まれちゃったら大惨事だ、といった、本来、海外であれば、もっとお金を払うべきレベルに対して、日本人というのは、やはり金融業に対して非常に高い品質を求めているので、そこに応えなければいけなかったという、そういう過去の経緯もしっかり考えた上で、今の制度ができ上がっていると考えるべきで、その上で、ベンチャーが追加的に何かできることというのは、実は海外に比べると相対的には少なくなります。アマゾンがなぜアメリカで拡大したのかを考えると、諸要因はあるものの規制緩和ではなくて、本屋が遠いからだという理由になるのと同様でして、であれば、日本人が内面的にずっと考えている「金融というのはかくあるべき」というレベルが非常に高く、それが官庁に対しても、これぐらいのレベルを求めたいという規則に落ちているというところは、やはりなかなか変えることが難しいところであるのかなと思っています。それはずっと、やはり制度の運用において勘案しなければいけない背景かな、と思っています。

もう一つは、先ほどまさに仲津さんがおっしゃっていたプロダクトマネジャーがなかなかいないというのも、我々も同じだなというところは思っているところでして、これはやはりシリコンバレーで、私もちょうどビジネススクール出て、そうなっていった人たちが何人も、周りに同級生でいた中で思うのは、やはり最終的に非常に直截的な話なんですけど、金回りの問題というのはあると思うんですね。ビジネススクールを出て、創業5カ月ぐらいのベンチャーに、年俸1,500万円とかで転職していく人たちがいますと。日本の雇用環境というのは、なかなかそこまで出せるものがありません。もしくは、そんなに出すことはベンチャー・キャピタルも許容していないみたいなところがあって、これはおそらく全ての循環の中で語られていくべきもので、例えば、M&Aによるエグジットが可能なのであれば、そこに向けたミッドステージのベンチャー・キャピタルがもっと増えてきて、金回りもしっかりとついてくるみたいなところがあると思います。ですので、緩やかに、全ての要素において期待していくべきものではあるんですけど、最終的に落ちていくのは、やはり計測がしっかりできる世界観の中で会社のガバナンスがあるので投資が起きるというところだとは思っておるという次第でございます。

以上でございます。

【福田座長】

ありがとうございました。

ほかに……。では、仲津委員、お願いします。

【仲津委員】

日本ならではの市場特性とか、あと国民性ですよね。気質を意識して、どういうエコシステムをつくっていくかというのは、私もおっしゃるとおりだと思っていて、1つの例でいうと、私がかつて勤めていたセブン-イレブンという会社があるんですけど、ここが発明した単品管理という考え方は世界的にも通用しているわけですよね。

ソフトウェアの世界に入ってみて、すごく学んだのは、実は今、デイリーの世界では、ソフトウェア開発というのはアジャイル開発という手法でやられていて、これはいろんなノウハウが詰まっているんですけど、よく調べてみるとわかるんですけど、単品管理とかトヨタの看板方式の発想を応用してつくっているソフトウェア開発方法なんですね。

日本人の気質というのは、よくガラパゴスの話も挙がりますけど、決して世界の標準と見た場合に、特殊な部分とそうでない部分というのは、ちゃんと分けてあるので、そこの気質を踏まえたエコシステムのつくり方はすごく重要だというふうに思っています。

大きく分けると、そこに関して、私は2つの考え方を持っていて、1つは、グローバルに出ていくようなビッグベンチャーをどう上手くつくっていくかというところですね。これに関しては、幾つか先ほどからお話ししていますが、キャピタル、資本の観点からいうと、やっぱり平均ファンドサイズ200億から500億ぐらいのベンチャー・キャピタルが、日本でももっと数が増えてくると非常にいいなというふうに思っています。

このベンチャー・キャピタルに僕らが期待しているのは何かというと、アーリーステージからプリIPOまでの期間を継続的に出資してくれることなんですね。じゃあ、これによって、僕らはどういうベネフィットを得られるかというと、IRコストを下げられるんですよね。

