会計監査についての情報提供の充実に関する懇談会(第2回)

1.日時:

平成30年12月4日(火)13時00分~15時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室



【八田座長】
 それでは、ただいまより第2回会計監査についての情報提供の充実に関する懇談会を開催いたします。皆様ご多忙のところご参集いただきまして、まことにありがとうございます。
 本日は、第1回の懇談会にいただきましたご意見等も踏まえ、主な論点を整理させていただきましたので、こちらに基づいてご討議いただきたいと考えております。
 それでは、事務局より資料を説明してください。

【野崎開示業務室長】
 それでは、お手元の会計監査についての情報提供の充実に関する主な論点という資料に基づきまして、ご説明させていただきたいと思います。
 まず全体の構成でございますけれども、最初の1ページが「Ⅰ.はじめに」、それから3ページが「Ⅱ.通常とは異なる監査意見についての説明・情報提供」、最後12ページが「Ⅲ.監査人の交代に関する説明・情報提供」という構成になっております。

 1ページ目の「1.経緯」でございますけれども、会計監査は、財務諸表の信頼性を担保し、企業による適正なディスクロージャーを確保するための資本市場の重要なインフラであるということでございます。近年の不正会計事案を契機としまして、改めて会計監査の信頼性が問われる中、平成28年3月に、「会計監査の在り方に関する懇談会」において、会計監査の信頼性確保に向けた提言が取りまとめられたところでございます。
 その下の段でございますけれども、これまで会計監査に関する情報提供の充実を図るという観点から、監査法人のガバナンス・コードの策定、監査報告書の透明化などの取り組みが進められてきたところでございます。
 「2.会計監査に関する情報提供の充実の必要性」というところでございますけれども、会計監査についての情報は、監査報告書における監査人の意見表明という形で利用者に提供されております。
 2段落目、監査報告書に関しましては、監査意見に至る監査のプロセスに関する情報が十分に提供されず、監査の内容が見えにくい等々の指摘がなされていたところでございます。
 おめくりいただきまして2ページ目、我が国におきましては、本年の7月に監査基準改訂がございまして、監査報告書に監査上の主要な検討事項の記載を求めることとされたところでございます。
 2段落目、近年、監査人による個別の会計監査に関する説明・情報提供を充実させる必要があるのではないかとの指摘がございます。特に限定付適正意見や意見不表明など、通常と異なる監査意見が表明された事案におきまして、監査人が説明責任を十分に果たしていなかったのではないかとのご指摘があるところでございます。
 その下でございますけれども、こうした場合におきましては無限定適正意見における「監査上の主要な検討事項」の記載の重要性にも増して、監査人の判断の背景・根拠に関するより充実した情報を提供すべき要請が特に高いと考えられるところでございます。
 こうした問題意識のもと、本懇談会におきましては、特に通常とは異なる監査意見についての説明・情報提供のあり方に関して、監査報告書以外の手段も含めて検討を行っていただいているというところでございます。
 下の枠囲みが論点ということでございまして、上記のほか、会計監査に関する情報提供の充実の必要性について、他に考慮すべき点やつけ加える点があるかというのが1つ目の論点でございます。

 3ページ目、「Ⅱ.通常とは異なる監査意見についての説明・情報提供」の「1.現状」において、「(1)無限定適正意見以外の監査意見」についての実績と類型を記載させていただいております。
 その下(2)、監査プロセスにつきましては、その大まかな流れと、それから無限定適正意見以外の場合の対応の概略を記載させていただいております。
 その下の段落でございます。監査人には、一定の場合において、会社法上、株主総会での意見陳述の機会が確保されているというところでございますけれども、実際にはほとんど活用されておらず、一般的な株主総会実務では、株主間の質問に対して、監査人に意見を述べさせるのではなく、かわりに経営者や監査役等が回答しているというような指摘もあるところでございます。
 4ページ目、「2.具体的検討」の論点でございますけれども、まず「(1)監査報告書の記載」でございます。
 下の2つ目の「〇 監査報告書の記載に関する考え方」としまして、特に無限定適正意見以外の場合につきましては、例えば除外事項が財務諸表に与える影響ですとか、監査人の判断の理由などを記載することが求められております。監査報告書の「意見の根拠」の区分において、わかりやすく具体的な説明を行うということが求められると考えております。
 下の論点でございますけれども、例えば、少なくとも以下のような事項について明確に記載することが求められると考えられるがどうかということでございまして、1つ目として、除外事項に内容について具体的にどの部分が適正でなかったのかですとか、収益や財務状況に関する具体的な影響額、それから除外事項の内容と具体的な影響額との間の因果関係、こうしたものについては少なくとも明確な記載が必要ではないかという論点でございます。
 5ページ目、限定付適正意見の場合でございます。5行目でございますが、虚偽表示や監査範囲の制約はあるものの、その影響が広範でないと判断される場合には、限定付適正意見が表明されることになっております。これについては、なぜ不適正でなく限定付適正意見と判断したのかについての説明が十分なのかという議論があるところでございます。
 論点でございますけれども、監査人は、広範性の有無に関する判断についても、職業専門家としてさまざまな角度から検討されていると思いますけれども、そういった検討内容も含めて十分な説明を行うことが求められていると考えられるがどうかという論点でございます。
 次は意見不表明の場合でございます。監査人は、監査契約の締結や更新に際し、適切な監査業務を実施することができるかを判断しなければならないこととなっております。意見表明は可能であることを確認した上で、監査契約の締結や更新を行うことが前提になっています。
 2段落目、こうした前提のもとでは、重要かつ広範な監査範囲の制約が生じて意見が表明できないということは、極めて例外的な状況と考えられるわけでございますけれども、監査報告書において、なぜそういった状況に至ったのかという説明がなされていないというようなご指摘があるところでございます。
 論点でございます。監査人は、意見不表明が極めて例外的な状況であることを念頭に置き、監査報告書において、受嘱審査での監査リスクの認識状況やその後の状況変化も含め、特に丁寧な説明を行うべきであると考えられるがどうか。
 おめくりいただきまして6ページ目「(2)求められる説明・情報提供」でございます。
 企業の財務報告についての説明責任は、一義的には企業にあるということでございますけれども、その情報の信頼性に関しては、監査人も職業専門家として、みずからの監査に関する説明責任を負っていると考えられるところでございます。
 監査報告書以外での説明・情報提供の手段としまして、まず監査報告書が挙げられるところでございますけれども、例えば企業側が事後的に監査人の想定していなかった新たな論点とか、当初と異なる見解を示すような場合も想定しますと、監査報告書にあらゆる情報をあらかじめ記載しておくということは現実的ではない場合も想定されるところでございます。
 論点でございます。このため、監査人としては、経営者や監査役等のコミュニケーションの状況や見解の不一致等の有無について、個別の状況に応じ書面または口頭で追加的な情報提供を行うことが考えられるがどうか。
 追加的な情報提供の内容としましては、例えば、少なくとも次のような説明・情報提供を行うことについてどう考えるかということで、4点ほど挙げさせていただいているところでございます。
 7ページ目、株主総会での意見陳述でございます。監査人からの説明に関する既存の枠組みとしまして、会社法上の株主総会での監査人の意見陳述がございます。この規定は、監査人と監査役等との間の意見の不一致が存在し、その調整がつかないという事態においては、監査人が株主総会の場で全てを明らかにした上で株主の判断を求めることとしたものと解されているところでございます。
 ただ、最後の段落でございますが、実際の株主総会では、必ずしもこれらの意見陳述の機会が活用されていないということでございます。
 論点でございます。監査人は、こうした会社法の趣旨や会計監査に関する説明・情報提供の充実の要請を踏まえれば、会社法上の株主総会での意見陳述の機会を積極的に活用すべきであると考えられるがどうか。
 特に会社法398条第1項が想定する場面におきましては、監査人は財務報告の法令・定款適合性に関する意見不一致の内容、それが生じた理由、さらに監査役等の意見にもかかわらず自己の意見が正しいと考える理由を株主総会の場で説明すべきと考えられるがどうかという論点でございます。
 続きまして、説明・情報提供の手段というところでございます。例えば、四半期レビューの場面などを想定しますと、株主総会での意見陳述の機会を活用できないという状況も想定されるところでございます。ですので、その他の手段についても検討する必要があるということでございます。
 取引上の上場規程では、四半期レビューにおいても、無限定の結論以外の意見が記載されることとなった場合は、適時開示が行うことが求められているところでございます。
 おめくりいただきまして8ページ目でございます。こうした適時開示に当たりましてしは、例えば企業側が適時開示において、さまざまな説明をし得るわけですけれども、その説明に対して、監査人として、さらにコメントすべき場面も想定されるところでございます。そういった場合を念頭に置きますと、企業は監査人の意見やその背景などについての考え方が不正確な形で財務諸表利用者に伝わることがないよう、必要に応じて監査人の追加的な説明を転載する、そういった措置を講じるべきという考えもあると思いますが、どうかという論点でございます。
 続きまして、また、企業側による適時開示を通じた説明・情報提供に加えまして、資本市場からのニーズに適切に応えるべく、企業を通じずに、監査人みずから説明・情報提供するための機会を必要に応じて設けるべきと考えられるがどうか。具体的には、日本公認会計士協会など、監査人の独立性を確保できる場における説明会の開催、企業の決算説明会などの対外的な説明会に同席しての説明、それから監査人によるプレスリリースといったものが考えられるがどうかという論点でございます。
 その下、留意点でございますけれども、財務諸表利用者に公平に情報を伝達するよう留意する必要があるというのが1点目の論点。
 それから、説明のタイミングにつきましては、企業側による情報開示と同様、適時に行われる必要があるのではないかというのが2点目。
 それから最後が、株主総会において監査人が意見陳述を行う場合も想定されますけれども、そういった場合には、企業が総会後にその内容について適時開示を行うことも考えられるがどうかという論点がございます。
 9ページ目が守秘義務でございます。現行制度におきましては公認会計士法、日本公認会計士協会の自主規制、それから監査基準において守秘義務の規定がございます。
 3段落目でございますけれども、いずれの規定においても、「正当な理由」がある場合は守秘義務違反を問われないこととされております。公認会計士協会の倫理規則においては、「正当な理由」の具体的な内容が列挙されているというところでございます。
 守秘義務の考え方でございます。監査人がみずからの監査意見の内容やその根拠を説明する上で必要な事項を述べること、特に無限定適正意見以外の場合に、当該意見に至った理由は判断の根幹部分でございますので、当該理由を説明する上で必要な事項を述べることは「正当な理由」に該当するということの確認が1点目の論点でございます。
 それから2点目の論点としまして、監査人が株主総会に出席して意見を述べる、こういった場合には「正当な理由」に該当するということの確認が2点目の論点でございます。
 おめくりいただきまして10ページ目、2段落目でございます。我が国の実務におきましては、公認会計士協会の倫理規則の規定を限定的に解釈して、過度にリスク回避的になっているのではないかというようなご指摘もございます。そういった観点から、解釈上の明確化を図るために、例えば日本公認会計士協会において倫理規則の注解などにおいて、「正当な理由」の範囲を限定的に解釈すべきでない旨を明記することが考えられるがどうかという論点がございます。
 ここで別紙をごらんいただければと思います。16ページに別紙がついてございます。ご議論の参考として簡単な事例を準備させていただいております。中身でございますが、海外の重要な子会社において、過去複数年にわたり不正な会計処理が行われていた疑いが発覚。疑いが事実であれば、重要性が認められると考えられるため、監査人としては、現在の状況では無限定適正意見を表明できるが不明である。企業側は、「会計処理に問題なく、関連資料は全て監査人に提供している」と主張していて、監査人は当該子会社についての追加的な監査手続を行うことができない。こういった状況を想定した場合に、監査人としてどのような説明なり情報発信が求められるかということでございます。
 具体的な不正をどこまで書くのか。影響額、特に限定付適正とする場合には、そのフレームワークに適合することの論理的な説明をどうするのか。特に無限定適正意見については今後、監査上の主要な検討事項の記載が求められることになりますが、そういった記載の重要性にも増して、より詳しい情報提供が求められると考えられるわけでございますけれども、どこまで、その情報を提供すべきなのか。
 また、監査報告書が出た後にでも、例えば事後的に企業が第三者委員会の報告書などをもとに、監査人の指摘は根拠のないものだというような形で、適時開示などで反論してきた場合に、監査人はどう対応すべきなのか。そういったいろいろな場面が想定されるわけでございます。
 そういったことについて、この事例をご参照いただきながら、ご議論の参考にしていただければと思います。
 10ページ目にお戻りいただきまして、一番下「(4)その他」でございます。十分な説明・情報提供を行うことが必要となるその他の場面としまして、例えば前任監査人と後任監査人の間に監査意見・見解の相違がある場合というものが考えられます。
 11ページ目でございます。監査人が交代した場合には、後任監査人になろうとする者は、前任監査人からの引き継ぎも含めまして、意見表明が可能であることを確認した上で契約を締結するということですので、通常、後任と前任の間で監査意見の見解の相違は想定されないわけでございます。ただ、仮に交代後に新たな事実が判明するなどの場合には、前任監査人と異なる監査意見・見解に至る可能性がございます。
 こういった場合につきまして、論点でございますけれども、前任と後任との間の見解が対立し、その調整がつかない場合には、双方の見解に関する情報提供がされる必要があると考えられるがどうか。その際に、特に前任監査人につきましては、もう辞任しており既に監査人としての立場にございませんので、監査報告書や株主総会での意見陳述以外の説明・情報提供の手段を講じる必要があると考えられるかどうかという論点でございます。
 その下でございます。その他、過去の監査意見や四半期レビューの結論とは異なる判断に至った場合ですとか、過年度の財務諸表に虚偽表示が発見されたため財務諸表監査や内部統制監査について無限定適正意見を事後的に訂正する場合。このように通常されない形で監査報告を行うこととなった場合には、監査人は、その背景・経緯等に関し、特に充実した説明を行うことが求められると考えるがどうかという論点でございます。

