「インパクト投資等に関する検討会」(第4回)議事録
1. 日時: 令和5年1月30日(月曜日)15時00分~17時00分【水口副座長】 それでは、ただいまよりインパクト投資等に関する検討会(第4回)を開催したいと思います。皆様御多忙のところ、御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
本日は、座長の柳川先生が急遽、御都合がつかなくなったということですので、私のほうで座長代理として司会の進行を務めさせていただきたいと思います。
過去3回、1回目は皆さんの御議論をいただき、2回目、3回目とヒアリングを中心に議論してきたかと思いますが、今回は皆様との意見交換を中心にした会ということになろうかと思います。これまで3回の振り返りと、それから今後の検討会の方向性について、忌憚のない御意見をいただければと思います。
それでは最初に、事務局の金融庁から15分、20分程度で御説明いただければと思います。よろしくお願いいたします。
【西田サステナブルファイナンス推進室長】 ありがとうございます。では、手短にさせていただきたいと思います。事前にお送りしている資料であります。画面も共有させていただいております。
1枚おめくりいただきまして、これまでにいただいた御意見ということで、次のページですけれども、10月から11月にかけて3回ほど意見交換を行っていただきました。第2回、第3回については、投資家の方、企業の方から取組を紹介していただきまして、また議論を行ったわけですけども、並行して事務局におきまして、海外も含めた企業の方、それから国際的なイニシアティブなど、約50先の方にヒアリングを実施させていただきました。その意見も一部まとめをさせていただいております。議論のための素材ということで御理解いただければと思います。
まず、インパクト投融資そのものの意義について、真ん中の囲みのところですけれども、社会課題の解決と投融資としての収益機会の双方に着目した「インパクト投融資」の重要性が高いのではないか、重要性が高まっているのではないかということについては、幅広い方から御意見をいただいたかなと思っております。ただ、どういう意義を見いだすかということについては、様々な御意見があったかなと思っております。
1点目は、例えばですけれども、収益性と社会課題の解決の関わりということで、インパクト投資、これは融資も含んで投融資と記載をさせていただいておりますが、収益を、経済活動ですので、当然として実現していくということは前提になるけれども、それと社会課題、インパクトが目指す社会課題の解決をどう考えていくかということについて、代表的には1つ目のスラッシュのところにありますように、どうしても社会課題の解決に向けた取組というのは、収益性とは一般的にはトレードオフになる場合が多いがこのインパクト投資というものを推進することで、この社会課題の解決を実現していくことを目指す投資を広げていくことができるのではないか、というご意見があったかなと思います。
もう1つは、他方で、社会課題の解決と収益性の実現は、むしろ長期的には、または最終的にはトレードオンの関係にあるんだと、こういうご意見も、御指摘をいただいたかと思います。特に現在では、社会課題の解決の実現は事業上の成長とも深く結びついてくるので、こうした動きを捉える投融資は今後重要性が高まるのではないかという御意見をいただいたかなと思います。
下の青字のところで、幾つか代表的なものを記載させていただいております。3つ目のところで、インパクト投融資というのは、投融資のうちインパクトに着目するものと端的に考えていると。投融資であるので収益性を求めることは自明だが、収益性をリスク対比でどの程度求めるかは人によって異なるものであり、収益性は低くて構わないという立場もあり得るというお話があったかと思います。
その2つ下ですけれども、対して、投融資では実施に当たり将来にわたる費用対効果を勘案するが、社会的・環境的改善効果が顕著で市場受容性の高い技術については、最終的には市場の占有率が上昇するなどして、投資収益と社会的・環境的効果が比例的に増加するトレードオンの関係にあるということも十分考えられる、こういうようなお話があったかなと思います。
また、その1つ下ですけれども、グローバルな投資家・企業では、その立場にかかわらず、収益性の見極めにおいて「持続可能な社会の実現」の視点ということは避けて通れない視点になっているので、いずれにしてもこの点を考慮していくことが重要であると考えているというような御指摘もあったかなと思います。
次、もう少し敷衍をいたしますと、3ページのところですけれども、ESG投資や通常の投融資と比べて、どのような違いがあるかということになりますと、投融資先の事業のインパクトに着目しますので、このインパクトを通じて事業の価値とかその目的というのを改めて見いだしていくというような意義があるという御意見をいただいたかなと思っております。
1つ目ですけれども、事業がどのような社会的・経済的意義を持つのかというのを、インパクトという目線を当てることによって、改めて価値を見いだす効果があるのではないかということ。
それから、2点目ですけれども、特にESG投資との違いでは、ネガティブスクリーニングとかリスク管理などの視点からESG投資は行われることも多いれども、インパクト投資は事業の変化について着目しますので、ポジティブに評価するという点で、アプローチが違うのではないかというような御指摘もあったかなと思います。
また、本来、金融とか投資業というのは、事業そのものの価値を見いだしてこれを伸ばしていくものにあるので、そういう観点ではインパクト投資というのも新しいものではなくて、従来の考え方を、社会課題の解決が重視される現代のニーズを捉えて置き換えたものだということで、新しい事業性評価という言い方もできるのではないかということも、ヒアリングの際には御意見としていただきましたので、御紹介をさせていただきます。
それから、似たことかもしれませんけど、インパクトに焦点を絞ることで、様々な社会的効果とか事業の成長可能性を高めることができるのではないかというような御意見もありましたので、関連して挙げさせていただいています。
4ページを御覧いただきますと、上の部分ですけれども、これも似ているところがありますが、インパクトに着目し投融資の行動を変えることを通じて、投融資先の行動変容や新規事業の創出に資する効果があるのではないかと。
さらに、こうしたインパクト投融資の効果をより発揮していくためには、事業ごとのインパクトだけではなくて、ある金融機関やある投資家の融資行動全体をインパクト志向で捉えていくこともできるのではないか、そういう観点での議論も行われているということで、この辺りをどう考えるかという御意見もいただいたかなと思っております。
代表的なものとしては、上から2つ目、ビジネスモデルの転換という観点では、例えばトランジションということもインパクトの対象に入り得るけれども、モニタリングやKPIの設定ということが鍵になるのではないかということ。また、より広く金融機関の投融資先行動をインパクトとして捉えるということだと、下から2つ目のところですけれども、投融資全体をインパクト志向にし、投融資先企業全体のインパクトを判断するということが重要ではないかという御指摘もあったかなと思っております。
5ページのところです。インパクト投融資の意義を念頭に置きつつ、今後どのような推進策を検討すべきか、またその課題は何かをまとめをさせていただいています。
1番上のところですが、既に「インパクト投融資」と呼称しつつ投融資を行う事例とか、インパクト投融資とは呼称しないけれども、社会的・経済的活動の両面を明示的に投融資活動で考慮する事例が見られると。ただ一方で、インパクト投資というものがどういうものか分からない、事実上それと同じようなことをやっていると思うのだけれども、いまいちどこが具体的にポイントか、どこが融資要件やプロセスとして鍵になるのかということが分からないので、はっきりと取組みを進められない、というお話もありました。
具体的な御意見として、1つ目の上のところで、社会課題を中心に事業を選択しリターンも確保するという投融資は、近年力を入れて取り組んでいるけれども、それがインパクト投資かどうかと言われると、具体的な要件が分からずはっきりしないと。
また、こうした点も踏まえると、下から2つ目ですけれども、インパクト投融資を進める際の判断基準や目線というものがあれば、どのように事業の内容や社会的効果を見ていくのかが明らかになって、より案件の発掘や実施がやりやすくなるのではないかと、このような御意見をいただいています。
また、次の四角のところですけれども、インパクト投融資と既に呼称している場合・する場合、戦略策定から投融資の実行、それから投融資の実行後のモニタリングまで一貫して、インパクトに着眼することが重要ではないか、こうしたものを論点としてまとめていくことが重要ではないかというお話があったかなと思っています。
1つ目のところですけども、具体的な御意見として、案件発掘からエグジットまでの投融資プロセスのステージで一貫して、インパクトの定性的・定量的な基準を組み込む必要があるのではないか。
また、同じような観点から、企業のほうも、何がインパクトであるかとか、事業の変化につながるのかということについて明示的に理解をしてもらって、理解をお互いに深めていくことが重要ではないかということで、2つ目のところですけれども、投資家や事業会社の各主体が、経営理念・パーパスなどに照らして、主体的にインパクトや実現したい価値を定め、何が社会的な変化につながるのか、これはtheory of changeというお話もあったかと思いますが、どの分野で投融資を行うかという点を検討し戦略を立てることが重要、こうした意図とか狙いを見据え捉えて投融資を行うということが重要というお話があったかなと思います。
6ページは、インパクトに着目した投融資ということをより広げていくという観点からは、ステークホルダーの連携とか対話を通じて実務的な知見の蓄積を行っていくことが重要ではないかと、またはネットワークの構築を進めていくべきではないかという御意見。
例えば日本ではデットの取組が相対的に先行している面があるので、エクイティー提携ではなくて、デットについても着目してはどうかという御意見もいただいたかなと思います。
あと、プレーヤーの不足、人材育成などについて。鶏と卵の関係のようだという御指摘もありましたが、アセットマネージャーがアセットオーナーの指図を受けて、インパクトに着目しながら投融資を行っていくというのが海外では見られているけれども、日本では現時点ではいずれも担い手が必ずしも十分多くなくて、アセットオーナーの指図がないとアセットマネージャーも動きづらい、アセットオーナーの意図があってもアセットマネージャーの担い手が少ないと投資の実際につながりにくいと。それぞれがインパクトを着目し理解した形の動きを相互に進むと、マーケットのプレーヤーや知見を増やしていく、全体とした取組が重要ではないかというお話だったかと思います。
また、3つ目ですけれども、こうしたマーケットをつくっていく前提として、イノベーションを促す市場機能全般について、必ずしもインパクト投資の文脈に限らないかもしれませんが、スタートアップの支援について様々な課題が指摘されているところであり、こうした点も念頭に置くべきではないかというご指摘があったかなと思っています。
2ページ進んでいただきまして、8ページを御覧いただければと思いますけれども、このような点を、事務局として、論点提起のためにメモとしてまとめさせていただきました。
まず、1つ目ですけれども、インパクト投融資の推進の定義・意義として、改めてどのような点が考えられるか、諸外国の例や検討会のこれまでの議論・ヒアリングなどを見ますと、総じて、投融資の前後で、または投融資全体として一貫してということかもしれませんけれども、投融資を通じて、インパクトに着目することでESGの観点での様々な効果を及ぼそうとする投融資を、インパクト投融資として整理するという点については、共通点が多いように見受けられました。
一方で、先ほど御紹介しましたとおり、こうした定義を前提にしましても、インパクト投資を推進する意義や効果については様々な御意見があったかなと思います。こうした点を踏まえて、通常の投融資やESG投資と比べて、インパクト投融資に改めてどのような特有の意義や効果というものがあり得るか、また、それをいかにして推進することができるかということについて、本日、御議論をいただければと思っております。
