会計監査についての情報提供の充実に関する懇談会(第3回)

1.日時:

平成30年12月20日(木)16時00分~18時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室



【八田座長】
 それでは、ただいまより第3回会計監査についての情報提供の充実に関する懇談会を開催いたします。皆様ご多忙のところご参集いただきまして、まことにありがとうございます。
 田中メンバーは少し遅れられるという情報をいただいていますので、これより始めさせていただきます。
 前回の懇談会では、主な論点についてご議論いただきました。本日は、前回会合でいただいたご意見等を踏まえ、事務局において報告書案を作成いたしましたので、これについてご討議いただければと考えております。
 それでは、事務局より報告書案を説明してください。

【野崎開示業務室長】
 それでは、お手元の資料に基づきまして、報告書案についてご説明させていただきたいと思います。
 まず1ページ目、「はじめに」のところでございます。経緯のところでございますが、前回も触れさせていただいたとおり、なぜ会計監査に関する情報提供の充実が重要かという点につきましては、「会計監査の在り方に関する懇談会」の提言を踏襲させていただいております。会計監査の透明性の向上を通じて、4行目でございますが、より高品質な監査を提供するインセンティブの強化等を通じまして、市場全体における監査の品質の持続的な向上につながっていく好循環が確立されることが望まれるという点を再度確認させていただければと思います。
 おめくりいただきまして2ページ目でございます。2段落目で基本的な考え方をお示ししております。監査人が、会計監査の最終的な受益者である株主・投資家等の財務諸表利用者に対し、みずから行った監査に係る説明を行うことは、監査人の本来の職責であり、会計監査の品質向上・信頼性確保に向けた自律的な対応の一環として、監査人は、自らの説明責任を十分に果たしていくことが求められる。
 脚注2でございますけれども、監査人と併せて監査役等におきましても、会計監査の品質向上、信頼性確保に向けて説明責任を果たしていくことが求められるところでございます。
 戻りまして3段落目でございますけれども、近年、「監査報告書の透明化」に向けた制度面での整備も進んでおりまして、監査人による個別の会計監査に関する情報提供、説明のニーズが高まっている。それに応じて、より一層の会計監査に関する説明・情報提供の充実が求められているというところでございます。
 その後、「特に」以下のところで今回の懇談会の議論のスコープを記載させていただいておりますが、特に限定付適正意見や意見不表明など、通常と異なる監査意見が表明された場合は、監査人の判断の背景や根拠となった事情が利用者の意思決定により重大な影響を与え得る。こうしたことから、監査人からの説明・情報提供は一層重要となる。また、監査人の交代など、利用者の関心が高い事象についても適切な情報提供、説明が必要ということを書かせていただいております。
 3ページ目でございますけれども、こうした説明・情報提供の充実の要請に適切に応えていくことにより、個別の会計監査において、利用者にとって有用性が高まる。それに加えまして、利用者による会計監査に対する全体に対する理解が深まって、監査の品質に対する適正な評価が行われる。そういったことを通じ、会計監査の品質の向上、ひいては会計監査の信頼性確保にもつながるということで、改めて本懇談会の目指すところを、ここで確認させていただいております。
 以上が「はじめに」のところでございます。

 おめくりいただきまして4ページ目、「Ⅱ.通常とは異なる監査意見についての説明・情報提供」でございます。「1.現状」の(1)でございますけれども、実際の監査報告書は、ほとんどが無限定適正意見ということでございます。それ以外の意見については、ほぼ毎年、一定数存在しているということで、脚注の3で、7年間の合計の件数を具体的に記載させていただいております。
 戻りまして2段落目でございますけれども、意見不表明の事例につきましては、こちらに掲げている①、②、③、④といった類型が、これまで見られるところでございます。
 また、限定付適正意見の事例に関しては、大半が監査意見の制約を理由とするものとなっておりますが、意見限定の事例も存在しているところでございます。
 (2)の2段落目でございますけれども、監査人は監査報告書または四半期レビュー報告書において意見表明を行い、特に無限定適正意見以外の場合には、「意見の根拠」区分において、みずからの判断について説明を行う、これが基本となってございます。
 それに加えまして、監査人には、会社法上、一定の場合に株主総会での意見陳述の機会が確保されております。この意見陳述の機会は、実際にはほとんど活用されていないという指摘がなされております。また一般的な株主総会の実務におきましては、仮に監査人が出席している場合におきましても、その株主から質問があった場合でも監査人には意見を述べさせず、かわりに経営者や監査役等が回答するという点についても指摘がなされているところでございます。
 無限定適正意見以外の監査意見が出された場合におきましては、さらに企業が適時開示をすることとなっております。その際の適時開示におきまして、企業が監査人の意見と異なる見解を掲載する、そういった事例もあり得るということでございます。
 以上、ご説明申し上げた現状につきまして、特に監査人による説明・情報提供の場面が極めて限定されている。それに加え、必ずしもそういった場面が活用されておらず、利用者のニーズに十分応えていないのではないかとのご指摘があるところでございます。
 おめくりいただきまして6ページ目でございます。無限定適正意見以外の監査報告書につきましては、基本的には監査人として「意見の根拠」の区分において、わかりやすく具体的な説明を行うことが求められるという点を、ここでまずは確認させていただいております。
 具体的には、下の1つ目の丸でございます限定付適正意見の場合におきましては、2段落目でございますけれども、なぜ不適正ではなく限定付適正と判断したのかについての説明を十分に尽くす必要があると考えられておりますので、その次の段落でございますけれども、除外事項の影響が財務諸表全体に及ばないことも含め、限定付適正意見を表明する根拠について十分かつ適切な説明を行うことが求められるということを記載させていただいております。
 次に意見不表明の場合でございます。2段落目、重要かつ広範な監査範囲の制約が生じ意見を表明できないことは極めて例外的な状況と考えられますので、監査報告書においては、なぜそういった例外的な状況に至ったのかについて、次の7ページ目でございますけれども、そういった意見不表明に至った理由について、特に丁寧な説明が求められると考えられるところでございます。
 7ページ目、「(2)追加的な説明の必要性」でございます。監査人、監査報告書において求められる説明・情報提供を十分に行うことが、先ほど申し上げましたとおり求められるところでございます。その際に、監査役におきましても、監査役等の監査報告書において、監査の方法と結果の相当性の判断について十分な説明を行うことが重要と考えられるところでございます。
 ただ、こういった基本的な枠組みだけでは対応できない場合もあり得ると考えておりまして、それが「ただし」以降のところでございます。ただし、経営者や監査役等と監査人との間の意見の見解の不一致等を背景としまして、監査人が監査報告書を提出した後に、その記載内容について財務諸表利用者などから疑問点が提起された場合など、あらかじめ監査報告書に求められる情報を全て記載しておくことが必ずしも現実的ではないという場合も想定されます。こうした事案におきましては、監査人は特別な状況に応じて追加的な説明を行うべきであると考えられます。
 その下でございます。監査人が追加的な説明を行う場合には、監査役とも十分に協議することが重要と考えられます。また、監査役等は監査人による追加的な説明に対するみずからの意見についても追加的に説明することも検討すべきと考えられます。
 具体的な追加的な説明の手段①としまして、株主総会での意見陳述がございます。会社法398条第1項は、企業の計算書類の法令・定款適合性に関して、監査人が監査役等と意見を異にする場合には、監査人は株主総会に出席して意見を述べることができるとされています。
 8ページ目でございますけれども、そういう見解の不一致が存在する場合におきましては、株主総会の場において全てを明らかにした上で株主の判断を求めるという趣旨の条文と解されております。
 4段落目でございますけれども、監査人は、上記の会社法の趣旨や会計監査に関する説明・情報提供の充実の要請を踏まえて、株主総会での意見陳述の機会を積極的に活用すべきであると記載しております。また企業側においても、株主総会の議事運営に当たり、監査人の意見陳述の機会を尊重することが求められると考えられます。
 その下の追加的な説明の手段②でございます。四半期決算に関して見解の不一致が生じた場合ですとか、監査意見の提出と株主総会との間に一定の時間があく場合など、株主総会の意見陳述の機会を活用できない場合も想定されるところでございます。
 こうした場合でも、利用者の意思決定に及ぼす影響の重要性や、経営者や監査役等の状況等を踏まえて、適切な説明の手段について検討する必要があると考えられます。この点、利用者が経営者や監査役等の意見と監査人の意見とを比較できる機会において、それぞれが説明を行うことが望ましいといった観点からしますと、株主総会と同じような建付けで、経営者、監査役等及び監査人がそろって参加する場面で説明を行うことが考えられるところでございます。
 そして、経営者は監査人による説明の機会をきちんと確保するよう配慮することが求められ、また監査役等も、これを促すことが求められると考えられます。ただ、仮にそうした機会が設けられず、企業側の意見のみが利用者に提供されているなど、監査人の意見が適切に利用者に提供されていないような状況も想定されますので、そういった状況におきましては、監査人がみずから適切な方法、例えば日本公認会計士協会において説明会を開催と記載させていただきましたけれども、そういった適切な方法によって利用者に必要な説明をすべきであると考えられるところでございます。
 なお、企業におきましても、先ほどご説明した適時開示に当たっては、監査人の意見やその背景にある考え方が不正確な形で利用者に伝わることがないよう、必要に応じて監査人からの追加的な説明を転載するなどの対応をとるべきと考えられるところでございます。
 次の「追加的な説明に当たっての留意点」、2段落目でございますけれども、監査人が監査報告書以外に追加的な説明を行う場合であっても、利用者に公平に情報が伝達されることが重要と考えられますので、口頭で説明した内容については書面化して公表するなどの対応を検討すべきとしております。
 最後の段落でございますけれども、株主総会において監査人による追加的な説明が行われた場合には、企業側においても、その内容を公表するなどの対応をとることが考えられると記載しております。
 おめくりいただいて10ページ、守秘義務でございます。現行制度では公認会計士法27条におきまして、公認会計士の守秘義務に関して「正当な理由がなく、秘密を他に漏らし、または盗用してはならない」と定めており、協会の自主規制として、倫理規則においても同様の定めが置かれているところでございます。
 次の丸の守秘義務についての考え方でございますけれども、我が国におきましては監査人の守秘義務が過度に強調され、監査人が利用者に対して説明・情報提供を行う上で障害となっている可能性があるとの指摘がなされているところであります。
 しかしながら、前回ご議論いただいたとおり、利用者に対して監査人がみずからの監査意見の内容やその根拠を説明する上で必要な事項を述べること、特に無限定適正意見以外の場合に当該意見に至った理由は、監査人の職業的専門家としての判断の根幹部分であり、当該理由を説明する上で必要な事項を述べることは正当な理由に該当すると記載させていただいております。公認会計士法を所管する金融庁といたしましても、同じ見解を有しているところでございます。
 「また」の段落でございますけれども、監査人が株主総会に出席して意見を述べる場合、特に会社法398条第1項が想定する場面において、監査人が監査役等との意見不一致の内容及びそれが生じた理由、さらには監査役等の意見にもかかわらず自分の意見が正しいと考える理由を説明する場合に関しましても、必要な事項を述べることは「正当な理由」に該当すると考えられます。
 11ページ目でございます。上述の「正当な理由」につきましては、IESBAの倫理基準をはじめとしまして、諸外国の規定では、該当する場合があくまで例示として列挙されているところでございますけれども、我が国の実務では、「正当な理由」の範囲を限定的に捉えて、過度にリスク回避的になっているのではないかというご指摘があるところでございます。
 このため、監査人が職業的専門家として利用者に説明・情報提供を行う場合に、監査人が過度にリスク回避的にならないよう、今後、「監査上の主要な検討事項」の記載の状況等も踏まえつつ、日本公認会計士協会において倫理規則の「正当な理由」についての考え方を示すなど、関係者において適切な方策を検討すべきであるという形で記載させていただいております。
 (4)その他、利用者に対し十分かつ適切な情報提供を行うことが必要となる場面として、監査人が交代し、現任監査人と監査役等・前任監査人との間に見解の相違がある場合などが考えられます。
 その次の丸の4行目でございます。仮に交代後に新たな事実が判明するなどの場合に、経営者・監査役等が前任監査人の見解に依拠して、現任監査人と異なる見解をとることがあり得ます。その場合、監査役等は前任監査人と現任監査人の双方の見解を聴取するなどして、会計監査の相当性を判断するとともに、利用者に説明を行うことが求められる。
 その上で、両者の調整がつかない場合には、前任監査人や現任監査人がみずから情報提供、説明を行うことが求められる場面も想定されるところでございます。
 その際、前任につきましては、現に監査人としての立場にはございませんので、監査報告書や株主総会での意見陳述といった対応をとることができないということでございます。
 12ページでございますけれども、事案によっては経営者、監査役等及び現任監査人に加えまして、前任監査人も含めた説明の機会を設けるなど、適切な手段を検討することが求められる場面もあろうかと思います。
 その他、特に充実した説明・情報提供が求められるその他の場合を幾つか記載させていただいております。