 おめくりいただきまして、「Ⅲ.監査人の交代に関する説明・情報提供」でございます。監査人の交代につきましては、その理由も含めまして、企業が説明・情報提供を行うことが制度上求められております。この点に関しまして、必ずしも実質的な交代理由が説明されていない、あるいは交代理由等に関して、企業と辞任した前任監査人との間で認識の違いがある場合において、きちっとした説明・情報提供がなされていないのではないかというようなご指摘があるところでございます。
 13ページの(2)でございます。企業及び監査人は、臨時報告書において実質的な内容を記載することが求められるのではないかというご指摘がございます。それを踏まえての論点でございます。
 まず1つ目として、現在、開示理由として一番多いのが任期満了ですけれども、監査人の任期が通常1年で終了することからすると、「任期満了」という記載は交代理由の開示として不適切と考えられるがどうか。さらに交代理由に関しましても、企業側と監査人側が具体的にどのような意見で対立しているのか、できるだけ実質的な内容を開示することが求められると考えられるがどうかというのが1点目の論点でございます。
 2つ目でございます。交代理由の開示の充実については、少なくとも公認会計士・監査審査会がモニタリングを通じて把握した内容と同程度の実質的な情報価値を有する理由が開示されるべきと考えられるがどうかという論点でございます。
 3つ目。交代理由の開示の充実を図るためには、企業を通じた間接的な情報を説明・情報提供に加えて、監査人が交代理由を直接的に説明・情報提供するための枠組みの整理も必要と考えられるがどうかという論点でございます。
 内容のご説明は以上でございまして、最後、15ページ目でございます。今ご説明した内容のほか、会計監査に関する情報提供の充実に関し、検討すべき論点として、ほかにどのようなものがあるでしょうかというのが1つ目。それから、以上お示しした論点に関して、各関係者は具体的にどのような役割を果たすべきかということについてもご議論いただければと思います。
 事務局からは以上でございます。

【八田座長】
 どうもありがとうございました。
 それでは、事務局から説明のありました「主な論点」を中心に、皆様からご意見を伺ってまいりたいと思います。
 なお、進め方といたしましては、ローマ数字のⅠ「はじめに」という1ページ、2ページの部分、そしてⅡ、通常とは異なる監査意見についての説明・情報提供、3ページから11ページの部分、そして最後のⅢ、監査人の交代に関する説明・情報提供、12ページから15ページの間と、順次ご討議いただければと思います。
 また、追加すべき論点がございましたら、その点についても言及いただくようお願いいたします。
 それでは、まず「主な論点」のⅠの「はじめに」及びⅡ、通常と異なる監査意見についての説明・情報提供につきまして、一括でご意見を伺えればと思います。どなたからでも結構です。ご自由にご発言いただければと思います。
 では、高濱メンバー、お願いします。

【高濱メンバー】
 高濱でございます。まず皆様のお手元に配付されていると理解しておりますけれども、今回の資料に関しましては、我々日本公認会計士協会としては、この論点についての意見を述べさせていただいております。
 そこの意見の中にも記載しておりますけれども、今回の論点整理の枠囲み部分につきましては、実務家として議論をしていくには若干、前提事項が不明確な部分があるという理解をしており、今回、この資料をもった議論で、次回で最終成果物を作成するという進め方、進度については疑問を感じているところであります。少なくとも今回協会から提出させていただいている意見、内容については、各委員にご検討いただいた上で、最終的な結論としていただきたいと考えておりますので、その時間に関してもご検討いただけたらと思っております。
 それから、今おっしゃっていただきました「はじめに」の部分につきましては、我々の意見書を参照いただけましたら、ここの全般的な意見のところに取りまとめをさせていただいています。全般的な意見の冒頭にありますように、本懇談会は極めて例外的なケースを契機として設置されたものという理解をさせていただいていますが、検討論点は無限定適正意見以外の意見が付された場合において、監査人からのより詳細な情報提供を検討課題としているものと理解をしております。
 少し飛ばしまして、その結果として、「しかし」以下の後半ですが、無限定適正意見以外の意見全般にかかわる論点と極めて例外的なケースを想定した論点が混在し並列されていると考えております。したがいまして、まずもって、それぞれの論点がどのような状況に関する提案であるのかが不明瞭であるため、それが明確にわかるように構成・記述すべきであると考えております。また、懇談会で取りまとめられる提言は、項目ごとに、資本市場関係者のコンセンサスとして提示されるものとするのか、関連する法令等の改正につなげるものであるのかということも、明確に意図して記載いただきたいと考えているところであります。
 その下の四角囲み以降が我々の基本的な考え方でございます。

 1つ目は、中段から、監査報告書に記載される除外事項は監査報告書の利用者が理解できるように記載すべきということを基本的な考え方として明示をしていただきたいと考えております。除外事項の記載がわかりにくいという指摘に対しては真摯に受けとめて改善に取り組む必要があると考えておりますけれども、監査報告書以外の手段で監査人の意見等に関する書面を別途作成するのは行うべきではないという意見を持っております。
 続きまして、次の点に参りまして、こういった極めて例外的な特殊事例において説明が必要ということは認識をしているところであります。ただし、こういった説明は、みずから導いた監査意見または結論について行うこととすべきであり、監査またはレビューの途中経過を随時に情報提供すべきものではないと考えています。あくまで我々が提出した結果である意見についての情報、説明責任ということで整理すべきであると考えています。
 それから3ポツ目ですが、口頭による補足説明ということが想定されて議論されていると思います。これにつきましては、やはり経営者、監査役等、監査人の三者がそろって、それぞれの立場から行うべきであって、何か別々に意見発信をするということは、結果として読者あるいは利用者にとっては混乱を招くものと考えておりますので、その辺の全体像についても理解しやすい情報提供を行うことが可能になるように、ぜひお願いしたいと思っております。
 それから最後に、現行制度が法または制度趣旨に照らして不十分な運用がされていると考える点につきましては、新しい制度を創設するという意見もありますが、我々の意見としては、屋上屋を重ねるものであってはならず、効果的な運用になるように、まずは現行の制度の改善を図るべきと考えております。
 以上です。

【八田座長】
 どうもありがとうございます。
 今伺っていますと、やはり監査人の視点でのご主張だと承ります。監査は社会的な公共財といった性格を持っていますので、利用者側の意見もこれから伺っていき、双方をすり合わせて報告書ができればと思っていますので、よろしくお願いします。
 それでは、どなたかお願いします。時間がもったいないですので。では、青メンバー、よろしくお願いします。

【青メンバー】
 まず、総論部分につきまして、事務局の考え方に基本的に賛成でございます。
 この懇談会としましては、まずは特殊な場合に限らず、あらゆる場合に、投資者等に対して、会計監査に関して充実した情報提供することは重要だという考え方を共有して、それをベースにしながら、その重要性が特に大きいケースである無限定適正意見以外のケースなどにつきまして、詳細に議論、検討を行っていくという、そういったスタンスで取りまとめを行っていくのが適当ではないかと考える次第でございます。
 それから、最終の報告書にされる際に、可能であれば、監査人は、本来的なクライアントとして考えるべき財務諸表の利用者、とりわけ株主、投資者等に対して財務諸表の信頼性に係る説明を十分に尽くすことが監査人の職責であるということを踏まえた上で、会計監査に関する説明責任を十分に果たすべきであるといったことを明確にすることによって、監査人が、そうした財務諸表利用者のことを向いて、さまざまなことを行うべきであるということを示していくのが適切ではないかと考える次第でございます。
 あと、論点の総論のところには書いてございませんが、先ほど高濱メンバーから書面かどうかという点について議論がございましたけれども、ここのところは、まず監査報告書におきまして十分な説明をするということをできるだけ突き詰めていくことはもちろん必要だと思いますけれども、そこで言い尽くせない場合ですとか、その後に事情が変わった場合とかもあるかと思いますので、追加的な説明は何らかの形で必要になるケースは多分にあり得るのかなと存じます。
 そのときに、書面ではやらないということを一概に決める必要は多分なくて、そのときそのときに応じて適切な形で情報提供していくということを、むしろ柔軟に考えればよいのであって、書面ではやらないというところから入るということではないのではないかと考える次第であります。
 以上です。

