監査法人のガバナンス・コードに関する有識者検討会(第4回)

1.日時:

平成28年11月24日(木)10時00分~12時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

【関座長】

それでは、ただいまから監査法人のガバナンス・コードに関する有識者検討会、第4回になりますが、開催したいと思います。

今日は大変雪が降る寒いなか、皆さん、ご参集いただきまして、大変ありがとうございます。

前々回、前回までにこの論点については全て一通り議論していただいたということで、今日は、皆さんのご意見をガバナンス・コードの「原則に盛り込まれるべき事項」ということで案を取りまとめました。事前に皆さんにいろいろなご意見を伺って、できるだけそれを織り込んでまとめたというふうに考えております。今日は、その中身をお話ししますので、ぜひご議論いただきたいということでございます。

それでは、まず事務局から説明をさせていただきます。

【原田開示業務室長】

ありがとうございます。座長がおっしゃったとおり、本日は、具体的なコードの策定に向けて、議論のたたき台ということで「原則に盛り込まれるべき事項」を整理させていただきました。本日の議論を踏まえ、具体的なコードを固めていきたいと思います。資料をごらんください。

まず、1ページでございます。コードの大項目が並んでございます。これが原則のもとになる内容でありまして、順にご説明いたします。

まず、「監査法人が果たすべき役割」として、監査法人は、企業の財務情報の信頼性を確保し、資本市場の参加者等の保護を図り、国民経済の健全な発展に寄与する公益的な役割を有している。これを果たすため、監査法人は、法人の構成員による自由闊達な議論を確保し、その能力を十分に発揮させ、会計監査の品質を組織として持続的に向上させるべきである。

この国民経済の健全な発展に寄与する公益的な役割、それから、法人の構成員による自由闊達な議論の確保、その能力を十分に発揮、それから、監査法人が組織として会計監査の品質を持続的に向上と、こうした点が強調されてございます。

次に、「組織体制」でございますけれども、監査法人は、会計監査の品質の持続的な向上に向けた法人全体の組織的な運営を実現するため、実効的に経営(マネジメント)機能を発揮すべきである。それから、監査法人は、監査法人の経営から独立した立場で経営機能の実効性を評価・監督し経営の実効性の発揮を支援する機能を確保すべきである。

まず、経営機能の実効的な発揮を前提として、そこからその実効性を評価・監督する機能を掲げております。

それから、「業務運営」として、監査法人は、組織的な運営を実効的に行うための業務体制を整備すべきである。また、人材の育成・確保を強化し、法人内及び被監査会社、その他の関係者との間において、会計監査の品質の向上に向けた意見交換や議論を積極的に行うべきであると書かせていただいております。

法人の頭がしっかりしても手足が動かなければ、また手足がきちんと動いているかを頭が把握しなければという内容。それから、人材の育成・確保が前提として必要。それで、意見交換や議論が積極的に法人内外で行われることが実現されると、そうした内容になっております。

最後に「透明性の確保」でありますが、監査法人は、本原則の適用状況などについて、資本市場の参加者等が適切に評価できるよう、十分な透明性を確保すべきである。また、組織的な運営の改善に向け、法人の取組みに対する内外の評価を活用すべきである。

しっかりした監査への取組みを開示して、内外にPDCAを回すということでございます。

以上が大原則でございます。

おめくりいただいて、2ページからより具体的な内容を示させていただいてございます。このページからは、大項目ごとに※で示されている考え方と、それから、大項目の具体的な内容について各矢羽根の小項目を用意しております。以下、考え方については概要をご説明し、続いて矢羽根についてご説明いたします。

まず、「監査法人が果たすべき役割」でございますが、資本市場の信頼性を確保し、企業の成長に向けた資金が円滑に提供されるためには、それから、企業が経営戦略を策定し、持続的な成長・中長期的な企業価値の向上を目指す上でも会計監査は極めて重要なインフラということでございます。公認会計士とともに監査法人も、組織として、国民経済の健全な発展に寄与する公益的な役割を担っている。その際には、法人の構成員による職業的懐疑心の発揮が十分に行われるよう、留意すべきであると、こうした考え方でございます。

矢羽根につきまして、監査法人は、その公益的な役割を認識し、会計監査の品質の持続的な向上に向け、自ら及び法人の構成員がそれぞれの役割を主体的に果たすよう、トップの姿勢を明らかにすべきである。これは、特にトップは自らの役割を明らかにした上で、法人における姿勢、品質向上に向けた姿勢を明らかにせよということでございます。

監査法人は、法人の構成員が共通に保持すべき価値観を示すとともに、それを実践するための考え方や行動の指針を明らかにすべきである。これは、監査法人におきまして、監査品質は何かといった考え方を含む構成員が共通に保持すべき価値観を明らかにせよということでございます。

それから、監査法人は、法人の構成員の士気を高め、職業的懐疑心などの職業的専門家として能力を十分に保持・発揮させるよう、適切な動機付けを行うべきである。

それから、監査法人は、法人の構成員が、会計監査を巡る課題や知見、経験を共有し、積極的に議論を行う、開放的な組織文化・風土を醸成すべきである。

それから、監査法人は、会計監査を実施するに当たり、非監査業務の監査業務に与える影響についての考え方を明らかにすべきである。これは、非監査業務の会計監査に与える影響におけるメリットやデメリットの考え方を整理されたしということでございます。

ページをおめくりください。

次は、経営機能の発揮でございます。考え方でございますが、在り方懇の提言などで指摘されているとおり、監査法人は、5人以上の公認会計士で組織するパートナー制度を基本としているが、大規模な監査法人においては、社員の数が数百人、法人の構成員が数千人の規模となるなど、監査法人において、経営陣によるマネジメントが規模の拡大や組織運営の複雑化に対応しきれていないことが、監査の品質確保に問題を生じさせている主な原因の1つとして指摘されている。監査法人においては、法人の組織的な運営に関する機能を実効的に果たすことができる経営機関を設け、法人の組織的な運営を確保することが重要である。

矢羽根でありますが、まず、監査法人は、実効的な経営機関を設け、組織的な運営が行われるようにすべきである。

それから、監査法人は、組織的な運営を確保するため、以下の事項を含め、重要な業務運営における経営機関の役割を明らかにすべきである。こうして特に経営機関の役割として強調すべき事項を掲げています。

まず、監査品質に対する資本市場の信頼に大きな影響を及ぼし得るような重要な事項について、監査法人としての適正な判断が確保されるための主体的な関与。それから、監査上のリスク等についての、経済環境等のマクロ的な観点を含む分析や、被監査会社との間での率直かつ深度ある意見交換又はその環境の整備。それから、法人の構成員の士気を高め、職業的専門家としての能力を保持・発揮させるための人材育成の環境や人事管理・評価等に係る体制の整備。こうした事項でございます。

それから、監査法人は、経営機関の構成員が監査実務に精通しているかを勘案するだけではなく、経営機関として、法人の組織的な運営のための機能が十分に確保されるよう、経営機関の構成員を選任すべきである。監査の能力だけではなくて、マネジメント能力のある人材をトップに選ぶべしということでございます。

ページをおめくりください。

次は、評価・監督機能の確保でございますけれども、考え方でありますが、監査法人の経営機関の機能の強化に併せ、その実効性について評価・監督し、実効性の発揮を支援する機能を確保することが重要である。それから、監査法人が、組織的な運営を確保し、資本市場において公益的な役割を果たすために、評価・監督機関において、例えば、企業における組織的な運営の経験や資本市場の参加者としての視点などを有する、外部の第三者の知見を活用すべきである。

矢羽根でありますが、監査法人は、経営機関による経営機能の実効性を評価・監督し、実効性の発揮を支援する機能を確保するため、評価・監督機関を設け、その役割を明らかにすべきである。

次に、監査法人は、組織的な運営を確保し、公益的な役割を果たす観点から、自らが認識する課題等に対応するため、評価・監督機関に、独立性を有する第三者を選任し、その知見を活用すべきである。これは、監査法人が、まず自ら改善課題を考えて、改善課題と考えていることを明らかにして、それから、その対応のために必要な知見を有する方を選んでいただきたいということでございます。

それから、監査法人は、評価・監督機関に選任された独立性を有する第三者について、例えば以下の業務を行うことが期待されることに留意しつつ、その役割を明らかにすべきである。

例示として書かれておりますが、組織的な運営の実効性に関する評価への関与。それから、経営機関の構成員の選退任、評価及び報酬の決定過程への関与。法人の人材育成、人事管理・評価及び報酬に係る方針の策定への関与。それから、内部及び外部からの通報に関する方針や手続の整備状況。それから、伝えられた情報の検証及び活用状況の評価への関与。被監査会社、株主その他の資本市場の参加者等との意見交換への関与。こうした事項でございます。

それから、監査法人は、評価・監督機関がその機能を実効的に果たすことができるよう、評価・監督機関の構成員に対し、適時かつ適切に必要な情報が提供され、業務遂行に当たっての補佐が行われる環境を整備すべきである。サポート体制を設けよということでございます。

それから、「業務運営」でございますけれども、監査法人は、組織的な運営を実効的に行うための業務体制を整備すべきである。

考え方でございますけれども、まず、監査法人において、経営機関の考え方を監査の現場まで浸透させる必要があり、そのための体制を整備する必要がある。また、経営機関の考え方を、法人の構成員が受け止め、業務に反映するようにするためには、大局的かつ計画的な人材育成、人事管理等が極めて重要ということでございます。それから、監査の現場から経営機関等への情報の流れを円滑にすることも重要と。こうしたことにより、従来、監査法人においては、一部に縦割りで閉鎖的な組織風土がみられるという指摘もありますが、法人の構成員の間でより自由闊達な議論が行われることが期待されるということでございます。

矢羽根でありますが、監査法人は、経営機関が監査の現場からの必要な情報等を適時に共有するとともに経営機関等の考え方を監査の現場まで浸透させる体制を整備し、業務運営に活用すべきである。また、法人内において会計監査の品質の向上に向けた意見交換や議論を積極的に行うべきである。

