「インパクト投資等に関する検討会」(第7回)議事録
- 日時: 令和5年4月24日(月曜日)16時00分~18時00分
【柳川座長】 それでは、ただいまより、インパクト投資等に関する検討会第7回会合を開催いたします。皆様、御多忙のところ御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
今回は、まずゲストのANRI様より、ベンチャーキャピタルにおける女性起業家支援の取組みを御紹介いただき、皆様に御議論いただきます。続いて、地域におけるインパクト投融資について、ゲストの滋賀銀行様より地域銀行の取組みを御紹介、事務局より御説明もいただいた上で御議論いただきます。最後に、報告書案について事務局より御説明及び皆さんに御議論いただくという流れでございます。なお、第8回の検討会におきましても、報告書に係る討議を引き続き行う予定になっております。
それでは、早速議事に移らせていただきます。ベンチャーキャピタルにおける女性起業家支援の取組みについて、ANRI様より御紹介いただきます。なお、女性起業家支援ということで、内閣府男女共同参画局担当の畠山貴晃大臣官房審議官にもオンラインで御参加いただいております。
ANRI様の資料は非公開とさせていただいておりますので、皆様、お取扱いには御留意いただければと思います。
それでは、佐俣様、お願いいたします。
【佐俣様】 ありがとうございます。では、よろしくお願いします。ANRIの佐俣アンリと申します。よろしくお願いします。10分ぐらいで私たちの取組みについて御説明させていただければと思います。
簡単に私たちのファンドの概要です。私が創業者でして、2012年にスタートしているので今、11年目ぐらいになります。いわゆるベンチャーキャピタルの中では独立系という形で、直近の運用しているファンドですと出資者さんの95%ぐらいは機関投資家様ですので、純粋な独立系ベンチャーキャピタルでございます。もともといわゆるインターネットの領域に投資していたんですけれども、6年前、技術系の領域、ライフサイエンスや量子コンピューターですとか、核融合みたいな領域に投資をしております。
今年からCIRCLE by ANRIというスタートアップのインキュベーションオフィスをつくっていまして、恐らく日本でスタートアップのインキュベーションとしては日本最大級です。1,200平米で、今、16社、65人ぐらいの起業家と一緒にスタートアップをつくっております。
ページめくっていただきまして2ページです。どういった会社に投資をしているかです。比較的キャッチーなところでいくと、RakSulという印刷の会社ですとか、クラウドソーシング、クラウドワークスという会社。あとはUUUMというユーチューバーの事務所などに投資しております。技術系ですとまだまだ実績としては多くないんですけれども、GITAIという宇宙で探索するロボットですとか、そういった様々な領域に投資をしております。
3ページ目を見ていただきまして、私たち、今、大きく2本のファンドを運営しております。私たちはこの検討会[A1] に呼んでいただいて、いわゆるインパクトファンドという名で活動しているわけではないんですけれども、2本のファンドで、恐らく後者のほう、5号ファンド、フラッグシップファンドとGREENファンド2本運営しておりまして、GREENファンドのほうはいわゆるインパクト投資に近いものなのかなと思っております。
簡単に詳細を御説明していきます。5号ファンドは350から400億円ぐらいで今、ファイナルクローズが近いんですけれども、出資者さんは年金さんと銀行さん、証券さん、生損保さん、いわゆる機関投資家の皆様が中心でございます。こちらが今日メインに話させていただく、いわゆるポジティブアクションと私たちが呼んでいるダイバーシティー、取組みを盛り込んだファンドです。ただし、こちらはいわゆるインパクトファンドですよとは言っておらず、純粋にファイナンシャルリターンをお返しするという趣旨でつくらせていただいていて、機関投資家の皆さんも、いわゆるインパクトのところを期待したというよりは、ファイナンシャルリターンを期待していただいて出資いただいています。
もう一つGREENファンドで、脱炭素というところをテーマに、その中でもいわゆる2050年のゼロエミッションに向けたところ。なので、かなり技術で根本的に解決するみたいなところをテーマにしているファンドでございます。こちらのファンドに関しましては、投資リターンもなんですけれども、脱炭素に向けたR&Dみたいな調査の文脈も含んでいますので、半分が事業会社さん、半分が機関投資家さんと政府系のJICさんのお金で構成されております。
GREENファンドはどういうところに投資するのといいますと、EX-Fusionという会社は、例えばレーザー核融合。投資するときに2050年に5,000億から1兆円かかりますと言われて、それは普通のベンチャーキャピタルファンドが投資できないので、じゃあグリーンファンドでやりましょうというようなテーマですとか、あとはQUINO ENERGYというバッテリーのかなり手前の段階ですとか、技術的に2050年に届かせるにはかなり根幹の技術革新が必要なんですけれども、正直いわゆる普通のベンチャーキャピタルではとても投資ができないようなフェーズで、いわゆる政府系のお金も届かない。だけれども、立ち上げるのに少なくとも5億から10億円かかるという領域がかなり多くて、プラントを立ち上げるですとか、そういった領域に関しましては、私たちのファンドが得意なところとして投資をして、最終的には出資者さんの事業会社さんと、例えば、合弁にしていくですとか、一部でグリッドしていくみたいなことを想定したファンドでございます。
ここから今日、メインで御説明させていただくポジティブアクション、ダイバーシティーの取組みを御説明させてください。
私たち、2020年の11月に、フラッグシップと言われている、いわゆるファイナンシャルリターンを純粋に目指すファンドのほうで、女性起業家の投資比率を20%まで引き上げることを宣言しております。
そもそも別に私たち、熱くダイバーシティーに燃えるためにファンドをつくったわけではなく、純粋にファイナンシャルリターンを求めてやっていますし、今でもそれは変わらないんですけれども。ですので、普通に何も意識せずに投資していると、女性起業家比率5.8%。この数字は、いわゆる業界の中で感じているスタートアップの女性起業家比率とほぼ同じです。なのでニュートラルにベンチャーキャピタルに投資すると、大体5、6%に収束するというのが、同業者の数字を見ていても、ほぼこれぐらいかなと思っています。
私たちとしましては、さすがにないだろうと。50%・50%で生きている生き物が、普通に見ていて5%に収束するなんていうのは明らかに何か偏っているので、この状況をよくしていくためには、何がしか数字を追うしかないだろうというところで、2010年の後半から20%まで引き上げますよという宣言をしました。これは取締役の中に1人いるみたいなちょっと逃げの表現じゃなくて、社長です。社長御指名で20%以上にするという、これは結構ハードな要件です。
宣言したタイミングで、私たち5.8%で、そのファンドのうち20%にするためには、その後の投資を30%にしなきゃいけなかったので、結構駆け足で投資をしました。当然ファイナンシャルリターンが下がるんじゃないかみたいなツッコミが絶対に来るんです。もちろんLPの皆さんには結果でお応えするしかないんですけれど、私たちの肌感覚としては、恐らくむしろよい投資ができたのかなと思っています。
日本のベンチャーキャピタルでこういった宣言をするのが初めてでしたので、誰もついてこない中で、明確にこういった意思に同調していただく女性起業家の方からたくさん御連絡いただいて、1年半で私たち18社、女性起業家に投資したんですけど、90社以上御連絡いただいたと。これが極めて大きなきっかけになって、私たちとしては、今後も恐らく20%という数字は達成できるなと思っております。
代表例でここに出しているんですけれども、SHEというミレニアム世代の女性向けの、カルチャースクールに近いものですとか、vivolaという不妊治療のデータの会社、あとはマチルダという子育て家庭のためのミールシェアサービスなど、かなり多様な会社に投資をしております。
一方、1社でこの宣言をして、ああ、よし、これはみんなまねするなと思ったら、誰もまねしないという。どちらかというと陰口をたたかれるという。リターンに寄与しないことをやるんじゃないと、同業者に言われてめちゃめちゃむかついたので、私ベンチャーキャピタル協会の理事ですので、業界団体としてイニシアチブをやっていきましょうということで、D&Iイニシアティブという部会を去年立ち上げて、ベンチャーキャピタルの業界としてもこういった意思を持っていきましょうよということで、ベンチャーキャピタル協会も、イベントをするときに、女性やLGBTQ含むマイノリティーが登壇者の中に20%以上いないとイベント等々は受けません、イベントを開催させませんというルールを強制的に発動しました。
こういった活動が、数字を追うのが本質的じゃない、リターンを追求すべきだという考えもあるんですけれども、基本的にナンセンスだとは思って、投資活動をやっているとやっぱり協調バイアスがあって、自分に近いジェンダー、自分近い年齢、自分に近いバックグラウンドを高く評価する傾向に明らかにありますので、それで放っておくと、男性キャピタリストしかいないこの業界は、一生男性に投資していくんです。評価者が男性なので、一生これがぐるぐる回るなということで、これは明らかに社内の女性比率と女性起業家比率をターゲットを決めて追っていかないとこれは達成できないだろうということで、ページめくっていただきまして、私たちも投資メンバー11中2名が今、女性ということで、ここはできれば30%ぐらいにしていきたいなと思っております。
8ページ、最後なんですけれども、私たち、ダイバーシティーの取組みというのを2年半ほどやってきまして、これは堀本さんにも先日お伝えしたんですけれども、ちょっとにっちもさっちもいかないなというところです。女性の起業家は少しずつ増えているんですけれども、やっぱり遅々として進まない、あまり増えていかない。
一方、ベンチャーキャピタルの業界から見ると、アメリカはすばらしいねというお約束のミームが通じなくて、アメリカもできていない。アメリカのベンチャーキャピタルも、全然男性と白人が強い。あんまりアメリカがお手本にならない世界です。女性のベンチャーキャピタリストもあまり増えていかないということで、業界団体としてイニシアチブつくって頑張っているんですけれども、なかなか増えないなと。ポジティブアクションについては、LPの方はかなり御賛同もいただけますし、いいねと言っていただけるんですけれども、正直業界の中からだけだとなかなか変わっていかないなというところがあります。
私たち、イニシアチブの中でMPower、元の副会長のキャシー松井さん[A2] とイベントをやっているんですけれども、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントですと、やっぱり女性の取締役がいないと、上場企業も役員選任に否決を出したりですとか、そういったやっぱり強烈な株主からのパワーで変わっていったと。先日、キヤノンでも大分、社長とか会長が50.8%ぐらいまで再任が経評会議で、キヤノンさん、取締役に男性しかいないので、自動的に否決に入るんです。海外機関投資家比率高いと否決が入るんですけれども、そういった動き。
私たちとしては、ベンチャーキャピタルへのLPの機関投資家さんのほうからプレッシャーかけていただくことで、ベンチャーキャピタルが変わって、ベンチャーキャピタルが変わって起業家が変わっていくみたいな、金融の世界を上から変えていかないと、なかなかいかんともしがたいのかなというのが、一事業者としては感じるところでございます。
駆け足になったんですが、私からは以上でございます。ありがとうございました。
