スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議(第22回)議事録

1.日時:

令和2年12月8日(火)9時30分~12時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館9階 共用会議室3


【神田座長】  
 皆さん、おはようございます。予定の時間となりましたので、始めさせていただきます。ただいまからスチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議の第22回目の会合を開催させていただきます。皆様方にはいつも御多忙のところを御参加いただきまして、誠にありがとうございます。

 これまでの会議でございますけれども、「コロナ後の企業の変革に向けたコーポレートガバナンス」の課題について、御議論をしていただきました。議論の中で、企業がコロナ後の経済社会・産業構造の変化を先取りしていくためには、多様な視点や価値観の存在が不可欠であるという意見が聞かれました。特に、取締役会の機能発揮及び企業の中核人材の多様性の確保が急務であるとの意見が挙げられました。

 そこで、これらの論点につきまして、本会議の意見書として取りまとめることにしたいと思います。本日は、まず、前半でこれまでの議論を取りまとめました「コロナ後の企業の変革に向けた取締役会の機能発揮及び企業の中核人材の多様性の確保(案)」と題した意見書の案について、皆様方に御確認をいただきます。

 それから、後半では、新しい議題としまして、株主総会について事務局から説明をしていただき、皆様方に議論をお願いできればと思います。

 それでは、まず意見書の案につきまして、金融庁から御説明をお願いいたします。

 島崎さん、よろしくお願いいたします。

【島崎企業開示課長】
 よろしくお願いいたします。

 それでは、本会議の意見書(案)でございます資料1、「コロナ後の企業の変革に向けた取締役会の機能発揮及び企業の中核人材の多様性の確保(案)」について御説明させていただきます。

 Ⅰ、Ⅱ、Ⅲとなっていまして、全3ページで、Ⅰが「はじめに」、Ⅱが「取締役会の機能発揮と企業の中核人材の多様性の確保についての考え方」、Ⅲが「おわりに」になっています。

 まず、「Ⅰ.はじめに」のところでございますが、フォローアップ会議再開後の第1回目から2回目で、御議論いただいている中での話でございますが、コロナ禍の拡大により、企業を取り巻く環境の変化が加速していること、デジタライゼーション、人々の価値観・行動様式の変化、顧客の求める財・サービスの変化、新たな働き方や人材活用、不確実性の高まり等について記載させていただいています。

 その後、「コロナ後の新たな成長を実現するためには、課題を認識し、変化を先取りすることが求められる。株主をはじめ、ステークホルダーの方々との間で変革のビジョンを共有し、迅速・果断な意思決定を通じて、これを積極的に実行していくことが重要である。」

 「『攻めのガバナンス』や『持続的成長、中長期的な企業価値の向上』の実現に向け、ガバナンス改革を進めることが急務で、様々な課題、取締役会の機能発揮、資本コストを意識した経営、監査の信頼性の確保、グループガバナンスの向上等といったことにスピード感を持って取り組む。」としています。「特に」以下でございますが、「企業が、コロナ後の経済社会・産業構造の不連続な変化を先導し、新たな成長を実現するには、異なる経験・技能・属性を反映した多様な視点や価値観の存在が不可欠である。このため、独立社外取締役をはじめ、取締役の知識・経験・能力の適切な組み合わせ等を通じた取締役会の機能発揮や、取締役・経営陣やその候補等の多様性の確保とそれに資する人材育成・社内環境の整備が極めて重要である」という問題意識を述べさせていただいております。

 以下、本意見書(案)は、これらの論点について、次期コーポレートガバナンス・コードの改訂に盛り込むべく提言を行うとしております。

 「Ⅱ.取締役会の機能発揮と企業の中核人材の多様性の確保についての考え方」における、「1.取締役会の機能発揮」でございますが、「デジタライゼーション、あるいは企業活動と社会の持続可能性の両立を求める声が高まる中で、企業が今までの経営人材だけでこうしたコロナ後の経営課題を先取りすることは容易ではない。

 取締役会には、こうした事業環境の不連続性を踏まえた上で、迅速・果断なリスクテイクを支え、重要な意思決定を行うことが求められる。

 この観点から不可欠なのが、取締役の知識・経験・能力、さらには就任年数に関する適切な組み合わせの確保である。取締役会において事業戦略に照らして必要なスキルが全体として確保されることは、取締役会が、その役割・責務を実効的に果たすための前提条件で、スキル(知識・経験・能力)の構成の考え方は、取締役会の選任に当たって適切に開示され、投資家との対話を通じて共有されることが求められる。」

 「この際、独立社外取締役は、企業が経営環境の変化を見通し、経営戦略に反映させる上で、より重要な役割を果たすことが求められる。特に当該企業に限られない幅広い経営経験を備えた人材を取締役会に迎え、そのスキルを取締役会の議論に反映させることは、取締役会機能の実効性向上に大きく貢献すると期待される。」

 以下は前回の会議でも御紹介いたしましたが、諸外国のコードや上場規則によりますと、独立社外取締役について、取締役会全体の3分の1以上、ないし過半数の選任を求めている国が大宗となっているということで、我が国でも、「プライム市場(仮称)」は「我が国を代表する企業の市場」として高い水準のガバナンスが求められておりまして、同市場の上場企業に対し、独立社外取締役の3分の1以上の選任を求めるべきであるとし、さらに、それぞれの経営環境や事業特性等を勘案して必要と考える企業には、独立社外取締役の過半数の選任を検討するよう促すべきであるとしています。ここが今回の主要なポイントの1つでございます。

 ここでは「求めるべき」と記載しておりますが、趣旨といたしましては、コンプライ・オア・エクスプレインということを念頭に置いております。これは、本意見書(案)の他の部分についても同様でございます。

 また、上場企業は、取締役の選任に当たり、事業戦略に照らして取締役会が備えるべきスキルを特定し、その上で各取締役の有するスキルの組み合わせ、いわゆる「スキルマトリックス」を公表するべきであるとしております。

 形式的な対応になってしまうといった懸念なども、以前御指摘いただきましたが、ここでは事業戦略に照らして取締役会が備えるべきスキルを特定し、その上でスキルの組み合わせを公表するべきであるということになっております。これに加え、その際、独立社外取締役には、他社での経営経験を有する者を含むよう求めるべきである、としております。

 加えて、
・指名委員会(法定・任意)の設置と機能向上(候補者プールの充実等のCEOの選解任機能の強化、活動状況の開示の充実)
・報酬委員会(法定・任意)の設置と機能向上(企業戦略と整合的な報酬体系の構築、活動状況の開示の充実)
・投資家との対話の窓口となる筆頭独立社外取締役の設置、独立社外取締役の議長選任等
・取締役会の評価の充実(個々の取締役や諮問委員会等を含む自己・外部評価の開示の充実等)
等の論点について、今後、コーポレートガバナンス・コード改訂に向け、検討を更に深めていくということでございます。

 「2.企業の中核人材における多様性(ダイバーシティ)の確保」でございます。

 「企業がコロナ後の不連続な変化を先導し、新たな成長を実現する上では、取締役会のみならず、経営陣においても多様な視点や価値観の存在が求められる。

 そして、我が国企業を取り巻く状況等を十分に認識し、取締役会や経営陣を支える管理職層においてジェンダー・国際性・職歴等の多様性が確保され、それらの中核人材が経験を重ねながら、取締役や経営陣に登用される仕組みを構築することが極めて重要である。この際、他社での経営経験、職務経験を持つ中途採用人材の活用も欠かせない。

 また、こうした多様な人材を活かし社内全体としての多様性の確保を推進するためには、人材育成体制や社内環境の整備も重要である。多様な働き方やキャリア形成を受け入れた上で、社員のスキルや成果が公正に評価され、それに応じた役職・権限、報酬、機会を得る仕組みの整備が求められる。

 こうした観点を踏まえ、上場企業に対し、女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等、中核人材の登用等における多様性の確保についての考え方と自主的かつ測定可能な目標を示すとともに、その状況の公表を求めるべきである。」としています。ここでの「自主的」というのは、全社・全員が同じ目標ということではなく、企業御自身で自主的に設定される自主目標という意味でございます。
 また、多様性の確保に向けた人材育成方針・社内環境整備方針を、その実施状況と併せて公表するよう求めるべきであるということでございます。

 「Ⅲ.おわりに」でございます。2022年4月には新市場区分への移行が行われ、プライム市場(仮称)上場企業には、一段高い水準のガバナンスが求められることになります。その上で、企業においては、制度変更を機会と捉え、早期に実効的なコーポレートガバナンスを構築することが期待される、としています。

 最後に「フォローアップ会議は、来春のコーポレートガバナンス・コードの改訂に向け、グループガバナンスのあり方や資本効率の考え方、人材投資、監査の信頼性の確保、中長期的な持続可能性等、コロナ後の企業の変革に向けたコーポレートガバナンスの諸課題につき、引き続き重点的に検討を進めていく。」としております。

 以上ということで、意見書(案)を提示させていただいております。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 今、御説明いただきました意見書の案につきまして、本日、御欠席の冨山メンバーとワリングメンバーから意見書を提出していただいておりますので、事務局から簡単に概要の説明をお願いいたします。

【島崎企業開示課長】 
 まず、冨山メンバーの御意見書でございますが、今回の意見書(案)において、プライム市場を中心に社外取締役の比率、指名(諮問)委員会の充実、将来の経営トップ層候補となる世代における多様性、とりわけ執行サイドの組織構成員の流動性、新陳代謝の重要性に注目し、中途入社者比率にも着目した多様性の確保を促している点はいずれも重要であり、是非とも今回の改訂で実現してもらいたいとの御意見をいただいております。

 企業統治改革が形式から実質への段階に入っている今、経営トップの適時的確な任免、そのための社内外の取締役の能力、識見、意志、経営陣候補の質を高めるための人材プールを中長期的に持つことについて御意見いただいておりまして、経営層、次の世代の新卒生え抜き人材の同質的、閉鎖的、固定的な構成などについて意見をいただいております。

 また、残された論点として、グループガバナンスとESG・SDGに関連して、「稼ぐ力」強化の議論が重要であるという御意見いただいていまして、グループガバナンスについては、支配的株主による少数株主保護原理を基本規範とすることで諸問題はよりクリアカットになろうとされております。

 後者のESG等につきましては、本質的に未来投資的な性格を有するESG・SDGにコミットする能力も稼ぐ力がなくては現実的な持続性を持つことはない。まず、「稼ぐ力」、特に営業キャッシュフロー水準を押し上げることなどをコードが促すことが肝要という御意見をいただいております。

 ワリングメンバーにつきましては、取締役会の機能発揮についての御意見をいただいております。取締役会の独立性の水準につきましては、様々な意見のバランスを取る必要があることを理解しつつも、国際的なベストプラクティスに向けて、日本が前進することを奨励するとの御意見をいただいております。

 その上で、プライム市場上場会社は独立社外取締役の比率を過半数、他の市場区分の上場会社は独立社外取締役の比率を3分の1、上場子会社については、独立社外取締役の比率を過半数とすべきではないかといった御意見をいただいております。

 あわせまして、指名委員会や報酬委員会が独立社外取締役で構成されることの重要性に照らして、これらの委員会が独立性を備える旨、すなわち「独立」という言葉を意見書において明記すべきである。

