スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議(第25回)議事録

1.日時:

令和3年3月9日(火)15時30分~18時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館9階 共用会議室3

【神田座長】  
 それでは、始めさせていただきます。ただいまからスチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議の第25回目の会合を開催させていただきます。

 皆様方には大変お忙しいところを本日も御参加いただきまして、誠にありがとうございます。

 皆様方、既に御存じかとは存じますが、この会議の座長を長くお務めいただきました池尾和人先生におかれましては、2月21日に御逝去されました。ここに生前の御功績をしのび、改めて御冥福をお祈り申し上げたいと存じます。

 それでは、本日は、まず、事務局説明として金融庁から「監査の信頼性の確保/内部統制・リスクマネジメントについて」と「その他の論点について」という2つについて、御説明をいただき、その後、皆様に討議をお願いいたします。

 なお本日は、ワリングメンバーから英語で御発言がございますため、前回同様、逐次通訳をさせていただきます。

 それでは、まず、最初に金融庁から2つのテーマ、「監査の信頼性の確保/内部統制・リスクマネジメントについて」及び「その他の論点について」の御説明をお願いいたします。島崎さん、よろしくお願いいたします。

【島崎企業開示課長】
 それでは、資料1及び資料2の御説明をさせていただきます。

 まず、資料1「監査の信頼性の確保/内部統制・リスクマネジメントについて」でございます。

 ページおめくりいただきまして、まず、総論ということで2ページ目でございます。

 こちら、監査の信頼性の確保/内部統制等に関するコーポレートガバナンス・コードの原則について、現在のコード上の規定について書かせていただいています。

 コーポレートガバナンス・コードは、上場会社の取締役会が監査の信頼性、内部統制やリスクマネジメント体制を適切に整備することが重要とした上で、主に第4章に設けているところでございます。ここでの監査は、業務及び会計に関する監査を指すところでございます。

 次ページ3ページ目には、基本原則4を示させていただいており、特にここでお話ししたいのは、こうした役割・責務は、監査役会設置会社、指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社など、いずれの機関設計を採用する場合にも、等しく適切に果たされるべきであるということについて記載されております。

 下の方に「序文より抜粋」という項もございます。コードは、もとよりいずれかの機関設計を慫慂するものではなく、いずれの機関設計を採用する会社にも当てはまる、主要な原則を示すものであります。

 そして、監査役会設置会社以外の上場会社は自らの機関設計に応じて、監査役会設置会社を想定した原則が置かれている部分について所要の読替えを行った上で適用されることが想定されるところでございます。

 4ページ目と5ページ目は、先ほど申し上げました監査役会、監査等委員会、監査委員会のそれぞれの構成や監査の方法等の内容について記させていただいております。機関設計、構成員の基本的地位、構成、対象などについてまとめさせていただいております。

 5ページ目に参りますと、機関設計について改めて記しており、概要のところでは、それぞれの機関設計に応じて、監督あるいは業務執行のところを青字にさせていただいております。

 6ページ目では、諸外国のコーポレートガバナンス・コードについて、大きな構造について記させていただいています。独立の章を立てて記述しています例や、日本もありますが、取締役会の役割等に関する章の中で事項を定めている例などがございます。個別の記載などについては、後ろの方のページでも出てまいります。

 7ページ目以降、監査役等監査と内部監査の連携でございます。

 8ページ目、フォローアップ会議の2019年4月に公表されました意見書(4)において、いわゆる「守りのガバナンス」は中長期的な企業価値の向上を実現する上で不可欠であり、監査の信頼性確保に向けた取組みが今後の検討とされております。

 下の方に抜粋がございまして、監査に対する信頼性の確保は極めて重要な構成要素とした上で、内部監査が一定の独立性をもって有効に機能するよう、独立社外取締役を含む取締役会・監査委員会や監査役会などに対しても、直接報告が行われる仕組みの確立を促すことが重要であるといったことが、この意見書でいただいておりまして、今回それと関連する御議論をいただくことになろうかと思っております。

 続きまして、9ページ目でございます。監査役等監査と内部監査の連携に関する取組みでございます。

 こちら、先ほど申し上げました問題意識に関しまして、監査役等監査と内部監査との連携がどのように行われているのかという実例調査を実施しております。監査役会設置会社、指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社につきまして、それぞれ個別監査の状況、あるいは一定期間の監査結果の総括について、いずれも該当するものがございまして、報告の頻度あるいはパターンについて、事例を数社でございますが、挙げているところでございます。

 10ページ目は、直接的な報告体制についてでございますが、内部監査部門において、社長に加えて取締役会・監査役(会)・監査委員会等のいずれかに対して、直接報告が行われる仕組みを有する企業は44.9%存在ということになっております。

 続きまして、11ページ目でございますが、内部監査部門の体制です。こちら、人員について、5人未満であるという企業が、企業グループベースと単体のいずれでも約4割存在しているということでございます。

 続きまして、12ページ目でございますが、内部監査部門の体制と関係しまして、諸外国のコードにおける内部監査のレポーティングラインを含む内部監査部門の規律について記させていただいています。諸外国のコードでは、内部監査機能が確立されていない場合にどのように内部統制システムの有効性を確保しているかについての説明や、ここで課題となっています内部監査部門のレポーティングラインを取締役会や監査委員会とすることを求めるような例となっております。例えば、レポーティングラインでいいますと、OECDですとか、あとはイギリスのガイダンス、そういったものについて記載があるところでございます。

 続きまして、13ページ目以降が内部統制・リスクマネジメントについてでございます。

 14ページ目は、内部統制・リスクマネジメントに関するこれまでの意見でございます。こちらは先ほど出てきましたが、コーポレートガバナンス・コードにおいて、取締役会が、内部統制やリスクマネジメント体制を適切に整備することを求めております。私どもがヒアリングした際も、リスク管理、リスクマネジメントに関しまして、企業価値の向上の観点から企業として引き受けるリスクを取締役会が適切に決定・評価する視点の重要性ということについての御意見も伺いました。そして、個別の意見については、下の方に出てきておりますが、内部統制やリスクマネジメントをガバナンス上の問題としてより意識して取り扱うことの重要性が伺われました。

 こうした話につきまして、先ほどの資料上、マイナスの面ばかり捉えるのではなくというのがございましたが、これまでの内部統制・リスクマネジメントに関する議論というのもまとめてみております。90年代までは、いわゆる伝統的なリスクマネジメントでございまして、リスクの主にマイナス面を捉えて、いかに回避・抑制するかに重点が置かれておりましたが、現代的なリスクマネジメントは、90年代以降議論されており、バーゼル委などでの議論が行われてきたところでございますが、プラス・マイナスの両面から総合的に捉え、リスクをいかに管理するかに重点が置かれております。

 米国、英国においても、その傾向、動向は見られていまして、やはり2004年のCOSOの「全社的リスクマネジメント―統合的フレームワーク」、イギリスでいいますとコーポレートガバナンスの議論の中で、ハンペル委員会の報告書やその下、「ターンバル・ガイダンス」などにおいて、攻めの視点といいますか、企業の繁栄に貢献すること、ないし取締役会におけるリスクベースのアプローチなどについて記載されているところです。COSOの方にも戦略と目標設定の中に、リスク選好、リスク許容度を位置づけている、ということになっておろうかと思います。

 続きまして、16ページ目でございますが、内部統制に関する国際的なフレームワークを策定する米国COSO、先ほどCOSOと申し上げましたが、トレッドウェイ委員会支援組織委員会についてでございます。

 内部統制、リスクマネジメントのガバナンスについて、内部統制は全社的リスクマネジメントに不可欠な一部分であり、そして全社的リスクマネジメントはガバナンスの一部分と位置づけされております。下にあります四角形の図のように、ガバナンスが最上位の概念として位置づけられている構造が図で記載され、書物においてもよく出てきているところかと思います。

 17ページ目は少し、グローバル企業の内部監査部門の動きということで、リスクマネジメントへの関与などについて、グローバル企業の特徴などについて記載させていただいています。事業全体に関する全てのリスクを内部監査の対象としているですとか、あるいはレポートラインについての特徴を有するということもありますし、下の方にございますが、内部監査部門の役割、人材育成、組織体制、有事の対応について、グローバル企業の特徴を載せさせていただいています。

 諸外国等のコードについて記載させていただいていますのが18ページ目でございます。先ほど少し申し上げました、マイナスということではなくて企業価値の向上の観点から企業として引き受けるリスクの性質や範囲を決定する、リスクアペタイトに通ずる旨の記載があるものの存在でございます。

 OECDでいいますと、会社がその目標を追求する上で許容するリスクという表現を取っていますし、ICGNですと、リスクアペタイトに対する取締役会の同意、英国、オランダ、シンガポール等においても、企業が戦略目標の達成に向けて取りに行く主要なリスクというような表現がなされているもの等がございます。

 こうした点を踏まえまして、19ページ目でございますが、本会合で御議論いただきたい事項として、中長期的な企業価値の向上を実現する上では、その基礎として、監査の信頼性の確保が重要との指摘がある。

 また、内部統制やリスクマネジメントについては、コーポレートガバナンス・コードにおいて、取締役会により、内部統制やリスクマネジメント体制の適切な整備が求められているところ、以下の点を念頭に置いた指摘がなされている。

 リスクを損失回避等マイナス要素を減らすものとして捉えるのみならず、企業価値の向上の観点から企業として引き受けるリスクを取締役会が適切に決定・評価する視点の重要性。

 内部統制やリスクマネジメントをガバナンス上の問題として、より意識して取り扱うことの重要性。

 このような指摘などを踏まえまして、以下の課題についてどう考えるかということで、御意見賜れればと思います。

 監査役等監査と内部監査の連携についてどのように考えるか。

 企業戦略等に照らした内部統制・リスクマネジメントの在り方についてどのように考えるか。

 その他、監査の信頼性の確保/内部統制・リスクマネジメントに関する課題として検討すべき論点はあるかでございます。

 続きまして、資料2について御説明させていただきます。「その他の論点について」でございます。

 1ページめくっていただきまして、(1)が新市場区分に応じたガバナンスについてでございます。

 まず最初に、東京証券取引所の有価証券上場規程からの抜粋で、例えば本則市場の上場会社については、コーポレートガバナンス・コードのうち基本原則・原則・補充原則、それからマザーズ及びJASDAQの上場会社については、基本原則というのが、実施するか実施しないかの対象となっており、これは上場規程で決まっているものでございます。

