監査法人のガバナンス・コードに関する有識者検討会(第8回)

1.日時:

令和4年12月13日(火曜日)13時00分~15時00分

2.場所:

中央合同庁舎7号館 13階 共用第1特別会議室(オンライン開催)

【八田座長】  
 定刻になりましたので、これより監査法人のガバナンス・コードに関する有識者検討会第8回会合を開催いたします。皆様、御多忙のところ、御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
 本日の会議でございますが、運営要領第2条第2項に則り、オンライン開催とさせていただきます。
 本日は、日本公認会計士協会によるプレゼンテーションを予定しておりますので、小倉加奈子様に御出席いただいております。
 それではまず、会議の公開についてお諮りいたします。運営要領第5条第1項に則り、本日の会議について公開することとしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 
 (「異議なし」の声あり)
 
【八田座長】  
 ありがとうございます。御了解をいただきましたので、本日の会議の模様はウェブ上でライブ中継させていただきます。なお、非公開での発言を御希望される場合には、あらかじめその旨を申し出ていただければ、その間はライブ中継を中断させていただきます。また、会議の議事録を作成し、金融庁のウェブサイトで公開させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。
 それでは、事務局より、オンライン会議の開催に当たっての留意事項をお知らせいたします。よろしくお願いします。
 
【齊藤開示業務室長】  
 事務局の企業開示課開示業務室長の齊藤でございます。
 オンライン開催に関して2点注意事項がございます。まず、御発言されない間は、恐縮ですが、マイクをミュートの設定にしていただきますようにお願いいたします。御発言されるときには、マイクをオンにしてミュート解除で御発言していただき、御発言が終わられましたら、またミュートにしていただくということでお願いいたします。また、支障のない範囲で構いませんが、会議中はお顔が見られるようにカメラの設定をオンにしていただきますようお願いいたします。
 第2点目として、御発言を希望されるときですが、チャット機能を使って、全員宛てに発言希望である旨とお名前を共に入れてお送りください。お名前については、協会名などの組織名でも結構ですので、御入力ください。それをこちらで確認させていただいた上で、座長から指名させていただきたいと思います。なお、御発言に際しては、念のため、御自身のお名前をおっしゃっていただいた上で御発言いただければと思います。
 以上でございます。
 
【八田座長】  
 ありがとうございます。それでは、議事に入ります。まず前回の検討会で複数のメンバーから御質問をいただいておりました、今後の自主規制がどう変わっていくのかといった点について、日本公認会計士協会の小倉様から御説明をお願いいたします。では、小倉先生、よろしくお願いいたします。
 
【小倉様】  
 承知しました。日本公認会計士協会で自主規制部門を担当しております、副会長の小倉でございます。
前回の有識者検討会におきまして、品質管理レビュー制度に関し、多くの方から御意見を頂戴いたしました。
本日はお時間をいただき、作成した資料に基づき、公認会計士法改正を踏まえた、日本公認会計士協会の品質管理活動の方向性について御説明をさせていただきます。
 スライド2ページ目を御覧ください。当協会の品質管理レビュー制度は、自主規制として監査事務所の品質管理の状況を確認するために1999年に導入されました。制度の変遷を経て、現状は、監査事務所及び構成員が職業的専門家としての基準及び適用される法令等を遵守し、適切な監査報告書を発行するための品質管理システムを適切に整備・運用していることを確認することが、レビューの目的となっております。
 品質管理レビューを構成する方針及び手続は、3ページ目に記載をしておりますので、後ほど御参照ください。
 4ページ目を御覧ください。今般の公認会計士法改正に伴い、上場会社監査に関する登録制の導入が行われ、当協会が上場会社の監査を担う事務所の適格性の確認を行うこととされました。当協会は、上場会社の監査事務所が、上場会社の監査を公正かつ的確に遂行するための業務管理体制を法令等に準拠して整備しているか否かを、品質管理レビューを通じて確認いたします。
 スライドの5ページ目を御覧ください。これまでの品質管理レビューについては、先ほど御説明したとおり、職業的専門家が遵守すべき基準の準拠性の確認が主となっております。左側の記載でございます。今般の公認会計士法改正に伴い、当協会が上場会社等監査人の適格性を確認することとなり、こうした役割・責任を果たしていくため、これまでの品質管理レビュー制度の役割も見直さなければならないと捉えております。
 今後は、まず監査に関する品質管理基準が改正され、監査事務所の品質管理においてリスク評価プロセスが導入されることになりました。これは国際的にもISQM1と言われる同様の基準が導入されており、監査事務所は適用に向けた準備を行っております。この真ん中のところでございます。品質管理レビューにおいて、各事務所の適用状況を確認していくことになります。
 さらに、登録上場会社等監査人に対して改正法令で求められている事項を確認することになります。改正法令では、監査法人のガバナンス・コードに沿って業務を実施する体制の整備、コードの適用状況を公表する体制の整備が求められていますので、まさにこの検討会で御議論いただいている事項を踏まえ、監査事務所が各コードについて、コンプライ・オア・エクスプレインの方針を実効的に適用しているか否かを、品質管理レビューを通じて見ていくことになると考えております。
 6ページ目を御覧ください。当協会は上場会社監査人の登録制に関し審査を行う機関として、「上場会社等監査人登録審査会」を新たに設置する予定です。登録審査会の構成員については、会員より非会員が多くなる構成とすることで、登録審査における透明性、客観性を確保したいと考えております。
 7ページ目を御覧ください。7ページ目では、新しい品質管理レビューにおいて変化する事項をリソース、検証視点、アプローチの切り口から整理をしております。前回検討会で、当協会の品質管理レビュアーは38名の陣容と御説明をいたしました。これまでは上場会社の時価総額で9割を占める大手4法人に2年に一度の通常レビューを行っていました。今後は大手監査法人のレビューの頻度を3年に一度に下げ、中小監査事務所へとリソースの比重を移してまいります。検証の視点は、これまで個別監査業務の準拠性の検証を主としていましたが、ガバナンス体制を含めた品質管理システムの有効性を検証していきます。さらに、検証の実効性を高めるために、リスクアプローチを徹底させます。
 今御説明しました品質管理レビュー制度の変更についての工程表は、8ページを御覧ください。こちらの工程表は、前回の有識者検討会において担当副会長の南から御説明した工程表のうち、レビュー制度と上場会社等監査人登録制度とに焦点を当てた形で少し変更しております。2023年3月までに当協会の会則等を変更し、品質管理レビューの基準や手続についても検討を行います。その上で、改正法の施行日から中小監査事務所にISQM1が適用される2024年6月までの期間は、改正法に基づいた制度の運用実績を積み上げていき、その中で見出された課題・論点は整理の上、レビュー手続の更なる見直しやレビュー体制の拡充につなげていき、2024年7月に臨んでいく計画です。これまでの品質管理レビューを変更していくことになりますので、この後、検討の期間をいただいた上できちんと対応してまいりたいと考えております。
 最後に、9ページ目を御覧ください。中小監査事務所の監査品質の更なる向上に向け、各中小監査事務所は、まず新たな基準や法改正を踏まえて品質管理体制を自ら強化していきます。中小監査事務所は、左の上のところに記載をしております。当協会の中小監査事務所支援部門は、中小監査事務所に対して、監査法人ガバナンス・コードやISQM1の適用に向けた指導・支援を行います。また、自主規制部門は、品質管理レビューを通じて中小監査事務所の品質管理システムの状況について確認し、不備が発見されれば、指導・監督を行っていきます。このように、中小監査事務所の品質向上の取組みについてPDCAサイクルを回し、当協会の監督・指導を通じてもなお改善が認められない場合には、上場会社等監査事務所名簿から抹消することになると考えております。
 私からの御説明は以上となります。ありがとうございました。
 
【八田座長】  
 どうもありがとうございました。
 続きまして、前回の検討会では、それまでにいただいた御意見を踏まえて整理したコードの見直しの方向性、この案に基づいて御議論をいただきました。本日は、前回いただきました御意見等を踏まえコードの改訂案の形にいたしましたので、こちらについて御議論をいただければと思います。それでは、事務局から説明をお願いいたします。
 