【柳川座長】 ありがとうございました。
それでは、議論に移りたいと思います。恐縮ですけど、本日は議題が多いために、16時35分までということで、この議論はできれば終わりたいと思っております。よろしくお願いします。
御質問や御意見のある方は名札を立てていただくか、オンラインの方はWebexの挙手機能にてお知らせください。高塚メンバー、お願いします。
【高塚メンバー】 ANRIさん、どうもありがとうございました。私も先日、JVCAのダイバーシティーの勉強会に参加させていただき、まずは数字を追うということなのか、キャピタリストの女性比率ですとか、そういった話がかなり主だったなという印象でした。
一方で、やはり内容として、女性を含むマイノリティーの人たちが働きやすかったりというような中身の改善の話も同時に進むといいなと。数字を追うことと並行して、ANRIさんとして社内で取り組まれているとかや計画があれば御共有いただけないでしょうか。
【佐俣様】 ありがとうございます。私たちの場合は女性起業家支援で、やっぱり起業家に会って何が必要かと聞いていくという。例えば、私たちの中で比較的喜ばれるのは、すごい単純なことなんですけど、投資先の社長が、結婚と出産をしたらお祝い金出しますと。これ、結構ばからしく聞こえるじゃないですか。株主に対してみんな報告できないんです。すみませんと言ってくるんですよ。要は株主に対して、働かなきゃいけないのに、出産しちゃいます、結婚しちゃいますみたいな、結果出してないのにと言われるので、ばからしいじゃないですか。なので私たちは、そういうライフステージが進むことをポジティブだと捉えています。それでお祝い金を出す。これ、お金を出したいんじゃなくてメッセージが出したい。私たちはポジティブに思っているのでお祝いさせてくださいというのをやっています。これは意外といいなと。起業家たちが喜んで、結婚とか妊娠しましたというのを報告してくれると。
あとは、これも私たち、今テスト中なんですけれども、投資先の、特に女性起業家がどうしてもやっぱり家事の負担とか大きくなってくるんで、病児保育を呼ぶときにフローレンスさんと提携して、その一部サポートをするというのをやったりしています。
僕らはそういうのは定期的に女性起業家を呼んで、投資先の人も呼んでヒアリングして、どういういうことをやっていけばいいかなというのをシンプルに聞くと。聞いて、やってほしいと思ったらやってみて、刺さらなかったら廃止してというのを繰り返していくということをやっています。
【高塚メンバー】 ありがとうございます。
【柳川座長】 では、正木委員、どうぞ。
【正木メンバー】 私はダイバーシティーも担当しており、非常にいい試みだとまず思いました。そのうえで、企業に実現を求める方法として、「やらねばならないこと」として追い込む、つまり、女性を選ばなかったら役員選任議案で否決しますよという方法があることは理解しますが、むしろ「女性がいる、ダイバーシティーが進んでいるということによってイノベーションが生まれていく。だから企業のパフォーマンスがよくなります」といった説明をできるだけしたいと思っております。実際投資されていて、そういう説明が上手にできるのかどうか教えてください。
【佐俣様】 ありがとうございます。まさにおっしゃるとおりで、そういった説明をしたいんです。したいんですけれども、正直現場でいると、なかなかそう簡単には言えないというのがあります。どういう構造かなと思うと、基本的にマイノリティーに対する支援って、マイノリティーは情報が遅いんです。なので、やる気があったとしても情報が遅れているので、例えば、スタートアップで何が起こるかというと、資本政策がちょっと汚いんです。それってマジョリティーは情報交換していて、ファイナンスってこうやってやったほうがいいよと当たり前に情報交換しているんですけど、マイノリティーは届いてないんです。なぜかというと、友達がいないんです。なので、やっぱりどうしても情報が遅れがちなので、短期的に見るとそこそこ劣後していることが多いなというのが正直な感覚です。
一方それは一生崩せないかというと、情報がよく届く場所に引っ張ってきてあげればそのうち解決していくはずなので、これはやっぱり過程の現象だなと。改善していく過程の現象だと思うので、私どもの場合は、女性起業家が投資したら、意識的に私たちのオフィスに入居させるんです。なので、一番情報がいっぱいいる物理的な拠点に入ってください。そういうことで資本政策とか、採用とか、マーケティングとかの情報が遅れがちな人をなるべくフラットな状態に戻していくということができていって、あと5年ぐらいでこれがむしろパフォーマンスに資するんですよと言えるのかなというのが肌感覚です。
【正木メンバー】 ありがとうございました。
【柳川座長】 では、水口委員、お願いいたします。
【水口副座長】 ありがとうございます。私も正木さんと同じような感想を持ったんですけど、御指摘のようにやはり男性、女性が50%ずついて、一定の能力のある人も同じぐらいの比率でいるとすると、女性も同じように活用することによって経済全体が底上げされるんだろうというふうに思うので、合理的な行動として、やっぱり女性にも男性にも同じぐらいのチャンスが行くことが、結局は経済全体にプラスになるのだろうと。
そう考えたときに、例えば、御社は自主的にそれを狙ってやられているわけですけれども、例えばベンチャーキャピタル協会ですよね。協会全体の戦略として、特にアメリカはまだできてないんだったら、日本が先行してこれを進めていく、そういう形で業界として推進したらいいのになという気がするんですけど、イベントではそうされているそうですけども、業界全体として女性起業家を進めていこうという話になかなかならないのはなぜなんでしょうか。
【佐俣様】 ありがとうございます。田島さんが協会の先輩でいるんで若干気まずいですけど。そういったイニシアチブを立ち上げたときに、まず賛同していただいたのは、やっぱり外資系の金融の出身の高野さんと、あとはキャシー松井さんだったんです。私たちもイニシアチブしているんですけど、正直ベンチャーキャピタル業界の、業界団体の理事のおじさんたちですら、正直感覚的にはかなり遅れているなというのがあります。勉強会やってもさぼるんで、みんな。恐らくインパクト投資も近いかもしれないけど、ダイバーシティーとかこういったものの勉強会というのは、来ていただく人は実は来なくても勝手にやれる人で、本当に聞かせなきゃいけないおじさんは絶対来ないという、不都合な真実が。これ、データで実は出ているんですけど、やっぱりモラルの問題だと思うんですね。
なので、私たちとしては、ちょうど明日か明後日ぐらいに協会の理事会で、皆さん、強制教育タイムを90分ぐらいやるんですけれども、やっぱり上から変えていかないといけない。ワークショップをやったときも、現場の方はすごい意識が高いんです。ただ、やっぱり経営層に届いていかないといけない。そこが正直届かないんですよね。届かないのを現場の人に頑張ってもらうのは無理なんで、上から叩いたほうが早いなというのが正直な感覚です。
【水口副座長】 ありがとうございます。
【柳川座長】 それでは、オンラインで参加の林委員、お願いいたします。
【林メンバー】 御指名ありがとうございます。佐俣様、御説明誠にありがとうございました。
私から、御質問ではなくてコメントだけになってしまうんですけれども、お話を伺って個人的に真っ先に思い出しましたのは、昨年7月に金融庁の政策オープンラボという取組みが公表された、スタートアップエコシステムのジェンダーダイバーシティー課題解決に向けた提案です。佐俣さんも提案書に登場されていたというふうに記憶しておりますけれども、私も実は裏方的にサポートさせていただき、スペシャルサンクスとして名前を載せていただいております。
起業家と、それから投資する側、支援する側のそれぞれでジェンダーバランスが偏っているという課題提起をいただいているわけですけれども、特に投資する側、支援する側の多様性というのは、女性起業家を増やすということだけではなくて、インパクト投資とか、さらにはサステナブルファイナンス市場全体の拡大にとっても、直接的ではないんですけれども、間接的にはとても重要なテーマだというふうに思っています。
私自身もサステナブルファイナンスと言われる業界に10年以上関わっておりまして、経験則的なんですけれども、サステナブルファイナンスというのは新しい領域で、教科書とか、これが正解とか、これが前例みたいなものがない世界なので、ちょっと乱暴な言い方かもしれないんですけれども、積極的に推進すべき理由も、あるいは推進することに慎重であるべき理由も、どっちもロジックをつくろうと思えばつくれてしまうような側面が少なからずあるのは事実かなと思っております。
そうした中で、個々の機関投資家においてサステナブルファイナンスに取り組む、取組みをさらに充実するきっかけになるのは、理詰めでロジックで考えてそうなるというのもあるんですけれども、多様な知識とか経験を持つ人の中から、よしやってみようとか、いろいろ模索してみようとチャレンジしたり、創意工夫する人が出てくる。そういう創意工夫の取組みが大切にされる組織文化とか風土みたいのがとても重要だというのが、証明はできないんですけども、10年ぐらい業界に身を置いてきて、経験則的にはとても感じています。
なので言いたいことは、今回の検討会の報告書においても、インパクト投資の裾野の拡大とか、インパクト投資に関する様々な創意工夫を引き出すという観点からも、投資する側の多様性を促進することが間接的にはとても重要であるということはしっかり明記していただくといいのかなというふうに思いましたし、そのために政府として取り組むべきことは、既に政策オープンラボの提案もあるわけですけれども、しっかり取り組んでいただけるとやっぱりいいのかなというふうに改めて思いました。ありがとうございます。
【佐俣様】 ありがとうございます。
【柳川座長】 よろしいですか、特には。
そのほかいかがでしょうか。吉田委員。
【吉田メンバー】 ありがとうございました。非常に学ばせていただけるプレゼンテーションをいただきましてありがとうございました。
弊社も昔から、サポートとしては迫力に欠けるんですけど、女性起業家支援センターというところでコンペをやらせていただいていて、女性起業家をサポートするということをやらせていただいているんですけど、今回ちょっとインパクト投資における検討会というところで、今まさに林さんからあった点が私も重要かなと思いまして、この検討会でインパクト投資した対象がどういう社会的インパクトを生むのかという議論でしたけど、以前渋澤さんからもありましたけど、新しいベンチャーキャピタルをどうつくるかとか、あとファンドマネジャーをどうつくるかとか、あと今回も担い手としての多様な型をどうつくるか、そこも含めて今回、インパクト投資の提言の中に入れるのかどうかというところがポイントかなと思って、コメントになるんですけど、ANRIさんからのプレゼンテーションを受けて思った次第です。
これはちょっと御質問になるんですけど、感覚として、インパクト投資を進める上で担い手の多様性というところが、最終的にインパクトを生むところに重要な、まさにインパクトを生むということかどうかというところでいきますと、ANRIさんのほうから見て、やっぱりそこは今、多様性を追求したほうが、結果的に社会に対するインパクトは生めるんじゃじゃいか、そういうふうにお考えでしょうか。