 そして、第21回の会議の資料でも出させていただいていますが、市場区分の見直しの概要について、簡単に再度申し上げさせていただくと、新市場区分では、プライム市場(仮称)、スタンダード市場(仮称)、グロース市場(仮称)がございますが、コーポレートガバナンスでいいますと、プライム市場については全原則の適用(より高い水準)、スタンダード市場では全原則の適用、グロース市場では基本原則の適用ということで、4ページ以下にございますけれども、こうしたことは金融審議会の市場構造専門グループ報告書で、市場区分について、プライム市場のコンセプト、上場基準等というようなことがまとめられたものをベースに考えられてきているものだと理解しております。

 6ページ目は第21回フォローアップ会議資料でも、プライム市場上場企業に対して求めるガバナンスについての検討について、一段高いコーポレートガバナンスを求めていくに当たっての視点、あるいは、市場構造専門グループで指摘のあった主な項目について御紹介させていただいたところです。独立社外取締役あるいは指名委員会・報酬委員会、英文開示などについて出たという例を挙げさせていただいています。

 7ページ目は、お世話になりました、12月に公表した意見書(5)であり、こちらにおいては、論点について、次期コーポレートガバナンス・コードの改訂に向け、コンプライ・オア・エクスプレインの枠組みの下、より高度なガバナンスの発揮を目指して提言を行うものとした上で、独立社外取締役については、新市場区分移行後のプライム市場ということについての記述もなされているところでございます。

 8ページ目以降、取締役会の機能発揮に関して残された論点やその他市場区分に関する意見を、これまでございましたものとして例えば、委員会構成や役割、議長の役割、9ページ目ですと、議決権電子行使プラットフォーム、英文開示等々につきまして、御意見を載せさせていただいております。

 本会合で御議論いただきたい事項といたしましては、これまでの議論を踏まえ、プライム市場上場企業・スタンダード市場上場企業・グロース市場上場企業に求めるガバナンスについて、特に以下の視点からどう考えるか。

 プライム市場上場企業には、他の市場と比較して一段高い水準のガバナンスを求めることとなるが、スタンダード市場上場企業と比してプライム市場上場企業にのみ求めるガバナンスについてはどう考えるか。

 グロース市場には、引き続き基本原則のみの適用がされることが基本とされているが、プライム・スタンダード市場上場企業のみならず、グロース市場上場企業にも共通して求めるガバナンスについてどう考えるかでございます。

 そして、「(2)その他」の12ページ目は、第21回のフォローアップ会議資料ですが、こうした各論点について御議論いただくこととしてはどうかということで御提示させていただいたものであり、これまで御議論いただいてまいりました。

 13ページ目でございますが、その他、コーポレートガバナンス・コードの改訂に向けた論点全般に関し、さらに検討すべき点はあるかということで、御議論いただければと思っております。

 以上が資料2についてでございます。私からの御説明は以上とさせていただきます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、これから皆様方から御質問、御意見等をお出しいただく討議の時間とさせていただきます。本日は、今、御説明をいただきました内容を踏まえ、事務局から提示があった論点を中心に御議論をしていただければと存じます。具体的には、資料1ですと最後のページ、19ページ、資料2ですと10ページ、それからその他ということで13ページになろうかと思います。そちらにある論点を中心に、御質問、御意見をいただければありがたく存じます。

 いつものように、大変恐縮ですが、御発言はお一人当たり5分程度以内でお願いできればありがたく存じます。

 また、御発言いただける方にはチャット機能で全員宛てに、発言希望、お名前等を、お出しいただければありがたく存じます。ワリングさんがつながっていれば、最初に御発言をいただきたいと思っておりますけれども、いかがでしょうか。

【ワリングメンバー】
 ありがとうございます。本日、フォローアップ会議において、リスクの監視、監査への信頼、プライム市場の上場企業の主要なガバナンスの優先事項というテーマで、ICGNの意見を発表する機会を与えてくださった神田座長及び理事会のメンバーの皆様、大変ありがとうございます。

 第一に、リスクマネジメントに関して、取締役会は、会社の主要なリスクや内部統制およびリスク管理へのアプローチを、毎年、または事業の大幅な変更に伴って、積極的に評価し、公表すべきです。これらにはリスクの潜在的な発生確率と影響の評価及びその緩和措置と手続きも含まれます。リスクの監督は、企業グループとして行われるべきものであり、企業のビジネスモデルや業績、ソルベンシー、流動性、さらには、レピュテーションを含むあらゆるものに対する脅威を含めて考えられるべきものであります。すなわち、財務資本に限定されず、人的資本及び自然資本まで含まれるべきです。リスクは会社の戦略と資本配分に適切に反映されるべきです。リスクは、合理的で、適切に独立した、ダイナミックで先を見越した方法で管理されなければなりません。取締役会は、模範となるように率先して行動し、開かれた姿勢と、判断や仮定に対する建設的な挑戦を促す実効的なリスク文化を醸成すべきです。

 監査の信頼性確保におきましては、取締役会は厳格で独立した実効性のある内部及び外部監査手続きをもって情報開示の質と一貫性を担保し、そして株主やステークホルダーが企業の財務状況や業績、長期的な見通しを評価することができるようにするべきです。

 そして、内部監査に至りましては、取締役会は効果的な内部統制の確立を監督するべきであります。そして、適切なリスク管理は、国際的に受け入れられている基準に照らし合わせて、定期的に測定されるべきです。そして、企業に内部監査部門が設置されていない場合は、その理由と内部統制がどのようにその有効性を適切に担保されているのかの十分な理由を年次報告書で開示、説明するべきです。

 監査委員会は、完全に独立した業務執行役員のみで構成されるべきです。そして、少なくとも1人の構成員は、近時の関連性のある財務の専門性を持つべきであります。そしてまた、全てのメンバーは財務の知識を有していることが重要です。
委員会は、財務諸表の一貫性を監視すべきです。そして、その中で、企業のリスク管理のアプローチ、内部統制、そして、内部監査部門の実効性を見直していきます。

 監査委員会は企業の財務諸表に対して、実効性があり、独立した外部監査の体制をつくるべきです。そして、企業の財務ポジション、業績、将来見込みについて株主やステークホルダーへの保証を与えるべきです。

 監査委員会は、経営陣の出席なしに外部監査人との話合いを持ち、監査プロセスについて経理、内部統制、リスク管理についての問題を含む重要なリスク、懸念について話合うべきです。そして、監査委員会の報告書は年次報告書に含ま、その中では、財務諸表の監査に当たって生じた重要事項やその解決をどのように行ったかという記載をすべきです。

 また、独立した客観的意見を有する外部監査人のステートメントも年次報告書に入れるべきです。その中で、財務諸表が会社の財政状態と将来の見込みについて、正しく公平な見解を示しているかどうかについて記載されるべきです。

 そして、外部監査人の任命に当たっては、年次株主総会において承認をされるべきです。その中で、監査委員会が株主に対して、監査人の公募、任期、独立性、報酬、監査以外のサービスを含む監査プロセスの有効性についても報告をするべきです。

 プライム市場に対してコーポレートガバナンス原則で優先されるべきことにつきましては、我々今までも非常にたくさんの提案をしてきました。ただ、ここでは簡潔にするために、10個の優先事項にまとめたいと思います。

 まず、最初に、我々は、独立社外取締役は取締役会の過半数を構成すべきとのポジションを維持しております。これは特に上場子会社の場合、非常に重要です。日本では、他の市場と比べて、上場子会社の数が非常に多くあります。その場合、持株会社株主の存在に対するチェック機能として働くということになります。

 そして2番目に、明確な責任分担をもって取締役会の議長と、そしてCEOの役割を分けるべきです。そして、意思決定において、何も束縛がないようにするべきであります。

 第3番に、取締役会において、筆頭独立社外取締役を選任するべきであります。そして、例えば、議長または被支配会社の場合には支配株主に関する問題が持ち上がったとき、株主やステークホルダー、取締役に対して、コミュニケーションチャネルとしての役割を担ってもらいます。

 第4に、取締役会は、取締役会その他の就業者全体の多様性に関する企業方針に照らし合わせ、企業戦略と後継者計画との整合性を取り、測定可能な目標と達成時期を含む進捗状況を開示・報告するべきであります。

 第5に、指名委員会による正式で透明性のある取締役の任命を行い、適切な取締役の交代を担保するべきであります。

 第6点目であります。取締役会は、明確な資本配分に関する方針を開示すべきであります。それは長期的な価値の創造の基礎とするべきものであります。この観点において、我々は経産省が提案している、取締役会が毎年企業のビジネスポートフォリオをデータ主導で見直すという提案を歓迎します。

 第7点目であります。政策保有株式に関しては、より開示が改善されることを進めたく思います。この中では、政策保有株式がどのような性質なものであるのかという情報を含むべきであり、保有についてのしっかりとした合理的な説明がつかねばなりません。また、特定の期間に、いかに政策保有株式を解消していけるかという情報も含めるべきでありましょう。

 第8点目として、有価証券報告書は株主総会の前に、英語版も含めて公開すべきであります。

 第9点目です。コーポレートガバナンスに関わる情報に関しては、有価証券報告書に統合されるべきであり、また、XBRLタグをつけることによって、より効果的な分析を可能とすべきです。

 第10点目です。金融商品取引法において、公開買付けに関わる観点に関しては、見直しが必要ではないかと考えております。すなわち、より適切に少数株主の保護が適用されるべきではないかと考えるものでありますが、これはコーポレートガバナンス・

 コードというよりは、法律の中にしっかりと盛り込まれるべきであると認識しています。

 さらに、取締役会が株主と建設的な対話を行っていくということが、極めて重要であると考えております。企業にしても、投資家にしても、相互に利益を共有し、長期的な企業価値を高めていくことに対して責任を負い、そうすることこそが、持続可能な経済成長及び社会の繁栄につながるものと信じます。

 以上といたします。ありがとうございました。

【神田座長】
 ワリングさん、貴重な御意見をいただきまして、どうもありがとうございました。

 それでは、ほかのメンバーの皆様方から御質問、御意見をお出しいただければありがたく存じます。全員宛てチャットで御発言希望のお知らせをいただければありがたく存じます。いかがでしょうか。