それから、人事等でございますけれども、監査法人は、法人の構成員の士気を高め、職業的専門家としての能力を保持・発揮させるために、法人における人材育成、人事管理・評価及び報酬に係る方針を策定し、運用すべきである。その際には、法人の構成員が職業的懐疑心を適正に発揮したかが十分に評価されるべきである。

監査法人は、人材育成や人事管理についてが、併せて以下の点について留意すべきである。法人のそれぞれの部署において、職業的懐疑心を発揮できるよう、幅広い知見や経験につき、バランスのとれた法人の構成員の配置が行われること。これは、監査チームにおける職業的懐疑心の発揮も含むという趣旨でございます。法人の構成員に対し、例えば非監査業務の経験や事業会社等への出向などを含め、会計監査に関連する幅広い知見や経験を獲得する機会が与えられること。それから、法人の構成員の会計監査に関連する幅広い知見や経験を、適正に評価し、計画的に活用すること。

次に、監査上のリスク等に関する意見交換でございますけれども、監査法人は、監査業務にあたり、被監査会社のCEO・CFO等の経営陣幹部及び監査役等との間で、監査上のリスク等について率直かつ深度ある意見交換を尽くすべきである。

それから、監査法人は、内部及び外部からの通報に関する方針や手続を整備し、伝えられた情報を適切に活用すべきである。その際、通報者が、不利益を被る危険を懸念することないよう留意すべきである。

それから、監査法人は、監査に関する業務の効率化及び企業においてもIT化が進展することを踏まえた深度ある監査を実現するため、IT活用を検討すべきである。

最後に「透明性の確保」でございます。監査法人は、被監査会社、株主、その他の資本市場の参加者等が、監査法人における会計監査の品質の向上に向けた考え方や取組みなどを適切に評価して監査法人を選択し、それが監査法人において、品質向上へのインセンティブの強化や監査報酬の向上につながるといった好循環を生むことが重要である。このため、監査法人は、資本市場の参加者等が評価できるよう、情報開示を充実すべきであり、それは資本市場の参加者等との意見交換の有効な手段になると考えられる。法人内においても評価を行って、資本市場の参加者等との意見交換を合わせ、その結果を更なる改善に結びつけるべきである。

矢羽根でございますけれども、監査法人は、被監査会社、株主、その他の資本市場の参加者等が評価できるよう、本原則の適用の状況や、会計監査の品質の向上に向けた取組みについて、例えば「透明性報告書」といった形で、わかりやすく説明すべきである。

それから、併せて以下の項目について説明すべきである。会計監査の品質の持続的な向上に向けた、自ら及び法人の構成員がそれぞれの役割を主体的に果たすためのトップの姿勢。それから、法人の構成員が共通に保持すべき価値観及びそれを実践するための考え方や行動の指針。非監査業務の監査業務に及ぼす影響についての考え方。経営機関の構成や役割。評価・監督機関の構成や役割。評価・監督機関の構成員に選任された独立性を有する第三者の選任理由、役割及び貢献。それから、評価・監督機関を含め、監査法人が行った監査品質の向上に向けた取組みの実効性の評価。

監査法人は、会計監査の品質の向上に向けた取組みなどについて、被監査会社、株主、その他の資本市場の参加者等との積極的な意見交換に努めるべきである。その際、評価・監督機関に選任された独立性を有する第三者の知見を活用すべきである。

それから、監査法人は、本原則の適用の状況や監査品質の向上に向けた取組みの実効性を定期的に評価すべきである。

最後に、監査法人は、資本市場の参加者等との意見交換から得た有益な情報や、本原則の適用の状況などの評価の結果を、組織的な運営の改善に向け活用すべきである。PDCAを回すということであります。

以上でございます。

【関座長】

ありがとうございました。

それでは、大項目として「監査法人が果たす役割」、それから「組織体制」、「業務運営」、「透明性の確保」と、4項目に分けてこの本レポートは構成しているわけですが、全体をどう考えるかということもご議論いただきたいと思うんですけれども、まずは、最初の「監査法人が果たす役割」、「組織体制」、資料のページで言いますと、2ページから4ページを中心にご意見を伺えればと存じます。その後、「業務運営」、「透明性の確保」ということと、全体を含めてもう一度ご議論いただくというような形で進めさせていただきたいと思います。

そういうことでよろしければ、最初の4ページまでのところで、まずご意見を伺いたいと思います。どなたからでも結構です。

石原さん、どうぞ。

【石原メンバー】

ありがとうございます。

私、この会に参加させていただいて主として3つのことを申し上げてきたつもりでございます。1点目は、高品質の監査とは一体どういうものなのかということ、それから2点目が、マネジメントと言われております経営機関の役割に関して、特に意図的な不正会計の疑い等があったような場合には、経営機関が必ず関与すべきであるということ、そして3点目は、被監査会社とのコミュニケーションの強化ということでございます。まずは前半ということになりますと、最初の2点が範囲に入りますので、それについて幾つか申し上げたいと思います。

1つは、3ページの「組織体制」のところの矢羽根の2つ目で、監査法人は、「重要な業務運営における経営機関の役割を明らかにすべきである」とありまして、これについて全く異存はないわけですが、特に今回改めて明示していただいている最初の黒丸、「監査品質に対する資本市場の信頼に大きな影響を及ぼし得るような重要な事項について、監査法人としての適正な判断が確保されるための主体的な関与」、これも全く異存はないのですけれども、ただ、この「監査品質に対する資本市場の信頼に大きな影響を及ぼし得る」というのは一体どういうことなのかということについて、より明示的に書くべきであると考えております。

一般的に虚偽記載と言いましても、事務ミスとかも含まれることになりますが、ただ、最も重要な監査リスクというのは、意図的な不正会計の疑いということだと思いますので、この冒頭に、改めて「意図的な不正会計の疑い等」という文言を明示的に、これが監査法人に対して市場が一番求めていることなのだということをはっきりさせる観点から、冒頭に記載したらどうかというのが提案でございます。

それとの関係で、そもそも監査品質というのは何なのかということについて、可能であればこの上のところに新たなポツとして、「高品質な監査のあり方の明示」といったような記載を加えることで、それぞれの監査法人は高品質な監査をどう考えているのかということをきちんと経営機関として表明してもらうということが必要だと考えております。それを踏まえて、意図的な不正会計の疑い等、重大な問題が生じた場合には、経営機関が必ずそれを評価し、判断していくことが必要であると考えております。また、その観点から、今回記載はありませんけれども、下の方に「必要に応じ、経営機関に必要な役割として記すべき事項を加筆する」と書かれておりますので、ここに具体的な何かを加筆していくということであるならば、監査品質に対する資本市場の信頼に大きな影響を及ぼし得るような重要な事項については、主体的な関与をすべきだということですので、意図的な不正会計の疑いが生じたような場合には、監査計画や方法の見直しの指示及び監査意見の形成、契約継続の判断等について経営機関で判断をすべきである、ということをこの部分に追記して、意味合いをより明確にしたらどうかと申し上げたいと思います。

【関座長】

私、このペーパーをまとめるに当たって、一番の論点は、今、石原さんが提起された問題ではないかと思っております。この原案では一等最初の2つ目の山の最初の、「監査法人としての適正な判断を確保されるための主体的な関与」と、こういう文章で提案させていただいているわけですが、これではかなり抽象的過ぎて問題がスペシフィックに特定できてないのではないかというご指摘です。今の石原さんのご意見も含めて、特に今の石原さんのご意見を含めてそれぞれの委員の方々のご見解やご提案があると大変有益な議論ができるのではないかと思います。よろしくお願いします。ほかのメンバーの方、いかがでしょうか。

八田メンバー、どうぞ。

【八田メンバー】

基本的な考え方には反論するわけではないのですが、今のように、直截的に企業の当事者の意図的な不正会計の疑いというものをかなり具体的に記載することになりますと、監査人ないしは監査業務自体が、いわば、検察型監査をしなければいけないというような感じになるんですね。まず、その当事者の意図というのは誰の意図なのかということです。通常は、経営者不正の最たるものが粉飾であると言われているわけですが、例えば、昨今の事例を見ても、この経営者の意図というのが、この検察的レベルにおいても明示的に掌握できないのではないかということです。

したがって、私は、そうではなくて、そのクライアントの組織全体に潜む不正会計を疑えといったような視点で指摘することが筋であろうと思います。つまり、監査人が立証すべき監査の要証命題は、適正であるということであって、適正ではないとか、不正があるということを立証せんがために監査をやっているわけではないからです。もしも、石原さんのような考えがこの指針等に盛り込まれるというようなことになると、良いか悪いかは別の問題ですが、少なくとも会計士監査の考え方においてパラダイムの転換が起きるのではないかという点を危惧しています。まだ、そこまでの域には達していないというのが私の理解です。確かにご指摘のように、アメリカでもエンロン事件以降は、もう不正を見抜けない監査は無用なんだという社会からの声が強くあったようです。ただ、不正を犯したのは誰なのかとなると企業自体でありますから、そこの規律づけ、あるいはガバナンス、内部統制、これを度外視して監査人だけに責めを負わせるというのは、少し視点が違うのかなということです。別に、考え方自体を否定するものではないのですが、記載の方法に関して、もう少し監査人サイドの目で納得できるような記載方法が必要ではないかという気がします。

【関座長】

どうぞ。

【國廣メンバー】

今のお二方の意見、どちらにも基本的には賛成、ニュアンスの違いということだろうと思うんです。

よく考えてみると、今まさに経営者主導であろうが、組織的なものであろうが、不正会計あるいは職業的懐疑心の不足というところがまさに問題になって今回のガバナンス・コードにつながっているわけで、この点は、はずせないと思います。ただ、もう少し広い目で見ると、不正会計や職業的懐疑心の不足の問題は、監査人、あるいは監査法人の意識と社会の期待とのギャップがすごく大きかったという問題なのではないかと思うんです。これまでは、要するに監査法人側には「監査というのは不正を見つけるものではないもんね」「合理的な保証に過ぎない」という意識、長年、不正会計を見つけるのは我々の仕事ではないという強いある種のドグマが監査法人側にあったと思うんですね。しかし、社会の期待は、不正の発見というところに大きく傾いていたにもかかわらず、監査法人側はそれに応えきれてなかったというところ、つまり「期待ギャップ」の問題が一番の問題であるような気がするんですね。