【佐俣様】 そうですね、結局、この日本で今、インパクト投資的なことをやる経済的なインセンティブがそんなに強くないと思うんです。私、よくソーシャルセクターの人たちの中で勉強会とかやっているんで、資本主義の世界から来ましたという話をするんですけど。とはいえ、こういう活動ってやらなきゃいけないというのが、短期的な経済合理性の中でなかなかできないので、やっぱりこれってファンドでしたら、トップの人間の強い意思、これを最終的に経済的に合理性を出させるんだという強い意思がなきゃいけないんです。なので、私たちも短期的にファンドで合理性があるとは思っていない。でも、それをやり続けたときに正当化させるという、割と起業家マインドがないと、今はできない状況なんです。こういった場を通して、それがもうちょっと経済合理性のほうに近づけていただくということも助かるかもしれないんですけど、結局究極的には、とはいえこれ、何でファンドやっているんだと。世の中よくするためにやっているんだよね、ファンドで金を儲けるためにやっているとか、その議論になるので、そのあたりは多様な人がいていただけるといいなと。
私もこのダイバーシティーのプロジェクトをスタートしたのは、大学生のメンバーにくそださいと言われて。男性が6人ぐらい並んでいるイベントとかに出たらくそださいと言われて、ぼこぼこに20歳のやつに言われまして。意味が分からなかったんですね、初めにやっぱり。何でおまえに言われなきゃいけないんだと。ただやっぱり何でとしていくと、確かに今の時代に男性8人とか並んでどや顔で出ている写真とか見て恥ずかしいと思わないのは、多分違うだろうというところから始まって、じゃあそれって会社として何ができるだろうと変わっていったんで。それは私たちの組織の中に、20歳でやたらと発言権がある人間がいたという、組織としてもよかったですし、何となく私も妻が起業家やっていて子供3人いますので、そうやっていく中で、こういう人がどうやったら自然に増えるんだろうなと思ったこともあるので、やっぱり多様なバックグラウンドの人間が、メンバーも代表もいたほうが、自然とそういった発想になっていくんだなというのは自分の体感としてもあります。
【吉田メンバー】 ありがとうございます。
【柳川座長】 そのほか、オンラインで御参加の畠山大臣官房審議官、いかがでしょうか。
【畠山内閣府男女共同参画局審議官】 ありがとうございます。私ども内閣府としましても、実は担当の小倉大臣がこの分野に対して大きな関心を持っておりまして、現在、女性活躍と経済成長の好循環実現に向けた検討会という大臣の私的懇談会というようなものを開催しておりまして、そこでは今、御議論いただいておりますような女性の起業家についての検討も進めております。その中では、御指摘いただいたような投資する側の多様性みたいなことが必要ではないかとか、かなりのアンコンシャスバイアスというものがあるのではないかというような御意見もいただいております。
あるいは、私どもの検討の中で1つの柱として、企業の中での女性役員登用を進めていくようなことも進めておるということでありますので、今、佐俣様からいただいたお話、私どもの検討にもつなげていけるということでありますので、また関係省庁、金融庁をはじめとしてよく調整させていただいて、結果を出せるように取り組んでまいりたいと思います。
すみません、やや感想的な話で恐縮ですけれども。
【柳川座長】 ありがとうございます。
それでは、お待たせしました。野村委員、お願いいたします。
【野村メンバー】 感覚的でも結構ですのでお聞きしたいと思っている点は、インパクト投資の裾野を広げるということで我々は議論しておりますが、ANRIさんにとってインパクト投資という言葉はどんなイメージで、どのように考えていらっしゃるのか、お聞きしたいと思います。あまり関係ない言葉なのか、それとも何か意味のある言葉なのか、今のお立場で、どう思われますか。
【佐俣様】 何となく解釈がまだ進み切っていない感覚なんですけど、本来的には金融って世の中をよくするためのインセンティブになるというのが金融だと認識しているので、全部インパクトなはずなんだけどなというのはあります。一方、今回の議事録いろいろ読んだんですけど、どうしても私たち金融事業者なので、出資者が評価者なので、要は何ぼ儲けたいんだという会話にしかならなくなる中に、別な軸を入れていただけるのは助かるなと。やっぱり私たちも金融事業者で、ファンド運営で、目の前にやっぱりどうしてもパフォーマンス、パフォーマンスというふうに向かっていきやすいですし、それがある意味正しいといえば正しいんですけど。ただ、それがやっぱりほかの尺度の筋も通していただけると、確かに私たちって本来こういうほうも向かわなきゃいけなかったんだなという、目を覚ますじゃないですけれども。放っておかれると、私たちIRRという数字しか見なくなって。
そこはなるべく見てほしいんですけど、強い事業者の人たちと話していると、やっぱりそういうのはリターンを出せないやつの逃げだと言われるところも正直あると思っています。そこはどういうバランスになるんだろうなというのは、事業者としてはもんもんしながら思っているところですかね。
【野村メンバー】 分かりました。ありがとうございます。貴重な御意見ありがとうございます。
【柳川座長】 そのほか、いかがでしょうか。
【水口副座長】 1つコメントしていいですか。大変ありがとうございました。非常に勉強になりましたし、女性起業家を支援というのは、1つインパクトを生む行動だなというふうに思いますので、インパクト投資という言葉の定義には入らないのかもしれないんですけれども、御指摘いただきましたように、やはり報告書の中で私たちはこういう少し広い意味で社会にきちんとインパクト与えるということを考えていく必要があるんだなということは非常に思いました。
これをインパクト投資のフレームにどういうふうに落とすのかはよく分からないんですけども、女性起業家をきちんと支援していくことがいろんなところに波及して、大きなインパクト、アウトカムを生むのだろうなということを思いました。それをうまく報告書にも反映できるといいと思っています。
【柳川座長】 そうですね。世の中にインパクトを与える金融がいっぱいあるわけで、そこを目指すものと、インパクト投資とくくって特にそっちを重視するものと、インパクト投資だけが世の中にインパクトを与える金融というわけではないんだろうと思いますのでね。おっしゃるとおりだと思います。
では。
【高塚メンバー】 その点については実感値があります。残念ながら日本社会では多くの場合に女性がマイノリティーとして課題を抱えているのが現実かと思いますが、起業家の皆さんに様々お会いしていると、御自分の生きてきた中で気づかれた課題というのを、御自身の能力や新しいテクノロジー等を使ってビジネスで解決するということで起業されるのだとすると、多くの場合、女性の方が生活の中で課題を実感する場面が多くあるのかなと思い、おっしゃるところに共感します。こういうところに着目をして投資をするということが、間接的に結果的にインパクト創出となるという考えはあり得るかなというふうには思います。
他方、それを「インパクト投資」と分類するならば、もう一歩進んで意識が高く「要件を満たす」ところまで考えていくことが望ましく、これらが両立していくといいなと思うという感想でした。
【佐俣様】 女性起業家を投資してすごい面白いのは、よくも悪くもマイノリティーとしての叫びなんですよね、事業が。やっぱり女性特有の悩みとかは、要は男性に任せても解決してくれないから、例えば更年期障害というテーマって実は女性起業家にすごい人気なんです。これは切実だけど誰も回答がないから。ですとか、やっぱり育児の悩みとか、基本的にはマイノリティーが事業をやっていくと、当面はマイノリティーの叫びになるんです、事業内容が。
ただ、これが最終的には男性も女性も、例えばLGBTも全員関係ない事業になる世界観のほうが私は正しいと思っているんですよね。マイノリティーは自分の課題というのは、国も行政も、男性とかマジョリティー、何も解決してくれないから私がやるしかないのよといって仕方なくというか、背に腹変えられずに起業していくので、それがなくなる時代、フラットにみんなが同じ、世の中にとってどういうことが必要なんだというテーマで起業する時代が、日本で5年後、10年後ぐらいに来るとすてきなテーマですし、恐らくそうするとアメリカよりは全然多様な世界がひけるんじゃないかなというのが肌感覚であります。
【柳川座長】 ありがとうございます。議論が尽きないところですけれども、ちょっと時間の制約がありますので、次の議題に移らせていただきます。
佐俣様と畠山様はここで御退室されます。佐俣さん、プレゼンテーションどうもありがとうございました。(拍手)
それでは、続きまして、地域銀行における取組みについて、滋賀銀行様より御紹介いただきます。宇佐見様、よろしくお願いします。
【宇佐見様】 滋賀銀行の宇佐見でございます。よろしくお願い申し上げます。
本日は、貴重な機会を頂戴しましてありがとうございます。企業が事業を通じてインパクトを創出するということ、それから、それに対して弊行がどのように関わる、支援していくかについての考え方というものを御説明させていただければと思います。次のページお願いします。
まず初めに、前置きをちょっと話させていただきます。インパクトとかサステナビリティ、ESG、こういった分野におけるコミュニケーションで最も重要なのは、やはり言葉の定義ではないかなというふうに思います。これはいろいろな人たちとやはり話をしていても、立場とかバックボーンとかの考え方、この辺が違いますと、かなり異なる意味を指し示すことが多くて、どうにもならない場合は会話が成立しているはずなのに認識が異なるといったことがございますので、本ペーパーでの定義をこちらのほうに示させていただきましたので、御了解いただければと思います。次のペーパーをお願いいたします。
では、本論に入らせていただきます。このペーパーは、弊行が認識する地域金融機関が置かれた状況、それから、それに対する金融機関の行動というものを下側に図示したものでございます。置かれる周辺状況におきましては、刻一刻と変化しておりますので、特にESGの部分に関しましては、例えばTNFDであるとか、新たな状況が次々増加しているといった状況です。
一方、変わらない要請としましては、この右側の金融機能のところですが、地域金融機関としてのビジネスモデルの再考だというところだと我々考えております。バブル崩壊後30年間模索し続けて、主軸となり得る考え方というのが、ESGをはじめとするものではないかなというふうに思った次第でございます。
下側の金融機関の行動については既に御案内のことだと思いますので、説明のほうは割愛させていただきます。次の資料をお願いいたします。
こういった状況認識の中、サステナビリティ戦略というものを弊行では展開しております。弊行の戦略でございますが、やはりまず近江商人の三方よし、それから、琵琶湖を中心とした環境保全の動きといいました、滋賀県の歴史的背景といったものにまず基づいたものというふうになっております。
行是におきましては、三方よしを源流といたします、「自分にきびしく 人には親切 社会につくす」といったものを1966年に発表しまして、それ以来、地域のサステナビリティを念頭に据えた取組みというのをしてきております。国連環境計画金融機関声明への署名とか、そういった近年の取組みを早くから、サステナビリティに関する取組みというのを進めているという銀行でございます。
直近の具体的なものとしましては、長期ビジョンとしまして、サステナビリティビジョンというのを定めております。中期経営計画をはじめとしまして、戦略、戦術、こういったものに長期ビジョンから展開をしているといった流れになっております。ファイナンスにおきましては、ESGファイナンス、こちらも地域金融機関の中ではかなり早い段階、2020年頃から取組みをしておりまして、実際積み上げ並びにコーナーへの浸透というのを図っている状況でございます。次の資料をお願いいたします。
これらを背景に、弊行が考えるインパクト融資というものについてお話しします。地域金融機関のインパクト投融資、これは融資と投資で性質が異なるのではないかなというふうに考えております。
まず左側青部分です。融資におきましては、インパクト創出を企図するファイナンスを自ら組成して融資するといったものになります。一方の右側、投資ですが、こちらは他者によって組成されたインパクトファイナンスへの投資、または借手への外部評価、資金使途に対する外部評価、こういったものを判断基準として投資するといったものになってくるというふうに我々考えています。
