「インパクト投資等に関する検討会」(第1回)議事録
1.日時: 令和4年10月28日(金曜日)14時30分~16時30分
【柳川座長】 ただいまよりインパクト投資等に関する検討会、初回の会合を開催いたします。
座長を務めることになりました東京大学の柳川でございます。
皆様、御多忙のところ、御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
御挨拶というよりは注意事項なんですけれども、初めにオンラインで御参加いただいている方向けの注意事項ですが、御発言されない間は必ずミュート設定にしていただければと思います。御発言される際にはミュートを解除し、御発言が終わられましたら再びミュート設定にしていただくようお願いいたします。
鈴木政務官にお出でいただいておりますので、御挨拶をいただきたいと思います。御挨拶の際にはカメラ撮影を行う予定でございますので、よろしくお願いいたします。
それでは、鈴木政務官、よろしくお願いいたします。
【鈴木大臣政務官】 ただいま柳川座長から御紹介を賜りました金融担当の大臣政務官の鈴木英敬でございます。
今日は、メンバー、またオブザーバーの皆様にも、大変お忙しい中、御参加を賜りまして、心から感謝を申し上げたいと思います。
検討会の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げたいと思います。政府は、昨年取り纏めました「新しい資本主義のグランドデザイン」におきまして、企業が短期的収益のみを追求するのではなく、社会・環境面での責任を果たすことにより、事業の持続的成長を促し、そして、社会的課題を解決する経済社会システムを構築することを掲げております。
金融庁はこれまでも持続可能な社会の実現に向けた「サステナブルファイナンス」の推進に関する様々な取組を行ってまいりました。中でもインパクト投資につきましては、2020年6月よりGSG国内諮問委員会様と共催で勉強会を立ち上げ、知見の共有を図って参りましたが、更なる裾野の拡大を目指しまして、この度、新たに検討会を立ち上げることとなりました。
皆様に御議論いただきますインパクト投資は、経済的リターンを確保しつつ、社会・環境面からの課題にも応え、結果として、スタートアップを含む事業の創出につなげていく新たな投資の在り方として、日本政府が目指す経済社会システムを実現する重要な推進力となることが期待されています。
皆様には、本日から来年前半にかけまして、国内外でのインパクト投資の動向を踏まえつつ、インパクト投資の基本的な考え方や推進の具体策につきまして御議論いただければと存じます。
私自身は、この国会議員になる前は三重県知事を10年やっていました。その中で2016年にはG7伊勢志摩サミットが開催され、そこでは初めてG7首脳として、SDGsの実施、あるいはパリ協定の発行、これにコミットして、世界に発信をしました。そういう場に私も居合わせたということもありますし、また三重県の取組として、特に若者を巻き込んでの取組で、2020年には「SDGs未来都市」にも選定をされております。
こうした取組を通じて、官民の垣根を越えて、社会課題の解決のためにしっかりと議論していくこと、また資金の動員が不可欠であるということも実感しております。
また、議員としましては一貫してスタートアップの支援をライフワークとして取り組んでまいりました。世界の動向を踏まえれば、我が国でもインパクトスタートアップの割合が増加していくことは間違いありませんし、それらが持続可能な事業活動を行っていくためにもインパクト投資などの資金供給が極めて重要であると思っております。
以上、私自身も熱い思いを持って取り組んでいきたいと思いますし、金融庁も建設的に前向きに取り組んでまいりますので、どうかメンバー、オブザーバーの皆様におかれましても、持続的な発展を促していくために極めて重要な取組でありますので、幅広く活発な御審議を賜りますようお願い申し上げまして私からの挨拶といたします。よろしくお願いします。
【柳川座長】 鈴木政務官、ありがとうございました。
カメラ撮影はここまでとさせていただきます。
また、鈴木政務官はこの後御政務がおありとのことですので、ここで御退席されます。
【鈴木大臣政務官】 ありがとうございました。国会の委員会のために失礼します。どうぞよろしくお願いします。
【柳川座長】 それでは、早速議事に移らせていただきます。
最初に事務局の金融庁から御挨拶と資料について事前にお送りしているものでありますが、簡単に御説明お願いいたします。
【西田サステナブルファイナンス推進室長】 それでは、金融庁から資料に沿って御説明させていただきますが、それに先立ちまして、事務局より簡単に御挨拶をさせていただければと思います。
【堀本政策立案総括官】 金融庁で政策立案総括官を務めさせていただいております堀本でございます。よろしくお願いします。
このインパクト投資に関する検討会ということで、我が国の投資収益の確保にとどまらず、社会課題解決を目指すインパクト投資ということでございます。こうした投資、我々としては、ぜひ裾野を広げていって、なるべく多くの投資家の方々がこの分野に入ってくるということを目指して様々な検討していきたいと考えております。
後ほど説明があると思いますが、我が国にとってこの分野の投資というのは、増加傾向、続けておりますけど、まだまだ成長の可能性はあるという分野でございます。
これを実際に促進していく、ある意味では仕組みというか、エコシステムというのがまだこれからであろうと問題意識を持っていますので、そういった具体的な新しい投資、あるいは新しい事業の創出というものにつなげていくような具体的な改善というのを一個一個進めていきたいと思っております。
そういう観点から、この検討会でぜひ様々な議論を出していただいて、しっかりと検討を進めていきたいと考えております。よろしくお願いいたします。
【高田総合政策課長】 総合政策課長の高田英樹と申します。よろしくお願いいたします。
この検討会の趣旨につきましては、今、鈴木政務官及び堀本総括官から挨拶申し上げましたので、私からは割愛いたしますけれども、まさに重要なテーマであると考えておりますので、どうぞ忌憚のない御議論をよろしくお願いいたします。
【西田サステナブルファイナンス推進室長】 それでは、簡単にですが、お手元の資料に沿って御説明させていただければと思います。
本日ハイブリッドで開催してございますので、御発言がある場合にはミュートをオフにしていただきまして、御発言が終わりましたらミュートにしていただければと思います。
また会場で御参加をいただいていらっしゃる皆様におかれましては、直接大きな画面上にマイクがついておりますので、お手元にマイクありますけれども、こちらオンにしていただかなくて、そのまま音声通じますので、特にマイクに触っていただかずに御発言いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
画面にも投影させていただいている資料に従いまして、ごく簡単に御説明をさせていただければと思います。
1ページをお開きいただきまして、本検討会、インパク投資等に関する検討会の趣旨を簡単に記載させていただいております。投資収益の確保にとどまらず、社会的課題の解決を目指すインパクト投資、としておりまして、社会的課題の重要性が非常に高まっているという中で推進の意義が指摘されていると思います。先ほど鈴木政務官からお話ありましたけども、金融庁においてもこれまで勉強会の開催など取組みを進めてきたところです。
足元では、我が国のインパクト投資の残高、資料の左下でございますけれども、これはいろんな推計方法があると承知していますけれども、傾向としては増加にありますけれども、他の先進国と比べますと投資規模はまだ小さいと。また、市場参加者も我が国での成長可能性を感じているということで、右下にアンケートございますけれども、GSG国内委員会のアンケートによりますと、金融機関や機関投資家の方に対して行ったアンケート、インパクト投資の現況をどう認識されていますかという質問で、「これから成長していく段階」というのが、日本で70%、対して世界では69%が「順調に成長している」ということで、今後の成長可能性、投資拡大を図る余地があるのではないかと。
こうしたインパクト投資の拡大を図ることで、各投資が企図する社会・環境課題の解決に貢献するとともに、結果として、スタートアップを含む新たな事業の創出につなげていくことが重要ではないかということで、金融庁サステナブルファイナンス有識者会議の下に、投資家、金融機関、企業、学識経験者の方から構成される本検討会を設置いたしまして、インパクト投資の拡大に向けたご議論をいただければと考えているところです。
2ページ目、検討内容のあくまでイメージ、たたき台ですけれども、投資収益と社会的効果の関係性について、左上にありますけれども、なかなか必ずしも十分に理解されていないのではないかという点がございます。インパクトによって社会的効果を実現するとともに、投資でありますので、収益を当然確保していくことだと思いますけれども、この関係性をどういうふうに理解していけばいいのか、関係者でもいろんな理解がありまして、この理解について、例えば左下①にありますとおり、インパクト投資の基本的な考え方や類型ということを整理することによって投資を促すことができるのではないかと。
また、その考え方にも沿いながら、②とありますけども、社会的効果と事業の創出を実現し得るインパクト投資の代表的な分野や先行事例ということを整理することができないか。
また、右下ですけれども、実務的な知見との観点から、まだまだ今後成長していくエリアだということもありまして、投資に関する実務的な知見がまだまだであって、企業にとっても、自らの事業のインパクトを実際に測定し投資家に示すというノウハウは必ずしも十分ではないのではないかというような御指摘もあるかと理解しておりまして、この点につきましても、③として、対象事業の選定や社会的効果の計測、それから資金調達の際の開示など、インパクト投資に関する実務的な指針を整理することが出来ないか。
また、さらに、こうしたものを通じながら、実務上の様々な、また実際の知見を蓄積するような仕組みということを検討することができないか。
また、それ以外に、さらに対応を進められるようなことを共有でできないか、こういったことを本検討会で御議論をいただきまして、インパクト投資を拡大し、社会的課題・環境的課題の解決に資するとともに、新たな事業の創出につなげていくことができるのではないか、こういうことで、基本的な考え方ということで記載をさせていただいております。
3ページは、政府全体の中でのこれをどう位置づけるのかということですけれども、6月に閣議決定されました新しい資本主義会議の下での新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画、その中でも、官民ファンド等によるインパクト投資の推進ということが記載をされております。
次、4ページですけれども、骨太の方針の中でも、新しい資本主義の社会課題の解決に向けた取組という中で、従来のリスク・リターンに加えて、インパクトを測定しまして、課題解決の資本主義におけるもう一つの評価尺度としていく必要があると。
また、社会課題の解決と経済成長の両立を目指す起業家が増えており、こうしたものを後押ししていくことが重要ではないかということで、様々な施策が掲げられておりまして、本日も委員の皆様にもこうした新しい資本主義や経済財政諮問会議などで御議論にご参画いただいているところでもありますけれども、政府全体の中でもこうした文脈の中で位置づけ得るものではないかと考えているところです。
その上で、5ページ目以降は、御議論の素材としまして、足元の現状などについてまとめておりますので、ご紹介をさせていただければと思います。
