「インパクト投資等に関する検討会」(第6回)議事録

  1.  令和5年3月22日(水曜日)15時00分~17時00分
 
【柳川座長】  それでは、ただいまよりインパクト投資等に関する検討会第6回会合を開催いたします。皆さん御多忙のところ、御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
 
 初めに留意事項を御案内いたします。対面参加の皆様は、御発言の御希望がありましたら、席札を立てていただき、発言後は横に戻していただくようお願いいたします。卓上マイクの操作は不要です。オンライン参加の皆様は、御発言されない間は必ずミュート設定にしてください。御発言される際にミュートを解除し、御発言が終わられましたら再びミュート設定にしていただくようお願いいたします。
 
 今回はまず、インパクト投資の推進策案と、事前に資料をお送りした報告書の骨子案について皆様に御議論いただきたいと思っております。続いて、金融庁の金融研究センターで進めている研究について中間報告をしていただきます。
 
 それでは早速、議事に移らせていただきます。事務局の金融庁から資料について御説明をお願いいたします。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  それでは、1ページお開きいただきまして、これまでの議論のまとめです。インパクト投資についていろいろな意義があるということは共通で御意見をいただいたかと思いますけれども、特に広く見られるESG投資の手法との比較をやや簡略化した形ですがまとめております。
 
 ESG投資は、中長期的な収益性とか社会課題への対応を加味するもので意義が大きいわけですが、多く見られる投資手法としては、ガバナンスを含む企業の取組みを総合評価するものですので、個々の投資による効果の実現まではいろいろなものがありますが必ずしもコミットしないということで、投資を通じて実現したい効果にコミットをして、どのようにそれを解決していくのかという技術や取組みを具体的に特定し評価し、更に場合によっては伴走型で支援していく、こういうアプローチに意義があるのではないかという点。
 
 2ページ目は、検討会の射程について、基本的には収益をもたらすものとして純然たる寄附のようなものは基本的には対象の外として考えてよいか、また、青の部分も、結果として何かが実現されるというだけではなくて、意図して何かを実現するということをコミットして進めていくという点では外れるだろうという点で、残る赤い部分がインパクト投資の基本的なカテゴリーであるということでよいかどうか。
 
 3ページ目は、左がアセットオーナー、アセットマネジャー、そして企業や事業に資金が投じられ、事業を通じて、インパクト、収益、成長を実現していく一連のフローを通じて、インパクト投資に関する基本的な共通理解が足りているのかどうかということで、基本的指針とここには書かせていただいていますが、投資アプローチとしてどういう要素が重要かをまとめていくことに意義があるのではないかと。
 
 その上で、下線を引いていますが、コンセプトをまとめても、実際の障害としては、具体的なアプローチ、KPIはどう設定すればいいのか、事例はどのようなものがあるのか等の課題があれば、共通認識はなかなか広まらない、アクションも取りづらいといったこともあるのではないかということで、事例やKPI、データの収集・共有を図るようなコンソーシアムを設けていけないかということを書かせて頂いております。
 
また、国際的な連携とありますが、こうしたKPIとかノウハウの蓄積は、日本国内だけではなくて海外にも展開しまた知見を得る、更には、国際標準と比べて日本のインパクト投資というのは相応に理解され得るものなんだという共通認識を得ることで安心して投資をしていただくという環境整備にもつながるかなということで、③国際的な連携と記載しております。
 
 いずれにせよ、4ページにありますとおり、指針にせよ対応にしても、マーケット自体が創意工夫の段階だと思いますので、決め切りで進めるというより、柔らかい段階から能動的に意見を求めていくようなアプローチ、いろいろな方と対話をしながら進めていくアプローチが考えられるのではないかと。
 
 また、下のところですけれども、関心を持つ投資家層(アセットオーナー)は増えているけれども、なかなかアセットマネジャーの実績が乏しい中ではアセットオーナーが進みづらい、他方で、アセットオーナーの指図がないと、なかなかアセマネなどもインパクト重視の思い切った戦略は立てづらいと、そういうお話があったかなと思いますのでこの点をどう考えるか。
 
 また、社会・環境的な効果をもたらす事業は一般的に収益性が低いのではないか、社会性と収益性はトレードオフの関係にあるのではないかという御指摘もありましたけれども、この検討会ではそれは実は逆ではないかと。社会性に長期的に応えていくことによって、収益性がむしろ立ってくるというようなトレードオンの関係にあることも実際には多いのではないかという御指摘があったかと思います。これを十分に認知されるような工夫としてどのようなことが考え得るか。
 
 関連して、特に創業期や新市場開拓を行う企業の評価については、投資判断における未上場企業等の評価について、社会的インパクトを含み得るとも考えられる中長期的な評価を加味した投資の環境整備を、スタートアップ育成5か年計画の中で議論されていますが、これらをどう考えるか。
 
 4ポツ、地域のところについては、特別に時間を設けて議論したほうがいいというお話もありましたので、次回そのような時間を取らせていただく予定です。
 
 その上で、7ページです。取りまとめのイメージということで、今回も含めて残り3回の時間をいただいています。ここでは大枠を書かせていただいていますけれども、このような骨子に沿って取りまとめを行っていくということができないかと思っております。 具体的な文章案は順次これから議論だと思いますけれども、ワードの資料、縦型の資料を御覧いただきますと、補足資料とありまして、「検討会の取りまとめに向けて」というタイトルで記載をさせていただいておりますので大枠のコメントを頂けますと大変幸いです。
 
 (1)意義として、課題解決に貢献する技術の実装が不可欠であり、こうしたイノベーションの創出に取り組む企業の支援が喫緊の課題であること。ただし、こうした企業が社会・環境面での改善効果を持つ事業を収益化させていくには、様々な時間軸や経路が存在し、特に研究型の企業を中心に長期にわたる例も存在するので、これらの事業を正しく理解し、かつ資金面でもその他の面でも支援を推進していくということから、インパクト投資について意義があるのではないかということ。
 
 それから、(2)は、先ほどもご説明しました今まで一般的に見られるESG投資と比べた違い等です。
 
 3ページは、インパクト投資市場の概況です。国際的なインパクト投資市場の規模が現在拡大している点、グリーンファイナンス等とインパクト投資は何が違うのか、ファンドの名称規制、ファンドネームズルールとの考え方、この辺りの考え方を整理する。また、開示におけるインパクトの加味ということで内閣官房等でも議論がなされておりますので、この辺りの議論を御紹介するということが考えられるかと思います。
 
 基本的指針案は、まず指針を定める目的、基本的な理解とか共通理解の醸成、そして位置づけとして、市場に参加するに当たって期待されること等を明らかにし、資金を提供する側と資金の提供を受ける側双方が資金調達に当たって参考にすることができる指針であること、また、対象として、幅広く包摂する形で考えていくが、例えば創業分野の投資であれば比較的イメージしやすい旨を類型のところで記載する、こういった骨子案としております。
 
 特に、基本的な意義・要件については、社会的効果と収益の両方を実現していく投資として双方がどう実現されるのかという意図を明らかにすること、投資を通じて実現しようとする社会・環境的効果と収益双方の目標が明確であること、こうした目標の位置づけが投資家などの経営戦略や全体の投融資の方針との関係でも明確であること、具体的な目標の実現に向けた投融資の戦略や方向性が示されていること等を一案として記載しております。いろいろ御議論があるかと思いますのでぜひ御指摘を賜れればと思っております。
 
 また、最後の5ポツの部分では、インパクト投資等の普及に必要な政策案ということで、スタートアップ支援の施策等も含まれるかと思いますけれども、これらについても併せてまとめていくことが考えられるかと思います。
 
 こうした文書を、現在では10ページ前後ですが、政策の分野や事例等も追記させていただき、全体に様々御指摘をいただき拡充した上で、6月に向けて取りまとめを行って、パブリックコメントに付していく、その際、決め撃ちでこうでなければいけないということでなく、能動的にいろいろな方にアプローチをして検討していただくプロセスが必要ではないかと。こうした面も含めて全体に御議論いただければ幸いです。
 
【柳川座長】  ありがとうございました。続きまして、社会変革推進財団、SIIFの安間様より、事務局説明でも言及のあった、データが不足しているという課題について検討を進めていただいている内容をプレゼンいただきます。安間様、お願いいたします。
 
【安間メンバー】  ありがとうございます。それでは、私、安間のほうから、インパクト投資に必要な統計・指標・データという観点で御説明をさせていただきます。
 
 最初のページを見ていただきますと、インパクト投資の推進施策には様々なことが必要になってまいりますけれども、インパクト関連の統計・指標・データの整備ということはそのなかでも非常に重要な意味を持っております。
 
 次のページを見ていただきますと、インパクト投資の推進上の障害として、インパクト投資で対応するべき対象領域が分からないとか、あるいは測定とマネジメントの手法が分からないとか、投資の成果を評価できないというような様々な疑問が寄せられてまいります。このときに、インパクト投資の理解・実践に必要な3要素として、特に数字に関わる問題として御説明いたしますと、これは国内の「統計」、それから、課題ごとに設定される、KPIとよく言われておりますけれども、「指標」、それから、生の「データ」という、この3つがあると思います。
 
 このように、インパクト投資の実践には3つの要素が必要であると考えていまして、環境・社会課題の重要性、特に国内の課題の重要性とか深刻度を理解するための、これは一般的に政府だとか自治体が作られるデータだと思いますけれども、そういった統計があって初めて重要課題の特定ができるのではないかなと思います。
 
 それから、もう一つは、個々の課題解決のアウトカムを測定するための何らかの指標が必要になりますが、このKPIとして如何なる指標を引っ張ってくるのが国際的標準として示されています。あるいは日本にある独自・独特の課題であれば、どの指標が一番日本の課題を如実に表現できるかという指標の特定性の問題がございます。
 