 次、13ページから「Ⅲ.監査人の交代に関する説明・情報提供」でございます。会計監査に関する利用者への説明・情報提供のあり方が問題となる場面としまして、監査人の交代に関する説明・情報提供が挙げられます。監査人の交代につきましては、その理由も含め、企業が説明・情報提供を行うことが制度上求められているところでございます。
 ただ、この点に関しまして、必ずしも実質的な交代理由や交代に至る経緯が説明されていないのではないかとのご指摘があるところでございます。
 具体的には、このページの下から2行目でございますけれども、概ね半数以上において「任期満了」と記載されているなど、実質的な内容が記載されていない例が多いことが明らかとなっております。
 おめくりいただきまして14ページ目、「(2)監査人の交代理由の開示についての考え方」でございます。監査人の交代理由及びこれに対する監査人の意見は、利用者にとって監査上の懸念事項の有無や監査品質に影響する事象の有無を把握する上で重要な情報であり、企業及び監査人は臨時報告書において実質的な内容を記載することが必要であるとの指摘がございます。
 まず考えられる対応としまして、監査人の任期が通常1年で終了することからすれば、「任期満了」との記載は交代理由の開示としては不適切であると考えられます。
 また、「監査報酬や会計処理に関する見解の相違」といった実質的な交代理由があった場合に関しましては、具体的にどのような点で対立しているのか、できるだけ実質的な内容を開示することが求められると考えられます。
 少なくとも第1回でご紹介しました公認会計士・監査審査会のモニタリングを通じて把握した内容と同程度の実質的な情報価値を有する理由が開示されるべきであると考えています。
 監査人の選解任に関する株主総会の議案の決定が監査役等において行われているということからしますと、監査役等は経営者に対し、臨時報告書における交代理由の開示の充実を促すことが求められる。さらに、監査人の交代に関する監査役等の意見を記載することも今後検討することが求められると記載させていただいております。
 15ページ目でございます。監査人の交代に関して臨時報告書により開示を行うのは企業でございますけれども、仮に企業による開示内容が一方的で、監査上の懸念事項、監査品質に影響する事象やその背景事情について、利用者に正確な情報を伝えられていないと考えられる状況におきましては、監査人がみずから交代の理由・経緯に関して必要な説明・情報提供を行うべきであると考えられます。
 この点に関しましては、先ほど申し上げた臨時報告書における開示の充実というような状況も注視しつつ、監査人が主体的に交代理由を説明・情報提供するための環境整備を一層進めていく必要があると考えられるところでございます。

 最後のページでございます。「おわりに」でございます。各関係者における今後の対応について記載させていただいております。
 3段落目でございます。まず、監査人は今後、監査報告書において「監査上の主要な検討事項」の記載が求められることも含め、利用者の意思決定に有用な情報をわかりやすく提供することを意識した積極的な説明・情報提供に努めることが期待される。企業側におきましても、監査人の説明・情報提供に対しまして進んで協力する姿勢が求められる。とりわけ監査役等は、監査人による説明・情報提供が適切に行われるよう、公平・公正な視点で監査人との連携を図ることということが期待されます。
 また金融庁、取引所、日本公認会計士協会を含む関係者においては、本取りまとめを含め、必要な環境整備についての検討を速やかに開始することが期待されると記載させていただいております。
 事務局からは以上でございます。

【八田座長】
 ありがとうございました。
 それでは、事務局から説明のありました、この報告書案について、皆様からご意見などを伺ってまいりたいと思います。
 本日の進め方ですが、全体を前半、後半というふうに分け、前半はローマ数字の「Ⅰ.はじめに」及び「Ⅱ.通常とは異なる監査意見についての説明・情報提供」、そして後半は「Ⅲ.監査人の交代に関する説明・情報提供」及び「Ⅳ.おわりに」、この2つに分けて、それぞれについてご討議いただければと思います。
 それでは、まず主な論点の「Ⅰ.はじめに」、1ページから3ページまでと「Ⅱ.通常とは異なる監査意見についての説明・情報提供」、4ページから12ページまでにつきまして、ご意見を伺えればと思います。どなたからでも結構です。ご自由に発言ください。
 では、高濱メンバー、お願いします。

【高濱メンバー】
 ご指名いただき、ありがとうございます。何点か我々協会のほうから意見等を述べさせていただきたいと思います。
 まず8ページ目ですね。追加的な説明手段の②の点、四半期決算に係る三者そろった説明について、ご意見をさせていただきます。
 四半期決算に関する三者がそろった説明の場というのは、法令の枠組みは何もないということは承知しているものの、今回の充実懇の趣旨に鑑み、新たに何らかの場が創設されるものと理解をしております。
 年次報告書、年次決算の監査報告書の除外事項について説明する場所として活用が想定される株主総会と同様の効果を持つ説明会の場というのが、現状の枠組みを踏まえ、決算説明会、マスコミ発表、アナリスト向けIR等の総意を含め、企業側が納得できる制度であることが必要であると考えます。その内容については今後、検討が必要かもしれないと思いますけれども、例えば証券取引所等のルールで定めることが考えられると思います。
 それから、同じく追加的な説明手段の②に関して、8ページの下から2行目のただし書き以降についてです。このただし書き以降について、三者そろった説明の場を経営者は確保するように求め、監査役も促すこととしていながら、その取り組みである三者そろった説明の場が、それでもなお不調であるということを前提に、例外中の例外として、監査人が自ら適切な方法により説明をすることが記載されていると理解します。
 そのため、ここで提案される三者そろった説明の場の仕組みをつくることが、残念ながら最初から断念されているようにしか読めません。あくまで、そういった場を設けることを促すという記載にとどめるべきであって、ただし書き以降は不要ではないかと考えております。
 また、仮に残す場合においてですけれども、9ページの一番上から2行目です。日本公認会計士協会において説明会を開催するということが例示されておりますけれども、これについては日本公認会計士協会に対して、どのような役割を期待しているのかというのも不明瞭になっており、個々の監査契約に公認会計士協会が主体としてかかわるような誤認を生じるような懸念があります。また、単なる場所を貸すというようなことを想定するとも思えず、括弧書きについては削除すべきと考えています。
 このような報告書の文章において、極めてレアなものについて、読まれる方に伝わるような文章、表現を工夫することについては大変難しいことだという理解はしておりますけれども、おのおのの当事者が資本市場や利用者に向けて、それぞれ別々の場で、別々の立場で発言するということは、今回の懇談会設置の契機となった事案の教訓を生かすことには結果としてならないと思いますので、この責任を果たす仕組みづくりについて検討をいただきたいと考えているところであります。
 以上、私どもの意見でございますが、少し修文に関するご意見を足させていただきます。
 まず1つ目、同じく8ページの追加的な説明手段の②の上から2行目、「監査意見の提出と株主総会との間に一定の時間が空く場合など」と記載されていますけれども、これはどのような状況を想定しているのか。といいますのは、年次決算が株主総会の招集通知に監査報告書とともに計算書類や事業報告が含まれて発送されることになっていると思いますけれども、その発送後、総会があるにもかかわらず、総会前に任意で説明会を開催する必要が生じるということが少し理解できませんので、この部分について内容を確認させていただくとともに、必要に応じて修文をお願いしたいと考えているところであります。
 それから2文目ですね。今の同じ追加的な説明手段の②の3行目の「しかし」以降のところに、「株主総会での意見陳述の機会がないことは、監査人が財務諸表利用者への追加的な説明を行わない理由にはなり得ないというべきである」とは、もともと四半期開示制度自体が、あくまで金商法の制度で、会社法上の規定がないということは、制度上、当然の問題が起こっているところであって、もし年度と同様の説明の場を設ける必要があるということであれば、例えば株主総会の機会がないことは財務諸表利用者に対して経営者、監査役等、監査人が追加的な説明を行ってよいことにはならないというような記載で、あくまで、その関連三者を絡めた修文にしたらどうかと考えております。
 長いですが、続けてよろしいですか。