5ページはグローバルの投資規模です。これは先ほど申し上げたように、かなり様々な推計の手法があると承知しておりますけれども、左に見ていただきますように、1兆ドルまたは2兆ドル強というところでございます。
民間資金だけを含むものもあれば、公的資金も含めてインパクト投資の範囲として含めていくもの。また、測定されたインパクト投資ということで、インパクトが測定されているものだけを測定するもの。それから、広義ということで、インパクトを企図するもの、意図するものを幅広く集めるものまで、定義の仕方も様々だと思いますけれども、相応の規模があるとしております。
一番上の箱のところにありますけれども、国連の推計によりますと、SDGsを2030年に達成するために、世界で年間5~7兆ドルの資金が必要と試算されておりますので、今後も全体的なニーズは高いのかなと思います。
6ページは日本の状況ですけれども、GSG国内諮問委員会が行われました報告書、アンケートを通じた報告書を抜粋させていただいております。
580の金融機関等にアンケートが行われまして、77の機関から御回答があったというものですけれども、左下見ていただきますと、アンケート調査による足元のインパクト投資の残高ということで、1兆3,200億円程度ということになっております。
右上見ていただきますと、インパクト投資をやっているということでお答えになった母数の組織を見ていただきますと、金融機関から運用機関、ベンチャーキャピタル、財団ということで、様々な方がいらっしゃると思います。
概念図としてまとめたのが7ページですけれども、インパクト投資の流れということで、伝統的な機関投資家、金融機関に加えて、例えば左上のように財団であるとか、財団が持っているような基金、それからコーポレートベンチャーキャピタル、こういった方も参加されていると理解しております。
投資についても、ファンドを通じたもの、それから直接株式を購入するもの、それも上場、非上場、それからボンド、ローンということで、かなり様々な、金融のスタイルが、投資のアセットクラスがあると理解しております。8ページ以降になりますけれども、投資家の種別でございます。これはグローバルに見たものですけれども、ファンドを通じたものということで、ファンドマネジャーが投資しているというものが63%、それから基金が11%ということで、様々な方がいらっしゃいますけれども、ファンドを通じたものが多いということ。
それから投資の収益の目標水準になりますと、赤い線の部分ですけれども、一番濃いものがマーケットレートリターンを狙っているというもの、そして一番色が薄いものが、市場のリターンよりは相応に小さくてもよいということで目標を掲げているもので、例えば年金基金で見ますと市場水準の収益を目指す先が100%となっているのに対して、右から2つ目の基金ですと、これが33%で、市場未満の収益を目指す先が40%ということで、投資の主体によって投資収益の目標も様々ではありますけれども、全体で見ますと、右下にありますとおり、67%の方が投資収益は市場並みのものを狙って投資を行っているということがグローバルに報告されております。
地域で見ますと、9ページになりますけれども、東アジアに投資をされているという方もいらっしゃる一方で、東アジアに根拠を置いてインパクト投資を行っているというような方は少ない。左上にありますが、4%となっていまして、まだ拡大の余地があるのではないかなということが見てとれるかなと思います。
それから10ページはアセットクラスになりまして、先ほど申し上げましたプライベートデッド、エクイティ、それから上場しているものなど、不動産を含めて、かなり散っていることが見ていただけるかなと思います。
11ページは実現の収益率を見たものでありまして、実績が下にありますけれども、未公開市場での投資開始時から実現した平均収益率を見まして、それぞれの区分ごとに応じて、一方が目標で、他方が実際に実現されたものということで、いずれも市場全体と比べてあまり変わらない水準が実現しているとの調査となっています。
それから12ページ、対象の企業です。これは下がグローバルとの比較で、上が日本ですけれども、残高ベースで見ますと、シードからアーリー、グロース、レイターとあり、レイターを2つに分けて非上場、上場となっておりますけれども、日本で見ますと、インパクト投資の残高で見ますと、上場企業のレイターのステージに今多くある、この調査ではそういう結果になっております。他方これをグローバルのGIINというネットワークがありまして、そこの調査と比較したものが下でございますけれども、オレンジがグローバルの結果になりまして、シード、アーリー、グロースというところの黄色の部分に、日本と比べると、相対的に見まして投資がより向いているという傾向が見てとれるかなと思います。
それから業種ですけれども、こちらもグローバルが13ページ、日本が14ページというふうに記載をさせていただいております。これも単純に比較できるものではないかと思いますけれども、エネルギー分野、金融、それから森林というのがグローバルには上位3分野になっておりますけれども、日本では健康・医療、女性の活躍、教育・子育てというものが3分野になっております。
15ページはこうしたファクトを踏まえまして、今足元でどのようなインパクト投資についての取組が見られつつあるのかということをまとめさせていただいております。2007年にロックフェラー財団がインパクト投資の推進ということを推奨されまして、その後、インパクト投資に参画する投資家や財団がどんどんと増えてきて、それぞれにインパクト投資の意義であるとか考え方をまとめておられると承知しておりまして、幾つかのものをこちらに記載をさせていただいております。
下線を表のところ引かせていただいておりますけれども、例えばロックフェラー財団ですと、経済的利益と一緒に、社会的・環境上の便益を届けること、こういう表現です。
それから、上から2つ目、GIINの定義ですと、金銭的なリターンをもたらすとともに、社会的及び環境的なインパクトを生み出すもの。
それから、その下になりますと、社会的・環境的利益につながる事業に積極的に資金を投入し、これによって市場以上の幅広いリターンを提供するということで、収益を獲得するきっかけとしてインパクトを捉えておられるとも理解できるものがあります。全体としまして、収益性とインパクト、双方を狙っていくというものであることについては一定程度共通している一方、そのバランスでありますとか考え方や定義というものは一般的には様々かなと見てとれるかなと思ってございます。
16ページは、インパクト投資というものを進めていくためにこれまでに発表されております、代表的な原則とか指針というものを掲げさせていただいております。
ポジティブインパクト宣言、それからIFCによるインパクト投資の運用原則、日本においても環境省においてインパクトファイナンスの基本的な考え方、それから勉強会を金融庁で一緒にさせていただいておりますSIIFさんによりますインパクト志向金融宣言、それぞれ右側にありますけれども、署名金融機関、署名投資家というものも一定数いらっしゃいます。
17ページですけれども、インパクト投資になぜ取り組むかと伺った結果ですけれども、日本ですと、これもアンケートですけれども、顧客の要望に応えることにつながるからということが83%となってございます。
対してグローバルですと、投資でインパクトを追求することは当社のミッションの中心にあるということの答えが87%ということです。気候変動やジェンダーなど、サステナビリティの課題の重要性が高まる中で、投資家としてのコミットメントとかミッションの一環で行っているということについては共通しているかなと思いますけれども、自社のミッションに照らしてという答えが相対的にグローバルのほうは多いですけれども、顧客の要望という回答が日本では多いなと思います。
課題について伺いましたのが18ページです。左は、海外の書籍から取ったものですけれども、インパクト投資を行わない10の理由というものが整理されておりまして、水色のものがリターンに関するもの、リスクがやや高い、それからリスクと比較してリターンが必ずしも十分ではないというのが⑤、⑩。それから、緑色が、案件の不足であるとか、実際の規模とか案件に係るものですけれども、平均的な案件規模が小さいとか、また、標準化された商品が少ないもの、そういったこともある。または全般論としまして、⑥にありますとおり、受託者責任に反するのではないかという可能性を考えられているというようなお声もあったということでございます。
GIINによるアンケートが右側ですけれども、真ん中にありますが、実績のある質の高い投資機会というもので回答を行われた方が42%、それから投資や投資先のニーズに対応した革新的なディールとかファンドの構造というのが重要じゃないかということ。それから一番上ですけれども、リスク・リターンの範囲に応じた適切な資本ということで、こちらもリスク・リターンであるとか、例えば案件について、より取り組む余地があるんじゃないかというようなアンケート結果もいただいているかなというふうに見てとれます。
最後に、本日御議論いただきたい点をまとめております。15ページにありますとおり、国際的に見まして、投資収益を確保しつつ、社会・環境的な改善効果を実現するための金融手法としてインパクト投資を行う投資家が見られておりますけれども、人口減少などの多くの社会的課題の重要性が高まる我が国においても、インパクト投資が投資対象の裾野を広げて、投資等が企図する社会・環境課題の解決に資する意義があると考えられるが、どうか。
また、社会・環境的効果の実現を図る分野は創業企業も多く存在すると思われますけれども、また、国際的にも、先ほど申し上げましたとおり、シード期の企業への投資というものもかなり見られておりますけれども、我が国でも同様にスタートアップを含む新たな事業の創出につなげていく可能性があるのではないか。
また、インパクト投資について、投資家も含む対象の事業や業種、アセットクラスなど、今挙げましたとおり非常に様々でありますけれども、投資収益とインパクトをどう位置づけるかと、基本的な考え方についても幅があるかなと思っています。こうしたインパクト投資の現状とか意義に照らしまして、投資収益とインパクトの関係性を含む多様なインパクト投資をどのように捉えて拡大を推進していくことができるのかということについてぜひ御意見をいただければ幸いでございます。
また、その他になりますけれども、他の投資と比べて特にインパクトについて何か留意するべき点はあるのか。
また、その他、本検討会として議論を進めていくに当たり留意すべき点があるかということについて御意見をいただければなと思います。
ちょうど時間となりましたので、事務局からは以上とさせていただき、御意見をいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。
【柳川座長】 ありがとうございました。事務局からの御説明の冒頭にもございましたが、金融庁は2020年よりGSG国内諮問委員会とインパクト投資に関する勉強会を共催しております。本日は同勉強会の事務局である社会変革推進財団の安間委員より、これまでの勉強会の議論について御紹介いただきたく思います。安間委員、よろしくお願いいたします。
【安間メンバー】 ありがとうございます。私、社会変革推進財団でアドバイザーをしております安間といいます。本日はこの勉強会の共済事務局の統括をしております立場からこの勉強会について御説明をさせていただきたいと思います。
それでは、次のページをお願いいたします。一番上のところちょっと見ていただきますと、GSG国内諮問委員会という名前が以前より言及されておりますけれども、これは国内で、我が国においてインパクト投資を推進するもので、GSGという国際的なフレームワークの中における日本の代表団体だとお考えいただければいいと思います。実は40か国近い国において国内諮問委員会というのがございまして、その連合体がイギリスに本部のあるGSGでございます。
