「会計監査の在り方に関する懇談会(令和3事務年度)」
(第3回)議事要旨

1.日時:

令和3年11月4日(木曜)13時00分~15時00分

2.場所:

オンライン会議(中央合同庁舎第7号館9階 共用第3会議室)

3.議題:

今後の会計監査の在り方について

4.議事内容:

  • ○事務局による資料説明の後に行われた議論の要旨は、以下のとおり。
     

  • ○御説明いただいた内容について、大きな方向性に異論はないが、確認と可能であれば修正いただきたい点を申し上げる。
  •  1点目は資料1の9ページの、日本公認会計士協会(以下、「協会」という。)の品質管理レビューと公認会計士・監査審査会(以下、「審査会」という。)の検査の役割分担については、本文にもあるように、継続的に検討していくことが重要である。また、監査法人の品質管理システムにおける協会の役割として「指導・監督」という言葉が使われているが、今後の協会の「指導」と「監督」がどのようになるのかをよく検討いただく必要がある。これまでの議論の中では、協会の役割はより「指導」に向いていくのではないのかといった意見もあったが、それでは協会のこれまでの「監督」が、今後どのように変化していくのか、審査会との関係で協会の「監督」の内容と責任がどのように変化していくのかという点についてよく議論をしていただくことが重要ではないか。
     次に、公認会計士の経験における多様性、事業会社との人材交流も含めた多様な経験が監査能力の向上のためには非常に重要であると考えている。10ページの「監査法人における多様性に配慮した評価制度」における「多様性」は、基本的には女性活躍の流れであるが、「多様な経験」も包含されていると理解してよいか。仮に、この部分はあくまで女性の活躍に主眼を置いた意味での多様性であるとした場合に、13ページの注21に「多様な経験が適切に評価されることが重要との意見もあった」と記載されているが、これに関して反対意見は出なかったと記憶しているので、注ではなく本文にこの点を記載した方が、監査法人へのインセンティブにもなるのではないのか。
     次に15ページの「監査役等や内部監査部門との連携は有効となり得る」という記載はメンバーに異論がなかったが、その後に続く、「監査人には、監査役等や内部監査部門の独立性などをしっかり評価しつつ」の「しっかり評価しつつ」の意味合いについて、他のメンバーからも確認の意味で意見を伺いたい。私は、評価は評価の問題として、評価結果に関わらず監査人と監査役等や内部監査部門との間のコミュニケーションは、今以上に強化すべきであると思う。独立性などを評価した上で、それによって対応を変えるとは読まないとは思うが、ここは、監査役等や内部監査部門が仮に独立性が低ければコミュニケーションはあまり取らないという趣旨が含意されているのか、他のメンバーから見解を伺いたい。
     最後に13ページの注20の「経営者が関与する組織的かつ意図的な不正を見抜くことは容易ではなく」という文章だが、もちろん容易ではないと思うが、受取り方によっては、「だから見抜けなくても仕方がない」という解釈もされるのではないかと危惧している。まずは企業側で会計不正が生じないようにすることが重要であることは勿論だが、意図的な会計不正を見抜くことこそが会計監査への社会の期待であり、それに向けた人材の育成が必要であると考えている。会計不正を見抜く力は、公認会計士に必要な能力である以上、「容易ではなく」という表現を入れる必要はないのではないのか。 
     
    ○監査役等や内部監査部門とは当然、コミュニケーション・連携が必要であるが、監査基準において、内部監査の結果が利用可能かを監査人は検証しなければならない。監査役等や内部監査部門の独立性がまずは担保されているということ、加えて、コミュニケーション・連携を円滑に行うということであり、特に独立性に問題があれば信用しないということではない。ただ、あまりにも経営サイドに依拠している内部監査の場合は、異なる方向から証拠を収集することがあるかもしれない。
     
    〇例えば内部監査部門の独立性が弱いと評価したとしても、そうした評価を踏まえて内部監査部門と対話することが内部統制の評価そのものに繋がると考える。したがって、独立性の評価次第でコミュニケーションのレベルを変えるというようなことがあると、それはむしろ逆効果ではないかということを懸念している。
     