 ありがとうございます。NECの小幡さん、どうぞお願いいたします。

【小幡メンバー】
 ご指名ありがとうございます。総じて順番に網羅的にコメントを差し上げたいと思います。

 まず、1つ目の監査の信頼性に関して、内部監査部門との連携、これまさに全く同感という感覚を持っています。加えまして、内部監査部門だけではなくて、いわゆる会計監査人との3者間の連携というものが一層必要なのではないかと感じているところであります。そうすることで色々な内部監査の情報もありますし、会計監査人からの指摘ということも踏まえて、より監査の、監査役監査というものが充実するのではないかと考えているところです。

 内部監査部門につきましては、そのような観点で取締役会への報告というものはもうマストだと思いますし、今日の御報告にもありましたが、人数が5人なんというのではとても、私の感覚からすると、まともな内部監査はできないのではないかと思っていますので、内部監査部門の充実というものが今、企業に求められている非常に重要な要素ではないかと感じています。

 2つ目のリスクマネジメントですけれども、昨今の企業を取り巻くリスクの変容は本当に激しいものがあります。従来型の対応だけでは多分追いつかなくなってきていますので、会社の中のリスクというものを的確に会社が把握できているのか否か、それに対する管理体制というものがきちんとできているのかということについては、取締役会できちんと見ることが、内部統制構築の観点からも取締役会の責務ではないかと考えていますので、ここについても全く御意見と同感ということだと考えています。

 続きまして、その他の部分に関しまして、新市場区分のところですけれども、私などにしてみると、プライム、スタンダード、グロースというところで、本質的なところについては、本来差はあるべきではあまりないのではないかなと思っています。確かにスタンダード、グロースのところというのは、まだ新興企業等も多いと思われますので、多少の負担の軽減というものはしていいのだと思うのですけれども、基本的な考え方というものは、プライムであろうが変わらないというのが、本来あるべきなのではないかなと思っているところです。

 最後になりますけれども、これまでの資料に入っていなかった、その他のその他になりますけれども、何点か今後の検討に残してはどうかという点を申し上げます。

 経産省も言っていますけど、今デジタル・トランスフォーメーションというものが必須になっておりまして、デジタルガバナンス・コードというものを経産省でも打ち出しているところですので、そういったものへの対応というものを、どこまで企業として取り組んでいるかということを開示するようなことを、検討してはどうかというのが1つ目です。

 2つ目が、今サイバーセキュリティー、サイバーアタックが本当に激しく動いていますので、サイバーセキュリティーに対する対応、そこには当然秘密情報の管理体制というものも含まれてくると思いますけれども、そういったものへの取組みということについても、今後もう少し議論を深めてはと思っています。

 次に、最後、ビジネスと人権ということも、SDGsとか、ESGの中でいろいろ取り出されておりますけれども、こちらについても今後、より議論を深めていくということが必要かなと思っています。また、こういったところが新たなリスクにもなってくるんだと思うので、さらなる検討というものが必要かなと思っています。

 また、蛇足的に言いますと、今、世の中の国家安全保障というものが企業として色々な難しい対応を迫られる事態になっておりますので、そういったところへの対応というものも、これは先の話かと思いますけれども、次の検討にしてはいかがかと考えているところです。

 以上です。ありがとうございました。

【神田座長】
 小幡さん、どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして佃さん、どうぞお願いいたします。

【佃メンバー】
 佃です。ありがとうございます。

 それでは、まず、監査役等監査と内部監査の連携、そして監査の信頼性の確保についてと、この点につきまして、コメントさせていただきます。

 まず、そもそも論として、独任制を前提とした監査役会設置会社における監査役と、組織監査を前提とする監査委員会、あるいは監査等委員会では、内部監査との関係はおのずと異なるわけで、異なる機関設計を同じ土俵で議論することが、そもそも妥当なのかと、こういう論点はあると思います。

 したがって、コーポレートガバナンス・コードでも、今後は、丁寧に機関設計に応じて書き分けていくということも必要ではないかと考えています。このことを前提とした上で、監査の信頼性確保の観点から、3点コメントさせていただきます。

 まず、1点目は、内部監査の質の向上についてです。取締役会の実効性評価を実施しておりまして、監督サイドの監査委員会、監査等委員会、あるいは監査役会の機能強化の必要性を感じる局面は、引き続き多いというふうな現状でございます。しかし、監査委員会や監査等委員会の機能強化は、執行サイドの内部監査の機能強化なくしては不可能ですから、監査の信頼性を確保するためには、内部監査の質の向上は絶対的な必要条件であると考えています。

 では、その必要条件を満たすためには何が必要かと申しますと、組織監査を前提とする監査委員会、あるいは監査等委員会が、執行サイドの内部監査の人事に関与できるようにすることが重要であると考えます。ある企業では、社外取締役が監査委員長を引き受ける際に、社長に対して、内部監査のトップにはエース級の人材を充てることを条件に出しました。社長がこれに応えて、結果的に優秀な監査委員長と、それから優秀な内部監査のトップが二人三脚で監査機能を抜本的に大幅に強化したと。こういう事例がございます。

 企業は人なりと言いますけれども、監査も人なりという典型事例だと考えています。

 2点目は、内部監査のレポーティングラインについてです。内部監査のレポート先は、執行のトップだけでなく、監査委員会、監査等委員会、あるいは取締役会にも向けられていること、つまりデュアルレポーティングであるということも、絶対的な必要条件だと考えます。日本企業においてデュアルレポーティングというのは、相応に普及しつつあると思いますけれども、内部監査のレポート先が社長のみという状況がもしあるとしたら、これは早急に改善されるべきであると考えます。

 3点目は、取締役、執行役等の職務執行の監督についてです。監査委員会がよく機能している指名委員会等設置会社を例に取りますと、監査委員会が取締役、そして執行役を含む主要経営陣と個別に面談して、職務執行状況を丁寧にモニタリングしています。そして、その結果を包み隠さず取締役会に報告しています。取締役会における監査委員長報告では、事業戦略や財務戦略、人事戦略など、主要な経営戦略の執行状況だけではなくて、面談を通じて浮かび上がった組織課題、あるいは企業文化などにも言及する場合があります。このようなレベルで監査委員会が機能するためには、1に、監査委員に経営目線で職務執行の監督ができる優秀な人を得ること。2に、監査委員が十分な時間をコミットすること。そして3に、監査委員会から取締役会の報告を充実させること。これらが重要であると考えています。

 以上3点が、監査の信頼性の確保の観点で重要であると考えています。

 それから、その他の論点ということで、プライム市場に関して、簡単にコメントさせていただきます。これを考える上で、やはり金融審議会、先ほど説明ございましたけれども、市場構造専門グループの報告書にも記載されている点に立ち返る必要があると思います。

 報告書には、多くの機関投資家の投資対象になり得る規模の時価総額、流動性を持ち、より高いガバナンス水準を備え、投資家との建設的な対話を中心に据えて、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業とあります。この中で、当然ながら一定規模以上の時価総額であるとか、流動性であるとか、あるいはより高いガバナンス水準というのは、当然のことながら、プライム市場の上場企業に求められることでありますが、ここで忘れてならないのは、投資家との建設的な対話を中心に据えることが私は極めて重要だと考えています。

 では、投資家との建設的な対話を中心に据えるとは、具体的にはどういうことかということですけれども、建設的な対話の主役である経営者、経営陣、IR部門等に加えて、プライム市場に上場する企業においては、独立社外取締役も投資家との建設的な対話の担い手となると、このことが大変重要なのではないかと考えています。

 そういった観点から申しますと、基本原則の5、あるいは補充原則の5-1①、あるいは5-1②などは、プライム市場に上場する企業とそうでない企業で書き分ける、こういう考え方もあるのではないかと考えています。

 以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして小林会長、どうぞよろしくお願いします。

【小林メンバー】
 ありがとうございます。

 最初に、内部監査部門やリスクの件についてお話しし、次に、その他の細かい話をさせていただこうと思います。

 まず、今ちょうど佃さんが言われましたけれども、内部監査部門がデュアルレポートを行うのは当然であり、本質的に重要なことだと思います。資料1の10ページで、社長以外を内部監査報告書の宛先としていない日本企業が817社中、実に427社も存在すると明らかにされていましたが、これは相当深刻な問題であり、早急に改善する必要があるのではないかと感じます。

 それと、日本ではどうしても内部統制やリスクマネジメントを単なる守りと見なして、コストをできるだけかけたくないとする風潮がいまだに相当残っているような気がしますが、欧米ですと、もっと人手もお金もかけて、内部統制部門や監査委員会等の活動の原資にしているわけで、この辺の旧来の日本型のメンタリティーも変える必要があるのではないかと思います。

 それから、基本的な認識として、カーボンニュートラルとかデジタル・トランスフォーメーションといった潮流をベースにして、あるいは、パンデミックも含めた種々のリスクに対抗して、どういった形でポートフォリオトランスフォーメーションを行っていくのかという点が、日本企業にとって本質的な課題になっているかと思います。

 その際、カーボンニュートラルとか、今後の人口減少と労働力不足といったような、方向性が明快に予見可能なリスクと、逆に、保安事故とかサイバー攻撃とか天変地異といったような、いつ起こるか分からない予見不可能で突発的なリスクがあって、特に製造業の場合は、そういう突然のリスクに対する、訓練も含めたハザード対応が重要になってきます。やはり、一言で同じリスクと言っても性格上違うものはある程度分類して、それぞれにふさわしい記述、書き分けをすることが必要ではないかと思います。

 加えて、経営陣の設計思想として、どこまでリスクのトレランスを想定しているのか。やはりこの辺りも、リスクの性質上の分類を踏まえて、リスクアペタイトも含めた、包括的、総合的なナラティブが求められているのかなという気がいたします。