私どもの社会変革推進財団は日本財団の支援を受けながら活動しておりますけれども、2013年に開かれたG8ロンドンサミットにおけるインターナショナルタスクフォースのインパクト投資に関する取組に基づきまして、2014年頃から本格的にGSG国内諮問委員会の活動をしております。
そういった立場からずっと活動してきておりましたけれども、2019年にG20の大阪で安倍総理からインパクト投資を含めたイノベーティブなファイナンスについての取組について国際的な議論の先頭に立つという御発言いただきましたけれども、残念ながら2019年の6月の段階では、インパクト投資に関して国内での関心もあまりなくて、メディアでの取上げもありませんでしたので、2019年の年末ぐらいから、今日も御参加いただいています金融庁の池田さんにお願いいたしまして、純粋な勉強会として立ち上げをさせていただきました。そして座長には、高崎経済大学の水口学長に御参加いただきまして、副座長の池田さんとともに推進をしてきたわけでございます。
ここにございますように、フェーズ1を7回、フェーズ2を3回開催しております。「インパクト投資の基本」に始まり、最後は、フェーズ2の第3回は「経団連のインパクト指標について」と議題が並んでおります。この勉強会には、いわゆる銀行、証券、アセットマネジメント会社、アセットオーナー、スタートアップ企業、あるいはベンチャーキャピタルファンド、それ以外の様々な経済団体、コンサル会社などにも御参加いただいていまして、フェーズ2の段階で、アセットオーナーの関心が出てきたということで、民間の保険会社5社に追加参加いただきまして、現在40社の委員によって運営をされております。
どんな議論のポイントがあったかということですけれども、これは右側にちょっと書いてございますが、そもそもなぜインパクト投資を行うのかという金融機関の意図、いわゆるインテンショナリティーと言われている問題を議論いたしましたのが第3回の頃でございます。なぜインパクト投資を行うのか、なぜインパクト測定を行うのかという、その根本的なところを、オックスフォード大学の専門の方をお呼びして議論したのが第3回でございます。
あるいは、インパクト投資を行ってよいのかというのは、まさに受託者責任との関係で議論を行ったわけでございますけれども、これはフェーズ1の第1回、第2回のあたりでも問題になりました。フェーズ2のアセットオーナーとインパクト投資という第2回のところ、ここでもフレッシュフィールズの新しい法解釈などのレポートを参照しながら議論を行っております。特に年金基金などがインパクト投資を行えるのではないかという観点から議論を行いました。
それから、終始一貫してテーマになっておりましたのはESG投資とインパクト投資の相違点ということでございます。やはり企業価値の向上を目指してESGファクターを考慮するという観点のESG投資と、さらに踏み込んで社会課題・環境課題解決のためにインテンションを持ってインパクト測定を行っていくという、こういう重要な違いについて議論を行ってきました。
また、IMMと言われているインパクトの測定・マネジメントの在り方ですとか、それを行う理由ですとか、あるいはその質とか、手間暇、コストの問題を様々な観点から議論してきております。アセットクラスごとにやはり取組の内容が微妙に違うということで、フェーズ1の第4回から第6回に分けてアセットクラスごとの議論をしてまいりました。それから、我が国のアセットオーナーの意識という観点では、欧米と比べますと、年金基金及び保険会社の一部には、まだまだインパクト投資、あるいはそれ以前にESG投資にも関心がないというところも多いというところがございましたので、この辺りについてはフェーズ2の第2回で特に議論してまいりました。
グローバルな潮流との連携も議論しました。これは特に海外で様々なスタンダードとか、ツールですとか、あるいは指標といったものが開発されてきていますので、そういったものに対応していくのか、あるいは我々は、どういうふうに国内で、日本国内では独自の社会課題・環境課題もございますので、それをどういうふうに海外のスタンダートと調和させて進めていくのかということも議論されました。
また、インパクト投資に関する官民連携ということで、この点については、残念ながら勉強会の中であまりまだ議論できておりません。今回、骨太の方針等にも日本政府の明らかな意図が出てくる中で、この検討会にて官民連携を御議論いただくのは非常に重要な論点かなと思っております。
次のページをお願いいたします。こちらが第1フェーズの到達点と今後の課題ということで、座長の水口先生に総括をしていただきました内容でございます。先ほどの西田室長のお話ともかぶる点ございますけれども、インパクト創出と経済的リターンが相関している好事例の情報共有あるいは発信ということが第1の課題となっております。正直申しまして、民間の投資であるインパクト投資によって全ての環境・社会課題解決ができるわけではございません。ですから、インパクト投資になじむものとなじまないもの、あるいはイノベーションが十分に進んでいるものとあるいはイノベーションが進んでいないもの、そういったものに分けて、インパクト投資に見合うふさわしい好事例をつくっていくというのが1つの課題であるかなと思っております。
2番目には、投資可能な案件の増加、あるいは多様なプレーヤーを呼び込む仕組みの検討ということで、これはやはりいわゆる投資可能なバンカブルなプロジェクトを増やしていくということ、それが1つですし、それから投資家、特にアセットオーナーの意識をこちらに振り向けていただいて、御関心を持っていただくということが重要な取組になっているのではないかなと思います。
3番目にはアセットクラスごとの議論の深化ということで、我が国においても様々なアセットクラスでの取組が進んでおりますけれども、どちらかといいますと、まだまだデッド、銀行の融資とか、あるいは債券中心のものが多かったり、あるいは上場株の投信などが中心でありますけれども、それ以外の分野でも様々な取組が必要になってくるだろうし、特に地域金融との関係では、地銀の取組、あるいは地銀以外の地域金融機関さんの取組というのが非常に重要になってくると思っております。
それから、国際的な議論への参画や官民連携の推進ということで、私どもの財団は、海外のGIINでありますとか、先ほどのGSGとの関係を持って、できるだけ海外からの先端的な手法ですとか、議論ですとか、フレームワークを輸入するという活動を行ってきていますけれども、そういったことに加えまして、我が国の中でインパクト投資に関する議論が行われていくようになっていきますと、これを海外に発信していく、あるいは日本における官と民の連携を推進していくということもさらに進めていく必要があるということでこのような課題となっております。
私どもの財団は、先ほどのGSG国内諮問委員会の事務局をしているということで、その関係でこういう活動してきておりますけれども、今回、勉強会から、純粋に勉強するという段階から一歩進んで、検討会という形で金融庁さんにこういう場をつくっていただいたことについて感謝申し上げたいと思います。
どうもありがとうございました。
【柳川座長】 ありがとうございました。
それでは、議論に移りたいと思います。今回が第1回目の会議となりますので、初めの御発言の際には、簡単に自己紹介をしていただき、続けて御意見をいただく形で進めたいと思います。
また、初回でありますので、事務局からの御説明に限らず、幅広い御意見を頂戴できればと思っております。よろしくお願いいたします。
いかがでしょうか。
【野村メンバー】 かんぽ生命で運用企画部長をしております野村と申します。よろしくお願いいたします。アセットオーナーの代表、投資家の代表ということで御意見させていただきたいと思います。また、当社につきましては、ちょうど1年前からインパクト投資をスタートさせているという観点から実体験を踏まえてお話しさせていただければと思います。
まずESG投資は投資家の中で既に普及しており、ESG投資方針等に従い、皆さん、投資を実行しています。「次のステージはどういったところに移行するのか」、「ESGはどう進化していくか」と考えますと、次はインパクトの志向、追求、創造に向かうと我々は考えているところです。
ESG投資については、SDGs17の目標に照らし合わせて、皆さん、番号何番の目標達成を掲げ、ESG課題解決に取り組んでいますが、次のステージは、どれだけの貢献を果たしたか、成果が出てくるか、いわゆるインパクトの測定に視点が移っていくのではないかと思います。
実際の投資につきまして、次のステージを考えますと、リターンを追求する中で、様々なアセットクラスにESG投資を行っているわけですが、いよいよESG投資にインパクト志向を組み入れていくことになる。既存のリターン追求の投資の中にインパクト志向を加味し最終的な投資判断が行われるという新しいアプローチが始まるのではないでしょうか。全く新しいインパクト投資が開始されるというよりは、従来通り、リターンを追求する中でインパクト志向が組み入れられる投資が選好される、そういう新しいアプローチに変わってくると思っています。
インパクト志向を組み入れるということになりますと、やはり今までの投資期間よりも長いスパンになります。インパクトは非常に短期で結果が出るものではないため、社会課題を解決するという意味では、少し長いスパンでの投資に切り替わっていくと考えております。
次に、機関投資家としてインパクト投資を開始する、取り組む、また積極化するには何が必要なのかということで実体験を踏まえてお話しさせていただきますと、社会課題の解決していく分野、インパクトを創造していく分野は、やはり日本における成長分野ではないかという思いが非常に強いということでございます。
それと同時に、アセットオーナーは、長期の投資家として、日本の社会・環境課題の解決に貢献すべきであろうと我々は思っていますし、また貢献を求められているという思いもございます。
こういった2点から、インパクト投資は、アセットオーナー、機関投資家の立場において次なる新しいステージのコアと考えるべきであるという思いで、我々はインパクト投資をスタートさせました。
ただ一番重要なのは、経営層のコミットメント、これが一番重要と思っています。当社の事例でいいますと、プロジェクト化しました。かんぽのKをとって、インパクト”K”プロジェクトという名前をつけ、ロゴもつくって、社内にしっかりと認知してもらう。経営層に理解してもらう。インパクトの志向を推進していく上で、求められていることは、経営層を交えてコミットメントを理解した上でプロジェクトを進めていくことです。実際には経営計画とか、業務計画、投資方針の中にしっかりとインパクトという言葉を埋め込んでいく。まず実践し、ここで好事例、先ほどお話のあった好事例や成功体験をつくっていく。インパクト投資を開始し、ほぼ1年弱が経過したところでございます。
インパクトの範囲は非常に幅広いです。多様なインパクトがございます。そういう中で、やはり自分たちの会社の経営理念やミッション、パーパスに照らして、自分たちが求める重要な取組テーマをしっかりと掲げて、インパクトをきちんと出していく。筋の通った主体的なインパクトを求めていくことが必要で、取組テーマ、分野はしっかり定めるべきと思っています。
インパクトの広がりという意味では、やはり件数にこだわっていきたいと思っています。大きいインパクト1つということではなくて、インパクト創造を広がりを持って進めていく。こういったことが重要と思っています。
