第2回 開示制度ワーキング・グループ 議事要旨
1.日時:
平成22年12月8日(水曜日)10時00分~12時00分
2.場所:
中央合同庁舎第7号館12階 金融庁共用第二特別会議室
3.議題:
英文開示の範囲拡大、ライツ・オファリングの制度整備について
4.議事内容:
「英文開示の範囲拡大についての基本認識と論点」及び「ライツ・オファリングの制度整備」等について事務局より説明。
その後、上記議題について各委員から意見聴取を行った。
主な意見は以下のとおり。
【英文開示の範囲拡大について】
○ 基本的な認識として、東証の上場外国会社数の減少の原因を英文開示制度の問題のみに求めることには疑問がある。少なくとも120数社の外国企業が日本の開示制度の下で上場したのは事実であり、その後、当該企業が上場をやめた原因は開示制度の問題のみではないものと認識。
○ 上場を伴わない公募(POWL)や公募円建て外債等が増加しているなど、日本語により有価証券届出書の提出を義務づけられたとしても、日本で資金調達をしようというニーズが厳然としてあることからすれば、取引所自体の問題の方が開示制度の問題より大きいとの感がある。
○ 英文による開示であっても投資家保護にもとる点がないという結論が出ている以上、英語により開示したものをすべて日本語に要約せよと言うつもりはない。また、原則、開示書類は投資家が仔細に読まなければ投資家保護にならないというものではなく、例えば、専門家が分析し、それが市場価格に反映されるといったように、間接的に投資家保護に資するものでもあり、英文による開示だから投資家保護にならないというのは極端なのではないか。
○ 従前より継続開示における英文開示は認め、発行開示における英文開示は認めないということについては疑問を感じており、したがって、英文による開示が可となったにもかかわらず発行開示のみ不可というのは通らないのではないか。そういう意味では、今回の「英文開示の範囲拡大」は妥当。
○ 東京AIMをはじめとした特定投資家向けの市場が認められている中で、英文による開示を全面的に認めるということでよいかについては疑問がある。投資家属性により区別するという考え方がある以上、何らかの歯止めをかける必要があるのではないか。そういう意味では、「外国において発行者情報が既に開示されているものに限る」という事務局の案は妥当。
○ 認められる外国の市場の範囲について、告示で対応するとのことだが、技術的にはそれでよいと思うが、例えば「米国は問題ない」といったような直感的な判断基準に甘んじることなく、是非、各国の開示制度を詳細に調査したうえで日本と同等の投資家保護が行われているか否かという同等性評価を徹底的に行っていただきたい。また、既に米国が日本やEUに情報提供を求めている例があるように、当局に情報提供を求めることも含めてしっかりとやっていただきたい。
○ こうすれば東証における外国企業の上場数が増加する、といったような楽観的な認識はない。また、重複上場が中心となるという制度改正であり、従前の東証における上場企業数の減少の一因が重複上場を前提としたことによる結果であるとの意見があることなども勘案すれば、東証には、是非、重複上場で日本市場に上場することのメリットを発行者が感じられるような何らかの手当てについて検討いただきたい。
○ 外国の株式や社債を意識した改正のように思われるが、当該制度改正後における外国投資信託の扱いについての所感如何。
○ 英文開示の対象はすべての外国証券であり、投資信託についても例外ではない。ただし、発行者に関する情報ということになると、投信に置き換えれば、例えば信託財産の状況が中心となってくるものと思料されるが、そういったものが日本おいても開示されるのであれば対象となるものの、それ以外であれば、対象にならないとの認識。
○ 外国投信においては、対象有価証券情報は開示されているにもかかわらず、発行者情報は不開示となるとの整理になるのか。そうであるならば、外国投信は上場という手続きはとっていないものの、対象有価証券自体の情報が十分開示されているとの認識があり、そういう意味では最も認めてもいい対象ではないかとの感がある。
○ 外国籍の投信については、投資家保護のための発行者の情報として、何が晒されていることが投資家保護に資するかということについて議論すべきものと思料。
○ おそらく、発行者に関する情報が全く晒されていないということにはならないのではないか。いずれにせよ引き続き検討すべき事項である。
