「インパクト投資等に関する検討会」(第8回)議事録

  1.  日時: 令和5年5月29日(月曜日)14時00分~16時00分
 
【柳川座長】  それでは、ただいまよりインパクト投資等に関する検討会第8回会合を開催いたします。
 
 皆様、御多忙のところを御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
 
 本日は、鈴木政務官においでいただいておりますので、御挨拶をいただきたいと思います。御挨拶の際にはカメラ撮影を行う予定でございますので、よろしくお願いいたします。
 
 それでは、鈴木政務官、よろしくお願いいたします。
 
【鈴木大臣政務官】  担当政務官の鈴木英敬でございます。昨年の10月にこの検討会を設置しましてから、計7回にわたりまして、柳川座長はじめ委員の皆さん、またオブザーバーの皆さんに、活発な御議論をいただきましたこと、まずもって御礼申し上げます。ありがとうございます。
 
 実は私、新しい資本主義の担当政務官もやっているんですが、岸田政権が抱える新しい資本主義は、投資の成長と分配の好循環とかいろんな分野、考え方ありますけれども、それに加え、中でも取りわけ重要な、基本的な理念として、社会課題の解決と持続的成長を両立させると、これが新しい資本主義の中において大変重要でありまして、そういう意味ではこのインパクト投資はど真ん中にあるものであるというふうに考えております。したがいまして、今後、新しい資本主義を掲げて進めていく中で、ど真ん中となっていくインパクト投資の推進について、引き続き、皆様の御指導、御支援いただきながら取組を進めていきたいというふうに思っております。
 
 また、併せまして、私、スタートアップの担当の大臣政務官もやっております。このインパクト投資の推進に当たりましては、新しい発想でイノベーションを起こしていく、このスタートアップの存在も欠かせません。5か年計画の推進、また今後の骨太の方針とか様々な対策においても、このインパクト投資の推進をしっかりと位置づけて取り組んでいきたいというふうに考えております。
 
 本日は、報告書の取りまとめに向けまして、コンソーシアムの設置を含む施策についても御議論いただくと承知をしております。提言をまとめていただいた際には、金融庁、また関係省庁連携して、しっかりとその実施に向けて取り組んでまいりたいというふうに考えておりますので、引き続きの先生方の御指導いただきたいと思いますし、本日もぜひ活発な議論をお願いしたいと思います。
 
 以上です。
 
【柳川座長】  鈴木政務官、ありがとうございました。
 
 カメラ撮影はここまでとさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 
 それでは、早速ですけれども、本日は報告書案について御議論いただきます。前回の議論や書面でのコメントを踏まえて事務局で修文いただきましたので、事務局から、まず、御説明をお願いいたします。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  ありがとうございます。お手元に資料を配付させていただいておりが、まず、何度か委員の皆様にコメントをいただきまして、ありがとうございます。このインパクト投資の検討会は、現時点ではお時間をいただいているのがパブリックコメントの前は今日が最後となっておりますので、まずは取りまとめに向けて進めていきたいと思っておりまして、事前にもいただいたコメントは基本的には全て反映させていただいたつもりですが、その点も含めてご指摘頂ければと思います。※以下、資料に沿って説明。
 
【柳川座長】  ありがとうございました。それでは、議論に移りたいと思います。御質問や御意見のある方は、いつものように名札を立てていただくか、オンラインの方はWebexの挙手機能にてお知らせください。よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。
 
【水口副座長】  どこからでもいいということですか。
 
【柳川座長】  はい、どうぞ、水口委員。
 
【水口副座長】  御説明ありがとうございました。まず、関係者の皆様の御尽力に感謝をしたいと思います。大変短期間でよく整理されたというふうに考えております。
 
 非常によく整理していただいていると思うのですが、その中で1点、今、気がついたことということで、コメントをさせていただきたいと思います。それは4つの要件の書きぶりについてなんですけども、国際的にはGIINなどの要件がありまして、御案内のとおり、GIINでは、インテンショナリティ、それからファイナンシャルリターン、測定と報告、多様なアセットクラスという4つが要件になっています。これに対して、今回の基本指針は、インテンション、それから測定、追加性のところに、それぞれインパクトだけではなくて収益性ということを追加して書いていると、こういう特徴があります。投資がリターンを追求するのは当たり前のことですので、実質的には内容変わっていないというふうにも理解できるのかと思っておりますが、あえてGIINはファイナンシャルリターンを別出しして書いているところを、インテンションやアディショナリティにまで収益性ということを書いているところが、実は今になって気になりました。当初、投資がリターンを追求するは当然のことなので、本質的に変わっていないのではないかと思いまして、そのまま通り過ぎておりまして、そのため、事前にコメントもしておりませんでした。一方、私のコメントはいろいろ採用していただきまして、その点は感謝申し上げます。今頃になってのコメントで大変恐縮なのですが、よく読んでみますと、GIINに比べると、収益性の部分がやや強調されているなという気がいたします。特に、収益性に対するIMMや追加性が求められるというのは、やや難しいのかなという感じがいたしました。
 
 特に、はじめにの2ページ目のところに、このように書いていただいております。私、このとおりだと思うんですけど、社会や環境面での改善効果を持つ事業は、収益性、収益化までの過程や時間軸が様々であると。そして、社会・環境的効果を持つが、収益化に相応の時間を有する事業や企業がなかなか支援を受けることが難しい、特に例えば水素還元製鉄とか、なかなか短期的には実現しないかもしれないけど、長期的な観点から投資をすべきだと、こういうものにきちんと対応していくところにインパクト投資の意義があるとすると、ややこの収益性、この要件1、要件2、要件3のほうが、読みようによっては、短期的で確実性のある収益を求めているかのように読めてしまうというおそれがあるのではないか。そういうつもりではないんだと思いますし、実は同じ心配が多分されているので、先ほど御説明いただきましたように、要件2のところで、追加で、時間軸は様々なんですよという注意書きが書かれているのですけれども、そうはいいましても、この要件そのものの書きぶりに、収益性の書き方がやや、短期的な収益がないものはインパクト投資と呼ばないのではないかという誤解を与えかねませんので、ここ、少し注意をして、例えば長期的な視点からの収益性というような形で、少し補足をつけてもよいのかなということを、今、考えたということです。
 
 私個人の意見ですので、ほかの委員の先生方の御意見もぜひ伺いたいなと思いまして、発言させていただきました。
 
 以上です。
 
【柳川座長】  ありがとうございます。ある意味根幹に関わることですので、少し御議論いただいたほうがいいかと思いますけれども、今の点に関連して御意見があればお出しいただければと思いますが。では、安間委員、どうぞ。手が挙がっている渋澤委員は、この件と少し別の意見ということでよろしいですか。
 
 それでは安間委員、お願いいたします。
 
【安間メンバー】  短くコメントします。今の水口先生の御意見については、基本的にその通りで、言われてみればそうですねということを感じましたので、私などが考えるには、例えば要件1のところに収益性を残すのはいいんですけれども、ほかの要件のところで強調しなくてもよいと思います。また、要件1のところでも、先ほど先生からお話があったような長期的視点からのリターンの確保というような言葉を入れていただくと、バランスが取れるかなというふうに感じました。
 
【柳川座長】  そのほか、御意見いかがでしょうか。では、ちょっとここは少し、多分かなり書きぶりが変わってくるので、もう少し皆さん考えていただくことにして、ちょっと今すぐ結論を出さずに先に進みたいと思います。
 
 それでは、お待たせしました、渋澤委員、お願いいたします。
 
【渋澤メンバー】  ありがとうございます。この報告書をまとめていただいた事務局、もちろん委員長、そして議論に参加者している委員の皆さん、本当にありがとうございます。インパクトは10年以上フォローしていて、この1年間、動きが本当に活発になってきたということを肌で感じております。なぜこの1年間というと、それは先ほど鈴木政務官からも御指摘いただきましたが、去年の政府の骨太方針にインパクトという概念がしっかり表現されていて、特に海外からも、特にインパクトコミュニティーから、日本政府の総合政策の中にインパクトと概念が入ったことにすごく関心が高まったんです。
 
 今回のG7では、グローバルヘルス、国際保健、という文脈の中ですけれども、インパクト投資を促す「トリプルアイフォーグローバルヘルス」という官民連携、つまり民間の資金をインパクト投資を通じてグローバルヘルス分野へと動かす取り組みが、G7首脳の宣言の中で承認されました。これも、また非常にインパクトコミュニティーの中では関心が高まっています。欧米においてインパクトの議論は、私の感触ですと、8割以上が、E(環境)のところだと思います。ただグローバルヘルスというのはSのところでありまして、グローバルヘルスは日本が20年以上取り組んでいた外交戦略でもあります。そこが、Sのところのインパクトの表現の突破口になる可能性がある。欧米もそこに聞く耳も出てきているという感じがしていますので、とても面白いタイミングに入ってきていると個人的には思っております。
 