最後に、課題です。インパクトの設定、決定、分析といったものに関しましては、新しい取組みですので、人材の育成が必要となりますし、この分野に精通したメンバーが既にいるわけではございません。投資先の企業との対話の中でインパクトを決めていく。その過程では専門的な知識・スキル以外に、規制、法律など、周辺知識の理解も求められるので、インパクト測定や分析において専門的知見、スキルを持った方々とコラボレーションする、組んでいく必要があります。アカデミア、大学の知見、アセットマネージャーのスキル、またインパクトのレポーティングスキルを持った方々と組んで案件を進めていくことがインパクト投資の成功に結びつくのではないかと考えます。決して単独の取り組みだけで終わらせることなく、コラボレーションを通じて日本のインパクト投資を盛り上げていきたいと思っております。
以上でございます。
【柳川座長】 ありがとうございます。続いて、林委員。
【林メンバー】 御指名ありがとうございます。ニッポンライフ・グローバル・インベスターズ・ヨーロッパという日本生命グループのロンドンの現地法人に所属をしております林と申します。ESG投資ですとかインパクト投資に関するリサーチを主に行っておりまして、もともとはこの3月まで東京におりまして、ニッセイアセットマネジメントという同じく日本生命グループの資産運用会社でESG投資、実務全般関わっておりました。現在は出向という形でこちらロンドンに来ております。
あと、メンバー表に記載していただいているんですけれども、この7月から金融庁の金融研究センターの特別研究員としてインパクトと企業価値に関する研究にも従事させていただいておりまして、この検討会に関しては、実務と研究の両方の視点から何らかの貢献をさせていただくことができればと考えております。よろしくお願いいたします。
その上で資料の御議論いただきたい点というページに関して3点ほど御発言をさせていただきたいと思います。
まず1点目、資料の20ページのまとめのページのまず第1点目の点で、インパクト投資の意義という点を挙げていただいていると思うんですけれども、ESG投資を含むサステナブルファイナンスという、より広い概念があると思います。このサステナブルファイナンスの意義については、既に昨年の3月に、金融庁のサステナブルファイナンス有識者会議の報告書の中で持続可能な経済社会システムを支えるインフラと位置づけるべきものということがはっきりと明記されていると思っております。
ただ、少なくとも現時点で、いわゆるESG投資やインパクト投資を含むサステナブルファイナンスの拡大によってどこまで持続可能な経済社会システムの実現が進んだのか、もっと平たく言えば、世の中がどれぐらいよくなったのかというのが、その効果がまだはっきりとは実感できないよという、こういう声が少なからずあるんじゃないかなとも思いますし、また、そうした声が、直接的ではないのかもしれませんけれども、昨今のサステナブルファイナンスに関する若干の懐疑論的な議論にもつながっている部分があるんじゃないかなとも思っております。
そうした中で、やはりインパクトの創出をより能動的に、より積極的に狙っていこうというインパクト投資の存在というのは、これ抜きにしては持続可能な経済社会システムを支えるインフラとして、サステナブルファイナンスのその力を十分発揮できないんじゃないかなと思っておりまして、こういう点においても、検討会のテーマであるインパクト投資については、大きな意義があるという、こういうまず位置づけをはっきりさせることが大事なのかなと思っております。
その上で、論点の3点目にちょっと飛ばさせていただくんですけれども、西田室長の御説明の中でも、定義とか考え方が様々ですよというお話があったかと思いますけれども、何がインパクト投資で、何がインパクト投資でないのかというこの線引きというのは実務的にもかなり難しいのが実際だと思いますし、加えて線引きの明確化を追求し過ぎることが何か社会にとって大きな付加価値を生むわけでも必ずしもないのかなというようにも感じておりまして、ですから、本検討会において重要なのは、もちろん考え方の整理は大事なんですけれども、インパクト投資という枠をはめて枠の拡大を推進するというような視点ではなくて、むしろ2007年に誕生という説明が資料の中にもありましたけれども、2007年のインパクト投資という言葉の誕生以降、インパクトを生み出そうと必死に頑張ってきて取り組んできた先駆者とか投資家たちがいるわけですので、その方たちの中で蓄積されてきたインパクトを生み出すためのプラクティスというものをいかに体系化したり見える化して、かんぽ生命の野村メンバーの言葉を借りますと、成功体験という言葉があったと思いますけれども、そういった知識や経験をインパクト投資の関係者にこだわらずに市場関係者に広く共有、還元することによって、インパクト投資を含むサステナブルファイナンス全体の裾野の拡大とか、サステナブルファイナンス全体の付加価値の向上に繋げていくという、こういう発想を持つということがこの検討会においてもすごく重要な点なのではないかなということを感じた次第です。
ちょっと前後してしまって恐縮ですが、論点の2点目のところで、事業創出の可能性等々についてという問いかけがありますけれども、現在、冒頭にも申し上げましたように金融研究センターの特別研究員としてインパクトと企業価値に関する研究というものに取り組んでいる中で実感しておりますのは、企業によるインパクト創出というのは大きく2つのパターンがあるんじゃないかなというのを感じております。
1点目は、既存のある意味では環境や社会への負荷が大きいビジネスをしている企業さんがそのビジネスモデルをより負荷の小さいものに転換していくということで生まれるインパクト、クライメートトランジションなんていうのはこの典型例かなと思うんですけれども、こういうようなパターンと、それから、より環境や社会に対して高い貢献度を持つ事業をビジネスとして成立させて、それをより規模を大きくしていくことによってインパクトを高めていくという、こういう2つのパターンがあるのかなと思っております。インパクト投資というのはあくまで著しくインパクトを生み出した企業、過去の実績のある企業に投資をするということではなくて、将来のインパクト創出の期待に投資をして、その実現に寄与しようということだと思いますので、必ずしも成功するかどうか分からないんだけれども、その期待に対して投資をするということだと思いますので、論点の2点目に出てきているようなスタートアップを含める新たな事業の創出であるとか、あるいはクライメートトランジションのような既存のビジネスモデルの転換、こういったものにつなげる可能性がある投資をインパクト投資と捉えてその推進策を考えていくということが大事なのではないかなと思います。今日は第1回なので、総論的なお話になってしまいますけれども。
あと最後に1点、本検討会はインパクト投資の検討会ということなので、それに絡めて申し上げたいんですけれども、ぜひ検討会として目指すべきインパクトと、セオリーオブチェンジというものを明確化していただくといいのかなと考えています。セオリーオブチェンジというのはこの業界の人たちがよく使う言葉ですけれども、どのような方策によって本検討会が目指すべきインパクトを実現していくのかということをしっかり議論をして、整理をして、これは恐らく報告書というアウトプットになるんだと思いますけれども、報告書として取りまとめていくということを目指していただきたいという、こんなふうに思っております。
すいません、ちょっと長くなってしまいましたが、以上です。ありがとうございます。
【柳川座長】 ありがとうございます。続いて高塚委員、お願いいたします。
【高塚メンバー】 ありがとうございます。すいません、お先に発言させていただきます、高塚清佳と申します。よろしくお願いいたします。私は新生銀行グループでインパクト投資チーム、インパクト投資ファンドを立ち上げまして、現在2本のスタートアップ向けのインパクト投資ファンドを運営しております。2017年からインパクト投資の実践を積んでまいりまして、先ほどお話のありました安間さんのいらっしゃるSIIFさんと2号ファンドでは組ませていただいていまして、まさにSIIFさんがグローバルから輸入される最新の議論ですとかツール、フレームワークといったものを、日本のスタートアップ向けのインパクト投資というところで、どのように落とし込んで、実践をして、かつ自分たちだけがやって終わりではなくて、それを型化して再現性高めることで日本の広くスタートアップ向けのインパクト投資として使えるものにしていきたいということで取組を継続して行っております。
今日は、この会ではインパクト投資ファンド運営の実践をしている身として、いろいろな事例ですとか可能な範囲で共有をしながら皆様と一緒に議論を深めてまいれればと考えております。よろしくお願いいたします。
本日議論いただきたい点ということで挙げておられる中で、1つ目と2つ目が少し重なってしまうんですけれども、全部で3点ほど申し上げたいと思います。1つ目は、やはりインパクト投資をするに当たっては、インパクト投資を受けるインパクトスタートアップ側の視点を非常に大事にしたいなと思って実務に当たっております。インパクトスタートアップ、スタートアップ側にて何が起きているか。林さんの先ほどのこちらの投資家側から見てサステナブルファイナンス全体を考えましょうよというようなお話とももしかして呼応する話かなとも思うんですけれども、スタートアップ側でもESGやインパクトだけをそれぞれとりたててアピールするというようなことよりも、彼らがサステナビリティ経営全体を行う中で、パーパスを持って、社会課題を、事業を通じて解決していくんだという取組全体の在り方について、サステナビリティ経営ということで、全体像を整理する中に、パーパスもあれば、課題分析もあれば、ESGもあれば、インパクトもあると。もっと言うと最近話題になるようなB Corpとか、そういう話とかも要素としてあるというふうに全体を私たちとしては捉えています。
スタートアップがサステナビリティ経営を推進する中で、ESGといったものを基礎的な組織の土台として押さえながら、そこから事業を通じてインパクトをどのように拡大していくか、そこをインパクト投資家として伴走するということで、彼らの事業が、インパクトを創出する事業が伸びるということイコール社会課題解決が拡大する。私たち投資家としても、インパクト投資が結果的に成功するという、そういう構図になっていると思っていまして、なので、私たちが投資家としてインパクト投資をすること自体の意義はもちろんなんですけれども、一義的にはやはりスタートアップがインパクトを追求すると、その裏に資金が流れるというようなことを思考として捉えておりまして、そういった考え方、可能な範囲で皆さんとも共有できればと考えましたというのが1点目ですね。
2つ目のところは、議論ポイントの3つ目かなと思うんですけれども、先ほどのかんぽ生命さんのお話なんかにもあって、うんうんとうなずくところが非常に多かったと思うんですけれども、私たちもファンドを運営する中で、やはりその投資家、私たちが運用する資金の背景によって、求めるべきインパクト、経済的なものとインパクトの両方のリスク・リターンのバランスというのが決まってくると思っていますので、運用する資金の背景により、異なるリスク・リターンバランスやIRRといったものをファンドや運営者として設定をしていくというふうになります。そうすると、そこから、もともとファンドとして求めたいTOCと求めるインパクトや経済のリスク・リターンバランスとを両方から突合させていって合うところというのが、おのずと取り組む社会課題、対象とする社会課題となってくることが割と実務的には現場ではあるのかなと思っております。