○ 日本の証券市場から外国企業が撤退していることや、日本企業であっても最初に外国で上場しようとするケースがあるが、証券市場の競争力をこれ以上低下させないためにも何ができるかという検討が重要である。そういう意味では、これをやれば必ずよくなるというものではないかもしれないが、対応できることは何でもやるべきであり、とにかく今回の案で早急な対応をお願いしたい。
○ 問題としては、外国市場の見極めがあると思料されるが、その点をはっきりできれば、後の問題は前向きに進めていけるのではないか。具体的、実態的な調査を踏まえたうえで対応していただきたい。
○ 特定投資家向けについては、外国市場の見極めがはっきりしているならば、何も英語だけに限ることなく、英語以外の母国語についても検討すべきではないか。
○ 海外マーケットを評価していく、それによって日本市場への上場を容認していく範囲を決めていくことになるかと思うが、その際には、金融市場においても同等性評価等を踏まえたうえで、日本企業においても海外のマーケットにおいて英文等による重複上場ができるような相互承認のような体制を前提に開かれたマーケットの整備を進めていただきたい。
○ 制度改正、整備については、可能な限り早くやることが重要である。市場及び企業のレピュテーションは制度で決まるものではなく、その後の持続的な運用により決まるものであることからすれば、まずやってみることが重要であり、細かいところは後から整備すればよいのではないか。そうして継続して運用していくことにより、日本の市場が海外からの信用を得られるのではないか。
○ 英文開示の問題だけが日本国内における上場企業数の減少等の原因ではないにしろ、その一因であるのは確かであり、そういった意味で今回のような英文開示の範囲拡大には基本的には賛成する。
○ 対象として、どういった投資家向けにするかということがひとつのポイントである。仮にプロ向けであればそれ程範囲を限定することもないかもしれないが、一般投資家の裾野を広げ、投資機会を増やすということであれば、投資家保護を図ることと英文開示の範囲を拡大することとのバランスをどうとるのかということが重要である。したがって、対象となる投資家の範囲について、一般の投資家を含めるのであれば、日本語についても一定の範囲で要求することが適切であり、日本語での要約等、ある程度の投資家保護が必要になるのではないか。具体的には、先ず、事務局が提示した「英文による発行者に関する情報が外国の市場において晒されている」場合ということでよいのではないか。
○ 外国の市場の範囲をどういった基準で担保するかということが今後の課題であるものと思料されるが、この点についても、事務局が提示した「適切に規制された市場」というようなことが先ず前提になるのではないか。
○ 発行開示書類の発行者情報の部分については、英文プラス日本語の要約ということで、有価証券報告書と同様の扱いが必要であるとのことだが、この日本語の要約については、継続開示であれ、発行開示であれ基本的には同じように考えていく必要があるものと思料。ただし、今現在利用されている日本語の要約について、このままでよいのかという議論は必要なのではないか。したがって、もう少し詳細に何が必要で何が不要なのかについて検討したうえで、可能な限り簡素化する方向で考えていく必要があるものと思料。
○ 証券情報については、日本語による作成を是非お願いしたい。とりわけプライマリーにおける販売局面においては、投資家にとって重要な情報となるものと認識。
○ 市場の活性化を進めながら投資者保護を図るという、その両立を図っていくためにどのような工夫をしていくかということが重要。そういう意味では、今回の案は、そのどちらの両立も目指した案となっているとの感がある。
○ 投資家保護の観点から最低限の日本語の要約は必要であるが、それが過度になると発行者側の負担の増加に繋がり、依然として英文開示、市場の活性化が進まないということになるのではないか。そういう観点からみれば、今回の案はそういったことが概ね整理されているのではないか。
○ 日本語の要約については、現状、ガイドラインがあるものの、英文開示を進めていくためにも、当該ガイドラインをより分かりやすい、一歩進めた要約にしていくということに繋がるような工夫をしていただきたい。
○ 円建て外債について、外国企業自体が開示されていないケース、例えば、海外の金融子会社が発行するようなケース等を含めた取扱いについて所感如何。
