スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議(第16回)議事録

1.日時:

平成30年11月27日(火)15時00分~17時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

【池尾座長】  
 それでは、ほぼ定刻になりましたので、ただいまよりスチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議、第16回会合を開催いたしたいと思います。

 川北先生はちょっと遅れられるというふうにあらかじめ連絡を受けております。それ以外の出席ご予定の方は全員お揃いということで、始めたいと思いますが、皆様には、ご多用中のところご参集いただきまして、誠にありがとうございます。

 それでは、はじめに、今回、フォローアップ会議を開催するに当たりまして、新たに2名の方にメンバーとしてご参画いただくことになりましたので、事務局からご紹介をお願いします。

【井上企業開示課長】  
 事務局を務めさせていただきます金融庁企業開示課長の井上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 このたび、新たにフォローアップ会議のメンバーにご就任いただいた方、お二方をご紹介させていただきます。メンバーの皆様の右から、松山彰宏様でございます。

【松山メンバー】  
 どうぞよろしくお願いいたします。

【井上企業開示課長】  
 小林喜光様でございます。

【小林メンバー】  
 小林です。よろしくお願いいたします。

【井上企業開示課長】  
 その他、引き続きご参画いただくメンバーとオブザーバーの皆様につきましては、名簿をお手元に配付しておりますので、そちらをご覧ください。

 また、事務局にも異動がございましたけれども、時間の都合もございますので、配席図をもって紹介に代えさせていただければと存じます。よろしくお願いいたします。

【池尾座長】  
 どうもありがとうございました。

 続きまして、本日の会議より、タブレットを使用して行うことになったそうで、まだ紙は全然省略されていないですけど、事務局からタブレットの操作説明をちょっとお願いしたいと思います。
 
【森岡企業開示課課長補佐】  
 本日の会議はタブレットを使用して開催いたしますので、ご協力をよろしくお願いいたします。

 それでは、タブレットの使用方法を説明いたします。

 今、画面上には議事次第が表示されていると思いますが、まず、その状態で、右端にあるホームボタンを押してください。画面にアイコンが表示されますので、左上にあります「プレゼンター」というアイコンのボタンを押してください。議事次第の画面に戻ります。この時点でご不明な点のある方は挙手をお願いできればと存じます。係の者が伺います。よろしいでしょうか。それでは、進めさせていただきます。

 画面の中央の上に、「個人」、「共有」、「発表者」の3つのボタンがあります。「発表者」のボタンは発表者のみ使用いたしますので、皆様は使用をお控えください。資料の表示には「共有モード」と「個人モード」を使用いたします。

 「共有モード」の場合、発表者の画面が皆様の画面に連動して表示されますので、基本的には「共有」ボタンをタップして「共有モード」にしていただくようお願いいたします。発表者の画面とは関係なく資料をごらんいただくには、個人のボタンをタップして「個人モード」をご利用ください。「個人」と「共有」のボタンをタップすることで切りかえが可能となってございます。

 また、「個人モード」では、画面の上部右側の「資料メニュー」ボタンを押すことによって、席上に置かせていただいております参考資料等もごらんいただくことが可能となっております。適宜ご利用ください。この資料の画面からは、左側の「戻る」ボタンを押すと、今回の資料の画面に戻ります。その際、「共有」ボタンを押していただきますと、発表者の画面に連動いたします。ここまででご不明な点はありますでしょうか。よろしければ、操作方法につきましては以上となります。

 傍聴の皆様には、開催通知でご案内のとおり、会場での紙の資料配布は行っておりませんが、資料を事前に準備いただいてない方も、金融庁のウェブサイト「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議(第16回)資料」に資料を記載しておりますので、適宜、お持ちのタブレット等でご覧ください。また、プロジェクターもございますので、適宜ご覧ください。

 タブレットを使用しての開催について、お気づきの点がございましたら、事務局までご意見をお寄せいただければ幸いでございます。初めてで不慣れな点もございますが、ご協力の程よろしくお願いいたします。

 以上でございます。

【池尾座長】  
 ありがとうございました。ちょっと使ってみないとわからないということだと思いますが、それでは、議事に移らせていただきます。

 本日は、事務局より資料のご説明をいただいた後、コーポレートガバナンス・コードに基づく取組みに関する課題、それから、及び、スチュワードシップ・コードに基づく取組みに関する課題に分けてご議論を進めていきたいというふうに考えております。

 それでは、まず、事務局の金融庁から、用意していただいた資料について、ご説明をお願いします。

【井上企業開示課長】 
 それでは、私のほうから、お手元の資料1及び資料2をもとに説明させていただきたいと思います。

 なお、お手元の資料3の参考資料につきましては、資料1の各項目のデータや関連する資料をまとめておりますが、本日は時間の関係から基本的に説明を省略させていただきたいと思いますので、適宜ご参照いただければと思います。

 それでは、まず、資料1の「コーポレートガバナンス改革について」をご覧ください。

 目次にございますように、コーポレートガバナンス改革の取組み、コーポレートガバナンス・コードに基づく取組み、スチュワードシップ・コードに基づく取組みの順番で整理しております。

 まず、3ページ目は、これまでのコーポレートガバナンス改革の深化に向けた取組みを説明した資料でございます。両コードが車の両輪となり、中長期的な視点に立った企業と投資家との建設的な対話を通じて、中長期的な企業価値の向上と収益の果実を家計にもたらし、ひいては日本経済全体の好循環を実現することを目指しているものでございます。

 次に、資本コストを意識した経営について、ご説明させていただきます。

 資料の5ページに移っていただきまして、資本コストを意識した経営についてでございます。このグラフは東証一部上場企業のROEを横軸に、PBRを縦軸にプロットさせていただいたものでございます。外部環境の変化の要素等もございますけれども、コーポレートガバナンス改革を本格的に取り組み始めた2014年の青で表示させていただいているものと、2018年の赤で表示させていただいているものを比較いたしますと、中央値は、ROE、PBRともに全体として上昇しているということが見ていただけるかと思います。

 次に、6ページでございますけれども、ROEの分布を見ますと、青線で表示させていただいた2010年から13年と比較いたしまして、赤線の2014年から17年のものは、全体として右に移動しておりまして、ROEが全体として上昇しているということが見られるかと思います。なお、左下のグラフにございますとおり、投資家が中長期的に期待するROE水準の10%以上に達するもの、上のグラフでは黄色のシールドの部分でございますけれども、これはまだ少数であるということが言えるかと思います。

 また、右下の円グラフでございますけれども、直近の足元のアンケート結果では、約6割の企業が資本コストを算出しておらず、資本コストへの意識がいまだ不十分である企業が見られるというご指摘もございます。
 次に、取締役会の機能発揮についてご説明させていただきます。

 8ページに移っていただき、左側のグラフをごらんいただきますと、東証一部の上場企業において、独立社外取締役を2名以上選任する企業は足元9割を超えてございます。他方、独立社外取締役を3分の1以上選任する企業については、左下のグラフですけれども、約3割の水準にとどまっているところでございます。

 また、右側のグラフをごらんいただきますと、上場企業の女性役員数は1,700人超まで増加いたしておりまして、比率では10年前の1.2%から4.1%と大きく増加する一方で、右下のグラフでございますけれども、上場企業の約3分の2の企業では女性役員が一人も登用されていないという状況になっています。

 次に、9ページ、CEO選解任については、本年6月のコーポレートガバナンス・コードの改訂において、「解任基準」の整備を求める内容を追加したところでございますけれども、足元直近の調査では、コーポレートガバナンス・コードの改訂の後に、「選任基準」、「解任基準」ともに「整備を検討中」とご回答いただいている企業が大幅に増加しているというのがごらんいただけるかと思います。

 ここでちょっと資料3の参考資料の13ページをごらんいただければと思います。メンバーの方にはお手元に紙でも配付させていただいておると思いますけれども、取締役会の機能発揮ということで、指名・報酬委員会の設置状況のグラフを掲載してございます。法定または任意の指名委員会や報酬委員会を設置する企業は増加しておりますけれども、東証一部上場企業ではいまだ3割程度にとどまっているという状況でございます。

 これにつきましても、本年6月のコーポレートガバナンス・コードの改訂で、独立社外取締役を主要な構成員とする任意の指名委員会及び報酬委員会などの独立委員会の設置を求める規定を盛り込ませていただいたところでございまして、今後増加していくことが期待されるところでございます。

 資料1のほうにお戻りいただきまして、次に、政策保有株式についてご説明を続けさせていただきます。

 11ページに移っていただきまして、この左側のグラフにございますように、緑の安定株主の比率というのは徐々に減少していっている一方で、青の機関投資家の割合が増加していっているということは見ていただけるかと思います。日経225の銘柄ベースでございますと、安定株主の議決権ベースの割合は依然として3割を超えているという水準でございまして、諸外国と比べても高い水準であるということが言えるかと思います。

 右側の保有主体別のグラフでございますけれども、赤の金融機関のラインは2000年代初めに大きく減少した後、鈍化しておりますが、引き続き減少傾向で推移しているということが言えるかと思います。また、緑の事業法人のラインは近年減少傾向ではあるものの、ここ十数年で見ますと横ばいというような状況でございまして、その取組みについては引き続き課題があるのではないかと認識しております。

 次に、12ページでございますけれども、金融庁では、政策保有株式に関しまして、有価証券報告書における開示内容の拡充を進めているところでございます。具体的には、内閣府令を改正して開示銘柄を30から60に増やすほか、右側の表のところの右の欄でございますけれども、保有目的・効果、相手方の保有の有無、株式増加の理由の開示を検討しているところでございます。改正案は、現在、パブリックコメントの手続中でございまして、来年2019年3月期からの適用を予定しているところでございます。

 続きまして、監査に対する信頼性の確保についてご説明させていただきます。

 14ページでございますけれども、会計監査の信頼性の確保について、監査のための諸施策につきまして、近年の不正会計事件を契機に、監査法人のガバナンスを強化する観点から、昨年3月に監査法人のガバナンス・コードを策定させていただいております。また、監査プロセスの透明性を向上させる観点から、本年7月に監査基準を改訂しております。さらに、監査法人の独立性確保の観点から、昨年7月に監査法人のローテーション制度に関する第一次の調査報告を公表したところでございます。

 このうち、監査報告書の透明化について、次の15ページで少し解説させていただければと思います。現在の日本の監査報告書は、財務諸表が適正と認められるか否かという表明以外の見解に関する記載というのは限定的なものになっているところでございます。一方、EUやアメリカなど海外では、監査人が着目した虚偽表示リスクなどを監査報告書に記載するという制度の導入が進んでいるところでございます。

 企業会計審議会における検討を踏まえまして、本年7月に監査報告書に監査人が監査の過程で着目した会計監査上のリスク等を、監査上の主要な検討事項、Key Audit Mattersとして記載を求める監査基準の改訂を行ったところでございます。

 なお、この監査上の主要な検討事項の記載に関する改訂監査基準につきましては、2021年の3月決算に係る監査から適用しますが、早期適用も可能でございます。特に東証第一部の上場企業については、2020年3月決算の監査から早期適用が行われるよう、期待されているところでございます。

