「インパクト投資等に関する検討会」(第9回)議事録

  1.  日時: 令和6年2月20日(火曜日)16時00分~18時00分
 
【柳川座長】
 柳川でございます。ただいまよりインパクト投資等に関する検討会第9回会合を開催いたします。皆様、御多忙のところ御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
 
 本日はパブリック・コメントに付しておりました基本的指針の修正案について御議論いただき、取りまとめを目指したいと思っております。
 
 それでは、議事に移ります。パブリック・コメントで寄せられた主な御意見と基本的指針の修正案について、事務局から御説明お願いいたします。

【西田サステナブルファイナンス推進室長】
 委員の皆様には修正点を事前に共有させていただいておりますが、いただいたコメントを御紹介させていただきます。200件程度いただいており、国際的な団体、国内で既にインパクト投資に取り組んでおられる団体など、幅広くコメントいただき、非常にありがたく思っております。

 内容は、総論としては、官民連携の下でインパクト投資を推進していくことが重要である、国において基本的な指針を作成して、共通理解の醸成に努めることが重要である、こうしたご意見や、国際的な連携も念頭に基本的指針を作成していると思うが、まさにこうした方向は重要である、こうした御意見をいただきました。

 それから、原案では「要件」という言葉を用いて4つのエレメントを記述していたところですが、この点について、市場が成長段階、これから成長していくことが期待されている分野であることを踏まえると、「インパクト投資に求める要件」とまで厳格に規定すると、きっちり指針の通りでないとインパクト投資ではない、と読めてしまうのではないか、創意工夫の可能性が縮小してしまわないように留意が必要ではないか、というコメントをいただいたかと思います。

 それから、収益性です。投資として収益実現を図っていくものを前提としますという記載がありましたが、この点は概ねご賛同をいただいたように思いますが、他方で、第一に、市場にはいわゆるコンセッションファイナンスなど、市場の競争水準に満たない水準でよしとする投資もあって、これはこれで意義があるという点をわかる・排除しない書き方としてほしい、というご意見、それから、収益性を前提とするあまり、報告書では、各要件のところで1つ1つ収益性を確認するような記載がありましたが、やや記述方法として重複もあり、また、焦点も曖昧となってしまうので、記載振りを工夫してはどうか、という御意見がありました。

 それから、新規性です。ここは特に多くのご意見を頂きました。要件4で、「市場や顧客に変化をもたらし又は加速し得る新規性」という表現がありましたが、この「新規性」という表現が、スタートアップや新しい技術の導入等を特に強く想起させ、例えば、新しい技術を導入する際にも、既存のインフラを活かしてこの技術を社会全体に浸透させていくという場合に、インフラの部分が「新規」かというとやや議論がある、しかしこうしたインフラ敷設は社会全体の変化やインパクトを生み出していくには必要不可欠で、こうした分野への投資も重要ではないか、継続的な生産プロセスの改善はどうか、ある国では一般的な技術を他の国に広げていく場合はどうか、など、「新規」という言葉の意味合いについて、広く捉えられるような表現が良いというコメントを多くいただきました。

 この4つ目の要素を独立の項目として必ずしも記載する必要はないのではないか、要素1-3のいずれかで記載していく方が既存の様々な文書との対照という点でも読みやすいというご意見も頂きました。一方、投資先の企業・事業について、変革を支援していくという点は大きなポイントで、こういう観点からは、新しいかどうかというよりも、例えば、経済社会全体の動きや変化を促していくという意味でトランスフォーマティブな取組みを支援していくという考え方・表現がフィットしているのではないか、こういうご意見も頂きました。

 今日お配りしている事務局の案としては、要素4は、この報告書の取りまとめにおいても非常に重要なポイントとして議論されてきたポジティブ・フィードバック・ループを実現していくという観点に関するもので、4つめの当該要素は特有の要素として引き続き記載を残す、要素1から3とは合流させない形で文案を作成させていただいておりますが、是非ご議論いただければと思います。

 それから、追加性です。「追加性」という言葉、これは「additionality」の日本語訳になりますが、伝統的にこの分野で「additionality」と言った場合、いわゆるコンセッショナルなファイナンスを惹起する場合が多いという御指摘を、海外からも含めていただきました。また、投資がなかった場合と比べて、投資を行うことによってどのようなインパクトを生み出すのかということに、投資の側からどう貢献するかということを記載したいということであれば、ストレートに「貢献」に直したほうがいいのではないかというコメントも相当数いただきました。

 次に、これをどう示すかという観点について、元の案では、「投資がなかった場合と比べてどの様な効果が見込まれ実現されるか、具体的に、分かり易く明らかにしていくことが重要」として、投資がなかった場合と比べた仮説検証を求めるような記載となっていましたが、金銭的な貢献の場合はもちろん、非金銭的な貢献、例えば、エンゲージメントなどを通じて行った貢献の効果を遡って定量的に証明するような形で説明することは難しいだろう、投資の側から見た貢献を具体的に特定・説明するという形とした方が良いだろう、こういうご意見をいただきました。

 次に、特定・測定・管理ですが、開示を入れたほうがいいのではないかというコメントをいただきました。資料の13ページになりますけれども、投資が実効的に行われ、予期した、期待した効果を実現していくためには、投資家と企業その他の間での対話が重要だろう、この対話の前提として、参照する指標や、実際にどのような実績が上がったのか、変化したのかということについて関係者に適切に開示することが重要だという趣旨を記載させていただいいています。

 以上が主にいただいたコメントの概要と修正点です。

 それ以外ですが、例えば、ESGインテグレーションとかスクリーニングなどの違いなどについて修正がありますが、これらは検討会の報告書のうち、基本的指針部分を除いた残りの部分にあった記載であって、この記載がないと全体的なコンテクストが読みづらいというコメントが幾つかありましたので、追記させていただきました。

 4ページ目、4パラ目の「しかし」のところで、社会・環境課題への関心が高まり、ビジネスモデルや技術の革新が進む中で、社会・環境的効果と事業は、様々な工夫の下で相互に補完・強化し、両立する循環にある関係、これをつくっていくことが重要じゃないか、こうした報告書のキーメッセージ部分であって、パブコメの「指針」の原案では必ずしも記載がなかった記述を、報告書から「指針」に移管をしています。

 また、8ページの2パラ目、投資収益とインパクトの関係が整合的に理解できるものなのかという表現があります。実現を図る収益の水準については、他の一般の投資と同様、様々であるが、実現しようとする収益が、実現を図るインパクトと、投資戦略として整合的に理解し得るものであるのか、これが重要、という記載ですが、この点は委員の皆様からも多くコメントいただいたところですので、是非本日議論いただければと思います。

【柳川座長】
 ありがとうございました。内外からかなり多くのパブリック・コメントをお寄せいただきまして、今御紹介いただいたように、前回から比べると変わっておりますけれども、丁寧に御説明いただき、事前に皆さんのところにもお目通しいただいていると思いますけれども、今の御説明を踏まえまして、メンバーの皆様から御意見等をお寄せいただければと思います。よろしくお願いいたします。

 それでは、正木委員、お願いいたします。

【正木メンバー】  
 まず、柳川座長をはじめ金融庁の皆様、取りまとめありがとうございます。

 2ページの2パラ目と、3ページの「インパクト投資は」という2パラ目、いずれも赤字が入ったところです。それから、14ページの考え方の1つ目を見比べていただくと、パブコメの5番のご意見に、脱炭素と少子高齢化のうち少子高齢化を前にしてはどうかといった意見があったことなども踏まえてか、2ページのところは「脱炭素社会への移行、生物多様性の保全、海洋プラスチックごみの削減、ダイバーシティの拡充――このダイバーシティは多分生物多様性と別の人材のことを言っているんだと思うんですが─少子高齢化への対応など、社会・環境課題」と書いてあって、3ページは、インパクト投資は「脱炭素、人口減少─ここは少子高齢化ではなく人口減少に変わって─、多様性確保─ここは生物と人間の多様性が両方入っており─環境・社会課題」になっています。この「環境・社会課題」は、ほかは全部「社会・環境課題」になっているので「社会・環境課題」に直したほうがいいと思います。

 そうすると、その後ろの「グリーン」「ソーシャル」も多分「ソーシャル」「グリーン」に直さないと日本語の順番と合わないと思います。

 そして、14ページの考え方のところは、「少子高齢化や人材の多様性の話がきて、ここでは人材の多様性と生物多様性が別建てになって、しかも脱炭素などが順番としては後ろになっている。3回同じようなことで違う表現とか、海洋プラスチックは最初しか出てこない等もあるので、ここは柳川座長に、どれか1つに整理してもらって、最初に出てくる2ページに例示を全部集約してもらってもいいですし、少なくとも、最低限何となく表現をそろえていただいたほうがいいかと思います。