○ ご指摘は、発行者をグループとして捉え、例えば、金融子会社が晒されている場合にも含められるのではないか、と理解しているが、当該論点は非常に深く、直ちに結論が出ないような大きな課題と認識。例えば、日本の会社の子会社がケイマンにあるとして、当該子会社が日本で上場する場合はどうかという点を検討していく必要がある。
○ 外国で発行者に関する情報が開示されているというのは、発行者の国籍を問題にするのでなく、発行者に関する情報が開示されている国の市場若しくは当該国において適用されている法令等を問題にするという理解でよいか。そうであるならば、例えば、日本の会社がNY証券取引所に単独上場するとともに、日本で英文開示を行って東証外国部に上場することは問題ないという理解でよいか。
○ ご指摘は、例えば、純粋な日本企業が日本国内で全く上場せずにNYと東京に同時に上場することは問題ないのか、ということだと思料されるが、結論から言えば、当該制度は外国会社を対象としており、そのような場合は想定していない。
○ 日本の資本市場を活性化するということについて、大きく捉えれば2つの要因があるものと思料。
- ひとつに日本全体の活力、プレスティージの低下というものがあり、このこと自体については、ワーキング・グループの範囲外のことであるが、別途、債券については、今般の新成長戦略の中でも、アジアの債券市場をつくり、その中心に日本がなっていこうという政策を提言されているところでもあり、こうした中において、活力を出していく、日本の歴史、ノウハウ、経験というものをアジアで活かしていくことが非常に重要。
- もうひとつにコストの問題があり、どのマーケットを選ぶかという際には当然に大きな問題となるが、とりわけ、デットについてはコストの問題が直接結びついてくる感があり、いわゆるサムライ債に関し、どの程度のデューデリジェンスが必要かということについて、株式、エクイティに対するデューデリジェンスとデット、サムライ債に対するデューデリジェンスでは相当程度差があるのではないか。デューデリジェンスに手間を掛けなければ当然にコストは安くなるので、そういう意味では、サムライ債が日本語の開示であっても全体コストが安ければ、プラスマイナスのプラスの方が大きいということで、相当程度のサムライ債が出ているとの感がある。また、株式、エクイティについてはコストの部分とその後の上場メリットがあるが、後者については、東証をはじめとする取引所に日本市場に上場した場合にどのようなメリットがあるのかということについて、アピールできるような実態をつくっていただくことが重要。なお、今回の改正には、単独上場は不可というインプリケーションはないものと思料されるので、重複上場だけではなく単独上場についても進めていただきたい。
○ コストについて、日本語の要約を引き続き求めることを前提として投資者保護の観点からも、どの程度の要約が意味のあるものとして必要なのか、どの部分が要約として必要なのかということについて整理していただきたい。
○ 要約の適正レベルについてガイダンスが欲しいが、ガイドラインの形に落とし込むのは難しいのではないか。サンプル事例を示して相場感を示すなど、実務が動くような基準を作るというというのもひとつの手法ではないか。
○ 「既に晒されていること」の時点について、例えばグローバル・オファリングで日本語及び英語を母国語とする国以外の国の発行体が、現状、母国語(例えば仏語)のみで上場を行っている状況で、新たに英文を母国語とする市場(英米等)と日本の市場に同時に上場しようとする場合、英文による上場がある程度しっかりした市場であれば、「既に晒されている」の範囲に入るものと認めてもよいのではないか。
○ 臨時報告書について英文開示用の様式に基づいて提出することを義務づけることや、日本の様式にしたがって英文で作成した開示書類について外国会社報告書として認め、対照表を不要とすることは、実務上においても非常に有意義であり、是非導入していただきたい。
○ 英文開示を本則で認めるということなので、特定投資家取得勧誘との棲み分けが非常に重要になる。この点、勧誘相手の投資家を限定しない方向性で行くとすると、外国市場の範囲という論点が重要になる。
○ 外国市場の範囲を考えると、現行法で類似している制度は、有価証券届出書の組込方式・参照方式及び発行登録書である。これらが導入されている理由は、投資家が投資判断をする際に、信頼できる価格が存在しているためであり、すなわち、市場価格があることである。今回の外国市場に晒されているということの意味を考えると、同様に信頼できる価格が別に存在するというものと捉えるべきである。これにより比較対照が存在すれば詐欺的な行為は防ぎやすい、また起こりにくいということも言える。英文開示において、勧誘の相手方の属性を考えない場合には、信頼できる価格というものが既に存在しているということが一つのポイントになる。