例えば矢羽の1つ目ですけれども、事業の社会的効果に着目することでこの事業の将来的な成長可能性を捉えることができるという御意見があったと思いますけれども、そう考える場合、例えば通常の投融資においても、収益性・事業性というものを様々な観点から評価するということは当然あるわけですけれども、これと比べて、特にインパクト投融資ということで何が特段の違いというか、着目すべき点となるのか。
また、2つ目ですけども、事業の成長可能性にかかわらず、事業の社会的効果の実現を重視するというポジションを取る場合、投融資として一定のリターンを目指すという点で、寄附的な資金との違いは明らかとの理解でよいか、リターンを目指すという観点で、社会的効果をファーストに考えるような場合であってもやはり寄附とは違うと、これはあくまで投融資であると、そういう考え方でよいのかどうか。
それから3つ目は、ESG投資との違いですけれども、ESG投資については一般的にはネガティブスクリーニングを行うであるとか、ある企業のESGの取組状況全般に、例えばレーティングとかを活用して採点をしまして、それを投融資の中で比重的に考慮していく等のESGインテグレーションが多いですけれども、これと比べて、ポジティブな面に着目して投資を行うということが投資アプローチとして、インテグレーションとかスクリーニングと比べて比較的明確ということでよいのかどうか、若しくはそもそも捉え方が少し違う、または重なってくる点もあるのかどうか。このアプローチの違いにどのような意義・効果があるかと。
それから4つ目は、経営の潮流ですけれども、パーパス経営などとの結びつきがあるのではないかという御指摘もありました。この辺りをどういうふうに考えるか。それから、最後から2つ目ですけれども、投資家とか金融機関全体の投資活動をインパクト志向に持っていくべきではないかという御指摘もあったかと思いますけれども、この点についてどういうふうに考えるのか。
また、金融庁の検討会で議論させていただいておりまして、投資家や預金者の保護とか金融の円滑、経済の持続的な成長という観点からは、投融資先の社会的インパクトに着目し、これを通じて事業の成長につなげていくという観点では、金融行政上の目的とも一貫した形で位置づけられるのではないかなと考えておりますけれども、特段の留意点があれば御指摘をいただければと思っております。
最後、9ページになりますけれども、このように意義とか定義自体がまだ必ずしも明確に共有認識を持てているわけではありませんけれども、一定程度それらを前提として、ではどういうことがし得るかという点ですけども、左下、緑の部分は、投融資の要件とかプロセスがどういうもので、どうやればいいのかを標準的に整理するということは有益ではないかという御意見をいただいたかなと思います。そうすると、要件とかプロセスということを基本的指針のような形でまとめていくということに意義があるかどうか。
それから、2つ目の星のところですけれども、資金提供者・資金調達者の双方の方から、基本的な考え方だけではなくて、できれば実務的なプロセスとか留意点も併せて本検討会として集約していくことができれば有益という意見がありましたが、どのように考えるか。
また、収益性や社会性などの捉え方にかなり幅があると。また、今後も様々な創意工夫が行われることが期待されると思いますけれども、これを念頭に置いたときに、要件やプロセスを整理するに当たってどのような点に留意すべきか。
右側は、下の緑のところの整理を前提に、さらにいろんなノウハウ共有であるとか、投融資がやりやすいような環境整備ということで御意見をいただいたもので、例えば①はノウハウの共有、②は人材を呼び込んでいくこと、③としてデータの整備など市場環境の整備、それから、④としてイノベーションを担う企業の促進策と、こういったものが関連する施策とか、または今後やっていくことに意義がある施策として、潜在的なものとして御指摘をいただいたと思いますけれども、もともとの青の意義のところ、それから左側の緑のところも踏まえながら、さらに実態面での普及を促す施策として、何か留意点であるとか、こうしたことも意義があるのではないかということがあれば御指摘いただければと思います。
11ページ以降は、簡単に海外の定義の例というものを幾つか示させていただいております。釈迦に説法で大変恐縮ですけれども、11ページはGIINの定義でありまして、一番上のところですが、全ての投資にはインパクトが伴うとした上で、特に投資収益とポジティブなインパクトの実現を目指す投資というのをインパクト投資だとGIINの方は定義をされて、このために幾つか要件が必要だとして、変化をもたらすという意図、それから、投融資ですので収益性が一定程度あるということで投融資による収益、これはフィランソロピーと異なる点であるという点、この意図と投資収益というものが鍵になるとした上で、アセットクラスについては様々なものがある。それからインパクトの管理、インパクトを目指して意図を持って行うものですので、それを管理していくことが重要になるということで、4つ整理をされているかなと思います。
また、ロックフェラーの資料が12ページにありますけれども、インパクトと金融のリターン、その双方を狙っていくものがインパクト投資だということでして、一番下にオレンジとブルーの丸が重なったものがありますけれども、一番左は伝統的な投資ということで、金銭的なリターンをほぼほぼ中心に考えている。一番右のものは伝統的な慈善事業、フィランソロピーということで、インパクトをほぼほぼ中心に考えている。インパクト投資というのは、インパクトと投資収益というもの、双方を狙ってやっていくということで、この赤い部分に分類し得るけれども、その中でもどちらに比重があるのかというのは、人によって、方針によって変わり得るものだということで、ロックフェラーの方はこういう形の整理をしております。御紹介です。
それからフランスでは、フランスの財務省を中心に、もともとESG投資の推進というイニシアティブをやっておられたわけですけれども、これをウィングを広げて議論をされて、一昨年の10月ですが、インパクトファイナンスの定義をこちらの会議体で出しています。真ん中に英語で、青字で書かれておりますけれども、実体経済のサステナブルまたは公正性を高めるような変化を促すための、促すことを目的とした金融の方策であるということで、意図というものを強調しながら実体経済の変化というものを狙うものがインパクト投資ですという形にして、先ほどのGIINと似ていますけれども、意図とか、それから追加性、変分ですね、また、どのような変化があったかの測定が重要になるのではないか、そういう形の定義をされております。
ここまでは「どのような変化・影響があるのか」に着目したような定義と思いますが、15ページについては、UNEPFIのものですけれども、こちらは特にポジティブ・インパクトファイナンスということで、国連の組織でもありますので、SDGsの達成を掲げまして、このSDGsの達成のためにどのような行動を取るのかというものをまとめたものと理解しています。
私からの説明は以上でございますけれども、御議論いただければ幸いです。
【水口副座長】 ありがとうございました。これまでの議論を大変丁寧にまとめていただけたと思っております。
これから17時まで議論をしたいと思うんですけど、今日の議論の趣旨を簡単に御説明したいと思います。このインパクト投資に関する検討会は、サステナブルファイナンス有識者会議の下につくっていただきまして、現事業年度、6月ぐらいを事務年度と言っているようなんですが、そこまでに何らかこの検討会としてのアウトプットができたらいいなと。それを有識者会議のほうにも御報告をいただき、また、金融庁の施策としてこの後さらに進めていけるといいなということでありまして、どういうアウトプットを検討会として出していくのかということを、これから検討していくことになるのだと思っています。
サステナブルファイナンス有識者会議のほうでは、いろいろ議論したものが次々に施策になっていて、大変大きなインパクトを世の中に与えているわけですけれども、そういう意味でいうと、このインパクト投資に関する検討会のアウトプットが、単にアウトプットにとどまらず、アウトカムをもたらすものになるということが大事だろうと思っております。
そこで、今日の資料の最後の「今後の本検討会における議論について」ということで、2つ挙げていただきました。インパクト投融資の定義・意義等というのと、それから今後の進め方というところですが、この2つのテーマは実は関連していると私は思っておりまして、前段の「インパクト投融資の定義・意義等」と書いてありますが、インパクト投融資の定義については、今、御紹介いただきましたように、GIINをはじめとしていろんな定義が既にあるわけですけれども、ここで問題にしたいのは、この検討会としてどういうフレームで、ではこのインパクト投融資を検討していくのか。射程距離というんでしょうか、この検討会で検討する射程をどこに置くのか。例えば、個別金融商品としてのインパクト投資ファンドといった、インパクト投資という金融商品を対象にして、その定義を決めてガイダンスをつくっていくということであるのか。あるいは、インパクト志向金融ということも出ておりますけども、経営全体、金融全体をインパクト志向にしていく、こういうインパクト志向金融みたいなところまで広げて議論をするべきなのか。それは、もちろん両方、世の中には必要なことは明らかなんですけれども、では検討会として議論するときにどこを目指すのか。
それと、この次の、インパクト投資検討会としてどの射程で議論するのかということを踏まえて、では実際にどんな施策といいましょうか、支援策とかガイダンス文書が必要なのか、2番目の今後の検討会の進め方、つまり、この検討の進め方、どんな範囲のことを議論するのかということが関わってくるんだろうと。
ですから、いや、個別金融商品でインパクト投資というところにきちんと焦点を当てていくんだと。そうだとすると、ガイダンス文書をきちんと作るということになろうかと思いますし、もう少し幅広な議論をしていくんだということであれば、ガイダンス的なものとは少し違うのかもしれませんし、受託者責任の議論というようなことになるのかもしれません。
また、その幅によってインパクトの捉え方も多分違っていて、インパクト投資という商品として、個別金融商品として見るならば、基本的にやはりインパクトの計測ですとかマネジメントということがなければ、それはインパクト投資と言えないだろうと思いますけれども、逆に、この御意見の中にもありましたが、大企業は様々なインパクトを持っている、それを全部計測せよと言われてもなかなか難しい。恐らくIFSIというような、インベストメント・フォー・サステナブル・インパクトという概念は、何も全てのインパクトを精緻に計測してくださいということを意図しているわけでは多分なくて、もう少し大きな意味で社会のインパクトを考えるということなのかもしれませんから、その辺の考え方も違うんだと。
さらに言えば、時間軸の問題もありまして、インパクトを計測しろといったときに、この資料にもありましたけども、環境に関する画期的な技術開発みたいなものは、今、投資をしても、すぐすぐその成果が出ないかもしれない。でも、3年後、5年後、10年後には必ず必要になってくるイノベーションみたいなものに投資をする。これはしかし、今、計測したらインパクトは出てこないわけですけども、時間軸を持ってみれば大きなインパクトがあるのかもしれない。そういうものをどう捉えるのか。それはトランジションファイナンスだからインパクトファイナンスとは別なんですという見方もあると思いますし、いやいや、そのトランジションファイナンスも、広い意味でいうとトランジションは大きなインパクトを生み出すものなんだというふうに考えることもできると思いますし、その捉え方によって、施策の幅が多分変わってくるんだろうと思うんです。
幅が広ければ広いほどいいというわけでもなく、しかし、狭く閉じればそれでいいのかというと、そうではないかもしれませんので、その辺、言わばよくまだ分からないところがあるんです。皆様の御意見をいろいろ伺って、柳川先生の御意見も聞いて、その先を進めていきたいと、こういうことであります。
というわけで、最初の30~40分は、この検討会としてどのくらいの範囲のことを射程距離に入れて、インパクト投資というもの、インパクト志向金融というもの、あるいはインパクトファイナンスということを検討していったらいいのか、皆様の率直な忌憚のない御意見をいただければと思います。決して「あのとき、ああ言ったじゃないか」みたいなことを後で追及することはないと思いますので、自由に御発言いただければと思います。