そうだとするならば、ここの3ページのところになるわけですけれども、ポツが3つ矢羽根の下にあって、不正会計というところが前面に出ているわけですけれども、もう少し高いレベルから考えると、「社会の期待に応えることのできる監査ができるようにしよう」ということが最も重要ではないか。その中の1つの重要な項目として不正会計を位置づけるというような形で、もう少し大くくりで捉える条項にしたほうが、今後の社会の変化にも耐え得るというか、柔軟に対応し得るものになるのではないかなと。今は、不正会計、経営者不正、組織不正、懐疑心、これはものすごく大事ですけれども、本質問題は期待ギャップというか、社会の変化に応じ切れてなかったと、そこにあるのではないのかなと思います。

例えば、IoTだの、フィンテックだの、いろいろ言われていますけれども、いろいろ変わってくる。そういう中で、そういう新しいものを、どうその時代の変化、社会の変化を監査業務に取り入れるのか、それが監査法人の経営の役割なのではないかと思います。

確かに、例えば8ページなどでは、積極的な意見交換をして取り入れるみたいな言葉が入っているし、4ページには、ポチの4つの5つ目の下に、意見交換しましょうみたいなことが書いてありますけれども、では、意見交換して聞き置くだけなのか、あるいは、その意見交換をしながら社会の変化にどう対応していくのかという、もう少し大きな捉え方があったほうがいいのかなと、そのように感じました。

以上です。

【関根メンバー】

ありがとうございます。

監査をしていた立場からは、不正の発見そのものが監査の目的ではないとしても、財務諸表を歪めるような大きな不正をしっかり発見するというのは監査に対する社会の期待だと思っており、その意味で、皆さんのおっしゃっていることに異論はありません。ただ、この「主体的な関与」という言葉は、監査人の立場から誤解が生じるおそれがないかという点が気になっております。

まず、監査法人の経営陣が、非常に重要な場合にしっかりと対応するというのは当然のことだと思いますが、業務執行社員が責任者としてサインをするという公認会計士法の建て付けがある中で、業務執行社員にかわって経営陣が判断するということを示唆してしまい、法令の枠を超えてコードで経営陣の責任を新しく設けるというような意味合いに読まれないかと気になっています。皆さんのおっしゃっている趣旨はそうではないような気もしますが、この言葉だけを見るとそのような意味に捉えられるのではないかと思います。

「関与」と言いますと、関与社員、今の業務執行社員としての関与を想起させますので、個々の監査業務の業務執行責任の履行を経営陣に求めているようにも読めてしまうおそれがあります。監査法人というのは、公認会計士法第34条の13及び品質管理基準に基づき、適切な品質管理システムを整備、運用することが求められており、監査法人の最高経営責任者には、もともと、その最終的な責任があります。ただ、組織が大きくなっており、組織的な対応を図るために、最高経営責任者が、構築した品質管理システムを有効に活用させて、しっかりとした対応をする必要があるのですが、この案ですと、読み方によっては、経営陣が常にオーバーライドをするようにとられてしまうのではないかという点が気になっております。そういう意味で、この「主体的な関与」が、本来あるべき形とは異なる趣旨で読まれてしまうのではないかという懸念です。

また、この件とは別のところに書いたほうがよいのかもしれませんが、非常に重要なときに監査法人・経営陣がしっかりと対応をするのは、当然重要で必要ですが、他方で、個々の監査で業務執行社員がしっかりと対応するというのも非常に重要です。ここがしっかり頑張らないと、監査において、重要な虚偽表示又は不正の疑いがあり、経営陣が対応しなければならない事態になっているということを見抜けないということにもなり得るので、業務執行責任者の形骸化を招かないようにしなければいけないと思っております。

以上のような意味・経緯で、主体的な関与という言葉を誤解がないようにできないかということが気になっているところです。

【引頭メンバー】

ありがとうございます。

まず、今論点になっているその3ページ目のポチの1番目のところですけれども、私も意見としては國廣メンバーに一番近いのですが、あまりにも限定列挙してしまいますと、かえって誤解を与えてしまうのではないかなという感じがしています。

というのは、監査の一番の目的というのは、合理的保証を与えるということであって、不正、犯罪を検挙するという話とは少し違うという整理で、法にはそう定められているわけです。法律改正をするのだったら別です。ですが、法律が改正されないのであれば、今のところそれが目的になっているということです。

さらに、不正のなかにも、意図しない不正というのがあるわけですね。うっかりミスではない意図しない不正。何かというと、例えば、今、会計監査の中で見積もりの監査が多くあり、被監査会社が提出した、その見積もりの根拠が十分でなかったり、あるいは少し変だったりしてもそのまま納得してしまうといったこともあり得るわけです。被監査会社側がこういうことで見積もりしましたというときに、監査人がきちんと証拠を吟味していただけないと、そのままで通ってしまうわけです。今後ますます見積もりの監査が増えるなかで、各企業が提出するそうした見積もりの根拠といったものにおいて、企業間であまりにも判断がぶれてしまっているといったことなどがあるかもしれない。そうした場合、國廣メンバーがおっしゃったように、社会の要請というのはその時代その時代でいろいろ変わってくると思うので、それに関して、監査人の方々にはよく社会を勉強していただいて、それに応じて自分たちのスキルを磨いて、より深度ある、あるいは高い品質の監査を提供していくということがむしろ重要なのではないかと思っております。

さらに、今、関根委員からおっしゃった「主体的な関与」に関してですが、この文言は、私の理解では、これは監査そのもののことではなく、監査法人として適正な判断が確保できるための体制を整備することにきちんと主体的に関与しなさい、ということで、監査チームのみで取り組むのではなく、法人として経営陣がきちんと組織体制を見ていくということだと理解していました。ですが、関根委員の御主張のように読めるのであれば、判断が確保されるための体制整備のために主体的に関与するといった表現にするなど、そうしても別に意味は同じだと思うので、いいのではないかと思いました。

ほかの部分はだめですか。ほかの部分について意見をいいですか。

【関座長】

まず、ここはきっちりこの議論を完結させたいと思います。

【引頭メンバー】

了解しました。

【関座長】

幾つかの、論点がこの中でもあると思うんです。私は3つぐらいあると思います。まず、石原さんの問題提起で、例えば意図的不正会計の疑いなどというよりスペシフィックな文言を入れなければ、これでは抽象的過ぎて不十分ではないかという議論が1つあると思うんですね。それに対して、それはいかがなものかというのが國廣先生や八田先生の話だったと思うんですね。

【國廣メンバー】

すみません、そうではなくて、「不正会計」や「職業的懐疑心」の問題はとても大事なことなので、それはそれで明示して置いておくべきだけれども、もう一つ上位概念として、「社会の期待に応える」ということの明示が要るのではないかという。

【関座長】

いや、それがもう一つあるわけですね。上位概念というのは石原さんがおっしゃった、高度な品質とは一体何だという議論をきちっと明示する必要があるのではないかという議論と私は絡むと思うのですが、その話が1つと、それから、3つ目は、この「主体的な関与」というのは一体どうかと、この3つぐらいあると思うんですよ。ですから、その3つそれぞれについてもう一回整理して議論する必要がある。その3つあるうちの1つですけれども、不正会計の疑いなどというのを入れるべきではないという八田先生や國廣先生のお話から言うと、これはどういう表現に、これでいいということをおっしゃっているのか、少し変えたほうがいいということをおっしゃっているのか、その辺はいかがですか。

【八田メンバー】

私は、國廣先生の考えに基本的に大賛成です。つまり、私の監査論の研究の中でもキーワードは期待ギャップです。その時点の社会、あるいは投資家、あるいはメディアと言ってもいいかもしれませんが、そういう人たちが公認会計士監査に何を求めているのかということ、そして、それに対して監査人自身は、自分たちのミッションは何なのかという意識、あるいはその日々の業務に対する結果ですよね。それらの間の認識に齟齬を来しているというのです。そのギャップの1つに不正に対する対応という問題があるわけです。ただ、この不正もいろいろな態様があるし、引頭さんがおっしゃったように、意図的ではないんだけれども、若干の情報の収集が誤っていたり、予測が誤って見積もりとか、予測を誤ってしまった結果、大きな虚偽記載になってしまうということもあるわけですよね。でも、それは結果的に虚偽の財務報告になった場合には社会は容赦しないということです。そういうふうに考えると、今、監査に対する社会の期待度がどの辺にあるのか、あるいはどういうことを要請しているのか、これは常にあると思うんですが、時代とともにそのレベルも大分変わってきているんですね。今では、日本においてもかなり多くの関係者は、先般の電機会社のような会計不正などは、絶対見逃してはだめだという強い意識を持っていますから、そういう点から見ると、これは明らかに意図的な不正という事例には当たるんですが、でも、多分それだけではないと思うわけです。

したがって、監査品質という言葉がいいのか、あるいは監査期待というのがいいのかわかりませんけれども、それに応えるためには、監査法人はどうあるべきかというときに、社会の声、利害関係者のニーズや状況、これらを敏感に的確にまず把握するという考え方があって、その1つ、2つの事例としてこういうのを記載するのは、特に問題はないのですが、それだけを重要な事項ということで明示されると、監査人にとっては過度な期待につながるのではないかなという危惧を抱きます。この点について、ご理解いただけるかどうかわかりませんが。

ですから、そういう意味で言うと、社会の期待云々というのはもう少し上位の概念なのかもしれませんが、その辺は全体的な背景として、記載していただきたいような気がしますし、私が知る限り、国際社会においてもエクスペクテーション・ギャップという言葉はいっぱい出るけれども、その監査人の行動の中の、あるいは指針とかガイドラインの中で触れているのは、多分ないと思います。そういう意味でも、今回のガバナンス・コードが先駆的ではないかなという気はしますから、ぜひその辺は織り込んでいただきたいということです。

