経済価値ベースのソルベンシー規制等に関する有識者会議(第2回)議事要旨及び資料

議事要旨

1.日時:

令和元年8月28日(水)15時00分~16時40分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館 12階 共用第2特別会議室

3.議事内容:

冒頭、事務局による資料説明(資料1)、森本メンバーによるプレゼンテーション(資料2)、川崎オブザーバーによるプレゼンテーション(資料3)が行われた。続いて、以下のような議論が行われた。

  •  ○ 内部管理の経済価値評価は、本来ヘッジないし狭義のALMを行う能力と意思によって異なるべきもの。一方、第1の柱(ソルベンシー規制)には統一性が求められるので内部管理の評価とは違いが出ることもある。内部管理は第2の柱(保険会社の自己管理と監督上の検証)で対応・レビューすべきもの、という認識は重要。
  •  ○   意図せざる影響を回避する観点からは、第1の柱は緩やかなものであっても構わないと思うが、あるべき原則に従う内部管理の経済価値評価の感応度と同じベクトルを持つべき。第1の柱においては、割引率にUFRや固定のスプレッドを反映させることはおかしくはないのではないか。また、ハイブリッド資本に厳しい適格基準を設ける必要も薄いと思う。
  •  ○ 経済価値とベクトルを揃えるという意味では、実質純資産規制をどうするかという問題は第1の柱の設計よりも影響が大きいかもしれない。これに手がつく場合には監督当局の本気度も業界に伝わるのではないか。
  •  ○ 経済価値ベースの内部管理において、回復可能と見込まれる場合にはリスクの資本超過は容認可能だが、判断根拠となった見通しの評価検証とPDCAがあるべきであり、第2の柱の中で重要なチェックポイントになるのではないか。
  •  ○ 経済価値ベース規制を超低金利下で導入すると、債務の確実な履行や配当還元の充実を損なう可能性があるという指摘は必ずしもよく理解できない。今はよくても後で困るような負債評価や配当還元はさせないことが経済価値の役割であり、真の姿である経済価値を見ないで、債務の確実な履行や配当還元の妥当性を判断できるのかという点は疑問に思う。
  •  ○   経済価値ベースの規制を通じて健全性を高めることが契約者のためになる面がある一方、それが緩やかでなく過度なものになった場合には、色々なリターンを得る手段が縮み、結果的に必要な資本の積み立てができなくなる可能性もある。そのバランスが非常に重要。
  •  ○ 現行の会計基準においては、比較的時価評価に近いIFRSでも、不動産やのれんは時価評価ではなく、また保険契約の将来利益(契約上のサービスマージン:CSM)もロックイン評価となっている。そう考えると、時価評価のもととなる数値として公になっているものはないため、規制を入れる際には、その作成や内部の検証が重要になってくる。情報が時間の経過に伴い劣化することや、正確性のトレードオフも考える必要がある。
  •  ○ 経済価値評価においては、評価損益に相当する部分が資本に組み込まれて株価や市場の金利によって変動するが、こうした変動性もスキームを入れる上で考慮すべき点。規制水準を下回るのはご法度ということになると、株価下落時に資本の毀損を避けるために更なる株式売却を行うことでプロシクリカリティが生じる、或いは当初から株式への投資を抑制するといった行動を起こす可能性がある。
  •  ○ プロシクリカリティのことを考えると、株式のリスク係数に対する手当や、第1の柱、第2の柱、第3の柱(開示規制)を使って素の経済価値ベースの数字と少し調整を加えた数字の2つを視点に持って規制していくやり方もあると思う。グランドデザインに関してそうした案を幾つか持ったうえで、様々なリスクシナリオを考えて、どのやり方であればうまくいくかを検討していくことも考えられる。
  •  ○ 経済価値ベースというのは見積もりの固まりであり、またそのやり方の幅やプラス・マイナスの両面があることを考えると、万能の指標はないと感じる。1つの指標で全てを解決する方向よりは、幾つかやり方を組み合わせることが考えられる。
  •  ○ 指標の変動性については、ソルベンシー規制の中で測るかはさておき、経営としては逃げられないもの。経済実態として、変動によるショックを受けるのはエクスポージャーを持っているからであり、そのポジションを自覚するという意味においては、デメリットというよりもむしろメリットであると思う。それを見たくないので変動しないように、というのは逆に危険な思想ではないか。
  •  ○ 「経済価値ベースを用いる場合に、1つの指標で全てを解決することは困難」という点については、経済価値ベース以外の指標も用いるという趣旨ではなく、経済価値ベースというコンセプトはぶらさないが、そこに色々な考え方が入り得るので、第2の柱等を使ってブラッシュアップしていく、と考えるべき。