 それから、12ページ、13ページにかけての先ほどの開示のところですが、12ページの基本的要素3の4つ目の弓矢のやじりのところの関係者に適切に開示するその主体は、恐らく2つ目のやじりにある「投資家・金融機関」であり、「投資家・金融機関」が参照する指標とか、投資効果の特定・測定・管理の方法、実績などを「投資先の企業などの関係者に対して」開示するという趣旨だと思います。まず、そこは非常に画期的で高く評価したいと思います。

 一方で、13ページ末尾の赤字部分は、「関係者に対する」ではなく「関係者間での」開示とされており、どうしてそう小見出しが変更されるのかというと、「関係者間での開示」部分の前半には、投資家や金融機関が投資先の方々に対して開示をすることが有効だという趣旨の記述がありますが、後半に「また、このためには」として、「投資先の企業等」の側も投資家・金融機関に対して、必要な情報共有を図るほうが重要だと記載されているため、多分「関係者間」という言葉になったのだと思います。
 
 恐らく「開示」というのは、広く、あるいは横並びで比較可能といったニュアンスの言葉で、ここで「投資先の企業等」が投資家や金融機関に対して示すものは、もうちょっと具体的な自社のロジックモデルがどうなっている等の情報であることから、「開示」というよりも「情報共有」、投資家等の特定・測定・管理の方法とか実績に即して、自社の部分はこうだと情報共有しているのだと思います。したがって、どう表現を揃えるのがいいのかを考えると、この文章の趣旨を生かすとすると、この小見出しは「関係者間の開示」ではなく、「関係者間での情報共有」がいいのではないかと思いました。

 大変よくまとめていただいているので、以上のような微細なところしか指摘する部分が残ってないので、あえて申し上げました。本当に取りまとめお疲れさまでした。

【柳川座長】
 どうもありがとうございます。

 最初のところは平仄を合わせればいいという御意見ということですね。

 それで、2番目のところは、具体的な13ページの四角のところで、「関係者間での開示」を「関係者間での情報共有」とするという案をお出しいただきました。この辺りも皆さんの御意見を踏まえて具体的な修文を考えたいと思います。

 では、鈴木委員、お願いします。

【鈴木メンバー】
 最終回ということで、あまりこれまでの議論の流れを壊すつもりもなく、ちょっとコメントさせていただきますけれども。

 今、正木委員から御指摘があった、インパクトをもたらす対象について記載の順番は平仄をそろえていただくということだと伺いましたけれども、今挙げられているものとしては、脱炭素とか人口減少、それから多様性の確保、生物多様性の保全とか、これらが環境・社会課題として挙げられていまして、また、一般論として、SDGsがIMMにおけるインパクトのテーマとして掲げられているというところだと思うんですけれども、今後、インパクト投資を広く普及させていこうとするときに、例えば、地域の金融機関の皆さんなんかというのは、地域にフォーカスした活動をされていらっしゃると思いますし、そういう意味では、SDGsとか、ここに書かれている脱炭素、人口減少、多様性確保は課題が大きく見える可能性があるかなというふうに思っておりまして、包括的といえば包括的なんですけれども、抽象的といえば抽象的で、壮大で取っつきにくい感じがしなくもないかなと思っております。

 一方で、恐らく地銀さんとかメガさん、我々もそうですしVCさんなんかもそうだと思いますけれども、各社各様に得意分野とSDGsなんかをうまく絡めて、ミッションとかビジョンとかマテリアリティーとかそういったものいろいろ設定されていると思っていまして、それらは結果的には、今申し上げましたSDGsの内容なんかも随分溶け込ませた上で、さらにかみ砕いて営業といいますか投融資の現場にも、少なくともSDGsなんかよりも肌感覚としてしっくりくる形で浸透しているはずだと思います。

 そこで1つ提案としては、インパクトを及ぼしたいテーマとして、こういった脱炭素とか人口減少という列挙でもいいと思うんですけれども、そこに少し各金融機関ごとのビジョンとかマテリアリティーを意識した投融資活動でそれぞれ引き起こしたいインパクトを発現させていこうという、こういうより現場寄りのテーマセッティングを許容するような形にすることが、広く普及させていくためにいいんじゃないかなと思いました。

 そうすると、現場でより自社のミッションとかマテリアリティーに対応するようなインパクトというのを意識しやすくなると思いますし、さっきも議論がありましたけれども、開示という観点でも、開示は基本的には、自社のミッションとかマテリアリティーといったものを溶け込ませて価値創造プロセスを表現していくと思いますので、価値創造プロセスの中にインパクト投資というものを織り込んだりしつつ、ベストプラクティス、自分たちはこういうインパクト投資をすることによって価値創造に貢献していますという、その一連の開示の流れと整合的になるかと思います。

 国際的なテーマとか国際的な流れに合わせるという観点でSDGsとか脱炭素ということを列挙していただくのはもちろんいいと思うんですけれども、さらにその中に、VCならVCとしてのミッションがあると思いますし、地銀さんなら地銀さんとしての地域密着型というミッション、マテリアリティーもあると思いますので、そういったところを踏まえたインパクトという観点で記載していただくと、投融資の現場はよりやりやすくなるんじゃないかなというふうに思いましたというのが1つでございます。

 それから、あとは、私もいろいろと企業さんとお付き合いしていく中で……。もう一点よろしいでしょうか。別の切り口なんですけれども。

【柳川座長】
 どうぞ、御発言してください。

【鈴木メンバー】
 いいですか。12ページの継続的な測定・管理というところなんですが、特に、本当に革新性の高いようなプロジェクトだったりとか製品だったりとか、そういったものはやっぱり企業さんにとっては秘匿したい情報といいますか、なかなか開示になじまないような情報とか計数というのも当然持っていらっしゃるわけで、それを開示を前提として金融機関側がエンゲージメントの中でいろいろと聞いていって、さらにそれを例えば共有するとかというのは、なかなかなじみにくい場合もある。顧客負担が結構大きな話にもなってくると思いますので。

 一方で、インパクト投資のためにいろいろデータをくださいということで、顧客に負担を強いるようなことが何となく世の中的に広まっていくと、むしろインパクト投資というものを忌避する流れにつながりはしないかというのは、私は少し懸念として持っております。

 当然、インパクト投資では、KPIに定量的なものを持ってくるというのは、一つの定義として外すことはできないとは思っていますけれども、今回、修文の中で定性的なKPIというのも1つ入れていただいていますので、あまりKPIを定量化することに傾注して、過度に情報を取りに行くような活動をあまりすべきではないというのが私の認識でもあって。なので、定量的なものに加えて定性的なものを十分に許容するという色を少し出していただくといいのかなと思います。

 最後に、定量的なインパクトといった場合でも、例えば、浮体式の洋上風力とか何でもいいと思うんですけれども、そういうのは参画方法が本当に必要不可欠なスポンサーなのか、シローンの一レンダーなのか、はたまた、それをさらにセカンダリーで買ってくる投資家にすぎないのかという、そういう立場によっても全然事業自体に及ぼすインパクトが異なると思いますので。

 例えば、これだけGHGが減ります、うちの残高は10%だから、その10%がインパクトですとPCAF的な考え方をしても、あまりインパクトの定量的な測定には明確につながりにくいと思っていますので、あまりそこの定量的なKPI設定とそのモニタリングというところにエネルギーを割くようなものにしないほうがいいのではないかというのが私の2番目のコメントになります。

 以上です。

【柳川座長】
 ありがとうございます。両方とも重要な御意見だと思います。具体的な修文は何かございますか。1番目、2番目それぞれ。

【鈴木メンバー】
 1番目のところは、具体的にというのはありませんけれども、1つ入れていただきたいと言葉としては、企業のミッションとかマテリアリティーという言葉をどこかに交ぜ込んでいただくと、SDGsとか脱炭素とかという一般的な用語よりはもう少し取っつきやすくなるかなというふうに思います。

【柳川座長】
 それは、先ほどから御議論があった、「インパクト投資は」という具体例のところに入れ込むということですか。

【鈴木メンバー】
 例えば、私なんかがちょっと考えていますのは、3ページ目辺りの新しく追記していただいた、インパクト投資は、脱炭素、人口減少への対応、多様性の確保、幅広い環境・社会課題等々と。また、その対象として、各金融機関のミッションやマテリアリティーに溶け込んでいる場合もあると思うけれどもみたいな、そんな形が分かりやすいのかなというふうに思います。

 具体案も必要であれば、また後で作成してお伝えしますが。

【柳川座長】
 例示のところに企業の考えるミッションがとかという話を入れるのは、少し例示には似合わないかな。その辺りまた皆さんの御議論を伺って御相談したいと思います。