【八田座長】
 ありがとうございます。
 それでは、どうぞ。では清原メンバー、お願いします。

【清原メンバー】
 概括的なところからコメントさせていただければと思うんですけれども、今回議論が出ているところは、監査人の説明責任に対してまだ十分にフォーカスが当たっていない時代に起きていた問題ですとか、これまでの実務における問題点の整理が多いのではないかと考えています。
 換言すると、KAMが入ってくる、そういった中で、やはり適正意見のときにおいても今後は説明が十分尽くされるようになると。監査人としても、また企業側としても、利用者としても、やはり説明される情報が増えてくる環境下においては、問題事象の捉えられ方は大きく変わってくるんじゃないかと考えられます。
 その意味で、先ほど青メンバーからお話がありましたように、特殊な場面というのは今まで起きたものとして、今ここでの議論の契機にはなっているんですけれども、出発点として、やはり説明責任というものが十分に行使されて、利用者にとって利用しやすい、また信頼性を高めるような、そういった監査人の監査業務が、そして報告、説明が行われるのが望ましいという点、ここを出発点としていく必要が、まず第一にあるんだろうと思います。
 そうしますと、あまり過去がどうだったかというより、むしろこれからどうなっていくかという未来志向で考えたときに、説明責任を中核に置いた上で、まず第一に求められるのが監査報告書の中での記載です。それは今まで抑制的に記載されていたことが事実上あったかもしれないんですが、監査人の方々もKAMの記載を通じて、外に対してどう説明していくかということに当然これから習熟されていくことになるし、そういった実務が展開していくと期待されるので、そういう中で、やはり、まず第一には、監査報告書における記載が、根拠にしても、理由にしても、充実していくこと、それを第一に捉えていくことは大切だろうと思われます。

 次に、そうはいっても、記載された説明や理由づけだとかが、やはり十分でないと、社会的な評価、利用者の視点も含めて、そう考えられるとすれば、本来からすると、第一義的には、監査人と協議をする、連携をする役割にあるという意味での、監査役会、監査委員会、そういった方々がおられ、そこの中でのやりとりを踏まえたご意見というものが一つ、ワンステップあるだろうと。今回そういったところは、まだ、ここの論点案に入っていないんですけれども、監査人はダイレクトに外に向かって発信するということだけでは、やはり現実にないということを、監査役らとの協議が先にあるという点を踏まえた上で報告でもまとめていただきたいと思います。
 その意味でいうと、関係者それぞれの役割を踏まえたという意味で言う、財務報告をする主体としての企業の方の話と、今回は会計監査の情報ですから、むしろ監査人の情報に一番触れるであろう監査役会の位置づけやその問題点というのも、やはり加えることが適切なのではないかと。
 さはいいながらも、やはり監査報告の書面に書かれたものに対する監査役会などの意見ですとか、監査の方法とか結果の相当性というところを含めて意見が出てくるわけですね。それを踏まえると、また監査人の側から話、もしくは補充したいというものもニーズもあるだろうということで、やはり書面に尽くされないものもあろうかと、ここの議論が必要なのところが、まさにこの懇談会の意義であり、そこは否定されるものではないと考えます。
 その場合に、書面なのか口頭なのかは、これは二者択一にするということでなくて、やはり書面のメリット、それから口頭によることのメリット、もしくは必要性はそれぞれについてあるんだろうと思いますので、これしかない、これだけじゃなければいけないということでは、おそらくないほうが適切なんだろうと思われます。
 1つは、監査報告書そのものが十分に記載がなされていなければ、ある種、説明の補充というものが書面としてあってもよくて、それは監査意見を改めて出すということでなくて、欠けているものを補足するという意味で。開示書類の中では追補だとか、そういった考え方もありますので、その意味でいうと、もとの書類とある種一体となって、全体的に十分な説明がなされる、それから十分な根拠などが示される、理由が示されるということは、そういうものについて否定する必要はないのではないかと。むしろ、そういうものを許容する制度ということを考えていくことが適切ではないでしょうか。
 次に、書面に落とすというレベルではないけれども、ニュアンスを含めて、やはりそれは説明を口頭でしたほうがいい場面は、それはそれで現実には発生するんだろうということが考えられるので、その場面においては、本来であったら監査人というのは、監査役などとの協議を経た上で、取締役会に対して報告を出していくという流れがまずありますので、企業側との連携といいますか、連動した形での説明が適切ということは、一つあるのではないかと考えるところでございます。以上です。

【八田座長】
 ありがとうございます。おそらく高濱メンバーは、これに対してご意見もおありと思いますので、後で伺いたいと思います。
 では岡田メンバー、お願いします。

【岡田メンバー】
 ただ今、清原メンバーから監査役についての言及があり、まさにその点を申し上げたかったのですが、今回の資料では、金商法関係の検討ということもあり、監査役に付言するところがほとんどありません。構図としては、会社側に経営陣と監査役等がいて、それに対して監査人がいるということになると思いますが、その中で、監査役等は、監査人とはコミュニケーションをしながら、さらに経営側の情報も十分持ちながら議論をするという立場にあります。したがって、どこかの段階で、例えば監査人が文書あるいは口頭の形で意見を述べる場をつくるということであれば、当然のことながら、その意見に対して、監査役等がそれに対して全く同意見なのか、異なる場合にはどう考えているのかを表明する、こういう場も必要ではないかと思います。
 そういう意味では、監査人は監査役等とも協働しながら、あるいは監査役等の意見も入れながら、意見形成をしていくべきではないか。これは何らかの形で報告の中に入れていただきたいと考えております。
 一方で、金商法上の監査報告書において最終的に意見不表明や限定意見になる場合、会社法の視点で、ある程度の意見形成がされているであろうと考えます。その場合、会社法上の事業報告書の中に添付される監査報告書及び監査役等の監査報告書においても、それなりの意見が反映される形になるのが望ましいのではと思います。
 KAMの議論で想起される点として、海外の会社では、いわゆる執行側のステートメント、監査委員会のステートメント、そして監査人のステートメントが併記され、それぞれがそれぞれの意見を詳細に述べるという形になっていました。これは日本の事業報告書にはページ数からいってなじまないのかもしれませんが、今後はそうした内容が求められるのではないかと思います。
 つまり、監査役等の監査報告書も今までのように単に監査人の監査を相当であるというのにとどまらず、今後KAMの議論は監査役等にも波及するという話をしていましたが、既に、こういう事例に触れると、監査役の監査報告書も大きな改革が必要なのではないかという気がしております。
 もう一点だけ、例えば意見不表明あるいは限定意見の場合、今までの開示では、その会社の財務報告上の内部統制ができていないのか、それとも内部統制はしっかり構築されているけれども見積もりの点で固まっていないのか、どちらなのか不明確なケースがあるように思います。監査人の側は、おそらく内部統制ができていないということも認識しながら書かれているのでしょうが、それを記載するのが現実的に難しいことから、意見不表明という形になっているように感じます。もし内部統制ができていないのであれば、これは監査役等の責任にもなりますし、このあたりを監査人が明らかにすべきではないでしょうか。
 一方、そもそも数字が出ていないか、見積もりに関する意見相違であれば、KAMと同じように、どういう見積もりが適当なのか、どのように意見が異なるのかを明確に出来るはずです。このあたりの論点整理が必要ではないかと感じました。
 以上です。

【八田座長】
 ありがとうございます。
 では貝増メンバー、お願いします。

【貝増メンバー】
 すみません。書面なのか、口頭なのかということを、ルールとかそっちから考えていくと、いろいろご意見あるかと思うんですね。それで、代表的な機関投資家がアナリストから情報を受けるのと同じレベルで考えますと、まずはベーシックレポートというものがあります。これは書いたものですよね。これは監査報告書に相当するのかもしれません。ただ、これだけではわからないニュアンスを得たいがゆえに、書いたアナリストを呼んでミーティングをしたり、ディスカッションをしているわけですね。という意味では、口頭が必要なわけですね。
 一方で、パーフェクトなベーシックレポートは書けないわけです。書いた後で状況が変化したり、あるいは投資家と話をしてみて、これが足りなかった、あれが足りなかったというと、それを補うためにショートレポートを出しています。
 ということを考えれば、べき論で書物が本編の書いたものがいいのか、それとは別のものを作ったらその関係が、と考え出すとややこしいと思うんですけれども、情報をもらう側からすると、いわゆる本編があり、本編でわからないニュアンスは、ある程度口頭で質疑応答ができる。さらには、状況の変化で本編では不足するもの、あるいは本編が出る前の段階、例えば決算が発表になった、何かあったというと、すぐアナリストはショートレポートを出します。それを踏まえて、いろいろな調査もした上で本編が出てくるわけですから、本編が出る前に重要部分だけがショートレポートで出る。これも投資家というのは、わりと自然に馴染んでいますので、そういう観点でも整理し、使う側の受けとめ方にはそういう観点もあるということを知っていただいたら、少し参考になるんじゃないかと思います。

【八田座長】
 ありがとうございます。これまでのご議論の中で、私自身が混乱しているかもしれませんが、追加的に求められる情報提供の議論の内容というものはどうあるべきか、また、どういう点が開示されてくるのかという点とは別に、時期の問題があると思います。そしてもう一つが、今の話にもありますが、形式ですよね。書面か口頭かという。さらには、手続の問題もありますので、その辺を分けて、できればご議論いただきたいと思います。両方一緒におっしゃっても構いませんけれども、その点を踏まえていただきたいと思います。
 では湯浅メンバー、お願いします。

【湯浅メンバー】
 ありがとうございます。改めて、この懇談会の位置づけが、どういうところにあるか。監査法人のガバナンス・コードが決められて、KAMも書きなさいという流れがあって、それでもなお追加的な情報が必要になるケースはどういう場合か、その場合に何をどう提供するかという論点だということは、検討に当たって認識しておくべきだと思っています。
 事務局から用意していただいた論点の資料を見ますと、非常に網羅的、広範囲にわたっているという印象があって、読んでいるうちに、これは一般的に対応するのかということを、つい思ってしまいがちなんですけれども、あくまでも例外的な事象が起こった場合の問題だと。改めて、その例外がどういう場合かというのが、まず1つの論点として無限定適正意見以外の意見が出た場合ということですね。その数という意味では、前回の統計資料によりますと、年間1社か2社程度。3社というケースもありましたけれども。そうすると、上場企業は三千五、六百社に対する、比率でいいますと、99社のうちの1社ではなくて、999社のうちの1社あるかないか、0.1%の議論をしていると、そういうことを念頭に置くべきではないかと思います。
 その意味で、この問題に対応するに当たって、制度面で変更することについての懸念といいますか、大変な難しさがあるのは前回も申し上げたとおりでして、やはり基準を変える、規則を変えるということをしてしまうと、大部分の999社に対して何か副作用が起こってしまう可能性のほうが高いのではないかという心配があります。
 ですから、制度面の見直しということも必要かもしれませんけれども、むしろ基本的に情報が不足しているものをもっと充実させなさいということですから、それを何らかのガイダンスといいますか、そういうことを提供することにとどめるのがよいのではないかと考えています。
 あと、そうはいいましても、例えば情報提供の仕方として、決算説明会に同席するという話がありましたけれども、一般企業で、そのような場面で常に監査人がいるということは想定できないわけでして、なかなか難しいなというのは現実的に思います。
 ただ一方で、ほんとうに問題が起こってしまって、その社会的な影響が非常に大きいという場合、あるいは利用者からのニーズ、監査人の声を聞きたいといった要請があった場合に、応えないということもなかなか難しいかなと。そういう非常にレアなケースにどう対応するかということを、慎重に検討していく必要があるのではないかと思います。
 以上です。

