経済価値ベースのソルベンシー規制等に関する有識者会議(第5回)議事要旨及び資料

議事要旨

1.日時:

令和元年11月18日(月)16時00分~17時50分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館 12階 共用第2特別会議室

3.場所:

第5回会合では、構成メンバー等に加え、下記3名がオブザーバーとして参加

 秋山 泰宏  プルデンシャル・ホールディング・オブ・ジャパン株式会社
        シニアオフィサー兼チーフリスクオフィサー
 泉 祥子   メットライフ生命保険株式会社 執行役 常務 チーフリスクオフィサー
 菱川 摩貴  アフラック生命保険株式会社 執行役員 国際情報室長

                             (敬称略・五十音順)

4.議事内容:

冒頭、事務局より、「保険監督者国際機構(IAIS)によるプレスリリース『IAISは、国際的に活動する保険グループの監督及び保険セクターにおけるシステミックリスク削減のための初のグローバルな枠組みを採択』の公表について」を紹介した後、資料説明(別添資料)が行われた。続いて、以下のような議論が行われた。

  •  ○ 保険監督者国際機構(IAIS)によるICS version2.0が国際的な規制当局者間で合意されたのは素晴らしいことである。その内容を真摯に受け止め、日本として何をすれば良いのかを再確認し、本会議での議論に活かしていくべきだと思う。
  •  ○   事務局資料については、簡潔かつ包括的に今までの議論をまとめて頂いて感謝する。この資料で一番重要なポイントは、資料p.3の「経済価値ベースで資産・負債評価を通じたフォワードルッキングな経営管理・リスク管理を行うことの意義について賛意が示された」という点と「内部管理をより整合的として保険会社が内部管理を更に高度化していくためのインセンティブとする」、「中長期的な健全性の確保を通じて契約者保護を図りつつ、規制・競争環境を整える」という説明部分である。経済価値ベースの考え方は良いものであるから規制として導入するという点は、これまでの本会議での議論の集約であり、再確認することは非常に重要である。
  •  ○ タイムラインについても、良いものであるから出来るだけ速やかに導入するというのがポイントであり、2025年には確実に導入すると決めるべきである。ICS version 2.0で既に技術的な内容も含め方向性が決まっており、これから極端に変わることはないため、日本の特殊性を踏まえた調整が必要との点は考慮した上で、2025年の導入を前提に作業計画を作ることが重要である。
  •  ○ 内部モデルについては、特に大手の保険会社は既に導入しており、先進国の保険会社でもグループベースで有効に使用している社が多いため、事務局資料記載のとおり、リソースの問題等に留意しつつ前向きに検討していくことが大切である。
  •  ○ IAISではMCRに関する議論はなされないため、(本会議でMCRに関する議論を行うことは)今後制度を作る上で重要なポイントだと思う。また、第2、第3の柱で気候変動リスクをしっかり捉えておくことも重要である。
  •  ○ 重要なポイントは3つあり、まずは経済価値ベースの規制を導入することを皆ではっきり合意すること、次にいつまでに導入するかのタイムラインを定めること、そして、最後がリソースである。保険会社や行政はこれから数年間、規制導入にどれくらいのリソースが必要となるかを考え、人的資源や予算等をしっかり準備することが重要である。
  •  ○ 規制導入のスケジュールは重要なポイントであり、しっかりと計画的に規制導入への準備を進めていくためには、具体的に2025年といった導入時期を明確化することの必要性は十分理解する。一方で、ICSがほぼ確定したとは言いつつも、米国の状況を踏まえ最終的に想定どおりとならなかった場合、保険会社においてはシステムなどのリソースが追加的に必要となるほか、一旦実施した商品戦略や投資戦略の再調整が必要となる可能性もある。仮に2025年と設定した場合でも、国際的な議論の動向やIAISがモニタリング期間中に実施するインパクトアセスメントの結果等も踏まえ、導入の2~3年前に改めて検討を行うといった共通認識がある方が望ましいと思う。
