スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議(第30回)議事録
- 日時:
令和7年6月2日(月曜日)15時00分~17時30分 - 場所:
中央合同庁舎第7号館 13階 共用第1特別会議室
【神田座長】
それでは、皆様方、時間になりましたので、始めさせていただきます。ただいまからスチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議、本日は第30回目の会合になりますが、を開催させていただきます。皆様方には、いつも大変お忙しいところを御参加いただきまして、誠にありがとうございます。
本日の会議でございますが、対面とオンライン会議を併用ということで開催させていただきます。
また、本日の会議の模様は、ウェブ上でライブ中継をさせていただいております。議事録につきましては、通常どおり作成の上、金融庁のウェブサイトにて後日公開させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。
本日でありますが、川北メンバーと冨山メンバーが所用のため欠席と伺っております。また、松本メンバーは、所用のため途中参加予定と伺っております。片山メンバー、シッソンメンバー、松本メンバーは、オンラインでの御参加ということになります。
それではまず初めに、今回フォローアップ会議を開催するに当たりまして、新しくお一方にメンバーとして御参加いただくことになりましたので、事務局から御紹介をお願いいたします。
【野崎企業開示課長】
事務局を務めさせていただきます金融庁の野崎と申します。どうぞよろしくお願いします。
このたびは、新たに、ケリー・ワリングさんの後任としましてフォローアップ会議のメンバーに御就任いただいた方を御紹介させていただきます。
ジェン・シッソン様でございます。
【シッソンメンバー】
おはようございます。このような機会をいただきまして、ありがとうございます。
【野崎企業開示課長】
ありがとうございます。その他、引き続き御参加いただくメンバーとオブザーバーの皆様につきましては、名簿をお手元に配付しておりますので、そちらを御覧いただければと思います。
また、事務局に異動がございましたが、時間の都合もございますので、配席図をもって紹介に代えさせていただければと存じます。
【神田座長】
どうもありがとうございます。それでは早速ですが、議事に移らせていただきます。本日は事務局である金融庁と東京証券取引所から資料の御説明をしていただきます。その後、質疑応答、討議の時間とさせていただきます。
それではまず、金融庁から御説明をお願いいたします。
【野崎企業開示課長】
それでは、金融庁から資料2の縦紙に沿って御説明させていただければと思います。
まず、1ポツの「はじめに」でございますが、2014年のスチュワードシップ・コードの策定、それから2015年のコーポレートガバナンス・コードの適用開始以降、両コードの下でコーポレートガバナンス改革には一定の進捗が見られ、さらなる改革の実質化に向けて、2023年、それから2024年にアクション・プログラムを策定いただいたところでございます。
下から2段落目でございますが、引き続き改革の実質化を促しつつ、緊張感ある信頼関係に基づく対話の促進に向けて、コーポレートガバナンス・コードの見直しなども含め今後の方向性について本日は御議論いただければと考えてございます。
Ⅱのフォローアップと今後の方向性でございます。まず「1.稼ぐ力の向上」でございます。こちら、今後の方向性を御覧いただければと思います。1つ目でございますが、2年前の東京証券取引所の要請を踏まえた対応が着実に進んでおりますが、引き続きこうした取組の後押しをしっかりしていくとともに、2つ目でございますが、持続的な成長の実現に向けた経営資源の適切な配分の実現のため、コーポレートガバナンス・コードの見直しなども含め、以下を検討することとしてはどうかと記載してございます。
まず、①としまして、経営資源の配分先には、設備投資、研究開発投資、地方拠点の整備等・スタートアップ等を含む成長投資、人的資本や知財への投資など様々の投資先が考えられ、これらの多様な投資機会があり、無形資産の投資については前回のコーポレートガバナンス・コードの改訂にも盛り込まれたところでございます。人的資本投資につきましては、開示充実の観点から、有価証券報告書における従業員給与・報酬まわりの開示の充実というところを記載してございます。
次に、②でございます。こちらは資料3のスライド集を御覧いただければと思います。そちらの15ページに生命保険協会のアンケートを掲載させていただいております。こちらの右下を御覧いただきますと、手元資金の水準につきまして、企業側は適正と考えている一方で、投資家側は余裕があると考えており、こちらで認識のずれがあるというような指摘もなされております。さらに、16ページの右図でございますが、現預金保有比率は2008年以降増加傾向が続いており、欧米との差も顕著になってきているという状況でございます。また資料2に戻っていただきまして、②でございます。こうした点も踏まえ、経営資源の配分に関し、現状の資源配分が適切かを不断に検証しているか、例えば現預金を必要以上に積み増していないかということを問題意識として記載させていただいてございます。
続いて、「2.情報開示の充実・投資家との対話促進」というところでございます。こちらはスチュワードシップ・コードの改訂、それからスチュワードシップ活動の実態調査、有価証券報告書の総会前開示に向けた環境整備、英文開示の義務化など様々な取組を行ってきたところでございます。
今後の方向性を御覧いただきますと、建設的な対話のさらなる促進に向けた実質化を進めるため、スチュワードシップ活動事例の共有や充実化、それからこれに基づく関係者間での議論の場の設置、また、有価証券報告書の総会前開示の状況のフォローやさらなる促進に向けたコーポレートガバナンス・コードの見直し、それからこれと併せまして、企業による取組が容易となるよう、総会資料の書面交付の不要化の議論などを進めるとともに、有価証券報告書全体の記載事項の整理、スリム化の検討、こういった点を掲げさせていただいているところでございます。
続きまして、「3.取締役会等の機能強化」でございます。こちらも複数の企業の御協力を得て事例集を公表させていただいたところでございます。御協力いただいた企業の方々にこの場を借りてお礼申し上げたいと思います。
中身でございます。特にグローバルに活躍されている上場企業においては、意思決定・監督を行うボード機能とマネジメント機能の分離が進んでおり、取締役会の議論の実効化に向けた自律的な機能発揮とともに、それをサポートする取締役会事務局の役割も重要と書いてございます。
また、独立社外取締役につきましても、形式では整ってきたと評価がある一方で、企業と一定の資本関係にある他社から連続的・継続的に派遣されている役員を独立役員として届けている事例があり、こうした役員が「一般株主と利益相反の生じるおそれがない者」と言えるのかというところについては指摘もなされているところと承知してございます。独立社外取締役につきましては、その質の担保・向上も見極めつつ、いずれはグローバルに活躍するプライム企業では過半数とすべきといった指摘もあると承知してございます。
こうした点も踏まえまして、今後の方向性でございますが、こうした様々な課題、特に取締役会事務局の機能強化に向けた議論の場としまして、コーポレートガバナンス実践コンソーシアム(仮称)を立ち上げて、本日お示ししている事例集を基にさらなる充実化の取組をしてはどうかというところを記載させていただいてございます。
次に、「4.市場環境上の課題の解決」でございます。こちらは3つ掲げてございます。まず1つ目としまして、政策保有株式の開示、特に補充原則1-4①との関係で、売らせない圧力問題にしっかり対応していく必要があるというところ。それから、大量保有報告制度につきましては、課徴金額の水準の引上げ、公開買付届出書とリンクさせることによる開示の徹底を図っていく。それから3つ目、親子上場などにつきましては東京証券取引所における様々な取組の推進というところについて記載させていただいてございます。
最後の項目のサステナビリティを意識した経営でございます。こちら、サステナビリティを意識した経営が進展する中で、開示・保証につきましては今、金融審議会で議論を進めているところでございます。事例集におきましても、ジェンダーを含む多様性確保、コーポレート・カルチャー、こちらにつきましては、昨年の英国のコーポレートガバナンス・コードの改訂でも明記されてございますが、こうしたものを意識した経営や対話の充実という協議も進められているというところでございます。
また、足元は企業を取り巻く社会環境の不確実性が高まっているということで、こちらに記載しておりますようなサイバーセキュリティーリスクなど様々なリスク対応の重要性も記載させていただいてございます。OECDの直近の改訂原則でも、サステナビリティとレジリエンスはセットで語られているというところでございます。
最後、今後の方向性でございます。2つ目のポツでは、サステナビリティ情報を含む非財務情報の虚偽記載等に対する責任の在り方(セーフハーバー・ルールの整備)に関する課題と、3つ目のポツとしまして、国際的な人的資本開示の議論についてインプットをしていくというようなことを記載させていただいてございます。
続きまして、残りの資料、資料4を簡単に御紹介させていただければと思います。こちらは大部の資料でございますので、ごく簡単に御紹介させていただければと思います。
1ページ目の「はじめに」のところでございます。昨年のアクション・プログラム2024におきまして、議決権行使と対話は点と線の関係にあるということ、そして、こうしたつながりを意識しながらどのように対話をすることが重要なのかというような視点が大事であること。また、さらには、議決権行使助言会社をめぐる様々な御指摘もあったというところでございますので、こうした観点を総合して、スチュワードシップ・コードの遵守状況の検証を行うべきことが提言されたところでございます。
実際の検証結果でございます。4ページ目で概要を記載させていただいてございます。左側にございますように、アセットオーナー、運用機関、議決権行使助言会社それぞれについて、現状意識、課題を記載しているところでございます。特にエンゲージメントの欄におきましては、企業、投資家双方から見た意義のある対話、逆に意義の乏しい対話などについても触れてございますが、具体的な詳細については各事例を御参照いただければと思います。
続きまして、資料5でございます。こちらは取締役会の機能強化の事例集というところでございます。こちらの1ページ目で、同じく昨年のアクション・プログラム2024において、特に取締役会事務局に焦点を当てた事例集についてコメントをいただいていたところでございまして、今回の資料を作成してございます。
以上、今回お示ししている資料集、事例集、分厚いものが2冊ございますが、それでもやはり文字で表し切れない様々な取組をそれぞれ一、二枚程度でまとめてしまっているという部分もございますので、今後この内容を十分御活用いただいて、さらなる実効的な取組につなげていただくためにも、先ほど言及しましたコーポレートガバナンス実践コンソーシアム(仮称)において、今後より深度ある議論をお願いできればと考えてございます。
最後、論点の1枚紙を御紹介して終わりにしたいと思います。
まず1つ目、資料2に記載の論点につきましてはコーポレートガバナンス改革という大くくりの形で一つにまとめてございますが、お示しした案は、コーポレートガバナンス改革の現状と課題を的確に捉えているのか、改革のさらなる促進のため優先して取り組むべき事項は何かということを御議論いただければと考えてございます。
2つ目と3つ目の事例集でございますが、まず、資料4の事例集につきましては、さらなる実質化のために取り組むべき事項について、課題・事例の収集・共有の在り方も含め御議論いただければと思います。取締役会の事例集につきましては、今後様々な機会を捉えて充実化を図っていきたいと思いますが、現時点での御意見をいただけると幸いでございます。
一番最後のその他でございます。こちらが一番重要な論点と認識してございますが、これ以外に、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上に向けたコーポレートガバナンス改革のさらなる促進のため取り組むべき課題は何かあるのかと、こちらについてもぜひ御意見をいただければと考えてございます。
事務局からは以上でございます。
【神田座長】
どうもありがとうございました。それでは引き続きまして、東京証券取引所から御説明をお願いいたします。よろしくお願いします。
【渡邉上場部長】
それでは、資料7の東証における最近の取組という資料で御説明をさせていただきます。
2ページ目の「はじめに」ということで、最近の取組の起点になった経緯などを記載させていただいているものでございます。
3ページになります。弊社では、上場企業の中長期的な企業価値向上を支えて、日本経済の活性化に資するという大目標の下、金融庁とも連携させていただきながら、コーポレートガバナンス・コードの導入や改訂、市場区分の再編といったような取組を進めてまいりました。
4ページになります。市場区分の再編の後も、目標の実現に向けてどういうことができるかというのを検討しておりまして、2年前になりますが、2023年3月に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応の要請」を出させていただいたところでございます。
5ページになります。直近のところでは、こちらに記載させていただいております大きく5つの課題に対する取組を進めております。本日は左側の3つの取組について御紹介させていただきたいと思います。
まず1つ目が、6ページからになりますが、資本コストや株価を意識した経営の推進のところでございます。
7ページは、こちらは2023年3月に出しました要請の趣旨を抜粋したものでございますので、こちらは繰り返しになりますので、説明は割愛させていただきます。
8ページも、2年前に出した要請で、具体的な要請の内容を示しているものでございますので、こちらも時間の関係がありますので省略させていただきます。
9ページでは、要請から2年が経ちまして、自社の取組について開示をしていただいたという上場企業が大きく進展してきているという状況でございます。特に左上の棒グラフを御覧いただければと思いますが、プライム市場を中心に開示が進展しているという状況でございます。
一方で、現状につきまして投資家の皆様とコミュニケーションをしてみますと、企業の取組状況については、大きく3つの企業群に分かれているとのご意見をいただきました。そこで、それぞれの企業群に対しましてどういったアプローチで取組を促していくかというところについて、昨年の8月に方針を公表しているということでございます。