    ○資料1の9ページの品質管理レビューの、「指導・監督」の「監督」の意味合いについて、十分に理解を共通にする必要があるということだが、まず、協会は、会則上、個人の公認会計士及び監査法人に対して、指導・監督をすることが第一義的に求められている。その延長線上の中で行われている品質管理レビューについても、同様に会員に対する指導・監督のために行われるものと読み取っている。
     次に、13ページの「容易ではなく」については、理解の違いがあると思うが、やはり企業サイドが組織ぐるみで、そしてトップの一握りが不正を行う場合に、本当に外部の者が見抜けるかというと難しいものがある。
     
    ○監査人の独立性に関しては、本年4月から自主規制として、社会的影響度が特に高い会社の監査に関する関与期間10年のルールを協会で設けている。これにより新たな視点を保持して監査を行うことが可能となり、監査事務所を強制的に交代させるより高い効果が得られると考えている。検査・品質管理レビューにおいては実効性を評価していただいた上で、さらなる検討をしていただきたい。
     次に、資料1の7ページの監査法人のガバナンスについてであるが、上場会社の監査の担い手は、大規模監査法人、中小規模監査法人、個人事務所の共同監査と様々である。また、監査法人にも有限責任監査法人と無限責任監査法人とがあり、監査法人のガバナンス・コードの受入れ促進の前に、各々の状況に応じたあるべきガバナンス体制の議論を行う必要があるのではないか。これは、監査事務所の品質管理基準の適用においても必要になってくるのではないか。
     次に、12ページの「公認会計士の能力向上」だが、サステナビリティ情報など、非財務情報の重要性が増しているということで、特に公認会計士登録後の継続的研修の中で、それに対応するプログラムの充実が図られることが重要と考えている。サステナビリティに関する情報についての保証業務が導入されるか否かにかかわらず、財務諸表監査においても、企業価値の評価や企業の将来キャッシュフローを評価する場面で、環境問題等が企業に及ぼす影響の理解というのは重要な論点になり得ると考えているので、早急な対応が必要である。
     次に15ページの「高品質な会計監査を実施するための環境整備」では、適正な財務報告及び企業情報開示に関する監査役会等のガバナンス発揮と監査人との連携強化については重ねてお願いしたい。独立性に問題があると判断した場合にもコミュニケーション・連携の強化は当然あると思うが、「監査上の疑問点・問題点を更に追及する、証拠集めをする等の対応が可能」は少し違うのではないか。コミュニケーションを行うことで、監査人が監査上の対応をする部分もあるが、監査役等や内部監査が何を重点監査項目として、どういう点に問題点を認識しているかということを聞いた上で、監査人が、会計監査に影響するかどうかという点も踏まえて監査戦略を立てていくということになるかと思う。
     
    ○資料2は、前回の会計監査の在り方に関する懇談会の提言以降、どのような環境変化があって、どう対応するかを示したものであるが、環境変化のところを監査の専門家だけではなくて、この議論に直接関わっていない方にも分かりやすいように少し検討してほしい。
     具体的には、「会計監査の信頼性確保」の「中小監査事務所を含め、上場会社の監査の担い手の裾野が拡大」という点だが、「上場会社の活動が大きく変化する中、中小監査事務所を含めて監査の担い手の裾野が拡大」として、「中小監査事務所に対する支援」が大切とした方が自然ではないか。
     次に、「公認会計士の能力発揮・能力向上」についてだが、「監査基準の高度化やAIを始めとする監査の技術革新の進展」の対応の方向性として継続的専門研修(以下、「CPE」という。)を適切に履行しない者に対する対応としているが、この懇談会でも、不正を見抜く力を磨くためにどうしたらいいのかをメンバーで議論しているので、公認会計士に多様な経験を積んでいただくということを入れてみてはいかがか。
     それから、資料1の4ページに 「中小監査事務所が果たす役割が大きくなっている。そうした中、監査品質を高めるための競争原理が監査市場において自律的に働くことを確保する観点」とされているが、競争原理を、「品質を高めるための」ものと限定するのは違和感がある。例えば「監査品質を高めることになる」や「監査品質を高めることにつながる」とか、そういうふうにした方が、むしろ自律的な競争原理としてこの監査品質が意識されるようになるのではないか。
     次に、9ページの協会の「指導・監督」についてだが、「指導」と「監督」という用語はセットになっているような印象を受ける。「監督」という強い言葉が入っているが、協会の品質管理レビューは、審査会のモニタリングとは異なる位置付けにあるのではないかと思うので、この辺りは引き続き、審査会の役割を見直すことも含め、議論が必要ではないか。
     12ページから13ページの不正を見抜く力の向上について、資料2では、どちらかという中小監査事務所についての言及が多くなっているが、大手監査法人でも、やはり企業との交流、幅広い経験、あるいは更なる専門的な学習を強化する必要があると感じており、それがにじみ出るような書きぶりにしてほしい。
     