 あるいは委員会の委員長を独立社外取締役とすべきだという御意見ですとか、指名委員会の重要な役割は、CEOにとどまらず、取締役会の構成員の選任と評価、後継者計画の管理もあるので、「取締役会の多様性と構成」という言葉をCEO、後継者の前に入れる。あるいは取締役会の役割が会社の業務を監督、指示することにある点に照らして、経営陣による迅速果断なリスクテイクを「支える」と記述とするのではなくて、「監督する」と追記すべきとの御意見をいただいております。

 以上でございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、先ほど説明がありました意見書の案について、コメント等がおありの方には御発言をお願いしたいと思いますけれども、今日は、後半の議題もありますので、お一人3分以内ということで、御発言ある方はお願いできればと思います。

 いつものように、御発言を希望される方は、オンライン会議システムのチャットを使って、全員宛てにお名前、団体名等をお書きいただければと思います。御発言の際にはミュートを解除して御発言いただき、御発言が終わったら、またミュートにしていただければと存じます。

 それでは、いかがでしょうか。コメントのおありの方はいらっしゃいますでしょうか。

 それでは、小幡さん、どうぞお願いいたします。

【小幡メンバー】 
 小幡でございますが、御説明ありがとうございます。5点ほどコメントさせていただきますが、私自身、この意見書の案を公開されることで、5点コメントというより御留意いただければと思う点を御説明いたします。

 1点目が、前回も申し上げたのですけれども、今回、新市場区分からの要請ということで……。

【島崎企業開示課長】 
 すみません、事務局でございますが、音声のほうが届きにくくなっているかと思いますので、どうしましょうか。

【神田座長】
 少し待っていただいて。

【島崎企業開示課長】
 少し待っていただけますか。

【神田座長】 
 すみません、小幡さん、恐らく、接続やWi-Fi等の状況だと思いますので、次の方、4名、御発言いただいた後で、もう一度、小幡さんに御発言いただくこということにさせていただければと存じます。お許しいただければと思います。
 ということで、今、チャット欄には高山メンバー、小林会長、岡田さん、そして春田さんといただいておりますので、高山さん、どうぞお願いします。

【高山メンバー】 
 高山です。この意見書の基本的な内容については賛同いたします。その上で、数点、簡単にコメントさせていだたきます。

 まず、独立社外取締役の割合についてですけれども、現時点で3分の1以上をプライム市場に求めるこということは賛成です。

 過半数にすることが適切かどうかということについては、今後も継続的に議論していったほうがよいと思います。ただ、その際には、そうすることで実際に企業価値に結びつけるにはどうしたらよいかという観点での議論が必要だと考えております。その理由は、コーポレートガバナンス自体は、目的ではなくて、企業価値を上げるための手段であるという考えからです。

 次に、指名委員会についてですが、ICGNの意見書にありますように、指名委員会の独立性は重要ですので、指名委員会の設置だけではなくて、独立性の高い指名委員会の設置、としたほうがよいのではないかと考えます。報酬委員会についても同様です。

 先ほど申し上げた企業価値の向上という観点から、質の高い社外取締役の選任・維持は極めて重要ですので、指名委員会の機能の内容として、CEOの選解任だけではなくて、社外取締役のサクセッションプランを加えたほうがよいと思います。

 次に、取締役会評価について、これは、テクニカルな話なのですけれども、「諮問委員会等」という表現は企業にとって分かりにくいので、その前の表現と合わせて、「法定・任意の委員会」としたほうがより分かりやすいと思います。

 最後に、ダイバーシティの確保についてです。これは、極めて重要な問題で、この内容で結構だと思います。ただ、ここでの主語が経営陣なのか、取締役会なのかは少し不明確であると思います。恐らく、この文章からして経営陣がダイバーシティを確保する、経営を行うことをここでは求めているのだろうと思います。

 ただ、当意見書は、コーポレートガバナンスに関する在り方に関するものなので、経営陣の役割に加えて、取締役会の役割、関与に関する記載は必要であると考えます。例えば取締役会は、そのようなダイバーシティを推進する経営を促進し、監督するというような文章を加えたほうがよいと思います。

 私からは以上でございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 では、続きまして小林会長、どうぞお願いいたします。

【小林メンバー】 
 2ページの後ろのほうに、「加えて、コロナ後の企業の変革を主導するとの観点から」という記述があるとおり、今後の改訂に向けて検討をさらに進めるということなので、まだ結論ではないとはいえ、基本的には、この1ページ、2ページの内容については、ほとんど異論はありません。その上で、独立社外取締役の割合が取締役会全体の3分の1あるいは2分の1以上を占めると同時に、やはり、かなり重要な指名委員会や報酬委員会において、委員長の人選を含め、独立社外取締役をどういう割合にもっていくのかというのが、かなり重要なポイントではないかなと思います。それと、「投資家との対話の窓口となる筆頭独立社外取締役」という記述がありますが、筆頭独立社外取締役というのは、必ずしも投資家との対話の窓口を担うだけでなく、取締役会で議論するアイテムをどうピックアップするか決めるようなファンクションもあるでしょうし、逆に、こういう書き方をすると、筆頭でない独立社外取締役は、投資家との対話にあまり参加しなくてもよいのかなみたいな誤解を与えかねないと思います。むしろ、3分の1なり2分の1なりの社外取締役が、例えば順繰りに投資家と対話するような機会をつくるべきだと私は思うので、この辺の文言が少し気になります。以上でございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 ちょっと戻らせていただきまして、ここで先ほど通信状況がよくなくて、御発言、十分にいただけなかったNECの小幡さん、もしいらっしゃいましたらお願いします。

【小幡メンバー】 
 小幡でございます。通信の関係がありますので、画像は遮断させていただきます。 私も意見書を公表することにつきましては賛同しておりますが、5点ほど、追加で検討したいと思っている点がございます。

 1点目が、新市場区分から今回の話というのはきていると思うのですけれども、前回も申し上げたのですが、やはり会社法との整理というものをきちんとしたほうが良いのではないかと思っています。特に、社外取締役について3分の1とか過半数という要請が出てきますと、やはり今の監査役会設置会社は、おのずから監査等委員会設置会社、または指名委員会等設置会社に移行することになってしまうのではないかなと思っています。やはり監査役会設置会社にも、それなりのいい点があると認識しておりますので、その辺の背景をどのように整理するのかということについて、一度、検討したほうがいいのではないかと思っております。それが1点目です。

 2点目ですが、スキルマトリックスについてですけれども、これも前回申し上げましたが、やはり各社、ガバナンスの発展途上の過程において、どのような取締役が適切かというのは、各社各様で考えるべきことなのではないかと思っています。できれば、多様性があれば越したことはないのですけれども、やはりガバナンスの発展途上に応じて、その辺の求めるものが変わってくるというところを考えてはどうかと思っています。

 3つ目ですけれども、独立社外取締役について強く要請されていますが、それは利益相反の処理の観点からふさわしいとは思うのですけれども、私どもの会社の経験などから照らしますと、逆に独立性がない方のほうが会社の事情もよく分かっていて、厳しい御指摘を多々お受けするケースなどもあるので、独立性というものがどこまで必要なのかと、少し疑問に思っているところもございます。

 4番目ですけれども、取締役会の議長に独立社外取締役をというのは、方向感はそうだということは認識しておりますけれども、議長となられる方の御負担が多いというふうに非常に認識しています。さらなる検討をと思っております。

 最後ですけれども、数値目標について、多様性のニーズは理解しておりますけれども、できる限り、抽象的なナラティブな表現を認めてもらえるようなやり方にしてはどうかと思います。中途採用が望ましいことも理解していますけれども、一方、新入社員から頑張ってきている人は自分は出世できないのかというようなことになり、モチベーションが下がるようなことがあってはいけないと思います。そのような考え方を考慮した表現ができるようとありがたいと思っております。

 以上になります。ありがとうございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、チャットの順番に戻りまして、次に岡田さん、どうぞお願いいたします。

【岡田メンバー】 
 まず、全体として、この意見書には賛成です。その上で意見を申し上げます。

 最初に、社外取締役の数の問題ですが、3分の1、特にプライムには3分の1を要請ということですが、この3分の1がゴールと受け止められないようにしていただきたいと思います。特に、プライムには過半数を求めるべきではないでしょうか。社外取締役の人材プール整備のインセンティブを日本の企業に持たせるために、プライム市場に入るには過半数が最低条件であるというようなゴールを示す意義があるのではないかと思います。

 次に、前回の会議で社外取締役が過半数になると、監査役会設置会社という機関設計自体の否定になるという意見がありましたが、私は社外取締役過半数という要請は、日本に根づいた監査役会設置会社という優れたガバナンスモデルを否定するものではないと思います。

 ただ、海外の投資家にとって監査役制度は非常に分かりにくいので、理解を得やすくするためには、グローバルに分かりやすい社外取締役による効率性ガバナンスと、日本独自の監査役による適法性ガバナンス、この両方を兼ね備えた、いわゆるデュアルモニタリングの監査役会設置会社をプライムとして認めるというような発想であるべきだと思います。

 そのためには、ガバナンス報告書で、いかに効率性を図り、さらに適法性を重視しているかということを記載する、こういう工夫をしていくことが必要だと思います。

 私は、日本でまだ多数を占める監査役会設置会社が国際的にハンディを負い続けることなくグローバルに打って出られるように、社外取締役も確保しながら、デュアルモニタリング体制を整えて、プライム市場へという道筋を出せないかと思っております。

 次に、スキルマトリックスの話ですけれども、意見書に書いてあることは、そのとおりですが、もう少し具体的に申し上げますと、招集通知によく見られるように、マトリックスの表を作って、マル・バツで済ますということではなく、内容の充実が求められると思います。特に、海外の例では、スキル・アンド・エクスペリエンスを一人一人、丁寧に説明して、その会社がなぜ、そのスキル・アンド・エクスペリエンスを必要としているかを説明しております。そこまでやらないと、極端に言いますと、独立であれば誰でもよいと、そういう状況は変わらないのではないかと思います。

 私からは以上でございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして春田さん、どうぞ。

【春田メンバー】 
 連合の春田でございます。事務局からの提案について、概ね賛成の立場で意見を3点申し上げさせていただきます。

 1点目につきましては、独立社外取締役の件でございます。3分の1以上、それから過半数というような記載がされております。最初の設定は、この記載のとおりでいいと思ってはいるのですけれども、今後、独立社外取締役の効果の分析や検証をした上で、具体的な割合の議論をしていく必要があると思います。分析や効果の検証なしに進めていくことに対して少し懸念がありますので、その辺りを踏まえていただければと思います。

 それから、2点目につきましては、多様性の確保についてでございます。この多様性の確保に向けた情報開示という点は非常に重要だと思っております。

 ただ、2.の4パラグラフのところに、「自主的かつ測定可能な目標を示す」という記載がありますけれども、外国人・中途採用者の測定可能な目標を示すということについては、企業労使での判断というところもあるかと思いますので、測定可能な目標の設定も含めて、少し寛容な表現にしていただければということでございます。

 それから、最後になりますけれども、この意見書の中でプライム市場の位置づけについては「おわりに」のところで記載されておりますが、プライム市場とスタンダード市場で企業間の格差が生まれるのではないかと少し懸念しております。そういったことがないように、プライム市場がスタンダード市場を牽引していくような、そういった思いを込めて、日本を代表するプライム市場にしていくんだというメッセージみたいなものを「おわりに」のところに入れていただければと思っています。

 以上でございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 では、続きまして松岡さん、どうぞお願いいたします。