 先ほどトリプルⅠは承認されたということで、打上げという意味では、9月の国連のハイレベルサミットに向けてそれをまとめたい意向があります。ほかのG7の各国も含めての調整もありますし、そこには先ほどGIINも参画にありそうですが、ITF(インパクトタスクフォース)というイギリスがG7サミット議長国であった2021年に立ち上がったグループがあります。イギリスは2013年のG7議長国のときにインパクトという概念を推しています。ITFの事務局はGSGですが、そことも連携しながらグローバルヘルスにおけるインパクト投資のロジックモデルをつくり上げるというところから始まりそうです。
 
 そういう意味では、グローバルヘルスという分野になりますけれども、日本国内だけではなく、海外で一緒にそこら辺のフレームワークをつくっていく動きが始まります。この検討会の議論というのは、もちろん海外を視野に入れていると思いますが、基本的に国内目線でやっているところがあると思います。世界的な動きがある中、ぜひこの報告書の概要だけでも良いと思いますが、なるべく早く、つまり、インパクトに関していろんな作業が日本が先導して夏に起こりますので、金融庁のほうでも報告書をまとめているということを英語で発信していきたいなと思っています。なるべく早く、半年後とかではなくて、モメンタムを高めるためにも大事です。
 
 また金融庁だけじゃなくて経済産業省のJスタートアップの中でインパクスタートアップという取組を始めるという御連絡もいただいています。そういう意味では、海外から見て、日本というのは金融庁も経済産業省もいろんなところでインパクトを取り組もうとしているということを日本から海外に発信することはとても大切です。特に、日本は年末までG7議長国でありますので、ぜひ、金融庁からも発信していただきたいなと思っております。
 
 別件になりますが、今日の朝に日経新聞でこの報告書が出るということが既に一面記事になっていてSNSでもいろんなコメントが上がっていました。その中で、やや冷めたコメントもあり、なるほどと思いました。それは、インパクト評価は誰がやっているかということです。コメントの書きぶりですとインパクト評価の主体性は政府が決めているんじゃないのという、ちょっと勘違いしていると思いました。この報告書の議論の中でもガイドラインが必要という話があり、もちろん必要なんですけども、そのガイドラインというものが主張されてしまうと、ガイドラインがないとインパクト投資ができませんというメッセージが送られるかもしれない。これはちょっと避けたほうがいいんじゃないのかなと思います。私としては、誰がそのインパクト評価するんですか、これは明らかで、それは投資されている会社です。スタートアップであろうが、大企業であろうがです。会社自身が自分たちのインパクトをきちんと評価し、そのインパクトの評価が、投資家及び他のステークホルダーと合致している。ここが大事だと思います。投資家が判断して、インパクトかインパクトじゃないかというESGっぽい投資の延長線だけではなくて、明らかに投資先、企業が主体性を持って、このインパクトを意図(intent)している。その意図があるということでの評価、目標設定、そして、それに対して期待する投資家という構図がすごく大事なポイントじゃないかなと思います。繰り返しになりますが、ガイドラインという話だけになりますと、企業側も投資側も分かりにくいから政府にガイドライン決めてくださいというメッセージを世間に発信することになります。もちろんフレームワークは必要です。ただメッセージ性を意識しないと、いろいろなことを進めようという中でネガティブな印象を与えてしまうというのも残念だなと思っております。
 
 先ほど水口先生の御指摘、上手く整理できないんですけども、やはりインパクト投資といいながらも、これはトレードオフ。トレードオンという言葉を使いながらも、実践しようとすると、やはり、利益が大事というところは当然ながら度外視することができません。何となくインパクトが後回しになる傾向がある感じがしますので、水口先生の御指摘に答えているかどうか分かりませんが、きちんとしたインパクト投資をやろうとしている方々でもあったとしても、やはり大きな壁になっている。なかなかすぐに乗り越えることが難しい感じがしていますが、チャレンジし続けるしかないのかなと思います。
 
 以上です。
 
【柳川座長】  ガイドラインを金融庁が出すことのメリット・デメリットはあるという話は研究会で前から出ていて、後押しをする反面、やや政府がコントロールするかという誤解を招きやすいだろうという話はあったと思うんですけど、今の御発言は、特に修文をどうこうしてくれとかいう話ではないという理解でよろしいですか。何かこの辺を変えてくれという。
 
【渋澤メンバー】  特に修文という細かいところの文言より、発表するときに気を付けるということだと思います。政府がガイドラインを決めないと、このインパクト投資が進みませんというものでなく、色々な動きがある中、政府が取り組むことによって、よりインパクト投資を促進しますというメッセージが伝わればいいなと思います。
 
【柳川座長】  伝え方のところの工夫をということですか。
 
【渋澤メンバー】  プレスリリースで冒頭コメントみたいなところで表現するとか。
 
【柳川座長】  ありがとうございます。公表に関しては、指針はパブリックコメントにかけないわけには恐らくいかないんですけど、報告書自体は早めに出せるという理解でよろしいんですか。その辺り、ちょっと事務局のお考えを。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  基本的指針は、文脈等も理解し易いように、パブコメに報告書と一緒に出させていただくということだと思っております。英語も同様に、この文書全体を訳して見ていただく、また、概要についても英語化する前提でおります。時期はできるだけ早く、ただ、今日議論いただいた内容を修正して、それを日本語として反映・確定させて、その後できるだけ速やか翻訳という工程で考えております。
 
【柳川座長】  ありがとうございます。それでは、手を挙げていただきましたので、まず、金井委員、お願いいたします。
 
【金井メンバー】  大変いいレポートをまとめていただいてありがとうございます。大分大変だっただろうなと思って読んでいました。
 
 その上で、意見と、それから修文の案を1つだけ申し上げると、意見としては、インパクト投資は実際問題としてかなり黎明期にあるということで、特にインパクト投資がよく機能したエリアというのがスタートアップであったということもあって、特に海外なんかでは、この分野で広がっていったというところがあります。
 
 ただ、それが徐々に、例えば上場株式投資であるとか、それから一般の融資というところに移ってきているということは、もしかしたら本丸はそちらに移る可能性もあるわけですよね。全ての企業がインパクトを志向する経営を行うということが実は最終的な目的であって、その過程にスタートアップがあるというふうに考えたときに、ここではスタートアップにちょっととらわれ過ぎみたいな感じの印象が若干受けるところがあるので、そのニュアンスを、発信の仕方としては考えたほうがいいだろうなというふうに思います。
 
 あと1点、修文です。16ページの投資対象については、限定しない趣旨になっているとは思うんですが、業種、規模、上場云々は企業のイメージで、その後の地域が少し意味が異なり、前の例示と比べると違和感があるというところと、もう一つ、これはぜひ入れていただきたいなと思うのが、リアルアセットですね。リアルアセットの中の不動産とか、インフラとか、あるいは船舶とか、そういったものにインパクトのかなり効きがいいエリアです。あんまりこの領域のインパクト投資が今は拡大していないので取り入れにくいかもしれませんが、ぜひ事例に加えていただくと、非常にいいかなと思っています。
 
 以上です。
 
【柳川座長】  ありがとうございます。どうしましょう、少し聞いてから。それでは、そこは賜りましたので、少し聞いてからまた事務局の対応を考えたいと思います。
 
 続いて、高塚委員、お願いいたします。
 
【高塚メンバー】  よろしくお願いします。こちらの書類のお取りまとめ、本当にありがとうございました。
 
 感想も交えて、3点ほどお伝えさせていただければというふうに思いました。
 
 まず1点目です。今回、インパクト投資を定義したり意味合いを明確化したりしている中で、特に好循環、Positive feedback loopと書かれている点につき、今まで私が拝見してきた中でも踏み込んだ表現だなという感想を持っております。特に社会的、環境的効果と事業が両立するという言い方はあちこちで見ますが、相互に補完・強化するという表現は特筆すべき点と考えます。
 
マーケットに近い方ほど、収益性を説明する要素の1つとしてインパクトを用いている例が見られる中で、インパクトと収益とが対等な形で相互に補完・強化すると書かれている。これが今回のペーパーの意図を含むものだとしますと、非常に積極的な踏み込みだなとの感想を持っています。個人的にはウェルカムな表現であると捉えており、この冒頭の踏み込み方が、最後のコンソーシアムからの成果物をしていくに当たり、今年・来年・再来年と御一緒していけたらと思いました。これが1点目でございます。
 
 2点目に関しましては、アディショナリティの箇所でございまして、要件2のところです。金井さんも言及されましたが、スタートアップを意識した書き方になっている中で、例えば同じ株式投資でも、上場株としてセカンダリーで売買される場面では資金的なアディショナリティは投資先にとってはないと考えられると思います。金銭面でない追加的効果を記載する箇所をもう少し際立たせ、今のような簡便な例の列挙に留まらず、上場株も含んだ場合のインパクト投資のアディショナリティというのはどういうことだろうかということにつき、皆さんで共通認識を持てるように、この先明確化・言語化を進めていければなと思いました。背景には、日本の多くのスタートアップがIPOを目指されている中で、上場後につながっていくような未上場でのインパクト投資にならないとその場しのぎのIMMになってしまうという課題意識から、アディショナリティを含むIMMにおいて、上場株になった段階ではどういうことが起きるかというのを、よりクリアな共通認識を持ちたいということがあります。
 