  •  ○ 米国がアグリケーションメソッドを適用し、欧州もICSとの同等性を主張しソルベンシーIIを継続適用する可能性がある中、ICSが1つの国際統一的な基準として適用される場合と、各国の規制がICSを軸とした同等性により緩やかに繋がる場合の2つのケースを想定する必要があると考えている。基本的には前者を想定して議論すると、IAIGとなる保険会社にとっては国際規制と国内規制が異なることは困るため、日本での適用を考えた場合に必要な内容については、ICSに反映していくことが基本だと思う。一方で、後者となった場合は、各国の特性を踏まえた規制が一定存置されることとなるため、日本においてもICSとの同等性が認められる範囲内で日本の状況を最大限踏まえた規制を考えていくことが必要であると思う。ただし、いずれの場合においても、ICSのMAV手法をベースに基本的なコンセプトは維持した上で、国内規制として必要な調整を検討していくことはその通りだと理解する。
  •  ○ 今回の資料は非常に有意義なものだと認識している。資料p.3の「経済価値ベースでの資産・負債評価を通じたフォワードルッキングな経営管理・リスク管理を行うことの意義」という点については、経済価値の考え方が正しいものだと認識できているという点は強調すべきだと思う。ICSでは合意形成過程の中で様々な妥協点もあるため、ICSでこう決まったから我々もこうするというのではなく、より正しいものとの意識を常に念頭に置く必要があると思う。
  •  ○ (規制導入を)拙速に進めるのは良くないのはその通りかもしれないが、タイムラインがないと前に動かないのも事実であると思う。ある程度の正しい方向性が見えている中で、現実に活用していくためにもタイムラインを設定して前に進めることは、良いものだから入れるとの観点である以上、非常に重要だと思う。
  •  ○ 第2の柱について、「議論の拡散を防ぐ観点からは健全性評価に係る部分について主に焦点を当てるべきではないか」(資料p.13)とあるが、健全性は経済価値で評価するものの経営上の意思決定等は全く異なる指標を使うことでは本来の趣旨と異なる。健全性評価のみではなく、リスクベースの経営管理にフォーカスし、それを特に第2の柱の中で見ていくとの発想が望ましいと思う。
  •  ○ 今回資料の大きな方向性は非常に賛同できるが、実務的な観点からは、ピュアなICSを目指し、ICSの確定を待って国内基準を制定するのか、それともICSと同等な規制を導入するのかとの方向性については、大幅な手戻りが発生する可能性もあるため、早い段階で決める必要があると思う。また、ICSと国内基準が異なるものとなった場合、保険会社にとっては過大な負荷や非効率な運営となってしまう。
  •  ○ 今後具体的に検討しなければならない論点は大きく分けて3つあると考えており、1つ目はITインフラや人的リソースの問題である。保険会社により若干温度差はあるが、概ね2~3年程度は準備に時間を要すると思う。必要経費の確保や人事異動の構想、ガバナンス体制の構築など、早めに意思決定を行い対応しなければならない課題がある。2つ目は、中小規模の保険会社における対応であり、例えば、内部モデルには相当な労力や人手がかかるため、今後議論を進めて行く上では考慮する必要があると思う。3つ目は、保険契約者への周知徹底をどのようなタイミングで行っていくかである。ESRの水準は現行のソルベンシー・マージン比率(SMR)とは大きく異なるため、その使い方・考え方をどう評価したら良いのかは難しい部分があり、そこをどうタイムラインに乗せるかが重要である。いずれにせよ、様々な課題をしっかり積み上げて目標にたどり着くプロセスが必要であり、そうした意味でもタイムラインをしっかり作ることは重要だと認識している。
  •  ○ 資料の全体的な方向性については非常に同意できるが、細かな点も含めコメントさせて頂きたい。資料p.3に「規制を内部管理とより整合的とし」とあるが、内部管理は各社様々でレベル感も異なっているため、「規制と内部管理の整合性をより考慮しつつ開発する」ということだと思う。また、「内部管理を更に高度化していくためのインセンティブ」とあるが、ここで言う「高度化」とは、気候変動リスクやテロリスクなどの今後見込まれる新たなリスクに機動的かつ的確に対応したリスク管理態勢を構築することだと理解しており、こうした点は第2の柱でカバーされるものと理解している。一方、内部モデルで新たなリスクを追加・計測していこうとするとリスク量が増えてしまうため、どのようにインセンティブに結び付けていくかは今後の検討課題だと思う。
  •  ○ タイムラインは重要な観点であり、具体的なタイムラインを示し、それに向けての議論を進め、必要があれば修正するとの実際的な作業をすることによって前に進めていけると思う。
  •  ○ 現在の日本の会計基準に基づく財務諸表では経済価値ベースのソルベンシーは計算できないため、経済価値ベースの貸借対照表を別途作成する必要があり、実務負荷が高い。会計基準の見直しの方向性次第ではあるが、リソースや実務負荷の軽減に繋がる余地があるかもしれないため、今後タイムラインを考えていく上では会計の動きについても考慮する必要があると思う。