【松岡メンバー】 
 ありがとうございます。松岡でございます。

 本日は、たくさんの会員企業さんがいらっしゃいます経団連の資本市場部会長の立場としての発言と理解してお聞きいただければと思っております。

 まず、コロナ後の経済社会・産業構造において新たな成長を実現するために、多様な視点や価値観の存在というのは不可欠だと考え、そのためにコーポレートガバナンス・コードが一定の役割を果たすと考えるということには同意しております。

 私どもの理解で、我が国におけるコーポレートガバナンス・コードは、プリンシプルベースのアプローチを採用しておりまして、各社が個々の原則の本質を自社の状況に応じて取り組むということができるようにするということで、企業自身の努力によるガバナンスと企業価値の向上を目指しているという理解でございます。

 実質を確保することの考え方や取組みの姿勢を問うというものでありまして、形式的な基準、一項目ごとにコンプラインかエクスプレインかというチェックリスト的なことになるべきではなく、こういった点は、今回の再改訂においても基本的な考え方であると私どもとしては理解しております。

 なので、あくまでも経営上の工夫の選択肢の幅を狭めるようなことがないようなものであるということが重要だと考えております。その上で、以下、具体的に申し上げたいと思います。

 まず、取締役会の機能発揮についてです。独立社外取締役の強化や多様性の確保という方向性は同意しております。ただし、社外取締役の人材のプールが諸外国と比べて整っていない現状を踏まえますと、過半数の独立社外取締役の選任の検討を促すということは容易ではないと考えます。

 全上場会社に対して取締役のスキルマトリックスの公表を求めるということについてですけれども、この趣旨については理解するものの、各取締役の持つスキルについては、その属性によって固定化されるものではなく、あくまでも各企業がニーズや特徴に即して、各取締役の専門分野やこれまでの経験や個性、そういったものから総合的に測って判断されるべきものであって、多様な要素を形式的なマトリックスに当てはめるということは難しいと考えます。

 形式的な対応を助長するおそれのある開示方法というのは、避けるべきであって、各社が取締役候補者の選任理由として、それぞれ期待する役割について説明をするという各社の自主的かつ柔軟な開示を促せると考えております。

 次に、指名・報酬委員会の設置と機能向上、筆頭独立社外取締役の設置、独立社外取締役の議長選任、取締役会の評価の充実についてですけれども、この機会に意欲的な課題の数々を検討するというのは有意義だと考えております。ただし、先ほどの社外取締役を過半数とするということと同様なのですけれども、ここに示されているのがモニタリング型の執行と監督を分離した会社形態を前提としていると読めるものばかりでございます。

 こうした記述については、取締役会で経営上の事項を議論して、過半数の社外監査役が監査する、いわゆる監査役設置会社を念頭に置いていないものとなっているのではないかと思えます。指名委員会等設置会社よりも監査役設置会社が圧倒的な多数である上場企業における実態というのも踏まえながら、しっかりと検討していくべきと考えます。

 また、モニタリング型の会社についても、筆頭独立社外取締役を設置し、その当該取締役が投資家との対話の窓口になるという限定は付すべきではないと考え、また、これもテーマに応じてふさわしい社外取締役が対応するというような意見発信もあるのではないかと考えます。

 次に、企業の中核人材におけるダイバーシティ、多様性の確保についてでございます。ダイバーシティ推進は、コロナ以前から日本企業において着実に大きな流れとなりつつありまして、各社の取組みを後押しする施策というのは大変重要だと考えます。各社の自主的な取組みを促すという観点から、経営における女性・外国人・中途採用者なども含め、全体としてどう多様性を確保し、活用するかという考え方を説明するのは意義があると考えます。

 ただ一方で、そうした各社の自主的な取組みに対応する公表方法については、引き続き検討が必要なのではないかと考えます。測定可能な目標とそれに対する状況、また、人材育成方針や社内環境整備方針と、その実施状況についての公表を求めるということについては、多様性という質の問題が数や形式の問題にすり替わらないようにすることが重要だと考えます。

 また、多様性を一定の枠組みに当てはめることによって、かえって多様性の目標に抵触するおそれがある可能性など、実際的な課題というのも視野に入れて検討する必要があると考えます。

 今回の意見書(案)については、経団連の資本市場部会のメンバーにコメントを求めましたけれども、これは、率直に申し上げて大きなギャップがあったのが現状でございました。今回、コーポレートガバナンス・コードは、時代の半歩先の方向性を示して、企業の自主的な取組みを示すものだということについては理解及び承知をしておりますけれども、今後どのような工夫をして、こういった溝を埋めていけるのかということについては、さらに金融庁や東証さん、御関係者のお考えなどを伺っていきたいと思っております。

 以上でございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

【池尾メンバー】 
 すいません、池尾ですけど。

【神田座長】 
 どうぞ。

【池尾メンバー】 
 発言飛ばされたのですけれど、私。

【神田座長】 
 そうですか、大変失礼いたしました。池尾先生、どうぞ、お願いします。

【池尾メンバー】 
 意見書の基本ラインについては問題ないのですけれど、少しコメントさせていただきます。

 1点目は、やはり独立社外取締役の人数に焦点を合わせ過ぎているというか、いきなり3分の1とか、いきなり過半数という議論をしているという感じがあって、もっと質的な議論を出すべきだというふうに思います。

 また、スキルマトリックスといった話がありますけれども、独立社外取締役というのは、チームとして一定のスキルの要件を満たさなきゃいけないわけですよね。そうすると、少人数だと満たせないというところがあって、最低、私の感覚だと、チームとして遜色ないスキルマトリックスを描けるためには、三、四名は必要だというのが感覚なんですね。

 そうすると、普通のサイズの取締役会だと、いや応なしに3分の1を超えるはずで、だから、質的にそういうことが必要なのだということを言うことで、結果的に3分の1という数字が合理化されるという話であって、いきなり3分の1にすべきだとか、半数にすべきだという議論は、私は、少しコーポレートガバナンス・コードにはなじまない議論だというふうに思います。それが1点目です。

 それから、2点目が中核人材のダイバーシティですけれども、これも中途採用等、言及されていますから、御案内のとおりだと思うのですが、結局、多様性というのは、組合せの問題だと思うんで、組合せが可能になるような状況を確保していく上では、労働市場の流動性という問題に突き当たると思うのですね。

 ここでは各企業の努力しか書かれていないのですけれども、各企業の努力を超えて、労働市場がやはりある程度、流動的な市場として存在していないと、こういうことは実現できないということで、だから、コーポレートガバナンス改革のダイバーシティの確保という話は、実は幅広い労働市場改革の議論と結びついているんだと、そういう射程を持った議論なんだということを言及しておいたほうがいいかなという気がしました。

 以上です。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして上田さん、どうぞお願いいたします。

【上田メンバー】
 ありがとうございます。意見書についてですが、私は賛成いたします。その上で、3点、コメントをさせてください。

 意見書の順に沿って行きますと、まず、第1点目は、取締役の独立性についてです。独立社外取締役を3分の1とすることについては、プライム市場に対するコードいうことで、日本を代表する競争力のある企業向けのコードとしてはふさわしいものだと思います。

 そして、必要に応じて過半数ということで、さらに高い目線の会社、取組みを目指しておられる会社には、より高い水準を提示していくといったところで、グローバルな競争というものを見据えますと適切だと思います。

 ただ、そのためには、ほかのメンバーの方もおっしゃっていましたけれども、取締役会のスキルと経験のベストミックスというものを考える必要が当然出てきますので、そのためにも各社の実情に応じたスキルマトリックスの作成、あるいは、その検討というものは必要になると思います。

 スキルマトリックスは、株主にとっても有用とありますが、会社にとっては取締役会の構成を検討、説明するうえでさらに有用と思っております。いずれにしても、コードはコードですので、先ほど島崎課長も御指摘されておられましたけれども、ソフトローという制度に立ちますと、会社がそれぞれの実情に応じて、コンプライ・オア・エクスプレインで取り組むべきことであろうかと思います。

 次に、第2点のそれ以外のことということで、取締役会のさらなる改革についてです。指名委員会と報酬委員会については、まず、その独立性というものをしっかり考えるタイミングにも来ているかと思います。また、CEOだけではなくて、日本の実情もあるかと思いますが、社外取締役のプール、あるいは選任のプロセスについても重要な論点になると思います。

 そして、現在はコードに少し書かれているだけの筆頭独立社外取締役の機能の発揮の仕方、あるいは現在のコードには記述のない取締役会議長とCEOの役割の分離、現状では社外の議長でなくても社内の議長でもいいと思うのですが、両者の機能の分離について、しっかりと今後、議論していくことが必要かと思いました。

 最後に、次のページにありますけれども、ダイバーシティについてです。これらも大変重要な論点だと考えておりまして、経営者や取締役が責任を持って検討すべき課題として認識しております。

 そして、私、以前も申し上げましたけれども、ジェンダーとか国籍、キャリアというバックグラウンドのダイバーシティに加えて、ジェネレーション、世代的なダイバーシティも必要だと考えております。その点、意見書を読ませていただきますと、その中にジェンダー・国際性・職歴等であるというような表現も各所書かれていますので、こういったところに若者とかジェネレーション、世代についての多様性も含まれているものと理解しております。これについても大変重要な論点ですので、しっかりと認識していくことが必要かと思っております。

 以上でございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして佃さん、どうぞお願いいたします。

【佃メンバー】
 佃です。意見書の内容について異論はございません。

 プライム市場の上場企業における独立社外取締役の3分の1以上の選任につきましても、あるいはジェンダー・国際性・職歴等の多様性の確保につきましても、日本企業が企業価値の向上を果たす上で極めて重要だと考えます。そういった意味で、今回の意見書(案)について、大変よくまとめていただいているものと考えています。その上で2点、コメントさせていただきます。

 まず、意見書(案)の2ページ目の第3パラグラフの最後のほうです。プライム市場の上場企業についてのコメントなんですけれども、「それぞれの経営環境や事業特性等を勘案して必要と考える企業には、独立社外取締役の過半数の選任を検討するよう促すべきである」とありますけれども、この必要と考える企業は独立社外取締役の過半数の選任を検討するように促すべきというのは大きな前進であると考えています。

 その上で、では、どのような企業が過半数の選任を検討すべきなのかといった点につきましては、例えば時価総額が大きい企業であるとか、あるいは機関設計であるとか、できる限り具体的なイメージができるような工夫を今回のコーポレートガバナンス・コードの改訂、具体的には原則4-8の改訂になると思うのですけれども、こちらのほうでぜひ反映していただきたいというふうに考えています。これが1点目です。

 それから、2点目ですが、従前のフォローアップ会議からお話を伺っていて、独立社外取締役の候補が少ないという議論には強い違和感を感じています。独立社外取締役の候補はたくさんおられます。私は、日本企業の課題は、独立社外取締役の候補が少ないという話ではなくて、社内取締役が多過ぎるのが課題だと思っています。要は、社内取締役が多いから社外取締役を3分の1確保しようとすると、社外取締役もたくさんの人数を抱えなきゃいけないと、この状況が問題だと思います。

 例えば日本の最大企業であるトヨタを見ますと、取締役の総数は9名です。やはり独立社外取締役を増やせないから改革に反対するというのは違うと私は思います。

 さらに言うと、大きい流れとして多様性の確保も待ったなしの状況だと思いますので、そういった観点からも、やはり独立社外取締役は増やしたほうがいい。しかし、どうしても独立社外取締役の人数を変えないのであれば社内取締役を減らして社外取締役の比率を上げていく。これが正しい方向ではないかなと考えます。