【八田座長】
 どうぞ。

【高濱メンバー】
 じゃあ、すみません。7ページの追加的な説明手段①のところで、ページをめくっていただいて8ページ目の上から9、「監査人は、上記のような会社法の趣旨や」というところの続きに、「また」以降、「企業側においても、株主総会の議事運営にあたり、監査人の意見陳述の機会を尊重する」という記載があるわけですけれども、この部分は、尊重というよりは、これは字句の問題ですが、法の制度の中で、基本的には監査人が意見陳述できる制度になっているという記載ぶりに変えていただくほうがいいのではないかと思います。
 この際、取りまとめの5ページの脚注で、先ほど引いていただきましたけれども、脚注4の株主総会への監査人の出席状況に関した商事法務の記事でも述べられているとおり、現行、会社の法務部や顧問弁護士において、会計監査人に株主総会で意見を述べさせることは通常想定されないというようなことが説明されているということですので、この認識については、今回の懇談会の認識を受け、認識を変えていくような周知の手だてに関係者の協力が必要であると考えます。
 その際、株主総会の監査人の意見陳述権と議長の議事整理権との関係についても十分に整理をして理解を求めるような必要があると考えておりまして、今いらっしゃらないんですけれども、田中先生にも、その辺の議長の議事整理権と監査人の意見陳述権との整理という部分については、ぜひ意見をお伺いしたいと考えているところであります。
 それから引き続き、申しわけございません。11ページの守秘義務解除の正当な理由。11ページじゃない、10ページ、すみません。から始まる守秘義務についての、これにつきましては我々の理解というか、について少し金融庁様に確認をさせていただきたいと思います。
 11ページの上から2つ目のパラ、「このため」以降ですね。今後、KAMについて求められる説明責任を果たしていく中で、当協会においても守秘義務解除の正当な理由を検討するに当たり、守秘義務に関する理解を我々の立場として述べさせていただいて、質問をしたいと思っています。その認識の中で、何か誤解があるようであれば、この場で指摘をいただきたいと思っています。
 先ほど室長からの説明にもありましたけれども、この質問の趣旨は、実際の裁判等で法解釈の論争になったときに、この取りまとめに沿って積極的に説明責任を果たした監査人が、結果として困難な状況に陥らないように整理しておく必要があり、また、そのような環境作りが我々の役目と考えているからでございます。
 理解の1つ目ですけれども、公認会計士法の規定である守秘義務の正当な理由の範囲に関する解釈は、法令上、解釈の指針が今現在示されていないため、最終的な判断は裁判所が行うという理解です。公認会計士法の所管官庁である金融庁も、行政機関としての解釈を示すということができると理解しておりますが、金融庁として、自主規制機関である我々日本公認会計士協会の倫理規則に、その解釈を委ねたり、これに権威づけを行うということもないと理解をしています。しかしながら、我々の定める倫理規則については、改正の都度、金融庁の解釈の範囲内にあるかどうかを確認されており、公認会計士協会の倫理規則は、法令解釈上の参考にはなり得て、最後、裁判等においても、よって立つ基盤になるという理解をしております。それが1つ目です。
 2つ目は、この充実懇の取りまとめにおいて、無限定適正意見以外の意見となった場合、その除外事項の内容を説明する上で必要な事項を述べること、及び株主総会において、会社法398条第1項の趣旨に照らして、必要な事項を監査人が述べることは、守秘義務解除の正当な理由に当たるというような理解をさせていただいていますが、これについてどうかということを確認させていただければと思います。
 これに関連して少し質問がございます。質問の1つ目は、監査人が株主総会に出席して意見を述べる場合として、会社法398条の1項のみに言及しておりますけれども、本取りまとめでは、第2項における意見陳述につきまして別の箇所で記載がありますが、この2項に基づく意見陳述も、この正当な理由に該当すると、この懇談会で整理したことになっていると理解しておりますけれども、それについてのご意見をいただきたいと思います。
 それから質問の2つ目は、11ページの上のところに記載がありますIESBA、国際会計士倫理基準審議会をはじめ諸外国の規定では、正当な理由に該当する場合は、あくまで例示として列挙されているが、我が国の実務では限定的に捉え、過度にリスク回避的になっているとの指摘があると示されていますけれども、IESBAのコードは、あくまで例示として列挙というところまでの強い記載にはなっておらず、慎重に検討すべきというようにも読めるのではないかと考えられておりますので、「あくまで例示」という記載については、表現を少し変えたらいかがかなと思っている次第であります。
 いずれにしましても、この守秘義務の解除に関するテーマについては非常に重たいテーマと受けとめておりますけれども、もし今この段階で金融庁様のほうから、この報告書からの方向性について何かご意見、この場でお聞かせいただけることがありましたら、お伺いしたいと思っているところです。
 以上、すみません、我々の理解と質問、取りまぜて長くなりましたけれども、私のほうからの意見は以上でございます。

【八田座長】
 ありがとうございます。中身、内容に関する点と、あと修文といいますか、語句に関してご指摘がまざっておりますので、まずこの段階で金融庁の方で、もしあったらお願いします。

【野崎開示業務室長】
 まず8ページの追加的な説明の手段②、2行目の「監査意見の提出と株主総会との間に一定の時間が空く場合」ですけれども、通常のスケジュールに沿う場合ではなく、株主総会の開催のタイミングが何らかの事情で大幅に遅れるような事情もあり得ますので、そういった場合に企業側から何らかのメッセージが出されたとき、特に会計監査に関して企業側から何らかのメッセージが出された場合に、監査人における対応も検討されるべきなのではないかというのが、問題意識でございます。
 それから守秘義務につきまして、11ページの「正当な理由」について、協会における倫理規則が、法の委任があるものではないということですけれども、実務上ミニマムスタンダード、要するに、正当な理由として最低限列記されている部分については、我々も理解を共有しているのですけれども、これらに限定されるという形では考えていないので、そういった問題意識を今回、この報告書において明らかにさせていただきたいということでございます。
 今書かれていること自体が解釈の基盤になることを否定するものではなくて、ただ、それに限るものではないというようなことを我々としては考えているところでございます。
 守秘義務に関する2つ目のご質問について、無限定適正意見以外の意見を表明する場合に必要な事項を述べることについての「正当な理由」への該当性は、今回、10ページの「守秘義務についての考え方」の3段落目の「しかしながら」のところで明記されておりますし、我々、公認会計士法を所管する金融庁としても、こういった場合は正当な理由に該当すると理解しているところでございます。
 その下の「また」以降は、398条1項を例示として、代表的な場面として記載しておりますけれども、398条2項も法令に基づく場面でございますので、当然にそこで必要なことを述べることは正当な理由に該当すると考えております。
 最後、IESBAのところの表現ぶりについては、原典と照らし合わせて、もしこの例示としての列挙という表現が適切ではないということであれば、またそれは改めてご相談させていただければと思います。
 以上でございます。

【八田座長】
 ありがとうございます。では、手短にお願いいたします。

【高濱メンバー】
 すみません、今のご説明の中で1点だけ確認をさせていただきたいのですが。守秘義務解除の例について、この場で大宗を確認はしていただいているのですが、限定的なものではないというお話をされた、その解釈、もしくはその規定類については今後、金融庁様において何らかの法律改正、あるいは我々への規則改正の指示等が行われて、最終的にそこで終結するということでしょうか。もしくは、そういった指示や何らかの改正等がないということであれば、現行の規定の中で、この理解で進めてよいという理解をさせていただければいいのでしょうか。その辺、私自身の理解が進まなかったものですから、ご説明いただけたらと思います。

【八田座長】
 どうぞ。お願いします。

【野崎開示業務室長】
 規定ぶりの話もありますが、最終的な目的としては、監査人が過度にリスク回避的にならないようにというところの実質を担保する必要がありますので、少なくとも10ページにおきまして、我々金融庁としての理解を示しているところでございます。さらに、そういった理解がある中でも、やはり、例えば日本公認会計士協会が定める倫理規則、我々としては例示列挙と思っていますけれども、そういった列記されている事項に入っていないと、監査人としては自信を持って株主総会で必要な事項を述べることができないということになるのであれば、きちんと書いていただくのが、監査人の過度にリスク回避的になることを防ぐための一つの手段だと考えております。

【八田座長】
 何かあれば、また後ほどお願いします。私も発言させていただく機会があるかもしれませんが。
 それでは次の方、お願いいたします。では、清原メンバー、お願いします。