 次に、16ページでございますけれども、内部監査のほうに目を向けますと、いわゆる3ラインズ・オブ・ディフェンス、3線モデルにおきまして、第1線の業務部門、第2線の管理部門、第3線の内部監査部門がそれぞれ独立して有効に機能する必要性というのが指摘されているところでございます。

 特に第3線の内部監査部門につきましては、経営から独立した監督機関、モニタリングボードを直接のレポーティングラインにすることが重要という指摘があるところでございますが、実際には、下の表にもございますとおり、社長、CEOのみの指揮命令下となっているケースというのも多くございます。内部監査部門と独立社外取締役など、経営から独立した監督機関との連携というのがこれからの課題ではないかと考えているところでございます。

 次に、開示情報の充実についてご紹介させていただきます。

 18ページに移っていただきますと、本年6月に、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループにおいて報告を出した内容についてご紹介してございます。「財務情報」及び「記述情報」の充実、建設的な対話に向けたガバナンス情報の提供等に関する提言を公表いただいたところでございます。

 この提言を受けまして、右側のほうに、金融庁としての今後の取組みを書かせていただいておりますけれども、一番下の内閣府令の改正に加えまして、右上のほうですけれども、経営戦略・MD&A・リスクを経営目線で開示する上でのプリンシプルの策定ですとか、真ん中の開示のベストプラクティスの収集・公表などの取組みを行ってまいりたいと考えております。右下の内閣府令の改正につきましては、先ほど申しましたように、現在パブリックコメント中でございますけれども、内容について19ページで少し詳しくご紹介してございます。

 「記述情報」の充実といたしまして、市場の状況、競争優位性等に関する経営者の認識の説明を含めた経営戦略の記載や、あるいは、会計上の見積もりに関する説明等を求めることとしているところでございます。また、対話の促進に向けたものといたしましては、役員報酬の報酬プログラムの説明や、先ほどご説明させていただきました政策保有株式に関する情報の開示拡充、さらに、監査役等の活動状況や監査法人による継続監査期間の開示も盛り込んでいるところでございます。

 20ページでございますけれども、このうち、記述情報につきましては、財務情報を補完し、適切な投資判断を可能とするための重要な情報であると考えておりまして、経営目線の議論を適切に反映した開示が期待されるところでございます。

 一方で、下のほうにございますとおり、日本企業の開示には、海外の企業の例と比較いたしますと、経営者の視点による記述情報が記載されていない例や、あるいは、セグメント情報が物足りないというようなご指摘もあるところだと理解しております。

 21ページでございますけれども、こうした問題点のご指摘等を踏まえまして、金融庁におきましては、記述情報の開示に当たっての考え方や望ましい開示に向けての取組みを示す「プリンシプルベースのガイダンス」の策定を検討しているところでございます。記述情報の開示に当たっての主な論点として、この21ページのスライドに大きく5つ、論点を提示させていただいております。経営目線の議論の適切な反映、重要性、資本コスト等に関する議論の反映、セグメント情報、わかりやすさといった論点でございます。

 具体的には、経営目線での開示を促進するための原則として、取締役会、経営会議における議論の開示資料への反映のあり方、業績に与える影響度等の重要性を考慮した記載順や記載内容とすることなどを盛り込むことを検討しております。

 この主要なガイダンス案の論点につきましては、この後、討議の際にメンバーの皆様からのご意見をぜひいただければと思います。よろしくお願いいたします。

 以上がコーポレートガバナンス・コードに関するものでございます。

 22ページから、スチュワードシップ・コードに基づく取組みについて、ご説明させていただきます。

 まずは、投資家の取組み状況ということで、23ページをごらんいただければと思います。個別の議決権行使結果の公表の状況についてご紹介してございます。昨年のスチュワードシップ・コード改訂前の2016年12月時点では、議決権行使結果の個別公表を行っている機関は15機関でございましたけれども、本年10月末に調べさせていただいたところ、その数が大幅に増加いたしまして、100機関を超えている状況となってございます。また、そのうち、18機関が会社提案に反対した理由についても個別議案ごとに公表しておられるというふうに承知しております。

 次に、24ページは、スチュワードシップ活動状況の報告、公表についてでございます。約100の機関におきまして、スチュワードシップ活動報告を公表していただいていると承知してございます。一方で、このページの図にございますとおり、対話企業や対話を踏まえた議決権行使の事例を記載している機関もございますけれども、必ずしも活動内容が具体的に記載されていない機関まで、機関投資家ごとにこの記載内容に大きな差異がある状況であるかと思います。

 この点を踏まえまして、25ページに、金融庁のほうからのご提案を載せさせていただいています。現状、スチュワードシップ・コードの受入れ表明を行っていただいた機関に関しましては、金融庁のウェブサイトにおきまして、真ん中の図の左側半分ぐらい、その現行の公表項目のとおり、「受入れ表明」を行ったウェブサイト、「コードの各原則に基づく公表項目」の公表を行ったウェブサイトのアドレス、昨年5月のコード改訂を踏まえました更新状況等を公表しているところでございます。

 今般のご提案は、年金基金及びその他に分類して公表している機関以外の機関に関しまして、現在公表しているこれらの項目に加えまして、右側のほうですけれども、議決権行使結果と反対行使の理由を公表しておられるかどうか、スチュワードシップ活動報告の公表状況、公表している場合については、そのウェブサイトのアドレスを追加する形で金融庁のウェブサイトに公表してはどうかと考えております。

 今般の公表項目の拡充につきましては、現時点での公表状況を追加的に公表するということによりまして、個別の議決権行使結果やスチュワードシップ活動報告の公表というのを促してまいりたいと考えております。この点につきましても、この後の討議の時間でぜひメンバーの皆様からのご意見をいただければと思います。

 次に、企業年金のスチュワードシップ活動についてでございます。

 27ページに移っていただきまして、企業年金のスチュワードシップ活動についてですけれども、インベストメント・チェーンの機能発揮を促進するためには、アセットオーナーから運用機関に対し、働きかけやモニタリングを通じて企業との建設的な対話を求めていくということが重要と考えております。

 下のほうですけれども、本年6月のコーポレートガバナンス・コードの改訂によりまして、企業年金につきましては、母体企業による人事・運営面でのサポートを求める原則を追加したところでございます。これを受けまして、より多くの企業年金に、母体企業との利益相反に留意いただきながら、スチュワードシップ活動に取り組んでいただいて、アセットオーナーとしての機能を発揮していただくことを期待しているところでございます。

 なお、右のほうの表にございますように、主な公的年金は既にスチュワードシップ・コードの受入れを表明していただいておりますけれども、企業年金につきましての受け入れ数は14基金にとどまっているところでございます。

 28ページでございますけれども、他方で、コードの受け入れ表明を行う基金というのは、足元、徐々に増加しているところでございまして、特に赤で示させていただいている事業法人の企業年金基金において、受け入れ表明を行う基金が増え始めているという状況でございます。金融庁としては、経済界等とも連携させていただきまして、企業年金のスチュワードシップ活動の後押しに取り組んでいく予定でございます。

 以上が、資料1のご説明になります。

 続きまして、お手元の資料2「フォローアップ会議における主な検討課題」をごらんください。

 こちらの1枚紙には、本事務年度のフォローアップ会議におきまして、事務局としてメンバーの皆様にぜひご議論いただきたいと考えている課題を記載させていただいたところでございます。

 まず、1つ目の四角のところですけれども、両コードの改訂を踏まえた課題につきまして、コーポレートガバナンス・コードに関係する部分として、資本コストを意識した経営、取締役会の機能発揮、政策保有株式、スチュワードシップ・コードに関係する部分として、企業年金を含むスチュワードシップ活動の諸課題というのを挙げてございます。

 また、2つ目の四角でございますけれども、その他の課題として、監査に対する信頼性の確保、開示情報の充実を掲げさせておりまして、後者につきましては、先ほど、資料1でご説明させていただきました「プリンシプルベースのガイダンス」も含んでいるところでございます。

 なお、この資料2に挙げてない課題につきましても今後検討すべき課題と考えられるものにつきまして、メンバーの皆様から幅広くご意見を伺えればと考えております。

 事務局からの冒頭の説明は以上でございます。

【池尾座長】  
 ありがとうございました。

 あと、ちょっと追加で、本日ご欠席の岩間メンバー、上田メンバー、それから、ワリングメンバーから意見書を提出していただいておりますので、事務局より、意見書に関しても簡単に概要の説明をお願いしたいと思います。

【井上企業開示課長】  
 それでは、岩間メンバー、上田メンバー、ワリングメンバーから事前に頂戴した意見書の概要を説明させていただいております。メンバーの皆様のお手元には紙で配付させていただいております。

 まず、岩間メンバーからは、両コードがインベストメント・チェーンに徐々に浸透しており、エンゲージメント活動が進んでいるという点をご評価いただいた上で、次のようなご意見をいただいております。

 投資家につきまして、アセットオーナーにスチュワードシップ活動がみずからの責務であることを認識させた上で、スチュワードシップ・コードに積極的に参画させる方策について議論を行うべきではないか。

 パッシブ運用を行う投資家にとってのエンゲージメントのコストを軽減するため、議決権行使プラットフォームの利用促進、推進を図るべきではないか。さらに、集団的エンゲージメントの取組みを促進すべきではないか。両コードの有効性、重要性の理解を浸透させるため、個人投資家教育を推進し、個人レベルでのリテラシー向上を図るべきではないかといったご指摘を頂戴しているところでございます。

 続きまして、上田メンバーからですけれども、本年のコーポレートガバナンスの改訂後、コードに対して自立的に取り組む企業が増え、機関投資家においてもエンゲージメントが定着しつつあるというご評価をいただいた上で、次のようなご意見をいただいております。

 企業の内部の部門ごとに目指す価値観が異なるために、最終的な開示情報が現状追認型、あるいは、抽象的な内容になりがちであることから、経営トップに直結する経営企画部門などの司令塔が社内横断的に議論を牽引することが必要であるのではないか。

 また、政策保有株式につきましては、新規に保有または増加させる場合における一層の情報開示の充実と、対話の阻害要因ともなり得る政策保有株式に関する踏み込んだ情報開示が求められるというご意見を頂戴しておるところでございます。

 エンゲージメントにつきましては、企業経営の革新的な課題であります事業戦略や事業ポートフォリオなどに関する対話がなされておらず、ESG問題などの意見の衝突が少ないテーマに落ち着いている場合が少なくない。あるいは、企業において、サステナビリティ活動がどのように中長期的な企業価値の向上に結びつくか説明すべきではないか。機関投資家においては、ESG要素やエンゲージメントの成果を投資プロセスに組み込んでいくべきではないかといったご指摘を頂戴しております。

 その上で、最後のところですけれども、「スチュワードシップ・コードの受入れを表明した機関投資家のリスト」の公表項目の拡充の提案について、ご賛同いただいているところでございます。

 最後に、ワリングメンバーからは、本有識者会議の取組みにより、日本企業における長期的な企業価値向上のための投資家と企業の対話は前進しており、ICGNとして称賛したいというようなご評価をいただいた上で、次のような意見をいただいております。