今日のルールは、言いたいことは何でも言うということと、ただし、私はちょっと長くしゃべりましたけども、1人であんまり長くしゃべらないでいただきたいということだけ、できれば1~2分ぐらいでまとめていただいて、次の方に渡して、また次の方へ渡してということを繰り返して、活発な議論ができればなと思っております。
意見のある方は、声を上げていただいても構いませんし、札を立てていただいても構いません。
手が早速挙がっておりますので、では、安間さんからお手が挙がっておりますので、まず安間さん、お願いいたします。
【安間メンバー】 どうもありがとうございます。では、短く2点申し上げます。
1つは、この検討会においては、適切なファイナンシャルリターンを伴わないようなインパクト投資の推進については、キャタリティックキャピタルと言われているような公的な資金ですとか、あるいは一部のNPOの資金の活用を除いては、対象として考えなくていいのではないかということです。この検討会では、純粋に適切なリスクに相当する適切なリターンを伴う民間のインパクト投資だけを考えていく必要があるかなと思っています。
2番目は、金融機関全体のインパクト志向ということが非常に重要だと思いますし、パーパス経営を掲げられている金融機関におかれては特に、金融機関業務全体をインパクト投資的に行っていくことが、表明したパーパスの意図の発露となるのですが、実際にはそのためのノウハウや人材の不足ですとか、あるいは、まさにインパクトとリターンのトレードオンの関係について十分な究明ができていないために、その実現が難しい状況にあると思います。ただ、この場合でも、小さなインパクトを限られた数の案件で出していることを対外的に強調し過ぎて、それ以外の業務で大きなネガティブインパクトを出しているのは、よくないと思います。そういう問題はあるのですが、この検討会においては、私は個別のトランザクションとしてのインパクト投資の推進というのをまずは最初に考えて、できればまた別の機会に、1年後とか、あるいは数年後に、このインパクト志向金融経営というものを別途考えていく必要があるのではないかなと思っております。
以上です。
【水口副座長】 大変明確な御意見をありがとうございました。また、検討会自体の時間軸を持って考えるというのは適切な御意見だったかと思います。
それでは、林様、お願いします。
【林メンバー】 御指名ありがとうございます。検討会の射程距離ということなんですけれども、私は少し広めに捉えるというのもありなのかなと思っておりまして、そもそも私たちが何でこのインパクト投資を日本で拡大させたいんですかということを考えたときに、やっぱり欠かせない視点は、資料の中でも6ページの下のほうで御意見として出ておりましたように、スタートアップや大企業におけるイノベーションをもっと推進したい、その結果として、通常の投融資とかESG投資とは次元の異なるレベルで環境問題とか社会問題の改善につなげたいという、ここにやっぱり本質があるのではないかなと思います。
ただ、インパクト投資が、通常の投融資とかESG投資と比べて、本当に次元の異なるレベルで環境問題、社会問題の改善効果があるのかというのは、現時点では証明できるものではないとは思うんですけれども、そういう仮説を持って、いかにこれを実現させていくかという視点で施策を考えていくべきなのかなと思います。
環境・社会問題の改善というふうに申し上げたんですけれども、やっぱり金融資本市場には得意なこととあまり得意じゃないことがあると思っておりまして、元来、最も得意なことの1つが、やっぱりスケーラブルなビジネスを見つけ出してきて、そこにファイナンスを提供して、ビジネスの拡大をサポートしていくという、資料にもあったと思うんですが、そういうことなのではないかと思います。そもそもビジネスの規模が拡大しないことには、どれだけ環境や社会によいビジネスであっても、結局インパクトは小さいままということですので、ビジネスの拡大をサポートするこの金融の特技というのは、とても重要な点だと思います。
ただ、資料にもありましたけれども、インパクトというレンズを投資家・金融機関が持つことで、収益性とか事業性のポテンシャルに気付くことができるとか、そういうメリットはいろいろあるとは思うんですけれども、とはいえ、先ほど述べた特技があるというだけで、投資家・金融機関にこのインパクト投資という冠をつけて、テクニックさえ身につけてもらえれば、環境問題、社会問題が何でもどんどん解決につながっていくかというと、そんなに甘いものでもないんだろうと思いますので、この金融機関の得意な点に加えて、環境問題とか社会問題に企業が対応することがトレードオンになるような環境整備、これはやっぱり政策とか規制の役割が少なくないとも思いますし、トレードオフかトレードオンかという議論も出てきましたけれども、これも領域によって異なると思うんですが、もしトレードオフな領域があるのであれば、これをどうトレードオンに持っていくかみたいな点は、これは別途政策を考えていく必要があると思いますし、また、ビジネスでそこにチャレンジしようとするスタートアップとか大企業がたくさん存在することも重要なので、これをいかに増やしていくかを考えることもやっぱり大事だと思います。
これら全てがセットになって初めて大きな変化が起きるということかなとも思いますので、インパクト投資というのはあくまで全体のピースの1つであるという前提で、トレードオフをトレードオンにするとか、あるいはそういったビジネスを手がけるスタートアップ、大企業を増やしていく、これは金融庁さんだけの仕事ではないということももちろん理解はしているんですけれども、やっぱりインパクト投資というものの推進を考えるに当たっては、うまく関係省庁の関係施策とも連携を図っていくとか、そういうことも含めて、このシステム全体がうまく機能するようにやっていくという視点を含めて議論していくというのも、やっぱり長期的には大事なのではないかなとは思います。
以上です。
【水口副座長】 ありがとうございます。インパクト投資を支えるエコシステム全体を目に、視野に入れて検討するべきだと、こういう御意見だったと思います。
ほかにいかがでしょうか。では、金井さん、お願いします。
【金井メンバー】 定義の問題はこれまでもさんざん議論されてきましたが、ESG投資とインパクト投資の関係について、やっぱり整理が必要かなと思う点があります。それは、インパクト投資もESG的側面は必ず見るし、逆にESG投資も事業機会に近いところというのはインパクト投資と重なる部分があるという点です。この辺りの整理をつけない中で、ESG投資とインパクト投資が何か違うのかという議論がされているように思います。
このことをオクトパスモデルに代表される企業の価値創造プロセスにあてはめて考えたときに、インプット、すなわち財務・非財務の各資本を投入しアクティビティを行いアウトプットに至るまでの一連の流れ、これはどちらかというと経営基盤に関わる領域で、企業価値を上げる基盤ですが、そこをより重視するのがESG投資だと考えられます。一方、アウトプットからアウトカムまでのいわゆる社会的な価値をつくるというところをより重視するのがインパクト投資なので、両者は価値創造プロセスの一連の流れの中にあるわけですよね。だから、両方見なきゃいけないし、もう1つ言うならば、つくったアウトカムがぐるっと回って、今度は資本に戻ってくるという考え方ですよね。これはあんまり議論を実はされていないと思います。世界的に見てもあまりここは議論されていないのだけど、ここが深掘りできれば、インパクトをつくること自体が実は企業価値の向上につながるというような一連のロジックが完成します。この部分がとても重要なところなので、それを踏まえて最初の話に戻ると、インパクト投資というのは決してESG投資と相反するものではなく、一連の流れにあると考えるべきなんだろうと思います。
ですから、インパクトを測りIMMでコントロールするという考え方というのは、企業価値の向上に直結するので、これは金融機関としては、投資でも融資でも当然重要な作業になってきます。
トップダウンとボトムアップという話がありましたけれども、トップダウンもやっぱりある程度並行して進めていくというか、インパクトの創造が企業価値を上げるための正当な手段だと考えたときに、いかにこれを金融機関全般のポートフォリオに広げるのかというのは、早い段階でやっておいてもいいのではないかなと思います。
確かに大変な作業かもしれませんが、責任銀行原則は、個別企業評価をコーポレート・インパクトアナリシス、全体評価をポートフォリオ・インパクトアナリシスとして2つのツールを提供し同時に推進しているんですよね。つまりボトムアップとトップダウンが両方重要であると。トップダウンは、ポート全体で網羅的に行うということではなく、自分たちのポートフォリオを俯瞰し、最もインパクトが大きな領域を特定して、少なくとも1つ、今は2つメモやれと言われているんですけど、そういう進め方になっています。
順番に大きなインパクト領域から打ち取っていくというやり方を通じて、結果的にトップダウンでインパクト志向経営というものに流れてくる、流れるというか、広がっていくと思います。
ありがとうございます。
【水口副座長】 ありがとうございます。責任銀行原則、確かにインパクトというのは明確に入れているんですよね。そして、PRIも去年のバルセロナではリアルワールドインパクトということがキーワードになったと聞いていますし、ESGとインパクト投資、そんなに明確に分けるということじゃないということですかね。
それでは、野村さんお願いします。
【野村メンバー】 このインパクト投資に関する検討会の設置の趣旨を読みますと、「多岐にわたる社会課題の解決には、多様な投資家をインパクト投資へ呼び込んで、サステナビリティーの向上に向けた企業の取組や事業創出をさらに促す」と書いてあります。ポイントは多様な投資家をインパクト投資へ呼び込むという点と社会課題を解決するというキーワードだと思います。ESG投資というワードは国民に伝わっており、我々投資家もESG投資方針を策定しています。インパクト投資というのはまだ知られていないし、インパクト投資独自の投資方針を掲げている投資家は決して多くないと思われます。
ESGは広く認知されているので、今回はインパクト投資はどういうものであるかを、先ほど金井さんがお話されたように、ESG投資とインパクト投資の明確な違いを広め、説明していきたいと考えます。インパクト投資がESG投資の進化した投資であるなら、その違いを今回の検討会のアウトプットとして示していく、国民に伝えていくことができればと思います。
もう1つ、社会課題の解決というキーワードでは、SDGsという単語は既に広まり、小学生はみんな勉強し、多くの方がSDGsの実現に関心を寄せていることから、インパクト投資を経由した社会課題の解決がSDGsの実現と強く結びついていることはわかりやすいと考えます。何番目のSDGsを達成したとかいう、やや表面的な取組みではなくインパクト投資を通じロジックモデルやtheory of changeを意識しアウトカムを実現していく姿勢は重要です。インパクト投資を通じ社会課題の解決を意識しSDGsを実現する流れをこの検討会のアウトプットとして示していきたい。まとめますと、インパクト投資とESG投資との違いを明確にし、SDGsの実現にはインパクト投資という深掘りが必要である点を国民に伝えていくことは重要ではないでしょうか。
【水口副座長】 ありがとうございます。国民向けに分かりやすくという意味では、金融庁さんから出すというのは大事ですね。
【野村メンバー】 そうですね。
【水口副座長】 では、馬田さん、お願いします。
【馬田メンバー】 射程のお話で、ちょっと私もいろいろ理解が間違っていたら恐縮なんですけども、今回この検討会で、最終的にやはり投資だけに限らず、投資先となる企業の事業のインパクト評価をどうやっていくかまで踏み込む、いわゆる事業のアウトカムの計測まで踏み込まないといけないのかなと思っております。
その背景として、ものすごく単純化すると、ESGは経営におけるハウの部分が主になってきて、インパクトに関しては、事業のワットの部分といいますか、事業がどういうアウトカムを出したのかというふうなところになっているのかなと思っております。ワットの部分は、やはりその事業にかなりひもづくために個別性が高く、そのため、インパクト投資先の企業には、インパクトとリターンがトレードオフのものもあればトレードオンのものもあるのではないかと思っています。