○ 実際に勧誘にあたる証券会社がどのような対応をするか、それについて英文開示に対してなじみのない投資家に勧誘する際には、それなりの対応というのがなされることが望ましい。
○ 外国市場において発行者に関する情報が晒されているケースというのは、開示の内容が適切であること、英訳がこなれているということが担保されているということであろう 。したがって、発行者情報の英文開示をこのようなケースに限定することは妥当だと思われる。
○ 日本でファイナンスを行う企業とは、発行者が日本で事業を行うためにファイナンスを行うケースか、母国でマーケットがないため日本でファイナンスをしたいというケースのどちらかが中心ではないかと思われる。後者のケースでは、日本でファイナンスをする以上、日本のルールに従って、日本語で開示をしてもらうのが基本である。ただ、母国語で整備された市場のない企業が、他の適切な市場と同時に上場するというグローバル・オファリングのケースについては、開示内容は日本のルールに従ってもらうものの、英文開示を認めること自体は検討に値する。
○ 日本語による要約をどうするかは重要な問題。ガイドライン作成の過程で利用者や証券会社の意見を採り入れて検討して欲しい。
○ 臨時報告書については、適時性を考えると、翻訳の手間・時間を省くため日本語による作成を不要とすることは妥当である。ただし、M&Aや親会社の異動等利用者が再三確認する可能性が高いものについては、タイムラグはあっても、一旦、英文で開示した後、日本語訳も作成してもらうということは必要かと思われる。
○ 開示書類の様式については、開示の様式に関する対照表の日本語による作成は不要としてもよいが、開示する項目のタイトルだけは日本語とするといった取扱いがよいと思われる。
○ 内容について、補足書類の負担軽減について検討をお願いする。利用されないと意味がない。発行体側からみて、コストと納得感が必要。
○ しかるべき市場に上場してそこで監督を受けている発行体に、追加で書類を出させるとすると納得感が必要。補足書類については、不要とするあるいはできるだけ負担がないような簡素なものにするよう検討していただきたい。
○ 英文開示については、今後の状況を踏まえた継続検討をお願いしたい。
○ 投信等、外国者ETFも対象範囲に入れていただきたい。
○ 本国の市場で企業情報が開示され価格形成がなされているから英文開示を認めるとした場合、販売に際しての適合性が重要な問題となる。制度改正をするには、監督、検査において適合性原則遵守体勢についてチェックを強める必要がある。日本語による要約をどの程度書くかについては、最終的な投資家が情報をどのように理解しているかにかかわる問題。最終的な利用者のところにきちんと情報が届くように要約等の内容を考えて最終的な投資家に適合するものが適用されるべき。機関投資家やアナリストは、英語で情報取得が可能であり、そこから最終的な一般投資家に情報が提供されることになろうかと思う。
○ 発行者情報の開示が求められているが、発行者が立派であっても、当該有価証券が不適切なもの、例えばEBや仕組み債等これまで問題となってきたものもあるので注意が必要。
○ 将来的には、英文開示に限る必要はなく、その他の言語で開示されるものであって、信頼できる価格が形成されているものについては、上場を検討するべき。外国の市場と共同してそういった投資先が社会に出て行くということが、日本がグローバル化するという観点からも重要。その際には、不招請勧誘の禁止との組み合わせにより、日本の市場にそういったものを登場させつつ、それを販売圧力をかけて投資家に販売をしないようにするというのは、市場開放と投資者保護を両立させる良い工夫と思う。不招請勧誘との組み合わせは真剣に考えるべきではないか。
○ 機関投資家の立場からすると、市場における投資対象が豊かになることが望ましい。他方、市場のインテグリティの上昇は重要であり、価格形成の円滑化は重要。市場の環境に適合しながら、実務に根ざした議論が積み上がっていくことが望ましい。
○ 英語以外を母国語と使用している国(例えば、中国等)については、先にプロ向けマーケットに導入した上で問題がなければ広げていくというのがよいのではないか。このようなケースに、不招請勧誘の規定を利用するのは望ましくない。不招請勧誘は販売制限に他ならず適用対象は極力絞るべき。