 3点目が、一番最後、コンソーシアムにてデータをつくるというところです。ここに関しては、私も様々な方々と話をさせていただいていますが、インパクトの結果を表す、測定結果を可視化するということは、事業においては過去の実績を示すものであって、先行指標ではなくて遅行指標ではなかろうかというような話を、ちょうど林さん等とも最近お話をしていたところです。そういったことを踏まえ、事業会社がインパクトの指標として備えるべきものというのは、実現した実績のインパクトに加え、その先の成長性の余白の部分、将来の成長性をインパクトでどう示していくかというようなことも、視野として必要ではないかと思う次第で、成長可能性を含む指標の表し方を検討すべきといったニュアンスをもう少し明確に出せるとうれしいと考えます。
 
 以上、3点になります。よろしくお願いします。
 
【柳川座長】  ありがとうございます。それでは、正木委員、お願いします。
 
【正木メンバー】  多岐にわたる議論をまとめられました柳川座長、水口副座長、金融庁の皆様、お疲れさまでした。日本の金融庁がインパクト投資について基本的な考え方とプロセス等の共通理解の醸成を目指す基本的指針を示し、具体的な議論をする対話の場、コンソーシアムを設け、次へつなげることにしたのは、本当に大きな一歩だと思います。
 
 最初の水口副座長の問いかけについて、反射的に「確かに、余計なものまで特定・測定・管理しないほうがいいのではないか」と、ちょっと乗じてしまいたくもなりました。しかし、全体のトーンを考えてみると、私は、高塚さんのご意見に賛成で、今回の報告書のみそは、7ページの表現で言えば、「社会・環境課題の解決は、収益性の実現と両立する、更には相乗効果をもたらす関係となり得る」というところだと思います。要件の3の水口副座長の指摘の部分でいえば、22ページ下から5行目のアンダーライン部分で「収益性・事業性に係る定量的な測定値を設定し、事業の拡大によって、効果もまた順次拡大していく」と、収益性と社会的効果の2つが絡まり合っていると指摘している。まさに、両立して相乗効果を持っていると捉えているところが、今回のみそではないか。経団連としても、これまで、「企業のサステナブルな社会づくりに向けた価値創造ストーリーが大事だ」と主張し、「それをポジティブに評価して投融資の材料としてもらえるインパクト投資という考え方がある」ということを事業会社に伝えて、「パーパス起点の価値創造ストーリーを投資家に説明し、そのために必要なソーシャルインパクトを意識したKPIの設定をしてください」と言ってきました。投資家サイドにも「こうした企業との積極的な対話を通じて、インパクト投資を活性化していきましょう」と、これからも伝えていくつもりです。したがって、その「収益性」の記述を落とすというよりも、「効果」と「収益性」は両方一体なのだという部分は、今回の報告書としてそのまま残していいのではないかと思います。
 
 今、PBRの話題などでも、東証の要請を示しながら、すぐに、「金もうけ」と「社会にとっていいこと」が別々になって、「PBRの数値を上げるために自社株を買えということですか」といった話になりがちですが、「そうじゃないんです。ソーシャルインパクトを持った中長期に良い事業を展開すれば、ちゃんと数値が上がっていくんです」ということが本来、伝えたいことだと思います。そうした意味では、収益性、事業性の定量的な特定・測定・管理と、ソーシャルインパクトの効果の特定・測定・管理とが絡まり合った、いい創造ストーリーができるのが理想だと思いました。
 
 本報告書については、市中協議がなされている間に、経団連としても改めて、コンソーシアムへの期待といった趣旨でコメントを出したいと検討しておりますので、ぜひ一緒に機運を盛り上げてまいりたいと思います。一緒に頑張ります。よろしくお願いいたします。
 
【柳川座長】  ありがとうございます。それでは、安間委員。
 
【安間メンバー】  ありがとうございます。事務局の方に大変御尽力いただきまして、どうもありがとうございます。幾つかコメント申し上げます。
 
 1つは、先ほど渋澤委員から出たガイドラインの話です。これは、既に既存のフレームワークだとか国際的な基準に基づいて、インパクト投資を盛んにやっておられる日本の投資家ですとか金融機関がたくさんございますので、このガイドラインによらなくても、指針によらずとも、既存のフレームワークで皆さん取り組んで良い、というメッセージをどこかに入れることによって、この指針が強制ではないという意味で、その重みが緩和されると思います。それが1点です。
 
 それから2番目は、インテンショナリティのところですけれども、日本の機関投資家さん、特に年金基金をはじめとする機関投資家さんで、純粋なインパクトに対するインテンショナリティを持っていらっしゃらないところが多くあります。これは、やはり年金加入者との間でのエンゲージメントが不足しているから、本来加入者はインパクト創出を望んでいるのかもしれないですけれども、年金基金運用者としてはインテンショナリティがないということがございますので、この辺りは、これは例えば国際的には、例のPRIとフレッシュフィールズでつくったレポートの中で触れられている、Instrumental IFSI、手段的なインパクト投資に対する考え方というものに言及することによって、受託者責任の呪縛にとらわれていらっしゃる機関投資家の皆様の肩の荷を下ろすような工夫があってもいいのではないかというふうに、2番目に思います。
 
 それから3点目は、既に高塚さんとか正木さんから御指摘いただいている、このポジティブフィードバックループという言葉に対する肯定的な意見、これは私もまさに賛同するところですけれども、これと逆の裏の面を申し上げておきますと、IMM、インパクトメジャメントアンドマネジメントをやったからといって、それが直ちに収益性だとか企業価値の向上に結びつかないという場合もあると思うんです。ですから、文書においても、「十分になり得るもの」でありということで、必ずそうなるということをドラフトレポートで言っているわけでもないわけです。これは、これは十分私のコメントを入れていただいたのですが、P24のところで、要するにイノベーションがなきゃ駄目だとか、あるいはイノベーションがあっても実装できなければ駄目だとか、あるいはイノベーションが実装できていても、最終的に顧客のwillingness to pay が高まってこないと、それが収益に反映していかないとか、そういう面がありますので、ここはやみくもにインパクトを求めて頑張ればリターンが出るものでもないという説明は、報告書のどこかに入れておくことによって、インパクト投資に懐疑的な方の意見とのバランスが取れるのではないかと私は考えます。
 
 4点目は、コンソーシアムですけれども、これは何度か、私、コメントさせてはいただいているのですけれども、このインパクト投資が社会課題解決にうまく機能するものもあれば、課題によっては民間のインパクト投資だけでは十分に解決できないものもたくさんあると思いますので、この重要課題の特定、特にインパクト投資で取り組むべき分野の特定というものを、ある程度官民で協議しながら、このコンソーシアムでやっていくということは重要なんじゃないかと思います。これはなぜかというと、先ほどから言っているように、機関投資家の中には、インパクト投資をやってもいいけど、リターンがあればやってもいいけど、一体何をインパクト求めればいいのか分からないという方が結構いらっしゃいます。ですから、このインパクトの、1から始める機関投資家さんが何に取り組めばいいのかというガイドラインと、コンソーシアムの1つの重要な課題として設定するということがあるべきだと思います。
 
 それから5点目、最後ですが、上場株式についての言及が皆さまからございましたけれども、私もまさにそのとおりだと思っていまして、最終的には、最も進んだ企業価値評価の場である上場株式市場において、インパクト投資が認められる、あるいは盛んになることが、日本の資本市場、金融市場全体に大きなインパクトをもたらしますので、そこの点も、改めて強調していたほうがいいのではないか。そういう意味でインパクトIPOについて、脚注で触れていただいていますけれども、あの辺りも少し強化していただければありがたいなと思います。
 
 私からのコメントは以上です。
 
【柳川座長】  ちょっと確認です。今、4番目のコメントは、コンソーシアムの中でのイシューを公的な主体がリードするということを書き込むべきだということですか。
 
【安間メンバー】  これは、官民連携でこのコンソーシアムの中で、官側もうこういう課題解決を民間にやってほしいということもあるかもしれませんが、民間側のほうでも、これだったらインパクト投資でやっていけそうだというような分野を双方で合意できたらいいなといいますか。
 
【柳川座長】  課題を官の側で出すというのは、今の書きぶりとは大分意味合いが違うと思うんですけど、書きぶりを変えたほうがいいということまでの御発言でしょうか。
 
【安間メンバー】  そうです。
 
【柳川座長】  そうすると、ここの書きぶりを官がリードするという形で書くという。
 
【安間メンバー】  官がリードするというよりは、官と民で一緒に。
 
【柳川座長】  それは現状書かれていますよね。これに、具体的にどう。
 
【安間メンバー】  すみませんが、私が見落としているのかもしれない。
 
【柳川座長】  26ページ、27ページあたりのところに関する修文の御提案かなと思ったので。特に修文の御提案でなければ、そういう御意見だということで承りますけど、もし修文の御意見であれば、少し書きぶりを変える御提案かなと思って。
 