 それから、実際にインパクト測定を行っていきますと、個々の事業者なり金融機関が直面しているお客様とか課題に関係するステークホルダーの状況を示す生のデータが必要になってまいります。このときに、事業介入前のベースラインとして、例えば東京都なら東京都、あるいは武蔵野市なら武蔵野市の介入前の実態を表したベースラインのデータも必要になります。また、同業他社がどのぐらいのインパクト、アウトカムを出しているのかということについての業界平均のデータも必要になってまいりますが、これは特に追加性を表すときに必要になってくるデータでございます。それから、最後に書いてございますのが、対象事業の生のデータです。その事業者が取り組んでいるお客様とかステークホルダーの課題指標がどのように変遷し、改善し、場合によっては悪くなってきているのかということをきちんと生のデータとして把握するということが必要になります。
 
 こういったようなことが整備されていきませんと、いろいろな問題が出てきます。そもそも課題の優先度が分からないとか、それから、2番目には、アメリカのGIINなどは、IRIS+という形でSDGの目標に対応した形で指標の整理をしているわけですけれども、日本国内の特殊な課題などもございますので、そういった課題との国際的な連結性が確保されていないことによって、外国の投資家からの資金が集まりづらいとか、あるいは日本の金融機関が国際的な連結性を確保した上できちんとやっているということを説明しづらいとか、そういったような問題が出てきます。
 
 それから、インパクト測定の際に比較対象となるベースラインや業界平均のデータがないと、そもそもインパクト測定が成り立たないと、こういうことでございますので、こういったところに様々な課題があるということでございます。ということで、統計・指標・データという3つの軸で整理をしております。
 
 次のページは、これをもうちょっと解像度を上げていきますけれども、下の横長の表を見ていただきますと、最初に、課題領域の特定、これは課題の重要性を裏づける日本全体の統計が必要になります。
 
 それから、先ほど申し上げた課題解決を測る指標、これはインパクト指標と言われているもので、課題を示す指標です。これは例えば介護の場合であれば、1日当たりの介護士がかけている労働時間が削減されていくかどうかというようなことを指標として見ていくということでございます。
 
 それから、測定に必要なデータというのは、ミクロの対象事業のデータになりますけれども、当該対象となるコミュニティーとかステークホルダーの対象事業介入前のベースラインのデータがどうなっていて、それが今後どういうふうに変遷していって、どのぐらい改善し、かつ実績としてどうなっていくのかというようなことを事前の計画段階でつくっていくという必要がございますし、それから、先ほど申し上げたベンチマーク、業界平均との関係性でどのぐらい追加性のある介入が起きているのかということを把握するための業界平均のデータ、そして、もともとの介入前のデータが必要になると、こういうことでございます。
 
 最後のページですが、前回の会議のときに、私から官民連携プラットフォームが必要ではないかということを申し上げました。一方で、先ほどの事務局の御説明では、コンソーシアムという言葉が出てまいりました。私どもとして、官民連携プラットフォームという言葉を使ったのは、様々なインパクト投資推進上の課題、このインパクト投資に直面する課題を課題設定して、官民連携で取り組んでいくという意味でこう表現したわけでございますけれども、そういった中で、指標、統計、それから、データの整備、最終的には個々の事業者あるいは金融機関が取り組んだ生のデータの共有化といいますか、ライブラリー化のようなことを含めて進めていく必要があるかなと思っております。最後のページの詳細については、今日は御説明しませんけれども、御参考までにこのページも含めて御説明させていただきました。
 
 以上でございます。
 
【柳川座長】  ありがとうございました。それでは、議論に移りたいと思います。御意見のある方は名札を立てていただくか、オンラインの方はWebexの挙手機能にてお知らせください。よろしくお願いします。
 
 水口先生、お願いいたします。
 
【水口副座長】  ありがとうございます。本日はウェブからで失礼いたします。今の安間さんの御説明に質問なんですけれども、事務局の説明ではコンソーシアムとなっていて、一方で金融庁とGSG国内諮問委員会でインパクト投資に関する勉強会というのがあり、この勉強会とコンソーシアムは違うものなんだろうなと思いながら聞いていたんですが、今の安間さんの御説明によれば、いわゆるコンソーシアムないし官民連携プラットフォームというのは、データ整備などをするための何かプラットフォームで、そこに事務局機能があるような、そういうイメージなのかなと。この辺の、勉強会とのイメージの違いとか、官民連携プラットフォームの実際の動きとか、その辺もし安間さんに何か具体的なイメージがあれば、もうちょっと教えていただけるとうれしいなと思って質問いたしました。
 
【柳川座長】  どうぞ。
 
【安間メンバー】  ありがとうございます。恐らく事務局のほうから御説明のあったコンソーシアムという言葉は、勝手な解釈ですけれども、TCFDのコンソーシアムのイメージだと思います。経済産業省さんが中心となって、一部環境省さんも入って一緒につくられた、そういった取組みが参考になって、コンソーシアムという言葉が出ているのかなと思いました。これはTCFDの普及なり、あるいはインパクト投資の推進もそうかもしれませんけれども、広く多くの企業の方に参画いただくための業界横断的な情報共有のプラットフォームというような意味で、どちらかというと、裏では省庁さんの強い後押しもあったのだろうと思いますけれども、基本的には民間企業ができるだけ同じ目標に向かって同じツールで分析あるいは特定の活動を推進していくというようなことが念頭にあると思っています。
 
 一方、既存のインパクト投資に関する勉強会は、既に過去10回開催してきており、水口先生に座長をしていただいています。こちらは、事務局があるといっても、毎回の勉強会の開催のアジェンダ設定だとかスピーカーの選定だとか、あるいは議事録の作成は行っております。ただ、どちらかといいますと、インパクト投資の様々な推進上の課題についてあぶり出しをしていくという勉強会の目標設定にはかなっておりますけれども、一つ一つあぶり出されたインパクト投資推進上の課題などについて事務局として解決のために新たに取り組んでいるかというと、そういうようなキャパシティーまでは現状持ち得ていないという状況でございます。
 
 官民連携プラットフォームということであえて申し上げているのは、これは実際には官と民が一緒に取り組んで、民間資金をうまく活用していって、できるだけ政府の負担も、財政上の負担も軽減しながら進めていくということになりますと、これは官民間の連携だけではなく省庁横断的な、省庁間の連携も含めて必要になってまいります。そこを金融庁さん任せにすることもできない中で、誰かが官民連携の扇の要になって、民間との接点もつくり、民間のイノベーションの推進なども行い、かつ先ほどから出ているデータ・KPI・統計の整備なども行っていきながらやっていく、この指針の策定・改訂なども原案をつくっていくという、そういうようなことになってまいりますと、それなりに大きな仕事量になってくるかなと思っています。したがって、データとかKPIの整備を図るコンソーシアムから、さらにもっと業務量の多いものとして想定されているのがこの官民連携プラットフォームということになるかなと思っています。
 
【水口副座長】  ありがとうございました。大分イメージがつかめてきました。ありがとうございます。
 
【柳川座長】  よろしいですか。それでは、渋澤委員、お願いします。
 
【渋澤メンバー】  ありがとうございます。安間さん、御説明ありがとうございます。
 
 プラットフォーム、コンソーシアム絡みで、いろいろな話が並行して走っていまして、先ほどTCFDみたいなコンソーシアムというイメージという御発言がありましたが、御存じのようにTNFDというものもあり、現在、私自身は日本から今回のG7でTPFDをつくることを提案すべきだと思っています。これはESGのSのところで、人的資本(P=People)の情報開示のグローバルベースラインを定めるという意味でのコンソーシアムで、日本からそれをG7で提言したほうが良いという声もあります。私の理解では、TCFDは、インパクト投資の関連よりもISSBの関連に直結していて、企業の非財務的な情報開示、まさにKPIの設定という整備が必要という流れであると思っています。
 
 一方、GSGが取り組んでいることは、私は当初から参加していますが、情報開示ということは大事ですが、どのようなプレーヤーがどのような形でエコシステムをつくっているかということです。現在、インパクト投資からいかにインパクトエコノミーへと展開するかという議論がGSGで議論されています。その中、ミッシングリンクがインパクト会計ではないかという話があります。
 
 また、内閣官房の下で座長として務めている「インパクト投資とグローバルヘルスに関連する検討会」が今週中にもでも最終報告書をまとめ、多分これを官邸にお届けできると思っています。報告書で紹介していますが、G7(当時ではG8)においてインパクトの流れをつくったのは英国だと私は思っています。もともとは米ロックフェラー財団が「インパクトインベストメント」という造語の発祥でしたが、2013年に英国がインパクト投資の普及を提言し、それで今のGSGが出来て、また英国がG7議長国になった2021年には「インパクトタスクフォース」という組織が出来ています。
 
 その幹部との意見交換では、ぜひG7で何か日本と連携できないかという期待を表明しています。どちらかといえば、今まではEで先行しているインパクトタスクフォースなので、日本がある意味で存在感を示すのはSだと思っています。先ほどのグローバルヘルスという課題解決におけるグローバルなタスクフォースを企業・民間が参加するような枠組みを提言できないかと考えています。
 
ですから、プラットフォームやコーアリションをつくるといった場合、既に流れをつくっているというところが幾つあるので、全部同じところでやる必要もないと思いますので、連携して並行に動いてもいいんじゃないかなと思います。
 
 あともう一つは、安間さんがおっしゃっていた日本特有というのはよく聞く言葉でありますが、具体的にそれは何なのかなと思うところがあります。例えば特にEの場合ですと、日本特有ということはあまりないと思うので、どちらかというとSのところとイメージしていますが、それは具体的にどういうことを示しているのかなと。全てのグローバルルールが日本に当てはまるということないと思っていますが、逆に、繰り返しますけれども、Sのところは日本が存在感を示せるところかもしれなく、その突破口が医療、ヘルスだと思っています。
 
 IRIS+があるが、それを我々が適用できないから別のものをつくりますというと、せっかく日本が存在感をグローバルで示す可能性がそこにあるのにちょっと残念だと思います。ですから、もしかしたらこれは高塚さんのほうが実際投資しているのでお答えいただけるかもしれませんけれども、具体的にどういうところが日本特有なのかということをお伺いしたい。
 