  •  ○ 株式リスクの対称調整メカニズム等については、どの程度であれば意図せざる影響を与えないのかは非常に難しい。各社、或いは地域・国によっても異なることもあり得るので、例えばインパクトスタディのような形で、実際に導入した場合に何が起こるかを議論していくこともあるのではないか。
  •  ○ 第1の柱、第2の柱、第3の柱の位置づけが非常に難しいと思う。保険の場合は、バーゼル規制のようにある程度第1の柱で決めるというよりも、第2の柱が大きな役割を示し、第1の柱で決める部分は多少緩くならざるを得ないのかもしれない。第3の柱については、手法、パラメータ、エクスポージャー、デュレーションや投資方針等も相当程度開示して、仲介役に当たる人たちがよりエレメンタリーな人に説明できるようなあり方を考えるべきではないか。
  •  ○ ソルベンシー規制の計算手法が導入されると、物差しができ上がるメリットがある、ということだが、そのイメージをある程度共有しないと議論がまとまっていかないのではないか。その物差しがどの程度のものかを示すことで、マーケットとか保険会社に対する規制側の本気度の伝わり方が違ってくるのではないか。
  •  ○ 何のために資本規制をするかといえば、それは経営戦略の高度化ということではないか。リスクを取らないとビジネスは高度化していかないし、制度の設計において、保険会社の経営者に100%の本気度を求めるというメッセージを示すことが大事。例えば、毎年毎年一時的に100%未満となる状態が生じるのであれば、単に会社の営業店を廃止するといった話ではなく、経営者個人としてどういう責任をとるのか、そうしたガバナンスのような部分にももう少し踏み込んでいってもよいのではないか。
  •  ○ 2016年3月時点の国内フィールドテストにおいては生保の平均ESRが104%であったとのことだが、金利水準はそこからさして改善せずに世界的にも低金利に向かっており、今後金利水準が本当に回復するのかは分からない。回復することを考えて規制を作る、併用するといったことは危ないと思う。
  •  ○ 生保は今非常に難しい情勢にあるので、いきなり厳しいことをやったら大変だというのは分かる一方、そこをある程度しっかり押さえないと長期的に大変なことになる可能性がある。そう考えると、例えば第1の柱ではICSに従って資産の運用利回りも考慮して割引率を決めつつ、UFR等の緩い部分は第2の柱である程度厳しく見る、また情報開示を通じて会社の状況が分かるようにする、といったことが重要であると思う。
  •  ○ 生保については、過去からのレガシーで債券のマッチングができずに株を多く持っていた状況が現在に繋がっている。10年や20年前に超長期債市場をもっと整備し、生保が10年や20年前にきちんと投資できていれば、現在はよい状態にあっただろうと思う。その間も金利は下がり続けたのであって、今になってから「債券投資に大きく振り向けるとネガティブ影響がある」とは本来は言ってはいけないことであるように思う。規制を検討する側としては、少なくとも新規の契約については、経済価値を重視し、ERMをしっかりするインセンティブを付けるべきであり、それを何らかの形でしっかり書かなければいけないと感じる。
  •  ○ イールドカーブがフラット化している状況でも、UFRのためにEVやESRはそこまで下がっておらず、市場はそのためにむしろ安心してしまっている面もある。なお、EUで現在行われているソルベンシーIIの見直しの議論の中では、市場データからの補外開始点について、現行の20年ではなく30年からに補正すべきといった意見が出ている。先行導入したEUにおいてそうした危機感が出ていることについては、我々も認識しておくべき。
  •  ○ 特に負債の部分等について明確な計算方法が決まっていると、保険会社の計算や第三者への説明がしやすいという面がある。EVの計算等においては、原則はあるが具体的な計算ルールまでは決められないというのが現実的である一方、規制として導入する場合には何かしらのガードは必要だとも思う。
  •  ○ 経済価値のソルベンシーの目的は、リスク管理という話と契約者保護の面の2つがあるのかと考えている。前者については、リスクをとりながらマージンをコントロールしている訳であり、それをどう拡大して企業価値を向上させていくかが大事な考え方。一方、契約者保護を考えると、リスクが先にあってそれに対して必要なマージンを持っているか(マージンが小さくなっても、リスクが小さくなれば保険金支払は健全)という見方もできるかもしれない。両者のバランスが大事ではないか。