具体的には、1つ目の自律的に取組を進める企業につきましては、これは引き続き応援をしていくということになります。
2つ目の、開示はされているものの、投資家のほうから見ると、上場企業の開示と投資家の目線との間にギャップを感じている企業群でございます。こうした企業群につきましては、投資家との円滑なコミュニケーションを支援するために、投資家が評価をしているような事例とか、あるいは逆にギャップを感じているような事例につきまして、そのポイントを事例集といった形で取りまとめて紹介させていただく取組を進めております。
3つ目は、まだ自社の取組方針を開示いただけていない企業でございます。こうした企業の皆様に対しましては、粘り強く弊社の取組についていろいろな階層で御説明する機会を設けさせていただいたりとか、あるいは企業規模や株主構成に応じたIR体制の確保をお願いするなどの取組を進めているところでございます。
資料のスライド10から14につきましては、今、簡単に御説明しました3つの企業群に対する施策の詳細でございますので、こちらも説明は割愛させていただきます。
15ページまで進んでいただきまして、15ページは御参考でございます。こちらも投資家、特に海外の投資家との円滑なコミュニケーションを支援するという観点で、今年の4月からプライム市場上場企業を対象に英文開示の義務化を始めております。その内容を参考としてつけさせていただいているものでございます。
次の16ページは、今年の4月に、弊社の取組につきまして上場企業の皆様に対して取組を進めていただく上での課題について、アンケート調査をしているところでございます。結果はこちらに示しているとおりでございます。
こうした上場企業へのアンケートの結果とか、あとは投資家からのフィードバックなども踏まえまして、次の17ページになりますが、今後も改革の流れを止めないということで、企業の課題解決を応援するための材料の提供や、機関投資家とのコミュニケーションの促進などこれまでの取組をさらに進めていくということを考えているところでございます。以上が資本コストの関係でございます。
次に、18ページ目からが2つ目の親子上場に関する取組でございます。19ページのほうがまず背景でございます。こちらは、棒グラフを2つ示しておりますとおり、左側のグラフでは、上場子会社の数や上場会社数に占める割合は近年緩やかに低下しているという傾向がございます。一方で、右側のグラフでは、子会社とまではいかないまでも、20%以上を保有するような法人大株主がいるような上場企業の数や割合は緩やかな増加傾向になっているというところがございます。
こうした状況を踏まえまして、次の20ページになりますが、2023年12月に、親子関係あるいは持分法適用関係、つまり、20%以上の株式を持つ・持たれるというような関係にある上場企業を対象に、コーポレート・ガバナンスに関する報告書のほうで開示を求めておりますグループ経営・少数株主保護の開示の記載上のポイントを整理して公表しております。また、本年2月には、投資家の目線・期待や、投資家が自らの期待と上場企業の取組にギャップを感じやすいようなポイントなどを紹介するといったような取組を進めているところでございます。
21ページ目は、具体的にギャップのある事例、こんなことを紹介しておりますというのを参考までにお示ししているものでございます。
22ページのほうに進んでいただきます。22ページは、今後も引き続き、企業の開示状況をしっかりフォローアップしていく、それによって事例集の取りまとめを行っていただくというところを取り組んでいきたいと思っています。さらにその下のほうにもありますが、上場制度の整備も含めて追加的な対応を検討してまいりたいと考えているところでございます。
最後3つ目が、最近増えております非公開化に関する取組でございます。24ページに進んでいただきまして、こちらが背景でございます。一番上にありますとおり、最近、上場企業におきまして事業ポートフォリオの見直しなどが進む中で、MBO、あるいは支配株主、親会社による完全子会社化の件数が増えてきているという状況がございます。こうした場面では、いわゆる公正M&A指針が策定された後、特別委員会の活用などの実務が進んできているところではございます。一方で投資家のほうから見ますと、特別委員会の実効性とか、あるいは価格の算定に関する不満の声も聞かれているところでございます。一番下になりますが、今後もMBOとか非公開化といった企業の動きは増えていくことも予想されますので、公正M&A指針の枠組みを後押しして、一般株主の公正な利益を確保していく、そういった観点で上場ルールの見直しを検討しているというところでございます。
具体的な内容は25ページになります。真ん中辺りのイメージ図を御覧いただければと思います。現状は、支配株主、親会社による完全子会社化の際に、①にありますとおり、少数株主にとって不利益でないことに関する意見を入手するというところと、②にありますとおり、株式価値算定の概要を含む十分な適時開示を行ってくださいというのを求めているところでございます。この規範の適用対象につきまして、MBOの場面とか、あるいはいわゆるその他の関係会社、つまり、20%以上を保有する会社による完全子会社の際にも、この規範を適用するということで拡大したいというのが今回見直しを考えている1点目になります。
下のほうになりますが、もう一つ規範の内容の見直しということで、入手する意見の内容につきまして、より積極的に一般株主にとって公正であることに関する意見を求めるとか、株式価値算定に関する重要な前提条件などの開示の拡充を図っていくというような見直しを考えているところでございます。
私の御説明は以上になります。
【神田座長】
どうもありがとうございました。それでは、討議に移る前に、本日御欠席の川北メンバーと冨山メンバーから意見書を提出していただいておりますので、事務局から簡単に概要の説明をお願いいたします。
【野崎企業開示課長】
まず、川北メンバーからの意見書を御紹介させていただければと思います。
1ポツ、2014年と2015年にコードが示されてから年月がたつことから、コードの内容は充実した。これ以上の内容の追加は原則不要だろう。何らかのものを追記する必要が生じるかもしれないが、そうであれば、不要になったものを削除もしくは脇に置く措置が求められる。コードに示されなくても、必要と思えば、自主的・発展的に対応することが理想である。
企業側のコードへの対応が表面的には順調に進んでいるように見えるが、客観的に評価できるかどうかは区々である。評価できない企業においては、その隙をいわゆるアクティビストが突いているのが現状だろう。その突かれた企業の相当割合において、実はその後の経営の質が向上しているのではなかろうか。この感覚は妥当かどうかはともかくも、企業側のコードへの対応の実質化が強く求められる。
投資家の対応も区々である。アセットオーナーがアセットマネジメント会社に対して量的に過大な要求をしているがために、いわゆる対話が広く浅くになってしまっている。この点はアクティビストの狭く深くの対極にある。例えばパッシブ運用の対象を絞り込み、投資することが重要ではないか。
この点、JPXが人的資本に重点を置いたインデックスの算出・公表を開始したのは評価できる。このようなコードの観点からの企業選別を一例としつつ、投資家として上場企業をより分けることが、コードがうたう対話の基盤づくりとして重要な段階になってきている。
最後でございますが、少し細部のことだが、開示情報で人件費(労務費を含む)の総額を把握できない。この数値が示されないと、企業が社会に対して貢献している数量が分からないという点は、投資家として隔靴掻痒である。
以上が川北メンバーでございます。
続きまして、冨山メンバーからの意見書でございます。ちょっとボリュームがあるので、飛ばし飛ばしという形で失礼させていただきます。
まず、CGコード10年間に指向してきた経営モデル、統治モデルは、監督と執行の分離度を高め、執行部に大幅な権限移譲をして迅速果敢な経営を促す一方で、取締役会は執行部への監督機能をメインの職責とするモデルである。
1つ目としまして、まず、取締役会が執行部を監督するということは、取締役会が経営トップのボスであることを意味している。このことはCGコード上明確にすべき。したがって、監督権の中核は、経営トップ及び取締役に関する人事権であり、それがない監督はおままごとにすぎない。その下に行きまして、昨今のガバナンス上の不祥事の根源、あるいはアクティビストに追及される問題の根源は、指名のいいかげんさに起因していることから分かるように、指名諮問委員会の在り方・実効性については、その機能、権限、責任において、指名委員会等設置会社の法定必置指名委員会と同等程度の主体性、主導性、責任性、説明義務をCGコード上のコンプライ事項として明記すべき。
続きまして、結局、監督と執行分離型のガバナンス構造において、取締役会の監督機能は執行部の経営プロセスに事細かに関与するのではなくて、意見書本文の①、②に掲げられてございますが、すなわち、結果管理型、人事権をてこにした監督権のガバナンスモデルなのである。結果責任に基づいてトップに対する人事権を的確に行使すること、このことはCGコードにおいて明記すべき。それが果たせないと考えるなら、取締役に就任すべきではなく、自らの知見が足りないと考えるなら、しかるべき勉強、鍛錬をすべきである。続きまして、少なくとも取締役選任議案に、候補者の適性に関して、取締役として最低限必要となる知見、資格、研修実績などの開示を義務づけるべき。
監督権の実質空洞化の関連で、今行われているプラクティスにはほかにも課題がある。1つ目は、いわゆる取締役会の実効性評価、もう一つは取締役会事務局。事務局は執行部のトップではなく、取締役会及びそれが代表するステークホルダーへの奉仕者であることもCG上明記すべき。
続きまして、監査等委員会制度に関する2つの空洞化問題ということでございます。現行、従来の監査役及び監査役会の看板の掛け替えになっている監査委員会が多く、その結果、取締役会の空洞化と監査機能の空洞化という2つの空洞化が起きるリスクが生じている。取締役監査委員もその本籍は取締役であり、経営上の最高機関である取締役会のメンバーとしてその職責を全うすべきことをCGコード上明記すべき。
続きまして、3線監査体制の充実と執行側での第3線となるポジションについて、世界標準で言うCAE(Chief Audit Executive)のようなCEOと比肩する高い地位のものとし、そこからCEOラインと監査委員会ラインへの並立的ダブルレポートラインを形成すべき。こちらもCGコードに書き込むべきということでございます。
最後、サステナ開示についてのコメントでございます。非財務情報開示の本旨が将来に向けた持続的な企業価値の向上に関する情報あるいはストーリー開示であること、すなわち、サステナ開示の内容は、将来の財務情報との関係で因果的循環構造にあるべきことはほとんど理解されていない。人的資本、ヒューマンキャピタルに関するエクイティストーリーを提示すること。こうした理解不足の結果、財務情報開示と同じく様々な数値を列挙することに終始する、あるいは標準的なきれい事の記述にとどまっているケースが大多数を占める実態がある。まずは、CGコードにおいて係る因果的ストーリー性、特に人的資本に関わるエクイティストーリーをここで語るべきことを明確にすることで啓蒙を図るべき。
以上でございます。
【神田座長】
どうもありがとうございました。それでは、本日はこれから残りの時間、メンバーの皆様方から御意見、御質問を出していただく討議の時間とさせていただきます。先ほど御紹介が事務局からありましたように、資料6で御議論いただきたい事項を掲げております。これを御議論いただきたいということではありますが、関連してほかの事柄等についての御発言でももちろん結構でございます。
いつものことで恐縮ですが、時間も限られておりますので、皆様方の御発言のお時間を確保できるよう計算させていただきますと、大変恐縮ですが、1人当たり5分以内程度をめどということでお願いできればありがたく存じます。なお、経過時間をお知らせするため、御発言から5分が経過したタイミングで事務局のほうから御発言の方にメモを入れさせていただきます。
対面で御参加のメンバーの方々におかれましては、御発言を御希望される際にはお名前のプレートを立てていただければありがたく存じます。御発言の際に、マイクを事務局からお持ちいたします。オンライン御参加のメンバーにおかれましては、御発言いただける場合には、会議システムのチャット上にて全員宛てにてお名前を入力の上お知らせいただければと思います。私のほうでそれらを拝見して、御指名をさせていただきます。
ということで、1年ぶりかとは思いますが、この会議、どなたからでも結構でございます。どの点でも結構です。いかがでしょうか。
それでは、佃さんからお願いいたします。
【佃メンバー】
ありがとうございます。それでは、先ほどの資料6、御議論いただきたい事項のうち、取締役会の機能強化を中心に幾つかコメントをさせていただきます。
まず第1に、取締役会の役割・責務についてです。コーポレートガバナンス・コードが施行されてからちょうど10周年になりますが、過去10年間のガバナンス改革では、取締役会の改革が非常に大きいものがございました。10年たった現時点で、取締役会の役割・責務を再確認する必要があると考えます。金融庁、経済産業省、東京証券取引所から出ている「社外取締役のことはじめ」の心得1には、「独立社外取締役の最も重要な役割は、経営の監督」そして、「中核は、経営陣の評価と指名・報酬」と明確に記載されています。ところが、「会社の事業が分かっていない独立社外取締役に口を出されたくない」などの意見をCEOや経営陣から聞くことが未だにあります。取締役会は経営を監督するために存在するということを全員が再認識する必要があると考えます。
2点目は、独立社外取締役の質の担保・向上です。資料では、取締役会事務局を含む課題を指摘していただいています。確かに取締役会事務局の機能強化は大変重要であると考えます。ただし、日本を代表するグローバルに活躍している企業、例えばプライム市場の時価総額上位100社では、取締役のうち過半数が独立社外取締役となっている企業が既に40社以上になっています。取締役会の実効性は、過半数を占める独立社外取締役の質に大きく依存しています。したがって、取締役会事務局の機能強化の一方で、そもそも取締役会の主役になった独立社外取締役の質の担保・向上が図れているかの検証が必要と考えています。