  •    ○ MCRについて、ソルベンシーⅡ規制ではPCR(SCR)の25~45%相当である中で、「現行制度においてはSMRの0%が該当」(資料p.11)との記載があるが、0%だと全くバッファーがないように見えてしまうため、今後検討する上では考慮すべき観点だと思う。
  •  ○ 第3の柱については、開示により市場規律を入れるということだと思うが、その頻度は実務負荷やリソースの観点から重要になると思う。経済価値ベースの指標は経済環境により大きく変動するため、できるだけタイムリーな情報を把握しておくことが監督上は重要であり、開示の頻度とどれくらいの所要期間で開示できるかという点は、実務負荷も含めバランスを取りつつ考える必要がある。
  •  ○   今回の資料については非常に満足している。タイムラインをしっかり書くことが必要という考えには私も賛同する。資料p.6に「諸外国との競争条件も踏まえつつ検討」との記載があるが、欧州や豪国などでは既に経済価値ベース規制が導入されている。まだ導入されていない国だからといって、ERMがやりにくい長期の生保事業をやろうとの方向に走ることが適切なのかも考えなければならない。日本の保険グループに投資している投資家の視点から考えると、他国の状況を理由とすることがどこまで通るのかは頭に置いておく必要がある。
  •  ○ 第3の柱について、ソルベンシーⅡのSFCR(Solvency and Financial Condition Report:ソルベンシー財務状況報告書)では非常に細かい内容まで記載されている。これと同じものをやるべきという訳ではないが、(経済価値ベース規制となると)おそらく投資家は感応度やリスクの内訳など、かなり細かい資料を求めてくると思う。既に株式会社では自主的にESRやEV等を開示しているが、説明が不足している会社については投資家から見て実態が分かりにくく苦労している。また、経済価値ベース規制が導入されると、負担感もあるため、欧州同様にEVの開示を止める会社も多いのではないかと思う。そうした場合、EVで開示されているような補足的な情報はESRでも最低限開示すべきであり、感応度や、分母・分子の動き等は開示して頂きたいと考えている。「開示側の負担感を考慮しつつ」(資料p.14)との記載があり、非上場の保険会社や外資系の子会社については一定の配慮が認められるべき、ということは理解するが、上場会社についてはディスクロージャーは非常に重要であるということを改めて強調させて頂きたい。
  •  ○   保険契約者への説明が大変になるとの意見が多いが、だからといって規制導入を遅らせた方が良いという問題では決してない。現行SMRが導入された時も本当に大きな変化であった。現行SMRでは、むしろミスリーディングとなる場合や、捉えられないリスクがあるし、また現行SMRであっても高ければ良いというものでもない。(保険契約者への説明の大変さが)経済価値ベース規制導入の制約条件にはならないと思う。
  •  ○ これからロードマップを作っていくに当たって、2025年との数字を出すことは大事。ICSがそうだからということではなく、国内的にも5年間程度の猶予期間を設けた設定とも理解できる。
  •  ○ 米国は小規模な保険会社が多いため、アグリゲーションメソッドのような議論をせざるを得ないとの背景があると思う。本会議でもICSについて議論するのであれば、中小の保険会社の方々からの意見というのも聞いておく必要があると思う。
  •  ○   妥当性検証の枠組みについて、本会議で決める内容はどこまでで、日本アクチュアリー会で決める内容はどこまでなのか、または今後様々なテストを実施しながら決めていくのかを明確に分けるべき。そうしないと、ロードマップや役割分担を考えていく上では大変になると思う。
  •  ○ 第3の柱について、単にディスクロージャーすれば良いということではなく、経済価値ベースとなった場合に、実際のリスクやバッファーはどの程度で、それに対応する資金がどの程度あるかを見えるようにするのが最終的なディスクロージャーであり、それを投資家も知りたいと思う。また、投資家だけでなく、消費者もこうした点がはっきりしていないと商品が選べない。もしかすると監督当局に提出する内容とそれほど違わないものを様々なステークホルダーに開示していくのかもしれないが、それを直接消費者に開示したのでは分からないため、間に入る機関というのは必要。また、消費者教育も必要である。