【齊藤開示業務室長】  
 八田座長、ありがとうございます。それではコードの見直し案として、資料2を御説明させていただきます。
 まず、コードの前文でございます。表紙をおめくりいただき1ページ目、こちらはまず経緯を記載しております。第2段落でございますけれども、公認会計士法改正に伴う関連政府令により、上場企業等を監査する監査事務所は、監査法人のガバナンス・コードに沿った体制整備が義務づけられたことを記載しております。第3段落では、監査法人のガバナンス・コードについて、会計監査の在り方に関する懇談会または金融審議会公認会計士制度部会において、コードの内容について、上場会社監査を行う中小監査法人等における受入れにもなじみ、監査法人の規模・特性等に応じた実効性のあるもの、そういうような内容となるよう見直すこととされております。第4段落でございますけれども、これらのことを受けて、本年10月から本検討会でコード改訂に向けた議論を重ねてきたということを記載しております。第5段落でございますけれども、こちらはコードの原則の概要についてでございまして、現行の文章を概ね維持させていただいております。
 2ページ目でございますけれども、第2段落ではコードの適用について、コンプライ・オア・エクスプレインの手法を想定している旨を記載しております。現行の文章にもございますけれども、こちらと比較しますと、大手監査法人を念頭に置いた表現が一部ございましたので、それを改めております。1行目に上場企業等の監査を担う監査法人というところを記載させていただいております。次の段落でございますけれども、こちらについては、原則または指針を実施することが合理的でないと考える場合には、その原則または指針を実施しない理由や、代替的に実施している手法などを説明することなどを記載しております。次の4つ目の段落でございますが、こちらについては、日本公認会計士協会様による十分な指導・監督機能の発揮についての期待が示されております。
 続きまして5つ目の段落では、上場企業等の監査を担う共同事務所や個人経営の監査事務所、こちらについては、本原則における監査法人を監査事務所に読み替えて適用するということを記載しております。さらにこの次の段落では、上場企業等の監査を行っている個人経営の監査事務所についてでございますけれども、こちらについては、日本公認会計士協会様において、中小監査事務所の育成支援の一環として、監査法人への移行に向けた取組みを計画的に進めていくことが期待されるとしております。最後の段落でございますけれども、「発意」という表現について意味を明瞭にすべく、元々あった文章でございますが、「創意工夫」というふうにさせていただいております。
 続きまして、3ページが、原則1の監査法人が果たすべき役割についてでございます。考え方の第3段落でございますけれども、こちらについては、上場企業等の監査を行う監査法人の組織的な体制整備が求められるという点を記載しております。また、考え方に記載として追加しているところがございます。こちらのほうは、グローバルネットワークやグループと監査法人との関係についてでございまして、これについて十分な開示を行うことは、監査会社、株主その他の資本市場の参加者等による監査への信頼性の確保につながること、また、資本市場の参加者などが監査法人における会計監査の品質の向上に向けた考え方や取組みなどを適切に評価する上でその開示が重要であるという点を示させていただいているというところでございます。
 それから、指針でございまして、4ページでございます。指針1-5で、非監査業務と構成員の兼業・副業に関して、利益相反や独立性の懸念への対応を明らかにすべきというところを追記させていただいております。また、指針1-6を追加させていただいておりまして、グローバルネットワークに加盟している場合やほかの法人等と包括的な業務提携等を通じてグループ経営を行っている場合に、グローバルネットワークやグループとの関係性や位置づけについて、どのような在り方を念頭に監査法人の運営を行っているのかを明らかにすべきとしております。
 続きまして、原則2は、5ページ、6ページになります。組織体制についてでございます。考え方において、第1段落、こちらのほうで、上場企業等の監査を担う監査法人は実効的な経営機能を有することが必要であること、こちらを強調しております。第2段落でございますけれども、現行の文章では大手監査法人を念頭に置いた表現がございましたので、それを改めさせていただいております。それから、第3段落でございますけれども、こちらについては、経営機関を設置しない場合であっても、実効的な経営機能を確保することの重要性を記載しております。さらに次の段落でございますけれども、無限責任や有限責任といった責任形態をはじめとして形式的または実質的な違いから多様な監査法人が存在しますけれども、上場企業等を監査する監査法人であれば、いずれの法人においても経営機関等の役割が適切に果たされるべきという点を記載しております。
 続きまして、指針についてでございますけれども、指針2-1では、経営機関を設置しない場合は、実効的な経営機能を確保すべきであるという点を追記しております。また、指針2-2についてでございますけれども、経営機関の役割として明らかにすべき事項として、6ページでございますけれども、テクノロジーの進化を踏まえたIT基盤の実装化というふうに表現をアップデートさせていただいております。また、指針2-3においては、経営機関の設置を念頭に置いた表現がございました、そうではない場合もありますので、表現を改めさせていただいております。
 続きまして、7ページにまいります。原則3でございます。考え方の第2段落において、上場企業等を監査する監査法人は、監督・評価機関を設ける、設けないのいずれの場合であっても、独立性を有する外部の第三者の知見を活用すべきことを記載しております。また、第3段落においてでは、このように独立性を有する第三者を活用するに当たっては、独立性を有する第三者に期待する役割や独立性に関する考え方を明らかにすることが重要であるという点を記載しております。
 指針にまいります。指針のほうは、経営機関や監督・評価機関の設置を念頭に置いた表現がございましたので、こちらのほうを改めさせていただいております。例えば、経営機関に「等」を追記するなどの変更を行っております。また、指針3-1では監督・評価機関を設けない場合は、経営機能の実効性を監督・評価する機能や、実効性の発揮を支援する機能、これらを確保すべきことを記載しております。さらに、指針3-3については、監督・評価機関の構成員または独立性を有する第三者に期待される業務の例示として、経営機能の実効性向上に資する助言・提言を追記しております。この追記自体は8ページになります。
 続きまして、原則4の業務でございます。こちらは9ページの原則本文では、規模・特性等を踏まえるという点を追記しております。また、考え方と追記全般で、経営機関の設置を念頭に置いた表現を改めて、経営機関に「等」を追記するという変更を行っております。
 さらに、9から10ページにかけての指針4-3でございますけれども、監査法人が留意すべき点として、法人の構成員が業務と並行して十分に能力開発に取り組むことができる環境の整備を追記しております。
 最後に、原則5の透明性の確保でございます。11ページから12ページの指針5-2においてでございますけれども、監査法人が説明すべき項目として、品質管理、ガバナンス、IT・デジタル、人材、財務、国際対応の観点から追記をしております。項目としては、上から、トップの姿勢、構成員が共通に保持すべき価値観、AQI、品質管理システムの状況、経営機関等や監督・評価機関など、また、非監査業務、IT、人材、財務、国際対応、監査品質の向上に向けた取組みの実効性の評価とさせていただいております。
 さらに、12ページの指針5-3でございますけれども、指針5-3では、グローバルネットワークに加盟している監査法人や、ほかの監査法人と包括的な業務提携を通じてグループ経営を行っている監査法人が説明すべき項目、こちらを新設しております。項目として明記しておりますのは、グローバルネットワークやグループについて、概略や組織構造、意思決定の参画状況、こちらに加えて、グローバルネットワークへの加盟やグループ経営を行う意義・目的、リスク、さらに、リスク軽減措置と契約概要などでございます。具体的な項目としてどこまでコードに記載するかということについては、ほかに例えば契約の詳細とか、グローバルネットワークやグループとの資金のやり取りなどいろいろ考えられると思います。こちらについても御意見を頂戴できますと幸いでございます。
 事務局案の説明は以上でございます。
 
【八田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは、ただいま御説明のありました監査法人のガバナンス・コードの改訂案につきまして、御意見等を伺ってまいりたいと思います。また、公認会計士協会による説明に対する御質問、御意見があれば、併せてお願いいたします。
 なお、メンバーの皆様方に御発言いただく機会を確保する観点から、恐縮ではありますが、御発言の時間としては5分以内を目安にしていただければありがたく存じます。それでは、チャット機能を使って発言希望である旨を送ってください。
 では、石原メンバー、よろしくお願いします。
 