【安間メンバー】  では、後ほど改めて確認します。
 
【柳川座長】  もし、こういうふうに変えてほしいことがあれば。
 
【安間メンバー】  分かりました。
 
【柳川座長】  コンソーシアムの中身に関しては、具体的にまたコンソーシアムが進んだ中で変わっていくと思いますので、そこはちょっとお考えいただければ。
 
 それでは、お待たせしました、林委員、お願いいたします。
 
【林メンバー】  ご指名ありがとうございます。林です。事務局の皆様、報告書の取りまとめありがとうございました。前回の第7回から今回までの間に事前にコメントも提出させていただいて、コミュニケーションを十分にする機会を設けていただいておりますので、今回この場で報告書の修正に関するコメントは私からは特にありませんけれども、今後に向けて1点だけ、手短にコメントというかお願いをさせていただければなというふうに思います。
 
 このインパクト投資というものについては、理想は非常に高いわけなんですけれども、投資がなかった場合と比べて、あるいはもうちょっと踏み込めば、従来型の普通の投資と比べてシグニフィカントな追加的効果を生み出すことに成功した、それも市場や顧客を大きく変えるようなイノベーションを実際に生み出すことに成功したインパクト投資の実例というのは、まだまだ限定的というのが現状ではないかなというふうに思います。
 
 今回提案されている4つの基本的要件というのは、そうした理想をしっかり目指しましょうというような内容になっているのかなというふうに理解をしているんですけれども、その理想を実現するための具体的な方法とかコツとかノウハウみたいなものは、金井さんが黎明期とおっしゃいましたけれども、まだまだ手探りで、知識という形で体系化されるようなところには、正直まだ全然至っていないんじゃないかなというふうに思っております。
 
 これは、報告書で設置が提案されているコンソーシアムに期待される役割ということになるのかなと思うんですけれども、このインパクト投資が実際にうまくいくための知識の体系化というのが極めて重要になるかなというふうに思います。知識の体系化がないと、理想は高いけれども、現実は何となくもやもやしているよねという感じが続いてしまうところがあるんじゃないかなというふうに思いますので、先ほど高塚さんから指標の在り方みたいなお話もありましたけれども、金融庁さんには、今後この知識の体系化のところについては、支援に力を入れていただけるとありがたいのかなと思いますので、ここのところをぜひよろしくお願いしたいなというふうに思います。
 
 以上です。ありがとうございます。
 
【柳川座長】  ありがとうございます。続いて、太田委員、お願いいたします。
 
【太田メンバー】  まず、膨大なこの報告書をまとめていただきありがとうございます。私、ゴールデンウイーク明けに1回催促してしまったような気がするんですが、しっかりと読ませていただきました。ありがとうございます。
 
 私は2点ありまして、1つはこの要件3です。ずっと唱えてきましたが、先ほど渋澤さんから、インパクトの評価をするのは事業体が主体であるべきというお話ありましたが、全くそのとおりだと思います。ちょっとこの要件3の書きぶりは、投資家もしくは金融機関主導で指標を決めた上で、それを事業会社がやる、やりなさいみたいに見えるので、もう少し、事業会社も自らの事業性を考えた上で指標を意識して、一緒に考えて継続的にやっていくというような流れにしたほうがいいかなと思いました。
 
 私の場合、上場企業を向けにいろんな経営管理指標のコンサルをすることが多いんですが、まずは、企業側が、どういう会社になりたいか、どういう指標をKPIにして投資家と対話したいかということを決めて、それを軸にやっていくというのが普通の流れです。したがって、このインパクト投資、スタートアップについても上場企業と同様にやるのがいいかなと思います。
 
 2点目は、やっぱりスタートアップ寄りの内容になっているので、上場企業についてもしっかりインパクトを意識して経営していくんだよという内容にもう少し軸を寄せたほうがいいかなと思います。特にESGとの違いを何回か書かれていて、一番よかったのはネガティブなインパクトをポジティブなインパクトでは相殺しないと、こう明記しているところはすごくいいなと思って読んでいました。
 
 この会合に入る前にESGの評価機関の行動規範のほうに正木さんと一緒に出ていたんですけれども、あの流れでこっちに来ると本当にESGとインパクトは違うなということを痛感してます。ESGの世界で、ずっと日本企業はリスク管理を頑張ってきたのはすばらしいと思うんですけど、今こそインパクトのほうに目を向けて、プライム上場企業の半分がPBR一倍割れだという現実にどう立ち向かえばいいか、そのためには、こういうポジティブインパクトをしっかりと可視化して世の中に訴えて、あらゆるステークホルダーと対話していくというところをもう少し強調すると、この報告書も日本企業の未来がより希望にあふれるものになるんじゃないかなと思って読んでいました。
 
 以上になります。
 
【柳川座長】  ありがとうございます。野村委員、お願いいたします。
 
【野村メンバー】  アセットオーナーからの感想を申し上げます。事務局の皆さん、取りまとめ、本当にありがとうございました。報告書案は非常にまとまった良いものになったと思います。
 
 私は検討会パート2での継続を提案いたしましたが、報告書案ではコンソーシアムという非常に格式ある形で議論継続していく点、期待するところが非常に大きいと思いました。
 
 かんぽ生命では、上場株のインパクトファンドを開始しましたが、投資先企業はKPIとしてROEや利益といった数字を示す、目標をつくることは簡単に決められるのですが、社会課題解決を、自分の会社のKPIとして決めることは、相当迷い、容易には定められない現状もあります。意外にも社会課題の解決をインパクトとして見つけること自体が難しく、社会課題の専門家が積極的に議論に加わることが望ましいです。ある企業が社会課題解決のKPIを定めたが、外から見ると、専門家から見ると必ずしも適当ではないという意見を聞くケースがあります。
 
 投資先の解決すべき社会課題を適切に定めていくロジックについて、コンソーシアムの中で議論していくことがインパクト投資の裾野を広げる意味でも、非常に重要と考えます。今回の報告書中で示されたコンソーシアムの位置づけ、どのようにコンソーシアムを運営していくか、期待される提案です。
 
 適切なKPI採用の重要さなど、実践を通じて様々な気づきがございます。その気づきを共有化する場が必要でコンソーシアムの場は貴重な機会となります。
 
 33ページ目のアセットオーナー、アセットマネジャーのパートの「ユニバーサルオーナーとも言える投資家については、企業活動の外部性が解消されれば」という表現では負の外部性と表現する方が理解できます。
 
 アセットマネジャーのパートで書いて頂いていますが、アセットマネジャーの2段落目の最後のところです。「社会環境的効果を企業価値や事業性に結びつける企業を選定する目利き力は重要であり、このための人材育成や人材交流も重要である」と記載があります。実はアセットオーナーも全く同様で、これは非常に重要な課題です。資金提供者であるアセットオーナーにとって人材育成、あと人材交流、そして企業価値や事業性に結びつく企業を選定する目利き力は重要で、まさにそのスキル向上が求められます。
 
 あと、アセットオーナーの役割として、今考えていますのが、インパクト投資の普及、インパクト投資の裾野を広げるという意味で、個人に対してどのようにインパクト投資の認知度を高めていくかということです。アセットオーナー、特に保険会社の課題と思っています。保険に加入していただいているお客様も個人ですので、お預けしている保険料によって社会をよりよくできる、保険や金融を通じて社会をよりよくする、社会を変えられるような力があると、そういう考え方をぜひとも発信していくべきと考えます。そうした活動がインパクト投資の認知度、裾野を広げます。
 
 この検討会が終了後、かんぽ生命で作成した対外的向けユーチューブを共有化させてください。かんぽ生命は、アセットオーナーとして、2,000万人のお客様を大切にしております。社外向けの発信動画、かんぽジャンクションを通じて様々な当社取り組み、保険の紹介や健康のお話など発信しています。その中で、今回、「日本の先駆け、進化したインパクト投資」というタイトルで、5分のユーチューブ動画を広報部と作成しました。実は23万のアクセスがありました。インパクト投資動画は5分という非常に短い時間で、広報部さんと力を合わせて分かりやすく、一般の方が聞きやすいよう、音楽、ナレーション、映像を、工夫しました。生命保険会社として、多くの方にインパクト投資を理解していただくということで、お預かりした保険料で社会課題を解決できる、その考えを浸透させていくことができます。
 
 個人に対するインパクト投資の認知度向上について、コンソーシアムでいろいろ皆さんと意見交換させて頂きたいです。今回の報告書案に記載はありませんが、アセットオーナーとしては、インパクト投資の裾野の広がりを意識して、お客様に発信してまいります。
 以上でございます。
 
【柳川座長】  ありがとうございます。それでは、オンラインで御参加の田島委員、お願いいたします。
 
【田島メンバー】  ジェネシア・ベンチャーズの田島です。このたびは膨大な取りまとめプロセス、本当にありがとうございました。私からは提言というか、今後に向けてのコメントになるんですけれども、2点だけ述べさせていただければと思います。
 
 ベンチャーキャピタルの立場で、様々なスタートアップと話している中で感じていることがあります。それは、テクノロジーの進化を全面的に支持していると、世の中があるべき方向とはずれるケースというのが今後、発生し得るんじゃないかなということです。最近、チャットGPTの話の中で、AI開発を一時的にストップしたほうがよいのではという話もあったような話です。なので、投資家としての倫理感がより問われる時代に突入しているのかなと感じています。
 