 あと、その他の点でございますけれども、取締役会での議論や投資家との対話の中で、副社長とか常務とか専務というような、執行側の役員に冠する日本の伝統的な呼称がどうにも分かりにくいと感じます。それこそ専ら務めるのと常に務めるのとでは何が違うのか意味不明で、かなり年功的な序列でしかないわけです。このような、そもそも専門性や分担が明確でない呼称に対して、CFOなりCTOなりCIOなりCSOなり、やはり欧米流の「CxO」というのは、職種、責任が対外的に極めて明瞭である。そういうことが、投資家とのエンゲージメントにおいても実効性を高めるのではないかなと思います。

 その文脈でもう一つ、代表権というのも、かなり日本的で特殊な、分かりにくい概念のような気がします。製造業ですと、重大な事故が起きたとき、製造、保安の担当役員が辞めることで会社としての責任を取ることが多いのですが、代表権というのは、そういう責任を取るためのものなのか。あるいは、日本社会には、例えば化学工業協会とか石油化学工業協会のような団体の会長を務めるためには代表権が要るというような類の暗黙のルールもあったりすると私は認識しているんですが、それらを超えた実質的な意味において、一体代表権とはそもそも何なのか、この辺りの本質的な議論、説明も必要ではないかと感じます。

 最後に、一部繰り返しになりますが、基本的な認識として、カーボンニュートラル、デジタル・トランスフォーメーション、パンデミック対応という3つの大きな流れの中で、日本の各企業がどうポートフォリオを果断に変えていくかが問われている。そういう中で、企業価値に占める無形資産、特にテクノロジーや知財の重要性がかつてない程に高まっていることを考えますと、日本でもCEOとCFOだけでなく、CTOも本当の意味の当事者として、投資家とのエンゲージメントに直接的に貢献する必要があるのではないか。このような趨勢も啓発すべきではないかと思います。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして春田さん、どうぞお願いいたします。

【春田メンバー】
 春田でございます。私からも、内部統制とリスクマネジメントについて、新市場区分に応じたガバナンスの問題について、その他の論点についてお話しいたします。

 先ほども話があったとおり、資料10ページの内部監査報告書の宛先について、社長以外を宛先としていないところが427社あります。それに加えて、11ページの内部監査部門の人数について、5人未満が非常に多く、欧米と比べても少ない、やはりこの内部統制、それからリスクマネジメントについて、私は大きな違いがあるなと認識しております。

 そういう意味では、内部統制やリスクマネジメント体制を適切に整備していく。特に、レポーティングラインの強化というところも非常に重要だと思っています。何よりも重要なのは、ガバナンス上の問題として、内部統制やリスクマネジメント体制、これらを取り扱うことの意識を向上させていく必要があると思っています。

 とりわけ現在、コロナ禍で企業を取り巻く環境が非常に変化しているという中で、デジタル化や、カーボンニュートラルにともなう産業構造の転換が起こっていく状況で、より強固なガバナンスや監査体制も含むリスクへの対応力の強化ということが求められてくるのではないか。それが、企業の中長期的な持続可能性につながってくると思っています。

 加えて、参考資料にもありましたけれども、企業不祥事が後を絶たないという中で、公益通報者保護法が昨年改正されて、今それを企業としてどう対応していくかというような議論が進んでいます。

 これに関連して、やはり内部通報体制の強化というのも、企業にとって非常に大きな課題だと思っています。

 そういった意味で、コーポレートガバナンス・コードの中にも既に盛り込まれておりますけれども、さらなる実効性の強化が必要だと思います。ただ単に、内部通報体制があるというだけで形骸化している部分もあるので、それの実効性を担保していくということが、これから重要になってくるのではないかと思っています。

 続いて新市場区分についてでございますけれども、プライム市場について、私はより高い水準のガバナンスを求められる、こういった市場を進めていくということは非常に重要なことだと思っています。ただ、前も申しましたけれども、やはり、スタンダード市場、それからグロース市場に上場する企業のガバナンス、こういったところの全体的な底上げにもつながるようなプライム市場にしていただきたいと思っています。ただ単に、企業間のガバナンス上の格差が進むということではなくて、全体的には底上げにつながるという取組みにしていっていただければなと思っています。

 それから、その他の部分でございますけれども、前回のこの場でも申し上げましたけれども、産業構造の転換が急速に進む中で、サプライチェーンの再構築というのが、今現在、進んでいます。非常に不公正な取引が横行しているという中で、取引の適正化は、サプライチェーンの持続可能性という観点において、非常に重要だと思います。我々働く者の立場として、株主以外のステークホルダーとの適切な協働というのは、コーポレートガバナンス・コードで掲げて、取組みを進めてきているところでございます。やはり中小企業をはじめとする取引先というのは、重要なステークホルダーだと思いますし、これをきちんと位置づけて対話を強化することで、公正な取引の促進とサプライチェーンの持続可能性につなげていく必要があると思っています。

 それから、最後になりますけれども、先ほども話ありましたが、ESGに関してのことでございます。ESGの取組みというのは非常に重要でございまして、我々も注目しております。特にESGの中の労働・人権というSの部分について、働き方改革がこれからどんどん進んでいく、特にコロナ禍において、テレワークも含めて、労働環境・働き方がますます変化してくると思っています。そういった状況を踏まえた労働・人権の部分に関する情報開示、特に労働環境についての情報開示も含めて、このSの部分に対して、より検討を進めて、コーポレートガバナンス・コードの中にも盛り込んでいくような形でお願いできればと思っています。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして岡田さん、どうぞお願いいたします。

【岡田メンバー】
 岡田です。私は、今回の資料の中で、守りのガバナンスは企業の持続的成長と中長期的な企業価値の向上を実現する上で不可欠とある、これには大賛成です。言い換えますと、私の解釈では、堅固な守りがあるからこそ、経営は安心して攻めることができる。という意味では、守りの強化は攻めのガバナンスにもつながることだと思っています。

 守りといいますと、やはり監査役、内部監査部門を抜きには考えられません。これらを機能させるためには、彼らの独立性の確保が必要です。監査役の独立性については、会社法上は定められていますが、実際の運用となると、常勤の社内出身の監査役は役員人事の一環として社長が決めているのが実態です。これは事務局参考資料の27ページにございます。このように選任された監査役の中には、社長のほうしか見ていない人もいます。会社の経営者の方とか、会計監査人と話すと、監査役にはあまり期待できないんだよねという声も聞きます。そういう意味では、監査の信頼性、と同時に、監査役の信頼性の確保も必要ではないかと思います。

 一方、経営の監視役として一生懸命頑張っている監査役も数多くいらっしゃいます。しかしながら、執行の力が強い現状では、あまり頑張り過ぎると、4年の任期を全うせずに退任を迫られるということもあると聞いております。それらの監査役がもっと力を発揮できるように、コーポレートガバナンス・コードで後押しできればと思います。

 先ほど申し上げましたが、現状ではガバナンスが機能するか否かは、経営者次第です。執行を監督するのはもちろん取締役会です。従ってフォローアップ会議では、取締役会の機能強化に議論が集まりがちですけれども、日本の多くの会社では、取締役の過半数が社内出身者であります。それらの取締役は、社長によって指名されているというのが実態です。指名委員会も、個々の取締役の人事までは手が回っていないのが実情です。つまり、社内役員が過半数を占める取締役会には、社長・CEOなど執行の長を監督できるという保証はないと私は思います。

 したがって、監査役や内部監査部門による執行の監視監督を強化する必要があります。彼らにこそ、ステークホルダーを代表して、経営を監視する役割が期待できるのではないかと思います。

 そのためには、監査役、内部監査部門の独立性の確保、形式的ではなく、実質的な確保が不可欠です。「実質的な」と申し上げましたのは、現状の会社法では独立性がなくても選任できてしまうからです。監査役については、独立性を担保するための法律が整っておりますが、現状の執行側の運用に課題があります。すなわち、監査役の人事は執行に主導権があるケースがほとんどです。事務局参考資料の27ページにあるとおりです。選任、報酬の決定に当たっては、監査役主導であるべきことをコーポレートガバナンス・コードで強調して、監査役が積極的に動けるように後押しすべきだと思います。

 また、執行を監視するもう一つの重要な機能は内部監査部門ですが、内部監査部門もまた、執行の指揮命令下に入っていることが多く、独立性がないのが実態です。監査等委員会とか監査委員会の指揮下に入ることは必須ですが、さらに、監査役の指揮下とすることも希望します。百歩譲っても、内部監査部門の長の人事については、監査役の同意権を必要とすべきだと思います。

 次に、監査役はコーポレートガバナンス・コードの中では、自らの守備範囲を過度に狭く捉えずに活動することを、原則の4-4で述べています。そういう意味では、任意の委員会に参加して、意見発信をすることや、投資家から要望があれば、その対話にも積極的に応じることが望まれます。そのために補充原則の4-10①とか、原則の5-1で、独立社外取締役と並行して、社外監査役または監査役を加えることを希望いたします。

 投資家との対話というのは、難しいかもしれませんが、KAM(Key Audit Matters)の導入をきっかけに、監査役が会計監査人と打合せてKAMの項目を決定する主導権を取る、英語でThose charged with governanceという役割を担っています。これは、日本の監査役は取締役ではないけれども、この立場を担っていかなければならないのです。開示されている情報のほかにリスク情報、ネガティブ情報はないのかと投資家に聞かれた場合でも、全て開示していると答えられるのは監査役であるべきです。開示がされた上でKAMも作成していると答えられるようにすることが監査役の責任ではないかと思います。

 ちょっと今回の議論からは外れますが、第3点目に、事務局参考資料の21ページに載っております不祥事事案に対する第三者委員会の報告書による指摘という項目、これをちょっと触れたいと思います。

 指摘にもあるように、第三者委員会が一定程度機能しているのは事実です。しかし、委員会のメンバーが不祥事の当事者、または関係者である執行により選任されているなどの問題点が指摘されております。第三者委員会が機能するよう監視するのは、独立社外取締役及び監査役だと思います。不祥事に対してもコーポレートガバナンス・コードで何らかの形で触れる必要があるのではないかと、問題提起をしたいと思います。

 次に新市場について。プライム市場に上場する会社には海外からの投資も多いと思いますが、およそ2/3を占める監査役会設置会社が海外投資家に理解されず、ガバナンス不備と受け止められることは避けなければならないと思います。従って、プライム市場に移行するような監査役会設置会社であれば、マネジメントモデルは取りながらも、取締役会の決議事項を工夫してモニタリングモデルに近い、迅速な経営判断ができる体制をとる必要があると思います。