【八田座長】
 ありがとうございます。
 それでは、どうぞ。では田中メンバー。失礼しました。

【田中メンバー】
 論点の6ページの監査報告書以外での説明・情報提供に関してです。高濱メンバーから、基本的には監査人の意見は監査報告書であらわされるのであって、これ以外の手段による書面での説明・情報提供は想定されないのではないかというご意見があったと思います。これについては、この監査報告書以外での説明・情報提供が、どういう状況下でなされることを想定しているのかを明確にすべきではないかと思います。
 基本的には、財務諸表において無限定適正意見以外の意見を言わざるを得なくなった場合に、その理由については監査報告書に記載されるということが、制度本来の想定だと思います。そのために必要な記載も、現行法制のもとで、それぞれの意見の種類に応じて記載すべきことが定められていますので、それを十分、投資家にわかりやすく説明するということはできると思いますし、また監査人として、それを目指すべきであると思います。
 ただ、このような監査報告書以外での説明・情報提供が必要になる場合として、例えば、監査人が、監査報告書あるいは四半期レビューの監査を出した後で、被監査企業が、その監査人の意見は間違っているというステートメントを出してくるような場面が考えられると思います。
 この場合に、本決算の監査報告ですと、そのような意見が監査役等の監査報告の中で出されて、それに対して会計監査人が意見を言うという、このパターンは、株主総会の意見陳述権という形で会社法に規定されていますが、四半期レビューに関しては、そういう制度はありません。それから、本決算でも、会計監査人と監査役の意見は合致しているのだけれども、執行側が、それにどうしても同意できないので、執行側が、企業名で監査報告に対して反論を出してくるというケースも考えられます。
 論点の6ページで、「全てを想定して監査報告書が記載することは現実的でない」と言っているのは、今述べたような、監査人が企業側の反論をあらかじめ想定して、それに対する再反論まで監査報告書または四半期レビューに全部記載することは現実的でないという意味であろうと理解しています。
 そのような、企業側が何か言ってきたときに、監査人がその説明には不適切な点があると判断したときに、監査人として何か言うという手だてを講じておくべきではないかということは、ありうる判断であると思います。
 その際、監査人がどのような方法で説明をするかについてですが、三者記者会見をして、口頭で説明するということもあるかもしれませんけれども、企業側がそういう三者記者会見をせず、みずからの情報を一方的に書面で発信するということもあり得ることであり、その場合は、監査人も対抗上、書面で発信する必要が出てくるのではないかとも思われ、そういった点も考えると、監査人の立場からしても、説明を必ずしも口頭のものと限定する必要はないのではないかと思います。もう少し状況に応じて適切な対応がとれるようにしておくほうがいいのではないかと思います。
 ここから先は私、全く思いつきなのですけれども、現在、取引上の上場規程で、無限定適正意見以外の意見が記載されたときに企業は適時開示すべきことになっているわけですが、そのような開示において、企業側は、自社の会計処理は適正だという主張を展開するということがあり得るわけですが、そのような主張を企業が述べることを禁じるものではないが、そのときには、監査人側の意見もあわせて開示するような体制を整えなさいと。つまり、企業のホームページを見たときに、企業側のステートメントはあるけれども、その下に必ず監査人のステートメントもあるようにしておきなさいというのは、どうでしょうか。これはルールの改正になるかもしれませんが、法令の改正なくできるのではないかという気もします。
 そういうふうにいろいろな状況を想定して対応策を考えたときに、必要な限度で制度の改訂も考えるという形で対応していくのはいかがかなと思います。
 以上でございます。

【八田座長】
 ほかにどうぞ。
 では貝増メンバー、お願いします。

【貝増メンバー】
 すみません。この6ページのところの求められる追加的な情報について意見があります。ここに4つ挙がっておりますが、異常事態に直面している時に投資家が監査人に期待しているのは、実は、この下の2つは、あまり期待していないと思います。やや極論かもしれませんが。
 つまり、異常事態に直面している時に、監査人から出てくるこの情報で投資家は何をしようとしているかというと、要は、この経営陣を信用して大丈夫なのかどうか、あるいは経営陣の暴走を監査役等々がちゃんと止めてくれる内部チェック体制がぶっ壊れていないかどうか。要は、もうこの会社を見切って、株を叩き売るかどうかと、そういう時に幾ら経営陣の説明を聞いたって、当てにならないわけですよ。その時に、その異常事態の会社の内情に投資家よりも詳しい第三者であって、しかも、ある意味では会社の利害関係とはちょっと離れた立場にいる人から、どういうコミュニケーションの状況だったのかとか、自分たちが言ったこととどういうふうに意見が合わなかったのかとかが聞けることが大事です。特に経営者と監査役等の対立など、監査人の方からそれが出てくるかどうかは難しいかもしれませんが、経営者と監査役さんたちとの間で、どこに齟齬があったかなんてことがわかれば、投資家としては、最終判断する時に非常に役立つ。そういう意味合いでも求めていると、ご理解いただきたいと思います。

【八田座長】
 ありがとうございます。
 では、ほかにいかがでしょうか。では高濱メンバー、お願いします。

【高濱メンバー】
 今までご指摘いただいたことを含めて、回答できるものを答えさせていただきたいと思います。
 まずKAMですが、清原メンバーも含めて、今後はKAMが導入されるという前提で、この説明責任について考えるべきであるということについては賛成をしております。我々の意見書では6ページで、上から6行目ですけれども、おそらく無限定適正意見をベースにした中でも、株主総会等で何か説明を求められる、あるいはそれ以外の場でも求められる可能性があるという想定をしています。
 ご存じのとおり、今までの監査報告書には、基本的には会社の開示以外の情報というのはあまり書いていなかった。今後は、何らかの事象に対する監査人独自の対応を記載するということになっていますので、協会としましても、それが、極端なケースは監査人個人が質問をお受けするケースもあるし、監査法人がお受けするケースもあるし、いろいろなケースが想定されてくるという状況を念頭に置いていますので、そのときにはしっかりとした説明が、口頭、書面という話を含めて、やるべきだという理解をさせていただいていますので、この辺と平仄の合う形での整理がありがたいなと思っています。
 それから、書面か口頭かの中で、我々が監査報告書を重要視させていただきたいのは、監査報告書には日付があって、日付というものが非常に大事という理解をしています。すなわち、監査の言葉、会計の言葉でいくと、後発事象を決算日以後、監査報告書の日付まで我々はチェックをしているということになりますので、その監査報告書の、清原メンバーの言葉でお借りすると、補充という位置づけであれば、その日付ベースでの説明を追加するようなイメージになるんだろうと思うんですけれども、開示書類が違う日付で出ていくと、その間に企業活動はどんどん続いていますので、それをどのように取り扱うかということまで論点としては挙がってきますので、いわゆる正式な書面での開示という点においては、その辺の考慮も、ぜひ念頭に置いていただけたらと思っています。
 我々が基本的には監査報告書による書面と口頭という整理をさせていただいたのは、今回の事例においても、会社から正式にプレスで書面での意見は出ていなかったのではないかと思います。定期的な開示書類の中に一部含まれているかもしれないんですが、どちらかというと、書面に落ちたのは、会社から発表された内容がマスコミ報道によって文字化されているケースがほとんどであったという理解をしていますので、会社が監査意見に対して書面をもって何か意見を述べるケースは、どちらかというと想定しにくいかなということを前提に置かせていただいたものであります。
 出ている質問に対してのみ、一旦回答させていただきます。

【八田座長】
 ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。では町田メンバー、お願いします。

【町田メンバー】
 本日、事務局からご提示いただいている、この「主な論点」、それからそれに対する公認会計士協会の意見ですが、それぞれ非常に大部で複雑です。前回の最後には、本日の議題は論点整理ということでしたが、まさか論点が13ページに及んで、かつ、この「主な論点」の最後にある、試験問題のようなケース付きとは思ってもいませんでした。このまま、間もなく行われる会計大学院の講義の期末テストに出したいような問題ですが…(笑)。
 ただ、ここで今一度振り返って、どういうことがあったからこういう懇談会が設置されて、「主な論点」で示されているようなご提案になっているのかということは、ちゃんと押さえておく必要があるんだろうなと思って聞いておりました。
 「主な論点」の冒頭に挙がっていますけれども、今回の議論の発端であった「会計監査の在り方に関する懇談会」の報告書が出たときには、監査報告書においてKAMが記載されることと、それから監査人の交代時の情報提供の議論ぐらいを、情報提供の施策として想定していたと思うんです。
 ところが、今、講義の話をしましたけれども、「会計監査の在り方に関する懇談会」の報告書が出た後に、その懇談会のきっかけを作った粉飾決算会社をめぐって、何か監査論の授業の素材の宝庫みたいな出来事が起きたわけです。例えば、四半期レビューの結論不表明とそれ以前に表明した四半期レビュー報告書の結論の撤回、年度決算においては、企業の財務諸表を修正させるのではなく、監査人が意見限定の限定付適正意見の表明をして、それに対して監査役会が自分たちと会計監査人の見解は異なる旨の報告書を出し、そして、株主総会においては、会計監査人が株主から質問を受けて、それに対して会計監査人は直接答えずに会社側が回答文書を代読して、その回答内容も監査報告書の記載内容を繰り返すような内容であったり、と。中でも、これまで我々が講義で教えてきた監査論においては、限定付適正意見といっても、実際には、財務諸表に不適切事項があるという、いわゆる意見限定は想定していないんだよと説明してきたわけです。不適正意見もそうですけれども、財務諸表の作成・開示に問題があるのであれば、監査人はそれを指摘して、会社側に修正をしてもらって、それで最終的に無限定適正意見を表明することが想定されている。そうしたことが監査の指導的機能の一つなんだと説明する人さえいた。ところが、そうした説明が裏切られるようなケースがあって、では、そういう事態に対してどう対処しましょうか、という話だったんだと思います。
 それは、先ほど湯浅さんがおっしゃったように、もう99どころか、999のうちの1つという話ではあるんだけれども、もしも制度に抜け道や想定していない問題があるんだったら、何らかの方法で塞いでおきたい、ということだと思うわけです。
 そのときに、1つ気になるのは、例えば公認会計士協会が今回出された「意見」の文書の言い方では、「運用の改善」とおっしゃっているのですが、問題なのは、主語は誰か、誰が運用を改善するんですか、ということだと思います。もし、公認会計士協会が自主規制のイニシアチブを発揮して、今、申し上げたような、これまで制度が想定していなかったような事態に際して、当該監査人に対して、そういう対応では理解は得られないよ、もっと説明しなきゃ信頼を損ねるよ、ということで対応されるというのであれば、それはそれでお任せしていいと思うのです。ところが、今回はそうはされなかった、今後も主体的にそうした対応をするつもりはない、日本の公認会計士協会は、そこまで厳しいことはできない、ということであれば、先ほどは田中先生から東証の規制を変えるという話ありましたが、公認会計士協会が主語にならない、自主規制に期待できないのであれば、開示府令や監査証明府令を改正して、こういう場合はこういうふうに説明を詳細に書かなくてはダメなんだ、ということを公的規制として実施する必要があるのかなと考えるわけです。