 そういった中で、私たちが向かうべき時代の方向性だったり、あとは実現すべき世界とは何なのかみたいなところ、つまり収益とインパクトが交差するための要素だったり、今回のレポートでは、ポジティブフィードバックが作用するということでしたけれども、ポジティブフィードバックが作用するために必要な上位概念みたいなものです。ここを多様性を排除しないレイヤーで、個別企業の利潤に偏らないレイヤーでの言語化みたいなところは今後、進めてもいいのかなと感じました。
 
 例えば当社でいくと、大きく6つのテーマを掲げていて、1つは豊かな生き方、2つ目が循環型経済、3つ目には情報機会の均等、4つ目に英知の発揮、あと、共存共生、すこやかな社会というテーマを持って投資活動をしておるんですけれども、ポジティブフィードバックを積極的に生み出す上位概念みたいなところというのは、今後にはなると思いますが、言及を検討してもいいのでは感じたというのが1つです。
 
 もう一つは、開示ルールについてなんですけれども、海外に目を向けると、インドが社会的責任体系の中で、One Additional Lineというのを定めていて、上場企業を中心に、全ての大企業はCSR費用を損益計算上、1行開示しないといけないというルールを導入したところ、CSR予算が急増したと。具体的には、当期利益の4%から6%をCSR予算に振り向けるようになったという話を聞きました。
 
 さっき、これまでの話の中でも、少しスタートアップに寄りすぎだよねというお話もあったかと思うんですけども、上場企業も含めて、こういったインパクト投資領域にもっともっと投資を振り向けていく意味でも、こういった開示のところは意味があるのかなと思っていて、もちろん同じことをする必要ないんですけれども、今回、金融庁がリードするワーキンググループでもあって、今後の課題として検討してもいいのではと感じました。
 
 私からは以上でございます。ありがとうございます。
 
【柳川座長】  ありがとうございます。それでは、吉田委員、お願いいたします。
 
【吉田メンバー】  今回、この大きなテーマに関して、詳細な取りまとめをいただきました皆様、本当にお疲れさまでした。ありがとうございました。
 
 弊社の名前についても言及していただいていますので、私のほうから、このペーパー自体の修正は全く必要ないという前提で、2つコメントなんですけど、1点目が、まさに皆様からもありましたとおり、今回のペーパーの意義という意味でいうと、収益と社会価値をどういうふうにポジティブな観点で両立させていくかということが非常に大きなメッセージかなと思っていますが、実は、そのためにすごく必要なのは、先ほど水口先生からもありましたとおり、中長期的な観点で、どうやってそれを実現していくかというのがすごく大事かなと思っていまして、その観点で、3つのここの指針というか、意図と追加性と特定測定管理、この3点は、実態的に我々も投資業務をやっておりますけども、すごく大事だと実感しております。
 
 やはり期間が長い感じで利益を上げよう、収益を上げようとする、社会的インパクトを上げようとする、その意図というのが代を超えてもそれが引き継がれていかないといけない。だからそのための意図というのをちゃんと組織的に特定できていけるか。そういうところがすごく大事だと思っていますし、あと、対話というところでの追加性のところ、しっかりお客さんに、その意図を実現するために働きかけ続けられるかどうかという、それが物すごく大事だというところ、さらに、それを1人の意図だけで主観から客観に変えていくという観点で測定をしていくと、その3つの要件というのは本当に大事だと組織の中でも思っておりまして、34ページに書いていますけど、今回改めて、審査部の中に投資評価室というのをつくりまして、インパクト評価を進めていくような体制整備を改めて弊社の中でもさせていただいて、微力ではありますけど、インパクト投資の裾野拡大というところに資する取組ができればと思っております。これが1点目です。
 
 2点目が、ペーパーの中でも位置づけを迷いながら記載されてあったかと思うんですけど、地域と融資についてもインパクトが含まれるというところなんですけど、ただ、これも委員の中でもお話がありましたけど、確かに地域と融資もインパクトを生むというのは、弊社もそういうふうに思っております。私自身もそう思っておりますが、そこも全部含めてやってしまうと、今回、スタートアップだったりとかイノベーションのところに、より軸足を置いた、そこにリスクマネーを流していくというところが少しぼやけてしまうというところから、あえて地域と融資というのをかき分けて、うまく工夫していただいていると思っていますので、改めてですけど、地域と融資についてもインパクトはあるという前提でありますけど、今回の趣旨に鑑みて、新規性のところに軸足を少し置いた形での報告書と理解しておりますので、改めて、その理解の観点でコメントをさせていただきました。
 
 私からは以上でございます。
 
【柳川座長】  ありがとうございます。それでは、吉澤委員、お願いいたします。
 
【吉澤メンバー】  ダイキン、吉澤です。まず、最初に、非常に多くの情報を取りまとめいただきまして、事務局をはじめ、皆様方、どうもありがとうございました。
 
 修文等の意見等は特にないんですけれども、少し感想めいたところで恐縮ですけれども、コメントを何点か言いたいと思います。
 
 まず、初めにのところにも書かれておりますけれども、5ページですか、従来のESG投資の手法では必ずしも捉えられなかった事業、企業、これの成長可能性をしっかり理解、評価する投資手法という、この辺りは、日々、サステナビリティということで、企業を活動価値を高めていくことを実践している身といたしましては非常に、突き刺さっておりまして、それをしっかり具体的な報告書という形で取りまとめていただいているというところを、改めて感謝を申し上げたいと思います。
 
 その中で、大企業、上場企業への視点というところが弱いんじゃないか、少ないんじゃないかというところにつきましては、少しではありますけれども、加筆いただいているということで、これぐらいでいいのかなと思っています。
 
社会課題を解決して、我々の会社の価値を高めていくというのは、日々、当然やっていることでございまして、それをインパクト投資の文脈で議論していく中に置いたときに、従来からも投資家さんをはじめとしてエンゲージメントさせていただいていますが、従来以上に何が追加されるのかということでは、46ページに言葉として出てきておりますけれども、開示というところが、一担当者としては、どうしてもこの辺りが引っかかってしまいます。これは、ESG投資とか、こういったところでも十分な開示に応えきれていない、まだ道半ばの状態で、さらにその先を行くところでの新たな乖離というものがどういったものになるのか、このあたりについても、今後、コンソーシアムという次のステップで十分議論がなされれば非常にありがたいかなと思っています。
 
 冒頭、水口先生がおっしゃっていただいたのは収益性のところなんですけれども、これ、事業会社といたしましても、収益性はもう大前提ですので、今回の事務局様のまとめていただいた、これぐらいの書きぶりのところでいくと、私としては別に違和感はないかなと思っております。ただ、今、たくさん御意見いただいていた中でどう修正するかというのは、お任せさせていただきます。
 
 以上でございます。
 
【柳川座長】  ありがとうございます。それでは、安間委員、どうぞ。お願いいたします。
 
【安間メンバー】  先ほどの私の発言が説明不十分だったと思うので、官民で課題の共有し、議論をするというところですが、その課題というのは2つ意味があります。1つは、気候変動だとか地域活性化の問題であるとか子供の貧困、あるいは、介護、育児みたいな、具体的な社会課題の領域の話の問題が1つと、それから26ページに書かれていますのは、これはインパクト投資の実践上の課題ということです。後者はどうやって取り組めば、うまくインパクト投資が機能するのかという、そういう課題のことを言っています。私の申し上げたのは前者のほうでございます。コンソーシアムのやるべきことは、27ページの(1)から(5)に並んでいますが、こういったことを整理とか検討する前の段階で、そもそも民間のインパクト投資で、どういった環境・社会課題を取り上げてやっていくのがいいのかということについての官民での議論も必要なのではないか。特に、重要な課題は何なのかということについて合意ができれば、インテンショナリティーがもともとあまりなかった機関投資家さんも非常に参加して取り組みやすくなるのではないかと、そういう意味でございます。
 
【柳川座長】  ありがとうございました。それでは、水口先生。
 
【水口副座長】  ありがとうございます。まず、先ほど安間さんが前の発言でおっしゃられた、手段的IFSIというのを一つ、どこかに書き加えてもよいのではないかという御意見に賛成をしたいと思います。やはり今日、かんぽ生命さんはもう既にされているわけですけども、こういう手段的IFSIといった考え方が十分に浸透していないことが、インパクト投資の議論を混乱させているのではないかという気もしますので、まず、そういったことの概念を少し浸透させていくということは重要だなと思っております。
 
 それと、冒頭の私の問題提起、いろいろ皆さんからお答えいただきまして、ありがとうございました。私もポジティブフィードバックというのは大変重要な考え方で、そのとおりだと思っております。重要なことは、どうしたらポジティブフィードバックができるのか、あるいは、なぜ今までポジティブフィードバックになっていなかったのか。それはとりもなおさず、なぜ今、PBR1倍割れがこんなに多いのか。それは単純に、今の日本企業の経営者が怠け者だからということではなくて、社会的な環境がPBRの上昇を、言わば阻害している。これは安間さんがよくおっしゃられることですけども、なぜそこまでPBRが上がらないのかと言えば、例えば、環境破壊が進んで、余計なことに非常にお金が取られているとか、あるいは、少子高齢化が進んで、日本のマーケットが縮小し、人材が少なくなっていくという、こういう外部不経済が言わば私たちの経済の足を引っ張っている。それを外部不経済と呼んでいて、だからインパクトなんだという議論です。
 