 そのような努力をしている会社は、コンプライ・オア・エクスプレインという原則は維持しつつ、必要であれば、追加でガバナンス体制改善の努力をしていることをエクスプレインしたらいいのではないかと思います。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして神作先生、どうぞお願いいたします。

【神作メンバー】
 どうもありがとうございます。初めに、監査の信頼性確保について意見を申し上げます。

 3つのディフェンスラインのうち、第3線である内部監査部門の役割と、その役割を実効的に果たすための条件、特に内部監査部門と取締役会や監査役等との連携について、より具体的な踏み込んだ記述をすることが考えられると思います。

 現行のガバナンス・コードの原則4-3「取締役会の役割・責務(3)」において、取締役会は、内部統制やリスク管理体制を適切に整備すべきであると述べるとともに、補充原則4-13③では、上場会社は、内部監査部門と取締役・監査役との連携を確保すべきであるとして、既に、内部監査部門と取締役会・監査役による監督機能との連携の必要性について、抽象的には書かれています。

 内部監査部門の対象は、コンプライアンスや財務報告に係る内部統制にとどまらず、財務・計算業務、経営の全般に及び、特にガバナンスプロセスの改善や新たな措置のための提案も行うという積極的な役割も期待されていると思われます。

 経産省の公表したグループガイドラインの4.5の「内部統制システムに関する監査役等の役割等」において、監査役等の機能発揮のために、内部監査部門の活用を図ることが有効であるという視点から、内部監査部門から、業務執行ラインに加えて、監査役等にも、直接のレポートラインを確保すべきであるとした上で、業務執行ライン上のレポートラインに加えて、監査役等に対する直接のレポートライン、いわゆるデュアルレポートラインを社内規程で定めることを提言しています。

 有益かつ信頼に値する内部監査を行うためには、内部監査部門は監査の対象から独立している必要があり、また、先ほど述べたようにカバーする領域が広範に及ぶことから、様々な専門知識を有する人材が豊富に存在することによって初めて、質の高い内部監査が行われ得ると思います。

 さらに、内部監査の機能を発揮するためには、内部監査部門の情報を、執行部門と共に取締役会、監査役、さらには会計監査人に対して直接報告がなされるような情報ルートを確立するという形で、具体的にコードの中に記載するということが考えられると思います。第3線の内部監査部門の役割がますます重要になっていることに鑑み、それが機能するための条件について、補充原則等によって、より明確化することを検討すべきだというのが私の意見でございます。

 次に、市場区分の見直しに伴うプライム市場上場会社に対してより高い水準のガバナンスを求めることは、必要かつ適切であり、特に次の2点を申し上げたいと思います。

 コーポレートガバナンスの中心は、取締役会の構成員である取締役と経営陣の指名及び報酬にあると考えられます。その点で、特に重要な役割を果たす指名委員会と報酬委員会について、現行コードの補充原則4-10①は、既に独立した諮問委員会の設置により、独立社外取締役の適切な関与と助言を求めています。プライム市場に上場する会社については、指名委員会等設置会社以外の機関設計を採用している会社においても、任意の指名委員会と報酬委員会を設置するものとし、そのメンバーの過半数は独立社外取締役であることを求めるべきであると考えます。

 また、特に社外取締役候補者の選定において、指名委員会が中心的な役割を果たすべきことを明らかに定めることが考えられると思います。

 第2に、筆頭独立社外取締役についても、既に現行コードの補助原則4-8②において、互選により筆頭独立社外取締役を決定することなどにより、経営陣との連絡・調整や監査役との連携に係る体制整備を図るべきであると記載されています。プライム市場の上場会社には、原則として筆頭独立社外取締役の設置を求めるとともに、補助原則4-8②で触れられている事項以外にも、株主と経営者との建設的な対話においても経営陣と機関投資家とをつなぐ重要な機能を果たすべきであるということを明らかにすることが適切であると考えてます。

 私からは以上でございます。どうもありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして小口さん、どうぞお願いいたします。

【小口メンバー】
 ありがとうございます。小口でございます。

 今日2つ資料が用意されていますが、監査の信頼性の確保/内部統制・リスクマネジメントの方から、意見を述べさせていただきます。

 日本のコーポレートガバナンス・コードについては、いわゆる攻めのガバナンス、Growth-Oriented Governanceということで、日本の実態を踏まえた強いメッセージになっていると思います。

 一方、海外ではむしろ、時には過度なリスクテイクに走りがちな経営を適切に監督するということがガバナンスの要諦になっておりまして、その意味で監査は重要な役割を担うということを、まずは確認しておきたいと思います。

 そこで、グローバルな機関投資家が重視する監査委員会の特徴としては、1つは、取締役としての法的権限、もう一つは、NYSE上場規制や英国のガバナンス・コード、あるいは、本日ワリングメンバーから御説明のあったICGNの意見書では、全構成員が独立性を有するということが挙げられると思います。この背景には、外国人投資家にとって監査委員会というのは、自らが監査するのではなく、取締役としての法的権限に基づき、内部に精通した内部監査部門に監査させ、直接レポートさせる仕組みにおいて、そのレポート先である監査委員会が独立であることで、執行部門から独立した意見を述べることができる体制ということで理解しております。

 本日、資料1の4ページに、日本における会社法上の3つの機関についての概要が示されておりますけれども、こちらの監査権限の帰属を御覧いただくと、内部統制システムの利用を想定している監査等委員会と監査委員会に対して、内部監査部門が直接レポートするというのは、機関設計上の要請だと理解しております。

 つまり、内部監査部門というのは、資料1の12ページ末尾にシンガポールの例が書いてありますけれども、職務上は取締役会の所属機関である監査等委員会や監査委員会がレポートラインでありまして、部門間運営上、副次的にCEO等執行部門にもレポートする、これがいわゆるデュアルレポートラインだと理解しております。この辺りのデュアルレポートラインの理解というのも共通認識として考えるべき点だと思います。

 その中で、日本独自の監査役という制度につきましては、単独で権限が行使できる独任制でありますとか、監査役会における常勤の監査役選任義務ということで、自ら監査する強みがあるということで説明を受けており、それはそれで、監査役制度の強みだと理解しております。

 現実問題として、監査役協会のアンケートなどで、上場会社における監査役スタッフの平均的な人数などを拝見しますと、かなり数も限定的でありますので、内部監査部門との連携の必要性は理解できますし、また、それは推進すべきだと思いますけれども、自ら監査することが監査役の強みという法的な立てつけからは、内部監査部門と連携を強める場合は、先ほど申しました機関設計上、そういう要請がされている監査等委員会や監査委員会とは異なる説明が必要になるのではないかなと思っております。
次に、その他の論点の中で、プライム市場について意見を述べさせていただきます。

 プライム市場につきましては、より高いガバナンス水準を備えるというコンセプトを標榜しておりますので、グローバルに理解を得る取組みが必要で、その視点からピンポイントで2点述べさせていただきたいと思います。

 その1つは、取締役会議長の役割でございます。11月18日にICGNから提出されました意見書において、あるいは、本日、ICGNの意見書をワリングメンバーが説明されましたが、その10の優先事項の中でも、ICGNは取締役会議長を、その指名日において独立である社外取締役が務めることを推奨しております。取締役会の実効性を高めるという観点から、取締役会の議長の独立性、リーダーシップは、グローバルな検証を経た上での要請であると理解しております。そのような状況下、同じように取締役会の実効性を求める日本のコードにおいて、取締役会議長の独立性に関する説明がない状況というのは、より高いガバナンス水準として本当に妥当なのかということを疑問に思っております。

 少し実務的な話になってしまうのですけれども、このように、日本では取締役議長の独立性には企業側にも意識がなく、総会通知などでも説明がないことで、例えば、議長の独立性を重視して議決権行使をする海外投資家にとっては、情報不足の状況が続いており、解消されてないということがございます。

 一方、日本において取締役会議長が独立性を有する企業は限定的ということもまた事実でありまして、そうしますと、我が国企業の実情等にも沿いつつ、国際的にも評価が得られるという視点に立ちますと、取締役会議長が独立性を有しない場合に過半数の独立取締役を求めるとするシンガポールの基準というのは、日本のプライム市場においても検討に値するのではないかなと思っています。

 それからもう1点ですが、これは株主総会の分散でございます。12月8日のフォローアップ会議で議論したとおり、決算日から開催日が3か月以内の現状のままでは、いくら努力しても、発送日から開催日のさらなる短縮には物理的な限界があることは明らかであります。

 そこで、プライム市場におきましては、決算日から適切な期間を置いて基準日を設定して、株主総会の集中問題を解消するとともに、さらには、有価証券報告書の総会前開示を促進することによりまして、プライム市場のもう一つの目的であります、投資家との建設的な対話につなげてほしいと思っております。

 私からは以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして三瓶さん、どうぞお願いいたします。

【三瓶メンバー】
 三瓶です。まず、資料1、監査の信頼性の確保/内部統制・リスクマネジメントに関してですが、もう皆さんからお話が出ていますが、デュアルレポーティングというのは必須であるということは、繰り返しお伝えしたいと思います。また、内部監査部門の独立性が非常に重要なポイントであること。それと、内部統制システムを作ってはいるものの、形骸化しているという状況が散見されますので、実効性のレビューというのが必要であると思います。

 2017年頃に不祥事が多数発覚しましたけれども、そのときに非常に強く感じた違和感があります。当時、内部規程の違反であるとか、契約違反であって、法令違反ではないという企業の反論が非常に多くありました。企業側からは、それなのになぜ株主に調査報告の開示をしたり、記者会見で謝罪したり、不祥事扱いされなければいけないんだという反論でした。ここには、非常に違和感を感じています。

 株主、投資家は、1つ目は、信頼して投資をし続けられるのかどうかということの判断が必要ですから、投資判断に必要な情報を求めるのは当然だと思います。また、議決権行使の際には、その経営陣を信任し続けられるかどうかということで判断が必要ですから、その情報を求めるのは当たり前と。この辺が、法令違反でなければ、内部規程の違反だろうが、契約違反だろうが、内部統制システムがスルーして何も機能してない状況であっても、問題ないというか、内部の問題だと、対外的に公表する必要はないというような考え方では困ると思います。

