「インパクト投資等に関する検討会」(第3回)議事録

1.日時: 令和4年11月25日(金曜日)14時00分~16時00分

【柳川座長】  それでは、ただいまよりインパクト投資等に関する検討会第3回会合を開催いたします。皆様、御多忙のところ御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
 
 初めに留意事項を御案内いたします。御発言されない間は必ずミュート設定にしていただければと思います。御発言をされる際にはミュートを解除し、御発言が終わられましたら再びミュート設定していただくようお願いいたします。
 
 今回は前回に引き続き、インパクト投資家の方からお話を伺うとともに、企業投資家や資金調達を行っているような方からも、各種の取扱いや課題等について御紹介いただきます。前半にGLIN Impact Capital様、三菱商事様、後半にカチタス様、エレファンテック様にプレゼンをいただく予定になっております。各社様におかれましては、御協力いただきまして誠にありがとうございます。後ろのほうもいらっしゃいますので、恐縮ですけれども、15分ということで御理解をお願いいたします。
 
 それでは、まずGLIN Impact Capital、中村様、よろしくお願いいたします。
 
【中村様】  このたびは貴重な機会をいただきまして、ありがとうございます。GLIN Impact Capitalの中村と申します。本日はよろしくお願いいたします。資料等を投映いただきまして、ありがとうございます。
 
 では、15分と限られていますので、手短にかつ簡潔に、少し早めに説明させていただきます。その後少し質疑応答のお時間があると伺っておりますので、この御説明自体は少し早めにさせていただきますが、後ほど御質問がありましたらぜひそのときにお伺いしていただければと思います。
 
 早速、始めさせていただきます。まず、私たちはGLIN Impact Capitalと申しまして、日本の未上場企業に対して、インパクト・ESG投資を行うファンドを運営しております。本日は私たちのインパクト投資の実際の実務のところ、及び、我々はもともと日本でインパクト投資を広げたいというミッションの下で活動しておりますので、そういった観点から、エコシステムビルディングについて、我々なりにこういった形で貢献させていただきたいということも簡単に述べさせていただければと思います。
 
 アジェンダは、1番のところで我々の紹介、2番で今申し上げました御提案といいますか、私たちがこういうふうに貢献させていただきたいというお話3点を申し上げさせていただきます。
 
 我々、まずミッションとしては、ここに書いてあるように、一言で申し上げますとサステナブルファイナンスへの変遷、特にインパクト投資、ESG投資が当たり前になるような、世の中にアップデートされていくということをミッションに立ち上がったファンドであります。もともと創業メンバーが途上国に住んでいたような長い経験もありまして、そういったところから、資本主義と言うと少し大げさかもしれないですけれども、短期・中期の経済的利益のみをインセンティブとするような企業の意思決定の仕方、評価の仕方、投資の仕方ということを、より今の世の中に合う形にアップデートする流れに貢献したいと考えております。
 
 その中でもインパクト投資、特に日本におけるインパクト投資の拡大に貢献したいと考えて、3年前から活動を始めております。3年前、我々、創業メンバーがアメリカにいたときに、特にアメリカにおけるインパクト投資、特にマーケットレートインパクト投資の拡大を目の当たりにしまして、その中で日本はかなり、サイズ感で言うとまだまだ小さいところでしたので、ここでどうやったら日本でインパクト投資が広がるのだろうかということをアカデミックな立場といいますか、研究しながら考え始めたところが始まりです。その結論の一つとして、今の日本の状況においては、インパクト投資を行うアセットマネジメントとか、実際のディールをたくさん事例として蓄積して、それを関係者間で共有して、産業をつくっていくということが必要だと考えて、この活動の立ち上げに至ったところがあります。
 
 次のスライドをお願いします。ここですね。ファンドをやっているんですけれども、基本的に我々、この課題としては、一番右側の「目指す社会像」として、こういった社会課題解決と経済成長がアラインしていくようなサステナブルな社会づくりだと思っていまして、その手段としてインパクト投資が広がっていくことを目指していますし、こういった目的意識がありますので、まずは事例の蓄積というファンドの実践に限らず、真ん中にあります、実践のシェアとかこういった海外動向の紹介、ネットワークの紹介、そして一番下のところで、日本のインパクト投資の現状の発信といったことをエコシステムビルディングの活動をしながらやっていきたいと思っておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。
 
 その中でファンドとしては、今ここに書いてあるようなミドル・レイターステージの未上場企業にインパクト投資をするということをやっていまして、日本の企業さんとか金融機関さんの中でインパクト投資を学んだり、一緒にやっていきたいというような方々と一緒にそういったことをやっております。投資先としては既に4件出資しておりまして、来年、再来年とメインの出資時期にいろいろな案件にインパクト投資を実行していく予定になっております。
 
 セクターは日本の社会課題ということで、日本が世界に先駆けて直面している問題、そして少し遅れて直面している問題、遅れている問題といったものを解決するスタートアップに出資しております。
 
 ここは非常に重要なところですけれども、インパクト投資ファンドとして、ソーシング、投資検討、投資後、Exitまで全て一貫して、インパクト、ESG、ファイナンシャルの観点を組み込んでおります。
 
 その中でもこのインパクト投資は、IMMへの投資検討、投資後、Exit、一貫したところが非常に重要だと思っておりまして、我々がもともと関わっていたアメリカのファンドとか、マーキュメン、オメディアネットワーク、また我々のアドバイザーであるビジネススクールの教授の知見などを生かしながらディスカッションして、そういった投資のプロセス、インパクト投資基準をつくって運営しております。
 
 よりインパクトのことを細かく書いたこところがこのスライドですけれども、時間の関係で少し割愛させていただきますが、定性的かつ定量的な部分を投資の検討のところからちゃんと組み込んでいまして、Exitのときに、そもそもインパクト面で案件が成功していたのか、していなかったのかといったところも明確に判断できるようにしており、かつ、それを我々のGPの報酬にも反映させるというところも少し踏み切って、トライアル的にも挑戦しているということであります。
 
 これはIMM、当社の伴走をこのIMMの形で実践してやっております。
 
 これは一つの例ですけれども、時間の関係で割愛しますが、投資先にロジックモデル、Theory of Changeをディスカッションしながらインパクト提携の設定、そしてマネジメント、モニタリングもしております。
 
 あとは、我々、インパクト投資のフレームワークIMM、ESGも含めて、非常にムービングターゲットで世界で常に動いている状況ですので、日本でガラパゴス、かつ独りよがりにこういったことをやらないためにも、グローバルな第三者機関と連携を始めておりまして、BlueMarkとかImpact Principlesに倣って我々の活動をしております。
 
 それ以外にもアドバイザーとの定期的なアップデートとか、あとはインパクト評価をする海外の60decibelsなどと連携しながら、グローバル基準を生かして、かつ日本のコンテクストでもやっていくということを念頭に活動しております。
 
 メンバーは、投資チームは4人のパートナーでやっております。私を含め秦、才木の3名がもともと創業メンバーとして3年前から活動しておるんですけれども、加藤が加わりまして、今、このメンバーで運営しております。
 
 あとは、我々3名の創業メンバーが出会ったチームが、アメリカのビジネススクールにいたときに始めていたんですけれども、そのときの関係、日本でインパクト投資がどうやって広がるかという卒業研究から始まっていますので、そのときのアドバイザーであったビジネススクールの教授3名もアドバイザーとして入っておりまして、彼らの知見とネットワークをかなり活用して我々は活動しております。
 
 前のスライドをお願いします。映らなければ次で、18で大丈夫です。
 
 ここから3点、日本のインパクト投資発展に向けて重要な点だと思うところを述べさせていただきますと、1点目は、インパクト投資の正確な認識が改めて必要だと感じております。
 
 次のスライドをお願いします。映っていないので口頭でお話ししますと、インパクト投資、ESG投資は非常に混同があると考えています。特に海外の実務者といろいろと意見交換をする中で、日本でESGとインパクト投資を非常に混同している方が多いので、正確な認識をすることが産業発展に重要ではないかというようなコメントいただくことが多くありまして、そこの点について改めてお話しさせていただければと思います。
 
 時間の関係で割愛しますと、どちらかというとESGはプロダクトとサービスのライフサイクルを考えたときに、それが生産されるまでのマテリアルなリスクファクターを見るというところですけれども、インパクトはどちらかというとそれが生産された後、その製品、プロダクト、サービスによってもたらされる社会のポジティブ・ネガティブな外部性、もしくは影響を見るということで、実務者の間ではかなり明確な線引きがされつつあるんですけれども、ここを非常に混同しているところが日本のみならずよくありますので、まずここの認識をアップデートすることが非常に重要だと思っています。
 
 2つ目が、日本のインパクト投資発展のためには、アセットマネジャーが非常に重要だと思っております。
 
 我々が最初にファンドを立ち上げる前にいろいろなリサーチを日本で行っていたときにすごく感じた点としては、日本においてアセットオーナーさん、インパクト投資をやりたい、予算を取ったという方が非常に多くいらっしゃいます。そして社会起業家、スタートアップも、インパクトスタートアップ協会に見られるように、今とても盛り上がりがあります。ただし、そこをつなぐアセットマネジャー、日本企業に出資する日本のアセットマネジャーは非常にまだ少ないと感じておりまして、アセットマネジメントのときはトラックレコードとファンドレージングの鶏と卵ですので、ここが遅れるということは当然だと思うんですけれども、やはりここを意図的に、産業育成の意思を持って支えていくことが、今後の日本のインパクト投資発展のためには非常に重要だと考えております。
 