 まず、取締役会の機能発揮につきましては、例えば2021年までに独立社外取締役を3分の1以上とすべき等、一定の期日を設けるべきではないか。また、独立性の定義をコーポレートガバナンス・コード上で明確化すべきではないか。今回の日産の事案も踏まえ、取締役会が会社のコーポレートガバナンスに対する情報開示に共同して責任を負い、有価証券報告書だけではなくて、アニュアルレポート等の開示についても取締役会が承認し、責任を持つべきではないか。全ての日本の上場企業は、指名委員会、報酬委員会を設置し、その公正、独立性、役割等を開示すべきではないかといったご指摘をいただいているところでございます。

 次に、企業の開示情報の拡充に関しましては、政策保有株式について企業が開示する保有理由は形式的と認識しており、今回の政策保有株式に関する開示規定の改正案を支持する。企業のROEは改善しつつあるが、いまだ欧米に比べて劣後しており、より詳細に資本コスト、株主還元、戦略、キャッシュの活用に関して開示をすべきではないか。取締役会における女性比率の引き上げの目標を設定し、進捗を開示すべきではないか。また、取締役会構成員のスキル・マトリックスを開示することも有効ではないかといったご意見をいただいているところでございます。

 最後に、機関投資家のスチュワードシップ活動については、その活動の開示の質に差が見られるということから、英国で実施されているティアリングのような方策が日本においても考えられるのではないかといったご意見もいただいております。

 事務局からのご紹介は、簡単ではございますが、以上でございます。

【池尾座長】  
 どうもありがとうございました。

 それでは、これから、メンバーの皆様からご意見等をお伺いする討議の時間とさせていただきます。

 それで、論点ごとに議論を行うために、まずは、コーポレートガバナンス・コードの改訂を踏まえた課題ですね。資料1でいいますと、大きな数字のⅠとⅡですね、をまずご議論いただきたいというふうに思います。その後、後半で、スチュワードシップ・コードの改訂を踏まえた課題ということで、資料1でいいますと、大きなⅢですね、についてご議論をお願いしたいというふうに思います。

 そういうことで、まずはコーポレートガバナンス・コードの改訂等を踏まえた課題について、ご議論をお願いいたします。なお、その際に、事務局からの説明にありました「プリンシプルベースのガイダンス」に関する主な論点につきましてもご意見をいただければ幸いだというふうに存じます。

 それでは、どなたからでも結構ですが、まず、コーポレートガバナンス・コードのパートに関してのご意見、あるいは、ご質問でも結構ですが、お願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。じゃあ、小林メンバー。

【小林メンバー】   
 今日は初めて出席させていただきました。

 「プリンシプルベースのガイダンス」に関連して質問が1つあります。考え方の確認なんですが、今まで僕は「財務情報」と「非財務情報」というふうに理解していたんですけれども、ここでは「記述情報」という言い方になっています。この意味合いを知りたい。定性的に記述するから記述情報なのか。しかし、財務情報はほとんど数値で結果が出てくるんですが、それとの対照という点では、やはり「非財務」のほうがわかりやすいんじゃないかと思います。

 CO排出といった環境問題とか、化学業界の例でいいますと、海洋中のプラスチックデブリ問題とか、そういったかなり社会的な問題がいろいろとある中で、これらはその産業全体のリスクでもあるんですが、当然個々の企業にとっても最大級のリスクであるわけで、やっぱりこれらを語ることこそほんとうの「プリンシプル」じゃないかなという気がするんですが、どうでしょうか。

 そういう意味で、財務というのは結局クオーターかそこらの結果に過ぎないのであって、10年オーダーというか、企業のサステナビリティを考えたら、むしろ環境問題なり、そういう社会的な問題のほうがよほど、機関投資家に限らず投資家全般の判断にとって重要だと思うんです。

 TCFD、気候関連財務情報開示タスクフォースですか、ああいった、環境リスクを定性的ではなく、定量的に表現できるような方向へ進んでいる中で、サステナビリティとかその辺をどういうふうに記述する方向にもっていくのかという点は、やはりお伺いしたいと思います。経営の指標として、ROEとかROSとかとは違って、それぞれの会社、それぞれの事情によって当然記述のやり方が異なってくるとは思うんですが、最近、TSR、株主総利回りというんですか、投資家から極めてダイレクトにわかる指標なども出てきている中で、環境やサステナビリティに関する開示は今、どういう方向で進んでいるのか。

 以上2点をお伺いしたいと思います。

【池尾座長】  
 それでは、質問ですが、ちょっと事務局からお答えいただけますか。

【井上企業開示課長】  
 まず、前者のほうですけれども、記述情報という言葉についてですけれども、これは金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループの報告の用語を借りてきましたので、記述情報というふうにしていますけれども、意味合いとしては非財務情報と一緒ということでございます。財務情報、いわゆる財務諸表の部分以外に、ナレーティブに書いてある部分という意味でございます。

 2つ目のご質問、サステナビリティ、あるいは、ESGのEとかSの部分ということをどういうふうに記述していけばいいかというようなご質問かと思いますけれども、21ページに挙げさせていただいた論点の中でまさにその点についてもちょっとご議論いただきたいと思っておりまして、上から2つ目の特に重要性、マテリアリティの部分ということだと思いますけれども、現在のこのディスクロージャーの枠組みの中では、業績等に与える影響が重要であるものというものについて記述していただくということですので、サステナビリティの話、例えば環境の話等についても重要であるというご判断があれば、それは当然、記述していただかなければいけないという枠組みになっていますし、そのときの重要性というのをどういうふうに考えるかというのを1つ論点として提示させていただいているところでございます。

【池尾座長】  
 どうぞ、お願いします。

【古澤審議官】 
 ありがとうございます。

私も担当していましたディスクロWGの話と、未来投資会議における全体の一元的な開示の議論も全部踏まえてということかと思います。今、小林メンバーからお話がございましたのは相当大きなディスクロージャーの「枠組み」まで視野に入れたものかと思います。簡単にご紹介いたしますと、「枠組み」と申しましたのは、まず、「記述情報」か「非財務情報」かについて、「非財務という表現だけでは、何が開示対象かというプリンシプルがないのではないか」という議論がディスクロWGの中でございました。

 そこで問題になりましたのは、今回のディスクロWGの議論のコアになる部分は、まさに財務情報を支える部分、それも、小林メンバーからお話がありましたESGに至る前のガバナンスのところ、さらに経営のビジネスモデル、それから、いわゆるMD&Aという、経営・業績の振り返り、そして、将来のリスクを見た上でのリスク情報。このビジネスモデル、MD&A、リスク情報という一番コアの部分についての記述をどうやって充実させるかまず議論のスタートだろうという整理があり、それを受けて、今回出てまいりましたのがガイドライン、プリンシプルを作成するという議論になってございます。

 御指摘がありましたESGの議論は、将来的な企業価値、中長期的な企業価値を考えれば当然視野に入ってくる部分だろうと考えられます。他方、課長の説明でもご紹介させていただいたとおり、その実際にどういう場合に企業価値の視野に入ってくるかというのは、企業のビジネスモデルによっても違いますし、それから、どういう経営のタームを考えるかということで相当区々と考えられます。
 
 そういう意味で、ESG要素は、まさにリスク情報、あるいは、ビジネスモデル上の重要性があれば、法定開示の世界に入ってまいりますし、その前のものとして議論していただいているであれば任意開示の世界と考えられます。ESGの要素については、我々としてはまずG(ガバナンス)をコアにしながら、他の要素を将来的にどういうタイミングでどういうふうに取り込んでいくかがディスクロWGのときの議論のスコープでございます。

 簡単でございますが、以上、ご紹介させていただきました。

【小林メンバー】  
 そういう意味で、マテリアリティとか、財務情報か記述情報かとか、SDGsとか、相当任意性がありますよね。単にマテリアリティなんていったら指し示す範囲がすごく広くなっちゃいますし、もう少しタームを絞ったほうがいいんじゃないかなと思います。

 特に金融庁的な立場からは、まさにプリンシプルというなら、そこはもうちょっと絞って、あるいは、先ほど言ったようにSDGsまで全部視野に入れて、時間軸もある程度具体的に設定してやる必要があるのではないでしょうか。ほんとうにクオーターから1年スパンぐらいのリスクを記述すればいいのか、サステナビリティというならやっぱり最低限10年のオーダーで書くのか、そういった点がちょっと明解じゃないなという気がします。

【古澤審議官】  
 ありがとうございます。

【池尾座長】  
 それは現在、意見をいただいているので、貴重な意見として、そういうことを、「プリンシプルベースのガイダンス」を策定するに当たって考慮していただくということで。

 続きまして、じゃあ、佃メンバー、お願いします。

【佃メンバー】  
 ありがとうございます。私からは3点ございます。資料2の取締役会の機能発揮、政策保有株式、そして開示情報の充実です。それぞれコメントさせていただきます。

 まず、政策保有株式に関してですが、今回のコード改訂後に、東証一部上場企業2,000社余りを対象に調査をして、約18%ぐらい回答がありました。その結果が資料3の16ページです。詳しい調査結果に関しては、『商事法務』の11月25日号に載っていますので、そちらをご参考にしていただければと思います。

 政策保有株式に関して見ますと、左側に15.5%とありますけれども、取引先との関係があり、縮減しにくいと言っている会社が6社に1社ありました。持たせている側の問題が浮き彫りになったとわけですが、右側に、そのうちの8割が今回のコード改訂で縮減する必要性が高まったと言っていると回答しています。これは非常にいい結果だと思います。

 つまり、今までは取引関係があって縮減しにくかったけれども、金融庁さん、東証さんがガバナンス・コードを改訂していただいたおかげで、縮減していく理由というのが見つかったと、こういう話だと思いますので、まずもって、コード改訂に携わった金融庁、東証の皆さんに敬意を表したいと思っています。これがまず1点目でございます。

 それから、2点目に、取締役会の機能発揮ですが、14ページを見ますと、相変わらず、全体の3分の2の企業では、執行のトップである社長が取締役会の議長もやっているといった実態です。そしてその右側ですね。今回、指名委員会を任意でつくっている企業もたくさんありますけれども、やはり3分の1の企業で社長が指名委員長をやっているといった実態があります。

 さらに詳細な調査結果は『商事法務』に載っていますけれども、モニタリングモデルの指名委員会等設置会社においても、取締役会議長は、これはNの数は少ないですけれども、25%の企業が、社長が議長を務めています。それって機関設計的にいかがなものか?といった実態があります。

 何が言いたいかというと、あちこちでガバナンス改革に関しては、形式から実質へというキャッチフレーズで言われていますけれども、個人的には、この14ページを見る限り、形式も実質も、引き続き充実させていかなきゃいけないんじゃないかと。やはり実質以前の問題として、形式面でもまだまだ改革の余地は残されているんじゃないかなというのが取締役会の機能を強化する上で非常に大事なポイントになるんじゃないかなと思っています。

 それから、3番目に、開示情報の充実ですが、開示という意味で言うと、私はちょっとここを広く捉えていて、皆さんが東証に出されるコーポレートガバナンス報告書、これに関してちょっと問題意識を持っています。