【柳川座長】  どうしましょう。では、御意見。
 
【安間メンバー】 簡単に最後のところだけお答えします。これはインパクト志向金融宣言の参画金融機関の方々などとお話しし、あるいはGSG国内諮問委員会の関係では委員長の小宮山宏先生などからも話が出ることです。例えば日本は先進国の中でも課題先進国で、海外からはよく理解されない課題としては、地方創生みたいな話とか、それから、少子高齢化の課題みたいなところがあります。これらは、日本のコンテクストでは重要課題ですが、その課題がそのままSDGsの課題のリストの中にきちんと入っているかというとそういうことではありません。したがって、その辺りを日本からもきちんと主張した上で、これは日本にとって重要な課題であるということを示していかないと、そもそも外国の投資家からはよくそれがなぜ課題なのかも分からないという話が出るというふうに理解しております。
 
【渋澤メンバー】  そこは私も賛同して。だから、逆にそれをIRIS+のメニューの中に入れるという、そのほうがいいんじゃないかと思っています。
 
【安間メンバー】  そうです。私の説明が悪かったのですが、日本からもっときちんと主張して、IRIS+のリストの中に日本の独自の課題も指標も入れるべきだということです。
 
【渋澤メンバー】  分かりました。ありがとうございました。
 
【柳川座長】  よろしいですか。では、そのほかいかがでしょうか。
 
 金井委員、お願いします。
 
【金井メンバー】  2点ほど。一つ、最初の取りまとめのところの一番最初に「課題解決に貢献する技術の実装(イノベーション)が不可欠」と、これは全くそのとおりだと思っていて、このイノベーションという言葉が入ってきたことは非常にいいなと思う一方で、イノベーションというと、新技術開発というかなり狭い領域で捉えられてしまわないかという懸念があります。それだけではないイノベーションもあると思うので、そういうニュアンスがあった方がいいかなと思いました。
 
 それから、もう1点、インパクト投資はプロセスの可視化が重要です。因果関係を分析し、サステナブルな成果を追求していくと、自分たちの事業戦略がうまくいく、商品やサービスが売れていく、かつそれが企業価値の向上につながっていくということなんだろうと思うんですね。だから、成果指標はIRIS+でもいいんですけれども、取組みとその成果の間がどうかということがポイントで、ここがある程度定型化、パターン化されたほうがいいんだろうなと常々思っていました。
 
 ちなみに、UNEP FIのインパクトレーダーは、プロセスが重要だという観点から、前のバージョンのものだと24個の切り口を設定し、この切り口を経由してSDGsのどこかに行くのかを分析できるようにしているんですね。プロセスを非常に重要視しているので、インパクトレーダーという真ん中のカテゴリーをあえてつくっているわけです。
 
 そう考えると、一足飛びに活動イコール何かのゴール、みたいな感じでやってしまうと、その間がどうかがよく分からないということが出てくる。うまくいかないときの要因も分析できません。そういう意味ではプロセスを何か類型化できるものがあるといいと思います。
 
 例えばロジックモデルを類型化しても良いかもしれません。企業の事業活動が成果に結びつくプロセスと、EBPMのようにいわゆる政策的にやるプロセスも異なることはないので、企業の取組みと政策の整合性をつける上でのプラス効果もあると思います。
 
 申し上げたいのは、せっかくこういったようなプラットフォームをつくって、類型化、パターン化していくというのであれば、プロセスの類型化があるといいなと。これは理想なのかもしれませんけれども、その辺り、もし安間さんのほうで少し何かアイデアがあると、教えていただけるとうれしいです。
 
 以上です。
 
【安間メンバー】  すみません、後ほどお答えします。
 
【柳川座長】  少し大きな問題意識、問題提起だと。
 
 では、正木委員。
 
【正木メンバー】  これまでのご発言と関連して、企業の側からすると、一足飛びにデータ・指標の議論に飛ぶのではなく、もちろん目盛りがつく尺度が共有できるにこしたことはないのですが、まずは価値創造ストーリーについて共感してもらえるところに投資をしてほしいというのが願いです。
 
 具体的に、例えば環境に優しい乗り物が何かというソリューションについて、まだ様々な考え方があり、「これからは電気自動車だ、それに投資するところが正しいんだ」という会社もあれば、「いやいや、水素エンジンだ」という会社もあるわけです。「いや、そんな時代が来るまでにはまだ時間がかかる。今の時点で電気に行ったら、電池の効率も悪く、石炭をぼんぼん燃やしてつくった電気を使うこともあり、むしろ地球によくない。ハイブリッドなど、トランジションといわれるテクノロジーに今は投資するべきだ」という考え方だってある。それぞれ経営者の判断があって、それぞれに共感する投資家が投資をする状態だと思うので、なかなか、ひとつの方向での取組みについての業界平均を出すといった形にはならない。
 
 数字だけ先に先行して、指標やデータがあったとしても、その読み方、使い方は全く異なった方向になってしまう。先ほど言及のあった「人的投資」の分野など大変難しく、人がたくさん中途採用されている会社は、辞めている人が多いブラック企業なのか、新規事業に参入していて新分野の人を雇っているのか。数字の解釈の仕方がストーリーの中で位置づけられて初めて意味を持つことになると思います。そうした意味で、コンソーシアムで話し合う内容も、「私はここの分野はこうなるに違いないと思って賭けている」という話をするとなると、なかなか難しい。事務局資料にあるように、投資手法や典型事例など、あくまで事例を紹介し合って、こういうメカニズムで投資をするんだということについて話し合う場とするのなら、理解できるのですが、いきなり共有データ、業界平均といったデータを出すことは、なかなか現実にはイメージしにくいと思います。
 
【柳川座長】  それでは、手を挙げていただいている方が多いので、少しお話しいただいてからと思います。馬田委員、お願いいたします。
 
【馬田メンバー】  私は金融庁の皆様がまとめていただいたところに関するコメントになります。
 
 まず方針については、私も違和感なく、このまま進めていただく形でいいのかなと思っております。特に賛同したい部分に関しましては、ガイドラインの内容を柔らかい段階で共有していくといいますか、内容だけが正しいのではなくて、プロセスもフェアなプロセスとしてつくっていく、ステークホルダーを巻き込んでいくというところは、納得感を醸成する上で重要なのかなと思っています。
 
 これまでの議論を少し自分なりに解釈すると、こうしたインパクト投資あるいはインパクトをどう測るかというところは2つの軸があるのかなと思っております。X軸とY軸で分けると、例えばX軸は時間軸です。投資先の時間的な変化をどう見定めるのかが、一般的な投資もそうだとは思いますけれども、これが非常に難しいというところと、縦軸としてY軸は、社会・環境面での改善をどうMeasurementしていくのか、そしてどの面を優先するのかが非常に難しくて、このX、Yの2つの軸で物事というかインパクトを測るのが非常に難しいのかなと思っている次第です。そこに対してある程度一定の理解を得ていく上で、定性的なストーリーづくりとか、コンソーシアムやコミュニティーみたいなものをつくっていくというところは非常にいいのかなと思っています。
 
 その上で、取りまとめの一番最後にありました政策というところですけれども、やはり一つ重要なのが、キャパシティビルディングといいますか、こうしたものの教育をちゃんと受ける人を増やしていくというのが大事かなと思っていまして、その政策をやっていくというのは一つ大事なのかなと思っています。特にアセットオーナー、アセットマネジャーあるいは投資先となる企業、スタートアップの皆さんが受けられる、例えばオンラインコースなどは、海外の大学を見ると、サステナブルファイナンスのコースとかがいっぱいあって、しかもマイクロクレジットやマイクロクレデンシャルのような形で授業の受講証明書まで出るということになっています。そうした能力開発をきちんと進めていかないと、多分お互いに土台が一致しないまま話すことになってしまって、ある程度土台をつくっていく、つまり、教育プログラムをちゃんとつくっていくというのは政策的に大事なところかなと思っています。
 
 また、それに加えて、未来のところ、X軸の話になりますけれども、やはり企業から開示していく内容を少し変えていくというふうな政策の誘導も必要なのかなと思っています。海外のSPAC上場などを見ていると、かなり可能性は低いかもしれませんけれども、未来のバラ色の計画をちゃんと書いて、そのリスクを受け入れられる人が投資していくということをやっていたりするのを見ているんですけれども、日本でも企業からの開示の内容として、過去のファクトベースだけではなくて、未来をどう考えているのか、あるいは未来の将来予測を、それこそ4、5年後まで含めて開示していくというふうなところをきちんと政策的に誘導していくと、会社の描いている未来やストーリーをアセットマネジャーの皆さんなどが判断しやすくなるのかなと思っておりまして、そうしたところで何かしら政策をつくっていくといいのかなと思った次第です。
 
 私からは以上です。
 
【柳川座長】  ありがとうございます。それでは、高塚委員、お願いいたします。
 
【高塚メンバー】  資料のお取りまとめ等いただきまして、ありがとうございました。
 
 最初に、7月以降にコンソーシアムをという話がありました。他のプラットフォームとの整理も必要と認識しつつ、ただ、金融庁の下でこのようなものを立ち上げるという観点から、広く抽象的な「コンソーシアム」という言葉の下で具体的に何が行われるのかという点がやはり最も大事と考えます。
 
 今のこの検討会が6月に一旦終了した時点で、本検討会でシェアしてきた皆さんのお知恵を一旦次へつながる課題と言う形で表し、7月以降のコンソーシアムで更に検討すべきこと、議論を進めるべきテーマの種を1、2、3といくつか投げ込んだ状態で終えられればと思いました。
 
その種のうちの一つが、先ほど安間さんがおっしゃったようなデータ周りということになると思います。正木さんが言及されたような反論もありながら、このデータをどう捉え整理し理解していくかということは、私は大事な種の一つではないかと考えております。
 