【石原メンバー】  
 石原です。ありがとうございます。それでは、ガバナンス・コードにつきまして、細かい点、コメント、質問、確認ということで5点ほど申し上げたいと思います。それから、それらも踏まえたところで、先ほどの日本公認会計士協会のプレゼンテーションに関する質問あるいは確認したい点を申し上げたいと思います。
 コードについては、順番に申し上げます。1点目は、2ページ真ん中の「各監査法人の規模・特性等に照らして」から始まる段落の最後が「望ましい」という表現になっています。ここは、原則及び指針の実施方法の変更等で将来実施する方向であることが決まっている場合であれば、「望ましい」ではなくて、開示を求めるほうが、将来の対応を評価できますから、「必要である」としたらどうかと思います。
 2点目は、3ページ下段のグローバルネットワークの関係です。これについては、まず事業会社の観点、特にグローバルに事業を展開している会社からしてみますと、グローバルネットワークには加盟していてもらったほうがはるかに監査のクオリティが高まるとの認識です。すなわち、海外のグループ会社等に対する監査も同じ基準、レベル感で行ってもらえますし、情報の共有もスムーズですから、グローバルネットワークに加盟していること自身は、被監査会社にとって大きなベネフィットであると考えています。
 そういう中でこの文章を見ると、この少し下のところにありますが、「監査法人の意思決定に影響を与え得ることなどにより、監査品質の確保やその持続的向上に支障をきたすリスクを生じさせる可能性もある」という記載があり、これが原則5の透明性の確保に基づく開示にもつながっていますが、私自身はこのリスクはどういうところに実際にあるのかということについて必ずしも十分理解できていません。例えばグローバルネットワークに加盟して海外グループ会社の監査を行うことがどうしてリスクになるのか、可能性とは言え、この点について少し補足的な説明をしていただければと思います。リスクが事実としてあるということであれば、当然この点について原則5での開示ということも必要と思います。
 3点目は、7ページ、原則3の考え方第2段落の後半、「また、規模・特性等に照らして監督・評価機関を設けない場合であっても、例えば、独立性を有する第三者を業務運営上の会議等に参加させるなど、創意工夫」と記載されていますが、私は、「例えば、独立性を有する第三者を業務運営上の会議に参加させるなど」という例示を入れる必要があるのか疑問を持ちます。
 こういう例示を入れると、これでいいと受け取られることになると思いますが、ただ単に会議に参加しているだけでは意味はなく、会議に参加して責任を持って発言できる、意見できる、尊重される、そういうことが前提になっている必要があります。この辺については、実際のところ、実質性で判断する部分であって、どう評価していくのかについては日本公認会計士協会を中心とする今後の検討に委ねられることになると思いますので、敢えてここに例示を入れることは現時点においては非常にリスクがあるのではないのかと思います。
 その関係でいきますと、5ページの原則2の経営機能のところには、第3段落に「経営機関を設置しない場合であっても、実効的な経営の機能が担保されていることが重要である」と記載されているものの例示はありません。経営機能のほうには例示がないけれども、監督・評価機能のほうには例示があるということのバランスも欠きますし、例示があった方が良いとも思えないので、この例示の部分は削除したらどうかと思います。
 4点目は、8ページの3つ目のポチで「経営機能を果たす人員又は独立性を有する第三者」の部分で、後半に「独立性を有する第三者」が記載に加わりました。この文章を見ると、元々は監督・評価機能を果たす人員による、経営機関の構成員あるいは経営機能を果たす人員の選退任、その評価及び報酬の決定過程への関与という趣旨だったと思いまが、ここに「独立性を有する第三者」を加えて記載すると、監督・評価機能を担うべき人間が自らの選退任、自らの評価及び報酬の決定過程への関与を行うように読めますが、そういう趣旨ではないと思うので文章として本当にこれでいいのかの確認です。
 5点目は、11ページの透明性の確保のところですが、指針5-2で、監査法人は品質管理等々について以下の項目で説明するということで、これが新たに加わっています。記載されている各項目については、元々日本公認会計士協会のビジョンペーパーの中で、中小監査事務所が整備して開示が必要なものとして挙げられたものが引用されているとの理解で良いでしょうか。日本公認会計士協会は、中小監査法人も包含した組織として提言しているので、ガバナンス・コードとしてもそのまま受け入れるということで私はいいと思いますけれども、念のため協会としてもそういう理解でよろしいでしょうかということの確認です。
 最後に、今、私が幾つか申し上げたことと関係して、先ほどの日本公認会計士協会のプレゼンテーションについて改めての確認です。スライド5ページ、今回の新制度のところで、監査法人のガバナンス・コードに沿って業務を実施する体制・コードの適用状況を公表する体制の整備(96条)を踏まえて、上場会社等の監査を行う監査事務所に対して法令上要求される事項の確認を行うとあっさり記載されていますが、この部分というのは、以前この検討会の中でも申し上げましたが、今までとははるかにレビューのスコープが広がるということだと思っています。
 これまでは基本的に品質管理の基準に基づいた監査が行われているのかということのレビューが主体だったのに対して、今後は、経営機関とか監督・評価機関とか、またこれが先ほど申し上げたように、正式な経営機関がなければ実効的な経営機能を持てているのか、あるいは実効的な評価・監督機能を持てているのか、更には、透明性の部分に記載されている項目の開示内容は信用できるのか、事実に即した開示が行われているのか等々、今後は、今までレビューの対象にしていなかった大きな部分を対象とするレビューに変わるということです。
 しかしながら、新たに加わる部分については明確な判断の基準がないということだと思いますので、そこを実質評価していくと言っても、最後のスケジュール表にある通り今後1年ぐらいの間で、実効的な機能の担保等について、実質的にどうやって評価し、イエス・ノーをつけていくのかに関して一定の評価基準を策定する必要があり、これが新品質管理レビュー基準・手続等の検討と確定の中身となると思っています。日本公認会計士協会が責任を持って、これから評価基準を策定し、それに基づいて大きくなるスコープの中でもレビューを行っていくと理解していますが、そういう理解でよろしいでしょうかということの確認であります。
 以上です。
 
【八田座長】  
 どうもありがとうございました。幾つか御質問をいただきましたので、回答できる範囲で齊藤室長のほうでお願いできますか。
 
【齊藤開示業務室長】  
 石原メンバー、どうもありがとうございます。それぞれの御指摘のところ、まずは事務局から御対応、御回答すべきところを御回答させていただきたいと思います。
 まず1点目、前文の2ページ目について、御質問いただきました。3段落目の後半についてでございますけれども、これは「説明することが望ましい」という表現が適切なのかというところでございます。その前の文章については、代替的な措置を実施している場合には十分かつ具体的に説明することが必要であるというところで、こちらについては必ずそういうことを説明してくださいというふうにさせていただいているところでございます。
 一方で、「必要である」ではなくて「望ましい」という言葉を選択させていただいた趣旨でございますけれども、ここの内容としては、もちろん将来実施する方向が決まっているのであれば、もちろんそのようなことを開示していただければ、資本市場の参加者の皆様からすると非常に参考になるということかと思います。ただ一方で、将来実施する方向というのは、決まっている場合についても非常に幅が広いと思います。いろいろ検討段階である、確定的である、いろいろな段階があると思っております。こういったときに我々事務局としては、このように将来についてどうするのかということの検討を促進したい、ぜひ考えていただきたいというところをまずもって考えているところでございます。
 一方で、検討段階のものが決まっているか決まってないか、いろいろな段階がありますけれども、どこの段階で開示しなければいけないのかというところを考えると、検討がなかなかしづらいというか、そういうところが妨げになるというような、そういうような副作用も考えないといけないというところもあって、ここはまず「望ましい」と。まずは検討してください、検討して決まった段階においてはなるべく開示をしてくださいと、そういう趣旨でございます。ですので、なぜ「望ましい」という言葉を使ったかというと、簡単に申し上げますと、まずは検討するというところを促させていただくというところでこのような表現をさせていただいているというところでございます。
 それから続きまして、7ページ目、監督・評価機関のところ、例示を入れるのが適切なのかどうかというところの御指摘をいただきました。ここは、確かにコードでございますので、ここまでの例示は書く必要はないのではないかというところは考え方としてあろうかと思います。一方で、石原メンバーもおっしゃったとおり、こちらは例示を入れると、会議に参加して終わりで、ちゃんと責任を持ってやってくれるのかというところは御指摘のとおりだと思います。
 まさにそれで終わらないというところが大切だと思って、今回、明らかにすべき内容として期待する役割というところを入れさせていただいております。恐らく役割というのは、会議に参加することが役割ということではないと考えておりますので、会議に参加して何をするのかといったことも含めた役割というところだと思っております。ですので、ここは例示をこれまでの取組みも踏まえて入れさせていただいておりますけれども、そういうところで形骸化しないように、ここは考え方として役割も明らかにしていただくというところかと考えているところでございます。
 それから、8ページでございます。まさに選退任、評価及び報酬の決定過程への関与というところで、文言をアップデートさせていただくというところの観点からも、「経営機能を果たす人員又は独立性を有する第三者」というふうに経営機関の構成員をある意味分解させていただいたというところでございます。ここについては、「又は」というふうに記させていただきましたので、石原メンバー御指摘のとおり、自己レビューみたいなそういうところが何か適切ではないというようなケース等があろうと思いますので、そういう部分については、そこの考え方に基づいて適切に関与を決めていただくとよろしいかということで記載させていただいているところでございます。ですので、こちらから狭く示すよりは、いろいろなやり方があるというところの選択肢もあろうかと思いますので、このように幅広く「又は」というところで分解してつけさせていただいているというところでございます。
 それから、開示のところ、5-2のところでございます。こちらは日本公認会計士協会からもそこの説明をいただければと思いますけれども、我々としても、開示項目のところについては、この検討会でも2回にわたってどのような開示項目が考えられるかというところを御議論いただきましたけれども、そちらの皆様からの御意見も受けて幅広く、それから、重要なもの、あまり細かく書けませんので、いろいろ包含するような形で入れさせていただいております。もちろん元々となったものが、在り方懇談会や金融審議会の部会における6つの項目の元々というのが日本公認会計士協会のビジョンペーパーのところでもございますので、そこが骨格になって基となってこちらのほうを入れさせていただいているというところでございます。
 私からは以上でございます。
 