【國廣メンバー】

私は、石原さんの意見に反対ではなくて、それは1つの大事な期待ギャップの例であろうと。しかし、それは限定列挙ではなくて、例示であるということ。その上位概念として期待ギャップ、あるいは社会の変化と、そういうことですので、そこを経営者の意図的不正だけにすればいいのか、あるいは組織的な不正というもう少し広い概念にするかというのは、八田先生、石原先生、どちらでも僕はあり得ると思うんですけれども、それは要らないということではなくて、あくまで例示として、さらに上位概念で期待ギャップについて明示すると、そういう趣旨でございます。

【石原メンバー】

私も申し上げている趣旨はそういうことでございまして、したがって、先ほど申し上げたように、高品質な監査とは何なのかというのをきちんと明示する必要があると思っておりますが、その高品質な監査がどういう考え方から生まれてくるのかといえば社会の期待からであり、社会の期待から生まれてくる高品質な監査として、今何が求められているのかということを最初に監査法人自身がきちんと明示する。そして次に、今まさに世の中から問われているのは、意図的な不正会計の問題が大きいわけですから、「意図的な不正会計の疑い等」と、明確に例示として入れて、「等」の後に「監査品質に対する資本市場の信頼に大きな影響を及ぼし得るような重要な事項」というようにつなげていくことが非常にわかりやすいのではないかと考えます。

【関座長】

わかりました。今、八田先生、國廣先生、それから石原メンバーのおっしゃったことをよく踏まえて、もう一遍事務局でここのところは修文を考えてみることにしたいと思います。

それで、もう一つ、この「主体的な関与」というものをどう考えるのかと、こういう論点が関根メンバー、引頭メンバーから出されたと思うんですね。この点について少し議論をしていただきたいと思います。

どうぞ。

【石原メンバー】

皆様のご意見を伺っていますと、「主体的な関与」について私が思っていることと、引頭先生や関根先生が思われていることと少し違うのかなと感じますのでこの点はクラリファイしないといけないと思います。

私が思っている「主体的な関与」というのは、統治機関として品質管理体制を整備しなければいけないのは当然ですし、今でもそうされているわけですが、体制の整備だけではなくて、個別の監査事案において、意図的な不正会計等の疑いが出てきたときには、それがきちんと経営機関に報告をされて、それに対して監査計画の見直し、監査の深度の見直し、監査方法の見直し、こういったことをどうすべきであるということについて、監査担当パートナーだけではなくて、あるいは品質管理だけではなくて、経営機関として指示を出し、フィードバックを受けて最終的な判断を行う、そういうことです。法的には関与社員が判断するのかもしれませんが、経営機関の役割は、体制や組織の整備だけではないという点で考えが違うのかなと思いますので、クラリファイいただきたいところです。

【関座長】

私、これをつくった事務局を含めた責任者として、どういうことを意図しているかということを少し申し上げたほうがいいと思うんですね。今までの議論を更に深めていただきたいという意味、趣旨で申し上げるわけですけれども。

監査については、監査チームが、実際に監査をやっている監査チームが無限責任を持つというか、責任を持つということは当たり前のことなわけですね。それでは、組織としての監査法人というのは、どういう立場でそういう高品質な監査というものを担保していく責任があるのかと、こういう議論にここはなっているわけですね。そのときに、それはほんとうに体制を整備するだけなのかという問題だと思うんですよ。

私自身は、私自身はですよ、いろいろな監査法人で品質の審査体制であるとか、そういうものが既にずっとできていて、そういう審査体制の中でいろいろな重要な問題について話を聞いて議論をされているということは、これはもう十分承知しているわけですが、ほんとうに機能しているのかなという問題意識を持っています。誤解をおそれずはっきり言いますと、個々の監査チームと、監査法人としての監査品質をチェックするという立場、この建前はあるわけですが、実態的には、なかなかこの対話ができるような格好になっていないのではないか。これこそがまさに東芝事案を含めたさまざまな今までにあった監査品質問題に通底する共通の問題だという認識があるわけです。そういう意見を言う人はたくさんいます。今回のガバナンス・コードでは、監査法人としてそういう問題に対してどういう責任等を担っていくのか明定する必要が不可欠です。極端なことを言えば、私なんかは、監査品質上の重大な問題になると、むしろ監査法人が責任と権限を持って監査証明を出すということではないのかなと思っておったのですが、それは大変無理があるということですし、まさにこの監査法人の法的責任を問うというようなことになりかねないなというふうに思いますし、私のような考えが、権限と責任というようなことから言えば、それは行き過ぎだということは十分自覚をしているということであります。

しかしながら、実態的に言えば、例えば、これは例ですよ、例えば東芝事案に関して言えば、そういう大変な問題だということであれば、私が監査法人のトップであれば、私自身がよく監査チームから話を聞いて、そして東芝の経営者ときちっと数回にわたって真剣にひざを交えて話をするということをやりますよ。それは体制の問題ではなくて、トップの主体的な関与の問題です。ここは適当な言葉がなかなかないので関与ということにしたのです。トップとして、監査法人の組織のトップとして関与していくというのであれば、例えて言えば、自分が監査法人のチームを連れて、そして東芝のトップの皆さんときちっと話をしていくということを必ずするだろうと思うんですね。しかし、現実の監査法人はそういう、何ていいますか、そういうマインドに必ずしもなってない。監査法人としての品質審査体制はありますが、そこでは皆さん、そりゃ意見は言うけれども、いかにもお前が最終的に責任を持つんだから、お前が判断すればいいと、俺たちは意見を言っているんだということにとどまっているのではないか、この間の初川先生の話を聞いてもそう思うんですね。個々の監査担当の責任者は、ああ、そんなことなら彼らに話したって、どうせ俺たちが責任をとるんだから、そんなものしようがないよなと思うに違いないんですよ、組織というものはそういうものです。それではいけないんですよ。だから、そういう問題については、組織として主体的に自分たちが行動するということで、個々の公認会計士の皆さんの無限責任というものとは矛盾しない形で、むしろ個々の公認会計士の皆さんが無限責任を持っているがゆえに、監査法人のトップとしてはそういう行動をするということでなければいけないのではないんですか。そういう組織としてのトップを含む経営機関の主体的なサポートを、今回の監査法人ガバナンス・コードに何としても書き込まなければいけないのではないかなということで、いろいろ事務局とも相談しまして、これは苦心の策なのですが、こういう表現にしたのです。

皆さんにはぜひそういう起案者の問題意識というようなものも踏まえてご議論いただければと思います。

【関根メンバー】

ご説明、ありがとうございます。

関座長がおっしゃったようなことを否定するつもりは全くありませんが、先日の初川メンバーのお話をどのように感じられたかはわかりませんが、実際、非常に重要なことがあった場合、監査法人のトップは、基本的にはチームと一体となっていろいろと対応していきます。それと、先ほど整備という話がありましたが、私は、整備だけではなく、整備した結果として運用がしっかり行われていて、非常に重要なときにきちんとできているかということを確認していくというのもマネジメントに必要なことだと思っていまして、整備だけでなく運用までが重要だと強く思っています。ただ、「主体的な関与」という言葉は、非常に苦労して考えられた言葉であるというのは理解していますが、監査人が見ると、先ほど申し上げたような大きな誤解を生じる可能性があると思います。

【関座長】

例えばどういうふうすればよろしいですか。

【関根メンバー】

なかなか難しいのですが、私どもは、「適切な判断が確保されるための品質管理システムの整備及び運用」という言葉で表現はしていますが、それだと軽いと思われてしまったのかと思います。「主体的関与」とした場合、常にマネジメントが入るようなイメージになってしまわないかなというのが気になっている点です。そういう意味で誤解が生じないような言葉にしたいということです。

本コードは監査人が実行していくものにもかかわらず、私のように感じてしまう監査人が多くいるとするなら、本来の意図が酌まれず、誤解を生じるようなものになってしまいますので、そこを何とかしたいと思っております。

【関座長】

わかりました。どうぞ。

【國廣メンバー】

今、関座長のお話で、石原さんがおっしゃるクラリファイはできているんですよ。どっちにするかですよ。関根さんは、関座長の考え方に反対意見です。つまり、経営陣の主体的な関与が個別の事案にあり得るのかないのかというところを、どっちなのというところを決めなければいけなくて、多分関根さんはあり得ないという立場だと思うんですよ、個別の案件に。だからここはどっちなのと決める必要があるような気がします。

【関座長】

それで、どっちがいいと思うわけですか。

【國廣メンバー】

悩んでいますけれども、これは法律ではないから。しかも期待ギャップ、あるいは社会の期待からすると、経営陣の個別の監査に対する主体的関与は、あるべきだと私は思います。

【八田メンバー】

関座長のお話を伺ってよく私は納得できました。おそらく英語で、これはコミットメントという用語だと思います。

【関座長】

同感です。

【八田メンバー】

これは、もうまさに内部統制の一丁目一番地の統制環境の最初に述べられている、トップの意向ないしは姿勢として、強調されている事柄です。ここがなければ進まないんだという意味ですから、それはそうした理解ですよね。

【関座長】

その通りだと思います。

【八田メンバー】

そうであれば、別に違和感ないですが、そのままコミットメントという表現を使用してもよいのではないでしょうか。

【関座長】

では引頭さんどうぞ。

【引頭メンバー】

ありがとうございます。

今、関座長のお話、石原委員のお話を伺って、私もこの文章を読んで意図していたものは、お二人がおっしゃったことと同じです。ですが、それについてどう書くかという書きぶりということになりますと、この「主体的な関与」という言葉であらわされているのだろうと思います。実際、その部分において、監査法人の組織としての力が足りなかったのではないかということから、今回のガバナンス・コードの策定につながっているとも言えるわけです。そう考えますと、経営陣としてやるべきことはやる。ただし、そのときにどういう形でやるかに関しては、先ほど石原さんがおっしゃったように、監査結果を聞いて、それは、その監査法人ごとに考えればいいのではないでしょうか。

