第3回 開示制度ワーキング・グループ 議事要旨

1.日時:

平成22年12月17日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館9階 金融庁共用会議室-1

3.議題:

英文開示報告書(案)、ライツ・オファリングの制度整備について

4.議事内容:

「英文開示報告書(案)」及び「ライツ・オファリングの制度整備」等について事務局より説明。

その後、上記議題について各委員から意見聴取を行った。

主な意見は以下のとおり。

【英文開示報告書(案)について】

○ 報告書案2ページ「2.英文開示制度の見直しの必要性」について、第2段落で「金融商品取引所等における多面的な取組み」が必要とあるが、多面的な取組みをするに当たっての目的を明確にする観点から「国際競争力の強化に向けた」といった表現を加えるべき。

○ 報告書案4ページ「「外国の市場」の範囲」について、第2段落で範囲の判断に当たっての考慮事項が記載されているが、ここに「なお、その際には当該外国の市場における日本企業の取り扱いについても、同等の利便性が確保されることが考慮されるべきである」との文言を加えるべき。日本企業が海外で重複上場するケースでも、英文の開示があれば認めるという、日本のみが認めるのではなく先方の市場でも認められるというフェアな関係を前提にして欲しいという趣旨。

○ 多面的な取組みに当たっての目的の記載については、異論はないと思うが、「外国の市場」の範囲の判断に関する記載の追加については、異論はあると思われ、ご意見伺いたい。EUであればほとんど同じ水準にある。ご指摘の文言を入れることによってかえって日本における英文開示が進まないのではないか、という危惧もある。

○ そういった危惧はあるかと思う。ただ、単に外国企業が日本の市場に集まるようにすることが目的なのか、日本の市場と海外の市場でお互いに競争力を高めて相互に魅力ある市場としていく中で自ずと外国企業が日本の市場に集まってくる、あるいは日本の企業も海外市場という色々な選択肢を持つことで競争力を高めることに資することを目的と考えるのか、どちらに重点を置くかということだと思っている。

○ 基本的に英文開示の最初の視点は日本の投資家保護にある。その上で、ご指摘の視点については、実際に外国市場の指定をするときに考えるということでどうか。

○ 報告書案2ページ「2.英文開示制度の見直しの必要性」について、外国会社の減少の原因を開示制度のみに求めるのは違うが、大きなファクターであることは間違いない。具体例として、東証で上場廃止された会社をみると、日本での上場維持のために開示書類を作るのに、翻訳費用で数千万円単位がかかっている。中には1万7千人も株主がいた会社もあった。この場合一人あたりのコストでも2,000円近くかかっている。会社としても、日本の株主だけにこれほどの負担をかけることの説明が難しいとの説明をしていた。コストは株主、ひいては投資家が負担するものだから、コストパフォーマンスが合うような制度にすべきである。

○ 英文開示にかかわらす、取引所規則も含めて諸制度、インフラ、実務慣行について、費用対効果が合うようにするための多面的取組みという方向には賛成。東証だけでは難しいので、市場関係者と協力して取り組んでいきたいと考えている。そのため、報告書案2ページ「2.英文開示制度の見直しの必要性」2段落目の「金融商品取引所等における」との文言は、「金融商品取引所等の市場関係者における」との趣旨の文言にしていただきたい。

○ 報告書案6ページ「(2)「日本語による要約」」において、「ガイドライン作成」との文言があるが、できないと先に進まないというわけではないということを確認したい。

○ そのように理解。

○ ガイドラインでなくても、何かしらの形で、日本語の要約の資料にどういった情報を入れるかが分かるような指針となる資料を作るべき。

○ 外国の市場において「適切な開示」、という文言があるが、IFRS上の利益は大きくぶれているのに、ぶれの少ない管理会計上の利益に基づきMD&A情報を開示するといったミスリーディングと思われる情報開示が散見されることから、そういった企業が日本で開示をする際には、会計基準に基づいた利益を開示するように求めることを担保するべき。

○ 外国投資信託について、交付目論見書レベルのものは、全て日本語で交付されるという理解でよいか。

○ 外国投資信託について、発行者情報に該当するものについては、英文でかまわない。ただし、それに対して日本語の要約が必要という枠組みは他のものと同様。

○ 交付目論見書レベルのものではそれほど量は多くないので、通常は日本語での開示で問題はないだろうが、一部だけ英文が入っていると奇異な感じがするので、その点はバランスをとっていただきたい。