 当然ながら、各社がそれぞれ取締役会の最適な構成の在り方を考えるべきだと考えます。けれども、大きい方向性としては、日本企業の過去40年間の歴史を見ても、かつては取締役の数が49人いたという話も実証研究などでありますけれども、社内取締役の減員の歴史を踏まえて取締役の最適な構成を考えていただければと思います。

 以上です。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして三瓶さん、どうぞお願いいたします。

【三瓶メンバー】 
 三瓶です。まず、意見書について、方向性については賛同いたします。その上で幾つかのポイントについて、話させていただきます。

 まず、2ページ目の後半、「加えて」以下の部分ですけれども、検討をさらに深めていく際のポイントについて、まず2つ。

 監督の独立性を改善するために、独立社外取締役を3分の1以上確保した場合でも、指名委員会や報酬委員会を設置していないということがないように、コードの改訂を進めていくべきだと思います。先ほども意見がありましたけれども、3分の1ということばかりに話が行って、蓋を開けて見ると3分の1は確保したけれども、指名委員会や報酬委員会が設置されていないということになると、そもそもの機能発揮が非常に難しくなると思うので、その辺が1点目です。

 もう一つ、先ほど高山メンバーもおっしゃっていたと思いますけれども、ICGNのケリーさんからの意見書にあるとおり、指名委員会、報酬委員会は独立性を確保するということが非常に重要になると思います。

 そして、この意見書の中で1点気になるところは、先ほど小林メンバーもおっしゃっていたんですけれども、窓口となる筆頭独立社外取締役の設置というところです。ここについては慎重に検討すべきというふうに思います。

 理由の1つ目は、英国の取締役会の構成上、そして、英国での投資家とのエンゲージメントの慣習上、こういうことになっていると思います。英国では、代表するグローバル企業の場合には、取締役会議長は独立社外取締役となっています。こうした取締役会議長を務める方というのは、独立社外取締役の中での筆頭の方です。そして、投資家が企業と本格的なエンゲージメントをするときには、この取締役会議長の方とエンゲージメントをします。これがイギリスの特徴です。

 なので、誰が筆頭で窓口かということが、そういう目的からして、また構成上、必要になってくるわけです。ただ、日本については、まだそういう状況ではないと思います。ということが1点目です。

 さらに、日本において我々も独立社外取締役との面談を進めていますけれども、本格的に独立社外取締役の導入が始まったのはまだ5年ほど前だと思います。ですから、まだ一人一人の方は投資家との対話をしたことがないとか、そういう状況です。なので、今の日本の状況からすると、投資家と独立社外取締役の対話というのは、筆頭とか窓口とかいうことではなくて、できるだけ多くの方とやり取りをするということが広がっていくべきだと思います。

 なので、質の向上のためにも、そういう状況なので、ここの検討については、ちょっと慎重にすべきというふうに思います。ですから、この意見書に書くべきかどうかということも私は若干心配しています。

 先ほどいろんな方から御意見があったダイバーシティについてですが、測定可能というのは、時系列に取組み、実態、進展を透明化して、客観的に見られるようにする。第一の目的は、社内でPDCAを回すために必要だということだと思います。

 社外からすれば、このPDCAがどう回されて、それが進展しているのか、改善しているのかということを見る大事な開示項目になると思います。それがなければ評価ができません。

 国際的に見れば、既に「ISO30414」などのガイドラインで示されているとおり、日本が、こういったことに躊躇していくと、今後、日本はますます国際社会から後れを取ってしまうということを懸念します。なので、ここで書いてある「測定可能な」というのは、かなりハードルが高いように見えますけれども、国際社会で見れば、このぐらいしなければいけないということだと思います。

 以上です。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして神作先生、どうぞお願いいたします。

【神作メンバー】 
 どうもありがとうございます。私も基本的に、意見書の方向に賛成いたします。

 1点だけコメントさせていただきたいと思いますけれども、これまで多くのメンバーの方から御指摘のありました筆頭独立社外取締役についてでございます。筆頭独立社外取締役の最大の意義と機能は、業務執行取締役を排した形で、社外取締役だけのコミュニケーション、意見交換の場を持つ。そこにおいて、議論をまさにリードしていく役割を果たす。このことに筆頭独立社外取締役の最大の意義と機能があると思います。

 そのことは、意見書にあります指名委員会の機能向上と報酬委員会の機能向上にも資することになると思いますし、さらには取締役会全体の機能向上にも資することになると思います。

 したがいまして、小林メンバーも御指摘されて、またただ今、三瓶メンバーからも御指摘があったと思いますけれども、「投資家との対話の窓口となる」というのは、あくまでも一つの機能にすぎず、一番大事なことは、業務執行者を排した形で独立社外の者だけで集まる場を設けそこでの議論において中心的な役割を果たすということであると理解しています。

 そのように捉え直せば、筆頭独立社外取締役というのは、ぜひ設置をすることが望ましいと考えておりますし、さらに、松岡メンバーからも御指摘ございましたけれども、監査役会設置会社についても視野に入れる必要があるということになりますと、先ほど述べた筆頭独立社外取締役の役割は、社外取締役だけを集めるのではなくて、そこに社外監査役の方も同席してもらう、社外取締役と社外監査役が一堂に会してともに意見交換をするということも十分に考えられると思います。場合によっては、筆頭独立社外取締役については、今申し上げたような形で、監査役会設置会社における社外監査役も包含する形で記述をさらに広げることが考えられるのではないかと思います。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして岩間さん、どうぞお願いいたします。

【岩間メンバー】  岩間でございます。ありがとうございます。私も基本的に今度の意見書について賛成でございます。ただ、2点ばかり申し上げたいと思います。

 1つは、先ほどから出ておりますけれども、独立社外取締役、それから取締役会議長、リードディレクターについてでございますが、基本的に利益相反が排除されるということと、少数株主の利益を尊重するという観点から、やはり社外取締役の独立性というのは極めて重要であると思います。そういうことがうまく回るような形で検討が進むことが大事なんじゃないかと思います。

 その観点で言いますと、取締役会の評価というものも考えなきゃいけない。これは、自己評価もありますし、第三者評価もありますけれども、先ほど申し上げたような点について、取締役会としての実績というか、努力がちゃんとなされているかということを評価するということが一つ必要なんじゃないかと思います。

 それから、ダイバーシティについて申し上げたいんですけれども、要するに取締役会のダイバーシティも非常に重要だと思いますが、実際に事業を推進していく執行役員、あるいは、その他幹部社員の間におけるダイバーシティというのが極めて大事だと思います。むしろ、そういうことを促進していくように取締役会もリードしていくべきだという具合に思います。

 先ほど池尾先生もおっしゃったように、労働市場の改革なくして、これはできないということで、終身雇用のいいところと今後の有効なダイバーシティの確保という観点から、どういう具合に考えていったらいいのかということを企業経営のサイドから御検討いただくということが大事なんじゃないかと思います。

 私からは以上でございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。それでは、翁さん、よろしくお願いします。

【翁メンバー】 
 私も、この意見書の大きな方向については賛同いたしますし、特に多様性の確保について、しっかり書かれていることについては非常に評価したいと思っております。

 簡単に3点だけコメントを申し上げたいと思うんですが、1つは、多様性についての表示、取締役会のスキルマトリックスのところでございますが、事業戦略に照らして、チームとしてのスキルが確保され、様々な多様性が確保されていればよいということかと思っております。

 さきに岡田メンバーから議論があり、また上田メンバーからも議論がありました。まず、取締役会でスキルマトリックスを議論すればよいと思っておりまして、そして、その表示の仕方というのは、これからそういうことを考える会社にとってはスキルマトリックスを出すこと自体は大きな一歩かと思うんですけれども、それよりさらに先進的に進んでいるところについては、そういったスキルマトリックスよりもさらに進んで、様々な工夫で、そういったチームとしての多様性を表わすというふうな、実質的なやり方でもよいのではないかなというふうに感じております。

 それから、2つ目は、高山メンバーの御指摘になった点ですが、社外取締役についてもやはりサクセッションプランを考えていくということはとても重要で、そこについては指名委員会も関与していくということが重要ではないかと思っております。特に、そこは書かれておりませんが、コメントとして申し上げたいと思っております。

 最後のページでございますが、取締役以外の多様性の確保についても、中核人材について書かれているところは大きな重要な点だと思っております。人材育成というのは、多様性の観点からも重要でございますし、同時に日本全体として見ても無形資産投資のGDP比率というのは、必ずしも先進国の中で高くなくて、DXという大きな流れの中で人材育成こそ今後の無形資産投資に結びつき、かつ、それが企業価値の向上につながるということだと思いますので、やはり、そういったことを念頭に置いた記述であるということが分かるといいなというふうに思っております。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして小口さん、どうぞお願いいたします。

【小口メンバー】 
 まず意見書の内容につきましては、私も特段異論はなく、これで賛成させていただきたいと思います。

 その理由ですが、今日もいろいろ御意見がありましたけれども、要するに、ここまでやったところでガバナンス改革を止めるのか、止めないのであれば、このような内容になってくるのではないかというふうに考えておりまして、したがいまして、繰り返しになりますけれども、いろいろ御意見はあるけれども、こういう内容で進めていただけたらなと思っています。それから、この意見書を出すタイミングですけども、実際に来年コーポレートガバナンス・コードが改訂されるわけですが、各社は、改訂される方向を意識して、年明けに議論を活発化させる意味で、このタイミングはいいのではないかなと思っています。

 その上で、時間の関係もありますので、1点だけ、今日一番議論が出ているのではないかと思います筆頭独立社外取締役につきまして意見を申します。まず、そもそも今の筆頭独立社外取締役についてコードでどう書いてあるかといいますと、「独立取締役は、例えば互選により筆頭独立社外取締役を決定することなどにより、経営陣との連絡・調整や監査役または監査役会との連携に関わる体制整備を図るべきである」ということで、まさに重要な仲介役といいますか、社内の調整役という位置づけで捉えられているということが、前提としてあります。

 その上で、本日の意見書に出ています「投資家との対話の窓口となる」という部分ですが、これは、私が推察するに例えば英国のコードなどで書かれている期待される役割というのを踏まえているのではないかと理解していまして、英国のコードを見ますと、先ほど御意見もありましたけど、まず株主は、取締役会議長、最高経営責任者、業務執行取締役という通常の接触経路で対話をする。ただ、その経路では懸念を解決できなかった場合、もしくは、そうした接触が適当でないという懸念を抱えている場合、恐らく、これはそういう人たちが対話そのものの対象になっている場合についてだと思いますけども、その場合には、当該株主は、筆頭独立社外取締役に接触できるべきである、そういう書き方になっています。

 私の理解では、筆頭独立社外取締役が常に対話の窓口となるというのではなくて、投資家として最終的なラストリゾートとして、こういう方を任命していただくと、通常のルートではなかなか対応できないときに、その方に接触できる。たしか、その方のコンタクト先なども開示されていたと思うんですけども、そういった位置づけがされているので、それはそれで意味があるのではないかと思っています。

 特に海外の投資家に聞きましても、この役割というのは大変重要だという方が多いので、そういう理解だと思いますが、ただ、その上で日本の現状を考えたときに、今の時点で必要なのかということがあります。