トレードオンのものに関してはいいんですけど、トレードオフのものに関しては、社会的な価値がまだ経済的な価値に反映されていない、ある意味社会的な価値を経済的な価値に転換する物差しができていないというふうな状況だと思うので、そこの物差しをちゃんとつくって、計測して、それを何かしらの形で事業会社に還元していく、というふうな仕組みをつくるというところまでを射程に考えると、やはりその事業のインパクト評価をどうやっていくのか、というところを考えていかなければいけないのかなと思っています。
ただ、今回、金融の領域でお話をしていると思いますので、金融である以上、どうしてもそのリターンも含めてお金にひもづいてしまうという制約があるのかなと思っています。一方で、まだ経済的な価値に反映されていない社会的な価値をすべてお金に反映して、換算してもいいのかというところは、個人的にはまだ分からないといいますか、本当にそうしていくべきなのかどうかというところはちょっとまだ分からないんですが、ただ、いずれにせよ、そうした背景から事業のインパクト評価というものが必要になってくるのかなと思った次第です。
【水口副座長】 ありがとうございます。
それでは、渋澤さん、正木さんの順番で行きたいと思います。
渋澤さん、お願いします。
【渋澤メンバー】 ありがとうございます。現在、世界のインパクト投資のコミュニティーでは、すごく日本に注目しています。その理由は、去年の6月に日本政府がまとめた骨太方針の中にインパクトという言葉がきちんとそこで明記されているからです。今年のG7に向けて議長国である日本政府が踏み込んだ発言をしてくれるのではないかという期待がすごく実は高まっているんです。首相も最近、グローバルサウスという言葉を使い始めました。これは、要するに取り残された途上国をもG7として責任を持って取り組もうということなんです。
先週、私、1週間でケニアに行きました。社会的課題のスタディツアーでしたが、そこで様々なスタートアップ、ベンチャーキャピタルの方と面談しましたがそこではスタートアップと社会課題の解決は同じものなんですね。なぜそこでスタートアップが始まるかというと課題解決の形です。ということを踏まえると日本はちょっと出遅れています。
現在、アフリカとアジアに投資するLEAPFROGという最大のインパクトファンドは次回のファンドは10億ドルの大きな規模で、私の理解が正しければ、その半分はシンガポール政府のTemasekが出資します。このTemasekは、先週アフリカでもお会いしたアフリカに特化したスタートアップファンドにも出資しています。
多分、彼たちの考えは政府がコミットメントして実弾を入れて、入れることから色々な学びを求めていると思うんですよね。ストラクチャーやフレームワークの詳細を詰めて進まなくなるということではなくて。ですから、私の期待としては、日本はインパクト投資の世界コミュニティーの期待に少しは応えることを、コミットメントをG7に向けて宣言してほしいと思います。この検討会の討議のスコープよりちょっと違う話かもしれませんけど、そういうことが世界で起こっているということが私の理解です。
ところが、去年の骨太方針の中にインパクトという言葉がはっきりと明記されていますがマスコミはどこもそれをピックアップしませんでした。私の知っている範囲ではゼロです。外部不経済を資本主義に取り込むと首相が明言していることも、どのメディアも取り上げていないです。そういう意味では、世論がインパクトのことを知らないということはマスコミでは取り上げてくれないという理由もあると思います。この課題について、本検討会で「ちょっとマスコミ、ちゃんとここに注目せよ」ということは言えるのではないのかなとは思います。
現在、並行して面白い流れがインパクト会計であり、これはこの検討会でも検討したい。なぜかというと、大企業の会計にインパクトを取り込むことをすごく推しているロナルド・コーエンさん等は、5年ぐらいでそれは実現できると公言しています。かなりアドバルーン的なことも含めておっしゃっていると思いますが、大企業がインパクト会計への意識が高まり、インパクトが自分たちの企業価値につながるというこという認識が広まれば、インパクト投資の課題であるエグジッドになるかもしれません。たとえば、大企業がインパクトを取り込むことが必要なんだということであれば、アフリカでインパクトあるスタートアップを買収することで大企業のインパクトの向上になり、アフリカ側から見ると出口戦略にもなります。その可能性があり、それを加速させるべきなんじゃないのかなと思います。ぜひ大企業のインパクト会計とインパクト投資がどのようにつながるかということについて、この検討会で深掘りしていただきたいと思います。
【水口副座長】 ありがとうございます。インパクト会計の話は出てきませんでしたね。御指摘ありがとうございました。高い目線でG7でちゃんと発言せよと。ありがとうございました。
それでは、正木さん、吉田さん、高塚さん、吉澤さん、こういう順番になっているようです。
正木さん、お願いします。
【正木メンバー】 先ほど野村さんがおっしゃったように、経団連がインパクト投資に着目しているのは、「Society 5.0 for SDGs」という、まさにテクノロジーを活用した課題解決型社会。この時代が到来することを見据えてのことです。「困っていることがある」「解決したい課題がある」ということを、「ニーズがある」「市場がある」というふうに捉えており、その市場は中長期的に利益を生むし、会社を持続的に成長させるし、そういうポテンシャルがあるんだという捉え方です。難病を克服するという課題の解決のために、デジタルの技術を使って医療機器や治療薬を開発して、難病克服という課題のソリューションを出す。様々なアプローチの技術を結集して、パーパス、社会課題の解決を目指す。このようにパーパス経営ともつなげて説明し、克服すべき社会課題を克服すると、企業自体が持続可能になるということだと申し上げています。
事務局資料の中にあるトレードオンの定義が、「投資収益と社会的・環境的効果が比例的に増加する」というイメージは限定的だなという印象を持ちました。先ほど林さんのおっしゃるスケーラブルファイナンスという考え方に立つと、難病といっても、たくさんの人がかかる病気の治療薬を出せば物すごく市場的に効果が出る。しかし、一部の人しかかからないすごい難病、難病といっても奇病の類を解決することは、すごく社会的意義は高いけれども、ファイナンスの観点で言えばなかなか難しい。そこは応援消費とかふるさと納税とか、ほかにもより寄附に近い資金の集め方のいろいろな概念がある。そうなると、確かに他省庁の施策ともつながっている。社会課題と、それに応じてどうやってお金を引っ張ってくるのかという方策は、いろんな組み合わせがある。社会課題のうち、スケーラブルなものについては、こういうインパクト投資という方策を用いることができるというのは、おっしゃるとおりかなと思いました。トレードオンの定義として「比例」するかというと、そうならないものもあるなど、いろんな意味合いがあると思いました。
さらに、経済界の期待しているところとしては、ネガティブスクリーニングではなくてポジティブスクリーニングというところです。従来のSRI、ESG投資といったところは、投資先をふるい落とすためのチェック・ザ・ボックスだと捉えられ、全部コンプライしないとひどい目に遭うというか、落とされていくという印象で、このいやいや感のところを嫌っているわけです。この点、インパクト投資という考え方は価値創造ストーリー、ビジネスモデルを説明しないと伝わらないし、それを逆に受け止めてもらったところをポジティブに評価してもらえるというところが非常に魅力的で、今まで自分たちはこんなに頑張って中長期のために研究開発しているとか、人材投資しているとかいうところをむしろ見てもらえるという期待があるというところが大きいということだと思います。ずっとアベノミクスのときからコーポレートガバナンスについては成長戦略として議論をしてきて、「それならばこういうところを聞いてほしかったんだよ」という話です。その中長期の成長戦略の部分に投資をしてもらうことを強調して理解をしていますし、そういう対話に応じてもらえないとなかなか難しいと感じています。
したがって、会計とか指標をどんどん定義していっても、チェック・ザ・ボックスが増えるだけだと、恐らくあまりよろしくない。もうちょっとストーリーを語るというほうに持っていかなきゃいけない。投資家にとっては、そのストーリーを判断するところに行かなきゃいけない。したがって、何か変な基準、指標を作る話にならないようにしたほうがいいなと思います。
【水口副座長】 ありがとうございます。一言だけ言うと、ESG投資もネガティブスクリーニングばっかりだったわけじゃなくて、エンゲージメントもすれば、ポジティブスクーリングもやっていて、ビジネスチャンスもちゃんと追求していたんですけど、イメージがそういう面が強かったということはあるのかもしれません。
それでは、吉田さん、お願いいたします。
【吉田メンバー】 日本政策投資銀行の吉田です。私、投融資の実務をやっている観点からお話しできればと思うんですけど、初めの水口先生のフレームワークに沿って、どれを対象にしていくかという議論でいきますと、まず、目的のところは、社会の変革を促すもの、ヒアリングとかでもありましたけど、やっぱりそこを目指すんだということを明確にこの研究会でも言ったほうがいいんじゃないかなと。そのためのファイナンスなんだというところ。
その対象としては、さっきスケーラビリティーの話がありましたけど、やっぱり金融の得意なものはスケールアップしていくということだと思いますので、そのためにはやっぱりリターンにちゃんと落とし込む、安間さんから話がありましたが、適切なリターンが前提の投融資であるということは明確にしたほうがいいかなと思っています。
3点目の手段のところは、やっぱり今までの、2000年代からずっと今まで金融機関はどこで苦しんでいたかというと、やっぱりリスク・リターンで、リスクばっかりやっぱり評価していく、要するにダウンサイドをずっと見てきた金融がやっぱり多かったと思います。実務でもそうだと思います。なので、その社会変革を目指すという観点で必要なものをやっぱりリスクマネーというふうに言っていますけど、どうやってそのポジティブな面を評価していくのかということを、これも明確に打ち出したほうがいいんじゃないかなと。それはもちろんリターンのポジティブもそうなんですけど、そこで社会的なポジティブなことをしっかり金融の中に位置づけていくということをやっぱりうたうといいのではないかなと思っていまして、徐々にではあるんですけど、金融機関サイドで事業のポジティブさを評価していくというカルチャーを生みつけていくというのが非常に大事なのではないかなと思います。
そのためにも、時間軸が短期だとやっぱりその先が見えてしまうので、金融機関としてはリスク・リターンのバランスを取ろうとするので、やっぱりある程度長期的なもの、社会的インパクトが発現できるような期間が長いものに着眼してやっていくというのがいいのではないかなと思っています。
その観点からすると、これもちょっと安間さんから当初ありましたけど、いきなり経営のインパクト志向まで行ってしまうと、ちょっと先が長いので、初めはケーススタディー的にプロダクトレベルから、どうやって金融でポジティブな面を評価するのかということのガイダンスを中心にまとめて、その先にインパクト志向的なものというのを入れていく、経営としてどうインパクトを見せていくかというような段階を踏んでいくのが、実務的には非常に現実的なのかなという印象を受けております。
私は以上です。
【水口副座長】 ありがとうございました。
では、お待たせしました。高塚さん、お願いします。
【高塚メンバー】 ありがとうございます。抽象的なところをお伝えしてから、最後、絞り込んでいきたいなと思いますが、やはりインパクト投資の主体は事業側だと常に思っています。ここが生き生きと持続的な成長を遂げるということで世の中が初めてサステナブルになると。少し逸れますが、インパクト投資とは、ハイレベルな取り組みではなく、課題解決分野に投資を意図して振り向けていかなければ日本や地球には後がないということですから、何とかしなければならない喫緊の課題だということです。ポジティブインパクトを創出するというのは、それができて初めてフラットかどうかという話だと考えます。
その中で、事業が生み出すポジティブで測定可能なインパクトを可視化し共通言語としていくと。共通言語としていくということは、投資家側においては、インパクトを投資の意思決定の「加点」として捉えられるようにしていくということかなと思います。