 実は、この夏に、ある地銀さんで不動産融資等々でいろいろ問題になりました。私は、興味を持って、その会社が去年出しているコーポレートガバナンス報告書と、問題が起きた後で出しているコーポレートガバナンス報告書を見たら、180度、コメントが変わっているんですね。

 昨年時点、問題が起きる前、我が社のコーポレートガバナンスは完璧ですと。全てちゃんとやっていますという話になっていました。それで、いろいろ問題が出てから、彼らは東証さんに出し直しているんですけれども、基本的にできていませんでしたと、そういうふうになっているんですね。

 機関投資家も含めて、世の中のいろんなステークホルダーの方々が見る、きっちりと報告しなきゃいけない報告書の内容がこんなに180度変わってしまっていいんでしょうか。これはコーポレートガバナンス報告書のそもそもの信頼性の問題になってしまうと思うんですね。

 コーポレートガバナンス・コードが2015年に導入され、今回改訂されました。それに合わせて、コーポレートガバナンスの報告書も、例えばこういうふうに書くべきであるみたいな話も含めて、もう少しグレードアップというか、世の中の変化についていくような形で対応していったほうが良いのではと考えます。

 現時点では、この地銀以外ほとんどの地銀でも、ちゃんと私たち、やっていますというふうな報告がなされていて、おそらく世の中の多くの人たちは報告書の中身も実はあまり信用してない。でも、コンプライ・オア・エクスプレインでコンプライと言っているからしようがないよねというのが実態だと思うんで、ここは何らかの形でメスを入れていっていただければと思います。

 以上です。長くなりました。

【池尾座長】  
 どうもありがとうございました。

 いや、コンプライ率が非常に高いというのがあって、一般論ですけど、全てコンプライしていると言われると、それは本当かという感じも確かにあって、真面目にエクスプレインしていただいている会社のほうが真摯に取り組んでいるんじゃないかという、そういう確かに印象はあると思います。

 いかがでしょうか、ほかに。よろしいですか。

【小口メンバー】  
 スチュワードシップ・コードのほうで。

【池尾座長】  
 そうですか。

 じゃあ、高山メンバー。どうぞ。

【高山メンバー】  
 私のほうから、先ほどの小林メンバーのご意見に関して意見を述べたいと思います。

 私もここにある非財務情報の定義について少し混乱いたしましたが、ご説明を伺って理解できました。基本的にここに書いてある開示情報で非財務情報というのは、ディスクロージャーワーキング・グループで議論されている内容を中心として考えられている。それは財務情報・数字にわりと近いところにあるビジネスモデルや戦略というような情報である。長期的な要素も含んでいるがそれよりも短期の非財務情報も念頭においていると理解いたしました。
 
 確かにそれらは重要な情報です。ここで例で出されているイギリスのアニュアルレポートでロールス・ロイスなどが開示している内容を見ると、そのような情報が含まれています。しかし、それだけではなく、イギリスの企業であれば間違いなくEとSとGの情報の部分が非常に多く開示されています。ディスクロージャーワーキング・グループの性格上、そのような情報ではなくて、今おっしゃったところにフォーカスしているということはよく理解できます。

 ただ、この委員会は両コードのフォローアップ会議であり、スチュワードシップ・コード、ガバナンス・コード、ともにより中長期の企業価値向上を見据えたものです。それから、概念的により一段上の高い視座から見るという性格の議論も期待されている会議だというふうに思います。

 海外を見ますと、長期投資家はESGの情報について極めて関心が高いという状況でもございます。この会議で、これから開示情報の充実やいろいろなプリンシプルについて議論する際には、もちろんこの金融審議会の枠組みというのも重要ですが、それを超えたより大きなフレームワーク、より長期の考え方、SDGsなども含めたESG全般の情報の開示のあり方についても議論したほうがいいと思います。

 これについては後ほどスチュワードシップ・コードのところで、企業と投資家の対話について実情を報告したいと思いますが、企業側も、ディスクロージャーワーキング・グループで要求されている情報は充実しようと思っているのはもちろんですが、同時に、より中長期のESGの情報を充実させようという動きがあります。そういった日本企業の状況も踏まえて、私たちのほうで、この委員会で開示情報の充実を議論するのであれば、このワーキング・グループの内容だけにとらわれず、もう少し大きなフレームワークで議論していいのかなと思いました。

 以上です。

【池尾座長】  
 ありがとうございました。

 それでは、川北メンバー、お願いします。

【川北メンバー】  
 大きく、ガバナンスの問題と資本コストの問題について意見を述べたいと思います。

 1つは、ガバナンスというか、ESGの話が議論になっていますが、ベースはやはりガバナンスだと思っています。

 それと、もう一点、ESGの分析をファンドではなく、直接的な評価データを使って行ったところ、エコ、Eのほうのをきれいに見せかけて、ガバナンスがないがしろになっている、どうもそういう傾向が見受けられます。

 そういう意味で、私自身はEとかSとかに議論を発展させていくのは、中長期的にはいいし、もちろんそういう議論もあってもいいと思いますが、この場での議論としてはちょっと拡散し過ぎかなという印象を持っています。

 ガバナンスに関して言いますと、今回のN社の事件がそうなんですけど、やっぱり指名・報酬委員会、これは任意であっても何であっても、資料にありますように、やはりつくっていかないとと思います。どうしてもオーナー的な社長というのは、そういう社長は歓迎なのですが、自分勝手に振る舞うという傾向もあるので、それに対する歯どめをやはり何らかの形で作る必要があるというふうに思います。

 もう一点は監査のあり方について。資料の16ページにあるように、やはり独立性の高い監査委員会をつくって、そこが独自の組織を持って調査できるという、そういう体制が必要だし、そういう独立した組織に対して社内のほうから内部通報がされるという体制をつくっていくことが非常に重要だと思いますので、この点、この16ページの資料に私は大いに賛成します。

 それから、もう一点、12月に上場するS社に関して議論をしている中で、社外取締役、もしくは、社内の取締役について、候補者として選んだプロセスをきちんと書いてもらえれば、株主総会で投資家が議決権を行使するときの判断の材料になると思います。

 任意の指名・報酬委員会であれば、そこでの結論が取締役会の中でマストだという形をなかなかとりにくいと思うんです。このときに、指名・報酬委員会が選んだ候補なのか、それとも、取締役会が独自に選んだ候補なのか、そこの区別をきちんとやっておくことが重要じゃないかなということです。

 それから、資本コストに関しましては、資料21ページのその資本コスト等に関する議論の反映というところにもありますが、配当性向について、今は30%にする企業が日本の場合、非常に多くて、何で一律に30%に決めるのかはよく理解できないのですが、配当の裏側にある内部留保ですね、配当をした以外の部分の内部留保を今後の成長戦略にどういうふうに生かしていくのか、逆に言うと、成長戦略があるからこれだけの内部留保が必要だと、そういうことをディスクローズして投資家に示していっていただくのがいいのではと思います。

 それから、もう一点、資本コストに関して言いますと、有価証券報告書に過去5年間でしたか、業績の一覧がありますが、そこに自分たちの時価総額が年度末にこうなっているんだということを示していただくと、株主資本との大小関係がわかります。そういう形に持っていくと、資本コストというのはPBRに関係してくるわけですけれども、PBR1倍割れというところに経営者の目が行くのかなということで、資本コストに対する関心を高めるような、そういう方向に持っていっていただければいいと思います。

 以上です。

【池尾座長】  
 ありがとうございました。

 では、川村メンバー、お願いします。

【川村メンバー】  
 私も企業統治に関して、これまでの方々と同じ意見です。企業の中での従来路線を大幅に改革して、村落共同体から機能共同体に変えようなどというような時に、このコードの精神も形式も大変に役に立つことを何回も実感しました。

 例えば、第1資料の16ページに監査の記載がありますが、この監査に関しても、内部監査も会計事務所の監査も監査委員会・監査役の監査もいずれも意味があるというのが実務の中での実感です。三様監査という意味で、この3者が多少の重複をしながらも又、それぞれの独自の監査をも行って、企業の中の各部門で適正な統治が行われているかの判断を行います。本来、監査は、企業の各部門が持続的成長にきちんとつながる動きをしているか、あるいは、成長を妨げるような間違った動きをしていないか、をCEO自身が確かめるためのものです。しかしCEOは忙しくて自分の目で全てを見られないので、代理の者を立てるわけです。しかも公正を期して三様監査という用心までする訳です。結果を報告する側も、CEOにはもちろんですが、独立社外取締役なり監査役の居る監査委員会にも報告するという二重仕立てにして、万が一の執行の最高責任者の不正や不十分な働きをも防いでいるのです。こういう経営の重要なポイントがこの統治コードには数多く含まれていて、実務に大層役立ちました。

 もうひとつ、企業統治の範囲をもう少し広げて考えていくべき、という小林さんの冒頭のご意見に私も賛成です。企業も所謂ESGのみならず、国連の17項目のSDGsまでをも考慮した企業経営をするべき時代になって来ました。社会における企業の役割とか影響力の拡大とかが背景にあります。それらを社会に表明するにも、従来の有価証券報告書だけでは不十分になり、環境報告書とかあるいは働き方改革報告書などまでを一緒にして、統合報告書という形で行う、という企業も増えてきました。よく見ると、育児休暇の男女別統計まで含まれていたりして、企業の社会的責任の一端を表明していたりします。その意味で、本委員会も所謂企業統治の範囲を将来的には拡大して考えるべき、と私も思っています。

【池尾座長】  
 ありがとうございました。

 それでは、田中メンバー、お願いします。

【田中メンバー】 
 ありがとうございます。今回は新ラウンドの第1回目ですので、これらのポイントの中で少し思っているところをお話しさせていただきたいと思います。

 資本コストの問題と、それから、開示情報ですけれども、20ページかな、資料1の20ページの右側下をごらんいただきますと、これは日本企業の典型的な開示例ですよね。それから、コーポレートガバナンス・コードが進むことによってROSが増えてきますと、こういうご説明もあったんですが、そもそもこの枠組みでいいのかなという疑問を持つようになりました。実は、この20ページの日本企業の開示例というのは非常にガラパゴス型の開示例で、グローバルな開示例では一番初めに出てくるのはアーニング・パー・シェア、一株あたり利益、ですよね。

 つまり、四半期決算、もしくは、年度決算をやるときに、決算発表を当然やるわけですけれども、その一番初めの説明は、日本の会社の場合は売上高が何%増えまして、減りましてという、そこから始まるわけですね。ここにあるとおりですね。それに対して、世界のグローバルな会社は、そうじゃなくて、マーケット・コンセンサスのアーニング・パー・シェアに対して何セント上ですとか下ですとかという、そういうふうな発表から始まるわけです。ここに根本的に開示のやり方、つまり、開示の対象である投資家というものを意識をした開示をやるのかどうかという姿勢の違いが出てきているというふうに思います。