 つまり外部不経済のインパクトを何とかしないことには、結局、私たちは外部条件によって足を引っ張られ続ける。そこを改善しないことにはポジティブフィードバックができない、だからインパクトファーストなんです。だから通常の投資に加えて、インパクトを言わば上乗せした投資行動というものが提案されているのであって、そこが今までの普通の投資とどこが違うんですかという話の答えなんだと思うんです。今までの投資家は当然収益を追求していますよね。これは当たり前ですし、もちろん企業さんもその収益を追求しているわけですけども、そこになぜ私たちはインパクトというものを普通の投資に上乗せしているのかと。新しい資本主義の何が新しいのか。それは、私たちの投資行動が外部不経済もうまくちゃんとコントロールすることによって、社会の環境をよくしていく。それによって、もう一度、日本を成長の軌道に乗せていきましょう。そういう、言わば長い目で見た大きな戦略なんだということだと思うんですよ。
 
 そこの部分を明確にしておかないと、あたかもこれは安間さんもおっしゃいましたけども、ポジティブフィードバックって簡単じゃないんだと。インパクト投資をすれば必ず利益が上がる、そういうものじゃない。だからこそ、そこを明確にする必要があるんだなと思っております。
 
 で、これはどこを修文するのかという話なんですが、要件2、要件3の、本文のところの修文は必要ないと思っています。このとおりで良いのかなと思います。その下の矢羽のところの収益の部分がちょっと気になったということでありまして、長期的なということが入っているといいなと思いましたけど、この辺は皆さんの御意見に従いたいと思いますし、柳川先生と御相談できればと思います。
 
 以上です。
 
【柳川座長】  ありがとうございます、交通整理もしていただきまして。金井委員、お願いいたします。
 
【金井メンバー】  修文ということになるんですけども、27、28のデータ・指標・事例の整備、ここ、①のところなんですが、前もこの場で申し上げたことがあると思うんですけれども、インパクトパスウェイ、ロジックモデルといってもいいかもしれませんが、そこのある程度のデータの共有化というのは必要なんだろうと思います。
 
 これ、さっき野村さんのほうから、何が社会的な課題か分からない企業あるという話があって、これはでも確かにそのとおりで、うちの製品はどう社会的な課題解決するのと言われたときに、いや、そのつもりでつくった製品なので、実はすごくいい製品を出しているんだけど、世の中の環境ががらっと変わってきていて、それが持つ価値、意味がまるで変わってしまっているというところに気がついていない企業は結構多いんじゃないかと思うんですよね。
 
 そう考えると、今の文脈の中で、今、持っている事業モデル、あるいは今、出している製品を持っている本当の価値ということを見直すというか、再発見するという取組って実はすごく重要で、そこをやれている企業ってあまり多くないじゃないかなというのは感覚として思っています。
 
 そう考えると、どうやってそれが価値を生み出していくのかということについて、それはスタートアップだけではなく、それは社歴の長い企業でも、短い企業でも、それは考える価値というのは十分あるわけであって、そこが分からないから、なかなかその次に進まないというところがやはりあると思います。
 
 したがって、いわゆるインパクトパスウェイというのは、フォアキャストとバックキャストを一緒にやらないと出てこないと思いますけれども、なかなか自分で考えるのは難しい中で、ある程度、共有かできることであるならば、それは整理しておきたいし、特にEBPMの関係があって、政府が原則としてインパクトを出そうとしている、その部分と、企業が出そうとしているインパクトが食い違ってしまうのは非常にまずいと思っているので、そういうものも含めると、コンソーシアムで政府間ということが連携をやるのであれば、その部分の考え方というのを出し合って、一種のデータベース化しておくということはすごく重要かなと思っています。
 
 以上です。
 
【柳川座長】  ありがとうございます。木田委員、お願いいたします。
 
【木田メンバー】  検討会の報告書の取りまとめをしてくださいまして、本当にありがとうございます。私どもも指針のほうがあったほうがやりやすいという御意見を申し上げたと思いますので、そのとおり動いていただいていますので、大変感謝申し上げます。
 
 その中で、地域での展開のところ、35ページ、36ページぐらいに記載してくださっていますが、その中で直していただきたいということではなくて、感じたままを申し上げますと、特に36ページのところ、太字下線をしている、真ん中ぐらいに「社会・環境的効果やこれを通じた事業性の確保」等の文章があるかと思います。私どもからすると、一番ここが大事な内容かなと思っております。その中で、今日の御議論でも幾つか御指摘があったと思いますが、文章の印象として、確かに創業企業と捉えられるところが多いかなと思いますので、特に地域企業の場合、全国的にそうだと思うんですけども、上場企業よりも、大半が中小企業、そして、新興ではなく、創業間もない企業でもなく、長い業歴を持っている企業様が多くおられます。地域金融機関のお客様も、そういった方々が中心になっているというところを考えますと、記載箇所によっては、「創業企業等を含む中堅中小企業」という書き方がございますので、その辺りのニュアンスがもう少し出ても良いのかなという印象を受けました。特に修正をお願いするものではございません。
 
 それから、36ページの、先ほど申し上げた太字のところ、すぐ下に、「その際、地域における、創業企業等や同企業等」となっていますが、こちらの同企業とはどういった企業を指すのか、私のほうでは分かりかねましたので、もし教えていただけたらと思います。よろしくお願いいたします。
 
【柳川座長】  ありがとうございます。そのほか、オンラインで御参加の浅利委員、何か御発言ございますか。
 
【浅利メンバー】  Atomisの浅利です。スタートアップ側からの今回の委員会に参加して、どういうことを期待していたかというと、本当を言うと、スタートアップとしては、特にディープテック系の企業だと、売上げの利益が上がるのがかなり先になるといったところで、いかにインパクトというところで投資家を引きつけられるかというところがうまく説明できれば、すごくいいんじゃないかなと思って考えていました。なので、可視化するのはどうしたらいいのかということはすごく重要なのかなと思っていたんですけども、今回、金融庁がこのように指針を出すことで、全体的な底上げというか、インパクト投資というものが何なのかということと、インパクトに興味を皆さんに持っていただく。我々もそうですし、投資していただく方もそうですし、LPの方々もそうですし、上場側、普通の一般の個人の株主の方もそうだと思うんですけれども、基本的にインパクトというものが世の中の役に立つということが分かれば、それに対して投資をするという人が増えてくると思いますので、イコール、投資家が増えると、我々に対して投資してくれる人が出てくるという観点で考えると、まずは、こういう声明を出して進めていくというのは非常に重要なことかなと考えています。
 
 なので、もちろん修正等は全然ないんですけれども、あともう一歩進むとすると、今は利益を上げるようなものが当然ということになっているんですけれども、その利益の期間というのが、物すごく短期からかなり長期にわたるところまであると思うので、それとインパクトの兼ね合いというところを今後、コンソーシアムのところで、もう少し何か可視化できるもので進めれば、スタートアップの人たちもうまく説明できるようになるのかなと思っています。
 
 あと、途中でユーチューブの話とかも出たと思うんですけど、個人それぞれの人が、インパクトというものに興味を持つということが非常に重要かなと思っていまして、今日も新聞に載っていたとおりですけれども、皆さんが日々、インパクトというものに目にかかるようになって、皆さんそれぞれが個人の生活の中でもそのようなことを考えるようになるということが、結局、我々みたいなスタートアップを支援することにもつながっていくのかなと、今日の皆さんの話を聞いていて思いました。
 
 以上でございます。
 
【柳川座長】  ありがとうございます。随分たくさんの御意見をいただいたので、事務局のほうから、お答えできるものはお答えいただいたほうがいいかなと思いますので、よろしくお願いします。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  金井さんから実物資産を入れたほうがいいというお話がありまして、今、1ページ目だと、インフラなどの実物資産と書いてあるのに、ご指摘の真ん中の頁に来るとそれが外れてしまっておりまして、記載が揺れていると思います。1ページのほうに合わせて、16ページにもインフラなどが入る旨を記載させていただくということが考えられるかと思いました。
 
 あと、高塚さんからいただいたご質問については、21ページのところで、視座の提供とか人材とか、お金を出すこと以外の付加価値提供は何かということだったと思いますが、典型的にはエンゲージメント等が考えられると思いますが、御趣旨は、一言で解決するよりも、今後コンソ等でよく詰めていくのがよいという御趣旨かと思われましたので、その場合、今後の課題のところに記載することが考えられるかと思います。
 
 あと、安間さんと水口先生から、手段的IFSI等のお話がありまして、注ですが、49ページにPRIの、先ほどおっしゃっていただいた一昨年7月の報告書を日本語に概訳する形で入れておりまして、収益獲得等の手段的なものとしてインパクトを理解・位置づける場合には、これを多くの機関投資家の受託者責任との関係で整合的に理解することができるのではないかという同報告書の趣旨を紹介しておりました。
 