 時間の関係で3つぐらいスライドを飛ばしてもらってもいいでしょうか。次のスライドをお願いします。
 
 最後はグローバルスタンダードの理解と国際発信力の重要性ですけれども、インパクト投資は最初の図にありますとおり、欧米が圧倒的に進んでいるという状態ですので、スタンダード、ガイドライン、フレームワーク、全て基本的には今はアメリカ、ヨーロッパから来ているものと理解しています。ですので、ここの最新情報をパブリックになったものはもちろん、パブリックになる前のものを含めて正確に理解をキャッチアップして、日本として早く追いついて、そこにさらに発信していく、日本のインパクト投資のやり方を発信していくということが非常に重要だと思っています。特に日本は先進国として、ほかの社会、ほかの国に先駆けて直面している社会課題がたくさんあります。メンタルヘルスとか高齢化、少子化といったものに対して我々がインパクト投資のやり方を示して、世界がそこに追いついてきたときに、ちゃんとインサイトフルなプレーヤーになるということが非常に重要だと思っておりまして、我々としてもそれができるようなネットワーキングを含め、活動しております。
 
 インパクト志向金融宣言でそういった活動をさせていただいていまして、いろいろな発信も行っております。先月、こちらにいらっしゃる安間さんと野村様と一緒にGIINで、日本のインパクト投資の状況について説明を差し上げてまいりました。
 
 それ以外にもいろいろなインパクト投資のグローバル実務者、ハーバード関連とかGSG、GIIN、BlueMark、UNDP、そういった方々と日本の状況をよくディスカッションさせていただいて、日本のインパクト投資家を世界に発信、アピールしていくということを非常に重要に考えておりますし、我々、その点ですごくネットワークがあると思っています。
 
 こういった勉強会なども企画するんですけれども、我々だけにとどめず、日本の皆さんに我々を介して、こういった我々のネットワークを利用していただいて、どんどん日本の状況を発信、まずは追いつくところ、そこから発信ということをぜひお手伝いしていきたいと考えておりますので、今後ともぜひよろしくお願いいたします。
 
 時間が過ぎていますが、終わりとさせていただきます。後ほどまた御質問をいただければと思います。
 
【柳川座長】  ありがとうございました。
 
 続いて三菱商事、作田様、よろしくお願いいたします。
 
【作田様】  (プレゼンテーション)
 
【柳川座長】  ありがとうございました。それでは、ここで区切らせていただいて、今のお二方の御説明に対する質問やその他、お話を伺ってお気づきの点などについて議論する時間としたいと思います。御意見のある方は挙手機能、もしくは口頭で声を上げていただいてお知らせください。オブザーバーの各協会の方からも何かあれば御質問や御意見を賜れればと存じます。よろしくお願いします。
 
 それでは、野村證券の太田様、挙手が本当に順番かどうか分からないですけれども、まずは太田様、よろしくお願いいたします。
 
【太田メンバー】  ありがとうございます。大変貴重なお話、お二人ともありがとうございました。GLINの中村様に2つほど御質問があります。よろしくお願いいたします。
 
 後半でインパクト投資とESG投資の違いについても触れていらっしゃいまして、ここについては本当にそのとおりだなと思って聞いておりました。私の中ではESG投資は、はっきりとリスクマネジメントに近いものであって、ネガティブなインパクトを抑制するものと。その結果として、ESGスコアとか格付のスコアで評価されることができるものだという理解でおります。一方、インパクト投資については、22ページのような、製品がもたらす正の影響、つまりポジティブなインパクトを図るというところにはとても賛同しております。ただ、日頃抱えている問題として、そのインパクトをどうやって最終的な財務にまでつなげて価値の評価に落とし込むのかということが非常に悩ましいところでして、今日の資料を拝見すると、9ページ、投資後に「インパクト企業価値向上」という、まさに私がいつも見ているワードがありましたので、インパクトを測定した後、どうやって企業価値向上にまで結びつけるのか、そこについてぜひ一つお話を伺えればと思います。
 
 あともう1点、ハーバード・ビジネススクールのジョージ・セラフェイム教授によるインパクト加重会計はどういう評判なのか、もし御意見があればぜひ伺わせてください。よろしくお願いいたします。
 
【中村様】  分かりました。ありがとうございます。
 
 まず、1つ目のインパクト企業価値向上をどう考えているかというところですけれども、2つほど説明の方向性といいますか、2つ重要な点があると思います。1つは、企業価値向上のところで申し上げますと、我々、ファンドとして企業価値向上をするということで、基本的にはマーケット、企業価値をどうやって上げていくかということを一つ考えています。企業価値を考える上では、売上げを伸ばしていくという話と、マルチプルを上げていくという話があると思うんですけれども、トップラインを伸ばしていくところについてまず申し上げます。
 
 基本的に我々はインパクト企業価値向上、インパクト・バリューアップということを言っているんですけれども、これで具体的にやることというのは、まずその会社のロジックモデル、Theory of Changeをつくりながら、会社の競争の源泉を見つけて、それをサステナブルに拡大していける事業戦略のアップデートをお手伝いして、さらにそれを対外的にアピールしていくことも、ブランディングの観点も含めてお手伝いしますので、これを行うと何が起きるかというと、幾つかいいところがありまして、1つは、場合によっては売上げが伸びることがある。製品、商品、セクターによりますけれども、特にミレニアル世代において、要はインパクト企業にプレミアを払うとか、インパクト製品を買う志向が高まって、特にヨーロッパ、アジア、アメリカで特に高まってきているものがある中で、まずそういったところでトップラインを伸ばしていくことができると思います。もう1つは採用にもとても強くなるということで、これはどちらかというとコストが下がるということだと思うんですけれども、通常、同じ給料で考えられないような優秀な人材を採用効率よく取っていくことができるところもありますので、ボトムラインに向かっていく中でより効率を高めることができます。
 
 最後、マルチプルのところで言いますと、インパクト、ESGは若干混同するところですけれども、ESGについては、冒頭もおっしゃられました、ある意味ESGレーティングを取ったりとか、ESGとしてよい会社と認められると、特にESGのスクリーニングを入れて投資している上場株投資家もすごく増えている中で、需給のバランスもあってマルチプルが上がってくる、無形資産価値が増えるというふうに説明する方も多くいらっしゃいます。そういったところもありますし、インパクトでも、インパクト格付というのは今は世の中にあまりないですけれども、同じように需給の関係からマルチプルが改善するということも聞いていますし、現にそういったところを意図せずしてうまくやられている会社というのは、我々が見ている未上場企業の段階でも非常にマルチプルが高いということは起こっております。この傾向は基本的に、不可逆的に進んできていると思っています。
 
 2つ目のインパクトウエイテッドアカウントについては、こちらにも参加されている渋澤さんも非常にお詳しいと思うんですけれども、まさにそういったアカウンティングの考え方の中でインパクトを貨幣価値化して考えていくようなところで、新しい取組だと考えています。ビジネススクール、特にハーバード・ビジネススクールの中ではとても盛り上がっていまして、このインパクトウエイテッドアカウントをチームのみならず、ほかの教授たちも集まってこういうインパクト、ESGをどういうふうに企業価値とか事業の評価、判断に加えていくかというイニシアチブも今年できまして、非常に熱が高まっています。
 
 これが実際に日本では、渋澤さんも御存じのとおり、先月ですか、この創業メンバーの1人が来日していろいろな会社さんに会われていますし、日本でもいろいろなことをやっていきたいという会社さんも増えていますし、ヨーロッパのⅠSSBでも取り組まれていく可能性があるというようなお話もされている中で、まさに今、これから高まっていくところだと思っております。
 
【太田メンバー】  ありがとうございます。大変参考になりました。
 
【柳川座長】  ありがとうございます。何人か手が挙がっていらっしゃるので、まとめてお話しいただいた後、レスポンスに行きたいと思いますけれども、まずは馬田様、お願いいたします。
 
【馬田メンバー】  御説明ありがとうございました。お二人に1問ずつ御質問させていただければと思います。
 
 まず作田様から、御説明本当にありがとうございました。御指摘のとおり、スケールアップ段階だと本当に莫大なお金が必要で、そこをどうしていくのかというところはスタートアップにとって頭痛の種かと思っております。これは私のコメントになりますけれども、特に日本だと、東証グロースの上場前とかに黒字化を求められる、というふうなことを聞くことが多くて、その段階はスタートアップにとってスケールアップの段階だと思うので、本当であればスケールアップの投資のために赤字を掘って資金調達しなければいけないのに、上場しようとするとブレーキがかかってしまうみたいなことを聞くことがあります。そこに対して海外だと、今回のBreakthrough Energyのようにカタリティック・キャピタルみたいなものがあったりとか、あるいはSPAC上場という手段があり、数年後に黒字になるのであれば今は赤字でも上場できたりするみたいな、そうした金融の市場が整っていると見えています。そうした異なる金融構造を持つ日本の市場の中でどうやって、アメリカにそっくりそのままつくるべきではないとは思うんですけれども、どう良いところの真似をしていくべきか、いいところを取り込んでいくべきかということは、今回のお話を聞いていて本当に課題だと感じた次第です。
 