自主的に取り組んでいただきたい、ということが今回の大きなガバナンス・コードのポイントですから、そういうふうにすればいいのではないかと思います。

その中で1点すごく気になったのは、関根メンバーがおっしゃった監査人が誤解するのではないかということについて、私は今大きな衝撃を受けて伺っておりました。誤解がないようにしなければいけないというのはその通りです。ですが、それは文言を変えることではなく、この意味するところを、会計士の方々に浸透させていくことが重要なのではないでしょうか。関根メンバーは、協会長でもいらっしゃるということですから、CPAのカリキュラムに加えて、必修単位などの位置づけにしていただき、監査人の何人も誤解がないようにしていただくという取組みを、ぜひ自主規制機関である協会に行っていただきたいと思っております。ここの文言を変えるということではなく、関根さんがおっしゃった運用というところでぜひ取り組んでいただきたいと思いました。

【石原メンバー】

今のお話にも関連しますけれども、私も先ほど関根先生がおっしゃられた誤解というのは、その前にご説明されておりますけれども、一体何なのかなというのがもう一つよくわからないところがあります。先ほどのご説明の中で、結局マネジメントが個別の重要な案件に主体的に関与すると、業務執行社員の対応能力が落ちることが問題だということなのでしょうか。

もしそうだとしたら、そもそもそれって組織としてほんとうに機能しているのかということになろうかと思いますけれども、ほんとうに業務執行社員の形骸化というのが起きるのでしょうか。そこが、誤解しているかもしれませんけれども、大変気になりました。

【関座長】

関根先生、いかがですか。

【関根メンバー】

私が申し上げた誤解というのは、経営陣が関与するとした場合、関与という言葉のイメージから、あたかも、関与社員の関与と同じようなことを経営陣が実施するみたいに見られるのではないかということで、これを敷衍していくと、経営陣が関与社員になるという大きな誤解が生じるおそれがあるということです。そこまでの誤解は生じないかもしれませんが、このような誤解が生じるおそれのないような言葉が他にないかということが気になっているということです。

したがって、全体のコードを見ていて、業務執行責任者が形骸化するというように読めると言っているわけではありません。

先ほどは、「主体的な関与」の議論の中で、業務執行責任者に係る記述についてどこかに言及してほしいというのがあり、それも一緒に言ってしまったのでわかりづらかったと思いますが、ここでは業務執行責任者の話をする必要はなく、業務執行責任者がしっかりやることが非常に重要だということは、別のところで書いていただきたいと思います。

誤解が生じるのなら誤解が生じないように研修をすればよいというご意見は、よくわかるのですが、文章はひとり歩きするおそれがありますので、文章で誤解が生じる可能性を排除したいと考えています。ただ、よい代替案がない中で、これについて今日ここでずっと議論をしていても仕方ないので、今日の議論を踏まえて、現在の言葉で誤解がないか、皆さんが納得するような言葉をつけ加えるなど、誤解が生じるおそれを排除する方策を考えたいと思います。

【関座長】

よろしゅうございますか。斎藤先生、何かご意見はございますでしょうか。

【斎藤メンバー】

もう言わずもがなだと思いますけれども、私は基本的にこの文章で問題はないだろうと思っております。

ただ、「主体的な関与」というと、例えば今のお話のように、関与社員みたいなものになるのかと誤解されるとか、あるいは、従来主体的な関与といっても体制の整備、運用の話を想定してきたので、そこでまた誤解が生ずるとか、そういう問題がもし出るのであれば、おそらく今日のご議論は、体制の整備、運用をさらに超えた次元の話をしているということですから、この部分を、判断が確保されるための体制の整備、運用を含めた主体的な関与とでもしておけば、プラスアルファがあるのだろうということで、多分誤解は避けられるのではないかと思います。

【関座長】

ありがとうございます。

皆さんのご意見、大体出たようですので、皆さんのご意見を勘案した上で、もう一度ここのところの文章を含めた取り扱いについて、再度私どもでもう一遍議論をして整理をしてみたいと思います。

この3ページ、4ページのところで、これ以外の、この話はこの程度で、程度というか、もうご意見が出たと思いますので、一通り。ほかの議論がございましたらぜひ。

引頭さん、いかがですか。

【引頭メンバー】

ありがとうございます。2点ございます。

まず1点目は、2ページ目の「監査法人が果たすべき役割」のところの最後の矢尻のところでございます。こちらは、「非監査業務の監査業務に与える影響についての考え方を明らかにすべき」とあります。事務局のご説明では、メリット・デメリットを説明する、ということでございました。

それから、7ページに、少し後ろですけれども、説明すべき事項として、「透明性の確保」のところでもこの考え方を言いなさいというふうに書いてありました。よくわからないのは、この目的です。何を目的としてこれを言わなければいけないのでしょうか。

メリットとデメリットを明らかにすることが一体何につながるのかということについて質問させてくださいというのが1点です。

2点目は、4ページ目の一番上ですけれども、これは確認です。監査法人は、独立した立場で経営機能の実効性を評価・監督して、監督する人を選任しろということですけれども、ここで、「経営の実効性の発揮を支援する機能」と、支援という言葉がありますが、これは第三者がアドバイスするということではなく、経営機能の実効性を評価し、監督するということで、結果としてそれが経営の実効性の発揮を支援することにつながるということだと私は思っております。それでいいのでしょうか。

これは、一番後ろの8ページ目の一番上の矢尻のところの、上から2行目の右に、その際、いろいろな意見交換をしろと言ったところに関係すると思います。「その際、評価・監督機関に選任された独立性を有する第三者の知見を活用すべき」だということで、ここに書いてありますので、この部分と、この「支援する機能」という部分について、同じイメージで良いのかどうについて確認をさせてください。

以上、2点でございます。

【関座長】

まず、その非監査業務と監査業務のことについて、なぜここで取り上げたのかということについての基本的理解ですけれども、後で私の言っていることが不十分であれば事務局からも意見を補足して下さい。

監査法人の運営について言うと、非監査業務というのは、監査法人を運営する上で、監査業務だけではなくて、大変大事な重要な仕事だと私は思うんですよ。そのウエートからいっても、その役割からいっても、その質からいっても、これはまた大変重要な話だと思うんですね。したがって、監査法人としては、この非監査業務というものについて、メリット・デメリットというようなこの表現は別にしてですよ、一体どういう考え方でそれに臨むのだと。ここの、以前ご議論されたことからいうと、そういう非監査業務も監査法人として相当力を入れて積極的に展開すべきだというのが皆さんの意見だったと私は了解しているのですが、そういうものであればこそ、監査業務以外について、監査業務との関連において、きちんと方針を、積極的にやっていくのなら積極的にやっていく、非監査業務についてはこう考えていますよということを、監査法人としては言わなければいけない。例えば、非監査業務は大変重要だから注力してやっていく、しかし、監査業務と利益相反があるようなことには絶対にしないということで、責任を持って我々監査法人は業務運用しているんですよということでいいと思うんですけれども、いや、それ以外にあるかもわかりませんが、そういうことをきちっと書いていこうということなのではないかという理解ですけれどもね。

【引頭メンバー】

今、関座長がおっしゃったように、私自身も大変その非監査業務というのはとても大事な業務だと思っていますし、それから、ここには今回あまり書いていませんでしたが、非監査業務と監査業務を行っている人たちの間でローテーションなどをやることで、視野を広げるような人材育成が必要ではないかという議論もここでありました。ですから、そういう意味では、関座長と全く考えは一緒なのですが、ただ、この文章だけを見ると、非監査業務の、監査業務に対する影響を述べよという表現になりますと、そのようなニュアンスが伝わりますでしょうか。海外の場合は、むしろ非監査業務が多すぎて監査業務が相対的に少なく、あまり重要視されてないといったような文脈で影響という言葉が使われていることもあったりしますが。

【関座長】

なるほど。

【引頭メンバー】

例えばですが、法人の運営という文脈で言うのであれば、非監査業務の位置づけ、といったような表現が良いのではという感じがいたします。

【関座長】

なるほど。

【引頭メンバー】

今、関座長がおっしゃったような、監査法人として非監査業務をどう考えているのかと、あるいは、監査業務との関係でどういうふうな、コラボ、もちろん利益相反はやってはいけないのは当然ですけれども、同時提供も禁止ですけれども、工夫して、それが結果的にはより深度ある監査に結びつく、そういうことですよね。

【関座長】

そう、おっしゃるとおりです。

【引頭メンバー】

であれば、位置づけという言葉の方が、良いのではないでしょうか。何となく、読んでいるとネガティブに見えてしまったので、意見を述べさせていただきました。

以上でございます。

【関座長】

わかりました。それからもう一つの件は何でしたっけ。

【引頭メンバー】

支援する。

【原田開示業務室長】

ありがとうございます。

支援の点でございますけれども、これは、我々もこの検討会を開始して非常に悩んできた点でございますけれども、第1回、それから第2回の有識者検討会の全体像のころから書かれていた、一番上に目的や、あり方の考え方があって、左側に執行があって、右側にこの評価・監督という、そこに支援というのを最初から入れさせていただいたんですね。

それはどういうことかと申しますと、この今回つくっているガバナンス・コードは、特にガバナンスという中でもマネジメントに重点を置いて、監査法人というものは、マネジメント、組織的なシナジー効果を生じさせることが、これからの監査を飛躍的によくする余地があるのではないかと。なので、監査法人のマネジメントはどこを改善すればいいのかということに焦点を当てようというところから議論が始まっているのだと思います。

その中で、まず、マネジメントというのを強化、マネジメントというのはマネジメントチームを強化するということが左にあるのですが、そうすると右側に出てくる評価・監督というのは、そのマネジメントチームの強化に向けて、第三者の知見の利用も含めて、どうしたらそのマネジメントが強化できるかというところについて、例えば、第三者の方々が自分の経験なりを背景として、どうした方向に改善すれば効果があるよとか、例えば人事の面で言えば、こういうやり方をすれば組織的なシナジー効果が高まるよであるとか、そういったことがあると。それで、それが有効的で実効的に機能したかどうかを当然評価・監督していくと。そうした両面があるのではないかと。現段階ではそういう関係に立つのではないかというところから支援、それから評価・監督という言葉を入れさせていただいたところでございます。