  •  ○ 100%が死守すべきポイントである一方、ソルベンシーⅡで見られるように200%を持つことが一般レベルとなると必要以上のマージンで資本効率を落としてしまうことも有り得る。規制を考えるに当たっては両方の観点が必要かと思う。
  •  ○ 100%を下回った時点で恥ずかしくて仕方がないといった感覚があるのかもしれないが、ソルベンシーⅡの枠組みの中では、100%はあくまでも回復計画を立て始める水準であり、アウトに相当するもう一段下の水準としてMCR(Minimum Capital Requirement)が設定されている。制度を考えていく中では、そのようなミニマムの指標などをきちんと作っていけば、これまで指摘されたような問題は回避できるのではないか。
  •  ○ 経済価値ベースの規制は定量化された世界が中心になるが、広義の企業価値やリスクといった概念には、優秀な人材や会社の評判、逆に会社のお客様本位でない取り組みなど、定量化できないものも含まれる。第2、第3の柱においては、定量化できないものや企業文化等も盛り込んで、経済価値ベースでは捕捉し切れない部分をしっかり説明する必要性があると思う。それがなければ回復途上にある生命保険会社が風評を浴びて、マーケットからとどめを刺されるといった事態も起きかねないと感じた。
  •  ○ 現行の基準から経済価値ベースの規制に移行して、過度に厳しい数字が出てきた場合には、消費者は不安を感じるのではないか。規制を導入するにしてもソフトランディングが望ましく、また第2、第3の柱の運用で、画一的な判断ではなく将来的に回復可能な状態か等も含めて見て、消費者が数字だけを見て慌てないようにすることが大事であると感じた。保険会社と契約者との間に立って説明する立場においては、よりわかりやすく説明するような工夫が必要と感じた。
  •  ○ 消費者は、ソルベンシー・マージンだけではなく、実質純資産、基礎利益、格付といった、ほかの指標もあわせて見ていっているところがある。指標について消費者が過度に不安にならないように、数字については何らかの読み込み方やアウトプットの仕方の工夫を考えていくことが大事であると感じた。
  •  ○ 第1回目の当局のプレゼンの中には「動的な監督」という言葉が出てきたが、保険会社がリスク管理を高度化していき、そして当局もそれをしっかり見ていける形が第1の柱に入ると、PDCAのような形で回っていくのではないかと思う。
  •  ○ 保険会社の一部は自社の基準で計算・開示しているESRに加えて、当局が規定するESRが出来ると、どちらが重要なのか、正しいのかということになりかねない。当局指定の標準的な方法に沿ったリスク測定をすればよい、と保険会社が思考停止してしまうことは避けるべき。比較可能性や理解可能性の問題もあるだろうが、そうしたものを第1の柱でできるだけこなしていける規制が望ましいと思う。
  •  ○ 第2の柱については、エマージングリスク等の定量化することが適切でない、或いは正しいのかが誰にも分からないものや、流動性リスク等の資本との対比ではない形で把握していくことが適当なもの等を見ていくのではないか。第3の柱は、定量、定性も含めて第1、第2の柱でカバーしている部分について、ソルベンシーIIの報告・開示のように、マーケットや当局との対話を踏まえて回して実効性を持たせていくという柱だと考えている。
  •  ○ 金利が当たり前のように存在していた世界からはレジームが変わってしまったのかもしれず、その中でできることを考えていく必要がある。今の市場を考えた場合に消費者が期待している商品が提供可能なものなのか、一時的に提供可能な場合でも、環境が変わった場合にそれを提供し続けることが正しいのか、という視点が必要だと思う。
  •  ○ 規制としての導入が運用収益の低下につながり得るという点については、経済価値でみると違ってくるのではないか。企業価値としては大きく毀損している場合に、見た目上の数値はうまく繕えているので配当を出せるという現象が、本当の意味での安心を提供しているのかという部分は気になる。
  •  ○ 回復可能性の判断が重要という指摘はその通りだが、生保の場合はその期間をかなり長く捉えることが可能になる。また、一時的な100%抵触が許容されない訳ではない、という点も理解しているが、分かりやすいがために数字を並べて判断されてしまうことも起こり得ると思う。例えば実質純資産等も含めた様々な指標の1つとして(経済価値ベースの指標を)示し、その意味するところをマーケットに理解してもらえば大丈夫なのだろうが、社内であっても経済価値の話をすることはなかなか難しいこともあり、(外部にも)十分に理解されない可能性についての危惧は持っている。

以上
 

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