○ 外国の上場REITも英文開示の対象に含めるべき。REITの関係で、投信法の発行者の登録に係る制度もあわせて見直すべき。
○ 適合性原則の運用の基準が曖昧になると証券会社の対応が難しくなる。是非詳細を協議させていただければありがたい。
○ 英文開示となると英語の読めない人に必要な情報が届かないという問題がある。この点、不招請勧誘という議論もあり得るところであるが、セカンダリーにおいて情報の取得が可能であることを考えると、直ちに不招請勧誘の禁止の対象とし、入口だけで絞るのはおかしいのかもしれない。
○ 日本のマーケットの問題として、募集時に力が入るという状況があり、臨時に投資判断に重要な情報が海外で出された場合に、英語が読めないがために情報にアクセスできなかったと言い出す投資家も出てくるかもしれない。そういう場合に、紛争を予防するため規制が拡大するおそれがある。そうなると、市場を育てるためのコスト軽減の仕組みを考えているのに逆をいってしまいかねない。市場を育てるという観点からすると、事業者だけでなく投資家もフェアルールを守れる人のみが参加することが必要。自己責任というルールを守れない投資家を誘い込まないよう、適合性を保てるような仕組みを求める。
○ 単独上場に関して、日本で上場の機会を求めている企業も存在することを踏まえると、一律認めないとするのは不適切であり、取引所に何らかの質的担保を求める。
○ 情報提供については、比較可能性が必要になる。ガイドライン策定にあたり、考慮すべき。
○ 英語のみの提供であることが投資者に徹底して知らされること、比較可能性を保つこと、臨時情報についてはその重要性を判断できるような日本語による説明なりラベルが必要と思われる。
○ 適時開示については迅速性が生命線であり、重要な会社情報を上場会社が決定した場合、あるいは重大な会社情報が発生した場合、取引所としては、上場会社に対して正確かつタイムリーに平等な情報提供が必要。
○ 新聞等で上場会社の合併に関するニュースがリークされるような場合についてもその真偽についてしかるべく開示をすべき。
○ 上場会社が適時開示を行った場合、あるいは不確実な重要情報が流布している場合、取引所としては売買の停止を図って、当該会社情報の停止、確認周知を図っているところ。
○ 投資家の適切な投資判断にとって、重要な会社情報のタイムリーな取得は重要であり、平等性の観点からは、英語が理解できない人は適時性が損なわれているおそれがある。取引所としては、必要な範囲内で、上場会社に対して日本語による会社情報の適時開示の体制整備が求められている。
○ 日本語による要約をどのような趣旨で行うのかが、ガイドラインをつくる際に重要になる。発行体情報は、固有名詞の情報が多く、日本語に訳してもあまり意味がないが、記述的なところ、リスク関係の情報については、ニュアンスまで含めて正確に訳さないと意味がない。
○ 結局は、英文まで読まなければ意味がないというスタンスで行くのか、日本語の要約を見れば事足りると考えるのかによって、だいぶ中身が異なってくる。その点の要約に対する考え方をまとめた方がよい。
○ 日本語による要約を考えるにあたっては、公益又は投資者保護のために必要かつ適切なものを情報提供するということと、販売情報がきちっと発行体から責任をもって出されるということがポイントだと考えている。その意味では、中間点を探すことにはなるものの、ある程度日本語で事足りるというところをどこまで目指すかということになる。
○ ひとつ参考になるものとしてEUの例がある。EUの会社がフランスで上場している場合に、一番初めのプロスペクタスのサマリーの部分が現地語で出されるというプラクティスがある。そういうサマリーの目線のようなものを参考にしながら相談させていただきたいと考えている。
【ライツ・オファリングの制度整備について】
○ コミットメント型ライツ・オファリングにおける証券会社の行為を「引受け」と捉えるのは非常にもっともなことである。ただし、その場合に金商法2条6項の引受けの定義規定を改正するのであれば、基本的な定義規定の改正である以上、あまり複雑な条文にならないように工夫をして欲しい。
○ ライツ・オファリングを行うときに、実態を反映しない大量保有報告書を提出しなければならないという結果になっているが、投資家保護、市場の機能という観点から非常に重大な問題である。