  •  ○ 経済価値ベース規制の意義とタイムラインについて明確化されている資料であり、大変重要な意義のある論点整理だと思う。内部管理については、経済価値ベースのリスク管理の観点として重要になるのは、リスクの制御スタイルの違いであると考える。リスク制御というのは、資本で吸収するか、ヘッジ・ALMで移転・複製するのかのどちらかであり、どちらに重点を置くかでリスク管理のスタイルは違ってくる。内部モデルもそうしたリスク管理とセットであるべきと考えており、例えば、ヘッジを重視するのであれば、当然にUFRなどのイールドカーブに人工的な加工をするものは使わない。資本を重視するのであれば、(UFRの使用も)問題ないのかもしれない。
  •  ○ 内部モデルと規制のモデルが不一致であることは大前提であり、逆に全ての保険会社が両者をイコールにしていると、内部管理高度化のモメンタムを損なうことになる。そのため、ICS、内部管理及び国内規制のモデルが一致しないことはそれほど問題ではなく、その違いは容認すべきではないかと思う。加えて、監督措置(PCR)は過度に厳しいものとしないと資料に記載されているが、そうであるなら一層、各社が独自に内部管理と内部モデルの高度化を進めるモメンタムを支援する仕組みが必要だと思う。
  •  ○ 保険会社の方々が一番心配されているのは、制度が導入されESRの開示が始まった時に、ESRが不安定になることによるレピュテーションリスクだと思う。そうであるならば、今後ESRの制御能力を高めるために様々な準備をしていく必要があり、その意味でもタイムラインは重要である。導入時期に向かいシステムを作り上げることも大事だが、制御能力を高めるために、ALMやERMの高度化を進めていかなければならない。
  •  ○ 実質資産負債差額について、「金利上昇時の解約に備えて解約返戻金をカバーできるかを判定する指標」(資料p.11)とあるが、過去にデフォルトした保険会社であっても半分も解約は発生していないため、全資産と全員解約の解約返戻金が釣り合うかとの基準は厳し過ぎると思う。また、実質資産負債差額がマイナスとならないかどうかは、ヘッジ重視型の内部管理を進めた場合の懸念であり、その場合は、実質資産負債差額を開示するだけでもレピュテーションリスクを惹起し、内部管理の高度化のブレーキとなる可能性もあるため、こうした点も検討すべき論点だと思う。
  •  ○ 現在、米国では、会計やPBR(Principle Based Reserving:原則主義ベースの責任準備金)において様々な制度変更の取組みが行われており、こうした背景を踏まえ、米系の保険会社でもリソースをどのように割いていくかが課題となっている。色々な尺度が出てくるとどうしても意思決定や内部管理が複雑化し、内部管理の高度化に対しブレーキとならないかという点で統一性という観点は気になるところである。
  •  ○ 米国の保険会社の投資は社債が主であり、金融危機のようなマーケットに極端な事象が起きてきたときに資産価格に大きなノイズが見られたという問題がある。そうした点を踏まえれば、経済価値ベース規制が保険会社にとってどうあるべきかというのは、まだ議論があるところではないか。
  •  ○ ICSをベースに国内規制を検討していくとの方向性について、日本独自の手法を固めICSとはバラバラになっても進めるべきか、若しくは日本の特性を捉えきれていない部分はIAISに働きかけた上で是正を促して行くのか、ここのスタンスの違いは大きいと思う。具体的には、技術的論点で言えば、IAISが公表している保険リスクのリスク係数は非常に数値が高いが、その中で大量解約リスクや経費リスクなどは、日本の水準と比べて妥当かどうかは議論が必要だと感じている。
  •  ○ タイムラインについて、(経済価値ベースが)制度化されるとなると、投資家だけでなく、消費者に追加の情報を提供するという意味でも格付機関の動向等も考慮に入れる必要がある。IAISでは2023年から2024年にインパクトスタディを行うこととしているが、こうした議論を日本ではどこにポイントを絞り、どのタイミングでやっていくかは論点だと感じている。
  •  ○ 国内独自にリスク係数のカリブレーションを行う場合、例えば、第三分野保険のリスク計測については、会社によって商品の取扱量が異なるため、データ量に応じて信頼度を反映するなど、個社の特性を考慮した方法が考えられるのではないか。
  •  ○ 規制導入のスケジュールについて、ICSがどう進もうが国内ではある程度進めていくべきという考え方は非常に良く理解でき、その通りだと思う。一方で、ICSをPCRとして適用する前にIAISではインパクトスタディを行うほか、米国規制監督当局は、アグリゲーションメソッドが認められた場合、モニタリング期間中もIAIGにはICSに基づいた資本比率の計算提出を強制しないとしている。そうした中で、スケジュールについては、モニタリング期間中のICSの検討状況を踏まえながら慎重に進めていくべきだと思う。