 そうした意味で、今回、もしかしたら必要に応じて海外からBreakthroughのようなお金を引っ張ってくるとかいうこともあるのかと思っておりまして、そうした文脈以外でも、ぜひBreakthrough Energy Catalystが日本の産業やスタートアップにどのように使えそうなのか、あるいはそれを見ていて日本政府に何か示唆があれば、作田様からぜひお伺いできればと思った次第です。1点目がそちらの質問になります。
 
 もう1点、中村様への質問ですけれども、アセットマネジャーが少ない一方で、それが鶏と卵ですというふうなお話がありました。なりたいという人が少ないのか、あるいはできる人が少ないのか、あるいはLPとして入る出し手が少ないのかとか、いろいろと理由はあるかと思うんですけれども、一番のレバレッジポイント、介入するとしたらどこがレバレッジポイントとお考えなのか、それに関して中村様の御意見をお伺いできればと思っております。以上、2点になります。
 
【柳川座長】  それでは、続けて正木様、お願いいたします。
 
【正木メンバー】  ありがとうございます。まず本当に、お二人ともすばらしかったです。お二人とも鶏と卵の話をされていて、今の御質問とも重なりますが、BEC、作田さんの説明の中で「民間資金の提供、グリーンプレミアムを支払う需要家の確保、政府支援の確保」で何とか鶏と卵のジレンマをブレークスルーしたいとの指摘がございました。その3つをうまくセットして、組成してやっていくというのは、ここがまず大変だなと。社会起業家の人は、まずどこにどう働きかけたらいいのかというのが、中村さん、作田さん共通に、伺いたいところでした。
 
 中村さんに、加えてもう少し伺いたいのですが、スライドの4ページで欧米ではインパクト投資が本格化ということで地図も書いていただいています。今月初めに経団連もイギリスに派遣したミッションでいろいろな話題をしてきたのですが、例えば大手の石油関連企業と話した際に、インパクト投資といっても「うーん」という反応であまり積極的に進めているという話はなかったわけです。それは大企業だから駄目なのか、社会起業家、ベンチャー、スタートアップの世界でなら本格化しているということなのか。それとも本格化している「業界」があるのか、この「国」だと進んでいるとか、もう少しそこら辺の状況を教えていただけるとありがたいと思います。
 
【柳川座長】  それでは、まだお二人ぐらい御質問がありますけれども、あまりたまってしまうとあれなので、お二方、それぞれレスポンスをお願いできますか。
 
【作田様】  (適宜回答)
 
【柳川座長】  では、中村様、お願いいたします。
 
【中村様】  承知いたしました。まず、1つ目のアセットマネジャー拡大のためのレバレッジポイントというのは、結論から申し上げますと、今まさに日本政府としてもすごく取り組まれているスタートアップ支援の中で、例えばJICさんとか中小機構さんの中でマッチングファンドとか、政策目的も兼ねたファンド支援はされていると思うんですけれども、そういったものがインパクト投資でも起きてくるというのは非常に重要だと思っております。私が考えているのは、ポジショントークと思われるかもしれないですけれども、非常にフラットに思っておりまして、もともと我々はファンドをやる前からこういったリサーチをやっている中で、アセットマネジャーの拡大と、そのためのアセットオーナーのご支援は必要だと思っています。もともとインパクト投資家になりたい人がたくさんいるのかといったところについて申し上げますと、なりたい人はたくさんいます。私ぐらいの世代でもインパクトファンドを始めたりとかたくさんいらっしゃいます。でも、みんな実績がないです。それは当たり前ですけれども、インパクト投資は新しい投資のやり方ですので、当たり前に実績がないと。そうするとLPさん、アセットオーナーさんは当たり前にそういった人にはお金を出せないという、ある意味、自然の摂理的にはとても当たり前なことが起きて、その結果、アセットマネジャーが育たずにボトルネックになっているということがあります。逆に言いますと、ここの最初の黎明期を支えることができる政策価値が非常に大きいのは、官民合わせてこういったマッチングファンド、中小機構さんやJICさんといったところに支えていただけると、自然と実績ができていって、そうすると自然といろいろなLPさんが今インパクト投資の予算をつくって、海外のインパクトファンドに投資していますので、それが今度は日本に流れてきて、日本の産業が育っていくという流れができると思っています。
 
 2つ目の大企業、業界限定なのかという話については、私は必ずしも業界限定ではなくて、大企業さんも金融機関さんも、欧米でも、日本でもすごく興味を持ち始めていると思います。アメリカでもセールスフォースさんとかオートデスクさん、ジョンソン・アンド・ジョンソンさん、すごく大きな企業が、特にイノベーションヘの感度が高い大企業さんはインパクトのコーポレート・ベンチャーキャピタルを立ち上げていますし、金融機関もありとあらゆる金融機関さんがすごく力を入れています。業種としてもスタートアップのみならず、上場株、バイアウト、中小企業とか事業承継の案件への企業買収におけるインパクト投資、融資といったありとあらゆるもので、特にヨーロッパ、アメリカですと、アセットクラスが非常に多様化しているというのを国際会議でも感じております。シェルさんとかですとインパクト投資が広がると評価されない会社ですので、ポジショントーク的にあまり興味がないと言っている可能性は少しあるかもしれないと思いました。
 
【柳川座長】  ありがとうございます。
 
 それでは、お二方手が挙がって、今、3人ですかね。それでは、3人まとめてお話、御意見を伺いたいと思いますけれども、まず林様、お願いいたします。
 
【林メンバー】  御指名ありがとうございます。まず初めに中村様、作田様、お忙しい中、プレゼンテーション本当にありがとうございました。
 
 私からは、作田様に1点だけ手短に御質問させていただきたいと思います。プレゼン資料の5ページ目のタイトル、「何を、どのようにして、ブレークスルーするのか」というスライドを非常に興味深く拝見しました。このフレーズをこの検討会の文脈に書き換えるとすると、何をどのようにしてインパクトを投資家として生み出すのかということになると思うのですが、その際、通常の一般的な投資家が行うことは、当たり前ですけれども、製品やサービスを供給する側の企業への投資とか、その企業への働きかけ、伴走ということになるわけですけれども、本当にそのブレークスルー、すなわちインパクトの最大化を追求しようとすると、供給側への資金提供とか働きかけだけではなくて、資料に書かれていたように政府支援を呼びかけるとか、需要側にも働きかけることをセットで実行することが、ブレークスルーのためには本当に必要なんだ、重要なんだということだと理解しました。
 
 そこで御質問ですけれども、難しい質問になってしまうかもしれないですが、通常、一般的な投資家が行う供給側企業への投資とか働きかけ、伴走以外の部分、つまり政府支援を呼びかけるとか需要側にも働きかけるという活動について、これはBreakthrough Energyだからできる部分というのは相当大きいのかとはもちろん思うんですけれども、気候変動の領域に限らず様々な環境社会課題の分野の中でという御質問ですが、インパクトを生みだそうとする一般的な投資家が限られたリソースの中でこういう政府支援を呼びかけるとか、需要側にも働きかけるといったことを効率的に行うことができるとすればどんなことがあるかという点について、もし何らかヒントがありましたらぜひ教えていただけないかと思いました。
 
 以上です。よろしくお願いいたします。
 
【柳川座長】  それでは、続いて金井様、お願いいたします。
 
【金井メンバー】  三井住友信託の金井です。御指名ありがとうございます。
 
 作田様に2つ質問があります。実は弊社も、先般、BECへの投資を決定しました。弊社はインパクトエクイティーというリスクマネーを投入する5,000億の投資枠があり、そちらからの自己勘定での出資になります。一方で弊社は資産運用会社も持っており、アセットマネジャーとしてもインパクト投資を行っています。
 
ところで、BECへの投資はファンドへの投資です。従って、個別企業のインパクト評価ではなく、ファンドを通じてインパクトを創造するGPの能力評価が重要です。三菱商事さんはBECをインパクト投資として考えているわけではないとおっしゃっていたので、あまり関心がないかもしれませんが、アセットマネジャーが顧客である最終投資家から運用を任され、インパクト投資ファンドに投資するケースを考えた場合のデューデリジェンスのポイント、言い換えればファンド投資におけるIMMのポイントは何なのか、お聞かせいただけないでしょうか。
 
 2点目の質問です。BECが投資先を決定する場合、テクノロジー評価が重要になると思います。投資先の技術に対する評価もありますが、それぞれの技術がつくり出すインパクト分析も必要になるので、テクノロジーについてかなり深い理解がないとできないのかと思っております。弊社の場合、理系の専門家チームがおりますので、BECについてはそのチームにいろいろと見てもらおうと思っています。イノベーションへのインパクト投資は、ロジックモデルをつくるに際しても、技術そのものについての深い知見がないと恐らくできないので、そういう意味では、一般的なインパクト投資のリソースも違ってくるのではないかと思っているわけですけれども、この辺りの商事さんの考え方、もし会社としての考え方がありましたら教えていただけると大変助かります。ありがとうございます。
 