 先ほど来いろいろ意見が出ていますけども、まだまだ対話の発展途上の中で、確かに時期尚早かもしれないなと思っています。ただ、いずれこの話というのは必要になってくると思っていまして、その意味で、ここの部分については書き方の問題なのかと思っていますので、今申し上げましたようなことを踏まえた上で、適切な表記をしていただけたら、ありがたいなと思っています。

 私からは以上です。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして川北さん、どうぞお願いいたします。

【川北メンバー】
 川北です。時間がないので、あまり発言しないほうがいいのかなと思ったのですけれども、2点ばかりお願いします。

 1点目は、いろんな方の発言を聞いていますと、この意見書がコーポレートガバナンス・コードによること、コンプライ・オア・エクスプレインであるということが、どうも強く認識されていないのかなと感じます。そういう意味で、従わないといけないかのように捉えられているように思いますので、最初の説明にもありましたように、どこかでこれはコンプライ・オア・エクスプレインだと書いていただきたい。これは原則なので、むしろエクスプレインをして自分たちの企業のユニークさというか、他社にない特徴を強調するような、そういうコードの受け止め方もあるということを書いていただければありがたいと思います。

 ただ、その中で気になるのは、プライム市場に関して3分の1以上の独立社外取締役の選任とあるところが「べきである」と書いてあることです。ここが上場規則でどういうふうに取り扱われるのか、多少気になります。あくまでも、これはコンプライ・オア・エクスプレインであるということを念頭に置きながら、東証さんのほうでも上場規則に配慮していただければなと思います。

 それから、もう一点、筆頭独立社外取締役の機能ですけれども、私の経験から言うと、取締役会などで何を議案にするのか、ここが非常に曖昧に進められていくことがままあるので、これに関して、筆頭独立社外取締役の機能というのは、何を議案にするのかの議論の取りまとめであり、それが日本的な状況の中では一番重要なのかなと思います。

 以上です。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして大場さん、どうぞお願いいたします。

【大場メンバー】
 時間もありませんので、私からは2点。全体としては、この原案について賛同いたしますけれども、2点だけコメントさせてください。

 1点目は、1ページ目の企業を巡る変化が加速する中で色々なことを急いで進めないといけない、こういう表現になっているわけですが、コードの浸透は進んでいるけれども、依然として価値創造力に乏しい会社が非常に多い、こういう現実があるということだと思います。

 それに関しては、御専門の高山メンバーからお話があったのかも分かりませんが、取締役会の評価であるとか、取締役の評価について、開示が非常に曖昧な現実があります。具体的にもう少しどのようなことで、この価値創造力につなげられていないのかということについて、開示をする必要があるのではないかと思います。

 2点目は、2ページ目でありまして、東証の問題ではありますが、真ん中ぐらいに、「プライム市場については『我が国を代表する企業の市場』として高い水準のガバナンス」と書いてあります。我が国を代表する企業というのは、何をもってそう言うのかが非常に曖昧だと思います。

 それから、高い水準のガバナンスというのが、これを読むと数に全部集約されてしまう懸念がございます。これは、池尾先生からも御指摘があったように、やっぱり質の問題をどのように表現するかということは、少し踏み込むべきではないかと思います。それはスキルだけではありません。やはり内外の取締役としての当事者意識だとか、価値創造力につなげられていない現実といった問題意識が非常に重要ではないかと思います。

 以上です。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして円谷さん、どうぞお願いいたします。

【円谷メンバー】
 どうもありがとうございます。すいません、最後ですので、かいつまんで2点ほど。

 まず、意見書の全体案には、私は賛成しております。それで、2点。1つは、社外取締役の人数についてなんですけれども、改めて日本の実証研究、過去に行われたことをサーベイしてみたんですけど、やはり日本企業の場合は、企業側に裁量を持たせたほうが企業価値が上がるという実証研究がかなり多く出ておりますので、このような企業側に選択の余地を残すというのには、私は賛成しております。

 もう一つ、スキルマトリックスにつきましては、これも諸外国は、皆さん御存じのように、スキルマトリックス以外でも取締役能力を添付している例は多々ありますので、あくまでスキルマトリックスは一例であるという位置づけを今後明確にしていったほうがよいと。事務的に作るものではないと思っております。

 私の研究室の調査によりますと、スキルマトリックス、今、開示されている会社さんが約130強、日本はございますが、そのうちの3分の1の会社さんが社外取締役のスキルしか開示しておりません。ですので、形上作って社外のみということであれば、私は作らなくてよくて、社内取締役の方も含めて、各社各様の形で開示されるようにしてはいかがかと考えております。

 以上です。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 御発言を御希望いただいた方は、これで全て御発言いただいたことになります。武井さんは、今日はよろしいのでしょうか。

【武井メンバー】 
 では、すいません、一言だけ。

 川北先生もおっしゃっておりますコンプライ・オア・エクスプレインはとても大事で、ガバナンス・コードにおいては確かにコンプライ・オア・エクスプレインであることは大切にすべきです。しかし他方で、機関投資家さん側のほうがガバナンス・コードの原則に企業側がコンプライしていない限り、議決権行使基準上、バツをつけるという形式的対応が最近散見されます。それではコンプライ・オア・エクスプレインの実質が損なわれます。これはスチュワードシップ・コード側の問題にもなるわけですけれども、この場は両コードのフォローアップ会議ですので、そういった形式的対応がないことという環境の整備も含めて、ガバナンス・コードのコンプライ・オア・エクスプレインであることは大事にすべきだと思います。

 以上です。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 ちょっとこちら側の通信環境といいますか、接続環境に不備があって御迷惑をおかけして申し訳ありませんでしたけれども、意見書(案)についてのコメントや御意見を承るのは、この辺りとさせていただければと存じます。

 それで、この意見書の案については、基本的な方向性については、強弱の差はあれ、多様な皆様方の御意見をある程度集約できていると思うのですけれども、ちょっと個々の強弱、表現ぶり、それから一部中身に関わるようなことについても幾つか重要な御指摘をいただきましたので、本日いただきました御指摘を踏まえて、今後、メール等によって調整を進めさせていただくということにしてはどうかと思います。

 そういうことを進めさせていただいた上で、最終的な取りまとめにつきましては、大変恐縮でございますけれども、私に御一任をいただいて取りまとめと公表ということに持っていきたいと考えておりますが、皆様方、もう一度集まるということもあるかもしれませんけれども、今申し上げたようなことで取りまとめをさせていただければというふうに感じます。そのようなことにさせていただいてもよろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【神田座長】 
 ありがとうございます。それでは、恐縮ですけれども、そのようにさせていただきます。

 また、表現ぶりの平仄とか、そういった最終的な点検といいますか、精査といいますか、チェックという作業もございますけれども、これも念のため私に御一任をいただければありがたく存じます。そうさせていただいてもよろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、以上で意見書(案)についての部分を終わりとさせていただいて、続きまして今日の後半部分の株主総会に関する論点に移りたいと思います。

 事務局から、株主総会に関する論点についての説明をしていただきます。

 島崎さん、お願いいたします。

【島崎企業開示課長】  資料2、それから資料3に即して御説明させていただきます。

 資料2でございますが、1ページ目、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図る上で、上場会社は、株主の方々との間で年間を通じて建設的な対話を行うことが重要としておりまして、株主総会は、特に重要な対話の場であり、開催日にとどまらず、意思決定のためのプロセス全体を建設的かつ実質的なものとすることが求められています。

 コードは、現状、第1章のところで株主の権利等について記載がございまして、原則1-1で言いますと「株主の権利の実質的な確保へ向けた適切な対応」と下のほうにございますが、それにそれぞれの補充原則があります。

 それから、原則1-2、「株主総会における権利行使に係る適切な環境整備」ということで、情報のことですとか、招集通知、株主総会の日程、議決権の電子行使等について、1-2の補充原則がございます。

 2ページ目でございますが、コロナ禍を経て、従来からある課題を含めて様々な課題が認識されておりまして、株主権の行使に向けた適切な環境の整備、それから、関連した適切な判断に資する情報提供の充実のため、これらの課題についての上場会社の取組みを加速することが期待されておりまして、下の段の右側、認識されている課題といたしましては、招集通知の発送時期の問題等から検討時間の確保の観点からの招集通知の早期開示ですとか、不測の事態も想定しての株主総会関連の日程ですとか、あとは感染症の拡大防止等、その他もございますが、そうした観点からの議決権電子行使プラットフォームやバーチャル総会の整備・活用、それから、後ほど出てきますが、非英語圏の動向等にも照らして、招集通知等の英文開示という論点というか、認識されている課題があろうかと存じます。

 3ページ目以降は、各課題について順に現状等についての資料をまとめておりますので、お話しさせていただければと思います。

 まず、議決権電子行使プラットフォームでございます。上場企業全体として見ると、約3割の利用で、国内機関投資家では約13%。他方、欧米では議決権の電子行使率が極めて高い状況となっています。下に資料がございます。

 4ページ目でございます。このプラットフォームの活用に関し、郵送にかかる時間のことですとか、あるいは指図フローのことですとか、下のほうには利点と課題のほうを載せさせていただいていまして、下のほうにはコロナ後の指摘というのも載せさせていただいています。それこそ招集通知の発送から到着までの時間のことですとか、前日まで指図権の行使が可能ですとか、行使結果を早期に把握可能といった点が挙げられます。

 その他、コロナ後の指摘としては、感染症拡大と人的ミスの防止について御指摘がございますし、課題としては指図フローの話ですとか、あるいは保有比率に応じた参加メリットのことなどが指摘されています。

 次に、5ページ目、バーチャル株主総会の話でございます。こちら、株主総会の開催方法としてインターネット等の手段を用いて遠隔地から参加・出席する方法が登場しております。下のほうに、少しこれまでの各方面での御知見、ちょっと集めさせていただきまして、リアル株主総会に加え、ハイブリッド型、バーチャルオンリー型という形での幾つかの種類のこうしたバーチャル総会、あるいは、それと関連する総会の形について、まずはまとめた表を提示させていただき、下のほうで動向を提示させていただいています。

 6ページ目でございます。こちらも同様にメリット、留意点等、御指摘があるかと思います。株主総会への参加・出席の機会の確保と感染症の拡大防止との両立といった利点、移動コストの話ですとか、議決権行使の活性化ですとか、そういったことがございます。

 それから、留意点といたしましては、双方向性・即時性の確保ですとか、あるいは質疑などのやり取りに係る透明性・公正性の確保などについて御指摘があるところと承知しています。

 続いて、7ページ目でございます。次に招集通知の早期発送・早期開示でございまして、株主総会開催日から3週間以上前に招集通知等を発送する会社の比率は、2015年より増加傾向でしたが、2020年はコロナ禍の影響で減少しています。一部の上場会社では、招集通知の発送後にTDnetへの掲載がなされているなど、差が大きい状況になっていて、下のページでは、それこそ招集通知発送後に公表されていると思われるような例についても、数字なども含め載せさせていただいています。

 8ページ目でございます。こちらは、投資家の方々の御期待ですとか、望ましい到着日ですとか、そういったもので期待の大きさをお示ししております。それから、不測の事態の下では早期発送は困難となりやすい一方で、通知等の発送の10日~12営業日前には、その内容を開示可能ではないか、というところでございます。一番下に図表も載せておりますが、招集通知等の発送、2週間以上、開催日より前で、印刷、封入の日程というのも載せさせていただいています。