【八田座長】  
 どうもありがとうございます。最後のところ、ビジョンペーパーに関して日本公認会計士協会から何か追加的に御発言ありますでしょうか。茂木メンバー、いかがでしょうか。
 
【茂木メンバー】  
 ありがとうございます。今お話しいただいたように、5-2のところについては、過去の在り方懇等の中でもお話しさせていただいている点、またはビジョンペーパーでも言及している点でございます。この点については、我々としても、各監査法人がしっかりとその点についての取組みを説明していくようにというようなことで考えております。
 以上でございます。
 
【八田座長】  
 どうもありがとうございます。それでは続きまして、上田メンバーお願いします。
 
【上田メンバー】  
 上田でございます。どうぞよろしくお願いします。まずは、これまでの議論を踏まえてコードをおまとめいただきまして、ありがとうございます。議論のかなりの内容を入れていただいたと思っております。
基本的に今回の改訂は、中小監査法人を対象にしておられます。中小監査法人の実態を踏まえて、経営機関等とか、あるいは監督・評価機関等というところで実質的な質を確保する取組みを可能とするということであろうかと思います。しかしながら、少し厳しい言い方になりますが、この「等」とはステップアップの一段階として位置づけであって、やはり究極の目的は、前回八田先生もおっしゃっておられたと思いますが、上場会社監査についてはどのような法人形態であれ同じレベルの品質の確保をといったところが重要なのかと思っております。
 リスクの高い企業が今、大手監査法人から中小監査法人に移っているという実態があるかと思います。日本公認会計士協会様からの御説明にもございましたが、自主規制機関として、改善が見られない場合には登録の取消し措置も講じられるとあります。最終的な処分である当局処分が入る前段階であり、自主規制機関としてしっかりと機能していただくということを旗印に、日本公認会計士協会様には力を入れて取り組んでいただければと思っております。
 それを踏まえて、幾つかコメントをさせてください。まず細かいところから言いますと、指針3-3等にあるのですが、「役割を明らかにすべき」と書いてございます。例えば、上場会社のガバナンスの開示等においても、役割を開示しなさいと言うと、項目の列挙になることが多いようです。資料に書かれているように、事実として何をやっています、どういう役割がありますという、単なるやっていることの列挙になりがちです。重要なのはこういった役割に基づいてどのように活動してきたかという活動状況であろうと思いますので、役割と活動状況の両方をぜひ書いていただきたいと思います。つまり、こういう役割ですといって本当にそれが実施されているかどうかというのはステークホルダーから見ると分かりませんので、活動状況まで開示していただきたいと思います。これがまず第1点目になります。
 第2点目は、グローバルネットワークのリスクについてです。投資家等のステークホルダーにとっては、グローバルネットワークに入っていることのベネフィットは理解しやすいのですけれども、実際にどのようなリスクが存在するのかが正直イメージが湧きにくいと思いますので、ここはもしリスクがあるとすれば具体的に書いていただきたい。
 そのベネフィットの部分でございますが、グローバルネットワークに入っているとおっしゃりながら、実際には、特に中小監査法人が入っておられるようなネットワークの場合には、看板の利用と言うと変ですが、グローバルな視点も持っていますというようなアピールにはなるものの、実質に例えばグローバルに海外子会社の監査ができるかとか、海外の監査法人との連携を強くしているかというと、そうでもないような例もあるように思います。12ページに海外子会社等を有する被監査会社の監査への対応状況とありましたけれども、グローバルネットワークに入っていることは、この部分にも関係してくると思いますので、こういう文脈で説明をしていただきたいと思います。
 大手監査法人様が入っておられる大手のネットワークについては、ステークホルダーにはわかりにくい経営上のいろいろなリスクがあるというのは重要な情報かもしれません。他方では、むしろ中小の監査法人においては、その看板を使うことでいかにも、実質的には海外の監査ができないようなリソースであるにもかかわらず、できるかのごとくアピールする材料となっていないかというところを懸念していますので、そういう形をどこかで補足していただけるとありがたいと思っております。
 最後になりましたが、改訂案をおまとめいただいてありがとうございました。本日議論があるかと思いますが、最終的には、私はこの方向で調整いただいて、座長の八田先生の御判断に御一任させていただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
 
【八田座長】  
 ありがとうございます。先ほど石原メンバーのほうからも出た例のリスクの話で、同じような御懸念を上田メンバーからもいただきました。ここのところでちょっと補足していただけますでしょうか。
 
【齊藤開示業務室長】  
 今、八田座長からお話もございましたリスクのところでございますけれども、リスクというふうに裸で1つ書いても分からないというところはあろうかと思いましたので、思い切って3ページの考え方のところで、リスクとして挙げられるものを触れさせていただいております。ここで考えられ得るもののリスクを書き下すというのがこのコードの趣旨ではないとい考えておりますので、やはりそれぞれのグローバルネットワークまたはグループ経営を行われる監査法人様それぞれにとってリスクはどういうものがあるかというところがあろうかと思いますので、ここは1つ1つということにはしておりません。
 ここで書かせていただいているものというのは、追記している4行目のところでございます。「さらに」から始まる4行目、「監査法人の意思決定に影響を与え得ることなどにより、監査品質の確保やその持続的向上に支障をきたすリスクを生じさせる可能性もある」というところがございます。やはり意思決定というところは、いろいろなレベルの意思決定があるかと思います。監査法人様の中での、まさにガバナンス上の、例えば人や物やお金といったものついての意思決定、または監査上の意思決定、いろいろなレベルであろうかと思いますけれども、それについて影響を与え得るというところで、いろいろなところを包含するというところで入れさせていただいております。ただ、ここではしっかりと、監査法人の意思決定に影響を与えるというところを1つ掲げさせていただいているというところでございます。
 それから、まさにもう1つ御質問としてありましたのが、独立第三者の方の活動状況の部分でございます。まさに御指摘いただいた原則3のところについては、役割とか、また、独立性に関する考え方、これについて明らかにすべきであるというところの規定でございます。一方で原則5にまいりますと、まさにここが実績評価のお話が入ってまいります。例えば5-2の項目に掲げさせていただいていますけれども、12ページにまいりますと、見え消しもあって分かりにくくなってしまっていますけれども、残るものの上から3つ目、「監督・評価機関の構成や役割。独立性を有する第三者の選任理由、役割、貢献及び独立性に関する考え方」というところもございますし、また、この開示の最後のところには、そういうようなものも含めた「監査品質の向上に向けた取組みの実効性の評価」というところがございますので、活動状況といったところをしっかりとやられているということであれば、ぜひこういうところでそこについても粒度細かく具体的に活動状況などを記載していただきたいと考えているところでございます。
 私からの御説明は以上でございます。
 
【八田座長】  
 どうもありがとうございます。それでは続きまして、御発言のある方は、チャットのほうで挙手をお願いします。いかがでしょうか。
 岡田メンバー、聞こえていますでしょうか。よろしくお願いします。
 
【岡田メンバー】  
 ありがとうございます。岡田です。今回の改訂により、上場企業を監査する全ての監査法人を対象とするという変更を行うことで、上場企業の監査の信頼性が格段に向上すると期待しております。全体として、原則の考え方や指針において大変丁寧な説明内容になったと思っております。事務局の努力に感謝したいと思います。
 私からは2点です。ちょっと細かいですけれども、原則2のところの考え方、ここにパラグラフとして4つありますが、私の読んだ印象としては、この第3パラグラフ、先ほどの御説明では、「また、経営機関を設置しない場合であっても実効的な経営機能が確保されていることが重要である。」というのがここの趣旨だとすれば、その前に、「このように」以下のところは、第1パラグラフと重複しているところが多いのではないかと感じました。したがって、先ほどの「また」の部分を第1パラグラフにくっつけてしまったほうが読みやすいかなと思いました。これは私の印象です。どうしてもということではありません。趣旨としてはそういうということだと思いますので、読みやすくしたほうがいいような気がいたしました。
 それから、日本公認会計士協会のほうの御説明ありがとうございました。大変その意気込みが伝わってまいりました。それで、2点です。1点は、6ページ、ここにある登録審査会の員数構成、ここを会員と非会員というふうにしているわけです。これはここの説明資料としての話だと思いますけれども、会員と非会員でいいのだろうかという感じがいたします。つまり、この御趣旨は、中小監査法人を支援するという組織を協会内にお持ちになり、さらに一方では自主規制部門もお持ちになるという意味で、内部の利益相反が起きないようにしていただくことが望ましいと思うのですが、そういう中で、もしこれを会員と非会員ということじゃなくて、会員と、独立した第三者とした方がよいのではないでしょうか。どういう言葉がいいのか分かりませんが、そういうふうにしていただくと、コンフリクトが起こらないし、透明性が高まる気がいたします。
 この資料については以上ですが、私としては、日本公認会計士協会が自主規制をするということに大いに期待いたしますが、同時に不安も感じております。公共の利益のために、敢えて身内に対して厳しくしなければならない場合もあるという覚悟を持って臨んでいただきたいと思います。その姿勢こそ、ステークホルダーは注目しているということを意識して運用していただきたいと思います。
 私からは以上です。
 
