経済価値ベースのソルベンシー規制等に関する有識者会議(第4回)議事要旨及び資料

議事要旨

1.日時:

令和元年10月21日(月)10時00分~11時45分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館 12階 共用第2特別会議室

3.議事内容:

冒頭、事務局による資料説明(資料1)、板場オブザーバーによるプレゼンテーション(資料2)が行われた。続いて、以下のような議論が行われた。

  •  ○ IAISではPCRにフォーカスが当たっているが、保険会社へ多大な影響があるMCRについても、PCRとMCRの使い分けや、その違いをどう周知するかも含め議論すべきである。また、規制導入までの猶予期間をどうするかについても更なる議論が必要である。
  •  ○   レベルプレイングフィールドの観点から、IAIGsと非IAIGsとで規制を分ける必要はない。
  •  ○ 行政側の体制整備は非常に重要なポイントである。ICS・ComFrame等の導入や、監督の新たな方向性として示された探求型対話など、保険監督の在り方が変わっていくと、監督者として今までと違った能力や資質が必要となるため、行政も早め早めに準備すべきである。
  •  ○ 金融機関が持続的に成長しなければ健全性の確保も達成できないため、金融庁は「見える化と探求型対話」を通じて、パートナーとして金融機関の将来を考え、持続的な成長を後押しする必要がある。「見える化と探求型対話」は第2の柱の監督者の検証部分に含まれると思うが、具体的に資本に関する監督と関連付けてどのように行っていくかも検討する必要がある。
  •  ○ 気候変動リスクに関して、行政として「見える化と探求型対話」を進めるために、定性的、定量的なストレステストの導入を検討しても良いのではないかと思う。
  •  ○ 経済価値ベースの計算は複雑であり、全社に同じレベルを求めていくと、小規模な保険会社の場合はデータ整備やリソースについての課題が出てくると思う。規制導入においては、準備に必要な時間や外部のリソースの使用等も含め、実務的な課題についても検討する必要があると思う。
  •  ○ 第2の柱で保険会社の状況を継続的にウォッチし、早期の経営改善を図っていくということであれば、第1の柱に抵触するようなケースは主に経済環境に起因するイメージだろう。経済環境が急速に悪化した場合に備えた措置として、株式リスクの対称調整メカニズムと回復期間に柔軟性を設けるといった考え方があったが、両者を導入すると二重に緩和措置を設けるような印象を受ける。規制導入時の短期的措置とするのか、それとも恒常的措置とするのかを考えなければならない。
  •  ○ MCRについては、ソルベンシーIIのようにPCRと信頼水準を別にすることで運用する方法もあると思うが、繰延税金資産の回収可能性や無形資産(のれん等)の評価方法で調整するという方法もあるのではないか。
  •  ○ 実質資産負債差額規制は経済価値ベースの動きとは上手く整合しないケースもあるため、存置すると実務的には判断が難しくなる側面があると思う。
  •  ○ 現行規制が足枷になって中々リスク削減が進まないというのは実務でもよく聞かれるので、そこの規制改革が急務というのは同感である。
  •  ○ 基本的に経済価値の考え方を導入した場合、実質資産負債差額も経済価値で見るということだと思うが、経済価値では保険負債がマイナスになることもあるため、デポジット・フロアを入れる・入れないとの議論もあると思う。
  •  ○ UFRは甘いといった議論がこれまで出ているが、水準の問題と手法の問題は切り分けて議論すべきではないか。市場で計測できない超長期の金利に何らかの前提を置くことは必要であり、一つの手法としてUFRを用いることは考えられるのではないか。一方で、UFRが3.5%前後というと現在の環境では高い水準と感じるが、ハイパーインフレで金利が10%程度になった場合は非常にコンサバティブな水準ということになる。