残念ながら、経営者や取締役会事務局から一部の独立社外取締役に関する質の低さに関する残念な話を仄聞します。監督する側の独立社外取締役が監督される側の経営者やサポート役の取締役会事務局からリスペクトされなければ、監督は機能しません。足元、アクティビストの要請や同意なき買収など取締役会を取り巻く環境は大きく変化しており、独立社外取締役には企業経営の見識と財務リテラシーが必須の要素になっています。したがって、独立社外取締役に対して質の向上を求め、経営を監督するのにふさわしいマインドとスキルを求めることが極めて重要です。独立社外取締役に対する認証制度の導入や経営リテラシー、財務リテラシー向上を図る研修の義務化などの検討は喫緊の課題であると考えます。
3点目は、機関投資家と企業との対話についてです。スチュワードシップ・コードに関する有識者会議におけるGPIFの説明資料によると、投資家と独立社外取締役との対話が2%にも満たないという実態が明らかになっています。独立社外取締役との面談を要請しても企業が応じてくれないという機関投資家の声も聞きます。株主から選任され、経営の監督を任された独立社外取締役が機関投資家と対話をほとんどしない、ましてや機関投資家が要請しても企業が応じてくれないという現状は直ちに改善されるべきであると考えます。独立社外取締役を機関投資家の前に出せないという企業側の懸念は理解できますが、そのような独立社外取締役は本来選任されるべきでないというそもそも論を議論すべき段階に来ているものと認識しています。
最後に4点目ですが、資料2にcash hoarding問題について記載されています。確かに現預金が長期間にわたり増加傾向が継続している事実もあるでしょう。しかしながら、この現預金過剰問題は、リーマンショック前に現預金をため込んでいると批判された日本企業の傷が、レバレッジをかけていた欧米企業と比較して浅かったという歴史を思い起こさせます。東京証券取引所による「自社株買いや増配のみの対応や、一過性の対応を期待するものではなく、継続して資本コストを上回る資本収益性を達成し、持続的な成長を果たすための抜本的な取組を期待する」との要請は極めて重要で、一過性の対応とならないように当局としても十分留意していただきたいと思います。会社の持続的な成長と中長期的な企業価値向上のためにというコーポレートガバナンス・コードの目的に立ち返りつつ、中長期目線を決して忘れずに、ショートターミズムに陥ることがないような対応が必要であると考えます。
以上です。ありがとうございます。
【神田座長】
どうもありがとうございました。それでは、オンラインで御参加のシッソンさんから御発言の御希望をいただいておりますので、どうぞお願いいたします。
【シッソンメンバー】
まずは、金融庁と東京証券取引所等の皆様にこのような対話をする機会をいただきまして、御礼申し上げます。今回このようにICGNを代表しまして、またグローバルなメンバーを代表しましてお話ができることを大変うれしく思っております。そして、このようなコーポレートガバナンスを日本で推進する上での議論に貢献できることを大変うれしく思っております。
また、日本は、コーポレートガバナンスを推進する上で大きな進展を図られております。そして、この素晴らしい進展の旅路を持続し、さらに構築をしていくという取組をされており、これを強く支援いたします。また、これは将来の政策の優先事項にも提案されている提案ですが、これを心から歓迎いたします。また、初期の段階ではありますが、ICGNとしては、機関投資家にとって重要な事柄に対して幾つかのインサイトを提供できればと思っております。
まず、企業と投資家との間におきまして、質の高い開示、それから対話を通じて関係を構築していくという中心的な目標を私たちは強く支持いたします。これは改革のアジェンダが成功する上で重要であります。そして、投資家が企業のオーナーであるということを明記するということは重要でありますし、また、長期的な持続可能な価値を創出する上で、企業の最善の利益に注力をしていくということが重要です。
また、コーポレートガバナンス・コードを再検討し、改訂を行うということも大変いいアイデアだと考えております。また、この質の高いガバナンスを支援するためには、重複などを削除していくということが重要であるということに私たちも賛同いたします。そして、原則ベースで、コンプライ・オア・エクスプレインというようなコードのアプローチというものも再確認をするということに賛同いたします。これによって、チェックボックスにチェックを入れるような取組を削減することができます。
しかしながら、このコードを過剰に簡素化する必要がないということを注意書きとして申し上げたいと思います。といいますのも、コードにとっては、ガバナンスのグッドプラクティス、それに対する期待値を設定し続けるということが重要です。たとえこれらの慣行が幅広く採択されているとしてもです。また、これからも継続的に独立性のレベルを拡大していくということを推奨したいと思います。また、最低限でもプライム市場の企業が独立社外取締役を過半数任命するということを推奨するということは重要だと考えます。また、世界のベストプラクティスと一致した形で、日本におきまして、コーポレートセクレタリー、取締役会事務局の役割を推進し、それを正式な制度として導入するというような取組も歓迎いたします。
また、資本の効率性や、資本の配分、リソースの配分というのは、投資家にとって主要な注力分野であると言及がされております。このような将来の優先事項において重要な問題に引き続き注力することを歓迎いたします。また、資源の配分に関しまして、取締役会の説明責任を明確にするということ、それから、過剰な現金の保有についても吟味するということにつきまして、取締役の説明責任を明確化するという提案もとてもよいものであると考えます。
また、経営陣に対しては、資本コストを上回る収益性に注力をするように推奨するということ、また、付加価値をもたらすような戦略的な投資を研究開発や人的資本、そして無形資産に対して行うよう、それを推進するということも有用であると考えています。主要なガバナンスの責任として、これらの戦略を設定するということを監督するということ、それからビジネスモデルや資本の配分、これらの計画の実行を監督するということにつきましては、取締役会の中で行われるべきであります。
適時の、また、アクセスできる形で投資家にとって重要な情報を開示するということは、ICGN、また、私たちの投資家メンバーにとって長い間喫緊の優先事項でありました。したがいまして、しっかりとした取組がなされているというのを見て大変うれしく思います。つまり、企業は、株主総会の前に有価証券報告書を発行しなければいけないというような取組がなされているわけです。また、次のアクション・プログラムの段階におきまして、このような取組がさらに強化されるということを期待し、それらの取組を私たちとしても支援したいと考えています。
これをさらに促進をしていく上で、開示項目について合理化し統合していくという提案は有用であると考えます。重要な情報が株主に提供され、それによって、会社のオーナーとしての権利を行使できるべきだと考えております。また、デジタル化を推進し、紙の必要性をなくしていくということも、企業に対する負担を軽減する上での優先事項であると考えます。また、世界の法域、そのほかの法域に対して私たちが出しているメッセージと一貫した形で、私たちとしましては、SSBJ、ISSBの基準に一致した形での義務的サステナビリティの開示を開始するということを強く支持いたします。
また最後に、このガバナンス改革のアジェンダが、株主総会が果たす重要な役割を守るということが大変重要であるということを付け加えておきたいと思います。また、世界中におきまして、株主総会をバーチャルで、オンラインだけで開催することを許容する動きが広がっており、それに懸念を有しております。このような動きは日本で行われないこと、また、そのような動きを模索されないことを強くお願いしたいと思います。また、合理化や負担削減のみに注力すべきではないと考えます。また、株主のオーナーとしての権利が保護され、それに敬意が払われるということを担保すべきだと考えます。
株主総会は、企業の説明責任にとって重要なメカニズムの一つであります。完全にオンラインだけの株主総会では、株主の能力がそがれてしまうことになります。特に少数株主の能力がそがれてしまうことになります。取締役や経営陣とやり取りを行い、自由に質問をし、そして議場から発言をするというような能力が大きく損なわれてしまうことになります。投資家は、ハイブリッドの形態あるいは対面での会議を強く望む傾向にあります。また、魅力的な投資先として、市場の信頼をこれからも推進していこうと思うのであれば、この重要な場における対話、それから議決権の行使、また、適切な説明責任が守られるようにするということ、それが改革プログラムの中核であるべきです。
また、最後になりますが、私の見解といたしましては、コーポレートガバナンス実践コンソーシアムを立ち上げ、そしてケーススタディについてアップデートをし、そのようなケーススタディを収集するということは大変いいアイデアだと思います。そして、企業と投資家のためのフォーラムを設立することによって、エンゲージメントや対話に関するベストプラクティスを共有するということ、そして、長期的な価値創造を支援するため、また、信頼を確立するための情報開示を推進するということは大変いい考え方であると考えます。ICGNとしましてはそういったような取組をこれからもぜひとも支援していきたいと思っておりますし、継続中の議論にも貢献できればと思っております。
このような機会を本日はいただきまして、ありがとうございました。
【神田座長】
どうもありがとうございました。それでは、小口さん、どうぞお願いします。
【小口メンバー】
ありがとうございます。まずは、示唆に富む大部の資料を御提供いただきました事務局に感謝申し上げたいと思います。
御説明があった資料2の冒頭にありますように、両コードの策定・適用を受けた当フォローアップ会議も約10年が経過して、今日、30回目という記念すべき回を迎えております。現在とは立場が異なるのですが、1回目から参加させていただいておりまして、今回の前に改めて最初の意見書を読んできたのですが、両面一枚物の1ページ目でも形式より実質の重要性が強調されており、10年たって改めて原点の正当性を再確認しました。
一方で、当初から、実質を伴ったガバナンス体制の強化、それから経済の好循環への寄与、そして企業と投資家の建設的な対話が課題として挙げられておりました。確かに先ほど御説明もありましたし、皆さん御認識のとおり、大きな進捗は見られるということではありますが、今日の資料2にも同様に課題として残されているということは、これらの問題が奥深くて困難であるということを改めて認識しております。
そういった意味で、資料2の中でこれら道半ばの課題に対していろいろな取組、方向性を示していただきまして、これはこれですごく重要だし必要なことだとは思うのですが、なぜ未だにこういう問題が残っているのかなということ改めて考えてみると、資料2の最初のページの下から2段落目、やはり自律的な意識改革が十分にされてなくて、どちらかというと、いろいろ働きかけてやってもらっているという部分があるのではないか。では、自律的な意識改革がなぜ進んでこなかったのかと考えると、企業と投資家双方に、ガバナンス改革に対するインセンティブが十分ではなかったのではないかと思っています。
今日の御説明にもあったのですが、資料3の13ページで、建設的な対話に発展する例として、投資先企業や競合他社をよく研究した上で、企業に応じた中長期提案目線での対話ということが挙げられているのですが、運用会社にもいろいろな運用手法が存在しますが、中長期的に銘柄選定投資して、目標とする超過リターンを稼ごうというアクティブ投資家には、このような対話というのは大変手間暇のかかるものですが、目標達成の手段としての経済的インセンティブが存在して、おのずと親和性というのは高いのかなと思っています。
一方で、同じ資料3の5ページに、今画面に出ていると思うのですが、機関投資のスチュワードシップ活動のところに書いてありますが、インデックス型の投資戦略はエンゲージメントを行うインセンティブが相対的に低いというのは、これはグローバルな共通認識になっております。
機関投資家は、自分のお金を運用するのではないので、お客様や最終受益者に対して、運用報酬も含めて説明責任を果たすというのは、これは共通の責務であります。
フリーライダーという言葉があり、それを批判する声も当然あるわけですが、銘柄選定しないインデックス投資家がフリーライドするというのは本当に非合理なのかと。ある意味極めて合理的なアクションではないかとも思います。
インデックス投資の意義を否定するものでありませんし、経済合理性からその拡大というのは止めようがないと思うのですが、中長期的な銘柄選定に経済的なインセンティブを有するアクティブ投資家が建設的に対話することで、まずは株価を適正に近づける。安いものを買って高いものは売って、株価を適正に近づける原動力となってインベストメントチェーンを牽引するような、活性化するような仕掛けづくりは必要かと思っております。
その上で、個々の企業と投資家の話だけではなくて、市場の規律で、上場企業のインセンティブをどうやって高めていくかというのも重要だと思います。もちろん先ほど申し上げたような建設的な対話であれば、上場企業も喜んで対話に応じる姿は資料3にもありますが、それはそれとして、やはり2023年の東京証券取引所の要請が一つの大きなきっかけとなって、企業価値の向上に取り組む上場企業が増えているということは言えるかと思います。
一方で、先ほども少し触れられていました資料3の16ページに示されているように、現預金保有の問題というのはいろいろ考え方がありますが、結局その現預金というのは、成長にも還元にも向かっていないから会社の中に残っているということだとすると、現預金が増えているということで取り組むべき課題が明らかになっているのかなと。ということで、先ほど事務局のお話にもありましたが、資料2のⅡの1の稼ぐ力の向上の今後の方向性で、それに対してガバナンス・コードの見直しということも言及されていて、先ほど来コーポレートガバナンス・コードの改訂についてもいろいろ言及されていますが、それはそれで大事ですし重要なのですが、東京証券取引所の要請のこれまでの効果を踏まえれば、コードの見直しに、資料2の3ページの②のところ、cash hoardingの問題、検証・説明責任の明確化というものを、例えば東京証券取引所の要請みたいな形で組み合わせることでより実効性が高まるのではないか、効果的なのではないかと思っております。
最後に、コードの見直しということが今日の一つの中心課題であると思うのですが、いかなる見直しをしたところで、コード遵守のインセンティブが欠けていては機能しないのではないかと思っております。コンプライ・オア・エクスプレインという原則があるわけですが、先ほど4-1のところで政策保有株に関する補助原則に、コンプライを対外公表したにもかかわらず実態が異なる問題という指摘がございました。