【清原メンバー】
 ありがとうございます。少し全体的なところも含めてコメントさせていただければと思っております。
 1ページ目のところについて2点ほどコメントしたいと思っております。
 今回の報告書案は、これまでの第1回、第2回の会合、短時間でありますけれども、そこでの議論をうまくまとめて整理していただいたなと思っておりまして、全体としては、この案については賛成したいと考えているところです。
 説明責任の問題というものが端緒になっているところでありますが、説明・情報提供というふうに随所に記載されているところにありますように、説明とあわせて開示の問題があるので、その点について、弁護士として少しコメントしたいと思います。
 この報告書案の中には、「不正確な」、または「一方的な」という記述がなされていて、これらの書きぶり自体についてどうこうということではないんですが、開示ルールという点から考えますと、実は今1つ重要な問題が、この背景には潜んでいると思うところがありまして、その点をコメントしたいと思っています。
 何を言いたいかというと、開示違反というのは、開示されたものが正確でないということだけでない、という点は非常に重要なポイントであり、刑事責任という意味においては、虚偽があれば問題なのですが、課徴金、それから民事責任ということで考えたときには、記載すべき重要な事項が欠けている場合、それから誤解を生じないために必要となるような重要な事項が欠けている場合には開示ルールの違反となると。すなわち、やはりこれまでの実務の中では、言いにくいというところは、言ったところが間違ってなければいい、というような狭い形での開示の実務がかなり横行し、定着してしまっていると思われまして、必要なことをきちんと記載しておかないと、利用者が適切に理解できないのですが、こういう場合にも、ほんとうに必要なことを書かなきゃいけないと、そういう認識で開示実務が行われてきたかというところを考えてみると、やはり少し疑問が残る状況があります。ここは、書いたものだけが正確であればいい、間違っていなければいい、というような話ではないのですが、そういった開示ルールの根本のところで運用面での問題がある。言いかえると、十分書かれていないところ、不十分な記載のところをそのまま残したとすると誤解を生じさせてしまう、十分に理解されない、そうすると投資判断、または議決権の行使が適切に行えないと、やはりインフォームド・デシジョンと言えるようなものになっていない、瑕疵があるような手続ということまでなり得るような場面がある。そうすると、開示をした、もしくはそのような書類を提出した者の、主体としての責任というのが本来はそこにあったはずです。そういった観点も含めて、説明責任や開示ということを、もう一度改めて考えていかないと、これは日本の開示の実務というものが一歩前に進んでいかないのではないか、と。これからKAMが入ってくるという中で、透明性を高めるといっても、本来必要であると思われる重要な事項を十分に書かずにボイラープレートに流れるということも含めて、非常に重要な問題がここには潜んでいる、ということがあるので、その点については確認的に、最初に触れておきたいと思うところであります。

 2点目として、簡単なところになりますけれども、在り方懇では、会計監査に関する情報提供の充実に関して、有価証券報告書を通じた開示の充実というところもあったものですから、経緯、またその後の部分、1ページ目のところで、有報を通じた会計監査に関する情報提供の充実が今まさに進んでいるということも何らかの形で記載していただくのが、在り方懇の提言のところが実務に反映されている、ちょうど進行途上ということが形としても残るので、ご検討いただければと思うところであります。
 次に、2ページ目に行っていただきまして、法律家として、書いていただいた結論として異論はないんですけれども。第2段落のところで、監査人というものは、自ら行った監査に係る説明を行うことは監査人の本来の職責というふうに、中核的な責務として書かれているんですけれども、おそらくここは、もう少し言葉を足した方がよくて、本来は監査業務を行って監査意見を表明するということがあるので、それに付随するもの、本来の監査人としての義務、職責に付随する重要な職責という形にして、本来の職責を踏まえた上で、説明というのは、その根拠を示すとか、そういったことは監査意見と一体でありますけれども、付随するものとして重要なものと位置づけていただくのがよいのではないかと考えるところでございます。
 会社法の規定で意見陳述について、5ページ目括弧書きで398条1項というところが1つございます。今回お配りになっている報告書案の15ページには、注18のところで会社法の345条にも言及がありまして、今回、意見陳述ということを考える上では、その意見が対立しているという意味での398条の1項と、それから株主総会で求められた場合の398条の2項、ここはメーンで議論があったんですけれども、この他に345条の1項や2項、それを受ける5項のところですが、会計監査人が株主総会に出席して、選解任、不再任、辞任について意見を述べるという部分も、やはり重要な会社法上の規定ということになっております。実務上この規定が使われているかどうかは措きまして、ここの5ページ目の条項のところに関して、なお書きでもいいんですけれども、脚注的に、ほかにも会社法上の意見陳述の機会があることは先にまず述べておく、それがあったほうが、その後の、例えばですけれども、守秘義務の話のときに、398条1項、2項だけでなく、345条であっても、やはり守秘義務のところでは法令に基づく意見陳述をするのであれば正当な理由が成り立つという話に持っていく説明が立ちやすいものですから、前の段階で情報としてつけ加えていただければよいと思っております。
 少し長くなりましたが、以上でございます。

【八田座長】
 ありがとうございます。何かここで、いいですか。

【野崎開示業務室長】
 大丈夫です。

【八田座長】
 それでは、次の方どうぞ。
 では湯浅メンバー、お願いします。

【湯浅メンバー】
 ありがとうございます。これまで過去2回にわたる懇談会では、私は一貫して、今回の議論の対象が極めて例外的なケースを取り扱っていると。その上で制度的な見直しをするということなどをして、一般企業への副作用が出てしまうということの懸念をお伝えしてまいりました。今回取りまとめていただきました最終的な報告案のドラフトを見る限りは、幾つか一般的に捉えられる表現が残っていると思っておりまして、まだ誤解を招く可能性があるという危惧を禁じ得ません。
 象徴的なのが、まず最初のタイトルでございまして、「会計監査に関する情報提供の充実」と、一般的と受け取れる記載がありますけれども、今回は特別に丁寧な説明が求められる場合に限った論点であり、議論であるということを示すためにも、例えば「通常とは異なる監査意見及び監査人の交代に関する情報提供の充実」とか、そういったような限定的なタイトルにされてはどうかと考えております。
 そもそも今回の取りまとめの前提としまして、監査人と企業の役割を改めて確認する必要があるとも思っております。監査人は会計監査を行って、その結果を監査意見として述べる役割。企業は、その監査の前提となる財務諸表を中心とした情報開示を行うという役割があります。仮に、この役割を超えて、監査人が監査意見に対する説明の中で追加的に企業の情報を開示するようなことが常態としてあるということが起こりますと、企業側が萎縮して、本来監査で必要となる情報開示をためらうといったリスクが生じるおそれがある。これが副作用の一例と考えております。こういったものを防ぐ手だてを、やはり念頭に置く必要があると思います。
 もちろん会計監査の結果である監査意見に何らかの疑義が生じていて、説明責任を果たすニーズがある場合には、企業、監査人、監査役も含めて、それぞれが自身の役割を踏まえて、さまざまな手段を講じて、そうしたニーズに応える努力はするということは当然だと考えています。
 ただ、このようなケースにおきまして、今回、この懇談会では十分議論されていなかったと考えるのが海外、諸外国での事例がどういうふうに対応されているのかということですね。こういったものの記載が取りまとめ案では出ていませんので、もし可能であれば追記するべきではないかと考えます。これら諸外国の対応も踏まえて、ケース・バイ・ケースで任意に対応することは必要ではありますけれども、仮に制度の創設等によって我が国だけが突出した対応を求められるということがある場合には、なかなか受け入れるのは難しいと正直思います。

 以上が全般的なコメントでありまして、この他に各論として、いくつか申し上げたいと思います。
 まず4ページですけれども、(1)の第1のパラグラフの最後に、「ほぼ毎年一定数存在している」という記載があります。これも特殊な例であるということを記載するには非常に一般的に読めるということで、注記にもありますように、非常に限られた数の開示がある、非常に少ないケースであるということも踏まえて、ゼロにはならないんだ、撲滅はできていないというようなニュアンス、事実として件数が少ないということがわかるような表現にしていただけるとありがたいと思います。
 続きまして7ページの(2)の追加的な説明ということで、追加的に説明する必要性が出てくるという状況は理解できるんですけれども、監査報告書を受領している以上、まずは一義的に会社側に説明責任があるということを明示すべきではないかと考えます。会社のディスクロージャーと監査人の説明を同列に議論されるというふうに誤解を招く懸念があるからであります。
 それから8ページ目に追加的な説明の手段の②のところにつきまして、先ほど高濱メンバーからもありましたけれども、これが新たな制度をつくるということになるとすれば非常に懸念しておりまして、屋上屋を重ねてしまうことにはならないかということを考えております。
 ここでは四半期レビューでありますとか、あと株主総会が遅れるといったケースを想定されているというお話もありましたけれども、そういったケースにこだわらず、ニーズが高まった場合に限って、任意の記者会見等を通じて、経営者、監査役等、あるいは監査人がそろって説明する機会を必要に応じて設定するといったような表現といいますか、記載にとどめられてはどうかと考えます。
 以上であります。

【八田座長】
 どうもありがとうございます。では、この段階でよろしくお願いします。

【野崎開示業務室長】
 ありがとうございます。極めて限定的なケースというご指摘につきましては、前回もご議論いただきました。その点につきましては、例えば2ページ目の2段落目で、まず「監査人が」というところで基本的な考え方をお示しした後、3段落目で「特に」という形で、今回のスコープをより限定した形で記載しているところです。また7ページ目におきまして、今もご指摘いただきましたが、「ただし」のところで、実際にどういった場面に追加的な説明が要るのかというところについては、前回もイメージが持ちにくいというご議論もありましたので、より具体的なイメージが出るような形で記載を追加したところでございます。本日、ご指摘いただきましたので、さらなる表現の工夫については改めて検討させていただきたいと思います。

【八田座長】
 ありがとうございます。
 それでは、貝増メンバー、お願いします。

【貝増メンバー】
 何点か申し上げます。
 まず、タイトルに関して今、湯浅メンバーからお話のあった点、正直、言われてみて「うん、確かにな」と思いました。よく私、現役の頃に部下のアナリストに「レポートはタイトルが命だ、名は体をあらわす。中身が正確に伝わるタイトルをレポートにつけないと読んでもらえないよ」ということをさんざん言ってきた身からすると、ちょっと中身に対してタイトルが広過ぎると思います。
 例えば、何年後かに資料を検索して、「会計監査に関する情報提供の充実について」というタイトルだけ見て中身を読んだら、やけにニッチな話ばかりだなという印象を持たれるんじゃないかなと思いますので、タイトルの再考を検討していただいたらいいと思います。