【八田座長】  
 どうもありがとうございます。今、岡田メンバーが指摘された日本公認会計士協会のペーパーの会員・非会員という用語法ですけれども、通例、日本公認会計士協会が使う会員というのは現に会計士として登録されている方を会員と呼んでいますよね。廃業して辞めてしまえば、これ、非会員になると、こういう理解でいいのでしょうか。その言葉遣いだけ確認させてください。
 
【小倉様】  
 日本公認会計士協会の小倉からお答えさせていただきたいと思います。八田先生の御指摘のとおり、ここで使っております会員というのは、当協会に登録している公認会計士を会員ということで使わせていただいております。過去に公認会計士の登録があった方で現在登録されていない方は、会員かというと会員ではない、非会員ということになります。この非会員というのは、先ほど岡田メンバーがおっしゃられたように、独立している第三者というイメージでございます。
 私からは以上でございます。
 
【八田座長】  
 どうもありがとうございます。それでは、小野メンバー、よろしくお願いします。
 
【小野メンバー】  
 ありがとうございます。小野です。今回のこの改訂案は、全体としては、過去2回の議論をよく反映して作成されておりまして、コメントを申し上げる点は少ないですけれども、細かい点で恐縮ですが、2点ばかり申し上げたいと思います。
 1点目は、質問ですけれども、5ページの原則2の考え方の第4パラグラフ、「なお、無限責任監査法人や有限責任監査法人といった法人形態をはじめ、形式的又は実質的な違いから多様な監査法人が存在するが」というところです。基本的にこの書き方には賛成ですが、「形式的又は実質的な違い」という、これが何を想定されているのかということを教えていただきたいというのが1点でございます。
 それから、2点目は、用語の話で恐縮ですけれども、「監督・評価機関等」という言葉がたくさん使われているのですが、この場合の「等」は、独立性を有する第三者というふうに私は理解しています。そうしますと、独立性を有する第三者は、監督・評価機関に関しては、監督・評価機関の構成員たる独立性を有する第三者と、それから、監督・評価機関を設置しない場合の独立性を有する第三者の2通りがあるのかなと理解をしております。
 そういう理解の下で、12ページの指針5-2の6つ目の黒ポチですが、ここの「監督・評価機関の構成や役割。独立性を有する第三者の選任理由、役割」云々というところですけれども、一見、監督・評価機関のみでよさそうに見えますけれども、独立性を有する第三者が、監督・評価機関の構成員たる独立性を有する第三者と、監督・評価機関を設置しない場合の独立性を有する第三者の両方を意味すると、そういう理解によりますと、ここの書きぶりは「監督・評価機関等」にしていただいたほうがいいのではないかなということで、そういうふうには取れないかということを御説明いただきたいのが2点目です。
 それから、敢えて補足ですけれども、先ほど石原メンバーと上田メンバーからグローバルネットワークのリスクについて御質問があったかと思います。私の経験からすると、お2人の方に理解しやすい例として、グローバルメンバーファームに日本の監査法人が加盟をしますと、当然そのグローバルネットワークのいろいろなマニュアルとか規約等に準拠しなければならなくなるわけです。そうしますと、例えばグローバルが持っている監査のマニュアル、それと日本の監査基準が必ずしも一致するとは限らない。グローバルネットワークのほうは、たくさんの国からメンバーファームが集まってネットワークを構成していますから、それぞれの法域によって、会計基準と違って、会計基準の場合はIFRSでほぼ統一しているのですが、監査基準の場合は若干法域によって監査の要請が違う場合があり得ます。その場合に、グローバルに入ったからといって無条件にそのマニュアルを適用しなければいけないということになると、場合によっては日本の監査基準に準拠しないことがあり得るという、そういうリスクがあり得ます。
 ただ、これは例えばで申し上げておりますので御安心いただきたいのですが、最近、日本公認会計士協会の努力で、IFACが国際監査基準を作っておりますけれども、それをほぼ導入をしていただいています。日本の監査基準委員会報告ですかね、そちらのほうに反映をさせていただいて、ほぼ日本の監査基準と国際監査基準が同一になって、グローバルネットワークもほぼ国際監査基準を導入していますから、私が言ったようなことがだんだん少なくなってきていますけれども、そういうこともリスクとしてはあり得るということで、すみません、補足的に発言させていただきました。
 以上でございます。
 
【八田座長】  
 どうもありがとうございます。参考にさせていただきます。それでは、弥永メンバー、お願いします。
 
【弥永メンバー】  
 ありがとうございます。2点申し上げたいと思います。非常によくまとめていただいて、修正をお願いしたいと思う点は特にございません。そのうえで、第1点としては、2ページで、上場企業等の監査を担う共同事務所や個人経営の監査事務所に読み替えて適用するとされており、これは正しい姿勢だと思います。けれども、実際に読み替えて適用することが共同事務所とか個人経営の監査事務所にとって簡単かどうかという点が非常に気になっておりました。どのように匹敵する組織運営をしていくかを自分で考えるのはそんな簡単ではないのではないかなと思っておりました。しかし、先ほど日本公認会計士協会の小倉副会長から御説明があったように、日本公認会計士協会が品質管理レビューその他の方法でこのような上場企業の監査をされる監査事務所に対して指導あるいは助言をしてくださるということなので、ここのところはそれである程度解決できるのかなと思いました。
 2点目は、今、小野メンバーや石原メンバーも御指摘されていた3ページに示されているリスクについてです。グローバルネットワークへの加盟については、確かに石原メンバーがおっしゃっているように、一般的には、さほどリスクが大きいわけではないのではないかと私も思います。ただ、監査法人としては、リスクがないかどうかということは考えていただかなければならないということは確かなので、その意味で、今回の事務局が御提案してくださった開示の内容などについては賛成したいと思っております。
 むしろ、私が気になっているのは、他の法人等との包括的な業務提携等です。グローバルネットワークとの関係でもそのような部分はあると思いますけれども、日本の公認会計士法及びそれに基づく政省令には、監査法人と他の法人との間の業務提携等に対して、何か実体的なコントロールを及ぼすような規定が設けられているわけでもなければ、他の法人等との業務提携その他のいろいろな関係、明文の契約による関係でないにしても、それらに着目した独立性についての規定、たとえば、いわゆる著しい利害関係についての規定も明示的には設けられていないと承知しております。そのため、監査法人がとりわけ他の法人等との関係によってリスクを抱えることがありうるのではないかという懸念を持っております。
 グローバルネットワークに限定すると、必ずしもリスクは大きくないのかもしれないという御指摘はそのとおりだという印象もありますが、より一般的に、他の法人等との業務提携等を通じてグループ経営を行うなどのグループとの関係、これについては我が国の法制上、実体的な規律を及ぼしていないのであれば、このガバナンス・コードが提案する方向で対応していくということがよろしいのではないかと考える次第です。したがって、3ページに書かれている考え方の御説明はもっともだと思いますし、透明性の確保との関係での12ページ、13ページに示されているような開示を、上場会社を監査される監査法人についてはお考えいただくということは、大変意義深いことだと思っております。
 以上です。ありがとうございました。
 