その他の種の候補としては、例えば人材の育成、IMMのプロセス(それが必要かどうかも含めての検討)等々、幾つかポイントとなりそうなインパクト投資のテーマがあるのではないかなと。これらを整理し、7月以降継続して検討してもらうことを意図して種として投げ込んで6月までを終えられたら素晴らしいと思いました。
 
 また、補足資料の中の記載につき、ESGとインパクトの違いをかなりしっかり説明されようとしていると理解し、これは混同や誤解が取れるという意味においては非常に大事なことだと思っています。ただ、さらりと書かれていますが、結局、ESGもインパクトも含め「サステナビリティへの投資」をどう総体的に進めるかという観点が最終的には一番大事だと現場にいて今感じています。インパクト投資家として提言書がインパクト投資推しなのは非常に嬉しく有り難いのですが、一方で、私は実務をやりながら既に一定程度定型化しているESGプロセスにも価値があることを実感していますので、インパクトもESGも含めて総体的に取り組むという方向が、違いの強調よりも強くメッセージとして出せればと考えました。
 
 最後に、ScalabilityやAccelerationという言葉がありましたが、その項目に書かれている内容はもしかしたら投資先企業のアディショナリティーと、社会課題のマテリアリティーみたいな話なのかなとの印象でした。私も金融機関系の投資家としてScalabilityを追求したいと思いますので、Scalabilityという言葉は非常にチャレンジングな言葉で個人的に好きですが、ここでは少しミスリードなタイトルの可能性があると思い、再考の余地のあるワードかなと思っております。以上になります。
 
【柳川座長】  それでは、吉澤委員、お願いいたします。
 
【吉澤メンバー】  まず事務局に取りまとめいただいている内容、どうもありがとうございます。取りまとめで書かれている内容につきましては、大きく異論はございません。
 
 事業会社の中で携わっている者からいたしますと、やはり国際の整合性、それと定量的なきちんとした数字を出していくというのは目指す姿と言いながらも、現実とのギャップを考えますと、データの柔軟性といいますか、初期の頃はある程度の定性的なところも見据えてスタートすべきと個人的には思っておりまして、その辺りについても十分入っているということで、異論がないということでございます。
 
 特にデータのところにつきましては、安間委員の資料の中の言葉を借りますと、例えば業界平均とか統計の数字、こういうものを活用するというところにつきましては異論はないんですけれども、我々からすると、一企業として個々に数字を出しているというのも一方であります。そのときに、実際には条件が多様な中で我々が出しておりますが、算出するデータの条件がそろっていない中でそれらは、そもそも比較し得るデータかどうかという論点が出てくると思います。これは理想論を言うと事が進まないというのはありますけれども、ある程度その辺も加味しながら、どう進めていくのかというところを今後、まだ回数がありますので、十分議論させていただければと思っているところでございます。
 
 あと、「検討会の取りまとめに向けて」の中で、企業会計・開示におけるインパクトの加味の取組み、ここについては、多分具体的にはこれからかなとは思うんですけれども、一作業者とすればとても関心が高いところですので、次回以降、もう少し具体的になりましたら、意見等を述べさせていただければありがたいかなと考えております。
 
 以上です。
 
【柳川座長】  ありがとうございます。続いて、野村委員、お願いいたします。
 
【野村メンバー】  アセットオーナーの立場でお話をさせていただきます。「検討会の取りまとめに向けて」の10ページ目に書いていただいている内容が当てはまりますが、アセットオーナーとしてインパクト投資を開始した現在、感じていることです。投資家の裾野を広げていく、日本の中でインパクト投資を拡大していく中で、一番重要な点は、経営方針にインパクト投資の考え方が位置づけられているか、ということです。やはり、インパクト投資について、個々のファンドマネジャーによるコミットメントより、会社によるコミットメントが存在しているかが普及拡大には重要であると考えます。
 
 またインパクト投資を実践する場合、体制構築の観点からどこの組織の誰が担当するか、具体的な担当組織まで落とし込まれないと、インパクト投資を推進する上でリーダーシップが発揮できません。会社の経営方針に従って、どの組織の誰がインパクト投資を実践していくか、この体制構築が確立されている必要があります。
 
 インパクト投資を実践することで、プロセス上の課題が見えてきます。私どもも課題が出てきました。例えばIMMはどうすれば効果的に機能するか、IMMのプロセスはどういう形式でうまく進展していくか。投資実践を積み重ねることで生じる課題は共通ですので、theory of change、IMMといった課題キーワードに対する知見や理解の必要性を検討会取りまとめ指針に盛り込んだほうが良いと考えます。
 
 我々が現在、プロセスに対する課題解決に向け取り組んでいるのは、コラボレーションの積極化です。人材育成が不十分なところでは、得意分野を持つ方、知見のある方と組んでインパクト投資を進めていくことが、社会課題解決の近道です。インパクト志向の強い企業、対話力のあるアセットマネージャー、IMMに高い知識を持つ専門家などとコラボレーションすることで投資プロセスは高度化していきます。コラボレーションはインパクト投資の裾野を広げる上で、重要です。コラボレーションを通じで個々のスキルアップも図れます。
 
 アセットオーナーとして、経営等におけるインパクト投資の位置付けを明確化させ、経営陣とPDCAを回し、コラボレーションを有効活用しインパクト投資を着実に拡大していきたいです。
 
 以上です。
 
【柳川座長】  ありがとうございます。
 
 それでは、先ほどの金井委員の御質問に、安間委員、お答えがあるということなので。
 
【安間メンバー】  先ほどは答えられず失礼しました。もう一度金井さんの御質問の趣旨を確認させて頂いたうえでお答えします。確かにインパクト投資を進めておりますと、各金融機関、あるいは事業者の方々が様々なロジックモデルを策定され、IMMの在り方も、あるいはデータの使い方も、皆さんそれぞれ非常にいい意味で個性的な取組みもたくさんあるわけです。しかし一方で、逆に言うと中には因果関係の分析ですとか、ロジックモデルのつくり方、あるいはデータとか、アウトカムの表現のデータの使い方が適切・十分でないとか、国際的なスタンダードから見ても不十分ではないかと思われる事例がないわけではありません。ですから、そういう現状が今の日本のインパクト投資の現状でありますが、ある程度ロジックモデルについても、パターン化するようなこととか標準化できないかという、そういう課題意識は当然あっていいと思います。しかし、無理に標準化すると、皆さんの創意工夫というのが失われてしまいますので、あるいは、生のインパクトをよりリアルに表現するためには、個性のある、若干スタンダード化されてない形でやったほうがいい場合もあるので、そこはちょっと一概には申し上げられませんが、問題意識としては金井さんのおっしゃるとおりで、ロジックモデルは洗練されたものにしていかなきゃいけないなというふうに思っています。
 
 2点目は、先ほどからデータのセンシティビティーの話が出ていまして、まさにそのとおりだと思っています。ただ、インパクトの創出に実際に取り組んでおられる企業、金融機関の方とお話ししていますと、やはり先ほどからお話出ているように、単独ではインパクトの創出はできないしIMMも実践できないし、常にコラボレーションをしないとやっていけないというということが共通の課題でありまして、一旦マインドセットがそのように変わりますと、多くの事業者、金融機関の方が急速に横で連携してデータを持ち寄りましょうとか見せ合いましょう、というような話がすぐ出てきますので、そこは現場のコラボレーションがかなり解決してくれる問題になってくるんじゃないかなと思います。要するに、参入してくる事業者、金融機関が増えれば増えるほど、そういう連携が進むことになるというふうに期待をしておりますし、インパクト志向金融宣言の活動においても、そういうような雰囲気が醸成されてきていると思っています。
 
【柳川座長】  ありがとうございます。
 
 そのほか、いかがでしょうか。渋澤委員、どうぞ。
 
【渋澤メンバー】  先ほどのコンソーシアムの話で、金融庁の中で管轄できる、かつ重要だなと思っているのは、地域金融機関のインパクト関係で、ここはいろんな地域金融機関いろいろ真摯に取り組んでいらっしゃるんですけど、地域金融機関って真摯にSDGsのバッジを付けますけど、だからインパクトでありますと、特にロジックモデルとかtheory of changeの存在も知らない方もいらっしゃるんですね。ですから、真摯に取り組んでいらっしゃるんですけど、もうちょっときちんとそこを整理し、かつこれはどちらかというと高田さんのほうに御質問かもしれませんけれども、インパクトローンを出すのであれば、リスク資産のほうをちょっと工夫できる。100%ではなくて、例えば90%、80%とか。そうすると、かなりの関心度は、一気にそこは高まるんじゃないのかなと思いますので、そこら辺のところをもし御検討いただけるんであれば、金融庁、管轄で、地域金融機関向けのそういうコンソーシアム、そしてかつ今、それをどうやって促進するかということの検討をお願いします。
 
【柳川座長】  ありがとうございます。
 
 そのほか。浅利委員、スタートアップの立場からいかがでしょうか。
 
【浅利メンバー】  Atomisの浅利です。御指名ありがとうございます。
 
 今話を聞いていて、1点は全体のところなんですけど、プロセスとかまとめていただいたところに関しては、やはりインパクト投資自体の教育というか、皆さんが理解するというところに関しては非常に重要だと思うので何も反論することはないんですけど、ただやはりどちらかというと、皆さん、投資家の目線のところの部分がすごく拡充していっている気はしていて、投資してもらう人の立場でいうと、やっぱりインパクト投資がダイレクトに投資家さんのメリットにどれぐらいつながるのかというのが明確にされないと、実際に我々のところに対してお金が回ってこないんじゃないのかなと思っていて。結局何となくインパクトがあるかないかみたいなところの指標を計算させるだけで、概念としてはすごく重要なことで、やっぱりインパクトを目指した会社を設計していくということは非常に重要で、皆そういう会社をつくっていかないと駄目というのは本当に分かっているんですけど、ただ一方、直近でインパクト投資に対して、つまり長期スパンで何か物事を考えているという人のところにお金が落ちるか落ちないかとなると、やはりこれまで通りの考え方をされるのじゃないのかなと思っていて。
 