問題はこれだけかと言えば、例えば原則2-5の内部通報、取締役会は、内部通報体制を実現する責務を負うとともに、その運用状況を監督すべき。補充原則2-5①、内部通報に係る体制整備の一環として、経営陣から独立した窓口の設置(例えば社外取締役と監査役による合議体を窓口とする等)を行うべきについても、コンプライを対外公表していながら実態にそぐわない不幸な事例があったのではないか、ある意味コードがないがしろにされてきたのではないかと考えると、コードの根幹に関わる問題が存在するのではないかと懸念しています。
資料2の1ページ目で事務局から説明された、いい表現だなと思って聞いていたのですが、「緊張感ある信頼関係」というのは、企業と投資家間に限らず、コード管理運営者と適用者の間でも必要ではないかなと思います。コンプライ・オア・エクスプレインの中でコンプライしていますという対外公表に対する、少し強い言葉で言えば虚偽実態への対応を考える必要があるのではないかと思っています。
私からは以上です。
【神田座長】
どうもありがとうございました。それでは、三瓶さん、どうぞお願いいたします。
【三瓶メンバー】
御指名いただきありがとうございます。最初に、事務局の方には、特に資料4と5について関係者の声を集めていただき、ありがとうございます。
私からは5点ほどありますので、簡潔に申し上げたいと思います。
資料2の1ページにあるコーポレートガバナンス・コードのスリム化/プリンシプル化にまず賛成です。プリンシプルベースであるということは、細則に書かずとも、原則の精神にのっとり適切に判断することが求められます。CGコードの原則の精神で最も重要なことは、上場目的の明確化だと思います。上場メリットとの混同をなくすこと。上場目的というのは多額のリスクマネーの調達であって、その目的と引換えに経営と所有が分離して、不特定多数の株主の利益に対する責任が生じるということだと思います。こうした責任やコストを考慮して上場する選択肢があるのと同時に、非上場化するという選択肢もあるということが重要だと思います。上場のメリットというのは、知名度向上による顧客獲得、人材獲得または社会的信用の獲得、そんなことがありますが、これは上場目的ではなくて上場のメリットです。だから、これを区別する必要があります。
2点目、資料2の2から3ページのところですが、記載内容には異論はありませんが、重要な部分なのでコメントさせていただきます。まず、投資というのは、インプット、アウトプット、アウトカムという3段階でいうと、最初の段階のインプットです。したがって、インプットである経営資源配分というのは、投資による成果であるアウトカムを語らずして説明責任を果たせません。また、アウトカムの達成を追求していく結果責任、これも果たすことが不可欠です。この辺りを明確化する必要があると思います。その上で、経営資源の最適な配分または適切な配分について、分かっていても実行できない会社がたくさんあります。実行できていないと、株主、投資家から、彼らがしびれを切らして、事業売却や自社株買いによる資本の回収ということになります。これは合理的です。今その状況が目立っているということだと思います。
企業側で適切な配分を実行できないというその根本原因は、成長事業の構築ができていないというのがあります。すなわち、事業ポートフォリオの再構築といっても、その企業を牽引するような将来性のある、柱になる事業がないために、衰退事業だと分かっていてもそこから撤退、売却できないということです。株主、投資家からすると、名ばかりの成長戦略を掲げたり、戦略の達成時期を先延ばしして、結果を出さないのに経営者がそのポジションに居座っているというふうに見えます。そのような企業が、取組の優先順位を間違えて、この今回のコード改訂で成長投資を促されているというふうに思って勘違いするのは非常に困ります。
一方で、経営者が本気で周到なリスクテイクをしている、そして事業の成功を勝ち取ろうとしているのに、それを機関投資家が目利きとして、見込みのある取組なら支えなければ、投資家としての存在意義はありません。例えばセルサイドがカバーしていなければ投資判断できないのであれば、未公開、スタートアップ、中小型などへのリスクマネーの供給というのは無理であって、そうすると、今、日本が目指している資産運用立国などは成り得ないということです。なので、機関投資家は強いビジネスモデルになる見込みがあるというのはどういうことなのか、それについて価値をどう評価するのか、そういう実力をつける必要があると思います。
3点目、大量保有報告制度について。制度違反の課徴金額の引上げもいいですが、悪質な場合は、違反に当たる買付け株数の強制売却も検討すべきだと思います。
4点目、資料4に関して、スチュワードシップ・コードが導入された際に、企業と投資家間のエンゲージメントについては、まだ新しいことだったので、あまり具体的に定義せず多様な解釈を認めてきたと思います。ただ、エンゲージメントをより実効性あるものにしていくためには、目的とする成果別の分類、投資スタイルとの関係や、エスカレーションプロセスなどを整理した上でモニタリングすることは考えられます。こういったことを明確にすることが、先ほど小口メンバーがおっしゃったようなインセンティブにもつながると思います。
例えばバリュースタイルの運用者は、変化を求めるエンゲージメントとの親和性が高くて、事業撤退や資産売却などのバランスシート改革を成果として追求します。グローススタイルの運用者であれば、より長期目線でビジネスモデルの持続可能性など成長可能性追求の姿勢で対話をする、そういった特徴があります。これは資料4でいうと、26ページ、30ページに関連していると思います。こうしたことを踏まえて、取組事例の収集・共有を進めていただきたいと思います。
最後に、資料5に関連して、取締役会及び法定の委員会には議事録作成及び署名が義務づけられていますが、その書きぶり、粒度はまちまちです。また、取締役会の諮問機関である任意の委員会には、議事録作成及び署名が法的に義務づけられていません。ですから、コーポレートガバナンス・コードの改訂の際には、こういった議事録作成の原則を設ける必要があると思います。
追加でもう1点。先ほどシッソンメンバーが株主総会のバーチャルオンリー開催についての懸念をおっしゃいました。これは私も以前から非常に懸念しています。ただ、今回、割とすんなりとバーチャルオンリーの議論が進んできているようなので、これは海外の機関投資家は強く懸念しており、この辺についてはよくヒアリング等をしていただきたいと思います。
以上です。
【神田座長】
どうもありがとうございました。では、高山さん、どうぞお願いします。
【高山メンバー】
私からは取締役会の機能強化について、2つの点で意見を述べさせていただきます。一つは取締役会事務局について、それから2つ目は社外取締役についてです。
まず、取締役会事務局について、私の意見を述べます。取締役会の監督機能の強化に伴って、事務局の役割がますます重要になってきています。一方で、いろいろな企業の事務局の方と話しますと、執行と監督の間に立って様々な課題を抱えている例が少なからずありました。そのような課題の解決をする上では、他社の取組などを理解することが非常に有効なのですが、社外取締役と異なって、取締役会事務局については、企業を超えたネットワークのようなものが現在日本ではあまりありません。海外の場合は、事務局の方が研修を受けたり、課題に関して情報交換や意見交換をするような組織はございます。しかし、日本では限定的だと思います。その観点で、資料2の今後の方向性に記載されているような事務局の機能強化に向けた対応については、望ましいと思いますし、賛同いたします。
2つ目は、社外取締役についてです。社外取締役が過半を占める取締役会の割合は、昨年ではプライム上場企業で2割以上となっています。恐らく今年はさらに増えると思います。社外取締役が過半となりますと、取締役会の意思決定の在り方が、単純に現在の延長線上ではなくて、かなり大きく変わると考えます。そのため、それに向けた体制の準備、整備が必要になると思います。例えば社外取締役の選任、それから評価についてどのように取り組むのか、そこに指名委員会がどのように関わるのか、この点についての議論が今後必要になると考えます。もし今回コードを見直すということであれば、これらの点についても言及する必要があるだろうと考えています。
それから、事例集についてコメントします。大変参考になる事例がたくさん入っていて、取締役会、それから事務局の方たちにとって非常に参考になると思います。今後についてなのですが、例えば社外取締役が過半となった企業に対して、そのためにどのような事前の準備をしたのか、あるいは社外取締役が過半になった後の取締役会の課題は何かなどについても確認すると、今後の議論を進める上で役立つのではないかと考えます。
私からは以上です。
【神田座長】
どうもありがとうございました。それでは、小幡さん、どうぞ。
【小幡メンバー】
ありがとうございます。私から、ちょっと細かな点も含みますが、全部で5点指摘をさせていただきたいと思います。
1点目がコードの改訂についてですが、今回、重複の排除やシンプル化などを主な目的として見直しを御提案されておりますが、私はそれには賛成したいと思います。理由としましては、それらに加えて、コードを2015年に制定したときに、日本の会社は大半が監査役設置会社であったため、コードはそれを念頭に置いて制定されていると理解しております。序文においては、他の機関設計を採用するときにおいては、適宜読替えを行った上で適用してくださいということは書いてありますが、いずれの原則が読替えの対象になるのかということも明示されておらず、読替え自体も各社の自主的な判断に委ねられているということで、非常に実務的にもやりづらいなと思っているところです。昨今、監査等委員会設置会社が増えてきているということもございますので、ぜひ今回のコード見直しの際においては、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社への適用も視野に入れながら規定していただくと大変ありがたいと思っております。以上が1点目です。
2点目が有価証券報告書の株主総会前提出についてです。私の理解としましては、本来株主総会での議決権行使のために必要な情報というものは、狭義の招集通知とともに株主に提供される参考書類、事業報告で足りるとするのが会社法の建付けではないかと理解しております。一方、有価証券報告書は、金商法に基づく投資家の投資判断のための継続開示書類であって、本来、議決権行使を目的としたものでないというのが私の理解であります。そのような中で有価証券報告書を議決権行使のために総会前に出してほしいという投資家の要請があって、企業に対して総会前に提出を求めるということはちょっとどうなのかなと思うところがあります。
議決権行使に不足する情報があるのであれば、それを参考書類や事業報告に追加するという対応が本来的な対応ではないかと思っているのですが、そういう議論があまりなされないままに、有価証券報告書のみが早期提出を求められてしまっているということについてちょっとどうなのかなと思っているところがあります。3月に金融担当大臣から、総会のせめて前日または数日前に提出してほしいという要請がなされました。一般的な企業実務としてはその要請に応じる方向で対応するものと思うのですが、できればそれとは別に有価証券報告書と事業報告との一体的開示などを含めた、会社法と金商法に基づく開示媒体の整理に関する議論をぜひやっていただければありがたいと思っています。以上が2点目です。
3点目は取締役会の機能強化です。今回、事務局から御提案いただきました点については全く賛同なのですが、私の印象として、業務執行の決定を行う監査役設置会社の取締役と、基本的には業務執行は執行役が行って監督のみを行う指名委員会等設置会社の取締役とでは、求められる役割がやっぱり違っているのではないかなと思っており、それに応じて求められる資質も異なるのではないかなと考えています。この辺の理解というものが社外取締役や企業側にもまだ不足している点があるのではないかと思い、一部には混乱しているようなところがあるのではないかというのを感じているところですので、ぜひこの辺をもう少し明確に指針等を出せると良いのではないかというのが3点目です。
4点目です。次が監査役等の機能についてです。最近の経産省の「稼ぐ力」の強化に向けた研究会の報告書とかいろいろな議論を見るにつけ、取締役会による監督機能の在り方が議論の中心となっていて、監査役等による監査の在り方についての議論があまりなされてないという認識をしています。特に委員会型の機関設計を採用した場合におきましては、監査委員や監査等委員も取締役であることから、取締役会による監督と監査委員または監査等委員による監査の責任範囲に重なる部分が出てきていると感じています。これについては現在進められている会社法改正の議論の中で議論すべきテーマなのかもしれませんが、監査役などもコーポレートガバナンスの担い手の1人であるということから、今回資料2のページ6にも書いていただきましたように、監査役等が担うべき機能の今日的な役割を再度検討するということにつきましては、ぜひ深めていければと思っている次第です。
最後は、取締役会の事務局業務についてです。昨年のこのフォローアップ会議の場で私から、社外取締役が真にその機能を発揮できるかは事務局次第ですという旨の発言をさせていただき、それらも受けて金融庁のほうで実態調査を行い、今回の資料作成に至ったということについては感謝を申し上げます。
ただ、コーポレートガバナンスが進んでいると言われています米国とかイギリスなどにおいて、社外取締役に対してここまで手厚い事務局というものがあるのかとも思っているところです。これはもしかすると日本の社外取締役の資質の問題なのかなとも思う一方、できればアメリカなどにおける事務局、コーポレートセクレタリーになるのかもしれませんが、その実態を調査して、ベストプラクティスが何かということをよく見極めて、事務局としてやるべきことを整理してはどうかと考えているところであります。いずれにせよ、取締役会事務局は有用な役割だと思っていますので、本来、何をやるべきであってして、何はやらなくてもいいのかということも含めて整理をしてもらえると、事務局の負担軽減にもつながりますので、ぜひそういった観点で検討を深めていただければ良いと思っています。
私からは以上になります。
【神田座長】
どうもありがとうございました。では、松岡さん、どうぞお願いいたします。
【松岡メンバー】