 今、高濱メンバー等からも意見のありました8ページから9ページの追加的な説明の手段のところについて、意見を申し上げたいと思います。制度を、要は三者がそろって説明する場を作るということが大事だという点は非常にわかりますが、結局、追加的な説明をしなきゃいけないような時というのは、おそらく会社は異常事態に陥っております。経営者、監査役、監査人がそろって説明するという理想的な姿を目指す、これが本質ではあっても、それが実現しない可能性は、やはりかなり高いと考えたほうがいいんじゃないかと思います。そうすると、そのような監査人を外した欠席裁判的な説明が行われたような時にこそ、利用者としては、都合の悪いことを隠しているかもしれない会社側の意見だけではなく、高い倫理観を持つ専門家である監査人の意見を聞くことが絶対に必要だと思っております。そうしませんと、会社側の勝手な意見に基づいて、財務諸表利用者が場合によっては、監査人の倫理観だとか専門性を誤解してしまう危険も含んでいるんじゃないかと思います。
 このような誤解から監査人を守るためにも、必要な時に自発的な意見を表明する根拠として、少なくとも、この9ページ冒頭の「監査人の意見が適切に財務諸表利用者に提供されていないような状況においては、監査人が自ら適切な方法により財務諸表利用者に必要な説明をすべきである」、表現ぶりを多少変えてもいいと思うんですが、少なくともここで書いてある一文は必要ではないかと私は考えております。
 それから、その下の追加的な説明に当たっての留意点ですけれども、「公平に情報が伝達されるよう留意する必要があり、口頭で説明した内容については書面化して公表するなどの対応を検討すべきである」という一文ですが、基本、これはぜひやっていただきたい。この場合の書面化して公表という部分で、口頭説明の動画の公開というものも併せて検討していただきたいと思います。
 通常の例えばアナリスト向けの決算説明会などでは、リアルタイムでその様子を動画配信して、その後もホームページ上で誰にでも見えるようにしています。こういう会社は決して少なくありませんので、時には書面化にしてニュアンスが伝わらなくなってしまうよりは、適切な口頭説明の動画を生で見れるほうが、より正確で公平に伝わる可能性もあるということを念頭に、対応策等を考えていただけたらいいと思います。

 それから11ページの守秘義務の部分ですけれども、いろいろな法的な解釈等々については私、素人ですので申し上げませんが、確か第1回の会合でも、「ぱっと見た時に、公認会計士協会の倫理規則の除外の正当な理由の中に株主総会で意見を述べるという項目が入っていないのは何か不自然だと感じています」というようなことを申し上げたと思うんですが、今までの議論を通じまして、少なくともこれは正当な理由に入るのかなと感じております。
 以上です。

【八田座長】
 どうもありがとうございます。この段階で何かありますか、いいですか。
 では、町田メンバー、お願いします。

【町田メンバー】
 ありがとうございます。幾つか申し上げたい点があるんですが。1つは、逆順ですが、正当な理由のところのお話ですけれども、先ほどから議論になっている会社法の398条の2項、会計監査人の発言を求める決議がされた場合ですね。それから398条の1項、会計監査人の意見と監査役等と意見とが対立した場合。この2つに関しては、私は会社法のプロではないんですけれども、会社法のテキストでさえ、これは会計監査人の守秘義務解除に関して権限であるということは認められるとされています。さらには、株主総会というのは、会社の最高意思決定機関ですから、そこで発言することに関しては、もともと守秘義務は解除されるんだという説明をする方もいらっしゃるぐらいです。
 ですから、この話というのは実は、会社法の解釈上、認められていると。そうであれば、公認会計士協会の倫理規則でいう正当な理由に該当する項目でいえば、法令に従って対応する場合に該当すると読めるはずなんですね。
 ただ1点、問題なのは、先ほど清原先生がおっしゃられた345条の方です。つまり、会計監査人が解任された際の議論です。これは清原先生は、わかった上でおっしゃっているんだと思うんですが、この場合には、会計監査人が自らの自分の立場のために発言するのだからということで、守秘義務の解除に関して、議論の余地があるというわけです。
 ただ、これも、株主総会で発言する権限が認められているのだから、法令に従って対応するという事項に該当するのだと思います。
 先ほど、報告書案の正当な理由のところで、公認会計士協会の立場で高濱先生が、「これも認められるんですね」と質問されたわけですが、そういう議論ではなくて、そもそも公認会計士協会の倫理規則では、会計士協会に加盟している会員のためにわかりやすくしようということで、正当な理由の例示を挙げるという意味で、自主的に倫理規則にそのことを書くというのであれば、それは書けばいいのであって、何もここで会社法の解釈を金融庁に尋ねるというのは、それこそ管轄が違うんじゃないかなと思って聞いておりました。
 先ほども申し上げましたように、私は、そもそも会計監査人が株主総会で発言するのは、会社の最高意思決定機関である株主総会の場ですし、特に398条の1項に関しては株主のための説明である以上、何ら臆することなく発言すべきだというのが、この懇談会の第1回から一貫して申し上げているところです。

 それから2点目ですが、先ほど湯浅さんのほうから、タイトルに「通常とは異なる」とつけるというお話がありました。これは、もしも監査人の交代の議論とか、あるいは株主総会での398条の1項の議論だけであれば、それもあるかなと思うのですが、今回、はそれだけではなく、除外事項の問題も含まれています。先ほど湯浅さんからは、一定数存在しているといっても少ないじゃないかというお話がありましたけれども、財務諸表監査の監査基準でも、その少ないケースであるはずの除外事項の規定を設けているんですね。それから不適正意見なんて、ほとんどというか、絶対出ないだろうというようなケースについても不適正意見の規定を置いていますので、この除外事項の問題が入っているからには、やはり、「通常とは異なる」というふうに制限をつけて全体をくくってしまうのはなかなか難しいところがあると思います。
 それに関連して1点だけ申し上げておくと、実は今の監査基準の、この除外事項のところの規定は、2002年の監査基準の改訂で書き改められた内容なんです。実は、それに先立つ1991年の監査基準では、除外事項のときも、理由と影響額を書くという規定があったんですね。それがなぜか2002年の監査基準のときに消えてしまった。
 実は私は、今、研究上の目的で、過去の監査基準の設定経緯をあれこれ調べておりまして、2002年改訂の当事者の方々にも伺ったんですが、「理由と影響額」の文言がなぜ消えたのか全くわからないとのことでした。除外事項という用語で整理し直したときに何となく消えてしまったんだ、というようなご説明でした。
 したがって、私は、今回の懇談会の経緯を踏まえて、監査基準を次に改訂する際に、「理由と影響額」という用語を追加すべきだなと思っております。
 そうした意味でも、監査基準の改訂に関わる議論でもありますので、制約的なタイトルではなく、少しゼネラルなタイトルがいいんじゃないかなと思っております。
 以上です。

【八田座長】
 ありがとうございます。
 それでは青メンバー、お願いします。

【青メンバー】
 今回のこの報告書案につきましては、監査人が監査に関する説明をしっかり行うことが職責であるということをしっかり入れていただいてございますし、そうしたことが監査の信頼性につながるということを明記していただいていることは非常に重要なことだと存じますので、今回の取りまとめの全体観につきましては大いに賛成させていただくところでございます。
 タイトルのところの話も先ほどございましたけれども、ここのところは、そうした意味で、監査に関する説明、重要性ということをうたっていただいている面については、これは一般的な話ということだと思いますし、とりわけ特に具体的に充実した説明が必要だという場合についても、それは言及いただいているということでございますので、一部の場合だけでなくて、スコープ自体は広いけれども、特に重要なポイントについて詳述されているという、そういったスタイルは妥当ではないかなと考える次第でございます。

 それから、追加的説明の手段、8ページでございますけれども、ここのところは基本的には7ページで必要性がある場合というのを書いていただいていて、こちらの8ページは手段ということでございますので、先ほど野崎様からご説明があったように、わかりやすくするために書いていただいているということでございますから。具体的な場合については適宜、わかりやすい表現に工夫していただくことが適切かなと思いますけれども、その後の具体的な手段についての記載のところで、この経営者、監査役、監査人がそろって参加する場がどういうものか、どうやって作るのかとか、取引所のルールでという話もございましたけれども、ここのところに関しましては、先ほど貝増様からございましたように、かなり投資家からの注目が集まっているシチュエーションで、それで、なおかつ適時適切なタイミングで、特に企業としては急いで開示する必要がある場合というのも十分考えるところかと思いますので、基本的な考え方として、関係のある方々が一堂に会して説明をするということは、正確な理解につながるという意味では望ましいことではありますけれども、そこに限定するような形になってしまうと、むしろ適時適切なタイミングでの開示が全うされないということにかえってつながって、むしろご説明避けているとの印象を与えかねないという面もあるのではないかと考えられますので、このところは現状のようなトーンとでお書きいただくということのほうが、より現実に即したものではないかと考える次第でございます。
 同じく8から9ページにかけてのただし書きのところにつきましても、三者がそろわないときについても一定の指針を示していくというところでは何らかの記載を書いていただくことは重要なのではないかと考える次第でございます。

 あと守秘義務のところでございますけれども、こちらのところは、監査に関する判断に関しての説明を行うに当たっては、監査人の方が迷うことなく説明をできるということを確保することが一番最大の目的ということかと存じますので、そうしたことに妨げになるような規定類に関しては極力見直していただくということが適切ではないかと考える次第でございまして、それで、個別の法人の規則でございますので、詳しく言及することは避けさせていただきますけれども、個人的には少し気になるところとしては、職業上の権利がある場合と明確な権利がある場合以外ですと、依頼人からの了解が得られていないと、なかなか守秘義務が解除されるというふうに読みづらい面があるような気がしますので、そのあたりは十分なご検討を日本公認会計士協会様のほうでも行われていくと、よりワークしやすくなるのではないかと考える次第でございます。
 以上でございます。

【八田座長】
 ありがとうございます。
 では岡田メンバー、お願いします。

【岡田メンバー】
 前回までの発言を反映していただき、監査役等に関する記載が増えて、身が引き締まる思いがしております。
 一点だけ、11ページのその他の中で、現任監査人と監査役等・前任監査人の意見が異なる場合に、監査役等は、前任監査人と現任監査人双方の見解を聴取するなどして会計監査の相当性を判断するという表現があります。あるいは前任監査人の見解に依拠した監査役等と現任監査人との見解の調整がつかない場合には、双方の見解に関する情報が提供される必要がある、とあります。その際に、前任監査人の意見も聴取して、それを現任監査人が説明をするような対応も記載されています。
 もし前任監査人の意見に依拠できないような事態、つまり、前任監査人の監査は相当でないという事態になった場合に、監査役は既に相当であるという監査報告書を出してしまっています。このような場合には、株主総会に提出した事業報告書も全部訂正するという大ごとになるのではないかと思いますが、どのように対応したらよいのか確認させていただきたいと思います。また、加えて雑談的に申し上げますと、こうした事態を避けたいがために、前任監査人に依拠する判断に傾きがちになってしまうおそれもあるのかなという気がいたします。この辺りについて、私も実務的に整理がつかないので教えていただきたいなと思います。
 以上です。