○ 引受けについては、証券会社に審査の問題が発生する。コミットメントは、実態を見ると引受けと同じ性質であり、審査手続も似たような手続になるのではないかと思われるが、この点については、証券会社の意見も聞く必要がある。
○ 目論見書の交付方法については、ライツ・オファリングに限られない話であるが少なくとも先ずはライツ・オファリングについて、交付の電子化を認めるべき。
○ 請求を受けた場合に目論見書の交付を義務づけるとすると、交付は紙媒体による交付を考えることとなろう。その場合に、交付のタイミングへの目配りが必要。本則では、電子的でよいといいながら、請求があった場合に備えて一部でも紙媒体の目論見書を予め用意しておかなければならないとなると、タイムラインがあわないということになる。その部分は、なるべく後ろのタイミングで、例えば行使期間の末日までに渡せばよいといった対応をすべき。
○ 割当日から行使期間の満了まで以前よりは短縮化されてきているが、まだまだ長い。
○ 新株予約権は、割当日以降上場されて転々流通するため、目論見書の交付は物理的に難しいので、割当日以後の訂正は不要とすべき。電子的な方法を導入すれば、交付の問題が基本的にはなくなってくると思われるが、この点はこの点で明確にしておくべき。
○ ガイドラインのA15-6では、割当て日に新株予約権の取得が行われるとされ、割当て日に投資判断が行われていると整理がされていることからすると、効力発生後の訂正や訂正目論見書の交付を不要とするという取扱いは論理的にも一貫する。
○ 企業の立場からすれば、現状ライツ・オファリングが、資金調達手法の選択肢になっていないことが問題。早く選択肢として成り立つように検討を進めて欲しい。
○ ライツ・オファリングのコミットメントは証券会社以外にはできないのではないか。
○ 市場参加者には、ファンド等証券会社以外が行う可能性がないわけではないとの声がある。
○ 理屈の上では可能かもしれないが、現実的に考えて証券会社しかやらないと想定されていることについて、新たな開示規制・業規制を行う必要があるのか。
○ ライツ・オファリングの場合に、目論見書の交付義務のみが免除されるということか。ライツ・オファリングにおいて、証券会社が投資家に対して勧誘を行う場合に、交付をしていなくても、目論見書を利用しての勧誘を行ったとの整理がなされるのか。もしそうであれば、目論見書を使っていない者に責任が出てくるというのは不適切ではないか。
○ ライツ・オファリングにおけるコミットメントが引受けと実態上似ているという出発点からすると、そうなのかなという推測のもとに、先ほどの発言がある。
○ 目論見書を交付することに代えて、有価証券届出書等の提出及び株主への通知で足りるというのが一点目の論点。目論見書の作成義務は残るというのが基本で、問題は、仮に情報の公告だけで代えた場合に、そもそも目論見書を作成しなければならないのかとの論点が残る。
○ 請求があった場合にのみ目論見書を交付すべきとした場合、目論見書の交付義務は誰が負うのか。証券会社が引受けをしていれば、証券会社が負うのか。発行者が仮に交付義務を負うとすると、証券会社が使用者責任だけ負うとするのは変な話だと思う。目論見書に虚偽記載があった場合、交付されていない目論見書に使用者責任が追及されるというのはおかしな話。
○ 通常の引受けと異なり、株主は主に口座管理会社に行くものと思われる。口座管理会社は引受け審査もコミットメントもしていない。そこで説明を求められ目論見書の交付をしたら、使用者責任を追及されるというのは筋に合わない。
○ 引受け審査等が行われない中で、コミットメント型のライツ・オファリングがなされてよいのか、目論見書の交付義務を誰が負うのか、使用者責任を誰が負うのかについては要検討。
○ ライツ・オファリングについては、既存の株主に配慮した資金調達手法で、欧州でよく行われているもの。日本でも制度上できるがいくつかの問題点があり行われていないのが現状。金商法関係で使い勝手が悪いとか、会社法関係で使い勝手が悪いとか複合的な問題がある。金商法関係ではかなりの程度対処されようとしている。目論見書の交付の考え方の部分。引受けと整理することで、公開買付規制等の論点も整理しやすくなる。その他の論点として有価証券届出書の効力発生後の訂正届出書の扱いの問題もある。