ですので、社会課題に取り組むといったときの社会課題という言葉を聞いて抱く皆さんのイメージは千差万別なんですけれども、例えば貧困のところでは、投資リターンが見合わないんじゃないかとかというようなイメージを持たれる方から、バイオテックのところであれば、非常に成長性があって世の中を変えていくので資金がつきやすいと考えられる方まで、様々いらっしゃると思うんですけれども、いずれもやはり社会課題である中で、どれを自分たちが取り組むかというところは、1つにはやはり資金の性質といったところから考えていくというのは現実的にあるのかなと考えております。
そういったところから、多様な背景を、資金背景を持つ投資家が、多様な投資家が参加するということでインパクト投資の投資家が増えてマーケットができていくということこそが最も大事なのかなとは考えています。
最後に、これ皆さんと同じかもしれないんですけれども、やはりそれをやるトップマネジメントのコミットメントという話もありました。一方で、足元でそれを実践するキャピタリストの育成といったようなところ、インパクト投資ファンドを運営するメンバーの育成といったところも必要なのかなというところで、今はインパクト投資の予算がつくけれども、それを足元でできる人材がなかなかいないというようなお声も投資家さんの方から聞いていますので、そういった人材育成は急務であろうと考えております。
以上3点でございます。
【柳川座長】 ありがとうございます。それでは、金井委員、どうぞ。
【金井メンバー】 三井住友信託銀行の金井です。どうぞよろしくお願いします。私は、もうかれこれ20年近くこの分野におり、2003年に企業年金向けにSRIファンド、社会的責任投資を開発したのが出発点でした。SRIファンドとインパクト投資はある意味で非常によく似た概念ですが、両者を繋ぐ歴史的な経緯を理解しておく必要があります。それは、2006年にPRIがESGという概念を打ち出したことで一般の投資家が一気に参画し、ESGファクターで経済的なリターンを追求する技術や知見が蓄積されたということです。
社会的なリターンを目指すSRIは、当初は受託者責任に反するものだと袋叩き状態でしたが、ESGインテグレーションが進展し、経済的なリターンを追求する状況が生まれたことで、結果的に社会的リターンを追求できる状況が整いました。つまり、SRI、ESG、インパクトは1本の線でつながっており、今、インパクト投資が注目されることには必然性があると思っています。
当社は、2019年にUNEP FIのインパクト金融原則にのっとったポジティブ・インパクト・ファイナンス、資金使途のない融資商品としては世界初になりますが開発しました。それが出発点で、その後、上場株式のインパクトファンドの開発、リアルアセット実物資産への投資ファンド、更にはベンチャーキャピタルに対するインパクト評価のアドバイザリー業務を開始するなど業務の間口を広げてきました。また、自己勘定投資による5,000億のインパクト投資枠も設定しました。こうした経験を踏まえ、本日の論点の1点目の裾野の拡大に関連して申し上げますと、インパクトファイナンスは、金融機関の役割の再定義につながる広がりを持つというのが実感です。
実際、自分たちも想定していなかったようなところまで業務が広がっており、例えば自治体から推進中のプロジェクトのインパクト評価依頼を受けました。自治体側はインパクト評価を合意形成手法として活用できると考えています。
大学、アカデミアからもインパクト評価をやってもらいたいという申入れがありました。これは研究がどのような効果を生み出すのかを総合的に分析したいというニーズに基づいています。また、ある大きな企業からもビジネスジャッジメントに活用するために、インパクト評価をやって欲しいという依頼が来ています。
インパクト評価はあらゆる領域で取り入れられ始めており、インパクト評価に基づく社会的な効果の測定と経済的効果の追求は1本の線に収斂していると感じます。先程、林委員もおっしゃっていましたが、インパクトがないと経済的なリターンが生まれてこないという状況が既に生まれ始めていると思います。スタートアップはその典型ですが、大企業がビジネスジャッジメントにインパクト評価を活用するということは、それが業績につながると考えているからです。これは金融の観点から言えば、投資リターンと社会的リターンの同期化ということになるでしょう。
ちなみに、当社に自治体やアカデミア、企業からインパクト評価の依頼が来るのは、お金を動かす金融機関にはそうした分析を行うのに相応しい、或いは適していると思われているからだと思います。そう考えると、金融機関にとってインパクト投資は、新しい資本主義にも関わるものかもしれませんが、業務の裾野の拡大だけではなく、インパクトを起点とした社会システムを作るという役割の拡大の一つとも考えられるのです。
裾野の拡大という観点から色々申し上げましたが、ほかの論点にも関わってくるかもしれません。ともあれ、そうしたことが今回の議論の中で深まっていけばいいなと思っています。
【柳川座長】 ありがとうございます。少し今までのあれを見ますと、この先同じようにお話しいただくとちょっと時間が足りなくなりそうなので、少しコンパクトめにお話しいただけるとありがたいと思っております。
それでは、渋澤委員、お願いいたします。
【渋澤メンバー】 ありがとうございます。シブサワ・アンド・カンパニーの代表取締役の渋澤健と申します。2001年に私が会社を立ち上げた半年後に9.11がありました。その衝撃をきっかけに私は社会的意義と経済的意義の融合について考えるようになりました。ファンドの成功報酬から社会起業家を応援するプログラムを2003年に設けましたが、2008年のリーマンショックで頓挫してしまいます。ただ同じタイミングにコモンズ投信という会社を仲間たちと立ち上げていて、そちらで社会起業家を支援するプログラムを引き継いでおります。一般個人の長期投資、世代を超える投資を目指し、企業の非財務的な価値および企業との対話を運用の柱として設けた資産運用会社であります。
コモンズ投信を創立した同じタイミングに、先ほど御紹介いただいたように、インパクト投資という概念が生まれてきました。以来、その流れをずっとフォローしており、先ほど安間さんから御紹介あったGSGの源流にある諮問委員会も日本で設立された2014年から参加しております。
インパクトという概念をフォローしている中、柳川先生と御一緒させていただいている新しい資本主義を通じて、今年6月にまとめられた政府の骨太の方針に「インパクト」という概念が明記されたことは大変画期的なことだと私は思っております。その後、このように金融庁で検討委員会が設けられ、そして内閣府では「インパクト投資とグローバルヘルスに係る研究会」が設けられ、座長を拝命いたしました。政府がインパクトについて検討していただく動きに、大変心強く感謝しております。
インパクトの最初からあった流れは、社会的課題の解決を目指すスタートアップへの投資であり、とても大事なことだと思います。一方、近年のコロナショックから新たなインパクトの流れも出てきています。これは上場企業の非財務的な価値の可視化です。ポストESGとも言われているインパクト加重会計であります。企業は環境、社会にインパクトがある。従って、ただ情報開示するという受け身スタンスだけではなくて、インパクトを測定しているか、目標設定していて実現させているかという実態を企業価値として反映するという考え方であります。
これはハーバードビジネススクールのジョージ・セラフェイム先生の研究でございますが、コモンズ投信の投資先として長年付き合っていただいたエーザイの(2020年当時)CFOの柳さんが似たような企業の非財務的価値の可視化を研究していたので、お二方をお引き合わせしました。当時のインパクト加重会計の研究ではE(環境)から始まっており、S(社会)については手を付けていませんでした。一方、柳さんの研究は人材報酬アップが遅延して同社のPBRと相関しているという、人的資本、つなわち、Sのところでした。柳さんが提供した同社のデータをハーバード大モデルで人材報酬を検証すると企業利益にプラスのインパクトあるという「柳モデル」と類似の結果となりました。
その後、これは世界初の研究成果だと思いますが、エーザイの製品を通じて財務的な価値だけでは可視化できていなかったインパクトがあるということをハーバード大モデルでも検証しております。
現在、御案内のとおり、ISSBの設置など企業の非財務的情報開示の流れが世界で顕著に現れています。現在来日中の議長のエマニュエル・ファベールさんとGSG会長のロナルド・コーエンさんと親交があり、今後、いろいろな連携が生じるかもしれません。
このようにインパクトの流れが出てきたのは非常にすばらしいことだと思います。ただ、魅力的な言葉なので、皆さんも同じ懸念があるかと思いますが、「ウォッシング」に陥る場合もあるでしょう。金融庁ではESG投資で「ウォッシング」を阻止するいろいろな取組をされておりますが、インパクトでも同じ課題があると思います。何が本当のインパクトであるかと考えたときに、まずは、きちんと測定していることがポイントだと思います。あと重要な要件は、先ほど話あったセオリーオブチェンジ、ロジックモデルを通じて投資案件を分析して、投資に至るということだと思います。真のインパクト投資は、この2つの要点は外すことができないと思います。
日本では「昔から三方よしずっとやっていた」と耳にします。すばらしいことだと思います。ただ、三方よしがなぜグローバルなスタンダードにならないかというと、それは恐らく三方をメジャメント、測定していないからではないでしょうか。三方よしをグローバルに展開したいのであれば、きちんと三方のインパクトのメジャメントが必須条件になるでしょう。また、企業がこれからの時代考えなければならない新たな三方よしは、消費者、従業員(特に若手の)、そして株主です。この三方よしのインパクトを測定しながら、しっかりと対話をすることが大事だと思っています。
もちろん実績も必要です。コモンズ投信では上場企業に投資するインパクトファンドを今年設定しました。上場企業向けのインパクト投資ファンドは世界であまり事例がない、チャレンジだと思います。けれども、インパクト測定、ロジックモデルを用いて投資を実施しております。自分は直接関与していませんが、担当が大企業と対話すると、例えば最近では某企業のCFOが「このような面談は初めてです」という手応えある反響もあります。
そういう意味ではインパクト投資の手法は企業との対話の新しいツールとして使えると思っています。
あともう一つの事例は、経済同友会のアフリカプロジェクトチーム(PT)のインパクト投資の取り組みです。去年の秋に、経済同友会アフリカPTは、アフリカ向けの官民連携インパクトファンドを設置すべきと提言しています。現在、準備中ですが経済同友会が主体となって運用会社を設立する訳ではなく、賛同する会員企業が出資して設立することになります。しかし、なぜ経済同友会がこのようなプロジェクトを支持する必要があるのか。「アフリカ向け投資」、「インパクト投資」とは、ダブル「前例がない」ことであります。
しかし、本件は企業のアフリカという新興国投資や進出の後押しすることだけではありません。それは会社単独で判断して実施すべきことだと思います。一方、新しい投資の有り方で新しいお金の流れをつくること、これからの世代を主体とする新しい投資のエコシステムをつくること。これは企業単体でできることではありません。企業が共同的に行動して官民連携でつくることに非常に意義があると思います。
そういう観点から、インパクト投資やインパクト測定は、岸田政権の「新しい資本主義」の実行の柱になってほしいと要望しています。新しい資本主義実現会議で何回か本件について発言していますが、なかなか主のアジェンダとして上がってこない。この検討会を通じて、ぜひ新しい資本主義の実行の柱として存在感を示すことに期待しております。
以上です。
【柳川座長】 ありがとうございます。それでは、正木委員、お願いいたします。