 これが起こっていた理由は、やはりデュアルレポーティングがなくて、取締役会や社外監査役、社外取締役がいらっしゃる会議体に、例えば、内部の執行陣に比べて、報告が1年遅れるとか、そういう状況だったと。社内的には調査していたけれども、社外者には報告してなかったというような実態があります。ですから、デュアルレポーティングは必須であろうと思います。

 一方で、リスクマネジメントに関しては、最近の有報にはかなり先進的なリスクマネジメントの開示の事例があります。今回の参考資料の最後の2ページにも、金融の会社と製造業の会社の好事例が載っています。こういったことを広く横展開して、多くの企業で参考にしてほしいと思います。

 続いて、資料2のほうです。プライム市場関係ですが、一段高い水準のガバナンスを求めていくということで、どういう規律付けをするかということなんですが、今回3市場区分にしたことで、上場区分のコンセプトが明確化されました。分かりやすさというのは、市場の信頼性を支える重要なポイントです。そのために、今回、プライム市場にどういうふうに規律付けするかといったときには、十分に分かりやすさを考える必要があるんですけれども、とはいってもコードはあくまでも、コンプライ・オア・エクスプレイン、原則主義であるということを踏まえて、対象は全市場区分、どの市場区分でも共通であるというのが1つ目。コードは上場している会社に対して求めることなので、しかも、コンプライ・オア・エクスプレインだから全市場区分対象。そして企業にはどの市場区分を選ぶかという選択肢があるわけですから、要求される水準をよく考えて選択する。企業が市場区分を選択することを踏まえ、プライム市場に求められる特定の項目については、遵守の義務付けを東証の有価証券上場規程で明記する、ルール化すべきと思います。

 その際に、何が特定の項目かというと、8点ぐらいあります。1つ目は英文開示、2つ目は独立社外取締役過半数の指名委員会、報酬委員会それぞれの設置、そして同委員会の実効性評価の実施と開示が3つ目、そして4つ目は事業ポートフォリオに関する基本方針の見直し等の実施と情報開示、5つ目が支配的株主から少数株主権利を保護する仕組みの確保についての情報開示、6つ目が内部監査のデュアルレポーティング、7つ目が株主総会議案に対する一定以上の反対率があった場合には、その原因の分析と反対票をどう考慮するのかという説明の開示が必要と思います。最後の8つ目は、経営の執行、経営の監督、それぞれの多様性の在り方、方針、状況について開示をすべきと思います。

 そして、グロース市場についてどう考えるかという論点もいただいていますが、先ほど申し上げたとおり、グロース市場だからといって基本原則だけではなくて、原則、補充原則も対象とすべきと思います。これは、上場会社として公開市場を利用する責任、社会に求められているガバナンスを視野に入れて経営する必要があるからです。ただ、まだコンプライできなければ、エクスプレインすればいい、そういう選択肢があるので、そういう選択をしてもらえばいいと思います。これを基本原則だけで、具体的な原則、補充原則を全く、そもそも見なくていいと、頭に入れなくていいということになると、グロース市場は単なるハイリスク市場になってしまうと思います。

 最後にその他の「その他」というところですけれども、今回コード再改訂の議論をしているわけですけれども、コードとルールの使い分けについて、少し共有したいと思います。

 コンプライ・オア・エクスプレインの原則主義の精神というのは、期待される行動を示す一方で、やり方に関して、細かいことまでいちいちマイクロマネージせずに、むしろ企業にクリエイティビティを促すものだと思います。だから、コードという名前にもかかわらず、単なるルールに変質していかないように注意する必要があると思います。

 今回、プライム市場について一段高いという言い方、一段高いガバナンスを求めるといってますけれども、グローバル市場での競争を考えれば、今回言っている話はミニマムスタンダードにすぎないということが広く認識されるべきだと思います。
そうすると、ミニマムスタンダードというのは、遵守がゴールではなくて、それよりももっと高い水準を自ら工夫して実行していくことが期待されているのであって、それこそが攻めのガバナンスとか、企業価値向上につながるものと考えます。
私からは以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして大場会長、どうぞお願いいたします。

【大場メンバー】
 皆さんのいろんな御指摘があったので、私は2つに絞って、御意見を申し上げたいと思います。

 監査の重要性をどう認識させるかということについては、もう皆さん共通だと思うのですが、2つの点というのは、1つは見える化です。もう1つは、プロ人材の監査へということがキーワードになるかと思います。

 見える化というのは、監査が実際にどのように行われているかということを、さらに開示をしていくということではないかと思います。実効性ある見える化と言ってもいいかもしれません。既に好事例として、いろいろ紹介されているのですが、言ってみれば、監査の具体的な重点項目、どのような方が出席をされて、どのぐらい時間をかけて監査をされたか。それも内部監査に関わる事項なのか、会計監査に関わる事項なのかということについて、活動状況を、より拡充して記載することが非常に重要ではないかと思います。いわゆる見える化の促進です。

 もう一つは、人事に関連することでありますが、岡田メンバーから監査の課題について報告がありましたけれども、監査の役割を担う人が署名の一環として監査をしているのではなくて、プロフェッショナルな監査に転換していくということが大事ではないかと思います。プロ人材の監査を突き詰めていくと、独立性につながっていくのではないかと思います。

 したがいまして、監査の見える化と、人事というか、参考資料には、監査人数のことは指摘されているのですが、監査の質ということについて、もう少し記載があってもいいのではないか。これがプロフェッショナルという意味だというふうに御理解をいただければと思います。

 以上であります。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きましてソニーの松岡さん、どうぞお願いいたします。

【松岡メンバー】
 経団連の資本市場部会長という立場での発言になりますけれども、一言だけ、申し上げるまでもなく、本会議におきましては、コーポレートガバナンス、スチュワードシップ・コードの改訂という議論をしてきているわけなのですけれども、当然ながら重要な精神としてガバナンスやサステナビリティの強化、そして価値向上を目指すということがあると思いますし、それを達成するためのコードとして、議論を重ねてきたかと存じます。そしてコードは、プリンシプルベースでのコンプライ・オア・エクスプレインということが中心にあると存じます。皆様からの御指摘については、重要な示唆を伴うものもいろいろあったと存じます。

 他方で、上場取引所という観点からは、多くの、現東証一部、約2,200社がいると思いますけれども、これらの企業の大半が来年、プライム市場への移行を目指すという中では、そうしたコードやその精神、そしてプリンシプルというのが、プライム市場上場企業に高度に求められて、こういった企業がそれらを遵守、実行していくものとして位置づけられるべきなのではないかと存じます。

 私自身の経験からしても、会社の、先ほどもちょっとございましたけれども、業態、業容等によっても、また、いろいろと工夫や高度化の余地もあると思いますので、それらも含めて、各企業において取り組んでいくということが求められるのではないかと思います。

以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして高山さん、どうぞお願いいたします。

【高山メンバー】
 高山です。私からは、プライム市場の上場企業に求めるガバナンスの基準についてお話しさせていただきたいと思います。

 ガバナンスの基準については、幾つか重要な事項がありますけれども、その中で、議長の独立性と、それから筆頭独立社外取締役についてお話ししたいと思います。

 まず、議長の独立性でございますが、将来的には、社外取締役が議長を務めることが望ましいと考えます。ただ、現時点では、プライム市場の上場企業に求めるのは、まだ早いと思います。議長の役割というのは、単なる議事進行役ではなくて、取締役会で十分な議論を促進したうえで、重要な意思決定を導くリーダーです。そのために、会社のことをよく理解した上で、リーダーシップを発揮できる取締役が議長になるべきだと考えます。

 社外が議長を務めるには、社外取締役の実力をさらに高めることが重要だと思います。それを可能とする枠組みや仕組みをつくった上で、そのステージに進むべきである、社外取締役が議長を務めるステージに進むべきであると考えます。

 それから、そのステージにスムーズに移行するために、筆頭独立社外取締役を設置することが必要だと考えます。これはプライム以外の企業にも求めるべきだと思います。現在のガバナンス・コードの4-8②には、独立社外取締役は、例えば互選により筆頭独立社外取締役を決定することなどにより、経営陣との連絡・調整や監査役または監査役会との連携に係る体制整備を図るべきであるという記載があります。しかし、実際には、まだ筆頭独立社外取締役を設置してない企業が多くございます。

 筆頭社外というのは、社外の意見をまとめて、議長や執行サイドに伝えて、双方の理解やコミュニケーションを深める。それから、投資家との対話の窓口になるという重要な役割を持っております。

 参考までに海外の状況を見ますと、イギリスにおいては、ガバナンス・コードで要請されているために、ほとんどの企業において社外が議長を務めていますが、米国ではそのような要請がないために、現在では、S&P500という、比較的大きな規模の企業においては、社外が議長を務めている企業の割合というのは、大体3割ぐらいとなっています。

 一方、筆頭社外取締役を置いている、あるいは筆頭社外取締役に類するものを置いている企業の割合というのが、大体7割という状況になっています。

 つまり、議長が社内の場合、筆頭社外取締役が不足することを補う体制となっているということがうかがえます。

 このような状況も踏まえまして、日本においても、筆頭独立社外取締役の設置を求めることが重要だと考えます。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして川北さん、どうぞお願いいたします。

【川北メンバー】
 川北です。多くの方の意見がありましたので、簡単に、まずは監査役、もしくは監査委員会等の役割に関して述べたいと思います。これに関しましては、内部監査部門に対する指揮命令権とか人事権を、やはり私は有するべきだと思いますし、必要であれば、内部監査に対して、具体的な行動を指示する、そういうことが必要になってくる。当然ながら、レポートラインはデュアルというか、主たる対象に、監査役とか監査委員会がなるべきであって、社長は従だと思います。

 それと、社員にとってというか、内部監査に配属される者にとってみれば、そこでの仕事というのは業務全体、もしくは経営を見渡せる、そういう非常にいい位置にある。そういう意味で、内部監査部門に数を投入する、これは当然のこととして、やはり質の高い人材も投入すべきだと思います。それによって、内部監査部門の経験者の中から将来の経営層が出てくる、そういうことも想定できるのではないのかと思います。