【柳川座長】  それでは、高塚様、お願いいたします。
 
【高塚メンバー】  高塚と申します。よろしくお願いいたします。
 
 私からは質問というよりは、コメントというか感想めいたことになってしまうんですけれども、最後にGLINの中村さんがアセットマネジャーの育て方みたいなところでお話しされていたことについて、現場から思うところで付け加えさせていただければと思いました。アセットマネジャーが育たないというところは課題認識としては共通で持っています。一方でこれをどう伸ばしていくか、官民連携なども一つ方法があると思いますけれども、まずはアセットマネジャーの中で、今、BECであれば技術・知見を持っていないとという金井さんからのお話もあったのですが、アセットマネジャーとして、プライベート・エクイティーなりベンチャーなり、debtでもプロファイでもいいんですけれども、そういったもともとのプロダクトへの専門性をまず当然に備えながら、追加的にインパクトの知見も持っていなければいけないということを兼ね備えることが、非常にハードルが高い。特に日本の投資家でプロダクトの専門性を育てるような人事のローテーションになっているかみたいなところも含めていくと、企業で育ちにくいという現状があるのではないかと。これは私たちの経験も含めて、自戒の念も込めて考えております。
 
 もう一つはアセットオーナー側・LP投資家側で、インパクトの知見を持ってアセットマネジャーを目利きする力が必要だと思います。海外のファンド投資をやっていますと、海外のLP投資家さんはファンドマネジャーを育てる、かなり厳しい要求を突きつけてファンドマネジャーを育てていくということが、当然のエコシステムの権利行使の中で起きていることが私たちの経験上でもあります。それがややもするとインパクト投資の部分ではまだ欠けているピースかと思っているので、アセットオーナー側さんからのインパクトの知見、そこからのアセットマネジャーへの教育みたいなところも育てていくということが不可欠ではないかと。こういったところに経団連さんのような団体とか、官民連携みたいなことが全体で知見を上げていくみたいなところが、理想を言えば非常に大事なのかと考えました。
 
 ということでコメントだけですが、失礼いたします。
 
【柳川座長】  ありがとうございます。野村様からも手が挙がっていらっしゃいますが、前半はここまでの御質問ということにさせていただきます。野村様、よろしくお願いいたします。
  
【野村メンバー】  かんぽ生命、野村でございます。作田様、中村様、ありがとうございます。
 
 簡単な質問を1点だけいたします。中村さんよりアセットオーナーとして興味深いお話がありました。日本のインパクト投資普及という中で、ESG投資とインパクト投資の混同から、日本では両者の違いがあまり理解されていないのではないかというお話がありました。ESG投資とインパクト投資の理解において、資料の22ページには、ESG投資とインパクト投資を製品・サービスのライフサイクルから異なるものであると新しい観点から分かりやすく説明を頂きました。海外から見た場合、インパクト投資の普及にあたり、日本はESG投資とインパクト投資を混同しており、この混同した解釈に物足りなさを感じるといった意見があるのでしょうか。その点、お願いいたします。
 
【柳川座長】  それでは、結構いろいろな御質問やコメントがあって恐縮ですけれども、お答えできる範囲でお答えいただければと思います。まず、中村様からお願いできますか。
 
【中村様】  分かりました。最後の点、手短にお話しさせていただきます。海外から明確に言われているかといいますと、私が個人的に直接聞いたのは、アメリカのとある一番大きな金融機関さんのインパクト投資のリーダーの方からそう言っていたのを聞きました。それ以外も、例えば先月GIINカンファレンスに行ったときに、いろいろな方が、日本だけではなくてグローバルでも混乱しているというのがあるんですけれども、特にこの分野で長くやられている欧米の有識者の間で、先ほど私が図で示したような見解が最近、説明としてよく使われています。もともとの定義をたどるとGIINのインパクト投資の定義とか、PRIのESG投資の定義とか、非常に曖昧かつ広いので、ある意味混乱して当然だと思うんですけれども、実務家の間、例えばESGのレーティングとかESG投資をするときの判断とか、一方でインパクト投資の判断、レポーティングなど、実務家をやっている人たちの間ではそこが明確に、線引きがクリアになってきています。いろいろなところで説明されているのを私が先ほど拾って整理し直したというのがあの図になりますが、いずれにしろここの理解は非常に重要だと思っております。
 
【野村メンバー】  ありがとうございます。
 
【柳川座長】  それでは、作田様、どうぞ。
 
【作田様】  (適宜回答)
 
【柳川座長】  ありがとうございました。
 
 それでは、時間が押しておりますので、次に進みたいと思います。再びプレゼンテーションに戻ります。次はカチタスの金様、よろしくお願いいたします。
 
【金様】  よろしくお願いいたします。株式会社カチタスの金誠智と申します。本日は貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございます。このような場にお招きいただきましたことを光栄に感じております。
 
 私はカチタスのIPOから5年間IRを担当してまいりました。その変遷をたどりながら、インパクト投資として御評価いただくに至るプロセスについて説明させていただきたいと思っております。
 
 まず、表紙に示させていただいておりますとおり、カチタスは、中古の戸建て住宅、特に空き家になってしまった地方の戸建て住宅を仕入れて、リフォームして、販売するというビジネスを行っております。その仕入れてリフォームする、販売するというふうなプロセスの中で、地域における当社での従業員の採用や、工務店への発注による仕事の創出及び工務店における雇用の創出という形で地域経済を活性化しています。そして、買主様におかれましては、同地域の新築住宅は大体3,000万円に対して、その半額程度の1,500万円で土地建物つきで御提供することによって、住みやすい環境をお手頃な住宅を提供させていただいております。そのような価値を足す活動を行っておりますので、社名もカチタスとなっております。
 
 P1をご覧ください。本日お話しさせていただきたい内容です。カチタスが創出しているインパクトについて説明させていただくのと、カチタスの5年間のIRの変遷と意識の変化、また、今後インパクト投資を日本で推進するに当たって、発行体側目線でお願いさせていただきたいことをご説明させていただきます。
 
 同じページ、右側を御覧ください。空き家になって、1年,2年もたってしまうとこのようにぼろぼろの状態、荒れ果てた状態になってしまいます。私どもはこのような空き家という課題を解決している会社になります。
 
 P2をご覧ください。私どもの価値創造プロセスについてです。まず一番左側、カチタスを取り巻く外部環境には、人口減少、空き家問題、環境問題などと多くの社会問題が取り巻いています。そのような中、右側の私どものビジネスモデルは住宅を仕入れて、リフォームして販売するというビジネスです。このような事業内容を行うときには、ステークホルダーがたくさんいます。例えば工務店、カチタスの社員になっていただける大学の学生たち、不動産会社の仲介会社さんといった方たちです。私どもは、このようなたくさんの人たちのプレーヤーと一緒になって地域経済を盛り上げながら、成長しています。この輪が私どもが成長すれば成長するほど大きくなっていくことが、私どもカチタスグループが価値を創造するインプットとアウトカムとして創出していく価値だと考えております。
 
 P3をご覧ください。そして具体的なインパクトですが、左側が経済的なインパクト、右側が社会課題に対するインパクトになります。左側を御覧いただきますと、カチタスは一度非上場化して再上場しています。その非上場化した際に経営陣を刷新しております。新しい経営体制になってからが濃い青いバーで右肩上がりに売上高、営業利益ともに成長できております。併せて株価といった面でも、しっかりと右肩上がりに成長しておりますし、株主還元という観点でも、投資家様に対して還元を増やしている状態です。
 
 このような経済的なインパクトを生み出しているだけではなく、もともと私どもは社会課題を解決するという観点から、このビジネスに取り組んでまいりました。今、日本には849万戸と言われるぐらい大きな空き家があると言われており、その中でも地方都市における戸建て住宅が課題の一番根深いところになっています。その課題の一番根深いところに対して私どもが、住宅を仕入れてリフォームして販売するというビジネスを通じて、社会課題を解決しているという状況になっています。この社会的な課題に対するインパクトにつきましては、次のページで説明させていただきます。
 
 P4をご覧ください。左側の図がまさしく私どもが取り扱っている空き家で、築30年から40年の戸建ては、所有者様が生活する中でリフォームをしていないことから非常に傷んでいることが多くございます。私どもが買取させていただいている住宅は、約9割程度が相続などに起因して空き家になってしまった住宅です。
 
 真ん中の図は、私どもは人口5万人から30万人といった地方都市でビジネスを行っております。例えば青森県でいきますと八戸市、十和田市といった人口5万人、6万人といったところでもビジネスを行っております。そういったビジネスマーケットではどうしても仕事がなくて都市に出てきてしまう人たちがいます。私どもは、地方都市で従業員の採用という形で、新卒社員を毎年100名程度採用しておりますし、従業員は右肩上がりに社員も増加しています。そして中央の図の左のバーとして表示させていただいておりますのが、工務店に対する発注金額になります。約160億円超の工事を発注させていただいておりまして、本来であれば、冬になると出稼ぎに出なければいけなかった雪国の方々もカチタスの住宅であればリフォームという内装工事になるので、出稼ぎに出なくてよくなったというふうなお声もいただいています。このようにカチタスが創出している価値は目に見えない価値も非常に多くございます。
 
 また、中央の図の右のバーは、私どもの住宅を購入いただいたお客様は年間2万人超が、地方都市に残り生活を営んでいただいています。このように、私どもは地域経済の空洞化を避けるようなビジネスができております。
 