○ ご指摘のとおりに進められるものと思料。

【ライツ・オファリングの制度整備について】

○ コミットメントを引受けと整理することについて、証券業界としては、(1)引受審査やプライシングに証券会社が関与することにより適正なファイナンスを確保できること、(2)新株予約権の買取りに伴う公開買付規制の適用除外を確保することによりコミットメント型ライツ・オファリングのスキームが行いやすくなること、という意味で賛成である。ただし、第三者割当てによって行われるMSCBと同じ形態であるが、コミットメント型ライツ・オファリングにおける証券会社の一連の行為のうちどの範囲を捉えて引受けと整理するのか。法文上の問題と思われるが、きちんと整理が必要。

○ 「目論見書の交付義務における引受証券会社等の役割」について、コミットメントを引受けと整理する以上、公募増資にかかわる様々な証券会社の行為と同様、ファイナンスに係る業務について証券会社がある程度の役割を担わなければならないことは理解できる。しかし、引受証券会社に株主からの請求を前提とした目論見書の交付義務を負担させる場合、証券会社としては、実務上、請求者が真の株主かを確認する必要が生じる。また、その人が反社会的勢力ではないかも併せて確認する必要があり、仮に株主の管理を行っている信託の代行機関に目論見書交付義務を負担させるとした場合よりも、交付事務に相当多くの時間がかかる。この点は、実務的にかなりの工夫が必要になる。

○ 引受証券会社に目論見書の交付義務を負担させるとしても、目論見書の使用者といえるのかは疑問。本来目論見書を交付する主体は、発行会社であって、証券会社は、発行会社を代行して交付業務を行っているに過ぎないと整理をすることも考えられる。

○ 引受証券会社が目論見書を交付する場合に説明責任を負うのかも論点。公募増資の場合には、証券会社は売り捌くために目論見書を使用することから当然投資者に対して説明義務を負うが、ライツ・オファリングにおいて請求に対して事務的に目論見書を交付する場合にも説明義務を負うのか、併せて整理が必要。

○ コミットメントをした証券会社に交付義務を負わせるのかという問題とそれを他の者に代行させることができるか、という問題は別。発行者に交付義務を負わせた上で、証券会社に目論見書交付を代行させるのはよいが、証券会社に交付義務を課すのは不適切というご趣旨か。

○ そういう趣旨で意見を述べた。

○ 真の株主かどうかの確認のためにコストがかかるとのご指摘があったが、仮に引受証券会社が交付義務を負う場合に、真の株主ではないものに交付をしたからといって義務違反になるわけではないと思う。

○ 真の株主かどうかの確認は実務上必要になるということ。目論見書の交付をする当たり、真の株主かどうかの確認をしないと、全く真の株主ではない人から請求を受けた場合にも目論見書を配付しなくてはならないという事務を建付けなくてはならなくなり、非常に手続が煩雑になる。

○ 引受証券会社の責任の範囲については、証券会社が、発行体から未行使分の新株予約権を譲り受けた段階について責任を認めるのであれば、証券会社が通常把握しているリスクの範囲内であり、納得できる。しかし、その範囲を超えて、既存の株主に割り当てた際の既存株主の行使、譲渡及びこれらに関連する行為についての責任又は届出書や目論見書の虚偽表示の責任については本来発行体が負うべきものであって、引受証券会社が負うべきではない。

○ 目論見書の交付義務については、対応可能かどうかではなく、本来誰が負うべきかという問題。対応可能だから責任を負うべきという話ではない。一義的に株主を特定できる発行体の方で交付義務の責任を負った上で、誰と協同して交付をしていくのがもっとも適切なのかを、発行体において考えるのがよい。証券会社が交付義務を負担すると交付漏れに対する責任を負担しなければならなくなるが、一義的に情報に接せられない証券会社には過度の負担。

○ コミットメント型ライツ・オファリングにおける引受証券会社の役割について、通常の公募増資で残額引受けする場合とどれだけ違うのか。行使分が多ければ、引受け分は減少する。もし仮に目論見書の交付義務がなくて、証券会社が自発的に勧誘するとなると、その勧誘について、販売圧力がかかって投資者保護に反するようなことが行われるかもしれない。売れ残りリスクを負担する関係上そういう可能性はある。そうすると、コミットメントを与えている以上は一定の義務が生じるということはありうる。