弊行はステークホルダーのサステナブルな未来の姿、これを共に描いて実現する会社、「Sustainability Design Company」というものを目指すべき姿というふうに置いておりますので、我々の取組みの中心というのは左側、融資が中心になってくるというところでございます。
弊行のインパクト融資の考え方でございますが、基本的には、持続可能性向上のサイクルと書かせていただいておりますけれども、これを社会、当行、顧客の3者で回すということでインパクト創出を促していくというものが、インパクト融資に取り組む目的であるというふうに考えております。顧客が事業を通じてポジティブインパクトを創出すること、これを促進していくということで、地域社会の持続可能性が向上するものであるというふうに認識しております。
したがいまして、狭義のインパクト融資は、一番広まっているポジティブインパクトファイナンス、これが多分該当するのではないかなと考えるんですが、弊行、広義では、やはり地域金融そのもの、これがインパクト融資足り得るのではないかなというふうに考えておる次第でございます。次の資料をお願いします。
次に、インパクト融資における要点についてお話しします。トータルポジティブなインパクトを創出するということは、社会的課題を解決すること、もしくは社会的な効果を生み出すことだというふうに考えています。
そのときに重要な点としましては、3点ございます。収益性を含む継続性というもの、それから、事業主体の意思や意図があること。そして最後に、インパクト創出に係る評価、これらの3点が鍵になるというふうに考えております。
まず、評価から申し上げますと、インパクトそのものの評価というよりも、トータルポジティブとなっているかどうか、これを評価することが重要だというふうに考えます。インパクトそのものを定量評価しようとする動きといったものはあるわけですが、基本的には、目的というのはインパクト間の比較をすることではないのではないか。その評価対象がポジティブインパクトを生み出すかどうか、そしてネガティブインパクトが抑制されている、もしくは削減できるかどうか、こういったものを評価するというのが目的ではないかなと思うわけです。要はインパクトそのものを指標化して、さらにそれをウエートづけとかをして比較可能にするということよりも、トータルポジティブかどうかというところが評価していくというのがやはり一番重要ではないかなというところです。したがいまして、評価というのは勢いどうしても定性評価を中心になってくるというところでございます。ただ、当然それをモニタリングしていかなければならない。これは継続的なエンゲージメントというのが重要になってまいりますので、定量的な指標、いわゆるKPIを特定するというところを我々は重視しているところでございます。
次に、意思・意図でございますけれども、意思・意図というものは、生み出されるポジティブインパクトが結果として出てくるものではなくて、明確な意思を持って生じせしめられていること、これを重視しているということです。結果的に生み出されたインパクトというのは、我々の認識だと、ただ発生しているだけだと、要は創出ではないというふうに考えます。ですので、結果として生み出されるものというのは、そこに持続可能性、持続可能に生み出し続けるというものは見いだせないというふうに考えます。
最後に、収益性を含む継続性の部分のところですが、インパクト創出が持続可能であるということを担保するために非常に重要なポイントだと思います。慈善的活動といったものによって生み出されるインパクトであったり、低収益性で生み出されるインパクトというのは、事業主体が苦しい状況になったときに、中止される可能性が非常に高くなってきます。我々が当然ポジティブインパクトに期待するものとしては、少なくとも社会的課題が解決に導かれるまでは持続的な動きになってもらうこと、これがやはり大事ではないかなというふうに考えます。ですので、事業そのものの収益性というのは、やはり大きなポイントになってまいります。これは我々の持続可能性にも当然つながってまいりますので、やはり収益性、継続性というものを外して検討するわけにいきません。
これら3点のポイントは、全て持続可能なインパクト創出に係るものだというふうに考えます。そして、これらの実現に向けては、エンゲージメントが最重要になってくるというふうに位置づけております。それでは、次の資料をお願いします。
こちらの図は、弊行のサステナビリティに関するサービス、これをエンゲージメントの観点で俯瞰したものでございます。右へ行くほどエンゲージメントが深くなっていくというところです。上下の位置づけは意味を持っておりません。
一番左側にあります格付けCS、格付けコミュニケーションサービスというものですとか、あとESG評価、こういったものは定期的にお客様と接点を持つため、事業性とかESGについてエンゲージメント行うサービスであるというものです。これはあらかじめ評価の仕方が定められていますので、こういったものに基づいて弊行がどう見ているのかというのを材料にエンゲージメントをするというものになります。
次の真ん中ほどにありますSDGsコンサル。これは顧客の中にSDGsであるとか、サステナビリティインパクトといったものに意識はあるんですが、整理があまりおぼつかないといったお客様で、弊行がコンサルタントとしてロジックモデルを策定して、事業においてどのようなインパクトを生み出しているのかということについて、SDGsをキーワードに整理するというものを伴走支援するというサービスになります。そういったものを通じて事業とかインパクトの関係といったものが整理されてくれば、当然進捗を図るためのKPIの設定をいたします。ですと、次の右側のSLLになったり、サステナブル評価融資、これは弊行独自のサービスですが、そういったものを組成していきながら、社内外へ自社の考え方を浸透していくという流れになります。
最終的に事業全体についてインパクトをより深く整理していく、そして今後の方向性を検討していくという場合は、ポジティブインパクトファイナンスへ進んでいくというものになります。ですので、弊行の中では、PIFは最も深いエンゲージメントを行うサービスであるというふうに考える次第です。次の資料をお願いいたします。
エンゲージメントについてでございますが、弊行の業務へ落とし込んでまいりますと、やはりこれはコンサルティングという部分に、最終的にはなっていくのかなというところです。コンサルティングといっても通常意識される専門コンサルではなくて、やはり日々の外交活動を含む総合コンサルというものになります。このコンサルティングという部分ですが、地域金融で、近年ですと減少している、もしくは失われた価値創出、こういったものに相当するものではないかというふうに考えます。
一番上に書いてございますけれども、実際弊行の中でESGファイナンス、二、三年続けておりますけれども、お客様の満足というのが、融資を実行されてお金を借りられたということにあるのではなくて、ファイナンスを組成する過程でコンサルティングを受ける、もしくはアウトプットとして考え方を言語化するというところで非常に御満足をいただけているということを我々確認、認識をしている次第でございます。
こういったエンゲージメントを通じたインパクト融資の実施というのは、従来の融資と何か変わるのかというところなんですが、我々は特別なものではないというふうに認識しています。これは中頃にございますけれども、時代の背景が変わるにつれて、社会からお客様の持続可能性、こういったものに対する要請というのが広がってきただけだと見ています。過去であれば多分信用力、クレジットだけだったと。そこに追加して事業性という観点が加わり、最終的に近年では社会的責任というところがうたわれるようになったというふうに考えております。
ただ、根っこにありますのは、お客様の持続可能性、ずっと続いていけるようにという部分になりますので、基本的にベースにあるものは何も変わらない、本質的なものは何も変わらないというふうに考えておる次第でございます。
ですので、地域金融機関は、バブル崩壊後、手放してきた貸金以外の価値、ここの部分を取り戻す1つの方向性というのが、エンゲージメントを通じたインパクト融資というところにあるのではないかなというふうに思いますし、こういった融資業務の再考というのは、地域金融機関のビジネスモデルを取り戻すということにつながるのではないかというふうに考える次第です。次の資料をお願いいたします。
ここからは、弊行の2つの事例を御紹介させていただければと思います。1つ目は、弊行において最も深くインパクト創出をテーマとしてエンゲージメントを行いますポジティブインパクトファイナンスに関するもの、もう一つは、融資外交から支援セクション、本部行為までの一連の流れで、顧客のインパクト創出を支援したという事例になります。
こちらの資料にありますたねや様を対象に、ポジティブインパクトファイナンスというのを実施しております。たねや様は、和菓子のたねやという事業と、それから、洋菓子のクラブハリエ、バームクーヘンですね、こちらの事業展開をしておりまして、自然、地域と共生していくお菓子づくりというものを目指している会社でございます。彼らは既にサステナビリティに十分取り込む企業として認識されておりますので、金融機関がインパクト評価を行うといったところの意味がどれぐらいあるのかというところなんですが、弊行がインパクト評価を行うことによって、その取組みをより適切な方向へ加速していくという意味を持つのではないかなというふうに思います。
特にこういった取組みをされている企業様でも、やはりGHG排出をはじめとする環境カテゴリー、こういったカテゴリーであれば、ネガティブインパクトの抑制という文脈で語られることが多いんですが、そのほかの点になりますと、やはりポジティブインパクトに集中しがちであるというところになります。ですが、ポジティブインパクトファイナンスを組成するといったものを通じますと、やはりロジックモデルを構築して、各事業のパートでインパクトがどうなっているのかというところを整理いたしますので、非常に自社のインパクト創出の状況というものを把握していただけるのかなということでございます。
それから、弊行のような地域金融機関が地域の企業を評価するということも、やはり地域社会の状況に応じた社会的課題を認識した上で評価いたしますので、地域金融機関が担うことが適していると考えます。次の資料をお願いいたします。ありがとうございます。
こちらはもう一つの事例になりますけれども、営業店外交から本部支援といったファイナンスの流れで、それぞれの段階に合ったエンゲージメントというものが実施されてインパクト創出、それから目標設定まで至った事例というものになります。
融資外交によるエンゲージメントの初期というのは、この図の中の、期中を通してずっと融資外交によるエンゲージメントとあるわけですが、当初の左側、この会社というのは、玄米茶とか麦茶とか、そういうようなお茶の原料をつくっているような加工している会社さんなんですが、この会社さんが麦茶の原料である大麦の生産地、それから加工地を、自社のクオリティーに合うものが入手できる、品質の安定した大麦の確保ということを考えておったわけです。その当時、融資外交が接触してエンゲージメントしているわけですけど、特にインパクト創出というものを強く意識しているわけじゃないんです。ただ当社が滋賀県長浜市に進出をするといったときに、地元と一緒に事業を行い、地域貢献したいと、こういった考えを営業店外交が共有いたしまして、これが取組みの土台になったというところでございます。この意識が最後までずっと続いていくわけです。
ですので、SDGsコンサルを提供する前の段階から当然伴走支援をしているわけですけれども、自治体であるとか地域住民とのエンゲージメント、こういったものも弊行職員が同席いたしまして、ポジティブインパクトが生み出される状況というものをずっと支援をしてきたというところです。