  •  ○ 内部モデルを維持するための金銭的、人材的リソースの面での負担感は非常に重いが、標準モデルでの計算は業界全体の平均なので、リスク管理の高度化の観点からは、保険会社独自のビジネスモデル等を考慮した内部モデルを使用していくことは避けられない道だと思う。結果として内部モデルで計算した方が必要資本量が少なくなることは、保険会社に対するインセンティブであり、内部モデルを推進していくためには必要である。
  •  ○ これまでは、意図せざる影響があるから規制導入は慎重にすべきとの意見と、意図せざる影響があるからこそ早く導入すべきとの意見がパラレルとなっている印象だが、いつまでも両論併記的な議論を続けるべきではないと思う。経済価値ベースを導入すると市場が振れると自分たちも振れてしまって困るという意見があるが、その現象自体は事実であり、不安だから見ないほうがいいと言っていては、永遠にこの議論が続いてしまう。「意図せざる影響」という言葉をどの観点で使うかを明確にしていったほうがよい。
  •  ○ 事務局資料にあった「経済価値ベースの規制へ移行した場合に、保険会社の内部管理をどのように高度化すれば良いか」という論点は、問の立て方が逆であると思う。規制の有無に関わらず内部管理上は経済価値で見るべきであり、また外部のステークホルダーも経済価値の観点から保険会社の健全性や持続可能な収益性という点を見ていくべきである。それを促すような第1の柱や第3の柱をどう作っていくか、という議論の方向性がより適切だと思う。
  •  ○ ソルベンシーⅡにおいて第1の柱で内部モデルを使う場合は、ORSAとは別にバリデーションレポートを作成する必要があり、内部モデルが正当に使われていることの証明が求められる。
  •  ○ 経済価値ベースのリスク管理を推進する上での大きな障害は、実質資産負債差額規制と金利水準への心理的バイアスの2つだと考えている。第1の柱を経済価値ベースとするのであれば、実質資産負債差額規制については廃止もしくは定義変更が必要。もう一つの障害である金利の心理的バイアスへの対策としては、金利の見通しと投資行動のPDCAサイクルを第2の柱で検証していくことが有効と考える。
  •  ○ ICSはあくまでIAIGsに向けて検討されたものであるため、非IAIGsにも適用することとなると、何らかの経過措置も含め、それに応じた追加的な検討が必要だと思う。
  •  ○   実質資産負債差額は、解約返戻金もしくは全期チルメルベースの標準責任準備金を上回る時価ベースの資産を保有しているかという指標であり、金利リスクへの対応というよりも別のものを見るためのものと理解している。標準責任準備金制度の中では非常に重要なパーツであり、一定の修正は必要かもしれないが、存置する方向ではないかと思う。
  •  ○ 仮にICSが適切なものとならなかった場合、国内の保険契約者保護の観点からは必要な調整を行う余地は残すべき。ただし、IAIGsとなる会社にとっては、国際規制と国内規制が異なることは困るため、最終的にはICSがどのような内容になるか次第だと思う。
  •  ○   経済価値ベースのリスク管理は国際的なコンセンサスとなりつつある一方、未だ経済価値ベースの資本規制については議論が続いているものと認識している。規制導入に向けた具体的な議論だけでなく、適用される資本規制が日本として適切かどうかとの議論も必要だと思う。
  •  ○ 内部モデルの承認には相当の時間とコストが掛かるので、既に導入している欧州の保険会社との比較で、相対的に日本の保険会社は厳しい状況になるのではないか。
  •  ○ ICSをベースに国内規制の在り方を検討していくことはその通りだと思うが、米国の動向も踏まえると、ICSはアグリゲーションアプローチのようなものも包含する緩やかな枠組みとなる可能性もある。ICSの統一が図られない場合であっても我が国が新規制に自動的に移行する、ということではないと理解している。
  •  ○   株式リスクの対称調整メカニズムやボラティリティ調整の枠組みについては今後のICSの議論の中で実現していくことが必要であり、もしこれが国内の議論の中で必要だということになるのであれば、日本としてもICSに反映されるように働きかけていくことが必要ではないか。