【正木メンバー】 経団連のソーシャル・コミュケーション本部長の正木と申します。経団連は今年6月に「“インパクト指標”を活用し、パーパス起点の対話を促進する」という報告書を出しているのですが、その取りまとめのときに話題となったところが、20ページの論点で2つ目のところです。事務局の資料でいうと3ページの新しい資本主義のグランドデザイン実行計画とか、4ページの財政面とかで、いずれもインパクト投資の対象が社会起業家とか官民ファンドとかというのが想定されておられて、鈴木政務官も、林メンバーや高塚メンバーも起業家等に関する部分について、おっしゃっていたと思うのですが、一方で、事業を通じて社会にポジティブインパクトを与えるというようにしたいというのはベンチャー企業のみならず、経団連に加盟している大きな企業についてもみんな同じです。大企業はグリードに短期的利益ばかりを追求しているということではなく、多くの企業がやはりパーパスで社会の進歩や暮らしの改善に貢献することを目指していると思います。
ただ、確かに経団連の主要企業のような大企業は、幾つも事業を抱えており、それぞれの事業ごとに、それぞれのイノベーション、それぞれの価値創造ストーリーを持っているので、それぞれが違ったインパクトを与えている。そうしたことがあるので、事業価値イコール企業全体の価値になるわけではないところがスタートアップとちょっと違うところということにはなると思います。
ただ、丁寧に価値創造ストーリーを紐解いていけば、それぞれの事業がシナジーを発揮しながら企業全体でのソーシャルインパクトを発揮することにもなる。また企業価値を高めていけるということを示せるのではないかと考えております。
今、渋澤メンバーがおっしゃったように、経団連の建設的対話ワーキンググループでも、「これは難しいから対話をするのには価値がある」、「投資家の側も事業会社の側もお互い探りながら検討しているところなので、ちょうど対話するのにはいいね」といったところが、投資家側、事業者側、共通の思いでございますので、ソーシャルインパクトはベンチャー企業の話で片づけるのではなく、新しい資本主義のまさに柱として、大きい企業からスタートアップまで、企業のソーシャルインパクトを明らかにできるような試みであると捉えたうえで、KPIを一歩進めて、測定できるようにしていくという取り組みは大事だと思っております。
【柳川座長】 手短にありがとうございます。それでは、吉田委員、お願いします。
【吉田メンバー】 日本政策投資銀行の吉田と申します。私は今、経営企画部でサステナビリティ経営室長ということで、DBJ全体のサステナビリティ経営促進をやっておりますが、その中で、今回、このテーマに上がっているインパクト投資といいますか、かなり時間軸が読めないような投資というのを、どういうふうに運用機会を見つけて実現していくかというのを、弊社でも色々チャレンジをしていますので、そのような話を中心にできればと思っています。
手短にということでありますので、DBJ自体は実は2年前からソサエティ5.0投資ということで、時間軸をあまり意識しないといいますか、時間軸を長く置いて、新しいまさに事業を生み出すような投資というのを、相応の金額を用いてやっています。
そこから得られる観点をいくつか、お話ししたいと思っているんですけど、まず1点目が、インパクトの時間軸をどうするかということでございます。これはまさに期初に投資家に説明する指標と、その投資が止まった後に投資家に対して説明するということ。今、弊社、銀行内の話ではあるんですけど、事前事後の軸をどうするかということでして、非常に時間軸が長い投資になりますので、事前と事後で世の中の評価軸が変わるということがあり得ると。そこの説明をどうするかというところで悩むところがあります。
それとセットなんですけど、そうすると評価項目というのは、足元今ある社会課題に対して応えることであって、例えばそれが終わったときであっても、社会に対して訴求できるような項目である必要があるんじゃないかということで、できるだけ客観性が高いような項目を置いておくことが、結果的にはインパクト投資の裾野を広げることになりやしないかという問題意識。これが2点目。
3点目が、リターンと社会価値をどう両立していくかというところだと思うんですけど、ここは先ほどの説明能力などの指標をどうするかということですが、やはり受託者責任というんですかね、フィデューシャリーデューティーの考え方と非常に表裏一体なところがあると思っています。徐々に、リターンだけを意識しないような、リターンを獲得していく手段として社会価値ということまで受託者責任の範囲という話が出てきていますが、これがある程度浸透していかないと裾野の広がりということが出てこないのではないかという気もしているところです。
4点目は実施主体の話です。これはまさに林様からもお話ありましたが、我々、実態として見ていると、まさにそこをスタートアップ的に新しい社会的インパクトを生み育てていく新しい事業主体を育てていくという投資もやっています。加えて、日本の場合は、既存のお客様の1事業方法が新しく変わっていくというところ。これはクライメートトラジションという話をしていますけど、そことも非常に私も同感するところでして、そういうところに対する支援を広くインパクトとして捉えてやっていくということが、日本においては裾野を広げるという観点では大事ではないかと思いました。
私からは以上でございます。
【柳川座長】 ありがとうございます。それでは、ダイキン工業の吉澤様。
【吉澤メンバー】 ありがとうございます。私、ダイキン工業のCSR・地球環境センターというところにおります吉澤と申します。
我々のCSRの部門ですけども、やっておりますことは、サステナビリティの社内推進と、社外の皆様に対する情報の発信、投資家様との対話につきましてもIRの部隊と連携しつつやらせていただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
本日の御議論いただきたい点というところで、端的に2点ほどお話しさせていただきたいと思っております。まず1つ目と2つ目のあたりに関連するところでございますが、SDGsもインパクトと絡めてお示ししなければいけないところになってきたと我々認識している中、インパクト投資というものがやはり必要性が増してきていること、またこれが環境社会の課題解決に資するということにつきましては、全くそのとおりだと思いますし、これが広がっていくべきと思っております。
ただ、測定をしていくことが不可欠ということにおいて、誰が何を見て、どう判断していくのかというところは、どこまで踏み込めるかどうかというところはあるとは思いますけれども、我々、企業側ということで、それらをどうお示しするかということに日々悩んでおります者からいたしますと、その辺りにつきましても少しヒントを頂戴できるような議論に発展できれば非常にありがたいと思っております。
2点目は、3つ目のポイントのところですけれども、やはりインパクト投資をどう拡大していくのかというところ、こちらにつきましては、インパクトというか、価値といいますか、社会課題・環境課題の解決、この捉え方をどう広げていくのかというところがまず要ると思っております。
事例でいいますと、例えば環境で一番わかりやすりところで、気候変動に関して、GHGのガスの排出量がどうということがありますけれども、他方、それにこだわりすぎると、実は資源をたくさん使っていたり、自然を破壊していたりということがあります。そういったところとの頃合いをどう表現していくのかというのを日々悩んでおります。やはりインパクト投資は幅広い概念かなと思っておりますので、そういったところを少しでも広い視点で、環境、社会課題解決に資するということが表現していければ、我々、企業側といたしましても非常にありがたいと思う一方、結果として社会の本当の意味でのインパクトにつながっているのではないかな、このように思っております。
簡単でございますが、以上でございます。
【柳川座長】 ありがとうございます。それでは、太田委員、お願いいたします。
【太田メンバー】 ありがとうございます。野村證券金融工学研究センター長の太田と申します。よろしくお願いします。
金融工学研究センターは、いわゆる物理学とか、工学とか、情報学と、理系の人材が今40名ほど在籍しておりまして、資本市場のあらゆるテーマ、課題に対して、データサイエンスを駆使したソリューションを提供しています。
ここ数年は、非財務情報の可視化とエンゲージメントの高度化、これを主力テーマとしておりまして、今年は特に人的資本とインパクトの可視化、これに精力的に取り組んでおります。その成果はどこかで、ぜひ提供して、皆さんと議論を深めていきたいなと思っております。よろしくお願いします。
その過程で今抱えている課題について共有できればと思っております。そもそもここが重要だと思ったきっかけが、4月から新しい市場が始まりましたが、いまだにプライムの上場企業の45%がPBR1倍割れだと。この状況を非常に危機的に感じておりまして、要するに非財務に隠された価値が見えてないからちゃんと評価されないのだろうという仮説を置いて、どうやったらその価値をしっかりと表に出して評価につなげることができるのか。インパクトの可視化、これを測る共通の物差しみたいなのが必要なんじゃないかということで今研究に取り組んでいます。
今回の議題の主に2つ目と3つ目に相当するかと思うのですが、まず最初のスタートアップ、スタートアップ企業に対する評価の課題として感じているのが、今売上げが立ってない企業でも、社会的なインパクトがあれば、そこが評価されて、IPOの株価がつくのかと。社会的な評価をどうやってIPOの際の株価に反映していけばいいのか。ここが1つ今課題として私ども大きな悩みとして考えています。
そこでもしアグレッシブなバリエーションができるのであれば、日本が得意とするディープテック系のスタートアップのIPOウィンドウが恐らく広がるだろうと。実際、国を挙げてスタートアップ支援、もしくは新産業を創出しようとしているわけですから、このインパクト部分、特にイノベーションですよね、これが持つ潜在価値の可視化は株価形成上非常に大きな意味があるんじゃないかと考えています。
その後上場企業ですが、これはひとえにインパクトに関する情報開示が少ないに尽きると思います。先ほど正木様から御紹介いただいたインパクト指標のあの冊子は本当に一生懸命読んですごいなとは思いますが、評価する側からすると、やっぱり横比較が非常に難しくて、横断指標と課題別指標があるという認識ですが、やはりある程度業態、業種でメインとなる共通指標みたいのがあるとより比較化しやすくなるんじゃないかなという期待を込めて冊子はいつも見させていただいています。あれが1つのベンチマークになるかもという期待はしている次第です。
ただ、評価する側も、すぐにうちなんかもそうなんですが、相関分析とか、柳さんのほうでもそうですけど、重回帰分析にしたらいいんじゃないかというふうな発想になるんですけれども、インパクトはやっぱりちょっと違うんじゃないかなと思っていまして、結構構造化されたものをきっちりとストーリー、丁寧に読み解いていく努力が評価する側にも必要だろうと感じております。
第3の軸のインパクトということなんですが、本当にここは別評価なのか。恐らくそこを切り出すというよりは、従来のバリエーション、企業分析の一部に融合していくようなアプローチがふさわしいんじゃないかなと。先ほど高塚様のお話なんかも私は結構納得するような気持ちで聞いていたので、ぜひそういうところについても何か答えが出るような議論ができればと考えております。
以上になります。
【柳川座長】 ありがとうございます。馬田委員、よろしくお願いいたします。