実際にその事業が開始された後は、弊行の例えばサステナビリティに係る取組みというのを御案内したりする流れの中で、この会社さんの側も、SDGsに対する取組みの重要性を認識され、SDGs宣言を策定したいということになりましたので、専門部隊がSDGsコンサルを行うと。その後、当然当社にとって重要なインパクト業務というのが浮き彫りになりますので、KPIを設定して経営実装するという流れになります。この経営への実装は、サステナブル評価融資という弊行の独自の商品を使って、評価とともにKPI設定という流れで実装が完了したというものになります。
こういった流れでございますので、弊行の取組みというのは、顧客の持続可能性を軸にインパクト創出を目指していくというのが目指すべきものであるというふうに考えています。
ファイナンスの種別ですが、これはお客様中心に選択されるべきものであるというふうに考えていますので、特定のファイナンスを進めるという動きは特にしておりません。例えば、ポジティブインパクトファイナンスを推進するとか、SLLだけを伸ばすとか、そういうことは全く考えてないということでございます。ですので、ラベルファイナンスの残高積み増しというのも、結果として起きてきているものだというふうに考えている次第でございます。
私のほうからの説明は以上になります。ありがとうございました。
【柳川座長】 ありがとうございました。続きまして、事務局より資料の御説明をお願いいたします。
【西田サステナブルファイナンス推進室長】 地域における課題ということで、今回議論させていただくことになっておりましたので、前半、滋賀銀行さんからのお話をいただいたところですが、事務局からも関連する資料を幾つかそろえましたのでご説明させて頂きます。
2ページ目は、地域特有の社会課題に焦点を当て、新たな技術や商品の開発、販売生産戦略の創意工夫等を行って事業の成長を図る創業企業等もいらっしゃると思いますが、他方で現状、例えばインパクトスタートアップ協会の会社の本社所在地を見ますと、左側日本地図のところですが、やはり東京が圧倒的に多く、地方での取組みまだまだ拡大余地があるかと。また、真ん中のところはスタートアップ全般ですけが、調達の元手、地域別に見ますと、東京が8割弱ということで、かなり集中しているという状況が伺われます。
3ページ目は、特に地域とか地域金融という観点で、本検討会との議論の関係で、又はインパクト投資について、どのような課題があるのか、ぜひ御議論いただければということで、いくつか論点を記載しております。
例えば、地域の金融ではいわゆるリレーションシップバンキングや事業性評価を含め、インパクト投資につながり得るような話もかなりあるわけですけれども、まだまだ取組み余地があるのではないか。いわゆるユニコーンを目指すような収益目線ではなくて、そこと比較すれば安定的ではあるが新しい事業を起こしていく地域の企業の活性化等について、インパクト投資が何らかの活性化等の機会になり得るかどうか。
4ページ目のところですが、先ほども出資と融資で違いがあるのではないかというお話がありましたが、一般的なファンド等では、ある程度時間軸を定めてエグジットを見出していくことが一般的と思いますが、これまでの様々な場でご指摘ありますように、地域に限らずですが、特に、地域での社会・環境的効果も実現していく事業となりますと、収益化までに相応の時間を要すると、これをどのような金融主体や金融手法によってサポートすることができるかも御議論いただければと思っております。
【柳川座長】 ありがとうございました。それでは、議論に移りたいと思います。これについては17時30分までということに、恐縮ですけれども、させていただきますので、御質問なり御意見がおありの方は、先ほどと同じように名札を立てていただくか、Webexの挙手機能にてお知らせいただければと思います。よろしくお願いいたします。
それでは、金井委員。
【金井メンバー】 質問が1件と、コメント1件させていただきます。まず、滋賀銀行さんへの質問なんですけれども、先ほど事業性評価とESGファイナンスがつながっており、通常の融資がいわゆる貸出しプラスコンサルティングが一般的な姿になるということになるというようなことをおっしゃっていたと思うのですが、それは事業性評価融資の中にESGファクターを入れ込んで、その発展形としてインパクトファイナンスがあると捉えておられるのかどうかということについてお聞きしたいというのが1点です。
それから、西田さんのほうはいっぱい論点があるので、全部は言い切れないんですけど、1つだけ申し上げておくと、融資と投資の間というのも出てきているんですね。
静岡FGさんは中計でベンチャーデットを2027年までに1,000億円に、ベンチャーファンドも400億円まで拡充することを掲げました。静岡銀行さんは、ポジティブインパクトファイナンスではかなり先行しています。ベンチャー融資や投資をインパクトファイナンス仕立てにすると言っているわけではないですが、地域金融機関のインパクトファイナンスは、ベンチャー融資、通常のコーポレートファイナンス、純投資といったバリエーションを持つ可能性があります。
今、滋賀銀行さんおっしゃったとおり、何をやるのか、どれに応じてベストなファイナンス手段というのがあるわけであって、一つの商品の決め打ちでは確かにないんだろうと思うんですね。事業性評価の中にESGを組み込み、それがインパクトの視点を入れていくことがデフォルトとしてあって、あとは、その企業の資金調達の形態に合わせて一番ベストなチョイスを持っていくというような感じになるのかなというふうに思っています。質問ではなく私の感想なんですけれども、もしこのあたりについても、滋賀銀行さんのほうから意見をいただけるとうれしいです。
以上です。
【柳川座長】 では、よろしくお願いいたします。
【宇佐見様】 ありがとうございます。まず1つ目の部分ですね。事業性評価の中に当然ESGファイナンス、こういったものがつながってくるのかという部分で、その先にインパクトファイナンスにつながっていくのかというところですが、これはおっしゃられるとおり、事業性を評価していくということは、現状の企業に対する要請というところを考えますと、当然、ESG評価、ESG要素というのは見ていかなければならないという部分だと思うんです。
ただ、ESGというものだけを見ていると、じゃ、それが本当に世の中に対してどう、何を価値として生み出しているのかという部分がやはり曖昧になってきますので、そういった意味ではやはり最終的にはインパクトファイナンスというものにつながっていくんじゃないかなというふうに考えています。
弊行の場合、ESGファイナンスというふうに置いておりますけれども、SLL中心になっているので、そういったところを考える際には、やはり持続可能であること、持続可能性にどうやってそれが貢献しているのか。それは自社のだけではなくて、当然社会の持続可能性にどのようなインパクトを生み出しているのかというのを常に考えながら組成しています。そういった特定のファイナンスに関していえば、そういったことを常に考えながら組成をしているという部分になりますので、全てが全てインパクトファイナンス・イコール全ての融資という観点を全員の行員が持てているかというと、そこまでではないとは我々も思うんですが、少なくともサステナビリティファイナンスに本部で専門部隊として関わっている人間、彼らは基本的にはそういった意識を持って、全てのファイナンスをやっているというところになります。
それから、先ほど融資とか投資の間のものが出てきているというところですけれども、まさに我々はメニュー、それから考え方、こういったものがしっかりと行員に浸透してくれば、手段、結局、お客様にとっては最適なファイナンスサービスを提供することが最もそれに資するというふうに考えます。そういった体制がしっかりとできれば、それは自然に全てのファイナンスがインパクトファイナンス、そしてインパクトファイナンスというよりもインパクトを創出する融資、そういったものに最終的には帰結していくはずであるというふうに考えている次第でございます。
以上でございます。
【金井メンバー】 了解です。
【柳川座長】 取りあえずよろしいですか。また御議論いっぱいあると思うんですけれども、それでは、吉澤委員、お願いいたします。
【吉澤メンバー】 滋賀銀行宇佐見様、どうもありがとうございました。コメント1つと、質問があるんですけれども、サステナブルファイナンスも従来の融資、取組みと根っこは同じだということで、そうだなと聞いておりました.こういうサステナブルファイナンスの視点を入れることで、ファイナンス自体がより加速していくのだということを改めて感じています。
7ページ、8ページ、この辺りなんですけれども、滋賀銀行さんのサステナブルファイナンスを実行していく中において、事業性であったり社会的責任であったり、こういうコンサルティング業務を追加されているということなんですけれども、これを実際にやっていこうと思うと、体制や人員を、滋賀銀行さんの中で強化されていると思います。そのときの課題、従来と違う取組みだとかの工夫されているところがもしございましたら、言える範囲で結構ですので、教えていただければと思います。
【宇佐見様】 ありがとうございます。弊行の場合ですと、なかなか全行員が同じ水準でコンサルできるようになるというのは非常に難しいのは多分、他行さんと同じ状況でございます。
ただ、格付コミュニケーションサービスというのが7ページの図の中では一番古いサービスになってくるんですけれども、要は弊行がつける格付ですね、いわゆる行内格付を軸に、お客様とその信用力について、事業の中身、会社の状況、こういったものを踏まえて、フラットに話合いをするというサービスでございます。
こういったものが、これ、2007、8年ぐらいからこういったお客様とコミュニケーションするというサービスを開始しておりますので、直近でいきますと、このESG評価であるとか、これもその評価シートがありますので、その評価シートの結果をお客様の間においてコミュニケーションを取るというところの形は同じであるということです。
ただ、そのESGの項目、評価項目について明るくない、当然専門的な分野でもありますので、それぞれの項目1つずつに解説書を用意して、こちらをしっかりと読んでコミュニケーションを取るようにという形で浸透させているという方法がまず1つ。
あともう一つは、このSDGsコンサルなんですが、これ、もともと初めは営業部隊のほうでもやっておったんですが、一度体制を再整備しました。本部の専門部隊のほうで、SDGsコンパス、これに従った形でやるぞということで、もう一度そのツール、コンサル用のツール等々全部再整備をして、全行員、全外交員ではないんですが、まず初めに支店長向けに、全支店長向けにこのコンサルの実地のセミナー、勉強会、これを実施して、その上で、さらに外交員の主要な人たち、こういった人たちに、このSDGsコンサルをどうやってやるのかというのを実際のリアルの場での研修、ロールプレイもしながらやる研修を開催しました。
これをやったことによって、本部行員が結構専門的なコンサルをしておったんですが、現在では営業店外交が実際にコンサルティングができる、それは支店長が指導しながらやるというような流れを取ることができております。会社の規模とか、それから、難しいような業種の場合は本部対応ということで、別メニューで対応することあるんですが、そういったような形のベースがございますので、この辺の考え方が徐々に通常の融資、融資外交するときにやはり染み出してきます。そういったところでナチュラルにコンサルティングができるように、総合コンサル、そういったものができるような土台が少しずつ醸成されているのかなというふうに考えております。
【柳川座長】 ありがとうございます。それでは。
