経済価値ベースのソルベンシー規制等に関する有識者会議(第1回)議事要旨及び資料

議事要旨

1.日時:

令和元年6月26日(水)16時00分~17時50分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館 12階 共用第2特別会議室

3.議事内容:

事務局によるメンバー紹介、資料説明に続いて、以下のような議論が行われた。

  •  ○ 欧州では、ソルベンシーIIの導入後、欧州の保険会社の国際的な競争力が低下したほか、保険会社の投資行動、長期の保障の提供や、保険会社の統廃合等への影響を通じ、結果的に保険契約者の選択肢を狭めたのではないかとの懸念も聞かれた。それらの点も意識し、問題点があるのであれば対応策を検討しながら議論を進めていくことが必要と考える。
  •  ○   2007年に「ソルベンシー・マージン比率の算出基準等に関する検討チーム」の報告書を公表した当時は、保険会社のリスク管理の高度化を促す観点から、比較的早期の経済価値ベース規制への移行も想定していたところだが、結果的には時間がかかった。その中で、新規制への移行に係るロードマップが示されなかったため、スピードが鈍ってしまった面もあるのではないか。
  •  ○ 長期商品の提供から生じる金利リスク等は、現行の規制や会計には十分に反映されていないが、リスクが存在するのであれば、適切な尺度によりそれらを把握していくべき。そのように見た場合に収益性が悪いからといって、適切な尺度を用いないことになれば本末転倒。規制や会計に反映されていないリスクに関するアービトラージのほうがよほど怖い意図せざる影響ではないか。
  •  ○ リスクを過大にとっている現状を維持するためにリスク管理や規制を変えるのは本末転倒だと思う。その一例として、長期の年限においてアルティメット・フォワード・レート(UFR)を用いた補外を行うことは規制のあり方としてリスキーだと思う。50年、60年先でも事業が継続して行えることを考えて規制を導入するべき。
  •  ○ 内部管理の中で各社独自に経済価値ベースの考え方を積み上げてきたものが、経済価値べースの規制の導入により却って保険会社が思考停止に陥ってしまうことは怖い。そうしたことを考えると、規制をどう位置づけるかが大きい問題であると思う。例えば、規制上の標準モデルはあくまでもベンチマークであって、そのうえで各社独自のリスクに対する考え方の差を議論していくようなことも有用だと思う。
  •  ○   一部の保険会社は独自に計算したESR等の経済価値ベースの指標の開示を行っているところ、市場参加者の間での理解も進んできており、収益性(株主還元)や健全性を判断するためのツールとして有用であるが、現状では用いる基準が同一でなく、比較可能性は担保されていない。経済価値ベース規制が入ったドイツでは、超長期の商品を提供することが果たして適切かという議論もなされてきたと理解しているが、日本においてもこうした点を考えるよい機会であり、経済価値ベースへの流れがしっかり実現に向かうことを期待する。
  •  ○ 経済価値ベース規制を導入するにあたって、何らかの激変緩和措置を入れるという議論はあるかもしれないが、意図せざる影響を恐れて後ろ向きなドライブが掛かるのはおかしい。質の高い内部管理を行っている会社がそのことにより市場や契約者から信任を得て、他社がそれに追随していくような流れができれば望ましい。規制が経済価値ベースのリスク管理と親和的な方向になることは意義があると考える。
  •  ○ 保険会社の内部管理に関する情報開示が少ない。コストが掛かることも理解できるが、特に市場参加者に対しては、例えばイールドカーブに関する前提や使用しているパラメーター等まで開示しても良いのではないか。また、内部モデルの使用について、どのようにインセンティブを持たせるのか、その際にどの程度の期間をイメージするかを決めて議論した方が良い。
  •  ○ 米国がICSとやや異なる方向を向き、国際的な規制との整合性が十分に確保されない場合、アービトラージの誘因となるかもしれず、そうした点も踏まえた議論も必要ではないか。
  •  ○ 保険会社に限らず、企業体の社会の維持・発展に対する貢献や責任が厳しく問われている時代である。今回の議論ではないかもしれないが、例えば将来具現化するであろう環境リスクをバランスシートに織り込むべきといった議論もあり、IAISの動き等を見つつ、将来的に環境リスク等を踏まえた規制のあり方を考えていくという視点も重要ではないか。
  •  ○ 長寿化が進展する中で、消費者の長期保障のニーズは引き続き根強いが、それに応えられる商品の選択肢がやや減ってきている印象がある。今後景気が良くなって標準利率が上向きに改定されたとしても、経済価値ベースの規制の導入が長期保障のニーズに応える商品の供給に影響してしまう可能性を気にしている。先行して経済価値ベース規制を導入した他国における消費者トラブルや提供商品の幅への影響等についてフィードバックしてほしい。