 また、太田さんからの22ページの要件3について、インパクトを生み出す事業会社の方でも収益や効果を実現するストーリー・因果関係をはっきり示すべきではないかというご趣旨と理解しまして、そのとおりだと思うのですが、冒頭のところの注記に、指針全体として、資金提供側としての要件を記載するという文章の建付けになっており、全プロセスについて事業会社の側のアクション等としての記述も記述し直す場合やや修正が多いようにも思われまして、1つは、事業会社における検討は当然前提となる、または協働して双方で進めていくべきであるといった趣旨を、より目立つような形で記載させていただく、または、特にここが、事業会社との双方向という観点が欠けている点がありましたら、個別にそこを修正するということもあるのではないかと思いました。
 
 また、安間さんから、社会課題について皆さんで議論をしたほうがいいというお話があったと思います。コンソーシアムの中の施策として書いたらどうかという御趣旨と理解しまして、多分一番近いのは、27ページの①の一番上にありますデータのところで、国としてどういう社会課題が重要かというデータをどう特定するかということを今ここに記載していますが、データ止まらず何がインパクト投資に相応しい社会課題なのかを議論していくという点で、場所的には多分ここの①が一番近いように思われました。
 
 ただ、ここは御議論かもしれませんが、投資において、社会的な課題は、多分いろいろなものがあると思いますので、みんなで共有して特定する形でどこまでできるかという点は議論の余地もあろうかと思いまして、その辺りの記述ぶりも含めてもし御示唆があれば、いただけると大変ありがたいなと思います。
 
【柳川座長】  いかがでしょうか。取りまとめをする側の座長としては、割と技術的なところで修文の合意ができるのであれば、そういう形がいいかなと思っております。ただ、大きなところでは、多分ここでまとめ上げるというよりは、少し皆さんで御議論、引き続き議論していただいて、コンソーシアムの中で議論していただくポイントが幾つかあったんだろうと思います。
 
 3点だけコメント的な、修文じゃなくて、あえて少し、多少本質的にはなかなか難しくて、合意が難しい問題だよねというのを3点ほどあえて申し上げます。
 
 1点目は、皆さんから御指摘があった、これがややスタートアップ寄りなんじゃないかという話があって、それはそのとおりで、ある意味で、報告書だとか指針の役割というのはどういうふうに考えるかということだと思うんです。幅広く、全般的なことを記述するという話なのか、多少戦略的にというところをハイライトさせてというところでいくと、かなりスタートアップ支援、そこから大きく盛り上げていきたいという政策的な意図みたいなことが裏側で感じられるんだと思います。
 
 ただ、そこだけが重要か、そこだけがインパクト投資かというと、それはそういうことではないわけで、高塚さんのほうからも御指摘あったように、上場企業の話が明確になってこそ、スタートアップの人たちも、どういう方向性に持っていくかという話に見えてくるということではあるんだと思いますので、ここは、基本的にはテクニカルに文章を誤解のないように書いていくかということで合意ができる話かなと思っていますので、その辺り、また修文で工夫をしたいと思います。
 
 2点目は、渋澤委員のほうからも御指摘があって、それで私のほうから安間委員のほうにも確認の質問をさせていただいた、これ全体の中で、金融庁とか政府がどういう役割を果たすかというような話ですよね。我々、この中で議論している感じからすると、こういう話はなかなか民間では進まないから、せっかくこういう会議をやっているんだから、金融庁なり政府が少しリードをして、引っ張っていったほうがいいんじゃないかという安間委員のような御指摘は、私はそのとおりだと思うんです。ただ、そのとおりと思う反面、これが外へ出ていくと、渋澤委員から御指摘あったように、外の人たちからすると、そんなことまで金融庁に指図されるのかと、政府が決めるのかというような声も出てくるという意味では、なかなか難しい悩みの話だなとは思っていて、そもそもこういうガイドラインみたいなことも、金融庁が研究会をやって出す必要があるのかといえば、別に金融庁は出さなくてもいいわけで、これは民間の方々が集まってこういうものを出したとしても、全く問題ない話なんだと思う、何か法律を改正するとかという話じゃないので。
 
 そういう意味では、もともと民間でもやり得る話を、政府がある種、土台をつくって提供しているというタイプの立てつけであり、報告書なんだと思うので、この中で、金融庁がどういう役割を果たすかというのは、少し書きぶりとしては注意する必要があるんだろうという書きぶりの話と、いわゆる本質的には、今、悩みというか、内訳話を申し上げているという話ですが、なかなか皆さんの総意としては、金融庁に引っ張っていってほしいと思いつつ、金融庁は引っ張っていますよと書けないというのが最終的に、多分コンソーシアムに行っても課題にはなってくるんだろうなとは思うところでございます。
 
 3点目は、これもますますコンソーシアムに行っても考え続けなきゃいけないという話なんですけど、まさに水口先生が冒頭に御指摘になったところで、報告書の中では高塚委員が御指摘になったように、ポジティブフィードバックをつくっていくというのが非常に、報告書としての新しい取組であり、チャレンジであり、ポイントではあるんだと思います。指針もそうで、これは鈴木政務官がいらっしゃいますけど、政府全体の新しい資本主義の中でも社会課題の解決と成長の好循環を目指すという政府全体の大きな方針に沿った話なので、とてもいい話だとは思うんです。
 
 ただ、そうは言っても、じゃあどうしたら好循環が生まれるのかというのは、目指すって書いてあるだけで、じゃあ、どうしたら好循環が得られるのかというのは、皆さん御指摘になったように悩ましい話です。そう簡単に生まれるわけではなくて、社会課題解決を目指せば収益性が上がるわけでもないというのは、まさに御指摘になったところなので、ここの辺りは考えていかなきゃいけない、工夫していかなきゃいけないポイントなんだろうと思います。
 
 問題は、工夫したとして、じゃあ、どういうタイプの収益性の好循環が目指し得るのか、実現し得るのかというと、そもそも収益性はどの程度のレベルを考えるかあるわけですよね。それは報告書に書かれていて、もう一つは期間ですよね。そこが、水口先生が御指摘、強調されたように、短期で目指されると厳しいものがいっぱいあってというところで、少し長い目線で見たほうがいいんじゃないかと。ただ、投資家目線から見ると、長い将来、遠い将来の収益性と言われると、それはほとんど約束していないのと同じだという話には見えるわけで、ここは私が申し上げるまでもなく、皆さんが悩まれているところなので、ここの辺りが、指針の中でどう書くかというテクニカルな話だと思っています。
 
 もうひとつは、ここが申し上げたかった本当のところなんですけど、じゃあ収益性の拡大がどう実現するのかという話でいくと、それは、それぞれの企業の中で、投資を受けた企業、投資をする企業の中で、社会課題解決をしていくと同時に、自分たちの利益拡大になる。例えば社会課題にすごく寄与するような製品を開発して、あるいは投資をして、それが自分たちの利益につながっていくと、こういう企業の中で、両方を実現させていくというタイプの話です。これは比較的プランが書きやすくて、我々、こんな社会課題を解決するような製品を開発します、新しい投資をします。そうすれば、これで製品がこういうふうに売れて、投資収益が広がって、20年後か30年後かもしれないけど、こういうふうに利益が上がってきます。
 
 こういうタイプの話と、それから水口先生がさっき強調されたように、企業の中での話ではなくて、企業の外部環境が変わっていくことで、その結果として、企業の収益が間接的に拡大するという話がある。環境が改善すれば、世の中がそういう形で広がっていけば、環境が変わって、企業が自然と普通に経営していても、利益が拡大していく、こういうフィードバックの話です。このフィードバックの話は、事業計画の中ではなかなか書きにくい話で、かつ投資のインパクトが、直接的には投資家のリターンにならないかもしれない。そこに投資して、企業に投資しても、そのインパクトはかなり日本全体に、あるいは世界全体に及んで、B企業やC企業やB産業、D産業の人たちにプラスになるかもしれない。こういうタイプのポジティブフィードバックもマクロ全体から見るとプラスであるわけですよね。この種の話をどこまで考えるかみたいな話で、たとえば当初、GPIFとかが言っていた話は、要するにマクロというか、世界全体でちゃんと環境が守られていけば、世界全体に投資している年金基金は得をするはずだという話で、特定の企業に投資したら、その企業が社会課題解決に頑張ってくれれば、その企業がもうかるという話ではなくてという、こういうタイプの話ですね。
 
 これ、どれも正しいんだと思っています。どれもあり得る、どれもインパクト投資なんだと思うんです。なので、そういう意味では、種類が幾つかあって、あえて言えば、同床異夢の話であって、そこをどこまでどういうふうに推し進めてやっていくのかというのがコンソーシアムの課題ではあるかと思うんです。その辺りを、今の段階で、この報告書に詳細に書き込むことは多分できないし、かえって混乱を生むだけだと思うんですけど、あえて、だからここで申し上げましたけども、そういう意味での多少ポジティブフィードバックのルートは結構多様で、多分違う、かなり質的に違うものも含まれていて、それをこれからどう実現していくか、あるいはアセットオーナーだったり、アセットマネジャーの方々がどう見ていくかというのが、多分コンソーシアムの本質的に難しいところで、ただ大事なところなんだろうなと個人的には思っているというところでございます。
 