 それから、リスクマネジメントに関しましては、企業価値向上に向けたリスクマネジメントと、資料にも書いてありますけれども、その重要性が増しているということです。この点に関しましては、企業の行動に対してブレーキをかけるという、そういうリスクマネジメントも重要ですけれども、日本の場合は、サラリーマンの経営者が多いということもあるんでしょうけれども、やらないという判断をする、もしくは、誰かがやりたいといったときに、それを阻止するとか、その問題点を指摘するということが多過ぎるのではないのかなと思っています。

 例えば、デジタル化に関して、日本は革命的な技術を提供できていない。後発になっている。コロナに関してもそうだというふうに私は認識をしています。そういう意味で、やらないリスクということを、内部監査としても、もしくは取締役、それから監査役、そういう人たちが監視していく、モニターしていく、そういうことも重要になってくると思います。

 それからもう1点、新市場区分に関しましてですが、プライム市場がより強いガバナンスを求められるというのは、これは当然だろうと思います。

 ただ、上場基準としてマストで入るものと、それからコンプライもしくはエクスプレインの選択のできるものとについて、いろんな方がおっしゃっていたように、区分をして対応することが必要だろうと思います。

 私からは、親子上場に関して、以前に議論したことなんですけれども、特にプライムに関して申し上げたいということがあります。それは、親子が、親も子も共にプライムにいるということは、合理的な投資家の視点からは、私はあり得ないと思います。

 ただ、この点は上場基準の問題であって、コードの問題ではないのかもしれません。コードとして親子上場に関しましては、まず、親会社に対して、過半数の社外取締役を要請する。指名委員会、報酬委員会の設置を要請する。子会社に対する将来の経営方針、つまりどういうふうに子会社と自分たち親会社の関係を見据えていくのか、その開示が必要だろうと思います。当然、子会社に関しましても、過半数の独立社外取締役を要請することが求められると思います。

 私からは以上です。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、次、続きまして上田さん、どうぞお願いいたします。

【上田メンバー】
 ありがとうございます。では、私からは、まず、資料1の内部監査、リスクマネジメントに関してコメントさせてください。

 内部監査については、ほかの委員の皆様もおっしゃっておられましたけれども、大変重要な課題だと思います。ただ、これはイギリスの企業に聞いてもそうなんですが、ガバナンス改革が始まった当初、内部監査部門というのは、ウオッチドッグといって、口うるさい人たちが集まるという、決してマネジメントから見ると、好まれているようなところではなかったというところからスタートしているということです。日本の今の発展の在り方というのも、こういう同じような流れなのかなと思って見ております。

 そういう中で、先ほどほかの委員もおっしゃっていましたけど、内部監査部門というものがそういう、やや嫌な、嫌がられているウオッチドッグのような部門ではなく、今後、マネジメント階層に進む中で必要な、業務全般のリスクも含めて見渡せるという、そういうキャリアパスとして使われている会社も、昨今、商社等であるとのお話も聞きます。そのため、こういう使い方というのをすることで、内部監査部門の重要性というもの、そしてそういったものを意識した経営層というところにも、つながるのではないかと思います。

 その上で、デュアルレポーティングですが、これはCEOが何か問題を起こしたときに限らず、取締役会の重要な監督機能に関連するものとして、やはりCEO、社長以外の取締役会等に対する報告というものは、行われるべきであると思います。また、先ほど岡田様からもございましたけれども、監査役の場合、特に独任制の監査役というのは大変強い権限を持っていて、特に不祥事が起きたときには、独任制の強さというものが大変発揮されるものと思います。そのため、こういった監査役との共同体制というものも、ぜひ強化するような形で、ガバナンス・コードで後押しできればよろしいのかなと思っております。

 併せてリスク管理、リスクマネジメントですが、海外の取締役会の機能について読んだり調べたりしますと、リスクアペタイトという言葉が大変多く出てきます。つまり、経営として、どのようなリスクを取っていくか。リスク許容度とか、リスク選好度とかというふうに日本語では訳されるかと思いますが、このリスクアペタイトというのは、コードが求める攻めのガバナンス、迅速果断な経営判断を可能にするために取るべきリスク、あるいは取れるべき、取れる範囲のリスクというものを、経営として認識するという仕組みだと思います。中でも、今リスクの範囲が大変複雑化しておりまして、例えばサステナビリティの問題も、経営上、重要なリスクになってきています。サプライチェーン全般を見渡して考えなければいけないという中で、大変重要にもなってきておりますので、これは取締役会の機能の1つとして、このリスクの認識というところも強調するようなコードになるとよろしいのではと思います。

 続いて、2つ目の市場区分に関する部分でございますが、これまではプライム市場の国際化といったところの議論が強かったかと思いますが、少しグロース市場への目配りというものも必要かなと思っております。必ずしもグロース市場にコードを広く深く適用するということではなくて、グロース市場の上場会社が、今後、市場をスタンダードあるいはプライムにステップアップする中で、このガバナンス・コードというのは大変重要になってきます。また、社内体制を整備する上での指針にもなりますので、比較的早い段階で、グロース市場へもこのガバナンス・コードが目配りしているといったところを発信していただければと思います。

 例えば社外取締役は全上場会社に義務づけられていますので、その独立性であるとか、こういった課題を共有できたら、今後日本のスタートアップ企業がどんどん発展していく中で有用かと思います。

 最後に、グループガバナンスです。グループガバナンスについては、プライム市場はもとより、スタンダード市場を含めて、少数株主保護という観点からは、重要な課題かと思います。特にプライム市場以外の場合には、機関投資家による規律というものも働きづらくなるのかなということも予想されますので、このグループガバナンスの規律付けというものを、今後もしコードに入れられるのであれば、これはプライム以外の、スタンダード市場においても認識されるべき課題かなと思っております。

 以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして翁さん、どうぞお願いいたします。

【翁メンバー】
 翁でございます。

 まず、内部監査につきましては、皆様おっしゃいましたとおり、レポーティングラインについて、取締役会、監査役会、監査委員会等に対して、しっかり確保すべきということに加え、監査部門を質・量とも確保し、経営トップが監査の重要性をしっかり認識し、内部監査の独立性を確保し、連携して情報共有しながらやっていくということは非常に重要でございますので、これを書いていくということが大事だと思っております。

 また、リスクマネジメントにつきましては、グローバル化に伴うグループマネジメントの重要性、また、デジタル化などに伴う新たなリスクに対する多様な視点からのマネジメントが必要になってきているということについても、しっかり認識しておく必要があると思います。

 2点目ですが、プライム市場についてでございますが、これについては高いガバナンスを期待したいと思っております。例えば社外取締役を中心とする指名委員会、報酬委員会が設置され、そこで実質的に高いガバナンスが図られること、また、国際的な視点で考えれば英文表示、こういったことなどを求めることがあると思うんですが、そのほかにも今日、様々な、こういった基準があるのではないかという御意見がありました。おおむね私は、そんなに違和感はなかったんですが、ただ、上場基準を設けて、遵守を義務づける、強制するという手法の適用に当たっては、いろいろ考えておかなければいけないことがあると思っております。これはもう皆さん、御指摘の点もあるんですけれども、コーポレートガバナンス・コードは、全てコンプライでなくても、エクスプレインすればよい。むしろ、言い換えれば上場企業のガバナンスの質はどうなのか。そういった定性的判断を投資家がするということも非常に重要だということがあると思っています。

 プライム市場の上場基準を、ある線に決めるということになりますと、エクスプレインの余地というのが排除されることになりかねないわけですから、項目によってはあまり適切でないケースも出てくる可能性があるということについて、しっかり配慮しておく必要があるということだと思っています。その点のチェックということが大事だということと、それから上場基準の考え方とコードの考え方を、きちんと整理して議論しておくということが大事だと思っています。

 それから、定性的な部分が大事ということで申し上げましたが、これは市場構造専門グループで議論が出ましたけれども、エクスプレインの余地を残す場合、その質を判断するのは誰なのかというインプリメンテーションが非常に重要になってくるという議論がありました。基本的にはすごく難しいし、それを、取引所が判断するわけでもないだろうという議論でございました。本来は、そのガバナンスの優劣を見るのは市場、投資家のはずであって、市場参加者が期待する市場慣行的なものとして、本来は期待されるべきという議論もございました。

 そういう意味で、こういった基準を設けるというのは、とても難しいことだと私は思っておりますけれども、今回、特にプライム市場に求める上場基準というものを考えていくということになると思うんですが、先ほど言った、エクスプレインの余地を残さないほうに振れたときの問題点はないかというチェックとか、それから、今回改訂される高い水準のコーポレートガバナンス・コードについて、これにエクスプレインも含めて真摯に対応し、対話していくことが、今後のコーポレートガバナンスの質の向上については、引き続き重要であるということについては、引き続きしっかり共有しておく必要があるかなと思っています。それが2点目です。

 最後ですが、最後に、いろいろ書いていただいた今までの議論について整理していただいて、私もこういった項目について、コーポレートガバナンスの論点として、これから考えていけばいいと思っておりますが、特にSの部分で、ダイバーシティの確保とか、働き方とか、そういったことについて、非常に我が国の企業にとって重要であるということが指摘されていました。私も本当にそうだと思っておりまして、これを取締役会で議論すると同時に、開示を促していくということがとても大事だなと思っています。そういう意味で、これは多分、これからの開示の在り方ということに関わってくることだと思うんですが、今後どう有価証券報告書に開示していくのかというようなこと、これは恐らく、そういった開示になってくると、横並びで比較することは可能になっていって、そうだとするとすごく、多数の企業はこういうふうにやっているんだということが分かってくると、行動経済学的にも非常に、そういったことが効果的に機能するかもしれないということもあるかと思います。ガバナンス・コードの関連とともに、どういった開示が効果的かということについても視野に入れて、ぜひいろいろと議論が行われることを期待したいと思っております。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして岩間さん、どうぞお願いいたします。

【岩間メンバー】

 ありがとうございます。皆さんいろいろ御意見を言っていただいているので、私としては、私が今考えていることだけ追加させていただきたいと思います。

 1つは、監査の信頼性の確保という観点ですけれども、監査、リスク及び内部統制について非常に充実したコードにしていくということが基本方針ではないかと思うんです。その際に、現在、日本のガバナンス・コードでは、第4章、取締役会等の責務にまとめて記載がありますけれども、この際、監査、リスク及び内部統制については、むしろ独立した章立てにして、内容を充実させていくことがいいのではないかと思います。