寄附とかフィランソロピーもあるけど、あえて金融庁の下でこれを検討するということを踏まえると、投融資する主体によって求めるリターン水準や回収期間には相当な幅があるとは思いますが、経済性と社会性の両立が前提で、日本もしくはグローバルにおいて、特にどのエリアの課題解決を促進したいのか、日本としての方針はどこにありますかという整理が1つ考えらえられます。
また、先ほど申し上げたように、課題解決を行う主体はそもそも金融ではないので、主体である事業側と金融を含めた座組みをどうしようかという整理も必要です。例えば市場というのをどうやって関係者に巻き込みながら座組みをつくりインパクトを創出する先への金融の提供が実現可能な体制を取っていくということは大変大事です。
3つ目として、投資家が可視化されたインパクトを理解できるような素地というのはどうやってつくっていけるかという整理も必要な観点です。ここへ来ると、初めて金融機関の内部の課題として私たちの中に具体的に落ちてきて、それはガイダンス策定や人材育成といった論点につながるのかなと思います。
以上3点を踏まえ、どのエリアに、どういう座組みで、じゃあ金融機関は足元で何をしますかという、この3つを議論できたらすごくいいなと思っています。
さっきどこかで御意見もあったとおり、これを時間軸に沿って設計していくということも非常に大事なことかなと思いまして、そちらも申し添えさせていただきます。
以上です。
【水口副座長】 ありがとうございます。今の座組みという話は、先ほど林さんもおっしゃったような意味で……。
【高塚メンバー】 はい。そう思いました。
【水口副座長】 ありがとうございます。
それでは、吉澤さん、お願いします。
【吉澤メンバー】 ダイキン工業、吉澤でございます。端的に行きます。射程の話なんですけど、やはりインパクト投資がまだ定まっておらずというところからいたしますと、広めでの議論をさせていただければよいのかなと、このように考えております。
ESG投資との差も、今までも出てきておりましたけれども、事業会社でESGを担当している者からいたしますと、これ、日々悩んでいるのは、リスク回避であったりだとか、ネガティブスクリーニング側での議論というのはやりやすいといいますか、社内で推進していく上でも理解されやすいんですけれども、他方、ESG投資には、もちろんプラス側のインパクトも当然やっていかねばならないというのは理解をしておりまして、その辺りが正直なかなか難しいといいますか、社内でもなかなかストーリーをつくるのが難しいこことがございます。
そういう観点からいたしますと、このインパクト投資というところで、少しでもそれに近づけるようなヒントとか、あるいは、ガイダンスまで行くと難しいかも分かりませんけれども、実際そういったものを、示すことができれば非常にありがたいかなと思っております。
これは正木様からもありましたけれども、結果、測定するということで、企業側からの情報であったり、有効性の部分をお示ししていかないといけないんですけれども、結果的にそのチェックボックスが増えたりとか、やはり計測になると定量化というものが必要となってくるんですが、正直この辺りは非常に難しいというところがあると思っておりまして、難しいんだけれどもやってくださいという、宿題だけが来るとかいったことにはならないように、うまく着地点というものを示すことができたらよいのかなと、このように考えております。
どうぞよろしくお願いします。
【水口副座長】 ありがとうございます。形式化をしていくとだんだんチェックボックス化してしまうので、そうならないようにということがありますよね。
では、太田様、お願いします。
【太田メンバー】 野村證券の太田です。私たちは今、インパクトの可視化にすごく取り組んでいまして、そのときに一番課題だなと思うのは、やはり企業の情報開示ですね。したがって、ガイダンス等をもし作るのであれば、企業にどういう形の開示をして、それをどういうふうにエンゲージメントに使っていくのか、そういうもののヒントになるようなものを盛り込むのがいいのではないかなと思います。
「第3の軸 インパクト」と言われますが、私はこれは非財務の評価軸だと捉えていまして、ネガティブのインパクトのほうにはESG投資があって、ポジティブのインパクトのほうにはインパクト投資があるのではないかなというイメージで、評価を今いろいろやっています。
先ほど金井様がおっしゃられたオクトパスモデルの話は、すごくなるほどと思いまして、ESG投資のほうは根底のガバナンスとインプット、その先のビジネスモデルを通してインパクトでアウトプット・アウトカムというお話でしたが、確かに企業は基盤のガバナンスとインプットのところは今、一生懸命、いろいろな開示の基準に従って、人的資本も含めてやろうとしているけど、なかなかそのアウトプット・アウトカムのところまではまだいっていないので、ぜひそういう視点も含めて何かガイダンスが書けると、上場企業においては、PBR1倍割れがプライムの45%という事態の解消にもつながるでしょうし、あと、なかなか売上げが立たないディープテック系スタートアップの資金調達の機会も広がってくるのではないかと思いますので、上場・非上場、両方に対しての開示のガイダンスがあるといいかなと思います。
【水口副座長】 ありがとうございます。
では、金井さん。
【金井メンバー】 すいません、2回目で。
【水口副座長】 今日は何回言っていただいても大丈夫です。
【金井メンバー】 2つほどありまして、1つは、金融のストラクチャーの考え方です。例えばスタートアップ、ディープテック系がまさにそうですが、直ぐにはリターンが上がらない事業、だけど間違いなくインパクトがあるだろうと思われる事業というのがあるわけであって、これにどうやってお金をつけるのかという話が出たときに、例えばフィランソロピー的な資金を投入するというケースがあってもよいわけで、三菱商事さんが言っていたブレイクスルー・カタリスト・ファンドなどはまさにそうですよね。そうした性格の資金をブレンドしながらトータルでインパクトをつくり出す、そういうストラクチャーを考えて実際にやっているということだと思います。
インパクト投資は単体で経済的リターンを生まなければならないということに拘りすぎると、こうしたブレンデッドなストラクチャーに行きつかない可能性があります。重要なことは事業がインパクトを生むかどうかであって、その中でどういうポジションを投資家だったり銀行が担うのかを考えるべきなんだろうと思います。大きな資金を投入するベンチャー投資家がいない日本において、多様な性格の資金を織り込んでストラクチャリングするという視点は重要だというのが1点目です。
2点目は中小企業の問題で、ここはもう何度か私もここでお話をしてきたと思います。最近、地銀さんと話す中で改めて思うのは、中小企業の場合はビジネスが特化型なので、スタートアップとある意味で似ているという事実です。創業50周年か、今できた会社かという違いがあっても、ほぼ同じ。スタートアップと同様、創業50周年の中小企業においても、持っている技術にポテンシャルがあって、インパクトをつくり出す余地が大きいということはあり得るわけですが、地域金融機関の皆さんは技術評価をしていない場合が多い。インパクトという視点でポテンシャルを可視化し、事業性評価をシャープにしていって、成長戦略の再構築を支援するような活動を行うべきだと思います。その際、ロジックモデルを活用しながら経営者と対話することもあっていいと思います。そういうことをすることによって、中小企業が持っている潜在的な価値を引き出してくる役目というのは、地域金融機関の非常に大きな役目ではないかと思うんです。
そう考えると、特に日本の97%は中小企業ですので、地域金融機関にはインパクト融資の視点を織り込んだ事業性評価を行いながら、ポテンシャルを引き出し、生産性の向上にしっかり寄与してもらうことの推進を金融行政に組み込んでいくことも考えるべきで、そうしなければこの中小企業の低収益性という問題はずっと放置されたままになる可能性があると思います。
以上です。
【水口副座長】 ありがとうございます。
なかなかオンラインだと発言しにくいという面もあるのかもしれませんが、まだ御発言いただいていない委員の方で、浅利様、木田様、田島様、角田様……。
お手を挙げていただきまして、ありがとうございます。木田様、お願いします。
【木田メンバー】 金井様のお話を伺って、私どものお話をしようかなと思いまして、マイクを入れたんですけども、御指摘のように、やはり中小企業に光るものもございますし、インパクトを生むようなものもあろうかと思っております。
私どものほうでも、やはり実際にインパクトファイナンスをしていきますと、お客様の解決すべき、社会にインパクトになるような経営課題、この辺りをいかに把握して、一緒に共有をした上で、お客様がその解決の課題に向けてどのように取り組んでいくのか、この辺りを金融機関としてきちんと伴走していく、その辺りが求められているのかなと思っています。ただ、そうは言いましても、なかなか私どもの金融機関もそうですし、それからお客様にも、そのインパクトがどういうものなのか、まずはそこをきちんと理解していただいた上で物事が進むのかなとも思います。
そういう意味では、お客様との対話の中で、まずはきちんと課題を共有して、私どものほうから適切な御提案ができるかどうか。そして、インパクト融資に、私どもは融資がメインですので、融資を念頭にお話ししますけれども、取り組む意義であったりとかメリットであるとか、その辺りをお客様に御理解いただけるように働きかけをするところ、それからターゲット、目標、指標などを定める場合には、その到達に向けたコンサルティングも含めて、お客様に適切にそういった御案内ができるかどうか、この辺りもポイントかなと考えております。
ですので、先ほど来、お話が出ていますように、様々なガイドラインないしは事例等を共有していただくことで、私ども金融機関のナレッジも上がっていきますし、それを通して、お客様の課題解決に適した御提案にもつながっていくのかなと思いますので、ぜひ有効な策として御検討いただければと思っております。
以上です。
【水口副座長】 ありがとうございました。
それでは、角田様、よろしくお願いします。
【角田メンバー】 ありがとうございます。先ほどから射程距離のお話の中で、金銭的リターンがあるものに絞るお話もありまして、金融庁さんの下に議論する上では、その範囲内の議論が正しいのかなとは思いますけれども、そこから外れる事業、先ほどの指定難病の解決のお話などのように、限定された市場であっても、その市場の中の方々にとっては大変インパクトのある事業というのも多々存在するのではないかなと思っています。
そういった方々がもしスコープから、今回、初期的なインパクト投資の定義から外れる場合には、それ以外の施策があることも同時に周知を進めていかないと、今のインパクト投資の射程に外れる可能性のあるスタートアップが、無理にインパクト投資という定義を持って資金調達をしたときに、無理にスケーラビリティーだけを念頭に置いて、資本政策が少しうまくいかなかったりとか、自社の事業のスコープが定まり切らなくて、結果、社会課題の解決ができないとか、もしくはその社会課題の解決のスピードがより遅くなるという側面があるのかなと思いますので、何かそちらが両輪で動くような、全体像が見えるような形になるとすごくありがたいなと、スタートアップ側の立場からは思いました。
以上です。
【水口副座長】 ありがとうございます。重要な御指摘だと思います。金融庁が出すものでインパクトがありますので、インパクト投資はやはり限定しないようにということはあるんだと思うんです。その上で、この検討会で対象にするものはこの範囲ですよと。しかし、インパクト投資の全体像をまずきちんと理解するということが必要なのかなと思っております。
それでは、浅利様、よろしくお願いします。
【浅利メンバー】 スタートアップ側からの意見になるんですけども、結構短期的な視点なのか、長期的な視点なのかといったところで、やはり短期的な視点でのインパクトというのは、投資家さん皆さん、多分それなりに試算できるんじゃないのかな、現状の投資のところで皆さん多分それなりに考えて投資されていると思うんですけど、やっぱりその長期的な視点のところがなかなかよく分からない部分とかもあって、特にディープテック系というのは難しいというところがあるのかなと。
一方、お金がいっぱい要るというところの、その悩みのところでインパクト投資というのが力になるのかなと思っていたんですけど、ずっと議論を聞いてきても、何か結構分散していて、何がどうなっているのかよく分かっていないんですけど、やっぱりある程度決めて指標とかをつくらないと、多分何も前には進まないのかなとちょっと思っていて、広く取れば取るほど、指標は何かつくるのが非常に難しくなってくるし、今後どう詰めていくのかなというところは、かなりよく分からないなというイメージで今、ずっと聞いています。