 (4)でございますが、9ページ目、株主総会関連の日程でございます。こちらのほうは、株主との建設的な対話の充実や、そのための正確な情報提供等の観点から、両基準日、議決権行使・配当基準日を決算日より後倒しする方法、これ、Aという形で事例を載せさせていただいています。Bのほうが株主総会の決算日を前倒しする方法というようなもの、株主総会の開催時期や配当基準日の変更を回避するために決算日を前倒しする方法が指摘されているところです。

 その他、下のほうでは株主総会関連の日程に関する御指摘、少なくとも30日前ですとか、あとは有価証券報告書の株主総会前提出ですとか、あるいはコロナを踏まえての連絡協議会など、基準日変更を検討する企業があれば後押しすることについて述べているものと思います。

 10ページ目でございます。こちらのほうは、基準日関係の後倒し、または決算日の前倒しによっての株主総会開催日を決算日から3か月以上後ろとした場合のメリット・デメリットなどについて載せさせていただいています。
 議決権行使関連業務の平準化ですとか、質の高い議決権行使の確保につながる情報提供の充実などの御意見もある反面、プラスの点、不測の事態への対応ですとか、あるいは訂正リスクの話ですとか、留意点としての関連するスケジュールの見直しですとか、説明負担、役員の交代時期などの御指摘もあろうかと思っています。

 11ページ目以降、(5)英文開示でございます。補充原則では英文開示について記載されておりますが、東証一部上場会社では、開示書類の一部を英文開示している例が半数以上います。他方で、有報の英文開示を行う会社は少数にとどまっているということかと思います。その点、下のほうに各開示書類の英訳の割合というものを載せさせていただいていております。

 それから、海外の投資家などには、こうした英文開示の取組みを求める指摘もございまして、それから、非英語圏における英文開示の取組みは、この下のほうでございますが、台湾、ドイツ、韓国の事例を載せさせていただいております。

 それから、資料の部数の関係上、資料3のほうで少し補足させていただきますと、20ページ目のほうで1つ、反対比率の高かった議案への対応というのもございまして、こちらのほうについては、もともとコードのほうにも記載があるところですが、株主総会において会社提案議案に20%以上の反対行使があった上場会社数は増加傾向にございます。

 21ページ目ですと、こうした反対比率が高かった議案について企業の取組みと投資家が期待する取組みとの間にはギャップがあるとの指摘もあり、英国の例ですと、改訂前ですと「相当数」という書きぶりをしていたのを2018年改訂で、対応すべき反対の基準として「20%以上」ということで閾値を明確化したりしている例もございます。

 それから、スチュワードシップ・コードでも機関投資家による議決権行使に係る賛否の理由の開示に関して、アカウンタビリティを強化する形の改訂も行われておりますというのが、少し補足の資料も使いまして論点について御説明させていただいた部分です。

資料2の一番最後のペーパー、本会合で御議論いただきたい事項でございますが、上場会社は、先ほども申し上げましたとおり、株主がその権利を行使することができる適切な環境の整備と、情報提供の充実に取り組むことが求められます。

 コロナ禍を踏まえて、更なるプロセス全体の充実を図る観点から、以下の視点からの検討を行うべきとの指摘がありまして、情報技術の進展を踏まえた株主総会・議決権行使過程のデジタル化、情報開示のあり方、それから、質の高い議決権行使に資する株主総会に関する日程のあり方が挙げられています。

 以上の視点を踏まえまして、議決権電子行使プラットフォームの活用ですとか、バーチャル株主総会の活用、招集通知の早期発送・早期開示、株主総会日程見直しの必要性、英文開示等、その他、コーポレートガバナンス・コードの原則1-1、1-2に関連して見直すべき論点はあるかということで、本日、御提示させていただきまして、皆様方に御議論いただければと考えております。

 事務局からの説明は以上でございます。

【神田座長】
 ありがとうございました。

 御欠席のワリングメンバーから意見書を頂いておりますので、事務局から簡単に概要の御説明をお願いします。

【島崎企業開示課長】 
 次に、ワリングメンバーからいただきました株主総会の在り方についての御意見を紹介させいただきます。

 まず、コロナ禍の下でバーチャル株主総会がニューノーマルとなる動きがあるとした上で、現下におけるハイブリッド型及びバーチャルオンリー型株主総会の必要性を認識しつつ、最低限の株主の権利が保障され、会社の説明責任が適切に果たされるよう、株主総会の運営に当たり双方向性、透明性等を確保すべきであるとの御意見をいただいております。

 その上で、株主総会に関する日程との関係では、集中緩和等の観点から、3月決算会社に対して基準日を変更して、定時株主総会の開催時期を後ろ倒しするよう求めるべきとの御意見をいただいています。

 それから、有価証券報告書について、含まれている情報が非常に貴重であることから、株主総会の開催前の公表、かつ英文開示すべきとの御意見をいただいております。

 そして、建設的な対話の精神に基づいて、株主の懸念へどのように対処するかを明確化し、説明責任を果たすことが奨励されるとした上で、会社提案議案について20%以上の反対があった場合に、株主への説明や株主からの意見を受けて、どのような対応策を取ったかの公表を行うよう企業に求めるべきとの御提案をいただいております。

 以上でございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、これから皆様方から御意見等をお伺いする討議の時間とさせていただきたいと思います。今、事務局の説明にもありましたけれども、事務局から提示されました論点というのは、資料2で言いますと最後のページ、13ページに掲げておりまして、これらの事項を中心に御議論をいただければと存じます。

 それで、今日、ちょっと接続環境の不備等がございまして、大変御迷惑をおかけしているのですけども、ただでさえお忙しい皆様方の時間をたくさん取っておりますので、このまま皆様方から御質問や御意見を出していただいて、12時になりましたら、一応、終了ということにさせていただいて、その後、また次回に御発言をいただくということにさせていただきたいと思います。

 それでは、まず小林会長、上田さんの順でお願いしたいと思います。小林会長、どうぞ。

【小林メンバー】 
 まず、議決権電子行使プラットフォームの件ですが、3ページに機関投資家の活用率が12.8%にとどまっているというデータがありますが、明らかに機関投資家へのメリットもありますし、発行会社側のメリットも当然あるので、リアルタイムに議決権行使状況を把握できる状況を活用するため、これは引き続き積極的に進めてよいのではないかと思います。

 それと、バーチャル株主総会の活用については、参加型と出席型の2種類があるかと思います。ある信託銀行の調査では、今年は参加型が4.8%、出席型が0.4%だったということですが、来年は参加型がかなり増えると思いますし、やはり株主さんのアクセスのしやすさ、出席方法の選択肢の拡大等々の観点も含めて、これも積極的に進めるべきではないかなと思います。

 また、細かいことですけど、映像なしの音声通信だけでも可能であるとか、あるいはオンラインの株主の人数を合理的な範囲で制限できる等々の点を明確にすべきだと思います。加えて、リアル出席株主のプライバシーや肖像権の保護といった観点から、やはり会社がオンライン株主に対して録音、録画、転載の禁止ができる等々のルールも考えていただきたいなと思います。

 それと、会社から株主へのアクセスのデジタル化という観点も重要なので、2020年の総会で単体計算書類に関してウェブ開示によるみなし提供を認めてもらったわけですが、この時限的措置を恒久化すべきではないかなと思います。

 最後に、英文開示の件ですが、三菱ケミカルホールディングスは有価証券報告書のみ未だ英文開示していないのですが、グローバルな投資を可能にする市場を目指す以上、発行会社における負担の大きさも考慮しつつ、まず決算短信とか、参考書類については英文開示を積極的に進めるべきではないかと思います。

以上です。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、次に上田さん、どうぞ。

【上田メンバー】 
 ありがとうございます。では、3点だけ簡潔にコメントさせてください。

 まず第1点、議決権電子行使プラットフォームについてです。議決権行使プラットフォームは、今、小林会長からもございましたけれども、日本市場での定着率の低さというのは際立っているかと思います。特にプライム市場、国際的な市場ということを考えますと、これもある程度、市場インフラとして組み込まれてもよろしいのかと思います。

 とはいえ、議決権行使プラットフォームは、海外では機関投資家がコストを負担しているのですが、日本では発行会社負担になっているというところで、いろいろと定着が進まない事情もあるかと思います。その辺りを含めて工夫等を重ねて、よりインフラとして定着するような取組みを進めていただきたいと思います。

 第2点、英文開示についてです。英文開示、いただいた資料を拝見していますと、適時開示、招集通知等は、既に40%程度の会社で公表が進んでいるということでございまして、実務的には必要性を感じている会社では取り組まれているのかというふうに認識をいたしました。

 東京市場、特に新プライム市場が国際的競争力を持つ市場という位置づけからは、英文開示は必要不可欠な要素であると思います。市場の信頼性にも関わるところですので、この開示の問題というのはソフトローであるコードで対応するのが適切なのか、あるいはもう一段、ハードローの検討を含めて、改めて考える必要があるのではないかと思います。

 最後に、その他のポイント。参考資料のほうで御紹介はございましたけれども、イギリスにおいては20%反対票がある場合には、その理由等について調べたり、対話を促進するというような説明があったかと思います。イギリスでも20%基準を入れる前には、それほど活用されていなかったということで、20%という数字を入れたと、イギリスの当局に教えていただきました。

 この20%はイギリスでも高い。当然、日本でも高い比率になります。この数値基準の是非はあるとは思うんですけれども、反対比率が一般的に見て相当程度高いと認められる場合には、株主や投資家とのエンゲージメント、対話がうまくいっていないということの証左であろうかと思います。

 したがって、スチュワードシップ・コードで対話の高度化が図られていて、この2つのコードが車の両輪として機能するというような、日本のガバナンス改革の柱を考えますと、こういう反対票が多い場合の取組みについてもコーポレートガバナンス・コードの中で考える、こういう段階に来ているかと思いました。

 以上でございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして松岡さん、よろしくお願いいたします。

【松岡メンバー】 
 本日は、多くの企業の実態を伝える責務からそれらを反映して、お伝えするということが重要だと思いますので、そういったことを踏まえて論点を決算日の前倒し、9ページのB案の話、そして、A案、B案ともコーポレートガバナンス・コードで記載するかどうかというところの論点についてお話をさせていただきたいと思います。

 このB案に関してなんですけれども、決算日の前倒しというのが実質的に事業年度の変更を意味するところになりまして、人事とか決算開示のスケジュール、また納税の日程等含めて、会社のいろんな業務プロセスとの関連性が高いお話でございますので、企業実務の大幅な変更を要することになります。なので、実質的に負担が大変大きいものになります。

 なので、そこを踏まえた検討をしていただく必要があるということが1点でございます。例えば決算日を数か月単位で大幅に前倒しするということをしますと、有報提出から総会までの乖離というのが大きくなりまして、そうしますと返って最新の情報を記載していない有報が出るということになりますので、これが果たして株主さんの利益に資するのかどうかという問題もあると思います。

 なので、B案もそうですし、A案ももちろん理論的には考えられなくはないのですけれども、実態的な企業の実務への影響は大きいので、実態と実務を踏まえた検討というのが必要になってきますので、今回のコーポレートガバナンス・コードへの記載というのはなじまないのではないかと考えております。