○ 届出書・目論見書の虚偽表示についての責任の問題と新株予約権の行使・譲渡に関連するその他のコミュニケーションに関する責任は明確に分けて議論をするべき。届出書・目論見書の虚偽表示についての責任は、コミットメント型であろうがノン・コミットメント型であろうが、発行体が一義的に負うべき。新株予約権の行使・譲渡に関連する責任については、どういったレベルでどういった行為が適切かあるいはどういった行為を防ぐべきかについては様々な議論がありうる。

○ 考え方の筋として、発行会社が責任を負うと整理するのか、あるいは、新株予約権の無償割当ての段階を取得勧誘と整理していることから行使時の払込みを一体として考えた上で証券会社が一連の行為について責任を負うと整理するのか、については論点。

○ また、実際に事務フローが構築出来るのかということも論点。引受証券会社が請求に応じて目論見書を交付すべき義務を負う場合の事務フローをどうするのか。証券会社が交付義務を負わないとすると、発行体と信託銀行を含めた上での事務フローとなるのか。その場合に保管振替機構にどういった役割が求められるのかについては、引続き検討事項。

○ コミットメント型ライツ・オファリングにおいて、開示についての責任は発行体が負うべきであり、証券会社は負担しないとすると、コミットメントをしてもそれは元引受けに当たらないということか。

○ 証券会社のコミットメントを「元引受け」と整理した上でその責任の範囲をどこまでと考えるかが論点と考える。

○ 現行法上、コミットメントを「元引受け」と整理した場合、引受証券会社には、開示について責任を負うことになる。それを免除するというのは、非常に大きな改正であり、現状では対応困難。そこを変えない限り、引受審査と責任というのは裏腹の関係にあり、元引受けをして引受審査をしっかりやってもらう以上は、開示についての責任が伴うのはやむを得ない。

○ コミットメントを引受けと整理することについては賛成であるが、従来の引受けとは異なった性質のものだと思う。

○ コミットメントとその後の権利行使促進・勧誘の行為は異なる行為。一連の引受けと整理するのは難しい。基準日までの株主に割当てを行う行為とそれ以後の行使を促進するための勧誘を行う行為は分けた上での議論が必要。

○ その上で基準日時点の株主に対する割当てを募集と整理すると、引受証券会社が開示について責任を負うことは理解できる。一方で、目論見書の交付義務については、引続き慎重な検討が必要であると考える。

○ 目論見書の交付義務については、実務的な部分も含めて非常に難しい。例えば、何十万人もいる株主に対して、発行会社と証券会社が協同して、請求に応じて目論見書を交付するとした場合、どのように工夫していくのかは、非常に難易度が高い問題。交付義務についてどの程度の義務が課されるのか。請求をした者が真の株主かをどのように確認していくのか、交付漏れがあった場合の責任をどういうふうに考えるのか。さらに、株主に対して目論見書を交付することが、使用者責任との関係でどう整理されるのか。色々と検討事項があり、交付義務を引受証券会社が負担すると整理されると難しい。目論見書の交付を単なる事務代行行為として証券会社が発行会社と協同して行うと整理する考え方がありうると思っている。

○ 有価証券届出書の内容に責任を持つということと、勧誘行為に際して目論見書の使用者としての責任を負うことは現行法でも区別がされている。証券会社が引受けをすれば当然に有価証券届出書の内容に責任を持つことになり、これに加えて、引受証券会社が積極的に勧誘行為を行えば金商法17条の責任を負うとの枠組みとなっている。

○ ライツ・オファリングについても、同様の枠組みがあてはまる。引受証券会社が引受けという行為を行っている以上、有価証券届出書の内容について責任を持つことになり、あとは引受証券会社がどれだけ積極的に勧誘行為を行っていくかということではないか。 