以上です。
【水口副座長】 ありがとうございます。まさにおっしゃるようなことが今のインパクト投資の現状なんだろうと思いますから、どしどし御意見いただいて、こうせよと言っていただければと思いますので。
【浅利メンバー】 分かりました。
【水口副座長】 では、田島さん、お願いします。
【田島メンバー】 ジェネシア・ベンチャーズの田島でございます。私たちは、キャピタルゲインの追求と社会的インパクトがトレードオンになる事業領域への投資をしているベンチャーキャピタルになります。
このワーキンググループにおける議論をよりスムーズにする上で感じたのは、やっぱりインパクト投資という多面的な顔を持つ、ある意味で玉虫色の言葉の定義をもう少し明確にしたほうがいいのかなと感じています。やっぱり世の中で今言われているインパクト投資というのは様々な側面があると思っていて、このワーキンググループにおいては、かなり皆さん、そこはそろっていると思うんですけど、世の中的な話ですよね。
例えばですが、やっぱりESG領域、例えば経済活動のサステナビリティーを高める事業領域への投資を行うものだったり、あとはソーシャルインパクトの可視化みたいな、いわゆるIR的な側面、インパクト軸の計測に注力するという手法もあると思いますし、あとはやっぱりESG、サステナビリティー経営みたいなものへの注力をサポートする形の投資手法とか、いろんな側面があるかなと思っていて、やっぱりこのインパクト投資という言葉の中に、この辺りの様々なアプローチ、側面がいろいろ交じってしまっているという印象を持っています。
我々、冒頭にキャピタルゲインの追求と社会的インパクトがトレードオンになる事業領域への投資をしているというふうに申し上げたんですが、ベンチャーキャピタルの立ち位置として感じていることとしては、世の中をやっぱり大きく前進させるイノベーションには、多くの場合インパクトが附帯しますし、当然キャピタルゲインとも、トレードオフどころかトレードオンであると思っています。
もっと言うと、これからの社会において、これからの時代において、やっぱり大きなキャピタルゲインを追求するためには、やっぱりインパクト、つまりインパクトとはある意味で持続性を担保するという、僕は目的、意味もあるのかな、側面もあるのかなと思っているんですけど、やっぱりインパクトが伴わないと難しいのではとも考えています。
ただ一方で、やっぱり社会的インパクトはあるんですけれどもマネタイズが難しい事業、もう少し突っ込んだ言い方をしますと、やっぱりボランティアにちょっと寄った事業というのもあると思うんです。ただ、これもやっぱり世の中にとってはなくてはならないものですし、世の中にとって必要なものですし、これは世の中を前に進める上では必要なものだと思っています。
なので、こういった事業に関しては、やっぱりより寄附とか、そういったお金が滑らかに回る仕組みをつくることが重要であって、私たちはそういうふうな仕組みをつくるスタートアップに投資をするという、そういった切り口でこういった部分への解決につなげていきたいと思っています。
いずれにしても、本ワーキンググループで議論すべきインパクト投資とは何かみたいなところのイメージは、もう少しすり合わせられるとスムーズかなとちょっと感じました。
私は以上になります。ありがとうございます。
【水口副座長】 ありがとうございます。そろそろ政策側の議論に行かなければと思うんですけど、今、田島さんからおっしゃっていただいた、インパクト投資の定義をもうちょっと明確にしたほうがいいのではないかという議論、皆様はどう受け取られていますか。そうかもしれないなと思ったり、つまりはGIINが、インテンショナリティーがあって、ファイナンシャルリターンがあって、投資資産の多様性があって、インパクトをマネジメントするんだ、こういう定義を既にしていますけれども、これよりももうちょっとクリアカットな定義があったほうがよい、田島さんはそういう感じですか。
【田島メンバー】 そうですね。恐らくこのワーキンググループでいうと、大分その共通言語が持てているのかも分からないですけど、やっぱり世の中においては多分ほとんど、そこがかなり乱れているのかなという。なので、このコミュニティーでの議論というよりは、いわゆる世の中的な感じですかね。ただ、そこへしっかりとやっぱりメッセージを伝えていく上でも、もしかしたらこのコミュニティーにおいても、もうちょっとシャープにしてもいいのかなとちょっと感じました。
【水口副座長】 ありがとうございます。もし何か……。
高塚さん。
【高塚メンバー】 ありがとうございます。角田さんがおっしゃったときに少し考えたところですが、やはりインパクト投資は、経済性と社会性の両立というところは1つポイントではないかなと。ただ、時間軸やその基準、水準はプレイヤーによっていろいろあるとは思います。その中で、インパクト投資だけであらゆる課題へのお金回りを司ることができるかというと、今の定義から考えても限界があり、やはりそこは寄附やフィランソロピーやカタリティックキャピタル等のいろいろなスタンスからの資金提供ということとを考え併せ、全体で社会課題を解決する資金の流れと「座組み」、さきほどの座組みとはまた違う「座組み」なのですが、そういうエコシステムというのをどうやってつくっていくかというのは1つある。先ほどの角田さんの御指摘は、この全体像をまずはちゃんと示した上でというお話だったかなと思うので、そういう方向で行けたらいいのかなと思います。
【水口副座長】 ありがとうございます。そうですよね。インパクト投資だけで全てを解決するわけではなくて、いろいろな解決手段の全体の中にちゃんとピースとしてはめ込みましょうということですかね。
【高塚メンバー】 そうですね。もっと言うと、同じインパクト投資という枠組みの中にも幅があり、各インパクト投資家がそれぞれ全部の課題解決領域に投資できるわけではないので、そもそも多様なインパクト投資家が手を組む必要があると。その考えを更に広げると、先ほどお伝えのような、寄附から機関投資家の投資まで、あらゆる資金供給ということが手をつながないと課題解決に取り組めないということが、改めてインパクト投資を含むサステナブルファイナンスの一丁目一番地の話としてあるのではないかと思いました。
【水口副座長】 ありがとうございます。
【金井メンバー】 さっき私が言ったストラクチャーはそういう話で、その議論をカットしてしまうと、どこでその議論をするのかなという話になるので、難しいというのは分かるんですけど、やっぱり何らかの議論をすべきだと思います。
【水口副座長】 その議論はもうほかにする場所がないんだから、ここで一旦その議論をした上で、一回絞るということですかね。ありがとうございます。
ほかにいかがですか。あと、高塚さんからエリアの話を問題提起いただきましたけど、要するにどういう領域の話という、あの議論というのは、例えば日本とか、金井さんからは中小企業にも目を向けようという話がありましたし、渋澤さんからはグローバルサウスとか、もう少し広い視点で物事を見るべきという御指摘もいただいていますし、この辺はいろいろあり得るという見方でよいですか。
皆さん、何かこの点についてコメントがあればいただきますが。特段強い主張はないでしょうか。
高塚さん。
【高塚メンバー】 ありがとうございます。先ほど申したように、インパクト投資がnice to haveな投資では決してないということだとすると、最も救わなきゃいけない課題、それは、これが圧倒的1位とかではなくてもちろん千差万別だし、地方かグローバルかのスコープもいろいろあるとは思いますが、そういったあらゆる課題の中のどこを優先的に救っていくのか、という論点のように思います。何が正解かというのはもちろん難しいですが、政策等を踏まえ、選択肢を幅広に提示することに加えて一定程度の優先順位や指針のようなものもあっていいのかなというのは、言うは易しとは思いますが、あるといいなというのは思うことはあります。
【水口副座長】 正木さん、お願いします。
【正木メンバー】 今日の資料で12ページのロックフェラーの、グラデーションみたいになっている概念図があります。GIINも同じような絵がありますが、おっしゃるとおり、より寄付に近い資金調達方法としてはクラウドファンディングが合っている世界など、いろいろありますよね。ターゲットとなっている社会課題解決のためのいろんな手段のメニューが確かにあるなと思います。
その中で「やっぱり、この課題を解決するためにはこの方法じゃないか」というケーススタディーをしないと、なかなか具体の議論にならない。経団連でも、先日のインパクト指標の提言をつくったときは、今日のような概念の議論ばかりしていても、いま一歩イメージが湧かないので、「レジリエンス」と「ヘルスケア」というテーマがたまたまみんなの興味・関心が集まり、このテーマならもうちょっとアピールしたいことがあるからということで、ロジックモデルをこんなふうに組み立てて、そこに「じゃあその分野の指標と言われるものをはめてみましょうか」ということで提示したら、それが結構受けて、「ああこうやってロジックモデルを組むんだね」という話になっています。これはもう政権の課題のどれでもいいと思うんですけど、社会課題を選び、その課題が金融庁の分野じゃないかもしれないですが、どれかの例示で具体的にロジックモデルを示して見せるとか、皆さんに、ガイドラインとかガイダンスとかにいきなりつながらないと思いますが、イメージできるものを1つみんなでつくってみて、「こういうふうにすると数字はつながっていくよね」というのを示すと、だんだんやり方が伝わっていくのではないかと思いました。
【水口副座長】 ありがとうございました。
それでは、もう1つの課題であります最後のページを御覧ください。今後の本検討会での検討の進め方です。今、大分御議論いただいて、イメージもできてきたのかなとは思いますけれども、インパクト投融資の基本的な考え方をまとめる、指針を作成することは有益かと。それにとどまらず、どのような施策を検討していくことが有益かということで、金融庁、この検討会としてどんな施策を検討していってほしいのか、あるいはしたいのかということについて、活発な御議論をいただければと思うのですけど、いかがでしょうか。どなたからでも結構です。決して、自分で言ったからやれとかいうことには多分ならないと思いますので、言うだけですので、言っていただければと思います。いかがでしょうか。
手が挙がっていますね。林さん、お願いします。
【林メンバー】 御指名ありがとうございます。9ページでも一言コメントさせていただきたいんですが、その前に8ページで、細かいブレットポイントになっていたところは後ほど議論なのかなと思って先ほど申し上げなかったので、そこも簡単に2つだけしゃべらせていただいてもよろしいですか。すみません、戻ってしまって大変恐縮なんですけども。
1つが、8ページのインパクト投資の定義のところで、ちょっとだけ気になったのが、「効果を及ぼす・及ぼそうとする投融資」という言葉があるんですけれども、この「及ぼす」という部分が必要なのかなというのはちょっと感じた次第でして、というのは、そういう意図はないんだけれども、結果として副産物的に効果を及ぼしました、あるいは及ぼすと考えていますみたいなものまでインパクト投資に含めると、先ほどインパクト投資の定義を絞ったほうがいいんじゃないかという御意見もありましたけれども、割と何でもかんでもインパクト投資ということになりかねないのかなという気もしまして、むしろ大事なのは、及ぼそうとして頑張ったけれども失敗しましたというのも含めて、及ぼしたかどうかの結果ではなくて、あくまでその努力とか意図とか、実態面に照らして整理されるべきなんじゃないかなというのをちょっと感じた次第です。
あともう1つ、これも8ページ目のブレットポイントの3つ目のESGインテグレーションとの違いについて、この辺は金井さん等からも御指摘があったところかもしれないんですけれども、ESGインテグレーションの定義によるのかもしれないんですが、PRIとか、グローバルサステナブルインベストメントアライアンスですとか、日本サステナブル投資フォーラムといった主要な機関のESGインテグレーションの定義を見ますと、言葉はちょっとずつ違うんですけれども、ESG要因を財務分析とか投資の意思決定に体系的に組み入れることといった定義になっておりまして、何のためにそれをやるのかということは一切定義上は書かれていないと思います。