○ ライツ・オファリング関連制度の改正は、数十年来、企業が行ってきた第三者割当による希釈化の問題を払拭する上で意味がある。その意味で、コミットメントの部分について引受け業務と整理することは証券界としても歓迎すべきこと。引受け審査や条件決定の部分について第三者割当において問題になったところについて、実務を適切に行っていくために議論させて欲しい。
○ 通常、公募増資においては、当該証券の売りさばきの勧誘に当たって目論見書の交付は証券会社が行う。しかし、ライツ・オファリングについては、証券会社は、既存の株主に勧誘を行わないので、使用者責任を負うことには疑問。そもそも目論見書の使用者責任は「使用者」に課されるものであり、使用していない証券会社の引受け審査の議論に馴染むのかは議論が必要。
○ 株主の多い会社がライツ・オファリングを行う場合は、目論見書の簡素化は必須。
○ 投資家からの請求を受けて目論見書が交付された場合に、当該目論見書について誰が責任を負うのか十分な検討が必要。特に口座を持っているに過ぎない証券会社も行使手続きにおいて株主への注意喚起を行うことも考えられ、この注意喚起が勧誘行為と結びつけられるのは困る。
○ いずれにせよ引受け審査をどうするか、適切な価格をどう決定するか、実務をどう回すのかは、証券界でひきとって議論をしたいところ。
○ 既存株主は企業情報をすでに知っているため、既存株主に対する新株予約権の無償割当ての場合、目論見書の必要性は高くない。にもかかわらず証券会社に過度に使用者責任を負わせるのは適切ではない。
○ 既存株主に新株予約権の行使を進める行為は、募集に該当するのか。
○ コミットメントをしていない証券会社にとって、顧客である既存株主の権利行使に伴う手数料は持ち出しなので、権利行使を既存株主にすすめない要因となっている。
○ プレヒアリングが大株主に対してできない。大株主の行使状況というのは、ライツ・オファリングの正否を決める上で重要。開示制度上の問題としてそういうところが許容されないのか。
○ 大量保有報告書について、既存株主の持株比率が増えるわけではないのに計算上5%を超えてしまうということもありうるが、この点が制約になるのではないか。
○ コミットメント型のライツ・オファリングについては、証券会社が株式募集についての残額引受けリスクを負うという経済実質に着目して、これを引受けと整理する。そうすると有価証券届出書の虚偽記載について元引受人である金融商品取引業者等として、民事責任を負うことになるので、引受け審査をしなければならなくなる。引受け審査をさせて適正なライツ・オファリングをさせればよいという発想がある。
○ 新株予約権の無償割当ての段階では、実質的には募集という行為はないが、形式的には募集に該当し、届出書が出されることになっているので、目論見書の交付についてどう考えたらいいのかという論点が生じる。
○ 目論見書の交付にかかわっていない証券会社が使用者責任を負うのはどうかという議論がなされている。
○ 現在の解釈では、ライツ・オファリングの場合、株式の募集は行われていないので、株式の募集についての有価証券届出書は、提出されないという整理になっている。しかし、経済実質的には、予約権の行使について何らかの勧誘がなされていて、それを行使して一般の株主が株式を取得する。証券会社としても売れ残りがたくさん出たら、未行使分の引受けを約束しているのでそのリスクを負担しなければならない。その点を考えると引受け審査も必要であり、一定の証券会社は勧誘についての責任を負わなければならないという整理もできるのではないか。この点を勘案して制度設計が必要。
○ 新株予約権行使の勧誘は非常に重要なポイント。これについてプレヒアリングができないという整理はどうかと思う。近似した問題として、第三者割当増資について、届出書に割当先の記載を求める指導があって、割当先を書く以上、届出書提出前に接触があったはずである。この点については、勧誘に当たらないとの整理がガイドライン等で既になされている。勧誘と言うことを一般向けの募集・売出し的なものと第三者割当とかコミットメント型ライツイシューの場合については、概念の相対性を踏まえて違えて考えなければならない。
○ プレヒアリングについては、インサイダーの問題等があるが、大株主との事前の接触を認めるなどコミットメント型が実効的に可能となる仕組みを考えて欲しい。
○ 口座管理会社については、使用者責任は積極的に勧誘をしたときにのみでてくるべきものであって、口座管理会社が投資家から求められたとき、目論見書の使用者責任を恐れて説明を断るというのは利便性に欠ける。積極的勧誘をしつつ目論見書を渡したときのみに使用者責任が出てくるという整理がひとつ考えられる。