【安間メンバー】 滋賀銀行さんの取組み、大変すばらしいと思っております。以前もヒアリングさせていただいたことがあるんですが、いわゆる行内財務信用格付を設定している時からその格付を取引先と情報共有して、開示して、その上げ下げの可否の要因について取引先と協議をしておられて、そのことが顧客との関係において非常に大きな財産になっておられるということかなと思いますし、ESGについても評価をして、その格付について取引先と協議をし、情報交換して、どうしたらESG格付が上がるのか下がるのかということについて話をされる。これまさに取引先とのエンゲージメントだと思いますね。金融機関としての新たな価値創造ということです。
こういう話を聞くと、狭い意味のIMMを伴ったインパクト投資、インパクトファイナンスというような、そういう細かい話ではなくて、将来の金融の価値創造のあり方全体を変えていく話になってくると私は思っていまして、それがインパクト志向金融宣言において、我々事務局をやりながら推進している「インパクト志向金融経営」というものだと考えます。
グローバルな市場においては、既に皆さん御承知のとおり、ISSBの企業の全面的なサステナビリティ、非財務の情報開示ですね、ポジ、ネガ、機会とリスクということで、それぞれをあらゆる分野について全面的に開示しながら、金融機関がそれを統合的に投資判断の中に組み込んでいくという、いわゆる統合志向の金融というものが推進されているということかなと思うんですけれども、これを我が国でも推進していくということが最終的なゴールであって、狭い意味のインパクト投資がゴールではないということではないかなと思っています。
そういう意味においては、行内信用格付けに加えて、取引先のサステナビリティ格付の体系を構築し、最終的には統合格付をもとに与信の判断をしていく、あるいはアセットオーナーのイクイティ投資判断においても組み込んでいく、こういう流れを金融行政の流れにおいてつくっていくということがインパクト投資の最終ゴールではないかなというふうに思います。よって、その中でもこの滋賀銀行さんの取組みというのはかなり先進的で、ほかの銀行やっていない取組みじゃないかなと思って注目しております。以上コメントです。
【宇佐見様】 ありがとうございます。
【柳川座長】 それでは、吉田委員、お願いします。
【吉田メンバー】 ありがとうございます。DBJの吉田でございます。滋賀銀行さん、プレゼン本当にありがとうございます。大変勉強になりました。
まさに滋賀銀行さん言っていただいたとおりかと思うんですけど、地域の金融そのものがかなりの部分、インパクトと密接に関係しているというのは全く同感でございます。
一方で、金融庁さんからあった4ページ目のところですけど、地域金融機関含めて、地域の課題という観点で考えますと、弊社も直面している話でいきますと、例えば地域公共交通機関はどうするんだとか、あとは地域の脱炭素、それはそれぞれ地域によって全然構造が違う、それ産業構造をどういうふうに支えるんだとか、そういう問題に直面している金融機関さんが多いのではないかなというふうに思っています。
従来の地域金融機関のアプローチ自体がインパクトに資するということからすると、今回のこの検討会で地域を取り上げるときに、どういう部分の裾野を広げたいのかということも皆さんと御議論できればなというふうに思っておりますが、それで重要な参考になるかなと思ったのが、滋賀銀さんからのプレゼンの6ページ目のところで、インパクトの量の定量化ではなく、進捗を計測するKPIの設定であるというところが非常に印象深かったんですが、これを金融機関と話すことによって、何なら高みに上げていくというようなところが、しっかりお客様と金融機関さんとの間で対応ができるんであれば、それはインパクトというものを入れる1つの大きな意味なのかなと。
これはなかなか従来の金融機関でやろうと思ってもできないことだったのではないかなと思うんですが、滋賀銀さんからして、このインパクト投資検討会で、地域掛けるインパクトという観点でどのようなことを期待されるのかというのを、KPI設定ともちょっとひもづけながら、インパクトを入れることによってこういうKPIみたいな設定が、例えばお客さんと対話しやすくなるとか、そういう市場をもう少し広げていくべきであるとか、そういう観点でもしコメントがあればいただければと思います。
【宇佐見様】 そうですね。我々、1つちょっと申し漏れていたこととして、地域金融機関という存在ですので、結局、地域の皆様に対しては、要請があれば全般的に融資をしていかなきゃいけない。ユニバーサルオーナーという表現は変なんですけど、地域におけるユニバーサルオーナーみたいな部分、役割、ファイナンサーとしての役割というのは当然持っているわけです。
ですので、これは責任銀行原則のインパクト評価とかやっていますと、よく分かるんですが、ある業種だけインパクトを増やしたいから投資を増やすとか、そういった行動がやっぱり取れないわけです。
そういう観点でいくと、全てのお客様に対して、少しでもいいからポジティブな方向へ行ってもらう、やはりこれが一番大事だと思っています。そういう観点でいきますと、やはりこの進捗の継続を確認するためのものがKPIというところになります。
期待するものとしては、様々なインパクトのカテゴリーと、それから指標の種類というものがあると思います。弊行の場合ですと、SLLもかなり特殊という表現はあれなんですが、その企業様固有の指標、その企業様のポジティブなインパクトを測定する、その企業様にマッチした指標、KPIを選ぶ仕組みないし考え方が浸透してきているので、それほど実は困る状況にはないんですが、他行さんなんかと話していますと、何をKPIにすればいいのという話は非常に多うございます。インパクトのカテゴライズはそれぞれを計測するKPIの例示というんですかね、そういったものがあれば、例えばこのKPIが伸びれば、少なくともそのインパクトのカテゴリーに関してはポジティブ方向に向かっているよということが分かるようなものがお示ししていただければと。地域金融機関、特にインパクトファイナンス自体まだ取り組んでいない金融機関が多いので、そういう金融機関にとっては、何となく、じゃ、そういう指標で追っていけばポジティブになるんだねというのが見えてくるんじゃないのかなというふうに思ったりします。
以上でございます。
【吉田メンバー】 ありがとうございます。インパクト投資とインパクト融資というのがあるかと思っていたんですけど、今のお話をお伺いすると、根底のところではポジティブな形にお客さんと金融機関のマインドを変えていくという意味でのインパクト投資とのつながりが私なりには理解できました。ありがとうございます。
【柳川座長】 ありがとうございます。今、3名の方、手挙がっていらっしゃいます。先にちょっと御質問、御意見等を伺ってしまってからと思いますので、まず、オブザーバーで参加の地銀協様、お願いいたします。
【全国地方銀行協会】 オブザーバーで参加している地銀協でございます。発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
当協会が昨年10月に会員銀行を対象に実施したアンケートによりますと、22行がポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)に取り組んでいるということでございました。
地方銀行は、地域の中小企業のサステナビリティ経営や企業価値向上に貢献するとともに、地域の社会的課題の解決に資する取組みを強化しまして、持続可能な社会の実現を目指してPIFに取り組んでいるんですけれども、課題もあります。ここでは3点ほど申し上げさせていただきたいと思います。
まず1点目といたしましてインパクトの測定が難しくて、その手法に統一性がないことを挙げたいと思います。ファイナンスによって実現する効果をどういうふうに特定するか、具体的には、例えば地理的な範囲とか受益者の範囲をどこまでと捉えるかとか、また、インパクトの創出期間はどれぐらいの時間軸で設定するか、こういったことについては非常に悩ましいという意見があります。
また、インパクトの測定に当たりましては、定量的に評価できない部分があるほか、KPIの設定や、その証左となるデータの確保が難しいという声も聞いております。測定方法にある程度の統一性がないと、PIFを利用する企業も混乱するんじゃないかという懸念も挙げられてございます。
2点目といたしまして、インパクトファイナンスの意義の浸透について申し上げさせていただきたいと思います。現在のところ、自社の事業が社会に対してよいインパクトを与えることに関心が高く、かつ、そのインパクトの評価等に対してコストを負担することを厭わない企業を中心にPIFの利用が進んでいると思っています。それ以外の中小企業は、PIFというファイナンス手法に対する認知度が低いと感じるところです。
また、企業規模が小さいことなどによりまして、人的・資金的な制約がある中小企業は、インパクトに関する報告負担とか、そういったことから利用をためらう場合があります。PIFの意義・効果などについて、もっと知っていただくための努力が必要と思ってございます。
PIFによる資金を提供した企業とは、事業が社会にもたらすインパクトについて対話を重ねまして、さらにインパクトの分析やモニタリングなどを行うこととなるため、既存のファイナンス以上にお客様とのエンゲージメントは深まるということを実感として持っています。
なお、こういったファイナンス実行の際に設定したインパクトの目標を達成できなかった場合、その達成に向けた支援を継続する必要がありまして、現状でもコンサルティングなどを行っているんですけれども、今後、さらにソリューションメニューを充実させていかなければならないということが課題でございます。
3点目といたしまして、インパクトファイナンスの担い手の育成ということで申し上げさせていただきたいと思います。インパクトの測定やモニタリングについては、専門的な知識や測定に関する情報収集が求められているため、それを担う専門人材の育成が必要だと思っています。また、営業現場において、インパクトファイナンスの意義等についてお客様と相互理解を深めていく必要があるため、営業担当の行員には、そういったスキルといったものも求められると思っています。
以上、課題として3点申し上げましたが、地方銀行は今後もサステナビリティ分野におけるファイナンスやコンサルティングなどの充実によりまして、地域全体の持続可能な社会の実現に向けて、引き続き積極的に取り組んでいく所存でございます。
ありがとうございました。
【柳川座長】 ありがとうございます。それでは、オンライン参加の木田委員、お願いいたします。
【木田メンバー】 横浜銀行、木田でございます。ちょっと画面のほうが通信の関係で映りませんで、申し訳ございません。
まず、滋賀銀行様、御講演いただきましてありがとうございました。同じ地域金融機関として大変先進的なお取組み、直にお聞きすることができて、とてもうれしく思います。
そして6ページの資料を拝見し、評価から、意思・意図、継続性という3つのポイントでお示しされておりますように、私どももこのように取組みを進めていければというような内容でございまして、とても感激しております。ありがとうございます。
次に、事務局様のお作りいただいた資料のほうに沿って、幾つかお話しできればと思います。まず、3ページからございます論点のところなんですが、評価のところにつきましては、今、地銀協様のほうからもお話もありましたので、重複するところもありますし、特にというところは特段ないんですけれども、あえて申し上げるとしたら、やはり評価のところが難しいかと思いますので、これから取りまとめる指針が有効な解決手段の1つではないかなというふうに思っております。
それから、担い手のところなんですけれども、そちらにつきましても皆さんの御意見にもありましたように、まず担当のスキルを上げていくというところは実務面で本当に大事なところかと思っています。