 そして、一番右側の図は、都心部のマンションは住宅ローン年収倍率が13倍と言われていますが、カチタスの地方における中古の戸建て住宅を御購入いただいたお客様は4倍以下という住宅ローン年収倍率です。私どもが把握している4倍以下というのは、住宅ローン「世帯」倍率としての数字になりますので、ご購入いただいたお客様はクオリティー・オブ・ライフを高く保てている状態になっております。
 
 P5をご覧ください。当ページは、私どもが創出しているインパクトをより定量的にお示しさせていただいています。私どもはサーキュラーエコノミーという観点で、今、地域にある資源・資産を循環させることによって、新しい価値を創出しております。左側に記載のとおり、私どもが使われなくなってしまった空き家を再生することによって、一軒の空き家を再生するにおける経済的インパクトを1,600万円程度創出していると考えております。年間の実績ベースでは、左下に記載のとおり、経済的インパクトとして1,000億円近いインパクトを創出できていると考えております。
 
 右側は、人々が今いる地元にそのまま住み続けることによって、地域経済の発展、地域の空洞化を避けることができていると考えております。右側の図の中央は私どもの社員がIターン、Uターンという形で、地元で働きたい、地元の空き家問題を解決したいという学生たちに対して新しい職場を提供していることを示しております。また、工務店におきましても、先ほど申し上げたように、出稼ぎに出なくてもしっかりと仕事ができるというふうな環境も提供できていると思っています。下段の左下、直接的な雇用といったところが私どもの社員、右側が間接的な価値で、工務店に対する発注金額として具体的に定量的なインパクトを開示しております。
 
 P6をご覧ください。私どもがインパクトを創出していることについて、外部からも評価をいただいています。直近では、代表の新井がアメリカに行き、ハーバード・ビジネススクールでプレゼンをさせていただいたり、GSG国内諮問委員会が直近開示された「インパクト企業の上場 コンセプトペーパー」で紹介をいただいたりしております。日本経済新聞も、空き家問題が解決することによる経済的インパクトを紹介いただいております。そして、具体的に私どもが把握している限りにはなってしまうのですが、右側に記載させていただいている投資家様は、私どもをインパクト投資として選定いただいておりますし、非常に多くのエンゲージメントをいただいている投資家様になっております。
 
 P7をご覧ください。ここからは冒頭、アジェンダにおける2つ目になりますが、私どものIRの変遷になります。非常に細かく記載していますが、一言で申し上げると、私どもが気づきを投資家様のエンゲージによって得ることによって、能動的な活動ができたということです。2017年12月にIPOをして以来私がIRを担当しているので私のスタンスということにはなってしまいますが、ESGに対しての理解度も低く、何をすればいいのかも分からない状態でした。投資家様からは「カチタスはESGに即したビジネスをやっているのだからもっと開示を増やしてほしい」という要求もたくさんいただいていたのですが、当時の私のスタンスは非常に悪くて、「カチタスのビジネスモデル自体がESGに即しているのだから、投資家様が研究して理解していただければ、我々が開示を拡充しなくてもいいじゃないか」という状態でございました。
 
 ただ、それでも諦めずに投資家様から、「いやいや、それでは駄目だよ。しっかりと開示をしなければいけないよ。そうじゃないとESGに即した会社だと気づいてもらえないよ」といったことを継続的に教えていただきました。そういったインプット、フィードバックをいただくことによって、私どもも、「あ、そういう開示をすればカチタスを評価いただけるのか」という気づきを得ることができました。それが2020年3月期の上半期の「受動的な気づきの時代」です。
 
 さらに、受動的な気づきから開示した内容を踏まえて、投資家様がさらに私どもに踏み込んで、歩み寄り、フィードバックをいただいたプロセスによって、やっと「あ、カチタスはインパクト投資に即す会社であり、むしろ先進的に取り組んで、インパクトについて説明していく責任があるのだ」と実感しました。そのような気づきを得て、使命感として取り扱うようになり、現在は能動的な開示ができている状態です。2021年3月期のコロナ禍からカチタスに対する評価が非常に高くなってまいりましたので、投資家様からのフィードバックいただいたものを踏まえて、能動的な開示をより拡充しています。また、サスティナビリティ委員会の発足やTCFD開示の対応も進めてまいりました。
 
 P8をご覧ください。最後に、カチタスだけの状況を踏まえての内容になってしまいますし、本日お集まりいただいているインパクト投資の検討会にいらっしゃる皆様は該当しないと感じていますが、株式市場における投資家様の多くは、発行体に対して相互成長するための歩み寄りが少ないかと思っております。そのため、この場をお借りして、金融庁からもそうですし、投資家の皆様の団体がインパクト投資を推進するために発行体が求めていることをアウトプットすることで参考になればという目線でお話しさせていただければと思っております。
 
 まず、発行体側の課題ですが、発行体は、投資家様の投資手法とか株式市場の潮流に関しては、知識が非常に少ないということを改めて御理解いただければと思っています。恥部をおさらしするようですが、私は公認会計士の資格を持って働いてはいたのですが、正直なところ、IPOした当時はESG、インパクト投資という言葉すら存じ上げないような状態でございました。先ほどのプレゼンの中では、インパクト投資とESG投資の境目があいまいになっているというお話がありましたが、私はその前段階で、言葉自体を知らないという状態でございました。ある意味、投資家の皆様にとっては当たり前のことが発行体側では当たり前じゃないとご認識いただきたいです。
 
 一方、私どもは不動産業界の領域におりますので、不動産業界の潮流や我々の事業内容、我々の強みは熟知しています。私どもはIRを通じて不動産業界や自社のことについてはご説明しておりますが、投資家から金融業界や投資家の投資手法についてはご説明いただく機会が少ないです。そのため、発行体と投資家の歩み寄りで、お互いに相互成長していくという観点で金融業界のこともご教示いただきたいです。そういう相互成長の対話をしていただくことによって、私どもも投資家様に対してより信頼することができますし、投資家様からも、このIRはしっかりと対話する姿勢があるかなという評価につながっていくと考えております。
 
 2つ目は、ESGやインパクトについて何を開示すればいいのか分からないということです。私どもがESGレポートでインパクトに関する開示をするに至るまでには、第一生命様には私どもの開示内容を具体的に見ていただいて、フィードバックをいただくだけでなく、他社事例を通じた提案までいただきました。また、第一生命としてカチタスに対して測定しているインパクトモデルも具体的に提示いただきました。りそなアセットマネジメント様におかれましては、カチタスに対して測定しているインパクトの領域は、地域活性化、コンパクトシティーだというフィードバックをいただき、他社事例をお示しいただくことによって開示することができたといったところがございます。多くの開示を見ていらっしゃる投資家の皆様から、ぜひ発行体の方にフィードバックをいただきたいと思っております。
 
 最後になりますが、投資家様とのIR面談がどうしても短期的な目線に集中したIR面談になることが非常に多くございます。例えば、一方的に30分間業績の話を聞いて終話という、対話なしで終わってしまう面談もたくさんございます。そうすると、私どもはどうしても投資家から注目される短期業績にかかわる開示の作成に時間を割くようになってしまいます。結果として、インパクトに関する開示やビッグビジョンの開示になかなか時間をかけることができなくなってしまいます。また、業績以外の開示を作成しても気づいてくれないことが多いです。ぜひ開示資料で直前の四半期と比べてみてから更新された資料があれば、「開示を拡充したんようですが、作成にはどういう背景がありますか」というディスカッションやフィードバックがいただきたいです。私どもはディスカッションを通じて、開示を拡充した資料の効果検証をすることが出来ます。ぜひ開示資料の差分を見ていただきながら、ビジネスモデル、ビッグビジョンに対する対話もしていただければと思っております。
 
 最後に、カチタスにおいては、投資家の皆様に恵まれまして、手厳しいフィードバックも含めて多くのエンゲージメントをいただきました。そういった相互のエンゲージメントによって、引き続き私どもは開示を拡充できると考えておりますし、インパクト投資の領域における発行体側の第一人者というふうな責任感まで昇華できています。本日のこのような場をいただきましたことで、より一層エンゲージメントとESG関連情報の開示の拡充に励んでまいる所存です。並びに、引き続き通常のIRもしっかりと営んでまいりますので、もしカチタスに御関心をいただけましたらIR面談を通じたエンゲージメントを実施させていただければと思っておりますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
 
 本日は貴重な機会をいただきまして、ありがとうございました。
 
【柳川座長】  ありがとうございました。
 
 それでは、続いてエレファンテック、清水様、よろしくお願いいたします。
 
【清水様】  どうもこんにちは。エレファンテック社長の清水です。よろしくお願いいたします。
 
 これは飛ばしつつ次のページに行きますと、まず会社紹介を簡単にだけやって、その後はスタートアップにおけるインパクト投資の仮説ということで、我々のほうで幾つか、インパクト投資の対象になるようなスタートアップをやっている身として、実際に実務でこういう課題がありますとか、そういったところに対してこういうことができるのではないかみたいな仮説を幾つかお出しできればと思っております。
 