  •  ○ 監督措置のあり方については、様々な点を考慮頂いていると思う一方で、一定期間中に健全性の回復を求める場合は、ソルベンシーⅡなどの国際的な規制を参考として無理のない期間設定をして頂きたいと思う。
  •  ○ 米国の監督者や業界の間でよく出るのが、保険監督というのは資本規制のような定量的な要件だけではないということである。ComFrameでも300ページのほとんどが定性的な監督の部分であるように、第1の柱よりも第2、第3の柱が重要ではないか。
  •  ○ 米国でアグリゲーションメソッドが出た背景については、米国の保険業界は裾野が広く、損害保険会社で2,500社以上、生命保険・年金保険会社で800社以上あるほか、それぞれに大手社・中小社があり、国際的に活動している社もいれば、そうでない社もある。それが各州独自に、それぞれの消費者ニーズに応える形で日々切磋琢磨し競争しているため、こうした状況の中でICSはワンサイズフィッツオールとして受け止められがちで、各州での競争環境に影響を与えるとの懸念から、抵抗を感じる会社もあるのではないかとの印象を持っている。
  •  ○ 欧米では、自国の保険会社が消費者ニーズに応え続けるためにICSが適切かどうか、国際競争上不利にならないようにするにはどうすべきかなど、公共政策の一環として資本規制を捉えている側面もあるため、国内規制を検討する上でもそうした点は考慮すべきだと思う。
  •  ○ ソルベンシー規制上実質資産負債差額が撤廃されるとしても、法定会計上の責任準備金は現行のまま保持されることとなると、内部管理上はそこを見ざるを得ないため、会計ベースの部分についても一定程度配慮していかないと実効的な良い制度にならないと思う。
  •  ○ 現在欧州ではソルベンシーⅡの開示に関するレビューが行われており、今後ポリシーホルダーセクションとノンポリシーホルダーセクションに分けて開示していく方向性が提案されている。これは(先行事例である)欧州の経験に基づくものであり、一定程度参考になるのではないか。
  •  ○ ソルベンシーⅡでは2020年のレビューに向けて様々な議論がされているが、国内で新規制を導入するに当たっても、2025年の次のどこかの時点で、一旦それまでの経験を踏まえて見直すといった点まで含めたロードマップを策定するとの考え方もあると思う。
  •  ○ (新規制下においては)経済価値ベース指標のみに機械的に依存するのではない多面的な監督の枠組みを確保することが重要であり、実質資産負債差額はその1つの方策としての可能性はあると思う。仮に廃止するとことになった場合、経済価値ベースの指標のみでデジタルに会社の状況が判断されることがないように、標準責任準備金制度や商品認可制度なども含め多面的な監督の枠組みを確保する必要があると思う。現行制度は緩いとの意見もあったが、低金利環境下であるため経済価値ベースの指標は厳しいものとなっている一方、逆に金利が上昇した場合には非常に楽観的なものとなり、解約返戻金といった契約者の持ち分を確保できない状況となる可能性も否定できない。そうした意味でも多面的な枠組みが重要だと理解している。
  •  ○ タイムラインを設けることに関して、色々な立場の方からの意見を踏まえ、適切な時期を設定されるのであれば異論はないが、保険契約者の信頼を揺らぐような案件も出て来ている世の中であるため、保険契約者への周知・考え方・伝え方に関しては、心配りする形で進めていく必要があると思う。
  •  ○ 妥当性検証の枠組みにおける保険負債評価のガイダンスについては、各社様々なモデルや考え方が出てくる部分であり、1つに定めて良いものではないと思う。ガイダンスができることで却ってPDCAサイクルや高度化が進まないのでは意味がなく、保険会社の特性や自主性が反映されるようなものを作っていく必要がある。他方で、(今回のフィールドテストの一環として作成している)保険負債の検証レポートにつき、具体的な記載内容が分からないと作成できないという保険会社もあり、そこに対するサポートは必要であるため、どこまで踏み込むかは今後の検討課題だと思う。
  •  ○ 2025年といった一定程度のタイムラインを引いて、議論を深め準備を進めるのは大事なことだと考えており、非常に良いものだと思う。準備の観点からは、保険負債の数値が計算できるという以外に、保険会社が商品開発、資産運用、保険ポートフォリオをどうしていくかとの準備もあると思う。そうした時に、先ほど実質資産負債差額の話も出たが、現行規制の中に逆に(経済価値を)阻害するようなものがあっては逆効果となるため、何が必要かとの議論は今後していくべきだと思う。一方で、会計については現行のものが存続されるため、会計面で必要なものは何かを分けながら議論していく必要がある。