【八田座長】  
 どうもありがとうございます。それでは、栗原メンバー、お願いします。
 
【栗原メンバー】  
 ありがとうございます。全体といたしましては、これまでの議論されてきたことについて、今回主に追加されます中小の監査法人に対しても、ガバナンスの向上に資するように適用されるべく反映されているのではないかと感じました。
 その上で、幾つか細かい質問をさせていただきたいのですが、1つ目が、上場企業を監査する中小の監査法人について、規模の面から必ずしもこれまでのような独立した経営組織を持つことができない場合に、それと同等な実効性のある形を求めていこうということなのですが、その際「規模・特性に照らして」という言葉が数カ所出てきます。例えば、組織体制の指針2-1、「規模・特性等に照らして、実効的な機能を」ですとか、それから、業務運営の原則4、「監査法人は規模・特性等を踏まえ」とあります。
 この規模については確かに意識いたしましたが、ここで言う「特性」とは、何を念頭にしているのかをお伺いしたいと思います。上場企業の監査をする上で、ガバナンス上差をつけるような有意な特性というのは何を指しているのでしょうか。
 それから、2点目に、原則5の透明性の確保のところで、指針5-2で市場参加者等による評価に資する情報の説明が挙げられています。ここには、監査法人に対する監督・評価機関の構成員または独立性を有する第三者を通じて、資本市場の参加者等とのコミュニケーションをより高めていく事が期待されており、そもそも指針3-3のところでも監督・評価機能を担う人に被監査会社、株主、その他の資本市場の参加者等との意見交換への関与が期待されています。しかしながら、これらについては、監督・評価機能に期待する以前に、そもそも監査法人全体でまだ足りない部分だと思いますので、それが行われるということを前提に、それに加えて、監督・評価機能を担う独立した立場の方々がさらに加速するという趣旨だと理解いたしました。そして、まずは、被監査会社に対して、監査法人のガバナンスについて改めてよく理解をいただきたいと思います。
 最後が、原則5の5-2の説明すべき項目として列挙されている中に、特定の監査報酬に左右されない財務基盤が確保されている状況というのがありました。これは特定の顧客の監査報酬に依存していると、それによって財務基盤の不安定になり得るということですが、ここでは監査報酬としていますが、監査証明業務において特定の法人に偏っているということだけを指すのか、それとも、今、全体の中で非監査業務、非監査証明業務の割合が4割ぐらいになっていますので、ここがますます増えていくも考えると、非監査業務の顧客が集中していること、あるいは、被監査業務に大きく依存しているような財務基盤ですと、同様に監査業務に対しても不安定性が生まれかねないと思いますので、そういうことも含めて、財務基盤の確保、安定性というところを見る必要があるのではないかと思いますが、そこはいかがでしょうか。
 以上です。
 
【八田座長】  
 どうもありがとうございます。今のコメントに何か御説明することはあるでしょうか。
 
【齊藤開示業務室長】  
 ありがとうございます。まず、規模・特性等のところでございますけれども、特性のところは、監査法人様の業務、例えばでございますけれども、業務の内容として、ある監査法人様からすると、被監査法人様が国際業務を手広くやられているような先の方もいらっしゃるでしょうし、または、そういうようにやられていなくて、まさに国内の拠点のみ監査すればいいと、様々状況はあるかと思います。
 もし国内だけ監査拠点として想定している場合には、例えば、開示項目で説明をお願いするような国際対応とか、そういうような部分というのは、あまり対象には入ってこないとか、そういうところがございますので、今のは1つの例示でございますけれども、そういうのも含めて、この規模・特性等というところを入れさせていただいているというところでございます。
 それから、監査のみならず非監査業務の部分について、こちらにも対象を広げて監査法人様の運営が左右されないかというところはあると思います。その部分についても、ますます重要だと思っております。そういう点で、まさに法人の業務における非監査業務の位置づけについて、きちっと考え方というものを外に出していくというようにしております。
 もちろん、報酬依存度規制、こちらは実際に監査の文脈でございますので、そこも意識して、この開示項目に具体的に特出しとして財務基盤のところを入れさせていただいておりますけれども、まさに栗原メンバーがおっしゃったこの非監査業務についての問題意識、この点を受けて、その5-2の説明項目のところに非監査業務のお話も入れさせていただいておりますし、上流のところの指針1-5で、ここでも、非監査業務についてしっかりと追記させていただいているというところでございます。
 それから、小野メンバーにも御指摘いただいておりました、監査法人について形式的、実質的な違いというところ、お話がありましたけれども、もちろん、有限責任、それから無限責任のところ違いがございますけれども、代表社員とかいろいろ違いもあろうと思いますし、実質的なところについて言えば、今申し上げた業務の内容とか、または、どういうようなトップの姿勢で経営を行っているのかとかいったところもあろうかと思います。そういうところも含めて、このような幅広い表現をさせていただいているところでございます。
 
【八田座長】  
 どうもありがとうございました。
 先ほども御説明がありましたが、特性というのは、私は日頃、多くの監査法人の関係者の方で友人もいますが、各法人の歴史を見ていますと、それぞれに皆持ち味があって、出自が皆、結構違います。例えば、地方だけで活躍されている法人、あるいは、合併等をあまり多く経験しない法人など。
 私が気になるのは、エンロン事件を起こしたアーサー・アンダーセンという事務所は後発の事務所だったのですが、他の大会計事務所と異なった特質として、1回も合併を経験していないということで。つまり、純潔法人だったということ。それは非常に高く評価されていたのですが、結果から、問題が起きた後、やはり考え方が画一的、あるいは、偏狭といいますか、狭い考えであったから、どうも社会の声に耳を傾けることが出来なかったのではないかと、こんな批判もありました。
 これはプラスマイナス両方ありますから、どっちがという問題ではないですけれど、それぞれの法人がお持ちの環境ないしは社風というのはあるし、例えば、当該法人が金融機関に対する監査に強いならば、それにふさわしい人材を当然配備しなければならないわけです。私はそういう広い意味で使っているということで、この特性という言葉は意味があると思っていますので、参考までに申し述べました。
 それでは、続きまして、澤田メンバー、お願いします。
 
【澤田メンバー】  
 澤田です。発言させていただきます。作成していただいたガバナンス・コード案について、今までの議論が非常によく反映されているなと個人的に思っておりまして、感謝しております。ありがとうございます。
 確かに中小監査法人はいろいろな規模感があるかと思うのですけれども、このレベル感はやっていかないといけないと思いますし、指針のところにも丁寧に記載していただいているので、誤解もなく実践していくことができるのではないのかなと考えております。
 ただ、メンバー間で議論している中でも、「この言葉の意味は?」とか、「定義は?」だとか出ており、あくまでプリンシパルなので、これをベースに各監査法人が主体的にやっていけばいいとは思いますけれども、適用に当たって、我々中小監査法人は特にですが、分からないだとか、言っている趣旨が理解しづらいところが出てくる可能性もあるかと思いますので、この点は業界として、日本公認会計士協会のほうでもより詳しく何回もガイダンスをしていく必要があるかと思います。私も会員の法人ですので、一緒になって周知をしていきたいなと思っております。
 一方で、これは監査法人のガバナンス・コード案の話と直結する話ではないのですけれども、今回、このコードの案というのは、我々監査法人側がやるべきこととしていろいろ議論をさせていただきました。これを実効性あるものにしていくためには、企業側、上場会社4,000社近くありますけれども、企業側もこの監査法人のガバナンス体制を見て監査人を選ぶというカルチャーをより広めていく方向にしていかないといけないなと感じております。
 これには理由があって、私が実務をやっている中で、昨今、大手監査法人から中小監査法人に上場会社の監査人の変更が確かに多くあります。我々はガバナンス・コードを受け入れておりますので、ここに書いてあるような開示すべき項目の資料を作って後任監査法人を探している企業に持っていって説明をするのですが、監査報酬というところに着目して選ばれているなというところだとか、監査しやすいというか、監査が通りやすいというところを見ているのではないのかなと感じる場面が少なくないです。やはりここは、上場会社の中でもレベル感は様々あるとは思いますが、我々監査法人側もこうやってレベルアップしていくので、それを受ける側の企業側にも、お互いに周知し合えるといいのかなと個人的に思っております。
 その上で、このガバナンス・コード案の細かい点ですけれども、幾つか質問させてください。指針1-5、ページ数で言うと4ページ目のところですかね。今回のガバナンス・コード案で新しく書いているところかと思いますけれども、利益相反や独立性の懸念についてというものがここで2つの要素にわたって記載があるかと思いますが、先ほど栗原メンバーから非監査業務と監査業務という観点からの独立性だとか財務基盤の確立というお話をいただきましたが、今回、倫理規則の改訂があって、報酬依存度の観点から監査業務の中でも15%基準というものが大きく取り上げられている中で、利益相反や独立性の懸念に対してというのは、非監査業務の位置づけについての考え方に加えて、この15%基準というものが比較的中小監査法人の場合には課題になるところが多いかと思います。
 今回の案の指針1-5で記載されている利益相反や独立性の懸念というものが、「監査法人の報酬依存度」に対してもかかっているのかというのが、これはこの原則1の「考え方」、3ページ目のところを読んでも、どこの考え方のところから出てくるのかがちょっと分かりづらいので、これを作る過程で、どういう趣旨で「利益相反や独立性に対する懸念」を入れられているのかなという点を質問させてください。
 これは5番のところでも、財務基盤というところで、ディスクローズする項目にはなっておりますけれども、ディスクローズの前段階のガバナンス・コードとして、どこに考え方があって、どこに指針があるのかというところを質問したいと思っております。
 2点目が、IT関係の記述についてです。今回のこの改訂に当たって重要性も高まってきているので、クローズアップされてきていると思いますし、5の開示のところでもITに関する記述があるのですが、原則の3の、外部の監督・評価機関というところで、監督・評価機関のする仕事、役割として指針3-3があると思いますが、この中に、特段このIT関係のものが入っていない趣旨というのはあるのかというところがちょっと疑問に感じて、質問させていただきます。
 この原則3の前提として、ここはちょっと温度感の違いがメンバー間でもあるのかなと思っておりますけれども、監督・評価してもらうというよりも、第三者の知見を活用していきたいという視点が僕は個人的に強いので、そういう観点から、ITというのは、公認会計士の試験科目としてITだけというのはない中で、我々も今課題として認識して、ITを勉強していかなければならないと思います。ITをどこまで監査の中に取り込むか、非常に大きな課題だと思うのですけれども、その観点から、この3の中の指針にもアドバイスというか、知見を活用していきたいなという個人的な思いがあるので、そこが入ってない何か趣旨があれば、教えていただきたいなと思っております。
 あと、5番の1にある、ページ数で言うと11ページ目のところに「透明性報告書」という用語が出てくるのですが、これはこの原則を当初作ったときとまた時間も経っていて、この名前がどこから取られてきていて、一般的な名前なのかどうかが私は分からなかったので、その点も質問させていただきます。
 以上です。よろしくお願いします。
 