    ○要望を3つと、上場会社監査事務所の登録制度について述べたい。
     要望の1点目は、資料1の2ページ目の「さらに、」から始まる段落の後に「最近では、サステナビリティ情報に代表される企業情報開示の拡充について、信頼性確保の観点から公認会計士に対する資本市場からの期待が高まっている」というような趣旨の文章を、環境変化の一つの典型的な例として追加いただきたいということである。IFRS財団の新しい審議会の設置が発表されたように、サステナビリティ情報開示を巡る動きは世界的に急である。これは、単なる情報開示基準の問題ではなく、金融構造と産業構造の大きな変革の中の一つである。これに関わる公認会計士に対しても、情報の信頼性確保の観点から資本市場からの期待が非常に高まっているということを明文化することは、非常に重要なことである。一昨日、世界のメジャーな投資機関がBIG4ファームに対して、気候変動情報が企業に与える影響について監査の中で適切に対処しないならば、監査人選任議案に反対するというレターを送ったということが報道された。これは期待の裏返しだと考えている。
     2点目は、8ページの「『第三者の眼』によるチェック機能の発揮」について、「日本公認会計士協会において、2020年度の品質管理レビューより、実施頻度の柔軟化などの見直しが行われている」とある。品質管理レビューの頻度を緩和しただけに読まれかねないが、ほかにも、リスクモニタリングを強化して、リスクに応じた品質管理レビューを実現するための制度改正もなされている。前回の提言を受けて制度の強化もなされているということが分かるようにすべきである。
     3点目は、16ページの「その他」に、「企業情報の開示内容の充実、開示の適時性及び情報の信頼性の確保について、全体最適の観点から既存の制度及び慣習を見直して、企業及び監査人に対して余裕を与えるべきである」という一文の追加を強く希望する。監査人の規制が強化され、加えて、四半期レビュー、内部統制監査、監査基準で言えばKAMが最近導入され、今後は非財務情報開示も入り、保証の議論もいずれ行われる。現状、監査の現場からは、特に決算期に監査期間を確保することがますます難しくなるという声が届いている。一方、企業にとっても情報開示の拡充や適時開示、株主・投資家とのエンゲージメントなど、ディスクロージャーに関連することだけでもやるべきことは今後ますます増える中で、監査人と同じような問題を企業も抱えていると思う。監査人も企業も、これらの要請に応えるべく経営努力を尽くす必要があるのは当然だが、今後の経営環境の激変を考えると、企業情報開示の内容の充実、適時性、信頼性確保を全体的に俯瞰して見て、必要であれば既存の制度や慣習を見直すことによって監査人と企業に余裕を与えることが必要だと考えている。例えば、金融商品取引法と会社法による開示と監査の一元化、四半期開示の在り方、株主総会の開催時期の在り方などは、改めて議論する価値があるのではないか。
     次に、上場会社監査事務所の登録制度だが、約130ある上場会社監査事務所の中には、個人事務所が少数含まれている。個人事務所に関して、自主規制の中でどこまで規制を強化できるのか。ガバナンス・コードの適用という観点からいうと、監査法人でも有限責任、無限責任で違いがある中で、個人事務所の取扱いについては慎重に検討を進めるべきである。
     最後に、協会による「指導・監督」に関して、審査会は直接監査事務所を監督するという立てつけになっていないと私は考えている。もし何か企業側に粉飾決算の疑いがある、あるいは、監査事務所側にその粉飾決算に関連して監査が適切に行われていなかったのではないかという疑念が生じたときには当局が調査等に入ると理解しているが、通常は、協会が会員への指導・監督として行っている品質管理レビューの状況を監督するのが審査会であって、会員への監督は、自主規制に相当程度委ねられているというのが私の理解である。その立てつけを崩さないで、いかに両者が役割を果たしていくかというのが求められているのではないか。 
     