発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。松岡です。本フォローアップ会議は、スチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コードを含む企業と投資家との建設的な関係を構築する改革全体を扱っているものと捉えております。近年の形式から実質へという改革の方向には賛同するものでございますが、その改革全体の進め方について企業の受け止めについては、大変厳しいというのが現状でございます。
2021年のコーポレートガバナンス・コードの再改訂は、東京証券取引所の市場再編と相まって、企業の大きなガバナンス改革を要請し、その後も当会議のアクション・プログラムで着実に改革がフォローされてきたという状況でございます。企業に対しましては、コードを背景とする投資家からの要請や東京証券取引所のルールなどにより実質的な実効力を伴う形でコードの内容に沿った改革が行われてまいりました。企業は、現場での実務負担の増加に対応しながら、この短期間でいろいろと尽力をし、達成してまいりました。それだけに、これから述べます4つのアプローチでの改革を進めるという観点が重要ではないかと考えております。
まず第1に、スチュワードシップ・コードの実質化に関連した議決権行使助言会社の課題についてです。今般、スチュワードシップ・コードが改訂されることになりましたが、企業としては、コードが投資家に対して実効力のある形で実質化されることが必要だと捉えてきました。本日お配りいただいた資料4でスチュワードシップ活動の実態に関する調査について触れられておりますが、例えば、45ページにおきまして、議決権行使助言会社Bから「我々にとってのエンゲージメントは、公表された情報に不明瞭な点があった際の確認や、より深い洞察を得る目的で行うもの」とのコメントがあるが、まさに企業にとって、これらは大きな失望を感じるものです。
企業が求めるエンゲージメントとは、企業が中長期的に成長していくためにどのような経営をすればよいかということを建設的に投資家と対話することであり、それが投資家の利益になり、また、企業と投資家との間でウィン・ウィンの信頼関係、ひいては健全な市場づくりにつながるものと考えます。
単に、データの正確性を確認する以外の目的ではエンゲージメントをしないとしますと、それでスチュワードシップ責任を果たしていると言えるのでしょうか。まずは、実効力を伴う法規制を及ぼすということを視野に、こうした投資家側のスチュワードシップ・コードの実質化に着手していただきたいと考える次第です。
2つ目に、有価証券報告書の株主総会前開示についてです。株主総会の議決権行使をめぐりましては、経団連でも投資家に対しどの情報が議決権行使にとって重要なのかという問いかけをし、例えば、政策保有株式の保有割合などの情報が有用だといった議論もしてまいりました。そうならば、そうした情報を会社法上の招集通知、これは議決権行使に関する参考書類に記載し、株主が記載内容を分析し議決権行使を判断するのに十分な期間を置いた上で株主総会が開かれることを法制上で担保するというのが筋だと考えます。
先ほどの御指摘もございますが、有価証券報告書全体を株主総会前に開示するということが必要ということなのであれば、金商法・会社法上の書類の一体開示の検討、また、監査人と監査役などの職務や責任範囲及びリスクなどの制度横断的な議論をした上で、株主総会の開催時期を今よりも後ろ倒しするということが実質的に必要となります。
それに伴いまして、会社の経営陣の選任や株主への配当も実質的に後ろ倒しにするということになりますが、これが果たして株主の利益になるのか。あるいは、総会での増配要求等をできなくするといったことも考えられますが、これが株主の権利を制限することにならないかといった問いが出てくるかと思います。
先にも指摘がございましたが、株主の権利保障や会社との関係の確立については、会社法の改正を視野に、会社の情報開示や総会のプロセス、また監査の在り方、そして株主権のあるべき姿などについてハードローでの議論をし、株主の地位を確立することが無用な訴訟や混乱を避ける上で重要だと考えております。
こうした事は、企業が創意工夫によって株主にエクスプレインするプリンシプルベースのコーポレートガバナンス・コードで規律するにはなじまないと考えております。株主に十分な分析期間を与えない総会数日前の開示のような形式主義の対応や、株主総会で選任される前に取締役でない者に経営を関与させるというような策では、かえってガバナンス・コードの趣旨に反することになるのではないかと考えます。
3番目に、開示の在り方です。これは人的資本やサステナビリティの開示についてです。資料2の人的開示の1①に記載されている有価証券報告書における従業員給与・報酬に関する記事記載事項の追加等については、その目的は不明瞭であると捉えており、先ほどの指摘はございましたが、経団連において、聞いている中では、このような事項を求める投資家は見当たっておりません。
サステナビリティ情報開示についても欧米での温度差に違いも見られております。さらに、欧米でも求められない項目を日本企業のみに課すことは、国際的な整合性を欠くだけではなく、日本企業にのみ過度なコストや負担、またさらには、特に米国等における訴訟リスクなどを負うということもあり、懸念を示す次第でございます。
そもそも人的資本やサステナビリティに関する情報の開示については、本来、グローバルスタンダードを意識したSSBJにおけるデュー・プロセスを経て検討すべきであると考えます。開示する有用性について十分な検証を行った上で、仮に項目を追加する場合においては、不要な情報の見直しを含むいわゆるスクラップ・アンド・ビルドの視点が不可欠であり、報告負担を抑えつつガバナンスの質を高めるという英国の考え方にも意を払い検討していただきたいと考えております。
また、会計基準や保証基準については、各方面の有識者が集まって議論する会議体が現在整備されておりますが、開示についてはその限りではないということでございますので、将来的には、金商法開示と会社法開示、さらには東京証券取引所での開示も含めて、真に関係者の合意で、各関係者皆さんが納得できる開示内容を決めるような、内外の投資家、それから作成者である企業、アナリスト、仲介者、市場運営者、そして監査人などにより組織される開示基準設定委員会などの会議体が必要なのではないかと考えております。
最後に、改革の進め方に関連し、取締役会事務局の改革等についてです。先ほどの指摘もございましたが、欧米型の監督と執行の分離された会社、いわゆる指名委員会等設置会社においては、執行と独立取締役とをつないだり、取締役会のアジェンダ設定など独立取締役の仕事を扶けたりと、役割を担うものとしての取締役会事務局はございますが、その事務局において事例集を作るということも一定の意義があるとは考えます。
他方で、企業の経営課題に対応し、知見を提供できる、特に経営経験を有する社外取締役の人材というのは枯渇しているというのが現状でございます。こうした実態に即した政策というのを打ち出さないと、事例集だけを出しても受け止めるということができない、もしくは受け止める側というのも醒めたものになってしまいます。
事務局の役割というよりも、まずは経営陣の取締役会に対するコミットメント、それと経営目線や知見を有する取締役会の布陣を敷けるような人材の育成と登用がガバナンス改革を進める上ではまず本質的に重要だと思と思っております。
以上のような企業の受け止め方からしますと、コーポレートガバナンス・コードを改訂する大義というものは乏しいというふうに考えざるを得ず、まずは述べました4つのアプローチでの改革を進めるべきだと考えている次第でございます。
どうもありがとうございました。
【神田座長】
どうもありがとうございました。それでは、上田さん、どうぞお願いいたします。
【上田メンバー】
御指名ありがとうございます。
まず、事務局におかれましては、企業、投資家の活動について詳細な調査と大部にわたる報告書を複数作成いただきまして、誠にありがとうございました。最新の、そして関係者の本心が伝わる内容でございまして、実態調査としても大変価値があるものと思います。
私もこちらの御議論をいただきたい事項に沿ってコメントさせてください。ただ、内容が深く広いため、特にまだ課題が大きいかなと思った点、4点を中心にコメントさせていただきます。
まず、第1点目、私は親子上場問題が大変大きい課題だと思っています。確かに日本市場においては小さい部分かもしれませんが、これが実はコーポレートガバナンスの本質に関わる部分であって、日本独特の商慣習に根差しているといったところに懸念を持っております。
親子上場問題の本質というのは、支配株主が存在する上場会社における企業グループのガバナンスの問題であろうと思います。この場合、中長期の企業価値の向上という視点からすれば、少数株主保護、コーポレートガバナンスの実効性を確保するということが必要になってくるわけです。したがって、法令上の区分が親子というものでなくても、持分法適用会社あるいはそれ以外も含めて、支配株主が存在している場合というのはコーポレートガバナンス上の問題が共通するのではないかと考えています。
むしろ親会社・子会社については、これまで東京証券取引所によるご指導をはじめ規律も働いてきつつあるといったこともあって、ある程度規律ある行動というものの意識づけや行動がされているわけです。しかしながら、例えば、持分法適用会社も実態は同じでありながらルールの枠外にあるということで、潜脱するというと言い過ぎかもしれませんが、私のような外から見ているとそういうふうに感じるような事案があるのも事実でございます。
このような支配株主が存在する場合におけるグループガバナンスの問題というのは、資本とか取引という経済的に評価できる関係からの問題がありますが、これは既にコーポレートガバナンス・コードによって特別委員会の設置が求められて規律づけがなされています。しかしながら、まだ特別委員会を設置していないという会社もあり、ここもまだ道半ばと言えます。
さらに問題なのは、役員幹部の派遣などの人的交流を通じた実質的な支配関係でございます。子会社の主要ポストが親会社の人事プロセスに組み込まれているような場合、これは資本関係の多寡によらず、事実上、支配関係・従属関係が生じていると考えられます。この点、取締役の経歴というのは有価証券報告書において開示されるわけですが、執行役員以下の実際に経営を担うメンバーについては、外部からは出身母体等についての情報を把握することができません。したがって、プロセスを透明化しガバナンスを向上するという観点からは、特別委員会に加えて指名委員会の設置というのも重要な手段であろうかと考えます。
この点については、OECDにおいて、グローバルに見るとラテンアメリカとかアジアにおけるファミリーが支配株主であるという場合を中心に、支配株主のガバナンス上の課題が長年にわたって御議論されてこられたと思います。いわゆるcontrolling shareholder、支配株主については、恐らく我が国における支配株主、グループガバナンスの問題についても共通する本質というものが議論されているように理解しております。
金融庁はこれまでもコーポレートガバナンス・コードの策定等においてOECDと密接に協議し、いろいろ意見交換等を行ってきたと思いますので、ぜひこの点についてもグローバルな視点を持ち込んで、コーポレートガバナンス・コードの改訂あるいは東京証券取引所における規律なのか、いずれにせよ、枠組みづくりにこういうグローバルな視点を入れていただけると大変ありがたく存じます。
2点目、社外取締役に関してです。本日いただきました資料3の3ページによりますと、プライム市場の98.1%が3分の1以上の独立社外を選任し、過半数以上選任した会社が2割と御報告いただきました。また、私が昨年6月に少し調査したところでは、プライム市場の取締役会の42%は、既に社外取締役によって構成されているということです。
実は、多くのプライム企業が気にされているコーポレートガバナンス・コードの改訂は何かというと、いつ社外取締役が過半数にされますかという点です。私はフォローアップ会議のメンバーということもあって、企業の方に会うたびに、毎回尋ねられてしまって、「近い将来に改訂されるのではないか…」とお答えしておるわけです。実際にコード改訂で過半数が社外取締役というような構造になるのではないかということを見越して、多くの会社では社外取締役の採用を拡大している。まずは半数、そして過半数ということを見越しておられるように感じます。
このように結果的に会社の側もそれを既に組み込んでいる。さらに、グローバルスタンダードに即したコーポレートガバナンスの在り方を検討する。プライム市場においては、特に日本の市場の魅力、競争力という観点からも必要な点であろうかと思いますので、今後、コーポレートガバナンス・コードにおいては社外取締役を過半数にしていくといったところについても、具体的にしっかりと御議論を開始していただきたいなと思うところでございます。
もちろん、まだこれは準備ができていないという会社もあろうと思いますし、実務上、当社には実情が合わないという会社もあると思います。ただ、コーポレートガバナンス・コードは、皆様御案内のとおり、コンプライ・オア・エクスプレインでしっかり説明をして株主・投資家・ステークホルダーの理解を得るといったことが本質に、柱になっておりますので、そういった点を踏まえて、まずは市場全体の価値を上げるといったところを意識してこの点を御議論いただければと思います。
以下2点は簡単な点なのですが、まず、3点目、政策保有株式についてです。簡単に申しますと、まず、開示に関連して、なぜ保有しているかといった点を含めて丁寧な調査をされておられると理解しています。さらに、今回御紹介いただいたコラム、これは大変興味深くありまして、別の開示の会議でも申し上げたのですが、ある投資家の方がホームページの一番上に貼ってもいいのではないかと言うぐらい大変意味のある、価値のある、そして衝撃をもって受け止めたという内容でございます。
実際、安定株主づくりというのは、それが政策保有を持たせている大きな目的でありながらも、その目的が分からないような開示の説明はどうやればいいですかというような相談を受けることもあるようです。このような実態をリアルに伝えるという意味で、このコラム、ぜひ目立つところでいっぱいアピールしていただくとありがたいなと思います。
最後、これは応援メッセージでもあるのですが、対話の場でございます。今回、コーポレートガバナンス実践コンソーシアムをつくられるということですが、コーポレートガバナンスの質が二極化していると感じます。これは一言で言うと、金融庁や東京証券取引所の情報にアクセスできる、特にコードの背景にあるコーポレートガバナンスの本質、なぜこれをやっているかという趣旨を理解できている会社あるいは機関投資家等との対話からそういったものが伝わっている会社と、そこと距離がある会社という、そういうものも大きいかなと思います。