 それと、あと2つだけ申し上げますが、1つは、先ほど岡田さんからお話のあった、監査役の話が触れられていないじゃないか、という点です。これは、わが国の有価証券報告書には、監査役の報告書が載っていないということが第一にあるんだと思うんですね。
 企業会計審議会の監査部会でのKAMの議論のときにも申し上げましたけれども、KAMは監査役等とのコミュニケーションの中で決定され、外部監査人の監査報告書に記載されるので、KAMで取り上げられた事項について監査役自身はどのように対処したかを監査役の監査報告書にどのように書くかということも非常に重要な関心事になります。実際、他の国では、外部監査人の書くKAMと監査委員会の報告書とのサイクルといいますか、双方向性の記載が求められているケースもある。
 だから、ここにあるように、もしも会社の執行部と監査役と監査人という3者の登場人物の情報提供が重要だということであれば、それこそ有価証券報告書に監査役等の報告書、あるいは説明を載せるような、そういう改正も必要なのかなと思って伺っていました。
 そしてもう一つ気になったのは、公認会計士協会の「意見」の文書の中で、「株主総会に準じる四半期の決算説明会」と何度か書かれているんですけれども、これはちょっと話が違うんじゃないかなと思います。先ほど湯浅さんもおっしゃっていましたけれども、決算説明会は株主総会には準じないと思うんですね。実際に、そこに監査人が同席して何か話すということも、これまでほとんどなかったでしょうし、現実的に想定されないだけではなくて、株主総会の意見陳述権のような法的権限も与えられていないわけですから。そうだとしたら、別途、意見を表明する場、情報を提供するツールが要るんじゃないか、ということです。
 先ほど、会社側の適時開示、臨時報告書の中で会計監査人の意見も入れたらどうかという話がありましたが、それは、会社側の主張に、いわば「包まれて」しまうんですよね。会計監査人はこういうふうに言っていますが、我々はこうですという形で包まれてしまう。それどころか、会計監査人の異動に関する臨時報告書では、当初、会社側が公表した時の表現が不適切だ会計監査人が指摘をして、後日、会計監査人の見解の部分が修正されたものが公表されるケースさえある。だとしたら、被監査会社と外部監査人とがそれぞれに文書を出すことも考えるべきだと思います。あるいは、前回の懇談会のときにも申し上げましたけれども、高濱先生がおっしゃるように、「監査報告書が主戦場だ」ということであれば、監査報告書の特記事項の欄を使うなり、あるいは監査報告書の付録や添付書類というものを考えるなりすればいいと思います。
 仮に999分の1の事例に過ぎないのであれば、そんなに大きな影響を及ぼすものでもなく、また、元々大幅な改正ではないはずですので、そのような対応をとればいいのではないかなと思って伺っておりました。
 以上です。

【八田座長】
 ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。「はじめに」の2ページ部分、そしてそこから先の、今度は通常と異なる監査意見についての説明・情報提供という、この2つのカテゴリーで今ご意見を伺っておりますけれども、追加的なご意見はございませんでしょうか。
 では、貝増メンバー、お願いします。

【貝増メンバー】
 すみません。この5ページの限定付適正意見の場合、あるいは意見不表明の場合というところで、前回との繰り返しにもなるんですが、どういう風に書いていただくのが投資家サイドにとって一番ありがたいかということで、申し上げていきたいと思います。
 限定付適正意見といっても、特に2種類あるうちの、この範囲限定については、前にも申し上げましたが、具体的な影響額を示していただければ、利用者が解釈、判断には困らないと思います。特にこれからKAMが入ってくれば、おそらく普通にKAMで書くような感覚で、これこれの水害の影響があったから、この分、範囲限定で限定付適正意見にしますと書かれたら、何も疑心暗鬼を生むような心配はないと思うんですね。
 それで、多分、利用者にとって最も悩ましいのは、意見限定の限定付適正意見と言われた時に、これをどう解釈したり判断したらいいのかということが、素人から見ると一番悩ましいかと思います。除外した不適切な事項が、なぜ不適切意見や意見不表明の理由にならなかったのかというのが、素朴な疑問として湧いてくるわけですよね。
 ですから、これについてお書きいただく時に、読者はそういう素朴な疑問を持っているんだという前提で、それに答えられるように書いていただきたい。なおかつ、無用な疑心暗鬼を投資家に起こさせて過剰反応を防ぐためには、可能な限り影響額を示していただきたい。多分そこが一つの重要ポイントじゃないかなと思っております。

【八田座長】
 ありがとうございます。
 では高濱メンバー、お願いします。

【高濱メンバー】
 そうしましたら、資料の4ページからの監査報告書の記載のところについての意見を少しかいつまんで、意見書のほうにも記載させていただいているんですけれども、お話しをさせていただきたいと思います。
 まず4ページの下の四角囲みのところが一番いい例なんですけれども、出だしでは「無限定適正意見以外の場合の監査報告書については」で、下に「例えば」とつながっている箇所になります。我々の意見書にも書かせていただきましたが、それぞれの限定付適正、意見限定、範囲限定と不適正意見の場合、意見不表明の場合によって、この下の除外事項の内容云々というのは、それぞれ取り扱いが変わってくる内容でありますので、ここについてはしっかりと場合分けをして書き分けていただきたいなと思っています。
 ただ、総論としては、現行の制度の中の理由で一部書き足りないというところが皆様からのご意見と理解をさせていただいておりますので、どこまで直すかということについては慎重にご検討をいただけたらありがたいなと思うところであります。
 それから、やはり一言だけ付言させていただくと、監査人は何も皆様をごまかすようなつもりで意見を書いているわけではなく、自分たちの知識あるいはわかりやすさを最大限考えながら意見は書かせていただいているというのは総論であり、それが残念ながら結果わかりにくいとおっしゃられる方がいるということは理解をしておりますので、制度をどうするという話とは別に、特にKAMが入ると、この論点、もう少し膨らむと思いますので、監査報告書における丁寧な説明ということについては、現行法の中でもしっかりと対応させていただきたいと思っているところであります。
 同じように、限定付適正、意見不表明の件が5ページに記載されていますけれども、この辺については現行制度の中の対応でわかりやすさを考慮しながら説明することで十分整理がつくというような理解をさせていただいています。
 それから、求められる説明責任の情報提供のところにつきましては、従前からお話ししているとおり、監査報告書以外の書面でということについては、しっかりと監査報告書とそれ以外がわかる、もしくは主従がはっきりとわかるような形で整理をしていただきたいと思っています。
 改めてですが、前回の議論におきましては、監査報告書発行の前後というのも不明確に議論されていたと思うんですけれども、あくまで監査報告書を発行した後において、我々の説明責任は生ずるという整理で取りまとめていただき、明確化をしていただきたいなと思っております。
 それから、株主総会の意見陳述につきましては、先ほどの町田メンバーからの誰が運用を改善すべきかという点にもかかわってくるのですが、基本的に株主総会の運営については、議長を含め会社のほうがイニシアチブをとっておられるものでありますので、その総会運営の現状について、それが何らか制度にかかわるかどうかは別問題として、やはり、そこをしっかりと議論していくべきではないかと思っております。
 そのミラーとして、我々監査人は、新しい制度が進んでいく中、必要に応じて、総会で話をするというか、意見を述べていくことが、おのずと求められるという中での整理にしていただけたらありがたいなと思っているところであります。
 以上です。

【八田座長】
 ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。では青メンバー、お願いします。

【青メンバー】
 資料の3ページ以降のところでございます。まず4ページの一番下の四角のところの記載事項の関係ですけれども、ここにつきましては基本的に賛成でございます。あと除外事項に関しまして、基本的に投資判断に影響が大きいということがございますので、具体的にどの部分が適正で、どこが適正でないと判断したのかといった具体的な理由は当然ながら、それに加えて具体的な影響額についても、可能な限り記載していただくということが重要ではないかと考える次第でございます。
 そうした財務諸表の姿が本来どうあるのかというところは、やはり監査人の方に示していただかないと、適正でない場合につきましては投資者が判断しようがないという面がございますので、わからない場合は仕方がないとしても、わかっているものがあれば、そこは明記していただくのが適切じゃないかと考える次第でございます。
 それから資料の5ページの上のほうの四角の「意見の根拠」の区分のところの記載でございますけれども、限定付適正意見の場合につきましても、基本的には賛成でございます。特に投資者としましては、限定付適正意見の場合に、不適正意見ではないのはなぜなのかとか、意見不表明でないのはなぜなのかというところが十分にわかるように書いていただくことが、やはり大事かなと考えてございます。投資者の一番の関心事項としては、一般的には広範かどうかということ自体についてまで、そこは知見が高いわけでないと思いますので、むしろ財務諸表が全体としては有用かどうか、あるいは財務諸表を補正して利用できるのかどうかというところに、判断の分かれ目があるところだと思いますので、可能であれば、全体として有用かどうかということを結論として明示をして、その上で、その説明として、除外事項の影響額ですとか、財表の数字等を用いたような具体的な説明と、あるいは重要、広範といった意味合いとか、それに関する監査人の判断をわかりやすくご記載いただくということが、一般の投資者にとって大事なことではないかと考える次第でございます。
 それから、8ページの総会のところでございますけれども、そこで総会の内容について適時開示を行うなどの対応が考えられるがどうかということでご記載いただいているところにつきましては、総会の状況を広く伝えていくことは重要なことだと思ってございます。そのときに、現状の実務においても、例えば株主総会で補足説明ですとか質疑の状況について自社のウエブサイトに文書で載せるとか、あるいは動画を載せるといったようなことを用いて、広く伝わるようにという工夫をされている企業は結構いらっしゃいますので、基本的にはそうした形で、意見陳述に関する説明や質疑が行われた場合につきましても、広くそうしたインターネットを活用して公平に伝えていくということも十分考えられるのではないかと考える次第でございます。
 ただ、そうした場合でも、インサイダー取引規制上の重要事実ですとか、それ以外でも投資判断上の重要性が極めて高いような新たな事実ですとか情報が出てきた場合は、もちろんそれについて適時開示を求めるということには当然なりますので、そういうことが入っていないようなものについては、ホームページ上で行うのも一つの考え方ではないかと考える次第でございます。
 以上です。

【八田座長】
 ありがとうございます。
 では清原メンバー、お願いします。

【清原メンバー】
 ありがとうございます。先ほど八田座長から、議論の整理の中でいうと内容、時期、形式のところについて少し分けてというコメントがありましたので、内容のところを少し補足的に申し上げますと、4ページ、5ページで意見不表明の四角囲いのところでは、若干限定的に例外的な状況が書かれています。意見不表明については、3ページのところの事例としてどういうものがあったかを見ると、①、②、③、④と挙がっています。そこの中では継続企業の前提の重要な疑義に関する事例があったりするので、5ページに挙げられているところを広げて、新規受嘱の初年度のときにはこうで、それ以外についてはどうで、ということも含めていくというように、ここは拡充することができるのではないかと考えるところでございます。
 それ以外のところでいうと、適時開示などの話がありましたので、そこについてのコメントなんですが、適時開示は、やはり速やかにということもあるので、監査人の方が述べた意見ですとかそういったものが、うまく速やかにというところに乗り切れるかどうか。そこが実務的には工夫の余地もあるんだろうと思いますので、そういったところについては今後、取引所の規則の中でうまく運用できるようなことをご検討いただくとよろしいかなということを考えております。
 先ほどからありました説明についての口頭、書面ということで申し上げますと、重要な情報についての情報の公平性、公平なアクセスという点からすれば、やはり口頭ですと、限られた、そこにおられる方への伝達となるものですから、原則的には書面かつ、できれば適時開示に載る形でなされるのが望ましいということ。そうすると、監査人の方自身が直接適時開示をするということではないので、やはり会社側のほうに、自分たちの説明すべき内容、または意見の補充とか何かがあるとすれば、それはこうだと通知するような、書面で通知して、それが会社を通じて対外的にリリースされるというような制度の運用といいますか、制度の枠組みが望ましいのではないかと思われます。口頭の説明の場合も、事前にそういった書面での開示があった上で説明をするというのは非常にやりやすくなりますし、いきなり口頭での説明ということは実務上はなかなか難しい面もあると思いますので、そういったことを踏まえて、一つ、今後大きな実務的なツールとして書面を位置づけられいくのがよいかなと考えるところでございます。