【馬田メンバー】 ありがとうございます。東京大学のFoundXでスタートアップの支援をしております。普段は新しいスタートアップをどうつくっていくかというところで活動をさせていただいております。今日もいろんな文脈でスタートアップのことに関して触れていただいてありがとうございます。
Yコンビネーターと呼ばれているスタートアップ養成機関の元社長が、スタートアップにとって長期的視点こそがアービトラージの機会だ、ということを言っています。なぜなら上場会社は四半期に一度開示しなきゃいけないので、短期的な利益を求めてしまいがちで、一方でスタートアップは10年非上場で待てるからだそうです。それはおっしゃるとおりだなと思っていたんですが、一方、日本を見ていきますと、どうしても短期的な視点になりがちな構造的問題があるのかなと思っております。たとえばグロース市場は良くも悪くも一部業態だと上場しやすい仕組みなのかなと思っていまして、VCの皆さん方としても、受託者責任と短期的に上場できる仕組みの構造がある中で、上場まで長い時間がかかるけれど社会的にインパクトのあるディープテックに投資するのは理由付けが難しい、しかもディープテックなどは上場後の値段も付きづらいのに、なぜ長期的なものにも取り組まなければいけないのか、といった葛藤が生まれやすい構造があるのかなと思っておりまして、そこをどう改善していくのか、つまりどういう構造的な問題があって、スタートアップが本当に長期的な問題に取り組めるような構造をどうつくっていくのか、というところが日本では1つポイントとしてあるかなと思っております。
先週、ブレイクスルーエナジーというビル・ゲイツがやっている財団兼ベンチャーキャピタルのイベントにも行ってきたんですが、どうやら20年ぐらい待てる仕組みになっていて、それだけ待てるんだったら、起業家も投資家も長期的な視点で事業を行えるなと、うらやましくなりました。
もう1点、スタートアップ系で申し上げますと、スタートアップやVCは、やはり上場のことを意識しながら動くことが多いと思いますので、上場後の企業が社会的インパクトを評価される金融市場がきちんとつくられていると、スタートアップも初期から社会的インパクトを意識した活動を始めるのかなと思います。なので、インパクトスタートアップを増やしていく、あるいは、インパクトを目指すスタートアップを増やしていくためにも、上場後の評価といいますか、上場企業のインパクトの計測並びに評価というところは非常に大事になってくるのかなと思っている次第です。
1点目が以上になります。
もう1点、新しい資本主義系のお話になりますけれども、やはりインパクト投資といいますか、インパクトのある事業が儲かるというインセンティブをつくるというところも一方で重要かなと思っておりまして、リターン、リスクとインパクト、という3つの軸がありつつも、インパクトとリターンをある程度アラインさせていく取組と、外部経済をどう資本主義に入れていくのかという、渋澤先生の新しい資本主義の会議での御発言があったかと思いますけれども、そうしたところも大事なのかなと思っています。
そのためにSIBやPFS、あるいはそのベースとなるEBPMであるとか、いろんな計測手法や仕組みがあるべきかなと思っておりまして、その文脈の延長でインパクト加重会計をはじめ、カーボンクレジットなどの新しい物差しや新しいイノベーションとか発明が生まれてきたり、アメリカではロングタームストックエクスチェンジのような新しい市場環境も生まれ始めてきていると認識しています。総じて見てみると、イノベーションを誘引するような金融面でのイノベーションとは何か、を模索している段階でもあるのかなと思っており、まだどこの国も答えを持てておらず、探索中というふうな状況だと思いますので、この辺りを検討会で模索していけるとよいのかなと思っております。
かつ、それを一義的に決めるというわけではなく、インパクトはインパクトを定める主体によってそれぞれ異なるのかなと思っておりまして、国レベルのインパクトもあれば、それぞれの地方自治体が目指すインパクトというものあると考えると、それぞれが決めていくというのも非常に大事なのかなと思っています。
それぞれの地方自治体がインパクトを決めて、SIBなりPFSをしていけば、世界的なスタートアップにはならずとも、その自治体の目指す社会的インパクトに合った事業というものが、中小企業のレベルでもどんどん出てくる仕組みになっていくのかなと思います。そのため、インパクトを一義的に決めるのではなくて、インパクトをどう決めれば良いかといったフレームワークや型というものをつくったほうが良いのかなと思っていますし、ひいてはファンドでもどういうインパクトを目指しているのかというのを、ロジックモデルやセオリーオブチェンジなどを用いて描いていくのが普通、といったようにやり方が変わっていくというのが良いのかなと思います。
最後になりますが、非財務情報やインパクトの可視化というふうなところに関しまして、三方よしのお話がありましたけれども、その三つに加えてやはり時間軸を加えていくというような視点も大事なのかなと思っています。具体的には将来世代をステークホルダーとして、50年後、100年後、200年後の世代に対して、ファンドがどれだけ貢献しているのか、本当に歴史の審判に耐え得る判断をしているのか、そのような投資をしているのか、事業をしているのか、というふうな、少し遠くのインパクトを見据えながら、中期的なインパクトとして10年後の事業を組み立てていき、短期的には1年後、2年後のインパクトを見ていく仕組みといいますか、どの時間的視座で、どういう主体でインパクトを見ていくのかというふうなところに関しても少し考えていく必要があるのかなと思っている次第です。
私からは以上です。
【柳川座長】 ありがとうございます。それでは、オンラインの安間委員、お願いいたします。
【安間メンバー】 ありがとうございます。私どもは財団の立場で既に推進をしてきておりますので、今後の推進上の課題を中心に申し上げたいと思います。
1つはイノベーションということですけれども、ビジネスアズユージュアルでイノベーションなしにインパクト創出に取り組みますと、コストが上がりますので、価格転嫁するか、できなければ、リターンの低下を招きます。
ですから、インパクトの創出にはやはり技術、ビジネスモデルのイノベーションが不可欠ということと思いますので、やはりスタートアップ、大企業ともに、さらなるイノベーティブな技術、ビジネス・モデルに対する投資の推進が必要だということがベースにあると思います。
一方でこれを金融機関から見ますと、イノベーションには、当然のことながらキャッシュフローのボラティリティが伴いますので、革新性の高いイノベーションの創出にはリスクマネーがどうしても必要になるということで、ベンチャーキャピタルやプライベートエクイティのエクイティファイナンス、あるいは低格付のデッド市場というものがどうしても必要になってくると思いますけれども、我が国におけるそうした資本市場の対応というのが必ずしもアメリカですとかヨーロッパに比べて十分ではないということで、改めてこの辺りの資本市場への強化に向けた取組というのが求められるのではないかなと思っております。
2番目は、インテンショナリティということですけれども、やはり金融機関の経営者のインパクト創出にかかるインテンショナリティを高める啓発活動が不可欠ではないかなと思っています。また、既に高いインテンショナリティを持ってインパクト投資を進めておられるところもたくさんございますので、これから始めていかれようとしている機関もある中で、ボトムアップとトップアップの両方を認めつつ、既に高い取組をされているような機関の取組を阻害しないように進めていくことも重要なのではないかなと思っております。
3番目は、ESGウォッシュとの関係でのインパクト投資とESGの差別化ということでございます。海外ではESGウォッシュの批判に対応するかのように、インパクト投資をされている方々は、まさにESGウォッシュのアンチテーゼとしてインパクトの測定・開示を伴うインパクト投資の取組をされているという説明をされている方がどんどん増えてきております。先日のオランダでのグローバルインベスターフォーラムでもそういう意見が非常に多かったと思います。
ですから、既にISSBの開示に係る取組もございますけれども、インパクトの観点からも、インパクトの自主的な開示ですとか、あるいはインパクト投資の推進の取組を絡めて推進していく必要があるのではないかなと思っております。
4番目は官民連携でございます。公的資金ですとか補助金がインパクト投資に求められるものではなくて、むしろ既に高い取組をされている方々からの意見を聞きますと、調査研究ですとか、データの整備ですとか、官民共通の重要課題の設定であるとか、社会性指標のデータの開発であるとか、こういったところが非常に重要な環境整備ということで求められてくる点ですので、こういったところがまさに重要と思っております。
最後に金融行政について申し上げたいと思います。非常に単純に眺めてみますと、地域金融機関の取組に関しては、その監督指針においても既にインパクトを十分に埋め込まれたような監督行政が行われているのではないかと思います。要するに、ファイナンシャルリターンを犠牲にせずに社会課題解決、地域課題解決をしていこうということが地域金融機関の在り方として既に行政指針に埋め込まれているように思うのですけれども、逆に大手金融機関にはそういった取組が必ずしも行政側で行われているように見えませんので、そこは逆に検討する余地があるのではないかなと思っております。
私からは以上5点でございます。
【柳川座長】 ありがとうございます。それでは、続いてオンラインの浅利委員、お願いします。
【浅利メンバー】 株式会社Atomisの浅利と申します。当社、スタートアップのところにカテゴライズすると思うんですけれども、今ちょうどアーリーレートのステージのスタートアップでございます。京都大学発のスタートアップでございまして、まさにディープテックまっただ中で、さらに素材ベンチャーということもあり、やはりインパクト投資というところで、よりバリュエーションが上がるのであれば非常に期待しているところではあります。
当社が扱っているのは新素材ということもあるんですけれども、やはり環境系に使える新素材ということで皆さんからいろいろと御興味はいただくんですけれども、ただ世界中ではみんな素材ベンチャーがすごいいいバリュエーション出ているのかというと、別に全然海外でも非常に低いバリュエーションで、結局やはりリターンというところが非常に強く効いていて、やっぱりバイオベンチャーが高く出がちというのはやっぱり製薬会社が買収してくれるというところがあるので、ビジネスモデル自体ができ上がっているというところがあって、一方、素材ベンチャーというのはなかなか難しいところがあって、しかも長期間の開発期間が必要。さらにやっぱり製品が出ていかないと売上げとしてリターンが得られないというところで、なかなか難しいかじ取りになるというところもあって、やっぱり世界的になかなか企業価値がつかないというところがあります。
一方投資は非常に必要ですので、やはりこのようなインパクト投資というところで、より長い目で見て、インパクトの現在価値というのがどの程度のものなのかというのを指標にしてもらって、投資してもらうのがしやすくなる、または融資してもらうのがしやすくなるというのは非常にスタートアップにとっては頼もしいところでございます。
また、やはり日本はこういうケミカル系とかは、あとものづくりのところも非常にディープテックのところは強いところもありますので、そういったスタートアップの創出にかなり促進につながるんじゃないのかなと思っております。
ただ一方、インパクトの範囲が非常に広くて、どうインパクトを試算するのといったところが、私にはちょっとよく分からなくて、本当にカテゴリーが広いので、そういったところをどんなふうに皆さん公正に試算していくのかなというところがちょっと分からないところでもあるというのが私の見解でございます。