【八田座長】  
 どうもありがとうございます。それでは、幾つかの御指摘、御質問について、可能な範囲でお答え願います。
 
【齊藤開示業務室長】  
 ありがとうございます。まずは、非監査業務、それから利益相反・独立性の懸念というところでございます。
 非監査業務に関係する部分については、いろいろな幅広い論点が伝統的にあったかと思います。これらの幅広いものについてまさに踏まえて、元々もガバナンス・コードが2017年につくられて、指針1-5にも既に非監査業務の位置づけについての考え方というのが入っていたということかと思います。それに利益相反や独立性への懸念に対しというのを付け加えさせていただいているわけですけれども、恐らく、この利益相反や独立性の懸念、非監査業務をやられていれば、当然、入ってくる論点だと思いますので、このようなものを、最近の非監査業務についての重要性というのも踏まえて、国際的な業務というものも踏まえて、このように入れさせていただいているわけでございます。
 一方で、このような利益相反や独立性という守りの部分だけでどうなのかという、その前提として、そもそも法人様として、非監査業務というものをどのように捉えられているのか、どれぐらい監査業務との位置づけとして、両輪としてやっていくのか、それとも、監査のほうを中心でやって、非監査業務というのは付随するものとしてやられるのかとか、それによって非監査業務をやられる人員、または、監査業務をやられる人員の確保といったことが状況によって出てくるでしょうから、そういうところも含めて、まずは、この非監査業務の位置づけについての考え方があって、それに加えて利益相反や独立性の懸念という、そういう形にさせていただいているということで。
 そういう意味で申し上げますと、利益相反や独立性の懸念はもちろんございますけれども、その前には、そもそも非監査業務というものを監査法人としてどのように捉えてやっていくのかという大きな考え方も明らかにすべきで、そこから利益相反や独立性の懸念というものをどのように考えるのかというのは、まさに非監査業務をどれくらいのこととして法人として捉えているかというところにも依存するのかなということで、このような形をさせていただいております。
 それから、独立性を有する第三者の方に期待するものについてでございますけれども、役割として、もちろん原則3のところは、経営機能という観点から書かせていただいているところでございます。経営機能の観点でございますので、非常に大局的な項目というのが入っているというところでございます。
 ですので、例えばITとか、または国際対応とかを含めてですけれども、そうした業務についてまでの、そこまでの経営、ガバナンスの利かせ方とか、そういうところまでは書いてないということでございますが、ただ、この経営機能という観点からの業務レベルについてのガバナンスの利かせ方というところについては、それぞれの法人様によってそういうところが必要であるとか、まちまちと思いますので、独立性を有する第三者の方の経営機能のところで発揮していただくというのがあるのかなとお話をお伺いして思いました。
 また、業務運営のところで、経営機能として第三者の方に入っていただくわけではないけれども、業務運営のところでアドバイスをいただく方として独立第三者を入れていくというところも、まさに監査法人様の創意工夫としてやっていかれるというところで、積極的に開示していただければ、法人様としてのアピールになるのかなというところでございます。
 それから、最後、透明性の報告書、ここは一例でございます。こちらは、今となっては、大手の監査法人様がこのような形で開示されているというところでございますけれども、今後は、特に中小の監査法人様は、日本公認会計士協会様のほうでも音頭を取っていただいて、開示の文書についてはまとめていただくというところがあろうかと思いますので、そういうのも踏まえると、別に透明性報告書という名前にしなければいけないとか、そういうことではないかなというふうに考えております。
 以上でございます。
 
【八田座長】  
 どうもありがとうございます。
 先ほどの4ページの利益相反や独立性の懸念という言葉ですけれども、私は事前にこのドラフトを見たときに、今、日本公認会計士協会のほうでも精力的に行われている、国際的な対応の一環として、倫理基準の大改訂があります。旧来の倫理基準よりもかなり厳格な独立性、そして、利益相反等に対する懸念というのが詳細に記されていますから、そういったことも度外視しては駄目だといった意識がここにあるのかなと思います。
 世の中の動きも大きく変革していますが、経験豊かな会計士の先生方はあまり新しい基準をお読みにならないということもありますから、法人としても、こういったものについても常にどう対応していくのか考えていただきたいということだと私は理解しておりました。ちょっと補足させていただきました。
 それでは、茂木メンバー、お願いいたします。
 
【茂木メンバー】  
 茂木でございます。ありがとうございます。
 まず、今回の改正につきましては、過去の適用経験を踏まえましての内容の拡充と、中小監査法人が採用しやすい工夫という2つの大きな課題がございまして、非常に難しい検討作業だったと思っております。八田座長はじめメンバー、また、事務局の皆様の御尽力によりまして、バランスの取れた改正案になったと思っておりまして、感謝申し上げます。
 また、この場でいただきましたそれ以外の御意見につきましても、大変貴重な御意見として頂戴しておりますので、今後の取組みに生かしてまいりたいと考えております。
 今回、適用対象となる監査法人が拡大し、規模・性格等が異なる様々な監査法人が採用することになっております。その意味でコンプライ・オアエクスプレインを徹底していく、その中では、エクスプレインしている場合のその理由、代替的に採用する方法の丁寧な説明、こういったものを含めて非常に重要になるというふうに考えております。
 また、この点につきましては、コンプライなのかエクスプレインなのかということだけでなく、ぜひその中身に着目した上で、市場関係者の方々にも監査法人との対話を進めていただければというふうに考えております。
 その上で、2点ほど、細かい点になりますけれども、お話をさせていただければと思います。
 1点目は、3ページになりますけれども、原則1の考え方の中でございます。こちらの内容につきましては、ちょうど、この「さらに」という赤字で始まっているところのちょっと上、前から残っている部分なのかなと思いますが、「さらに」の上3行目です。「また、その際には、被監査会社から報酬を得て行うとの会計監査の構造に起因して、法人の構成員による職業的懐疑心の発揮が十分に行われないということにならないよう留意すべきである」という点ですが、若干表現的にネガティブな書き方になっているかなというふうに感じているところがございまして、この機会にポジティブな表現に変えていただけるとありがたいかなと思います。
 また、被監査会社から報酬を得て行うとの会計監査の構造ということを原因として書かせると、本来的に取り組むべき法人の構成員による職業的懐疑心の発揮をどのように十分に行っていくか、このことにターゲットが行きづらくなるかなというふうに考えますので、その点について、書きぶりの見直し等を御検討いただければありがたいなと思います。
 それから、2点目でございますけれども、12ページから13ページにかけて指針5-3というものがございます。この指針5-3の4つ目のポチに、グローバルネットワークやグループとの契約概要等というものがございます。この契約概要の部分については、現在、この指針5-3のその上3つに書かれている項目でかなり多くの部分をカバーしているのではないかなというふうに思いますけれども、これに加えてさらに開示すべきと考える項目を各監査事務所が考え、必要と考える範囲で、これを追加するという意味で4番目のこの契約概要等というのが入っているということであるとすれば、この監査品質の確保と持続的向上に重要な影響を及ぼすものを開示するという観点から、開示する監査法人にとってそれが判断しやすい文言をちょっと検討していただけるとありがたいと思っております。
 私からは以上でございます。ありがとうございます。
 
【八田座長】  
 どうもありがとうございました。
 最初のところですけれども、事前の当局との打合せ、ないしは意見交換の中で、日本公認会計士協会様がお出しになってきた提言に、私ももし変えられるなら変えたほうがいいのではないかということをコメントさせていただいた経緯があります。というのも、今、茂木メンバーがおっしゃったように、被監査会社から監査報酬をもらっているから、監査人の独立性が喪失する、といったことを言い出すと、制度上取り留めがつかない状況になってきてしまう。
 それを前提として、それに対してどういう信頼し得る品質向上のための取組みが監査にとって必要なのかということですから、この文章がそのままでいいのか分かりませんけれども、この際、これは前のときに残っていた文章ですけれども、これに手を入れることに対しては賛同させていただきます。
 事務局のほうで何かありますでしょうか。
 