 では、まず会社紹介に行きたいと思います。我々は東大発ベンチャーですということしか書いていないのですが、次のページに行っていただきまして、我々、ど真ん中でクライメートチェンジに対してかなり貢献できるスタートアップになっています。インダストリーセクターのプリント基盤というマニアックな部品ですけれども、意外とCOの排出量が大きくて、世界の0.1%ぐらいを占めていますというような部品でして、カーボンの割合はまあまあ高いというのがずっと変わってこなかったのを大きく下げるような、革新的な技術を開発しましたという、そんな感じの会社です。
 
 どうやっているのかというと、ディテールは説明しませんが、金属を印刷する。今までこういったものはエッチングといいまして、前面に銅箔を貼って、一番右が実際のPCB、プリント基板なのですが、前面に銅箔を貼って、要らない部分をエッチングというプロセスで溶かして捨てて電子回路を作るというのが一般的なプロセスでした。ただ、一番右の写真を見ていただけると分かるとおり、この銅色の部分が銅なのですが、ない部分が多いと思うんです。つまり捨てている割合のほうが普通は多いんです。なので、無駄なマテリアルが大量に必要ということがあったのですが、それに対して我々は全く逆の製法で、金属をインクにして印刷するという製法によって、マテリアルの削減によって大きくCOを減らせるというような全然違う製法を開発する会社です。
 
 カーボンと水が大きく下がる、かつグリーンプレミアムはほとんどないというふうな技術になっていまして、ここまで来ていると夢の技術みたいな感じですけれども、そういった技術になっています。
 
 ただ、誰も量産化できていなかったのですが、我々が量産化、実際、我々は15億円ほど投資して量産のプラントを造りました。
 
 2020年からこんな感じで、既にディスプレーとか、あとはマルチビジョンとか数百万ピースレベルの量産も始まっていまして、いよいよこのローカーボン、ローウオーターの電子回路製造技術というので電子回路を置き換えていくというのをまさにやっていますというふうなステージの会社です。
 
 次のページに行っていただきまして、ここまでは我々の会社の説明です。なので、ど真ん中でカーボンを減らす、結構ディスラプティブなイノベーションをやっていますという会社で、これまで70億円ほど資金調達をしてきていまして、資金についてもかなりいろいろ苦労した部分とかもございますので、その辺の話とかを含めて仮説を共有できればと思っています。
 
 いきなりですけれども、この前としてはESG投資とインパクトは違うのではないかという話、まさにそれと似たようなことを別の切り口で言っている話になるのですが、インパクト投資におけるスタートアップ投資の役割というのは、私の観点からすると、よくある誤解というか、リターンよりインパクト優先、ここでは言う必要はないかもしれないですけれども、当然そういうものではないし、あるいはスタートアップに何かしらESG経営をさせるみたいな話ではもちろんなくて、本質的にリターンが長期にわたるような大きなイノベーションを起こすということがインパクト投資の中におけるスタートアップの役割かと思っています。なので、当然リターンの大小ではなくて、時間軸が違うということだと認識しています。例えば気候変動の問題で言うと、これも説明する必要は特にないかもしれませんが、行く行くは非常に巨大なコストがかかってくるということで、我々の場合もそうですけれども、ディスラプティブな投資がすごく必要な一方で、意外と大企業が取り組みにくい領域だと思っています。つまり毎年の環境への取組とかは開示義務があると思うのですが、特にこういう古い業界だと、逆にインクルメンタルな改善を促してしまうという側面もあるのかと思っていまして、なかなか取り組みやすい業界とは言えないということがある中で、我々、スタートアップの力を使って大きなリターンを得るような、得るべき領域かと思っています。というのが、我々を一つ例に取ったスタートアップ投資がインパクト投資の中でどうあるべきかというのは、私の視点からするとこういうふうに整理していますという説明です。
 
 それの課題を次のページに書いていまして、時間軸の問題だけだと思っています。つまり普通の投資に比べると、投資してから上場・投資回収まで長過ぎて投資できないというのが一般的な話かと思っていまして、長過ぎて投資できないだけで、本来はこういうJカーブを掘って、スタートアップが典型的にやるべきディスラプティブなイノベーションですし、というのも含めてやるべき領域だと思っています。ただ、実際の声としてかなり我々も苦労しまして、70億調達しましたと言いましたが、毎回、ラウンドは本当にぎりぎり何とか集まるみたいな感じでやっていまして、実際の声としては、ファンド満期内に十分なバリューがついて上場できるイメージがないというところとか、あとは前例がない、実はこれはめちゃくちゃ言われます。東証でこういった長期ハイインパクトのスタートアップは上場できないというふうに、上場できないって誰が決めたんやという話ですけれども、できないし評価もできない。あとは本音としては、VCは普通10年の満期でやっていて、延長してもプラス2年とかだとすると、6、7年でどうやって利益を出すか。それをPRで評価するという話になってくると、6、7年での利益の金額をKPIに置くと、どう考えてもハイリスク・ハイリターン、ロングターム・ハイリターンの領域は投資できないというのが、それはまあそうですねということで、そういった側面が実際に課題として起きているのかと思っています。
 
 というのが実際にやっていて感じていることですという中で、次のページに行っていただきまして、期間の問題だけだとすると2つあると思っていまして、つまりロングタームで投資評価するか、あるいは投資回収タイミングを早めるかという2つしかないと思っていまして、時期の問題、回収時期の問題は、典型的に本質的には金融で解決できる問題だと思っていまして、それを何とかできませんかというのはここから仮説として幾つかお話ししたいと思っています。
 
 まずは、投資回収タイミングを早められないか。これは結構重要なポイントかと思っていまして、1つは、セカンダリー取引を活性化させる必要が必ずあると私は思っています。というのが、これはダイレクトには書かなかったのですが、セカンダリー取引って今は市場が存在しないので、ぶっちゃけ、めちゃくちゃ買い叩かれるというのがスタートアップ未上場のセカンダリーの現状だと思っています。驚くほど買い叩かれるというイメージ。直近バリューの10%ディスカウントとかではもちろんなくて、直近バリューの80%ディスカウントとか、70%ディスカウントとか、だってお前、もうファンド期限が来ているんだから流動化しないとLPに怒られるでしょうという、足元を見られる状態になるので、めちゃくちゃ買い叩かれるというのがセカンダリー取引の状態だと思っています。だとすると、ロングタームの投資ができないですよねという話があるので、セカンダリー取引を活性化させる、長期でやる上ではそういうインセンティブをつける、促すというのはすごく大事なことだと思っています。
 
 2点目として、これはどこまでできるかという話はあるんですけれども、この後でNASDAQの事例とかを若干出したいと思っているのですが、将来的なインパクトを見込んでIPOをValuationするようなガイドラインがあると、上場投資回収という、実際にもう黒字になります、利益が出てきましたというはるか前のタイミングから仮に上場できる、流動化できるチャンスがあるのだとしたら、それはそれで投資しやすくなるという側面はあると思っています。ただ、これを言うのは簡単、やるのは難しいところだと思っていまして、この後NASDAQの事例を若干共有するにとどめようかと思っています。
 
 ということで、いずれにせよ投資回収タイムを早められないか、特にセカンダリー取引を活性化できないかというところは、スタートアップへのインパクト投資を促して、ディスラプティブなイノベーションを起こす、大きなソーシャルインパクトを起こすという意味では重要だと思っています。
 
 もう1個、ロングタームで投資評価できないかというのは、これはもうすごくシンプルな話で、2点あるかと思っていまして、1点は長い期間のファンド組成が必要だろうと思っています。これは必須のことかと思いますが、Breakthrough Energyは20年とか、ロングタームでやるというのは正直無理というか、10年では本当にハイインパクト・ハイリターンというのはできない、ロングターム・ハイリターンはできないと思っていますので、そういった組成を促すという部分は重要かと。
 
 もう1点は、事業会社から投資を促すというのはすごく重要な部分かと思っていまして、ハイインパクトな事業は長期で新たな事業の柱になり得るので、本当は投資される部分というのはあるだろうと思っています。というのと、あともう一つはスタートアップエコシステムについては、理論上はBreakthrough Energyとかも含めて、このスタートアップのサイクルが何周も回って、エコシステムのサイクルが回って、規模自体が拡大していくというのがいいと思うのですが、そんなのは一瞬では無理なので、そういう意味では、今誰が金を持っているのというところで言うと事業会社があると思っているので、そこからの投資を促すというのは結構即効性がある、かつ本質的に事業会社にとってもメリットがあるというふうな話なのかと思っています。この2点かと思っています。
 
 次のページ以降は具体的な話に入っていくのですが、事業会社にインパクト投資を促すというのは、実際に我々、セイコーエプソン、三井化学、住友商事、あとは信越化学、三菱マテリアルとかいろいろな事業会社さんから資金調達・提携をやっていまして、その中で感じることではあるんですけれども、ESG文脈等で各種の開示の義務化というのは有効性はあるものの、短期で、今年開示できる内容にフォーカスしがちというのがすごくあると思っています。どっちかというと本当は短期だけではなくて、TRLが低いような長期の社会インパクトがあるような技術や事業への投資がちゃんとなされているかというのは、評価として本当は開示させるべきというか、開示していただいたほうがいいのかと思っているんですけれども、今はそういったものがないので、そういったものをつくることで投資を促すことできるのではないかと思っています。
 