また、金融機関としても、もちろん担い手として、インパクト投融資が進むように取り組んでいくんですが、以前御議論にもあったかと思うのですが、地域金融機関単独で取り組むというよりは、同業の他行の皆様の御協力や、それから地方自治体の御協力も併せて受けて、地域全体で進めていくというようなお話もあったかと思います。
そういうことから申し上げますと、その次にございます「投資家・金融機関と企業をつなぐ仕組み」にもつながるところかと思うんですが、例えば神奈川県の場合ですと、アクセラレーションプログラムというようなものがございまして、これは神奈川県の場合には、横浜、川崎、相模原などにも独自のものがございます。社会課題と経済価値の両立を目指す起業家支援のプログラムということで、例えば、企業のプレゼンテーションをする場を設けて、大企業の皆様とか、いろんな方に事業を知らせるような機会をつくるというようなことは前から取組みがあったんですけれども、近年はかなりもっと手厚く自治体様がいろんな取組みを駆使して起業家支援をされているというのが現状でございます。数か月にわたって様々な支援をされて、スキルトレーニングであったり、メンターサポートも含めて、また、企業とのミートアップなども実際に行っていただいております。
こういった取組みに金融機関として一緒に参加させていただき、例えば私どものお客様の御紹介なども、ファイナンスの支援だけではなくて取り組んでいくことも、最終的には事業化が進み、そのインパクトの成果を出せる、スピードが上がっていくということにもつながるかと思いますので、やはり地域としては金融機関だけではなく、自治体の御協力なしにはなかなか進まないところあろうかというふうに思っています。全国にいろんなお取組みがあろうかと思いますが、今回は神奈川県のところを御紹介させていただきました。
どんなことが銀行としてできるのかというと、今までのお話にありますように、ファイナンスが中心にはもちろんなるんですけれども、やはり金融機関として地元を支えていく、企業の皆さんに寄り添っていくというところが大事な使命かなと思いますので、まずは担い手の育成をしっかりとして、お客様の求めておられるものにきちんと寄り添えるような、そういった体制をつくっていくところが課題かなと思っております。
以上です。
【柳川座長】 ありがとうございます。それでは、金井委員。
【金井メンバー】 今までのことも含めて、それから今回の金融庁さんの論点も少し整理した上で、3点ほど申し上げます。1点目は、まず、ポジティブインパクトファイナンスが物すごく広がっているということです。さっき地銀協さんからの数字がありましたが、我々も独自に調査しており、その範囲内の数字ですが、2021年度まで51件だった取組みが、昨年度の上期に97件、下期は162件です。累計で300件以上になっている。
それから、取り組む金融機関、地域金融機関も2021年度までは10機関しかなかったんですけども、2022年に一気に22機関増えて32機関になっています。第三者評価機関が第三者意見を出していますので、そのサイトを見るとこうした数字が把握できるわけですが、地域金融機関におけるサステナブルファイナンスがポジティブインパクファイナンス一色に近くなってきているというのはちょっと驚きです。
こういうことを踏まえて考えると、恐らく事業性評価に非常に近い要素がインパクトファイナンスにはあって、会社全体をトータルで評価するというところがフィットしているのだと思います。
ただ、事業性評価とインパクトの完全な統合というのはまだまだ先の話で、取りあえずポジティブインパクトファイナンスという商品からどうあるべきかを我々としても提言をしてもいいのではないかと思います。
その際、マテリアリティ、KPIと言ってもいいと思うんですけど、どれをどう決めていくのか。中小企業のネガティブインパクトはある程度共通のものが多く、地域金融機関が共有化しやすくすることができますが、ポジティブインパクトはその企業固有のもので、これはやはり個社個社で見ていかないといけないと思います。
ちなみに、雇用の問題はポジティブ、ネガティブどちらのマテリアリティにもなり得ますが、地域においてはポジティブインパクトの要素が強く、こういったことも踏まえた指標の整理というのがあってもいいかなというのが1点目です。
2点目としては、自治体との関係なんですが、内閣府で、私自身も委員として関わっているのですが、地方創生SDGs登録認証制度というのがあり、これはインパクトファイナンスを誘引するための制度でもあります。取りあえずまず見える化の制度をつくるというところから始まったんですけれども、自治体のほうで一定の基準を決めて、それに沿った形で中小・中堅企業に登録をしてもらって、それを金融機関が支援していくという、そういう座組みです。
これまでは、単に登録しただけで、それ以上にまではあまりすすんでいません。中小企業を支援するというという点では、中には北九州のように、特に優良な中堅・中小企業に対しては補助金を出して、さらにその取組みを支援するということをやっているところもある。自治体、企業、地域金融の三位一体的な座組みでいくと、自治体が支援制度も含めた制度がつくれるのか、それに対して地域企業がしっかり応募してくるのかどうか、そしてなるべく多くの地域金融機関が参画すること、大手の金融機関の支店でもいいですが、そういった構造をその地域の中でつくり上げていくということが非常に重要です。
それから、最後になりますけれども、スタートアップと、あとは社歴の長い中小企業をどう考えるかです。ポジティブインパクトファイナンスはスタートアップでなく、社歴の長い中小企業に対するファイナンスが対象です。その企業のインパクトを想定して、ポジティブは伸ばし、ネガティブは抑制するというようなことをKPIを決めてやっています。
これは非常に重要なことで、社歴が長い企業に対してでも、さらに一層企業価値を上げるためのサポートは、地域金融機関としてはやっていくべきです。
ただ、一方で、例えば事業承継とか、あるいは事業の再編のタイミングで、よりリスクマネーが欲しいケースが出てきます。さっきのベンチャーデットみたいなものがあれば、それを使えますが、そういう仕組みが地域金融機関にない場合は、VCを呼び込んでリスクマネーを供給する体制というのもあってもいいんじゃないかなと思います。
もちろん、逆にスタートアップ企業が上場して、その後は融資業務を通じ地域金融機関がサポートするというパターンもあります。いずれにしても地域金融機関のデットの部分とリスクマネーを供給するVCの双方向の関係をうまくつくるということもポイントの1つかなというふうに思っています。
すいません、長くなりましたけど、以上です。
【柳川座長】 ありがとうございます。滋賀銀行様、何かちょっと最後にまとめてになってしまって恐縮ですけど、何かお答え、レスポンスありますでしょうか。
【宇佐見様】 ありがとうございます。そうですね。弊行の現在推進している、ないしその考え方のベースに行くと、正直、ポジティブインパクトファイナンスが非常に今広がりつつあるという状況がいいのか悪いのか、狭義のポジティブインパクトファイナンスと考えると、何となくラベルを張るという行為に非常に偏っている感があるなと。ただ、そこをちょっと危惧している次第です。
これは滋賀銀行員というよりも、私自身の話になりますけど、私は昨年度に滋賀銀行に入ったもので、それまでは評価会社でESGのアナリストをやっておりました。そのときの経験を基にお話ししますと、やはり中小企業にとってラベルファイナンスは非常に負担になります。これは間違いないです。外部評価を取る時点でコストになりますから、それが本当の意味で地域にインパクトをもたらすものかどうかという観点でいくと、やはり疑問があります。それは地域金融機関の行員になって非常に感じたところですので、そういった意味では、質的なインパクトを生み出す方向性、そういったものに向かって誘導していただけるような形を取っていただければ非常にありがたいなというふうに思う次第です。以上でございます。
【柳川座長】 ありがとうございます。それでは、浅利委員、手を挙げていらっしゃいますので、ここまで議論させていただきます。どうぞ浅利委員、お願いいたします。
【浅利メンバー】 すいません、スタートアップ側からちょっと発言させていただきたいなと思ったんですけど、確かに今おっしゃられていた滋賀銀行様の方向だと、多分中小企業とか既に事業をやられている方というのはすごくいいのかなと、ネガティブインパクトとポジティブインパクトというところで定性的に評価するというのはすごくいいと思うんですけど、スタートアップの場合は、定量的なところで企業価値みたいなところでリスクマネーを入れるといったところを考えた場合に、本当にその定性的な評価だけで何かABCみたいな感じでつくというので、本当に投資家様を動かせるのかなというのがすごく、結局みんなそれやりだすと、さっきのラベル張りじゃないですけど、みんなそれを単に取りに行くだけになってしまって、企業の差別化といった観点で、A社さんよりB社さんのがすごく定量的な観点というか、もっと社会にインパクトを与えるんだよみたいなところが何か出せないと、なかなか企業価値として見ていただけないんじゃないのかなというのは、ちょっと話を聞いていて思ったところです。
ただ、全体として、こういうやり方で、インパクト投資という観点で、みんながそこに思いを持ってやっていくということはすごく重要だと思うんですけど、一方、スタートアップ側からしてみると、そういうやり方だとなかなか難しいのかな、僕たちが期待しているようなインパクト投資というのは得られないのかなってちょっと思った次第です。
以上です。
【柳川座長】 ありがとうございます。今、御議論あったお二方、ラベルファイナンスの話は我々の中でもずっと大事な話になってきていると思いますので、改めてまた報告書をまとめるときにはしっかりと議論してやりたいと思います。
それでは、恐縮ですけど、時間過ぎておりますので、次の議題に移らせていただきます。宇佐見様にはここで退室されます。プレゼンテーションいただきまして、誠にありがとうございました。
【宇佐見様】 ありがとうございました。(拍手)
【柳川座長】 続きまして、報告書案係る討議を行います。報告書の一部となりますので、資料投影は控えさせていただきます。事前に送付されている報告書案をお手元に御用意ください。
それでは、報告書案について事務局より御説明いただきます。よろしくお願いいたします。
【西田サステナブルファイナンス推進室長】 本日は時間も限られておりますので、目次を中心に御説明をさせていただき、その上で、少なくとも2回にわたりコメントいただければと思っていまして、次回5月29日に会議の予定になっておりますが、まず全体版をこの会議の後にお送りできればと思いますので、一度大きなコメントを早めに頂戴をして、事務局のほうで修正をさせていただき、その修正を見ていただいた上で、可能であれば更に修正を行って次回の5月29日の会議に入っていただく形で考えております。※以下、資料について説明。
【柳川座長】 ありがとうございます。そういう訳で、今日は時間があと10分ない感じになってまいりまして、すいません、司会の不手際で議論するだけの時間ないんですけど、この後、御意見等を出していただく、あるいは次回御意見を出していただくということですけども、今日この段階で何か御指摘なさりたい点とか御意見、もしおありでしたら、手短にいただければと思います。いかがですか。どうぞ。
【水口副座長】 念のため確認なんですけど、表記が揺れていると思うんですが、「インパクト投資」と書かれている部分と、「インパクト投資等」と書いてあるのと、「投融資」と書いてある部分もあるんですが、スコープとしては、今日、滋賀銀さんにお話しいただいたような融資も含めて、全部考えている、そういうスコープの取り方でもいいんですか。