  •  ○ ICSのグループ子会社の計算は、全てのエンティティではなく重要な会社を対象として計算するとの考え方で行っている。現行の連結SMRのように全ての会社を計算対象とするとなると、保険数理的な負荷やリソースに対して効用があまりにも小さくなるため、何かしらの工夫を考える必要があると思う。
  •  ○ ICSのMAV手法をベースに国内規制として必要な調整を行っていくとの考え方は非常に良いと思うが、そうした場合に海外子会社において必要な調整が何かも考える必要があると思う。
  •  ○ 2000年前後の生保危機において、中小の保険会社は健全な経営をしていたにも関わらず、中小というだけで解約が増大したとの経験があるため、変動性の高いESRによるレピュテーションリスクは保険会社における(規制導入の)心理的ブレーキの1つとなっている。第3の柱において、自主的な開示の拡充を促して行くという考え方も挙げられているが、危機からの回復力(レジリエンス)については必須の開示項目とし、平時において保険会社が危機的なリスクについてどのような想定をしているか、それをどのように制御するか、更には危機的なイベントから何年以内に健全性の水準を回復できるかなどをステークホルダーに示していくことで、レピュテーションリスクは相当程度解消されるものと思う。
  •  ○ 第2の柱について、「議論の拡散を防ぐ観点からは健全性評価に係る部分について主に焦点を当てるべきではないか」とあるが、リスクの発生の背景にはガバナンスや経営戦略も大きく関係し、具体的には苦情の増大といったコンダクトリスクが典型だと思う。例えば、欧州のゼネラリが行ったような戦略的ランオフなどを論点として拾っていけば、契約者の利益にそぐわないような経営判断は防げるのではないかと思う。
  •  ○ ICSをそのまま日本に取り入れるのか、それともICSに対して日本でのオーバーレイを作って対応していくのか次第で、これからのタイムラインが変わってくると思う。日本の生命保険会社がIAISにデータを提出したことで、ICSの第三分野のリスク係数が変更されたように、データの提出に基づき、今後どのように方法論に影響していくかが重要になると思う。IAIGとなる保険会社にとっては、国内規制、ICS及び内部管理と、様々なものが出てくることになるため、その整合性を取るためにも日本としてどのような対応をしていくかを考え、保険会社として、IAISに働きかけて、方法論を改善していくことがこれから大事になると思う。
  •  ○ タイムラインについて、2024年にIAISからエコノミックインパクトアナリシスが出る予定だが、そこで大きな課題が発見されて何かを変えることになると、2025年の導入を考え準備していたものを方向転換しなくてはいけなくなり、大きなコストや時間がかかることになる。その辺りの時間軸を考えて導入を検討すべきだと思う。
  •  ○ 経済価値ベース規制の導入は、経済価値ベースの資産負債評価を通じたフォワードルッキングな経営管理を目指し、保険会社のリスク管理やALMの高度化の足かせを無くすことを目的としているが、ORSAなどで既に十分なレベルに達しており、第2の柱上は心配ないということであれば、個人的にはタイムラインは無くても良いと思っている。一方で、実際は、経済価値ベースの考え方を使っているようで実はそうでもないとの経営上の悩みが非常に多いのではないかと思う。その1つの要因が、これまで導入すると言いながらそこまでに至らなかった経済価値ベース規制の議論ではないか。議論はするが、国際的にも延期されてきたから我々も同じでよいという認識の下、惰性で動いていることが少しでも感じられるのであれば、そうした点を抑制する意味でもきちんとタイムラインを明確化する必要がある。拙速に進めると問題が生じるとの懸念も確かにあるとは思うが、全体的な方向性としてある程度認識が一致しているのであれば、日本が世界的な議論をリードしていくぐらいの気概があっても良いと思う。(当局は)規制の方向性や第1の柱のみならず、第2、第3の柱及び保険会社の内部管理のあり方も含め、方向性を示していくだけのリソースやパワーを持っていると思うので、そうした点も含めて議論を前に進めて行くべきではないか。
  •  ○ ICSはMAVでやるとはっきり決まっており、それをどうこう言う話ではなく、日本として何をやりたいかをまずしっかり考えるべき。(経済価値ベース規制を導入する意義・目的は)はっきり押さえているため、早期導入すなわち2025年から導入することをはっきり明示すべきだと思う。
 

以上
 

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