 その中で1個だけちょっと違っているのが、やっぱりバイオというかライフサイエンスのところだけが赤字上場も可能だったり、いろんなお金も集まっているという状況があるんですけど、じゃあそれ以外のところはどうなのとなると、我々みたいな素材ベンチャーだったら、やっぱりケミカル系の会社との比較対照でしか評価されなくなってくるので、やっぱりそこに対して投資家さんがメリットが得られるような何か施策があって初めて、そういう会社も大きく評価されるようになるのかなと。
 
 例えば、ispaceもこの間上場しましたけど、我々が考えているよりは低いバリュエーションなのかな。でも一方、あれだけ赤字なんやから当たり前なんちゃうのと言われれば当たり前なんですけど。そういったところが。じゃあバイオベンチャーどうなのとなると非常に赤字で、成功している例も非常に少ないと思うんですけど、それなりのバリュエーションがついてたりするので、何かそういうふうなモデルに近づけられるようなシステムが組めれば、もうちょっと日本が得意なものづくりの面でも、もうちょっとベンチャーが、スタートが活気づくのかなというところ。ただちょっと世の中の今、状況はよろしくないんですけど、よろしくないからこそ何か施策があればいいなと思っている次第です。
 
 あともう1点、データのところですけれども、いろんなデータをコンソーシアムで決めていこうみたいな話のところですけれども、やっぱり一定のデータは示していただけるほうがうれしいと思っています。ただ、委員の方からもあったように、それぞれのケースに応じて、やっぱりそのデータを単に使えない場合もあると思うんですけど、そういった場合は注釈で、なぜこのデータを使わなかったのかというところを示していくことで、そういったところも解消できるのかなとちょっと思っているんです。やっぱり指標がないと、皆さん最初から全部計算するってなかなか難しいんじゃないのかなと。反対に投資側じゃなくて投資される側も、インパクトというのを示していかないと駄目という中で、なかなかそこまで投資家さんに説明できる企業というのは難しいのかなとちょっと思いました。
 
 以上です。
 
【柳川座長】  ありがとうございます。
 
 林委員、お願いいたします。
 
【林メンバー】  御指名ありがとうございます。ちょっと細かい点になるかもしれませんけれども、資料1の補足資料の御説明をいただいて、1点だけ今後の文書化に向けてコメントさせていただければと思います。
 
 8ページ目のところです。要件の2つ目の追加性に関して、追加性をインパクト投資の基本要件にするということは全く賛成でして、重要なことだというふうに思います。ですけれども、一方で投資の追加性というのを厳密に、研究者の方が行う学術研究のようなレベルであれば違うのかもしれませんけれども、実務的なレベルで、追加性を厳密に証明するというのは結構難しい場合が少なくないのかなというふうにも思います。なぜかといいますと、そもそもエンゲージメントというのは効果測定が本質的に難しい活動であるというのが一般的な理解だというふうに思います。ですから、現実的には、追加性を実現するために、具体的にどんなプロセスで、何をどういうふうに取り組んでいるのか、投資家とか金融機関としてどのくらい汗をかいていくのかみたいなところを明確化する、そして、様々な関係者にそれを納得してもらうことが現実的には鍵になる場合が多いんじゃないかなというふうに思いますので、資料1の補足資料を今後、文章化していかれる際には、こういった現実的なところも踏まえた書きぶりにしていただけると、より実務的でよろしいのではないかなというふうに思いました。
 
 ちょっと細かい点で恐縮ですけれども、以上です。
 
【柳川座長】  ありがとうございます。
 
 そのほか、いかがでしょうか。角田委員、いかがでしょうか。
 
【角田メンバー】  御説明ありがとうございます。私からも少しスタートアップの立場としてお伝えができればと思っておりますが、先ほど、ロジックモデルなどの書き方が不十分なケースも非常に多いという御指摘もあったかと思うんですけれども、我々、社会課題系のスタートアップはディープテックのアカデミア発だったり、原体験を持ってボトムアップで起業している方々も多いということもあって、中盤のミドルステージにならないと、金融面にも詳しいメンバーがなかなか入ってこないかと思います。なので、そういったロジックモデルの書き方なども含めて、我々に教育していただけるような機会というのをコンソーシアムの中で御提供してくださると、非常にありがたいなと思います。
 
 もう1点は、安間様の資料にありました、対象事業データというところですね。非常に取扱いが難しいところかなと思うのですが、我々スタートアップとしてエクイティで調達していく際に、自社のバリュエーションを主張する際に、類似の事業などの数値を基にロジックつくってバリュエーションを提示していくのですが、同じ社会課題系の領域では他の事業者がいなかったり、イノベーションを自分が最初に起こしていく第一人者であったりとか、またはアプローチが全く異なる先行者しかいない場合に、どういうデータを参考にしていったらいいのか悩むことも多く、何か事例などを教えていただけるような機会があったら非常にありがたいなと思いました。
 
 以上です。
 
【柳川座長】  ありがとうございます。
 
 そのほか、いかがですか。それでは、途中退席されたDBJの吉田委員からコメントを頂戴していますので、私のほうで代読させていただきます。
 
 事例蓄積、ケーススタディーの検討など、コンソーシアムの組成などは意義があると思います。その際には、理想論と現実のギャップをいかに埋めていくか、市場拡大させるという観点で、利便性にも配慮した対応が現実的に必要と考えます。
 
 例えば、アプリオリに定量的なKPIを設定することで、草創期の市場が狭く解釈されないように留意が必要です。DBJなどの政府系金融機関との連携においても、検討会メンバーでも先般多くの意見が出ておりましたが、将来にわたって持続可能なファイナンスの市場とするためにも、リスク・リターンを踏まえ、時間軸は中長期で設定するとして、一定の利回り水準を確保することが重要かと思います。未上場企業のインパクト投資を拡大する観点では、上場時におけるインパクト評価も大事ですが、未上場株の流動性を上げるようなセカンダリーファンドのような仕組みも検討し得るのではないでしょうかというコメントをいただいております。
 
 そのほか、いかがですか。まだ御発言のない委員の方。
 
【田島メンバー】  じゃあ田島からもいいですか。
 
【柳川座長】  はい。田島委員、よろしくお願いいたします。
 
【田島メンバー】  先ほどスタートアップサイドからのお声にもあったんですけど、やっぱり個人的には、インパクト投資がきちんと儲かる状態をつくることがすごくやっぱり、そういった投資家を増やす意味でも重要なのかなと思っていまして、例えばなんですけれども、時価総額を算定する上でよく使われるDCFという概念も、将来収益を現在価値に割り戻しているわけですけど、当然ながら持続性が伴ってようやく成り立つロジックだと思うんですよね。なので、やっぱり持続性をしっかり、サステナビリティをしっかり担保する経営というのはすごく重要だと思っていて、そことやっぱりバリエーションという部分はトレードオフではなくてトレードオンになるべきかなと思っています。
 
 なので、やっぱりインパクト経営をしている起業家がちゃんと株価が評価されるような状態というか、そういうものをしっかりつくることができれば、IRの資格の工夫なのかちょっと分からないですけど、そういったことをしっかり啓蒙していくことがすごく重要なのかなと思いましたし、まさにやっぱり社会をよりよくするためのスタートアップにより資金が集まる仕組みづくりをしていく上では、そこが大きな枠組みとして何か取り組めるとすごく意義があるなというふうに感じました。
 
 すみません、コメントになりますが以上です。ありがとうございます。
 
【柳川座長】  ありがとうございます。
 
 木田委員、お願いいたします。
 
【木田メンバー】  ありがとうございます。資料のほうのお取りまとめもいただきまして、大変分かりやすくありがたく思っております。
 
 その中でちょっと質問と、もしその質問の回答によってはお尋ねをさらにしたほうがいいのかなと思っているところがございますのでお伝えしますと、補足資料のところで7ページのところ、全体的に資料の中でもインパクト投資は、投融資という理解で多分つくっておられるのかなというふうに理解しておりますが、特に7ページの考え方のところにお示しいただいている表記が、投資であったり投融資であったりというのが混在しているところもあるのでそういった御質問をしております。仮に投資と書いてあっても融資も含まれるという意味で理解をしていくと、考え方の矢羽根の4つ目に投資主体と投融資先企業が必ずしも同様の意図を持つ必要はないというふうになっていますが、仮に融資で御協力する場合は、資金使途を確認して御融資するというところが前提としてあるのかなと思いますので、その場合には、意図は共有されるほうが好ましいのではないかなというふうにも感じます。ちょっとそのあたりが少し気になったところです。
 
 仮にここは投資のことだけですということであって、特に問題ないようであればいいのかなと思いますが、銀行として見たときに、融資の場合はお客様とそのあたりはきちんと合致していることが重要ではないのかなというふうにも感じました。
 
 以上です。
 
【柳川座長】  お答えを。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  対象は、第1回、第2回で議論いただいてきましたように、投資や投融資といろいろ用語が書いていますけれども、基本的には投資も融資を含むものだという理解で記載しております。出口、入口のところで限定をせず対象の金融商品について広く考えていくが、ただ、それぞれ特に留意すべき点がある点は、将来的な検討課題とするのか、この中で書き切るのかは別として、別途手当て・検討するという前提で記載しておりますが、ただ文章は精査したいと思います。
 
 意図については、投資の場合であっても、社会的なインパクトの実現について、完全に投資元と投資先企業で100%同じ意図を持てるかというと、なかなか容易でない面もあろうかと思います。ただ、投資側がこういう意図を持って、つまり実現しようという意図と、事業者の方の事業の意図・ストーリー等といったものが、投融資共通である程度のところで整合している必要があるんじゃないかなということで記載をしております。特に融資の場合には資金使途が特定される形で、または事実上特定、念頭におかれる形で実行されるといった辺りをどう織り込めるかという点は、今後精査したいと思いました。
 