ということなので、現段階では、評価・監督機関の重要な機能の中に支援という言葉を入れさせていただいたところでございます。

【関座長】

引頭さん、原田さんのお話で尽きているんですけれども、若干補足しますと、評価・監督機関ですけれども、第三者まで入れてですよ、そういうものを評価・監督していこうということですが、それの意味するところは、評価・監督という、何ていうか、冷めた議論だけではなくて、その監査法人をよくしていくために第三者が入るのであればですよ、ほんとうにこうしたらどうだろうかとか、そうしたらもっと監査法人は強くなるよとか、つまり評価・監督というより広い意味でこうすればよくなるよという知恵や知見を積極的に出していただいて、そしてそれを監査法人も活用する観点が大切です。こういうことが監査法人を組織として強くする上でどうしても今必要なのではないかと私は思うんです。

事業会社の取締役会だって、現実には、おい、こういうふうにしたほうがいいぞという議論が随分あって、ああ、そうだと、そんなことだったのかということを執行の人たちが気がついて、それを具体化していく、この対話が行われるということが、経営として、望ましいことなのだと思うんですね。ですから、あえて評価・監督にあわせて支援という言葉をここは入れているわけですね。特に、人事評価制度だとか、教育制度だとかということについては、私は、第三者の意見というのは、極めて重要な役割を果たしていくのではないか、またそういうことを期待すべきなのではないかと思うから、あえて支援という言葉を入れているんですよ。だから、引頭さんのいつもの意見のようにより実態的、ダイナミックに考えてもらいたいのです。

どうぞ。

【國廣メンバー】

今のお話もわかったのですが、でも、支援というのは「結果として支援機能がある」ということですね。例えば、取締役会、社外取締役なども、まさに支援機能を果たしているわけですけれども、これは評価・監督の「結果」です。ワーディングの問題なのかもしれませんけれども、「評価・監督し」で、最後に「支援する」でまとめてしまっているので、全体として支援組織のように読めてしまう。何か最後を支援でまとめると、支援組織に見えてしまうかなという感じですかね。

【関座長】

なるほど、わかりました。

【八田メンバー】

多分國廣先生の話と同じかもしれませんが、座長のお考えもよくわかりましたけれども、ここであくまでも「評価・監督し」と言っているのは、言うならば組織の実効性をモニタリングしたり、ガバニングするといいますかね、もし英語に直すならモニタリングボードとか、ガバニングボードということになるのでしょうか。一方、支援となってくると、今度はアドバイザリーボードということで、概念的にかなり違うものをイメージしてしまう。したがって、多分、結論は、引頭さんとか國廣さんがおっしゃったように、結果的にそれは強い企業、いい企業になってもらうためのアドバイスをしているのだという意味合いですから、そこは明確に識別したほうがいいと思います。

【関座長】

わかりました。

【関根メンバー】

異なる論点が4つほどありますので、申し上げます。まず1点目は、2ページの※のところの最後の「また、その際には」ということで、「被監査会社から報酬を得て行うとの会計監査の構造に起因して」というところで、「法人の構成員による職業的懐疑心の発揮が十分に行われないということにならないよう留意すべき」だとされています。これ自体は当然留意すべきですが、「被監査会社から報酬を得て行うとの会計監査の構造に起因して」とあえて言う必要があるのかという点が気になっております。会計監査は、被監査会社から報酬を得て行うという構造になっていて、それは変わりません。そのような変わらないものを取り上げるよりも、監査は何のために行うのか、ステークホルダーのために行う、利用者のために行うことをダイレクトに言ったほうが、論理的にもつながるのではないかというのが1点目です。

それから、2点目、これは表現の問題ですが、同じ2ページの3つ目の矢尻の「監査法人は、法人の構成員の士気を高め、職業的懐疑心などの職業的専門家としての能力」という表現では、職業的懐疑心が職業的専門家としての能力に入るように読めてしまいますが、倫理規則の第3原則には、職業的専門家としての能力及び正当な注意の原則というのがあり、職業的専門家としての能力は、どちらかというと知識やスキルとなっており、職業的懐疑心は、正当な注意に入るような形になっています。したがって、ここで、職業的懐疑心「などの」という言い方をして、職業的専門家としての能力とつなげてしまうと建て付けが変わってしまう点が気になりました。

3点目ですが、これは、次の3ページ目の※のところで、大規模な監査法人について、「社員の数が数百人、法人の構成員が数千人の規模となるなど」という言い方をしているのですが、実際に該当する法人は、3つぐらいしかないと思いますので、具体的にこのように数字であらわす形で書くのがよいのかどうかと思っています。全般的な事項に関する議論は後ほどということですので、このコード自体がどの法人をターゲットにしているのかということは後ほど確認をしたいと思っていますが、大規模な法人を対象とするとしても、数まで記載する必要があるのかなという点があります。それから、その後に続く部分として、「経営陣によるマネジメントが規模の拡大や組織の運営の複雑化に対応しきれていないことが、」と書かれているのですが、対応しきれていないと言い切る形にするのがほんとうによいのか。対応しきれていないという指摘もあるのかもしれませんが、これは大規模な監査法人は、小規模な監査法人のパートナーシップ制度では対応が困難になっているので、それに対応して監査の品質を確保する必要があるという趣旨ではないかと思いますので、そのあたりの表現を工夫していただきたいと思っています。

それから、最後に4点目ですが、先ほど4ページ目の「独立した立場で実効性を評価・監督し」のところの、※のところで「例えば」という言い方で、「外部の第三者の知見を活用すべきである」ということが述べられており、例示なので、強制でないようにも読めるのですが、その後の矢尻の記載だと、強制のようにも読めます。これはどちらの趣旨なのかがわかりづらくなっています。また、これは先ほど質問した規模の問題にも関連すると思うので、再度申し上げます。本日議論しているペーパーでは、殆どの文章が「監査法人は」となっているので、全ての監査法人を対象としているようにも読めますが、監査法人の中には小規模なところもあり、たとえ経営から独立した機関を持つ必要がある規模であったとしても、第三者までは入れなくてもある程度経営から独立した機関を持つことが有用という場合もあり得ると思うので、コードの適用範囲をどうするかというのが気になります。

【関座長】

4点についてまず事務局のほうから答えていただきます。

【原田開示業務室長】

4つ質問をいただいたと思います。「構造に起因して」と、あと職業的懐疑心が、プロフェッショナリズムの中に入るかどうかというのは、少し我々でも検討してみようと思います。

それから、数百人、数千人というのは、今回のコードのイメージを持つために非常に重要なところだと思いますので、こうした指摘があるのは、在り方懇の中でも議論された内容でございますから、これはそのように取り扱わせていただきたいと思っております。

それから、第三者は義務かどうかということで、何で考え方が例示で、矢羽根がこうなっているかということですけれども、最初に申し上げましたが、監査法人というのは、自らの課題をはっきりさせた上でその知見を活用するということなので、ここは克服しないといけないなという課題が見つかった監査法人は第三者を見つけましょうということがここでありますから、逆に言えば、そういうところがない監査法人は、第三者の知見を活用しなくてもいいという意味では例示なのかなと、そのように思っております。

【國廣メンバー】

今の第1点、2ページの※の、報酬の構造、これは明らかにそのとおりであって、このワーディングを外すということはあり得ないと思います。したがって、これは原案維持であるべきだし見直しはすべきではないと考えます。

それから、2ページの下から3つ目の矢羽根ですが、いろいろ細かいワーディングはあるかもしれませんけれども、まさに核心は職業的懐疑心ということであるので、この職業的懐疑心というのは、絶対に残すべきであると考えます。

それから、3ページ目の※のところで、複雑化に対応しきれていないと言い切れるのかというと、言い切れると思います。我々がそれを言い切らないで誰が言い切るのだということでありまして、そもそもこのガバナンス・コードをつくろうというその世の中の期待にはしっかりと応えていかなければいけないと思います。

【関座長】

それでは、時間も大分消費しましたので、5ページ、6ページ、7ページ、それから全体、今の4ページのところも含めてご議論していただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【石原メンバー】

それでは、冒頭申し上げた3点の中の最後、被監査会社とのコミュニケーションに関して申し上げます。これについては、5ページから6ページの「業務運営」のところに書かれているわけですが、その中の6ページの一番上に、「監査法人は、監査業務にあたり、被監査会社のCEO・CFO等の経営陣幹部及び監査役等との間で、監査上のリスク等について率直かつ深度ある意見交換を尽くすべきである」とありまして、これについては、全く異存はないのですけれども、1つあえて申し上げるとするならば、経営陣幹部や監査役はもちろん重要なのですが、日常的な議論は監査の現場で行われることになります。監査の現場というのは、被監査会社の業務執行部門ということになります。この業務執行部門というのは、「等」の中に含まれていると理解をいたしますけれども、そこはできれば、「経営陣幹部及び監査役、業務執行部門等」ということで明示的に記載していただけないかと思います。その心は、何度も申し上げておりますけれども、監査リスクについて被監査会社ときちんと議論してほしいわけでありますが、その第一歩というのは、監査の現場での業務執行部門との議論ということだからであります。

先ほど、引頭先生だったか、将来見積もりにおいて、意図的ではない不正のようなケースもあるといったようなご指摘がございましたけれども、見積もりの監査に関して言えば、事前に監査法人と被監査会社の間で十分に議論をされていれば、それは結果的に虚偽記載になるようなことは起きないわけでありまして、議論なくいきなり上がってきたりするからこそ問題になるということがあります。監査というのは1年間を通じてやっているわけで、その日々の監査には業務執行部門が対応していますから、その現場でのコミュニケーションこそが非常に重要であるということで、「等」には含まれていると思いますが、個別に記載して頂けないか、それが1つお願いでございます。