【鈴木メンバー】
 分かりました。

【柳川座長】
 2番目のところは、特には具体的な修文案ではなく、御意見ということでよろしいですか。

【鈴木メンバー】
 そうですね。一応、事前に金融庁さんにはそういった旨のコメントはお伝えしたつもりなんですけれども、特に反映されてないようなので、そちらはそういうことなんだろうと思いますけれども。また追って、別途、今日の議論を踏まえて修文案が思いつくようであれば、また御連絡します。

【柳川座長】
 できれば今日の会議中に、今日でもう一通り皆さんにお考えを。

【鈴木メンバー】
 すみません。その辺のお作法も全然分かっていなくて恐縮ですが。

【柳川座長】
 お考えいただければと思います。それでは、水口先生。

【水口副座長】
 ありがとうございます。今の御発言に反応する形でコメントをしたいと思うんですけれども。

 まず、鈴木さんがおっしゃられた1点目の、この例示がいわゆる国際的に大きな話題ばかりだというのは、言われてみるとそうかもしれません。先ほど御紹介いただきました14ページのところですかね、要素4のところでは少し気を遣っていただいて、地域固有の資源とか地域の課題についてもいろいろ触れていただいているので、この最初のところも、そういう意味で言うと、脱炭素や生物多様性云々のところに、「地域固有の課題を含め」のような、何か地域の課題というような言葉が入るのはそれなりにいいのかなという気はいたしました。

 なかなか、おっしゃるように、例示の中で企業のミッションとかはちょっと違うと思うんですけれども、インパクト投資は社会課題や環境課題があって、その社会課題や環境課題をいかに解決していくかというインテンションがあって、それが投資につながっていくというものだと思いますので、最初の例示は課題の例示ということなんだろうなと思います。そういう意味では、地域の固有の課題は確かにあると思いますので、そういうことではないかなという気がいたしました。これはコメントなんですけれども。

 もう一つ、定性・定量のところと開示のところですけれども、これは正木さんから御指摘いただいたように、投資家・金融機関がインパクトをきちんと計測して、それを例えばアセットオーナーがきちんと開示をしていくということはやはりインパクト投資の作法として必要なので、私はこの開示の議論は必要だなと思っております。それは必ずしも、おっしゃるような企業秘密を出してくださいとかそういうことでは多分ないと思いますので、インパクトがきちんと進んでいるということが分かるような開示ということだと思います。

 12ページのところ、要素3の最初のところにも「定量的または定性的な測定・管理」と書いていただいておりますし、その下の説明のところ、考え方のところも2段落目に「定量的または定性的な指標特定し」というふうに書いていただいていますので、常に「定量的または定性的な」と書いてはいただいていいかなと思っております。

 以上です。

【柳川座長】
 ありがとうございます。安間委員、お願いいたします。

【安間メンバー】
 どうもありがとうございます。この基本的指針は、多様なステークホルダーからたくさんコメントいただいて、しかも、これだけの数の見え消しで直すほどきちっと修正していただいて、本当にありがとうございます。プロセスに非常に透明性があって、作成過程全体としてとてもよかったなと思います。

 その上で2つコメントがありますが、1つは、6ページのところですね。原案でも、「本指針は、インパクト投資について実現が望まれる要素を示すことで、インパクト投資の基本的な考え方等について共通理解を醸成し」と言って、「現在取組を進める市場関係者の様々な創意工夫を規制・制約するものではない」というふうに書いていただいていて、これは非常にありがたいことではあるんですけれども、ここでちょっとあえて問題提起したいのは、この基本的指針というのがどの程度の規範性を持つか、という点です。規範性の程度の問題です。

 せっかく作成したので、これをある程度は模範的なガイドラインにして進めていただきたいという、そういう気持ちは検討会に当然あると思います。特にそれは、これから初めて始めると方か、今までちょっと考えていたんだけれどもまだ始めていない人に、この指針を送って、これを参考にしてぜひやってくださいというのはいいかなと思います。ただ、もともとインパクト投資というのは、インパクト投資のビジネスモデルの中身が、完全にレギュレートされているわけではありません。もちろん受託者責任の観点とか投資家保護の観点からいろいろ規範を示して、このとおりやりなさい、このルールに反してはいけませんよということを示すのは全然構わないんですけれども、インパクトの創出のところであまり規範性ということを強調しすぎて、このガイドラインを守りなさいというようなことを強く言うのは、私はよくないかなと思っています。

 それはなぜかといいますと、私、財団の顧問とは別に、インパクト志向金融宣言の事務局の仕事をしているのですけれども、結構数多くの既存のプレイヤーの方からは、「安間さん、これが出ると、全部これに合わせて我々の既存のインパクト投資のありようをアジャストしなくてはいけないですね」とか、そういう質問とか懸念が表明されてくるんです。

 私は、「この指針は、そんなことないですよ」ということを申し上げていまして、「これはあくまで共通の理解をつくっているだけで、これに強い規範性を求めているわけではない」と説明してきています。
そういう観点から、私も若干の修文のお願いをした例文があります。例えばどういうことかというと、「先行的に取り組んでいる既存のプレイヤーの現在の取組をことさらに規制・制約するものではありません」とか、一番最初のところにくわえて、「これは主として新しく始められる方のためにつくったものであるので」とか、そういうような2つの修正を入れて、その点を明確にしたほうがいいのではないかということを事前に申し上げていました。

 ここで特に皆さまに確認していただきたいのは、以上のような私の理解で正しいのかということと、もし正しいのであれば、そういう修文が可能かどうかということについて議論していただければと思いました。

 2点目は、細かいことですけれども、ページ数で言うと、基本的要素の8ページですね。8ページのところで、先ほど西田さんから御説明のあった第2パラグラフの部分ですけれども、3行目、「実現しようとする投資収益が、併せて実現を図る効果と、投資の戦略として整合的に理解し得ることが重要と考えられる」とあります。先ほどの西田さんの御説明を聞きながら読むと、確かにそういうふうに読めるのですが、ちょっと分かりづらいかなと私は思っています。

 要は、投資収益がインパクトとどういう関係性・関連性があるのかということをきちっと理解・説明し得るようにしていくことが重要だということかと思います。よくあるのはインパクトが統計的な相関で収益と関連しているだとか、あるいは、因果仮説としてインパクトが収益性とつながっているというような、そういうことを企業の方も統合報告書を通じて一所懸命に説明されようとしている。そういうことと関連しているので、「投資の戦略として整合的に理解していることが重要」と、そういうふうな表現でも分かるのかもしれないですけども、もうちょっと投資収益と効果の関連性とか関係性とか、場合によっては相関とか因果という言葉を少し加えて、ここを分かりやすくしたほうがいいかなというのが2つ目のポイントです。

 以上です。

【柳川座長】
 ありがとうございます。今の2つは少し御議論を、大事なところなので伺っておいたほうがいいかなと思うんですけれども。

 まず、後のほうから行きましょうか。2番目のところで、8ページの整合的に理解し得るという。どうですかね。「整合的」は確かに分かりにくいので、関連性とか関係性のほうがすっきりする反面、そうすると、ある種の因果関係とか連関とかを示さなきゃいけないのかみたいにも見えるようなワーディングでもあるかなと思っていて。私は、今決める話ではないですけれども、皆さん、ここの確かに日本語としては、整合的に理解し得るというのはやや分かりにくいといえば分かりにくいんですが、皆さんの御意見何かありましたら、いかがでしょう。

【水口副座長】
 おっしゃるとおり、必ず相関せよとか因果関係がというのはなかなか難しい面もあるかなと思います。ただ、このぐらいの収益が見込める、このくらいのインパクトが見込める、そこにバランスが取れていれば投資してもいいじゃないかという、こういう感覚ですか。

【安間メンバー】
 あえて申し上げているのは、普通のファイナンシャルリターンオンリーの投資家の方からは、私がインパクト投資の宣伝推進をするときに言われてしまうんですけれども、「いや、安間さん、うちはもうとにかくリターンオンリーでやっているので、インパクトとリターンが関係なければ、もうそんな説明してほしくないし、必要ないし、余計なコストをかけないでほしい」と、そういう話になってしまうことがあります。

 かといって、私から「リターンオンリーの投資家の行動が間違っているとか、そんなサステナビリティを考えないあなたは間違っていますよ」なんていうことを全然言うつもりないんですけれども、そういう方のためにもインパクト投資をうまくできるだけ活用していただきたいなという思いがありますから、可能な限り説明していく必要性はあると思います。お隣の太田委員はまさにそういう御説明を分析されているわけなので。そういうことをエンカレッジするような、そういう文言があったほうがいいかなというこういうことです。関係性や因果を説明するのは難しいというのはよく分かっています。