【柳川座長】  よろしいですか。
 
【木田メンバー】  ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
 
【柳川座長】  そのほか、太田委員は何かないですか。
 
【太田メンバー】  最初この資料をいただいたときに、これはどれを対象に書いているのかなというのがちょっと分からなかったです。自分の中ではやはりスタートアップと上場企業はちょっと違うのかなという印象がありまして、インパクト投資という概念でより資金が欲しいのは、スタートアップのほうじゃないかという気がしています。データにしてもロジックモデルにしても、恐らくちゃんと精査すべきなのがスタートアップのほうであって、上場企業については、例えば自由にオクトパスモデルを書いていただいたり、社内にある指標を使って自身のPBRモデルを作るでもいいと思いますが、株価を説明してエンゲージメントに活用していくというスタイルが理想なのかなと思っています。
 
 ただ一方で、スタートアップの方にロジックモデルをしっかり書いてもらった結果、インパクトがすごく理解できる世界になったとしても、結局そのインパクトをエクイティーストーリーに落とし込んでバリュエーションをして株価につなげていくという、仮にIPOが1つのイグジットだとすると、そこのプロセスはどうなるのかなというのは、今やはり日頃から考えている1つの課題だと思っています。
 
 なので、ロジックモデルをしっかりと書いていただいたその後のアクションに関する事例については、先ほどからお話に出ているコンソーシアムのようなところでしっかりと共有して議論していきたいなという気持ちで今はおります。
 
【柳川座長】  ありがとうございます。
 
 それでは、高塚委員、お願いいたします。
 
【高塚メンバー】  スタートアップの2社の方々と林さんがおっしゃっていたところはつながる可能性があるなと思いましたので、一言コメントさせていただきます。投資家のアディショナリティーは、林さんがおっしゃるように測るのがとても難しいと思いますが、1つあるのが、インパクト投資家が株主として入った会社だということで、そのような会社は社会課題を可視化しながら解決していていく事業を運営しているだろうということがシグナライズされるという「シグナル効果」はあります。2つ目が、ここがスタートアップの方々のお悩みにも通じますが、今の未成熟なインパクト投資の業界においては、知見のあるインパクト投資家が入って投資先と一緒にロジックを整理しモデルを作るというプロセス自体が、インパクト投資家のアディショナリティーになっている可能性があると考えています。これは、業界が成熟して誰でもロジックモデルを作れるようになるとまた話は変わると思いますが、現段階では、先ほどのようなスタートアップの方々のお悩みがある中で、私たちインパクト投資家が一方的にインパクトに関する質問をして答えを求めるのではなく、経営陣との話し合いの中から一緒に手を動かしロジックモデルなりを作っていくという過程があります。
 
 補足資料のアディショナリティーの項で、今申し上げたような事項等も入れ込み、企業側が自分たちだけで作らねばというハードルがない場合もあるというところを伝えられればいいと思いました。
 
 以上になります。
 
【柳川座長】  ありがとうございます。
 
 そのほか、オブザーバーで御参加の方々、いかがですか。生命保険協会様とか、何か特にございませんか。大丈夫ですか。
 
【生命保険協会】  生命保険協会のほうから、栗栖です。アセットオーナーという立場から発言させていただきます。まず、意義について、広くESG投融資をやり始めている投資家に、インパクトというところに関心を寄せてもらっていくという、広がりを持たせていくという意味で、生命保険協会からも一度、本検討会にてプレゼンさせていただきました。その時も申し上げましたが、財務リターンの実現のために、社会課題の解決が重大な影響をもたらすというふうにESG投融資をしている時点で結論づけている部分があると思いますので、その影響がどの程度かというのを検証する、インパクトの測定管理が重要になってくるという意義があると思っております。
 
 よく社内でも議論しておりますが、財務リターンのPDCAとしては、機関投資家として開示している財務情報から確認できる部分がありますが、社会課題のPDCAをどうやって見せていくのという話の中で、アウトカムのインパクト測定と開示が重要ですという話を社内でもしていますし、そのようにESG投資をやっている投資家は進んでいくべきだとも思っています。
 
 ただ、従来よりずっと議論されているとおり、それに向けての手段やプロセスはやはり非常に難しく、野村さんもおっしゃっていましたけれども、困難が非常にあるなと、実務的に思うところがあります。意義はあるけど手段がないからやらないということでは決してないので、やるべきだと思っていますし、それは先ほどいろんな方がおっしゃっていただいています、企業の非財務情報の開示データ、ストーリーのある開示というところが機関投資家として重要になってきます。また、それが機関投資家としてポートフォリオで統一的にどう見せるかというのもすごく悩ましく、この辺には少し課題意識があるということを、みんなでまずは共有しますが、意義はあるのでやっていくべきということだと思っています。
 
 SDGs目標達成状況みたいな感じで、ベイリー・ギフォードさんが見せられたような上場株の進捗の見せ方とか、グローバルにもいろいろ議論があるところだと思いますし、どのように開示を進めていくかというところは難しい論点があると思います。
 
 林さんがおっしゃっていた、まさに追加性をどう考えるか。ここを考え始めると、開示が億劫になる部分が正直ございまして、どちらかというと企業の非財務情報の開示を、我々のポートフォリオとしてどう見せていくかというところをまず考えたいなと思っています。追加性のところは先ほど林さんがおっしゃっていましたとおり、我々がどう活動して追加性を出しているのかを紹介する開示が、まず1つの手段としてあるかなと思っています。例えばネットゼロ・アセットオーナー・アライアンスで活動している内容とか、協働エンゲージメントで活動している内容を紹介することでも、追加性の紹介にもなっていると思いますし、ネットゼロ・アセットオーナー・アライアンスからも、プログレスレポートみたいなものを出して、協働エンゲージメントとして、どのような進捗を見せているかの開示もあります。
 
 このようにできることをやっていくということと、実務的課題があるということを共有させていただきながら、次のフェーズであるコンソーシアムとかで、また具体的なお話をしていくということかなと思っています。
 
 以上でございます。御発言の機会を頂きありがとうございます。
 
【柳川座長】  ありがとうございます。
 
 それでは、お待たせしました。金井委員、お願いいたします。
 
【金井メンバー】  さっきの上場企業の話なんですけど、上場企業もいろんな事業のコングロマリットなので、基本は特化型の企業が集まっているのが上場企業の通常のパターンなんだろうと思うんです。そう考えると、個別の事業がどういうインパクトをつくるのかというのは分析は可能だと思います。
 
 ただ一方で、統合報告書なんかを見ていると、この事業はこういうSDGsだという、それもゴールベースで、ターゲットとかではなく、漠然とした紐付けしか書かれていないものが多くて、その過程の分析は恐らくできてないんだろうなと思うことはありますし、それから目標も、要するに社会的な価値の目標ではなく、これをやるときっとこういうSDGsになるでしょうというレベルにとどまっているケースは結構あると思うんです。
 
 ですので、やっぱりもう一段踏み込んで考えて、自分たちの製品・サービスがどんなふうに、どういう価値につながるのかということは、考えること自体がその企業がより成長する。トレードオンという観点では、上場企業もスタートアップも同じなので、社会的価値との関連性の分析は、自分たちの商品・サービスを売るドライバーになるのではないかと個人的には思っています。
 
 もう一つ、上場企業は複数の事業を持つことによって、会社の中でコレクティブインパクトがつくれるというところがすごく大きいと思うんです。そう考えると、目指すものに対して、会社の中でどのように事業間連携をしていくのかの気づきにもつながってくるので、ぜひこのあたりは上場企業も考えていってもいいテーマかなというふうに思っています。
 
 以上です。
 
【柳川座長】  ありがとうございます。大分ポイントは絞られてきたとは思いますが、どうするかは難しいと。
 
 何か事務局のほうからはよろしいですか。
 
 それでは、ちょっと時間過ぎておりますので、次の議題に移らせていただきます。金融研究センターの研究員でいらっしゃる、ニッポンライフ・グローバルの林様、日本政策投資銀行設備投資研究所の松山様より、「インパクトが企業価値等に与える影響に関する研究分析」についてプレゼンいただきます。
 
 林様、松山様、お願いいたします。
 
【林メンバー】  御紹介ありがとうございます。昨年7月より金融庁金融研究センターの特別研究員を拝命しております林です。同じく特別研究員をしている松山さんと、今、資料のほうを投影していただいておりますけれども、インパクトと企業価値に関する研究に取り組んでおりまして、この研究自体はこの検討会とは別に行っているものではありますけれども、関連する内容ということでして、本日、進捗を御報告させていただく機会をいただきました。関係者の皆様に改めて御礼を申し上げたいと思います。松山さんもオンラインで御参加を、今いただいております。
 
 次のページをお願いしたいんですけれども、研究自体は今年の7月頃までかけて実施するという形になっておりまして、できれば最終的なアウトプットをこの場で御紹介させていただければよかったんですけれども、検討会のスケジュールに照らしますとタイミング的に難しいということですので、現時点での進捗ということで御報告をさせていただきたいと思います。
 
 今御覧いただいているページの左側に、金融研究センターが研究公募をされた際の公募内容を載せさせていただいておりまして、上段の背景のところで、インパクト加重会計などの動きが国内外でありますよということが書かれており、下段のところで具体的な研究内容について示されております。
 
 この内容を受けまして、私たちのところで、より具体的な研究内容を提案させていただいて採択をいただいたという、こういう形になっておりまして、現在、実施内容ですが、大きく2つの柱でやらせていただいております。
 
 1つ目が①番のところですけれども、インパクト会計の手法であるとか、開示事例に関する事例調査ということで、ここではインパクト加重会計に焦点を当てて研究を行いました。研究を進める過程で、後ほど御紹介させていただきますけれども、インパクトを貨幣価値、お金の価値に換算して経営に活用しようという点においては、既に半世紀ほどの歴史があるということも分かってきましたので、こういった過去の歴史に学ぶことも大事だろうということで、先行研究についてもレビューを行っております。
 