それから、「透明性の確保」もよろしいでしょうか。

【関座長】

どうぞ。

【石原メンバー】

7ページの「透明性の確保」の※のところであります。会計監査の品質という観点から、なぜ継続的に当該監査法人を選択していくのかについて、経営として、取締役会として評価をしていくということになるわけであります。その際、※の2行目のところで、「監査法人における会計監査の品質の向上に向けた考え方や取組み」とあり、これは非常に重要ですけれども、あえて申し上げたいのは、「品質の向上に向けた考え方」の前に、そもそも高品質な監査とはどう考えるのかということを監査法人自身が明示した上で、それを被監査会社は評価するということになりますから、いきなり品質の向上に入るのではなくて、「会計監査の品質に関する考え方及びその向上に向けた取組み」といったような形で、品質を向上させることの前段で高品質な監査というのは何なのかということをきちんと言ってもらわないと評価が難しいと考えております。

【関座長】

はい。ほかに、この際いろいろご意見を言っていただきたいと思います。それで、それを踏まえて次回までに検討して修文したいと思います。

はい、どうぞ。

【関根メンバー】

2点ありまして、1点目は、先ほど申し上げました監査法人のパートナー、業務執行社員の役割や責任が明示的には記載されていないと思います。例えば、監査法人の構成員についての記述はありますが、これは、スタッフまで全てを含むことになりますので、パートナーについてどこかで明示するような形にしていただきたいと思います。

それから、2点目は、5ページの※の最後のところで、「一部に縦割りで閉鎖的な組織風土がみられる」との指摘は、今回だけではなく、以前からありましたが、そのような指摘を踏まえ、監査法人の現状は、かなり変わってきており、我々はきちんと一生懸命に頑張っているという思いもありますので、一部に「指摘もあるが」ということを、この原則の考え方に書くことについては、書き方とか書く場所を工夫していただきたいと思います。

監査法人というのは、もともと個人の公認会計士の方が監査をしていたことから発達しており、守秘義務もありますので、あまりオープンには話さないようなところが以前はあったのですが、多くのところでは変わってきていますので、そのあたりは少し配慮をしていただきたいと思います。

いろいろと細かいことを申し上げましたが、その背景としては、このガバナンス・コードは、我々に対して、しっかりしてない部分は叱咤激励していくものであると捉えており、いろいろな関係者や監査法人とも話し、ぜひこれを生かしてしっかりとやっていきたいという思いがあります。したがって、我々のことを誤解してつくっていると思われてしまうようなものにならないようにしたい、最終的な文章においては、監査法人がまず頑張るのは当然として、関係者もそれを支援しているという前向きな形にできればと思っていますので、一言申し上げさせていただきます。

【関座長】

ほかに。どうぞ。

【引頭メンバー】

ありがとうございます。2点ございます。

1点目は、もしかしたら私ではなくて関根委員が御指摘されるのではと思っていたのですが、6ページ目で、ここは業務運営のことについて書いてあります。一番上のところで、監査法人は、被監査会社、先ほど石原委員がおっしゃったところですけれども、「監査上のリスク等」についてやるべきであると、この文章の内容自体は間違いなくやるべきだと思います。先ほど石原委員は、被監査会社の非業務執行の方々とディスカッションするということでした。それはそうですけれども、ここの業務運営のところをずっと拝見しておりますと、他の部分では、どちらかというと監査法人の経営陣として何をすべきか、ということがずっと記載されているのですが、ここだけ監査業務の中身に踏み込んでしまっているように私には見えました。いきなり監査上のリスクといった表現になっています。ただし、経営陣は直接、監査意見の表明をできないわけですから、そのことについてモニタリングするというか、そのために意見交換をするというのが建て付けのはずではないでしょうか。いきなり監査リスク等について意見交換というよりは、監査リスク等についてきちんと監査法人の構成員や業務関与社員の方々がわかっているかどうかについて、経営陣として動くべきということだと思います。深度ある監査をするために、そうした理解について共有化するといったことですね。それについては大賛成なのですが、いきなり監査リスク等についてやるとなりますと、監査人の人が誤解してしまのではないかと思ったので、それについて教えてください。

それから、2つ目ですけれども、これは全体についての意見なのですが、全体としては、今までこの会で議論になったものがいろいろ盛り込まれ、さらに監査法人の内部統制というものが、言葉だけではなくて心をもって、身をもってやるべきものがいっぱい盛り込まれたと思うので、関座長のリーダーのもと、大変よいものができたと思っています。

ただ1つだけあって、これから開示ということが大事になっていくと思うんです。何を開示するのか。説明すべきであるというのは、今回1箇所だけあったのですが、それだけで十分なのか。何を開示すれば一番事業会社の監査役会、監査委員会、監査等委員会等々の方々にとっての判断材料になるのか。あるいは、マーケットの視点から見て、どういうことがわかったら良いのか。専門的用語でいろいろ言われても実態はよくわからないということもあると思われます。ですので、わかりやすく情報開示してもらえるようなかたちにしていただければと思っております。ぜひコードの中で、そのあたりも少し意識して最終版に向けてご検討いただければありがたいと思います。

以上でございます。

【関座長】

わかりました。

【石原メンバー】

今の引頭先生の1点目の件について、私は違う意見というか、引頭先生のおっしゃられていることとは少しニュアンスが違うと思いますので、改めて申し上げておきたいと思います。6ページの一番上、この「監査法人は」というところで、なぜ急に「監査上のリスク」が出てくるのかということであります。実際に監査はリスクアプローチがとられていて、監査法人は、監査計画に基づいて当該会社の監査リスクを評価するということになっているわけであります。そのリスク評価の結果に関して被監査会社ときっちりと議論をしなければいけないと思います。これが習慣化されないと、監査の現場の活気も生まれませんし、個々の監査に携わっている監査法人の皆さんの意欲も出てこないし、成長の機会にもつながってこないと思います。また、企業側にとってみれば、監査法人が自分たちの会社のリスクをどう評価しているのかというのは極めて重要な話でして、それを踏まえて、企業側は自らの内部統制を見直すといった対応をとっていくわけですので、監査リスクに関する議論がきちんとなされない限り、いい監査、高品質の監査ということにはつながっていかないという、これは長年監査現場にかかわってきた私の強い思いでございます。文章としてどういう表現がいいのか、わかりにくければもちろん直していただければ良いのですが、監査法人から見た当該会社の監査リスクの所在と評価の結果、そしてリスクにどう対応していくべきなのかということについて、徹底して議論を尽くしてもらいたい、尽くす必要があるということでございます。

【関座長】

わかりました。そのほか、ございませんか。

【関根メンバー】

全般的なことでもよろしいでしょうか。

【関座長】

どうぞ。

【関根メンバー】

時間があまりありませんので、あわせて、細かい表現等について申し上げてもよろしいでしょうか。

【関座長】

どうぞおっしゃってください、遠慮なく。

【関根メンバー】

まず、全般的なことを申し上げますと、現在の案は「原則に盛り込まれる事項」という形式で書かれていますが、これがコードになるとして、他に前文みたいなものはつくられるのでしょうか。もし、つくられるのであれば、先ほど申し上げたような、作成の意義のようなことで、前向きな形になるものを提示していただきたいと思っております。

さらに、全般的なことでもう一つ、コードの適用対象がわかるような形にしてほしいと思います。中を見ていくと、対象と考えているのは大規模法人なのかなと思いますが、そうであるならば、大規模法人がターゲットだということがわかるような形にしていただきたい。もちろん、それ以外のところが適用してもいけないということはないと思いますので、妨げないというような形になるのか、そういったこともわかるような形にしてほしいと思います。 それから、表現については、幾つかあるのですが、主要なものを申し上げますと、「公益的な」という言葉がありますが、公益というと公益法人を連想させるおそれがあることから、会計士協会では公共の利益という言葉を使用しているので、あえて公益という言い方をするのか、ご確認をいただきたいと思います。

また、細かくなってしまい恐縮ですが、2ページ目で、「自ら及び法人の構成員が」という、この「自ら」というのは何を指しているのか。監査法人を指しているのか、マネジメントを指しているのか。マネジメントも構成員なので少しわかりづらいと感じました。

本コードを実際に使用する立場となると、それぞれの文章をきちんと理解しなければいけないと思いますので、このような細かい表現が気になっています。ただ、それは、ここで議論する話ではないとは思うので、その他については、別途確認させていただければと思います。

【関座長】

どうぞ。

【國廣メンバー】

このガバナンス・コード、メーンターゲットとしては大規模法人だということだと思うんですけれども、これ全部をね、中小はともかく中堅、つまり大規模だけだとなると、俺たちは関係ないよとなってしまっても困るなと思うんですよ。だから妨げないというわけではなくて、基本的に皆これでやろうね、でもできるものをやろうねという、何かそこの位置づけを明確にしないといけないかなと。つまり、俺たち関係ないや、どうせ大規模だけだになってしまわないように、かといって皆同じことをやるわけではないと。何かそこを明らかにしたほうがいいと思います。

【関根メンバー】

國廣メンバーがおっしゃるように、妨げないとなると、ニュートラルで関係ないようになってしまう面もあると思いますが、もしほかにもターゲットがあるとするとすれば、先ほどおっしゃったように、一部でも適用できるというような形もあり得るというニュアンスがわかればよいと思います。大規模法人でないとなかなかできないから、一部しかできないなと思っているようなところもこの精神を入れるというのであれば、このあたりが明確になったほうがわかりやすいかと思います。

【引頭メンバー】

すみません、今の関根委員の、その適用という言葉に私は疑問を感じていたのですが、これは、監査法人の運営として足りないであろうということについてコードが必要だということから出発し、特に大規模監査法人については、そうしたガバナンスを見る必要がある、ということで、開示まで要求するという流れだと思っております。ですが、それ以外の監査法人については、別に開示しても開示しなくてもいいということですし、開示しなくてもこれにのっとって自分たちができるところをやってくれればいいということなので、適用とか適用じゃないということが少し杓子定規なように思いました。各監査法人の経営者の方がこれを見て、自分にも必要だなと思えば、それにのっとって皆で話し合って決めていって、ブラッシュアップしてほしいというのが多分これをつくった委員のメンバーの思いなのではないでしょうか。ただし、天谷事務局長の審査会が検査されるときに、適用しているのか、してないのかというアプローチになってしまうと、またそれは問題になってしまうと思うので、そのあたりについて、そういうことではないということを監督当局もご理解いただいた上で、自主的な取組みを促していく、という建て付けにしたほうが、より自分の事として各監査法人に取り組んでいただけるように思えましたが、いかがでしょうか。