したがって、市場全体に理解を広げて、ガバナンスの実質を広く拡大して全体の質を向上させるという意味で言うと、こういう対話の場というのは大変重要だと思っています。この場では、企業も機関投資家もでしょうか、そして、何より当局の側も参加されて、なぜこういうコードになっているかという背景であるとか、決して企業の負担だけを考えているわけではなくて、そこを理解した上でのこういうルールになっていると私は理解しておりますので、そういった点を含めて共有されて、底上げにつながるといいなと思っています。
以上でございます。ありがとうございました。
【神田座長】
どうもありがとうございました。岡田さん、どうぞお願いいたします。
【岡田メンバー】
ありがとうございます。今回、金融庁に作成いただいた膨大な資料、本当にありがとうございました。何年に1回ではなく、毎年毎年この資料をアップデートされている御努力に大変敬意を表します。また、いろいろな企業に丁寧にヒアリングをしていただいて、大変参考になります。
特に、3点ほど申し上げたいのですが、最初に、取締役会の機能強化の取組ということです。これはここでとどまらず、スタンダード上場企業などほかの市場含め、もっといろいろな企業にヒアリングをしていただきたいと思います。ヒアリングするということは、実際には企業が気づきの場でもあると思いますので、ほかの事例をコピーするというのではなくて、気づいていただくということが重要だと思います。
例えば、こういう取組というのを有価証券報告書の中で、取締役会事務局の活動について、これは任意で構いませんが、開示してはどうかと思います。取締役会事務局の重要性については、私も経験していますが、案件の事前説明を受ける場合に往々にして、議案を通したいと思う役員が来て説明するケースが多いのですが、それよりも、事務局の方がよく理解・咀嚼して、我々社外取締役と一緒に考えていろいろな質問に答える、考えていただくというのも、人材育成としても非常に役に立つのではないかと思います。今後とも、そういう取組は充実させていただきたいと思います。
私がここで懸念として1点申し上げたいのは、この資料の中にもありましたが、ヒアリングの中で監査等委員のスタッフについて述べられている部分です。監査等委員とか監査委員というのは、取締役の役割を持ちながら監査の役割を持っているということで、業務執行者とかあるいはほかの取締役から独立した立場のスタッフが必要ではないかと思います。
最近、監査等委員会に移行する会社が非常に増えて、恐らく監査役会設置会社と拮抗するぐらい増えていると思いますが、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社に移行しますと、ほとんどの場合、今までの監査役事務局が取締役会事務局の下にそのまま入ってしまう場合がほとんどではないでしょうか。監査等委員会事務局が取締役会事務局の指揮命令下に入ってしまうというケースもあると思います。しかし、監査等委員会事務局はしっかり独立性を担保して、監査環境の整備に努める必要があると思います。
さらに、監査等委員会や監査委員会のスタッフというのは、社内の諸会議に出席して情報を収集して分析のうえ、これを委員会に伝えるという役割があると思います。監査役会と異なって監査等委員会や監査委員会については会社法上、常勤の委員が義務化されていないために、常勤を廃止していく会社も増えていると思います。したがって、委員会のスタッフに期待される役割というは非常に大きいと思いますので、スタッフの充実も図っていっていただきたいと思います。
2点目なのですが、今回の会議ではコードの見直しはしないという前提と伺っていますが、今のコードを読んでいて、少し違和感を覚えるところがありました。
原則4―7の(i)、独立社外取締役の役割・責務というところなのですが、1番目に、経営の方針や経営改善について、「自らの知見に基づき、会社の持続的な成長を促し、中長期的な企業価値の向上を図るとの観点から助言を行う」、となっているのですが、この「助言」は、10年前のコードのときにはこれでよかったかと思うのですが、今、社外取締役の役割・責務は助言ではないのではないかという気がします。
表現はいろいろあるのでお任せはしますが、私はさらにその前の「自らの知見に基づき」というところですが、ここには多様性も勘案した表現のほうがいいかなと思います。例えば、「自らの知見、多様な経験及び多角的な視点」とか、多様性の視点を表現してはどうかと思います。「助言」のところはちょっと難しいのですが、「会社のリスクテイクを後押しする」というような、助言ではなくむしろ積極的に攻めのガバナンスに貢献していく役割が期待されているのかなと思いますので、ご検討いただきたいと思います。
同じく原則4-7の(iv)について、「経営陣、支配株主から独立した立場で少数株主をはじめとするステークホルダー」とありますが、これは親子上場が頭にあっての原則だと思います。そのため、支配株主という表現を使っているのかと思います。まだ親子上場が残っている以上、やむを得ないと思いますが、社外取締役にはむしろ投資家とのエンゲージメントを意識して、機関投資家の意見を反映していくというような表現にしたほうが今の課題意識にはあっているかと思いました。これは変更を求めるというよりは私の違和感を申し上げたので、できれば参考にしていただきたいと思います。
最後に、手短に、有価証券報告書の早期化問題です。どこの会社も、私が社外をやっている会社2社とも、1日早くして総会の前日に提出します。今まで絶対できないと言っていたのが1日早くなりました。もしかしたら1週間でも可能かもしれません。ただ、1週間程度で投資家の方が分析するのはかなり無理があると思います。本当は3週間ぐらい前の開示が望ましい。ただ、今の会社法・金商法の立てつけから言うと、かなり難しいかなと思います。
それと、開示にかけているスタッフの数は限られています。法務部とか経理部とか現業を持った人たちが一生懸命やっていますので、これは恐らく無理だと思いますが、例示されていた現行法令上やれるという基準日を変えて、総会を遅れさせるという手もあるかもしれません。
先ほど松岡さんがおっしゃっていたように、事業報告書の中に書けるような情報があるのであれば、もちろん有価証券報告書の監査との関係はあるかもしれませんが、例えば、政策保有株というのはもう3月末には分かっているわけですから、そういうものから、あるいは、他にも出せるものがあれば出していくという姿勢もあっていいかなと思います。
こういうものも機関投資家、つまり、有価証券報告書を読んで株主総会に出てくるかもしれないような人たちが何を知りたいのか、ということをヒアリング、エンゲージメントした上でやっていくというのも1つの方法かと思います。最終的には、会社法と金商法の両方を、早期開示に向けて、どういう改訂にしたらいいかということを考えていただきたいと思います。
以上でございます。
【神田座長】
どうもありがとうございました。それでは、翁さん、どうぞお願いいたします。
【翁メンバー】
ありがとうございます。稼ぐ力と情報開示に関してまず申し上げますと、資本コストや株価を意識した経営の実現とは、イコール、持続的な成長の実現に向けた経営資源の最適な配分や投資ということで、これは具体的に東京証券取引所でも言っていることだと思います。
こういったことをしっかりコーポレートガバナンス・コードに書いていくということですが、具体的に投資項目を細かく記載するというよりは、スリム化、プリンシプル化の中で企業価値向上に、持続的な成長につながるような投資や開示が大事だということを指し示すものであるべきではないかと思っております。
投資が重要だということはそうなのですが、実は日本の研究開発投資金額だけが大事ということではなく、諸外国に比べると、研究開発投資が生み出す付加価値が低下していて、研究開発投資効率が上がっていないという国際比較のデータもあります。したがって、最終的に研究開発投資が企業価値の向上につながることが大事だと思っております。
また、人的資本投資の開示の充実については、今の開示はかなり細切れなデータが出ているだけであり、企業戦略と関連づけた開示が大事であると思っておりますし、人的資本というのは、最終的には生産性の向上とイノベーション、これも付加価値につながっていくものでありますので、そういったことを意識して、エクイティストーリーを考えながら人的資本の開示を進めるということが大事だと思っております。
これはグローバルでも基準についての議論が進んでいると承知しておりますし、先日、金融庁からも海外の事例などの報告書も出ておりますので、こういったことを踏まえてしっかり議論を進めていただくことが大事ではないかと思っております。
情報開示につきましては、人的資本などの充実を進める一方、資料2にも書いてございますが、有価証券報告書の記載事項も含め、トータルに本当に実質的に必要なものとなっているか、形式的に残っているものがないかを確認し、投資家にとって、またはステークホルダー全体にとって大事なものにスリム化して整理していくことが大事ではないかと思っております。
それから、取締役会の機能強化につきましては、コーポレートガバナンスにとって最も重要なところだと思っておりますが、皆様がおっしゃっているように、取締役会がしっかりこれから監督機能を果たしていくことが求められるわけですが、やはり社外役員の役割が極めて重要であり、特に2点重要だと思っています。
1つは、社外役員の選任の在り方です。それから、もう一つは、社外役員の資質向上であります。先程、東京証券取引所からも御報告がありましたが、TOBとかMBOが増えてきております。こういったところで特別委員会を独立した立場で社外取締役が構成するようになってきておりまして、ますますその重要性が上がってきていると思います。
その意味で、先ほど高山委員からは指名委員会が関与すべきというお話がございましたが、実質的にどういうふうに選任の在り方を工夫し、客観的に能力のある方を選ぶのか、そういうことを考えていく必要があると思っております。
ここで書かれている事務局機能の強化というのも大変重要だと私も思っております。特に、事務局が執行を向くのではなく、様々なステークホルダー、特に株主を中心としたステークホルダーを代表している、監督機能を果たしている取締役会のほうを向いて仕事をすることが実質的に担保されることが大変重要だと思っております。事例の共有と書いてございますが、どういう手段が具体的に効果的なのかを検討していただくことが大事かなと思っております。
最後に、市場環境のところで、大量保有報告制度について、最近アクティビストなどが非常に増えてきておりますので、ここのエンフォースメントを強化することが大変重要ではないかと思っております。ここでは課徴金の引上げだけが書いてございますが、意図的に提出を遅延するといったそういった動きもあると聞いております。そういったルール違反は厳しく指摘して、いかにルールを遵守してもらうかということを考えたエンフォースメントの強化を図っていただきたいと思っております。
以上でございます。
【神田座長】
どうもありがとうございました。それでは、オンラインで御参加の片山さん、どうぞお願いいたします。
【片山メンバー】
片山です。発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。私のほうからは、人的資本の情報開示の充実に関して、指標の開発が重要ではないかということで意見を述べさせていただきたいと思います。
まず、ISSBによる人的資本のリサーチ・プロジェクトについて、第1フェーズにおいて、全ての種類及び法域の投資家は、主に投資リスクの管理とリターン向上の観点から人的資本開示に強い関心があるということが明らかになり、第2フェーズで新しい基準開発に貢献することが検討されていると聞いております。
また、資料5の22ページに示されておりますように、人的資本経営の実践というところで、持続的な成長の実現に向けての人的資本への投資を推進することで経営資源の適切な配分を実現していくことが重要であり、独自の指標の設定や従業員のエンゲージメントの取組例が見られるとか、投資家から取組を経営にどのように結びつけて説明するかが重要との指摘があったということですが、この点、企業の取組を投資家が支援・評価するための企業行動や市場の判断指針となる指標の開発が必要ではないかと考えております。
連合のシンクタンクである連合総研が2023年に、ESGの「S」、社会課題について研究を行い、企業関係者や機関投資家の皆様との意見交換も踏まえて、企業価値を高めるためのディーセント・ワーク実現に向けた8つの指標を開発しているところです。こうした指標も使って企業から投資家に対して職業能力開発、人的資源経営について説明することが重要だと考えておりますので、御検討いただければと思います。
私からは以上です。
【神田座長】
ありがとうございました。神作先生、どうぞ。
【神作メンバー】
学習院大学の神作でございます。御指名ありがとうございます。3点コメントさせていただきます。
まず、フォローアップと今後の方向性について(案)に記載されていることに私は基本的に違和感がないと申しますか、同意いたします。総会前開示の点について様々な御批判があったというふうに理解しておりますが、実効的なエンゲージメントをより高めるためには、質・量ともに優れた情報が記載されている有価証券報告書が総会前に、しかも、総会までの時間をある程度確保した上で開示されることが望ましいと思います。
御指摘がございましたように、ハードローとして見直すべき点というのももちろんあると思っておりまして、一体開示等の議論というのは御指摘のとおり進めていくべきだと思いますが、しかし、他方で、法的拘束力のないソフトローのレベルでもできることをしていくことが重要ではないかと思います。
その点にも関連して、5ページの一番上の黒丸の記載なのですが、今申し上げたような理由から、有価証券報告書は非常に重要な書類ですので、記載事項の整理(スリム化を含む)ということでございますが、その中には当然充実も含まれていると思いますが、記載事項の充実と整理ということで、有価証券報告書についての記載事項について充実させるという方向からもさらに検討していくことが必要であると思います。
第2は、本フォローアップ会議の射程ではないのかもしれませんが、アセットオーナー・プリンシプルについて述べさせていただきたいと思います。昨年の夏に策定されましたアセットオーナー・プリンシプルは、公表されている資料を拝見いたしますと、4月末の時点で、公的年金、共済組合、企業年金、生損保、それから大学等と、既に200を超えたアセットオーナーによってサインアップされているということでございます。
他方で、今日冒頭に御紹介がございましたように、アセットオーナー・プリンシプルが本当に目的どおりの機能をしているのか。川北先生のこのペーパーの3のところでございますが、かえって対話が広く浅くなってしまっているという御指摘もあるところでございます。