    ○1点目は、資料1の15ページの「監査人には、監査役等や内部監査部門の独立性などをしっかり評価しつつ」という部分については、監査人に、不正の発見を期待するという視点で申し上げたもの。内部監査部門は執行部の指揮下にある一方、監査役等は、本来、独立性がなければ困るが、監査役等の独立性は、多くのケースでは簡単には分からない。例えば、CFOから監査役等になった人がCFO時代に不正会計に手を染めていた場合は、その監査役等は執行役員に対して厳しく言えない。また、会社の中で監査役等から執行役員、取締役に抜てきされることがあり得る場合、監査役等である自分がこれから経営側の取締役になれるかもしれないという期待を持っていると、やはり独立性に疑問を持たざるを得ない。監査人には、監査役等の話は鵜吞みにしないで、しっかりチェックをしてほしいというのが趣旨である。
     それから15ページの「証拠集め」という表現については、監査役等に対する反証の材料を探すという趣旨で申し上げた。最初に、相手を1回疑ってみてほしいという趣旨である。監査役等の独立性を評価した結果、問題ありと考えたら、その調査の深掘りをしていただきたい。
     次に、13ページの「意図的な不正を見抜くことは容易ではなく」という表現であるが、今までの会計不正の例を見てもそれは簡単ではない。「曲突徙薪は恩沢なく、焦頭爛額を上客となすや」という中国故事がある。これは、通りかかった旅人が、かまどの煙突のそばに薪が置いてあったので、火事の恐れがあるとして家主に薪を移すようにアドバイスをしたら、主から他人が余計なことを言うなと追い払われる。案の定、薪は燃えて火事になったら、次に通りかかった旅人が、一生懸命頭を焦がして火事を消した。この人は、お酒や料理で接待されたという話である。監査役等というのは何も起こらないようにしているのが役割であって、何か起こってしまってからでは遅い。監査人や監査役等が未然に防いでいる不正というのはたくさんあると思うが、それは表には一切出てこない。実際不正が起こってしまってから、「なぜ不正を見つけられなかった」と言われてしまう。未然に防いでいることをしっかり評価しないと、これから監査業界に入ってくる若い人たちに、監査人や監査役等の職責は割に合わない、やりがいがないと思われてしまうことを懸念している。もう一つ、監査人には、話術、説得する術を身に付け、経営側を説得するような努力もしていただきたい。
     
    ○一つ目は、協会の品質管理レビューと、審査会によるモニタリングの関係をどのように考えるのか、何か改善すべき点はどこにあるのか、今後どういう制度が望ましいのかは、これまでの議論でも、かなり考え方が多岐に分かれ得る問題のような印象を受けた。品質管理レビューの目的、指導・監督の意味が問題になっているが、それと審査会による検査の目的が、全く違うと言っていいのか。それとも、大きな意味では両方とも異なるアプローチをしつつ最終的には市場に適切な情報を与えるという、市場を守るための制度として機能するものという意味では、それなりに重なり合う部分もあるのではないか。こういうことについて、必ずしも今の制度ありきというスタンスではなく、中期的に考え方を成熟させていくとことが必要なのではないか。
     それを前置きとして、資料1の9ページの注12は二つのことが書かれているように思うが、注12の注は本文の「両者の役割」のところに付いているので、そことの関係では前半のみで終わらせ注12の残りの部分は、むしろ注13の内容として捉え直した方がいいのではないか。要は、チェック機能が複数の異なる目的を実現するためにあるという問題認識からすると、それぞれの在り方について、最も大きな意味での目的、それぞれ個別の目的を実現できる適正な仕組みの在り方、チェックの結果の市場への提示の在り方なども含めて、様々な論点について議論を行った上で、大きな意味でのチェック機能全体の在り方を検討すべきではないかというのが私の感覚に近い。
  •  次に、11ページの注16は、本文の第1段落の3行目に付いているが、その次の段落の3行目の「望ましい」のところに付けるべきではないか。企業に所属する公認会計士が、監査情報や監査ルール、法令の改変が非常に複雑化しつつある中で、タイムリーにそういう情報を捉え勉強することができれば、そのこと自体が、監査人と企業との間のコミュニケーションを円滑にする役割にも資するということになるのではないか。
     次に、12ページと14ページに公認会計士試験制度のことが出てくるが、公認会計士試験というのは言わば公認会計士になる前の試験、なるために受ける試験であるが、12ページは、公認会計士となった人がその後も不断に努力するというコンテクストで書かれている。そうすると、ここに公認会計士試験が出てくるのはやや違和感がある。
     次に、13ページの注の20の「不正を見抜くことは容易ではない」というのが話題になったが、私は「容易ではなく」と言ってもそう違和感はない。要は故意犯なので、容易ではないというのは当たり前ではないかと思う。気になったのは、「まずは」という3文字で、「まずは」と書いてしまうと、企業側が先で、その後で監査人が考えればいいというニュアンスになってしまうが、両方とも車の両輪で、両方しっかり機能する必要があるのだから、「まずは」は取ってしまってもいいのではないか。
     最後になるが、以前の議論の中で、大学2年生で公認会計士試験に合格する人もいるということが指摘されていたが、将来、プロの公認会計士として、いろいろな変化に対応していけるような学問を修め、資質を持った人を選抜することや、あるいはコミュニケーション能力が備わっている人を選抜するということも考えるべきだと思うので、そういった素質を見抜くという観点も含めて、公認会計士試験を捉え直すというようなことも入れてみてはどうか。
     