  •  ○ 消費者に長期保障のニーズがあることは理解するが、保険会社がコントロールできないリスクを取って結果的に破綻してしまっても困る。そうした点を直視した上で、現実的な解を見つけていくことが必要ではないか。
  •  ○ 金利リスクの存在はよく理解できる一方、保険料を抑えつつも、終身保障を提供していくための知恵はあるのではないか。一生涯の保障を提供できるのは生命保険会社だけであり、ニーズに応えていくという意味で頑張って欲しいという思いがある。
  •  ○ 金融システムの安定性をどれくらいのタームで見ていくべきなのか一度合意を取ったうえで議論する必要があるのではないか。
  •  ○ 規制・監督にテクノロジーを用いる所謂RegTechにも各国当局は積極的に取り組んでいる。当局による資本規制等に関するデータのタイムリーな収集・分析は一つの例だが、AIやビッグデータも用いつつ効率的・効果的な監督を行っていくよう早めの投資を行っていくことは重要ではないか。
  •  ○ 世の中で終身保険へのニーズがあっても、企業経営である以上、取れないリスクは取れないのであり、適切にリスクを計測するためのツールを導入しようというのが今の議論だと理解している。超長期債のマーケットは限られており、ALMを効かせようにも限界があるのが現状である。ALMを考えなければ、終身保険は契約者にとっても保険会社の利益の面でも良いものかもしれないが、少し考え方を変えてみて、経済価値ベース規制への移行が経営の仕方を考えるきっかけになってもよいのではないか。
  •  ○ 生命保険会社の内部管理においては経済価値ベースの考え方を既に導入し、商品戦略や投資戦略もそれを踏まえて進めている。一方で、規制として導入される場合は、100%(最低基準)を下回らないことが保険会社として最大の目標になり、内部管理のみの場合に比べて厳しくリスクを見ていくことになると思う。そうすると、終身保障へのニーズがある中で、資産運用も含めて様々な努力を行っているところ、変化が起こる可能性がある。そうした点から、意図せざる影響が実際にどのように生じていくのかも踏まえて検討を進めていくべき。
  •  ○ 保険会社には様々なステークホルダーが存在するが、規制の第一の目的は契約者保護であることを忘れるべきではない。そうした観点から、他国の消費者トラブル等も踏まえつつ、後ろ向きではない形で、意図せざる影響をどのように克服すべきかを議論をしていく必要があると思う。
  •  ○ サイバー攻撃や情報漏洩等の保険も提供されている中、現時点では見落とされているかもしれないリスクをしっかり見ていくことも重要。
  •  ○ 契約者保護はまさに社会としての重要な要請であるが、数十年後に契約者との約束を履行できるかを考えるのが経済価値ベースのリスク管理であると考える。資産・負債の完全なマッチングは難しいにしても、イールドカーブの移動の8割程度は平行移動であり、短い年限に債券の投資レンジを動かしてもある程度の変動リスクには耐えられる。そうした中で、どこまでをヘッジし、どこまでを資本に依存するのかという緻密なリスク管理戦略が求められる。長期の金利リスクをそのように上手く管理できるような会社が長期の商品を売れるようなあり方が本来は望ましいと思う。
  •  ○ サイバーリスク等のエマージングリスク、また流動性リスクや風評リスク等もICSの中には明示的に織り込まれていない。そうしたものを第一の柱と第二の柱の中でどう整理するか検討する必要がある。
  •  ○ 保険負債の計算においては、特に生保では前提条件のインプットが非常に重要。ICSやソルベンシーIIでも、計算プロセスのガバナンスについては書かれているが前提条件の詳細は規定されておらず、そこが現行制度とは大きな違いになる。その審査や監査は難しいものがあるかもしれないが、リスク計測の内部モデルのみならず、保険負債についてもそのインプットやモデリングは非常に大事である。
  •  ○ ニーズをカバーするために保険会社が商品を販売することは分かるが、その結果として負っているリスクが現状では分からなくなっている部分があるので、それを見えるようにする点では経済価値ベースのソルベンシー規制には意義があると思っている。
  •  ○ 保険負債の妥当性検証がクローズアップされることが多いが、退職給付負債等の保険負債以外の負債や資産サイドの評価についても実務上は様々な課題が生じうる。これらも含めて検討していくのがよいのではないか。
  •  ○ 経済価値ベースの評価においてはリスクの計算手法等も規定されるが、保険負債の現在推計の計算を間違えると比率そのものがおかしくなってしまう。その部分の信頼性の担保は非常に重要だと考えている。
  •  ○ 日本に導入する規制を考えると、低金利で起こっている計算上の問題や、保障性の商品をはじめ、保険商品の種類が米国や欧州と違う可能性があることも踏まえるべき。そうした場合に、ソルベンシーII等と議論のレベル感が異なるかもしれず、日本の実情に応じた考え方をどのように作成していくかを議論していく必要もあるのではないか。

以上
 

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