 監査の信頼性の確保については、皆さんおっしゃっているように、少なくともデュアルレポーティングラインは必須であろうと思います。その際に、監査役会設置会社のケースをどういう具合に捉えるかということになるのではないかと思います。要するに、今、監査役会設置会社の監査役の役割というのは、もちろん非常に強力なものではありますけれども、やはりパワーとしては限界的な要素を含んでおるということで、一本のラインでいくということになりかねないという状況だと思いますので、その際にはデュアルレポーティングラインとして筆頭社外取締役もしくは社外取締役である取締役会議長に直結するラインを新たに設けるということにしてはどうかという具合に思います。

 それから、プライム市場について言いますと、大体皆さんおっしゃったとおりだと私思いますけれども、1つは、電子プラットフォームの使用については、プライム市場の上場企業については、もう少し強制的にするかということも含めて考えていただいたらいいのではないかと思います。株主総会の開示資料の迅速化について、いろいろ絡んでくることもあると思いますので、そういったことも御検討いただいたらどうかと思います。

 それと、先ほどから御指摘のあったシステムリスク、サイバーセキュリティーの関係について、どういう具合にリスクマネジメントのところに、これは先ほどの監査の信頼性に絡むところだと思いますが、そういうこともお考えいただいたらどうかなと思います。

 それと、これはちょっと細かい、その他の話になりますが、前回、川北委員からも御指摘がありましたけれども、確定拠出年金制度についてでございます。現在、コーポレートガバナンス・コードでいいますと、原則2-6の補充原則に企業年金における利益相反の関係が記載されておりますけれども、それとまた別に、確定拠出年金制度採用企業については、従業員の福祉を充実する観点から、適切な運用プログラムの提示と、社員教育の徹底について、何か記載をしていただくといいのではないかと思います。これはSの部分にも絡む話だと思いますが、現在、確定拠出年金制度の実態を見ると、実際のプログラムは非常に長期的な投資、長期的な資産形成にそぐわないような内容になっているという実態があるようでございます。そういうことについては、もう少し企業経営サイドとしてしっかりと取り組んでいただくという要請をしてはどうかなと思っております。

 私からは以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして武井さん、どうぞお願いいたします。

【武井メンバー】
 武井です。よろしくお願いします。

 第一に、内部監査部門と監査担当役員とのデュアルレポートの話ですけれども、私もこれは重要だと思っております。なお、機関設計の話が出ておりますけれども、私はこの点は別に監査役会設置会社であれ、ほかの機関設計であれ、書き分ける必要はなく同じように書けばいいと思います。

 監査担当役員、すなわち監査役、監査等委員、監査委員が、持っている法的な調査権限は、別に監査役にあるだけでなく、監査等委員、監査委員も全部共通です。逆に言いますと、こうした監査担当役員が僅か五、六名しかいない中で、人の助けも借りずに、いろんなことを調査するのはどのみち無理なわけで、監査役も含めて、こういった内部監査部門との連携を図る必要性があります。これは別に、監査役であろうと、監査等委員であろうと、監査委員であろうと共通の話です。内部監査部門との連携は、ちょうど2002年の商法改正のときから、日本監査役協会からもずっと要望してきたことであり、その後の会社法改正でも何度か取り上げていただいて、前に進んでいる話です。特に機関設計の別で何か分けることなく、内部監査部門と監査担当役員とのデュアルレポーティングということを書いてよいと思います。これが私の1つ目の意見です。

 また、今の点に絡みまして、内部監査を第3線と言い切っていいのかどうかは少し微妙ですが第3線と言わせていただくと、こういった第3線の方との連携だけでなく、第3線よりもより手前で情報が入る第2線との連携も重要です。第二線の中で特に法務機能、法務担当者の法務機能の機能強化も、守りという点でも、リスクテイクという点でも大事なのだと思います。

 日本の法務機能は、特にグローバルで戦っていくリスクマネジメントとして、先ほど川北先生からもお話がありましたけれどもいろんなことを阻止するということではなく、何か解を見つけて、前に進める。健全なリスクテイクを進めていくという点で重要なのですが、まだまだ日本の上場会社の中には、そういった意味での法務機能が弱いところも多いのではないかと思います。そういった観点から、まさに健全なリスクテイクを進める機能として、第3線の内部監査だけではなく、2線のほうも含めた機能強化もグローバルな企業価値向上のためには大事なのだと思います。

 ガバナンス・コードでも、取締役会の機能等等でも攻めのガバナンスを前提としてリスクテイクを行うと書かれてありますが、先ほど高山さん等もおっしゃったとおり、取締役会の場でどういったアジェンダセッティングをするのか、どういうアジェンダをかけて、どういった視点で議論するのかという、アジェンダセッティングの機能も大変重要です。健全なリスクテイクを進めていこうと思ったら、そういった取締役会のアジェンダセッティングを法務機能も関与する、手伝うというところも大変大事だと思います。そういった観点を含めた第2線の機能強化は大事かなと思います。

 以上が資料1の関連です。

 次に、資料2のプライム市場の絡みでございます。皆様がおっしゃらなかった点を1点補足しますと、最近、私が見たJPX400の指標の上場会社の調査結果で、この数年の間に、利益率とかROEについて確かに有意な向上が見られますけれども、他方で同時並行で、研究開発費についても有意な削減傾向が見られるのではないかと。そういう調査結果がございました。この結果についてはいろいろな議論があるのかもしれませんけれども、JPX400銘柄でなくてもプライム市場銘柄においても、いろんな機関投資家の方が参加され、その中には当然短期志向の機関投資家の方も相当数いらっしゃるわけですので、こうした調査結果等を見ておりますと、プライム市場に上場する上場企業側としては、相当な覚悟を持って、こうした研究開発投資であるとか、あと前回から議論のある無形資産への投資、そういったものを削減しない、縮小しないというものがないといけないのではないかと思います。

 その観点から、前回から議論になっている無形資産の議論などもやはり相当重要で、何らかガバナンス・コードにはきちんと書き込まないといけないのではないかと思います。その上で今の点の絡みで、前回から議論になっていますサステナビリティ委員会についても、私はガバナンス・コードにきちんと、例示でもいいから書き込むべきではないかと思っています。

 人的資本、無形資産、あとサプライチェーンの視点も含めて、自社にとってマテリアリティのある事項について、全社で横串を刺して取り組む態勢を整備するということ。あと、ヒト・モノ・カネを含めた経営資源がちゃんとついてくる社内態勢を整備することが本当に重要なのだと思います。その観点からみますと、CSR委員会ではどうしても不十分で、CSR委員会を発展させ、経営トップの方なり、副社長クラスの方なり、そういった上の方がきちんと入った形で、相当な重みのある社内の委員会をつくる必要があります。そうした見える化をする、さきほど大場メンバーもおっしゃったような見える化をして、組成する。そういうことをして初めて、全社を巻き込んだ横串を刺した議論になり、かつ、社内での経営資源がついてくるのだと思います。

 プライム市場においてはいろんな短期志向のノイズも入ってくるかと思いますが、自社のサステナビリティをめぐる取組みとして、相当な覚悟を社内外に示すという意味で、サステナビリティ委員会について、コンプライ・オア・エクスプレイン・ベースで、かつ、あくまでも1つの例示という形で全然構わないので、何らか言及していただくことが、私は重要ではないかと思います。

 3点目ですが、資料2の絡みで、あと今のサステナビリティの話にも絡むのですが、デジタルトランスフォーメーション(DX)について、DXはまさに待ったなしになっているわけですけれども、DXをめぐるガバナンスも、私はサステナビリティガバナンスの一環だと思っております。特にデジタル、DXによっていろんなことが便利になる、いろいろ新しくできることが増える、効率性が高まるということと、それt同時並行で新たな社会的課題、いろんな利害調整に、まさに企業が直面するということになります。ですので、上場会社がこういった新たなデジタルをめぐる課題に、フォワードルッキングで取り組む態勢も、サステナビリティへの取組みの一環として進めていくことが重要だと思っています。以上が3点目です。

 最後に4点目は総論的な話なのですけれども、私はこのガバナンス・コードは、やはりコンプライ・オア・エクスプレインというスタンスは堅持すべきなのだと思います。コンプライ・アンド・エクスプレインとなる事項は一部にあっていいとは思いますが、プライム市場であるからといって一部の事項を強制コンプライとまでするということは、私はやるべきではないと思います。さきほど翁メンバーもおっしゃいましたけれども、まさにエクスプレインの質をきちんと見て、それを踏まえていろいろ対応するということが大事でして、強制コンプライといったことに対しては慎重であるべきだと私は思います。

 あと、池尾先生はよく、ガバナンス・コードは北風政策ではなく太陽政策とおっしゃっていました。まさに攻めのガバナンスとして、企業側の自主的な行動を過度に制約しないということがガバナンス・コードの出発点でございますので、そこの出発点はやはり堅持した形でのコンプライ・オア・エクスプレインが適切で、強制コンプライまではいかない形での整理が私はいいのではないかと思っております。
以上となります。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 以上で、本日御参加いただいているメンバーの皆様方からは、全員の方から御発言をいただきました。まだ若干、いただいている時間には余裕がありますので、もし追加で、お気づきの点、御質問、御発言等ございましたら、お伺いしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

 特によろしゅうございますでしょうか。それでは、皆様方からいただいている時間よりは早めではありますけれども、本日はこのあたりとさせていただきたいと思います。

 本日も、多数の貴重な御指摘、御意見をいただきまして、どうもありがとうございました。本日いただきました御議論をもちまして、個別論点に関する議論は一区切りといいますか、そういうことになります。

 そこで、これまでいただきました御議論を踏まえて、次回は、コーポレートガバナンス・コードの改訂案文について御議論をお願いしたいと思います。

 それでは、最後に事務局から御連絡等ございましたら、お願いいたします。

【島崎企業開示課長】
 本日はどうもありがとうございました。次回のフォローアップ会議の日程でございますが、皆様の御都合を踏まえました上で、最終的に決定させていただきたいと思いますので、御案内をお待ちいただければと思います。

 事務局からは以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。
 

―― 了 ――

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企画市場局企業開示課

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