【八田座長】
 この点はいかがですか。

【野崎開示業務室長】
 恐縮でございますが、今のご質問につきましては、会社法における監査役等の監査報告のあり方に関するものであり、この場で直ちにご回答できるものを持ち合わせておりません。

【八田座長】
 ほかにいかがでしょうか。
 じゃあ清原メンバー、お願いします。

【清原メンバー】
 2回目で、すみません。守秘義務のところに関して1つ、お話しさせていただきたいところがあります。10ページの中ごろのあたりに、監査証明業務を行う場合に限られることなく、職業的専門家としての職業倫理上当然求められているとあります。少しここは一般的に括っているために、監査人の守秘義務が、ほかの職業的専門家の守秘義務と同じ、同レベルといいますか、相違点があまりないようなふうにも読める記述になっているところであります。
 ここは補足しておかないと誤解を生じかねないかなと思われるのでコメントしたいのですが、監査証明というものは、監査業務というものは、性質上外部報告を目的とした財務諸表の監査ですので、例えば弁護士ですとか、コンサルですとか、そういう場面における守秘義務を考えるものとは、そもそも大きく性質が違っていて、公共の利益に関するもの、公益的な使命がある中で、外部に向けて証明をしていくという中での守秘義務であり、それを負わないと会社の情報を見れないんだけれども、守秘義務がゆえに、きちんと説明をしなければならないというときには、それがやはり求められる点でやはり他の職業的専門家の場合とは性質が違う面があると。
 すなわち、フィデューシャリー・デューティーを負うかどうか、という議論について少し海外の文献を見ている中で、コンサルティングのような、言ってみると会計士の2項業務のような形のところのものと、アシュアランス、監査証明のところの場面とでは、そこの位置づけというのは違うというように、法的には考えられる。そうすると、守秘義務というものを考える上でも、ほかの職業的専門家の守秘義務とはやはり違って、そこはそもそも外部報告に関して監査報告をしたりする関係から、他の職業的専門家の場合とは相違点が出てくる、そういう点に留意した上で、ここは運用をしていかないとおかしい。もし、同じように見てしまった場合には、監査人に対して開示するなという守秘義務の圧力が強くなってしまう。監査人がその職責を果たそうとしたときにジレンマに陥るということはやはり避けていくことが、今後の監査人に対する信頼を高めることにつながるということも含めて、その点は留意していく必要があるのではないかと考えるところでございます。
 それから、「守秘義務についての考え方」のところで、守秘義務解除という関係では2点論点があると思われまして、まずは、情報のうち、全ての情報ではなく、秘密でかつ要保護性のあるものということをここの中では議論しているのですが、「しかしながら」以下のところでは、正当な理由のところだけが言及されています。監査人の守秘義務違反かどうかということが問題になるとすれば、開示された情報そのものが、ほんとうに守秘義務の対象になるような要保護性の高いような秘密なのかというところも当然考えなければいけないし、監査人が、自らやった行為その他説明している中で、ほんとうの意味での監査業務を行うで知り得た、知ったという情報ではなくて、自らのことを説明するということは当然できるはずですし、そういった意味で、第一に、対象となるもので、守秘義務から外れるというものがまずあり、そのうえで、説明をするという場面が、例えば、法令上の根拠がある意見陳述を含めて説明をしていく、といったものの場合には「正当な理由」があるという意味で守秘義務が解除されるというように、2段で考えられるということも、ここはしっかり押さえておくことが適切ではないかと考える次第でございます。
 先ほど青メンバーからお話があったところの関連では、私の理解では、東京証券取引所などが監査人に問い合わせをするときにも、監査人の側としては、どうも守秘義務解除の書面をとらないと回答できないという運用が今、確立しているというか、そういう状況にあるかと思うんですが、この懇談会での議論を踏まえていくと、そもそも書面をとらなければいけないということが本当に必要なのか、ということがあって。安全をみてとってきたというのは、それはいいんでしょうけれども、やはり本来であったら、正当な理由のところに取引所からの上場管理業務の中での問い合わせに対する回答、これは正当な理由がある場面だと正面から位置づけていくべきではないか。取引所が上場管理業務を適切に行う上で、問い合わせをしたときのコミュニケーションについては、その取引所が外部にぺらぺらしゃべるわけでは当然ない中でありますので、そこについても、しっかり正面から正当な理由ある場合として位置づけをしていくことが、今後の日本の実務にとってはプラスになる、特に利用者側の観点からすれば大きなポイントなのではないかと思われるので、コメントさせていただければと思います。
 以上です。

【八田座長】
 ありがとうございます。
 ほかに。では高濱メンバー、お願いします。

【高濱メンバー】
 すみません、2回目の発言ということで申しわけございません。何点か意見をさせていただきたいと思います。
 まず、タイトルについて限定的にすべきということについては、我々の協会としても賛成であります。やはりサブタイトル等を用いて特殊な場合であるということを明示するほうが、わかりやすい報告書になるのではないかと思います。これは意見です。
 2つ目、三者がそろう説明の場についての基本的な理解は賛成なんだけれども、それ以外のケースを想定して何ら書き込みが必要ではないかというご意見があるわけなんですけれども、我々の理解では、何らかのルールにおいて三者がそろうべき場が設定されてさえいれば、我々ではない他の利害関係者、会社もしくは監査役が発言をした場合に、即座に、このルールに対して違反しているのではないかという意見表明を我々はでき、それを利害関係者、あるいは一般の株主様等が、そういう状態をつくった会社に対して、どういうような理解をするかというところで歯止めがかかり、かつ我々が意見をする場がルールで定められており、それに対して違反した場合にサンクションがあれば、そこは何らかの形で設定され得るという理解をしており、確かに例外というのは多分あるんでしょうけれども、一般的な取りまとめとしては、そういった例外の措置を書き込むことは少しやり過ぎているのではないかというのが我々の意見であるところであります。
 それから、今、取引所から監査人に対する質問があった場合の実務として守秘義務解除のレターがあるということで、我々としても、この説明責任を果たしていく実務を円滑に進めるためには、導入当初においては企業との間で、いろいろな想定される場においても守秘義務解除のレターを取り交わすという実務をまず導入して、その後、制度のほうに持っていくという形のほうがいいのではないかと考えております。
 それから最後に、倫理規則のところの理解について、すみません、再度の質問になるんですけれども、我々の理解は、現状の法及び公認会計士協会が持っている倫理規則を中心とした規則類と、今回の懇談会での取りまとめをもって、今書かれている規則について従って行動するということは、先ほど申し上げたように、裁判における法解釈として一応、守秘義務解除の正当な理由に当たるという理解で行動していいですよねというところを確認させていただきたいと思います。今回議論される中で違う例を追記する、あるいは追記せよといったものであれば、それを含めた形で守秘義務に関する記載をしていただいた報告書で、ある程度大丈夫なのかということを確認させていただきたかったというのが先ほどの質問の趣旨ですので、その辺、もう少し明確にお答えいただけたら助かります。
 以上です。

【八田座長】
 ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。では青メンバー、お願いします。

【青メンバー】
 一応、事実関係のご説明だけですけれども、私ども取引所のほうから上場会社に対しまして、私どもが監査人から上場管理上必要な説明を受けるときに関しましては上場会社には同意をしていただくということが東証のルール上定められてございまして、守秘義務解除の書面がなくとも、監査人のほうは確実な形で守秘義務のところは解除されるという建付けになってございますので、任意で書面をお取りになることは構わないと思いますけれども、そこは必須ということはないのではないかと考えておる次第でございます。
 とりわけ有価証券報告書の提出期限ぎりぎりのときですとか、いろいろ差し迫った状況というのは結構あるわけでございまして、そうしたときに書面をとる必要があるからということで監査人側の対応が遅れるというのは、監査人の前向きな姿勢というところからいって、かえって信頼が失墜するのではないかと考える面があると思いますので、その部分、補足させていただきました。
 以上です。

【八田座長】
 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
 まだ後半が残っておりますので、また戻ってもいいですけれども、この辺でよろしければ、後半の「Ⅲ.監査人の交代に関する説明・情報提供」、13から15ページ、そして「Ⅳ.おわりに」、16ページにつきましてもご意見を伺いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。どなたでも結構ですので、よろしくお願いします。では清原メンバー、お願いします。

【清原メンバー】
 ありがとうございます。まず第1に、注のところに追加されております脚注18の345条。先ほどちょっとお話しさせていただいたところがございますが、13ページの現状、現行制度の概要、ここのところにも、やはり会社法上の制度というものは言及されるべきではないかと考えますので、注から本文、本体のほうに動かすというところがメーンになりますが、このところをご検討いただければと思う次第でございます。

【八田座長】
 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。きょうは残念ながら田中メンバーが所用でご欠席ということですので、このメンバーで進めさせていただきますので、よろしくお願いします。いかがでしょうか。
 では町田メンバー、お願いします。

【町田メンバー】
 最後までのところで、ということなので、一番最後の部分についてお伺いしたいというか、申し上げたいことがあります。
 通常、海外の報告書などの場合には、例えばアメリカなどでは、SECにこれをしなさい、アメリカ公認会計士協会にこれをしなさいという形で、誰に、何をさせるか、ということを明記するような勧告をするものだと思います。
 例えば日本でも、会計監査に関する在り方懇の提言では、あれは提言だったからだという整理かもしれませんけれども、誰が何をするということを明確にして、さまざまなアクションプランを示していました。
 今回は、それとは違って、取りまとめ、報告書だということなのかもしれませんけれども、ここまで議論してきて、今後対応しなければならないことが、ある程度明らかになってきたのではないかと思いますので、もしも可能であれば、誰に何を求めるのか、つまり、金融庁自身が何をしようとしているとか、会計士協会には何をしてほしいとか、そういった点を明確にする必要があるのではないかと思います。