 以上でございます。

【神田座長】 
 松岡さん、どうもありがとうございました。

 では、続きまして岡田さん、どうぞお願いいたします。

【岡田メンバー】 
 今回の資料では株主総会に関する課題をよくまとめていただいて、これだけ課題がたくさんあるということを再認識しました。

 ただ、現在のデジタル環境、IT環境に鑑みますと、これを利用して解決できるもの、あるいは改善できるものは多々あると感じます。例えば、先ほどの議決権行使のプラットフォーム化、あるいはバーチャル総会等、これらは、ぜひ早く進めていただきたいし、スピード感を持って進めていただきたいと思います。

 次に、招集通知の早期発送・早期開示という点について企業で開示実務を担当していた者として感じるところがございます。

 日本では、開示が海外と比べて大変遅いと思いますが、必ずしも事務処理能力が劣っているわけではありません。これは、むしろ開示制度の問題じゃないかと感じております。

 例えば事業報告書の作成と有価証券報告書の作成の二重作業ということがございます。少なくともプライム上場会社には、会社法と金商法の二本立てではなく、同一化が望ましいのではないか。そうしないと早期開示によって企業の負担が増えるだけのような気がします。

 これは、KAMとか非財務情報の開示で常に議論になるところでありますが、金商法で求められているので、事業報告書で開示せずに有報でしか開示しないという会社が多々ございますが、この問題は招集通知を早期に発送しても解決しません。

 また、招集通知や有報をフルスペックで早期に開示することを企業に求めるのが適当かどうか疑問があります。私は、そうは思いません。投資家とか株主の方々が求めているのは、むしろ決算数値のポイント、非財務情報やKAMの基になる有形・無形資産のリスク情報、特に減損リスクであると思っておりまして、これらはフルスペックの制度開示よりも早期に投資家に開示することが望ましいと思います。

 また、投資家が早期の開示を希望する情報は会社ごとに異なりますので、会社は対話を通じて要望を把握して、これらを適宜開示していけばいいのではないかと思います。

 特にプライム市場に上場される会社は、会社法で求められていないから、株主総会後の有報で開示するという姿勢は許されないと思います。

 もう一点、有価証券報告書の総会前開示について、もちろん早期開示は望ましいのですが、有報がアメリカで言う10-Kのようなものとすれば、アメリカでも10-Kは、決算日から60日ぐらいの猶予は認められているわけです。それは、10-Kは会社の情報をしっかりと正確に開示しているものだからだと思います。有報も同様で、これはこれで正確な開示が求められるわけですから、早くすればよいという議論には私は違和感があります。

 以上でございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それで、いま上田さんが主催者になっていて恐縮なのですけれども、私のラップトップがちょっと接続不良になっておりまして、Webexは自動的に次の人に行くもんですから、ちょっと表示だけそうなっておりますけども、事務局のほうは今、これで大丈夫ですので、このまま先へ進ませていただきます。ありがとうございます。

 次は、小口さん、どうぞお願いいたします。

【小口メンバー】
 ありがとうございます。最終ページにお示しいただいた課題について、簡潔に触れたいのですが、時間の関係がありますので、まず5つのポイントのうち議決権電子行使プラットフォーム、それからバーチャル株主総会、英文開示について、もちろん課題があることは認識しておりますが、この3点については、ぜひ推進していただきたいと思っております。

 その上で、残りの2つについてお話ししたいのですけれども、招集通知の早期発送・早期開示、これは望ましいということは言うまでもないのですが、今お話があったことも踏まえ、決算や監査等の実効性を犠牲にしていいということではないので、参考資料ページ16にスケジュール表がございましたが、それを見ても今の決算日から開催日が3か月以内のままでは、幾ら縮めようとしても発送日から開催日のさらなる短縮には物理的な限界があると理解しています。

 したがって、この問題を解決するためには、結局のところ、最後に残った株主総会日程の見直しが重要ではないかなと思っています。株主総会関連の日程に関する補充原則1-2の③ですけれども、これは、作った当初から原案に附帯事項といいますか、背景説明がついていまして、先ほど述べた実効性のある会計監査確保の観点から、一定の期間を確保する必要があるという主張に加えまして、2つの条件、要請がついていました。1つは、基準日から総会開催日までの期間は、ガバナンスの実効性を担保する観点からできるだけ短いことが望ましい、いわゆるエンプティ・ボーティングの問題。そして招集通知から株主総会開催日までの時間は熟慮のためできるだけ長いことが望ましいということでした。

 この3つの要請を同時に満たすという観点から、3月決算の会社の場合は株主総会開催日を7月にすることも検討されることが考えられると記されていたわけですが、コードが導入されてからの5年を振り返ってみると、上場企業の大半が決算日を議決権行使基準日・配当基準日としたままで、実態は変わっていないという現実があるわけです。

 課題というのはいろいろあると思うのですけども、先ほど説明資料の10ページにあったように3月決算会社が開催日を7月にしてしまうと、熱中症リスクとか夏季休暇に影響が生じるということがあるのであれば、先ほど大きな負担になるという御意見があったわけですが、理論的には9ページにあるようなB案、決算期の前倒しが代替案になるわけですし、また、A案とB案を採ると有価証券報告書の株主総会前提出を実務的に促進することになるので、負荷の問題というのは確かにあるのですが、その問題は考えるとしても、株主総会の実効的を高めるという観点に立てば、9ページをスタンダードとすべきかと思うのです。

 それで、どうするかということですけれども、前半部分でも何度か言及があった、あくまでもコードというのはコンプライ・オア・エクスプレインなので、この特性を利用して、例えばですけれども、「議決権行使基準日と配当基準日は、株主との建設的な対話の充実や、そのための正確な情報提供等の観点を考慮し、決算日から適切な期間を置いて設定する」といったことを思い切って新たな原則としてはどうかと思っています。

 コンプライ・オア・エクスプレインなので、先ほど御指摘のあったように、各社が難しいと思うのであれば、その理由を説明していただいて、そのことを通じて、この件に関する議論が深まって、具体的な取組みが進めば、結果として、長年の課題であって、なかなか解決していない株主総会開催日の集中問題が、現在の物理的限界を超えた意味ある分散に進むことも期待できるのではないかと考えています。

 私からは以上です。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、チャットの順番で神作メンバー、川北メンバー、三瓶メンバーの順かと思いますので、神作先生、どうぞ。

【神作メンバー】 
 どうもありがとうございます。株主総会における議決権の行使と、それに向けて経営陣との間で行われる建設的な対話は、スチュワードシップ活動における中核的な要素です。13ページに記載された5つの論点はすべて、そのような観点から、いずれも推進すべき重要な事項であると思います。その上で、株主総会の日程とバーチャル総会についてコメントさせていただきます。

 スライドですと9ページでございますけれども、ただいま小口メンバーからも御指摘があった点ですが、株主総会関連の日程を考えるに当たって3点、特に留意すべき点があると思います。

 A案もB案もいずれも有価証券報告書が株主総会開催の前に提出されることになりますが、この点は、日本の企業が遅れている点であると思われます。株主総会の前に有価証券報告書が開示されることが極めて望ましいと思われますし、実際には日本では、かなり少数の会社さんが、それを実行しているにすぎません。

 まず有価証券報告書を株主総会の前に開示するということを目指す方向で議論を進めていくべきであると存じます。特に2019年の改正会社法によって、株主総会関連資料の電子提供制度が設けられましたけれども、EDINET特例という特例が同時に導入されています。これは、有価証券報告書に株主総会に関する必要な情報が記載されている場合には、有報の提出によって電子提供措置を要しないこととされています。施行はまだでございますけれども、EDINET特例をぜひ利用していただくことが望ましいと思います。

 それとともに、もう一つの留意点は、決算日から株主総会の開催日まであまり長く空けることは望ましくないという点です。したがって、若干矛盾した要請にはなりますけれども、決算日から株主総会が開催されて決算書類が確定するまでの期間はできる限り短いことが望ましいと思います。

 それから、3点目ですけれども、議決権行使の基準日と株主総会の開催日の間は、これまたできるだけ短いことが望ましいと考えられます。したがって、議決権行使の基準日の設定のあり方については、ぜひ御議論いただければと思います。

 次に、バーチャル総会についてでございますけれども、バーチャル総会も推進する方向で議論を進めていただくという方向には賛成でございますけれども、先ほど小林メンバーからも御指摘があったと思いますが、決して株主の権利や利益をおろそかにしないことが重要だと思います。場合によっては株主のプライバシーのような問題等々、新たな問題が出てくる場面もございますけれども、議決権の行使の実効性をより高めるという観点から、株主権を確保して、株主総会の正常な運営を確保した上で、バーチャル総会について進めていく必要があるということを一言申し上げさせていただきます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして川北先生、どうぞ。

【川北メンバー】 
 川北です。2点コメントさせていただきます。

 最初は、株主総会日程の分散化ですけれど、これは非常に重要な問題で、それが分散すると招集通知等の到着の分散化も図れるわけですし、議決権行使の判断にも時間を確保できることになります。そういう意味で、株主総会の日程に関する事務局の資料は、分散化の案として参考になると思います。

 付け加えますと、前に申し上げたことですけれども、配当を取締役会の決議事項として、株主総会の決議事項から外すことも重要な選択肢です。そうすることで、株主総会の開催日に関する自由度が増してくると思います。

 取締役の役割としては、資本コストを考えて内部留保をどうするのか、次の新規投資をどうするのか、それを考えていくことは当然なわけです。その役割の発揮に責任を持つこと、自分たちで配当と、その裏側の内部留保を決めて、そういうものに責任を持つことにより、取締役の意識が高まる上に、現状以上の機能発揮が期待できると思います。

 現状の配当性向、今、30%ぐらいに集中しているわけですけれども、結局、横にらみの配当をやっているわけですね。これは取締役として期待されている行動ではないと思います。

 この主張は、必ずしも増配をしろと言っているわけではなくて、アメリカのアマゾンやアルファベットなんかは無配ですけれども、そういうことも選択肢としてある。成長を図っていく上で内部留保を高めるという選択肢です。

 企業による配当の決定に関して、今でもプロの投資家はエンゲージメントをやっているとは思いますが、配当に関する取締役の意思決定が正しくないと考えるのであれば、取締役の選任案件に反対する、もしくは株式を売却すればいい。以上は、ガバナンス・コードの問題ではありませんが、投資家として考えていいと思います。

 それから、もう一点は英文開示です。海外投資家を含めたプロの投資家が活躍する市場としてのプライム市場を考えると、これは当然の開示だろうと思います。コストの問題はあると思いますが、プライム市場に上場することのメリットが片方にあるわけで、それを考えると開示のコストというのは当然払うべきだと、私は思います。

 この点に関しましては、上田委員の指摘があったように、ガバナンス・コードの問題なのか、もう少し上位のルールの問題、つまり規制の問題なのかは考えるべきだろうと思います。

 以上です。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、次に三瓶さん、どうぞ。

【三瓶メンバー】 
 三瓶です。手短に3点申し上げます。

 1つ目は、こちらに示されている検討の事項ですけれども、この課題は基本的に克服すべきと思いますが、一つ一つばらばらではなくて、もう少しセットで考える部分があると思います。

 例えば株主総会までに十分なリードタイムを確保するということが今、議論されていると思います。そのために議決権電子行使プラットフォームの活用がありますけれども、例えば議決権電子行使プラットフォームの活用と基準日の変更というのは、プライム市場に上場する会社について選択肢とするというか、両方、必ず備えなきゃいけないということでもないかもしれません。