【八田座長】
 ありがとうございます。
 1点、田中メンバーの先ほどのご発言の中で確認したいことなのですが、事例として会社が適時開示するということです。そして、それに対して監査人側で反論ないしは違った見解があるのであればそれも掲示することもあり得るというようなご発言をされましたが、私の理解は、会社側の適時開示はそれが取引上の規則であって、規制されているのもありますが、あくまでも任意開示だということです。したがって、その情報に関しての信頼性の保証は一切ないわけですよね。監査人の監査意見と同じような。しかし監査人が発する言明というのは、やはりプロフェッションとしての倫理観を持って、絶対とは言いませんが、基本的に社会の人々に無批判的に受け入れてもらうというレベルで高い社会的信頼性を有した情報だと思っています。それが会社の情報と並列で並んだときの情報の信頼性を、どういうふうに読者は読み取るのでしょうか。

【田中メンバー】
 書面開示の形式にもよるかもしれませんが、投資家がどういうふうに受けとめるかという問題なので、まず第一義的には投資家のご意見を伺ったほうがいいと思います。
 私が想定していたのは、企業が適時開示の中で単に監査人からの無限定適正意見が得られなかったというだけでなくて、何がしか企業側の主張を書いたという場合に、その主張が監査人から見て適切でないと。したがって、そのときに監査報告書の意見を補充する必要があると監査人が判断するような場合に、その監査人のステートメントは、企業の意見を読んだ投資家が、それと同時に、その問題について監査人の側はこのような意見を述べているということがわかるような形で開示される必要があるのではないか、ということです。両機関が別々にステートメントを発していた場合、投資家は企業側の主張だけを見て、監査人の主張は見ないことがあるかもしれない。そういう状態が起きないようにするということであります。
 その際に、両者がステートメントが並列しているときに、企業の主張が主で監査人の主張が従かと、そういうふうに受けとめるかどうかというのは、その情報の載せ方の問題でもあると思います。事業報告であれ、有価証券報告書であれ、監査人の意見は企業の意見と並べられて書いています。一つの文書の中に書いてあります。それによって、監査人の意見がついでで、企業の意見が主であるというふうに投資家によって扱われているわけではないと思います。これは、どのように投資家が受けとめるかの問題であります。
 私が申し上げたのは、投資家が企業側の主張だけを見て、監査人がそれについて意見を述べていても、投資家のほうでそれに気づかないという状況が生じないように配慮すべきだということでございます。

【八田座長】
 個々ではあまり議論したくないのですが、今のご説明によると、財務諸表は経営者の主張である、アサーションであるという前提で議論している私たち会計の人間からすると、それに対する信頼性保証の程度を監査業務によって確認をしていくということです。そうすると今、適時開示で、これはナラティブなといいますか、文字情報的なものだと思いますけれども、それも主張だというならば、監査人がそれに対しても信頼性を確認するというトートロジーの議論が起きるのではないかという不安があると思います。恐縮ながら、私のほうでも整理がつきませんので、私自身が疑問に思っているということだけ申し上げておきます。

【田中メンバー】
 まず、監査人が意見を述べることは義務ではありません。そのような、監査人が義務として意見を述べるような制度は考えておりません。企業が言ったことについて、監査人もそれについて意見を述べてくれということを請求する権利は企業にはありません。あくまでも監査人の判断で、意見を述べた場合には、その意見を述べたということが投資家にわかるような体制を整えるべきではないか、ということであります。

【八田座長】
 出過ぎまして失礼いたしました。ありがとうございます。
 ほかにございますでしょうか。では高濱メンバー。

【高濱メンバー】
 すみません。先ほど発言するのを忘れてしまいましたので補足いたします。
町田メンバーからお話をいただきました四半期の決算説明会という任意の場での議論なんですが、これについては、我々自身は、あくまで年度の法定化された株主総会という場に近いものを、どういう形をもって四半期の開示制度の中に入れていくのがいいのかという一つのアイデアとしてお出しをさせていただいています。なので、重要なことは、関係者のコンセンサスが必要ということです。年度開示でも、株主総会という場において作成者、監査人、監査役という方々がそろった場で意見、見解を述べることがやはり重要だということと、タイミングとしては、報告書の発行の後ということを考えると、そういった場が一般的に考えられるのではないかという、こういった中身のほうのポイントから、そういう提案をさせていただいているということはお話しさせていただきたいと思います。
 以上です。

【八田座長】
 どうもありがとうございます。
 では岡田メンバー、お願いします。

【岡田メンバー】
 一般論ですが、無限定適正以外の監査報告書の割合が1000分の1であっても、当該会社の株主にとっては大変な事態が起きていると捉えなくてはならないと思います。ですから、これに対する説明責任は企業も監査人も十分に果たすことが前提であるべきと思います。
 その場合に、株主、あるいは投資家が混乱するようなことは避けていただきたい。つまり、適時開示後の会社側または監査人の説明がどこに何が書いてあるのか、会社のHPなのか口頭なのか、若しくは東証の適時開示で出ているかもしれないという混乱が起こらないようにすべきだと思います。
 そういう意味では、監査人は意見不表明のところで十分意見を尽くして書くのが大前提であると思います。企業がそこで何らかの見解を出したときに、それに対してまた議論をするという状態は本来あってはいけないのではないかと思います。但し、企業が全く違う論点で意見を述べ、それにまた監査人が反論することはあり得るかと思いますが、その場合でも、どのように意見を発表する場をつくるかを明確に決めておかないと投資家は混乱するだろうなと思います。

【八田座長】
 ありがとうございます。
 それでは、よろしければ、次に「主な論点」のⅢの監査人の交代に関する説明・情報提供、今日お配りしております資料の12から15ページ、ここにつきましてご意見を伺ってまいりたいと思いますが、いかがでしょうか。実は、ここにつきましては前回、議事録をごらんになればわかりますけれども、既に大変多くのご意見をいただいております。これを補足することも考えまして、ご意見が伺えれば、お願いいたします。
 では高濱メンバー、お願いします。

【高濱メンバー】
 その監査人の交代に行く前に、我々の意見書で少しご説明が足りていない部分があると思いますので、守秘義務以下のところについて少し、すみません、付言をさせていただきたいと思います。
 我々の意見書の7ページにありますように、今回、我々、外部の方から、コメントのところにありますように、要保護性のない情報も含め、あらゆるものが守秘義務の対象になり得ると考えていると指摘されているが、このような理解は会社側にも根強いことを示すべきではないかということをコメントとして述べさせていただいております。我々の理解についても、当然そういうふうにおっしゃられているということは理解していますけれども、そこについても少し議論をしたらどうかなと思っています。
 それから、下の方のコメント欄にありますが、監基報においては、財務諸表に本来記載すべき情報が開示されていない場合、監査人は除外事項に会社が開示していない情報を記載することが求められています。そういった内容については当然に正当な理由に該当するという規定がされていますので、これについても改めて何か条文をという話というよりは、その実際の理解を浸透させるという実務慣行の確立のほうに注力をすべきではないかと思っております。
 それから、特殊事例の11ページの前任監査人と後任監査人の意見が異なる場合の記述についてなんですけれども、我々の意見書でいうと9ページの上のほうに記載をさせていただいています。今回は前任監査人が違うということを後でお話をされたわけなんですけれども、逆のケースがあるかというと、基本的にそういうことはないと。すなわち、後任監査人が違う意見を持っていれば、会社との中で、当然それを修正、もしくは違うということを述べるという意見を出していますので、監査人同士の意見の相違というケースで、何か説明をしていくようなケースは、ほんとうにまれなケースであって、あまりここの部分を議論せずとも、本来は後任監査人の意見で全ては回っていくということで、ご理解をいただけたらありがたいなと思っているところであります。

 それから、すみません、本題の監査人の交代のところに行かせていただきたいと思います。我々の説明書でいきますと10ページのコメント欄ですけれども、従前の在り方懇から何回か議論されているんですが、まず我々の意見としましては、新たな制度の創設というよりも、臨時報告書や適時開示の現行制度がその趣旨に沿った運用となっていないということの改善をまず図るべきと考えています。
 具体的な運用としては、任期満了は理由にならないということであれば、財務局等での受付のときに、しっかりと否定をしていただいて、受理しないということが、まずもってわかりやすい対応ではないかと思います。
 加えて、それ以外の対策をとるということであれば、開示府令の変更になるかもしれないんですけれども。今は監査人の意見を述べるようになっていると思うんですが、ご存じのとおり、会計監査人の選解任権は監査役会等にございますので、当然、監査役会等の意見もしっかりと記載し、それに加えて会計監査人の意見も記載するような様式変更というのもありかと考えております。
 加えて、その下のところにコメントさせていただいていますけれども、公認会計士協会としましては、在り方懇の提言を受けまして、みずからがやるべきことについては、かなりの時間をかけて検討させてきていただいております。
 結論から言うと、監査人のみの開示の制度によって実効的な措置がなかなかできないということから、ここの資料にお出しいただいている公認会計士・監査審査会と同様の措置を既にとらせていただいております。
 コメント欄にありますように、監査の在り方の懇談会の提案に基づき、そのあり方を検討し、2017年の6月に監査人交代の理由等に関するアンケート調査結果をもとに、「監査人の交代理由等の開示の充実に係る日本公認会計士協会の取組について」として公表しており、具体的には交代理由の適時な把握、それから交代に関する質問等の実施、品質管理レビューにおける交代理由等による情報の活用、加えて定期的な公表ということで、この公表物は2018年6月付で、品質管理レビュー年次報告書で行っているところであります。
 したがいまして、この制度をより発展的に、先ほど申し上げた府令改正などを含めて対応していくことで、この解決を図るということが必要と考えており、また何か新しい屋上屋を重ねるようなものは必要ないのではないかと考えているところであります。
以上です。

【八田座長】
 ありがとうございます。
 では清原メンバー。

【清原メンバー】
 1点、守秘義務のところについて、今、高濱メンバーからお話がありましたので、そこについて、少しコメントさせていただきたいと思います。協会のほうから出された意見書の7ページに、コメントとして今読まれた、「『要保護性のない情報も含め、あらゆるものが守秘義務の対象になり得ると考えられている』と指摘されているが、このような理解は会社側にも根強い」とありますが、なぜそうなっているのかというところで1つ考えてみますと、協会の倫理規則の6条についてなんですけれども、守秘義務の規定だと思っていたので、そういうふうに読んでいたんですが、よく厳密に読むと、会員は正当な理由なく業務上知り得た情報を他の者に漏えいしてはならない、となっていて、「秘密」をとなっていないのですね。ここの問題は、そもそも6条のところで、秘密に限定せずに、情報自体を広く漏えいされないように、広めに縛りをかけてからスタートしてしまっているということがあるように思われます。
 その意味でいうと、この6条の意義というのは、それはそれで協会の解説や指針のところにたしかあったかと思うんですけれども、今お話が出ているような説明責任だとかということを考えた時代には、これはやはり公認会計士法その他の法規にもあった秘密のほうに見直しをしていただくようなことが、疑義の解消といいますか、そういうこととの関係でいうと、望ましいのかなというところを、コメントさせていただければと思います。