アセットオーナー・プリンシプルのうち、少なくともアセットマネジャー等のスチュワードシップ活動に直接関わり、また、発行会社のコーポレートガバナンスにも間接的に関わるようなところは、ぜひ実態を調べていただき、まだ施行されて1年もたっていないわけですが、こちらのほうもスチュワードシップ活動の実態に関する調査と同様にぜひ実態を調査していただき、当初の意図にのっとった適用がなされているか、実践がなされているかということについてチェックして、必要があればプリンシプル自体を見直していことも必要なように思われます。
それから、最後でございますが、資料2の6ページにございますコンソーシアムの立ち上げというのは、私も大変有益なことだと思います。この点については先ほど高山メンバーが御指摘されたとおりだと思いますが、1点だけ追加させていただきますと、取締役会の機能を強化するためには、実効性の評価、まず、各社の取締役会についての自己評価が基本になるのではないかと思います。
ところが、特に日本の場合には、なかなかほかの会社の取締役会について情報が必ずしも十分ないというような事情もあるかと思いますので、このようなコンソーシアムが、取締役会の実効性評価に当たっても非常に有益で参考になるものと思われます。
そしてまた、将来的には、取締役会事務メンバーである若手が、例えばこのようなコンソーシアムをきっかけに他社の取締役となって、言わば、ほかの会社についても他流試合を経験すると、取締役会の多様化ですとか自社に戻って将来執行部につく際のとても貴重な経験になると良いなと感じております。
以上3点申し上げさせていただきました。ありがとうございました。
【神田座長】
どうもありがとうございました。それでは、円谷先生、どうぞお願いします。
【円谷メンバー】
御指名に感謝いたします。まず、両コードから10年ということでいろいろ特集を組まれておりますが、この10年間の金融庁、東京証券取引所関係の皆様の御尽力に心から敬意を表したいと思っております。その上で、今日の議論の事項4点ほど簡単に意見を述べさせていただきたいと思います。
まず、ちょっと飛びますが、2つ目の資料4関連で、どこに情報収集すべきかという2つ目のところがございますが、資料4を読みますと、協働対話に対してやや不安とか懸念というような言葉が出ておりますが、協働対話フォーラムに聞きますと、協働対話した先は資料4の企業に入っていないということで、対話をしていない会社が不安を示している、不満を述べているということで、協働対話した先からインタビューをされたらどうかなというのが1点御提案でございます。
それに関連しまして、東京証券取引所の資料にもございましたが、機関投資家からのより活発なコンタクトを希望する会社という社数が出ておりますが、このうち、協働対話フォーラムが資本生産性について会って話したいというレターを出した56社がその中にあるそうです。そのうち、そもそも反応があった、返事があったのが20社。3分の1。20社のうち8社は、会う必要はないという回答が送られてきた。結局、会いたいと言ってはいつつ、会えたところは全体の12社ということで20%。
これが実態であるというようなことでしたので、やっぱり結果的には見えないところで骨抜きになっていくというのを考えた上で、先ほど「緊張感ある信頼関係」という文言が出てまいりましたが、そうした緊張感をそもそも避けるという本能的な動きがある中で、そうした緊張感というのを前面にさらに出していいのかどうかというのは、ちょっと、やや私はどうなのかなというところがございます。それが1点目です。
2点目として、結局、規模の問題に行き着くかと思うのですが、建設的な対話と言いますが、アクティブ運用であったとしても、本当に毎回価値向上に資する提言が1時間のミーティングでできるか。できるという意見もあるかもしれませんが、本当にできるかとなると、企業側がこういう課題について話したいというのを事前に提示して、それは開示ではなくてもいいのですが、何らかの形で提示して、それについてはCEOなり担当役員がちゃんと出席しますと、その代わり、投資家側もそれは事前に十分分析した上で臨んできてくださいよといった形にしないと、なかなか1時間のミーティングの中でそれを達成する厳しいと思います。
そうなると、事務局機能というのはとても重要になってきますので、コーポレートセクレタリーというのはすごく必要な、重要な役目と思いますが、果たしてそういうことができるようにうまく回るような会社どれほどいるかというと、やはりプライムでも上位の一部に限られるのではないかなというのが私の個人考えでございます。
先ほどのプライム上場であってもそうではない規模の会社さん、時価総額1,000億前後ですとか数千億までの会社はどうするのかという規模の問題を避けて通っていると、結果的には10年後、2つのコード20周年になったとしても、同じような議論をしている可能性も否定はできず、そうすると、コンソーシアムを立ち上げる、私は賛成ですが、どの規模の会社がどういう不満があるのかというのはちょっと解像度高く調べる必要があるかなというのが2つ目でございます。
3つ目として、サステナビリティの話が出ました。私の研究室で、会社ごとに取締役の平均退任年数と今の取締役の年数とサステナビリティゴールの達成年限、この3つをデータベース化しているのですが、例えば、2030年までにGHG半分とか、2050年までにゼロとかありますが、そこまで現取締役が残っている会社はほぼゼロです。もうみんな退任されている。それで本当に責任持てますかという話になると、やはりボードのエイジのダイバーシティをもっと進めるような施策が必要になるのではないかなと思います。それは若返りしろと言っているのではなくて、日々教育の現場にいると、彼ら若者たちの考え方もスキルも全然違うなというのを物すごく日々感じていまして、それをボードですくい上げる仕組み、それは企業だけではないのですが、学校も全部そうですが、それをつくらないと10年後本当大変なことになりますよというのが正直肌感覚でございます。
恐らく、IR支援会社に○桁万円を出してつくってもらっているIR動画とか、今の若者は一、二時間で平気で作ってくるようなスキルになりますので、そうしたものを取り込む仕組み、エイジのダイバーシティというのは1つ、どの組織体でも重要かなと思います。
最後、私は事前説明のときにも「総会前開示」という言葉を換えたらいい、「開示後総会」、開示後開催というのが現実的ではないかという話は私はずっと私案として持っているのですが、実際、先週末、アドバンテストの皆さんにやや衝撃が走ったニュースが出ましたが、開示後総会。そうすると、そこでは事業報告等の一体開示というのは当然議論になってきますので、開示後総会がどれほど今後広まっていくかは未知数ではありますが、それを機に有価証券報告書の抜本的見直しというのは、それは開示府令のほうの話かもしれませんけれども、ここでの議論じゃないかもしれませんが、特に報酬の開示など、先ほど少し出ましたが、私は変えるところがいっぱいあると思っています。
社外取締役の委員の手当とかは全然開示されませんので、任意のものであっても、委員長として報酬なく責任持ちますかといったら、多分それは違う。ちゃんと責任を持っていただくのであれば報酬がつくのは当然であって、そういったところはしっかり、それは欧米も普通に開示されていますので、必要な項目かと思いますし、法務省の資料にも従業員株式報酬がありますが、その項目もございませんので、そうしたところは一体開示等を含めて考えていただければなと思う次第です。
以上です。
【神田座長】
どうもありがとうございました。それでは、大場さん、どうぞお願いします。
【大場メンバー】
時間も限られておりますので、簡単にします。私からは、御議論いただきたい事項ということで指摘された、形式は整ったが実質化に向けてさらなる改善が必要かと、こういう問題意識で2点問題意識を示したいと思います。
1点目は、投資対象が多過ぎることであり、こうしたことが形式対応を招いている。「上場企業の7割がアナリストのカバーがされていない」との報道もされているところであり、相当絞り込まないと建設的な対話はできないのではないか。
したがって、どうしたらいいかということなのですが、上場企業全体の問題ということもあるかもしれませんし、アセットオーナーの投資対象のインデックスの選択の問題、これらが大きな課題かなと思います。
2点目は、取締役会の位置づけの問題です。多くの取締役会が社外取締役に助言機能を期待してしまっているのではないか。モニタリングボードとして位置づけしている企業が少なく、執行の監督・評価に期待するという意識が乏しい企業が多い。コードが指摘しているのは執行の監督ということですから、そこに齟齬が生じており、対話を含め形式対応を招いているのではないか。
もう一つは、この会議の在り方に関することである。
本会議は持続的な企業価値の向上を通じて好循環社会をつくることが目的であり、コードはその手段という位置づけなのに、実態はコードそのものへの対応意識が強くなってしまっている。この結果として、投資家、特に中長期投資は日本企業への投資を縮小している実態がある。若者の積立NISAの大半のお金は海外に向かっており、企業年金の日本株式への投資を縮小している。現状では、本来の目的が果たされているということにはならない。
ガバナンス改革は終わりのない改革なので、工夫をしながらフォローアップを継続することが重要である。
私からは以上です。
【神田座長】
どうもありがとうございました。それでは、岩間さん、どうぞお願いいたします。
【岩間メンバー】
ありがとうございます。皆さんからいろいろ御指摘、御意見がございましたので、私は簡単に申し述べさせていただきますが。
1つは、監査役会議、監査等委員会と取締役会の関係ですが、事務局について私は分けるべきだと思います。監査等委員会、監査役会議のほうは内部監査のラインで見るべきであって、取締役会はその報告を受けるということになるのではないかと私は思います。現実に私が手伝っているところはそういう具合にしていまして、私は議長をやっていますが、その内容は全部私のところにも参りまして、社外取締役にも事前に報告が行くという形になっていまして、十分うまく機能していると思います。そこははっきり分けるべきだと思います。
それから、先ほどからグロース市場の問題が、要するに、70%はカバレッジがないという話もそういうことに関連するのだと思うのですが、基本的には、中小型株のアナリストというか、あるいは運用会社というのは極めて少ない。なぜかというと、ボリュームが大きく行かないですね。非常にインテンシブなアナリシスだとかエンゲージメントをやらなきゃいけないのだが、大きなファンドには流れにくい。ただし、パフォーマンスは極めていいということなのです。私が何社か、何人か存じ上げているところも、そういうことで実績を出している。
ですから、ここら辺のところをどうやって、要するに、カバレッジを上げるという観点と、全部に行き渡らなくてもフォーカスポイントを決めてきちっとやってくれるところが出てくると、かなり私はよくなるのではないかなと、これはやってみなきゃ分かりませんが、そういう印象を持っております。
それから、取締役会もそうですが、運用会社のエンゲージメントでそれぞれ実効性を上げなきゃいけないのは当たり前で、そもそも金融証券市場の活性化を目的にして中長期に企業価値を上げるということで、ウィン・ウィンの関係をつくる。攻めのガバナンスだということは出発点なので、それを私は貫くべきだと思います。
いろいろ出していただいた議論いただきたい事項だとか資料、大変有益で参考にさせていただけると思うのですが、基本的には私、今度の改訂案というのは賛成でございます。よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
【神田座長】
どうもありがとうございました。それでは、次に、オンライン御参加の松本様、どうぞお願いいたします。
【松本メンバー】
松本でございます。今日は発言の機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。住友電気工業の会長でもありますが、会長とともに関経連の、関西経済連合会の会長でもございますので、本日は、経済団体を代表した立場から若干の意見を申し上げたいと思います。
コーポレートガバナンス・コードの適用開始からこの6月で10年がたっております。各省庁、企業の御尽力の結果、数値の上では日本企業の稼ぐ力は確かに向上してきましたが、企業が持続的に成長して中長期的に企業価値向上を達成するためには、まだ取り組む点が残っていると考えます。
3点ほど申し上げますが、まず1点目、マルチステークホルダー経営の実践でございます。我々はこれを公益資本主義というような形で表現しておりますが、この10年、株主価値を意識した経営が進みまして、株主還元は大きく拡大しましたが、賃金とか設備投資の伸びはまさに限定的となっております。これは研究投資についても同じことが言えます。
今後、企業が持続的に価値を高めるには、顧客、従業員、取引先、地域社会、株主など、多様なステークホルダーへの公平でバランスの取れた価値分配が不可欠ではないかと思います。そのため、コード見直しに際しまして、条文や原則でマルチステークホルダー重視の考え方を明示してほしいなと思っています。明示すべきではないかと思っています。関経連としましても、過去の提案を踏まえ、今後の議論に積極的に関与していきたいと考えている次第です。
次に、2点目、開示制度の見直しであります。企業が投資家との実効的な対話や情報開示に努めることは重要であって、今後もその姿勢は維持されるべきであろうと思います。しかし、一方で、近年の英文開示やサステナビリティ関係の対応、総会前の有価証券報告書開示要請など、企業の開示負担は増え続ける一方でありまして、これは我々実務サイドから見ますと、いろいろ関経連のメンバーからも意見を聞いていますが、残念ながら、好ましい状況とは言えません。企業負担や中長期的視点に立った経営戦略の立案というのに投ずる時間を考えてみても、大変マイナスの影響を懸念するところであります。
さらに、現在は、会社法、金商法、取引所規則など、複数制度にまたがる開示書類が併存しておりまして、同一または類似の情報が形式を変えて繰り返し求められるなど、開示情報の重複も少なくありません。企業からは、これらの整理や統合の必要性についての声も持ち上がっている次第であります。
こうした中で、開示の在り方全体をレビューする時期に来ているのではないかと思います。将来的には、会社法と金商法を一体的に改正することを見据えつつ、まずは、取引所規則を含む金融庁の所管関係等で対応可能な開示制度の見直しを早期に進めていただくことを強く要望します。