 それから、2つ目の塊はインパクトと企業価値の関係に関する定量分析ということで、ただインパクトについては、分かりやすい例を挙げますと、例えばテスラのEVのインパクトですとか、モデルナという会社の新型コロナワクチンのインパクトなどをイメージしていただきますと、企業ごとの個別性が非常に高くて、インパクトを測ろうと思ったときの測定指標も様々で、かつEVのインパクト、ワクチンのインパクト、測ったとしてもどっちが大きいのかを比べるのは非常に難しいという、こういう性質があります。
 
 また昨今、例えばChatGPTというAI技術が話題になっておりますけれども、EVとかワクチンに比べますと応用範囲の裾野も広くて波及効果も非常に複雑ですので、インパクトを定量的に測ろうと思うと、とても難易度が高いというふうに思います。
 
 こういうようなインパクトの性質を念頭に置きますと、インパクトと企業価値の関係を定量的に、統計的に分析するというのは非常に本質的に難しいものであるということになると思います。その中で研究者の工夫としては、インパクトを直接定量化するというのは、諦めるという言い方は変かもしれませんがある種諦めて、その代わりに、努力を含むという表現が資料に見えるかと思いますけれども、企業がインパクトを生み出そうとする努力、姿勢とか行動を何らか測定して、それと財務指標との関係性を定量的に分析するというアプローチを考えまして、現在取り組んでおります。
 
 ただ、本日ちょっと結果の御報告までは間に合いませんでしたので、本日はこれらうちの①番、インパクト加重会計について、この後、少しテンポを上げて簡単に御報告をさせていただきたいと思います。
 
 あと、この部分の実施に当たっては、この検討会の副座長をされていらっしゃる水口先生にも、この検討会とは全く別にですけれども、環境会計等の御専門家としていろいろお話を伺って御示唆をいただきましたので、この場を借りて御礼を申し上げたいというふうに思います。
 
 それでは、ここからテンポ上げて進めさせていただきたいと思いますけど、資料としては、2ページ進んでいただいて4ページ目を映していただければと思います。
 
 4ページ目のところで、まず簡単に用語の整理をさせていただいておりまして、インパクト会計という言葉ですけれども、こちらはインパクト測定に近い概念というふうに理解をしておりまして、定量、定性、それからお金の価値で測るというものを全て含む概念というふうに捉えております。ただ一方で、研究でフォーカスを当てておりますインパクト加重会計というものは、インパクトをお金の価値に直す、表現するということにフォーカスをしたもので、かつ少なくとも現時点では、一般名詞というよりかは固有名詞に近い概念であるというふうに捉えております。
 
 そのまま5ページ目をめくっていただければと思いますけれども、先ほど固有名詞に近い概念ということを申し上げましたが、具体的にはハーバード・ビジネス・スクールのインパクト加重会計プロジェクト並びにオランダのインパクトエコノミー財団というところがこの言葉を使用して、方法論の研究であるとか開発を行っているという状況であります。
 
 定義を下のところで書かせていただいておりますけれども、ポイントだけ申し上げますと、繰り返しになりますが、企業の様々なインパクトをお金の価値に直して、P/LであるとかB/Sといった財務諸表に参入することを目指す取組みであるということです。
 
 続きまして、資料6ページ目をお願いいたします。こうしたインパクトを加重した財務諸表をつくる究極の狙いですけれども、当事者の方々の言葉を使わせていただくと、資本主義の再構築であるとか、インパクト経済への移行といった表現が用いられておりますけれども、要するに、企業の様々なインパクトをお金の値段に直して、売上高とか利益とか、そういった財務指標と統合することによって、市場メカニズムの中で外部性を内部化しよう、つまり、環境問題であるとか社会問題の解決を図ろうという試みであるというふうに理解できるかと思います。
 
 加えて、インパクトをなぜお金の価値に直すんですかということなんですけれども、それに関して利点が3つほど挙げられております。1つ目は、お金という単位はなじみがあって分かりやすいですよという点。
 
 それから、2点目はお金の価値に直すことで、例えば冒頭申し上げたEVのインパクトとワクチンのインパクト。これ、測ったとしても単位が異なるわけなんですけれども、両方ともそれをお金の価値に直せば単位が共通なので、比較できるようなりますよと、これが2点目です。
 
 それから、3点目はマテリアリティーの違いの反映ということで、例えばワクチンについて、ワクチンが行き届いている地域と不足している地域で、同じ数量のワクチンを供給したとしてもインパクトが異なる可能性というのがあると思うんですけれども、そういった違いもお金の値段の違いとして表現できますよという、この3点が挙げられているというところです。
 
 そのまま次のスライド、7ページ目をお願いいたします。7ページ目からは、方法論の概要を載せさせていただいておりまして、7ページ目のところで、ハーバード・ビジネス・スクールでは、2020年から22年にかけて、17本のワーキングペーパーという形で、この方法論の研究結果が公表されているという形になっております。
 
 ちょっと内容は細かくなりますのでこのまま進めたいと思いますが、次の8ページ目のところで、インパクト加重会計という言葉の使用許諾をハーバード・ビジネス・スクールからもらう形で、また、ハーバード・ビジネス・スクールとも連携する形で、オランダのインパクトエコノミー財団という非営利組織が、昨年6月に企業向けのガイダンス文書の草案を公表しております。ここではインパクト加重会計を作成するための手引きであるとか、Q&A集みたいなものもいろいろと補足資料として提供されているという、こんな現状になっております。
 
 資料をそのままめくっていただいて、10ページ目まで進んでいただければと思います。ここまでがインパクト加重会計の動向ということなんですけれども、改めてこの言葉を抜きにすると、70年代から、外部性を貨幣価値に換算して活用しようという研究が、複数存在しているということが分かりました。御覧いただいている資料、10ページ目の図表も70年代の資料から取ってきたものでして、実は私もまだこの時点ではこの世にまだ生まれていないんですけれども、このコンセプトはインパクト加重会計に非常に近いものであるというふうに思います。ただ当時はコストがかかりすぎるとか、難しいといったことで、なかなか普及には至らなかったということも指摘をされております。
 
 続きまして、11ページ目をお願いいたします。80年代は少し下火になったということなんですけれども、90年代になりますと、今度は例えば、92年に気候変動枠組み条約が採択されたように、環境問題への関心が高まったということで、環境面を中心に再び環境インパクトを金銭価値に換算しようという試みが一定盛んになったというふうに言われておりまして、例えばスライドでは、BSO/OriginというオランダのIT会社による実践例を、ここではサンプルとして掲載をさせていただいております。
 
 資料として12ページ目、次のスライドをお願いいたします。こうしたインパクトを包括的に測定してお金の価値に直して活用しようとする動きは、フルコスト会計といった名称でも呼ばれておりまして、2001年にはイギリスの勅許公認会計士協会が提言書を発表しております。ここでの問題意識は、冒頭述べたインパクト加重会計の問題意識と基本的に同じでして、市場メカニズムの中で持続可能な発展を実現するためにフルコスト会計というものが必要だという考え方が示されています。また、実施のための手順として示されている内容も、オランダのインパクトエコノミー財団が昨年発表したガイダンス文書の草案と、基本的には同じような流れが示されているということで、昔からこういった議論が存在しているということがいえるかと思います。
 
 13ページ目、次のスライドをお願いいたします。こういったインパクトを貨幣価値に直して活用しようとする動きは半世紀ほどの歴史があるということなんですけれども、その中で、もちろんその利点はいろいろと指摘されているということで先ほどお話させていただきましたけれども、それと同時に、実務上少し気をつける必要がありますよというような点もいろいろ指摘をされているということですので、私のほうでその内容を整理させていただいたところ、大きく6点あるかなというふうに思っております。
 
 ちょっと簡単に13ページ目の真ん中のところを順に御説明させていただきたいと思いますけれども、1つ目は、いきなりインパクトのお金の価値が出てくるということは通常なくて、まずは例えば、CO2排出量であるとか、何人の人をケアしたとか、そういった数値が最初にあって、それを一つ一つお金の価値に直していくということが行われるわけなんですけれども、そのお金の価値に直す方法論によって、評価額が結構変わってくる場合があるということ。それから、2点目の指摘としては、その評価額には結構誤差が伴う場合があるということが指摘をされております。
 
 一瞬だけスライドを14ページ目に移していただけると大変ありがたいんですけれども、①、②の補足に関しまして、御覧いただいている研究では、同じプロセスについて、3つの方法論で金銭価値を試算した結果が載っているわけなんですけれども、その金額が方法論によって割と違ったり、また、同じ方法論の中でも保守的に算出するのかそうでないのか等々によっても、評価額に幅があるというのが見ていただけるかと思います。
 
 すみません、もう1回13ページ目に戻っていただきまして、それから③番のところになりますけれども、この検討会でも繰り返し出てきているかと思いますけれども、貨幣価値換算が難しい、そもそも定量的な測定が難しいインパクトであるとか、あるいは、人の命に幾らの値段をつけるのか、絶滅危惧種に幾らのお金の価値をつけるのかなどなど、なかなか適切な貨幣評価額を決めるのが難しい領域もあるということも指摘をされております。
 
 それから4点目、これは①、②、③の繰り返しになるかもしれませんけれども、組織間、あるいは事業間で、無条件に評価額が比較可能であるというわけではないということも指摘をなされております。
 
 それから5点目は、そのさらに裏返しかもしれませんけれども、会社が開示しようという場合には、自社にとって有利な形で貨幣価値を算出することもできるかもしれないということで、いわゆるウォッシュの懸念も指摘がされております。
 
 あと最後6点目のところで、こういったものを適切に使いこなしていこうとすると、高度な専門性が必要とされますよといったことも、いろいろなところで指摘がなされているというところであります。
 
 このままスライドを16ページ目、最後のページに移していただければと思いますけれども、本日は御説明の時間がなくて割愛しておりますけれども、国内外の企業の実際の開示事例等々も調査をさせていただいておりまして、それも含めて最後に簡単なまとめということで述べさせていただきたいというふうに思います。
 