【水口副座長】
 太田先生の精緻な分析は大変面白かったんですけれども。

 昨日、別のシンポジウムで元ブラックロックのエリックさんにお会いして、全ての投資家がインパクト投資しなきゃいけないのかというと、別にそういうわけではないだろうと。当然リスクオンリーの投資家もいるけれども、ただ、流れとしてはインパクト投資をする人たちがどんどん増えてきているし、そういう社会になっているんだというときに、おっしゃるお気持ちはすごくよく分かりますけれども、そもそも俺はリターンオンリーでやっているんだと言う人はインテンショナリティーがないので、それはインパクト投資にならないんじゃないんですかね。そんなことはないですか。

 インパクトが当然整合的なリターンを生み出すということがないと投資はできないけれども、単純にリターンだけを求めているんだという人は、それはそれでしようがないのではないかという気もするんですけれども、そんなことはないですか。

【安間メンバー】
 いやいや、本当はインテンショナリティーを持ちなさいと、そういう気持ちもあります。ただ、日本でこれだけ実質賃金も上がらない中で、皆さんリターンの確保のために、一生懸命に専念されている、そういう報道を見ているにつけ、インテンショナリティーが弱いからとか無いから、あなたはインパクト投資をやってないですよというふうに言うのは、推進上はよくないかなと私は思っています。

【柳川座長】
 ほかの方、何か御意見とか。なかなか急に言われても。渋澤委員。

【渋澤メンバー】
 よろしいですか。

【柳川座長】
 じゃあ、いいですか、吉澤委員。渋澤委員で吉澤委員に行きたいと思います。じゃあ、渋澤委員、どうぞ。

【渋澤メンバー】
 5時に出なければならなく、申し訳ないです。

 取りまとめありがとうございます。ここまで固まっているので、内容をあまり変えることないかと思いますが、ページ7にインパクト投資の戦略の具体化で「Theory of Change」を御紹介いただきましたが、本文では、このロジックモデルの要である「アウトプット」「アウトカム」という言葉が1つも出てきません。実績ある老舗インパクトファンドでも、インパクト測定はほとんどアウトプットであり、アウトカムはなかなか難しいという話を聞きます。

 ですから、そういう意味では、インパクト測定と言った場合、それがアウトプットなのかアウトカムかという整理が必要だと思います。その文脈で最近出てきているキーワードは「ハーモナイゼーション」です。日本語で言えば「調和」ですかね。要は、インパクト投資家がインパクトアセットマネジャーに同じことを異なる測定値で要求するとか、全く異なる測定値を要求する等の課題があり、ハーモナイゼーションというのは必要という声が上がっているのです。

 もしかすると、水口副座長の下で立ち上がるコンソーシアムで、インパクト測定の分科会が設けられるので、そこでもうちょっときちんと協議したほうがいいかもしれません。

 報告の中でアウトプット、アウトカムの整理がないので、少しそれは入れたほうがいいと思います。その先のハーモナイゼーションにすぐ出る答えではありませんが、議論する場があってもいいんじゃないかなと思いました。

 以上です。

【柳川座長】
 この報告書の中でどこに織り込んでほしいとか具体的にありますか。

【渋澤メンバー】
 通常、報告書の最後には「今後の課題検討」という項目があるので、今後の理解度を高めるためにそこでいかがでしょう。

【柳川座長】
 その課題認識はよく分かるんですけれども、これは報告書ではなくて指針なので、指針の中でどう盛り込むべきかというようなところですね。今の話は。

【渋澤メンバー】
 指針であっても、ここは結構大事だと思います。測定という言葉は使われているけれども、それがアウトプットなのかアウトカムかという整理がされてないです。そんなの関係ないやという普通の投資家は別として、インパクト投資家が求める測定でもハーモナイゼーションされていない実態があるということなので、指針として今後の議論の必要性、理解を高めるということが重要だと思います。

【柳川座長】
 だから、それをどこに盛り込む御希望ですかという御質問なんですけれども。

【渋澤メンバー】
 それはお任せしますという答えです。

【柳川座長】
 お任せ。分かりました。

【渋澤メンバー】
 すみません。ありがとうございます。

【柳川座長】
 最後のところですかね。

【水口副座長】
 あるいは、基本的要素の3の効果という、そこの説明……。

【柳川座長】
 効果のところの注ですかね。

【水口副座長】
 御指摘はそのとおりだと思います。

【柳川座長】
 ここに、今後、そこはちゃんと詰めなきゃいけないよねという話なので、それはそのとおりなんですけれども。3のどこかに。

 そうしたら、今の御意見はどこに入れるか考えますけれども、基本的要素3の12ページ辺りのどこかの注で、ここで決められる話ではないので、今後ちゃんと詰めなきゃいけないというところだと思いますので、注に入れることで考えたいと思います。渋澤委員、それでよろしいですか。5時までというお話なので。

【渋澤メンバー】
 お願いします。ありがとうございます。

【柳川座長】
 吉澤委員、お願いします。

【吉澤メンバー】
 吉澤でございます。本当に多くのコメントに対しての対応を、事務局の方、どうもありがとうございます。お疲れさまです。

 特に修文とかのコメントではないんですけれども、要素4のところ、ここは非常に大事だというふうに思いますので、僕は別出しにしていただいているところについては非常にアグリーです。個人的には、新規性というところについては、ここは要るかなということも思っているところですので、「変革」、この言葉への変更についても全然いいかなと。あえて「変化」ではなく「変革」としているところも非常に同意できるところかなと思います。

 一方、対話といいますか、当事者同士のコミュニケーションのところ、ここも共通といえば共通なんだけれども、あえて全部にばらけているというところも非常にいいかなと思っておりまして、やはり事業会社の立場からいたしますと日々いろんなものを開示だったり説明をしておりますけれども、それぞれの要素についてより場面場面の展開を気にするということで、これは非常にいいかなと思います。

 これも正木委員からもありましたけれども、特に要素3のところで、いつも企業側からすると要求されるものなんですけれども、あえて金融サイドを主語にして載せていただいているところにつきましては、私としても非常にいい指針かなというふうに思っております。

 以上なんですけども、あと、すみません、15ページの下から4つ目のパラグラフで誤字がありますので、それだけ。本当にこのことで恐縮なんですけど、「指示」という漢字が、多分、違うと。

 以上です。

【柳川座長】
 ありがとうございます。その他、いかがですか。事務局のほうから何かお考えとかコメントあれば。

【西田サステナブルファイナンス推進室長】
 8ページ、先ほど安間委員からいただいた「因果」のところですけれども、「投資の戦略として整合的に理解し得る」という記述については、書き方の問題として複数の委員の方からもう少し分かりやすく書けないだろうかというコメントをいただき一旦修文案を記載させていただいていますが、一方、内容面として、「因果」関係までを明確に求めると厳格になるのではというコメントもいただきまして、後ろの箇所でも同じような箇所がありますが、いずれも、今日御議論をいただければありがたいと思っています。

 あと、別の委員の方から、positive feedback loopとシナジーと、英語が2つ載っているのはどうかという御質問をいただいて、これは経緯としては、報告書をまとめた議論の際に、まず、インパクトと事業性の実現が、トレードオフではなく、その反対の関係、いわばwin-winの関係にあるということを打ち出していくことが重要だ、ということで、positive feedback loopという表現が出てきましたが、さらに言うと、両者が単にwin-winの関係というよりは、付加的に高め合っていくぐらいの状態もあるだろう、ということで、シナジーという表現はどうか、こういう御議論がありました。
 
【柳川座長】
 ちょっと皆さん、少しお考えいただいて。高塚委員。

【高塚メンバー】
 ありがとうございます。positive feedback loopとシナジーの違いについて質問したのは私です。もともと私の理解で、positive feedback loop自体が、単に2つが併存しているということを超えた表現だと理解しており、そこについて、インパクト投資家として収益性とインパクトとの両立の上で高め合っていくという点で我々としては歓迎したい表現であると考えてきました。特に相互に「補完」「強化」し合うという表現があったと思います。

 ここで言う「強化」という言葉が、西田さんが先ほどご説明くださったトーンよりももう少し積極的な表現であるという理解で、収益性とインパクトがお互いに影響し合って高め合っていくという、スパイラルが上がっていくようなことをイメージしておりましたので、それと「シナジー」が違うということになったときに、言葉の遊びをするつもりはありませんが、positive feedback loopの意味合いがそれほど強くないんだなという逆の理解になってしまうのかなというのを懸念してのコメントではございました。Positive feedback loopということの意味が「シナジー」とまでは言っていないよということになりますと、positive feedback loopの意味合いを逆に押し下げないといいなというふうに思っております。

【西田サステナブルファイナンス推進室長】
 今の点は、P15の1パラ目のところに記載がある点かと思います。好循環の実現に止まらず、シナジーを実現できる可能性もあると書いてありますが、その前の14ページの真ん中の修正が入っているところで、「様々なイノベーションや工夫の下で相互に補完・強化し、両立する関係」、positive feedback loopになるものと。今、いただいたお話は、強化というところまで14ページで入っているのであれば、それ以上のものはないだろうということですよね。