開示の頻度やタイミングの議論にとどまらず、情報の質や実効性に着目した制度設計を通じ、企業と資本市場との信頼関係を一層強化することが重要ではないでしょうか。その一環として、例えば、決算短信やコーポレートガバナンス報告書などの取引所規制による開示書類等の合理化に向けた対応も今後の検討に含めるべきだと考えます。このようなレビューを行うことなく、コードの改訂によって総会前の有価証券報告書開示を含む開示負担を増大させることには、懸念を覚える次第であります。
3点目でございます。最後の3点目、実質を伴ったガバナンスの追求であります。コーポレートガバナンスは企業と投資家が対応を重ねつつ形成されるべきものであって、企業の業種、業態、規模、成長段階や取り巻く環境に応じた柔軟な設計が必要であります。この10年でも、地政学リスクの高まりやパンデミック、DX・GXの進展など経営環境が大きく変化しており、形式的な一律の整備にとどまらず、より一層実質を重視する対応が求められております。
そうした中、企業の稼ぐ力を高めることがガバナンスの中心課題とされまして、ROEとかPBRへの偏重が安易な自社株買いや形式的な対応を招くケースも多々見られるところであります。内部留保につきましても、現預金の必要以上のため込みと捉えず、将来への投資資源として議論すべきではないかと思います。
また、独立社外取締役については、候補者が少ない中、現状の3分の1以上選任の一律ルールは兼務の集中を招いて、適切に機能発揮できていない懸念があるのではないでしょうか。規律を形式的に求めるルールを見直すことも考えてはいかがでしょうか。
私のほうから3点コメントさせていただきました。よろしくお願いいたします。
【神田座長】
どうもありがとうございました。それでは、武井メンバー、どうぞお願いいたします。
【武井メンバー】
ありがとうございます。資料6の話を、資料2に沿ってお話をいたします。まず、資料2には今回も重要なキーワードがたくさん入っていると思います。稼ぐ力の強化、緊張感ある信頼関係、あと、いろいろな成長投資の要請。これらのまさに攻めのガバナンスの基本線を維持すべきであり、さきほど岩間さんの話もありましたが、まさにそのとおりで、ここの重要性を改めて確認するという点で、この資料2は本当に大事だと思います。
稼ぐ力の強化の観点で、先ほどどなたかもおっしゃいましたが、例えば、経産省さんが4月の終わりに、「稼ぐ力」の強化に向けた取締役会の5原則、マネジメントの在り方、実務のいろいろな悩みを踏まえて出されています。競争優位性を踏まえた価値創造ストーリーをつくる、適切なリスクテイクを促す、中長期目線を見ようとかです。そういったいろいろな成果物も適宜御参照されて、今後のいろいろなフォローアップに活かしていただければと思います。これが1点目です。
2点目が、資料2なのですが、去年と今年とを比べて、多分意図的ではないと思うのですが、スチュワードシップの活動の部分の形式化、この対応の話は今日の資料4を踏まえて開始されるのだと思いますけれども、スチュワードシップ活動の実質化という部分はまだまだ課題が多いということがこの資料4を見ておりましてもうかがわれます。
資料4をみておりますと、例えば、26ページとかで、きちんとしたエクイティストーリーの話ができているときには、お互い有益でいい話になっていますというものがあれば、他方で、25ページには、こういった実質的な本質的なエンゲージメントができる投資家の方はまだまだ少ないという、そういう感想の意見もあります。あと、28ページとかですと、短期目線での質問が多くて、まだファンダメンタルズを聞くと言いながらそういうことを聞いていないとかそういった指摘もあります。
そういう意味で、本来の中長期目線での対話ができている投資家の方が少ない。スチュワードシップ・コードができて相当よくなっていますが、まだまだ少ないのではないか。長期目線での投資家の方をどうやってつくっていくかという根本問題は依然として重要な課題だと思いますので、その点をきちんと継続的にフォローアップしていくということは大事だと思います。
特に、今回の1つ目の話、成長投資の促進というのはとても大事な政策課題だと思っているのですが、成長投資に関して、企業側の課題としては、それが競争優位性を伴った形での価値創造にどう結びつけるかという説明が甘い場合もあります。ただ、他方で、投資家の方の中には、幾ら成長投資をどう説明しても、そんなことやっても絶対成功しないと、やるなというふうに言ってしまう方もいます。投資家のかたはもちろん多様であるべきですし、多様であることは全然否定すべきとは思わないですが、幾らどう説明しても、そういうことを立場の違いで肯定しない。その理由の一つには、短期思考の方はそうなることがありますし、あと例えば、昨今いろいろ話題になっている重要なサステナに関する話であっても、いろいろな時間軸が違うことで全然話が合わないわけです。
そういった中で、短期思考のところに対する警鐘を改めてちゃんと促していくこと。これが今現在やるべきことではないかと思います。そういう意味で、本当の意味での中長期目線をどうやるかという部分に関して、企業側も投資家側も環境整備をしていくということは依然として今後とも大事だと思います。その点をぜひ、今回、資料に、依然として今後のフォローアップの課題として入れていただければなと思います。
3点目が、今の話に絡むのですが、さっき佃さんもおっしゃった3ページのcash hoardingという箇所で、これは多分、現金預金が増えていて、2ページ目にも書かれていますが、それがちゃんとした成長投資に向かっているのでしょうかという話だと思います。成長しに向かっているのかどうかならいいのですが、この文章だけだと、cash hoardingをあたかも、短期思考の方が、使い道がないと何でも否定して株主還元をしろと言う、そういう過剰反応を促すことがないか。こうした過剰反応を促さないようにする必要があって、この書き方に関して、そういう副作用が生じないように、成長投資にどう向かうのかという書き方にしたほうが誤解がないのかと思いますので、その点注意していただいたほうが良いかなと思います。
以上3点です。
【神田座長】
どうもありがとうございました。これで本日御参加のメンバーの皆様方全員から御発言いただきました。大変貴重な御指摘をたくさんいただきまして、ありがとうございました。
オブザーバーからも御発言いただけると伺っておりますので、法務省と経済産業省からお願いいたします。法務省、よろしいでしょうか。お願いいたします。
【宇野参事官】
法務省民事局参事官の宇野でございます。私からは、現在法務省において検討しております会社法制の見直しについて、簡単に御紹介をさせていただければというふうに思います。
皆様御案内のとおり、会社法は平成17年に制定されまして、その後、平成26年と令和元年に改正がされましたが、令和元年の会社法の一部を改正する法律が成立してから5年以上が経過をしておりまして、近年の社会経済情勢の変化等に伴って検討を要する複数の課題が指摘されるに至っております。
具体的には、先ほど言及もありましたが、従業員等に対する株式の無償交付、株式交付の活用範囲の拡大、バーチャルオンリー株主総会等に関して見直しを求める声をいただいているところでございます。
このような状況を踏まえまして、今年の2月、法務大臣から法制審議会に対しまして、会社法制に関する諮問ということで、そこの資料にも書かせていただきましたが、「近年における社会経済情勢の変化等に鑑み、株式の発行の在り方、株主総会の在り方、企業統治の在り方等に関する規律の見直しの要否を検討の上、当該規律の見直しを要する場合には、その要綱を示されたい」との諮問が行われまして、これに関する調査審議を行うために、会社法制(株式・株主総会等関係)部会を設置することが決定されました。
この会社法制部会は、今年の4月23日、第1回の会議を開催いたしまして、部会長として、このフォローアップ会議にも参画しておられます神作先生が選任された後、キックオフとして総論的なフリーディスカッションを行いまして、株式の発行の在り方に関しては、株式の無償交付の対象範囲の見直し、株式交付制度の見直し、そして現物出資制度の見直しについて、また、株主総会の在り方に関しては、バーチャル株主総会制度や実質株主確認制度について、また、企業統治の在り方に関しては、指名委員会等設置会社制度の見直しなどについて、さらに、その他の諮問事項に関する事項について幅広く意見交換が行われたところでございます。
先月21日の第2回目の会議からは、いわゆる第一読会ということで各論的な検討が開始されておりまして、第2回会議では、株式の発行の在り方についての各論的な検討が行われたところでございます。
今日のフォローアップ会議でも、各メンバーの先生方から会社法制に関する御指摘も複数いただいたものと認識をしております。いろいろな方々の声をお聞きした上で、また、金融庁あるいは経産省とも連携させていただきながら、充実した審議が行われるように努めてまいりたいと思います。
私からは以上でございます。ありがとうございました。
【神田座長】
どうもありがとうございました。それでは、経済産業省、どうぞお願いいたします。
【中西産業組織課長】
ありがとうございます。経済産業省産業組織課長、中西でございます。経済産業省からも参考資料として配付してございます。大部ですのでポイントだけ御説明をさせていただきます。
金融庁から御紹介いただきましたように、社外取締役の選任や指名委員会・報酬委員会の設置等の取組は、この10年で着実に進捗しているところでございます。他方で、日本の上場企業、大企業につきましてこの10年間の状況を見ますと、ROE・PER・PBRは向上したものの、欧米企業と比べてまだ、多少なりともギャップがあるという状況でございますし、成長の源泉となる設備投資や無形資産投資は横ばいという状況でございまして、ほかにも研究開発費や人的投資の水準等もまだ欧米企業と比べますと低調という状況でございます。
また、企業と投資家との関係については、自社株買いや配当といった株主還元は増加する一方で、成長投資と株主還元の適切な優先順位が重要という御指摘もございますし、一部の機関投資家等による形式的な議決権行使の問題など、スチュワードシップ活動の実質化に関する指摘も依然としてあるという状況でございます。
そこで、経済産業省としては、各企業が事業ポートフォリオを組み替えながら経営資源を積極的に成長投資に振り向けていただいて、高い付加価値を創出して、まさに今日のキーワードでございます「稼ぐ力」を強化していただくためには、中長期目線での成長戦略を構築し、確実に実行していただくことが大変重要だと考えてございます。
こうした取組を支える基盤である実効的なコーポレートガバナンスを各企業の方が構築いただいて、政府としても、「企業の成長戦略を中心とする社会システム・政策体系」を構築するために、経済産業省では、企業のコーポレートガバナンスの取組の「深化」を後押しするガイダンス等を策定して、社会システムの課題や政策検討の方向性についても整理してきたところでございます。
まず、今日来ていただいております、神田先生を座長としてお迎えさせていただいて、「稼ぐ力」の強化に向けたコーポレートガバナンス研究会を昨年9月から開催して議論させていただいておりまして、今年の4月に「「稼ぐ力」の強化に向けたコーポレートガバナンスガイダンス」を策定して、稼ぐ力の強化に向けたコーポレートガバナンスの取組の前提となる考え方、取組の進め方、検討ポイント・取組例及び企業事例を整理することで、各企業が自律的な取組を行う際の参考として活用いただけるようにしているところでございます。
加えて、本ガイダンスのエッセンスを「「稼ぐ力」を強化する取締役会5原則」として取り出した上で、企業が攻めの経営に取り組む上で取締役が踏まえるべき内容と経営陣が取るべき行動についても整理しているところでございます。
加えまして、今年の5月に中間報告を取りまとめました価値創造経営小委員会、資料の後半のほうで載せてございますが、ROE等の資本収益性とPBR等の成長期待の2軸で上場企業全体を企業群の①~④の4つの象限に分類いたしまして、企業が資本収益性や成長期待のより高いポジションへと移行する際に、優先順位が高いと思われる有効な「企業の打ち手」、「その実行の支障となる社会システムの課題」、そして、課題解決のための「政策検討の方向性」を整理したところでございます。
例えば、成長期待の高い企業は、株主還元よりも収益基盤を固めるために積極的な成長投資を優先すべきでございまして、そのための課題として、大規模かつリスクの高い投資等の資金調達が指摘されたところでございます。
これらの検討も踏まえまして、コーポレートガバナンス・コードの見直しの議論というのが今後金融庁を中心になされていくわけでございますが、金融庁や東京証券取引所、それから法務省など関係機関と連携をいたしまして、日本企業の稼ぐ力を強化して持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現できますように、経済産業省としても企業のコーポレートガバナンスの取組の「深化」を後押しする議論に貢献していく所存でございます。ありがとうございます。
【神田座長】
どうもありがとうございました。大変申し訳ありませんが、時間を過ぎておりますので、この辺りとさせていただきたいと思います。いろいろと御議論いただきましてありがとうございました。
今後ですが、本日御議論いただきました中で、資料2、コーポレートガバナンス改革の実践に向けたアクション・プログラム2024のフォローアップと今後の方向性についての案というものにつきましては、皆様方から本日御意見を多数いただきました。皆様方の中では御意見が分かれたと私は理解したのですが、という点も幾つかありまして、いずれも重要な点だと思われます。ただ、もう一回集まっていただくというのはなかなか現実的でもございませんので、今後、メール等で調整をさせていただきたいと思います。
それで、メール等での調整が終わりましたら、後日、その後でということになりますが、金融庁及び東京証券取引所のウェブサイトにて公表をするという段取りでやってみたいというふうに思いますので、皆様方には引き続き御協力をいただければ大変ありがたく存じています。
なお、皆様方に最終的な御確認をしていただいた後に、てにをはなどの表現の平仄とかそういったものがありますが、そういった点の最終的な精査については、大変恐縮ですが、念のため、私に御一任いただければと思いますが、この点よろしゅうございますでしょうか。
(異議なしとの声)
どうもありがとうございました。それでは、そのように進めさせていただきます。それでは、そういうことでございまして、また皆様方には近々御連絡をさせていただきますが、どうかよろしくお願いいたします。
それでは、以上をもちまして、本日の会議は終了とさせていただきます。どうも、長時間にわたり、大変熱心に御参加いただきまして、誠にありがとうございました。
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