 したがいまして、ここでこうした開示をやるという中で、ROSというものだけでその結果を見ていくというのがほんとうにいいんだろうかというのが1つ疑問に思うようになってきたんですね。やはりそこにはアーニング・パー・シェアという視点がしっかり出てくる必要があるんじゃなかろうかということです。

 それから、同時に、企業価値の向上ということをガバナンス・コードには随分書いていますが、企業価値って一体メジャーラブル(測定可能)なんだろうかと思います。そもそも、企業価値というのはイコール時価総額でしょうか。また、そこにお客様満足度とかそういう要素が入ってくると、全くメジャーラブルじゃなくなってきます。

 そうすると、仮に時価総額が1,000億のAという会社が、Bという会社を500億円で買収すれば、自動的に時価総額が増えて企業価値向上になっちゃうわけですね。つまり、そういう合併、合併を繰り返していくような企業にとっては、企業価値の向上というのは合併さえしていけば自動的に増えていく。そういうことをここでは言っているんだろうかという疑問もさらに持つようになっています。

 合併を繰り返せば粗利は増えますし、営業利益も増えます。しかしながら、アーニング・パー・シェア、つまり一株あたり利益は減っていくということだって随分あり得るわけですよね。ここでいう企業価値というものの定義をもう一回見直す必要があるんじゃなかろうかと思っています。そこはやっぱり企業価値と株主価値というものとの違いというものをしっかり捉えて、このガバナンス・コードが一体どっちへ向かって進んでいくのかということをもう一度原点に戻って考える必要があるんじゃないかという気が、今回の議論の中でしております。それが第1点。

 特に、この第1点と関係して、まだこの資料の中にも出ていますけれども、これでいきますと、5ページですかね。この5ページに出ている資本コストを意識した経営の表があるわけですが、この大きな矢印は別にしまして、この点々を見ますと、ものすごい数の企業がまだPBR1以下なんですね。特に金融庁が所管する銀行はほぼ全部1以下じゃないかと思うんですけれども、そういう状況の中で、ROEだけ考えていてほんとうにいいんだろうかという気がいたします。これが一つ目です。

 それから、2つ目は、先ほど川北先生もおっしゃったことに絡むんですが、取締役会の機能発揮というところなんですけれども、社外取締役は一体誰が選んでいるのだろうかという点です。これ、前も申し上げたと思うんですが、欧米の場合には、特にアメリカの場合にはもう社外取締役がほとんどで、CEOが1人だけ入っているというパターンが非常に多いわけですけれども、社外取締役を選ぶのは社外取締役なんですよね。日本の場合は社長がお願いしに行く、会長がお願いしに行くというパターンがあまりにも多いというふうに言われていまして、これを最近は持ち合い株に合わせて「持ち合い取締役」とか「持ち合い役員」と言うそうですけれども、お互いに取締役を持ち合いするという、そういうふうなことが言われるそうです。したがって、この取締役会の機能発揮というところを考えるときに、そもそも一体誰が取締役を選んでいるのかというのは極めて大きなポイントだろうというふうに思います。

 それから、これも政策投資株の問題ですが、政策投資株をなぜ減らすのかという議論をずっとしてきたわけですけれども、やっぱり物言わぬ株主、言われるがままの株主というものがこれ、この部分では増えているというところが最大の問題だと思うんですが、じゃあ、日銀はどうなんだという点は我々は全く考える必要はないんだろうかと思います。

 日銀というのは機関投資家なんですかね。アセットオーナーなんですかね。それとも、アセットマネジャーなんですかね。今、この株式の保有に関しては、日本銀行の保有する株式が非常な勢いで増えています。日本の大手の企業の中では、事実上日銀が筆頭株主になっているという例もたくさんあるわけです。

 そういう中で、この政策投資株の問題に焦点を当てても、全体の株式の保有構造の中では、この日本銀行による保有というものについて、何らかの考え方をやはりこうした会議の中では出すべきではなかろうかという気がいたしております。
 それから、最後に、監査ですけれども、今、現場の中からいろいろお話がありました。これは全くそのとおりだと思います。今回のN社の問題もそうですが、このところというだけじゃなくて、ずっとなんですけど、大企業の不祥事が次々と起きています。そのときに、取締役は何をやっていたと言われるんですが、一方で、監査役は一体何をやっていたんだろうというのは表になかなか出てこないんですね。

 そうした観点からいたしますと、コーポレートガバナンス・コードの議論を始めたときは、「攻めのガバナンス」というところから始めましょうということでした。これはいろんな背景があったと思うんですが、しかしながら、やはり「守りのガバナンス」という観点をそろそろこの議論のもう一つの、2つ目の中核として入れるべき時期に入ったんじゃなかろうかという気がいたしております。

 以上です。

【池尾座長】 
 どうもありがとうございました。

 では、三瓶メンバー、お願いします。

【三瓶メンバー】 
 ありがとうございます。資料1の目次のところで、ざっと(1)から(5)についての印象を申し上げたいと思います。

 まず、(1)の資本コストについて、12月に東証さんで資本コストに関するセミナーが開催されることになっていると思います。募集をかけたら、300名の席でしたっけ、それがあっという間に超過応募があったと聞いています。ものすごく皆さん、企業の皆さんが改めて資本コストについて整理しようという姿勢があるんだというのを非常に強く感じました。このことについて海外の人間とも話しましたけど、ある意味、ポジィティブ、そこまで注目度があって、もう一回ちゃんと知りたいという感じなんだなと。ただ、もう一方で、今さらかというのもあります。

 ただ、大事なことは、資本コストの計算をして、我が社は何%と見ていますということで終わってしまってはだめなんだと思うんですね。ワリングメンバーのこの意見書にも書いてありますけれども、キャピタルアロケーションが非常に大事なんだと、それが合理的にされているかどうか、これを合理的にしようと思ったら、どういう資本コストなのかということを把握しなかったら、合理的なキャピタルアロケーションをできるはずがないんですね。ですから、そこにつながっていくための資本コストを把握する。把握した後、何をすべきかということまで含めた「資本コストを意識した経営」だというふうに捉えています。

 2番目のところは、先週から世間を騒がせているN社の件ですけれども、そのケースを見たときに、今回のガバナンス・コードの改訂がさまざまな点で改訂しておいてよかったなということがあったと思うんです。例えば、CEOの解選任のこと、あと、委員会の活用のこと、あと、役員報酬の開示ですね。こういったことがやはりとても大事なんだということが今回改めてわかったというふうに思います。そういう意味では、そういったことを、事が起こってからではなく、準備していたという面ではそれはそれでよかったと思います。改訂した意味合いというのがより世間に広く伝わる機会にはなるかなと思います。

 社外取締役の数は、先ほども結果を見せていただきましたけれども、上場会社の中でどんどん増えているわけですけれども、まだ取締役会の3分の1だとか、ワリングさんが言われるようなところまでは行ってないですね。

 そういう意味では、委員会というのはもう少し総人数が少ないところですから、そこに例えば2名しか社外取締役がいない会社でも、2名の社外取締役が入る、または、社外監査役も入るということで、かなり社外の方の割合が高い、比率が高い委員会というのが比較的簡単につくれるわけで、そういうことを活用していただきたいと言っていると思います。

 関連して、N社ばっかり出してあれですけれども、急遽いろんな委員会がないと決められないことが出てきたんで、委員会を設置して検討しますという発表がありました。そこで社外監査役が使われてないことについて私はなぜかなという感じがしました。そういう意味で、もう少し委員会の活用の方法というのは、何ですかね、明確にというか、していく必要もあるんではないかというふうに思います。

 そして、政策保有株式ですけれども、政策保有株式については、多くの企業と個別に話をさせていただいている中で、取り組み始めていますとか、こういうふうにもう行動を起こしましたと、開示しましたというご連絡をいただいています。そういう意味では、これまで社内では一歩踏み出そうとしてもいろいろ言いにくかったということが、コードの改訂によって後押しされて動き始めたという感触はあります。

 ただ、これはそうなってくると、統計的に全体の何%というのも必要かとは思いますけれども、もっと個々に見ていかなきゃいけないというふうに思います。個々に見ると二、三社だけがリストに載っている会社と、200社、300社がリストに載っている会社があるなど格差が激しいです。200社、300社の金額は数千億円になっていて、そこら辺の公募投信のポートフォリオよりもはるかに大きいというのがまだたくさんあります。

 一方で、変化を見ると、この3年間で金額的に9割以上減らした会社さんもあります。なので、前向きにされている会社と同じように語るんではなくて、まだそうじゃないところを一つ一つ、区別していく必要があるだろうというふうに思います。

 監査役について、さっきちらっとお話もしましたし、田中メンバーがちょっと触れましたけれども、1つ私が疑問に思っているのは、KAMによって、監査役の方と話していると、企業がKAMを開示することによって、それについての問い合わせ、または、対話の相手が監査役になるんではないかということで、監査役は身構えているという感じがありますけれども、そうなんだろうか。それは経営側のCFOなりCEOが責任を持って答えるんではないのかとか、ただ、そこについてどういう期待があって今動いているのか、こういった事も整理する必要があるのかもしれないと思っています。

 最後に、開示情報の充実ですけれども、先ほど、記載情報について質問があって、古澤審議官がお答えになりましたけれども、ここでやはり大事なのは、財務情報の背景、あと、ESGとか非財務情報も踏めて、それぞれがどういうふうにつながって関係しているのかというそのつながりを話すからこそ、英語ではナラティブというふうに言いますけど、まさにそれを直訳して記述情報というふうに言っているんだと思うので、表にするとか、数字にするとかでは行間が読めないところをいかにちゃんとつなげて、これとこれがこうやってつながって関係しているんだということを述べていくため、その開示をより一層充実させようということだというふうに思っています。

 そういう意味では、先ほどESG、SDGsの話も出ましたけれども、一番心配するのは、ESGとかSDGsというものも積極的にもっと発信しましょうというのはいいんですけど、ただ、そのときに、別項目としてそれが項目立てられると、これは大変ミスリーディングだと思います。

 企業の活動、特に事業活動の中で、その一環としてESGをどうやって考慮しているのか、または、その中でそれを機会と捉えて、SDGsの17のゴールのどれかに当てはまることをこれから取り組んでいこうといふうにしているということが、またさらに長期で見たときに、企業価値にどうやって反映してくるのかということを言ってほしいわけで、これは別項目になってしまうと大失敗だと思います。

 なので、そうならないように、どういうふうにこれをまとめていくのかというのが開示について充実させるときの一つの注意事項ではないかというふうに思います。

 以上です。

【池尾座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、松山メンバー、お願いします。

【松山メンバー】 
 ありがとうございます。今までご説明等ありましたとおり、両コードの策定などを通じまして、発行体と投資家双方の取組みが進展してきていると思います。

 特に今年のコーポレートガバナンス・コードの改訂を踏まえまして、各企業とも、やはり今までのやり方を継承する、あるいは、不足があれば新たな方式に変えるというところを今まさに取り組んでいるところと思いますし、これらをそれぞれの経営環境に合わせて自社の問題ということで自主的に実効を上げて取り組んでいくというところが重要な局面にあるかなと今までのところを考えております。