【西田サステナブルファイナンス推進室長】 ありがとうございます。まず、おっしゃるとおりだと思いますし、第1回のときに、インパクト投資とあるけど、これ融資も入るべきなんじゃないかというふうにして、その際に「投資等」というふうにするのか、「投資」としたまま融資も入りますというふうにするか、どっちにしたほうがいいでしょうかという御議論があって、必ずしも決まり切っていなかった感じかなと思いますけれども、最終段階では「投資等」とするか、「投融資」とするか、「投資」とするかというのは、御議論の上だと思いますけど、いずれにしても概念として入るものとしてやっていくと。
その場合に、投資または投融資とする場合に、投資の特性と融資の特性というのは、先ほど金井さんのお話もありましたとおり、多分、組合せとか間を取ったようなやり方というのもきっとあると思いますので、そういうものは御紹介をしていくということが重要なのかなと思っています。
用語については、多分、何点か表記が多分お気づきになる点があるかと思うんですが、まず、「インパクト」という表現についても、効果というふうに言ったり、インパクトという片仮名であったりというと、ちょっと完全に統一できていないかなと思います。
また、サステナビリティ投資というのと、サステナブルファイナンスという言葉、それからESG投資ということも、ほぼ同じような意味でここでは使っておりますけれども、若干整理し切れていないかなというふうには思っています。
ただ、いずれにしてもサステナブルファイナンスとかESG投資というのは上位概念というか、広義の概念としてあって、その中のインパクト投資という手法の1つという前提で今回議論いただいているかなと思いますので、そういう頭で記載をさせていただいています。
【水口副座長】 基本的指針も、融資も含めて基本的指針。
【西田サステナブルファイナンス推進室長】 はい。
【柳川座長】 そのほかいかがでしょうか。これやるとなかなか。
【正木メンバー】 メールか何かで意見を出せばいいですね。今日の資料について考えてきた意見についても。
【柳川座長】 そうですね。この後、多分御説明もうちょっと詳しくいただきますけど、御意見を出していただいて。
【西田サステナブルファイナンス推進室長】 メール等で頂ければと思いますが、個別にご面談でも、また、事前に水口先生からもし時間があるのであれば一部の委員の方が会うようなお時間を設定してはというお話も頂きましたので、そういうことがよろしければ設定させていただきます。
【柳川座長】 多分、文言等に関しては、ここをこうしたほうがいいんじゃないかとか、この文言はちょっと間違っているんじゃないか、その手の話はメールで書けると思うんですけど、もう少し、いろいろごちゃごちゃというか、きれいに指摘できないような御意見もいっぱいあるんだと思うんですが、それなかなかメールでは、まとめようとすると、またメールの文言だけでなかなかみんな迷うことになりがちなので、その種の話に関しては、ディスカッション、オンラインになると思いますけど、議論を事務局のほうとやっていただくということになるだろうと思います。少し論点のところはきめ細かくやらないと、多分、次回まとまらないと思っております。
なのですが、今日の段階で少し、例えば大枠とか、これは少し明らかにこの方向性で行っちゃうとまずいんじゃないかとか、何かそういうところがあれば、皆さんがいる場で御指摘いただいたほうがいいと思いますので、何かありますか。どうぞ。
【安間メンバー】 1つお願いですけど、インパクト志向金融宣言の事務局をやっているものとしては、宣言に既に49社が署名機関として参画しているので、かなりの数の金融機関が参加しているんですけど、今参加していただいていないのは、カテゴリーとしては証券会社さんと年金基金なんです。
このことにはそれなりの理由があると思うんです。1つは、デットなので、融資をされていないということと、それから、ボンドへの投資の場合には投資判断を左右するクレジットについて発行体の創出するインパクトがクレジットに影響していると考えている方はあまりいらっしゃらないからだと思います。ですから、やっぱりエクイティー投資が課題です。上場株のインパクト投資といったところになってきますと、これはどうしてもインパクトと企業価値との関係ってどうなっているのかという話が重要になります。これは太田さんからもいろいろ分析していただいていると思うんですが、この辺、指針案の最後の要件4のところとかでも出てくる話なんですが、この問題について分かりやすいメッセージを積極的でない金融機関に対して出すということが、この報告書の指針の中で出していくというのがとても重要なのかなと感じます。というのも、証券会社と年金基金以外の金融機関の方々は、何だかんだ言って、これからはインパクト志向の金融をやっていく必要があるのだということをかなり理解されていていると思うんですけれども、そうでない方が結構いらっしゃるというのも事実なので、裾野の拡大というお話が出てきましたけれども、そういった点を意識して施策を進めていく必要があるのかなというふうに感じています。
【吉田メンバー】 私も今の安間さんと同じ問題認識なんですけど、融資というふうに広げてしまうと、メッセージとして弱くなる可能性もちょっとあるかなという気もしていまして、デットとエクイティーの間にあるようなものを、例えばさっきのKPIとかエンゲージメントというところはあってもいいのかなと思うんですけど、一般的な融資までやると、例えば融資全体としてインパクトを出しているみたいな話の認識の人たちもいなくはないので、もう少しせっかくこういう議論をやる場合は、さっき言った世の中を変えていこうとする意図だったりとか、エクイティのところに着眼してスタートアップに対して、企業価値を高めるようなアプローチをするとか、そのあたりのまさに4のところのトランスフォーメーションというところの部分かなという気もするんですけど、そこにふさわしい金融のプロダクトは何なのかということもある程度メッセージとして出していくと、伝わりやすいかなというふうに思いました。このあたり、ぜひ皆さんの御意見もいただきながらというふうに私も思いました。
以上です。
【柳川座長】 どうぞ。
【高塚メンバー】 ありがとうございます。特に指針を策定されるに当たって、多様なステークホルダーを考慮されていると思いますが、ただ、総花的な指針となってしまうと、世の中には英語のものも含めガイドラインの類いが非常にたくさんも出ていますので、目的をある程度絞る必要があるのかなと考えます。
特に、金融庁の皆さんの下でこれを出されるということを考慮するならば、資金提供者で、特に民間の金融機関が、この指針を片手に次のアクションを取っていくということが目的として意識されるといいのかなと思っていて、今回の検討会をきれいにまとめるというのも大事だと思いますが、これを踏まえて次に何するかというところをぜひ意識したいという考えが1点目です。
加えてもう1点、今後の課題のところで、インフラの中に入っているのかもしれませんが、人材育成の話はぜひ明確に入れていただけたらいいかなと思っております。
更に、人材の中にも大きく2つあるかと思います。1つは経営層のマインドセットを変える。ANRIさんの話にもあったように、強いリーダーシップで金融機関は変わっていくという話です。あともう1つは、現場の実務家をどう育成するかという話です。人材育成は大きな課題なので、インフラの中に入っているかもしれませんが、明文化された形でぜひ取り上げていただきたいと希望しております。
【柳川座長】 ありがとうございます。最初に御指摘があった点はとても大事なところで、我々いろんな概念があって、概念整理を一生懸命やっている部分が結構あるんですけど、それはそれで大事なんですけど、恐らくこれが外へ出ていったときに、金融庁がこういう指針を出したということがかなりいろんな意味でインパクトを与えるので、そういう意味で、何を狙って我々が指針を出すかというのはとても大事なところだと思います。
まだ、恐らく皆さん、それぞれそこは御意見違うと思うんですけれども、そこはせっかく時間を使って議論しているので、これで世の中大きく動いていってほしいと思います。そこに我々として何かできることがあればと思います。
【水口副座長】 アセットクラスに応じて、性質の違う部分があります。したがって、明確なメッセージを出そうと思うと、アセットクラスを限定した基本指針みたいなものを考える。一方で、金融庁がこの指針、こういうものを出すときに、一定のアセットクラスだけに限定することが本当にいいのかどうかという問題もあって、幅広なアセットクラスでいろんな形でインパクトを追求していく必要がありますねということと両方あるんだと思うんですね。
そこのメッセージ性というのは非常に難しいなと思いますけども、それをどうやって決めたら、どうやって私たちのスタンスを決めていくのがよいのかというのが課題だと思うんですけど。
【柳川座長】 僕が全部申し上げることでもないし、事務局の皆さんの御意見もあると思うんですけど、恐らくいろんなステークホルダーの方々いらっしゃるんで、それぞれに対してメッセージがあったほうがいいと思うので、1個これだけって決める必要もないんだと思うんです。
そこは例えばグラデーションをつけて、すごくフォーカスを当てて書いている部分と、そこだけじゃなくて、もう少し幅広のところはもう少し緩く書いてあるとか、書きぶりで大分対応できる部分はあろうかと思います。
ただ、そうはいっても、じゃ、どのあたりまで我々フォーカスするのと。さっきおっしゃったように、じゃ、地域金融全部含めるような話にするのというと、多分ちょっと広過ぎるだろうという御意見出てくるでしょうし、物すごく狭いところだけだと、やっぱりという話で、1つは、全体として皆さんの御意見の中でどのレベルにフォーカスするかというような御意見を集約していく必要があるのと、その指針で出したときには恐らく、1段階でフォーカスだけではなくて、多段階的なフォーカスの記述の在り方というのは工夫次第であり得るかなというぐらいのところでしょうか。
あんまり僕がこの段階でしゃべるあれでもないと思うので、皆さんのお考え、おありでしたら。
【西田サステナブルファイナンス推進室長】 はい。濃淡をはっきりつけるべきという点、また、今日皆様からご意見頂きましたし、また、濃淡をしっかりつけていくことが、読み手の方にとっても分かりやすいということはあると思いました。
一方、ここまでが対象範囲でほかは一切含まれませんという言い方までできるかというと、これまでの御議論から必ずしもそういうことでもないと思いますので、全体としては、対象としてはいろんなものがあるが、特にこういう分野・人にはこういうことが期待される等ということを分かりやすく伝える記述をすべき、ということかと今理解しています。
【柳川座長】 お時間も大分来ていますので、少し物を見ていただいて、具体的に、これじゃとか、もっととかという話をしていただくのが多分いいのかなと思います。よろしいですか。多分、これ議論し出すと終わらなくなってしまうと思いますので。
それでは、ここまでさせていただきまして、あと、事務局のほうから最後細工をどのようにしていくか含めて、連絡をお願いいたします。
【西田サステナブルファイナンス推進室長】 ありがとうございました。今のコメントも踏まえて、できるだけ早く追記をさせていただきますので、それをお読みいただいて、メール等でも結構ですし、もちろん個別でも結構ですし、先ほど柳川先生からもお話ありましたけれども、特に総論的なこととかイニシアルリアクションみたいなことはなかなかメールでも書きづらいことがあるかもしれませんので、是非ご意見を頂き、その上で、その意見を修正させたものをまた送付をさせていただきますので、その上で5月29日の会議に臨ませて頂きたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【柳川座長】 それでは、少し時間超過して恐縮でございます。申し訳ございませんでした。それでは、以上をもちまして本日の会議を終了させていただきます。どうも皆さん御参加ありがとうございました。
―― 了 ――
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