 というわけで、ちゃぶ台返し的な話を申し上げましたけど、それをやる気はないので、やっちゃうと、座長としては、こういう話をのんでいただいて、技術的な修文のところで合意いただけるとありがたいなと、難しい課題を抱えているなと思いつつ、技術的修文のところでまとめていただけるとありがたいなと思っているということでございます。
 
 どうぞ。
 
【安間メンバー】  ありがとうございました。3点目はまさに私もそのとおりだなと思って、2点目のところだけちょっとコメントします。
 
 修文をお願いするというニュアンスではないんですが、インパクト志向金融宣言の活動などをしておりますと、私が見るところ、宣言に入らない人も含めてですけども、金融機関、機関投資家の方々は、3つのタイプに分けられるんです。
 
 一つは、別にこの報告書に関係なく、もう既にインパクト投資を実践しているから、あまり余計なことを書かなくてもよい、そのままでもやりますから、あまり追加的なガイドラインがかかれない方が良いですというスタンスの人たちも、数は多くはありませんが、それなりにいます。2番目は、今までインパクト投資をやらなかったけど、こういう報告書とか指針が出てくると、そうかリターンが出るのであればやってみようかな、ということで、できるだけいろいろ教えてほしい方もいらっしゃる。3つ目のグループは、いやいや、うちはそこまでやる体制も整っていないし、そういう職員もいないし、そこまで経営者にインテンショナリティー、まずは現行の投融資に専念することが中心なので、そこまで拡大できませんと。だから実例がたくさん出てきて、当たり前のようになったときにまた考えますと、こういう方もいます。
 
 この3つのカテゴリーの人たちが、この報告書を読んで、あまり違和感なく、ちゃんと自分たちの立場も慮っていると思ってもらえる内容の報告書で、良いのではないかと考えます。
 
【柳川座長】  ありがとうございます。そのほか、御意見等ございますか。高塚委員、どうぞ。
 
【高塚メンバー】  本日様々に皆さまから御意見があった中で、田島さんがおっしゃったことがちょっと気になっています。あるべきファンドの姿・考え方というところに、倫理感がますます求められる時代なのではないかという点です。投資家がインテンションを持たねばならないことの前提条件のような気がしており、テクニカルな理論展開の手前にて、今の時代背景を受けた根本的なスタートラインとして捉えるべきではないかと思いました。そうした文言・意味合いにつき、今回のペーパーに反映できるかを御検討いただけるとうれしく思います。最低限として、最後の投資主体の多様性という箇所でダイバーシティーについて主に書いてくださっていますが、ダイバーシティー・女性比率という形式的な話以外にも、ひとつの提案として入れていただけたらいいかなと。「倫理観」とは一見きれいごとにも聞こえますが大事なことかと考え、気にかかって発言させていただきました。
 
【柳川座長】  そこはどうですか、皆さん。
 
【水口副座長】  すいません、私はきれいごとが好きなので、きれいごとを言いますけれども、おっしゃるとおり、チャットGPT的な話というのは、そういうことが言わば外部性というのが非常に明確に分かる事例なので、そうだなと思います。
 
 それは、実はチャットGPTに限らず、今までのSNSみたいなものもそうですし、少子化がここまで進んでしまった背景にも、実は似たような外部性というのがあって、それが結局のところ、なぜインテンションを持つべきなのかという話につながるわけで、それは先ほど柳川先生がきれいに整理していただいたとおりのことだと思っているんですけども、私はそういう考えが必要だなと思っています。
 
 特にその影響が大きくなってきたがゆえに注意しなきゃいけないことというのはあるんだろうと。ただ、先生おっしゃるとおりでして、どこまでどういうふうに書くのかは、なかなか難しい問題であることは事実でありまして、これだけよく分かった先生にお任せする形が一番いいんじゃないかと思いました。
 
【柳川座長】  工夫して検討します。最後に少し書くぐらいは。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  今、御議論いただいたようなことをドラフトさせていただきます。
 
【柳川座長】  そのほかよろしいですか。活発な御議論ありがとうございました。
 
 ト書き上は、本日いただいた御意見を踏まえて、事務局において修正してもらおうと思っていますが、修正内容については座長に御一任いただきます、よろしいでしょうかとなっているんですけど、さすがに大分御意見が出ましたので、御一任はいただければと思いますけれども、その前に、皆さんに一度、案をお見せして、こういう形でいきたいんだけどということで御了解を取るという前提で、私に御一任ということでよろしいでしょうか。よろしいですか。オンラインの方もよろしいでしょうか。すいません。
 
 ということで、御一任をいただいたということで、私のほうで確認をして、皆さんに見てもらった上で、必要な精査を行った上で、準備が整った段階で事務局から、先ほど話が出ました、日本語、英語双方で公表させていただくということにしたいと思っております。ありがとうございます。
 
 それでは、事務局のほうから御連絡等ございましたらお願いいたします。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  ありがとうございました。今、柳川先生からお話しいただきましたとおり、できるだけ早く修文し、共有させていただきます。
 
 6月に、この会議が設置されていますサステナブルファイナンス有識者会議がありまして、水口先生が座長ですが、そちらにも検討状況を御報告させていただければと思います。
 
 基本的指針については、10月までをめどにパブリックコメントということですが、多様な関係者の方から御意見をいただき、どのような意見があったか、または修正が必要かなどについては、改めて本会議で御議論いただければと思っております。
 
 私からは以上です。
 
【柳川座長】  そういうわけで、最後は水口先生に御判断いただくということです。政務官、よろしいでしょうか。
 
【鈴木大臣政務官】  では、一言だけ、すいません。活発な議論ありがとうございました。大変、フルで参加させていただくのは今日が初めてでしたけれども、非常に良い議論をしていただいて、思いを持って、信念を持ってやっていただいているなと感じまして、大変ありがたく思うところです。改めて感謝申し上げたいと思います。
 
 実は私、10年間、三重県知事というのをやっていまして、やはり地方の現状を見ると、人的リソース、財政的リソース、金融のリソース、金融なんかも、銀行や信用金庫の合併がなくても、1つの金融機関において、店舗の統廃合なども行われていって、地方に行けば行くほど、オーバーバンキングなんて言う人がいるかもしれませんが、それは県庁所在地だけで、地方に行けば行くほど、私は三重県南部が選挙区なんですけど、様々なリソースがなくなっていっている中で、こういうインパクト投資という方法でリソース不足をカバーし、社会課題を解決するという道筋ができるということを、10年間知事やらせていただいた立場からも大きく期待をしているところでありますし、こういういい方向を皆さんがつくっていただいたこと、心から感謝申し上げたいと思います。
 
 また、政府の役割についても、いろいろな御議論があったと思いますが、私の経験で申し上げますと、やることは分かっているんだけれども、やらなければいけないことは分かっていて、その主役、主たる担い手は民間の皆さんであるものの、放置していたらやられる、やる人がマジョリティーになったりとか、認知をする人がマジョリティーになったりしていかない分野については、一定程度、最初に、政府が皆さんと一緒に手を携えてやっていくということの意味があると思うので、最初に渋澤さんがおっしゃったように、主役が政府であるということではなくて、そういう誤解を招かないような発信が極めて重要だと思いますので、放置しておくと、やる人がマジョリティー、さっき、安間さんも整理してきましたが、マジョリティーにならないようなところとか、認知がマジョリティーにならないようなところについては、皆さんと手を携えてやっていく、そういう役割が政府にもあると思っておりますので、ぜひ皆さんと一緒にやっていきたいと思います。
 
 引き続き、御指導よろしくお願いします。
 
【柳川座長】  ありがとうございます。事務局から。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  最後に1点だけ、すいません。安間さんをはじめGSG国内諮問委員会の皆様と金融庁で一緒に、インパクト投資の勉強会をやっておりまして、直近で、デッドに関するガイダンスを出していただきました。70ページぐらいありまして内容的にも大変豊富なものと思いますが、コンソーシアムでも今後進めていく官民の協力の1つの成果事例とも言えると思いますし、この内容自体を更に御議論いただいて深めていく重要な内容と思いますので、ご紹介させていただきます。
 
【安間メンバー】  デットのインパクト投資に関するガイダンスがほぼ出来上があがりました。今、パブリックコメントを受けて最終校正中ですけれども、これを終了させ、デザイン編集をかけて7月には完成できると思いますので、ご活用よろしくお願いいたします。
 
【柳川座長】  それでは、どうもありがとうございました。昨年の10月から8か月の間に、本日も含めて8回、大変貴重な御指摘や建設的な議論をいただきまして、誠にありがとうございました。
 
 これで区切りではあるんですけど、先ほど事務局からあったように、指針の最終化に向けてはお集まりいただきたいということでございますので、また、もう1回、もしかするとオンラインかもしれませんが、お集まりいただくということになるかと思います。そのときはまたよろしくお願いいたします。
 
 それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。皆様どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――
 
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総合政策課サステナブルファイナンス推進室

03-3506-6000(代表)(内線 2918、2893、2770)

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