 こうした中で、コーポレートガバナンスの項目の中に、開示情報の充実ということがございます。資料1の21ページにいろいろ論点、あります。今までもお話、いろいろ出てきておりますけれども、金融庁さんのところでディスクロージャーワーキング・グループの報告を受けて、「プリンシプルベースのガイダンス」策定、進めてられていると思いますけれども、企業と投資家の対話にさらに有益な情報開示充実に向けて、この5つの点はじめ、さまざまな観点から具体的に開示の例が示されるということは非常に望ましいことと私どもも考えております。

 一方で、ガイダンスがあるがために、それを意識してしまって、また、形式的、画一的な同様な開示にならないように留意する必要が、ガイダンスを出していただくことにあるかなと思っております。

 私も、私自身、もう大分年数たっておりますけれども、かつて有価証券報告書を長い間、作成しておりました。印象的には、やはり有価証券報告書といいますと、法的な様式性が非常に高い文書というふうに考えておりまして、この21ページの最後にありますわかりやすさというところよりも、内容の正確性とか、法的に必要とされることを十分書いているかどうかといった要件チェックに十分注意を払っていたと今、反省しますけれども。

 その要因の一つとしまして、表現は非常に難解なんですけれども、後半についております財務情報、これのやっぱり注記事項が非常に難解で、この表現に引っ張られて、前段の非財務情報も非常にかたい表現になってしまったんではないかなというふうに思うんですけれども。

 一方で、そういう財務情報を持ちながらも、前段では比較的自由に書いているアニュアルレポートですね。これですと、統合報告まではいかないまでも、CSR活動とか、ESGへの取組みとか、比較的自由に企業として書いておられるところが多いと考えております。

 また、法的書類ではありますけれども、事業報告、株主総会に使う事業報告ですけれども、これはやっぱり一般株主を意識して、図表を入れたり、写真を入れたりしながら前段で説明をしていくというようなこともございまして、どうも有価証券報告書はその法的様式性が非常に高くて、かたい表現になるというような固定観念といいましょうか、昔ながらの作成した印象からいいますと、そういった固定観念が今、払拭できてないんじゃないかなというふうに思うところです。

 今回のベストプラクティスの紹介とか、事例をお示しいただくことによって、もっと自由な表現でわかりやすい表現を心がけていいんだというところが皆さんにわかっていただく、誘導していくような事例をぜひ記載してくださいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

【池尾座長】 
 どうもありがとうございました。

 じゃあ、どうぞ。

【大場メンバー】 
 済みません。もう多くの方から、このガバナンス・コードについてはご意見が出ていますので、あえてつけ加えることということでもないのですが、ちょっと皆様から触れられなかった点についてだけ1つ申し上げたいと思います。

 前提としては、多くの関係者がいろいろなアンケート調査を踏まえて、この2つのコードの制定、並びに、推進が企業のガバナンスに大変貢献してきているという認識は持っているかと思います。これをさらに実効性あるものにするためにどうするかということで、この会議が開かれていると理解をしているわけですが、コーポレートガバナンス・コードについて言いますと、2点です。

 1つは、ガバナンス・コードの原則4に、取締役会の機能発揮というか、評価のことが書かれているのですが、この原則4-11にしっかり書かれているのですね、実効性確保のための前提条件であると。こういうことをちゃんとしないと、実効性は上がりませんよということが書かれているのです。

 ですから、この原則について、各企業がどのように認識をして評価をしているかということをまずみずから開示をするということが前提条件になると思います。具体的に、取締役会は、毎年、各取締役の自己評価なども参考にしつつ、取締役会全体の実効性について分析、評価を行い、その概要を開示せよ、と書かれているこの原則は、ほとんどの企業にコンプライされていると思うのですが、この原則の趣旨に適うようにちゃんと開示されているのかどうかと。ここをもう一度確認すべきではないかというふうに思います。これが第1点です。

 それから、もう一つは、政策保有株式のところですが、なぜ縮減の方向で議論しないといけないかということでまとまったかというと、2つの課題があったかと思います。1つはガバナンスの空洞化。もう一つは価格形成のゆがみ、ファンダメンタルと関係ない価格形成が行われる可能性があるということだと思います。

 これについては、最後の岩盤と言われているほどで大変難しい問題かと思うのですが、ややこしいことに、先ほど田中メンバーからも指摘があったように、市場では、縮減とは逆方向の動きがあるわけですね。政策保有株式については、全体としてはやや開示の方向に動いているかもわかりませんが、1つは日銀によるETFの購入を通じた株式の保有が相当固定化している可能性がある。もう一つは、親子上場です。これによっても相当程度固定化される。そうすると、全体の価格形成を正常化させようとしているのに、ゆがみを生じさせる方向に動いてはいないか。これについてもう少し考える必要があるのではないかというふうに思います。

 以上です。

【池尾座長】 
 ありがとうございました。

 それでは、そろそろスチュワードシップ・コードに基づく取組みに関する諸課題についてもご議論していただきたいと思います。

 なお、その際に、「スチュワードシップ・コードの受入れを表明した機関投資家のリスト」の公表項目の拡充につきましてもご意見をいただければ幸いです。

 それでは、どうぞ。

【小口メンバー】  
 ありがとうございます。さきほど池尾座長からお声がけいただいたときに躊躇いたしましたのは、資料1の3ページにある通り、コーポレートガバナンス・コードとスチュワードシップ・コードが車の両輪となって、中長期的な企業価値の向上を実現する構図の中で、コーポレートガバナンス・コードの改訂を踏まえた課題として申し上げるよりも、両コードをワークさせる視点が大事という視点で意見を申し上げたいと思ったからです。

 その意味で、スチュワードシップ・コードの話に入る前に、コーポレートガバナンス・コードについても少し触れたいのですが、皆さんがおっしゃっていますように、コンプライ・オア・エクスプレインという手法を採用して、これは開示要請以外の拘束力がないということもあって柔軟な対応が可能ですので、その利点を使って、自律的にガバナンスを改革しようという企業が自分たちのガバナンス改革を大きく進めてきたというのは事実としてあると思います。

 ただ一方で、柔軟であるがゆえに、先ほどお話しのあった、1年たったら表現が180度変わっていたという事例ですけれども、形式的なコンプライや表層的なエクスプレインであっても、結果的に許されてしまうというのが現実としてあって、そうすると、今起こっていることは、自律的に取り組まれている企業と、そうではない企業の間の企業間格差の拡大ということになってしまうのではないでしょうか。

 また、いろいろな課題がある中でも、さきほどから政策保有株式の話も出ていますが、原則によってなかなか難しくまだ十分な成果が出てないものと、大きく成果が上がってきたものという、原則間格差も発生しているとも言えるのではないかと思います。

 それでは、この格差をどうして克服していったらいいのかということですけれども、1つは、地道というか正攻法で、こういう会議を通じて、飽くまでもコードの趣旨や精神の共有化を図ることによって、自律的な企業の取組みを進めていくことがあります。これはこれですばらしいことだと思うのですけど、一方で、やはりその方法だとどこまで行っても限界があるかもしれない。そこでスチュワードシップ・コードの話に移りたいと思います。

 法的規制はないのですけれども、機関投資家がスチュワードシップ・コードに対応する中で、東証一部上場だけで2,000社以上ある企業と、直接対話しているのは機関投資家です。機関投資家が結果的に売る、途中で売却ということで意思表示することもありますが、多くは議決権行使を通じて意思表示をしていく。そうすると、企業に対する意思表示として、議決権行使の実効性を保っていくことは、とても大事なことだと思っています。

 企業の方とお話しすると、投資家といろいろ対話をするのですが、例えばその対話した内容が議決権行使に反映されてないとか、そうすると、せっかく対話したことのアドバンテージは一体何なのかみたいな不満も聞くこともあります。やはり今でも、エンゲージメント、対話と議決権行使が分断されているケースが結構あるのではないかということを懸念しています。

 一方で、機関投資家からすると、どうしても議決権行使は客観基準に基づいて実施しないといけないという性質もあるわけで、それはわかるのですけれども、ただ、企業の重要な時間を頂いて対話したのだから、もう少し説明をしないといけないのではないか。どういうふうな形で、エンゲージメントも踏まえて、どういう議決権行使をしたのか、あるいは、企業からも、株主は選べないという中で、企業から言うのは難しいのかもしれませんが、企業からも問いかけをしていくということで、コンプライ・オア・エクスプレインの実効性を、言い方は悪いかも知れませんが、強制力とまでは言いませんけれども、実効的な武器となるのが議決権行使なので、その実効性を高める必要があるのではないかと思っています。

 その意味で、今日説明はなかったのですけれども、参考資料の33ページ、一番上のほうですね、これはアメリカの話ですけれども、2017年の(上院にて審議中)の③ですかね、議決権行使助言会社に対して、助言案につき対象企業に事前にレビューさせ、コメントの機会を与える義務を付与するという議論がなされているということで、これは議決権助言会社が対象ですが、運用機関にも同様の考え方は当てはまるのではないかと考えています。

 実は日本でも全く関係ないわけではなくて、コーポレートガバナンス・コードの補充変則1-1①ですが、「取締役会は、株主総会によって可決には至ったものの相当数の反対票が投じられた会社提案議案があったと認めるときは、反対の理由や反対が多くなった原因の分析を行い、株主との対話その他の対話の要否について検討を行うべきである。」とあって、これを企業が実行するためには、何で反対したのかということを機関投資家が企業に伝える必要があるわけです。ただ、公表という形で伝える必要があるかどうか、資料1には反対理由の公表についてありましたけれども、少なくとも議決権を行使した企業に対して、こういうことで反対しました、あるいは、賛成しましたでもいいのですけど、個別に対話することで、コンプライ・オア・エクスプレインの弱点を補強する、大きな意味があるのではないかというふうに考えています。

 対話については、上田メンバーのペーパーに対話の質を懸念するコメントがあり、あるいは、岩間メンバーのペーパーに集団的エンゲージメントへの言及もあったのですが、日本版スチュワードシップ・コードでは、英国コードとは異なりあえて入れなかったエスカレーション、対話の強化をどう考えるかにつき議論していくことも考えられます。

 例えば、今日ワリングさんは来られていませんが、ICGNのグローバル・スチュワードシップ・プリンシプルズにあるように、集団的エンゲージメントは何に使うかというと、アクティビストのように単体で大きく株を保有していない投資家が、言い方は悪いですけど、一緒に徒党を組んで影響力を行使する、つまりエスカレーションの手段として集団的エンゲージメントを使うというのが一般的なわけです。

 今日の議論ではないとは思いますが、それはそれで意味があると思う一方、エスカレーションの議論があって、その手段として集団的エンゲージメントを議論しないと、結果的に形だけ入れて、実質が伴わなくなる懸念をもっています。

 また、これもICGNのグローバル・スチュワードシップ・プリンシプルズにありますが、当然のことながら、どの国でもアクティング・イン・コンサート、いわゆる共同保有に関する法規制はありますし、我が国にもありますが、そこはどうするのか、集団的エンゲージメントの議論には欠かせない視点であることを申し上げておきたいと思います。