○ その上で、現行法の引受けの枠組みとライツ・オファリングの枠組みがどの程度同じかということが問題になる。現行法の枠組みにおける目論見書の交付義務の必要性については、募集の場合、勧誘者の人数も多く販売圧力が生じ、かつ、購入可能な証券に限りがあり買い急ぎの可能性もあることから、目論見書の交付義務を課すことにより、より慎重な対応を求めることにある。他方、ライツ・オファリングの場合は、引受けに際して引受証券会社としては、できるだけ予約権を行使してもらわないと、自分が引受けなければならない新株予約権の量が増えてしまうということがあるが、投資家側からみれば、新株予約権の行使期間の末日まで待っても確実に買えるわけであり、投資判断を歪められることなく欲しいものを買える。こうした中にあって、通常の募集の場合とどこまでパラレルなものと考えるかということが、ライツ・オファリングにおいて目論見書の交付義務をどうしていくかということを考えるうえでの大きな差異になるものと認識。

○ 具体的に、請求があった場合の目論見書の交付義務の是非についての所感如何。

○ 先ず、新株予約権の割当ての段階で目論見書を交付する必要性はないとの理解には賛成。あとは、目論見書の交付義務自体の問題であり、個人的には平成19年10月2日のパブリック・コメントへの回答において、取得勧誘に該当するとしてしまったために目論見書の交付義務が発生しているが、通常の目論見書と、ライツ・オファリングに際しての目論見書では性質が異なるとの感がある。

○ どの程度の差異があるのかということについては、例えば目論見書の交付についてEDINETに掲載すればよいとすることは理解を得られると思うが、交付義務といったことまで踏み込めるほどの違いかどうかについては各々の考え方によるのではないか。

○ そもそも、ライツ・オファリングというのは、既存の株主に新株予約権を無償で割当てる行為であり、その行為は発行者と株主の間で市場を介さずに行われているものであり、その後、その売残りの新株予約権を発行会社が買取り、証券会社に移して捌くという、ひとつひとつの行為を個別にみていくと、なぜ目論見書の議論となるのかが疑問。新株予約権の無償割当てについて取得勧誘行為に該当するとした平成19年のパブリック・コメントへの回答自体が間違いだったとはいえないだろうが、多少無理があったのではないか。

○ 実務上で問題がないのであれば、事務局案について反対するものではない。ただし、市場を介さない行為について、なぜ目論見書が必要なのかとの感はある。また、仮にコミットメント型のライツであってもひとつひとつの行為を個別にみていけば、最後に市場に出ていく際の証券会社との関係が重要なのであって、その前の発行会社と株主、発行会社と証券会社との新株予約権の取引については、市場を介さずに完結しているのであって、目論見書の交付義務や元引受けに該当するかといったことについて、無理に考える必要はないのではないか。

○ 基本的な理解として、株主割当てで新株を発行する場合については、株主が50名以上いれば、原則、募集に該当し株主は対価を支払う。新株予約権の無償割当ての場合については、株主ははじめ新株予約権を無償で割当てられ行使日に払い込む。また、割当てに際して取得勧誘はなく、株式に転換する際に取得勧誘が行われるとの整理となる。ただし、他の新株予約権の無償割当てや発行との整合性をとるために平成19年のパブリック・コメントへの回答になったとの理解。したがって、市場を介さないから目論見書はいらないというわけではなく、新株予約権の段階でいらなければ株式の段階でいるはずであり、株式の段階での目論見書の交付を省略するために新株予約権の段階で交付しているとの整理。

○ 既存の株主に新株予約権を割当てるということと、単に株主優待券を配るということにどれほどの差異があるのか。他の仕組みとの整合性をもたせるために無理に理屈をつけてきた結果、複雑な問題となってしまっているのでは、との感がある。ただし、事務局案の中身について反対するものではないし、これで実務が粛々とまわるというのであればよい。

○ コミットメント型のライツ・オファリングについて、金融商品取引業である引受けとして整理するのは妥当であろう。誰でもコミットメントを締結できるということにすると、大規模第三者割当ての代用に使われるおそれがあるので、こうした立て付けでよいと思われる。ただし、同じ引受けでも、通常の引受けとはかなり異なるものとの感がある。ひとつには予約権自体が無償で割当てられるということであり、もうひとつにははじめは予約権であったものがコミットメントに基づく権利行使により株式にかわることである。さらには通常のファイナンスと異なり、証券会社がコミットメントをやめるといってもライツ・オファリング自体ができなくなるわけではないので、例えば、元引受けという形で証券会社がアドバイスをしたとしても発行会社がそれを聞くとも限らない。