IRコストというのは、ベンチャーの場合は2つの視点があって、1つはお金を引っ張ってくるというための労力、もう一つは、今度、取ってきた投資家の人たちとコミュニケーションしていきながら、経営を一緒にやっていくことがありますので、これに対しての、数をやっぱり少なくしておいたほうが、ベンチャー側にとっては、すごく助かるんですよ。よくシリコンバレーでToo many catsという言い方をするんですけど、たくさん投資家を連れてくるとIRコストがその分上がっていくんで、経営に集中するというのが結構難しくなってくるんですよね。だから、本来の事業に集中しなければいけないのが、IRにコストがかかり過ぎちゃって、本末転倒な状態が発生すると。これを1つ、シリコンバレーでもカバーしているのが、大体200億から500億ぐらい、大型の場合だと、本当に1ビリオンというサイズのファンドもあったりもするんですけど、そのあたりのベンチャー・キャピタルが結構ごろごろいますので、彼らがやっぱりプリIPOまで継続的に面倒見てくれるというのは、かなりありがたいところですね。なので、このあたりの、僕もちょっとベンチャー・キャピタルつくったことがないのでわかりませんが、やっぱりこのあたりのプリIPOまで面倒見てくれる日本のベンチャー・キャピタルの人たちが抱えている、何か問題がファンド組成上あるのであれば、それは是非改善していただきたいなというふうに思っています。

もう一つ、質重視というところで言うと、やっぱり日本人というのは、基本的に競争をあまり好まない、かつダイナミックなものがあんまり得意じゃないという2つの視点があり、これはアングロサクソンが大得意なんですよね。僕もシリコンバレーでベンチャーやっているとき、つくづく思いましたけど、やっぱりあんまり質を意識せずに、荒っぽいことをガンガンやっていくというのは、これはもうフロンティアスピリッツにも直結しますけど、アメリカ人、アングロサクソン系の人たちがすごく得意なことなので、日本の、例えば、FinTechのエコシステムをつくっていくというときにも、その視点でつくっていくと、多分、まず世界に通用するものにならないだろうなと。というのは、国民気質、日本人の気質と合わないので、先ほどのセブン-イレブンもそうなんですけど、改善カルチャーとか、よりコンシューマー・フロンティッドな、非常にきめの細かい世界から出てくるような、そこに対するリスクマネーの供給そのものの、リスクマネーそのもののリスクをミニマイズしていくような金融エコシステムをつくっていくというのは、僕は日本人がFinTechトレンドを実際に産業としていく上でのマクロ的な感覚としてすごく重要だなと思って、会社を経営しています。

【福田座長】

ありがとうございました。

それでは、引き続き、郷治委員、お願いします。

【郷治委員】

今、仲津委員から出た1つ目の論点に関して、ベンチャー・キャピタルのファンドサイズをいかに欧米並みに拡充できるのかという話がありましたが、私ども日本ベンチャー・キャピタル協会の中でも、まさにそういう議論をしております。なかなか日本ですと100億円以上のファンドってないんですよ。200億円以上になると、さらにないし、500億だと、もっとさらにない状態です。国の系列のファンドしか、そういう規模のサイズのファンドはないのですが、そういう状態ですと、FinTechベンチャーを初期からプレIPOステージまで一貫して支援することは難しいのですが、そこにはレギュレーション(規制)の問題がやっぱりあると思っております。

今日は伊藤先生からRegTechというお話もありましたし、岩下さんや伊藤先生から国債をブロックチェーンで出すというお話もありましたけれども、レギュレーション上のどういう論点があるかということについても、1回整理するセッションを設けられたらいいのではと思っております。

例えば、ベンチャー・キャピタルのファンドサイズに関する論点でいいますと、今は、適格機関投資家以外の投資家の数は、49名以下でないといけないという少人数私募の形になっているんですね。昨年、金商法が改正されて、基本的にベンチャー・キャピタルのファンドに出せる投資家はプロないしプロに準じた方だけになりましたので、見直しの余地があるのではないかという論点があります。一遍整理させていただけるとありがたいと思っております。