○ ライツ・オファリングにおいては、目論見書が新株予約権の無償割当ての段階で交付されているが、むしろ目論見書が必要となるのはそのあとの株主が新株予約権を行使する段階である。新株予約権の無償割当ての段階で何らかの使用者の責任を負わせるというのは筋違いである。
○ 実際に、新株予約権の行使をさせるかどうかという「勧誘」を証券会社がまったくしていないとは思われない。これをしなくてライツ・オファリングが成功するかは疑問。他の通常の募集とは異なるというのはわかるが、新株予約権の無償割当てを受けて新株予約権を行使して追加投資をするのか、売却して現金をもらうのか、という判断に迫られている投資家に対して、「勧誘」がされる。そういった場合、民事責任の規定をおかなくてよいのか。通常の募集との関係で違和感がある。たとえば、17条の責任は、目論見書の使用者の責任と言うよりは目論見書以外の販売の過程で使われている全ての書類の虚偽記載の責任。せめてこの場面において目論見書くらいは、使用者責任の適用対象にしても弊害はないのではないかと考えている。
○ 引受証券会社以外の証券会社から積極的に勧誘が行われた場合に何らかの責任が生じるとすると、理屈上、証券会社としてはできるだけ無関心でいようというインセンティブが働く。気づかないままに新株予約権を行使しない、売却もしないという人を増加させる。結果、実質的に取引所が禁じているような特定の第三者に対する第三者割当てをライツ・オファリングにより行おうという人たちにつけ込むすきを与えるだけ。このようなことも考えて、本当に目論見書の交付義務があるべきか、を考えないと、投資家保護を考えながら逆の結果に陥るのかもしれない。
○ ライツ・オファリングに期待が高まっているのは、第三者割当増資に対する規制強化の流れがあることから、企業にとって使いやすい資金調達の手段としてライツ・オファリングのニーズとしてではないか。
○ ライツ・オファリングを使いやすくするための議論をしているなかで、万が一不正が起こった場合の議論をし始めるとやはり使いにくいものになってしまう。非常にその辺を懸念している。使えるものになるということを前提に議論して欲しい。
○ ライツ・オファリング手続きの合理化の必要性については認識しているが、法的構成を検討する際に、金融商品取引法の建前・枠組みの変更には慎重であるべき。目論見書交付義務を免除するとか、引受け責任がないとかいう風にはしない方がよい。
○ 目論見書に書くべき事項を発行者、引受人が考慮することは必要。口座管理だけで使用者責任はないと思うが、金商法の体系を崩さない方がよい。
○ ライツ・オファリングほど、会社法、金商法、証券取引所の規則、証券業協会の規則等にまたがっているもの、またレベルが法律マター、自主規制、実務慣行にかかわっているものはあまりなくて、なかなか進まないという感じがしている。
○ ライツ・オファリングの利用促進を進めるにあたっての課題は二つ。(1)日程短縮及び(2)コミットメント型が増加するように、この辺についてのルール整備・実務慣行の確立が必要。それからさらに実務慣行の部分についても日程のところについても、コミットメントしない証券会社の扱いをどうするかという問題。
○ ライツ・オファリングは関係者が非常に多い。アクションプランに盛り込んでもらったことはよいことだが、全体的なところに対する金融庁、当局のイニシアティブに期待している。
○ 事前勧誘に関連して、既存の株主の行使という面も大事だが、最終的には未行使分について証券会社が引受け、販売することになるのであり、大口で引き取ってもらう投資家がいるのかというところの需要の確認ができるとよい。当初からコミットをするため市場の状況を知るというインセンティブが強く働く。この点を、是非検討していただきたい。
○ 外国居住者である株主に新株予約権を割当てる場合に、その国における証券規制上届出・開示等が必要になる可能性がある。外国の証券規制を回避するため、そういった株主への割当てを避けることができるのか。特に米国だとアメリカにおける登録や継続開示の問題が生じる。
○ F4のファイリングについては会社法上の株主平等原則をどう考えるかという問題であり、金融庁からは今年の6月に法制審議会へ意見提出したところ。法律のレベルで解決するのか他の方法があるのか、諸外国はどうしているのか比較検討が必要と考えている。
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