 まず、インパクト加重会計の利点ということですけれども、財務指標と直接比較することができますし、また、その経年変化を確認するといったことで、企業が生み出しているインパクトへの理解とか認識を深めるということができるといった利点ですとか、あるいは、企業が生み出している様々な領域のインパクトが全てお金の価値という単位で統一化されるわけですので、比較ができるということで、この企業はこういうところでポジティブなインパクトがある一方で、こういうところではネガティブなインパクトがありますよとか、そういった形でインパクトの観点から、企業の特徴についての理解や認識を深めることができるという利点が考えられるかと思います。
 
 ただ、先ほども少しお話させていただいた過去の知見等々も踏まえますと、実務的にはまだまだ検討すべきこともあるということだというふうに思います。
 
 例えば、比較可能性という観点では、これを高めていくためには、方法論の標準化というのが1つ議論になってくると思います。ただ一方で、マテリアリティーの違いをきめ細やかに値段に反映するということも考えますと、柔軟性も当然大事だということで、標準化と柔軟性のバランスみたいなのもとても大事になってくるかと思いますし、また、そもそも誤差が大きい場合があるということも十分考慮して活用を考えていく必要があるというふうに思います。
 
 また、ウォッシュといったことが起きないように、企業が開示するのであれば、前提となる考え方とか計算方法などと併せて丁寧に開示していくべきだというふうに思いますし、また、そもそもお金の価値に直すのが難しいインパクトであっても大事なものがあるという前提に立てば、そういったものはしっかり考慮されるべきという、こういう論点も出てくるかと思います。
 
 また、適切に使いこなしていくということからすると、やっぱり専門性を高めていくために、人材育成みたいなものも含めて、セットで議論が必要になってくるのではないかなというふうに思います。
 
 以上、かなり駆け足の御説明になってしまいましたが、私からの研究の報告は以上になります。御清聴ありがとうございました。
 
【柳川座長】  ありがとうございました。
 
 それでは、議論に移りたいと思います。御質問や御意見のある方は、先ほど同じように名札を立てていただくか、挙手機能にてお知らせいただければと思います。いかがでしょうか。
 
 水口委員、お願いいたします。
 
【水口副座長】  御報告ありがとうございます。コメントだけなのですけれども、御報告いただいたとおりだなと思って、基本的に全て賛成をしております。
 
 特にインパクトを貨幣価値換算して、財務会計と統合していくというこの考え方は、一方で個別のプロジェクトの個別のインパクトだけではなくて、全ての企業の全てのビジネスが何らかのインパクトをプラスにもマイナスに持っている以上、そういったものをきちんと市場の中に統合していく、いわゆるインパクトエコノミーをつくっていくという意味では非常に重要な方法というか、考え方だというふうに思っています。
 
 しかし一方で、実は長年この分野を研究してきまして、なかなか実務的にしていくのは難しいなというふうに思っていました。やっぱり実務的にしていくことが非常に難しい根本的な理由は、貨幣価値換算がそもそも難しい。市場に内部化されていないものを貨幣価値で評価するということですから、そこには本質的な問題があるんだろうなと思っています。
 
 ただ、最近はAIというものも随分出てきましたので、もしかしてAIというか、そういうデジタル技術をうまく活用して、ビッグデータを活用することが普通にできるようになってくると、かつての80年代、90年代とは違う議論ができるのかもしれないな、そんなことを感じながら聞いておりました。ありがとうございました。
 
【柳川座長】  ありがとうございます。
 
 続いて、渋澤委員、お願いします。
 
【渋澤メンバー】  ありがとうございます。私自身、インパクト加重会計について初めて聞いたのが2020年ぐらいのときでありまして、そのときの紹介してくださった方がインパクト投資の父であるロナルド・コーエンさんだったんです。コーエンさんの『フィナンシャル・タイムズ』に寄稿された内容なんですけれども、なるほどと思ったのは、今のインパクト加重会計というのはかなり飛躍であるという話なんです。できっこないじゃないかと。けれども、今我々が考えている、当たり前と思っている企業会計というのは、実は昔、あるショックがあったことによって初めてそれが実現できたという話をされていて、その当時は、規模が違うのに、業種が違うのに1つの数字であらわすことは無理なんじゃないかみたいな、結構反応があったらしいんです。
 
 そのショックというのは1930年代の大恐慌だったんですけれども、そこから始まりましたと。現在では当たり前になっていますよねと。大企業であれ、中小企業であれ、業種が違えども1つの数字で見ています。ということを考えると、現在ショックですよねと。ちょうど2020年だったので、それがコロナのショックであり。そう考えたときに、50年後、70年後振り返ったとき、あのショックがあるから、今当たり前なっているんですよねという、そういうストーリーラインになっているんですね。なかなかなるほどなと思って。それで何社か日本の会社にこの概念を紹介したところ、いろいろエーザイさんとか面白い取組みをされているところもあります。
 
 その後のインパクト・ウェイテッド、IWAIですけど、私の理解が正しければ、ハーバード・ビジネス・スクールからスピンアウトしています。多分ハーバードもいっぱいになっちゃっていて、いろんな依頼に対応できないということで、新しい法人が去年立ち上がりまして、International Foundation for Valuing Impact(IFVI)というのが立ち上がっています。私もそこの理事に御要望あったので引き受けているんですけれども。この動きは、一部の人たちは本気に取り組んでいます。ですから、ロナルド・コーエンさんとか、本当に信奉者は、これはもう5年後には正道化になるんだという話もしているんですね。私は関係者だけど、それはISSBも5年前、スコープ3までいくのかも分からないのに、ちょっとかなり難しいんじゃないか、かなり飛躍じゃないのかなと思っている反面、だけど本当にそういう企業の、ある意味で新しい資本主義の中で示す、二次元だけではなくて、リスク・リターンだけではなくて課題解決ということを、スタートアップだけじゃなくて上場企業、大企業も示すという、すごく大事なことなんじゃないかなと私は思うところはあるんです。
 
 けど、その中で、研究が多少必要と思っているのは、先ほど水口先生も林さんも指摘していただいた、変換のところのコーエフィシエントって何なのというところで、これは本当にさっき示したようにピンキリだなと思っていて。ここのところの研究とか、研究の前に意見交換とかそういうのが必要なんじゃないかと思っていますので、ぜひこの研究会の方はこのIFVIのほうにちょっとコンタクトを取っていただいて、要はできないからやめましょうということじゃなくて、できないのは当たり前かもしれないけど、こういうのがあったらいいよねという前提で、いろいろ日本からもこういう感じでやったほうがいいんじゃないですかということを、今、制度のために動いているところに直接働きかけることも、それによって我々日本側の知見も高まるんじゃないかなと思いますので、ぜひお願いします。
 
【柳川座長】  ありがとうございます。
 
 そのほか。太田委員、お願いします。
 
【太田メンバー】  林さん、大変興味深い御報告をありがとうございました。
 
 もし私の理解が違っていたら指摘していただきたいんですけれども、今、ROEという普通の財務指標があって、それを上げるためには、手っ取り早い方法としては、分母のEを減らして自社株取得するという動きが非常に盛んです。でも、それでは資金がちゃんと循環されずに価値創造につながらないよねということで、企業はより長期の目線で、サステナブルな戦略を考えた上で、より長期的なROEの指標を目標としていこう、そしてそれを仮にサステナブルROEというふうに呼びましょうみたいな動きがあるんです。これはもしかして、そういうものなのかなと。インパクトROEみたいなものが、通常のROEとは別に計算できるということなのかなと思って聞いていました。
 
 仮にそうだとすると、サステナブルROEという非財務の情報を織り込んだ中長期のROEの補完というか、より説得性を増すような指標として活用できるものなのかなという印象を受けたのですが、この理解は正しいですか。
 
【林メンバー】  御質問ありがとうございます。林です。
 
 大変難しい御質問で、どうお答えしていいのかというのはあるんですけれども、概念的には財務諸表のいろんな勘定項目に全てのインパクトのお金の価値を足したり引いたり、加算加減をして、インパクトを含めた財務諸表をつくっていきましょうというのが究極的なゴールですので、そういった項目を使うことによって、いわゆる伝統的なROEとは違う、インパクトをより含めたものということも計算が可能になってくるということは、概念としては延長線上にあるということだというふうに思いますけれども、ここからはちょっとお答えになっているかは分からないんですけれども、ただ、やはりこれは結局、そういったそのインパクト込みの財務指標を活用することによって、企業行動をよりインパクトを考慮した、配慮したものに変えていきましょうということなんだというふうに思うんですけれども、そういうことの是非とか可能性ということを考えていくに当たっては、そもそも企業がインパクトを意識して行動することが、どういうふうな財務的な効果、企業価値への効果をもたらすのかということについても、より理解を深めていくことがまず大前提として必要なのかなというふうに個人的には思うところもありまして。
 
 ですから、この研究、ちょっと今日は御報告が間に合っていないんですけれども、そもそも企業がインパクトを志向するということ自体が、いわゆる伝統的な意味での企業価値、あるいは財務的なパフォーマンスとどういう関係を持つのかということについても、少しでも何らかこの研究とセットで迫ることができたなというふうに思いながら、今取り組んでいるところでございます。ちょっと後段はお答えに直接なってないかもしれませんけれども。
 
【太田メンバー】  ありがとうございます。
 
【柳川座長】  そのほか、よろしいですか。ちょうど時間ではありますが。よろしいですか。オンラインの方もよろしいでしょうか。
 
 それでは、本日も大変貴重な御指摘や建設的な御議論をいただき、誠にありがとうございました。
 
 最後に、事務局のほうから御連絡等ありましたらお願いいたします。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  次回の会合は、4月下旬を予定しておりますので、近づきましたら詳細な御案内をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【柳川座長】  どうもありがとうございました。
 
 それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――
 
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総合政策課サステナブルファイナンス推進室

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