【齊藤開示業務室長】  
 ありがとうございます。このような方向性で、事務局としても文言を入れていきたいというふうに考えております。一方で、表現ぶりとして、ほかの部分との表現の平仄のところは、気をつけて見させていただきたいなというふうに思っております。
 ここで御紹介申し上げるのも何なのでございますけれども、例えば、「人材育成・評価制度の構築や人員配置等」という言葉を御提案いただいていますけれども、このコードの中の文章では、ここら辺は、「人材育成の環境や」とか「人事管理・評価等に係る体制の整備」という言葉遣いをさせていただきますので、そちらの表現に平仄を合わさせていただいた上で、入れさせていただければというふうに考えております。
 
【八田座長】  
 どうもありがとうございます。ほかに御意見、御質問ございますでしょうか。一通り今日御参集のメンバーの方々には大変貴重なコメントをいただきましたので、今後、まだ見直すところがあるのかもしれませんけれども、残された時間が少しだけまだありますので、もし追加質問、あるいは、追加御発言がおありの方は挙手をお願いします。それでは、石原メンバー、お願いします。
 
【石原メンバー】  
 石原です。ありがとうございます。最初の発言の際も申し上げましたが、日本公認会計士協会からのプレゼンテーションに関して、今後、レビューのスコープが大きく広がる中で、従来の品質管理レビューが準拠すべき基準はあると思いますが、新たにレビューの対象になる部分については、判断基準は無いものと想像します。したがって、一定の判断基準をこれから作っていくということになると考えますがいかがでしょうか。
 例えば、経営機関、あるいはその代替としての実効的な経営機能の確保、また、評価・監督機関についても、その実効的な機能の確保であるとか、先ほど会議に参加という例示の記載は不要ではないかと申し上げましたけれども、そういうことも含めて、一定の判断基準を作っていかないと評価が難しいと思うのですが、今後そのように検討を進められると思っておいてよいのでしょうか。その点にについて質問です。
 以上です。
 
【八田座長】  
 どうもありがとうございます。それでは、JICPAの、茂木メンバー、ないしは、今日オブザーバーで参加の小倉先生、どちらでも結構ですけれどもご回答お願いします。
 
【小倉様】  
 石原メンバー、御質問ありがとうございます。まさに御指摘いただいたとおり、これまでの品質管理レビューからはるかに大きな対象となるということで、スライドのほう、5ページ目でしょうか、投影していただいたとおり、はるかに大きくなってきます。
 そういう中で、これまでの品質管理レビューでは、監査事務所の品質管理体制も見ていたのですけれども、主は監査業務の監査基準への準拠性を見ていたというところが非常に大きかったです。これについて今般の公認会計士法改正で、監査法人のガバナンス・コードに沿って業務を実施する体制やコードの適用状況を公表する体制を整備しているかどうかということも見ていくことになります。
 まずは、日本公認会計士協会として考えているのは、ガバナンス・コードについて適用状況を公表する体制というところは、公表しているかどうかという問題ですので、ここのところは見ていけるでしょう。
 では、次に、石原メンバーのおっしゃるとおり、コンプライ・オア・エクスプレインが実効的に監査法人の状況によってきちっと判断された上で適用されているのかどうか、その辺りをどうやって見ていくのかについては、先ほどの工程表にありましたとおり、今から実際の公認会計士法の本番適用まで少し時間がありますので、その中で、レビューの手続のところ、適格性の確認の具体的な手続については策定してまいりたいと考えております。
 市場関係者の皆様がすぐに御納得いただけるようなところに行かないこともあるかと思いますが、継続的に品質向上を行っていくという考えの下に、徐々に高度な規律ということで体制の整備を行っていきたいと考えております。
 今回、適格性の確認は日本公認会計士協会が行うことになりまして、これはこれまで当協会が自主規制として上場会社監査事務所登録制度を運用してきた知見やノウハウを活用することや、中小監査法人について十分な能力・体制を整えられるように、当協会において育成支援策を併せて講じることが有効であるという考えの下に、当協会が適格性を確認することになったと理解しておりますので、そのような法改正の考え方も踏まえて、レビュー、適格性の確認手続を策定してまいりたいと考えております。
 以上、御回答になっておりますでしょうか。
 
【石原メンバー】  
 ありがとうございます。そこが一番今回の制度改訂で実効性を担保するため肝になる部分だと思っていますので、ぜひ実態を踏まえて適切な判断基準に基づいて評価されるようよろしくお願いいたします。
 以上です。ありがとうございました。
 
【八田座長】  
 どうもありがとうございます。
 先ほど個人的な質問も述べさせていただきましたが、少しだけ時間がありますので、日本公認会計士協会様のお出しになったプレゼンテーション資料の6枚目で、今後設置が予定されている上場会社等監査人登録審査会の設置に関して、現行と新案ということでまとめられています。特に自主規制を標榜しなくても、独立の機関として、あるいは、透明性ある形の機関ないしは委員会が機能するためには、何といってもやはりメンバー構成、構成員が一番重要な意味を持ってくると私は思っております。
 したがいまして、単に会員と非会員という形式的な基準ではなくて、どういう属性の人がふさわしいのか。例えば、経済界から、あるいはアカデミアから、それから実務家、第一線の監査人とか、そういったことをちゃんとお考えになってはいると思いますが、第三者に対して、あるいは、市場に対して説明責任を果たせるような、そういう組織にしていただきたいと思います。
 その際、会員か非会員か、登録しているかしていないかということ、それはイコール現業作業に関わっている関わってないかということなのかもしれませんけれども、今、私が知る限り、経験豊かな公認会計士の先生方は、大手法人をリタイアして、資格の登録は残しているけれども、もう監査業務とか現場作業をしてなくて、多くの場合には、社外の立場で大所高所から御意見を言われる。こういった方がおられますから、この会員・非会員という属性で分けるのが果たしてふさわしいのかどうか、ちょっと私は考えていただいたほうがいいのかなという気がします。
 これは座長の立場ではなくて個人的な見解ですが、組織というのはどういうメンバーなのかということでほとんど決まってしまうのではないかと、そんな感想を持っていますので、ぜひ今後考えていただければと思います。
 ほかによろしいでしょうか。事務局のほうから何か追加の御発言、よろしいでしょうか。ほかに御意見等はよろしいでしょうか。ありがとうございます。栗原メンバー、よろしくお願いします。
 
【栗原メンバー】  
 ありがとうございます。今回の日本公認会計士協会様による対応については、その方向でと思いますが、八田座長のお話に加えまして、レビュアーのリソースのところも大変重要かなと思います。先ほどのご説明では、現在38名ということでしたけれども、今後は人数を増やすという量的な側面に加え、見る対象が組織のガバナンスであるとか経営戦略であるという点も含めますと、レビュアーの質も多様化しなければいけないと思いますので、この点についてもぜひ充実させていただきたく思います。
 
【八田座長】  
 どうもありがとうございました。大変重要な御意見で、何といってもリソース、それを支えているのは人ですから、ふさわしい人材がうまく、ただ、その場合、先立つ財源というのもありますので、どのように御対応いただくかお考えいただければと思います。
 それでは、私といたしましては、本日お示ししました改訂案につきまして、概ね御賛同いただいたものと思います。つきましては、本日いただきました御意見を踏まえ、事務局を通じて各メンバーの方々と必要な調整を行ってもらいながら、本日の案文に一部表現等の修正もあるかもしれませんが、所要の修正をさせていただいた上で、本検討会としての改訂案とさせていただきたいと思いますが、メンバーの方々、よろしいいでしょうか。ありがとうございます。
 先ほど申し上げたとおり、事務局を通じて必要な調整をさせていただきますが、最終的な修正や改訂案の公表時期や方法につきましては、私に御一任いただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
 
【八田座長】  
 大変ありがとうございます。
 改訂案の今後の取扱いなど連絡事項があれば、事務局からお願いいたします。
 
【齊藤開示業務室長】  
 八田座長、ありがとうございます。
 改訂案をいただきまして、金融庁のほうで、概ね1か月間のパブリック・コメントの手続を行わせていただきたいと思います。
 以上でございます。
 
【八田座長】  
 どうもありがとうございました。
 当検討会での議論は、本日で一区切りになります。メンバーの皆様方には大変御多忙のところ、精力的な御議論を賜りまして、誠にありがとうございました。これにて閉会いたします。皆さん方、よきお年をお迎えください。ありがとうございます。

―― 了 ――

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