以上です。
【柳川座長】 ありがとうございました。そのほかまだ御発言なさっていらっしゃらない委員の方、いかがでしょうか。できれば全員。木田委員、お願いいたします。
【木田メンバー】 横浜銀行総合企画部の木田と申します。私の所属はサステナビリティ委員会事務局というところでございまして、持ち株会社と兼務で事務局を運営しております。グループ全体の委員会運営のほかに全体のサステナビリティの取組の統括部署としても活動し、本年4月からこの組織が立ち上がっています。スタートからまだ日も浅いところで、このような検討会に参加させていただきまして、大変恐縮しておりますが、どうぞよろしくお願いいたします。
今日のお話を伺っていて感じたところ、それから御議論いただきたい点のところから申し上げますと、資料20ページの、恐らく課題のところが一番関係してくるのかなと考えております。
私どもは、地域金融機関ですので、どちらかというと投資というよりは融資で地域のお客様に御案内することが多いのかなと考えておりますが、融資になりますと、投資とはちょっとまた違うところがあるかもしれません。借入れをされるお客様のニーズがやはり中心になりまして、お話が進んでいくものかと思います。
大事なところは、インパクトファイナンスのような考え方をきちんと私ども金融機関がお客様と対話をし、エンゲージメントをする中で、お客様が持っておられるニーズをきちんと酌み取って、それがファイナンスとしてつながるような、そういったやり取りができるようにしていかなければいけないのかなと思っております。
全体としては、地域金融機関で、実績も少しずつ出ているかと思いますが、やはり人材育成のところも課題と思っておりますので、その点もこれから強化をしなければいけないと。
それから、自治体様との連携、行政様との連携を深めて、より裾野が広がるように働きかけをしていかなければいけないのかなと思っております。
現場の声として聞いていただきたいのですが、一つ一つの案件になかなか時間もかかりますし、お客様からすると、御融資はインパクトファイナンス以外にも通常のローンもございます。そうしますと、まずは分かりやすく、融資の商品、ファイナンスの商品が理解できるということ、それからスピーディーに御融資をしてさしあげられるかどうか、コストの面もお客様が気になるところかと思います。この辺りのところを何とか金融機関としてお客様に寄り添いながら、少しでもインパクトファイナンスが進むようにこれからも取組を深めていきたいと考えております。
私からは以上です。
【柳川座長】 ありがとうございます。続いて、角田委員。
【角田メンバー】 vivola株式会社の角田と申します。私、先ほどの浅利様と同様、スタートアップの立場として発言をさせていただければと思っております。弊社は女性・医療×AIというところを事業領域としまして、特に不妊治療のデータ解析を主にやっている会社になります。医療機関様からの電子カルテのデータ解析や、患者様が治療データを管理・分析する治療アプリという形で、患者様にとっても治療データへのアクセシビリティーが上がるようなアプリをつくらせていただいております。
私のほうからは、皆様の御意見の中にもあったかと思いますが、社会課題といっても非常に幅広いと思っております。インパクトが出るまでの時間というところの時間軸のお話もありましたが、課題の深さによっても、業界構造によってもインパクトが出るまでの時間は様々であるかなと。そういった意味では、類型や型化というところにあまりこだわらないほうがいいという御意見もありましたが、私は課題の種類ごとのレンジの広さなどの様々なインパクト投資の形があるということをぜひ皆様に知っていただくことが重要であり、伝えていけるようにここで御議論させていただけたらなと思っております。
そして2点目としては、インパクト投資の人材育成です。我々、2回ほど資金調達させていただいているんですが、スタートアップ側からすると、複数のファンドさん等に入っていただく事も多く、その際にインパクト投資に御理解があるファンド様とそうでないファンド様が混在する場合があった際に、調達自体や、調達ができてもその後の事業継続における株主の合意、社内の意思決定が難しくなるかなと思っております。
そういった意味でも、色々なファンド様の中にでもインパクト投資に御理解いただける方々が増えていくというのはスタートアップ側としても非常に好ましいことかなと思いますので、ぜひそういった視点でも人材育成について御議論させていただければと思います。
私のほうからは以上になります。
【柳川座長】 どうもありがとうございます。これで一通り御発言いただいたかと思うんですけれども、すいません、私がちょっと急がせてしまったこともあるかと思うんですけど、ちょっとだけ時間余っておりますので、何か最後にもう一度御発言なさりたい、あるいは言い残したことがおありの方は挙手なり、ネームプレートを上げていただければと思います。いかがでしょうか。そう言うと手を挙げにくいですかね。どうぞ。
【馬田メンバー】 こういう場があるたびにちょっと言おうと思っているところとして、やはりインパクト投資をはじめ、政府が考えることが非常に多くなってきているなと思っています。ただ官僚の皆さんの働き方はあまり健全ではないように思うので、単なる効率化だけではなく、公務員を増やしてリソースを拡大することは、良い政策を考えたり、考えた政策を確実に実行する上でも非常に大事なのかなと思っております。直接的に本検討会に関係することではないですが、こういう場でも主張をさせていただこうかなと思いました。
【柳川座長】 ありがとうございます。そのほか。どうぞ。
【金井メンバー】 三井住友信託の金井です。先ほど横浜銀行さんも融資の話をされていましたけれども、一言申し上げておきたいと思います。言葉の定義の問題でもありますが、特に銀行にとって投資業務と融資業務は扱いが異なります。融資におけるインパクトファイナンスは、リターンの向上というより、リターンは利息という形でもらっていますので、むしろ融資先企業へのエンゲージメントを通じた企業価値の向上が主たる役割です。エンゲージメントの結果、自分たちの貸し倒れリスクが減るのでリターンと言えなくはないのですが、直接的な投資リターンとは異なります。ともあれ、投資と融資は分けて考え、創出するインパクトは何か、定量的なものだけでなく定性的なものはないのか等々のことを整理しておかないと、特に地域金融機関は混乱します。
【柳川座長】 ありがとうございます。正木委員、どうぞ。
【正木メンバー】 太田メンバーから経団連の報告書を読み込んでいただいたお話をいただき、誠にありがとうございます。ご発言の中で、横並びで比較できないかとのご指摘がありました。まさに非財務の部分を明らかにしていき、横並びで比較できるような、会計基準になれば一番いいのかもしれないのですが、インパクトは、イノベーションの話であり、やはり価値創造ストーリーが大事で、どちらかというと、コンプライ・オア・エクスプレインのエクスプレインのストーリーの説明の仕方が大事ではないかと感じています。ロジックモデルを組み立てて、「こういうストーリーでいくからここでこういう数字が出てきて、それがこうつながるんだ」というのを説明していくことが大事だと思っています。
だからこそ対話が生まれるし、投資家の皆さんも根気よく付き合わなきゃいけないということで、たくさんの投資先をお持ちの投資家の方にとっては大変かもしれないですが、ぜひ事業会社のストーリーを、エクスプレインをよく聞いていただいて、投資の判断にしていただけるとありがたいと思います。
【柳川座長】 ありがとうございます。ちょっとだけ私も。あんまり今日まとめということは何もないんですけれども、皆さんの御意見伺った感想的なものを若干だけお話しさせていただきます。
今日はインパクト投資に関する総論的なお話なので、かなり多面的な御意見が出てきて、活発な御議論ができてよかったかなと思っております。
インパクト投資に関する重要性をこの会議で否定する人は誰もいないんだと思いますし、社会全体でもそれはないんだと思いますけれども、何だかんだこれに関しての一般的な認識が不足しているのも事実で、そこをどうやってきちっとこの研究会で整理して、一般の方にどれだけしっかり理解していただくかというのはとても重要なことかと思っております。
それから、皆さん御議論あったように、やっぱりどう測定をしてどう評価していくかというところが非常に大きな鍵であって、ただ、それも、先ほどお話があったように、物すごく精緻に数値化できる話から、取りあえずまずデータを取ってみてということまで幅広くあって、そういう意味では、まずストーリーとそれから対話というものがスタートになる部分もかなり大きいのかなと思います。
その観点で多少整理していくべきなのは、皆さん御議論があった時間軸ですね。時間軸をきちっと区別しないと、かなりぐちゃぐちゃしたものになってしまうし、それから範囲をどういう範囲で考えていくかということも大事かと思います。
ただ、範囲に関しては、あまり最初から定義を狭くして決めてしまうと、結局その範囲のイノベーションしかできないし、その範囲のインパクトしかなくなってしまうので、ある種、その範囲を、我々が考えている範囲を超えるものが出てきてこそイノベーションだということを考えると、定義はあまりがちっと上から最初に決めてしまうという話ではないんだろうと。
それからもう1点目は、御議論あったように、金融庁ですので、金融取引全体の中でこの話がどういう意味を持つのかというところは考える必要があって、その点では融資と投資は大分違っていて、金融機関、銀行を通じたものとファンドを通じたものとではやっぱりメカニズムも、実際お金の流れも随分違うので、この辺りは少し混乱がないように整理しながらやっていきたいなと考えている次第です。
最後のポイントは、安間委員からもお話があったように、政策として何をやるかということですよね。かなり、今日のお話の中では、民間側が自主的にやっていくべきこれからの課題と、それから政策的に対応する課題と両方入っていたと思います。全部を政府がやる必要はありませんし、全部を金融庁がというわけでもないだろうと思いますが、ある程度、制度整備的な話、基準づくりのような話は、やはり政策的に何か決めないとうまくいかない部分があるのかと思いますので、その辺り、官民連携なんですけど、官なり政府なり金融庁なりがどこまで何をやっていくかというところも整理していく必要があるかと思います。
というわけで、私、言いっ放しで大変恐縮ですけれども、単なる整理でございますので、この後、皆さんの御議論を進めていければと思っております。
よろしいですか。
それでは、活発な御意見ありがとうございました。次回は11月11日にゲストを迎えてのオリエンテーションを行いたいと考えております。
本日も大変貴重な御指摘や建設的な御議論をいただきましてありがとうございました。
最後に、事務局のほうから連絡等ございましたらお願いいたします。
【西田サステナブルファイナンス推進室長】 次回の会合については、今柳川先生からもお話ありましたけども、11月11日と、その次25日につきまして、インパクト投資に取り組んでこられた方からのヒアリングを予定しておりまして、今回ハイブリッドで開催させていただきましたけれども、完全オンラインで実施させていただくことを考えてございます。
【柳川座長】 それでは、以上をもちまして本日の会議を終了させていただきます。皆さん、御参加ありがとうございました。
―― 了 ――
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金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総合政策局総合政策課サステナブルファイナンス推進室(内線 3515、2918、2770)