【八田座長】
 大変貴重なコメントだと思います。ありがとうございます。
 では町田メンバー。

【町田メンバー】
 ありがとうございます。監査意見の除外事項の関連については、除外の理由や影響額の記載を監査基準上に明確に規定することは必要だとしても、それ以上の対応は、現場の監査人の判断に委ねる部分ではないかなとも思っています。
 しかしながら、この交代のところに関しては、少なくとも私は、本日の公認会計士協会の「意見」の文書の意味がよくわかりません。どういうことかというと、2点あります。
 1つは、公認会計士協会の意見の中の10ページの真ん中のあたりですが、このように書かれています。「今後、監査上の主要な検討事項が導入されることを考慮すると、交代理由の開示の充実が利用者にとってほんとうに優先順位の高い課題であるかどうかの再確認が必要と考える。」これは後ほど、利用者の立場から貝増さんにコメントいただいたほうがいいのかもしれませんが、私は、今日、監査人の交代というのは、投資家にとって非常に重要な情報だろうと思っています。そして、この懇談会の重要な論点の一つなのではないかなと思っています。
 そして、前回のこの懇談会では、公認会計士・監査審査会からの資料も示されましたし、公認会計士協会からの説明もありました。その中では、現状、この交代に関する情報提供が十分機能していないということであったことは公認会計士協会も認めておられたはずです。ここにあるように、「会計監査の在り方に関する懇談会」の提言において、公認会計士協会に対して「具体的な措置を講じるべき」というようなコメントがあって、実際に取り組まれてきたはずです。それを今になって、「優先順位が高い課題であるかどうか」というのはいかがなものでしょうか。
 それを踏まえて2点目は、その10ページの下のところです。公認会計士協会が、この交代問題に関する取組みとして、(1)から(4)まで、こういうことやりました、報告書をつくりましたと書かれています。
 報告書はいいんですけれども、例えば、監査人に対して質問して情報収集しました、というのはいいんですけれども、情報提供の改善という課題への対応はどうなったんですか、ということなんです。ここには、何らPDCAのAがない。改善の施策が示されていない、まだ行われていない、と思うのです。
 先ほど改善の話を申し上げましたけれども、主語が問題で、公認会計士協会がこれに取り組む、そして情報提供を促すような自主規制を効かせていかないのであれば、仕方ないので、公的規制によって、例えば、今行っている臨時報告書のやり方を改善したり、別の枠組みを設定していくしかないと思います。私は、個人的には、まずもって会計士協会が自主規制として、何らかのActionをとるべきだと思いますけれども、それができない、行わない、主語が違うというのであれば、これは致し方ありません。
 監査人の交代にかかる情報提供は、監査意見の問題ではありません。前回の会議でも申し上げましたが、監査人の交代というのは、前任監査人にとっては、もう終わった監査に関すること、後任監査人にとっては、これからの監査の中で自分たちが全部やるんだから、そんなことに精を出しても意味がない、ということかもしれませんけれども、利用者にとってみれば、何で会計監査人が交代したんだ、どんな揉め事があったんだろう、あるいは監査報酬がダンピングされたんじゃないんだろうか、あるいは会社と何か意見の不一致があったのかというふうに考えるわけで、そういったことは非常に重要な情報だと一般の社会の人々は思っているということなのです。
 もしも、公認会計士協会がそう思っておられないんだとしたら、公認会計士の方々と我々の感覚に大きなギャップがあって、どちらかが間違っているんだろうな、としか思えません。
 要するに、この10ページの下のところには、「会計監査の在り方に関する懇談会」から対応を勧告されたはずの公認会計士協会において、具体的にどう情報提供させるのか、ということが何も書かれていないので、そうであれば、屋上屋を重ねるといった問題ではなくて、現行制度を改善するために、「主語」を変えるしかない、と申し上げたいということです。
 以上です。

【八田座長】
 ありがとうございます。
 では、ご指名がありましたので、貝増メンバーから先に。

【貝増メンバー】
 1は、今、町田先生がおっしゃったように、何で変わったんだというのは、これは非常に興味があります。先ほど異常事態の時に監査人の情報に何を期待しているかというお話を申し上げましたけれども、正しく交代の理由をきっちり書いていただくことで、極端なこと言えば、この会社が異常事態に陥る兆候がどの程度あるのかが見えてくる可能性があるなと思います。
 例えば、やたら値切り続けて、いろいろな監査法人とけんかばかりしているような、そういう会社でちょっと何か起こったら、これはさもありなんて思いますよね。ですから、やはりなぜという疑問には答えていただきたい。それから、特に意見が一致しなかったという時の理由は、正直、物によっては、何かこの監査法人の担当の方がすごく細かいことまで神経質過ぎたんじゃないのと感じる場合もあるかもしれませんし、会社からこんな無茶なことを言われたら、それは監査人さんも止めちゃうよねという風に、これがわかっているということは、将来その会社が何かあった時に、どこまで信用できるのかの判断材料になります。
 何度も申し上げますが、投資家から見た時の監査人というのは、会社の中身がよくわかっていながら中立的かつ職業的な義務感を持って仕事をしている人です。ですから、異常事態の時の物事を知るのに、外から見る人間としては、まずは一番頼りにしたいという存在です。利用者はそのスタンスでいるということをご理解いただくと、やはり会社と監査法人が交代したのがなぜかというのは、非常に重要だと思います。

【八田座長】
 では高濱メンバー、お願いします。

【高濱メンバー】
 先ほど清原メンバーからお話をいただいた情報という倫理規則における記載ですけれども、監査基準上は業務上知り得た事項を漏らしてはいけないという記載になっておりますので、そういう意味では、すごく広くなっているのではないかというご指摘については、その理解の範囲だという理解をしていただけたらと思います。
 加えて、今の町田メンバーからの交代理由にかかわるところについては、おっしゃるとおり我々は現在、実際、任期満了という臨時報告書が出てきている監査人交代についての、監査人が聞いている理由を会員に対して内部で聞いています。この報告書を見ていただいたらわかるとおり、前任と後任で違うケースもあります。そういうケースにおいては、我々の自主規制における品質管理レビューでヒアリングをして、違う場合には指導をしていくというようなことを徐々にやっているところであります。
 これで、やはり変わらないということであれば、何らかの仕組みを変えることも検討する必要があるのですが、それは一番下に書いてあるのは、公認会計士協会の中での制度だけでは少し難しいということであって、先ほどちょっとお話ししたように、発行体も含む開示府令のほうに少し踏み込むということをやっていただくと効果が出るのではないかという意見でございます。
 以上です。

【八田座長】
 では湯浅メンバー、お願いします。

【湯浅メンバー】
 そもそもなんですけれども、監査人がかわる場合について、何か問題があったからかわるんだろう、だからその理由をちゃんと説明しなさいという議論になっているのですが、ちょっと冷静になってみないといけないと思います。前回の懇談会で提示いただいた資料によれば、任期満了という理由をモニタリングしてみると実際の理由が異なる場合があるということなんですけれども、監査報酬を理由にしているケースや、監査人から辞任を申し入れられたということが多いということだったと思います。ある意味、円満に監査人が交代しているケースも多いわけですよね。報酬の面での不満とか、監査のやり方の不満というのはあるのでしょうが、それが必ずしも会社の経営の根幹を揺るがすような問題があるから起こっているからだとも言い切れないと思います。我々もITのサービスをやっていますけれども、民間でサービスを提供している場合にも、お客様の不満とか、値下げ要求とか、通常あるわけですよね。そういう中でベンダーがかわるということは普通に起こる。そういう脈絡の中で、情報提供をする必要があるのだけれども、現状は足りていません。だから開示の充実をしましょうという観点での検討が必要なのではないかと。予見をもって、交代がある場合は何か問題があるのだろうから、詳細に書きなさいということで突き詰めていくと、少し議論がおかしくなってしまうのではないのかなという心配があります。
 通常の要因でかえているという、多分そちらのほうが多いんだと思うんですけれども、そういう企業に対してまで余分な負担がかかることがないようにしていただきたいと思います。普通に説明すれば済む話だとは思うんですけれども、そういう観点でのフェアな議論をしていただければと思います。
 以上です。

【八田座長】
 岡田メンバー、どうぞ。

【岡田メンバー】
 監査人の選解任議案を総会へ提出するかどうかは監査役等が決めるということになっているので、やはり監査役等が何かを言わなくてはならないのではという気がしております。
 今回の内閣府令の改正案に対しては監査役協会からも意見を提出しましたが、この中に、監査人の異動があった場合は、その旨を記載することに加えて、評価を行った場合、その旨とその内容を記載することとなっています。ただ、それが新しく選任した監査役の監査人の評価なのか、あるいは異動がなかった場合にはどう評価するのか、どう記載するのかが明確ではないので、異動については、その異動の事実に関する記載だけではなくて、前任監査人の辞任の場合には辞任の理由、提出会社側の不再任もしくは解任の場合には、不再任もしくは解任の理由についても具体的に記載すべきではないのかという意見を監査役協会として提出しました。
 これは、もちろん有報の中で各企業が自主的に開示すればいいことではありますが、もう少し具体的に言及するような書きぶりをしてはどうかと思います。

【八田座長】
 ありがとうございます。
 ほかに。では清原メンバー、お願いします。

【清原メンバー】
 ありがとうございます。最終的には開示書類の記載について見直しが一部必要になるんだろうなとは思っているんですけれども、1つ、現状でも重要なところは、理由の開示ほかに、あと経緯についても開示項目になっているんですね。実は終了に至る過程では必ずやりとりが、会社側と監査人、それから監査役、三者の間でやりとりがあって、そこに実質の理由というものが潜んでいるといいますか、事実としてあって、そこの部分が、やはり外からは十分にわからないという状況が今あると。
 先ほどメンバーの方からお話があったように、予見をもってということではないにしても、何があったかどうかわからないので、中立的な観点から、問題があったかどうかということを何も書かないで、あたかも隠しているかのような外観を呈するようなことよりは、しっかりとした理由を書いて、かつ、そういったことについて、やはり経緯についても、利用者としても適切に判断できるように、理由との関係でも、そういった経緯についても記載がきちんとあって、それで初めて利用者の側は説明に納得できるだろうと思われるます。やはり説明を尽くしたことは納得につながるという点を、いいとか悪いとかという点よりは、むしろ、そこのあたりを中心に書いていただいて、開示の充実の意義という意味で、広く捉えていただくのがよろしいのではないかと考えるところでございます。以上です。

【八田座長】
 ほかにいかがでしょうか。では田中メンバー、お願いします。

【田中メンバー】
 交代理由に関して、実際には問題のない事例も多く含まれているのだというのはそのとおりであるかもしれませんが、その際に、投資家から見て黄色信号になるような事象が含まれている場合であっても、それが皆、任期満了というような抽象的な記載で、ほかと一緒になってしまっていて、問題のない事例と懸念すべき事象が生じていると思われる事例が区別されていないというところに課題があるのではないかと思います。
 今述べたような課題があるということについては、企業側と監査人側の双方とも、ある程度のコンセンサスがあるのではないかと伺っていて感じました。ですので、基本的には記載をもう少し具体的にすると。もしも監査人の交替に特に問題がないのであれば、具体的な記載をすることにもそれほど支障はないはずですから、企業に監査人の交替理由をより具体的に記載するように促すことがよいと思います。
 その場合、これは臨時報告書と適時開示の両方のマターですから、法令か、あるいはガイドラインか、そちらのほうの改訂が必要になってくると思いますが、一般的に、監査人の交替理由は具体的に書きなさいとしたうえで、さらに、交替理由の例を規定するということが考えられると思います。この点は、監査人に対するアンケート調査で、本当はどういう事由が典型的な交替事由なのかはわかっているのですから、そのような交替事由をガイドラインで例示して、その程度の具体性のある記載を臨報と適時開示両方で求めるというのが、実際的な対応策として考えられるのではないかと思います。