【高塚メンバー】
 そうですね。シナジーという言葉を別途置くことによって、positive feedback loopの意味合いが薄まるというか、士気が下がる感じになるんだともったいないなというふうに思いました。

【水口副座長】
 そういう意味では、「こうした取組みにより」以降の3行がなければいけないのかと言われると同じような、ニアリーイコールの意味であるならば、むしろないほうがすっきりするかもしれませんね。

【高塚メンバー】
 そうですね、個人的にはすっきりします。ご検討いただければ嬉しいです。

【柳川座長】
 一般的に言うとシナジーって割と幅広い言葉の使われ方をするので、読む人によってイメージが大分違う言葉、違うことをイメージする人が多いのかなと思います。ですので、かなり広いものをイメージする人もいれば、もう少し狭いものをイメージする人もいるんだろうと思いますので、そういう意味では、positive feedbackのほうがかなり、割と狭くきっちり考えた議論に見えるんだと思うんですね。

 それであれば、そこからさらにもう広げる概念をわざわざつなげるよりは、シナジーの言葉を使わずに、ここういうpositive feedbackという具体的なものを通じて、一般的にシナジーと呼ばれているものの一つが発現するというような感じに近いイメージではあるんですけど、個人的には。そういう意味では、シナジーが必ずしも、おっしゃるようにここの3行がなくてもいいのかなという感じはします。

【高塚メンバー】
 あと、別件になりますが、先ほど出た「総合的に理解し得る」のもう1か所の「整合的に理解し得る」の箇所も、文章が意味するところを汲み取るのが難解だなと思いました。

【水口副座長】
 さっきの8ページですね。

【高塚メンバー】
 その他にもう1か所あります、「整合的に理解し得る」。

【西田サステナブルファイナンス推進室長】
 7ページ下から2つ目のパラ、「特に」というパラです。

【高塚メンバー】
 そうですね。ここです。

【西田サステナブルファイナンス推進室長】
 元は「特に、投資や事業が如何に社会・環境の変化に貢献するかの戦略を具体化し、市場や事業の拡大の見込みも含めて、「収益性」が投資プロセスを通じ整合していることが重要」というふうになっていまして、まず、この「拡大見込みも含めて整合」というのが、やや分かりづらいという意見をいただきました。8ページの記載は、収益と効果というのが「投資の戦略として整合的に理解し得ること」という記載、7ページは「市場や事業の拡大見込みといった事業の戦略が効果と整合的理解する。」と。

【柳川座長】
 関係性が分かるということですかね、分かりやすく、平たく言うと、「整合的に」。

【正木メンバー】
 とても分かりやすい表現だと思います。

【柳川座長】
 関係性ぐらいだと、あまり因果関係とか相関とかというところまではイメージないので、「関係性が分かる」ぐらいで。

【高塚メンバー】
 そうですね。ただ、水口先生もおっしゃったように、関係性があるとは限らない場合もあるかもしれないところ、positive feedback loopの思想からいくと、関係性がないと相互に補完・強化し合えないということなので、仮にそう考えるなら、やはり安間さんがおっしゃることが近いのかもしれないです。この点、個人的にはどっちつかずで結論を持っておらず、さきほども口を挟めずにおりました。

【安間メンバー】
 そうですね、私が求めているのは、必ず因果関係を説明しなさいとか、あるいは、統計的な相関をもって説明しなさいというような、柳モデルじゃないですけど、そういう相関を出しなさいとか、そういうことを言っているわけじゃなくて、リターンとの関係性を、インパクトについてできる限り説明することが望まれるぐらいの話です。

 だから、そうすると何が生まれるかというと、あまりインパクトに御関心のない方も、インパクト投資というものに関心を持ってインパクトのことを勉強しようとするという、そういう流れにはなるので、我が国の市場においては、まず、4要素をフルに備えたインパクト投資家をどんどん促進するというようなことも、もちろんそれも重要なんですけど、そういうことに至る前に、もう少しインパクトにまず関心を持ってもらうという観点では、可能な限りインパクトとリターンの関係性について説明できることが望ましいぐらいの感じがあると、まさにアナリストの方とかがいろいろ一生懸命やっている取組が報われるというか、そういう面があるのかなと思います。

【柳川座長】
 「関係性を説明することが重要」くらいでいかがでしょうか。だから、もうちょっと言えば、今の安間委員の御趣旨を少し広げて言えば、関係がないように見えても、よく考えると関係してくる部分、きっとあるだろうと。それは、そういうところをちゃんと見ていってほしいんだよと。だから、スパッと切り離しちゃって収益だけを見ることも当然できるんだけど、その関係性を見ていくことでインパクト投資的な発想をみんな持ってほしいなというのが御趣旨だと思いますので、そういう意味では関係性を少し見つけてね、探してね、考えてねというようなニュアンスが今ぐらいだと入るかなと。それが逆に、因果関係とか言っちゃうと、因果関係までは当然せずに、きつ過ぎるがゆえに、あまりそこに至らないということになるという、多分、御趣旨だと思いますんで。

 そんなところでよろしいですか、そこの章は。

【高塚メンバー】
 他方で、「整合的に」理解するということは、関係性が考えられた上で、それが戦略と一致したり、方向性が同じであることが確認されたりするところまでの行動が含まれるのであれば、関係性を確認するだけでも不足ということにもなります。迷いばかり提示して恐縮ですが、「整合性」というのは何かが「一致する」ということ念頭に置いた表現なんでしょうか。

【西田サステナブルファイナンス推進室長】
 パブリック・コメント等を経た事務局の印象としては、「関係性を説明する」とフラットに記載しただけですと文書としては意味が取りづらく、どういう関係性であるかという点がないと理解が難しいと思われるかと。ただ内容面では、難しいというご意見を頂いていますがその趣旨は、例えば、インパクト投資をやりますという投資方針や要綱等を出すときに、「関係性」という項目を立てて、収益と事業がどう関係しているかを個別定量的にすべからく記載するとするとやや厳しい、というご意見だと理解しています。

 論点としては、やはり因果関係とか関係性の説明をどこまで求められるかという点で、インパクト投資の要素として重要であるから説明してくださいと書き切ってしまうという考え方、いやそれは厳しいという考え方、その強弱の問題は非常に皆様、気にされていると思います。

 今いただいた最後の修文は、私の理解ですと、市場や事業の8ページのほうの部分であれば、「収益と効果の関係性を説明することが重要と考えられる」という。

【柳川座長】
 ただ、もう一つは、だから、整合的か関係性という話にしておくか、もう一つは、だから、理解し得るとか分かるって話と説明するということ。御指摘のような話はちょっと要求としてきついよねというのは、結構、説明するとかというところになるとちょっと厳しいんじゃないかと。ここで工夫されたのは「理解し得る」というのなので、「関係性が分かる」というぐらいにしておくと、説明を求めないというニュアンスが出せるかなという。ちょっと僕の浅知恵なんですけど、「関係性が分かる」ぐらいでどうでしょう。

【水口副座長】
 賛成です。いろんな意見があるんですけども、やっぱり国際的な基準と整合しているのかというときに、日本が追加的にいろいろ要求事項が増えているように感じる人もいるみたいですし、それから、要求事項が多くなるとやりにくいよという人も、ハードル上がっちゃうということもあるんで、おっしゃるように理解できるというのは一つよい落としどころかなと考えました。

【金井メンバー】
 関係性と因果関係は必ずしも一致しません。因果関係というとインパクト創出までのロジックモデルを連想しますよね。でも、関係性というのは、例えばいい学生が集まれば、収益が生まれ財務価値が上がる可能性が高まるわけですが一定の社会的なインパクトを出している企業だから、ああ、この会社、いいよねと、この会社、入りたいよねということでいい学生が入ってくるということだと思うんですよ。それは、因果関係をロジックモデルで整理する話ではなく、例えば太田さんがいろいろと分析されている非財務と財務の相関分析とか、そこに本当は入っていかないといけない部分だと思うんですよね。

 だから、整合性で少しぼかしてしまうよりは、関係性ぐらいの感じで少し、ある意味で強めの言葉をここで入れておいてもいいような気もしないではないなと思います。

【柳川座長】
 よろしいですか、そのくらい、「関係性が分かる」か、「関係性が理解し得る」か、ちょっと文脈に合わせてその2つぐらいでちょっと考えて。

 では、野村委員、お待たせしました。

【野村メンバー】
 アセットオーナーという立場でお話しさせて頂きます。インパクト投資は、投資家と投資先企業の両者が協力してインパクトを出していくことになりますが、両者には役割があります。11ページの上から6行目「事業を通じ効果を実現する最終的な主体は事業者であり」、インパクトの出し手は事業者であって、投資家は資金を提供する側となります。一緒にインパクトを生み出していく過程で、相互の対話・支援が必要となります。