 それから2点目は、これは細かいことなんですが、ページでいうと9ページのところですが、「公平に」という用語です。これはちょっとビッグワーズかなと思いました。つまり、公平というと、何か、結果としての公平のようなイメージがあるように思います。おそらくここでは同じように、フェア・ディスクロージャーのような観点で、誰でもアクセスできるような形で、という意味だと思うんです。財務省監査の世界では、それを「適正」という言葉を使うわけですが、ここではそれは難しいのかもしれませんので、フェア・ディスクロージャー規制のように、フェアという言葉でもいいのかもしれません。少なくとも、この「公平に」という言葉には違和感があります。
 そして、先ほどから議論となっている、正当な理由のことについても一言申し上げたいと思います。先ほど、公認会計士協会の高濱先生が再度お尋ねになったんですが、金融庁がそれにお答えにならないので、私の意見として申し上げます。正当な理由に関する現在の実務がかなり萎縮的になっているとするならば、公認会計士協会が自ら正当な理由に関する倫理規則の書きぶりを改めて、これは例示列挙で、例えばここに挙がっているもの以外にもあるんだということを書いたり、あるいは株主総会での398条の1項に関して正当な理由に該当するということについて、現状、会員の理解が得られていないと考えるのであれば、それに関するQ&Aを公表するなり、あるいは正当な理由のところに、あえて明記するということが求められているのだと思います。したがって、今のままでいいんですか、という質問ならノーですよ、ということですし、これから公認会計士協会が倫理規則等に加筆していかれる予定だ、というのであれば、つまり、主語が、会計士協会であるのであれば、イエスです。
 万が一、公認会計士協会はやらないというのであれば、これは、前回のときも申し上げたことですが、主語を変えて、金融庁が、正当な理由のところを会計士協会の倫理規則に任せるのではなく、公認会計士法施行規則なり、公認会計士法施行令に引き上げて、今後は、正当な理由に該当する事項を金融庁で全部決めていかざるを得ないと思います。
 私は、公的規制の範囲を広げるのではなく、会計プロフェッションである以上、自主規制で対応できるもの、つまり、公認会計士協会が対応できるものは対応すべきだと考えていますので、公認会計士協会が主語であるべきだという主張です。

 そして最後ですが、その同じ意味で、13ページからの交代のところについて一言申し上げたいと思います。
 皆さん覚えておいでだと思いますけれども、この懇談会の第1回のときに主な論点として出された中には、この交代の話はちょっと触れられていた程度で、主要論点じゃなかったはずなんですね。ただ、議論をしていく中で、例えば公認会計士・監査審査会の交代事情の調査結果などが示されたときに、公認会計士協会の高濱先生が、同じ情報を掴んで調査報告も纏めた、もうこれ以上は対応するつもりがないとおっしゃったわけです。さらに、交代に関する情報を提供することは、今後取り組むKAMに比べて情報価値がないとおっしゃり、私も含めて懇談会の他のメンバーの多くの方は、情報価値があると申し上げたわけで、そして、最後に座長の八田先生が、再度、公認会計士協会としての見解を確認したときに、今はKAMに特化すること、そういう立場です、とおっしゃった。そうした公認会計士協会の考え方を受けて、大きな論点に引き上げられてしまったのではないかなと思います。
 改めて申し上げるまでもありませんが、この交代の問題は、そもそも会計監査の在り方に関する懇談会の提言では、公認会計士協会に対応が委ねられた論点だったわけです。公認会計士協会が何らかのアクションをとってくれることを、おそらく在り方懇では期待したんだろうと思うんですが、今般の懇談会で、公認会計士協会がやらないという意向なのであれば、仕方がありませんから、公的規制において、監査証明府令でやるしかない。もしも公認会計士協会がやるのだとするならば、会計士協会にお任せすればいいんだろうと思っています。要は、これも先ほどの点と同じく、自主規制と公的規制の議論です。
 ですから私は、この第3の論点については、まず、公認会計士協会の副会長の高濱先生なのか、傍聴されている常務理事の先生なのかわかりませんが、公認会計士協会として、この点について何らかのアクションを自主規制の範囲でとることを考えておられないのか、あるいはできないのか、その点を明らかにしていただくべきだと思います。もし、公認会計士協会が自主規制ではできない、というのであれば、もう自主規制は諦めて、公的規制として、金融庁が監査証明府令を改正されることが望ましいんじゃないかなと思います。
 以上です。

【八田座長】
 ありがとうございます。
 では高濱メンバー、お願いします。

【高濱メンバー】
 直接的なご意見をいただきましたので、回答させていただきたいと思います。
 11ページ、まず正当な理由に関しましては、ここに記載されているとおりだと理解をしていて、日本公認会計士協会の倫理規則の正当な理由についての考え方を示すなど、関係者において適切な方策を検討すべきであるということであって、当然、我々が含まれて議論をしていくというふうに考えているところであります。
 ここに記載されているとおり、実際今回の懇談会の契機となった限定付意見が生じ、マスコミにおいて、いろいろと取り上げられたようなケースが、また直ちに起これば、その実例についてどうすべきかということを、我々の倫理規則でも当然検討し進めていくと理解しています。ただ、そういう事例がないのであれば、ここにありますように、監査上の主要な検討事項というものを今後制度として新しく入れ、これについては監査人に対する説明についての依頼が来る可能性がありますので、そういった説明における我々がお話しできる範囲というのを見定めながら、規則への追加ということを考えていくんだろうと考えています。
 第2回目の懇談会でお話しさしあげましたけれども、現行規則で読める、例えば会社法での説明責任というのは、先ほどご説明があったように、法令等に基づく場合ということで整理されていると理解をしていますので、それを改めて屋上屋を重ねるように細かく記載するということは考えておらず、そうではない新しい分野であれば検討していくことになるんだろうと考えています。
 それから、監査人の交代については、ここには記載されていないのですが、前回2回目の懇談会で意見書として提出をさせていただいたとおり、我々公認会計士協会におきましては、公認会計士・監査審査会と同様の取組を行っており、任期満了として交代したところも含め交代の実際の理由について会員には理由書を提出させ、その内容を品質管理のレポートとしてまとめて公表しています。その提出された理由書に基づいて、我々自主規制の中で品質管理レビューという制度で、その開示理由についての正しさを確認しているということでありまして、在り方懇談会を受けたアクションとして自主的にその行動を起こしているということと理解をしております。これは行っている取組です。
 しかしながら、この懇談会において、もう一度交代理由についての議論がハイライトされております。時間的に、もう少し早く対応せよということか、あるいは利害関係者全員が、もう少し早い、何らかの効果を求めるというのであれば、我々がやっている対応では多分、時間的に間に合わないので、違う制度、例えば開示府令の改正をしていただくということがあるのではないかと意見をさせていただいたところです。
 以上です。

【八田座長】
 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
 では貝増メンバー、お願いします。

【貝増メンバー】
 すみません。ちょっと小さなところですけれども、確認。ある意味で、これ高濱メンバーへの確認でもあるんですが、この15ページの3行目からの「仮に企業による云々という、監査人自らが、交代の理由・経緯に関し必要な説明・情報提供を行うべきである」というこの文章も削除せよというご提案が高濱委員から出るのか、出ないのかというのを確認したいと思います。
 つまり、先ほどの9ページのところで、削減をしてはいかがかというご提案があった文章と、私は残して欲しいと申し上げたんですが、この15ページも私にはほぼ同じ趣旨だと思うんですが。逆に言うと、これは削減する必要がなくて、前を削減するというのがご意見であったら、その違いはどこなのかなというのが素朴な疑問ですけれども、いかがでしょうか。

【八田座長】
 高濱メンバー、お願いします。

【高濱メンバー】
 まず監査人交代につきましては、ここをあえて取る必要はないという理解をしております。
 なぜ違うのかということは一応、先ほどご説明させていただいた趣旨のとおりなんですが、今回我々は、三者そろった、説明の場という新しい制度を提言させていただいています。なので、まだ、その制度自体は実現するかどうかというのはわかっていない状況の中、すなわち、その運用自体がまだ始まっていない中、早くも例外措置に対して対応するというのは少し手当てが過ぎるのではないかということでございまして、現行で走っている制度に対する例外措置と今後行われるかもしれない制度に対する例外措置というところで大きな差があると理解をしております。

【八田座長】
 よろしいですか。

【貝増メンバー】
 すみません。財務諸表利用者に正確な情報を伝えていないという点、それから、このままでは監査人が要らぬ誤解を受けるんじゃないかという点においては、私には、この2つの文章に違いがあるようには思えない。これは感想です。

【八田座長】
 読み方がありますので、これ以上詮索するのはやめさせていただきます。
 ほかにいかがでしょうか。では湯浅メンバー。

【湯浅メンバー】
 この懇談会での議論は、かなり先回りしていろいろと想像も交えながら、様々なケースを想定して議論が進んでいるというのが正直な印象でありまして、少し冷静に考えてみる必要があるのかなと思います。
 後半の部分では、監査人の交代について、前回の議論でもありましたけれども、そもそも通常の理由で交代をするケース、つまり経営に関する大きな問題がない状況での交代のほうが多いと思っていまして、交代の理由を説明することが投資家にとって有用となる場合というのが、そもそもまれであると。これが過去に非常に大きな問題になったことが起こったので、今後のことも踏まえて、どうあるべきか。それをさらに例外的なことも先走って今考えようとしているということだと思います。
 ただ、そういった例外的なケースを想定して制度化するというのは、私の考えとしては非常に慎重であるべきでありまして、交代の理由を聞きたいというニーズがあった場合に、きちんと説明すればよいと。その対応も、どちらかというとケース・バイ・ケースになってしまうんじゃないかと思っています。今回の懇談会の報告を踏まえて、各関係者が行動すればよいのではないかと思います。
 最後のページの「おわり」に書いてありますように、通常とは異なる監査意見が表明された場合を中心に議論をしたんですけれども、今回の議論は、特別に丁寧な説明が必要なケース、そういうケースにおいて、どういう情報提供の仕方があるのかということだったと理解しています。そうした場合には丁寧にわかりやすく説明しなさいというのが、今回の懇談会の基本的なメッセージだと思うんですよね。具体的な最終的な文言の修正は事務局と座長に最終的には一任することにはなると思うんですけれども、これを受けとめた読者が、この趣旨を踏まえて、有事の際にはケース・バイ・ケースで適切な対応をすると。そういうことにつながることが必要ではないかと思います。きちんと説明責任を果たすということですね。それがもともとの在り方懇の中で言われている好循環にもつながることになると考えます。
 以上です。