【古澤審議官】

ありがとうございます。

対象につきましてのご議論がございましたけれども、今までのご議論を踏まえますと、大規模上場会社の監査に従事するような一定の規模の監査法人というものが対象になっているという理解で今回の議論は進んでいるのかと思っております。常識的に四大法人はこれに入るということだと思いますけれども、それ以外の監査法人が該当するかは、そもそもコードを採択するか自体が各法人が自主的に決定されるもので、各法人が自ら判断するというところが1つポイントかと思ってございます。

そういう点も含めましてですけれども、先ほど関根メンバーからもございました前文の取り扱いにつきましては、座長とご相談させていただきながら、またこちらでも検討させていただければと思っています。

【関座長】

八田先生、どうぞ。

【八田メンバー】

2つ話をさせていただきます。

今の適用の問題もそうですけが、これは法律上の問題だからコードとは直接結びつかないかもしれませんけれども、監査法人自体の建て付けとして、近時の有限責任体制の監査法人と、従前どおりの無限連帯の監査法人とによって、おそらく組織の中におけるパートナーの意向というのは大分違うと思うんですね。したがって、それがこのコードによって何か影響を受けるのか受けないのか、私はわからないですが、少なくとも今、古澤さんがおっしゃった対象は、全部有限責任体制を採用している監査法人になるのではないでしょうか。あらた監査法人もつい最近、有限責任制に移行しましたので、少なくとも四大監査法人は全部対象になってくるということもありますから、マーケットからの規制も当然必要になってくるだろうと思います。無限責任の場合はどうなのでしょうか。ただ、これは投資家とか株主は、それを一々意識しているわけではないですから、そういう意味からすれば、同じレベルの監査品質を維持してもらいたいということでしょうから、適用対象はすべての監査法人なのかなという考えもありうるのではないでしょうか。私もよくわからないのですが、その点に関しての法的な根拠とか制度上のしがらみについて、少し明らかにしたほうがいいのではないかと思います。

2つ目ですけれども、先ほどから石原さんが、高品質の監査とは何かを自ら考えてそれを示せということを話されました。確かにおっしゃるとおり、非常にわかりやすい話なのですが、残念ながら、監査の品質、つまりオーディットクォリティーという概念については、今もって、いずれの国もいずれの組織も誰も明確な定義をしていないわけです、まず監査の品質ということについては非常に曖昧模糊とした情況にあるということです。はっきりしていることは、求められている監査職能を十全に遂行しろということであって、ゆめゆめ重要な虚偽記載を見逃してはいけません、あるいは、重大な内部統制の非効率部分を見逃してはいけません、ということです。これはわかるんですけれども、それを各監査法人が、「当法人は高品質な監査はこう考えているんだ」と、そしてそれに従って監査をしているというのは何となくわかりやすいのですが、その大前提にある概念整理もできていないものを、各監査法人が美辞麗句をもって説明し、そしてそれを投資家に向けてわかったようでわからないようなことを言ったときに、果たしてそれは、日本国の監査に対する国際社会からの信頼性というのは担保できるのかどうか、少し抽象的な議論ですけれども、大変難しい要求ではないかと思います。もう少し、学術的な貢献も必要なのかもしれませんけれども。申し上げたいのは、特定の監査法人に高品質の監査とは何かと考えて、それを書かせるということは、一見何か透明性が高まるような気もするのですが、私はとてもとても難しい問題を投げかけているのではないかという気がしています。その辺はいかがでしょうか。

【関座長】

どうぞ。

【國廣メンバー】

今の八田先生の問題提起というのは根本的な部分かなと思いました。これは私の個人的な印象ですけれども、会計士の人ってものすごくきちんとしているんですよね。数字とか、定義とか、がっちりしている。ただ、今ここでやろうとしていることは、そういうがっちりしたところだけではなくて、社会の変化とか、期待が何かとか、そういう定性的なもの、しかも動いていくもの、これをどうつかまえるのかという、ある意味、数値化できないけれどもとても重要なことだろうと思うんですね。ですから、そういう意味で、確かに八田先生がおっしゃるように、美辞麗句でごまかされてしまうリスクもあるんだけれども、ここのところはチャレンジングに、単なる美辞麗句なのか、ほんとうに一生懸命考えているのかというのは、透明性の中でだんだん明らかになっていくというような、何かそういう考え方というのがこのガバナンス・コードをつくろうとする中にあるのかな、などと考えているところです。

【関座長】

どうぞ。

【石原メンバー】

今の点、八田先生がおっしゃられるように、なかなか難しいのではないかというのは全くそのとおりですけれども、だからこそずっと申し上げているわけで、何に向かっているのかということもはっきりしないままに、品質の向上とか、品質管理とか言っていても、一体どこを向いているのだということであります。監査法人ごとに違いがあってもいいと思いますが、自分たちの監査品質、それはどこに向かっていくべきなのかというのをこの際よく考えて頂いて、法人内でもリーダーシップを発揮して、向かう先を社員の全員に示し、組織を挙げてそこに向かっていくのだと、そういう思いがなければ物事というのは形骸化してしまうわけで、だからこそこのような有識者検討会をやっているのではないかと思います。ぜひこの際、高品質の監査というのは何なのかというのを各法人に考えていただきたいと私は強く思っております。

【関座長】

いや、大変興味のある、また難しい問題だと思います。私自身は、八田メンバーがおっしゃるように、なかなか高品質な会計というのは一体何だということを一義的に定義するのは、これはもうとてもできる話ではないと思いますし、また私どもがそういうことをきちんとはっきりさせろと言うことで、抽象的な美辞麗句のようなものを幾ら書いてもらっても何の役にも立たないということも大変よくわかります。

しかしながら、高品質な会計監査というのは何だと、それはしかし時代とところによって、その高品質な監査というものの意味合いも相当変わってくるもので、その時々に要請されている役割を果たしていくというこの全体的な、その原則的な使命というのは、これは監査法人にはあるわけですから、これを明示してもらうという努力はしなければいけない。何か画一的なものを書けということではなく、監査法人としてはこういうところに注力して高品質な監査というものを確保するのだとか、私もよくわかりませんけれども、石原さんや國廣先生のおっしゃっていることはよくわかりますので、どういうふうに、具体的な監査コードでその点を書くかということについては、検討して、皆さんに次回提案させていただきます。皆さんのご議論の俎上に上るようなものは出していきたいと考えておりますので、ぜひよろしくお願いしたいということであります。

どうぞ。

【関根メンバー】

私も高品質な監査を明確にするのはすごく難しいと思っていています。定義を書くために美辞麗句を並べるのではなくて、監査の品質を確保し、向上させた先に高品質というものがあるのだと思います。それは、目指すものではあるものの、必ずしもゴールではなく、常に目指しているものではないかと思います。ですから、透明性向上のために何か書くときには、何を目指して、今どういうことをして品質を向上させようとしているというような趣旨で書くということかと思っています。何かを定義して、それを目指したとしても、非常に抽象的なものですから、それがほんとうに高品質なのかどうかという議論になってしまうおそれがあります。そのあたりは、常に目標としているものという感じで書けないかと思っています。

【関座長】

少しいろいろ工夫してみます。私は、率直に言えば、高品質どころか、せめてもう不正だけはやめてもらえば、それだけでも大進歩だと思っているんですけれども、もう少し検討してみたいと思います。

あとほかにございませんか。はい、どうぞ。

【八田メンバー】

事務局より事前にご説明を受けたときにもお話したんですが、6ページの一番最後のところのITの問題は、当然にきわめて重要な項目だということです。最近の海外の研究結果によりますと、特に会計・監査領域においては、10年後あるいは20年度には、会計業務はほとんど全部AIにとって代わられるのではないかということです。つまり、この情報関連の領域における会計監査社会の環境というのは、近い将来、劇的に変わると思っています。実際に企業サイドはかなり高度にIT化が進んできている。当然それに応えるために、監査体制もそれと同等以上の知見、技量、あるいはスタッフ陣をそろえなければいけないということでしょうから、もう少しこのITの活用という部分というのは、もはや不可避的なのだということも踏まえて、積極的に、かつ、それを最大限有効活用できるような体制を整えるべきだということです。すでに国際社会での監査の議論は、今はもう全部AIを導入しながら、できればルーチン化されているような業務のなかでの不正の兆候は、全部そこで摘出しようではないかといったような流れもありますから、今どこまで具体化できているかわかりませんが、ぜひこのITの部分はもっと強調して書き込んでいただきたいという気がします。

かつて内部統制の議論をしたときにも、日本の内部統制議論の中に「ITへの対応」という構成要素を入れたときに賛否両論あったんですけれども、結果的に、あれは大もとのCOSOの方でも非常に高い評価をしていただいて、2013年の改正のときには、その項目には上がらなかったのですが、フレームワーク全編にわたってITの議論が浸透したということで、我が国の貢献度も高いですから、ぜひそういった一歩先へ行くような提言をこの中に書き込んでいただきたいと思います。

【関座長】

そのほかはございませんでしょうか。

それでは、時間も参りましたのでこれで終わりたいと思いますが、今日は、皆さんから大変中身のあるいい議論ができたのではないかと座長として思っております。今日は、「原則に盛り込まれるべき事項」ということでご議論いただいたわけですが、ご議論いただいたことを踏まえて、次回は具体的なコード案というものを事務局に作成していただきまして、次回はご議論いただきたいと思っております。

最後に、事務局から連絡等がございましたらお願いします。

【原田開示業務室長】

次回の日程でございますけれども、皆様のご都合を踏まえてご案内させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

以上でございます。

【関座長】

どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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