【八田座長】
 ありがとうございます。
 では町田メンバー、お願いします。

【町田メンバー】
 すみません、2点だけ。
 1つは今、田中先生がおっしゃった点です。これは第1回のときにも申し上げましたけれども、田中先生は例示とおっしゃいましたが、公認会計士協会が、実際に今、交代した監査人に対して尋ねる際に使っておられる、プルダウンメニューの中から選ばせるようなものを選択肢として用意して、実際にディスクローズしていくというのが、一つ方法としてあるんだろうと思います。すでに行っているものを出していくということなので、さほど大きな負荷をかけなくてもできるのかなと思います。
 それからもう一点ですが、本懇談会で、私は、ずっと守秘義務のことを議論してきましたので、一言だけコメントしたいんですが、公認会計士協会の「意見」の文書の8ページの下のほう、4の上のところですけれども、「日本公認会計士協会の倫理規則で法令の解釈を示すことの権威づけをどのように行うかの議論があわせて必要である」ということが書かれていて、「正当な理由」のところについてコメントしておられます。
 この点についてですが、わが国の法規や基準その他すべての中で、「正当な理由」について解釈を示しているのは、公認会計士協会の倫理規則の中だけなんですね。公認会計士法に守秘義務の規定はあるものの、その施行規則あるいは施行令、そのほかのどこにも「正当な理由」の解釈は示されていない。これは公認会計士協会の自主規制に委ねているわけです。
 これはアメリカを範にしたものだと思いますけれども、アメリカでも守秘義務の規定については倫理規則だけで規定している。まさにプロフェッショナルのプロフェッショナルたるところで、自主規制に委ねているんだと理解してきたわけです。
 ところが、ここで、やはり公的規制の力が要るんだ、と言われてしまうと、何かこれまで自主規制の典型だと考えてきたことが、何かちょっと肩透かしを食ってしまうような気がしてしまいます。
 逆に、もしも本当に、公認会計士協会がこういうお考えであるのであれば、公認会計士協会に、自主規制にお任せするのは止めて、日本では、「正当な理由」を公認会計士施行規則に引き上げてしまって、会計士協会の倫理規則に委ねるのを一切やめてしまえばいいんじゃないかなとさえ思います。そんな、とても残念な記述であるように私は思いました。
 以上です。

【八田座長】
 ありがとうございます。
 では高濱メンバー。すみません、青メンバー、お願いします。

【青メンバー】
 交代理由の開示に関しましては、指摘されておりますように、任期満了という記載だけでは事情がよくわからないというのは間違いないところだと思ってございまして、とりわけ、会計処理に関する意見が不一致であるとか、あるいは会計に関して何か問題が生じていることを予見させるような事情がある場合には、そうしたものについて触れるような形が求められているということをうまく示していくということが大事なことではないかと思います。
 それで、先ほどほかのメンバーの方からも出ましたけれども、会社と監査人の側で任期の満了、あるいは任期の継続に関して、いろいろやりとりがあるわけでございますので、どちらの側から、どういう事情で申し出があったのかといったような経緯に関することも触れていくことによって、大分実情がわかるようになると思いますし、実質的な意味で中身の深さを出していくためには必要なことではないかと感じる次第です。
 あと難しいところとしては、書きやすい理由のほうにどうしても行ってしまうところがありまして、実際の理由も複数ある中で、一番言いやすいこと、書きやすいことが表面上の理由として使われているのが実態ではないかと思われますので、何でも書かないといけないということではないですけれども、先ほどの会計の信頼性にかかわるようなものがあれば、そういう要素があるものについては必ず触れることが必要であるという、そういった考え方を示すことが一番重要ではないかと考える次第です。
 以上です。

【八田座長】
 では高濱メンバー、お願いします。

【高濱メンバー】
 町田メンバーからエールと理解をしましたけれども、我々、正当な理由の考え方については、自主規制の中できっちりと対応しているつもりではあります。しかしながら、今回も個々の事象を議論していくときに、必ずここの記載について、いろいろな意見をいただくということであれば、その上にありますように、基本的な考え方を整理してもらったほうがいいということも、あえて記載をさせていただいた次第です。
 したがいまして我々は、個別事例がどうだったかという検証をした場合には、いろいろな疑念が残るかもしれませんけれども、協会としては自主規制として、いろいろな説明責任を果たすべく、正当な理由というのをしっかりと世の中のニーズに応えるように捉えて今後はやっていくし、先ほど申し上げましたけれども、KAMの導入によって、そこは少しいろいろな議論が始まるんだろうということを思っておりますので、自主規制で我々に任せていただけるのであれば、それがベストという考え方が裏には隠れております。
 以上です。

【八田座長】
 ついでに、ちょっと高濱メンバーに確認しますが、10ページの、先ほどどなたか、ご指摘ありましたが、交代理由の開示の充実が利用者にとってほんとうに優先順位が高い課題であるかどうかということですが、これは、協会の中には、そういうお考えがあるわけですか。

【高濱メンバー】
 はい。先ほどの湯浅メンバーからの意見にありますように、この交代理由のところは数%の議論であって、これからKAMの議論は100%の会社に議論の機会が与えられるという意味からいって、KAMのほうが喫緊には重要な問題になっていくという理解をしております。なので、質的にどうかというよりは、監査全体を捉えた場合の優先度という意味で、KAMのほうが上であると、このような記載をさせていただいております。

【八田座長】
 ありがとうございます。
 ほかによろしいでしょうか。大体「主な論点」について、おおむねご意見を伺えたのではないかなという気がします。ただ、本日、協会のほうからご提出いただいたのは大部なものですので、これについて各メンバーの方のご意見もあるかもしれませんので、それは別途検討させていただければと思います。
 そろそろ予定しておりました終了時間も近づいてまいりました。では町田メンバー、手短にお願いします。

【町田メンバー】
 すみません。2点だけ、本日の「主な論点」の骨子とはやや離れますが、別途ご検討いただきたいということで、金融庁事務局に申し上げたい点があります。
 1つはEDINETです。先ほど申し上げた、被監査企業と監査法人の問題において、実は、監査法人が過去に提出した四半期レビュー報告書の結論を変更したにもかかわらず、EDINETには、その撤回されたはずの四半期レビュー報告書が、今なお、開示されたままになって載っています。これは、高濱メンバーに言わせると、会社がイニシアチブを持っているんだという話になってしまうと思うんですけれども、それはおかしいのであって、会社側に対して、もし監査報告書や四半期レビュー報告書が差し替えられた場合には、それらの報告書をEDINETに載せなければならないとする制度上の義務づけを行う、もしくは、監査人の側が自分自身で差し替えを行えるような仕組みを、EDINET上、何らかの形で対応してもらわないと、単に、会社側がアップするシステムだからという理由で看過されてしまうのでは、ちょっと困るんじゃないかということを1点申し上げたいのです。本懇談会との関連でいえば、少なくとも、監査人が意見又は結論を変更した旨について、情報提供をする必要があるのではないか、ということです。

 それからもう一つは、これは少し筋がずれるかもしれませんけれども、実は、今日はこのことだけは是非言おうと思って来たところもあります。
 どういうことかといいますと、この懇談会では、会計監査についての情報提供の充実ということを議論していて、先ほど述べたように、「会計監査の在り方に関する懇談会」の提言にあったKAMの議論から転がっていって、KAMが表明されるような通常時だけではなく、監査人が交代するとか、監査意見が表明されないといったケースについても、利用者に対して十分に情報提供することを目指しているのだと思います。つまり、「会計監査の在り方に関する懇談会」の報告書から、その後、個社の問題で状況が変わって、論点が広がったんだろうと思います。それであれば、今回、この論点も入れてもらいたいと思います。
 それは何かというと、国際監査基準720の議論です。今日、報道の方いっぱいいらっしゃいますけれども、今、世間を賑わしている問題として、有価証券報告書の経営者報酬の不実記載によって超有名企業の会長が逮捕されるということがありました。かつて2004年に、鉄道会社の大株主の状況のところをきっかけに内部統制報告制度が導入され、有価証券報告書の情報内容について制度整備が行われたわけですが、それにもかかわらず、今回、まだ十分な対応が図られていなかったということであるとするならば、有価証券報告書の経理の状況以外のところについて、更なるしかるべき対応を図るべきであると思います。
 本年7月に企業会計審議会から公表された改訂監査基準では、国際監査基準の改正に対応して監査報告書改革が行われたわけですが、KAMの記載は導入されたものの、国際監査基準における一連の監査報告書改革に含まれていて、他の先進諸国では問題なく導入されている国際監査基準720については、経済界の反対があって導入されませんでした。720というのは、有価証券報告書のうち、監査対象である財務諸表以外の情報、これを「その他の情報」と言いますが、これについても監査人が通読して、検討して、監査人が監査の過程で得た理解と異なる点があれば、監査報告書の特定の欄でその点について言及することを求めるものです。
 もちろん、7月の監査基準の改訂で入っていたとしても、今般の事案には、間に合いませんでしたが、仮に、720を導入すれば、今後、今回と同様のことが他の会社で起きて、もし監査人が経営者報酬の記載内容に違和感を持ったならば、その欄を通じて記載することも可能となるわけです。
 日本では、現在、国際監査基準の720はアドプションしない、そこだけカーブアウトして取り入れないという対応をしているわけですが、これは、国際的にみて、何かやましいことがあるのではないかといった穿った見方をされかねず、大変恥ずかしいことだと思います。この懇談会のテーマが監査人による情報提供の充実だというのであれば、監査報告書に、「その他の情報」に関する記載事項の欄を設けることについても、やはり重要な情報提供ツールだと思いますので、ぜひご検討いただきたいと思います。
 以上です。

【八田座長】
 ありがとうございます。ただ、財務諸表監査の範囲としては、例の報酬等の記載は対象外だということで、大体理解ができていると思います。それ以外に、今ご紹介あった2004年の鉄道会社事件が契機に成立したのが財務報告に係る内部統制報告制度ですが、ここでは、それを踏まえた定性的、あるいは非財務的な情報の信頼性も一応、内部統制監査の一環の中で確認がされているという理解をしています。私は町田メンバーの意見とちょっと違いますので、またその辺はすり合わせていただきます。

 それでは、終了時間が近づいてまいりましたので、今日の議論は終了させていただきます。
 私としましては、本日のご議論で、「主な論点」についてのメンバーの皆様のご意見をおおむね伺うことができたのではないかと考えます。
 つきましては、次回の懇談会では、これまでいただきましたご意見を踏まえ、事務局とも相談して、具体的な報告書のご議論をいただいてはどうかと思います。
 なお、「主な論点」につきましては、今も冒頭申し上げましたが、追加のご意見等がございましたら、事務局宛てにご提出をいただければと思います。
 では最後に、事務局から連絡等がございましたら、お願いします。

【高濱メンバー】
 すみません。一言だけ申し上げさせていただいてよろしいですか。

【八田座長】
 はい。

【高濱メンバー】
 我々、冒頭にも申し上げましたけれども、意見書を作成させていただいております。最終的な取りまとめの前には、ぜひ前広にご相談をいただけたらありがたいと思います。
以上です。

【八田座長】
 ありがとうございます。
 では、お願いします。

【野崎開示業務室長】
 次回の懇談会の日程でございますが、皆様のご都合を踏まえた上で、後日事務局よりご案内させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 事務局からは以上でございます。

【八田座長】
 それでは、以上をもちまして本日の懇談会を終了させていただきます。どうもありがとうございました。
 

以上

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