    ○資料1の13ページの注20の「まずは」という文言について御指摘があったが、会計監査の世界では、まず、資本市場の主人公である企業サイドが正しい財務情報を作成・開示するということ、これは第一義的な責任として求められている。そして、それを踏まえて独立の第三者である監査人が監査意見を表明するという、二重責任の原則という形で明確に分別している。したがって、単に並列で並ぶものではないと思っている。
     
    ○3点意見を述べたい。まず、資料1の5ページに、上場会社監査事務所登録制度について、実効性をより高める観点から、法律に基づく制度の枠組みを検討する必要があるとされている。これは、自主規制の限界を補うものとして理解をしているが、この法的枠組みの検討に当たっては、制度の目的を再確認した上でしっかり実効性のあるものとしていただきたい。とりわけ、制度の目的として資本市場関係者等に対する情報提供という目的があるが、その目的は外すことなく、むしろ現状開示されている以上の、関係者がよりよく理解できる情報の充実をすることができるような検討をしていただきたい。
     それから2点目として、6ページの、規律付けの一つの方法として、監査法人に一定の社員数を求めることが、数合わせだけの形式的な合併を招く懸念があるという、したがって慎重な検討が必要だということ、これについては異論はない。ただ、規模の拡大を図った上で品質管理の徹底を求めることも可能で、むしろ、小規模の監査法人のままで大手や準大手監査法人と同じ品質管理を要求することはできない。規律を求めるのであれば、上場会社の監査にふさわしい品質管理ができる体制を求めるべきだと思っていて、そうすると、自ら規模の話に行き着かざるを得ないのではないか。
     それから最後、3点目として、「監査法人のガバナンス・コード」の改訂の要否の検討は必要だと思う。7ページに列挙されている項目に加えて、CPEの受講の環境とか、あるいは組織的なサポート体制、あるいは準大手監査法人以下の監査法人が対象になるかと思うが、業務運営における社員の兼業の在り方とか、あるいは非常勤公認会計士の管理体制などを例示することも考えられるのではないか。
     
    ○2点申し上げたい。1点目は、「はじめに」の中にサステナビリティ情報を含む非財務情報開示に対する期待が高まっているという文言を追記してはどうかという点について、反対ではないが、サステナビリティといった非財務情報開示そのものについては、財務諸表監査との関連性の範囲とのご趣旨とは思うが、公認会計士の対象業務と明示的に位置付ける段階にはないのではないか。これから開示基準が作られ、公表されていく段階であり、保証の対象になるということもまだ決まっていない。企業側にとってもカーボンニュートラルの流れの中でどのようなリスクが生じるのか、それが財務諸表にどのような影響を与えるのかについては、これから基準が定まる中で検討をすることになる。ただし、それに関する開示内容自体が即座に公認会計士の保証を受ける対象になるということではないと思うので、そうした点を御理解いただいた上での文言としていただきたい。
     もう1点は、企業情報の開示内容の充実、信頼性、適時性等について、資料1の16ページの「その他」に記載するべきとの御指摘は、問題意識は非常によく理解する。監査人側の業務状況、企業側における負荷の増加は、当然に現実問題としてある。しかしながら、必要な情報は開示する一方で重点化や効率化を図るというのが大きな流れであり、これからもそうなるだろう。一方で、監査時間を担保するために、例えば、株主総会を遅らせるとかといったことは事業会社のニーズではないし、この場で十分に検討・議論されている話ではない。一定の方向性を持つ記載をするのであれば、議論が必要である。総論として否定するような話ではないが、懇談会の論点整理への記載というのは違うのではないか。
     