  •  ○ 内部モデルは考え方の違いで結果が大きく変わるところがあり、例えば金利リスクの計算方法であればダウンサイドのストレスの設計や相関行列の作り方等で大きな差が出る。こうした内部モデルの作り方について継続的にモニタリングし、ガイダンスを作っていくことは非常に重要だと思う。
  •  ○ 実質資産負債差額規制については、資産負債のデュレーション・ミスマッチを改善するインセンティブに繋がらないどころか、資産の長期化を行うとむしろよくないことが起きるという説明に使われるケースもあるので、改編して使うという選択肢はなく、廃止がよいのではないか。
  •  ○ ICSはIAIGsに対する連結ベースの基準であり、それを日本の単体の保険会社に適用する場合、親会社への出再など微調整すべき点は出てくると思う。
  •  ○ 3本の柱の位置付けについて、第3の柱は単なる情報開示ではなく、コーポレートガバナンスが重要である。ステークホルダーや市場への規律付けのために情報開示が必要ということであれば、第1と第2の柱のベースにあるということを示すことは重要な姿勢だと思う。
  •  ○ 昨今の自然環境や経済環境の状況を踏まえると、自然災害に関するリスクや地政学的なリスクなど、従来は第2の柱として整理していたリスクについても、第1の柱で整理しなければ経済価値ベース規制の根幹がぶれるのではないか。
  •  ○ 実質的な経営体力を超える長期保障商品を提供し続けることはリスクを将来の契約者に転嫁することを意味する。そうした世代間のリスク転嫁の問題を理解した上で、本当の消費者ニーズに応える商品とは何かを導き出すようなシステム作りも必要だと思う。
  •  ○ 経済価値ベース規制を導入することは全体的な流れとして決まっており、いつ導入するのかを結論としてはっきり打ち出すべき。米国の動向に関わらず、2025年に経済価値ベースのICSが出来ることは決まっている。2025年から更に5年や10年といった準備期間を取っては大幅にタイミングが遅れてしまう。必要最低の準備期間以外の移行期間は設けるべきではない。これから5年間のモニタリング期間に、保険会社、行政両方ともに準備をし、2025年以降に速やかにICSに基づいた経済価値ベースの規制を導入すべきである。
  •  ○ 一見対立しているように見える、経済価値と契約者ニーズに応える商品の提供というのは共存できるものだと感じており、適切な落としどころを探る努力は今後も続けていくことが大事だと思う。
  •  ○ 連結ベースの規制については、海外にグループ会社を持つ保険会社に対して、日本としてどのようにグループベースの計算をさせていくのがよいかを考えていく必要がある。
  •  ○ 現行規制と経済価値ベースの内部管理が逆の方向を向いている面もあるため、(経済価値ベースの規制に移行していく方向性であるにせよ)現行規制がこのままで良いかも、今後考えていかなければいけないと感じた。
  •  ○ 実質資産負債差額は、財務諸表を見るための補強材料として機能している部分があるので、そうした観点からの意義はあるのではないか。
  •  ○ 様々な異なる基準があるために、保険会社に本来必要のないリスクやコストが発生している可能性がある。PCRとMCRを同じ基準で評価すべきかどうか、経済価値ベース規制を導入する中で実質資産負債差額制度を存置すべきかどうか、単体とグループ、IAIGsと非IAIGs、色々な観点があると思うが、ダブルスタンダードで見ていくと非常に無駄なコストが掛かる可能性があることは議論する必要がある。
  •  ○ 規制が内部管理の高度化を促すようなインセンティブとなることが望ましく、そうした観点から第1の柱や第2の柱を考えていく必要があると思う。
  •  ○ ICSベースで国内規制を検討していくことには賛成だが、ICS自体もモニタリング期間で適宜変わっていくことが想定されている中で、米国や欧州などの海外の動向も踏まえて検討していく必要があると思う。
  •  ○ 各国によってマーケットの状況や事情が異なるため、全く同じ基準で上手くいくのかという論点があり、それが米国のアグリゲーションメソッドという発想に繋がっていると考えている。
 

以上
 

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