○ 有価証券届出書の虚偽記載について、予約権自体が無償でもらったものであることからすれば、実際に損害賠償責任を負った際に、どの部分に対して、どういった形で責任を負えばいいかがよく分からない。権利行使した際に払い込んだ金額に対しての損害賠償であるということであれば、既に株券にかわっているものについてまで責任を負うということになるのか。その場合、どの部分を損害と考えればよいのかもよく分からない。仮に払い込んだ金額を返せということであれば、既に持っている株券についてはどうすればよいのか。例えば、株券を返還してもらって、権利行使した価格を払い戻すのか。

○ 同じ新株予約権ということであれば、CBの場合も、権利行使後の株価変動まで責任を負わなくてはならないということになるのか。

○ 虚偽記載について、元引受けに準じて責任を負うというと、資料3のような形になるのだろうが、上述したように、実際にどういった責任を負うのかがよく分からない。

○ 目論見書についても、例えば「EDINETに掲載されています」との説明をしただけで目論見書の使用者責任が発生するということになるのか。例えば、コミットメントを締結していない証券会社の場合、株主から権利行使に係る質問があった際に「EDINETをみてください」というだけで使用者責任を負うことになるのか。

○ ライツ・オファリング自体が、既存株主を対象としたものであり、既存株主であれば、権利行使する株式に係るある程度の情報は有しているはずであることからすれば、そもそも目論見書自体の必要性が、通常のファイナンスと比してそれ程高くないのではないか。

○ さらに、権利行使に際して、証券会社が行使に係る手数料を負担していることや、仮に実費を徴収するとして、そもそもコミットメントを締結していない証券会社の場合は、請求先はどうするのかといった問題がある。

○ ライツ・オファリングについて、EDINETを参照してもらうだけで使用者責任が発生し、また、権利行使に係る手数料を業者が負担するというのであれば、制度自体が普及しないのではないかとの懸念がある。

○ コミットメントを締結した証券会社についても、自分の顧客ではない者から目論見書の請求があった場合に対応できるのか。また、そうした場合、発行会社が目論見書を交付するのであれば、証券会社における目論見書の交付は発行会社の事務の代行という性質のものになるのではないか。

○ コミットメントを締結した証券会社については、売残りという問題があることから、発行会社の大株主等に対して事前にプレヒアリングを行わなければ、大規模なものになればなるほど引受けられなくなるのではないか。

○ 虚偽記載があった場合の責任の範囲については、金商法21条の解釈問題ということになる。また、交付義務については、17条がそのまま適用されないとしても何かしらの工夫はできるか。21条については、募集・売出しに応じて取得したものの範囲がどうなるかということが重要となる。他方、無償であれば責任が全く発生しないというわけではない。

○ ライツ・オファリング自体が今までなかったことであり、性格も他とは異なるとの感がある。また、投資判断自体は、与えられたライツ(新株予約権)を行使するか売却するか何もしないかというところにある。しかしながら、その投資判断のベースとなる資料として目論見書を投資判断の段階で渡すということは技術的に無理なので、手前の割当ての段階で渡すということにしてはいるものの、割当てに際しては投資判断を行っていないというところに根本的な歪みがある。

○ 実質的には投資判断は後であり、形式的な募集は無償割当ての段階で発生することから、形式と実質が分かれているという中において、形式を重視し、無償割当ての段階で募集が行われているとの整理に純化していけば、EDINETを引用することで特に目論見書の交付は必要ないとなるのではないか。これを徹底し、無償割当ての時点で募集が完結していると考えるとすれば、その後の時点で証券会社が投資家に対して行う行為に関しては、目論見書の交付は必要なく、交付義務はないのではないかというのもひとつの考え方ではあると思料。ただし、その場合、インターネットのリテラシーがない者についてどうするかが問題。例えば、実際にウェブページに掲載されている届出書をプリントアウトしたものを渡すなど、何らかの形で交付することとし、そのうえで当該交付は目論見書の使用ではなくしたがって目論見書の使用者責任もついてこないということは考えられないか。