ですから、インパクトを及ぼそうとするために社会とか環境的な要素を分析して、しかもそれが収益性とか事業性に関連するということであれば、当然財務分析とか投資の意思決定に関わってくるわけですので、外形的・形式的にはあんまりESGインテグレーションと区別はつかないんじゃないかなという気もしておりまして、むしろ外形的・形式的に見ると、インパクト投融資であってESGインテグレーションでもあるみたいなものが相当数ありそうな気がするので、やっぱり先ほどの定義の話に戻るかもしれませんけれども、形式的・外形的な区別というよりかは、実態面で区別されるべきものなのかなと思います。
これで8ページは終わらせていただいて、9ページ目で一言だけコメントさせていただきたいんですけれども、要件とかプロセスの明確化というのが出ておりまして、これはすごく重要な点かなと思っております。
資料の5ページ目のところでも、インパクトを志向していながら自らそうは呼んでいない取組もいろいろありますよという御紹介もあったと思うんですけれども、私の経験からいっても、そういったものはたくさんあるかなと思っていまして、例えばCOP26、27と2年連続、私はCOPに現地参加させていただいたんですけれども、気候変動枠組条約の中ではクライメートファイナンスという言葉が出てきまして、COPでは非常にこの言葉をよく耳にします。その定義はどうなっているのかというのを見ますと、これ、UNFCCCによれば、気候変動に対処するための緩和や適応策を支援するための資金で、そこには民間資金も含みますよという定義になっておりまして、性質としては非常にインパクト投融資に近いものなのかなと思う一方で、あまり両者が交わっていない印象も受けるところがありまして、ですから、このインパクト投融資の要件を明確化して、ノウハウを共有化して、お互い学び合えるところは学び合っていくみたいな、そういう形になれば、これは非常に相乗効果も生まれるのかなと思いますので、そういった観点からも、要件やプロセスをある程度明確化したり、あと、実態面での普及、9ページの右側のところで出てきますように、ノウハウを共有化していく、特に、実際にどういう体制や方法で努力すればインパクトを生み出せる蓋然性が高いのかという秘伝のたれみたいなものを、いかに市場の関係者に広く共有化できるかみたいなところは、すごく大事な視点なんじゃないかなと思います。
すみません、長くなりました。以上です。
【水口副座長】 ありがとうございます。定義のところも大変貴重な、重要な御指摘をいただきまして、ありがとうございました。
それでは、渋澤さん、太田さん、馬田さんの順番に行きたいと思います。
渋澤さん、お願いします。
【渋澤メンバー】 ありがとうございます。去年の11月にスタートアップ支援の計画が政府から発表されました。とても重要なことだと思います。ただ、新しい資本主義と言いながらも、今まで資本主義がやってきていなかったことが結構書いてあって、抜けていることがあると思います。社会的課題を解決するスタートアップを支援しますと書いてありますが、問題は、お金がどこから出てきますかということが抜けています。高塚さんも含めて、新生銀行の下で立ち上がっていますが、実はスタートアップなんですよ。新興運用会社もスタートアップなんですけども、問題は、経済産業省の守備範囲に金融が入っていないんです。
これは、今の話だけではなくて、コモンズ投信を15年、立ち上げたときも同じような課題がありました。インパクト投資のエコシステムの中には、当然ながら運用者が必要です。新しいお金を提供する担い手ですよね。この新しい資金を出すほうも考えないと社会的課題のスタートアップ支援になりません。新興運用会社がスタートアップとして認識されていないことは大きな課題だと思います。それはインパクト投資の分野に限ったことではありません。新しい運用会社を支えましょうという政策がないんです。
一部、東京FinCityでは、振興マネジャーを育成するEMPのプロジェクトが始まっていますが、なかなか思い通りに事が進んでいないようです。このインパクト投資という議論の中の施策にインパクトの運用側、運用者をどんどん日本は育てなきゃいけないという視点が重要です。官民連携で。
先ほどTemasekの話をしました。明らかに日本のほうが彼らより資金はあります、政府も民間も。なぜその状況で、アジアの中のインパクト投資のリーダーシップをシンガポールが取っているのか。それは、新しい新興会社にどんどんシンガポール政府が出資しているからです。彼らはできるのに、なぜ日本はできないのか。そこは議論したいと思います。
【水口副座長】 ありがとうございます。新興運用会社もスタートアップなんだと。そうですよね。日本ではそういう金融機関はやっぱり新しいものが生まれてこない、にくいですよね。なるほど。ありがとうございました。
それでは、太田さん、お願いします。
【太田メンバー】 私は、資料9ページの右側の①にある「インパクトの計測・管理等のノウハウは共通の面があるか」と、「ノウハウを共有すること」にすごく意義があると考えています。
ちょっと、今やっていることを共有させていただくと、私たちは証券会社として、インパクトIPOの実現に強い使命感を持って取り組んでおります。特に売上げの立たないディープテック系のスタートアップをどうやってIPOまで、もしくは資金調達につなげていくかというところなんですけど、前回登壇されたエレファンテック社の清水社長に今、実験にお付き合いいただいております。どういう実験をしているかというと、資料2ページ目の「インパクト投融資では事業の環境的・社会的な効果をより明示的に把握・理解することが求められる」これはもっともなんですけど、その際に、6ページに「社会的なインパクトは現在の企業価値に反映されることができないか」と書いてありまして、これができれば本当に理想なんですが、あらゆるインパクトを企業価値に反映するのは非常に難しいと考えています。そこで、ひとまずそのリターンのほうは経済的価値、あと社会的課題の解決は社会的価値として、個別に価値評価していくアプローチをちょっと実験的にやってみようと思っています。
経済的価値のほうは、エレファンテック社の中計をベースに普通にDCF方法でバリエーションします。今、4本のシナリオをもらっていまして、ベースは緩やかに売上げが伸びるというシナリオなんですけど、そこから1シグマ、2シグマ、3シグマ乖離したすごい指数関数的な伸びのシナリオまで4本もらっています。
問題は社会的価値のほうでして、エレファンテック社は、自社技術は従来製品に対してCO2の排出量を77%削減、あと、水消費量を95%削減と前回のプレゼンでおっしゃっていたんですが、これが仮に実現可能なシナリオだとして、取引先、これらは上場企業ですが、そこの既存の製品がエレファンテック社のローカーボン製品に置き換わることによって実現するトランジション効果がインパクトだと考えて、各取引先の株価に与えるインパクトを推計します。上場企業のインパクトを推計するモデルがありますので、これを使って、その合計値をエレファンテック社の社会的価値と考えようというアプローチなんです。
多分ベースのシナリオの経済的価値はDCF法で求めて、大して大きくないと思うんですが、このベースから3シグマシナリオまでの社会的価値がバリューで見えると、ちょっと見え方も変わってくるかなという期待感を持って、今、実験しています。こういうことをほかのディープテック系スタートアップでもやってみて、彼らにとってイノベーションのためのリスクマネーの供給は不可欠なので、最終的にインパクトIPOに至らなくても、その途中の資金調達のウインドーが広がることを期待して取り組んでいます。
こういう実験など色々な知見を広く共有して、また還元していくネットワーク、こういうのをしっかりつくっていくというのはすごく意義のあることなのではないかと思います。
【水口副座長】 ありがとうございます。
では、馬田様、お願いします。
【馬田メンバー】 すごく細かくて具体的な話になってしまって恐縮なんですが、普及のための取り組み得る施策として、これまでも話に出てきたロジックモデル、これを各事業会社様に投融資の際に必ず出すようにする、というのを金融機関と事業会社の皆様の間で合意を取ってやっていくのが良いのではと思っています。本来的に言えば、そのロジックモデルの中でアウトカムのところをどう評価するのかというような議論をしていかなければいけない、それを経済的な価値に戻していくというところを議論しなければいけないとは思うんですけども、直近はまずはロジックモデルを全員書いて共通のツールとする、といったところから始めるのも、1つの直近にできる方法なのかなと思っております。そうすることで、各事業会社様がどういう社会的なアウトカムを狙っているのかというのを比較検討できるのかなと思っておりますし、現実と乖離してしまう部分もあるかもしれませんが、少なくとも計画上はスタートアップが非常に大きなアウトカムを狙っているというのであれば、それはそれで評価してあげる、ということもできるのかなと思ったので、まずは直近できる取組として1つ挙げさせていただいた次第です。
以上です。
【水口副座長】 ありがとうございます。
それでは、安間さんからお手が挙がっていますので、安間さん、お願いします。
【安間メンバー】 幾つか申し上げますけれども、1つは、グローバルなインパクト投資の定義から外れた議論はここではしないほうがいいということです。簡単に言うと、インパクトの計測・管理については、これは明らかに外せない要件ですので、その辺りはきちんと明確化しておくべきであるというのが第1の点です。
それから2番目は、先ほどインパクトIPOのお話が太田さんから出たので、私からも申し上げておきたいと思うんですけど、やはり非上場の市場と上場の市場の連結を図る結節点としてのインパクトIPOには、インパクトを軸としたイクイティ市場の創成に非常に大きな価値があると思います。インパクト投資の市場におけるメインストリーム化ということを考えていくと、最終的にはこれが非常に重要な意義があると思いますので、これはこれで推進すべき課題だと感じております。
3点目は、推進の枠組みの話になりますけれども、今日の議論を聞いておりましても、インパクト投資の推進の在り方だとか、その定義、中身、スコープについても、様々な意見が必ず出てまいります。過去2年半にわたって行ってきたインパクト投資の勉強会においても、こういった議論がずっと繰り返されてきているわけです。そういうことを考えますと、皆さん、推進したい気持ちがある方はかなりたくさんいるけれども、一部の方はまだどうやっていいか分からないという方もいらっしゃるわけです。これまでいろんな機会にインパクト投資の推進の取組をしてきたものとしては、ぜひ官民の連携のプラットフォームのようなものを常設的につくっていただいて、今、日本で取り組むべき社会課題は何なのか、それに値する適切な指標は何なのか、通常の市場の金融で取り組めてトレードオンが成り立つものは何なのか、政府にどういう統計を整備してもらえるとインパクト投資が進むのかとか、そういったことを常に議論できる、定期的に議論できる場所というものをぜひつくっていただきたいなと考えています。
それからもう1つは、金融庁さんには金融研究所もございまして、インパクト投資についてのインパクトとリターンの関係についての特任研究員も、林さん、松山さんをはじめ、既に任命されておられるわけです。こういったところで、松山さんとか、林さんに研究していただくだけじゃなくて、民間の研究機関、様々な研究機関でのインパクト、リターンに関する分析結果や調査をそこに集中的に集めていただいて、そこでまた、その金融庁の研究所の中でそういう研究とか調査を官民で推進していただく、こういう研究のプラットフォームをつくっていただけないかなと感じております。
それから、最後になりますが、これからは世界の金融機関のみならず日本の金融機関も、このインパクトとリターンの関係性、つまり、どういう環境・社会に対する取組をすれば、最終的に企業も、金融機関にとってもリターンが出るのかという、「インパクトパス」というふうに私たちは呼んでいますけれども、このインパクトパスの解明に向けたアナリストの育成、あるいは銀行員、証券会社員、あるいはアセットマネジメント会社の人材の育成というか、そういったようなところについても、やはりこのインパクト投資の推進の中でぜひ議論を進めて、インパクト投資を進めるからには、この人材育成、人材の強化ということを推進していくようなことも併せて議論していただければなと思っております。
私からは以上になります。