【福田座長】

ありがとうございました。

それでは、森長官、お願いいたします。

【森長官】

今日、伊藤先生をはじめ、皆様方のご発言、非常に興味深く伺っておりました。その中で金融規制の話が幾つか出てきましたので、我々の考え方をお話ししたいと思います。

我々としては、こうしたイノベーションによって金融機能が効率化し、より高度化し、これが国民のウェルフェアの増大や、経済の発展につながると、それをエンカレッジするというのが我々の仕事だと思っています。

金融のスーパービジョンを通して、それをするために、どういう目的を金融規制当局が持っているかというのは、これは日本だけじゃなくて、万国共通で3つの目的がありますね。1つは、金融取引を利用する人の保護ですね。それから2つ目は、金融システムの安定性、それから3つ目は、そういった市場のインテグリティーというんですか、公正性とか透明性を維持するということです。

ただ、利用者保護も究極までやると、かえって国民の公正の増大とか、経済の発展を阻害する、トレードオフの関係にありますから、そこでどの点を目指すかというのが、我々のある意味でのバランス感覚になってくると思うんです。

銀行に対して、いろんな強い規制がかかっているのは、これは銀行だからじゃなくて、銀行が預金をとって、預金者保護というのが国民的に重要だとされているということと、銀行自身が各種の金融取引のハブになっているので、銀行の健全性が損なわれるということは、その金融システムの安定性が損なわれるということで、ほかの金融業者より強い規制がかかっていると思います。

ただ、きょうのお話にありましたように、ブロックチェーン技術というのは、例えば、金融の仲介業者がやっていることの相当部分を代替することになりますから、それに応じて我々の規制の考え方というのも変わってくると思うんです。それから、今の現行の規制が前提としていないような金融イノベーションというのがどんどん出てくると思います。そういうこともあって、こうした有識者会議を開かせていただいたわけです。これは、そういった動きに規制の動きが遅れない、むしろ、それを先取りする。それから、そうした新しい国民のためになるようなイノベーションをエンカレッジすると。そのためには、いろいろな形でのネットワークとか、きょうもレギュラトリー・サンドボックスみたいな話は非常に興味深いと思って聞いていたんですけれども、そういうことを通じながら、できるだけこうした新しい技術というのが、上手く国民の生活とか経済によりよい形で浸透していくようにしていくというのが我々の努めだと思っていますので、そういう観点から、またいろんなお話をお聞かせいただければ幸いです。

【福田座長】

森長官、ありがとうございました。

追加でご質問ございますでしょうか。じゃあ、瀧委員。

【瀧委員】

手短に。

今の、まさに長官のお話もそうなんですけれども、1つ、利用者保護も全て含めて、今後の金融システムを考えるときには、やはりサンドボックスの中で、何が適用されるのかも大事ですし、よく欧州のPSD2とかでもありますように、中間的業者のあり方というのがインターネットの活用に当たっては非常に重要ですと。こういった人たちが、どのようなセキュリティ・スタンダードのもとに行動するべきかというのもありますし、どのような金融規制上の位置づけの中で行動するべきかといったところがあります。ベンチャーはただでさえ不確実な世界に生きていますので、制度的な不確実性を減らすというのは非常に大事なテーマだと思っています。この議論が進んでいくことというのは、今の観点をより実体に反映していく中では非常に重要かなというふうに思っています。

以上でございます。

【福田座長】

ありがとうございました。

ほかにご意見ございますでしょうか。予定の時間はかなり迫っておりますが、あと数分は大丈夫ですけれども、いかがでしょうか。よろしゅうございますか。

それでは、ほかにご意見がございませんようでしたら、討議を終わらせていただきます。

皆様、本日は活発なご意見ありがとうございました。本日いただきましたご意見も踏まえまして、次回以降も引き続き検討していきたいと思います。

また、委員の皆様におかれましては、本日の討議も踏まえ、追加でご意見等がございましたら、日本語、英語、いずれでも構いませんので、事務局までご提出いただければと思います。

最後に、事務局のほうからご連絡等がございましたら、お願いいたします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

次回の本有識者会議の日程でございますが、皆様のご都合を踏まえた上で、後日、事務局からご案内をさせていただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

事務局からは、以上でございます。

【福田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。皆様、どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)

総務企画局企画課信用制度参事官室(内線3582、3684)

サイトマップ

ページの先頭に戻る