 もう1個はイノベーションが必要な部分の定量的開示で、これはそもそもどういうニーズがあるのというところについて、言いづらいかもしれないですけれども、大企業で、いや、実はここは水が削減できないんだよとか、ここがCOを削減できないんだよというのを具体的な定量的な課題とともに出していただければ、そこに対してスタートアップやインパクト投資家も、いや、この課題を解決しにいこうという形で、ピンポイントで事業を組み立てたり投資ができやすくなると思っているので、突拍子もないアイデアかもしれませんが、こういったものの開示ができないかという部分は一つ可能性としてはあるのかと思っています、という話をしています。
 
 次のページに行っていただきまして、この辺でもう終わりです。この辺は補足なのでいいんですけれども、NASDAQの事例と東証の違いとかいう話を書いていますが、短期で利益を出すというのを目指すと、なかなかでかいことがやりづらいですよねというのを例として書いているという感じです。
 
 実際、我々も大企業さんも提携とかをやっている中で、めちゃみんな苦労されていますというところというか、短期的にどうやっていいかはまだ分かっていないというのがあると思うので、今日参加された三菱商事さんみたいにすごく慣れていらっしゃるところはともかくとして、普通はなかなか慣れていないというのがあると思うので、それを何とかできないかというのは一つ重要な論点かと思っています。
 
 次のページで最後としたいと思うんですけれども、それも同じことを言っています。これはこれでいいかと思っていますが、なので、大企業からのインパクト投資は増やせる可能性あるのではないかと思っています。
 
 これで終わりだったような……そうですね、ここまでで終わりです。かなりいろいろな内容を詰め込んでしまったのですが、我々の会社の紹介と、実務をやっている中でこういう課題がありますということを共有させていただきました。ありがとうございます。
 
【柳川座長】  ありがとうございます。
 
 それでは、ディスカッションに入りたいと思うんですけれども、時間があと15分ほどになってしまっていますので、手を挙げていただいている方で、まず手短に御意見をいただいてというふうに考えております。
 
 それでは、吉田様、よろしくお願いいたします。
 
【吉田メンバー】  日本政策投資銀行の吉田です。カチタスさんとエレファンテックさんの御両者から、前のお二方も含めて非常に勉強になりました。ありがとうございます。
 
 後半の2つについては、私は非常に興味深く聞かせていただいたんですけれども、いずれも前回の新生さんのときにも話がありましたけれども、インパクトIPOみたいなところにつながる話でもあるかと思っているのですが、カチタスさんについて御質問ですが、上場時においてインパクトを何らかの形で評価されて上場ができたかどうか、その後のIRにおいてそのストーリーが投資家から求められるところも含めてですけれども、何かインパクトに関する評価について変わったところがあるかということ。インパクトみたいなものが上場時に、何か企業価値の中に反映されていたかどうかというお話を伺えればと思っています。
 
 エレファンテックさんのロングタームというところは弊社の考えと全く同じでして、インパクト投資を考えるときには時間軸を考えなければいけないというのは本当にそのとおりだと思っています。弊社もここは投資家のアペタイトな話もあるので、長い時間軸で見るアンカー投資家がいないと、多分、セカンダリーでピボットがあって変えていくというときもなかなか簡単に、さっきおっしゃいましたように買いたたかれるという問題があるのではないかというときに、例えばこれは一つの解決策として、ある程度長い時間軸の投資家がいることが企業価値評価にどういう影響を及ぼすかということで、御意見があればお伺いできればと思いました。まさにロングタームで投資評価ができないかということですけれども、全員のファンドがそうなるのは無理だと思いますし、多分、Breakthroughファンドも財団というんですか、そういう寄附みたいなお金があるからアメリカで長期ができるんですけれども、日本はそういう文化がないという中で、意図的に長期投資みたいなものを官民のブレンディッドみたいな形で設けていくという世界観もあるかもしれないですが、そういう長期投資家がもたらす企業価値への影響というところで御意見があればいただければと思います。以上です。
 
【柳川座長】  それでは、まとめて吉澤様、高塚様、正木様は今手挙がっていらっしゃいますので、ここまでということにさせていただきまして、吉澤様、よろしくお願いいたします。
 
【吉澤メンバー】  ダイキン、吉澤でございます。時間が限られているので端的にいきます。
 
 カチタス様のプレゼンでコメントと、それから質問というか、確認したいことがございます。最後の8ページ目だったと思うんですけれども、同じ事業会社の立場としてここは非常に共感というか、全くそのとおりだとすごく思っておりまして、インパクト投資を進めていくためには、発行体側、機関投資家様の双方が、これはいい言葉だなと思って、「歩み寄り」をしていくとともに、「投資家様に恵まれた」という言葉を使われておりますけれども、必ずしもそうでない投資家さんがいるのも実態だし、投資家様からすると、発行体側がそうじゃないところもあると思いますので、双方がより成長していくといいますか、よりよくなっていくことが必要なんだということを改めて感じました。
 
 質問というか確認ですけれども、8ページ目の真ん中で、開示すべき内容が分からないという課題、まさしくそうだなと私もふだん思っておりますが、内容が分かった次に、多分インパクトに落としていく何らかの計算をしていかないといけないことになるのかと思うんですけれども、計算の手法とか、あるいは計算した結果に対する妥当性というか、信頼性といった観点も含めて、投資家様からのエンゲージメントの中でクリアされたのか、あるいはそこはまだ課題を感じておられるのか、その辺り御意見等をいただきましたら非常にありがたいかと思います。よろしくお願いいたします。
 
【柳川座長】  それでは、高塚様、お願いいたします。
 
【高塚メンバー】  限られたお時間の中でありがとうございます。私からは1個質問と、1個コメント的なところでお話しさせていただきます。
 
 まず、カチタスの金さんのところは、安定的な、安定感のあるすばらしい発表でいいなと思ったのですが、前回のプレゼンの中で野村證券さんが、日米の投資家でインパクトと株価の連動性で違いがある、アティテュードに違いがあるというようなお話があったのに関連して、金さんのところでブラックロックさんとかウェリントンさんも入っていらっしゃれば、先ほどお話があったような第一生命さん、りそなさん。第一生命さん、りそなさんはインパクトということで入っていらっしゃるのでそんなに違いがないかもしれないですが、対話をされている中で日米の投資家の何かインパクト等々に関するアティテュードの違いみたいなものがあれば、教えていただきたいと思いました。
 
 2つ目は、エレファンテックさんの話で、ロングタームにするか、セカンダリーにするかというところで、タームのところは投資家が預かる資金の性質によって、事業会社さんであればよりロングタームみたいなことが見据えられるし、金融機関だと難しいみたいな感じで、色分けをして役割分担していくのかと思う中で、セカンダリーマーケットの話が出てきたんですけれども、セカンダリーマーケットの中で大事なのは、結局、インパクト投資家がセカンダリーにエグジットするときに、誰に譲渡するかというのは結構大事なのかと思いました。そのときに私たちの拙い事例でも1つあるんですけれども、私たちの業界ですと、エグジット・トゥ・コミュニティーという言い回しがありまして、結局、そのインパクトに共感するような仲間内にエグジットしていく。エレファンテックさんだったらエレファンテックさんのテクノロジーを活用できるような事業会社であれば、セカンダリーでも価値を感じてちゃんと見ていきたいみたいなことはあり得るよねというところで、そうだったとしても、インパクト投資家としてはそのMAなり譲渡なりに備えて、インパクトをそれまでに可視化していく。たとえ投資期間が3、4年だったとしても、そこでしっかり可視化して、その会社の価値をインパクトを持って語ることで、よいセカンダリーの売却につながるというようなことが設計できると非常に面白いというふうに、これは常々ファンドの中でも話をしたりしているところであります。ということを補足させていただいて、以上2点でございます。
 
【柳川座長】  ありがとうございます。それでは、正木様、お願いいたします。
 
【正木メンバー】  ありがとうございます。後半2社いずれも、「そうそう、こういう話をよく耳にするよね」と膝を打つような話をたくさんしていただきました。
 
 エレファンテックさんに質問です。20ページの「総論GO、実務のプラクティス不足であれば、短期的な改善の可能性あり」という指摘に非常に勇気づけられました。では、前半にも議論になったと思うのですが、その実務のプラクティス不足をどう補えばいいのでしょうか。人を採用してくる、社内育成で補える、いろいろな方法があると思うのですが、どうしたらいいのか。
 
 それから17ページに、「中長期でのイノベーションが必要な部分の定量的開示」という記載がありますが、分かったような、分からないような気持になっています。困っている部分があるのであれば、それは確かに言えばいい。しかし、これを投資家に対して言うものだろうかというのが伺いたいところです。多分ふだんから困っていること、「ここをどうかしたい」という課題については、もちろん会社の中でも議論するし、技術を持っていそうなところに相談することもあると思います。しかし投資家に対する開示を、どういうふうにすると、いいところに落ち着くと思うのか。教えてください。
 
【柳川座長】  ありがとうございます。
 
 それでは、まず、金様からレスポンスをお願いできますか。
 
【金様】  御質問いただきまして、ありがとうございます。3点御質問いただいていると理解しております。まずIPOのタイミングでインパクトに対する御評価があったかといったところについてご回答いたします。先ほど申し上げたとおり、正直な話、IPOの時はインパクトという言葉を知らなかったということが正直なところです。そのため、私ども発行体側から、我々が創出しているインパクトはこれだという開示はできていなかったです。ただ、恐らく投資家様におかれましては、我々が社会問題を解決することから起因してビジネスをしている、またその領域のナンバーワンである、といったことが参入障壁でもありながらインパクトであると御評価いただいていたのではないかと捉えております。
 