【水口副座長】 ありがとうございました。人材育成のところ、まさにそうですよね。お話の中で、官民連携で常に議論できる場所という、金融庁の研究所とはまた別にその話をされていましたけど、それは具体的な何かイメージをもうちょっと教えていただけるとうれしいですけど。何とか審議会みたいなものともちょっと違うんですよね、きっと。
【安間メンバー】 はい。これは、時には、こういう検討会・審議会を開いていただいてもいいと思いますが、今、金融庁とGSG国内諮問委員会の共催で開催しているインパクト投資に関する勉強会がございますが、これを発展的に解消していって、ほかの省庁さんも参画していただくとか、あるいは金融庁さんが主体的な事務局になっていただいて、この勉強会の場を通じて、あるいは別に新たなものでも結構なんですけれども、もう少し頻繁に集まる形にして、毎年の検討課題も決めながら、継続的にインパクト投資の推進を議論していけるような場所ができたらいいなと考えております。
【水口副座長】 なるほど。ありがとうございます。何となくイメージがついた感じもしますけども。
ほかにいかがでしょうかね。金井さん、お願いします。
【金井メンバー】 今のものに付け加えてのことなんですけど、データの整備ということにちょっと近いのかもしれませんけれども、インパクトパスウェイ、ロジックモデルと言ってもいいかもしれませんが、これがばらばらになったら困るわけであって、一定の、特に重要課題についてのロジックモデルというのは共通化されるべきだと思います。これがインパクトアナリストによって全然違うというのはまずいわけですよね。ロジックモデルのある程度の共有化と言う意味での情報のストックがあるといいかなと。
似たようなことは、エビデンス・ベースド・ポリシー・メーキングで政府サイドもいろんな取組をしていますし、内閣府でも地方創生のSDGs調査・金融研究会で、事業者の登録・認証制度を地域におけるインパクト織り込んだ形で見直し、そのガイダンスを出そうとしています。いろんなところがいろいろやっていているので、行政も民間も活用できるようなロジックモデルの共有化があっても良いと思います。
それから、今、安間さんがおっしゃるかなと思ったんですけど、インパクト志向金融宣言ですよね。これは良い連携プラットフォームになっているなと思うのと、海外の最新動向を取り入れながら日本のインパクト投資を進展させるドライバーにもなると思います。実際、海外動向に通じたインパクト投資の第一人者の方々が参加していますし、海外連携分科会は日本からの発信という役割も担います。言わば、海外と日本の結節点にもなっている組織ですから、こういった民間の動きも実際に取り入れるということもあってもいいかなと思うんです。
【水口副座長】 ありがとうございます。確かにあそこも……。
すいません、吉田様からありますので、その次に高塚様、お願いできればと思います。
【吉田メンバー】 ありがとうございます。9ページのところについては、先ほどの1番目の論点とも関係しますけど、ある程度金融行政としての本件に取り組む目的というところをやっぱりクリアにする。今、皆さんからいろいろ出ていましたが、弊社も社会課題にずっと向き合いながら、両立ということでやってはいるので、いろんな世の中の社会課題があることはもう十分承知している中で、ある程度金融行政的な優先順位をつけていかないと、迫力ある打ち出しになっていかないんじゃないかというところをちょっと付言させていただいた上で、その上で何点かあるんですけど、やはり先ほどありましたインパクトの発現とリターンの関係というのは、やっぱり実績を積み上げていかなきゃいけないフェーズかなと思っています。まだちょっといろんな事例が足りないかなというところがありますので、これをどう積み上げていくかという意味でのプラットフォームというんですか、そういうものがあるといいんじゃないかなと思っています。
もう1つ、皆さんから御指摘がありましたけど、やっぱり外から見て変なことをやっていると思われてはいけないので、ある程度世の中の共通解になっているようなガイダンスというのを出していただく、そのロジックモデルなりtheory of changeなり、こういう件がありますよというのは示していただくといいのではないかなと。
3点目は、まだそういう意味でいうと、いろいろな意味で黎明期だと思いますので、民間の創意工夫を促すというんですか、それを阻害しないということも非常に大事かなと思っていまして、その中からベストプラクティスなものがやっぱり最大公約数になっていくような気がしますので、そういういろんな試みを促すような施策というのがあるといいのではないかなと思いました。
以上です。
【水口副座長】 ありがとうございます。
では、高塚さん、お願いします。
【高塚メンバー】 ありがとうございます。何か皆さんが論点を出し尽くされたと思いましたが、ちょっとだけ補足ということで、金井さんや安間さんもおっしゃったグローバルなフレームワークから外れないということはとても大事だと思う、ということは基本とする一方で、ただ、今、グローバルなフレームワークはさすがにできつつある中で、グローバルな実務というのはまだ積み上げ中だと思います。ここの国際的な議論の場に、例えばSDGインパクトは渋澤さんがメンバーで入っていらっしゃるとか、IMPの後継のインパクト・フロンティアにはSIIFさんが参加して議論しているとか、個別には日本のプレゼンスがありつつ、やはりここに日本全体がチームとして参加していかないと、日本の文脈に合ったものというのは絶対に出来上がらないと思っています。個別のプレゼンスをもう少し有機的につなぎながら全体で後押ししていくような取り組みは結構必要なことではないかとは思います。例えば、インパクト・フロンティアで私たち1ファンドが日本の事例を紹介するだけでいいのだろうかと思うこともあり、その辺りは、金融庁さんとしてなのか分からないですけれども、行政や日本全体として戦略的に絡んでいくべきではないかなとは思っています。
また、運用者を育てるというお話が渋澤さんからあり、その点に関しては、運用者自身が育たなきゃいけないと、自戒の念も込めて思っておりますが、運用者を育てる機関投資家・LPというところは両輪かなとも思います。
【水口副座長】 ありがとうございます。
では、野村様、お願いします。
【野村メンバー】 機関投資家の立場でお話すると、インパクト投資を導入するにあたり、インパクト投資をどの部署が担当、先導するか、議論してきました。ESG投資の普及とともにサステナビリティー推進部や責任投資推進部など、新しい組織が誕生しています。では人材育成も含めてインパクト志向の投資を本格稼働する場合、インパクトという新しいミラーを通して既存の各種アセットの投資を見ていく場合、先導する部署はどこか、どのように運営して行くか、意志決定はどうするのか、アセットオーナーの内部で議論を展開し整理する必要があります。インパクト投資が普及する海外では、インパクト投資部といった組織のもとでIMMが運営され、専門のアナリストを置くなど明確な責任所管のもとでインパクト投資が実践されています。 高塚さんがお話された、インパクト投資の主体は企業さんであるというお話で、インパクト投資を行う投資家、インパクト経営を実践する企業さん、その両者が一体となることで、インパクトエコノミーが形成されていくと再認識しました。インパクトエコノミーを創造する上で機関投資家は、企業サイドのインパクト経営がどんなものか、インパクト経営は何か、投資家としてIMMの知見スキルを身につけていく必要があります。インパクト投資を推進していくには機関投資家サイドでインパクトエコノミーやインパクト経営を理解できる人材の育成が求められます。日本でインパクト投資という新しい分野を推進していくには、安間さんにご指摘頂いた人材育成、人材の強化を議論する必要があります。
【水口副座長】 ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。オブザーバーの方も何かあればということで、オブザーバーの方ってどんな方なのか、よく分からないんですけど。ああ、そうか。そうですね、オブザーバーの、協会の方とかも、もしコメントがあればいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
あるいは委員の皆様で、もし言い足りないことがあれば、いただきますけども。だんだん話も尽きてきた感じでしょうか。時間もよい時間にはなってきたわけですが。
いろいろと御意見をいただいておりました。今回の目的はこれで達成されたのかと思われるかもしれませんが、今日は1つに結論をまとめるような会ではなくて、皆様の忌憚ない御意見をいただき、必ずこの話を柳川先生が後で御覧いただけるものと信じておりますので、柳川先生にまたこういった皆さんの意見も吸い上げていただきながら、この先の検討をしていただけるんだと思っております。
皆様、柳川先生に何かメッセージを残したいことがあれば今がチャンスですが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、若干、時間は早いですけれども、特段これをということがなければ、一旦ここまでにさせていただければと思います。
今、申しましたように、必ずしも明確な結論を1つ出したということではないのですけども、たくさんの御意見をいただきました。これを踏まえて次回、柳川先生がおられるところで、さらに今後の方向性について多分、具体的なものが今後、議論できるのかなと思っております。
それでは、本日も大変貴重な御指摘をたくさんいただきまして、ありがとうございました。
最後に、事務局のほうから御連絡がございましたらお願いいたします。
【西田サステナブルファイナンス推進室長】 本日は本当にありがとうございます。今日いろいろ、様々頂戴した御意見、柳川先生とも御相談して、どういうふうに次回議論を頂戴するのがいいかということを改めてよく検討したいなと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
日程などについては、また決まり次第、御連絡させていただければと思います。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
【水口副座長】 それでは、本日はこれで終了でよろしいですか。
金融庁さんからはよろしいですか、コメントは。特段……。
では、高田さんからお願いします。
【高田総合政策課長】 金融庁総合政策課長の高田でございます。本日も、大変精力的な御議論をありがとうございました。ぜひとも参考にさせていただきたいと思います。
また次回以降、さらにこの議論を深めていただく必要があると思いますけれども、これからの議論の中で、インパクト投資の定義というのは何か、これが最初の問いかけでもあり、また、最後に返ってくる問いでもあるのかなという気がしております。
私どもの行政的な問題意識からいいますと、よく、インパクト投資とは、ある意見によれば、もちろん収益と社会的インパクトは両立するというのが前提であるけれども、一般的なESG投資に比べてよりインパクト、社会的インパクトに寄ったものであって、したがって、経済的リターンは、それはあるのは前提だけれども、そこまで高くはなくていいのだと。もし仮にそういうものがインパクト投資なのであるとすると、例えば機関投資家にとって、受託者責任との関係ではそれはどう捉えられるのかと。いや、それでもいいんだと、社会的インパクトがあれば経済的リターンが若干劣っていてもいいんだという考え方もあるかもしれないし、そのあたりをどう捉えるか。
それは多分、インパクト投資というものの定義をしていく、また、その位置づけ、広い意味でのESG投資と比較した観点での位置づけ、その本質論に多分関わってくるのだと思います。
今後さらに皆様に御議論いただきながら、事務局としてもある程度、基本的指針についても収れんをさせていくときに、その辺をどういうふうに絞り込んでいくのか、あるいは、もしかしたら最後まで、そこはクリアカットな結論がなくてもいいのかもしれないのですけれども、そういったことも含めて、次回以降さらに御議論いただければと思います。
ありがとうございました。
【水口副座長】 ありがとうございました。
それでは、本日の検討会は以上で終了させていただきたいと思います。皆様、御協力いただきましてありがとうございました。お疲れさまでした。
―― 了 ――
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総合政策課サステナブルファイナンス推進室
03-3506-6000(代表)(内線 3515、2893、2918、2770)