○ 目論見書の請求があった際に交付義務が生じるとした場合においても、コミットメントした証券会社や口座管理会社が使用者責任を負うということに直接に繋がるわけではないと思料。17条の使用の解釈の問題になるのではないか。したがって、目論見書を使用したのではなく事務代行にすぎないという位置づけも十分に考えられるのではないか。他方、証券会社が事務代行するのではなく発行会社が交付を一手に引受けるということも考えられる。いずれにせよ、全体の事務フローの流れをどのようにするのが現実的かということを整理していただいたうえで、ほふり、信託、さらに大きくいえばライツ・オファリングのタックスの問題等も含めて全体として使える制度とすることが重要。

○ コミットメント型ライツ・オファリングにおける証券会社による新株予約権・株式取得を引受けと捉えることについては、21条の適用範囲がどうなるのかということも含めて大きな問題であるとの認識。また、2条の引受けの定義規定にもう1号加えるということについては、どういう要素があれば引受けに該当するのかということや、残額引受け類似とした場合にどういった要素があれば実質的に残額引受けと同様であり引受けに該当すると整理するかといったことについてもよく検討していただきたい。

○ 海外で一般的に行われているものが、日本においてできないということは、企業にとっては大きな機会損失である。細かい問題があるということは理解しつつも、海外の対応事例等を参照しながら、早くできるようにすることを前提に議論を進めていただきたい。

○ 発行体としては、自身の開示等に責任を持つのは当然である一方、証券会社にとってもビジネスチャンスとなる以上、ある程度の責任を負うのは仕方がないのではないか。

○ EUにおける制度は、日本のそれとは制度内容が異なるものであり、日本の制度からすると問題がないわけではない。

○ 欧州におけるライツ・オファリングは特定の会社が頻繁に繰り返しているものがあるが、このようなライツ・オファリングは、増資ではなく配当の代わりである。株主還元策として自社株を買って配当を行う、それと同じく無償増資を行って新株予約権の割当てを行うという流れの中で行っている選択肢のひとつであり、それを日本の複雑な仕組みと比較してもあまり意味がないのではないか。

○ ライツ・オファリングについて、配当として行う場合は目論見書は不要だが、日本のような資金調達のために行うライツ・オファリングは配当とは全く逆のことであり、そこに違いがあるのではないか。

○ 現実に欧州で行われているライツ・オファリングは選択肢のひとつである。

○ 欧州におけるライツ・オファリングについては、ご指摘のように配当として用いられるとの話もあるが、通常の金融機関であるような大規模増資として用いられる場合があるなど、いくつかの使われ方がある。

○ 目論見書の交付義務という考え方について、EDINET等への掲載にとどめるというわけにはいかないか。

○ ライツ・オファリングに際しての目論見書の機能としては、権利行使期間がいつまでであるか、払い込み金額がいくらであるか、払い込んだ場合の取得株数、といったような証券情報が中心であるが、他方、権利行使のための情報でもあることからすれば、目論見書といわないまでも、窓口となる証券会社が説明するなどの対応が必要となるものと思料され、それを法的にどう整理するかという問題も含まれている。

○ 必要な証券情報を如何に投資家に伝えるかということの重要性については十分に認識。そのうえで、目論見書の交付義務という考え方についてよく検討する必要がある。

○ 17条の使用者責任という観点から整理すれば、本件については使用者責任を外していただきたい。また、目論見書を渡すという行為自体についても代行的なものであるとの考え方で整理していただきたい。

○ 仮に目論見書の交付義務を外したとしても、証券会社が権利行使を勧めるような行為を行う際に使用する資料、それを目論見書というかどうかは別にしても、17条の責任は、目論見書に限らず勧誘行為に係る全ての書類を対象としているのであり、仮に目論見書の交付義務が外れるとした場合においても、当該書類に虚偽記載等を行ってはいけないというルールは残るものと思料。

○ 権利行使に最低限必要な情報を如何にして、新株予約権の割当てを受けた者に伝えるかということではないか。

○ 技術的な観点からいえば、目論見書の交付義務を課さなかったとしてもその他の表示についての責任を負わせるのはよいが、現行の17条では募集又は売出しに応じてとの文言があるので、株式を取得させるということが募集に当たらないとした場合、同条がそのまま適用されないおそれがある。

○ 規制が過剰になるようなことなく実務がしっかりと回ることを第一に考えて検討いただきたい。

(以上)

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企業開示課(内線3665、3669)

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