    ○非財務情報の開示に関しては、保証の対象になるという前提ではない、ということを申し上げたい。報道された外国の資産運用会社などからのBIG4へのレターは、現行の制度の枠組みの中でも、企業側の情報開示と監査人が監査している財務諸表との関連性について検討が十分ではないのではないか、という話である。日本でも、サステナビリティ情報が開示されるかどうかにかかわらず、既に気候変動の移行リスクが事業にインパクトを与えつつある企業があり、現実の課題になっている。
    気候変動に関する情報を開示する際に、監査人としては、財務諸表以外の情報をしっかり読んで、そこに書かれている情報と監査人が監査した財務情報との関係に不整合がないかを判断するとともに、企業側の開示に対して監査人が知っている知識と矛盾がないかを確認した上で、監査報告書に記載する必要がある。こうしたことは現在進行中の2022年3月期から既に導入されており、このような動きの中で今後開示が進んでいくと、市場からもより強く、監査におけるサステナビリティ情報の考慮を求められるということである。サステナビリティ情報そのものが保証の対象になるか、ならないかということとは別の問題だと考えている。
     2点目については、監査法人側と企業側とが、情報開示の充実及びその信頼性確保の観点から増加していく負荷を本当に経営努力だけで解消できるのかということである。市場の制度全体を俯瞰して、見直すべき既存の制度があるのであれば、そこを見直す必要があるのではないかという趣旨である。過去にも議論されてきた場が多々あり、ディスクロージャーワーキング・グループでも議論されていて、どのような場で議論いただくのが適切か分からないが、全体感を持って、慣習も含めて既存の制度を見直すという時期に来ているのではないか、という意見である。
     
    ○サステナビリティ関係については、時代の潮流であるとは思うが、資料1の12ページの、「公認会計士の能力向上」の第1パラグラフに、そうした問題意識、環境の変化について記載しているので、2ページに関連する文言を追記しても特に問題ないのではないか。
     
    ○3点申し上げたい。1点目は、他のメンバーから御指摘の企業との人材交流の記載について、反対意見ということではないが、前回の懇談会でも申し上げたとおり、必ずしも企業に行かなくても適切な監査のローテーションを行うことで、監査に必要な知見など、様々な企業における取組みなどを理解することはできると考えており、脚注への記載でも十分ではないか。
     2点目は、資料1の15ページの注26、監査役等・内部監査部門と監査人とのコミュニケーションについて他の委員から御説明をいただき、趣旨を初めて理解できた。多少修文をしていただければ十分納得できる。
     3点目は、監査期間の確保は、高品質な監査や適正な財務報告の観点から非常に重要と考えており、2016年の会計監査の在り方に関する懇談会のときから比べると、確実に監査期間は延びている。例えば押し込み販売をしたものを4月に伝票を取り消しているようなときに、4月の試算表を見ないと、それを確認できないということもあるので、会計不正防止の観点からも、期末監査については一定の日数の確保というのは非常に重要だと考えている。論点整理への記載が必要ということではないが、期間の確保という点について非常に重要だと考えているという点について発言をさせていただいた。
     
    ○企業との人材交流については本文ではなく注釈でも十分というご指摘をいただいた。多様な経験という中では、上場企業を含む企業との人材交流だけではなく、コンサルティングでの経験ということも含めての話であり、私が大変危惧しているのは、監査だけをされていた方が評価される風潮があるのではないのか、という点である。様々な経験を積んだ方が、監査法人に戻ってきても人事評価の上で不利益を被るようなことがないように、心掛けていただいた方がいいのではないのかということ。そのような意味も踏まえて反対の御意見がないのであれば、脚注ではなくて本文に書いていただく方が影響もあると思うので、私としては、是非本文に記載していただきたいということである。
     監査期間の確保の問題については、論点整理へ書く、書かないということは別にしても、事業会社としては、よりリスクアプローチを徹底して、特にインテンショナルな不正会計に対応するために、期中監査の中で、多くの場合は会計上の見積りの議論もできるので、そうした監査上の重要な部分についてはしっかりと時間を使うべきと考えている。
     期末監査については、デジタル情報開示化の進展により、従前に比べれば監査時間は確保されているということもあり、また、当然ながら負担との兼ね合いもあるが、事業会社としては、いたずらに株主総会を遅らせたいということを考えているわけではないということは繰り返し申し上げたい。
以上 

サイトマップ

ページの先頭に戻る