 もしかすると、その投資家様のインパクトに対する評価を社内で適切にすることができていれば、より高い評価をIPO時にしていただけたかもしれません。具体的にはIPOはグローバル・オファリングの形式で行っており、IPO時の時価総額は約650億円でした。その後、3か月、4か月で時価総額1,000億まで上昇しております。もしかすると、この差分は我々が自社のインパクトに対する投資家様の評価を見抜けていなかったからかもしれないと捉え方もできます。投資家様におかれましては、私どもが知らないファイナンスの世界においてそのような御評価もいただいていたかもしれないので勉強不足でした。
 
 2つ目、ダイキンの吉澤様、ありがとうございます。発行体として同じ課題感を感じていらっしゃるといったところで心強い限りでございます。インパクトの計算手法、結果の妥当性、開示後の課題ですが、最初はインパクトについてどのような開示をすればいいのか分かりませんでした。そのような中、本日も委員として御出席されている安間様に弊社へお越しいただき、「他社では自社のインパクトをこのように定量化して開示している事例があるよ。カチタスも同じようなインパクトの創出ができているのだから定量化して開示しなければいけないよ」という御指導をいただきました。それを踏まえて、他社事例に倣って、我々のビジネスに置き直して、まずは電卓をたたいて算出しています。その後は先ほどお話ししました第一生命様に、事前に「こんな感じで作ってみたんですけれどもどうですか」と一回お送りさせていただき、ディスカッションを通じたエンゲージメントをいただいております。
 
 ただ、我々のプレゼン資料5ページの左側は、第一生命様とコミュニケーションした上で開示しましたが、右側は大丈夫だと思って相談しないまま開示したところ、第一生命様からは「いや、ちょっと違うんだよね」というフィードバックをいただいています。そのため、正直なところ、まだまだ我々としても計算手法は確立できていないのです。これからも開示後のエンゲージメントによって改善しながら確立していきたいと思っております。
 
 高塚様もありがとうございました。国内と海外のインパクトの評価の違いについてというご質問と理解しています。感じる点としては、見ている評価のスケールが違うといったところが明確にございます。第一生命様、りそな様は、空き家問題や地域活性化という日本固有の社会課題にフォーカスされていると捉えております。ウェリントン様、ニアリーイコール、ブラックロック様、具体的に個人名を出してしまうとEric Rice様にカチタスのことを非常に気に入っていただいていると思っていますが、Eric Rice様からは、どちらかというとアフォーダブル・ハウジングについて評価していただいていると理解しております。海外の投資家様は全世界的に見ていらっしゃるので世界的な社会課題にフ着眼されていると思っております。エンゲージメント活動の一環としてはブラックロック様を通じて、LEG Immobilien様という欧州の会社をご紹介いただくようなことまでしていただいております。そのため、国内の機関投資家様は日本における社会課題を見ていて、海外の投資家様は全世界的に見ていらっしゃると私の拙い経験の中だと考えております。バリエーションにどの様に反映しているかということは、私どもでは分からないところかと思っております。
 
 早口ではございましたが、御回答とさせていただきます。ありがとうございました。
 
【柳川座長】  ありがとうございます。それでは、清水様、お願いいたします。
 
【清水様】  ありがとうございます。私も幾つか御質問をいただいたと思っています。まず、最初に長期投資家がもたらす事業価値への影響があったのかと思っていまして、これは当然プラスだとは思うのですが、実は次の御質問にも関わってくるかと思っているんですけれども、セカンダリーで譲渡するときにインパクト評価をしてから渡せばいいのか、インパクト評価がどの時点でそのバリエーションに実際効いてくるのかみたいなところとセットの話かと思っていまして、結論から言うと、実は私の添付資料の最終ページにあるんですけれども、例えばNASDAQの事例でどうなのかと考えたときに、意外とインパクトというところは、それでバリエーションがついている事例は、残念ながら多分ないと思っていまして、どっちかというとインパクトを金に換算して、あとリスクをめちゃくちゃ積んで、例えば5年後めちゃくちゃうまくいったら、これぐらいの経済的なインパクトも出ますよ。だって、そもそももともとはインパクトなもの、カーボンを下げるとかというのをやっているわけですから、5年後これぐらいインパクトが出る可能性がありますよ、あるいは10年後には、例えばカーボンをトン100ドルとするとこれぐらいのインパクトありますよというような、まず全部を金に換算してやっているというふうなところだと思います。
 
 なので、この場で言うのもあれですが、そこをやらないことにはインパクトという、金にひもづかないものにバリエーションをつけるのは本質的に無理だと思っているので、そういうふうにならざるを得ない。そこで1点だけあるとすると、NASDAQの場合1点だけ違うのは、めちゃくちゃハイリスクを許容する。例えばNASDAQの企業のバリエーションも、そういったクライメートテックとかのバリエーションを見ていると、5年後のレベニューが、多分このとおりいかないけれども、なので割引率20%掛けるプラス70%ぐらいディスカウントして、つまりほとんどそれは成功しないことですよねみたいな感じの数字を基にバリューをつけて、失敗する可能性のほうが高いけれどもうまくいくからというような形でのバリエーションをしている。これによって、ロングターム・ハイリターンというようなバリエーションをちゃんとつけている。日本だと、どっちかというとローリスクの事業計画を書いて、低い利益率で計算するという形になりがちだと思うので、そちら側を許容するという部分が、長期投資家にしろ、インパクトを評価するにしろ、重要なバリエーションの部分だと思っています、というのが前半の回答。
 
 後半の回答ですけれども、実務のプラクティス不足の話と、あとは中長期でイノベーションが必要な部分の開示というのは何を開示するのかという点ですが、実務のプラクティス不足が非常に難しいと思っているんですけれども、私も別のプロジェクトとかで成功例の開示をしていけないかと思っていまして、例えばグローバルにはハイインパクトなスタートアップが成功して、投資家として成功した例にどういうのがあるんですかとか。例えばモデルナとかは究極のインパクト投資だと思うんですけれども、それってどうやって成功したんでしたっけというような話は幾らでも学べるが、意外と日本には日本語での情報がないと思っていまして、そういったものをまず集めるだけでもすごく効果があると思っています。例えば我々と三井化学さんとの提携――私は今、三井化学の名古屋工場内から出ているんですけれども――はめちゃくちゃいい枠組みだと思うのでそれをどこかで公開したいとか、そういうプラクティスの公開はやっていくべきだと思っていますし、国が支援いただけるのであればすごくいいなと思っています。
 
 最後、中長期のイノベーションが必要な部分の開示というのは、これは何を言っているかというと、例えば自動車の製造でカーボンがたくさん出ます、水をたくさん使いますと。でも、どこにどれだけかかっていて、どこの削減に困っているかというのは誰も開示していないと思っています。実はそれを開示するのも、インパクトというか、ESG開示なのではないですか、と思っています。例えば実際これを見てみると塗装の部分にめちゃくちゃCOがかかっていて、ここに平米当たりこれぐらいのCO数が出ているので、最後これぐらいまで、インクルメンタルな改善でここまでは行けるけれども、多分ここで止まるから、ここからここに下がるようなイノベーションは必要だし、それをやらないと、我々、自動車メーカーはカーボンニュートラルを実現できないんだと。マニュファクチャリングにおけるカーボンニュートラルは実現できないんだというのを正直に言ってくださいよと、ダイレクトに言うとそういうことです。でも、これは旧来の感覚からするとコスト情報に結構近い話になってくるので、すごく開示がしづらいと思うんですけれども、今後のインパクトを考えたときには、そうやって開示すればそれに対するソリューションが生まれてくるでしょうし、それに対する投資もしやすいと思うので、彼がこう言っていますからニーズがあるってというふうにできると思うので、それを開示するというのもインパクトなんですよみたいな、そのような枠組みにできないかのかという、飛んだアイデアかもしれないですけれども、実はすごく価値があると思います。
 
 ありがとうございます。以上です。
 
【柳川座長】  ありがとうございます。タイムマネジメントで皆さんをせかしまして、申し訳ございませんでした。まだ御意見、御質問がおありかと思うんですけれども、何か御意見がおありの方は事務局にメール等々をお出しいただければ、今日のスピーカーの方々にお回しするなり、あるいは全体で共有するなりさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 
 本日も活発な御議論、ありがとうございました。次回は、来年1月30日に開催予定でございます。本日も大変貴重な御指摘や建設的な御議論をいただき、ありがとうございました。大分ポイントと課題が見えてきた気がいたします。それをどう解決するのかというのはなかなか難しいですけれども、また議論を重ねたいと思っておりますので、最後に事務局から御連絡等がありましたらお願いいたします。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  次回、今、座長からお話しいただきましたとおり1月30日になります。開催方式は決まり次第御案内させていただければと思います。よろしくお願いいたします。
 
【柳川座長】  それでは、どうもありがとうございました。時間になりましたので、以上をもちまして本日の会議を終了させていただきます。
 
 どうもありがとうございました。

 ―― 了 ――

  

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