 それと英文開示に絡んで、例えば議決権電子行使プラットフォームを使うときには英文開示とセットじゃないと大きな意味をなさないと思います。ですから、選択肢であるとか、セットで考えるとか、そういうことが一つの課題になっていると思います。

 2点目は、補充原則の1-1の①ということに関連しますけども、反対比率の高い議案への対応です。ここで閾値の問題はありますけども、そもそも本来、民主主義の多数決というのは、多数で決定が下されれば、それでおしまいではなくて、反対がそれなりにあった場合には、反対者の懸念を理解して、どう考慮しているのかという説明をすべきだと思います。

 ですから、決定は多数決で下しても、少数派の意見を無視していないということで初めて多数決という制度が成り立つということを改めて確認すべきだと思います。その上で、実行されないと意味がないので、閾値というのが視野に入ってくるのだと思います。そういったことを、この改訂の中では改めて確認しておく必要があると思います。

 そして、3点目ですけれども、先ほどバーチャル総会の話が出ました。バーチャル総会について、日本では今年、ハイブリッド型しか開催できなかったわけですけれども、今、バーチャルオンリー型についての議論が新たにされています。ただ、海外では、むしろ規制でバーチャルオンリー型しかできなかったようなところが多いです。

 そこで、どんな反省がされているかというと、双方向性とか即時性、透明性、公正性、そういった基本的な株主の権利を守るような条件が満たされていなかったという反省があります。ですから、むしろ海外ではバーチャルオンリー型がベストとは言えない、ハイブリッド型という選択肢のほうがよいのではないかという議論がされています。そういう議論にも十分留意して、今後、検討していくべきかと思います。

 以上です。

【神田座長】 
 三瓶さん、どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして連合の春田さん、どうぞお願いします。

【春田メンバー】 
 すみません、時間のないところ。簡潔に発言させていただきます。

 デジタル化の流れの中で、今、検討されている内容を進めていくということについては異論はないところであります。コロナ禍を踏まえ不測事態への対応という観点から、様々な面で工夫をしていかないといけないと思っていますので、その点も含めて検討を進めていただければと思います。

 そのほかに、我々働く者の立場から言いますと、株主総会もそうですし、招集通知の早期発送・早期開示をしていく中で、企業への負担は働く者への負担につながるといったことも実態を考慮しながら検討いただければと思います。
 その点で言いますと、デジタル化が進む中で、デジタルデバイドの問題が出てくるかと思うんです。デジタル化の中でついていける方とついていけない方、またはついていける企業とついていけない企業、こういったデジタルデバイドの問題が出てくる可能性もあるので、そういったところにも配慮しながら検討を進めていただければと思います。

 それから、もう一点、最後になりますけれども、バーチャル株主総会についてでございます。先ほど意見があったとおり、バーチャルオンリーな議論もあるのは承知しているところでございますけれども、やはり株主の中でも様々な方がいらっしゃいますので、先ほどのデジタルデバイドと関連する話でございますけれども、バーチャルオンリーの開催を考える前に、リアルとバーチャルのメリット・デメリットを整理し、透明性、公平性、株主の権利の確保ということが非常に重要だと思いますので、そういうところがきちんと担保できるのかどうか含めて、ご検討いただけたらと思います。よろしくお願いします。

 以上です。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 では、続きまして岩間さん、どうぞお願いいたします。

【岩間メンバー】
 岩間でございます。ありがとうございます。基本的にコーポレートガバナンス・コードとスチュワード・コードが両々相まって、いい方向にもっていくことが推進されることが大事であると私は思いまして、ここに掲げられている点は、やはり、そういう観点で当然、テークアップしていくべき課題なんだろうと思います。

 ただ、全部を一遍にやるということになると、技術的な問題がいろいろあるという御指摘は、そのとおりだと思いますので、できるものから、とにかくやっていくということだと思うんですが、その中で議決権行使電子プラットフォームについて言いますと、プライム市場の上場条件にしてしまったらどうか。ちょっと乱暴かもしれませんけども、そういったような形でブレークスルーをしていくということも必要なんじゃないかと思っております。

 全体的に、ここに出されている問題については、総合的に推進していくべきだとは思っております。

 私は以上でございます。ありがとうございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 では、続きまして円谷さん、どうぞお願いいたします。

【円谷メンバー】 
 ありがとうございます。手短に2点のみ発言させていただきたいと思います。

 最後のシートの矢羽根の4つ目のガバナンス・コードの原則1-1、1-2の修正すべき論点について、補充原則1-1の①で反対理由が多かった議案の原因分析というのがありますが、これは、現状では開示は求められておりませんので、やはり分析した以上、その内容をガバナンス報告書のほうで開示、または示すといった文言を加えていただければどうかなと思っております。分析のみ、検討のみではなくてということになります。

 もう一点は、補充原則1-2の①についてなんですけれども、株主が適切な判断を行うことに資すると考えることについて適時適確に提供ということで、ここに有価証券報告書全体は無理としても、有価証券報告書の株主が求めると思われる主要な項目を入れてしまってはいかがかと思います。

 例えばですけども、政策保有株式のところですとか、そうしたものは株主総会前に開示するということで、有報の主要項目といったような文言を加えてはいかがかと考えております。

 あとは、全体の表現の話なんですけれども、早期発送・早期開示というような用語が使われていますが、今後、電子開示に移行していくわけですので、早期開示・早期発送という言葉遣いに変えて、開示が前に来るように、その後、中黒で早期発送ということで、前後を入れ替えて表現されたらいかがかなと。小さいことですが、そう考えております。

 以上です。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 あと、チャットの順番で小幡さんと武井さんに御発言いただいて、今日は終わりとさせていただきたいと思います。

 それでは、小幡さん、どうぞお願いします。

【小幡メンバー】
 ありがとうございます。私、企業の中で株主総会担当責任者を務めていますので、その観点から4点、指摘させていただきます。

 まず1点目ですけど、議決権電子行使プラットフォームにつきまして、これは非常に有効なツールだと思っておりますので、広く各社でも採用することを推進してはと思っております。

 2点目ですけど、決算日の前倒し等につきましては、やはり企業の負担というのがすごく大きいものがあります。まして今、コロナでいろんなこともやらなきゃいけない中において、なかなかこういうことを検討する余裕が今はないということが実情ではないかと思っていますので、将来的にはこういう議論はあるのかもしれませんけど、今、具体的にこういう指摘が出ても、多分、企業が前向きに考えられる余裕があるところはあまりないんじゃないかなというのが実感です。

 3点目ですけど、招集通知の早期発送につきましても、今、実際、印刷物を校了するまでにも読み直しというものを何度も何度も株主総会担当者は残業も重ねながらやる、土日もなくやっていくという作業が続きます。

 という点で、現状のリソースから考えますと、これ以上の早期発送というものはかなり限界に近いんじゃないかなと。今、3週間前が多いと思うんですけども、限界になっているんじゃないかなというのが実感であります。

 また、最後ですけども、株主総会のバーチャル化の議論になりますが、今年、当社でもコロナの関係もありまして、来場を控えてくれということで、いわゆる出席型じゃない参加型のバーチャル総会を開催しました。もっと大勢の方が参加型で出席されるのかなと思いましたら、思いのほか極端に、本当に僅かの方しか実際オンラインで出席される方はいらっしゃいませんでして、実際、株主の方でどの程度、必要に思っている方がいるのかなと、非常に疑問に思ったというのが正直な感想です。まして出席型総会ということを議論しますと、法規対応ですとか、本人確認の問題ですとか、かなりの法整備もやらなければいけないということで、企業としてみれば、できると考えるとすると、やっぱりバーチャル型の参加型というのが現実的な解なんではないかなと思っている会社が多数ではないかというふうに感じております。

 以上です。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、武井さん、どうぞお願いいたします。

【武井メンバー】
 武井です。よろしくお願いします。

 3点ありますが、まず総会日程の絡みで、川北先生のおっしゃったことに私も賛成です。総会の日程の自由度という点において今年のコロナというのは、まさに総会日程の自由度が問題になったわけですが、その過程で配当権限を取締役会にも授権している上場企業が僅か3割程度しかないということが分かり、これが今年のコロナの対応で難しい問題を引き起こした一因でもありました。総会日程の自由度の確保の観点からも、取締役会にも配当権限を授権するオプションを追加する対応は、大変重要だと思います。これが1点目です。

 2点目が、英文開示に関してです。もし有価証券報告書の英文開示を考えるときには、有価証券報告書というのは基本的に法的責任が厳しい、重たい文書ですので、英語はあくまで参考訳というか、日本語ほどの法的重みはないという前提での措置も一緒に手当てしておいたほうがよいのではないかと思います。これが2点目です。

 3点目がコーポレートガバナンス・コードの1-1の例の反対票のところです。私は、2割という数値基準を1-1で書くことには慎重意見です。理由は、例えば今、反対票が2割を超えている議案の多くに独立役員の独立性があるわけですが、こういったことに関しては、企業側がいくら、「この独立役員のかたは当社において独立性があるし、しかも、その方には役員となることの有益性がある」と説明をしても、パッシブの投資家の方であったり、議決権行使助言会社の方が、自らの議決権行使基準をあくまで形式的に適用して反対にしていると。それで3割ぐらいの反対となることが少なくありません。そういった機関投資家側の問題がある上での2割なので、必ずしも企業側が機関投資家の方とのエンゲージメント結果を踏まえていないからであるとか、何か企業側に問題があるような話ではない事象が少なくないと私は思います。ですので、「エンゲージメントに企業側がきちんと対応していないから2割の反対票で、2割の反対率に届いたら企業側が内容を見直すべきだ」などといった流れの圧力になるのは、私はいかがなものかと思っています。

 あと、この2割の部分に関してイギリスの話が良く紹介されますが、イギリスは役員報酬が高額であるという社会的格差の問題が背景にあるわけです。役員報酬に対して総会でいくら反対票が集まっても、経営者の役員報酬が下がらないという社会問題があって、この2割の反対票へのイギリスの措置は、企業側も対応して役員報酬を下げさせようという、そういう社会的背景があるわけです。しかしこの役員報酬に関する背景は日本と英国とは大きく異なっています。日本でこの段階で2割という閾値をコードに書くことで、あたかも企業が株主さん側の意見を聞いていないというニュアンスを生むのは適切ではなく、機関投資側の形式的な対応のほうにもきちんとメスを入れなきゃいけない話だと思いますので、この1-1の2割という明記は、私は今の段階では慎重であるべきだと思います。

 以上です。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、今日は事務局側での機器に不備が生じまして、御迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。今日は、この辺りということにさせていただいて、さらにこのテーマについて御意見、御質問等がおありの場合は、次回以降に御発言いただければと存じます。

 それでは、事務局から御連絡等、お願いいたします。

【島崎企業開示課長】 
 次回のフォローアップ会議の日程でございますが、座長とも御相談させていただきました上で、皆様の御都合も踏まえさせていただいた上で最終的に決定させていただきたいと思いますので、御案内をお待ちいただければと思います。

 それから、途中、事務局側の機器の不備で、一部、傍聴されている方々もユーチューブなどでの配信も切れたところもあったかのように聞いております。御迷惑をおかけしまして失礼いたしました。議事録の速やかな公表などの対応をしてまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 事務局からは以上でございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、繰り返しになりますが、本日不備が生じましたことを改めておわびいたします。

 以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。長時間にわたり熱心に御参加いただきまして、ありがとうございました。
 
―― 了 ――
 

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