【八田座長】
 ありがとうございます。
 交代の話ですけれども、数年前まではイレギュラーといいますか、それほど事例がなかったのですが、ここ数年は年間、上場会社で100を超えていると承知していますので、イレギュラーではないということです。その交代の内容が識別されていないというところに、マーケットからの疑心暗鬼といいますか、疑念があるのかなという気がしますが。つまり、交代は、別に例外的な特殊な事情ではないと私は理解しています。

【湯浅メンバー】
 すみません。言葉足らずで申しわけありません。
 交代は多くなってきているんですけれども、その理由が、監査報酬であるとか、監査人に不満であるということを幾ら細かく書いても、あまり有用な情報にはならないんじゃないかと思っています。むしろ意見が対立しているといったことがある場合、そういったときにニーズは高まるということだと思いますので、そういったところにフォーカスして、きちんと説明すると。そういうことが必要なのではないかと思います。

【八田座長】
 ありがとうございます。
 では町田メンバー。

【町田メンバー】
 今のお話なんですが、実は私は、監査人・監査報酬問題研究会という枠組みの共同研究として、日本公認会計士協会からの委託研究で毎年、監査報酬に関する調査をやっておりまして、間もなく、1月15日発行の『会計・監査ジャーナル』の2月号に調査結果の概要が公表されるんですが、そこで明らかにされているところでいうと、2017年4月期決算から2018年3月期決算までの監査法人の交代は120件もありました。
 湯浅さんは、監査報酬というのは大した問題ではないとおっしゃるかもしれませんが、我々、そのために調査やっております。例えば、監査報酬について会社側が、いわゆるダンピング的な低廉な監査報酬での契約締結を要求をして、監査人が交渉に応じられなくて交代するケースもあるかもしれません。あるいは、報酬とは別に、監査人の側から会社側の監査対応に関して、もうお断りだというケースもあったかもしれませんし、会社側から、この監査法人では、ちょっと我々は納得できないのでというふうに言われたケースもあるかもしれません。そうした交代事由が識別できないと、株主や投資家も、会社に対する判断ができないんだと思うんですね。この会社は、あるいは、この会社の監査役は、かもしれませんが、監査報酬を適切に支払う、つまり、そのことは適切な監査時間を確保して必要な監査手続が実施できる体制をつくろうとしているかどうか、という判断ができるのだと思います。そういう点で監査報酬の点も大事な情報です。
 今後、監査人の交代は、もっともっと増えていくと思います。監査役等に会計監査人の選任議案の決定権が与えられ、そして、監査人の側でも、2015年の粉飾事案からの教訓として、適切な監査時間を確保しなければいけない、という認識がある以上、今後、会社と監査人の両方から、交代の動向が高まっていくと思います。そういう意味で、今後、監査人の交代事由というのは、一層大事なテーマとなるものと認識しております。
 以上です。

【八田座長】
 どうもありがとうございます。少なくとも有価証券報告書において監査報酬が開示されているという、この事実1点を見ても、重要情報であるということには間違いないと思います。受け取られ方はいろいろありますので、それぞれの立場でお考えいただきます。
 ほかにいかがでしょうか。清原メンバー、お願いします。

【清原メンバー】
 今回のタイトルのところも含めて、かなり例外的な場面だけを議論しているかという意見に対しては、私はむしろ反対の立場をとっております。やはり例外的な事象だけということで限局して話をするのではなくて、例外的な事象も、数すら少ないけれども、そこに対しても制度がしっかりしているというのがないと、制度全体というのは成り立たないと。何かが起きてから何かやればいいという、その発想が、そもそも今まで後追いでしかレギュレーションができてこなかったことにつながるものです。レギュレーションを厳しくするというのではなくて、どういうふうに、その場面で対応するかということを考えるのは、通常の考え方でいったら必要なことだし、リスク管理などという観点からしたときにも、起きる可能性が低いけれども、起きた場合にどうするかというところまで考えることが本来必要だし、法律家としては、制度のつくり込みを考えるときには、導入のときに原則だけで例外を考えないというのは通常あり得ないし、例外的な場面が起きたときにはどうなるのかというのがあって初めて、皆さんが具体的な行動につながる。その行動準則、行動のルールというものが明確化することの価値を、やはり共有されることがあれば望ましいなと考える次第でございます。

 監査人の異動のところについては、やはり問題事例がどれぐらい入っているかということは外からはなかなかわからないので、その混在しているものについて、実質的なところを知りたい。数が少ないから重要性が低いだとか、数が少ないから今のままでいいということではなくて、やはりそこは透明性を高めるというものの価値をしっかり正面から捉えて、そのことこそが、交代があったときの会社さんに対する信頼も、もちろん当然高まる。その意味で、会社さん自身にとって、信頼を高めるという面が大きくて、万一問題があるところは、やはり最後に、言葉悪いですが、あぶり出されていく。そういったことが開示の機能としての重要なものだと考えておりますので、ちょっと意見が違うんですけれども、私の意見を述べさせていただきました。
 以上です。

【八田座長】
 ありがとうございます。
 それでは岡田メンバー、お願いします。

【岡田メンバー】
 監査人の交代については、今回の議論のまとめとしては記載の内容で適当なものと思います。ただ、やはり監査人の交代というのは非常に大きな問題で、交代に関して、監査役等として様々な評価をするに当たってのインフラが整っていない状況であると感じています。例えば公認会計士・監査審査会が様々な評価をされていますが、その内容は全ては公開されておらず、評価資料としては不十分です。日本公認会計士協会では、公開に向けた取組みをされていますが、それぞれの監査法人でどの程度の品質管理が実際にできているのかは、外の一般の企業からはほとんど見えない状況です。その意味では、交代の理由は先ほどお話のあった監査費用のレベルの話に収れんしてしまっています。本当は監査人の交代というのは、どの企業も真剣に考えるべきことですが、それがなかなか進まない状況であると思います。
 やはり、監査人のローテーションの議論にもう一歩踏み込むべきではないかと思います。ただ、私どもの会社で申しますと、国際的な取引をやっているものを監査できる、国際的にグループで活動している監査法人は4大法人に限られており、交代先は実質3つで、それもチームによってかなり品質に差があります。このような状況の中では、そう簡単に交代ができないというのが現実問題です。我々も、やはり新しい目で監査をやってもらいたいという意味では、交代も視野に入れなくてはなりませんが、具体的に考えていくと、ほとんどできない状況です。では、そもそも監査人のレベルをどうやって高めるのか、そういう監査を請け負える監査人、監査法人がどれだけあるのか。これを育てるというところからいくと、大変大きな問題になると思います。
 申し上げたいことは、今回の報告書の議論は充分尽くされていると思いますが、ローテーションも含めて、別セッションで監査人の交代について検討する必要があると感じた次第です。

【八田座長】
 ありがとうございます。
 それでは青メンバー、お願いします。

【青メンバー】
 交代理由の関係でございますけれども、14ページの(2)の2行目からご記載いただいておりますように、この監査上の懸念事項の有無ですとか、監査品質に関してどうかというところが一番の要かと思っておりますので、これに関係するような場合には、とりわけ重要だということがございます。交代理由の記載にあたっては、そこのところがあるのかどうかというところの区別がつくということを、よく意識する必要があると考える次第でございます。
 そういう意味では監査報酬のところも、単に単価が高い低いとかということではなくて、やはり先ほどご指摘ございましたように、監査時間ですとか、監査のリスクがどれぐらいあるからこういうことなんだという、そういったところで、財務諸表の信頼性に関しての影響を見るための端緒となり得るというところを意識する必要があるということだと思ってございますので、単なる金額の多寡という感じに受けとめられないようにということを少し気をつけたほうがいいのではないかと考える次第でございます。
 それから、監査人のほうからご意見を出していただけるということになってございますけれども、実際問題としては、なかなか監査人のほうから自主的に出していただくことが、現状ではあまりないというところがございますので、そのあたりについては、私ども会社に対して、より適切な開示をするようにという形で求めていくつもりでございますけれども、日本公認会計士協会様のほうにおかれましても、開示の実効性が確保できるような取り組みをより一層進めていただければと存じます。
 また上場会社様におきましても、監査役が選任に関しての説明責任を一般的に負っているのではないかと考え得るところですけれども、先ほど岡田メンバーからもありましたように、監査役が判断を十分にしづらいという状況であれば、そこのところを改善するということは重要なことではないかと思いますし、今後は監査役のほうからも、この理由に関して、より明確に出していただけるところにつながると一番いいのかなと思う次第でございます。
 こちらも報告書に記載ということではないですけれども、そのように考える次第でございます。
 以上です。

【八田座長】
 どうもありがとうございます。
 予定しておりました時間が近づいてまいりました。細かい字句の問題もあるかもしれませんが、一応いろいろご意見を承ることができました。私としましては、本日のご議論で、この報告書案についてのメンバーの皆様のご意見をおおむね伺うことができたのではないかと考えます。本日いただきましたご意見を踏まえ、今後、字句や表現ぶりについては所要の修正を行いますが、基本的には、改めて会合をセットするというのではなく、表現ぶりは座長一任の上、この場で懇談会として本報告書、会計監査の情報提供の充実について、これのご承認をいただくことでよろしいでしょうか。

 (「異議なし」の声あり)


【八田座長】
 ありがとうございます。
 それでは、今後必要な修正を行った上、本報告書を公表させていただきたいと思います。
 また、公表の時期や方法につきましても私にご一任いただくということでよろしいでしょうか。ありがとうございます。
 では、今後は最終公表に向け、メールなどによりメンバーの皆さんと連絡をとらせていただければと思いますので、よろしくご協力いただきますようお願いいたします。
 金融庁のほうはよろしいですか。

【野崎開示業務室長】
 大丈夫です。

【八田座長】
 それでは、本日の懇談会をこれにて終了させていただきたいと思います。メンバーの皆様には精力的にご審議を賜り、まことにありがとうございました。これにて閉会いたします。

以上

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