 もう1点、インパクト投資の投資期間はどれくらいか、短い投資なのか、長期投資なのかという点です。長期的な視点でじっくり対話しながら進めていく、期間としては結構長い投資で、我々アセットオーナー、生命保険会社は非常に興味を持ってインパクト投資に携われるという思いがあります。

 そこで2点、御相談です。一つは、12ページの下に記載のある「指標については」という効果に関する説明部分ですが、KPIは、機関投資家が決めるのではなく、投資先の企業と一緒に特定するという思いが私にはあります。通常の投資と異なり、KPIはインパクトを生み出す企業と一緒につくっていくという点をもっと表現して良いと考えます。

 指標を決める上で、企業と一体という考えが、12ページの下から5行目、「事業者と投資家・金融機関と間での対話・検討が期待される」の意味するところです。この対話と検討は具体的に何かというと、まさにKPIを定めること、インパクト創出のために両者がコラボレーションの中でどういったKPIを特定するか議論し決めることです。通常の投資とは違い、成果を出すまで少し時間がかかるが、両者が対話し助け合いながら効果を創造していくという内容が文章の中で、より強調されて良いのではないでしょうか。

 指標を、KPIをつくる際に、コラボレーションして特定するという思いを入れたほうが良いか、入れないほうが良いか、御意見を頂きたい。私は一緒につくるという意味合いを入れて良いと思っています。

 もう一点は、投資期間の話です。インパクト投資は長期投資であること。15ページ目の「投資家・金融機関と企業との対話」のところで、「長期的な視座をもって」とか、「例えば、長期的な成長により時間をかけて事業性が成り立つ場合には、長期での収益」という表現に、時間をかけながら、対話しながら、コラボレーションしながら、インパクトを創造していくという考えが込められ、長期という考え方とか、時間をかけてという表現は適切で投資期間を考える上で非常に説得力ある表現です。

 意見を述べさせて頂いた2点のうち、1点目の指標、KPIについては、KPI・効果を決めるプロセスの中で事業者と投資家との一体感とコラボレーションが必要であるという表現を入れて良いのではないかという点です。もう1点の投資期間については、短期的ではなく、かといって1年間という具体的な年数を示すこともなく、投資家と投資先企業の両者が長期的な視点でインパクト評価を考えていくことが表現されている点が適切です。御意見いただければと思います。

【柳川座長】
 ありがとうございます。

 今、2点目はコメントということで、1点目の12ページですかね、12ページ辺りのところに関しては、皆さんの御意見。

【太田メンバー】
 まとめていただいてありがとうございます。私、今、野村様の御意見聞いて、すごいはっとして、まさに指摘したところだったんですが、この12ページの、私はこの四角の中の上から3番目、国際的に整備された枠組みを活用するというところにすごく抵抗を感じて、国際的に整備された枠組みを絶対使わなくちゃいけないとなると、恐らくもうインパクト投資の裾野は広がらないだろうなと、日本では、と思ったので、ここは「参考」を入れてくださいと。で、入れていただいてありがとうございます。

 その上で、これを見たときに思ったのが、多分、2年ぐらい前に経団連さんが作られたインパクト指標、あれがどこにも注に書いてないのがすごく残念だったので、国際的な整備にもうとらわれない枠組みとして、まさに今、野村様がおっしゃられた定量的なKPIで、この辺りに注としてあれなんかを入れていただくとすごくいいんじゃないかなと思いました。

 実際、今、事業会社から、実は、多くの事業会社、結構、ROE上がってきたので、いよいよこちらのほうに目が向いてきまして、とにかくインパクトパスを書いてくれと。かつ、それを定量的にやりたい。もう依頼が殺到しているんですよ。経団連さんの指標は、今こそあれをもう1回出すべきじゃないかと思います。

 事業会社のほうから、アウトカムを定量的に示していこうという姿勢が出てきている今こそ、ここまでガチガチにやらなくても、ちょっと通常の投資にインパクトの要素を加味してみようか程度でもインパクト投資と言われるのであれば、長期のリスクマネーの供給が増えてくるんじゃないかなという期待感を持っているので、ぜひ12ページのどこか辺りに、野村様のおっしゃった対話のところですかね、ツールとして経団連のを入れてほしいなと思いました。

【正木メンバー】
 ありがとうございました。

【太田メンバー】
 せっかくでしたので。

【正木メンバー】
 最初の鈴木委員の御意見にも通じるんですけど、交通事故をなくすとか、ソーシャルインパクトの要素としては身近なものもたくさんあると思うのです。そうした身近なSDGs要素にも当然アウトカムが出ると思います。現在の指針案でも、そうしたニュアンスは入っていると思っているし、基本的要素全部をなぞらなければならないものでもないと強調されているので、「国際的に整備された枠組みを参考とし又は活用する」という表現があってもいいだろうと思っておりましたが、身近なソーシャルインパクトを示すものとして、経団連の報告書のことを書いていただけるというのであればそれはありがたい。経団連の報告書は、身近なソーシャルインパクトを出していく、自社のパーパスに即した事業をやっていきましょうという趣旨のことを書いております。国際的に整備された枠組みも、経団連の報告書も参考とする話に過ぎないので、別にこの文章を変えなくてはいけないというものではありませんが、評価いただき、ありがとうございます。

【鈴木メンバー】
 よろしいですか。KPIは実務上というかサステナリンクローンみたいに、例えば金利とパフォーマンスインジケーターが連動するようなケースにおいては、金融機関と事業者で一緒につくり込むということも当然あっていいと思いますけれども、一方で、金融機関がお金を出すときに事業者さんがつくられたKPIを御信頼申し上げた上で、そういう効果があるんだったら、じゃあやりましょうという、それを一緒につくり込むというより、事業者さんのインパクトをアウトプットがあってアウトカムがあって、最終的にインパクトが発現するパスを信頼してやるというケースもあるので、そこは必ずしも全てのケースにおいて事業者と金融機関一体となってつくり込むというよりは、どちらのパターンがあってもいいのかなというふうに私は個人的には、今のお話を伺って思いました。

 その後、エンゲージメントで対話を深めていくということがあれば、どういうつくり方であったKPIであれ、お互いすり合わせというのはできていくと思いますのでちょっとコメントですけど、必ずしも一緒につくり込んだものが必須ということではないような気はいたします。

 以上です。

【金井メンバー】
 その点に絡んでなんですけど、地域金融機関が一番困っているのは、KPI、野心度の決定なんですよね。中小企業は脱炭素なんてやっていられないみたいなところにでも、これやらなきゃいけないよ、社長というところから始まる。他方で、脱炭素に絡むKPIをつくったとき、ほんのちょっと下げればオーケーかというとそうじゃないですよね。一定の野心度は持ってもらわないといけない。ここの議論が一番難しいというのが彼らの主張する部分なんです。

 一方、こういうこともあるんです。いや、そんなおたくに言われてもと言っていた経営者が、次の年になるとガラッと変わっていて、あんたの言うとおりだったと。KPIの野心度をもっと引き上げようというような逆提案があることもあるのです。やはりここの部分でのKPIの設定の対話というのは、実はかなり重要なポイントだろうと思いますので、ちょっとどこに入れたらいいのかなと思いながら見ていたんですけれども、11ページかな、12ページかなとちょっと思っていたんですけど、対話を通じたKPIの設定というのはどこかで入れてもらえるといいかなというふうに思います。

【鈴木メンバー】
 もともとあまり野心的でないパフォーマンスインジケーターをつくられるような方々との対話というのは当然あってしかるべきだと思いますけれども、十分にこういったことを理解されて、もともと自社で野心的なKPIというか、こういうプロジェクトでこういう効果を実現したいということを持っていらっしゃる人々に対して、それを一緒につくり込むというプロセスが必ず必要かというと、私はそうでもないような気がしますけどね。

【金井メンバー】
 ポジティブインパクトファイナンスやったときに、大手企業がそうなんですよ。

【鈴木メンバー】
 ええ、だからもともと多分あれって投融資先が御自身で作られているSDGsの目標に対して、御社で評価されているというか、やっていらっしゃると思いますので、それに基づいて事後的なエンゲージメントが出てくるんだと思うので、KPIを設定する際の対話は多分必要ないと思うんですけど。だから、そういう場合って別に設定する際の対話が必要、マストかというと別にそうでもないと思いますが。

【柳川座長】
 事務局のほうから。

【西田サステナブルファイナンス推進室長】
 今いただいた点はパブコメでも頂いた点でして、関連する記載は、12ページの下から、野村さんにお話をいただいた点が「一般に」で始まるパラグラフが追加されていますが、その直前の「事業者と投資家・金融機関との対話・検討が期待される」という表現でよいかという点、あと目標とするKPIがどの程度野心的であるべきかという点については、「一般に、効果創出と実現可能性の双方を踏まえた有効な指標設定の在り方に係る対話・検討が期待される」との記載を追記しており、実現可能性と効果創出双方を記載する形としています。