 それから、さきほど出ているESGの話ですけれども、私は、三瓶メンバーや川北メンバーのお話に感覚は近いのかなと思うのですけれども、ESGの議論は、今日示された課題の中では資本コストに関係する話だと思うのですね。

 少し意外に思われるかもしれないのですけれども、アクティブ・マネジャーは将来キャッシュフローを資本コストで割り引いて現在価値を出すわけで、将来キャッシュフローを見るタームが今まで短過ぎたという問題が、ESGの重視が求められるようになったことの背景にあると考えています。2、3年じゃなくて、例えば10年見ようといったときに、座礁資産の問題とかよく出てきますが、今は使っている資産だけれど、将来使えなくなったらキャッシュフローが細るよねとか、あるいは、規制がかかって資本コストが高まるよねという議論は当然出てくるわけで、別にそう明示的に言ってなくとも、長期で企業を評価するアクティブ・マネジャーは、これまでも実際そういう視点でESG要素を見てきたと思うのです。

 ですから、そういう観点で考えたときに、さきほど三瓶メンバーが言っていた別項目で切り離すのは反対ということ、あるいは川北メンバーのベースはGというご発言に通じる話として、私はESGをいつも、ESスルーGと呼んでいるのですが、投資におけるESの整理をしっかりしないと、どうしても問題が拡散してしまって、本質の議論ができないのではないかと思っています。

 あわせて申し上げますと、私は、もともとスチュワードシップ・コードの中の指針3-3の中に、この点がちゃんと書いてあるじゃないかと思っています。社会・環境に関するものを含むリスク・収益機会を把握することが重要とあるわけで、私がさきほど申し上げたことの関連でいえば、リスクは資本コストの問題で、収益機会というのは将来キャッシュフローの問題で、これがいわゆるマテリアリティか否かの判断軸だと思うのです。それはちょっと違う、経済的価値より社会的価値の方が重要だということであれば別ですが、企業価値の向上という視点でESGを捉えるとしたら、そういう理解になるのではないかと考えています。

 最後に1点、話が急に変わりますが、守りのガバナンスの問題について申し上げたいのですけれども、先ほどご説明のあった資料1の、どこでしたっけ、16ページでしたっけ。このページを拝見して、まさに我が意を得たりということで、何で我が意を得たりかといいますと、自分としてはこれをずっと申し上げてきたつもりなのです。

 昨年12月の第13回で申し上げたことを繰り返したいのですが、昨年は、N社ではなくて別の企業不祥事があったときの意見ですけど、「最近起こっています企業不祥事について海外から厳しい目が注がれていますが、企業不祥事が発生すると、事後的に企業から独立した委員のみをもって構成して、独立した立場で中立公正で客観的な調査を行う第三者委員会が設置されるケースが多いわけです。

 その第三者委員会がいろいろ調べるということですけれども、これは実は2年前のこの会議で申し上げたのですが」、これはすなわち、3年前から同じことを言っているということですけれども、「企業不祥事が後を絶たないことに鑑み、こういった第三者委員会的なものを事後につくるのではなくて事前に常設化するという観点で、監査役会、監査委員会、監査等委員会を見直すことを改めて提言させていただきたいと思っています。独立取締役による監査というときに、業務に精通してないのにできるのかいう声はよく聞くのですけれども、日弁連が出しています第三者委員会ガイドラインによると、第三者委員会に直属する適切な人数の従業員等による事務局の設置を要求するということで、そういった懸念への対応を図っていると思うのです。

 第三者委員会を、事後的ではあるが一定の役割を果たしているという前提に立つのであれば」まさにこのページにあるように、「内部監査部門が事務局の役割を果たして、そして、独立性の高い監査役会、監査委員会、監査等委員会が第三者委員会の役割を果たす」というレポートラインがきっちりできれば、この場合、第三者委員会にはない法的権限があるわけなので、守りのガバナンスの強化ができるのではないかと思っています。

1年前に申し上げたことをそのまま今日も繰り返させていただきましたが、ぜひこの16ページの議論を深めていただけたらと思います。

 以上です。

【池尾座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、高山メンバー、お願いします。

【高山メンバー】 
 私のほうからは、ガバナンス・コードとスチュワードシップ・コード、両方にかかわる企業と投資家の対話の状況について、お話ししたいと思います。

 今までの皆様のお話からもありますが、その対話の質についてご懸念される方もいらっしゃるかもしれませんけど、両コードができてから、その対話の中身もかなり進展してきたというところは確かだと思います。そういう意味で、ポジィティブな側面でいろいろな例を見てきていますので、それらをご紹介したいと思います。私自身が仕事柄、企業と投資家の対話の場にいろいろかかわったり、参加することもあるので、そういった経験も踏まえながら、対話の傾向をお伝えしたいと思います。

 まず、議決権行使の個別開示についてですが、その開示をしている投資家の数は、23ページのパイチャートでは全体の半分を割っているということになります。しかし、主要な機関投資家がほぼ全て参加しているという状況ですので、運用資産額で見れば、9割以上の投資家が個別開示を行っているという状況にあると思います。

 これは企業にとって大きな影響を与えています。自分の主要な株主を見た場合、ほぼ全てが個別開示をしている、そういう世界に企業が入っていっているという状況にあります。

 その結果、まず、企業が今まで以上に議案の賛否により関心を持つようになっています。それから、投資家と議案に関連してより多くの対話を試みるようになりました。対話をすることで賛成してほしいといったような話よりは、むしろ、その反対要因になるようなところがあるのであれば、事前にその投資家と十分に議論して、必要に応じて議案を変え、より支持をしてもらえるような方向に行こう、そういったような趣旨での対話が増えているという状況にあります。

 あと、投資家においても、議決権行使の開示に関連して、アクティブ運用で保有している企業に反対票を投じた場合は、必ずファンドマネジャーが、IRミーティングなどの際に、反対した旨とその理由を伝えるというルールになっているというケースも複数あります。保有はしているけれども反対するという状況について、なぜこういう意思決定をしたかということについてより丁寧に説明しようとする。そういう状況に近づいているというふうに思います。

 さらに長期的な話題として、例えばガバナンス・コードに対する取組みであるとか、取締役会の改革であるとか、そういったガバナンスの話を含めたESGに関する対話というのも、企業、投資家双方でいろいろ工夫しながら進んでいるという状況にあります。

 ところで、ESGに関して、先ほど来からいろいろな意見がありましたが、私も皆様の意見と基本的に同じです。私の場合はGファーストという言葉を使いますが、ガバナンスがファーストで、その中でEとSを考える。グローバルな投資家と話していても、しばしば聞く表現であり、ガバナンスが一番重要だということはもちろんそのとおりだと思います。

 でも、ガバナンスをベースに、ESに対する考え方、取組み、それと、その企業価値がどう結びつくかということについて、企業側でいろいろ投資家に伝えようとする動きがあります。国内、あるいは、海外の投資家に対して、そのESGに関連するミーティングを実施するというところが、まだ少数ではありますけれども、少しずつ増えています。

 それから、そのミーティングのベースになる基本的な情報というところで、例えば中計の中で、ESGの要素も要望したような目標設定をする。それを発表して、それをベースに投資家と議論する、そういった企業も出てきています。

 一方で、投資家としても、そのようなガバナンスその他、中長期の重要な課題に対する企業の取組みについて説明する機会を設けてくれることはウエルカムだというところが増えています。対話を何度も重ねることで、理解を深めていきたいというのが多くの投資家が考えているところだと思います。

 具体的な投資家からのコメントでは、例えばESGに関する対話で、最初のミーティングでは、確かに内容的には不十分なケースもある。けれども、1回目がそうだからといってそれは問題ではない。1回対話してそれで終わりということではなくて、継続してずっと対話を行うということに意義があると考えている投資家が増えているという状況にあると思います。

 企業側から見た投資家の印象ですが、例えば昨年ぐらいまでは、投資家側もGを重視する、あるいは、ESを重視するといっても、少々形式的な対応があるのではないか、というようなコメントも幾つか聞こえました。 ただ、最近はそれはかなり変わってきています。例えば、企業とミーティングを持つ前に、投資判断する上で重視しているESG項目に関連するその企業に関するレポートをあらかじめ作成する、そのレポートをもとにして対話に臨むというケースもあります。投資家がESG格付の会社のデータなどを持ってきて、その情報開示について、こういうふうにするとより投資家としてはわかりやすいといったような具体的なアドバイスもくれると、そういったようなケースもございます。

【池尾座長】 
 ちょっと済みませんが、あまり事例の紹介は……。

【高山メンバー】 
 わかりました。

【池尾座長】 
 資料にしていただくか何かで、ご意見をちょっとまとめていただけませんか。

【高山メンバー】 
 はい。以上のように、投資家も企業のほうもいろいろ変わっている状況を踏まえ、先ほどありましたスチュワードシップ・コードの受け入れを表明した機関投資家のリストの公表項目の拡充については賛成いたします。

【池尾座長】 
 どうも。

 じゃあ、武井メンバー、お願いします。

【武井メンバー】 
 武井です。2点ございます。まず、1点目が、すいません、先程ガバナンスの箇所で何か私だけ発言しなかったように思いますのでそこも含めてなのですが、今回のガバナンス・コードの改訂後もガバナンスに関していろんな課題があるというのはおっしゃるとおりだと思います。ただこの一連のガバナンス・コード及びダブルコードの施策によって、着実に成果を上げている面はあるのだと思います。ですので、その点もやっぱりきちんと外に示したほうが良いと思います。

 例えば先ほどROEとかPBRなどいろいろなデータのご紹介がありましたが、最近の法人企業統計とかですと、日本企業の売上高経常利益率が最高を記録しているとか、いろんなポジティブなデータもあります。そしてこうした事象の背景として、日本企業がいろいろなビジネスモデルの転換を本格的に行っているとか価格決定力を高めているとか、まさに攻めのガバナンスの本旨に従った取組みが日本企業さんにおいてなされていることが示されているように思います。これらの変化はガバナンス改革だけの成果ではないのかもしれませんが、一連のガバナンス改革が一つの着実な成果を上げていることを示しているのだと思います。そういった成果なんかもちょっと示しておいたほうがよいかなと思います。

 東証一部の2,100社全体という母数で見てしまうと、どこかどうしても、成果が薄まって見えてしまう面があります。指名委員会の設置状況などでも、例えば東証一部で見ると3割ですが、JPX400で見たら6割以上設置しているとか。東証一部というメッシュ以外でもいろんなメッシュで見ると、いろんなプラスの成果も示されると思います。そうした母数の点も意識して、各社の事例の中で良い取組みをまさにベスプラとして示していく、ガバナンス改革の成果として示していただくことがよいかなと思います。これが1点目です。

 2点目、これはスチュワードシップ・コードの話で、スチュワードシップ・コードの実質化の絡みで1つ気になる点です。スチュワードシップ・コードの5-2は「機関投資家は、議決権行使の方針について、単に形式的な判断基準にとどまるのではなく、投資先企業の持続的成長に資するものとなるよう工夫すべきである」とあります。また5-4は「機関投資家は、議決権行使助言会社のサービスを利用する場合であっても、議決権行使助言会社の助言に機械的に依拠するのではなく、投資先企業の状況や当該企業との対話の内容等を踏まえ、自らの責任と状況の下で議決権を行使すべきである」とあります。