【高塚メンバー】  その点に関しては、鈴木さんの違和感を汲み取ろうとすると、「対話」という言葉に対する、定義やイメージの違いがあるように思います。恐らくですが、野村さんや金井さんがおっしゃる意味の1つは、インパクトKPIが企業自身が追求したい、すべきと思ってインテンションを持って事業にあたるということが1つ大事であることに加え、他方で、それが公開開示され、ステークホルダーとの対話に使えて有効な手段になると尚良いのだと思います。視点として、企業サイドと投資家・市場サイドの双方が必要だ、というのが本質的な意味です。この双方が一致するといいなという意味で、「対話」や「整合性」が必要だという意味なのかなと思います。なので、それがいわゆる「お話し合いが必要」ということではなく、本質的な一致を見ることを指して「対話」と言っていることが分かるといいなと。

【鈴木メンバー】
 目線合わせみたいな感じということですよね。

【高塚メンバー】
 目線が合わないと、企業が仮に利己的に「自分たちがやりたいのはこれだ」と一方的に主張しても、市場に伝わらない。この提言書で想定しているのは、インパクトが市場との対話に有効に使われるといいなということが含まれているとすると、企業側の目線だけでなく市場の目線も必要だと。それが企業側に元から両方備わっているのであれば別に対話(お話し合い)は必要ないかもしれません。おそらくですが、金井さんも鈴木さんも野村さんも、最終的には同じことをおっしゃったのかなと。言葉の定義というか、イメージの違いだったのかなというふうに横で聞いておりました。

【柳川座長】
 まずはKPIの設定に関して話し合ってほしいという意味からすると、事務局がお話になっていたように、最後の行で一応「有効な指標設定等の在り方に係る対話・検討」と書いてあるので、そこは織り込んだという。

【高塚メンバー】
 そうですね、そう思います。

【柳川座長】
 もう一つは、対話という言葉がどの程度、どういう意味を持つのかというのは、ややちょっとぼやっと、いろいろあるので。ここを少し一緒に検討するとかという話を入れるか、でもそこまで求めるのは、ちょっとかえって手かせ足かせになるんじゃないかというのと御意見が少し分かれているという感じかと思うんです。そこをどうするかというところですね。

 そのほかの皆さん、いかがでしょうか。

【野村メンバー】
 ここで私が言っている対話というのは格式張っているもの、議決権行使を行う際の企業との打合せではなく、連携、コラボレーション、一体感という意味合いです。上場企業は大きな目標としてKPIを策定しますが、実際プライベートエクイティのインパクト投資ではどういった効果を狙うか、インパクトを出していくか、投資家と投資先企業が一緒に議論し決めています。本当に悩みながら話し合いながら決めていく部分が大きいです。対話という表現がよく使われますが、連携とか、一体感というような表現がふさわしいと考えます。

【鈴木メンバー】
 ハンズオンで投資先を育てていかれるようなケースには、それは必要なプロセスだとは思いますし、そこに特に異論はございませんけれども、必ずしもそういったことが必要ないケースもあるのではないかというのが私の意見でございます。

【柳川座長】
 そうすると、例えば修文案としては、最後のところに「投資・検討が期待される」に、投資・検討、あるいは必要に応じて一緒に考えるみたいな文章をつけると、必要があればというようなことで。何て言ったらいいですかね、一緒につくるというのは。野村委員、何か必要に応じて何とかするというときに、単語としてどういうような形ですか。一緒につくるというのもちょっと何かあれかなと。協力して作成ですか。

【野村メンバー】
 そうですね。協働、コラボレーション、連携という意味合いです。どちらか一方が決めるということではなく、一緒につくる、決めていくというニュアンスです。

【柳川座長】
 じゃ、「投資・検討、必要に応じた相互連携が期待される」くらいでよろしいですかね。

【野村メンバー】
 はい。

【柳川座長】
 違和感、大丈夫ですか。では、そういう感じということで。

 また御意見あればお出しいただくとして、手を挙げていただいたオンラインの林委員、お願いいたします。

【林メンバー】
 御指名ありがとうございます。先ほど来の議論につきましては、KPIのところ、御提案いただいたような修正がよろしいかなというふうに思います。

 私からはコメントだけさせていただきたいなということで、手を挙げさせていただきました。昨年第6回の会議だったと思うんですけれども、西田さんから、この基本指針について、決め切りで進めるということじゃなくて、柔らかい段階から能動的なアプローチで意見を求めていくという話があったと思うんですけれども、そういった発想で意見募集していただいて、指針自体がよりよい内容にブラッシュアップされたのかなというふうに思っておりまして、安間さんからもプロセスがよかったという御発言があったと思うんですけれども、私も本当にそうだなというふうに思いました。いろんな意見が出たので取りまとめ御負担あったと思うんですけれども、御尽力いただきまして、本当にありがとうございました。

 あと、議論をお聞きしておりまして、8ページのところも、収益と効果の関係性が分かるぐらいのほうが私も確かにスーッと頭に入ってくるかなというふうに思いましたので、そういったような表現がよろしいのかなと思いました。

 その他、私から、指針の内容自体に修正をお願いしたいという意見はありませんけれども、2点ほどちょっと簡単にコメントをさせていただきたいなというふうに思います。

 1点目は、基本指針自体の全体に対するコメントなんですけれども、意見募集の中でも、要素4の位置づけは様々な意見が出ていたと思います。改めて基本指針を導入することのインパクトというんですかね、基本指針の効果として何を目指すのかということを考えたときに、単にインパクトウオッシュみたいなものを防ぐため、ということだけであれば、インパクト投資のプロセスとして備えるべき要素を明らかにするという観点からは、やっぱり要素1から3が大事ということになるんだと思うんですけれども、単に指針の効果がウオッシュを防ぐことに貢献しました、ということだけだと、せっかく導入したのにもったいないなというふうに思います。

 なので、指針を導入することのインパクトとして、やっぱり要素4に挙げられているinnovation/transformation/acceleration、インパクト投資のおかげでこれが進んだよねとか、基本指針の導入のおかげでこれが進んだよね、という効果のところが個人的には大事だと思っておりまして、吉澤さんからも同じような御発言あったかと思いますけれども、その意味で要素4というのはとても強調すべき、大事な点にすべき要素だというふうに思っておりまして、こういった形で取りまとめをしていただいて本当によかったのかなというふうに思っております。

 あともう一つ、これも今後に向けてのコメントなんですけれども、先ほど来KPIのお話もいろいろ議論が出ましたけれども、意見募集の中でも、コンソーシアムへの要望に関する意見がそれなりの数あったのかなと思いました。中でも特にデータ・指標の整理・整備とか、IMMの手法の発展に関して、コンソーシアムの今後の役割に期待するようなコメントが多数あったのかなというふうに思っています。私自身も金融庁の金融研究センターの特別研究員として、IMMにおける指標の設定とか活用の在り方について研究に従事させていただいておりますけれども、やっぱりここのところが今後、インパクト投資というのが本当にインパクトを持つというか、インパクト投資がなかった場合と比べたときの効果が実現するために最も重要な、実務的には特に重要なところだと思っておりまして、ここは民間の創意工夫に委ねられているところだとは思うんですけれども、コンソーシアムも含めて金融庁さんからも、引き続き様々な形で御支援をいただけると大変ありがたいのかなというふうに思っておりますし、基本指針の要素4の実現にも、非常に関わってくるところかと思いますので、そこのところをお願いとして申し上げたいなというふうに思います。

 私からは以上です。

【柳川座長】
 ありがとうございます。要素4の位置づけは、非常に重要なところだと思います。

 そのほか、オンラインも含めて何か御意見等。では、木田委員、お願いいたします。

【木田メンバー】
 ありがとうございます。私も基本的指針そのものに修正等の意見は特にありません。ただ、これだけたくさんのパブコメを含め、ここまで仕上げていただきましたことに本当に心から感謝申し上げます。

 印象として、幾つか地域に係る記載がございまして、地域そのものに限定した話ではないんですけれども、例えば2ページの一番最後の行に、「サステナブルファイナンスの1分野として全体として推進を図る」というような書きぶりがあることでイメージをしやすくなる方もいらっしゃるかなというふうにも思いましたし、それから、5ページのところ、インパクト投資の基本的要素の中に、対象となる企業も、先ほどお話も出ましたけれども、中堅・中小企業であるとか、地域発の創業企業というような記載も加えていただいていますので、この辺りもより分かりやすくなっているのかなというふうに思います。その他、先ほどインパクトの指標をどうするかというところは、最終的に皆さんの御議論の結果、着地するところで、私としては理解できるかなというふうに思っています。

 ほかに自分たちが金融機関として、やはりこの後、力を入れていかなければいけないかなというふうに感じましたのは、8ページのところに経営戦略の関係性ということで、私たち地域金融機関自体も、インパクト投資、インパクトファイナンスをどのような経営戦略としてこれから取り組むのかというようなところも、これから、一生懸命取組を進めなければいけないと改めて思ったところです。

 また、9ページのところ、「意図」と異なる「効果」等の考慮というのもありましたが、やはり私たちも脱炭素に取り組む中で、プラスのインパクトだけではなく、結果として自然資本に負の影響があったりするような案件を組成してはいけないなと感じているところですので、この辺りも分かりやすく伝えてくださっていると思っています。

 最終的には、私たちとしては、この後この指針を踏まえまして、どのように実務で取組を進めるかというところが一番大事かなと思います。お話の出ておりましたコンソーシアムの中で、その辺りはより議論を深めて、やり方のところを考えていけたらいいのかなと思っております。

 本当にいろいろお世話になりました。ありがとうございます。私からは以上です。

【柳川座長】
 ありがとうございます。そのほかはよろしいですか。どうぞ。

【安間メンバー】
 一応確認なんですけど、この指針の規範性については……。

【柳川座長】
 そこを最後に議論したいと。

【安間メンバー】
 すみません。

【柳川座長】
 どうぞ、おっしゃってください。

【安間メンバー】
 すみません、付け加えることはないんです。

【柳川座長】
 そうですか。さっき飛ばしちゃったから。2番目だけ議論したので。最初におっしゃっていた規範性のところをどうするのかという御指摘があったと思うんで、ここに関して御意見をちょっと伺っておいたほうがいいかなと思うんですけど、いかがでしょうか。6ページですね、主にここのところに関して。

【鈴木メンバー】
 いろんな場所に創意工夫を求めますとか、継続的に改善しますという書きぶりがありますので、必ずしも100%もう動かしようがない規範ですという読み方には、私は多分できないんだろうと思っていまして、これをベースに各金融機関がそれこそ、くどいようですけど、自社の経営戦略というか、マテリアリティー、ミッション等々も踏まえていろんなインパクトを発現するということだと私なんかは理解していますので、あまり強い規範性はないように読めるのではないかと私は理解しています。

【安間メンバー】
 そうですね、私もそう思うんですが、詳細な投資の要件ですとか、創意工夫を制約するものではないということだけだと、指針よりも発展する分には構わないとか、細かいところまでは縛らないけどという意味があると思うんですけど、それ以外のことも含めて、別にこれをもって直ちに既存のプレイヤーの行動を改める必要がないという理解が、この検討会であれば、私はそれでいいと思います。こういう議論もちょっと議事録に書かれるのであれば、なおさらのこと結構かなと思います。

【柳川座長】
 よろしいですかね。なかなかこの検討会、最初から少し抱えていた課題というか、金融庁がこういうものを指針として公表するということが持つ規範性というのは、なかなか人によって意見、感じ方が大分違うので、そういう意味ではどの程度そこを文章として残すかというのは難しいですけれども、鈴木委員おっしゃったように、大分こっち側としては、縛るものではないんだよということをいろいろ書いたつもりが、事務局の思いだと思うんですけれども。そこはそういう議事録を残すということでよろしゅうございますか。

【安間メンバー】
 はい。

【柳川座長】
 ありがとうございます。どうぞ。

【西田サステナブルファイナンス推進室長】
 3ページのところで、脱炭素とか大きい課題が並んでいるじゃないかと。先ほど経団連さんのレポートを後段のところで引いたほうがいいのではないかということもありましたし、あと水口先生から、地域固有の課題というのもここに例示に入れればいいじゃないかという話で、そういう理解でよろしいでしょうか。

 あともう1点、15ページのでシナジーのお話がありましたけれども、私の理解としては、御議論もいただいて、ないほうがシンプルで分かりやすいのではないかということだったかなと理解しておりますが、この点も確認させていただければと思います。

【柳川座長】
 よろしいですか。もし御異論なり御意見があれば。オンラインの方もよろしいでしょうか。では、そういうことで確認をさせていただいたということで。

 そうすると、およそ御意見は集約できたかなと思っておりますので、先ほどあったような、渋澤委員がおっしゃったようなところを注のどこに具体的に入れるかとか、ちょっと細かいところはあるんですけれども、おおむね御了解いただけたかなと思っておりますけれども、よろしいですか。

【鈴木メンバー】
 あと最後に1個だけ。先ほど木田さんが御指摘になられていた8ページの金融機関に欠けている経営戦略というところがあると思うんですけど、私が冒頭申し上げたミッションとかマテリアリティ、ここに経営戦略のところに例えば括弧をつけて、ミッションとかビジョンとかそういったことを入れていただくということは可能でしょうか。そうすると、インパクト投資の経営戦略上の位置づけがより分かりやすくなるかなというふうに思いますし、実際に開示する際にも、やっぱりミッションとかパーパスにそぐう案件をなるべく打ち出しやすく、例えば地銀さんだった地域ものとか、VCさんだったら得意とするバイオとか医療とかフードとか、そういうところを打ち出しやすくなるかなという観点でして、別に追加しなくても分かることだとは思うんですけど、今日的なというか統合報告書的なワーディングでいいますと、やっぱりビジョンとかミッションとか入っていると、ああ、そういうことなのねというのが分かりやすくなるかなと思いましたので、ちょっとコメントさせていただきます。

【柳川座長】
 そうすると、8ページの……。

【鈴木メンバー】
 太字の真ん中辺の「経営戦略あるいは投資戦略」のところで、経営戦略というところを少し幾つか括弧をつけて、例えば、金融機関ごとのビジョンとか書いていただくといいかなと。

【柳川座長】
 経営戦略等との関係性というパラグラフの2行目ですね。

【鈴木メンバー】
 そうですね。「経営戦略あるいは投資戦略全体の方針」というところの。

【柳川座長】
 ここに経営戦略、括弧してミッションやパーパス等も含むと。

【鈴木メンバー】
 そうですね。金融機関ごとのミッション、パーパス等々とマテリアリティ。

【柳川座長】
 その前が「投資家・金融機関が掲げている」と書いてあるので、括弧の中、金融機関要らないかな。

【鈴木メンバー】
 ええ、そうですね。

【柳川座長】
 経営戦略だけ、経営戦略じゃなくて、ミッションやパーパスを含むと。

【鈴木メンバー】
 そうですね。経営戦略というと、普通中期のビジョンというイメージになってきますので、より長期のミッション、パーパスも含むという形にしたほうがいいかなと思います。

【柳川座長】
 それはそのとおりだと思いますので、いかがでしょうか。特に違和感はないですかね。オンラインの方もよろしいでしょうか。じゃあここもそういう形での修文で。

 それでは、そういうことで、おかげさまで御協力いただきましてありがとうございます。いろいろ議論がまとまらなかったらどうするかと思ったんですけど、一応今のようなことで論点それぞれ確認していただきましたので、恐縮ですけれども、今残っている細かいところに関しては、事務局の方と御相談して修正した上で、座長と水口副座長に御一任いただければと思いますけれども、よろしいですか。オンラインの方もよろしいですか。

 ありがとうございます。ということで何とかなりましたので、あとは事務局から補足があればというところでよろしいですかね。

【西田サステナブルファイナンス推進室長】
 ありがとうございます。できるだけ早く修文させていただき、修文箇所を明確に分かりやすいような形にしてお送りさせていただきますので、御確認いただけき、特に気になる点などあればお話をいただいて、それ以外の部分は座長、副座長にご一任いただければと思っております。

 あと、英語も修正する必要がありますが、よろしければこの点はお任せいただければと考えております。

【柳川座長】
 ありがとうございます。そういうわけで、非常に多様な御意見をいただきまして、どうもありがとうございました。

 この検討会は一昨年の10月から議論を始めまして、本日を含めて合計9回議論を行ってきたということで、先ほどお話があったように、スタートした頃はまだコロナがといっていたような頃から始めて随分時間かかったわけですけれども、皆さんの大変な御尽力をもってこういう形でまとまったことは、座長としては大変ありがたく思っておりますし、報告書と基本的指針の策定ということで議論には一区切りがつけたかなというふうに思っておりますので、一応この検討会は今回でお終いということになっておりますので、あとは先ほど御議論出てきたようないろんなところで、また細かいところの詰めが必要だと思いますし、いろいろ動いていく中ではやっぱりそのたびに考えていかなきゃいけない、あるいは国際的なハーモナイゼーションも考えていかなきゃいけない難しい課題だと思いますけれども、非常に重要なことだと思っておりますので、またぜひ皆様と引き続き議論ができればと思っております。

 それでは、本日の会議はこれで終了させていただきます。どうも御参加ありがとうございました。
 
―― 了 ――
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総合政策課サステナブルファイナンス推進室

03-3506-6000(代表)(内線 2918、2893、5404)

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