 先ほどの小口メンバーの話とも少し絡むのかもしれませんが、機関投資家側における対話者と議決権行使判断権者が分断しているという問題は依然残ったままでその分断の点もあるのですが、その点以外に、議決権行使というと役員選任議案が数的に多い中で、たとえば機関投資家側の現在の独立性基準の運用状況においてこの5-2や5-4が果たしてきちんと遵守されているのか。特に機関投資家側の独立性の判定が、いろいろ形式化しすぎているのではないかという懸念です。

 特に今後は、上場会社においていろいろな形で独立社外取締役を増やしていかなければいけないというのが流れだと思いますが、そういう流れの中で本当に適切な人が独立社外取締役になるのかという観点から、独立性に関する現在の機関投資家の考え方や運用状況について課題があるように思います。

 例えばアセットマネジャーの方が一旦形式的に決めた独立性基準について、企業側のほうでいくら個別に「こういう有用性があるとか多様性があるから社外取締役として適格なのです」と説明しても、アセットマネジャー側が一切説明を受け付けない、説明を聞いても結論を一切変えないという、そういう現象が見うけられます。議決権行使というのは短期間での大量処理なのでマクロ処理の中で形式的判断はある程度仕方がない面があるとは思いますが、他方で、一度こういう基準と決めたのだからとにかくバツであるとか、あるいは議決権行使助言会社がバツといっているからバツであるみたいな、そういう形式的対応をしている事例も見受けられます。

 もちろん企業側が個別説明したからといって何でもかんでも結論を変えるべきということではないと思いますが、他方で、個別説明をきちんと説明を受け付けるということは、建設的対話として必要なのではないかと思います。いろんな機関投資家の方々のパッシブ化が進んでいるというマクロの現状も背景事情としてあるのかもしれませんが、アセットマネジャー側の心理としても、何かアセットオーナーに説明するのが面倒であるとか、あるいは、アセットマネジャー側もそういう個別説明を受ける柔軟性がないとか、そういったこともあるのかもしれません。実際の原因はよくわからない面がありますが、いずれにしても、このさきほど申し上げた5-2と5-4の部分の実質化というのは、特に独立社外取締役として真に有益・必要な人が選任されるという観点から、一定の問題意識を持った方が良いように思われます。

 独立性という概念で気をつけないといけないのが、独立性基準というのは、例えば100の関与事項がある中で、その候補者に5とか10程度について何らか利益相反があっても、おおよそ100全部について一切関与しちゃいけないという、完全な消極要件なのですね。今後、独立社外取締役が例えば3分の1とか、今よりかなり多くの員数が必要になってきたときに、今の機関投資家の独立性の運用のままで真に意味がある人が社外役員になれるのか、懸念があります。先ほどの資料16頁の監査の箇所にしても、例えば内部監査部門から独立社外役員に直接レポーティングするとか、あと、指名委員会に参加してくれとか、そういういろいろな仕事が独立社外取締役には今後益々増えていくわけです。そうした中で、ほんとうに有益な人を社外取締役として選ぶというときに、今の機関投資家の独立性基準の運用で果たしてよいのかという問題意識が、5-2と5-4の絡みであります。先ほどご紹介があった資料25頁のウェブにまで載せる話なのかどうかは別かもしれませんが、そういう問題意識があるということが2点目でございます。

 以上です。

【池尾座長】 
 ありがとうございました。

 じゃあ、佃さん。

【佃メンバー】 
 では、手短に。先ほどもちょっと紹介した調査結果を踏まえながらコメントさせていただければと思うんですが、機関投資家との企業との対話についてどんな対話をしていますかと確認したところ、今日は欠席されている冨山さんがいつもおっしゃっているなんとかの二つ覚えみたいな話があります。例えば企業業績、今後の見通しはどうなんだみたいな対話だとか、あるいは、株主還元策みたいな話というのは、これは調査結果でも比較的対話の中でなされているという話はあるんですが、一方で、非常に勇気づけられた結果があって、特に指名委員会等設置会社では、この対話の内容が非常に広範にわたるというふうな結果になっています。

 中長期の経営戦略、企業統治体制、政策保有株式、CEOの能力・資質、取締役の能力・資質、経営幹部の報酬、あるいは、CEO等の後継者計画等々、まさに多岐にわたる対話が機関投資家となされているといった結果が出ています。

 2点目に、機関投資家との対話を通じて、企業価値向上にどの程度貢献しているかと聞いたところ、これも非常に勇気づけられる結果で、調査回答企業のうち、49.3%が強く貢献すると思うと回答しています。この対話、エンゲージメントが企業価値向上に対して強く貢献すると考えている企業が半分もあるというのは非常に良い結果だと思います。

 その上で、今後の課題は何かを考えると、前回のスチュワードシップ・コード改訂では、議決権行使の開示が日本企業の企業統治を非常に前進させたと思うんですが、次の課題は何かというと、スチュワードシップ・コードの原則の3、12ページのところにあると思うんですけれども、機関投資家は、当該企業の状況を的確に把握すべきであるという、これ、ど真ん中の話というのがやっぱり課題として残されているなという実感があります。

 なぜかというと、調査結果で、企業の皆さんに、機関投資家との対話の今後の課題は何ですか聞いたところ、企業の皆さんは非常に真摯にこの問題を捉えていて、例えば企業サイドの対話能力スキルというのが課題であると、自分たちの対話能力の課題があると答えた企業は44%、あるいは、自分たちの基本的な意識が問題であると答えた企業は33.8%とあるんですが、一番多かった回答は、機関投資家の我が社の事業に対する理解、これが61.8%ありました。

 調査に回答した企業は、上場企業の中でもガバナンス改革に前向きな企業が多いということを考えると、今後の対話の成功の鍵は、企業サイドというよりも、むしろ機関投資家サイド、これが握っているんじゃないかと考えます。なかんずく、機関投資家における企業の事業を理解する力、これを高めていくことに中長期的に取り組んでいかなければならないと考えます。

 機関投資家が投資先の事業を理解する力が足りないというのはいかがなものかというふうに思うんですけれども、めげずに頑張って改善していくしかないと思います。

 以上でございます。

【池尾座長】 
 どうもありがとうございました。

 じゃあ、小林メンバー、お願いします。

【小林メンバー】 
 2つまた質問があります。

 資料27ページに載っているのは国内の年金基金だけなんですけど、企業経営者として市場から裁かれる身にしてみれば、長期志向の外国人投資家がどのくらい運用しているのかとか、アクティビストがどのくらいの規模なのかとかが非常に気になります。会社によっては株主の7割ぐらいをアクティビストが占めている例もあるわけで、市場における外国人やアクティビストの位置づけをどういうふうに整理しておけばいいのかというのが一点。

 もう一つ、エンゲージメントの中には、CEOとかオペレーションをやっている経営層との対話もありますけど、社外取締役と対話をしたいという機関投資家も結構いるわけです。このあたりのガイドラインをどう考えたらいいのかという点もお伺いしたい。

【井上企業開示課長】 
 もちろんスチュワードシップ・コードに参加していただいている海外の機関投資家も多数いらっしゃいますので、そういうところとの対話というのはもちろん実質的にやれるんだと思います。

 社外取締役との対話のガイドラインというのは確かにちょっと課題かもしれませんけれども、機関投資家からも、最近、日本企業において、社外取締役を出していただけるところはかなり増えてきたというふうにお伺いしておりますので、おっしゃるようなことは将来の課題として受け取らせていただければと思います。

【池尾座長】 
 それでは、三瓶メンバー、お願いしたいと思いますが、時間が迫っていますので、手短にお願いします。

【三瓶メンバー】 
 ポイント、1点だけしかありません。対話についていろんな議論があるんですけれども、スチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コード、両方とも、前文のところで、対話の定義というか、対話に枕言葉がついていると思うんですね。「建設的な『目的を持った対話』」、この建設的なってすごく大事な意味を持っているけれども、対話、対話というと、さっき佃メンバーがおっしゃったみたいに、それは普通のIRミーティングじゃないのというようなものまで会話としてくくっている人もたくさんいるので、もう一回ちゃんと「建設的な『目的を持った対話』」って枕言葉をつけた意味があるんだということを徹底する必要があるんじゃないかと思います。

 私がどこかで聞いたのは、その建設的なというのは、何かニアリーイコール、友好的なというふうに捉えていて、それは何で友好的なと捉えているかというと、敵対的との反対の意味で、そう捉えている。だから、穏やかなやりとりだというふうにイメージいる方がかなりいるみたいなんですけど、建設的なというのは、「成果を出す」、「結果を出す」ということなので、対話が目的じゃなくて、対話をした結果、何かの問題を解決してその成果を出す、そこまで見て、ちゃんと対話をしているというふうに言わないといけないんじゃないかというふうに思います。

 私たちはそういうふうに定義して、結果が出ているのか、出てないのかというのを内部ではモニターしています。それをもって対話と言っているんだよという出発点をもう一回確認しておく必要があると思います。

 以上です。

【池尾座長】 
 そろそろ時間ですので、どうしてもということでしたら、どうぞ。

【松山メンバー】 
 25ページについて、これ、ウェブサイトに上がりますと、また議決権開示がより一層進むんだと思います。事業会社としては、議決権で反対された理由もないと、なぜなのかよくわからないという面もありますけれども、一方で、機関投資家の方々にとってはその集計がまた大変だという話も聞きます。この辺は、機関投資家の側と十分ご議論しながら進めていただければなと思います。

 以上です。

【池尾座長】 
 ありがとうございました。

 意見は尽きないようでございますが、定刻になりますので、本日、いつもですけど、本日の議論はこれで終わりにさせていただきたい。議論自体が終わるわけではないので。

 それで、「プリンシプルベースのガイダンス」につきましては、本日、お出しいただいたご意見等を踏まえつつ、今後、引き続き、金融庁において投資家や企業から意見を伺った上で、議論を深めていただくということでお願いします。

 最後に、事務局からご連絡等ございましたら、お願いします。

【井上企業開示課長】 
 ありがとうございました。

 「プリンシプルベースのガイダンス」につきましては、今、座長からいただきましたように、本日のご意見を踏まえまして、できましたら、年明けをめどにパブリックコメントに付すべく作業を進めてまいりたいと思います。追加のご意見がございましたら、ぜひお申し付けいただければと思います。

 また、「スチュワードシップ・コードの受入れを表明した機関投資家のリスト」の公表項目の拡充につきましても、本日頂戴いたしました意見を踏まえて、今後、金融庁において必要な確認作業等を行った上で公表に向けて進めてまいりたいと思います。

 なお、次回のフォローアップ会議の日程でございますけれども、皆様のご都合を踏まえた上で最終的に決定させていただきたいと思いますので、ご案内をしばらくお待ちいただければと思います。

 事務局からは以上でございます。

【池尾座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、本日も、いつもどおりご熱心にご議論いただきまして、まことにありがとうございました。それでは、以上をもちまして、本日の会議は終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。
 

―― 了 ――

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